JP2002536980A - ポリヌクレオチド配列決定法 - Google Patents

ポリヌクレオチド配列決定法

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Abstract

(57)【要約】 標的ポリヌクレオチド中の1以上のヌクレオチドの配列を決定するための方法が開示される。この方法では、標的特異的プライマーを、このプライマーが、1以上の標的ポリヌクレオチド中のプライマー相補領域に特異的にアニーリングするに有効な条件下でポリヌクレオチドサンプルと接触させて、1以上の標的−プライマーハイブリッドを形成させ、ここで、各標的−特異的プライマーが、(i)標的結合セグメントおよび(ii)この標的に結合しない移動度低減部分を含む。このハイブリッドを、選択されたヌクレオチド塩基型に相補的な、少なくとも1つの標識3’ヌクレオチドターミネーターの存在下で、必要に応じて1以上の伸長可能ヌクレオシドモノマーの存在下で、少なくとも1つの標識3’ヌクレオチドターミネーターで終結する、1以上のプライマー伸長産物を形成するに有効な条件下で、プライマー伸長試薬と反応させる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】 (発明の背景) 本発明は、ポリヌクレオチドを配列決定するための方法に関する。詳細には、
本発明は、配列決定プライマーに隣接する塩基の配列決定可能な範囲を拡張する
、改良されたターミネーター配列決定法に関する。
【0002】
【表1】 (発明の背景) ポリヌクレオチドの配列決定は、生化学の研究および産業において益々重要な
役割を果たしている。例えば、最近、真核生物、C.elegansおよびS.
Cerevisiae(例えば、Science 282:2012(1998
)を参照のこと)について、全てのゲノム配列が報告され、そして現在、ヒトゲ
ノムを配列決定をするために多大な努力がなされている。生物学的ポリヌクレオ
チド配列の知見は、異なる生物体由来の遺伝子配列および関連する遺伝子産物を
特徴付け、そして比較するためのみならず、診断試験の開発のため(例えば、遺
伝的変異の検出、遺伝子型の決定、疾患の診断、法医学、および治療上の標的の
同定のため)にもまた有用である。
【0003】 過去20年間にわたって、ヌクレオチド配列決定には2つの主要なアプローチ
が存在した:SangerおよびCoulson(1977)のチェーンターミ
ネーション法、ならびにMaxamおよびGilbert(1977)の化学分
解法。両方法は、1つ以上のセットの標識したDNAフラグメント(各々は共通
の起源を有し、そして各々は公知の塩基で終止する)の作製を必要とする。次い
で、フラグメントのセット(単数または複数)は、標的配列を明らかにするため
に、サイズで分けられなければならない。
【0004】 より最近では、チェーンターミネーション法は、現在利用可能な全ての自動D
NA配列決定装置にとって標準的な方法となっている。この方法は、一般に、4
つの標準的なデオキシリボヌクレオチド塩基および1つ以上のジデオキシヌクレ
オチドターミネーターの存在下での、5’プライマーの、標的鋳型鎖に沿った酵
素的伸長を含む。プライマー伸長の間のターミネーターの取り込みは、種々の長
さの産物の混合物を生じ、各々の産物は、ターミネーターを有するその3’末端
で終止する。最初に提案したように、4つの別々の配列決定反応を所定の標的配
列について(各ジデオキシヌクレオチド塩基型について1つ)行った。次いで、
各混合物由来の産物を、サイズに基づいた4つの別々のレーンに溶解し、そして
標的配列を、フラグメントの移動の相対的な順番から決定した。
【0005】 5’−伸長プライマー(Smith、1986)または3’−ジデオキシター
ミネーター塩基(Prober、1987;Prober 1995;Berg
ot、1991)のいずれかに結合した、スペクトル的に識別可能な蛍光標識を
使用するSanger法に対する改変が、その後、開発された。前者の場合、伸
長反応は、適切に標識されたプライマーの存在下で、各々異なるターミネーター
塩基について別々に(各々異なるターミネーターについて1つの異なる標識)行
われなければならず、その後、標識された伸長産物は、一つの分離経路において
組合わされ、そして分離され得る。後者の場合、プライマー伸長は、1つの反応
混合物中で行われ得る。なぜなら、塩基特異的標識の取り込みが、ポリメラーゼ
酵素によって、次いで1つの分離レーンにおける分離によって高い忠実度で行わ
れるからである。
【0006】 標識ターミネーター法は、有意により少ない反応器しか含まず、そして使用に
より便利であるから、選り抜きの配列決定法となっている。しかし、この方法は
、伸長プライマーに近接した配列決定フラグメントヌクレオチドを慣用的に同定
することの困難さに起因して、制限されてきた。伸長反応は、配列決定フラグメ
ントの十分な産生を保証するために、高濃度の標識されたターミネーターを必要
とする。残念ながら、残留ターミネーター塩基またはその分解産物は、短い配列
決定フラグメントと共に移動する。なぜなら、それらは同様の移動特性を有する
からである。結果として、短い配列決定フラグメントについての配列決定データ
は、信頼できないか、または全く使用に適さないかのいずれかであった。理論的
には、配列決定分析の前に、例えば、事前のサイズベースの分離工程によって、
残留ターミネーター塩基を除去することは可能である。しかし、これは、配列決
定プロセスに、大規模な配列分析を妨げる余計な工程を導入する。さらに、この
ような予備精製は、十分な残留ターミネーター物質が除去されるまで、繰り返さ
なければならないかもしれない。
【0007】 従って、伸長プライマーに近接した配列決定を可能にする標識ターミネーター
配列法を提供することが本発明の目的である。
【0008】 さらなる本発明の目的は、以前の標識ターミネーター配列決定法に付随してき
た混入の問題を克服することである。
【0009】 (発明の要旨) 本発明は、1つの局面において、標的ポリヌクレオチド中の1つ以上のヌクレ
オチドの配列を決定するための方法を提供する。この方法において、標的特異的
プライマーは、このプライマーを1つ以上の標的ポリヌクレオチド中のプライマ
ーに相補的な領域に特異的にアニールさせるために有効な条件下で、ポリヌクレ
オチドサンプルと接触させられ、1つ以上の標的プライマーハイブリッドを形成
する。標的特異的プライマーは、(i)標的結合セグメントおよび(ii)標的
に有意には結合しない移動度低減部分を含む。このハイブリッドは、プライマー
伸長試薬と、少なくとも1つの標識化3’ヌクレオチドターミネーターで終結す
る1つ以上のプライマー伸長産物を形成するために有効な条件下で、選択された
標的ヌクレオチド塩基型に相補的な少なくとも1つの標識化3’ヌクレオチドタ
ーミネーターの存在下で、反応させる。次いで、このプライマー伸長産物は、よ
り小さい伸長産物がより大きい伸長産物より速く移動するような変性条件下で、
分子篩マトリックスにおいて電気泳動で分離され、そして所望の配列情報は、分
離された伸長産物の移動度および終結標識に基づいて決定される。
【0010】 1つの実施形態において、標的に相補的なポリヌクレオチドモノマーおよびタ
ーミネーターの付加により特異的にハイブリダイズされたプライマーの3’末端
を伸長するために有効な条件下で、標識化3’ヌクレオチドターミネーターに加
えて少なくとも1つの伸長可能ヌクレオシドモノマーの存在下で、プライマー伸
長が、実施され、1つ以上のプライマー伸長産物を形成する。
【0011】 別の実施形態において、ターミネーターが、アニールされたプライマーの伸長
可能末端のすぐ隣にある、標的ポリヌクレオチド中の塩基に相補的である場合に
のみ、ハイブリッド中のアニールされたプライマーにターミネーターを付加させ
るために有効な条件下で、プライマー伸長は、伸長可能オリゴヌクレオチドの非
存在下で実施される。
【0012】 本発明において使用されるターミネーターは、好ましくは1つ以上の伸長産物
の電気泳動移動の間に検出され得る標識を含む。1つの実施形態では、少なくと
も1つの3’−ヌクレオチドターミネーターは、蛍光標識を含む。好ましい実施
形態では、4つの異なる3’−ヌクレオチドターミネーターの存在下で伸長が行
なわれ、この3’−ターミネーターは、(i)異なるヌクレオチド塩基型にそれ
ぞれ相補的であり、そして(ii)ターミネーターの塩基型を同定する識別可能
な蛍光標識をそれぞれ含む。
【0013】 配列決定のために、配列決定伸長産物は、より小さなフラグメントが、より大
きなフラグメントの前に溶出する任意の方法により、サイズに基づいて分離され
る。例えば、これらの産物は、スラブゲル電気泳動、キャピラリー電気泳動、ま
たはマイクロチャネル電気泳動により、好ましくは分子篩マトリックスを用いて
分離され得る。
【0014】 1つの実施形態では、移動度低減部分は、実質的に標的ポリヌクレオチドに結
合しないポリマーセグメントを含む。1つの好ましい実施形態では、ポリマーセ
グメントは、実質的に標的ポリヌクレオチドに結合しないポリヌクレオチドセグ
メントを含む。他の実施形態では、ポリマーセグメントは、サブユニットの非ポ
リヌクレオチドポリマーのような非ポリヌクレオチド部分を含む。
【0015】 移動度低減部分は、各プライマー伸長産物の移動速度を特定の量だけ低減させ
