JP2003027208A - 部分窒化方法およびスペーサーエキスパンダ - Google Patents

部分窒化方法およびスペーサーエキスパンダ

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JP2003027208A
JP2003027208A JP2001206335A JP2001206335A JP2003027208A JP 2003027208 A JP2003027208 A JP 2003027208A JP 2001206335 A JP2001206335 A JP 2001206335A JP 2001206335 A JP2001206335 A JP 2001206335A JP 2003027208 A JP2003027208 A JP 2003027208A
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Miyuki Usui
美幸樹 臼井
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  • Pistons, Piston Rings, And Cylinders (AREA)
  • Solid-Phase Diffusion Into Metallic Material Surfaces (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 自動車用の小物部品、特にスペー
サーエキスパンダの一部分に摺動による摩耗や焼付を防
止するための窒化層を形成する。言い換えれば、寸法精
度が高く、量産性に優れるとともに安価な部分窒化法を
開発する。 【解決手段】 鉄系合金からなる部材の全表面に
SiO2膜(7)を形成する。好ましくは、SiO2膜は
ペルヒドロポリシラザンを有機剤にて希釈した溶液を部
材表面にコーティングすることで形成する。部材への剪
断加工により膜の無い面を作る。鉄系合金素地を露出さ
せた該面に対して窒化処理をなし、窒化層を形成する。
その後、フッ素系の液を用いて膜(7)を除去させる。
これにより、寸法精度と張力のばらつきの小さい耐折損
性の良好な部分窒化部材が得られる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、自動車のエンジン
部品のような精密小物部品に利用可能であり、寸法精度
が高く量産性に優れかつ安価な部分窒化方法に関するも
のである。またその部分窒化方法を応用した内燃機関用
スペーサーエキスパンダに関するものである。
【0002】
【従来の技術】自動車のエンジン部品のような精密小物
部品では、摺動による摩耗や焼付を防止するためにその
摺動面に窒化処理が多く採用されている。内燃機関用の
ピストンリングについてみると、トップリングにSUS
440Bに近い合金組成の鋼材からなるリング本体の外
周面にガス窒化したものが、また3ピース構造オイルリ
ングのエキスパンダーにはSUS304のようなバネ用
のステンレス鋼材からなる本体を塩浴窒化したものが多
く使用されている。このような精密部品の窒化には全体
窒化と部分窒化があるが、寸法精度が高く量産性に優れ
るとともに安価という条件を全て満たす部分窒化処理方
法は、必ずしも、これまで存在していなかった。これま
でに実用されている部分窒化について以下に説明する。
【0003】被膜を利用した部分窒化方法には以下のよ
うなものがある。 (1)メッキ法によって部材表面にニッケルや銅の被膜を
形成し、次に窒化すべき部分のメッキ被膜を除去し、そ
の後に窒化処理を行う方法。 (2)水ガラスを、窒化を欲しない部分にハケやパテを用
いて塗布して窒化処理を行う方法。 これらを実験で確認した結果から、(1)のメッキ方法で
は窒化を防止するためには5μm以上のメッキ厚さが必
要であり、またメッキ被膜の除去には機械加工による
か、酸の液中に浸漬処理することが必要である。このた
めメッキ被膜の形成とメッキ被膜の除去のいずれもコス
トの高いものとなる。(2)の水ガラスを用いる方法で
は、その塗布方法と厚い膜厚とのため寸法精度の高い部
