JP2003003234A - 被削性にすぐれたプラスチック成形金型用の快削鋼 - Google Patents

被削性にすぐれたプラスチック成形金型用の快削鋼

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JP2003003234A
JP2003003234A JP2001185425A JP2001185425A JP2003003234A JP 2003003234 A JP2003003234 A JP 2003003234A JP 2001185425 A JP2001185425 A JP 2001185425A JP 2001185425 A JP2001185425 A JP 2001185425A JP 2003003234 A JP2003003234 A JP 2003003234A
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Tatsumi Urita
龍実 瓜田
Toshimitsu Fujii
利光 藤井
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 プラスチック成形金型用鋼、とくにプレハー
ドン型のものにおいて、常に所望の被削性が得られるよ
うな快削鋼を提供すること。 【解決手段】 重量%で、C:0.1〜0.6%、S
i:0.02〜1.0%、Mn:0.5〜2.0%、
S:0.005〜0.10%、Cr:0.2〜2.5
%、V:0.05〜0.15%、Al:0.001〜
0.020%、Ca:0.0005〜0.02%および
O:0.0005〜0.010%を含有し、P:0.0
3%以下、B:0.002%以下、かつ、N:0.04
%以下であって、残部Feからなる合金組成を有する鋼
において、CaO含有量が8〜62重量%の酸化物系介
在物と接して存在する、1.0重量%以上のCaを含有
する硫化物系介在物の占有面積が、視野面積3.5mm
当たり2.0×10−4mm以上であるもの。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、プラスチック成形
金型用鋼、とくにプレハードン鋼とよばれるプラスチッ
ク成形金型用鋼において、被削性がすぐれている快削鋼
と、その製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】プラスチックの成形に用いる金型は、通
常、鋼の塊を機械加工または機械加工と放電加工との組
み合わせによって製造されているので、金型用鋼は、機
械加工における被削性が高いことが要求される。金型材
料として、近年の傾向では、あらかじめ熱処理を施して
ある、いわゆるプレハードン鋼を使用することが多い。
金型の加工後に焼入れ焼戻し、焼ならしまたはさらに焼
なましを行なうと、熱歪みによって変形するし、また、
製作日数がかかるからである。
【0003】その上、最近では、金型の製造時間を短縮
するため、送り速度が、たとえば20,000mm/分と
いう、従来の約20倍に上る高送りを行なう超高速加工
機械が導入されつつあり、このような過酷な条件での切
削に耐える被削性が求められるようになってきた。他
方、工作機械が高速回転化しつつあり、それに追従する
ため、工具の材料も、ハイスから超硬素材にシフトする
傾向にある。このようなわけで、快削鋼のもつべき被削
性も、重要度を増している。
【0004】鋼の被削性を改善する常套手段であるSの
添加は、溶接性を低下させるし、機械的異方性が高くな
るなどの問題があり、プラスチック金型用鋼においては
限界がある。プラスチック金型の製造過程ではしばしば
溶接が行なわれるので、溶接性の良否は、重要な特性で
ある。
【0005】機械構造用鋼に関しては、被削性を改善す
るための研究は、長年にわたって行なわれてきた。出願
人もこれまで多数の提案をしており、最近のものとして
は、特開平10−287953号「機械的性質とドリル
穴あけ加工性に優れた機械構造用鋼」が代表として挙げ
られる。この快削鋼は、CaOを8〜62%含むカルシ
ウムアルミネート酸化物介在物を内部に包み込んだ、長
径/短径比が5以下であるような紡錘型の、Caを1%
以上含むカルシウム・マンガン硫化物介在物を含有する
ことを特徴とするものである。このような、酸化物を主
体とする介在物が芯となり、その周囲を、硫化物を主体
