JP2002529036A - モータおよび伝動装置から成る駆動装置の密封システム - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 本発明は、特に高速で回転しフランジ付きの直線伝動装置を有するモータから成る駆動装置である、特にエスカレータおよび動く歩道などの乗客輸送装置の密封システムに関するものであり、径方向軸密封エレメントとして形成された少なくとも１つの密封エレメントと、少なくとも１つの遠心エレメントと、少なくとも１つの蓋−吸引エレメントとを含み、前記蓋−吸引エレメントは伝動装置側において密封エレメントの前方に配され、遠心エレメントの領域に配された潤滑油収集容器は、蓋−吸引エレメントの方向に延長している少なくとも１つのダクトによって、伝動装置室に接続されていて、前記室は、蓋−吸引エレメントの吸引側の領域における油レベルのおおよそ上方に配されている。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】 本発明は、特に高速で回転しフランジ付きの直線伝動装置を有するモータから
成る駆動装置である、特にエスカレータおよび動く歩道などの乗客輸送装置の密
封システムに関するものである。

【０００２】 エスカレータ、動く歩道その他の駆動用伝動装置は、ドイツ特許第4242762号
によって公知となっている。この伝動装置の伝動装置入出力軸は、円錐転がり軸
受けによって支持され、軸方向外方に対しては、少なくとも１つの軸密封エレメ
ントによって密封されている。円錐転がり軸受けと軸密封エレメントとの間には
、潤滑油圧送エレメントが配されている。しかし、円錐転がり軸受けは、構造上
の制約により、潤滑油を圧送する。潤滑油圧送エレメントは、円錐転がり軸受け
を保持する構成要素によって形成され、この構成要素は、遠心エレメントを備え
た設定ナットによって形成されている。軸密封エレメントは複数の密封エレメン
トから成り、それらの間には、軸方向にプレストレスをかけることのできる複数
の室が画成されている。前記公報の目的は、伝動装置、特にウォーム伝動装置の
歯車軸の油漏れを広範囲に除去することによって、耐用年数を長くすると共に、
潤滑状態が劣化しても、軸密封エレメントの１つ以上の密封唇状部の損傷を回避
することにある。ウォーム伝動装置は一般に、低速で回転する歯車エレメントで
あるため、潤滑油をそれぞれの密封唇状部に導くことは、これらを早期の損傷か
ら保護する上で問題となりうる。

【０００３】 ドイツ特許第3238780号には、歯車軸上に配されたポンプから圧送される潤滑
油用の少なくとも１つの集油ポケットと、回転する歯車軸の周囲に対して開放さ
れた集油溝とを備えた、伝動装置用の油潤滑システムが記載されている。ポンプ
には径方向のダクトが組み合わされていて、ポンプの吸引個所は、集油ポケット
に接続されている。集油溝からは、少なくとも１つのダクトが歯車軸の内部に伸
び、歯車軸の内部に配された潤滑点に至っている。ポンプは、遠心力ポンプとし
て形成されていて、複数の羽根を備えた、基本的には円盤状の羽根車を備えてい
る。径方向のダクトは、遠心力ポンプに配された圧油収集室の径方向外方に延長
されていて、ハウジングと一体に径方向内方に延長する案内ダクトとして形成さ
れ、集油溝と接続されている。

【０００４】 DE-Zeitschrift Konstruktion 39 (1987)、第３号、第107頁〜第113頁には、
液放射される密封個所のための無接触の軸密封エレメントが記載されている。こ
の刊行物は、使用されている無接触で作動する密封システムの概観を提供すると
共に、密封システムの設置環境の形状の選定、密封システム自体および液の返送
についての示唆も与えている。また、密封しようとしているスペース中に塵埃が
生憎にも侵入することに対する未解決の問題点についての示唆もなされている。

【０００５】 本発明は、特に高速で回転しフランジ付きの直線伝動装置を有するモータのた
めの簡単な構成の密封システムを大幅に改善し、乗客輸送装置の搬送（傾動）時
および取り付け時の油漏れを広範囲に防止すると共に、作動状態において密封エ
レメントが事後に故障しても伝動装置からモータ側に潤滑油が漏れ出すことを回
避することを目的とする。

【０００６】 この目的は、次のようなシステムによって達成される。すなわちこのシステム
は、径方向軸密封エレメントとして形成された少なくとも１つの密封エレメント
と、少なくとも１つの遠心エレメントと、少なくとも１つの蓋−吸引エレメント
とを含み、特に高速で回転しフランジ付きの直線伝動装置を有するモータから成
る駆動装置である、特にエスカレータおよび動く歩道などの乗客輸送装置の密封
システムにおいて、蓋−吸引エレメントは伝動装置側において密封エレメントの
前方に配され、遠心エレメントの領域に配された潤滑油収集容器は、蓋−吸引エ
レメントの方向に延長している少なくとも１つのダクトによって、伝動装置室に
接続されていて、伝動装置室は、蓋−吸引エレメントの吸引側の領域における油
レベルのおおよそ上方に配されているものである。

