JP2003018985A - 長鎖dnaを伸張する方法 - Google Patents

長鎖dnaを伸張する方法

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JP2003018985A JP2001161033A JP2001161033A JP2003018985A JP 2003018985 A JP2003018985 A JP 2003018985A JP 2001161033 A JP2001161033 A JP 2001161033A JP 2001161033 A JP2001161033 A JP 2001161033A JP 2003018985 A JP2003018985 A JP 2003018985A
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nucleic acid
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Norimasa Kachi
範匡 加地
Masanori Ueda
正則 上田
Yoshinobu Baba
嘉信 馬場
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Abstract

(57)【要約】 【課題】簡便で迅速な、伸張させて解析した長鎖DNA
を回収して再利用することが可能な方法として、ゲルと
低周波交流電場を用いた長鎖核酸を伸張させる方法およ
び該方法によって伸張された核酸分子を提供することを
目的とする。 【解決手段】核酸分子をゲル中に配置する工程およびゲ
ル中の核酸分子に低周波交流電場を印加する工程を含
む、核酸分子の伸張方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、核酸分子の伸張方
法に関する。より詳細には、本発明は、ゲルと低周波交
流電場を用いた核酸分子の伸張方法に関する。
【0002】
【従来の技術】ヒト・ゲノムのシークエンシングが当初
の予定を大幅に上回るスピードで終了した。このような
DNA解析技術の進歩に伴って、今後はたった1つの染
色体DNA分子からその情報を読み取る究極の1分子ゲ
ノム解析技術が重要になる。1分子ゲノム解析を実現す
るためのDNAを1分子で自由にマニピュレートする技
術が要求される。従来の単一DNA分子マニピュレーシ
ョン・解析法には、光ピンセット、原子間力顕微鏡、高
周波交流電場が用いられてきたが、これらの方法では、
DNAの前処理が必要であったり、マニピュレートした
DNAを回収して新たなサンプルとして利用することが
困難であったり、染色体DNAのような長鎖DNAを伸
張させることができない等の欠点を有していた。
【0003】ヒト染色体DNAのサイズは、全体で35
億塩基対(3.5 ギガ塩基対:Gbp)もあり、最も
小さい第21染色体でも4千800万塩基対(48メガ
塩基対:Mbp)を有する。従って、染色体DNAを切
断して得た断片を分離・同定し、もとの配列を再構成す
る過程では、染色体DNAをなるべく細切れにしないで
大きいままで扱う方が有利である。それゆえに、Mbp
オーダーの巨大断片を迅速かつ精密に解析する技術が望
まれている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、簡便で迅速
な、伸張させて解析した長鎖DNAを回収して再利用す
ることが可能な方法として、ゲルと低周波交流電場を用
いた長鎖核酸を伸張させる方法および該方法によって伸
張された核酸分子を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】即ち、本発明の要旨は、
(1)核酸分子をゲル中に配置する工程およびゲル中の
核酸分子に低周波交流電場を印加する工程を含む、核酸
分子の伸張方法、(2)核酸分子の長さが、23〜57
00kbpである、前記(1)記載の方法。(3)低周
