JP2003013102A - 多元系炭窒化物粉末およびその製造方法とそれを原料とする焼結体 - Google Patents

多元系炭窒化物粉末およびその製造方法とそれを原料とする焼結体

Info

Publication number
JP2003013102A
JP2003013102A JP2001202139A JP2001202139A JP2003013102A JP 2003013102 A JP2003013102 A JP 2003013102A JP 2001202139 A JP2001202139 A JP 2001202139A JP 2001202139 A JP2001202139 A JP 2001202139A JP 2003013102 A JP2003013102 A JP 2003013102A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
powder
component
weight
sintered body
constituent
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2001202139A
Other languages
English (en)
Other versions
JP4105410B2 (ja
Inventor
Mitsuo Kuwabara
光雄 桑原
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Honda Motor Co Ltd
Original Assignee
Honda Motor Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Priority to JP2001202139A priority Critical patent/JP4105410B2/ja
Application filed by Honda Motor Co Ltd filed Critical Honda Motor Co Ltd
Priority to CN 200510087663 priority patent/CN1724469A/zh
Priority to US10/482,485 priority patent/US7326273B2/en
Priority to GB0400996A priority patent/GB2392675B/en
Priority to PCT/JP2002/006483 priority patent/WO2003004712A1/ja
Priority to CNB028132939A priority patent/CN100422362C/zh
Priority to DE10297020T priority patent/DE10297020T5/de
Publication of JP2003013102A publication Critical patent/JP2003013102A/ja
Priority to US12/000,406 priority patent/US7615185B2/en
Application granted granted Critical
Publication of JP4105410B2 publication Critical patent/JP4105410B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Lifetime legal-status Critical Current

