JP2002531517A - 異所性石灰化を阻害する方法 - Google Patents

異所性石灰化を阻害する方法

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Abstract

(57)【要約】 本発明は、個体における異所性石灰化を阻害する方法を提供する。この方法は、治療有効量のオステオポンチンまたはその機能的なフラグメントを個体に投与する工程からなる。本発明はまた、異所性石灰化の部位に対して標的化された個体の酸生成細胞に投与することにより、異所性石灰化を処置または阻害する方法を提供する。本発明はさらに、オステオポンチンを投与することにより異所性石灰化の部位に対して酸生成細胞の補充を促進する工程からなる、個体における異所性石灰化を処置または阻害する方法を提供する。本発明はまた、オステオポンチンを投与することにより、異所性石灰化の部位で炭酸脱水素酵素IIの発現を増加する工程からなる、個体における異所性石灰化を処置または阻害する方法を提供する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】 (異所性石灰化を阻害する方法) 本発明は、国立保健研究所(National Institutes of
Health)より授与された助成金番号HL40079−6A2およびHL
18645、ならびに全米科学財団(National Science Fo
undation)により授与された助成金番号EEC9520161の下で政
府の援助によりなされた。合衆国政府は、本発明における特定の権利を有する。
【0002】 (発明の背景) (発明の分野) 本発明は、一般的に医学分野、そしてより特異的には異所性石灰化を阻害する
方法に関する。
【0003】 (背景情報) 歯または骨以外の組織でのカルシウムの結晶の沈着とは、異所性石灰化と言わ
れ、腎不全、心臓血管疾患、糖尿病および加齢過程と関連して一般的に生じる。
腎不全を有する患者、特に長期の血液透析を受け、そして血清の鉱物バランスを
適切に調節し得ない患者において、肺、心臓、胃および腎臓を含む内部器官にお
ける石灰化が頻繁に見出される。より低い程度で一般的に、血液透析の患者は、
有痛性の石灰化した皮膚病変を発生し、その皮膚病変は、非治癒性の潰瘍または
壊疽に進行し、そして罹患した肢の切断を必要とする。
【0004】 異所性石灰化はまた、生体人工心臓弁の移植の通常の合併症であり、そして置
換弁不全の主要な原因である。異所性石灰化はまた、アテローム硬化症、糖尿病
および心臓血管の疾患に関連して天然の心臓弁および血管に生じる。脈管構造に
おける鉱物の沈着は、口を狭くし、そして罹患した弁および血管の壁を硬化し、
心臓および末梢器官への血流の減少を生じる。従って、異所性石灰化は、弁不全
、発作、虚血および心筋梗塞の危険を増大する。
【0005】 異所性石灰化の部位において(例えば、アテローム硬化症プラークおよび石灰
化した大動脈弁において)、豊富な1つのタンパク質は、オステオポンチンであ
る。オステオポンチンは、細胞の接着、伝播、および移動の促進を含むいくつか
の既知の機能を有する。オステオポンチンは、冠状アテローム硬化症プラークに
おける初期の石灰化の部位と共存し、そして、その発現は、アテローム硬化症が
進行するにつれて増加する。これらの知見は、インビトロでのオステオポンチン
がカルシウム結合特性を有することを示す研究と組み合わされ、オステオポンチ
ンが異所性石灰化に関与し得るという示唆を導いた。以前の研究は、インビボで
の異所性石灰化におけるオステオポンチンの役割に取り及んでいない。
【0006】 未処置で放置される場合、異所性石灰化は、罹患率および死の増加を生じる。
血清の鉱物レベルを正規化するための、または血管組織または移植片の石灰化を
阻害するための現在の治療は、効力が制限され、そして受容可能でない副作用を
引き起こす。
【0007】 従って、異所性石灰化を阻害する有効な方法に対する必要性が存在する。本発
明は、この必要性を充たし、そして関連する利点もまた提供する。
【0008】 (発明の要旨) 本発明は、個体において異所性石灰化を阻害する方法を提供する。この方法は
、治療有効量のオステオポンチンまたはその機能的フラグメントを個体に投与す
る工程からなる。この方法は、種々の条件(例えば、アテローム硬化症、狭窄症
、再狭窄、人工弁置換、血管形成術、腎不全、組織損傷、糖尿病および加齢)に
関連する異所性石灰化を阻害するために使用され得る。本発明はまた、異所性石
灰化の部位に対して標的化された個体の酸生成細胞への投与によって異所性石灰
化を処置または阻害する方法を提供する。本発明はさらに、オステオポンチンの
投与によって、異所性石灰化の部位に対する酸生成細胞の補充を促進する工程か
らなる、個体における異所性石灰化を処置または阻害する方法を提供する。本発
明はまた、オステオポンチンの投与により異所性石灰化の部位での炭酸脱水素酵
素IIの発現を増加する工程からなる、個体における異所性石灰化を処置または
阻害する方法を提供する。
【0009】 (発明の詳細な説明) 本発明は、異所性石灰化の阻害のための有効な方法に関する。異所性石灰化は
、通常、腎不全、心臓血管疾患、糖尿病、および加齢過程に関連して生じる。脈
管構造の異所性石灰化は、心筋梗塞、虚血、発作、血管形成術後の切開および心
臓弁不全の個体の危険性を増大する。生体人工心臓弁のようなプロテーゼ移植片
の異所性石灰化は、移植片不全の主要な原因である。ゆえに、この方法は、異所
性石灰化に関連する疾患および死を減少する。
【0010】 この方法は、オステオポンチンが異所性石灰化を有効に、かつ特異的に阻害し
得るという発見に基づく。従って、異所性石灰化は、治療有効量のオステオポン
チンまたはその機能的フラグメントを、個体に対応して全身または異所性石灰化
の予想部位もしくは既知の部位に投与することによって予防または処置され得る
。オステオポンチンが、石灰化した組織および異所性石灰化の部位において通常
に見出されることから、それは、最小限の毒性または免疫原性の副作用で投与さ
れ得る。
【0011】 本明細書中で用いられるように、用語「異所性石灰化」とは、骨および歯以外
の部位でのカルシウム結晶の異常な沈着を意味することを意図する。異所性石灰
化は、細胞外マトリックスにおける巨視的な無定形のリン酸カルシウムおよびヒ
ドロキシアパタイト沈着の蓄積に帰着する。
【0012】 異所性石灰化は、種々の組織および器官において生じ得、そして多くの臨床状
態に関連する。例えば、異所性石灰化は、冒された組織への炎症または損傷の結
果であり得るか、全身の鉱物不均衡より生じ得る。一般的に、異所性石灰化は、
動脈、静脈、毛細血管、弁および洞を含む血管組織において生じる。血管への炎
症または損傷は、例えば、環境要因(例えば、喫煙、高脂肪の食事)の結果とし
て生じる。炎症または損傷はまた、創傷、血管手術、心臓手術または血管形成術
から生じる血管への外傷の結果として生じ得る。血管の石灰化はまた、加齢およ
び疾患(高血圧、アテローム硬化症、糖尿病、腎不全およびその後の透析、狭窄
ならびに再狭窄を含む)に関連する。
【0013】 異所性石灰化はまた、腱(Rileyら、Ann.Rheum.Dis.55
:109−115(1996))、皮膚(Evansら、Pediatric
Dermatology 12:307−310(1997))、強膜(Dai
ckerら、Opthalmologica 210:223−228(199
6))および子宮筋層(McCluggageら、Int.J.Gynecol
.Pathol.15:82−84(1996))のような非血管組織において
生じる。(それらの各々は、本明細書中において参考として援用される)。全身
の鉱物不均衡という結果を生じる疾患(例えば、腎不全および糖尿病)において
、内部器官(肺、心臓、腎臓および胃を含む)における異所性石灰化は、通常で
ある(本明細書中で参考として援用される、Hsu、Amer.J.Kidne
y Disease 4:641−649(1997))。さらに、異所性石灰
化は、医用材料、プロテーゼおよび医療デバイス(例えば、生体人工心臓弁)の
移植の頻繁な合併症である(本明細書中で参考として援用される、Vyavah
areら、Cardiovascular Pathology 6:219−
229(1997))。本発明の方法は、これらの状態のすべてに関連して生じ
る異所性石灰化に適用可能である。
【0014】 用語「異所性石灰化」とは、骨の形成および成長の間、骨基質内で通常に生じ
る石灰化をいうことを意図しない。本明細書中で使用されるように、異所性石灰
化はまた、腎尿細管において生じる異常な石灰化、主要なシュウ酸含有カルシウ
ム腎臓結石の形成を生じる尿とは異なる。
【0015】 本明細書中で使用されるように、用語「阻害する」とは、異所性石灰化を阻害
することに関連して、細胞外マトリックスのヒドロキシアパタイト結晶の沈着の
形成、増殖または沈着の予防、遅延または逆転を意味することを意図する。
【0016】 本明細書中で使用されるように、用語「オステオポンチン」とは、異所性石灰
化を阻害し得る分子、およびオステオポンチンとして当該分野において公知な1
つ以上の分子に対する認識可能な類似の分子を意味することを意図する。オステ
オポンチンは、約34kDaの推定分子量を有するリン酸化されたシアロタンパ
ク質として特徴付けられる。高い陰性、翻訳後修飾および選択的にスプライジン
グされたアイソフォームに起因して、オステオポンチンは、ドデシル硫酸ナトリ
ウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)によって決定され
たような約44kDaと85kDaの間の見かけの分子量を有すると報告されて
いる(Giachelliら、Trends Cardiovasc.Med
5:88−95(1995))。オステオポンチンの翻訳後修飾形態、および選
択的にスプライジングされたアイソフォームの全ては、本明細書中で使用される
オステオポンチンの定義内に含まれる。
【0017】 オステオポンチンは、ラット(Oldbertら、Proc.Natl.,A
cad.Sci.USA 83:8819−8823(1986));マウス(
Craigら、J.Biol.Chem.264:9682−9689(198
9));ヒト(Kieferら、Nucleic Acids Res.17:
3306(1989)およびYoungら、Genomics 7:491−5
02(1990));ブタ(Wranaら、Nucleic Acids Re
s.17:10119(1989));ウシ(Kerrら、Gene 108:
237−243(1991));ウサギ(Tezukaら、Biochem.B
iophys.Res.Commun.186:911−917(1992))
;およびニワトリ(Mooreら、Biochemistry 30:2502
−2508(1991))を含む種々の種において同定されている。(これらの
各々は、本明細書中で参考として援用される)。これらの種由来のオステオポン
チンおよび他の脊椎動物由来のオステオポンチンは、本明細書中で使用されるオ
ステオポンチンの定義に含まれる。
【0018】 オステオポンチンは、既知の種にわたって保存される1つ以上のドメインの存
在によって特徴付けられる。オステオポンチンを特徴付ける保存されたドメイン
は、例えば、N末端シグナル配列、カゼインキナーゼIIリン酸化部位、選択的
にスプライジングされたドメイン、Arg−Gly−Asp(RGD)−含有イ
ンテグリン結合細胞接着ドメイン、Asp−に富んだカルシウム結合ドメイン、
カルシウム結合相同性ドメインおよび2つのヘパリン結合相同性ドメインを含む
(Giachelliら、前出(1995))。従って、オステオポンチンのこ
れらの特徴的な特性の1つ以上を有する新規に同定された分子もまた、オステオ
ポンチンの定義内に含まれる。
【0019】 オステオポンチンはまた、骨シアロタンパク質I、ウロポンチン(uropo
ntin)、分泌リンタンパク質I、2ar、2B7およびEta 1として当
該分野において公知である(Giachelliら、前出(1995))。当該
分野において使用されるこれらの用語のすべてによって包含される分子は、本明
細書中で使用されるオステオポンチンの定義内に含まれる。
【0020】 ヒトオステオポンチンのヌクレオチド配列および推定アミノ酸配列は、Kie
ferら、前出(1989)によって記載され、そして本明細書中の図1(配列
番号1および2)に示される。用語、オステオポンチンは、例えば、配列番号2
に示される配列と実質的に同じアミノ酸配列を有するポリペプチド、および配列
番号1に示される配列と実質的に同じヌクレオチド配列によってコードされるポ
リペプチドを含むことを意図する。
【0021】 オステオポンチンおよびその機能的なフラグメントの修飾(それらは、異所性
石灰化を阻害する能力を増強するか、またはそれほど影響をあたえないかのいず
れか)もまた、用語「オステオポンチン」に含まれる。このような修飾は、例え
ば、構造的または化学的に類似のアミノ酸またはアミノ酸アナログでの、オステ
オポンチンのネイティブアミノ酸配列からの1つ以上のアミノ酸の付加、欠失、
または置換を含む。例えば、負に荷電したアミノ酸(例えば、グルタミン酸、ま
たはアスパラギン酸)によって、リン酸化されたアミノ酸(例えば、セリン残基
、またはスレオニン残基)の1つ以上の置換が意図される。インビボまたはイン
ビトロのいずれかにおいてリン酸化され得る残基(例えば、キナーゼリン酸化コ
ンセンサス配列)の置換または付加が、意図される。リン酸化のネイティブ部位
の間の残基の修飾(例えば、ヒドロキシアパタイトと相互作用するための、また
はリン酸化部位の間の距離を減少するための、リン酸化された残基を有利に指向
するような修飾)もまた、意図される。これらの修飾は、オステオポンチンまた
はその機能的フラグメントの構造、高次構造、または機能的活性を増強するか、
または有意に改変しないかのいずれかである。
【0022】 オステオポンチンまたはその機能的フラグメントの活性にそれほど影響しない
修飾はまた、糖、リン酸基、または脂質基の付加または除去、ならびに当該分野
で公知の他の化学的誘導体を含み得る。加えて、オステオポンチンまたはその機
能的フラグメントは、その精製を補助し、そしてその活性にそれほど影響しない
エピトープタグまたは他の配列の付加によって修飾され得る。
【0023】 本明細書中で使用されるように、用語「機能的フラグメント」とは、オステオ
ポンチンと関連して、異所性石灰化を阻害するためのオステオポンチンの能力を
維持するオステオポンチンの一部を意味することを意図する。機能的フラグメン
トは、例えば約6〜約300の長さのアミノ酸であり得、例えば約7〜約150
の長さのアミノ酸であり得、より好ましくは、約8〜約50の長さのアミノ酸で
あり得る。所望する場合、機能的フラグメントは、異所性石灰化を阻害する能力
と有利に協調する活性を有するオステオポンチンの領域を含み得る。例えば、オ
ステオポンチンの機能的フラグメントは、細胞(異所性石灰化の部位での内皮細
胞およびマクロファージ)の内殖を促進する配列を含み得る。同様に、オステオ
ポンチンの機能的フラグメントは、例えば、異所性石灰化の部位での細胞接着お