るように選択され得る。1つの実施形態では、移動度低減部分は、各プライマー
伸長産物の移動速度を、移動度低減部分を欠く対応するプライマー伸長産物の移
動度に比べて、少なくとも4つのさらなるヌクレオチド塩基に等しい量に、低減
させる。他の実施形態では、移動度における低減量は、使用者の必要および設計
選択に従って、少なくとも10のさらなるヌクレオチド塩基、少なくとも15の
さらなるヌクレオチド塩基、または少なくとも20のさらなるヌクレオチド塩基
の付加に等しい。
【0016】 本発明はまた、上記のような方法を実施する際に有用なキットを含む。このキ
ットは、(i)標的結合セグメント、および(ii)有意には標的に結合しない
移動度低減部分を含む標的特異的プライマーを含む。このキットは、以下のうち
の1つ以上をさらに含み得る:少なくとも1つの標識化ヌクレオチドターミネー
ター、少なくとも1つの伸長可能3’−ヌクレオシド、およびプライマー伸長試
薬(例えば、ポリメラーゼ酵素)。このキットはまた、本発明にしたがってこの
キットを利用するための使用説明書を含む。
【0017】 本発明のこれらおよび他の目的および特徴は、以下の考察に照らしてより明ら
かとなる。
【0018】 (発明の詳細な説明) 本発明は、配列決定プライマーの3’末端に隣接して配置される標的配列領域
に、改善された配列読み取り能力を提供することに関する。多くのターミネター
ベースの配列決定プロトコルについて、配列決定プライマーの3’末端の近傍の
標的領域を配列決定する能力は、標識化3’−ターミネーターまたはそれらの分
解産物の同時移動による妨害のために、妨げられる。この問題は、プライマー伸
長が完了した後に、残りのターミネーターを除去することにより低減され得るが
、1つより多くの精製工程が、満足な結果を得るためにしばしば必要とされる。
従って、プライマーの近傍の標的(例えば、プライマーの3’末端のすぐ隣)が
、残りのターミネーターを除去するための1つより多くの前精製工程なしで、容
易に配列決定される場合には、都合が良い。
【0019】 この目的は、移動度低減部分を含む配列決定プライマーを使用することにより
本発明において達成され、この移動度低減部分は、プライマー伸長産物の移動速
度を、移動度低減部分を含まずに形成された比較の伸長産物の移動速度に対して
低減させる。伸長産物の移動度を低減することにより、ターミネーターは、プラ
イマー伸長産物の前に溶出するため、標識化ターミネーターおよびそれらの分解
産物との重複による妨害は、減少されるかまたは排除され得る。従って、本発明
は、プライマー伸長産物の配列決定可能な領域を広げる。
【0020】 (I.定義) 本明細書中で使用される場合、以下の用語は、他に示されないかぎり以下の意
味を有する: 「ヌクレオシド」は、プリン、デアザプリン、またはピリミジンヌクレオシド
塩基のような塩基対合部分(「塩基」ともいわれる)(例えば、アデニン、グア
ニン、シトシン、ウラシル、チミン、デアザアデニン、デアザグアノシン、また
はそれらの任意の機能的等価体)を含む化合物をいい、これは、糖環またはそれ
らの任意の機能的等価体のような骨格部分に連結される。ヌクレオシドは、天然
に存在するヌクレオシドを含み、この天然に存在するヌクレオシドは、ペントー
ス環(それらの2’−デオキシ形態および2’−ヒドロキシル形態を含む(Ko
rnberg、1992))の1’−炭素、ならびにペントースアナログおよび
それらの開環等価体(Scheit,1980;Uhlman,1990)に連
結される塩基対合部分(A、C、G、TまたはU)を含む。例えば、イノシン(
dITP)は、配列決定の際に、グアノシン(dGTP)の代わりとして、ポリ
−G配列領域におけるバンド圧縮を低減させるためにしばしば使用される。
【0021】 用語「ヌクレオチド」は、本明細書中で使用される場合、ヌクレオシドのリン
酸エステル(例えば、トリリン酸エステル)をいい、ここで最も一般的なエステ
ル化部位は、ペントース5’−ヒドロキシ基である。特定の場合には、用語「ヌ
クレオシド」は、簡便さのために、ヌクレオシドおよびヌクレオチドの両方をい
う。本明細書中で使用される場合、用語ヌクレオチドおよびヌクレオシドは、例
えば、他で記載されるように(Scheit 1980;Eckstein,1
991)、改変ヌクレオシド塩基部分、改変糖部分、および/または改変リン酸
エステル部分を有する合成アナログを含むことが意図される。
【0022】 「ポリヌクレオチド」および「オリゴヌクレオチド」は、ヌクレオシドモノマ
ーのポリマーをいい、一本鎖、二本鎖および三本鎖デオキシリボヌクレオチド、
リボヌクレオチド、これらのα−アノマー形態などを含む。通常、ヌクレオシド
モノマーは、ホスホジエステル結合、すなわち、リン酸ジエステルまたはそのア
ナログ(ここでリン原子は、+5酸化状態であり、1つ以上の酸素原子が、非酸
素部分で置換される)により連結される。例示的なホスフェートアナログとして
は、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホロセレノエート、ホス
ホロジセレノエート、ホスホロアニリノチオエート、ホスホルアニリデート、ホ
スホルアミデート、ボロノホスフェートなどが挙げられ、対イオンが存在する場
合、付随する対イオン(例えば、H+、NH4 +、Na+など)を含む。「ポリヌク
レオチド」および「オリゴヌクレオチド」はまた、リン酸エステルまたは他の結
合により連結される、非ヌクレオチドモノマーのポリマーを含み、これらは、標
的核酸(例えば、ペプチド核酸(PNA;例えば、Knudsen,1996を
参照のこと)と配列特異的ハイブリッドを形成し得る。ポリヌクレオチドは、代
表的に少ないモノマー単位(例えば、8〜40)から数百または数千のモノマー
単位のサイズの範囲である。他に示されないかぎり、ポリヌクレオチドが文字の
配列(例えば、「ATGCCTG」)で表される場合は必ず、ヌクレオチドは、
5’から3’の順に、左から右であり、そして「A」はデオキシリボアデノシン
を示し、「C」はデオキシシチジンを示し、「G」はデオキシグアノシンを示し
、そして「T」はチミジンを示すということが、理解される。
【0023】 「プライマー」は、特異的標的配列に選択的にアニールし得、そしてその後5
’→3’または3’→5’方向のプライマー伸長反応の開始点として作用し得る
ポリヌクレオチドを意味する。
【0024】 「プライマー伸長反応」は、テンプレート−プライマーハイブリッドと1つ以
上のヌクレオチドとの間の反応を意味し、この反応により、1つ以上のヌクレオ
チドの、プライマーの選択された末端への付加を生じ、その結果、付加されたヌ
クレオチドは、標的テンプレート核酸中の対応するヌクレオチドに相補的である
【0025】 「伸長可能プライマー」とは、プライマーの伸長可能な末端、代表的にはプラ
イマーの3’末端に付加される(共有結合で連結される)ヌクレオチドを有し得
るプライマーをいう。
【0026】 「標的特異的プライマー」とは、完全にまたは実質的には標的配列に相補的な
標的結合セグメントを有するプライマーをいい、その結果、プライマーは、十分
にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、非標的配列に有意に結
合することなく、意図された標的に特異的に結合する。
【0027】 「ヌクレオチドターミネーター」とは、(1)プライマーが相補テンプレート
にアニールされる場合、伸長可能(extendible)プライマーの末端に
共有結合で結合可能であるが、(2)ヌクレオチドターミネーターをプライマー
に共有結合で結合するために使用される条件下で、さらに伸長し得ない、ヌクレ
オチドまたはヌクレオシドをいう。
【0028】 「特異的結合対」は、互いに特異的に結合して結合複合体を形成する1対の分
子をいう。特異的結合対の例としては、抗体−抗原(またはハプテン)対、リガ
ンド−レセプター対、酵素−基質対、ビオチン−アビジン対、相補塩基対を有す
るポリヌクレオチド等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0029】 「プライマー伸長試薬」は、プライマーが相補標的核酸にアニールされる場合
に、ヌクレオチドターミネーターのプライマー末端ヘの共有結合連結を生じる反
応を触媒し得る酵素または他の触媒を意味する。
【0030】 「標識」は、本発明のヌクレオチドまたはポリヌクレオチドに連結される場合
、このようなヌクレオチドまたはポリヌクレオチドを、公知の検出手段を使用し
て検出可能であるようにする、任意の部分を意味する。
【0031】 「分子篩マトリックス」または「分子篩媒質」は、マトリックスを通る荷電さ
れた種の電気泳動移動を遅らせるために有効な架橋ポリマーまたは非架橋ポリマ
ーを含み、その結果より小さい伸長産物が、より大きい伸長産物よりも速く移動
する、電気泳動媒質を意味する。
【0032】 (A.サンプル核酸) 本発明と共に使用するための標的核酸は、任意の供給源由来であり得、合成ま
たは天然のどちらでも、原核生物、真核生物、植物、動物、およびウイルスのよ
うな生物体、ならびに合成核酸を含むがこれらに限定されない。標的核酸は、細
胞核(例えば、ゲノムDNA)および核外核酸(例えば、プラスミド、ミトコン
ドリア核酸など)のような任意の広範な種々のサンプル型のいずれかの起源であ
り得る。標的ポリヌクレオチドは、公知の技術に従って一本鎖または二本鎖の形