Links

Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【課題】WCやNbC等に比して硬度および靱性に優れ
た焼結体を得る。 【解決手段】56〜92重量%のWと、0.5〜7重量
%のCrと、Ti、Zr、Hfの群から選択された少な
くとも1種と、V、Nb、Taの群から選択された少な
くとも1種と、0.3〜8.2重量%のNと、Cとを構
成成分とし、かつ不可避不純物として含有されたOの割
合が0.5重量%以下である多元系炭窒化物粉末。W
と、Crと、Ti、Zr、Hfの少なくとも1種と、
V、Nb、Taの少なくとも1種とを構成成分とする合
金粉末をメカニカルアロイングにより生成した後、該合
金粉末を粉末炭素材および触媒とともに窒素ガス存在下
で熱処理することにより炭窒化して多元系炭窒化物粉末
とするその製造方法。この多元系炭窒化物粉末を焼結す
ることにより得られる焼結体。なお、多元系炭窒化物
は、Alが構成成分としてさらに化合しているものであ
ることが好ましい。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、4種以上の金属元
素、NおよびCが結合してなる多元系炭窒化物粉末およ
びその製造方法とそれを原料とする焼結体に関する。
【0002】
【従来の技術】金属粉末とセラミックス粉末がともに焼
結されることにより製造される複合材は、金属に由来す
る高靱性と、セラミックスに由来する高硬度および高強
度とを兼ね備えており、種々の分野で広汎に使用されて
いる。例えば、炭化タングステンとコバルトが焼結され
てなる炭化タングステン−コバルト系超硬合金や、炭化
チタンとモリブデンが焼結されてなる炭化チタン系サー
メットは、切削工具の刃具として採用されている。これ
らには、炭化ニオブ等がさらに配合されることもある。
【0003】ところで、複合材の原料として使用される
セラミックス粉末は、上記したような炭化タングステン
や炭化チタン、炭化ニオブ等、1種の金属元素とCとを
構成成分とする2元系炭化物セラミックスや、1種の金
属元素とNとを構成成分とする2元系窒化物セラミック
ス等である。これらはそれ自体で充分な硬度を有してい
るが、用途によってはさらに高硬度なセラミックスが希
求される場合がある。
【0004】高硬度なものとしては、ダイヤモンドや正
方晶系窒化ホウ素(c−BN)等が例示される。さら
に、近年では、Ti、AlおよびNを構成成分とするT
i−Al−N3元系セラミックスの薄膜がc−BNに匹
敵する高硬度を有することが報告されている。すなわ
ち、Ti−Al−N3元系セラミックスの硬度は、Ti
NまたはAlNの硬度に比して著しく高く、かつTiN
とAlNとがともに焼結された焼結体に比しても高い。
【0005】Ti−Al−N3元系セラミックスの薄膜
は、物理的気相成長(PVD)法または化学的気相成長
(CVD)法により作製することができる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】ダイヤモンドやc−B
Nには、耐酸化性が良好ではなく、しかも、高価である
ので複合材の製造コストの高騰を招くという不具合があ
る。そこで、化学的に安定でかつ高硬度な複合材を低コ
ストで得るためには、Ti−Al−N3元系セラミック
スのように、2種以上の金属元素とCまたはNとを構成
成分とする多元系炭窒化物粉末を原料として使用するこ
とが有効であると考えられる。
【0007】しかしながら、上記したように、PVD法
やCVD法により作製されたTi−Al−N3元系セラ
ミックスの形態は薄膜であり、粉末に関してはこれまで
のところ報告されていない。
【0008】また、PVD法やCVD法により多元系炭
窒化物粉末を製造しようとした場合、複合材の製造コス
トが高騰してしまうという不具合を招く。この理由は、
これらの方法では反応効率が低くかつ反応速度も遅いの
で、多元系炭窒化物粉末の生産効率が低いからである。
さらに、これらの方法には、粉末が得られるような反応
条件を実験的に求める必要があり、そのために長時間を
要するとともに煩雑であるという不具合が顕在化してい
る。
【0009】Ti−Al−N3元系セラミックス粉末を
作製する別の方法としては、TiとAlの混合粉末を窒
化することが想起される。しかしながら、この場合、T
iNとAlNとの混合粉末が得られるのみであり、Ti
−Al−N3元系セラミックス粉末を得ることはできな
い。
【0010】そこで、Ti−Al2元系合金を窒化する
ことが想起される。しかしながら、この合金は、その表
面が空気中の酸素で酸化されることにより形成された酸
化物膜で被覆されている。このため、Ti−Al2元系
合金を内部まで窒化させることが著しく困難であるの
で、得られた粉末を原料としても複合材の硬度の向上は
さほど認められない。
【0011】このように、2種以上の金属元素とCまた
はNとを構成成分とする多元系炭窒化物粉末を製造する
ことには著しい困難を伴っており、このため、このよう
な多元系炭窒化物粉末は未だに得られていない。
【0012】本発明は上記した問題を解決するためにな
されたもので、2元系セラミックスを原料とする焼結体
に比して高硬度および高靱性を有する焼結体を得ること
が可能な多元系炭窒化物粉末およびその製造方法とそれ
を原料とする焼結体を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】前記の目的を達成するた
めに、本発明は、56〜92重量%のWと、0.5〜7
重量%のCrと、Ti、Zr、Hfの群から選択された
少なくとも1種と、V、Nb、Taの群から選択された
少なくとも1種と、0.3〜8.2重量%のNと、Cと
を構成成分とし、かつ不可避不純物として含有されたO
の割合が0.5重量%以下であることを特徴とする。
【0014】すなわち、本発明に係る多元系炭窒化物粉
末とは、例えば、W−Cr−Ti−V−N−CやW−C
r−Ti−Zr−V−Nb−N−C等のように表される
5元系以上の炭窒化物の粉末である。
【0015】このような多元系炭窒化物粉末を原料とす
る焼結体は、WCやNbC等の2元系セラミックスを原
料とする焼結体に比して高硬度および高靱性を示す。ま
た、強度や剛性は略同等である。すなわち、強度や剛性
を損なうことなく硬度および靱性を向上させることがで
きる。
【0016】上記した金属の表面には、該金属が空気中
の酸素で酸化されることにより酸化物膜が形成されてい
る。このため、多元系炭窒化物粉末には、不可避不純物
としてのOが含有されている。このOの割合は、0.5
重量%以下であることが好ましい。0.5重量%を超え
ると、硬度や靱性が低い焼結体となることがあるからで
ある。
【0017】この多元系炭窒化物粉末は、さらに、3.
0重量%以下のAlを構成成分とすることが好ましい。
この場合、焼結体の硬度を一層向上させることができる
からである。
【0018】そして、この多元系炭窒化物粉末の比重
は、10以上であることが好ましい。この場合、焼結体
に応力が加えられた際に焼結粒子が振動し難いので応力
波が伝播することが著しく抑制される。このため、焼結
体が疲労強度に優れるようになるからである。
【0019】また、本発明は、Wを構成成分とする物質
の粉末と、Crを構成成分とする物質の粉末と、Ti、
ZrまたはHfを構成成分とする物質の粉末を少なくと
も1種と、V、NbまたはTaを構成成分とする物質の
粉末を少なくとも1種と、これら100重量%に対して
3.0〜11.5重量%の割合で添加された粉末炭素材
と、炭窒化を促進する触媒とを混合し、かつ、Wと、T
i、Zr、Hfの少なくとも1種と、V、Nb、Taの
少なくとも1種とを構成成分とする合金粉末をメカニカ
ルアロイングにより生成する工程と、前記合金粉末を含
む混合粉末を窒素ガス存在下で熱処理して前記合金粉末
を炭窒化することにより多元系炭窒化物粉末とする工程
と、を有することを特徴とする。
【0020】本発明に係る製造方法においては、熱処理
が施される際、まず、合金粉末の表面に存在する酸化物
膜が粉末炭素材により還元される。このため、該合金粉
末の表面が極めて活性な状態となる。したがって、該合
金粉末を表面から内部に亘って容易かつ簡便に、しか
も、大量に炭窒化することができる。このため、多元系
炭窒化物粉末を低コストで製造することができる。
【0021】また、粉末炭素材は、酸化物膜を還元する
ことにより自身が酸化されると、COまたはCO2に変
化する。これらはガスであり、したがって、反応炉外へ
と容易かつ速やかに排出することができる。
【0022】なお、粉末炭素材の添加割合が3.0重量
%未満では還元作用に乏しくなり、11.5重量%以上
では遊離炭素が生成するので硬度の低い焼結体が得られ
ることがある。
【0023】粉末炭素材は、このように還元剤として作
用する他、C源としても作用する。
【0024】そして、Alを構成成分とする物質を3重
量%以下添加して前記混合を行うことが好ましい。この
場合、上記したように、硬度に優れる焼結体を得ること
ができるからである。
【0025】一方、触媒の好適な例としては、アルカリ
土類金属、第VIIA族元素または第VIII族元素を
挙げることができる。
【0026】いずれの場合においても、熱処理を施した