分窒化には適さない。また被膜の密着性が悪いことや被
膜の緻密度が低いことから、コーティングした部分にあ
っても局部的に窒化層が形成される箇所が散見される。
またソーダ成分を含むためにガラス被膜の軟化点が低
く、窒化時に接触した部品がくっつく問題がある。また
窒化後に厚いガラス被膜の除去が困難であり、ショット
ブラスと等で硬質粒子を部品に高速で吹き付けて除去す
ると部品の変形を伴う問題がある。
【0004】次に、精密小物部品への適用として内燃機
関用3ピースオイルリングについては、これまで最適な
部分窒化方法が存在しなかったために全体的な窒化を採
用している。この全体窒化によるピストンリング及びそ
の構成部品が抱えている問題点について以下に説明す
る。
【0005】図1と図2に示すオイルリングは、2枚の
サイドレール1とスペーサーエキスパンダ2とで構成さ
れている。サイドレール1は、スペーサーエキスパンダ
2の耳部3のテーパー面4によってサイドレール内周面
5を径方向外方に押すことで張力を発生する。このよう
なスペーサーエキスパンダ2は、SUS304のような
バネ用ステンレス鋼を塩浴窒化したものが使用されてい
るが、以下のような問題がある。スペーサーエキスパン
ダは、本来はサイドレール内周面5と接触するテーパー
面4のみ、あるいは両端の合口面6(図2)とが摩耗対
策として窒化層が必要である。しかし、これまでは、こ
のような小物精密部品に適した部分窒化方法が存在しな
かったためにスペーサーエキスパンダ全体を窒化処理し
ている。しかし全体窒化では、耳部等の摩耗対策が必要
な部分の窒化層を深くすることができないという問題が
あった。そのため、有鉛ガソリン等を使用するエンジン
では、これらの部分が摩耗することでオイルコントロー
ル機能が悪化し、オイル消費が増加することとなってい
た。
【0006】乗用車用ガソリンエンジンに用いられてい
るスペーサーエキスパンダ2では、母材12の厚さは
0.25〜0.35mmと薄く、幅の狭い帯状のものであ
り、これをギヤ成形13→耳部成形14→ギヤ成形10
→コイリング→定寸切断11→両端の合口面部仕上げの
工程を経て(図3)、正確な形状と一定の展開長さとす
ることで、所定の張力が出せるようにしている。耳部3
はギヤ成形の後に、母材を部分的に剪断しさらギヤ成形
で曲げて作られている。テーパー面4は主として剪断時
の破断面によって形成されている。この破断面直下の組
織は他の曲げた部分よりも塑性加工度が低いためにマル
テンサイト化が進まず窒化の入りにくいオーステナイト
量が多い。
【0007】従ってこのテーパー面4に深く窒化を入れ
ようとすると、前述のように極めて薄い母材を利用して
いることと、耳部以外の部分の方がマルテンサイト量が
多く窒化されやすい結晶組織となっているために、耳部
位外の部分が厚く窒化されてしまい、張力が変化しバラ
ツキも大きくなる。この原因は窒素の侵入により窒化層
が体積膨張することで展開長さが変化することと、窒化
層のヤング率が母材のヤング率よりも高いためである。
また窒化層が大半を占めるような母材の断面状態となる
ために、スペーサーエキスパンダは脆化し折損等の重大
な問題を引き起こす。
【0008】以上のような制約条件により、テーパー面
4の窒化深さは略5〜10μmが限界であった。このた
め、サイドレール内周面との摩擦で、この窒化層が摩耗
しなくなるとテーパー面4の摩耗は急激に進行し、サイ
ドレールに与える張力が減少し、オイルコントロール機
能を失ってしまうことが問題となっている。
【0009】この対策として、スペーサーエキスパンダ
にPVD法で窒化物を堆積させる提案(特公平9−17
0659号公報、特公平11−190429号公報、特
公平11−351390号公報)やCVD法でDLC膜
を堆積させる提案(特公平11−315924号公報)
がされている。また特開平5−33866号公報で、サ
イドレールの外周面のみにイオン窒化を施し、スペーサ
ーエキスパンダの少なくともサイドレールの内周部分と
接触する部分に窒化処理を施すこと、特開平09−17
0659号公報にはスペーサーエキスパンダの押圧片に
皮膜硬さがHmv1300〜2000のCr2Nからな
るイオンプレーティング皮膜を形成したスペーサーエキ