よび生存を有利に促進するRGD含有ドメインのような配列を含み得る。
【0024】 本明細書中で使用される場合、用語「個体」は、異所性石灰化を示すか、また
は発症の危険にあるヒトまたは他の哺乳動物を意味することを意図する。そのよ
うな個体は、例えば、アテローム性動脈硬化、狭窄症、腎不全、糖尿病、プロテ
ーゼ移植、組織損傷、もしくは年齢関連血管疾患のような状態と関連する異所性
石灰化を有し得るか、または発症の危険にあり得る。これらの状態の予後および
臨床的徴候は、当該分野において公知である。本発明の方法により処置された個
体はまた、血管手術(人工弁置換または血管形成術を含む)のための候補となり
得るか、または経験し得る。本発明の方法により処置された個体は、例えば、糖
尿病、腎不全、または腎臓透析に関連する全身性無機質不均衡を有し得る。
【0025】 本明細書中で使用される場合、オステオポンチンのアミノ酸配列またはそのフ
ラグメントを参照する用語「実質的アミノ酸配列」は、オステオポンチンのアミ
ノ酸配列と相同であると認識可能であり、かつ異所性石灰化を阻害する配列を意
味することを意図される。例えば、オステオポンチンの配列と実質的に同じであ
る配列は、オステオポンチンの配列と約70%よりも高い相同性、好ましくは、
約80%よりも高い相同性、より好ましくは、約90%よりも高い相同性を有し
得る。
【0026】 本明細書中で使用される場合、用語「プロテーゼデバイス」とは、病気にかか
るか、不完全であるか、または欠損している身体の部分の、合成または生物学的
に誘導される代用品をいう。本明細書中で使用される場合、用語「バイオプロテ
ーゼデバイス」とは、部分的または完全に生物学的に誘導されるプロテーゼデバ
イスをいう。プロテーゼデバイスは、初期故障を導く異所性石灰化に影響されや
すいが、これは本発明の方法によって阻害され得る。プロテーゼデバイスは、身
体(例えば、耳、目、顎顔面領域、頭蓋、四肢および心臓を含む)の種々の部位
に移植され得るか、または付着され得る。
【0027】 本発明の方法は、ステントを用いても、用いなくとも、人工心臓弁(例えば、
大動脈弁または房室弁)の異所性石灰化を予防するために有利に使用され得る。
置換心臓弁は、種々の材料(金属、ポリマー、および生物学的組織またはそれら
の材料の任意の組み合わせを含む)から作製され得る。バイオプロテーゼ弁とし
ては、哺乳動物(例えば、ヒツジ、ウシおよびブタ)に由来する異種移植された
置換弁ならびにヒト弁が挙げられる。バイオプロテーゼ心臓弁は、一般的に組織
固定に供され、そしてさらに、移植前に失活され得る。
【0028】 本発明は、個体における異所性石灰化を阻害する方法を提供する。その方法は
、治療的に有効な量のオステオポンチンまたはその機能的フラグメントを個体に
投与する工程からなる。この方法は、治療剤として異所性石灰化部位に正常に存
在する分子を使用するので、有利である。従って、この方法は、最小の毒性、最
小の免疫原性および最小の副作用を生じる。
【0029】 オステオポンチンは、当該分野において公知の方法(例えば、適切な生物学的
供給源からの精製、または化学合成によるものを含む)によって、調製され得る
か、または得られ得る。オステオポンチンの適切な生物学的供給源は、オステオ
ポンチンを含むかまたは発現する、組織、生物体液または培養細胞であり得る。
特定の供給源におけるオステオポンチンタンパク質の存在および豊富さが、例え
ば、ELISA分析(Minら、Kidney Int.53:189−93(
1998)(本明細書中に参考として援用される)または免疫細胞化学(O’B
rienら、Arterioscler.Thromb.14:1648−16
56(1994)(本明細書中に参考として援用される))を使用して、決定さ
れ得る。
【0030】 オステオポンチンは、腎臓細胞、肥大性軟骨細胞、ぞうげ芽細胞、骨細胞、骨
髄、内耳および脳細胞に存在するか、またはこれらによって発現されることが決
定されている。オステオポンチンはまた、生物体液(乳および尿を含む)内に見
出される。オステオポンチンはまた、腫瘍、特に転移性腫瘍内に存在し、そして
それは腎臓結石の成分である(Butlerら、Principles of
Bone Biology、Bilezikianら編、Academic P
ress、San Diego、167−181頁(1996)(本明細書中に
参考として援用される))。オステオポンチンはまた、血管損傷部位における平
滑筋細胞、マクロファージおよび内皮細胞によって産生され得る(O’Brie
nら、Arterioscler.Thromb.14:1648−1656(
1994)(本明細書中に参考として援用される))。従って、オステオポンチ
ンは、当該分野において公知の生化学的精製法を使用して、これらの供給源のい
ずれかから精製され得る。
【0031】 オステオポンチンはまた、培養において増殖する上記組織系統のいずれかの細
胞の分泌培地から得られ得る。例えば、オステオポンチンは、Liawら、Ci
rc.Res.74:214−224(1994)(本明細書中に参考として援
用される)により記載されるように、平滑筋細胞培養の馴化培地から実質的に精
製され得る。
【0032】 以前に記載されたように、種々の種に由来するオステオポンチンのヌクレオチ
ド配列は、公知である。従って、オステオポンチンまたはその機能的フラグメン
トはまた、当該分野において、公知の方法を使用して、適切な宿主細胞(例えば
、細菌細胞、酵母細胞、両生動物細胞、鳥細胞および哺乳動物細胞を含む)によ
って組換え的に発現され得る。種々の宿主生物体におけるペプチドの組換え発現
および精製のための方法が、例えば、Sambrookら、Molecular
Cloing:A Laboratory Manual、第2版、Cold
Spring Harbor Press、Plainview、New Y
ork(1989)およびAusubelら、Current Proroco
ls in Molecular Biology(Supplement 4
7)、John WileyおよびSons、New York(1999)(
これらの両方が本明細書中で、参考として援用される)に記載される。オステオ
ポンチンおよびそれ由来の例示的な機能フラグメントの組換え合成および精製の
ための方法が、例えば、Smithら、J.Biol Chem.271:28
485−28491(1996)(本明細書中に参考として援用される)におい
て記載される。
【0033】 組換え合成および精製の後、オステオポンチンおよびその機能的フラグメント
は、当該分野において公知の酵素的方法を使用して、生理学的に関連する様式(
例えば、リン酸化、アシル化またはグリコシル化による)において改変され得る
。実施例IVにおいて記載されるように、オステオポンチンまたはその機能的フ
ラグメントを生物学的に関連する部位においてリン酸化するために使用され得る
キナーゼは、カゼインキナーゼIIである。当該分野において公知の他のセリン
−スレオニンキナーゼ(例えば、プロテインキナーゼC)もまた、オステオポン
チンまたはその機能的フラグメントをリン酸化するために使用され得る。
【0034】 本発明の方法は、異所性カルシウム沈殿を阻害する活性を有するオステオポン
チンまたはその任意の機能的フラグメントを使用して、実施され得る。オステオ
ポンチンのフラグメントが、異所性石灰化を阻害するその能力を決定するために
、本明細書に記載されるように、選択されて、当該分野において公知の方法によ
って、産生されて、そしてスクリーニングされる。
【0035】 オステオポンチンのフラグメントが、例えば、オステオポンチンの酵素的切断
または化学的切断によって、産生され得る。酵素的切断および化学的切断のため
の方法ならびに生じたタンパク質フラグメントの精製のための方法は、当該分野
において公知である(例えば、Deutscher、Method in En
zymology、第182巻、「Guide to Protein Pur
ification」San Diego:Academic Press、I
nc.(1990)(これは本明細書中に参考として援用される)を参照のこと
)。例として、オステオポンチンは、Arg169とSer170との間にトロ
ンビン切断部位を含む。オステオポンチンのN末端切断フラグメントまたはC末
端切断フラグメントのいずれかが、本発明の方法において使用され得る。
【0036】 オステオポンチンのフラグメントはまた、オステオポンチンの配列を実質的に
有するペプチドの化学的合成または組換え合成によって、産生され得る。例えば
、オステオポンチンの重複配列にわたるペプチドライブラリーが、当該分野にお
いて公知の方法を使用して産生され得、そして本明細書中に記載されるように、
それらの機能的活性についてスクリーニングされ得る。さらに、Smithら、
前出 271:28485−28491(1996)によって記載されるように
、オステオポンチンのN末端トロンビン切断フラグメントまたはC末端トロンビ
ン切断フラグメントが組換え的に産生されて、そして本発明の方法において使用
され得る。
【0037】 本明細書中に開示されるように、オステオポンチンは、直接吸着すること、お
よびアパタイト結晶の成長および形成を阻害することによって、異所性石灰化を
阻害し得る。従って、オステオポンチンの機能的フラグメントは、カルシウムま
たはカルシウム沈着物と結合する、そのフラグメントの予期される能力に基づい
て選択され得る。カルシウムと結合することが意図される領域としては、アスパ
ラギン酸リッチ配列およびカルシウム結合相同性ドメインが挙げられる。従って
、オステオポンチンの機能的フラグメントとしては、例えば、アスパラギン酸リ
ッチカルシウム結合ドメインの配列(DDMDDEDDDD(配列番号3))を
実質的に含み得るか、またはカルシウム結合相同性ドメインの配列(DWDSR
GKDSYET(配列番号4))を実質的に含み得る。
【0038】 さらに、本明細書中に開示されるように、リン酸化が、異所性石灰化を阻害す
るオステオポンチンの能力を調節し得る。従って、オステオポンチンの機能的フ
ラグメントが、リン酸化コンセンサス配列の存在によって選択され得る。選ばれ
るべきオステオポンチンの機能的フラグメントとしては、例えば、カゼインキナ
ーゼIIリン酸化コンセンサス領域(SGSSEEK(配列番号5))またはC
末端ヘパリン結合相同性ドメインSKEEDKHLKFRISHELDSASS
EVN(配列番号6)の実質的な配列が挙げられ得、これらは、保存された3つ
のセリンリン酸化部位を含む。あるいは、またはさらに、オステオポンチンの機
能的フラグメントは、選択的にスプライシングされたドメイン(NAVSSEE
TNDFKQE(配列番号7))が挙げられ、これらは、2つのセリンリン酸化
部位を含む。さらなるセリンリン酸化部位およびスレオニンリン酸化部位が、例
えば、Sorensenら、Bioc.Biophys.Res.Comm.1
98:200−205(1994)(本明細書中に参考として援用される)によ
って、記載される。オステオポンチンの機能的フラグメントは、1または数個の
これらのリン酸化された残基を、隣接するアミノ酸とともに含み得る。
【0039】 異所性活性を阻害する能力を有するオステオポンチンのフラグメントは、種間
で高度に保存される分子の領域を含む。高度な配列保存性を有するヒトオステオ
ポンチン内の領域は、例えば、Giachelliら、前出(1995)に示さ
れる。例えば、機能的フラグメントは、高度に保存された配列SDESHHSD
ESDE(配列番号8)を含み得る。オステオポンチンの機能的フラグメントは
また、保存された細胞接着ドメイン(DGRGDSVAYG(配列番号9))ま
たはヘパリン結合相同性ドメイン(RKKRSKKFRR(配列番号10)を含
み得る。
【0040】 所望される場合、例えば、機能的活性、選択性、安定性またはバイオアベイラ
ビリティーを最適化するために、オステオポンチンまたはその機能的フラグメン
トは、D立体異性体、天然に存在しないアミノ酸ならびにアミノ酸アナログおよ
び模倣物を含むように改変され得る。改変されたアミノ酸の例は、Sawyer
、Peptide Based Drug Design、ACS、Washi
ngton(1995)ならびにGrossおよびMeienhofer、Th
e Peptides:Analysis、Synthesis、Biolog
y、Academic Press、Inc、New York(1983)(
これらの両方は、本明細書中に参考として援用される)において示される。
【0041】 所望される場合、一つ以上のリン酸化されたセリン残基またはスレオニン残基
が、負に荷電したアミノ酸(例えば、グルタミン酸またはアスパラギン酸)によ
って、置換され得る。そのような改変は、ホスファターゼによる不活性化に対す
るオステオポンチンまたは機能的フラグメントの感受性を減少させるように有利
に作製され得る。
【0042】 本明細書中に開示されるように、直接吸着することおよびアパタイト結晶の成
長および形成を阻害することによって、異所性石灰化を阻害することに加えて、
オステオポンチンはまた、炭酸脱水素酵素II(CAII)を発現する多核巨細
胞およびマクロファージの蓄積および活性化を促進することによって、抗石灰化
細胞内応答を媒介することにより作用し得る。多核巨細胞およびマクロファージ
は、細胞外微小環境を酸性化し、そして鉱化した沈着物を溶解し得る。多核性異
物巨細胞(FBGC)およびマクロファージによるCAII発現の調節を通して
、オステオポンチンは、リン酸カルシウム沈着物の除去を刺激し得る。
【0043】 上記のように選択および調製されたオステオポンチンまたはフラグメントの異
所性石灰化を阻害する能力は、当該分野において公知か、または本明細書中に記
載される種々のインビトロアッセイおよびインビボアッセイによって、評価され
得る。例えば、実施例Iに記載されるように、培養された血管細胞(例えば、ウ
シ大動脈平滑筋細胞)は、β−グリセロホスフェートを含むカルシウム沈着培地
で処理された場合、時間依存的な様式でカルシウム沈着を形成する。さらに、実
施例IIIに記載されるように、ヒト血管平滑筋細胞は、増強されたレベルの無
機リン酸の存在下において、カルシウム沈着物を形成する。異所性石灰化を阻害
する際のオステオポンチンまたはその機能的フラグメントの効果をアッセイする
ための他の培養系は、当業者によって決定され得る。例えば、異所性石灰化が生
じる身体の他の部位(例えば、内蔵、皮膚および内皮細胞を含む)に由来する細
胞または組織を使用して、オステオポンチンがアッセイされ得る。
【0044】 カルシウム沈着の量または程度は、オステオポンチンまたは機能的フラグメン
トを投与する前と投与した後に、そのような培養系を使用して、視覚的評価もし
くは組織化学的評価によって定性的にか、またはより定量的な方法によってかの
いずれかで、決定され得る。例えば、カルシウム沈着は、不透明な領域(Von
Kossa染色法では黒い領域として、そしてAlizarin Red染色
法では赤い領域として)として、光学顕微鏡によって視覚的に検出され得る。カ
ルシウム沈着の量および程度はまた、Jonoら、Arterioscler.