【０００７】 本発明の有利な実施例は、特許請求の範囲第２項以降に示されている。

【０００８】 本発明の目的は、例えばエスカレータまたは動く歩道などの乗客輸送装置を、
その時の傾斜角に関係なく移動させまたは搬送する可能性を提供し、実施例の返
送システム自体を理由として、少なくとも設置状態において接触して作動してい
る密封エレメントが故障しても、潤滑油が伝動装置からモータの方向に流出する
のを確実に阻止する可能性を提供することである。

【０００９】 伝動装置室内の油レベルは、乗客輸送装置の取り付け終了状態において蓋−吸
引エレメントの最大の周面の高さより下方のところまで下げることができるため
、ここでも、各々の伝動装置について数リットルの潤滑油を節約できる。エレメ
ントは、その空間的な配置によって、また密封エレメントの方向に外周面が狭く
なっていることによって、潤滑油（遠心油）が油以外において常に多少とも高い
圧力の下に密封エレメントに向かって圧送されることを阻止すると共に、なお密
封エレメントを経て貫流される潤滑油が遠心ディスクを経て潤滑油収集室の方向
に、更にダクトを経て再び伝動装置室の方向に吸引されるようにする。いずれの
場合にも、蓋−吸引エレメントの遠心力が、それぞれの目的のために、その場所
で利用される。

【００１０】 したがって、本発明の目的によれば、作動状態において密封エレメントが故障
してもなお作動し、いかなる場合にも、伝動装置から、直接に固定されたモータ
の方向への潤滑油の流出が確実に防止されるようにした潤滑油の循環システムが
形成される。好ましくは１つの構成エレメントとして形成される密封システムは
、蓋−吸引エレメントと遠心エレメントとから成る一体的に形成された１つの構
造部分であり、後者は、径方向にステップ状になった脚部上に、必要に応じて多
唇状に形成することの可能な径方向軸密封エレメントを支持している。

【００１１】 場合により実際に流出する潤滑油のための上記の構成による循環システムによ
り、密封エレメントは、作動状態では不要になるため、実際には、搬送および取
り付けの目的にのみ用いられる。これは潤滑油収集室を、伝動装置室の方向に延
長しているダクトから有効に分離することを確実にする。

【００１２】 特に高速で回転するモータと合成油を満たした伝動装置ユニットとの間の密封
個所は、次の理由により、問題があると考えられる。

【００１３】 合成油は、各々の密封唇状部の素地に対して適性を示すわけではなく、また各
々の密封唇状部の素材は、特に高速で回転するモータ駆動軸において発生する高
温に耐性を示すわけではない。

【００１４】 ステップもしくは踏み板を設置し、または交換する場合には、100℃以上の高
温にはすぐ到達する。モータは短時間内に高速で回転するようになるが、所属す
るブロワは、必要な冷却出力を供与する状態になっていないことから、ビトンを
主成分とする材料を密封唇状部の素材として用いることが推奨される。しかしこ
の耐高温性の密封唇状部の素材は、合成油に対して長期間の耐性を有しないため
、一方のパラメータは勘案されても、他方のパラメータは勘案されない。

【００１５】 NBRを主成分とする径方向の軸密封リングは、その耐用年数について合成油に
広範囲に耐性を示すが、前記温度範囲では、比較的短い期間内に使用できなくな
る。

【００１６】 そのため、伝動装置室への潤滑油の返送は密封システムの他の構造部分が受け
持ち、駆動状態では頼らなくてすむ軸密封リングは、廉価なNBR部材として作成
できるため、密封システムは、それ自体として、この問題の多い領域において特
に廉価に作成し、設置ユニットとして取り付けることができる。設置ユニットと
して作成した本発明による密封システムにおいて、後取付を必要に応じて行って
もよい。

【００１７】 次に本発明を図面に示した実施例について詳細に説明する。

【００１８】 図１は、詳細には示さない乗客輸送装置、例えばエスカレータの駆動システム
を示す。駆動システム１は、この例ではモータ２と伝動装置３とから成る折り返
し対称の駆動装置を有し、伝動装置３は多段の衛星歯車により、モータ２は高速
で走行するモータにより形成される。駆動装置２、３は、駆動エレメント４、５
、６を介して軸７、８と連動する。軸７は、図示しない段のための、単に概略的
に図示した搬送チェーン11、12用の案内ホイール９、10を支持している。軸８は
、単に概略的に図示したハンドレール15、16のための案内ホイール13、14を支持
している。