後、得られた多元系炭窒化物粉末を酸溶液で処理するこ
とが好ましい。これにより未反応の還元剤や触媒、酸化
された還元剤や触媒が酸溶液中に溶出されるので、高純
度の多元系炭窒化物粉末を得ることができるからであ
る。
【0027】さらに、本発明は、56〜92重量%のW
と、0.5〜7重量%のCrと、Ti、Zr、Hfの群
から選択された少なくとも1種と、V、Nb、Taの群
から選択された少なくとも1種と、0.3〜8.2重量
%のNと、Cとを構成成分とし、かつ不可避不純物とし
て含有されたOの割合が0.5重量%以下である多元系
炭窒化物を65重量%以上含有することを特徴とする。
【0028】すなわち、本発明に係る焼結体は、上記し
た多元系炭窒化物粉末のみが焼結されたものであっても
よいし、この多元系炭窒化物粉末と金属粉末とが互いに
焼結された複合材であってもよい。
【0029】この焼結体は、上記したように、WCやN
bC等の2元系セラミックスを原料とする焼結体と略同
等の強度や剛性を示し、また、著しく高い硬度および靱
性を示す。
【0030】そして、多元系炭窒化物がさらに3.0重
量%以下のAlを構成成分としている場合、焼結体は、
一層優れた硬度を示すようになる。
【0031】なお、焼結体には、さらに金属が含有され
ていてもよい。この金属の好適な例としては、Fe、N
i、Co、またはこれらのうちの少なくとも1種を構成
成分とする合金を挙げることができる。
【0032】
【発明の実施の形態】以下、本発明に係る多元系炭窒化
物粉末およびその製造方法につきそれを原料とする焼結
体との関係で好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参
照して詳細に説明する。
【0033】本実施の形態に係る焼結体は、多元系炭窒
化物粉末を原料とする。ここで、多元系炭窒化物粉末と
は、少なくとも、Wと、Crと、Ti、Zr、Hfの群
から選択された1種以上と、V、Nb、Taの群から選
択された1種以上、すなわち、4種以上の金属元素と、
NおよびCとが互いに化合してなる6元系以上の炭窒化
物の粉末である。
【0034】Wは、多元系炭窒化物粉末の主成分であ
る。周知のように、Wは原子量が大きい。このため、多
元系炭窒化物粉末に高比重をもたらす。比重が高い粉末
を原料とする焼結体は、高い引張強度および疲労強度を
示す。粉末の比重が大きいので、焼結体に応力が加えら
れた際に焼結粒子が振動し難く、したがって、応力波が
伝播することが著しく抑制されるからである。このよう
な観点から、多元系炭窒化物粉末の比重は10以上であ
ることが好ましい。また、Wは高剛性でもあるので、焼
結体の剛性も向上させることができる。
【0035】多元系炭窒化物粉末におけるWの組成比
は、56〜92重量%に設定される。56重量%未満で
あると、多元系炭窒化物の比重が低くなり、その結果、
焼結体が強度に乏しいものとなる。また、焼結体の剛性
も低下する。一方、92重量%を超えると、焼結体が硬
度に乏しいものとなる。
【0036】Crは、多元系炭窒化物粉末の耐食性およ
び耐酸化性を向上させる。両特性の向上は、特に高温に
おいて顕著に認めることができる。この理由は、Crと
CおよびNとの結合を解離するための解離エネルギが大
きく、したがって、多元系炭窒化物粉末の化学的な安定
性を著しく高めるためであると考えられる。
【0037】このように、焼結体の耐酸化性が向上して
いるので、例えば、この焼結体を金型として使用するた
めに該焼結体に対して放電加工を行う場合、放電加工に
伴って形成される酸化変質層の厚みが極めて小さくな
る。通常、酸化変質層は焼結体から除去する必要がある
が、この場合、厚みが極めて小さいので、その除去を著
しく容易に行うことができる。また、用途によっては、
焼結体から酸化変質層の除去を行うことなく使用するこ
ともできる。
【0038】なお、多元系炭窒化物粉末におけるCrの
組成比は、0.5〜7重量%に設定される。0.5重量
%未満であると、耐食性や耐酸化性を向上させる効果が
乏しくなる。また、7重量%を超えると、焼結体の剛性
や強度が低下してしまうことがある。
【0039】Ti、ZrまたはHfは、WおよびCrと
幅広い組成範囲に亘って金属間化合物(合金)を形成す
る。その一方で、Ti、ZrまたはHfは、Nとともに
化学的に安定な窒化物を形成する。このため、例えば、
W−Cr−Ti合金等は、容易に窒化することができ
る。すなわち、Ti、ZrまたはHfは、Nが化合する
ことを容易にするための成分である。
【0040】多元系炭窒化物粉末におけるTi、Zrま
たはHfの好適な組成比は、互いに異なる。具体的に
は、Tiのみを構成成分とする場合には0.5〜32重
量%、Zrのみを構成成分とする場合には1〜38重量
%、Hfのみを構成成分とする場合には2〜42重量%
である。組成比が上記した値よりも小さいと、多元系炭
窒化物粉末におけるNの組成比も少なくなるので、焼結
体としては強度および靱性が乏しいものとなる。また、
上記した値よりも大きいと、W等その他の元素の組成比
が相対的に小さくなるので硬度および剛性が乏しい焼結
体となる。
【0041】TiとZr等、2種以上を使用する場合に
は、組成比を上記した値よりも小さくすることができ
る。例えば、Tiの組成比を0.5重量%とし、かつZ
rの組成比を0.5重量%としてもよい。要するに、2
種以上を使用する場合、焼結体の靱性、硬度および剛性
が確保されるようにそれらの組成比を設定するようにす
ればよい。
【0042】V、NbまたはTaは、焼結体の硬度およ
び靱性を向上させる成分である。すなわち、これらは、
W、CrおよびTi、Zr、Hfの双方に固溶して両者
と強固に結合し、その結果、焼結体に高硬度をもたら
す。また、これらが固溶することによって、化合可能な
Nの組成比が大きくなる。このため、焼結体の靱性が向
上する。
【0043】多元系炭窒化物粉末におけるV、Nbまた
はTaの好適な組成比もまた互いに異なる。すなわち、
Vのみを構成成分とする場合には0.5〜11重量%、
Nbのみを構成成分とする場合には1.2〜20重量
%、Taのみを構成成分とする場合には2〜39重量%
である。組成比が上記した値よりも小さいと、焼結体の
強度や靱性が低下する。また、上記した値よりも大きい
と、剛性が乏しい焼結体となる。
【0044】勿論、VとNb等、2種以上を使用する場
合には、各元素の組成比を上記した値よりも小さくする
ことができる。例えば、Vの組成比を0.5重量%と
し、かつNbの組成比を1.0重量%としてもよい。要
するに、この場合においても、2種以上を使用する場合
には、焼結体の靱性、硬度および剛性が確保されるよう
にそれらの組成比を設定するようにすればよい。
【0045】さらに、上記した金属元素の他、3.0重
量%以下のAlを構成成分とすることが好ましい。Al
が存在する場合、不可避不純物であるOはこのAlと化
合する。このため、WやTi、Zr、Hf、V、Nb、
Taが酸化することが著しく抑制されるので、焼結体の
硬度、強度、靱性および剛性等が一層向上するからであ
る。なお、Alの組成比が3.0重量%を超えると、焼
結体の硬度、強度、靱性および剛性がいずれも低下す
る。
【0046】Nは、Wと、Crと、Ti、Zr、Hfの
群から選択された少なくとも1種と、V、Nb、Taの
群から選択された少なくとも1種とを構成成分とする合
金の粉末が熱処理される際の雰囲気ガスに含まれた窒素
ガスを源として供給されたものである。後述するよう
に、粉末炭素材および窒素ガスの存在下で前記合金に対
し熱を加えることにより、多元系の炭窒化物セラミック
ス粉末が得られる。
【0047】Nの組成比は、0.3〜8.2重量%に設
定される。Nの組成比がこの範囲を外れると、焼結体の
硬度が低くなる。
【0048】Cは、上記したように、粉末炭素材を源と
して供給されたものである。Cが構成成分として含まれ
る多元系炭窒化物粉末を原料とすることにより、高硬度
な焼結体を得ることができる。
【0049】また、この多元系炭窒化物粉末は、不可避
不純物としてのOを含有する。このOの割合は、0.5
重量%以下に設定される。0.5重量%を超えると、焼
結体の硬度および強度が低くなることがあるからであ
る。
【0050】本実施の形態に係る焼結体としては、上記
した多元系炭窒化物粉末のみが焼結されることにより得
られたものを例示することができる。このような焼結体
は、WC等の2元系セラミックス粉末を原料とする焼結
体に比して硬度、強度および剛性に著しく優れる。具体
的には、WC焼結体のビッカース硬度が1800程度で
あるのに対し、W−Cr−Ti−Zr−Nb−Al−C
−N系炭窒化物粉末が焼結されてなる焼結体は2800
以上を示す。
【0051】また、本実施の形態に係る焼結体は、多元
系炭窒化物粉末と金属粉末とがともに焼結されることに
より得られた複合材であってもよい。金属粉末として
は、例えば、複合材製金型や複合材製切削用刃具の原料
として一般的なFe、Ni、Co、またはこれらのうち
の少なくとも1種を構成成分とする合金等を選定するこ
とができる。この場合においても、セラミックスと金属
とが同一組成比である複合材に比して著しく優れた硬
度、強度および剛性を示す。
【0052】なお、焼結体における多元系炭窒化物の組
成比は、65重量%以上に設定される。65重量%未満