Thromb.Vasc.Biol.17:1135−1142(1997)(
本明細書中に参考として援用される)によって記載される方法、または市販の測
色法キット(例えば、Sigmaから入手可能であるCalcium Kit)
を使用することによって定量的に評価され得る。あるいは、カルシウム沈着の量
または程度はまた、原子吸光分光という公知の方法を使用して、定量的に評価さ
れ得る。
【0045】 実施例IおよびIIIに記載されるように、培養された血管平滑筋細胞におい
て観察されるカルシウム沈着は、組織化学的分析、超微細構造分析および電子回
折分析によって評価される場合、異所性石灰化部位に存在するアパタイト沈着物
と類似し得る。従って、オステオポンチンまたはその機能的フラグメントの培養
細胞によるカルシウムの沈着を阻害する能力は、ビヒクルコントロールまたはタ
ンパク質コントロールと比較して、個体における異所性石灰化を阻害するその能
力の正確な指標である。
【0046】 オステオポンチンまたはその機能的フラグメントの異所性石灰化を阻害する能
力はまた、対応するヒト病理の信頼できる指標となるために、当該分野において
公知の動物モデルにおいて試験され得る。例えば、異所性石灰化は、例えば、V
yavahareら、前出(1997)に記載されるような動物へのバイオプロ
テーゼ弁(例えば、ブタ弁、ヒツジ弁またはウシ弁)の皮下移植または循環系統
移植によって誘導され得る。オステオポンチンまたは機能的フラグメントの投与
による弁のカルシウム沈着の量または速度の減少が検出され得、そしてそれは、
調製物の機能的活性の基準となる。
【0047】 同様に、ヒトアテローム性動脈硬化、腎不全、リン酸塩過剰血症、糖尿病、年
齢関連血管カルシウム沈着および異所性石灰化と関連する他の状態の信頼できる
指標である動物モデルは、当該分野において公知である。例えば、局所性および
全身性カルシフィラキシー、石灰沈着症および誘発性石灰化(これらは、異所性
石灰化の実験モデルである)は、例えば、Bargmann,J.Rheuma
tology 22:5−6(1995)、Lianら、Calcified
Tissue International、35:555−561(1983
)およびBoivinら、Cell and Tissue Res.247:
525−532(1987)において記載される。血管壁のカルシウム沈着の実
験モデルは、例えば、Yamaguchiら、Exp.Path.25:185
−190(1984)によって記載される。
【0048】 異所性石灰化およびオステオポンチン調製物の効果を試験するための好ましい
動物モデルは、Liawら、J.Clin.Invest.101:1468−
1478(1998)(本明細書に参考として援用される)により記載されるオ
ステオポンチン欠損マウスであり、ここで実施例Vにおいて記載されるように、
異所性石灰化は、野生型コントロール動物と比較して増強される。
【0049】 当該分野において公知の医療画像技術(例えば、磁気共鳴画像法、X線画像、
コンピューター断層撮影法、超音波検査法)を使用して、ヒトまたは動物のいず
れかにおける異所性石灰化を阻害する際のオステオポンチンまたはその機能的フ
ラグメントの効果を評価し得る。例えば、血管内のカルシウム沈着の存在および
程度が、Fitzgeraldら、Circulation 86:64−70
(1994)(本明細書中で参考として援用される)により記載される脈管内超
音波画像法により決定され得る。異所性石灰化の量または程度の減少が、容易に
同定され得、そしてこれはオステオポンチンまたはそのフラグメントの治療効果
の指標となる。
【0050】 オステオポンチンまたはその機能的フラグメント(上記のように、それらの機
能的活性についてアッセイされる)は、異所性石灰化を阻害するために治療的に
効果的な量で個体に投与される。オステオポンチンまたは機能的フラグメントを
投与するための送達の適切な処方、投薬量および送達経路は、当業者に周知であ
り、そしてヒト患者について(例えば、以前に記載されたように動物モデルから
)決定され得る。治療的に有効であることが必要とされるオステオポンチンまた
はその機能的フラグメントの投薬量は、例えば、石灰化の程度、石灰化の部位、
投与の経路および形態、投与される分子の生体活性半減期、個体の体重および状
態、ならびに以前または現在の治療のような因子に依存し得る。この方法の特定
の適用についての治療的に有効な用量であると見なされる適切な量は、本明細書
中に提供される手引きを用いて、当業者に決定され得る。当業者は、患者の状態
を治療の過程全体にわたってモニターすることが必要であり、かつ投与される組
成物の量を調節し得ることを認識する。
【0051】 ヒトを処置するために、オステオポンチンまたはその機能的フラグメントの治
療的に有効な量は、処置レジメンに依存して、例えば、約10μg/kg体重〜
500mg/kg体重、例えば、約0.1mg/kg体重〜100mg/kg体
重、または約1mg/kg体重〜50mg/kg体重であり得る。例えば、オス
テオポンチンまたは機能的フラグメントは、1日に数回、または1日に1回、ま
たは数日毎に1回投与される場合、オステオポンチンまたは機能的フラグメント
が1回、1週間に1回、数週間に1回のみ投与された場合より低用量が必要とさ
れる。同様に、オステオポンチンの時限放出(timed−release)を
可能にする処方物は、単回ボーラス用量として投与されるより、より少量のオス
テオポンチンの連続放出を提供する。
【0052】 オステオポンチンまたは機能的フラグメントは、全身(例えば、静脈内または
動脈内)に送達されて、身体全体の異所性石灰化を阻害し得る。オステオポンチ
ンまたは機能的フラグメントはまた、異所性石灰化発生することを含むか、また
はそれが予測されることが既知の部位に局所的に投与され得る。このような部位
は、例えば、アテローム斑(atherosclerotic plaque)
、血管形成術を受けた動脈のセグメントまたはプロテーゼ移植部位であり得る。
オステオポンチンおよびその機能的フラグメントの投与に適切な部位は、処置さ
れている個体の臨床的指標および個体が現在侵襲的外科手術を受けているか否か
に依存して、当業者により決定され得る。
【0053】 オステオポンチンまたは機能的フラグメントの投与は、オステオポンチンの種
々の処方物を用いて達成され得る。所望であれば、オステオポンチンは、薬学的
に受容可能なキャリアとともに溶液または懸濁液として投与され得る。薬学的に
受容可能なキャリアは、例えば、水、リン酸ナトリウム緩衝液、リン酸緩衝化生
理食塩水、通常生理食塩水もしくはリンゲル溶液、または他の生理学的な緩衝化
生理食塩水、または他の溶媒もしくはビヒクル(例えば、グリコール、グリセロ
ール、オリーブ油もしくは注射可能な有機エステルのようなオイル)であり得る
【0054】 薬学的に受容可能なキャリアは、例えば、オステオポンチンまたは機能的フラ
グメントの吸収を安定または増大させるように作用する生理学的に受容可能な化
合物をさらに含む。このような生理学的に受容可能な化合物としては、例えば、
グルコース、スクロースまたはデキストランのような糖質;アスコルビン酸また
はグルタチオンのような抗酸化剤;微生物膜を破壊する、EDTAのようなキレ
ート剤;カルシウムまたはマグネシウムのような二価金属イオン;低分子量タン
パク質;脂質もしくはリポソーム;または他の安定化剤もしくは賦形剤が挙げら
れる。オステオポンチンはまた、生体分解性ポリマーもしくはマイクロポンプの
ような材料とともに処方され得、これは、分子の徐放性放出を提供する。さらに
、オステオポンチンは、ホスファターゼインヒビターのような分子とともに処方
され得、ホスファターゼインヒビターは、オステオポンチンの脱リン酸化を減少
または阻害する。
【0055】 オステオポンチンまたは機能的フラグメントはまた、タンパク質を発現するよ
うに遺伝的に改変された細胞から発現され得る。遺伝的に改変された細胞からの
オステオポンチンの発現は、タンパク質の、持続して局在するかまたは全身性の
発現が生じ得るため、反復投与が不要であるという利点を提供する。
【0056】 治療目的のために種々の哺乳動物細胞においてタンパク質を組換え発現する方
法は、当該分野で公知であり、例えば、以下に記載される:本明細書中に参考と
して援用される、Leeら、Transfusion Medicine II
9:91−113(1985)。遺伝子操作に特になじみやすい細胞の型とし
ては、例えば、造血幹細胞、肝細胞、血管内脾細胞、ケラチノサイト、筋芽細胞
、線維芽細胞およびリンパ球が挙げられる。
【0057】 オステオポンチンまたは機能的フラグメントをコードする核酸は、プロモータ
ー配列に作動可能に連結され、このプロモーターは、適切なレベルの、コードさ
れたタンパク質の構成性発現または(所望であれば)誘導性発現を提供し得る。
この方法の特定の適用のために適切なプロモーター配列は、当業者により決定さ
れ得、そして例えば、細胞型および所望されるオステオポンチン発現レベルに依
存する。
【0058】 オステオポンチンまたはその機能的フラグメントをコードする核酸は、哺乳動
物発現ベクターに挿入され得、そして当該分野で公知の種々の方法により細胞に
導入され得る(例えば、Sambrookら、前出(1989);およびAus
ubelら、前出(1994)を参照のこと)。このような方法としては、例え
ば、組換えベクターを用いたトランスフェクション、リポフェクション、エレク
トロポレーションおよび感染が挙げられる。ウイルスベクター(例えば、レトロ
ウイルス、アデノウイルスまたはアデノ随伴ウイルスのベクター)での感染は、
細胞を遺伝的に改変するために特に有用である。核酸分子はまた、ベクターへの
核酸配列の最初の導入を必要としない公知の方法を用いて、細胞に導入され得る
【0059】 本発明の1つの実施形態において、プロテーゼデバイスは、オステオポンチン
またはその機能的フラグメントと接触され得る。プロテーゼデバイスと、オステ
オポンチンまたは機能的フラグメントとを接触させることは、プロテーゼデバイ
スの異所性石灰化を効率的に予防または減少し、このことによって、デバイスの
不全または早熟置換の必要性を予防する。プロテーゼデバイスは、必要であれば
、個体への移植前、移植中、または移植後のいずれかに、オステオポンチンまた
は機能的フラグメントと接触され得る。
【0060】 オステオポンチンまたは機能的フラグメントは、プロテーゼデバイスに対して
共有結合的または非共有結合的のいずれかでこの分子と結合することによってプ
ロテーゼデバイスと接触し得る。この方法の特定の適用のために適切な結合方法
は、当業者によって決定され得る。当業者は、適切な結合方法がヒトにおけるプ
ロテーゼデバイスの移植と適合性であることを知っており、従って、受容可能で
ない毒性または免疫原性拒絶を引き起こさない。さらに、適切な結合方法は、オ
ステオポンチンまたはその機能的フラグメントがプロテーゼデバイスまたは周辺
組織の異所性石灰化を阻害する能力を増強させるか、または有意に低減させない
【0061】 ポリマー、金属および組織にタンパク質を共有結合させるための方法は、当該
分野で公知である。例えば、オステオポンチンは、化学的架橋を用いてプロテー
ゼデバイスと結合され得る。化学的架橋剤としては、例えば、グルタルアルデヒ
ドおよび他のアルデヒドが挙げられる。反応性アミノ酸基、糖質部分または付加
された合成部分のいずれかを通じてプロテーゼデバイスにオステオポンチンまた
はその機能的フラグメントを連結する架橋剤は、当該分野で公知である。このよ
うな薬剤および方法は、例えば、Hermason、Bioconjugate
Techniques、Academic Press、San Diego
(1996)に記載され、これは、本明細書中に参考として援用される。これら
の方法を用いて、プロテーゼデバイスと、治療的に有効な量のオステオポンチン
またはその機能的フラグメントとを接触させ得る。
【0062】 オステオポンチンはまた、プロテーゼデバイスに対して非共有結合的に(例え
ば、プロテーゼデバイスの表面への吸収により)付着され得る。オステオポンチ
ンまたはその機能的フラグメントを含む溶液または懸濁液は、所望であれば、薬
学的に受容可能な賦形剤とともに、治療的に有効な量でプロテーゼデバイス上に
コーティングされ得る。
【0063】 オステオポンチンまたは機能的フラグメントの持続性送達を提供するために、
プロテーゼデバイスはまた、プロテーゼデバイスに付着した細胞によって生成さ