スパンダが開示されている。
【0010】しかしPVD法により耐摩耗性の硬質皮膜
を設ける方法では、スペーサーエキスパンダの押圧片
は、スペーサーエキスパンダ内周部に設けられているも
のであるから、外周側から皮膜形成粒子が飛来するPV
D法では、皮膜形成速度が非常に遅くなり生産性を著し
く悪化させるので、このようなスペーサーエキスパンダ
は非常に高価なものとなってしまうという問題がある。
その他にこれらの硬質皮膜はスペーサーエキスパンダの
全面に形成されること、またその被膜は圧縮の残留応力
が高い被膜となることから、スペーサーエキスパンダの
展開長さやヤング率が変化するために、張力の変化やバ
ラツキが多くなること、またこれらの膜の硬度が高すぎ
るためにサイドレール内周面5を摩耗させて張力が減退
するために実用化には至っていない。
【0011】現在、自動車エンジンに於いては、地球温
暖化防止の観点からCO2排出の削減が求められてお
り、自動車エンジンでは燃費の向上が図られている。こ
の一手段として、ピストンリングではピストンリングの
低張力化が望まれている。組合せオイルリングの低張力
化のためには、スペーサーエキスパンダの張力を低く設
計することと同時に製造工程での寸法バラツキを小さい
くする必要がある。オイルリングの張力は前述のように
スペーサーエキスパンダ周方向での縮径の程度により決
められるのであるあら、スペーサーエキスパンダの周方
向の寸法バラツキがオイルリング張力のバラツキを生む
原因となる。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的の第一
は、自動車のエンジン部品のような精密な小物部品に最
適な、寸法精度が高く量産性に優れるとともに安価な部
分窒化処理を可能にすることにある。本発明の他の目的
は、その部分窒化方法によりスペーサーエキスパンダの
性能上や製造・コスト上の問題を解決し、新たなスペー
サーエキスパンダを得ることにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明の目的の第一であ
る精密小物部品に最適な部分窒化を可能にする方法とし
て、薄くて緻密な窒化防止被膜を部品に形成させ、次に
窒化する部分からこの被膜を除去してから窒化し、最後
にこの窒化防止被膜を部品から除去することで、このよ
うな精密小物部品の部分窒化が可能となる。このような
窒化防止被膜には、以下のような特性が必要である。 (1) 均一かつ簡単にマーキングのためのコーティングが
できること。 (2) 部品の取扱中、膜(コーティング)に傷がつきにく
い硬度を膜が持つこと(高硬度)。 (3) 曲げや剪断等の軽度の塑性加工を行っても、膜が剥
離しないこと。 (4) 精密な機械加工や塑性加工の時に膜厚の影響を受け
ないために、膜は極めて薄い厚さで窒化を防止できるこ
と。 (5) 塑性加工時に金型等を傷つけないために膜表面は平
滑となること。 (6) 窒化する部分から、その皮膜を除去することが容易
で、かつ精度が高いこと。 (7) 窒化の温度で溶融したり、剥離したり、ひびが入ら
ない膜であること。 (8) 窒化処理後に膜の除去が容易であること。
【0014】本発明は、上記の観点から種々の被膜をピ
ストンリング母材に形成させ、次にその母材を機械加工
や塑性加工を行って皮膜を部分的に除去してから窒化処
理を行い、さらに窒化処理後に窒化防止皮膜を除去する
試行錯誤を繰り返す中で、SiO2膜が窒化防止に効果
的であり、特にペルヒドロポリシラザンを有機溶剤で希
釈した液中に処理部品を浸漬し、引き上げたてから乾
燥、焼成することで緻密なSiO2膜が得られ、前述し
た精密小物部品の部分窒化に必要な皮膜の要求特性の全
てを満足できることを見いだした。
【0015】ペルヒドロポリシラザンは、−(SiH2
NH)−を基本ユニットとする有機溶剤に可溶な無機ポ
リマーであり、塗布後に大気中で低温度にて焼成するこ
とで水分や酸素と反応して緻密な高純度のシリカ(Si
2)膜が得られる。また膜厚の制御は有機溶剤での希
釈量によって容易に調整ができる。処理物へのコーティ
ング(膜成形)は、有機溶剤で希釈した液の中に処理物