であると、セラミックスの組成比が相対的に少なくなる
ので焼結体の硬度、強度、剛性等が低くなる。
【0053】焼結体の原料である多元系炭窒化物粉末
は、以下のようにして製造することができる。
【0054】本実施の形態に係る多元系炭窒化物粉末の
製造方法のフローチャートを図1に示す。この製造方法
は、原料粉末、粉末炭素材、触媒を混合するメカニカル
アロイング工程S1と、得られた混合粉末を熱処理する
熱処理工程S2と、熱処理により得られた多元系炭窒化
物粉末を酸溶液で処理する酸処理工程S3とを有する。
【0055】まず、メカニカルアロイング工程S1にお
いて、原料粉末、粉末炭素材および触媒を混合する。
【0056】原料粉末としては、Wを構成成分とする物
質の粉末と、Crを構成成分とする物質の粉末と、T
i、ZrまたはHfを構成成分とする物質の粉末を少な
くとも1種と、V、NbまたはTaを構成成分とする物
質の粉末を少なくとも1種とが選定される。すなわち、
原料粉末は、W源と、Cr源と、Ti源、Zr源または
Hf源の少なくとも1種と、V源、Nb源またはTa源
の少なくとも1種とを含有する。
【0057】W源は、W自体、すなわち、W粉末であっ
てもよいしWの化合物の粉末であってもよい。他の金属
元素源も同様に、純物質の粉末であってもよいし化合物
の粉末であってもよい。化合物としては、熱処理工程S
2において容易に酸化または還元されるものが好適であ
る。このようなものとしては、水素化チタンや水素化バ
ナジウム等の水素化合物を例示することができる。
【0058】原料粉末に含有されたW源のWと、Cr源
のCrと、Ti源のTi、Zr源のZrまたはHf源の
Hfの少なくとも1種と、V源のV、Nb源のNbまた
はTa源のTaの少なくとも1種とは、メカニカルアロ
イングにより容易に合金を生成する。
【0059】Alを多元系炭窒化物のさらなる構成成分
とする場合、Alを構成成分とする物質、すなわち、A
l源となるものを上記の原料粉末にさらに添加すればよ
い。Al源としては、例えば、Al粉末を例示すること
ができる。なお、Al源の添加割合は3重量%以下とす
る。3重量%よりも多く添加すると、多元系炭窒化物に
おけるAlの組成比が3重量%を超えるようになるの
で、その結果、焼結体の硬度、強度、靱性および剛性が
いずれも低下する。
【0060】粉末炭素材は、多元系炭窒化物のC源とし
て作用する。その一方で、粉末炭素材は、上記したW
源、Cr源、Ti源、Zr源、Hf源、V源、Nb源、
Ta源、Al源の表面に形成された酸化物膜を還元す
る。すなわち、通常、これらの金属ないし水素化物等の
表面は、空気中の酸素で酸化されることにより形成され
た酸化物膜で被覆されている。粉末炭素材は、熱処理工
程S2が行われる際に、自身が酸化されることによって
この酸化物膜を還元する。
【0061】ここで、粉末炭素材の添加割合は、0.1
重量%〜11.6重量%の範囲内に設定される。0.1
重量%未満では還元剤としての能力に乏しい。また、1
1.6重量%を超えると遊離炭素が生成されるようにな
る。しかも、Al粉末が添加されている場合には、Al
43も生成されるようになる。このようなものを含有す
る焼結体は、硬度および靱性が乏しくなる。
【0062】触媒は、上記した金属元素を構成成分とす
る合金の炭窒化を促進するためのものである。触媒の好
適な例としては、アルカリ土類金属、第VIIA族元
素、第VIII族元素を挙げることができる。このう
ち、第VIIA族元素または第VIII族元素を使用す
ることが好ましい。これらは、後述する酸処理工程S3
において酸溶液中に溶出され易く、したがって、高純度
な多元系炭窒化物粉末を得ることができるからである。
なお、第VIII族元素としてはFe、Co、Niが例
示され、第VIIA族元素としてはMnが例示される。
このうち、上記金属の窒化または炭窒化を促進する作用
に最も優れていることから、Mnを使用することが好ま
しい。
【0063】触媒の好ましい添加割合は、触媒の種類に
よって異なるので一義的には決定されない。例えば、M
nを使用する場合には3重量%以下、Fe、Co、Ni
を使用する場合には5重量%以下とすることが好まし
い。前記した割合を超えて触媒を添加すると、いずれの
場合においても、未反応の触媒の残留量またはこれらの
窒化物や炭窒化物の生成量が多くなる。したがって、酸
処理工程S3でこれらを溶出することが容易ではなくな
るので、焼結体の硬度を向上することが容易ではなくな
る。
【0064】触媒としては、アルカリ土類金属、第VI
IA族元素または第VIII族元素の純物質だけでな
く、化合物も使用することができる。例えば、Fe、N
iの粉末に代替してカルボニル鉄、カルボニルニッケル
の粉末を使用するようにしてもよい。このような化合物
粉末は、純物質粉末に比して粒径が著しく小さい。この
ため、混合粉末中に均一に分散されるので、純物質粉末
に比して少ない添加量で窒化または炭窒化を促進するこ
とができる。したがって、省資源化を図ることができ、
結局、コスト的に有利となる。
【0065】さらに、触媒は、アルカリ土類金属、第V
IIA族元素、第VIII族元素の群から選択された2
種以上の元素を構成成分とする合金であってもよい。こ
のようなものとしては、Mg−NiやCa−Co、Mg
−Fe等を挙げることができる。
【0066】以上の原料粉末、粉末炭素材および触媒の
混合は、Wと、Crと、Ti、Zr、Hfのうちの少な
くとも1種と、V、Nb、Taのうちの少なくとも1種
とがメカニカルアロイングにより合金を生成するような
条件下で行う。具体的には、アトライタを構成する水冷
容器内に原料粉末、粉末炭素材、触媒および鋼球を収容
して該水冷容器を封止し、該水冷容器内に挿入された回
転翼を回転動作させる。これにより金属粉末同士が高エ
ネルギ下で摩砕および圧接され、その結果、合金粉末が
生成される。また、合金粉末中に還元剤および触媒が略
均一に分散される。
【0067】このようにして得られた合金粉末を含む混
合粉末を、次いで、熱処理工程S2において、窒素ガス
存在下で熱処理する。なお、窒素ガスは、合金粉末を炭
窒化可能な程度に雰囲気ガスに含まれていればよい。す
なわち、窒素ガスのみを雰囲気ガスとしてもよく、窒素
ガスと他の不活性ガス、例えば、アルゴンガス等との混
合ガスを雰囲気ガスとしてもよい。
【0068】また、熱処理の温度は、1000℃〜16
00℃とすることが好ましい。1000℃未満では炭窒
化が効率的に進行しない。また、1600℃を超えても
炭窒化の進行速度は向上しないので、多元系セラミック
スの製造コストが高騰してしまう。
【0069】熱処理工程S2においては、まず、合金粉
末の表面に形成された酸化物膜が還元される。すなわ
ち、合金粉末の表面は、該合金粉末を構成する金属が空
気中の酸素により酸化されて形成された酸化物膜で被覆
されている。この酸化物膜が粉末炭素材で還元され、活
性な合金粉末となる。
【0070】この還元の際、粉末炭素材は、酸化物膜か
ら酸素を奪取することにより自身は酸化されてCOまた
はCO2となる。これらはともにガスであるので、雰囲
気ガスに同伴させることにより反応炉外に容易かつ速や
かに排出することができる。すなわち、酸化物が残留す
ることはない。このため、高純度の多元系炭窒化物粉末
を得ることができる。
【0071】酸化物膜が還元されることにより、合金粉
末は、その表面が極めて活性な状態となる。このため、
余剰の粉末炭素材がC源として作用するとともに雰囲気
ガスに含まれる窒素がN源として作用し、その結果、合
金粉末が表面から内部に亘り炭窒化される。
【0072】熱処理工程S2に際しては、触媒も酸化さ
れることがある。すなわち、熱処理工程S2により得ら
れた多元系炭窒化物粉末中には、未反応の触媒および触
媒の酸化物が不純物として混在している。これらの不純
物が混在した多元系炭窒化物粉末を原料として焼結体を
製造した場合、該焼結体は低硬度を示すことがある。
【0073】そこで、次に、酸処理工程S3において、
不純物を多元系炭窒化物粉末から分離除去することが好
ましい。具体的には、得られた多元系炭窒化物粉末を酸
溶液中に浸漬することにより、不純物を溶出する。
【0074】この酸溶液には、フッ化水素酸またはホウ
フッ化水素酸が含まれていることが好ましい。これらは
上記した不純物の溶解能に優れ、したがって、多元系炭
窒化物粉末から不純物を効率よく分離除去することがで
きるからである。
【0075】なお、この際には、多元系炭窒化物粉末を
構成する金属元素の一部も酸化されることがある。上記
したように、Oの割合が0.5重量%を超えている粉末
を原料とする焼結体は硬度が低下する。したがって、酸
溶液の濃度や浸漬時間はOの割合が0.5重量%を超え
ないように設定される。
【0076】ろ過を行ってろ液と粉末とを分離した後、
粉末を中和処理して水洗することにより、高純度の多元
系炭窒化物粉末が得られるに至る。
【0077】この多元系炭窒化物粉末を原料とする焼結
体は、該多元系炭窒化物粉末が表面から内部に亘って窒
化または炭窒化されているので、高硬度を示す。また、
多元系炭窒化物粉末から不純物が除去されているので、
焼結体の相対密度が理論密度に近づく。このため、該焼
結体は、強度および靱性にも優れるようになる。