れるオステオポンチンまたはその機能的フラグメントと接触され得る。このよう
な細胞は、プロテーゼデバイス上に播種され、そしてエキソビボまたはインビボ
のいずれかで増殖し得る。適切な細胞としては、オステオポンチンを通常生成し
、かつ分泌する細胞が挙げられ、この細胞としては、例えば、マクロファージ、
平滑筋細胞または内皮細胞が挙げられる。さらに、オステオポンチンまたはその
機能的フラグメントを生成するように遺伝的に改変された細胞(例えば、内皮細
胞および線維芽細胞を含む)は、プロテーゼデバイスに付着され得る。プロテー
ゼデバイスに付着される細胞は、好ましくは、プロテーゼインプラントを受け入
れる個体由来の細胞、またはインプラントの拒絶の可能性を減少する免疫学的に
適合した個体由来の細胞のいずれかである。
【0064】 プロテーゼデバイスと接触されるオステオポンチンまたは機能的フラグメント
が異所性石灰化を阻害する能力は、当該分野で公知の種々の方法によって決定さ
れ得る。1つのこのような方法は、実施例Vに記載のように、プロテーゼデバイ
スを動物に移植して、オステオポンチンまたはその機能的フラグメントの投与に
応答したカルシウム沈着を測定することである。外植片の部位におけるカルシウ
ム沈着の速度または量の減少いずれかが、組成物の治療的効力を示す。
【0065】 本発明は、局所的な微小環境を酸性にする個々の細胞に投与することにより、
異所性石灰化を処置または阻害する方法を提供する。このことにより、この細胞
は、異所性石灰化の部位に標的化される。多核性異物巨細胞およびマクロファー
ジは、局所的な微小環境を酸性にし得る細胞の例である。従って、本発明は、個
々のマクロファージに投与することによって異所性石灰化を処置または阻害する
方法を提供し、このことによって、マクロファージは、異所性石灰化の部位に標
的化される。さらに、本発明は、個々の多核性外来異物巨核細胞に投与すること
により異所性石灰化を処置または阻害する方法を提供し、これによって、多核性
異物巨細胞が異所性石灰化の部位に標的化される。
【0066】 本明細書中で使用される場合、用語「局所的な微小環境」とは、酸生成細胞の
補充および/もしくは分化、ならびにプロトン生成の促進および細胞プロトンの
細胞外放出のいずれかにより酸性にされ得る細胞外空間をいう。例えば、破骨細
胞およびマクロファージは、二酸化炭素の炭酸への加水分解を促進する酵素であ
る炭酸脱水素酵素IIを発現する。炭酸は、液胞のH+−ATPaseを介して
細胞から排出されるプロトンの細胞内供給源として働き、それによって局所的p
Hを下げ、そして無機物溶解を促進する。従って、本発明は、マクロファージお
よび多核性異物巨細胞による炭酸脱水素酵素IIのオステオポンチン媒介発現を
介して異所性石灰化を処置または阻害する方法を提供する。
【0067】 本明細書中に開示されるように、オステオポンチンは、直接的に、アパタイト
結晶表面に結合し、かつ結晶成長を阻害することによるだけでなく(実施例II
を参照のこと)、間接的に、無機質の喪失を調節することにより(実施例V)、
異所性鉱化作用を調節する。具体的には、オステオポンチンは、マクロファージ
補充、炭酸脱水素酵素II発現の増加および細胞外酸性化を促進することによる
抗石灰性細胞応答のメディエーターとして作用する。
【0068】 局所的な微小環境を酸性にし得る細胞(例えば、マクロファージおよび多核性
異物巨細胞)は、異所性石灰化の部位に標的化される。例えば、マクロファージ
および多核性異物巨細胞は、プロテーゼデバイスに付着され得る。例えば、マク
ロファージおよび多核性異物巨細胞は、生体プロテーゼ心臓弁に播種され得、そ
して上記のようにエキソビボまたはインビボで増殖され得る。さらに、炭酸脱水
素酵素IIまたはその機能的フラグメントを発現するように遺伝的に改変された
細胞は、プロテーゼデバイスに付着され得る。炭酸脱水素酵素IIの機能的フラ
グメントは、オステオポンチン媒介性調節および触媒活性を保持する。オステオ
ポンチン生成細胞については上記のように、炭酸脱水素酵素II生成細胞は、好
ましくは、プロテーゼインプラントを受けた個体由来であるか、またはインプラ
ント拒絶の可能性を減少させるように免疫的に適合させた個体由来である。さら
に、マクロファージまたは多核性異物巨細胞は、直接的または全身的のいずれか
で個体における異所性石灰化の部位に投与され得る。全身的に投与される場合、
投与されたマクロファージおよび多核性異物巨細胞は、異所性石灰化の部位に標
的化され得る。例えば、オステオポンチンまたはオステオポンチン抗体で生体プ
ロテーゼデバイスを予めコーティングすることは、全身的に投与されたマクロフ
ァージおよび多核性異物巨細胞を異所性石灰化部位に標的化して、局所的な微小
環境を酸性にする1つの方法である。
【0069】 実施例Vに記載のように、局所的な微小環境の酸性化はまた、オステオポンチ
ン(マクロファージおよび多核性異物巨細胞により炭酸脱水素酵素II発現を調
節し得る)を投与することによって達成され得る。オステオポンチンを個体に投
与する方法は、上記で詳細に記載されている。炭酸脱水素酵素II発現を刺激す
るために必要なオステオポンチンの発現レベルは、ヒドロキシアパタイトの増殖
を直接阻害するために必要な発現レベルより有意に低くあり得る。従って、炭酸
脱水素酵素IIを刺激するために治療的に有効な量は、約1×10-12M〜5×
10-7Mの範囲内であり得る。炭酸脱水素酵素IIの発現を刺激するに十分なオ
ステオポンチンの治療的に有効な量はまた、約1×10-12M〜1×10-7M、
1×10-12M〜5×10-8M、1×10-12M〜1×10-8M、約1×10-12
M〜5×10-9M、1×10-12M〜1×10-9M、1×10-12M〜5×10-1 0 M、1×10-12M〜5×10-10M、または1×10-12M〜5×10-11Mの
範囲内であり得る。
【0070】 従って、本発明は、個体に局所的な微小環境を酸性にする細胞を投与すること
によって、異所性石灰化を処置または阻害する方法を提供する。本発明はさらに
、個体における異所性石灰化を処置または阻害する方法を提供し、この方法は、
オステオポンチンを投与することによって異所性石灰化部位に酸生成細胞の補充
を促進する工程を包含する。本発明はまた、個体における異所性石灰化を処置ま
たは阻害する方法を提供し、この方法は、オステオポンチンを投与することによ
って異所性石灰化部位で酸生成細胞の分化を促進する工程を包含する。本発明は
さらに、個体における異所性石灰化を処置または阻害する方法を提供し、この方
法は、オステオポンチンを投与することによって異所性石灰化部位への酸生成細
胞の補充および分化を促進する工程を包含する。実施例Vに記載のように、1コ
ピーのオステオポンチン遺伝子を保有するマウスは、異所性鉱化作用に応答して
炭酸脱水素酵素II陽性細胞の形成を促進するに十分高レベルのオステオポンチ
ンを発現する(図13を参照のこと)。マクロファージおよび多核性異物巨細胞
は、同様な造血起源から誘導された炭酸脱水素酵素II発現細胞であり、そして
1コピーのオステオポンチン遺伝子を保有するマウスにおいて鉱化したインプラ
ントに隣接して位置することが本明細書中で示される。
【0071】 実施例Vで示されるように、オステオポンチンは、マウスにおいてグルタルア
ルデヒド固定した大動脈弁(GFAV)リーフレットの移植部位に、酸生成細胞
を補充させることによって無機質再吸収を制御し得る。例えば、免疫染色によっ
て示されるように、オステオポンチンは、マクロファージの補充を媒介し得、そ
してCAII陽性細胞形成を促進し得る(実施例Vを参照のこと)。本明細書中
で開示されるように、マクロファージおよび多核性異物巨細胞は、オステオポン
チンによって調節される炭酸脱水素酵素IIを発現する細胞の例である。オステ
オポンチンを投与する方法は、上で詳細に記載されている。
【0072】 本発明はまた、オステオポンチンを投与することによって異所性石灰化部位に
おける炭酸脱水素酵素IIの発現を増大することにより、個体における異所性石
灰化を処置または阻害する方法を提供する。本明細書中で開示されるように、オ
ステオポンチンは、炭酸脱水素酵素II発現細胞(マクロファージおよび多核性
異物巨細胞を含む)の分化および活性を調節することによって無機質再吸収を制
御する(実施例Vを参照のこと)。
【0073】 本発明の種々の実施形態の営為に実質的に影響を及ぼさない改変もまた、本明
細書中で提供される発明の規定内に含まれることが理解される。従って、以下の
実施例は、本発明を例示するのであって、限定しないことが意図される。
【0074】 (実施例I:培養したウシ脈管細胞の石灰化) 本実施例は、培養したウシ大動脈平滑筋細胞によるカルシウム沈着が、異所性
石灰化の確実なモデルであることを実証する。生理学的に関連した石灰化を誘導
するための方法が記載される。これらの方法を用いて、オステオポンチンおよび
そのフラグメントの調製物を、異所性石灰化を阻害する能力についてアッセイし
得る。
【0075】 (ウシ大動脈平滑筋細胞の培養) BASMCを、本明細書中に参考として援用されるRossら,J.Cell
Biol.,50:172−186(1971)によって最初に記載された外
植片法の改変によって入手した。手短に述べると、内側組織を、ウシ胸大動脈の
セグメントから分離した。組織小片(1〜2mm3)を、165U/mlのコラ
ゲナーゼI型、15U/mlエラスターゼIII型および0.375mg/mL
ダイズトリプシンインヒビターを補充した、4.5g/Lのグルコースを含むD
MEM中での37℃での1時間のインキュベーションによってばらばらにした。
部分的に消化された組織を6ウェルプレート中に置き、そして20% FBSを
補充した、4.5g/Lのグルコースを含むDMEM中で、37℃にて、5%
CO2を含む加湿雰囲気下で数週間培養した。外植片から移動した細胞を収集し
、そして増殖培地(100U/mlのペニシリンおよび100μg/mlのスト
レプトマイシンを補充した、15% FBSおよび10mM ピルビン酸ナトリ
ウムを含むDMEM)中で維持した。ウシ大動脈壁から単離された細胞が脈管平
滑筋細胞であることを確認するために、α−平滑筋アクチン、ビメンチンおよび
カルポニン(calponin)のレベルを、免疫蛍光顕微鏡法によって調べた
【0076】 免疫蛍光顕微鏡法について、BASMCSを、10ウェルヘビー(heavy
)Teflonコーティング顕微鏡スライドガラス(Cel−Line Ass
ociates Inc.,USA)で24時間培養し、冷メタノールで固定し
、2% BSAおよび10%正常ウサギ血清を含むPBSでブロックし、そして
2% BSAを含むPBSでそれぞれ、1:50および1:25に希釈した、モ
ノクローナル抗α平滑筋アクチン抗体(1A4,Sigma)およびモノクロー
ナル抗ビメンチン抗体(V9,Dako)で処理した。モノクローナル抗カルポ
ニン抗体((CALP),Fridら,Dev.Biol.,153:185−
193(1992))を、希釈せずに用いた。二次抗体として、FITC結合体
化ウサギ抗マウスIgGを、PBSでの1:30の希釈後に用いた。マウス非免
疫IgGを、一次抗体についてのコントロールとして用いた。
【0077】 上記のように得られた95%を超える細胞が、α平滑筋アクチン抗体、ビメン
チン抗体およびカルポニン抗体で、繊維状のパターンで染色された。このことは
、培養した細胞が、脈管平滑筋起源の細胞であることを示す。全ての実験につい
て、細胞を、2継代と5継代との間で用いた。
【0078】 (ウシ大動脈平滑筋細胞によるカルシウム沈着) 培養されたBASMC平滑筋細胞による石灰化を調べるために、石灰化を、本
明細書中に参考として援用されるShioiら,Arterioscler T
hromb.Vasc Biol.,15:2003−2009(1995)に
記載される方法によって誘導した。手短に述べると、BASMCを、増殖培地中
で4日間培養し、次いで石灰化培地(100U/mlのペニシリンおよび100
μg/mlのストレプトマイシンを補充した、10mMのβ−グリセロホスフェ
ート(他であると示さない限り)、10-7Mインスリンおよび50μg/mlの
アスコルビン酸の存在下で15% FBSおよび10mMピルビン酸ナトリウム
を含むDMEM(高グルコース、4.5g/L))中に10日間切り替えた。こ
の培地を、1週間に2回、新鮮な培地で置き換えた。時間経過実験では、石灰化
培地中での培養開始日を、0日目と定義した。
【0079】 石灰化を、本明細書中に参考として援用されるJonoら,Arterios