を浸漬し引き上げ乾燥焼成することで簡単に行うことが
でき、得られたSiO2膜は、密着性が良く薄膜である
ことから、軽度の塑性加工で剥離することもない。また
硬度も高く、膜表面は平滑であり金型を傷つけることも
ない。窒化したい部分では、研磨等で膜を除去すること
が容易であり、また局部的な剪断等で露出させた面には
SiO2膜が残らないことから、これらの部分を容易に
部分窒化することができる。さらに窒化処理後にはフッ
酸を主体とする液中に浸漬することでSiO2膜は容易
に除去できる。
【0016】オイルリング用スペーサーエキスパンダの
ような部品に適用する場合には、帯状の素材を上記と同
様の浴中を一定速度で通過させ引き上げながら乾燥と焼
成を行いつつ巻き取ったものを準備することからはじま
る。次にこの素材を通常のギア成形機等にかけ、局部的
な曲げや剪断等の加工とコイリングを行い適当な巻き数
のスパイラル状態とする。その後に必要により組織安定
化の熱処理を行い、脱脂処理→酸洗いし表面を清浄化し
てからガス窒化処理を行うことで、局部的な剪断加工に
よりSiO2膜が無い部分だけに窒化層が形成される。
窒化処理後は、フッ酸を含む液に浸漬することでSiO
2膜を溶解除去し、合口部を切断する工程を経て、摩耗
が問題となる部分だけに厚く窒化層を設けることができ
る。
【0017】合口両端部も窒化層を形成させたい時は、
窒化処理の前にスパイラル状態から合口部を切断して1
本づつのスペーサーエキスパンダにしてから窒化処理す
ればよい。このようにして得た部分的に窒化されたスペ
ーサーエキスパンダでは、他の部分は窒化がされていな
いために、張力の中央値やバラツキ範囲も窒化処理前と
ほとんど変化しないので、高精度で且つ耐久性に優れた
スペーサーエキスパンダとなる。また、製造工程も簡単
であることから、コスト上昇もわずかである。このよう
にして成形されたスペーサーエキスパンダは、従来提案
されているPVDによる窒化物を堆積させたスペーサー
エキスパンダやDLCを堆積させたスペーサーエキスパ
ンダよりも、高性能でかつ安価に大量生産ができる。
【0018】本発明のスペーサーエキスパンダではスペ
ーサーエキスパンダの耳部即ち押圧片のサイドレールと
の接触面には窒化層が形成されているため、サイドレー
ルと摺接による摩耗を防止することが出来る。さらにス
ペーサーエキスパンダの押圧片のサイドレールとの接触
面を除く部分には窒化層が形成されないため、スペーサ
ーエキスパンダは折損しにくいばかりではなく、窒化層
が形成されないので、窒化層の窒化ムラにより発生する
スペーサーエキスパンダの張力のバラツキを低く押さえ
ることが出来る。また、スペーサーエキスパンダの押圧
片のサイドレール内周面との接触面以外に形成された窒
化防止用の金属膜およびガラス膜は、サイドレールやス
ペーサーエキスパンダの機能に障害を与えるものではな
く、寧ろ、存在することによって、側面に窒化層が形成
されたサイドレール等では、スペーサーエキスパンダの
耐摩耗性を向上する働きがある。この窒化防止膜は1μ
m以下の膜厚さでは加工途中で摩滅し窒化防止の役割を
果たさなくなる。また、5μm以上の厚さがあるとギア
成型時に皮膜が剥離する可能性が高くなる。
【0019】本発明は、押圧片のサイドレール内周面と
の接触面が素材の剪断によって形成されるスペーサーエ
キスパンダに好ましくは適用される。またスペーサーエ
キスパンダの耳部のみに窒化を施すため、スペーサーエ
キスパンダ製造時に寸法ばらつきが大きくならず、製造
管理が容易である。
【0020】
【発明の実施の形態】以下に内燃機関用のピストンリン
グおよびその構成部品について、本発明の実施形態を図
上により説明する。
【0021】
【実施例】[実施例1]幅:2.35mm、厚さ:0.2
75mmのSUS304材(硬度Hv240)の帯材を脱
脂処理後に酸洗いし水洗乾燥することで表面を清浄化
し、ポリヒドロポリシラザンをキシレンで希釈した溶液
(商品名:東燃ポリシラザンL110)をキシレンでさ
らに希釈して濃度4重量%とした液中を通過させつつ5
0cm/分の速度で連続的に引き上げて乾燥し大気中で3
00℃で1時間の焼成を行い、略0.10〜0.15μ
mの厚さのSiO2膜を帯材の全表面に形成した。この帯