態で得られ得る。標的核酸は、DNAまたはRNAを含み得、そして通常DNA
である。
【0033】 多くの方法が、本発明において使用するための標的核酸の単離および精製に利
用可能である。好ましくは、標的核酸は、十分に、タンパク質および任意の他の
妨害物質を含まない状態であり、標的特異的プライマーのアニーリングおよび伸
長を可能にする。好ましい精製方法としては以下が挙げられる:(i)例えばフ
ェノール/クロロホルム有機試薬を使用して(Ausubel)、好ましくは自
動化DNA抽出機(例えば、PE Biosystems(Foster Ci
ty,CA)からのModel 341 DNA Extractor)を使用
する、有機抽出、続くエタノール沈殿;(ii)固相吸着法(Walsh,19
91;Boom);および(iii)塩誘導DNA沈殿法(Miller)(こ
のような方法は代表的に「塩析」法といわれる)。最適には、上記の精製方法の
各々は、タンパク質をサンプルから除去するための酵素消化工程(例えば、プロ
テイナーゼK、または他の同様なプロテアーゼを用いる消化)の後に行なわれる
【0034】 検出を容易にするために、標的核酸は、フラグメント分析の前に、適切な増幅
手順を使用して増幅され得る。このような増幅は、線形または指数関数的であり
得る。好ましい実施形態において、標的核酸の増幅は、ポリメラーゼ連鎖反応(
PCR)(Mullis)を使用して達成される。一般に、PCRは、任意の二
本鎖核酸サンプルの鎖を分離する最初の変性工程、続いて以下の工程の繰り返し
からなる:(i)アニーリング工程(この工程は、増幅プライマーが、標的配列
に隣接する位置に特異的にアニール化するのを可能にする);(ii)伸長工程
(この工程は、5’から3’の方向にプライマーを伸長し、それによって標的配
列に相補的なアンプリコン(amplicon)核酸を形成する);および(i
ii)変性工程(この工程は、標的配列からアプリコンを分離させる)。上記の
各工程は、異なる温度で、好ましくは自動化熱循環機(thermocycle
r)(PE Biosystems,Foster City,CA)を使用し
て行なわれ得る。
【0035】 好ましい実施形態では、標的増幅工程が使用される場合、PCR増幅は、dT
TPの代わりにdUTPの存在下で行なわれ、そして増幅は好ましくは、(Lo
ngoら(1990)およびHartley(1991)により教示されるよう
に、前の増幅からのテンプレートの持ち越しを減らすために、E.coliウラ
シルN−グリコシラーゼ(UNG)での処理の後に行なわれる。簡便には、この
PCR技術を実施するためのキットが、PE Biosystems(GENE
AMP Carry−Over Prevention Kit,Part N
o.N808−0068)から入手可能である。簡単には、標的ポリヌクレオチ
ドのPCR増幅の初期反応混合物は、dTTPの代わりにdUTPを含むように
改変される。MgCl2およびDNAテンプレートの添加の後、UNG酵素(P
E Biosystems,Part No.N808−0068)を添加し、
そしてこの混合物を50℃までの温度で、以前の増幅からのU含有PCR増幅D
NA混入物を切断するために十分な時間(例えば、1〜10分間)インキュベー
トする。UNG酵素はdUTPモノマーを切断しない。次いでこの混合物を、9
5℃で10分間インキュベートし、(1)UNGにより生成された無塩基(ab
asic)のdUを含有する任意のポリヌクレオチドを切断し、(2)UNGを
不可逆的に不活化し、そして(3)テンプレートDNAおよびプライマーを変性
する。これらの条件は、「AMPLITAQ」または「AMPLITAQ GO
LD」(PE Biosystemsから入手可能)のような熱安定ポリメラー
ゼを有意に不活化しない。次いでこの混合物を所望の量の増幅が得られるまで、
選択された回数のPCRサイクルを循環させる。適切な熱循環機(thermo
cycler)は、PE Biosystemsの「GENEAMP PCR
INSTRUMENT SYSTEM」である。好ましくは、プライマーアニー
リング温度は、任意の残留UNG酵素の活性を抑制するために、55℃より高い
。最後のサイクルの後、サンプルを、好ましくは熱循環機から取り出すまで72
℃に保持する。取り出す際、混合物を好ましくは直ちに−20℃で貯蔵するか、
または任意の残留UNG活性を変性させるために等容量のクロロホルムで処理す
る。
【0036】 (B.配列決定試薬) 本発明は、配列決定のための3’−標識化プライマー伸長産物を生成するため
の、伸長可能で標的特異的なプライマー、1つ以上の標識化ヌクレオチドターミ
ネーター、および他の試薬を利用する。選択された試薬は、以下で考察される。
【0037】 (1.ヌクレオチドターミネーター) 各ヌクレオチドターミネーターは、選
択されたポリヌクレオチド塩基(例えば、A、C、G、TまたはU)に相補的で
あり、そしてまたプライマーまたは伸長産物が、標的ポリヌクレオチドテンプレ
ートに特異的にアニールされる場合に、配列決定プライマーまたは増殖プライマ
ー伸長産物の3’末端に共有結合で連結され得る、任意のヌクレオチドである。
従って、配列決定プライマーまたはその伸長産物の3’末端に共有結合で連結す
るために、ヌクレオチドターミネーターは、(1)プライマー3’−ヒドロキシ
ル基と反応するための適切な5’反応性基(例えば、5’−トリホスフェート部
分)を含むが、ターミネーターは、(2)例えば、3’−ヒドロキシル基の代わ
りにリボース環またはデオキシリボース環に3’−デオキシ置換基または3’−
ヒドロキシ−ブロック基を有することにより、3’方向にさらに伸長し得ない。
3’−デオキシ置換基の例としては、例えば以下が挙げられる:水素、3’−フ
ルオロ、3’−アミノ、および3’−アジド(Mikhail−opuloら、
1989;Krayevskiら、1984;Chidgeavadze、19
86)。3’−ヒドロキシブロック基の例としては、例えばホスフェート、ホス
ホネート、t−BOC、およびO−アセチルが挙げられる。例示的なヌクレオチ
ド糖部分としては、2’,3’−ジデオキシ−β−D−リボフラノシル、β−D
−アラビノフラノシル、3’−デオキシ−β−D−アラビノフラノシル、3’−
アミノ−2’,3’−ジデオキシ−β−D−リボフラノシル、および2’,3’
−ジデオキシ−3’−フルオロ−β−D−リボフラノシル(例えば、Chidg
eavadze,1985)。
【0038】 各ヌクレオチドターミネーターは、ターミネーターを含む配列決定プライマー
伸長産物を検出するために、検出可能な標識部分を含む。標識は、それ自身が検
出可能な直接的標識、または2次的な化学剤の使用と組合せて検出可能な間接的
標識であり得る。例示的な直接的標識としては、蛍光団、発色団、放射性同位体
(例えば、32P、35S、14C、3H)、スピンラベル、化学発光標識などが挙げ
られるが、これらに限定されない。例示的な間接的標識としては、シグナル生成
事象を触媒する酵素、および特異的結合対のメンバーであるリガンドが挙げられ
、特異的結合対は、例えば、検出可能な抗リガンドに高い親和性で特異的に結合
し得る抗原またはビオチン、例えば、標識化抗体またはアビジンである。好まし
くは、標識は、非放射性同位体標識である。より好ましい実施形態では、標識は
蛍光標識または化学発光標識であり、最も好ましくは、蛍光標識である。
【0039】 同位体標識は、公知の方法によりターミネーターに導入され得る。例えば、32 Pは、αホスフェート位置に、適切な5’−活性化ヌクレオシド前駆体の5’−
リン酸化により取り込まれ得る。35Sは、公知の硫化プロセスにより、5’−α
−リン原子に付加され得る。トリチウムまたは14Cを、ヌクレオシド構造に取り
込むための方法もまた、周知である。
【0040】 非同位体標識がまた、公知の方法によってヌクレオシドアナログに取り込まれ
得る。代表的に、標識は、ヌクレオシド塩基中に位置される適切な置換位置(例
えば、ピリミジンの5位および7−デアザプリンの7位)に付着される(例えば
、Prober、1987、1995;Menchenら、1991、1994
;Leeら、1992a、b)。
【0041】 本発明に従って使用される蛍光標識は、以下の性質を有するべきである:(1
)この標識の検出を容易にし、そして存在し得る他の塩基特異的標識から識別可
能にする、識別可能な発光波長、(2)他の標識とのスペクトルのオーバーラッ
プを減少するための、狭い発光帯域幅、(3)安価な光源(例えば、488nm
および514nmの発光ピークのアルゴンレーザー)による励起を受けやすい吸
収スペクトル、(4)励起後の蛍光発光が、緩和の主要な経路であることを意味
する、高量子収量、(5)プライマー伸長フラグメントの付属物のために、DN
AまたはRNAポリメラーゼによるプロセシングに適合性の立体特性および化学
特性、ならびに(6)伸長工程、分離工程および検出工程に対する安定性。
【0042】 多くの有用な蛍光標識されたヌクレオチドターミネーターが記載されている。
Proberら(1987、1995)は、特定のキサンテン(スクシニルフル
オレセイン)を開示し、このキサンテンは、単一伸長反応において使用され、続
いて単一レーンで電気泳動分離され得る。さらに、優れた蛍光標識が、以下に記
載される:Bergotら(1991;1994)およびRosenblumら
