JP2002520421A - プロテアーゼ感受性ii - Google Patents

プロテアーゼ感受性ii

Info

Publication number
JP2002520421A
JP2002520421A JP2000560149A JP2000560149A JP2002520421A JP 2002520421 A JP2002520421 A JP 2002520421A JP 2000560149 A JP2000560149 A JP 2000560149A JP 2000560149 A JP2000560149 A JP 2000560149A JP 2002520421 A JP2002520421 A JP 2002520421A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
sequence
tropoelastin
amino acid
derivative
ala
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2000560149A
Other languages
English (en)
Other versions
JP4342731B2 (ja
Inventor
アンソニー, スティーヴン ワイス,
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
University of Sydney
Original Assignee
University of Sydney
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by University of Sydney filed Critical University of Sydney
Publication of JP2002520421A publication Critical patent/JP2002520421A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP4342731B2 publication Critical patent/JP4342731B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Lifetime legal-status Critical Current

Links

Classifications

    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C07ORGANIC CHEMISTRY
    • C07KPEPTIDES
    • C07K7/00Peptides having 5 to 20 amino acids in a fully defined sequence; Derivatives thereof
    • C07K7/02Linear peptides containing at least one abnormal peptide link
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61PSPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
    • A61P43/00Drugs for specific purposes, not provided for in groups A61P1/00-A61P41/00
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C07ORGANIC CHEMISTRY
    • C07KPEPTIDES
    • C07K14/00Peptides having more than 20 amino acids; Gastrins; Somatostatins; Melanotropins; Derivatives thereof
    • C07K14/435Peptides having more than 20 amino acids; Gastrins; Somatostatins; Melanotropins; Derivatives thereof from animals; from humans
    • C07K14/78Connective tissue peptides, e.g. collagen, elastin, laminin, fibronectin, vitronectin or cold insoluble globulin [CIG]
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61KPREPARATIONS FOR MEDICAL, DENTAL OR TOILETRY PURPOSES
    • A61K38/00Medicinal preparations containing peptides

Landscapes

  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Health & Medical Sciences (AREA)
  • Organic Chemistry (AREA)
  • Life Sciences & Earth Sciences (AREA)
  • Medicinal Chemistry (AREA)
  • General Health & Medical Sciences (AREA)
  • Genetics & Genomics (AREA)
  • Biophysics (AREA)
  • Molecular Biology (AREA)
  • Biochemistry (AREA)
  • Proteomics, Peptides & Aminoacids (AREA)
  • Toxicology (AREA)
  • Gastroenterology & Hepatology (AREA)
  • Zoology (AREA)
  • Nuclear Medicine, Radiotherapy & Molecular Imaging (AREA)
  • Chemical Kinetics & Catalysis (AREA)
  • Public Health (AREA)
  • Animal Behavior & Ethology (AREA)
  • Pharmacology & Pharmacy (AREA)
  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • General Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Veterinary Medicine (AREA)
  • Bioinformatics & Cheminformatics (AREA)
  • Peptides Or Proteins (AREA)
  • Micro-Organisms Or Cultivation Processes Thereof (AREA)
  • Enzymes And Modification Thereof (AREA)
  • Medicines That Contain Protein Lipid Enzymes And Other Medicines (AREA)
  • External Artificial Organs (AREA)
  • Medicines Containing Material From Animals Or Micro-Organisms (AREA)
  • Materials For Medical Uses (AREA)