cler.Thromb.Vasc.Biol.17:1135−1142(1
997)に記載される方法の改変によって評価した。手短に述べると、培養物を
、0.6N HClを24時間用いて脱灰した。HCl上清のカルシウム含量を
、o−クレゾールフタレインコンプレクソン(o−cresolphthale
in complexone)法(Calcium Kit,Sigma)によ
る比色定量によって決定した。脱灰後、この培養物をリン酸緩衝化生理食塩水(
PBS)で洗浄し、そして0.1N NaOH/0.1%ドデシル硫酸ナトリウ
ム(SDS)で可溶化した。総タンパク質含量を、Bio−Rad Prote
in Assay Kit(Bio−Rad)を用いて測定した。細胞層のカル
シウム含量を、タンパク質含量に対して正規化した。培養培地中のリン濃度およ
びカルシウム濃度を、それぞれ、ホスホモリブデート複合体法(Phospho
rus Kit,Sigma)およびo−クレゾールフタレインコンプレキソン
法(Calcium Kit,Sigma)によって測定した。値を、平均+/
−SEM(n=3)として表した。
【0080】 β−グリセロホスフェートを含む石灰化培地で処理したBASMCは、14日
間の経過にわたって時間依存的様式でカルシウム含有無機質沈着を開始した。対
照的に、β−グリセロホスフェートを欠く増殖培地中で培養したBASMCは、
石灰化しなかった。β−グリセロホスフェートの添加は、細胞層におけるカルシ
ウム沈着と正に相関する、増加したリン濃度をもたらした。逆に、細胞層が石灰
化されるにつれて、カルシウム濃度は、培養培地中で減少した。
【0081】 カルシウム沈着、培地中のリン濃度およびカルシウム濃度に対するβ−グリセ
ロホスフェートの効果は、用量依存的であった。カルシウム沈着は、β−グリセ
ロホスフェートの開始濃度に依存し、そして約4mM β−グリセロホスフェー
トで最大の半分であった。培養培地中のリン濃度は、0mM〜10mMの範囲に
わたってβ−グリセロホスフェートの濃度が増加するにつれて増加した。培養培
地中のカルシウム沈着は、細胞層中のカルシウム沈着に対して逆に比例した。
【0082】 観察された石灰化は、10mM無機リン酸までの培養培地の補充が、細胞の非
存在下で石灰化した沈着物を形成しなかったので、培地からの無機物の自発沈澱
に起因しなかった。内皮細胞培養物への石灰化培地の添加も、鉱化作用を誘導し
なかった。
【0083】 これらの結果は、培地中での無機リン酸を上昇させる条件下でBASMCの石
灰化が、特異的な、細胞媒介事象およびマトリックス媒介事象であることを示す
【0084】 (BASMC石灰化の形態) BASMC培養物における石灰化プロセスが、生理学的な型の鉱化作用を表す
か否かを決定するために、組織化学的分析、超微細構造分析および電子線回折分
析を行った。
【0085】 BASMC培養物による無機物沈着を、フォンコッサ染色(30分間、5%硝
酸銀)および光学顕微鏡法によって、本明細書中に参考として援用されるMal
lory,F.B.,Pathological Techniques,第2
版,Philadelphia,WB Saunders Co.,152頁(
1942)によって記載される方法を用いて組織化学的に評価した。アルカリホ
スファターゼの発現を、シトレート−アセトン−ホルムアルデヒド固定細胞を室
温にて15分間、Naphthol AS−BI Alkaline Solu
tion(Sigma)とともにインキュベートすることにより可視化した。
【0086】 透過型電子顕微鏡法(TEM)による超微細構造検査のために、プラスチック
上で増殖したBASMC細胞を、0.1Mカコジル酸ナトリウム緩衝液を用いて
pH7.2で緩衝化した、1%グルタルアルデヒドおよび1%パラホルムアルデ
ヒドを含むアルデヒド溶液中で一晩固定した。次いで、この培養物を、0.1M
カコジル酸ナトリウム緩衝液単独を用いて洗浄し、段階的な一連のエタノール溶
液中で脱水し、そしてTaabエポキシ樹脂またはLR Whiteアクリル酸
樹脂(Marivac,Nova Scotia,Canada)のいずれかに
浸透させ、そして包埋した。この樹脂を、55℃にて2日間重合させた。エポキ
シ包埋をされることになっているサンプルをまた、電子顕微鏡においてさらなる
膜の対比を提供するために、フェロシアン化カリウム還元4%四酸化オスモニウ
ムを用いて事後固定した。
【0087】 選択された領域の電子線回折による無機質分析について、他の培養物を、10
0%エタノールのみを用いて固定して非水性で処理し、続いてさらなる処理を伴
わずに樹脂中での直接包埋した。1マイクロメーターの厚さの調査切片を、培養
物の種々の領域から調製し、そして光学顕微鏡法による調査のためにトルイジン
ブルーで染色した。次いで、選択された領域の薄い切片(80nm〜100nm
)を、Reichert Ultracut Eミクロトーム上でダイアモンド
ナイフを用いて切断し、そして炭素を用いてエバポレートしたFormvarで
コーティングしたニッケルグリッド上に配置した。グリッドに取り付けた切片を
、エタノール性酢酸ウラニルおよびクエン酸鉛を用いて短時間染色し、そして6
0kVで操作するJEOL JEM 1200EX透過型電子顕微鏡を用いて調
べた。無水性で処理し、非染色のままにしたサンプルを、100μM回折口径お
よび80cmのカメラ長を用いる、選択された領域の電子線回折に用いた。回折
パターンを分析し、そして合成アパタイト標準および骨無機質について以前に報
告された粉末回折ファイル(本明細書中に参考として援用される、Landis
ら,J.Ultrastruc.Res.,63:188223(1978))
と比較した。
【0088】 光学顕微鏡法により、増殖培地中で増殖させたBASMC培養物は、これらの
型の細胞に特有の単層および多層の増殖領域を示した。石灰化培地での10日間
の処置後、この培養物は、主に多層領域における、広範な無機質の沈着を示した
。フォンコッサ染色は、これらの培養物におけるリン酸含有無機質の存在を確認
した。石灰化は、細胞間の細胞外マトリックスにおいて最も頻繁に観察され、そ
して代表的に培養物の基礎局面においてより顕著であった。これらの石灰化培養
物におけるBASMCはまた、アルカリホスファターゼ活性について陽性であっ
た。
【0089】 培養14日目(β−グリセロホスファターゼを用いて10日目)、BASMC
は、単層または多層であり、そしていくつかの位置では、細胞の小節を形成した
。超微細構造的に、外観上多層または小節状である場合、この細胞は、コラーゲ
ン原線維が豊富な多量の細胞外マトリックスと会合している。この細胞外マトリ
ックスの蓄積部位で、細胞は、代表的にはタンパク質の合成および分泌に関連す
る、充分に発達した細胞小器官を示した。目立った細胞骨格は、アクチンから構
成される可能性が最も高い、細胞内細糸の広範なネットワークによって立証され
た。
【0090】 β−グリセロホスフェートなしで培養した細胞は、細胞外マトリックスの石灰
化の証拠を示さなかったが、添加した有機リン酸供給源とともに培養した細胞は
、細胞層と関連したいくつかの形態学的に異なる形態の石灰化を示した。これら
は、石灰化したコラーゲン原線維のほぼ球状の凝集物、周囲で増加した無機質密
度を有する小節沈着、ならびに細胞外マトリックスの原線維内区画および原線維
間区画の両方を含む、より分散した石灰化を含んでいた。これらの後者の部位で
は、いくらか大きな寸法を有する結晶は、1つのコラーゲン原線維から別のコラ
ーゲン原線維へと広がることが観察された。膜結合型マトリックス小胞はまた、
細胞外マトリックスにおいて見出された。無水で処理され、そして染色されてい
ない、石灰化沈着物を含むBASMC培養物組織切片の、選択された領域の電子
線回折は、無機質相をアパタイトとして同定した。このことは、その指数がこの
型の無機質に特有であった(格子面002、211、112、300からの)目
立った回折反射を示す。
【0091】 アルカリホスファターゼは、正常なウシの鉱化作用に必要とされ(Whyte
ら Endocr.Rev.,15:439−461(1994))、そしてβ
−グリセロホスフェートに応答した骨芽細胞および軟骨細胞の培養物の石灰化に
必要とされることが示されている(Tenenbaumら,Bone Mine
ral,2:13−26(1987))。アルカリホスファターゼが、これらの
研究において用いられる条件下でのBASMCにおける石灰化に必要とされるか
否かを決定するために、培養物を、アルカリホスファターゼインヒビターである
レバミゾール、またはビヒクル単独で処理した。BASMC培養物におけるカル
シウム沈着が、レバミゾールによって用量依存的に阻害された。最大の半分の阻
害が、5×10-5Mレバミゾールで観察された。ビヒクル処理は効果を有さなか
った。レバミゾール処理は、培養培地におけるリン濃度における減少および高い
カルシウム濃度の維持と関連した。
【0092】 これらの結果は、BASMC培養物によって沈着したマトリックスの石灰化が
、異所性石灰化の部位で観察された鉱化作用と、無機質の種類(アパタイト)お
よび石灰化した沈着物の微細構造に関して類似することを示す。例えば、鉱化作
用は、細胞外マトリックスコラーゲン原線維およびマトリックスビヒクルと関連
して主に生じた。類似の小胞構造が、上昇したアルカリホスファターゼ活性と関
連して、石灰化したアテローム性動脈硬化斑において報告されている(Kimら
,Fed Proc,35:156−162(1976))。さらに、石灰化し
ているBASMC培養物において存在する小節状石灰化は、石灰化されたアテロ
ーム性動脈硬化斑および弁において通常見られることである、球顆状結晶成長を
示す(Kimら,Fed Proc,35:156−162(1976))。
【0093】 それゆえ、これらの研究において用いられた石灰化しているBASMC培養物
は、石灰化した脈管組織においてインビボで観察された鉱化作用に類似した鉱化
作用を行い得る細胞外環境を作製し得、異所性石灰化のモデルとしてのそれらの
使用を支持する。
【0094】 (実施例II:オステオポンチンは、BASMC石灰化を阻害する) 本実施例は、オステオポンチンが、インビボにおける異所性石灰化の確実なモ
デルであるBASMC石灰化をインビトロで阻害することを実証する。それゆえ
、オステオポンチンは、異所性石灰化の治療的に有効なインヒビターである。
【0095】 ラットオステオポンチンを、本明細書中に参考として援用されるLiawら,
前出 74:214−224(1994)によって記載されるように、ラット新
生仔平滑筋細胞培養物の馴化培地から精製した。この調製物を、クーマシー染色
およびN末端配列分析に基づいて、95%を超える純度であると判断した。
【0096】 インビトロでのBASMC媒介石灰化に対するオステオポンチンの効果を調べ
るために、可溶性オステオポンチンまたはビヒクル単独(0.1mMクエン酸ナ
トリウム)を、石灰化しているBASMC培養物に添加した。図2aに示すよう
に、0.05μg/ml、0.5μg/mlおよび5μg/mlのオステオポン
チンは、10日目に評価したとき、石灰化を用量依存的に阻害した。例えば、0
.5μg/mlのオステオポンチンは、石灰化を約90%阻害し、そして5μg
/mlのオステオポンチンは石灰化をほぼ完全に阻害した。対照的に、ビヒクル
単独は、効果がなかった(図2a)。それゆえ、低濃度の外部から適用したオス
テオポンチンは、石灰化している脈管細胞培養系において細胞外鉱化作用を顕著
に阻害する。
【0097】 オステオポンチン調製物中の夾雑物が、観察される阻害効果の原因である可能
性を排除するために、免疫除去実験を行った。10μg/mlオステオポンチン
を含む培地を、Liawら,前出(1994)によって記載される方法により調
製された20mg/mlの抗オステオポンチン(OP−199)抗体または正常
ヤギIgGと混合し、そして室温にて1時間インキュベートした。250mgプ
ロテインA−sepharoseを添加し、そして室温にて1時間インキュベー
トした。抗体−プロテインA sepharose複合体を遠心分離により除去
し、そして残りの上清を、石灰化研究において使用するために20倍希釈した。
独立Student t検定を用いて、群を比較し、そして0.05未満の確率
値(p)値を有意とみなした。
【0098】 0.5μg/mlラットオステオポンチンを含む培地は、培養物の石灰化を、
18倍阻害した(オステオポンチン処理したBASMCについて0.33±0.