とする介在物が取囲んでいる構造の介在物を、「二重構
造介在物」という。
【0006】続いて出願人は、特開2000−3453
8号「旋削加工性に優れた機械構造用鋼」において、C
a含有硫化物をCa含有量に従って3区分し、観察視野
の面積に対する面積率を、Ca含有量が40%を超える
ものをA、0.3〜40%のものをB、0.3%未満の
ものをCとするとき、A/(A+B+C)≦0.3、か
つB/(A+B+C)≧0.1の条件を満たすものにお
いて、旋削工具寿命が著しく延びることを開示した。
【0007】さらに研究を進めた出願人は、特開200
0−219936号「快削鋼」に至って、介在物の存在
すべき個数を明らかにして、被削性のバラツキを少なく
することに成功した。この発明の鋼は、0.1〜1%の
Caを含有する円相当直径5μm以上の硫化物を3.3
mm当たり5個以上含有することを特徴とする。
【0008】上述したさまざまな機械構造用快削鋼は、
すぐれた被削性を実現したが、実施に当たって、ときに
被削性にバラツキが見られることが経験された。これ
は、カルシウム・マンガン硫化物介在物の存在形態が種
々あり得るためと解される。そこで、良好な被削性をも
たらす介在物である二重構造介在物の存在形態をいっそ
う明らかにするとともに、介在物の存在形態に与える製
造条件の影響を把握し、常に所望の被削性、とくに超硬
工具旋削性が得られるような機械構造用の快削鋼の製造
技術を確立すべく努力し、出願人は、特定の操業条件が
きめてとなることを知り、これもすでに開示した(特願
2001−174606号)。
【0009】出願人は、研究の対象をプラスチック金型
用鋼に拡張し、上記の二重構造介在物とそれをもたらす
操業条件がプラスチック金型用鋼にも適用できるか否か
を調べ、適用可能であることを知った。さらに、この二
重構造介在物の存在が、プラスチック金型用鋼に要求さ
れる溶接性や、ある程度の鏡面性に対して、なんらマイ
ナスの作用を示さないことも確認した。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、この
ような出願人の得た新知見を活用し、好適な存在形態に
ある二重構造介在物を含有し、したがって良好な被削性
を有し、一方で溶接性や鏡面性は損なわれていないプラ
スチック金型用の快削鋼を提供することにある。常に所
望の被削性を示すプラスチック金型用の快削鋼を製造す
る方法を提供することもまた、本発明の目的に含まれ
る。本発明の目標は、機械構造用の場合に採用したとこ
ろと同様、工具寿命比にして5倍以上の被削性改善を実
現することにある。ここで「工具寿命比」の語は、エン
ドミル、切削、フライス加工、旋削などにおいて、本発
明の快削鋼の工具寿命と、同一のS含有量をもつ在来の
イオウ快削鋼の工具寿命との比を意味する。
【0011】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成する、
本発明の超硬工具旋削性にすぐれたプラスチック金型用
の快削鋼は、基本的な合金組成として、重量%で、C:
0.1〜0.6%、Si:0.02〜1.0%、Mn:
0.5〜2.0%、S:0.005〜0.10%、C
r:0.2〜2.5%、V:0.05〜0.15%、A
l:0.001〜0.020%、Ca:0.0005〜
0.02%およびO:0.0005〜0.010%を含
有し、P:0.03%以下、B:0.002%以下、か
つ、N:0.04%以下であって、残部が不可避の不純
物およびFeからなる合金組成を有し、CaO含有量が
8〜62重量%の酸化物系介在物と接して存在する、
1.0重量%以上のCaを含有する硫化物系介在物の占
有面積が、視野面積3.5mm当たり2.0×10−4
mm以上であることを特徴とする。
【0012】上記の被削性にすぐれたプラスチック金型
用の快削鋼を製造する本発明の方法は、重量%で、C:
0.1〜0.6%、Si:0.02〜1.0%、Mn:
0.5〜2.0%、S:0.005〜0.10%、C
r:0.2〜2.5%、V:0.05〜0.15%、A
l:0.001〜0.020%、Ca:0.0005〜
0.02%およびO:0.0005〜0.010%を含
有し、P:0.03%以下、B:0.002%以下、か
つ、N:0.04%以下であって、残部が不可避の不純
物およびFeからなる組成の合金を溶製し、その際、下