波交流電場の周波数が、1〜100Hzである、前記
(1)または(2)記載の方法、(4)低周波交流電場
の強度が、|10|〜|10000|(絶対値)V/c
mである、前記(1)〜(3)いずれかに記載の方法、
(5)低周波交流電場の強度を漸増させる、前記(1)
〜(3)いずれかに記載の方法、(6)低周波交流電場
の強度を、|10|V/cmから|300|(絶対値)
V/cmまで漸増させる、前記(5)記載の方法、
(7)低周波交流電場の強度を漸増する速度が、|1|
〜|100|(絶対値)V/cm・sである、前記
(5)または(6)記載の方法、(8)低周波交流電場
の周波数を漸増させる、前記(1)〜(7)記載の方
法、(9)低周波交流電場の周波数を1Hzから20H
zまで漸増させる、前記(8)記載の方法、(10)低
周波交流電場の周波数を漸増する速度が0.01〜1H
z/sである、前記(8)または(9)記載の方法、
(11)伸張した核酸分子を検出し、回収する工程をさ
らに含む、前記(1)〜(10)いずれかに記載の方
法、(12)前記(1)〜(11)いずれかに記載の方
法により伸張されてなる核酸分子、に関する。
【0006】
【発明の実施の形態】本発明の核酸分子の伸張方法は、
核酸分子をゲル中に配置する工程およびゲル中の核酸分
子に低周波交流電場を印加する工程を含む。ここで、核
酸分子を「伸張する」とは、高次構造(例えば、コイ
ル、屈曲構造など)を有する核酸分子を電場方向に平行
に配向させ、伸張させた状態にすることをいう。
【0007】本発明の伸張方法に適用される核酸分子と
しては、二本鎖DNAが挙げられ、その長さは、23〜
5700kbpが好ましく、48〜2200kbpがさ
らに好ましいが、特に、本発明の方法によれば、220
0〜5700kbpのような長鎖のものに対しても適用
できる。伸張方法に適用される核酸分子の量は、1分子
観察の観点から、6.25〜394ng/mlが好まし
く、20〜394ng/mlがさらに好ましい。
【0008】本発明の核酸の伸張方法に使用されるゲル
としては、アガロースゲル、アクリルアミドゲル等の核
酸分子を導入することができるものであれば、いかなる
ものであってもよい。使用するゲル濃度は、ゲル構造保
持の観点から、0.5〜3.0重量%が好ましく、0.
5〜2.5重量%がさらに好ましく、1.0〜2.0重
量%が特に好ましい。使用されるゲルの大きさは、特に
限定されることなく適宜決められるが、一般には、1〜
100mm×1〜100mm×1〜100mmのゲルが
使用される。
【0009】ゲル中の核酸分子に低周波交流電場を印加
する工程では、一般に緩衝液を使用することが好まし
く、例えば、TBE(トリス−ホウ酸、EDTA)、T
B(トリス−ホウ酸)、TAE(トリス−酢酸、EDT
A)、FISH用バッファーSSC(塩化ナトリウム−
クエン酸ナトリウム)、変性用バッファー(ホルムアミ
ド−SSC、硫酸デキストラン−ホルムアミド−SS)
等の緩衝液が使用される。
【0010】核酸分子をゲル中に配置する手段として
は、例えば、サンプルとするDNAが溶液である場合に
は、サンプル溶液をDNA伸張用ゲルにあらかじめ作成
したウェルに滴下し、直流電場によりDNA伸張用ゲル
に導入する方法等が挙げられ、サンプルとするDNAが
ゲルプラグ中に包含されている場合には、ゲルプラグ周
辺にDNA伸張用ゲルを作製し、直流電場によりDNA
伸張用ゲルに導入する方法等が挙げられる。
【0011】本発明において、「低周波交流電場」と
は、1〜100Hzの周波数をもつ正弦波、矩形波、三
角波等の+方向と−方向への電圧の印加において、その
波形と強度の等しい電場をいう。低周波交流電場は、例
えば、慣用の周波発生器を用いることにより発生させる
ことができる。
【0012】低周波交流電場の周波数は、DNAとゲル
との絡み合い効果を引出し、効果的にDNAを駆動する
観点から、1〜100Hzが好ましく、1〜20Hzが
さらに好ましく、5〜15Hzが特に好ましい。
【0013】低周波交流電場の強度は、DNAとゲルと