(1997)(4,7−ジクロロ置換を有するかまたは有さない、9’−フェニ
ルローダミン骨格);Menchenら(1991;1994)(4,7−ジク
ロロフルオレセイン);Leeら(1992a;1992b)(フルオレセイン
骨格);およびLeeら(1997a、b)およびRosenblumら(19
97)(4,7−ジクロロローダミン(「dローダミン」)およびフルオレセイ
ン−ローダミン ドナー−アクセプター結合体)。後のクラスの蛍光標識が、好
ましい。なぜなら、これらは、高スペクトル分解能(high spectra
l resolution)および超高量子効率(very high qua
ntum efficiency)(〜100%)を有する4色色素セットを提
供し得るからである。
【0043】 標識は、ヌクレオチド塩基、詳細にはピリミジンの5位およびデアザプリンの
7位に容易に結合し得る。これらの位置における置換は、一般的に、関連する塩
基の正常な塩基対形成を妨げず、そして同時にこれらは、種々のポリメラーゼに
よるプロセシングを受容可能である(Prober、1995、17頁)。
【0044】 一般的に、リンカーは、異なる形態の数を取り得、その結果、ターミネーター
塩基および標識の間の連結の長さおよび剛性は、大きく変化し得る。例えば、使
用され得るいくつかの適切な塩基標識手順が、報告されている:例えば、Gib
sonら(1987)、Gebeyehuら(1987)、Haralambi
disら(1987)、Haugland(1989)、Menchen(19
94)、Leeら(1992b)など。特に、フルオレセインおよびローダミン
標識は、適切な官能基(例えば、カルボキシル、スルホニル、イソチオシアネー
ト、スクシンイミジルカルボキシレート、ホスホルアミダイト、アミノおよびメ
チルアミノ)を含むように改変され得る(例えば、Menchen、1994)
。1つの実施形態において、標識および塩基の間の連結基は、Proberら(
1995)およびHobbsら(1991、1992)によって教示(これらは
、本明細書中に参考として援用される)されるように、蛍光標識のN−ヒドロキ
シスクシンイミド(NHS)エステルをターミネーター(3−アミノ−1−プロ
ピニルリンカーを含む)のアルキニルアミノ誘導体化された塩基と反応させるこ
とによって形成される。Rosenblumら(1997)に記載のプロピニル
エトキシアミノリンカーのようなより長いリンカー(これは、ローダミン化合物
の5または6−カルボキシ基をddT、ddCおよびddGの塩基部分と連結す
るために使用される)がまた、使用され得る。ドナー−アクセプター蛍光標識(
ときどき、エネルギー移動色素とも呼ばれる)に関して、ドナーおよびアクセプ
ターはまた、Leeら(1997a)およびRosenblumら(1997)
に記載されるような種々のリンカー(4’−アミノメチルベンゾエート−含有リ
ンカーが好まれる)によって、連結され得る。種々の連結技術に関するさらなる
詳細は、例えば、Leeら(1992b)、Proberら(同書)、Rose
nblumら(1997)、およびLeeら(1997a、b)に見出され得る
【0045】 (2.プライマー)本発明の方法は、好ましくは、標的特異的プライマーを利
用し、これは、(i)標的結合セグメント、および(ii)標的に結合しない移
動度低減部分を含む。プライマーは、標準的な化学(例えば、ホスホルアミダイ
ト化学)を用いて、好ましくは自動DNA合成機(例えば、PE Biosys
tems(Foster City,CA)のモデル392または394DNA
/RNA合成器)を用いた任意の適切な方法によって調製され得る(Beauc
age;Gait,1984、1990)。
【0046】 プライマーの標的結合セグメントの配列は、選択された相補標的配列にハイブ
リダイズするように選択される。代表的には、選択された標識配列は、サンプル
がクローニングされるプラスミド(例えば、m13ファージ)のようなクローニ
ングベクター由来のユニバーサルプライマー配列である。あるいは、その標的結
合セグメントは、配列決定される標的座の上流の保存された領域または目的の領
域の上流の特有の標的配列にアニールするように選択され得る。
【0047】 標的結合セグメントの長さは、サンプル中の非標的核酸への有意な交差ハイブ
リダイゼーションを伴わずに、そのプライマーのその所望の標的への特異的ハイ
ブリダイゼーションを保証するように選択される。好ましくは、標的結合セグメ
ントの融解温度は、摂氏35℃と75℃の間、より好ましくは50℃と70℃の
間、そしてなおより好ましくは55℃と65℃の間である。選択された融解温度
は、プライマー融解温度の推定のための公知の方法(例えば、Breslaue
r、1986;Rychlik,1989および1990;Wetmur,19
91;Osborne,1991;Montpetit,1992)に基づく、
塩基組成物および結合セグメント長の適切な選択によって達成され得る。代表的
に、標的配列セグメントは、15塩基と30塩基の間の長さである。約18塩基
および24塩基の間の長さの標的結合セグメント長が、通常好ましい。なぜなら
、そのようなオリゴヌクレオチドは、アニーリング温度がプライマー融解温度の
数度内に設定される場合、非常に配列特異的になりやすいからである(Dief
fenbach、1995)。
【0048】 標的結合セグメントは、好ましくは伸長可能であるように設計され、これは、
標的配列セグメントが相補標的配列にハイブリダイズする場合、ヌクレオチドモ
ノマーまたはターミネーターが、標的結合セグメントの末端の1つに付加され得
ることを意味する。代表的に、プライマーの伸長可能な末端は、標的結合セグメ
ントの3’末端に配置され、その結果、3’−末端塩基は、3’−ヒドロキシル
、3’−アミノまたはプライマー伸長試薬によってヌクレオチドターミネーター
に共有結合し得る他の反応基を含む。最も代表的には、プライマーの3’−末端
は、3’−末端ヒドロキシル基を含む。
【0049】 上記のように、配列決定のプライマーは、さらに、標的ポリヌクレオチドに有
意に結合またはハイブリダイズしない移動度低減部分を含む。移動度低減部分の
主な目的は、配列決定伸長産物の移動速度を減少するためであり、その結果、標
識されたターミネーター分解産物は、電気泳動分離の間に、伸長されていないプ
ライマーの前に溶出する。特に、移動度低減部分は、各プライマー伸長産物の移
動速度を特定の量で(例えば、プライマー中の少なくとも10個のさらなるヌク
レオチド塩基の存在に等しい量で)減少するように、移動度低減部分を欠く対応
するプライマー伸長産物の移動度に対応して、選択され得る。
【0050】 第1の実施形態において、移動度低減部分は、ポリヌクレオチドセグメントを
含む。ポリヌクレオチドの配列は、サンプルポリヌクレオチドに対して非相補的
であるように選択され、その結果、特異的または非特異的ハイブリダイゼーショ
ンの何れも、サンプルポリヌクレオチドと共に生じ得ない。例えば、このセグメ
ントは、ホモ重合体(homopolymeric)(例えば、ポリ−C、G、
AまたはT)であり得るか、または二量体反復(例えば、ポリ(TC)(実施例
1)、ポリ(CA)など)を含み得る。移動度低減部分の正確な配列は、通常、
サンプルがセグメントに対して完全な相補配列を含まない限り、ならびに標的特
異的アニーリングおよびプライマー伸長が、配列決定に対して信頼して実施され
得る限り、重要ではない。
【0051】 第2の一般的な実施形態において、移動度低減部分は、非ポリヌクレオチドポ
リマーである。このポリマーは、ホモポリマーまたはブロックポリマーであり得
、そして例えば、線形、コーム、分岐、樹枝状または他の構築物を有し得る。好
ましいポリマーは、親水性であるポリマーか、または標的結合セグメントに結合
した場合にそのプライマーが水性媒体中で容易に可溶性であることを保証するの
に少なくとも十分に親水性であるポリマーである。ポリマーはまた、標的ポリヌ
クレオチドへの標的結合セグメントのハイブリダイゼーションに影響を与るべき
ではない。模範的なポリマーは、エチレンオキシド、グリコール酸、乳酸、アミ
ノ酸残基およびポリペプチド、糖類および多糖類、ポリウレタン、ポリアミド、
ポリスルホンアミド、ポリスルホキシドならびにそれらのブロックコポリマー(
荷電結合基または非荷電結合基によって結合された多重サブユニットのユニット
からなるポリマーを含む)から調製され得る。好ましい実施形態において、移動
度低減部分は、エチレンオキシドポリマーのポリマーであり、形態が[−(OC
2CH2nOP(=O)(O-)−]m(ここで、nは、5または6、そしてm
は、2〜20または好ましくは5〜10である)である。そのようなエチレンオ
キシド含有ポリマーは、ペンタエチレンオキシドまたはヘキサエチレンオキシド
ポリマーブロックから調製され得、次いでこれは、活性化されたホスホルアミダ
イト誘導体に転換されて、続いて標準的なホスホルアミダイト合成法によって選
択された数のポリマーブロックホスホルアミダイトが標的結合セグメントの5’
−末端に連続して添加される(例えば、実施例1〜4のGrossmanら、1
996を参照のこと)。
【0052】 本発明を支持する研究は、−(OCH2CH25OPO2−の各ユニットが、約
2個のさらなるヌクレオチドの等価体によって、結合されたポリヌクレオチドの
移動度を減少し、そして−(OCH2CH26OPO2−の各ユニットが、約2.