記の条件 [S]/[O]:8〜40 [Ca]×[S]:1×10−5〜1×10−3 [Ca]/[S]:0.01〜20 かつ [Al]:0.001〜0.020%を満たす操業を行
なうことを特徴とする。
【0013】
【発明の実施形態】本発明において、基本的な合金組成
の鋼の組成を上記のように限定した理由は、つぎのとお
りである。
【0014】C:0.1〜0.6% Cは焼入れ焼戻し後に必要な強度および耐力を得るため
に必要な成分であり、0.1%未満の含有量では効果が
不十分である。一方、C量が多くなると溶接割れ感受性
が高くなり、また焼入れ焼戻し後の硬さが高くなり過ぎ
るので、上限を0.6%とした。溶接割れ感受性がとく
に重要である場合は、0.3%までに止めることが望ま
しい。
【0015】Si:0.02〜1.0% Siは溶製時に脱酸剤として使用する成分である。Si
には、焼入性を高める働きもある。こうした効果は、
0.02%に達しない少量では期待できない。しかし、
多量に添加すると溶接割れ感受性が高くなり、また、偏
析が大きくなることにより、シボ加工したときのシボム
ラの発生が多くなる。1.0%を上限としたが、この制
限が与える悪影響は、Cr量およびMn量を低めに抑え
ることで、ある程度軽減できる。
【0016】Mn:0.5〜2.0% Mnは、硫化物を生成する重要な元素である。硫化物の
生成すなわちSの固定は、熱間加工性をよくするととも
に、溶接時の母材側の硬さを低くして溶接割れを押さ
え、焼入れ性を高める。こうした効果を確実にするに
は、0.5%以上の添加を要する。2.0%を超える添
加は、被削性を低下させて発明の目的に反する。
【0017】S:0.005〜0.10% Sは、被削性の向上にとって不可欠な成分であり、溶接
割れの防止にも必要であるが、0.005%以上存在さ
せればよい。MnSの生成量が過大であると、機械加工
時のピンホールおよび放電加工時のピットの発生をもた
らし、靭性を低下させる。さらに、プラスチック金型用
鋼に固有の問題として、超音波検査時のノイズの原因に
なるから、比較的低いところに上限を設けなければなら
ない。その値が、0.10%である。
【0018】Cr:0.2〜2.5% Crは焼入れ性を高める成分である。とくに大型の金型
を製造する場合、焼入れに対する質量効果の抑止を考え
ると重要であって、0.2%以上の添加を必須とする。
多量に添加すると、炭化物偏析帯の生成を助長し、シボ
加工性を悪くする上、被削性、溶接性および熱間加工性
を低下させるので、最大2.5%までの添加に止める。
【0019】V:0.05〜0.15% Vは、焼戻し軟化抵抗性を確保するとともに、析出強化
を期待して添加する。また、CやNと結合して炭窒化物
をつくり、結晶粒を微細化する効果もある。これらの効
果は、0.05%以上の添加で得られるが、0.15%
を超えると被削性を低下させる。
【0020】Al:0.001〜0.020% Alは一般に脱酸効果を期待して添加するが、本発明に
おいては、酸化物系介在物の組成を適切に調整して工具
寿命を向上させる上で必要であり、少なくとも0.00
1%を添加する。0.20%を超えると硬質のアルミナ
クラスターを生成し、これが鋼の鏡面性と被削性を損な
う。
【0021】Ca:0.0005〜0.02% Caは、硫化物中に含有させて切削工具の表面に保護膜
を形成する成分であるから、本発明の鋼にとってきわめ
て重要な成分である。この効果を得るために、0.00
05%以上の添加を必須とする。一方、0.02%を上
回る過剰のCaを添加すると、高融点のCaSが生成
し、鋳造時にノズルが閉塞するなどの障害が生じる。
【0022】O:0.0005〜0.01% Oは、硫化物析出のときに核となる酸化物(CaO,A
など)を生成させる上で、必要な元素である。
過度に脱酸した鋼においては高融点のCaSが多量に生
成し、注湯性を悪くし鋳造の支障になるから、少なくと
も0.0005%のOが必要である。一方、0.01%
を超えるOは、Caをすべて酸化物にしてしまい、多量
の硬質酸化物が生成して被削性が悪くなるばかりでな
く、所望のカルシウム硫化物の生成が困難になる。多量
の酸化物は、ピンホールの原因にもなる。適量の酸化物
を硫化物が取り囲んだ二重構造介在物は、周囲が柔らか
く粘い硫化物であるため、機械加工時に脱落し難く、ピ
ンホールにならない。
【0023】本発明の快削鋼にありがちな不純物と、そ
の規制について述べれば、つぎのとおりである。