の絡み合い効果を引出し、効果的にDNAを駆動させる
観点から、|10|〜|10000|V/cmが好まし
く、|10|〜|1000|V/cmがさらに好まし
く、|10|〜|450|V/cmがさらに好ましく、
|200|〜|300|V/cmが特に好ましい。
【0014】伸張対象の核酸分子が500kbpを越え
る長さを有する長鎖DNAである場合には、DNA分子
とゲル繊維との不可逆的な絡み合いを防ぐ観点から、低
周波交流電場の強度を低強度から増加させる方が好まし
い。
【0015】この場合、低周波交流電場の強度は、DN
A分子とゲル繊維との不可逆的な絡み合いを防ぐ観点か
ら、|100|V/cmから|300|V/cmまで漸
増させることが好ましく、|50|V/cmから|30
0|V/cmまで漸増させることがさらに好ましく、|
10|V/cmから|300|V/cmまで漸増させる
ことが特に好ましい。
【0016】低周波交流電場の強度の漸増速度は、DN
A分子とゲル繊維との不可逆的な絡み合いを防ぐ観点か
ら、|1|〜|100|V/cm・sが好ましく、|5
|〜|100|V/cm・sがさらに好ましく、|10
|〜|100|V/cm・sが特に好ましい。
【0017】伸張対象の核酸分子が、500kbpを越
える長さを有する長鎖DNAである場合には、DNA分
子とゲル繊維との不可逆的な絡み合いを防ぐ観点から、
低周波交流電場の周波数を漸増させて印加することが好
ましい。
【0018】この場合、低周波交流電場の周波数は、D
NA分子とゲル繊維との不可逆的な絡み合いを防ぐ観点
から、1Hzから20Hzまで漸増させることが好まし
く、1Hzから10Hzまで漸増させることが特に好ま
しい。
【0019】低周波交流電場の周波数の漸増速度は、D
NA分子とゲル繊維との不可逆的な絡み合いを防ぐ観点
から、0.01〜1Hz/sが好ましく、0.01〜
0.5Hz/sがさらに好ましく、0.01〜0.1H
z/sが特に好ましい。
【0020】本発明の核酸分子の伸張方法を行なう際に
は、ゲルの融解を防ぐ観点から、全操作を0〜80℃、
好ましくは10〜35℃、より好ましくは15〜25℃
で行なうことが望ましい。
【0021】本発明の核酸分子の伸張方法は、ゲル中に
核酸分子を配置し、ゲル中の核酸分子に低周波交流電場
を印加して核酸分子を伸張させた後に、伸張した核酸分
子を検出し、回収する工程をさらに含む。
【0022】核酸分子の伸張状態を観察する手段として
は、倒立型蛍光顕微鏡、正立型蛍光顕微鏡、レーザー共
焦点顕微鏡等が挙げられる。
【0023】核酸分子を検出する手段としては、レーザ
ー誘起蛍光検出器、紫外・可視部吸収検出、蛍光検出、
示差屈折率検出、熱光学的検出、円二色性検出、電気化
学的検出、電気伝導度検出等が挙げられる。
【0024】伸張した核酸分子を回収する手段として
は、(1)ゲルの再融解、(2)ゲルの状態のまま回
収、(3)伸張した核酸分子を含むゲルの周辺に新たな
ゲルを調製し、電気泳動的手法により新たなゲルに回収
する、(4)ゲルを酵素的、化学的に切断した後、電気
泳動的手法により回収する等の方法が挙げられ、これら
は慣用の方法により行われる。
【0025】本発明はさらに、本発明の伸張方法により
伸張された核酸分子に関する。かかる核酸分子は、たっ
た1つのDNA分子からその情報を読みとる1分子ゲノ
ム解析技術、またそのような1分子ゲノム解析技術の開
発にも有効に使用される。
【0026】
【実施例】実施例に先立ち、下記の装置を準備し、各実
施例で使用した。
【0027】図1に示すように倒立型蛍光顕微鏡上の電
気泳動用ミニチュアセルをDNA分子の挙動の直接的な
観察のために使用した。2つのPt電極をミニチュアセ
ル上に1cmまたは0.5cmの距離をおいて配置し
た。任意波形発生装置(1942,エヌエフ回路設計ブ
ロック)により生成する交流電場を、高速電力増幅双極
性パワーサプライ(4020,エヌエフ回路設計ブロッ
ク)により適切な強度に増強し、Pt電極間に印加し
た。100倍油浸対物レンズ(Plan−NEOFLU