5個のさらなるヌクレオチドの等価体によって、結合されたポリヌクレオチドの
移動度を減少することを示した。
【0053】 移動度低減部分は、標的結合セグメントが意図される標的テンプレートに沿っ
たプライマー伸長を許容する場合、標的結合部分の任意の部分に結合され得る。
より好都合なことには、移動度低減部分は、プライマーの標的結合セグメントの
5’末端に連結される。移動度低減部分がポリヌクレオチドである場合、その部
分は、標準的な合成方法によってプライマー中に容易に組み込まれ得る。同様に
、非ポリヌクレオチドの移動度低減部分は、標準的な結合体化方法によって添加
され得るか、または標準的な固相合成方法用いてポリマー鎖サブユニットを結合
セグメントに添加することによって、標的結合セグメント上に構築され得る。さ
らに、本発明は、関連する標的結合セグメントに単一の部位で付着する単一ポリ
マー鎖に関して本明細書中に記載され得るが、本発明はまた、1つより多くのポ
リマー鎖エレメントによって誘導体化される標的結合セグメントもまた意図し、
ここでこのエレメントは、ポリマー鎖を集合的に形成する。選択された長さのポ
リマーを合成する方法は、例えば、Grossmanら(1996)に記載され
る。
【0054】 (3.プライマー伸長試薬)プライマー伸長試薬は、標的テンプレート鎖に相
補的な伸長可能なプライマー末端にヌクレオチドモノマーを付加するのに有効な
、任意の化学試薬または酵素試薬であり得る。1つの実施形態において、プライ
マー伸長試薬は、DNAポリメラーゼ酵素である。模範的なポリメラーゼ酵素と
しては、限定されないが、Pfu DNAポリメラーゼ、E.Coliポリメラ
ーゼI、T−7ポリメラーゼ、AMV逆転写酵素、Taq DNAポリメラーゼ
、AMPLITAQ DNAポリメラーゼ FS、クレノウフラグメント、Ve
nt DNAポリメラーゼなどが挙げられる(例えば、Kornbergおよび
Baker)。RNAポリメラーゼおよび逆転写酵素がまた、使用され得る(例
えば、RNAプライマーのために)。
【0055】 (II.方法) 本発明の方法の実施において、選択されたポリヌクレオチドサンプルは、プラ
イマーが1つ以上の標的ポリヌクレオチドのプライマー相補領域に特異的にアニ
ールするに効果的な条件下で、その標的特異的プライマーと接触され、1つ以上
の標的プライマーハイブリッドを形成する。
【0056】 上記に議論したように、この標的は、一本鎖DNAまたは二本鎖DNAであり
得、そして公知の方法に従って、例えば、「MICROCON−100」膜(A
micon,Inc.(Beverly,MA))もしくは「CENTRI−S
EP」スピンカラム(Princeton)を用いた超遠心分離によってか、ま
たはそのサンプルをエビアルカリホスファターゼおよびエキソヌクレアーゼ1と
処理すること(例えば、「PCR PRE−SEQUENCING KIT」(
Amersham−Pharmacia Biotech)を用いる)によって
、調製され得る。細菌人工染色体(BAC)のようなより長いDNA標的のため
に、塩化セシウムバンドまたはアルカリ溶解に供され(Marraら、1996
)、必要な場合、さらなるフェノール抽出およびイソプノパノール沈澱工程を伴
う、DNAテンプレートが好ましい。BAC DNA調製のための市販のキット
がまた、入手可能である(LigoChem.,http://www.lig
ochem.com)。
【0057】 アニーリング工程は、配列特異性を保証し、さらに受容可能な速度で安定なハ
イブリッドの形成を十分に可能にするに十分なストリンジェントである条件下で
実施される。プライマーアニーリングに必要な温度および時間の長さは、塩基組
成、プライマーの長さおよび濃度、ならびに使用される溶媒の性質(例えば、D
MSO(ジメチルスルホキシド)、ホルムアミドまたはグリセロールなどの共溶
媒の濃度、およびマグネシウムまたはマンガンなどの対イオン)を含むいくつか
の因子に依存する。代表的に、ハイブリダイゼーション(アニーリング)は、ア
ニーリング溶液における標的プライマーハイブリッドの融解温度より約5〜10
℃下である温度で実施される。代表的に、このアニーリング温度は、55〜75
℃の範囲であり、そしてこのプライマーの濃度は、約0.2μMである。そのよ
うな条件下において、アニーリング反応は、通常、数秒内に完了する。
【0058】 標的へのプライマーのアニーリングに続いて、このハイブリッドは、少なくと
も1つの標識された3’−オリゴヌクレオチドターミネーターで終止する1つ以
上のプライマー伸長を形成するに効果的な条件下で、選択された標的ヌクレオチ
ド塩基型に相補的な少なくとも1つの標識された3’−ヌクレオチドターミネー
ターの存在下で、プライマー伸長試薬と反応する。
【0059】 1つの実施形態において、プライマー伸長は、ターミネーターがアニーリング
されるプライマーの伸長可能な末端のすぐ側の標的ポリヌクレオチド中の塩基に
相補的な場合のみ、ハイブリッド中でそのターミネーターがアニーリングされた
プライマーに付加されるに効果的な条件下で、伸長可能なヌクレオチドの非存在
において実施される。そのプライマーの標的結合セグメントの配列は、選択され
た相補標的ポリヌクレオチドにハイブリダイズするように選択され、この選択さ
れた相補標的ポリヌクレオチドは、そのプライマーの伸長可能な末端の末端塩基
のすぐ側に位置する(直に隣接する)潜在的多型部位を含む。この検出される標
的配列は、標的ポリヌクレオチドにおける多型または変異の存在を同定するか、
特定の対立遺伝子を同定するか、または潜在的な標的配列の存在を除外するのに
十分な任意の塩基であり得る。例えば、ゲノムDNA標的において、標的塩基は
、単一ヌクレオチド多型(single nucleotide polymo
rphism)(SNP)であり得、これは、HLA型または任意の他の遺伝子
型形質もしくは表現型形質を有する特定の疾患の頻度と関連する。さらなる例示
として、この標的塩基は、例えば、(1)配列挿入の末端;(2)1つ以上の標
的塩基の欠失の結果として、標的中のプライマー相補領域にスプライスされた遠
隔領域の末端;または(3)誤ってスプライスされたmRNAセグメントの末端
を定義し得る。いくつかの場合において、標的多型または変異は、2つの可能な
選択的塩基のうちの1つを含む。従って、アニールされたプライマーを、伸長試
薬の存在下で対応する2つの相補ターミネーター塩基と反応させることは、2つ
の可能な代替配列のうちの少なくとも1つの同定に十分であるべきである。同様
に、標的多型が3または4つの可能な代替物の1つである場合、アニールされた
プライマーは、適切な数の可能な塩基型代替物と反応すべきであり、どの可能な
配列が実際に存在するかを確認する。
【0060】 別の実施形態において、プライマー伸長は、標的相補ポリヌクレオチドモノマ
ーおよびターミネーターの添加によって特異的にハイブリダイズされたプライマ
ーの3’末端を伸長するのに効果的な条件下で、標識された3’−ヌクレオチド
ターミネーターに加えて少なくとも1つの伸長可能なヌクレオチドモノマーの存
在中で実施され、1つ以上のプラーマー伸長生成物を形成する。代表的に、伸長
は、4つの標準的なデオキシリボヌクレオチド三リン酸(A、C、G、T(例え
ば、適切である場合、dGのdI置換およびdTのdU置換を含む))および1
、2、3または好ましくは4つの異なるヌクレオチドターミネーター、ターミネ
ーターを用いて実施され、数10または数百の長さを有する配列に関する配列情
報を提供するために、1つ以上のプライマー伸長生成物を形成する。
【0061】 伸長可能なヌクレオチド(存在する場合)および標識されたターミネーターの
濃度は、ポリメラーゼおよび公知の手順に従う他のパラメーター(上記に引用)
の選択に依存する。特に、ターミネーター濃度は、標識のシグナル強度(1より
多くの標識が使用される場合)およびポリメラーゼによる取り込み率における任
意の変動を考慮して最適化され得る(例えば、Rosenblumら(1997
)の表Iに開示されるターミネーター濃度を参照のこと)。
【0062】 プライマー伸長に使用される反応条件は、使用者によって選択される任意の適
切な条件であり得、そしてサンプルの量、ターミネーターの特徴、そしてプライ
マー伸長試薬の特性に一般に依存する。好ましくは、プライマー伸長試薬は、D
NAまたはRNAポリメラーゼであり、そして標識されたヌクレオチドターミネ
ーターは、5’−三リン酸基を含み、プライマーの3’−ヒドロキシル基への共
有連結を容易にする。核酸ポリメラーゼを用いるアニールされたプライマーを伸
長する条件は、周知である(例えば、Ausubel、Sambrook)。例
えば、反応条件は、伸長試薬の補助因子の使用条件、pH依存性および緩衝液の
選択に従って最適化され得る。特に、ターミネーター型の選択は、しばしば、ポ
リメラーゼの選択に影響を与える。例えば、Prober(1995)に記載の
キサンテン標識されたターミネーターは、T7DNAポリメラーゼ、AMV逆転
写酵素およびバクテリオファージT7ポリメラーゼに適合性であるが、DNAポ
リメラーゼIのクレノウフラグメントには適合性でない。Bergotら(19
91、1994)に記載のローダミン標識ターミネーターに関して、Taq D
NAポリメラーゼが好ましい。TaborおよびRichardson(198
9、1990)の改変されたT7 DNAポリメラーゼは、Menchenら(
1991;1994)およびLeeら(1992a、b)によって記載される蛍
光ターミネーターに対して好ましい。4,7−ジクロロローダミンターミネータ
ーおよびローダミンフルオレセイン(「BIGDYE」)エネルギー移動ターミ
ネーター(Leeら(1997a、b)およびRosenblumら(1997