【0024】P:0.03%以下 Pは、鋼の靱性および溶接性にとって有害であるから、
なるべく少量であることが望ましいが、0.03%まで
は、靱性への悪影響が小さいので、通常許容できる。好
ましくは、0.015%以下である。
【0025】B:0.002%以下 Bは溶接割れ感受性を高めて有害である。0.002%
は、この悪影響が実質上なく、許容できる限界である。
【0026】N:0.04%以下 Nは、Cとともに、Cr、Mo、V、Alと結合して炭
窒化物を形成し結晶粒を微細にするから、有害とばかり
はいえないが、炭窒化物はピンホールの原因になる。N
はまた、熱間加工性を低下させるから、やはり少ないに
越したことはない。製鋼の実際からみて、とくに困難な
く低減できる0.04%を上限として設けた。
【0027】本発明のプラスチック成形金型用の快削鋼
は、上記した基本的な合金組成に加えて、金型のサイズ
や金型に要求される特性により必要となるところに従
い、つぎのグループに属する元素の1種または2種以上
を、規定する組成範囲内で、追加的に含有することがで
きる。それらの変更態様において、任意に添加すること
ができる各合金成分の働きと、組成範囲の限定理由を、
つぎに述べる。
【0028】Ni:2.0%以下およびMo:1.0%
の1種または2種 どちらも所望の硬さを確保する上で必要であれば、添加
するとよい。Niは焼入れ性を高めるが、2.0%を超
えると、被削性を悪くする。Moは焼入れ性を高めると
ともに、600℃以上の温度における焼戻し軟化抵抗性
を与える。Moも、被削性にはマイナスの存在である。
それと、コストを考えて、1.0%以内の添加が得策で
ある。
【0029】Zr:0.5%以下 は結晶粒を微細化し、靭性を向上させるのに有効な成分
である。加えて、MnSの異方性を軽減する効果もあ
る。しかしこれらの効果は、添加量の増大とともに飽和
するので、0.5%を限度とした。
【0030】Pb:0.4%以下、Bi:0.4%以
下,Te:0.1%以下およびSe:0.5%以下の1
種または2種以上 いずれも、被削性改善元素である。Pbは、単独で、ま
たは硫化物の外周に付着する形で存在し、それ自身が被
削性を高める。0.4%という上限は、これ以上のPb
を添加しても鋼に溶解せず、凝集・沈殿して鋼の欠陥に
なることを理由に設けた。Biも、作用および塑性範囲
の上限を決定した理由は、Pbと同様である。Teおよ
びSeの添加量の上限は、熱間加工性への悪影響を考慮
して定めたものである。
【0031】本発明に従うプラスチック金型用の快削鋼
の内部に存在する介在物は、前記したように二重構造介
在物であって、EPMA分析によれば、芯部はCa,M
g,SiおよびAlの酸化物であり、その周囲を、Ca
Sを含有するMnSが取り囲んだ構造をしている。この
ような介在物の形態は、下に論じる機構を通じて、本発
明で目標とした、工具寿命比5という被削性を達成する
ために必要なものであり、このような介在物の形態を実
現するための条件が、これも前記した操業条件である。
【0032】介在物の形態の規定「CaO含有量が8〜
62重量%の酸化物系介在物と接して存在する、1.0
重量%以上のCaを含有する硫化物系介在物の占有面積
が、視野面積3.5mm当たり2.0×10−4mm
上」を満たす介在物の占有面積と、工具寿命を同一S含
有量のイオウ快削鋼が示す工具寿命に対する比との相関
を、図1のグラフに示す。このデータは、本発明に従う
下記の合金組成のプラスチック金型用の快削鋼に対して
エンドミル切削を行なって得たものであって、 0.25C−0.3Si−1.0Mn−1.4Cr−
0.1V−Fe 工具寿命比5以上の結果は、二重構造介在物が2.0×
10−4mm以上を占めたときに達成できることを示し
ている。
【0033】本発明の機械構造用鋼がすぐれた被削性を
示す理由として発明者らが考えているのは、以下に説明
するような、二重構造介在物による工具表面のよりよい
保護および潤滑の機構である。
【0034】本発明の二重構造介在物は、芯部がCaO
・Al系の複合酸化物であって、その周りを(C
a,Mn)S系の複合硫化物が取り巻いている。この酸
化物は、CaO−Al系の中では低融点のもので
あり、一方、複合硫化物は、単純な硫化物MnSよりも
高融点である。この二重構造介在物は、酸化物をCaO
−Al系の低融点のものにすることにより、確実
に硫化物が酸化物を取り巻く形で析出する。切削にあた