AR、N.A.=1.3)および高圧水銀ランプを備え
た倒立型蛍光顕微鏡(Axiovert 135TV、
Carl Zeiss)を用いた。蛍光イメージを、S
IT(シリコン増感標的)カメラ(C2400−08、
浜松ホトニクス)を用いて観察した。DNAのイメージ
および電場の電圧を、イメージキャプチャーボード(ひ
まわり、株式会社ライブラリー)によりパーソナルコン
ピュータのメモリーに直接記録した。DNA分子の最大
径および重心を、イメージプロセシングソフトウェア
(Cosmos32,株式会社ライブラリー)により計
算した。
【0028】実施例1 15.5pgのT4DNA(165.6kbp,ニッポ
ンジーン社製)を、蛍光色素、YOYO−1(モルキュ
ラープローブ株式会社製)で染色し、0.5×TBE緩
衝液中の1.0重量%アガロースゲル(Agarose
NA,アマシャムファルマシアバイオテク社製)(5
mm×5mm×2mm)に定常電場下(5V/cm)で
5分間かけて注入した。DNA観察の前にゲル中から酸
素を除去するために、アガロースゲルを4%(v/v)
2−メルカプトエタノール、2.3mg/mlグルコー
ス、0.1mg/mlグルコースオキシダーゼ、および
0.018mg/mlカタラーゼを含有する溶液に供し
た。
【0029】図2A)は、T4DNA分子を伸張する蛍
光イメージを示す。ここで、AC電場(10Hz、20
0V/cm)を時間0秒から70秒間印加した。図2
B)は、DNAの最大径[R1 (μm)]における変化
を示す。ここで、最大径とは、対象となるDNA蛍光像
の重心を通る径のうち、最長のものをいう。図2B)に
示されるように、R1 は、徐々に増大し、約20秒後に
漸近値に達した。ここで、R1 の値は40μm付近を変
動し、一方、2本鎖のT4DNA分子の自然長は約55
μmである。アガロースゲルの細孔サイズの不均一性の
ために、DNA分子は、ときどき、かかる中間状態で図
2B)の10秒付近でトラップされた。アガロースゲル
中での伸張プロセスの間、DNA分子は、この中間状態
でのトラッピングと、脱出とを繰り返した。この試行の
後、DNA分子は、最大径の漸近値に到達するための効
果的なアガロースゲル中のパスを見出し得た。
【0030】実施例2 DNA分子の伸張に対する電場の周波数の影響を解析し
た。種々の周波数の電場を印加した以外は、実施例1と
同様の条件下でT4DNA分子を伸張させた。結果を図
3に示す。図3は、電場の周波数の関数としての平均最
大径[R1 (μm)]を示す。図3では、黒丸は、各周
波数(1,5,6,7,8,9,10,11,12,1
3,15,20,30,40,50,75,100H
z)における1〜5個の異なる分子での10秒間につい
て時間平均した後、分子間で平均したR1 を示し、白丸
は、2秒(0.1Hz)および7秒(0.5Hz)につ
いて時間平均した後、分子間で平均したR1 を示す。
【0031】ゲル中でのDNA分子の運動はポリマー溶
液中で観察されたような領域(例えば、直線状運動、反
共鳴、伸張、配向)に周波数を分類しえないが、運動中
のDNA分子の平均最大径R1 と重心のx成分Gx を用
いて図3の周波数領域を特徴づけることができる。Gx
の変動レベルが、時間平均したR1 よりも小さい場合、
DNA分子は、アガロースゲル中でもチューブ様運動
(Ueda ら、(1997) Stretching of Long DNA u
nder Alternating Current Electric Fields ina Conce
ntrated Polymer Solution, Polymer Journal,Vol.29.N
o.12.pp1040-1043 参照)を行うことが予測される。一
方、R1 よりも大きなGx の変動は、チューブ様運動よ
り複雑な動きを示す。
【0032】図4A)、B)およびC)は、1Hz、1
0Hzおよび100Hz(200V/cm)それぞれの
周波数でのR1 およびGx の時間経過を示す。ここで、
xは、時間平均がゼロになるように再計算されてい