【００１９】 図２は詳細には示さないモータから伝動装置３への遷移域を部分的に示してい
る。モータ駆動軸18（例えばｎ＝1800回転／分）の自由端は、多段の衛星歯車３
の第１段20に、ピニオン19を介して連動している。伝動装置中に存在する油レベ
ルは符号21によって示されている。本発明による密封システム自体は、構成要素
としての蓋−吸引エレメント22と、密封エレメント23と、遠心エレメント24とか
ら成り、蓋−吸引エレメント22は、遠心エレメント24の付設部25上に圧接され、
径方向の大きさの小さな遠心エレメント24の軸方向の脚部26と連動する。この例
では、密封エレメント23は、NBRを基本成分とする径方向軸密封エレメントとし
て形成されている。伝動装置側に配された蓋−吸引エレメント22は、密封エレメ
ント23の方向にテーパ状となった円錐形の外周面27を有し、伝動装置３のハウジ
ング部分28と蓋−吸引エレメント22との間には、ラビリンス状の空隙29が形成さ
れている。円盤状に形成された遠心エレメント24は、その外周面の近傍に、ラビ
リンス状に形成されたダクト系30を備えている。ダクト系30は、必要により密封
エレメント23（密封唇状部23’）を通過する潤滑油を経て遠心エレメント24を囲
む空所31に至っている。この潤滑油は、この実施形態では、ほぼ軸方向に延長し
ているダクト32を経て、伝動装置の内部室33に向かって逆送させてもよい。その
ため、蓋−吸引エレメント22は、次の２つの目的に供される。すなわち、外周面
27の幾何学的形状により、遠心力に基づいて、潤滑油を油レベルから密封エレメ
ント23に対して広範囲に隔てる目的と、やはり遠心力に基づいて油レベル21のレ
ベルの所から吸引力を働かせることによって、収集室31中にある潤滑油をダクト
32により再び伝動装置の内部室33に逆送する目的とに供される。

【００２０】 図３は、ここでは図示しないモータの高速で回転している駆動軸18から伝動装
置３への遷移域17における密封システムの変形例を示している。主要部について
は図２に説明した通りである。潤滑油は、蓋−吸引エレメント22の幾何学的形状
のため、ラビリンス29の領域に、したがって密封エレメント23、特に密封唇状部
23’の領域には到達できなくなる。前述したように、密封エレメント23が存在す
るか否かは、本発明の目的の作動形態にとっては重要でない。これは、潤滑油の
再循環が前記の状態で生ずるからである。実際に密封エレメント23の領域に辛う
じて到着した潤滑油の一部は、密封唇状部23’または後置された唇状部38が存在
していなくても、遠心エレメント24の領域に存在しているダクト系30を経て、収
集室31に搬送され、そこからダクト32を経て伝動装置の内部室33に逆送される。
蓋−吸引エレメント22は、遠心エレメント24と一体の構造部分を形成し、この構
造部分は、静止して作用する密封エレメント34を軸18に対して密封する。

【００２１】 この実施例は、図２の実施例に比べて構造が簡単であると共に、搬送安全装置
も不要となる。

【図面の簡単な説明】

【図１】 乗客輸送装置、例えばエスカレータ用の駆動システムを示す図である。

【図２】 本発明による密封システムと共にモータ−伝動装置遷移域を示す部分図である
。

【図３】 本発明による密封システムを含む遷移域の変形例を示す部分図である。

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (81)指定国 ＥＰ(ＡＴ，ＢＥ，ＣＨ，ＣＹ， ＤＥ，ＤＫ，ＥＳ，ＦＩ，ＦＲ，ＧＢ，ＧＲ，ＩＥ，Ｉ Ｔ，ＬＵ，ＭＣ，ＮＬ，ＰＴ，ＳＥ)，ＯＡ(ＢＦ，ＢＪ ，ＣＦ，ＣＧ，ＣＩ，ＣＭ，ＧＡ，ＧＮ，ＧＷ，ＭＬ， ＭＲ，ＮＥ，ＳＮ，ＴＤ，ＴＧ)，ＡＰ(ＧＨ，ＧＭ，Ｋ Ｅ，ＬＳ，ＭＷ，ＳＤ，ＳＬ，ＳＺ，ＴＺ，ＵＧ，ＺＷ )，ＥＡ(ＡＭ，ＡＺ，ＢＹ，ＫＧ，ＫＺ，ＭＤ，ＲＵ， ＴＪ，ＴＭ)，ＡＥ，ＡＬ，ＡＭ，ＡＴ，ＡＵ，ＡＺ， ＢＡ，ＢＢ，ＢＧ，ＢＲ，ＢＹ，ＣＡ，ＣＨ，ＣＮ，Ｃ Ｕ，ＣＺ，ＤＥ，ＤＫ，ＥＥ，ＥＳ，ＦＩ，ＧＢ，ＧＤ ，ＧＥ，ＧＨ，ＧＭ，ＨＲ，ＨＵ，ＩＤ，ＩＬ，ＩＮ， ＩＳ，ＪＰ，ＫＥ，ＫＧ，ＫＰ，ＫＲ，ＫＺ，ＬＣ，Ｌ Ｋ，ＬＲ，ＬＳ，ＬＴ，ＬＵ，ＬＶ，ＭＤ，ＭＧ，ＭＫ ，ＭＮ，ＭＷ，ＭＸ，ＮＯ，ＮＺ，ＰＬ，ＰＴ，ＲＯ， ＲＵ，ＳＤ，ＳＥ，ＳＧ，ＳＩ，ＳＫ，ＳＬ，ＴＪ，Ｔ Ｍ，ＴＲ，ＴＴ，ＵＡ，ＵＧ，ＵＳ，ＵＺ，ＶＮ，ＹＵ ，ＺＡ，ＺＷ