Abstract

(57)【要約】 本発明は、トロポエラスチン、特にヒトトロポエラスチンのアミノ酸配列を操作して、そのプロテアーゼ感受性を改変すること、改変されたプロテアーゼ感受性をもつトロポエラスチン派生体、トロポエラスチンのプロテアーゼ感受性配列に一致する、またはそれを含むアミノ酸配列を含むペプチド模倣分子、およびトロポエラスチン派生体およびペプチド模倣分子の使用に関する。また、本発明は、本発明に係る派生体およびペプチド模倣分子のアミノ酸配列をコードする核酸分子および遺伝子構築物にも関する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】 発明の属する技術分野 本発明は、トロポエラスチン、特に、ヒトトロポエラスチンのアミノ酸配列を
操作して、そのプロテアーゼ感受性を改変すること、改変されたプロテアーゼ感
受性をもつトロポエラスチン派生体、トロポエラスチンのプロテアーゼ感受性配
列に一致する、またはそれを含むアミノ酸配列を含むペプチド模倣分子、および
、トロポエラスチン派生体およびペプチド模倣分子の使用に関する。
【0002】 本発明は、また、本発明に係る派生体およびペプチド模倣分子のアミノ酸配列
をコードする核酸分子および遺伝子構築物にも関する。
【0003】 従来の技術 不溶性で架橋結合したエラスチン分子は、多くのプロテアーゼによるタンパク
質分解に対して、高度な抵抗性をもつ。しかし、エラスチンの可溶性の前駆体で
あるトロポエラスチンは、それよりもはるかにタンパク質分解を受けやすい。組
織からトロポエラスチンを精製しようという試みも、大抵は、分解産物を集める
結果となる。この分解は、従来からあるセリンプロテアーゼ阻害剤を用いること
によって減少させることができる(Franzblauら、1989; Rucker、1982, Richお
よびFoster、1984; SandbergおよびWolt、1982)。平滑筋細胞の細胞培養におい
て、メタロプロテイナーゼによって特異的な分解が起こることも注目されている
(Hayashiら、1995)。高度に精製されたトロポエラスチンでも、長期間保存し
ていると、不連続なバンドに分解することがある。この観察結果により、哺乳動
物のトロポエラスチンが、場合によっては、それを次第に分解して行く内在的な
プロテアーゼとともに精製されるという仮説が導かれている(Mechamら、1976;
Mechamら、1977; MechamおよびFoster、1977)。実験によって、哺乳類の血清に
は、トロポエラスチンを分解することができるプロテアーゼが含まれていること
が明らかになった(Romeroら、1986)。従って、新しく合成された、保護されて
いないトロポエラスチンが、血管壁などの血液に曝露されると、速やかに分解さ
れるであろう。血清も、平滑筋細胞においてエラスターゼ活性を誘導し、エラス
チンの分解をもたらすことが明らかになっている(Kobayashiら、1994)。エラ
スチンペプチドには走化性があることが分かっており、それがin vivoにおける
トロポエラスチンタンパク質分解の役割を担っていると考えられる(Grossoおよ
びScott、1993; Bisacciaら、1994)。しかし、タンパク質分解は、傷害部位に
おける不十分で不完全なエラスチン繊維修復をもたらすこともありえる。セリン
プロテアーゼ阻害剤が、血清によって起こるトロポエラスチン分解を減少させる
ことが明らかになっている(Romeroら、1986)。これらの実験によって、カリク
レインが血清プロテアーゼの候補物質であることが示唆された。別の実験(McGo
wanら、1996)によって、プラスミンが関与する主要なプロテアーゼであること
が提唱された。トロンビンは、異種のブタトロポエラスチンをin vitroで分解す
るために用いられてきた(Torres ら、1976)。しかし、これらの研究はいずれ
も、トロポエラスチン分子がどこでプロテアーゼによって切断されるかを示して
いなかった。
【0004】 発明の説明 一定の種類の組換え型ヒトトロポエラスチンをその融合パートナーから精製し
ている(Martinら、1995)ときに、本発明者は、トロポエラスチンが、限定的にで
はあるが再現性をもって、トロンビンによって切断されることを観察した。SDS-
ポリアクリルアミドゲル上で見られた分解パターンは、精製および保存期間中、
他の研究者によって観察されたものに類似していた(Mechamら、1977)。本発明者
は、これはトロポエラスチンの一定の部位が、他の部位よりもプロテアーゼ作用
に対して感受性が高いか、溶液中のトロポエラスチンの高次構造により、プロテ
アーゼにとってより利用しやすくなっていることが原因である可能性があること
を認めた。プロテアーゼ切断産物の大きさを、トロポエラスチンのアミノ酸配列
および供試されたプロテアーゼに共通切断部位と比較したところ、トロポエラス
チンのアミノ酸配列における多くの部位で、特定のプロテアーゼについての共通
配列に相同的な部位のうち、プロテアーゼによって簡単に分解されるものはほと
んどなかった。分解が起こった部位をマッピングすることによって感受性領域が
同定されたため、いずれかのトロポエラスチン中のプロテアーゼ切断部位の正確
なマップが初めて提供された。
【0005】 これらの感受性領域が決定されたことから、これら感受性領域におけるトロポ
エラスチンのアミノ酸配列を改変できるようになり、それによって特定の条件下
でのトロポエラスチンのプロテアーゼ感受性と比較すると、プロテアーゼ感受性
が低下または消失した低下型トロポエラスチン派生体が提供される。
【0006】 本明細書および請求の範囲において、「低下型トロポエラスチン派生体」とは
、トロポエラスチンの感受性領域中のアミノ酸配列が改変されている分子で、機
