JP2002526411A - 網膜病理を治療するためのジルチアゼムの使用 - Google Patents

網膜病理を治療するためのジルチアゼムの使用

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フラッソン,マリア
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Universite Louis Pasteur Strasbourg I
Institut National de la Sante et de la Recherche Medicale INSERM
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Abstract

(57)【要約】 本発明は、ヒト又は動物における、網膜の病理、より具体的には、視覚受容器の変性により引き起こされた網膜疾患を治療するための、カルシウムチャンネルブロッカー化合物及び/又はcGMP依存性チャンネル、即ちジルチアゼムの使用に関する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】 本発明は、網膜の病理、より具体的には、網膜色素変性症又は光受容器が実質
的に関与するその他の病理、特に加齢性黄斑変性のようなヒト又は動物における
光受容器の変性から生じた網膜疾患の治療の分野における、カルシウムチャンネ
ル及び/又は3′5′サイクリックグアノシン一リン酸(cGMP)により活性
化されるチャンネルのブロッカー化合物の使用に関する。
【0002】 網膜色素変性症とは、失明へと至る、これらの光受容器の変性疾患の群である
(Berson,1996)。
【0003】 様々な桿体タンパク質に影響を与える多数の突然変異、及びこの疾患の可能性
のある原因が記載されている。これらの突然変異としては、ロドプシン、トラン
スデューシン、ホスホジエステラーゼ、アレスチンのような光伝達カスケードに
関与しているタンパク質、又はペリフェリン(peripherin)のような構造タンパ
ク質の遺伝子に影響を与えるものが挙げられる。
【0004】 網膜変性の過程は、色素性網膜(pigmentary retina)において観察されるも
のと類似しており、網膜桿体の死の後には原因不明の網膜錐体の欠損が起こるた
め、rd(網膜変性)マウスが、網膜色素変性症のモデルとして70年超にわた
り研究されてきた(Farber et al.,1994)。さらに、例えば疾患に罹患したいく
つかの家族において(McLaughlin et al.,1993)、原因となる突然変異が、cG
MP−ホスホジエステラーゼ(PDE)のβサブユニットをエンコードする遺伝
子内に位置することが明らかとなった(Bowes et al.,1990)。
【0005】 PDEは、光刺激を受けたロドプシンにより活性化されたトランスデューシン
のα鎖により、光伝達カスケードにおいて活性化される。活性化されたPDEは
、cGMPを加水分解することにより、cGMPの濃度を減少させ、従って開口
しているcGMP依存性チャンネルの数を減少させ、最終的な結果として、Na + 及びCa2+のような陽イオンのコンダクタンスが減少し、次に暗への光受容器
の減極電流が減少する。rdマウスにおいて、ファーバー(Farber)及びローリ
ー(Lolley)(1974)は、cGMP濃度の異常な増加が、光受容器の変性に先行
することを示した。次に、正常な光受容器に対する、高濃度のcGMPの毒性が
立証された(Lolley and Farber,1977;Ulshafer et al.,1980)。
【0006】 光受容器の欠損を避けるためのいくつかの治療法が、現在、rdマウスにおい
て調査されている。従って、in vivo遺伝子治療が、マウスPDEをエンコード
するcDNAを含有する複製欠損組換えアデノウイルスの網膜下注射の後、6週
間にわたり、光受容器の死の遅延を許容することが記述された(Bennett et al.