【0078】このように、W源と、Cr源と、Ti源、
Zr源またはHf源の少なくとも1種と、V源、Nb源
またはTa源の少なくとも1種と、必要に応じてはAl
源と、粉末炭素材と、触媒とを混合した後、窒素ガス存
在下で熱処理することにより多元系炭窒化物粉末を容易
かつ簡便に製造することができる。しかも、PVD法や
CVD法に比して反応効率が高くかつ反応速度も高い。
このため、1バッチ当たりの生産量が多く、したがっ
て、焼結体の製造コストを低廉化することもできる。
【0079】この多元系炭窒化物粉末は、チップやバイ
ト等の切削加工用刃具や金型等の好適な原料として使用
することができる。すなわち、この多元系炭窒化物粉末
を単体で、あるいは金属粉末とともに成形した後に焼結
させることにより、高硬度の切削加工用刃具や金型等を
得ることができる。
【0080】
【実施例】1.焼結体の特性 W粉末と、Cr粉末と、水素化チタン粉末、水素化ジル
コニウム粉末またはHf粉末のうちの少なくとも1つ
と、水素化バナジウム粉末、Nb粉末またはTa粉末の
うちの1つとを原料粉末とし、これら100重量%に対
してカーボンブラックを3.0〜11.5重量%の割合
で添加した。なお、原料粉末には、必要に応じてAlを
3重量%以内で添加した。さらに、Mg、Mn、Niを
触媒として添加し、原料粉末とともに混合した。この混
合は、Wと、Crと、Ti、Zr、Hfのうちの1つ以
上と、V、Nb、Taのうちの1つ以上と、Alが添加
されている場合にはAlとがメカニカルアロイングによ
って合金化する条件下で行った。
【0081】このようにして得られた混合粉末中の合金
粉末を、窒素雰囲気下において図2に示すパターンで熱
処理することにより炭窒化させて種々の多元系炭窒化物
粉末を得た。
【0082】さらに、この多元系炭窒化物粉末を王水ま
たはフッ酸と硝酸の混合溶液に浸漬し、未反応のMg、
Mn、Niやこれらの酸化物を酸溶液中に溶出させるこ
とによって精製した。この多元系炭窒化物粉末を焼結し
て焼結体とした後、各焼結体のビッカース硬度を測定し
た。これらをそれぞれ実施例1〜28、比較例1〜4と
する。
【0083】実施例1〜28、比較例1〜4の各焼結体
における各構成成分の組成比、ビッカース硬度(Hv)
および縦弾性率を図3に併せて示す。なお、縦弾性率の
値が大きいものほど高剛性であることを表す。この図3
から、実施例1〜28の各焼結体が著しく高い硬度およ
び剛性を示すこと、Wの組成比が62重量%未満である
場合には焼結体の硬度が低くなることが明らかである。
また、Alを添加することによって焼結体の硬度が向上
することも諒解される。
【0084】また、実施例26の粉末とCo粉末とを9
0:10(重量比、以下同じ)または93:7の割合で
混合した後、この混合粉末を焼結して複合焼結体とした
(以下、各々を実施例焼結体1、2という)。その一方
で、比較のため、WC粉末およびCo粉末が90:10
で混合された混合粉末と、WC粉末、TaC粉末、Nb
C粉末およびCo粉末が90:1:2:7で混合された
混合粉末から複合焼結体をそれぞれ作製した(以下、各
々を比較例焼結体1、2という)。そして、各複合焼結
体につきビッカース硬度、抗折強度および破壊靱性値を
測定した。
【0085】具体的には、複合焼結体を中央断面で切断
して切断面を鏡面仕上げした後、該切断面のビッカース
硬度を測定したところ、実施例焼結体1では2400〜
2500、実施例焼結体2では2400〜3000であ
った。これに対し、比較例焼結体1では1300〜13
40、比較例焼結体2では1550〜1580と、いず
れも実施例焼結1、2に比して小さかった。
【0086】また、JISの抗折強度測定法に規定され
た試験片を複合焼結体から切り出して抗折強度を測定し
たところ、実施例焼結体1、2ではそれぞれ2.9GP
a、2.4GPaであったのに対し、比較例焼結体1、
2ではそれぞれ2.8GPa、2.2GPaと、抗折強
度も実施例焼結体1、2が優れていることが確認され
た。
【0087】さらに、IF法に従って破壊靱性値を測定
したところ、実施例焼結体1、2ではそれぞれ20MP
am1/2、13MPam1/2であったのに対し、比較例焼
結体1、2ではそれぞれ14MPam1/2、7MPam
1/2と著しく小さい値を示した。
【0088】以上の結果から、多元系炭窒化物粉末を原
料とすることにより、強度を損なうことなく高硬度かつ
高靱性の焼結体を得ることができることが明らかであ
る。
【0089】これとは別に、縦弾性率についても測定を
行ったところ、実施例焼結体1、2では540GPa、
510GPa、比較例焼結体1、2では570GPa、
610GPaと、比較例焼結体1、2の方が若干高い値
を示した。しかしながら、実施例焼結体1、2の縦弾性
率(剛性)は、加工用刃具や金型として使用する場合に
は充分な値である。
【0090】2.切削用刃具としての切削能 実施例26の多元系炭窒化物粉末と、TaC粉末と、N
bC粉末と、Co粉末とを91:1:1:7の割合で混
合した後に焼結することにより、内接円が12.7mm
でかつ厚みが4.76mmの実施例ネガティブチップを
得た。比較のため、多元系炭窒化物粉末に代替してWC
粉末を使用したことを除いては同様にして同一寸法の比
較例ネガティブチップ1を作製した。
【0091】そして、各ネガティブチップを使用して、
AC8B材(ハイシリコンアルミニウム合金材)または
FC250材(鋳鉄材)に対し0.26mm/回転で切
削速度を種々変化させながら深さ2mmの穴を連続的に
設け、切削速度と摩耗量が0.3mmとなるまでの時間
との関係を調べた。結果を図4、図5にそれぞれ示す。
これらの図から、実施例ネガティブチップの方が著しく
耐摩耗性に優れ、長寿命であることが明らかである。
【0092】また、比較例ネガティブチップ1では、加
工が進行するにつれて構成刃先が形成され、その結果、
穴の寸法精度も低下した。これに対して、実施例ネガテ
ィブチップでは、加工の最中には構成刃先の形成が認め
られず、精度よく穴を設けることができた。
【0093】さらに、JIS P10相当材の表面にT
iN、Al23、TiC、TiCN、TiNの合計5層
がこの順序で形成された比較例ネガティブチップ2と、
JIS P10相当材の表面にTi−Al−N3元系窒
化物からなる層が形成された比較例ネガティブチップ3
(ともに市販品)を準備し、ロックウェル硬度が48で
あるSCM435材(鋼材)に対して直径2mmの穴を
連続的に設ける切削試験を行い、切削長に対する逃げ面
の摩耗量を調べた。切削条件は、切削速度を230mm
/分、送り速度を0.26mm/回転とした。結果を、
上記実施例ネガティブチップと併せて図6に示す。
【0094】図6から、実施例ネガティブチップでは、
表面に硬質層が形成されていないのにも関わらず、比較
例ネガティブチップ2、3に比して摩耗量が少ないこ
と、すなわち、耐摩耗性に優れ長寿命であることが明ら
かである。この理由は、実施例ネガティブチップが、解
離エネルギの大きい多元系炭窒化物セラミックスを原材
料としているためであると考えられる。
【0095】
【発明の効果】以上説明したように、本発明に係る多元
系炭窒化物粉末によれば、W、Crを含む4種以上の金
属元素と、NおよびCを構成成分としている。このた
め、この粉末を原料として得られる焼結体は、単一金属
の窒化物または炭窒化物である2元系窒化物セラミック
ス粉末または2元系炭窒化物セラミックス粉末を原料と
して得られる焼結体に比して高硬度を示すという効果が
達成される。
【0096】また、本発明に係る多元系炭窒化物粉末の
製造方法によれば、4種以上の金属をメカニカルアロイ
ングにより合金化し、この合金の表面に形成された酸化
物膜を還元した後に炭窒化を行うようにしている。この
ため、合金をその表面から内部に亘り確実に炭窒化する
ことができ、結局、容易かつ簡便に、しかも、低コスト
で多元系炭窒化物粉末を得ることができるという効果が
達成される。
【0097】さらに、本発明に係る焼結体によれば、上
記した多元系炭窒化物粉末を原料としているので高比重
である。したがって、応力が加えられた際に応力波が伝
播し難いので、強度および剛性を確保しながら硬度と靱
性を向上させることができるという効果が達成される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施の形態に係る多元系炭窒化物粉末の製造
方法のフローチャートである。
【図2】前記多元系炭窒化物粉末を得る際の熱処理工程
における焼成パターンである。
【図3】実施例1〜28および比較例1〜4の焼結体に
おける各成分の組成と特性とを示す図表である。
【図4】多元系炭窒化物粉末を主成分とするネガティブ
チップと、WCを主成分とするネガティブチップとの、
AC8B材を被削材とした際の切削速度と寿命との関係
を示すグラフである。
【図5】多元系炭窒化物粉末を主成分とするネガティブ
チップと、WCを主成分とするネガティブチップとの、
FC250材を被削材とした際の切削速度と寿命との関
係を示すグラフである。
【図6】多元系炭窒化物粉末を主成分とするネガティブ
チップと、表面に硬質層がそれぞれ形成されたネガティ
ブチップとの、SCM435材を被削材とした際の切削
速度と寿命との関係を示すグラフである。