)によって記載)に関して、「AMPLITAQ DNA POLYMERAS
E FS」が、通常好ましい(PE Biosystems)。上記のターミネ
ーターを用いるプライマー伸長に関する反応条件は、上記の参考文献およびいず
れかに記載されるか、または標準的な技術によって容易に最適化され得る。
【0063】 プライマーの選択、および特に移動度低減部分の選択は、使用される標識され
たターミネーターの型およびターミネーター分解産物の移動度に依存する。例え
ば、ローダミン標識されたターミネーターは、対応する非標識ターミネーターに
対するターミネーターの移動度を遅らせる3−窒素原子および6−窒素原子によ
って共有される共鳴安定化陽電荷を含む。従って、ローダミンターミネーターお
よびその分解産物は、短いプライマー伸長産物とともに同時移動し得、そして配
列決定を妨害し得る。同様に、Leeら(1997)およびRosenblum
ら(1997)によって記載される「BIGDYE」ローダミン/フルオレセイ
ンターミネーターは、正に荷電したローダミン部分の存在に起因して、短いプラ
イマー伸長産物を妨害し得る分解産物を生じる。最終的に、フルオロセインター
ミネーターは、通常、配列決定プライマーの前方に移動するが(3−酸素原子お
よび6−酸素原子によって共有される、共鳴安定化された負電荷の存在に起因し
て)、脱リン酸化および塩基部分の切断は、伸長産物と重複する分解産物を生じ
得る。従って、プライマー中の移動度低減部分の長さは、特定の長さの範囲のプ
ライマー伸長産物、および好ましくは、すべてのプライマー伸長産物が、標識さ
れたターミネーターまたはターミネーター分解産物からの妨害なしに目的の領域
において配列決定され得ることを保証するように選択される。特定の好ましい実
施形態において、移動度低減部分を欠く、対応するプライマー伸長産物の移動度
と比較して、少なくとも4または少なくとも10のさらなるヌクレオチド塩基に
等価な量で、または少なくとも15のさらなるヌクレオチド塩基の付加と等価な
量で、または少なくとも20のさらなるヌクレオチド塩基の付加と等価な量で、
移動度低減部分は、各プライマー伸長産物の移動度速度を減少するように選択さ
れる。
【0064】 1つの実施形態(ここでは、1つ以上の伸長可能なヌクレオチドが使用される
)において、プライマー伸長は、ハイブリダイゼーション混合液を2つ以上のア
リコートに分割することによって達成され、そして各アリコートは、異なる、単
一のヌクレオチドターミネーター塩基型を用いて反応される。例えば、ハイブリ
ダイゼーション混合液は、4つのアリコートに分割され、そして各アリコートは
、A、C、G、またはT/Uに等価な選択されたターミネーターを用いて反応さ
れる。このアプローチを用いると、各異なるターミネーター型についての伸長反
応が、プライマー伸長および電気泳動による分離の間、互いに分離したままであ
るならば、すべてのターミネーターは、同じ標識を含み得る。好ましくは、ハイ
ブリダイゼーション混合液は、A、C、G、およびU/Tを含む4つのターミネ
ーター型のセットを用いて同じ混合液中で同時に反応され、そして別個の標識を
有して、各ターミネーター型を同定する。
【0065】 本発明の種々の実施形態に従って、プライマー伸長の複数のサイクルは、公知
の方法(サイクルシークエンシング)を使用して反応混合液中で実行され、分析
のための伸長産物のレベルを増大し得る。従って、第1の伸長反応後、プライマ
ー(伸長したものおよび伸長していないもの)は、適切な手段によって(例えば
、伸長産物の融解温度より十分上に伸長反応を加熱することによって)標的ポリ
ヌクレオチドから変性され得、新規な伸長していないプライマーの標的ポリヌク
レオチドへのアニーリング、およびプライマー伸長へと続く。伸長していないプ
ライマーは、通常、標的ポリヌクレオチドに対して過剰に存在するので、標的ポ
リヌクレオチドに再アニーリングする伸長したプライマーの量は、通常有意では
ない。例えば、伸長混合液は、複数のサイクル(例えば、10〜50)を通して
サイクルされ得、このサイクルは、(1)95℃、10秒間の加熱(変性)、4
5℃、5秒間(プライマーアニーリング)の加熱、および60℃、1〜5分間(
伸長)の加熱を含む。
【0066】 プライマー伸長産物が形成された後、産物混合物は、電気泳動の前に、残りの
ターミネーターおよびターミネーター副産物ならびに他の反応成分を除去するた
めに必要に応じて精製される。このような精製工程は、サンプルから標識された
ターミネーター産物のバルクを減少させるために有用であり得る。しかし、精製
の利点は、精製工程の数とともに一般的に減少する。また、精製工程は、配列決
定のコストおよび時間を増大し、そして伸長産物の損失に起因して、シグナルを
減少し得る。
【0067】 公知の技術(例えば、PE Biosystems(1998)、Foste
r City,CAから利用可能である「ABI PRISM BIGDYE
Terminator Cycle Sequencing Ready Re
action Kit」という表題のプロトコルを参照のこと)に従って、任意
の適切な精製方法(例えば、ゲル濾過、エタノール沈殿、またはイソプロパノー
ル沈殿)が使用され得る。例えば、ゲル濾過は、好ましくは、Princeto
n Separations(P/N CS−901)からの「CENTRI−
SEP」スピンカラムを使用して達成される。このカラムを、カラムの内側に滴
下することなく、カラムベッドの中心上に注意深くロードされるべきである。ロ
ード後、このカラムは、好ましくは2分間未満、325〜730×gで遠心する
。濾液は、後の分離のために微量遠心管中で乾燥され得る所望の伸長産物を含む
。エタノール沈殿は、酢酸ナトリウムを用いて好ましく実行される。例えば、5
0μLの非変性95%エタノールおよび2μLの3M 酢酸ナトリウム(pH
4.6)を、シール可能なチューブ中で約20μLの伸長反応混合物に添加し、
約65%エタノールを含有する72μLの最終容量を生じ得る。より高いエタノ
ール濃度およびより低いエタノール濃度もまた、使用され得る。次いで、そのチ
ューブをシールし(例えば、3M「スコッチテープ」425−3接着性背面アル
ミニウムホイルテープの小片を用いて)、そして数回ひっくり返して混合する(
またはピペッティングによって混合する)。そのチューブを、15分間室温に放
置して、伸長産物を優先的に沈殿させる。次いで、そのチューブを、30〜45
分間、1400〜3000×gで遠心分離して、沈殿物をペレット化する。遠心
分離後、ペレットをかき乱すことなくすぐに粘着性テープを除去し、そして上清
を、ペーパータオル上でそのチューブを逆さまにすることによって除去する。逆
さまにしたチューブを、ペーパータオルとともに遠心管に入れ、1分間、700
×gで遠心分離する。ペレットを、50〜100μLの70%エタノールでリン
スし得、続いて、手短なボルテックス、遠心分離、上清の除去、およびペレット
の乾燥を行い得る。
【0068】 本発明の別の利点に従って、移動度低減部分(例えば、ポリヌクレオチドセグ
メント)の存在は、短いプライマー伸長産物のエタノール沈殿からの回収を改善
し得る。代表的には、伸長産物の回収は、エタノール濃度に依存する。より低い
エタノール濃度は、より少ない量のターミネーターおよびターミネーター分解産
物を沈殿させる傾向がある。しかし、短いプライマー伸長産物の回収もまた、減
少され得る。一方、より高いエタノール濃度は、沈殿した短い伸長産物の量を増
大し得るが、未反応のターミネーターおよびターミネーター分解産物もまた、増
大し得、得られる電気泳動像においてノイズの増大をもたらす。本発明を支持し
て行われた研究は、移動度低減部分を含むプライマーを用いて産生された短い伸
長産物が、移動度低減部分を欠く、対応する伸長産物よりもエタノール沈殿によ
ってより容易に沈殿し得ることを示す。従って、より低いエタノール濃度は、伸
長産物を選択的に沈殿させるために使用され得るが、一方未反応のターミネータ
ーは、上清に残っている。従って、標識したターミネーターおよびターミネータ
ー分解産物によって生成されたシグナルはさらに減少され得、その結果、短い伸
長産物の配列決定は、さらに単純化される。
【0069】 伸長産物は、より小さい伸長産物が、より大きな伸長産物よりもより迅速に移
動するような分子篩マトリックス中で変性条件下で電気泳動的に分離され得る。
使用され得る分子篩マトリックスには、共有結合的に架橋したマトリックス(例
えば、ビス−アクリルアミドと共有結合によって架橋されたアクリルアミド(C
ohenら、1990);直鎖状ポリマーで形成されたゲルマトリックス(Ma
tthiesら、1992);およびゲルを含まない分子篩媒体(Zhuら、1
992)が含まれる。好ましくは、電気泳動用マトリックスの型は、約2〜20
重量%の間の濃度(重量/体積)を有する、架橋ポリアクリルアミドまたは非架
橋ポリアクリルアミドである。より好ましくは、ポリアクリルアミド濃度は、約
4〜8%の間である。分離マトリックスは、さらに、変性剤(例えば、7M 尿
素、ホルムアミドなど)を含み得る。このようなマトリックスを構築するための
詳細な手順は、Maniatisら(1975、1980)およびSambro
okら(1982、1989)によって与えられている。特定の分離において使
用される最適なポリマー濃度、pH、温度、変性剤の濃度などは、分離される伸
長産物のサイズ範囲のような因子、異なる長さのフラグメントの数、およびそれ
らの塩基組成に依存する。従って、本発明の適用は、特定の分離についての条件
を最適化するための予備的な試験を必要とし得る。
【0070】 分離媒体の配置は、使用者によって選択される任意の適切な配置であり得る。