,1996)。光受容器移植(Gouras et al.,1994,Silverman et al.,1989)が錐体
光受容器の保存を許容することが、記述された(Mohand-Said et al.,1997)。
傍分泌メカニズムに関するこの効果の解釈は、健康な光受容器との共存培養にお
いて(Mohand-Said et al.,1998)、又は繊維芽細胞もしくはニューロン増殖因
子のような栄養因子のin vivo又はin vitroの適用後に(LaVail et al.,1998)
観察された光受容器生存率の増加に同意する。
【0007】 にもかかわらず、網膜色素変性症のためのビタミンAの処方(Berson,1996)
以外には、受容器変性から生じた網膜疾患の治療法は現在のところ利用可能でな
い。
【0008】 本発明は、特に、ヒト又は動物における受容器変性から生じた網膜疾患の治療
の分野において使用され得る医薬組成物を提供することに関する。
【0009】 特に、本発明は、塩酸ジルチアゼムのようなカルシウムチャンネル及び/又は
cGMP依存性チャンネルのブロッカー化合物が、rdマウスにおける桿体及び
錐体の変性の遅延のみならず、網膜細胞の光刺激に対する反応キャパシティーの
保存をも許容するという事実の、本発明者らによる実証から生まれた。
【0010】 従って、本発明は、網膜の光受容器変性と関連する病理、特に網膜色素変性症
、又は加齢性黄斑変性のような光受容器と実質的に関連する病理の治療を目的と
する薬剤を調製するための、カルシウムチャンネル及び/又はcGMP依存性チ
ャンネルのブロッカー化合物の使用に関する。
【0011】 カルシウムチャンネル及び/又はcGMP依存性チャンネルのブロッカーとは
、これらのチャンネルのイオン性コンダクタンスを減少させることができる任意
の化合物を意味する。
【0012】 本発明は、より具体的には、網膜の光受容器変性と関連する病理、特に網膜色
素変性症、又は加齢性黄斑変性のような光受容器が実質的に関与する病理の治療
を目的とする薬剤を調製するための、ジルチアゼム(D−シス−鏡像異性体)、
L−シス−鏡像異性体、それらの代謝物、及び医薬的に許容されるそれらの塩に
関する。
【0013】 本発明は、下記式のジルチアゼム、及び医薬的に許容されるその酸付加塩、特
にジルチアゼムのリンゴ酸塩又は塩酸塩の前記の使用に特に関する。
【0014】
【化4】
【0015】 本発明は、ジルチアゼムのL−シス鏡像異性体、ジルチア
ゼムのラセミ体、及び医薬的に許容されるそれらの酸付加塩、特に下記式のシス
同位体の塩酸塩の、上述の使用にも関する。
【0016】
【化5】
【0017】 本発明は、下記式に対応するジルチアゼムの代謝物及び医薬的に許容されるそ
れらの酸付加塩、のうちの一つの、上述の使用にも関する。
【0018】
【化6】
【0019】
【化7】
【0020】 有利には、上述のカルシウムチャンネル及び/又はcGMP依存性チャンネル
のブロッカーは、任意の経路による投与、特に経口投与、筋肉内投与、静脈内投
与、眼内投与が可能な形態、又は点眼剤の形態で存在する医薬組成物を調製する
ために使用される。
【0021】 好ましくは、本発明の医薬組成物は、医薬的に許容される担体と共に、約0.
1mgから約100mgの上記定義のようなカルシウムチャンネル及び/又はcGM
P依存性チャンネルのブロッカーを単位形態で含む。
【0022】 本発明は、以下の図1〜3より、よりよく理解されるであろう。
【0023】 図1は、塩酸ジルチアゼムで処理されたrdマウスの生後25日目及び36日
目の桿体生存率を示している。塩酸ジルチアゼムの注射は、桿体変性の最初の兆
候が出現する時期に相当する生後9日目に開始した。塩酸ジルチアゼムの用量(
生理学的溶液中2.5mg/ml)は、動物の成長に従い、1日当たり50μlから
100μl1日2回へと徐々に増加させた。動物を屠殺する前に網膜電位図(E
RG)を得るため、最後の注射は、生理学的計測の48時間前に与えられた。網
膜の固定後、桿体を抗ロドプシン抗体(4D2−rho)(Hicks and Molday,1
986)で標識化し、無作為抽出法(Mohand-Said et al.,1988)を使用して、平面
化された網膜上の立体解析学により数を算出した。独立した結果を得るため、右
の網膜のみを考慮した。塩酸ジルチアゼムによる処理は、対照rdマウスと比較
して、処理動物における桿体生存率を25日目に86%、36日目に148%増
加させた。生理学的溶液のみの反復注射は、未処理動物(7648±774、s
.e.m.、n=4)と比較して、桿体の生存率に有意な効果を及ぼさなかった
(7416±1291、s.e.m.、n=4)。従って、これらの観察は、塩
酸ジルチアゼムによるrdマウスの処理が桿体生存を誘導することを示している
【0024】 図2は、塩酸ジルチアゼムで処理されたrdマウスの生後25日目及び36日
目の錐体生存率を示している。錐体の数は、網膜切片におけるDAPI(4′,
6−ジアミノ−2−フェニルインドール)による核の染色後に間接的に算出され
た。この数を得るため、免疫学的に標識化された桿体の数を、DAPIで標識化
された光受容器核の数から差し引いた。塩酸ジルチアゼムによる処理は、対照r
dマウスと比較して、処理動物における錐体生存率を25日目に109%まで、
36日目に144%まで増加させた。
【0025】 図3は、塩酸ジルチアゼムで処理されたrdマウスにおいて、光受容器の生存
に、生理学的改善が伴うという事実を示している。この実証は、処理rdマウス