06μmole/mgに対して、ビヒクル処理したBASMCについて5.05
±0.25μmole/mg、p=0.0023)。オステオポンチン抗体を用
いたオステオポンチン溶液の免疫除去は、阻害活性を有意に減少させた(抗オス
テオポンチン除去サンプルについて2.60±0.43μmole/mgに対し
て、非免疫除去サンプルについて0.33±0.06μmole/mg、p=0
.0338)。対照的に、正常ヤギIgGを用いた免疫除去は、ラットオステオ
ポンチン溶液の阻害活性に影響を与えなかった(免疫除去なしについて0.33
±0.06μmole/mgに対して、正常ヤギIgG処理について0.49±
0.10μmole/mg、p=0.2480)。
【0099】 これらの結果は、オステオポンチン調製物による、観察されたBASMC媒介
石灰化阻害が、夾雑物に起因するのではなく、特異的にオステオポンチンに起因
したことを確認する。
【0100】 オステオポンチン効果の特異性および独特さを決定するために、オステオポン
チンに対する制限された構造的および機能的相同性を有する、2つのさらなる非
コラーゲン性細胞外マトリックスRGD含有分子(ビトロネクチンおよびフィブ
ロネクチン)を、BASMC媒介石灰化を阻害する能力について試験した。ラッ
トの血漿ビトロネクチン(Sigma Immunochemicals,US
A)およびウシフィブロネクチン(TELIOS Pharmaceutica
l Inc.,USA)を、PBS中に0.5mg/mlの濃度で再懸濁し、そ
して使用するまで凍結保存した。図2bに示すように、ビトロネクチン(VN)
およびフィブロネクチン(FN)は、オステオポンチンについて有効であった濃
度と等しいモル濃度で、カルシウム沈着を阻害できなかった。それゆえ、脈管石
灰化を阻害することに対するオステオポンチンの効果は、非常に特異的である。
さらに、これらの結果は、オステオポンチンが鉱化作用を調節する能力が、その
RGD依存性細胞接着機能と関係しないことを示す。
【0101】 (オステオポンチン阻害の機構) オステオポンチンが石灰化を阻害する機構を試験した。1つの可能性は、オス
テオポンチンが、アルカリホスファターゼ活性に影響を与えることによってレバ
ミゾールに類似した様式で機能し得、それによってβ−グルセロホスフェート由
来の無機リン酸の産生を阻害し、そしてリン酸カルシウム沈着を妨害することで
あった。
【0102】 細胞アルカリホスファターゼ活性測定のために、細胞を、種々の濃度のオステ
オポンチンの存在下において石灰化培地中で培養した。細胞をPBSで3回洗浄
し、そして細胞タンパク質を0.9% NaCl中の1% Triton X−
100で可溶化し、そして遠心分離した。上清を、Besseyら、J.Bio
l.Chem.164:321−329(1946)(これは、本明細書中で参
考として援用される)によって記載される方法によって、アルカリホスファター
ゼ活性についてアッセイした。1単位を、1分間中に1nmolのp−ニトロフ
ェノールを生成する活性として定義した。タンパク質濃度を、Bio−Radタ
ンパク質アッセイキット(Bio−Rad)を用いて決定した。そのデータを、
細胞層のタンパク質含量に対して正規化した。
【0103】 図3aおよび3cに示すように、オステオポンチンを用いる処理は、BASM
C培養物のアルカリホスファターゼ活性に影響を与えなかった。オステオポンチ
ンの添加はまた、培地のリン濃度を減少しなかった。対照的に、レバミゾールは
、用量依存的にBASMCアルカリホスファターゼ活性を阻害し(図3b)、そ
して培養培地中のリン濃度を減少させた。これらの結果は、オステオポンチンが
アルカリホスファターゼ活性を阻害することによって作用するのではないことを
実証する。
【0104】 オステオポンチンが培養培地中でカルシウムをキレートまたは封鎖(sequ
ester)して、鉱化作用を妨害する可能性もまた、試験した。最初の石灰化
培地に、オステオポンチンまたはビヒクル単独の存在下で、増加する濃度のカル
シウムを補充した。次いで、培養物を、10日間の期間にわたってオステオポン
チンの存在下または非存在下において行って石灰化させた。図4aに示されるよ
うに、培地のカルシウム含量を増加させることは、カルシウム沈着に対するオス
テオポンチンの阻害効果を克服し得た。このことは、より多くの無機質が細胞層
において沈着されることを可能にする。このことと一致して、培養培地のリン含
量(8.2mM〜7.3mM)の減少を述べた(図4b)。
【0105】 オステオポンチンの存在下において、10日間の期間の最後での培地のカルシ
ウム含量もまた、測定した。カルシウムを封鎖することによってオステオポンチ
ンが作用する場合、一定量のまたは増加量のいずれかのカルシウムが培地中で観
察されることが予測された。このことは、培地中におけるオステオポンチン結合
によるカルシウムの保持を反映する。しかし、その反対が観察された。カルシウ
ム培地中のカルシウム濃度は、最初のカルシウム濃度と比較して、10日間の期
間の最後で減少し、そしてカルシウム沈着と反比例した(図4aおよび4cを比
較のこと)。従って、鉱化に対するオステオポンチンの阻害効果は、カルシウム
依存性である(すなわち、カルシウム濃度の増加によって減少する)が、培地中
で利用可能なカルシウムのキレート化には起因しない。この観察は、オステオポ
ンチンの公知のカルシウム結合特性と一致する。約50分子のカルシウムが、生
理学的なカルシウム濃度でオステオポンチンによって結合され得ることが示され
た(Chenら、J.Biol.Chem.267:24871−24878(
1992))。従って、2mMのカルシウムをキレートするためには約40μM
のオステオポンチン(2.7mg/ml)が必要であり、これは、本明細書中に
記載されるアッセイにおいて血管性石灰化を阻害する際に有効であると実証され
たオステオポンチンの量(0.5μg/ml)の5000倍より多い。
【0106】 BASMC培養物中の内因性および外因性のオステオポンチンの超微細構造的
局在化もまた、免疫金標識を用いて決定して、血管性石灰化のオステオポンチン
阻害の機構をさらに特徴付けした。BASMCを石灰化培地中で7日間培養して
、石灰化が開始することを可能にした。次いで、精製したラットオステオポンチ
ン(0.5μg/ml)を10日目まで加えた。培養物を、アルデヒド固定剤を
使用して保存し、続いて、免疫細胞化学のためにLR Whiteアクリル樹脂
中に包埋した。包埋後免疫標識を、McKeeら、Microscop.Res
.And Tech.33:141−164(1996)(これは、本明細書中
に参考として援用される)によって記載されるように、オステオポンチン抗体(
OP−199)およびプロテインA−コロイド金複合体を使用して行った。手短
に言えば、培養物の薄い(80nm)切片を、ニッケルグリッド上に配置し、そ
してPBS中の1%オボアルブミンとともに5分間インキュベートし、続いて一
次抗体とともに1時間のインキュベーション、PBSでのリンス、オボアルブミ
ンを用いる再度のブロッキング、次いで30分間のプロテインA−金複合体への
曝露を行った。蒸留水を用いる最終リンスの後、グリッドを風乾し、そして酢酸
ウラニルおよびクエン酸鉛を用いて慣習的に染色し、そして透過型電子顕微鏡に
よって観察した。OP−199抗体の特異性は、ウェスタンブロッティング(L
iawら、前出、(1994))ならびに免疫前血清およびプロテインA−金複
合体単独を用いるインキュベーションによって以前に示された。
【0107】 これらの免疫金標識研究のために、オステオポンチンを除外したか(ビヒクル
単独)、またはβ−グリセロホスフェートを用いる鉱化作用の開始の7日後に添
加した。これらの条件下において、外因的に適用されたオステオポンチン(0.
5μg/ml)は、10日目においてBASMC培養物石灰化をなお50%阻害
し得た。低レベルの内因性オステオポンチンを、処理していない鉱化培養物中(
代表的には、鉱化した領域中の拡散パターン中において)見出した。対照的に、
オステオポンチン処理した培養物中では、金粒子は、石灰化の部位で豊富であっ
た(代表的には、小さい石灰化の塊の境界に蓄積するか、または個々の結晶プロ
フィールと関連する)。免疫前血清およびプロテインA−金複合体単独をコント
ロールとして使用した場合は、金粒子は観察されなかった。このことは、オステ
オポンチンの、成長しているアパタイト結晶との直接的相互作用が、その阻害機
能に必要とされることを示す。オステオポンチンは、鉱化されないマトリックス
または細胞と結合していることは観察されなかった。
【0108】 上記に記載された結果は、オステオポンチンがアパタイト結晶表面へのオステ
オポンチンの直接的な結合および結晶成長の阻害によって、低濃度で、血管細胞
によって媒介される生理学的な石灰化を阻害し得ることを実証する。従って、オ
ステオポンチンは、異所性石灰化を妨害および処理する際に治療的に有用である
【0109】 (実施例III 培養されたヒト血管細胞の石灰化) この実施例は、上昇した無機リン酸の存在下で培養されたヒト平滑筋細胞によ
るカルシウム沈着が異所性石灰化の信頼できるモデルであることを示す。生理学
的に関連する石灰化を誘導するための方法が記載される。これらの方法は、異所
性石灰化を阻害するそれらの能力についてオステオポンチンおよびそのフラグメ
ントの調製物をアッセイするために使用され得る。
【0110】 正常な成人の血清無機リン酸濃度の範囲は、約1.0〜1.5mMである。高
い血清リン酸レベル、すなわちリン酸塩過剰血症は、種々の疾患状態(例えば、
慢性腎不全および引き続く腎透析を含む)と関連して起こる。このような疾患状
態において、血清無機リン酸濃度のレベルは、代表的には2mMを超える。リン
酸塩過剰血症と関連する異所性石灰化をモデル化するために、そしてオステオポ
ンチンおよびその機能的フラグメントの、そのような石灰化に対する効果を決定
するために、石灰化についての関連するインビトロモデル系を以下のように開発
した。
【0111】 ヒト血管平滑筋細胞(HSMC)を、Ross、J.Cell.Biol.5
0:172−186(1971)およびLiawら、J.Clin.Inves
t.95:713−724(1995)(これらは、本明細書中で参考として援
用される)によって記載されるような酵素的消化によって得た。手短に言えば、
内側の組織を、ヒト心臓移植手術および剖検でそれぞれ得たヒト大動脈の切片か
ら分離した。班SMCについて、冠状動脈内じゅく腫切除術由来の組織を、手術
時に得た。組織の小さな断片(1〜2mm3)を、165U/mlのI型コラゲ
ナーゼ、15U/mlのIII型エラスターゼ、および0.375mg/mlの
ダイズトリプシンインヒビターを補充したDMEM中で一晩、37℃で消化した
。単一細胞懸濁物を、6ウェルプレート中に配置し、そして5%CO2を含む加
湿した空気中において、20% FCSを補充したDMEM中で3週間、37℃
で培養した。コロニーを形成した培養物を、コンフルエンスで収集し、そして増
殖培地(100U/mlのペニシリンおよび100mg/mlのストレプトマイ
シンを補充した、15% FBSおよび1mM ピルビン酸ナトリウムを含むD
MEM;最終無機イオン濃度は1.4mMであった)中で維持した。培養物の純
度を、α−SMアクチンおよびカルポニンについてのポジティブ免疫染色、なら
びにRoss、前出(1971)およびLiawら、前出(1995)によって
記載されるようなフォン ビルブラント因子の染色の非存在によって評価した。
【0112】 初代ヒト成体および胎児の大動脈内側および冠状動脈の班の初代細胞(8継代
まで)を、これらの実験において使用した。胎児および成体のHSMC培養物も
また、Perezら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:
1224−1228(1992)(本明細書中で参考として援用される)によっ
て記載されるように、HPV−E8E7を使用して不死化し、そして特徴付けし
た。
【0113】 HSMCを、増殖培地中で慣用的にサブクローンした。コンフルエンスの時点
で、細胞を石灰化培地(100U/mlのペニシリンおよび100μg/mlの
ストレプトマイシンを補充した、2mM 無機リン酸の存在下の15% FBS
および1mM ピルビン酸ナトリウムを含むDMEM)に、14日目まで切り替
えた。その培地を2日毎に新鮮な培地と交換した。時間経過実験のために、石灰
化培地中での培養の1日目を0日目と定義した。カルシウム沈着を定量し、そし
て実施例Iにおいて上記に記載されるように組織化学的および細胞化学的に評価
した。
【0114】 正常なレベルのリン酸(1.4mMの無機リン酸(Pi))を含む培地中では
、HSMCは、非常に少ないカルシウム無機質を蓄積した。対照的に、2mM
無機リン酸の存在下では、カルシウム沈着は、時間依存性の様式で増加した。例
えば、9日目において、石灰化HSMC対非石灰化コントロールは、210.3
+/−2.4対15.1+/−2.4(μg/mgタンパク質)(平均+/−S
EM(n+3))であった。カルシウム沈着に対する無機リン酸の効果は、1.
4mM〜2mMの範囲の無機リン酸にわたって用量依存性であった。上昇した無
機リン酸による石灰化の誘導は、ヒト細胞の一般的な特徴であるようであった。
なぜなら、異なる供給源(ヒト成体および胎児の大動脈および冠状動脈の班)由
来の初代HSMCおよびこれらの細胞の不死化された誘導体が、同様の挙動を示
したからである。カルシウム無機質の自発的な沈着は、石灰化培地中または10
mMまでの無機リン酸を補充した培地中では起こらなかった。このことは、細胞
および/または細胞由来のマトリックスが、鉱化作用のために必要であることを
示す。
【0115】 ヒト細胞培養系において観察された石灰化が生理学的に関連するか否かを決定
するために、形態学的研究を行った。HSMCを石灰化培地で10日間培養した
後に、顆粒状の沈着が細胞培養を通して発生した。この沈着を、実施例Iにおい
て記載するように、フォン コッサ染色によってリン酸含有無機質として同定し
た。黒色に染色された粒子を、多層性の病巣に最も多く蓄積している細胞外領域
中で優勢的に、細胞層を通して、拡散的に散乱させた。電子顕微鏡分析は、実施
例Iに記載した系におけるウシSMC培養物の石灰化と本質的に同一である、ア
パタイト無機質相、石灰化したコラーゲン原線維、および鉱化した培養物に結合
したマトリックスベシクルの存在を確証した。
【0116】 これらの結果は、代表的には、リン酸塩過剰血症の個体において見出される無
機リン酸濃度を含む培地中で培養された場合に、HSMC培養物が石灰化しやす