って硫化物系介在物が溶融して工具表面を被覆し、保護
するという作用はよく知られているが、硫化物だけしか
存在しないと、この被膜の生成および維持は安定しな
い。発明者らの見出したところでは、硫化物系介在物に
CaO−Al系の低融点酸化物が共存すると、被
膜が安定に生成する上、(Ca,Mn)S系の複合硫化
物は、単純なMnSよりも、潤滑性能が高い。
【0035】(Ca,Mn)S系の複合硫化物が工具表
面に被膜を形成する意義は、「熱拡散摩耗」とよばれる
超硬工具の摩耗を抑制する効果にある。熱拡散摩耗は、
工具が切削対象から生じる切り屑に高温で接すると、工
具材料を構成する炭化物が熱分解して、Cが切り屑金属
中に拡散して失われる結果、工具が脆くなって進む摩耗
である。潤滑性の高い被膜が工具表面に生成すると、工
具の温度上昇が防がれて、Cの拡散が抑制される。
【0036】本発明の快削鋼の二重構造介在物CaO−
Al/(Ca,Mn)Sは、観点を変えてみれ
ば、従来のイオウ快削鋼の介在物であるMnSと、従来
のカルシウム快削鋼の介在物であるアノルサイトCaO
・Al・2SiOとの、それぞれの利点を併せ
もつものということができる。工具表面のMnSは、潤
滑性を示すものの、被膜の安定性がいまひとつであり、
熱拡散摩耗に対しては無力である。一方、CaO・Al
・2SiOは、安定な被膜を形成して熱拡散摩
耗を防ぐが、潤滑性に乏しい。これに対し本発明の二重
構造介在物は、安定な被膜を形成して熱拡散摩耗を効果
的に防止するとともに、よりよい潤滑性を示す。
【0037】このような二重構造介在物の生成は、前述
のように低融点の複合酸化物を用意することから始まる
ので、まず[Al]量が重要であって、少なくとも0.
001%の存在が必要である。[Al]が多量に過ぎる
と、複合酸化物の融点が高くなってしまうから、0.0
20%以内にする。つぎに、CaSの生成量を調節する
ために、[Ca]×[S]および[Ca]/[S]を、
前記した値にコントロールするわけである。
【0038】上述した機構は、実証を伴っている。前掲
の特願2001−174606号では、機械構造用の快
削鋼に関して、その発明に従う快削鋼を切削したの状態
と、そこに付着した溶融介在物の分析結果とを、在来の
イオウ快削鋼を旋削した場合と対比して示した。それに
よれば、付着した介在物は、どちらの場合もSが高い濃
度で存在し、硫化物の被膜が生成していることが確認で
きるが、発明に従った快削鋼を旋削した工具には、Ca
の多量の付着が認められ、この被膜が(Ca,Mn)S
系のものであることがわかったのに対して、在来のイオ
ウ快削鋼の介在物にはCaの存在が認められなかった。
同様の結果が、本発明のプラスチック成形金型用の快削
鋼に関しても確認された。
【0039】
【実施例】表1および表2に示す組成のプラスチック成
形金型用鋼を、150kg高周波真空誘導炉で溶製してイ
ンゴットに鋳造し、それぞれのインゴットを一辺が60
mmの角棒型に鍛造して、熱処理後に試験に供した。熱処
理は、970℃への加熱後空冷する焼入れと、それに続
く、各鋼に適切な温度における焼戻しである。表1およ
び表2において、実験番号が大文字(A,B)のものは
実施例、小文字(a,b)のものは比較例であり、下記
の内容の対比である。 Aおよびaのシリーズ:主要成分の組成が同じであっ
て、CaやOなどの量が異なるもの Bおよびbのシリーズ:比較例として、既存の合金組成
において、従来の知見にもとづいてSやSiの量を増加
したものを試験した
【0040】
【0041】
【0042】各供試材について、硬さを測定するととも
に、下記の試験を行なった。プラスチック成形金型用の
各快削鋼の成分比、すなわち、[S]/[O]、[C
a]×[S]・10−5および[Ca]/[S]の値
と、介在物の形態、旋削時における工具表面の保護被膜
の形成とともに、試験結果を、表1および表2に対応し
て表3および表4に示す。
【0043】[被削性]次の条件で切削加工を行ない、
得られた工具寿命時間の、対応する比較例の工具寿命時
間を1としたときの比を「工具寿命比」として示した。 工具:エンドミル2枚刃、径32mm 回転:5000rpm 送り:750m/min 切込み:軸4mm、径1mm 切削油:なし 工具寿命判定基準:横逃げ面最大摩耗0.3mm
【0044】[硫化物系介在物の評価]EPMAによ
り、CaO含有量が8〜62重量%の酸化物系介在物と