Claims (11)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】56〜92重量%のWと、0.5〜7重量
    %のCrと、Ti、Zr、Hfの群から選択された少な
    くとも1種と、V、Nb、Taの群から選択された少な
    くとも1種と、0.3〜8.2重量%のNと、Cとを構
    成成分とし、かつ不可避不純物として含有されたOの割
    合が0.5重量%以下であることを特徴とする多元系炭
    窒化物粉末。
  2. 【請求項2】請求項1記載の粉末において、さらに、
    3.0重量%以下のAlを構成成分としたことを特徴と
    する多元系炭窒化物粉末。
  3. 【請求項3】請求項1または2記載の粉末において、当
    該粉末の比重が10以上であることを特徴とする多元系
    炭窒化物粉末。
  4. 【請求項4】Wを構成成分とする物質の粉末と、Crを
    構成成分とする物質の粉末と、Ti、ZrまたはHfを
    構成成分とする物質の粉末を少なくとも1種と、V、N
    bまたはTaを構成成分とする物質の粉末を少なくとも
    1種と、これら100重量%に対して3.0〜11.5
    重量%の割合で添加された粉末炭素材と、炭窒化を促進
    する触媒とを混合し、かつ、Wと、Ti、Zr、Hfの
    少なくとも1種と、V、Nb、Taの少なくとも1種と
    を構成成分とする合金粉末をメカニカルアロイングによ
    り生成する工程と、 前記合金粉末を含む混合粉末を窒素ガス存在下で熱処理
    して前記合金粉末を炭窒化することにより多元系炭窒化
    物粉末とする工程と、 を有することを特徴とする多元系炭窒化物粉末の製造方
    法。
  5. 【請求項5】請求項4記載の製造方法において、さら
    に、Alを構成成分とする物質を3重量%以下添加して
    前記混合を行うことを特徴とする多元系炭窒化物粉末の
    製造方法。
  6. 【請求項6】請求項4または5記載の製造方法におい
    て、アルカリ土類金属、第VIIA族元素、第VIII
    族元素を含有する物質またはこれらの群から選択された
    2種以上の元素を構成成分とする合金の少なくともいず
    れか1つの粉末を前記触媒とすることを特徴とする多元
    系炭窒化物粉末の製造方法。
  7. 【請求項7】請求項4〜6のいずれか1項に記載の製造
    方法において、さらに、前記多元系炭窒化物粉末を酸溶
    液で処理する工程を有することを特徴とする多元系炭窒
    化物粉末の製造方法。
  8. 【請求項8】56〜92重量%のWと、0.5〜7重量
    %のCrと、Ti、Zr、Hfの群から選択された少な
    くとも1種と、V、Nb、Taの群から選択された少な
    くとも1種と、0.3〜8.2重量%のNと、Cとを構
    成成分とし、かつ不可避不純物として含有されたOの割
    合が0.5重量%以下である多元系炭窒化物を65重量
    %以上含有することを特徴とする焼結体。
  9. 【請求項9】請求項8記載の焼結体において、前記多元
    系炭窒化物がさらに3.0重量%以下のAlを構成成分
    としていることを特徴とする焼結体。
  10. 【請求項10】請求項7〜9のいずれか1項に記載の焼
    結体において、当該焼結体が金属を含有することを特徴
    とする焼結体。
  11. 【請求項11】請求項10記載の焼結体において、前記
    金属は、Fe、Ni、Co、またはこれらのうちの少な
    くとも1種を構成成分とする合金であることを特徴とす
    る焼結体。
JP2001202139A 2001-07-03 2001-07-03 多元系炭窒化物粉末およびその製造方法とそれを原料とする焼結体 Expired - Lifetime JP4105410B2 (ja)