代表的な配置には、垂直スラブゲルまたは平面スラブゲル、キャピラリー電気泳
動チューブ、およびガラス基材またはシリコン基材のような基材において形成さ
れたチャネルが挙げられる。例えば、キャピラリーチューブまたはマイクロチャ
ネルは、代表的には、200μm以下の内径、およびより好ましくは、100μ
m以下の内径を有する電気泳動経路を規定する。
【0071】 伸長産物の分離の間またはその分離の後で、標的配列は、分離された伸長産物
の移動の順番から決定され得る。使用される標識の型に適切な任意の検出方法が
使用され得る。典型的な検出方法には、放射活性検出(例えば、CCDまたはホ
スホルイメージャーを使用すること)、光学吸光度検出(例えば、UV−可視吸
光度検出)、および光学発光検出(例えば、蛍光および化学発光)が挙げられる
【0072】 1つの好ましい実施形態において、異なる伸長産物が、検出を可能にするさら
なる化学的要素とフラグメントとの反応を必要とすることなく、直接検出される
。例えば、蛍光標識された伸長産物は、上述のように、スラブゲルまたはキャピ
ラリーチューブ中でなお、直接的に読みとられ得る。
【0073】 詳細には、蛍光標識された伸長産物は、色素標識されたポリヌクレオチドから
の蛍光発光を測定することによって検出され得る。このような検出を実行するた
めに、標識されたポリヌクレオチドは、標準的な手段(例えば、高強度水銀蒸気
ランプ、レーザーなど)によって照射される。好ましくは、これらの照射手段は
488nmと550nmとの間の波長の照射ビームを有するレーザーである。よ
り好ましくは、色素ポリヌクレオチドは、アルゴンイオンレーザーによって生成
されるレーザー光、特に、アルゴンイオンレーザーの488nmおよび514n
mの発光線、または532nmのネオジミウム半導体YAGレーザーの発光線に
よって照射される。これらの線と同時にレーザーを発するいくつかのアルゴンイ
オンレーザー(例えば、Cyonics,Ltd.(Sunnyvale,Ca
lif.)Model 2001など)が市販されている。次いで、蛍光は、光
感受性検出器(例えば、光電子増倍管、荷電結合デバイス(charged c
oupled device)など)によって検出される。配列決定のための典
型的な市販のシステムには、ABI PRISM 310(キャピラリー電気泳
動)および377(スラブゲル電気泳動)DNAシークエンサー(PE Bio
systems)が挙げられる。配列決定のための検出の種々のモードに関する
さらなる手引きは、Proberら(1995)、Rosenblumら(19
97)、およびLeeら(1997a、b)において見出され得る。塩基呼び出
しソフトウェアは、多数の商業的な供給源より入手可能であり、さらに配列決定
を単純化する。このようなソフトウェアは、好ましくは、標識したターミネータ
ーによって引き起こされる移動度シフトを修正するためのアルゴリズムを含む。
【0074】 配列決定が、伸長可能な4つのヌクレオチドモノマーおよび4つの異なって標
識されたターミネーター(または、同じ標識を含む4つの異なるターミネーター
、これらは、調製され、そして別々のレーンで電気泳動的に分離される)を使用
して行われる場合、連続する塩基の配列は、4つの異なるターミネーターを含む
フラグメントの移動の順番を照合することによって容易に決定され得る。しかし
、4つより少ない異なるターミネーターを使用することもまた、予想される配列
の存在または非存在を同定し得る電気泳動的なサインまたは指紋の形態(すなわ
ち、Tで終了するフラグメント)で、有用な情報を提供し得る。
【0075】 ヘテロ接合性サンプルについては、配列情報は、寄与する対立遺伝子配列が公
知である場合、重複配列の解析によって入手され得、そして互いに十分に区別可
能である。さもなくば、伸長産物の分析を単純化するために、対立遺伝子配列の
サブセットに選択的にハイブリダイズする、1つ以上の対立遺伝子特異的なプラ
イマーを別々に利用することが必要であり得る。伸長可能なヌクレオチドモノマ
ーの非存在下で標識されたターミネーターを利用する実施形態について、ヘテロ
接合性サンプルは、代表的には、等量の2つの可能な塩基型の存在に基づいて特
徴付けされ得る。
【0076】 (III.配列決定キット) 別の局面において、本発明は、上記の方法のいずれかにおいて使用され得るキ
ットおよび試薬を含む。1つの実施形態において、本発明は、(i)標的結合セ
グメントおよび(ii)標的に有意には結合しない移動度低減部分、を含む標的
特異的プライマーを含むキットを含む。そのキットはさらに、以下の1つ以上を
含み得る:(b)少なくとも1つの標識したヌクレオチドターミネーター、(c
)少なくとも1つの伸長可能な3’−ヌクレオシド、(d)プライマー伸長試薬
(例えば、ポリメラーゼ酵素)。このキットはまた、本発明に従ってキットを利
用するための取扱説明書を含み得る。好ましくは、少なくとも1つの標識したヌ
クレオチドターミネーターは、2’,3’−ジデオキシモノヌクレオチドである
。好ましい実施形態において、このキットは、アデニン、グアニン、シトシン、
およびチミンまたはウラシルの塩基に相補的な、4つの異なって標識されたヌク
レオチドターミネーターを含む。このキットはまた、A、G、C、およびU/T
に相補的な4つの伸長可能な3’−ヌクレオチドを含み得る。
【0077】 前述より、本発明の目的および特徴がいかに合致しているかが理解され得る。
本発明は、改善された色素ターミネーターポリヌクレオチド配列決定方法を提供
し、この方法は、色素ターミネーターおよび短いプライマー伸長産物を伴うター
ミネーター分解産物の同時移動から生じる問題を回避する。本発明は、伸長プラ
イマーの近傍のポリヌクレオチド領域の配列決定を可能にし、これは、多型改変
体を区別するために重要であり得る。さらに、本発明は、色素ターミネーターに
基づく配列決定方法によって、配列決定可能なポリヌクレオチド長範囲を効果的
に拡大する。従って、本発明は、直接標識法によって単一のポリヌクレオチド標
的またはヘテロ接合性ポリヌクレオチド標的を配列決定するために特に有用であ
る。その直接標識法では、検出のための第2の試薬を用いる伸長産物の反応を必
要とすることなく、配列情報は誘導されるが、伸長産物は分離媒体中にあるか、
またはその媒体から出つつある(例えば、電気泳動の間のリアルタイムモニタリ
ング、またはゲル中の選択される長さの範囲を横切る1つ以上のレーン中の移動
パターンをスキャンすることによって)。
【0078】 本発明はさらに、本発明の範囲を限定することを意図することなく、以下の実
施例を考慮することによってさらに理解され得る。
【0079】 (実施例1) ヒトHLA−DRB遺伝子座を含むサンプルを、HLA−DRBエキソン2(
逆方向)についての2つのコドン−86 GGT−特異的プライマーを使用して
、「HLA−DRB BIGDYE TERMINATOR SEQUENCI
NG−BASED TYPING KIT」(PE Biosystems,1
998)についてのプロトコルブックレット中に記載されるプロトコルに従って
配列決定した。2つのプライマーは、以下の配列を有した。ここで第2のプライ
マーは、24塩基長のポリd(TC)移動度低減部分を含む: (配列番号1(プライマー1)) GCA CTG TGA AGC TCT CAC C (配列番号2(プライマー2)) TCT CTC TCT CTC TCT CTC TCT CTC GCA CTG TGA AGC TCT CAG C プライマー伸長反応は、PE Biosystems(1998)から利用可能
である「ABI PRISM BIGDYE Terminator Cycl
e Sequencing Ready Reaction Kit」という表
題のプロトコルにおいて記載される手順に従って、これらのプライマーのどちら
か一方を単独で、および(1)ddT−EO−6CFB−dTMR、ddG−E
P−5CFB−dR110、ddC−EO−6CFB−dROX、およびddA
−PA−6CFB−dR6Gと呼ばれる、4つのBIGDYEターミネーター(
PE BiosystemsからのBIGDYE Ready Reactio
n Premix)を含む混合物または(2)ddT−EO−6ROX、ddG
−EO−5dR10、ddC−EO−5dTMR、およびddA−PA−5dR
6G(PE BiosystemsからのRhodamine Ready R
eaction Premix)を含む混合物のいずれかを使用して実行した。
伸長反応後、しかし、ABI PRISM Model 377 DNAシーク
エンサー上の電気泳動前に、プライマー伸長産物混合物(10μL)を、100
%エタノール:酢酸ナトリウム(3M、pH 4.6)の100:4(v:v)
混合物30μLと混合した。結果は以下の通りであった。
【0080】 BIGDYEターミネーターおよびプライマー1を使用する伸長反応について
、いくつかの大きな残りの(取り込まれていない)ターミネーターピークは、2
7の最も速く移動する伸長産物とともに同時に移動し、その結果、プライマーを
過ぎて最初の約30の標的塩基の配列を決定することは不可能であった。対照的
に、BIGDYEターミネーターおよびプライマー1を使用して形成された伸長
産物については、同じ残りのターミネーターピークが、最も迅速に移動する伸長
産物(プライマーおよび1塩基の伸長)の先に約3〜27塩基のウィンドウ中に
移動した。たとえあったとしても、非常に少ないターミネーターピークがプライ
マー伸長産物とともに同時に移動し、その結果、最初の20の標的ヌクレオチド
塩基を含む、すべてのプライマー伸長産物が読みとり可能であった。