いことを実証する。さらに、培養されたヒト細胞中で観察された石灰化は、イン
ビボで石灰化した組織において観察された異所性石灰化と同様である。従って、
HSMC石灰化培養系を、異所性石灰化のレギュレーターの効果を正確に評価す
るために使用し得る。
【0117】 (実施例IV オステオポンチンおよびその機能的フラグメントによるヒト血
管細胞の石灰化の阻害) この実施例は、オステオポンチンおよび典型的なオステオポンチンの機能的フ
ラグメントが、ヒト平滑筋細胞の石灰化を効果的に阻害することを例証する。従
って、オステオポンチンを、異所性石灰化を治療的に阻害するために使用し得る
【0118】 オステオポンチンおよび機能的フラグメントを、異所性石灰化を阻害するそれ
らの能力について、実施例IIIにおいて記載したHSMC石灰化系を使用して
アッセイした。オステオポンチンタンパク質は、全長ヒト組換えオステオポンチ
ンならびにSmithら、前出(1996)によって記載されるようなネイティ
ブなタンパク質のトロンビン切断後に形成されるフラグメントと同様の、組換え
N末端およびC末端のヒトオステオポンチンフラグメントを含む。2つのN末端
フラグメント(10Nおよび30N)を使用した。これらは、オステオポンチン
の2つの異なるスプライシング改変体を指す。30Nスプライシング改変体は、
さらなる14アミノ酸NAVSSEETNDFKQE(配列番号7)を含み、こ
れは、エキソン5(アミノ酸59〜72)に対応する。10Nフラグメントは、
ネイティブオステオポンチンのアミノ酸17〜58および73〜160を含むが
、30Nフラグメントはアミノ酸17〜169を含む。10Cフラグメントは、
オステオポンチンのC末端ドメイン(アミノ酸170〜317)を含む。
【0119】 N末端およびC末端の組換えオステオポンチンフラグメントを、GSTとの融
合タンパク質として発現させ、グルタチオンビーズ上のアフィニティークロマト
グラフィーによって細菌溶解物から精製し、そしてトロンビンを用いて切断した
。全長ヒト組換えオステオポンチンを、Hisタグ化タンパク質として調製した
。得られる組換えタンパク質のサイズおよび純度を、SDS−PAGE分析(S
mithら、前出(1996))によって確証した。
【0120】 組換えオステオポンチンおよびその機能的フラグメントを、カゼインキナーゼ
IIによるリン酸化の前に、またはそのリン酸化の後のいずれかに、ヒト平滑筋
細胞(HSMC)の異所性石灰化を阻害するその能力についてアッセイした。カ
ゼインキナーゼIIによるリン酸化によって達成されたオステオポンチン(OP
N)およびそのフラグメントに取り込まれたリン酸の量を、図5bに示す。図5
aに示すように、高いリン酸石灰化培地の存在下において、HSMCマトリック
スへのカルシウム沈着は、リン酸化された、OPN、30N OPN、10N
OPN、または10C OPNの添加によって基底レベルに減少する。これらの
タンパク質の非リン酸化型は、このアッセイにおいてカルシウム沈着に有意な影
響を与えない。これらの結果は、オステオポンチンのN末端フラグメントとC末
端フラグメントの両方が、オステオポンチンの機能的フラグメントであること、
ならびにセリン−スレオニンリン酸化が、オステオポンチンおよびその機能的フ
ラグメントの機能的活性のために重要であるようであることを示す。
【0121】 図6において示されるように、カゼインキナーゼIIによってリン酸化された
組換えオステオポンチンは、15nMの濃度でHSMC石灰化を阻害し得る。ア
ルカリホスファターゼ(ALP)を用いる脱リン酸化は、この阻害活性を逆転す
る。これらの結果は、オステオポンチンおよびその機能的フラグメントの機能的
活性のためのリン酸化の重要性を確証する。
【0122】 ヒトオステオポンチンの異所性石灰化に対する効果は、0.1μg/ml〜5
.0μg/mlの濃度にわたって用量依存的である(図7)。さらに、オステオ
ポンチンの、異所性石灰化を阻害および逆転することに対する効果は迅速であり
、添加後60分間までに有意に減少したカルシウム沈着が見られ、90分間まで
に約50%の阻害が観察可能である(図8)。
【0123】 これらの結果は、オステオポンチンおよびその典型的な機能的フラグメントが
、迅速かつ低濃度で、ヒト細胞の生理学的に関連する異所性石灰化を効果的に阻
害し得ることを示す。従って、全長オステオポンチンおよびその機能的フラグメ
ントは、異所性石灰化を示すか、または異所性石灰化の危険がある個体において
異所性石灰化を阻害する際に治療的に有効である。
【0124】 (実施例4) (オステオポンチンは、インビボにて異所性石灰化を阻害する) 本実施例は、オステオポンチンがインビボにて異所性石灰化を阻害することを
示す。
【0125】 正常なマウスおよびオステオポンチンが欠損したマウスにおけるブタ人工弁の
皮下移殖の効果を試験して、インビボでの異所性石灰化におけるオステオポンチ
ンの役割を決定した。オステオポンチン遺伝子のうちの1コピーまたは両方のコ
ピーが欠損したマウスが、Liawら、前出(1998)に記載されている。4
.0mm2片のブタグルタルアルデヒド固定大動脈弁リーフレットを、オステオ
ポンチンについて野生型(WT)、ヘテロ接合型(HTZ)またはヌル対立遺伝
子(KO)のいずれかを保有する5〜6週齢の雌性マウス中に皮下移殖した。1
4日後、移植片を取り出し、凍結乾燥し、そして酸加水分解した。カルシウムレ
ベルを、実施例1に記載のようにアッセイし、そしてその外殖片の乾燥重量に対
して標準化した。
【0126】 図9に示されるように、移殖された弁は、野生型またはヘテロ接合型のマウス
ようりもオスポンチンヌルマウスにおいて有意に大きな程度まで石灰化する。従
って、オステオポンチンが関連のインビトロ系において異所性石灰化を阻害する
という観察された能力と一致して、これらの結果は、オステオポンチンが、イン
ビボにて異所性石灰化を阻害することを示す。
【0127】 異物炎症応答もまた、このオステオポンチンヌルマウスにおいて損なわれるよ
うである。例えば、野生型またはヘテロ接合型のマウスと比較して、オステオポ
ンチンヌルマウスにおいては、弁移殖の部位にてマクロファージによる炎症の明
らかな減少が存在する。炎症および異所性石灰化の部位に通常は浸潤するマクロ
ファージが、石灰化した沈着物の除去を食作用によって促進すると予期される。
従って、オステオポンチンが、ヒドロキシアパタイト形成を阻害することおよび
マクロファージによる石灰化沈着物の食作用性吸収を促進することの両方を行う
ことが、予期される。
【0128】 従って、オステオポンチンまたはその機能的フラグメントを個体に投与するこ
とは、異所性石灰化を阻害することにおいて治療的に有効である。
【0129】 (実施例5) (CAIIを発現する異物巨細胞(FBGC)およびマクロファージによる、
インビボでの異所性石灰化のオステオポンチン媒介性阻害) 本実施例は、オステオポンチンが、細胞外環境を酸性化しかつ鉱化した沈着物
を溶解し得る、炭酸脱水酵素IIを発現するマクロファージおよび破骨細胞様異
物巨細胞(FBGC)の蓄積および活性化を促進することを、示す。
【0130】 (OPN欠損マウス中への大動脈弁リーフレットの移植) 正常マウスおよびオステオポンチン欠損マウスにおける、生体人工グルタルア
ルデヒド固定大動脈弁(GFAV)の皮下移殖の効果を試験して、インビボでの
異所性石灰化におけるオステオポンチンの役割をさらに特徴付けた。実施例5に
記載のように、オステオポンチン遺伝子のうちの1コピーまたは両方のコピーが
欠損したマウスを、Liawら、前出(1998)に従って得た。4.0mm2
片のグルタルアルデヒド固定大動脈弁リーフレット(GFAV)を、オステオポ
ンチンについて野生型(WT)、ヘテロ接合型(HTZ)またはヌル対立遺伝子
(KO)のいずれかを保有する5〜6週齢の雌性マウス中に皮下移殖した。7日
、14日、および30日後に、オステオポンチン野生型(WT)、ヘテロ接合型
(HTZ)またはヌル対立遺伝子(KO)のマウスから移植片を取り出し、そし
て鉱質沈着、タンパク質蓄積、および細胞補充についてアッセイした。
【0131】 一旦取り出してから、この移植片をメチルカーノイズ溶液を用いて固定し、パ
ラフィン中に包理し、そしてLiawら、前出により記載されるような抗OPN
(OP−199)抗体を10μg/mlにて使用して、OPN蓄積について5μ
m切片を分析した。切片を、メチルグリーンを用いて対比染色した。OPN蓄積
を、Pro Image Analysis Programを使用して定量し
た。さらに、カルシウムレベルを、実施例1に記載のようにアッセイし、そして
その移植片の乾燥重量に対して標準化した。
【0132】 図10Aに示されるように、オステオポンチンは、オステオポンチンWTマウ
ス中への移植の14日後の弁中で観察される。この時点で、オステオポンチンは
、その移植片と周囲の異物応答との間の境界に制限されている。対照的に、オス
テオポンチンHTZマウスおよびオステオポンチンKOマウスは、それぞれ、G
FAV移植の14日目に、OPNレベルが非常に減少したかまたはOPNレベル
が存在しない。
【0133】 GFAV石灰化を定量するために、この外殖片を凍結乾燥し、秤量し、次いで
0.6N HCLを用いて室温で一晩酸加水分解した。カルシウム定量を、Si
gma Diagnosticキット(Sigma、St.Louis、IL)
に指令されるように、o−クレゾールフタレインコンプレクソンによって実施し
、そして乾燥重量に対して標準化した。このキットの精度を、原子吸光分光法に
よって確認した。オステオポンチンWTマウスは、アリザリンレッドS染色およ
びカルシウム定量に基づく、検出可能なGHAV鉱化作用を示さない。対照的に
、オステオポンチンHTZマウスおよびオステオポンチンKOマウスは、オステ
オポンチンWTマウスより4〜5倍高いGFAV石灰化を示す(図10B)。
【0134】 30日以内に、オステオポンチンKOマウスは、なおオステオポンチンを蓄積
せず、そしてGFAV鉱化作用は、14日目の時点から有意には変化しない(図
10Aおよび10B)。オステオポンチンHTZマウスおよびオステオポンチン
WTマウスは、14日目の時点に対して上昇したオステオポンチンレベルを示す
。これらのマウスにおいて、オステオポンチンの局在性は、もはや移植片/異物
カプセルの境界に限定されないが、GFAV移植片に浸透することもまた見出さ
れる。さらに、異物カプセルに位置するオステオポンチンは、移植片に隣接する
FBGCによって最も大いに発現される。30日目の時点で、オステオポンチン
WTマウスは、GFAV石灰化を示すが、鉱質レベルは、オステオポンチンHT
ZマウスおよびオステオポンチンKOマウスについて観察されるものの1/4の
低さである。また、30日目の時点で、オステオポンチンHTZマウスは、石灰
化の劇的な減少を示し、このことは、オステオポンチンの存在が鉱質沈着を阻害
していることのみならず、GFAVからの鉱質の除去を媒介していることもまた
、示す。60日目の時点で、オステオポンチンHTZマウスおよびオステオポン
チンWTマウスは、各々の30日目の時点と比較して、4〜5倍の増加を示す(
図10B)。同様に、60日目の時点で、オステオポンチンKOマウスにおける
GFAV弁石灰化は、30日目の時点と比較してほぼ2倍増加する(図10B)
オステオポンチンHTZマウスにおける30日目の時点で観察された有意なオ
ステオポンチンレベルの蓄積は、GFAV鉱化作用の減少または反転を伴った。
OPN単独ではリン酸カルシウムの溶解を媒介し得ないので、観察された鉱質の
損失は、むしろオステオポンチン調節性の事象である。リン酸カルシウム除去を
することができる唯一の機構は、食作用および酸性化である。
【0135】 (オステオポンチン媒介性マクロファージ補充の分析) マクロファージ蓄積を試験するために、14日目および30日目にオステオポ
ンチンWTマウス、HTZマウスおよびKOマウスからGFAV移植片を取り出
し、そして5μm切片を、6μg/mlの抗マウスBM−8(Accurate
Chemical & Scientific Corp.、Westbur
y、N.Y.)を使用して、マクロファージ蓄積について分析した。1次抗体と
の1時間のインキュベーションの後、ビオチン化ヤギ抗ラット抗体(Vecto
r Laboratories Inc.、Burlingame、CA)を添
加し、そして45分後に、反応産物を3,3−ジアミノベンジジン(DAB)(
Sigma、St.Louis、MO)を用いて検出した。この切片を、メチル
グリーンを用いて対比染色した。
【0136】 BM−8表面マーカーの免疫化学的位置決定および定量によって示されるよう
に、オステオポンチンKOマウスは、GFAV移植部位へのマクロファージの補
充の欠如を示す(図11)。さらに、このオステオポンチンKOマウスは、移植
の14日目および30日目にオステオポンチンWTマウスと比較して、それぞれ
50%〜25%低いレベルのBM−8細胞染色を示した。
【0137】 オステオポンチンWTマウスにおいて、BM−8陽性細胞は、早い時点で拡散
して蓄積したが、後には、移植片の縁に沿って濃縮した。このことは、これら細
胞の活性化を示唆する。対照的に、BM−8細胞は、オステオポンチンKOマウ
スにおいて移殖片/異物カプセルの境界に沿って濃縮することはなく、このこと
は、活性化の欠如を意味する。
【0138】 オステオポンチンHTZマウスもまたBM−8陽性細胞蓄積の減少を示したが
、マクロファージの欠損は、30日目の時点で観察された鉱質損失パターンと関
連がなかった。全体として、試験したどの時点においても、非常に少数のマクロ
ファージしかGFAVに浸透し得なかった。このことは、食作用単独では、鉱化
作用の反転を媒介し得ないことを示唆する。
【0139】 (GFAV外殖片のpH分析) GFAVを、移殖の30日後にオステオポンチンWTマウス、オステオポンチ
ンHTZマウスおよびオステオポンチンKOマウスから外殖して、オステオポン
チンが移殖片酸性化を促進し、オステオポンチンHTZマウスにおいて観察され
たようなGFAV移殖片からの鉱質の除去に寄与するか否かを調査した。この外
殖片を凍結乾燥し、次いでUniversal Indicator Solu
tion(Fisher Scientific、Pittsburg、PA)
に浸漬した。各移殖片のpHを、製造業者に提供された色目盛りに対してGFA
V溶液の色を3人の別々の観察者によって比較して個々に決定した。
【0140】 オステオポンチンWTマウス由来のGFAV外殖片は酸性のpH(6.0)を
有したが、オステオポンチンKOマウス由来の外殖片は、中性付近のpH(6.