Priority Applications (8)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2001202139A JP4105410B2 (ja) 2001-07-03 2001-07-03 多元系炭窒化物粉末およびその製造方法とそれを原料とする焼結体
US10/482,485 US7326273B2 (en) 2001-07-03 2002-06-27 Multi-element ceramic powder and method for preparation thereof, and sintered compact and method for preparation thereof
GB0400996A GB2392675B (en) 2001-07-03 2002-06-27 Multicomponent ceramics powder, method of manufacturing multicomponent ceramics powder and sintered body
PCT/JP2002/006483 WO2003004712A1 (en) 2001-07-03 2002-06-27 Multi-element ceramic powder and method for preparation thereof, and sintered compact and method for preparation thereof
CN 200510087663 CN1724469A (zh) 2001-07-03 2002-06-27 多元系陶瓷粉末的制造方法和烧结体的制造方法
CNB028132939A CN100422362C (zh) 2001-07-03 2002-06-27 多元系陶瓷粉末及其制造方法、和烧结体及其制造方法
DE10297020T DE10297020T5 (de) 2001-07-03 2002-06-27 Mehrkomponentenkeramikpulver, Verfahren zum Herstellen von Mehrkomponentenkeramikpulver, Sinterkörper und Verfahren zum Herstellen eines Sinterkörpers
US12/000,406 US7615185B2 (en) 2001-07-03 2007-12-12 Multicomponent ceramics powder, method of manufacturing multicomponent ceramics powder, sintered body, and method of manufacturing sintered body