る。1Hzの場合、R1 およびGx の両方が、平均値付
近を変動する。Gx は、外部電場と単純に相関し、一
方、R1 は、図4A)に示されるようなより複雑な様式
で変動する。10Hzの場合、R1 およびGx の両方
が、図4B)に示されるように一定である。DNA分子
は、この条件で伸張するが、その位置は変化しない。1
00Hzの場合、R1およびGx の両方が、図4C)に
示されるように一定である。この条件において、DNA
分子は配向するが、伸張しない。低周波数(0.1Hz
付近)において、DNA分子の直線状運動はアガロース
ゲルでは現れない。このように、平均最大径R1 は10
Hz付近で最大値を有することが理解される。
【0033】実施例3 DNA分子の伸張に対する電場強度の影響を解析した。
種々の電場強度を印加した以外は、実施例1と同様にし
てT4DNA分子を伸張させた。結果を図5および6に
示す。図5A)は、異なる電場強度(150V/cm、
50V/cm、および250V/cm)での平均最大径
1 およびT4DNA分子の重心の水平方向成分Gx
示す。図5B)は、図5A)に対応する蛍光イメージを
示す。図5B)のDNAの左端の明るいスポットは、コ
イル構造または曲折構造を示す。
【0034】図6に示されるように、DNA分子の平均
最大径は、約300V/cmまでは外部電場の強度にほ
ぼ比例し、400V/cm〜600V/cmまでの領域
で徐々に減少する。図6の鉛直方向の破線は、伸張領域
および非伸張領域の間の境界を示す。
【0035】図7A)、B)およびC)は、10Hzで
の平均最大径R1 およびT4DNA分子の重心の水平方
向成分Gx の時間変化を示す。伸張領域において、R1
およびGx の両方が、図7A)およびB)に示されるよ
うに外部電場の周波数に関係なくわずかに変動する。1
0秒間の平均値は、それぞれ50V/cmでR1 =3
6.4±0.9(μm)およびGx =0.0±0.7
(μm)であり、200V/cmでR1 =43.6±
1.1(μm)およびGx =0.0±2.4(μm)で
ある。本質的に、R1 およびGx は、伸張領域で一定で
ある。Gx の変動(0.7μmおよび2.4μm)は、
平均最大径よりも20倍小さく(36.4μmおよび4
3.6μm)、DNA分子の伸張した状態を攪乱しな
い。他方で、600V/cmの場合には、R1 およびG
x の両方の大きさにおける変動は、図7C)に示される
通りである。10秒間の平均値は、R1 =21.0±
4.4(μm)およびGx =0.0±9.9(μm)そ
れぞれである。Gx (9.9μm)の標準偏差は、平均
最大径(21.0μm)と比較して、DNA分子の高次
構造を攪乱するのに十分に大きい。それゆえ、本発明者
らは、450V/cm以下の領域でのDNA挙動と45
0V/cm以上の領域でのDNA分子挙動との質的違い
を指摘しうる。高電場(500V/cmおよび600v
/cm)において、DNA分子は、DNAの平均最大径
に匹敵する幅広い距離を移動する。この結果として、D
NA分子の高次構造は、常にアガロースゲルの架橋点で
攪乱される。それゆえ、この領域において、DNAは、
伸張され得ない。
【0036】実施例4 DNA分子の伸張に対するゲル濃度の影響を解析した。
種々の濃度のアガロースゲルを用いた以外は、実施例1
と同様にしてT4DNA分子を伸張させた。結果を図8
に示す。図8は、DNAの平均最大径のアガロース濃度
依存性を示す。DNAの平均最大径は、0.5〜3%ア
ガロース濃度の広範な範囲で本質的に一定である。この
濃度に対応するゲルの細孔サイズは、800〜260n
mである。低濃度(<0.5%)では、ゲルは非常に柔
らかく、DNA分子伸張のための実用的なゲルシステム
を作成することはできない。図8の破線は、約3.5μ
mを示し、同じ電場条件における58%ショ糖溶液中で
のT4DNAの平均最大径である。このように、DNA
分子は、低分子量溶液では決して伸張しないことに留意
されたい。それゆえ、ゲル繊維との絡み合い効果による