接して存在する、1.0重量%以上のCaを含有する硫
化物系の介在物が、視野面積3.5mm当たりに占める
面積を測定した。
【0045】[鏡面性の評価]試験片の表面を#300
0エメリーで手仕上げにより研磨した。鏡面のピンホー
ル、シボムラなどを調べ、プラスチック成形金型用鋼と
して使用可能なものを○、使用に適しないものを×とし
た。
【0046】[溶接性の評価]JIS−Z3158に規
定する斜めY型溶接試験を行なった。300℃の予熱を
した場合の試験片10本のいずれにも溶接割れが発生し
なかったものを○、いずれかに溶接割れが発生したもの
を×とした。
【0047】
【0048】
【0049】
【発明の効果】本発明のプラスチック成形金型用の快削
鋼には、高い被削性をもたらす介在物とくに二重構造介
在物が、最適の形態で存在するから、被削性において在
来のイオウ快削鋼に対して工具寿命が5倍以上という目
標を容易に達成することができる、すぐれた被削性を実
現した。
【0050】これまでの快削鋼において、良好な被削性
を与える介在物の形態に関しては、ある程度の考察が行
なわれていたが、そのような介在物を高い再現性をもっ
て作り出す手段に関しては、いまひとつ満足できないの
が実状であった。本発明はこの点において従来技術の隘
路を突破したものであり、前記の操業条件を満たす製造
を行なうことにより、常にすぐれた被削性をもつプラス
チック成形金型用の、とくにプレハードン型の快削鋼が
製造できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明にしたがうプラスチック成形金型用の
快削鋼中において、「二重構造介在物」が占める面積と
工具寿命比との関係を示すグラフ。

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重量%で、C:0.1〜0.6%、S
    i:0.02〜1.0%、Mn:0.5〜2.0%、
    S:0.005〜0.10%、Cr:0.2〜2.5
    %、V:0.05〜0.15%、Al:0.001〜
    0.020%、Ca:0.0005〜0.02%および
    O:0.0005〜0.010%を含有し、P:0.0
    3%以下、B:0.002%以下、かつ、N:0.04
    %以下であって、残部が不可避の不純物およびFeから
    なる合金組成を有し、CaO含有量が8〜62重量%の
    酸化物系介在物と接して存在する、1.0重量%以上の
    Caを含有する硫化物系介在物の占有面積が、視野面積
    3.5mm当たり2.0×10 −4mm以上であること
    を特徴とする被削性にすぐれたプラスチック成形金型用
    の快削鋼。
  2. 【請求項2】 請求項1に規定した合金成分に加えて、
    さらに、Mo:1.0%以下およびNi:2.0%以下
    の1種または2種を含有するプラスチック成形金型用の
    快削鋼。
  3. 【請求項3】 請求項1または2に規定した合金成分に
    加えて、さらに、Zr:0.5%以下、Pb:0.4%
    以下、Bi:0.4%以下、Se:0.5%以下および
    Te:0.1%以下の1種または2種以上を含有するプ
    ラスチック成形金型用の快削鋼。
  4. 【請求項4】 請求項1ないし3のいずれかに記載した
    快削鋼を製造する方法であって、重量%で、C:0.1
    〜0.6%、Si:0.02〜1.0%、Mn:0.5
    〜2.0%、S:0.005〜0.10%、Cr:0.
    2〜2.5%、V:0.05〜0.15%、Al:0.
    001〜0.020%、Ca:0.0005〜0.02
    %およびO:0.0005〜0.010%を含有し、
    P:0.03%以下、B:0.002%以下、かつ、
    N:0.04%以下であって、残部が不可避の不純物お
    よびFeからなる組成の合金を溶製し、その際、下記の
    条件 [S]/[O]:8〜40 [Ca]×[S]:1×10−5〜1×10−3 [Ca]/[S]:0.01〜20 かつ [Al]:0.001〜0.020% を満たす操業を行なうことを特徴とする、被削性にすぐ
    れたプラスチック成形金型用の快削鋼の製造方法。
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