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2001202139A JP4105410B2 (ja) 2001-07-03 2001-07-03 多元系炭窒化物粉末およびその製造方法とそれを原料とする焼結体

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2003013102A true JP2003013102A (ja) 2003-01-15
JP4105410B2 JP4105410B2 (ja) 2008-06-25

Family

ID=19038996

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2001202139A Expired - Lifetime JP4105410B2 (ja) 2001-07-03 2001-07-03 多元系炭窒化物粉末およびその製造方法とそれを原料とする焼結体

Country Status (2)

Country Link
JP (1) JP4105410B2 (ja)
CN (1) CN1724469A (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2014006779A1 (ja) * 2012-07-03 2014-01-09 株式会社 東芝 タングステン合金部品、ならびにそれを用いた放電ランプ、送信管およびマグネトロン

Families Citing this family (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN101255060B (zh) * 2008-03-26 2010-09-08 重庆大学 一种采用粉末制备扩散偶的方法
CN105970065A (zh) * 2016-05-31 2016-09-28 合肥正浩机械科技有限公司 一种立方氮化硼-羰基镍粉金属陶瓷密封环及其制备方法
CN108165858B (zh) * 2017-11-15 2022-03-25 常德永 一种高温敏感纳米材料及其制备方法
EP3587085A1 (de) * 2018-06-27 2020-01-01 Basf Se Sinterpulver enthaltend einen mehrwertigen alkohol zur herstellung von formkörpern
CN111423236B (zh) * 2020-03-22 2021-05-14 华南理工大学 一种(Hf0.25Ti0.25Zr0.25W0.25)N高熵陶瓷粉体及其制备方法
CN114605164A (zh) * 2022-03-07 2022-06-10 南方科技大学 一种多孔Ti-Al-N材料及其制备方法和应用

Citations (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS58199778A (ja) * 1982-05-14 1983-11-21 富士ダイス株式会社 すぐれた耐摩耗性と靭性を有する硬質焼結材料の製造法
JPH04297544A (ja) * 1990-08-31 1992-10-21 Gte Lab Inc セラミック−金属物品及び製造方法

Patent Citations (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS58199778A (ja) * 1982-05-14 1983-11-21 富士ダイス株式会社 すぐれた耐摩耗性と靭性を有する硬質焼結材料の製造法
JPH04297544A (ja) * 1990-08-31 1992-10-21 Gte Lab Inc セラミック−金属物品及び製造方法

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2014006779A1 (ja) * 2012-07-03 2014-01-09 株式会社 東芝 タングステン合金部品、ならびにそれを用いた放電ランプ、送信管およびマグネトロン

Also Published As

Publication number Publication date
JP4105410B2 (ja) 2008-06-25
CN1724469A (zh) 2006-01-25

Similar Documents

Publication Publication Date Title
AU619272B2 (en) A surface-coated cemented carbide and a process for the production of the same
EP0438916B2 (en) Coated cemented carbides and processes for the production of same
US7615185B2 (en) Multicomponent ceramics powder, method of manufacturing multicomponent ceramics powder, sintered body, and method of manufacturing sintered body
US5283030A (en) Coated cemented carbides and processes for the production of same
JPH0120219B2 (ja)
JPH08104583A (ja) 工具用複合高硬度材料
JP4105410B2 (ja) 多元系炭窒化物粉末およびその製造方法とそれを原料とする焼結体
JPH0819522B2 (ja) 付着性にすぐれたダイヤモンド被覆焼結合金及びその製造方法
JP2006348386A (ja) 複合材料の製造方法
JP2002338356A (ja) 多元系炭窒化物粉末およびその製造方法とそれを原料とする焼結体
JP4068803B2 (ja) 多元系セラミックス粉末およびその製造方法
JPH04231467A (ja) 被覆TiCN基サーメット
JPS644989B2 (ja)
JP2000336451A (ja) 改質焼結合金、被覆焼結合金及びその製造方法
JP2805339B2 (ja) 高密度相窒化ホウ素基焼結体及び複合焼結体
GB2408752A (en) Multicomponent sintered body and ceramic powder made therefrom
JP3194802B2 (ja) Al含有の表面層を有する焼結合金及びその製造方法
JPS59229430A (ja) 高硬度高靭性サ−メツトの製造法
JPH0611897B2 (ja) 高強度焼結合金
JPH0238559A (ja) 耐衝撃性のすぐれた表面被覆炭化タングステン基超硬合金製切削工具
JP2007262504A (ja) サーメット
JPH0524852B2 (ja)
JPH0238560A (ja) 硬質被覆層がすぐれた耐衝撃性を有する表面被覆炭化タングステン基超硬合金製切削工具

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20041201

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20070925

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20071122

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20080108

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20080305

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20080325

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20080327

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 4105410

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110404

Year of fee payment: 3

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110404

Year of fee payment: 3

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130404

Year of fee payment: 5

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130404

Year of fee payment: 5

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20140404

Year of fee payment: 6

EXPY Cancellation because of completion of term