DNA分子挙動の拘束がDNA分子伸張に必要であるこ
とを意味する。図8は、0.5%アガロースゲル(80
0nm)の細孔サイズでさえも、チューブ様運動にT4
DNAの分子運動を拘束するのに十分に小さいことを示
す。
【0037】実施例5 漸増する強度および周波数の低周波交流電場を用いてサ
ッカロミセス・セレビシエ染色体DNA分子の伸張を行
った。サッカロミセス・セレビシエ染色体DNA (2
25−2,200kbp,バイオラッドラボラトリーズ
社製)をゲルプラグとして購入した。ゲルを剃刀で小片
(約3mm×2mm×1mm)にカットし、0.1μM
YOYO−1および4%(v/v)2−メルカプトエ
タノールを含有する0.5×TBE緩衝液中に4℃で1
週間、保存した。次いで、ゲル切片をミニ電気泳動セル
上の溶融したアガロース溶液中でインキュベートした。
アガロースのゲル化の後、アガロースゲルを、4%(v
/v)2−メルカプトエタノール、2.3mg/mlグ
ルコース、0.1mg/mlグルコースオキシダーゼ、
および0.018mg/mlカタラーゼを含有する溶液
に供した。染色体DNA分子を、1時間の定常電場(1
〜2V/cm)下でゲルプラグから伸張用アガロースゲ
ルに注入した。次いで、リザーバー中の緩衝液を新しい
緩衝液に交換し、DNA分子伸張の実験を始めた。
【0038】実施例1〜4から理解されるように、T4
DNA分子の伸張の好ましい条件は、1%アガロースゲ
ル、10Hzおよび200V/cm電場強度である。こ
の条件に加えて、電場の周波数および強度を低周波数、
低電場強度より漸増させることにより、ゲル繊維へのD
NA分子の不可逆的なトラップを防ぎながらサッカロミ
セス・セレビシエ染色体DNA分子を伸張させた。まず
1Hzの正弦波型交流電場(|100|V/cm)を1
分間印加することにより染色体DNA分子を概ね電場方
向に配向させた後、0.5Hz/sの割合で、10Hz
まで周波数を漸増させ、同時に|10|V/cm・sの
割合で200V/cmまで電場強度を漸増させながら正
弦波型交流電場を1分間印加することにより伸張させ
た。
【0039】図9A)は、サッカロミセス・セレビシエ
染色体DNA分子(約285kbp)を低周波交流電場
を用いて伸張させたときの蛍光イメージを示す。この蛍
光イメージは、3つのイメージからなり、伸張したDN
A分子の最大径は、約100μmである。図9B)は、
蛍光イメージのトレースである。図9B)の「コイル」
部分の矢印は、DNA分子のコイル部分を示す。この部
分は完全に伸張していない。図9B)の「ベント」の矢
印は、屈曲した構造を示し、この様な構造はDNAの末
端付近に現れることがある。図9A)およびB)から、
約285kbpの長鎖DNA分子が本発明の核酸分子の
伸長方法により良好に伸張されたことがわかる。
【0040】
【発明の効果】本発明の核酸分子の伸張方法によれば、
より簡便に核酸分子を伸張することが可能になり、さら
に伸張させた核酸分子を回収して再利用することが可能
になるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、実験装置の模式図である。2つのPt
電極をミニチュアセルに1.0cmまたは0.5cmの
距離をもってに配置した。任意波形発生装置により生じ
た交流電場を、高速電力増幅双極性パワーサプライによ
り適切な強度に増強し、Pt電極間に印加した。
【図2】図2は、交流電場下における1%アガロースゲ
ル中のT4DNAの伸張プロセスを示す図である。YO
YO1で染色したT4DNAの連続蛍光イメージ。0秒
において、交流電場(200V/cm,10Hz)を水
平方向にランダムコイル様状態のT4DNAに印加し
た。B)交流電場を印加後のT4DNA(Aで示したも
の)の最大径R1 のプロット。
【図3】図3は、T4DNAの外部電場の周波数fに対
する平均最大径R1 のプロットを示す図である。各分子
の最大径R1 を10秒間(黒丸)および約7秒間(白
丸)、1〜5個の異なる分子も各々の周波数で時間平均