Claims (10)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 径方向軸密封エレメントとして形成された少なくとも１つの
   密封エレメントと、少なくとも１つの遠心エレメントと、少なくとも１つの蓋−
   吸引エレメントとを含み、特に高速で回転しフランジ付きの直線伝動装置を有す
   るモータから成る駆動装置である、特にエスカレータおよび動く歩道などの乗客
   輸送装置の密封システムにおいて、前記蓋−吸引エレメントは伝動装置側におい
   て密封エレメントの前方に配され、前記遠心エレメントの領域に配された潤滑油
   収集容器は、前記蓋−吸引エレメントの方向に延長している少なくとも１つのダ
   クトによって伝動装置室に接続されていて、該室は、前記蓋−吸引エレメントの
   吸引側の領域における油レベルのおおよそ上方に配されていることを特徴とする
   乗客輸送装置の密封システム。
2. 【請求項２】 請求項１に記載の密封システムにおいて、前記蓋−吸引エレ
   メント（22）は円盤状に形成され、該蓋−吸引エレメント（22）の外周面（27）
   は前記密封エレメント（23）に向かってテーパ状に形成されていることを特徴と
   する密封システム。
3. 【請求項３】 請求項１または２に記載の密封システムにおいて、前記蓋−
   吸引エレメント（22）と密封エレメント（23）との間には伝動装置側に延長する
   ラビリンス（29）が存在することを特徴とする密封システム。
4. 【請求項４】 請求項１ないし３のいずれかに記載の密封システムにおいて
   、前記遠心エレメント（24）はラビリンス状に形成されたダクト系（30）を有し
   、該ダクト系（30）によって潤滑油は前記潤滑油収集容器（31）に向かって搬送
   されることを特徴とする密封システム。
5. 【請求項５】 請求項１ないし４のいずれかに記載の密封システムにおいて
   、前記遠心エレメント（24）はアングル状の断面形状を有し、径方向の寸法の大
   きなダクト系（30）の脚部がダクト系（30）を包含し、径方向の寸法の小さな脚
   部（26）は、特に多唇状（23’、38）に形成された径方向軸密封エレメントの密
   封面として形成されていることを特徴とする密封システム。
6. 【請求項６】 請求項１ないし５のいずれかに記載の密封システムにおいて
   、前記遠心エレメント（24）は、静的な状態で作動する少なくとも１つの密封エ
   レメントを介してモータ駆動軸（18）に連結されていることを特徴とする密封シ
   ステム。
7. 【請求項７】 請求項１ないし６のいずれかに記載の密封システムにおいて
   、該システムは、前記蓋−吸引エレメント（22）と一体的に形成されていること
   を特徴とする密封システム。
8. 【請求項８】 請求項１ないし７のいずれかに記載の密封システムにおいて
   、構造部分としての前記遠心エレメント(24)と、密封エレメント（23）と、蓋−
   吸引エレメント（22）とは、１つの構成ユニットとして形成されていることを特
   徴とする密封システム。
9. 【請求項９】 請求項１ないし９のいずれかに記載の密封システムにおいて
   、設置状態において周方向の寸法が大きい蓋−吸引エレメント（22）の延長部分
   の下方に、伝動装置室（33）内の油レベルが配置されることを特徴とする密封シ
   ステム。
10. 【請求項１０】 請求項１ないし11のいずれかに記載の密封システムにおい
    て、搬送および取り付けを目的としてダクト（32）は潤滑油収集容器（31）に対
    して密封され、乗客輸送装置の設置状態において取り外し可能な搬送保安部（39
    ）を有することを特徴とする密封システム。