材を図3に示す通常の成形工程(ギヤ成形方法で局部的
な曲げと剪断による耳部成形→コイリングにより真円に
連続巻きし定寸切断→両端の合口面部切断)を経て、1
本づつのスペーサーエキスパンダ素材を得た。図4は、
この状態のスペーサーエキスパンダの断面を示すもの
で、耳部8のテーパー面9は帯材を局部的に剪断した面
であるため、SiO2膜7はこの面には存在しない。そ
れ以外の部分は、ギア成形による曲げ等を受けているに
もかかわらずSiO2膜7で覆われている。
【0022】次にスペーサーエキスパンダ素材を、脱脂
処理した後にガス窒化処理炉にてアンモニアと窒素ガス
を流気させながら570℃で1時間保持した。図5は窒
化後の断面を示すもので、耳部8のテーパー面9サのみ
が窒化されており窒化層10の深さは、20μmであ
り、SiO2膜7を施した他の面には、窒化層は存在し
ていない。また図6は、合口部分の断面図を示すが、両
側の面ともに20μmの厚さの窒化層10で覆われてい
る。次に、これをフッ硝酸液(49%HF:60%H3
=1:100)中で5分間浸漬しSiO2膜7を完全に
溶解除去して完成品とした。
【0023】[実施例2]実施例1で使用したSiO2
膜7で覆われた帯材を、ギヤ成形→コイリングしスパイ
ラル状にした状態のものを抜き出し脱脂処理した後にガ
ス窒化処理炉にてアンモニアと窒素ガスを流気させなが
ら570℃で1時間保持した。窒化後に合口部を切断
し、1本づつのスペーサーエキスパンダとした。図7は
窒化後の断面を示すもので、耳部8のテーパー面9のみ
が窒化されており窒化層10の深さは、20μmであ
り、SiO2膜7を施した他の面には、窒化層は存在し
ていない。また図8は、合口部分の断面図を示すが、両
側の面には窒化層は存在していない。次にこれをフッ硝
酸液(49%HF:60%H3=1:100)中で5分
間浸漬しSiO2膜7を完全に溶解除去して完成品とし
た。
【0024】ボア径φ78.0、組み合わせ寸法2.0
mm(公差−0.050〜−0.020mm)、張力20.
0±3.0Nねらいの組み合わせオイルリングを作製し
た。本発明のスペーサーエキスパンダのサイドレール接
触部分にのみ窒化層を施した製品(本発明仕様)と、ス
ペーサーエキスパンダ全表面に窒化層を施した製品(従
来品仕様)を作製した。両者の製造ばらつきを比較する
ため、図9にそれぞれの製造方法でのスペーサーエキス
パンダとサイドレールとの軸方向組み合わせ寸法ばらつ
きを示した。
【0025】このようにスペーサーエキスパンダの耳部
および突起部のみに窒化層を施すと、スペーサーエキス
パンダの寸法ばらつきが大幅に小さくなった。
【0026】またそれぞれの製造方法の製品についてサ
イドレールとの組み合わせ張力について測定した結果を
図10に示す。このようにスペーサーエキスパンダの耳
部および突起部のみに窒化層を施すと、張力ばらつきも
大幅に低減することが可能になる。
【0027】さらに耐折損性について確認を行うため、
両オイルリングを疲労試験機にセットし応力の差を確認
した。このS−N曲線を図11に示す。S−N曲線から
本特許仕様のスペーサーエキスパンダの方が耐折損性が
良好であることがわかる。
【0028】以上説明したように、本発明のスペーサー
エキスパンダによればスペーサーエキスパンダの耐折損
性が良好になり、製造上の寸法ばらつきを小さくでき
る。また、本発明のスペーサーエキスパンダの製造方法
によれば、サイドレールとの接触部分のみに容易に厚い
窒化層を施すことができる。
【0029】本発明では、緻密でガスバリアー性が高い
SiO2膜を利用いることから、極めて薄い膜で窒化を
防止することができる。また極めて薄い膜であることか
ら、寸法精度の高い塑性加工が行える。実施例のスペー
サーエキスパンダの塑性加工での曲げや剪断において
も、SiO2膜は剥離することがなく窒化防止の効果を
発揮する。また膜の表面は平滑なために成形用ギヤを摩
耗させることもない。窒化を行いたい部分の膜を、機械
的にしたり、部材を剪断加工によって鉄素地を露出させ
ることも容易である。また、硬度が高い膜であることか
ら、SiO2膜をつけた後の取り扱いで傷が発生するこ