した。水平方向の破線は、外部電場非存在下におけるラ
ンダムコイル様状態のT4DNAの平衡状態の値を示
す。
【図4】図4は、異なる外部周波数下での200V/c
mでのT4DNA の平均最大径R 1 および重心のx成分G
x の時系列を示す図である。濃い線は、R1 を示し、薄
い線は、Gx をそれぞれ示す。A)1Hz。B)10H
z。C)100Hz。
【図5】図5は、異なる電場強度で伸張したT4DNA
の平均最大径R1 および重心のx成分Gx を示す図であ
る。A)150V/cm、50V/cm、および250
V/cmの電場下でのR1 およびGx のプロット。B)
150V/cm、50V/cm、および250V/cm
の電場下でのT4DNAの蛍光イメージ。
【図6】図6は、T4DNAの外部電場の強度に対する
平均最大径R1 のプロットを示す図である。破線は、伸
張および非伸張領域の間の境界を示す。
【図7】図7は、平均最大径R1 およびT4DNAの重
心のx成分Gx の時系列を示す図である。濃い線は、R
1 を示し、薄い線は、Gx を示す。A)50V/cm、
10Hz。B)200V/cm、10Hz。C)600
V/cm、10Hz。
【図8】図8は、T4DNAのアガロースゲル濃度に対
する平均最大径R1 のプロットを示す図である。破線は
低分子溶液中のR1 である。
【図9】図9は、交流電場(200V/cm、10H
z)下での、約285kbpの長さを有する、サッカロ
ミセス・セレビシエDNAの伸張を示す図である。A)
伸張したサッカロミセス・セレビシエ染色体DNAの蛍
光イメージ。B)蛍光イメージのトレース。
【符号の説明】
1 高速電力増幅双極性パワーサプライ 2 任意波形発生装置 3 100倍油浸対物レンズ 4 30mm×40mmカバーガラス 5 Pt電極 6 アガロースゲル 7 0.5×TBE緩衝液 8 DNAサンプル
フロントページの続き Fターム(参考) 4B024 AA11 AA19 AA20 CA01 CA11 HA11 HA19 HA20

Claims (12)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 核酸分子をゲル中に配置する工程および
    ゲル中の核酸分子に低周波交流電場を印加する工程を含
    む、核酸分子の伸張方法。
  2. 【請求項2】 核酸分子の長さが、23〜5700kb
    pである、請求項1記載の方法。
  3. 【請求項3】 低周波交流電場の周波数が、1〜100
    Hzである、請求項1または2記載の方法。
  4. 【請求項4】 低周波交流電場の強度が、|10|〜|
    10000|(絶対値)V/cmである、請求項1〜3
    いずれかに記載の方法。
  5. 【請求項5】 低周波交流電場の強度を漸増させる、請
    求項1〜3いずれかに記載の方法。
  6. 【請求項6】 低周波交流電場の強度を、|10|V/
    cmから|300|(絶対値)V/cmまで漸増させ
    る、請求項5記載の方法。
  7. 【請求項7】 低周波交流電場の強度を漸増する速度
    が、|1|〜|100|(絶対値)V/cm・sであ
    る、請求項5または6記載の方法。
  8. 【請求項8】 低周波交流電場の周波数を漸増させる、
    請求項1〜7記載の方法。
  9. 【請求項9】 低周波交流電場の周波数を1Hzから2
    0Hzまで漸増させる、請求項8記載の方法。
  10. 【請求項10】 低周波交流電場の周波数を漸増する速
    度が0.01〜1Hz/sである、請求項8または9記
    載の方法。
  11. 【請求項11】 伸張した核酸分子を検出し、回収する
    工程をさらに含む、請求項1〜10いずれかに記載の方
    法。
  12. 【請求項12】 請求項1〜11いずれかに記載の方法
    により伸張されてなる核酸分子。
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