7)を維持した。pHのこれらの差異は、統計的に有意であった(p=0.00
02)。オステオポンチンHTZマウス由来のGFAV移殖片は、中間のpH(
6.2)を有した。未移殖のGFAVは、pH6.5を有した(図12)。アパ
タイトの安定性は37℃で7.0未満のpHにて減少するので、これらの外殖片
の観察されたpHは、アパタイト性鉱質沈着物を溶解する能力に関して生理学的
に関連があり、そして観察されたGFAV鉱化作用の損失を説明する。これらの
知見は、オステオポンチンが、宿主細胞がGFAV微小環境を酸性化する能力を
調節することによって鉱質吸収を制御することを示す。
【0141】 (GFAV移殖部位での炭酸脱水酵素II発現の分析) 破骨細胞およびマクロファージは、炭酸脱水酵素II(CAII)、すなわち
、局所の微小環境の酸性化を促進する酵素を発現する。5μm切片中のタンパク
質を、5μg/mlのヒツジ抗ヒトCAII抗体(Biodesign Int
ernational、Kennebunkport、ME)を使用して位置決
定することによって、移植の14日後および30日後のオステオポンチンWTマ
ウス、オステオポンチンHTZマウス、およびオステオポンチンKOマウス由来
のGFAV外殖片に、CAIIおよびカテプシンKを発現する細胞を位置決定し
た。室温で1時間1次抗体とともにインキュベートした後、ビオチン化ウサギ抗
ヒツジ抗体(Vector Laboratories Inc.、Burli
ngame、CA)とともに45分間インキュベートした。その反応産物を、3
,3’−ジアミノベンジジン(DAB)(Sigma、St.Louis、MO
)を用いて検出し、そして切片を、メチルグリーンを用いて対比染色した。CA
II発現を、Pro Image Analysis Programを使用し
て定量し、そして図13において面積のパーセンテージとして示す。FBGCを
、外殖片の4つの象限中にて計数した(図14)。1つより多くの核を含むすべ
ての細胞を、FBGCであるとみなした。
【0142】 CAII免疫染色の定量によって、CAII発現の鉱質依存性およびオステオ
ポンチン依存性の調節が明らかになった(図13)。14日目に、オステオポン
チンWTマウスにおいて、オステオポンチンが存在し、そしてGFAV移殖片は
、鉱化しない。その後、鉱質除去の必要性がほとんど存在しない場合、CAII
レベルは低い。30日目に、GFAVが鉱化し始め、オステオポンチンが蓄積し
、そしてCAII発現細胞が劇的に増加する。逆に、オステオポンチンKOマウ
ス(観察したすべての時点で上昇した鉱質レベルを示す)は、非常に低いCAI
Iレベルを示す。オステオポンチン媒介性CAII応答が、オステオポンチンH
TZマウスにおいて促進される。14日目に、オステオポンチンHTZマウスは
、オステオポンチンのレベルの減少に起因する実質的GFAV鉱化作用を示すが
、CAII陽性細胞を産生することによって、この鉱化作用に応答する。従って
、このデータは、オステオポンチンHTZマウスが、鉱化作用を直接阻害するに
十分高いレベルのオステオポンチンを発現するわけではないが、その発現レベル
が、CAII発現またはCAII陽性細胞の形成の増進を促進するためために十
分であることを、示す。CAIIに加えて、カテプシンKの高発現が、CAII
発現FBGCにおいて観察された。カテプシンKは、破骨細胞において優先的に
発現され、そして破骨細胞の吸収活性に重要であることが示された、システイン
プロテアーゼである。
【0143】 オステオポンチンHTZマウスおよびオステオポンチンKOマウスにおいて観
察された酸性化の欠如がFBGCの数の減少という結果であるか否かを決定する
ために、GFAV外殖片上のFBGCの数を計数した。FBGCを、Wadaら
、Cir.Res.84、166〜178(1999)(本明細書中に参考とし
て援用される)に記載のように実施して電子顕微鏡によって可視化した。FBG
Cの数は、オステオポンチンHTZマウスおよびオステオポンチンKOマウス由
来の14日目のGFAV外殖片によって示される、OPNが欠如した非常に石灰
化した状態において2〜3倍に増加する。
【0144】 FBGC蓄積のパターンは、カルシウム沈着パターンとほぼ同一であり、そし
てOPN蓄積とは逆である。このデータは、オステオポンチンの欠如が、GFA
V移殖片付近でのFBGC蓄積の増加を促進するが、これらのFBGCは、減少
したCAIIレベルによって判断されるように、酸性化能力の減少を示すことを
示唆する。
【0145】 これらの結果は、オステオポンチンが、細胞外微小環境を酸性化しそして鉱化
した沈着物を溶解し得る、炭酸脱水酵素IIを発現するマクロファージおよび破
骨細胞様異物巨細胞(FBGC)の蓄積および活性化を促進することを示す。
【0146】 (リン酸化オステオポンチンは、インビボにて生体人工弁の石灰化を阻害する
) GFAVを、コントロールビヒクル、非リン酸化オステオポンチンまたはリン
酸化オステオポンチンのいずれかの1mg/ml溶液中で、オステオポンチンK
Oマウスへの移殖の前に3日間インキュベートした。14日後、カルシウム定量
を、上記のように実施した。図15に示されるように、これらの結果は、リン酸
化オステオポンチンが、インビボにて生体人工弁の石灰化を阻害することを示す
【配列表】
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は、Kieferら、Nucleic Acids Res.17:33
06(1989)に記載されるようにヒトオステオポンチンのヌクレオチド配列
(配列番号1)およびアミノ酸配列(配列番号2)を示す。
【図2】 図2は、BASMCの石灰化に対するビトロネクチンおよびフィブロネクチン
(b)と比較したオステオポンチン(a)の効果を示す。
【図3】 図3は、BASMCのアルカリホスファターゼ活性(a)および培地中の亜リ
ン酸濃度(b)に対するオステオポンチンの効果、ならびにアルカリホスファタ
ーゼ(ALP)活性に対するレバミゾールおよびオステオポンチン(OPN)の
効果(c)を示す。
【図4】 図4は、種々の初期カルシウム濃度でのカルシウム沈着(a)、培地亜リン酸
濃度(b)および培地カルシウム濃度(c)に対するオステオポンチンの効果を
示す。
【図5】 図5は、HSMCカルシウム沈着に対する組換えオステオポンチンおよびその
機能的フラグメントの効果(a)、ならびにカゼインキナーゼIIによる組換え
オステオポンチンフラグメントのリン酸化の程度(b)を示す。
【図6】 図6は、HSMC石灰化に対するオステオポンチンのリン酸化および脱リン酸
化の効果を示す。
【図7】 図7は、HSMC石灰化に対する種々の濃度のオステオポンチンの効果を示す
【図8】 図8は、HSMC石灰化に対するオステオポンチンの阻害の時間経過を示す。
【図9】 図9は、マウスに皮下移植された弁の石灰化に対するオステオポンチン遺伝子
のコピー数の効果を示す。
【図10A】 図10Aは、マウスに皮下移植され、7日、14日および30日の時点で取り
出された弁におけるオステオポンチン蓄積に対するオステオポンチン遺伝子のコ
ピー数の効果を示す。
【図10B】 図10Bは、マウスに皮下移植され、7日、14日および30日の時点で取り
出された弁におけるカルシウム沈着を示す。
【図11】 図11は、マウスに皮下移植された弁の部位へのマクロファージの補充に対す
るオステオポンチン遺伝子のコピー数の効果を示す。
【図12】 図12は、マウスに皮下移植された弁のpHに対するオステオポンチン遺伝子
のコピー数の効果を示す。
【図13】 図13は、マウスに皮下移植された弁の部位での炭酸脱水素酵素II発現に対
するオステオポンチン遺伝子のコピー数の効果を示す。
【図14】 図14は、マウスに皮下移植された弁の多核性異物巨細胞の数に対するオステ
オポンチン遺伝子のコピー数の効果を示す。
【図15】 図15は、インビボでの弁鉱化作用に対するオステオポンチンのリン酸化の効
果を示す。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) A61P 43/00 101 C07K 14/47 ZNA // C07K 14/47 ZNA A61K 37/02 (81)指定国 EP(AT,BE,CH,CY, DE,DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,I T,LU,MC,NL,PT,SE),OA(BF,BJ ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GW,ML, MR,NE,SN,TD,TG),AP(GH,GM,K E,LS,MW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZW ),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU, TJ,TM),AE,AL,AM,AT,AU,AZ, BA,BB,BG,BR,BY,CA,CH,CN,C R,CU,CZ,DE,DK,DM,EE,ES,FI ,GB,GD,GE,GH,GM,HR,HU,ID, IL,IN,IS,JP,KE,KG,KP,KR,K Z,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LV,MA ,MD,MG,MK,MN,MW,MX,NO,NZ, PL,PT,RO,RU,SD,SE,SG,SI,S K,SL,TJ,TM,TR,TT,TZ,UA,UG ,US,UZ,VN,YU,ZA,ZW Fターム(参考) 4C084 AA02 AA13 BA01 BA08 BA22 BA23 CA18 CA53 NA14 ZA312 ZA362 ZA392 ZA542 ZA812 ZC352 ZC522 4H045 AA30 BA10 CA40 EA20 FA71 FA72 FA74

Claims (32)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 個体における異所性石灰化を阻害する方法であって、治療有
    効量のオステオポンチンまたはその機能的フラグメントを該個体に投与する工程
    を包含する、方法。
  2. 【請求項2】 請求項1に記載の方法であって、ここで、前記異所性石灰化
    が、アテローム性動脈硬化症、狭窄症、再狭窄、人工弁置換、血管形成術、腎不
    全、組織損傷、糖尿病および老化からなる群から選択される状態と関連する、方
    法。
  3. 【請求項3】 請求項1に記載の方法であって、ここで、前記オステオポン
    チンが、配列番号2のアミノ酸配列を実質的に含むポリペプチドまたはその機能
    的フラグメントである、方法。
  4. 【請求項4】 請求項1に記載の方法であって、ここで、前記オステオポン
    チンまたはその機能的フラグメントが、薬学的に受容可能なキャリアと共に投与
    される、方法。
  5. 【請求項5】 請求項1に記載の方法であって、ここで、前記オステオポン
    チンまたはその機能的フラグメントが、前記異所性石灰化の部位に投与される、
    方法。
  6. 【請求項6】 請求項5に記載の方法であって、ここで、前記オステオポン
    チンまたはその機能的フラグメントが、プロテーゼデバイスと接触する、方法。
  7. 【請求項7】 請求項6に記載の方法であって、ここで、前記プロテーゼデ
    バイスが、生体人工心臓弁である、方法。
  8. 【請求項8】 請求項6に記載の方法であって、ここで、前記接触工程が、
    前記オステオポンチンまたはその機能的フラグメントの、前記プロテーゼデバイ
    スへの付着を包含する、方法。
  9. 【請求項9】 請求項6に記載の方法であって、ここで、前記接触工程が、
    前記オステオポンチンまたはその機能的フラグメントを発現する細胞の、前記プ
    ロテーゼデバイスへの付着を包含する、方法。
  10. 【請求項10】 請求項9に記載の方法であって、ここで、前記細胞が、前
    記オステオポンチンまたはその機能的フラグメントを組換え発現する、方法。
  11. 【請求項11】 請求項1に記載の方法であって、ここで、前記オステオポ
    ンチンの有効量が、ヒドロキシアパタイト結晶に結合しそして鉱化作用を阻害す
    るのに十分な量をさらに包含する、方法。
  12. 【請求項12】 請求項1に記載の方法であって、ここで、前記オステオポ
    ンチンの有効量が、局所的な微小環境を酸性化しそして鉱化作用を阻害するよう
    に細胞を刺激するのに十分な量をさらに包含する、方法。
  13. 【請求項13】 請求項12に記載の方法であって、ここで、前記細胞が、
    炭酸脱水素酵素IIを発現する、方法。
  14. 【請求項14】 請求項13に記載の方法であって、ここで、前記細胞が、
    多核性異物巨細胞である、方法。
  15. 【請求項15】 請求項13に記載の方法であって、ここで、前記細胞が、
    マクロファージである、方法。
  16. 【請求項16】 個体における異所性石灰化を阻害する方法であって、該異
    所性石灰化を有する個体に有効量のマクロファージを投与する工程を包含し、該
    有効量のマクロファージが、該異所性石灰化の部位で鉱化した沈着物を溶解し、
    そしてそれにより該異所性石灰化を阻害するのに十分である、方法。
  17. 【請求項17】 請求項16に記載の方法であって、ここで、前記マクロフ
    ァージが、炭酸脱水素酵素IIを発現することにより局所的な微小環境を酸性化
    する、方法。
  18. 【請求項18】 請求項16に記載の方法であって、オステオポンチンを投
    与し、それにより前記マクロファージによる前記局所的な微小環境の酸性化を刺
    激する工程をさらに包含する、方法。
  19. 【請求項19】 請求項16に記載の方法であって、ここで、前記マクロフ
    ァージが、プロテーゼデバイスと接触する、方法。
  20. 【請求項20】 請求項19に記載の方法であって、ここで、前記プロテー
    ゼデバイスが、生体人工心臓弁である、方法。
  21. 【請求項21】 異所性石灰化を阻害する方法であって、該異所性石灰化を
    有する個体に有効量の多核性異物巨細胞を投与する工程を包含し、該有効量の多
    核性異物巨細胞が、該異所性石灰化の部位で鉱化した沈着物を溶解し、そしてそ
    れにより該異所性石灰化を阻害するのに十分である、方法。
  22. 【請求項22】 請求項21に記載の方法であって、ここで、前記多核性異
    物巨細胞が、炭酸脱水素酵素IIを発現することにより局所的な微小環境を酸性
    化する、方法。
  23. 【請求項23】 請求項21に記載の方法であって、オステオポンチンを投
    与し、それにより前記多核性異物巨細胞による局所的な微小環境の酸性化を刺激
    する工程をさらに包含する、方法。
  24. 【請求項24】 請求項21に記載の方法であって、ここで、前記多核性異
    物巨細胞が、プロテーゼデバイスと接触する、方法。
  25. 【請求項25】 請求項24に記載の方法であって、ここで前記プロテーゼ
    デバイスが、生体人工心臓弁である、方法。
  26. 【請求項26】 個体における異所性石灰化を阻害する方法であって、該異
    所性石灰化を有する個体に、該異所性石灰化の部位に対して酸生成細胞を補充す
    るために十分な有効量のオステオポンチンを投与する工程を包含し、該異所性石
    灰化の部位で該酸生成細胞が、該異所性石灰化の阻害を促進する、方法。
  27. 【請求項27】 請求項26に記載の方法であって、ここで、前記酸生成細
    胞が炭酸脱水素酵素IIを発現する、方法。
  28. 【請求項28】 請求項26に記載の方法であって、ここで、前記酸生成細
    胞がマクロファージである、方法。
  29. 【請求項29】 請求項26に記載の方法であって、ここで、前記酸生成細
    胞が多核性異物巨細胞である、方法。
  30. 【請求項30】 個体における異所性石灰化を阻害する方法であって、該異
    所性石灰化を有する個体に該異所性石灰化の部位で炭酸脱水素酵素IIの発現を
    増加するために十分な有効量のオステオポンチンを投与する工程を包含する方法
    であって、ここで、該異所性石灰化の部位での該炭酸脱水素酵素IIの発現が、
    該異所性石灰化の阻害を促進する、方法。
  31. 【請求項31】 請求項30に記載の方法であって、ここで、前記炭酸脱水
    素酵素IIが、多核性異物巨細胞により発現される、方法。
  32. 【請求項32】 請求項30に記載の方法であって、ここで、前記炭酸脱水
    素酵素IIが、マクロファージにより発現される、方法。
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