及び対照rdマウスにおけるERG測定により実施された。未処理rdマウスに
おいては、ERGのa波及びb波の振幅が、生後12日目から規則的に減少し、
やがて生後24日目に消滅した。対照的に、処理動物は全て、生後25日目にE
RGシグナルを示した(n=7)。生後36日目、処理動物10匹中4匹が両方
の眼で測定され得るERGシグナルを示した。これらの観察は、塩酸ジルチアゼ
ムによる処理が、桿体の生存を許容するのみならず、網膜の視覚機能も保護する
ことを実証している。
【0026】
【表1】
【0027】
【表2】
【図面の簡単な説明】
【図1】 未処理対照rdマウスと比較した、塩酸ジルチアゼムによる処理後のrdマウ
スの25日目及び36日目の網膜全体の桿体数の評価を示す図である。
【図2】 未処理対照rdマウスと比較した、塩酸ジルチアゼムにより処理されたrdマ
ウスの25日目及び36日目の網膜切片の錐体数の評価を示す図である。
【図3】 rdマウスにおけるERG測定に関する塩酸ジルチアゼムの効果を示す図であ
る。A)生後25日目及び36日目に対照rdマウス及び処理rdマウスにおい
て測定されたERG記録図。B)ERGのb波に関する塩酸ジルチアゼムの効果
。対照rdマウスにおける時間の関数としてのb波の振幅の測定に対応するカー
ブは白抜き丸により示され、塩酸ジルチアゼムで処理されたrdマウスにおける
同測定に対応するカーブは塗りつぶし四角により示されている。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (81)指定国 EP(AT,BE,CH,CY, DE,DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,I T,LU,MC,NL,PT,SE),OA(BF,BJ ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GW,ML, MR,NE,SN,TD,TG),AP(GH,GM,K E,LS,MW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZW ),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU, TJ,TM),AE,AL,AM,AT,AU,AZ, BA,BB,BG,BR,BY,CA,CH,CN,C R,CU,CZ,DE,DK,DM,EE,ES,FI ,GB,GD,GE,GH,GM,HR,HU,ID, IL,IN,IS,JP,KE,KG,KP,KR,K Z,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LV,MD ,MG,MK,MN,MW,MX,NO,NZ,PL, PT,RO,RU,SD,SE,SG,SI,SK,S L,TJ,TM,TR,TT,TZ,UA,UG,US ,UZ,VN,YU,ZA,ZW (71)出願人 ユニベルシテ・ルイ・パスツール UNIVERSITE LOUIS PA STEUR フランス国、エフ−67000 ストラスブー ル、リュ・ブレーズ・パスカル 4 (72)発明者 ピコ,セルジュ フランス国、エフ−67000 ストラスブー ル、リュ・ドゥ・ロッテルダム 32 (72)発明者 フラッソン,マリア フランス国、エフ−68250 ルファシュ、 リュ・ドゥ・ファッフェネム 3 (72)発明者 サエル,ジョゼ フランス国、エフ−67000 ストラスブー ル、リュ・ベルネゲ 2 (72)発明者 ドレフュス,アンリ フランス国、エフ−67000 ストラスブー ル、リュ・ドゥ・コペナグ 12 Fターム(参考) 4C036 AB03 AB05 AB10 AB20 4C086 AA01 AA02 BC62 GA16 MA01 MA04 MA52 MA58 MA66 NA14 ZA33

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 網膜光受容器の変性と関連する病理を治療することを目的と
    する薬剤を調製するための、ジルチアゼム(D−シス−鏡像異性体)、L−シス
    −鏡像異性体、それらの代謝物、及びそれらの医薬的に許容される塩の使用。
  2. 【請求項2】 網膜色素変性症、又は加齢性黄斑変性のような光受容器と実
    質的に関連する病理を治療することを目的とする薬剤を調製するための、ジルチ
    アゼム(D−シス−鏡像異性体)、L−シス−鏡像異性体、それらの代謝物、及
    びそれらの医薬的に許容される塩の使用。
  3. 【請求項3】 下記式 【化1】 のジルチアゼム及びジルチアゼムの医薬的に許容される酸付加塩、特にリンゴ酸
    塩又は塩酸塩の、請求項1又は2に記載の使用。
  4. 【請求項4】 該L−シス鏡像異性体、該ラセミ体、及びそれらの医薬的に
    許容される酸付加塩の、請求項1又は2に記載の使用。
  5. 【請求項5】 下記式 【化2】 【化3】 の一つに対応する、ジルチアゼム及びその他の鏡像異性体の代謝物、並びに医薬
    的に許容されるそれらの酸付加塩のうちの一つの、請求項1又は2に記載の使用
  6. 【請求項6】 経口投与、筋肉内投与、静脈内投与、眼内投与が可能な形態
    、又は点眼剤の形態を有する薬剤を調製するための、請求項1乃至5のいずれか
    1に記載の使用。
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