ともなく、窒化防止の機能が傷で阻害されることもな
い。また窒化処理後にSiO2膜を除去することは、フ
ッ酸を含む液中に浸漬して溶解除去できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例を示し、スペーサーエキスパ
ンダの一部分を示す縦断面図である。
【図2】図1のスペーサーエキスパンダ合口部分を示す
斜視図である。
【図3】スペーサーエキスパンダ成形工程の一例を示す
斜視図である。
【図4】スペーサーエキスパンダの断面図である。
【図5】窒化後のスペーサーエキスパンダの断面図であ
る。
【図6】窒化後のスペーサーエキスパンダ合口部分を示
す断面図である。
【図7】窒化後のスペーサーエキスパンダの断面図であ
る。
【図8】窒化後の合口部分を示す断面図である。
【図9】本発明品と従来品におけるスペーサーエキスパ
ンダとサイドレールとの軸方向組み合わせ寸法ばらつき
を示すグラフ図である。
【図10】本発明品と従来品におけるスペーサーエキス
パンダとサイドレールとの組み合わせ張力ばらつきを示
すグラフ図である。
【図11】本発明品と従来品におけるスペーサーエキス
パンダのS−N曲線を示すグラフ図である。
【符号の説明】
1 サイドレール 2 スペーサーエキスパンダ 3 耳部 4 耳テーパー面(サイドレールとの摺接面) 5 サイドレール内周面 6 合口面 7 SiO2膜 8 耳部 9 テーパー面 10 窒化層
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) F16J 9/20 F16J 9/20 9/26 9/26 C

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 鉄系合金からなる部材に、5μm以下の
    SiO2膜をコーティングした後に、窒化する部分の鉄
    合金素地を露出させて窒化処理を行うことを特徴とする
    部分窒化方法。
  2. 【請求項2】 部材へのコーティング処理後、部材の一
    部に剪断加工をなして剪断面を作り、該剪断面を窒化処
    理し、窒化処理後コーティングを除去する請求項1に記
    載の部分窒化方法。
  3. 【請求項3】 ペルヒドロポリシラザンを有機溶剤にて
    希釈した溶液を鉄系合金からなる部材にコーティング
    し、乾燥後または、乾燥後に焼成することにより、部材
    にSiO2膜を形成した後に、窒化する部分の鉄合金素
    地を露出させて窒化処理を行うことを特徴とする部分窒
    化方法。
  4. 【請求項4】 スペーサーエキスパンダとスペーサーエ
    キスパンダに支持される一対のサイドレールからなる組
    合せオイルリングにおいて、スペーサーエキスパンダは
    平板状金属帯によりピストン軸方向に波形が形成されか
    つ周方向に延伸しており、内周部にはピストン軸方向に
    突出して形成されかつサイドレールを半径方向外側に押
    圧する押圧片を有し、外周部にはサイドレールを軸方向
    に支持する突起部を有するスペーサーエキスパンダであ
    って、金属帯がコーティングされており、該押圧片のサ
    イドレールとの接触面等の剪断により生じたコーティン
    グの無い表面に窒化処理層が形成されていることを特徴
    とする内燃機関用ピストンリングのオイルリングに用い
    られるスペーサーエキスパンダ。
  5. 【請求項5】 コーティング膜が1〜5μmの厚さのS
    iO2膜であることを特徴とする請求項4に記載のスペ
    ーサーエキスパンダ。
  6. 【請求項6】 スペーサーエキスパンダの製造方法であ
    って、線材表面にSiO2膜を1〜5μm施す第一工程、
    ギヤ成形により線材を軸方向波形に形成する第二工程、
    波形線材の内周部分には押圧片部を外周部分には突起部
    を剪断によって形成する第三工程、ついで窒化処理を施
    す第四工程から成ることを特徴とするスペーサーエキス
    パンダの製造方法。
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