【0081】 dローダミン伸長産物については、プライマー2の使用が、最も速く移動する
プライマー伸長産物の先に約5〜8塩基を移動させるいくつかの2つの主要なタ
ーミネーターピークを生ずるのに有効であった。さらに、いくつかの他の小さな
ターミネーターピークもまた、最も速く移動するプライマー伸長産物の先に移動
した。その結果、最初の20の標的塩基を含む全体の標的配列が容易に決定され
得た。対照的に、プライマー1の使用は、最初の20のプライマー伸長産物中の
いくつかの大きなターミネーターピークの同時移動をもたらし、その結果、いく
つかの最初の20の標的塩基は決定され得なかった。
【0082】 この研究は反復され、そこでは、30μLの代わりに25μLのエタノール:
酢酸ナトリウム混合液が使用された。この改変は、すべての場合において、残り
のターミネーターピークの増幅を減少させるのに有効であった。しかし、プライ
マー1を用いて形成されたプライマー伸長産物について、約20の最も速く移動
する伸長産物のレベルは、実質的に減少し、その結果、最初の20の標的塩基は
、決定するのが困難かまたは不可能であった。対照的に、20の最も速く移動す
る伸長産物についてでさえ、これらの種の効率よいエタノール沈殿に起因して、
プライマー2を含む伸長産物についてのシグナルは強力であった。
【0083】 全般的に、これらの結果は、本発明の方法が、短いプライマー伸長産物、特に
最初の20の標的塩基の読みとり可能性を改善するために有利であることを実証
する。
【0084】 本発明は、特定の実施形態に関して記載されてきたが、種々の改変が、本発明
から逸脱することなくなされ得ることが理解される。上記で引用されたすべての
参考文献は、その全体が参考として本明細書中に援用される。
【配列表】
【手続補正書】
【提出日】平成13年8月14日(2001.8.14)
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】特許請求の範囲
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (81)指定国 EP(AT,BE,CH,CY, DE,DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,I T,LU,MC,NL,PT,SE),OA(BF,BJ ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GW,ML, MR,NE,SN,TD,TG),AP(GH,GM,K E,LS,MW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZW ),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU, TJ,TM),AE,AL,AM,AT,AU,AZ, BA,BB,BG,BR,BY,CA,CH,CN,C R,CU,CZ,DE,DK,DM,EE,ES,FI ,GB,GD,GE,GH,GM,HR,HU,ID, IL,IN,IS,JP,KE,KG,KP,KR,K Z,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LV,MA ,MD,MG,MK,MN,MW,MX,NO,NZ, PL,PT,RO,RU,SD,SE,SG,SI,S K,SL,TJ,TM,TR,TT,TZ,UA,UG ,UZ,VN,YU,ZA,ZW (72)発明者 マドニク, アレックス エム. アメリカ合衆国 カリフォルニア 94702, バークレー, ケオンクレスト ドライ ブ 1533 Fターム(参考) 2G045 AA25 AA35 DA12 DA13 DA14 FB02 FB05 FB06 FB07 FB12 FB13 GC10 GC15 JA20 4B024 AA20 BA80 CA01 CA11 HA19 4B063 QA13 QQ42 QQ52 QR08 QR32 QR42 QR62 QS03 QS16 QS25 QS36 QS39 QX02 QX07

Claims (15)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 標的ポリヌクレオチド中の1以上のヌクレオチドの配列を決
    定するための方法であって、該方法は、以下の工程: (a)標的特異的プライマーを、該プライマーが1以上の該標的ポリヌクレオ
    チド中のプライマー相補領域に特異的にアニーリングするに有効な条件下でポリ
    ヌクレオチドサンプルと接触させて、1以上の標的−プライマーハイブリッドを
    形成させる工程であって、ここで各該標的特異的プライマーが、(i)標的結合
    セグメントおよび(ii)該標的に結合しない移動度低減部分を含む、工程、 (b)該ハイブリッドを、選択されたヌクレオチド塩基型に相補的な少なくと
    も1つの標識3’ヌクレオチドターミネーターの存在下で、該少なくとも1つの
    標識3’ヌクレオチドターミネーターで終結する1以上のプライマー伸長産物を
    形成するに有効な条件下でプライマー伸長試薬と反応させる工程、 該プライマー伸長産物を、より小さな伸長産物が、より大きな伸長産物よりも
    迅速に移動するように、篩い分けマトリックス中で変性条件下で電気泳動によっ
    て分離する工程、および 分離した該伸長産物の移動度およびターミネーター標識に基づいて標的配列を
    決定する工程、 を包含する、方法。
  2. 【請求項2】 プライマー伸長が、標的相補ポリヌクレオチドモノマーおよ
    びターミネーターの添加によって、少なくとも1つの伸長可能ヌクレオシドモノ
    マーの存在下で、特異的にハイブリダイズしたプライマーを伸長するに有効な条
    件下で行われて、前記1以上の伸長産物が形成される、請求項1に記載の方法。
  3. 【請求項3】 プライマー伸長が、伸長可能ヌクレオシドモノマーの非存在
    下で、前記少なくとも1つの標識3’ヌクレオチドターミネーターを、該ターミ
    ネーターが、少なくとも1つの特異的にアニーリングしたプライマーの伸長可能
    末端に隣接した前記標的ポリヌクレオチド中の塩基に相補的である場合にのみ、
    該アニーリングしたプライマーに対して付属させるに有効な条件下で行われる、
    請求項1に記載の方法。
  4. 【請求項4】 少なくとも1つの3’ヌクレオチドターミネーターが、蛍光
    標識を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
  5. 【請求項5】 前記反応させる工程が、4つの異なる3’ヌクレオチドター
    ミネーターの存在下で行われ、該ターミネーターが、(i)各々、異なるヌクレ
    オチド塩基型に相補的であり、そして(ii)各々、該ターミネーターの塩基型
    を同定する区別可能な蛍光標識を含む、請求項4に記載の方法。
  6. 【請求項6】 前記分離する工程が、スラブゲル電気泳動によって行われる
    、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
  7. 【請求項7】 前記分離する工程が、キャピラリー電気泳動によって行われ
    る、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
  8. 【請求項8】 前記分離する工程が、マイクロチャネル中で行われる、請求
    項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
  9. 【請求項9】 少なくとも1つの3’ヌクレオチドターミネーターが、放射
    性標識を含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
  10. 【請求項10】 前記移動度低減部分が、前記標的ポリヌクレオチドに結合
    しないポリマーセグメントを含む、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
  11. 【請求項11】 前記ポリマーセグメントが、前記標的ポリヌクレオチドに
    結合しないポリヌクレオチドセグメントを含む、請求項10に記載の方法。
  12. 【請求項12】 前記移動度低減部分が、該移動度低減部分を欠く、対応す
    るプライマー伸長産物の移動度と比較して、少なくとも10個のさらなるヌクレ
    オチド塩基に等しい量で各プライマー伸長産物の移動速度を減少させるに有効で
    ある、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
  13. 【請求項13】 移動度における前記減少の量が、少なくとも15個のさら
    なるヌクレオチド塩基の添加に等しい、請求項12に記載の方法。
  14. 【請求項14】 移動度における前記減少の量が、少なくとも20個のさら
    なるヌクレオチド塩基の添加に等しい、請求項13に記載の方法。
  15. 【請求項15】 請求項1〜14のいずれか1項に記載の方法における使用
    のためのキットであって、該キットは、 標的特異的プライマーであって、(i)標的結合セグメントおよび(ii)該
    標的に有意には結合しない移動度低減部分を含む、標的特異的プライマー、 必要に応じて、少なくとも1つの標識ヌクレオチドターミネーター, 必要に応じて、少なくとも1つの伸長可能3’ヌクレオシド、 プライマー伸長試薬、ならびに 必要に応じて、該キットを利用するための使用説明書、 を備える、キット。
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