能的な高次構造をもつように折りたたまれている分子を意味する。「機能的な高
次構造」は、以下のように定義される。感受性領域中のアミノ酸配列を改変する
ことによって、プロテアーゼ感受性が低下または消失する。低下型トロポエラス
チン派生体は、全長トロポエラスチン分子、トロポエラスチン遺伝子またはペプ
チドの特定のエクソンによってコードされているトロポエラスチン単一ドメイン
、またはトロポエラスチン遺伝子の隣り合う2つのエクソンの全てまたは一部に
よってコードされているペプチドに相当する。
【0007】 低下型トロポエラスチン派生体は、例えば、感受性領域中のアミノ酸配列に残
基置換を生じさせる、ヌクレオチド配列の単一の点突然変異、または、感受性領
域中のアミノ酸配列にアミノ酸挿入または欠失を生じさせる、ヌクレオチド配列
の突然変異事象などを起こすことによって作出することができる。低下型トロポ
エラスチン派生体は、プロテアーゼ分解に感受性のトロポエラスチン分子領域に
おけるトロポエラスチン配列の変異およびトロポエラスチンの他の領域における
さらに別の変異によっても作出することもできる。このさらなる変異は、低下型
トロポエラスチン派生体のプロテアーゼ感受性を変化させるものであっても、変
化させるものでなくてもよい。これらの変異を有する低下型トロポエラスチン派
生体は、合成によって作出することができる。
【0008】 あるいは、低下型トロポエラスチン派生体は、感受性領域を化学的に修飾する
、派生体のアミノ酸側鎖の化学修飾によっても作出することができる。
【0009】 別の選択肢として、低下型トロポエラスチン派生体は、プロテアーゼ分解によ
っても作出することができる。したがって本発明によれば、プロテアーゼ分解さ
れた結果、感受性領域中に存在するアミノ酸配列を失ったトロポエラスチンのプ
ロテアーゼ分解産物は低下型トロポエラスチン派生体である。
【0010】 また、低下型トロポエラスチン派生体は、プロテアーゼ分解に対して感受性の
、トロポエラスチン分子中の領域において、トロポエラスチン変異体のアミノ酸
配列を改変することによっても作出することができる。
【0011】 本明細書および請求の範囲において、「トロポエラスチン変異体」とは、例え
ばエラスチン様特性、または高分子結合特性など、対応するトロポエラスチン分
子の特性を一つ以上保持している分子を意味する。エラスチン様特性には、分子
が膨張した後で反跳するという現象、架橋およびコアセルベーションされうると
いう能力などが含まれる。高分子結合特性には、例えば、グリコシルアミノグリ
カンなど他の高分子と相互作用する能力が含まれる。トロポエラスチン変異体は
、トロポエラスチンのスプライス型アミノ酸配列の全てまたは一部に対して相同
である。これを説明するに、特定の変異体のアミノ酸配列と、トロポエラスチン
スプライス型の全てまたは一部のアミノ酸配列との間の「相同性」は、同一とい
うには及ばないが、ある配列が別の配列から派生したことを示す類似性を意味す
る。特にアミノ酸配列と、関連するトロポエラスチン配列とのアラインメントに
よって、いずれかの20個のアミノ酸の連続に対して、または、20個のアミノ
酸の長さよりも短い分子の繰り返し要素に対して約65%一致することが明らか
であれば、そのアミノ酸配列は、トロポエラスチン配列の全てまたは一部に相同
である。このような配列比較は、リップマンおよびピアソン(LipmanおよびPear
son)(1985)のアルゴリズムなど、既知のアルゴリズムによって行なうことが
できる。タンパク質分解に対する感受性領域において、トロポエラスチン変異体
が、トロポエラスチンと比較して異なったアミノ酸配列を含んでよく、その差は
トロポエラスチンと比較した場合に、トロポエラスチン変異体のプロテアーゼ感
受性を変更しない。トロポエラスチン変異体の感受性領域における、このような
アミノ酸配列の違いの例は、保守的アミノ酸置換である。
【0012】 したがって、低下型トロポエラスチン派生体は、例えば、トロポエラスチンの
感受性領域中のアミノ酸配列に残基置換を生じさせる、ヌクレオチド配列の単一
の点突然変異など、トロポエラスチン変異体のアミノ酸配列を変異させることに
よって作出してもよい。低下型トロポエラスチン派生体は、またトロポエラスチ
ンの感受性領域中のアミノ酸配列にアミノ酸挿入または欠失を生じさせるヌクレ
オチド配列中の変異など、トロポエラスチン変異体のアミノ酸配列を変異させる
ことによって作出してもよい。低下型トロポエラスチン派生体は、プロテアーゼ
分解に感受性のトロポエラスチン分子領域において、トロポエラスチン変異体配
列を変異させることによって、また、低下型トロポエラスチン変異体の他の領域
において、さらに別の変異を生じさせることによっても作出することができる。
このさらなる変異は、低下型トロポエラスチン派生体のプロテアーゼ感受性を変
化させるものであっても、変化させるものでなくてもよい。トロポエラスチン変
異体を変異させることによって作出される低下型トロポエラスチン派生体は、合
成によって作出してもよい。
【0013】 あるいは、低下型トロポエラスチン派生体は、感受性領域を化学的に修飾する
、派生体におけるアミノ酸側鎖の化学修飾によって作出してもよい。
【0014】 または、低下型トロポエラスチン派生体は、トロポエラスチン変異体のプロテ
アーゼ分解によって作出してもよい。したがって、本発明によれば、プロテアー
ゼ分解された結果、感受性領域中に存在するアミノ酸配列を失った、トロポエラ
スチン変異体のプロテアーゼ分解産物は、低下型トロポエラスチン派生体である
【0015】 実際に、トロポエラスチン遺伝子は、例えば、Indikら (1990); Oliverら (19
87); Heimら (1991); Rajuら (1987) 、およびYehら (1987)が記載しているよう
な、mRNAの交互的なスプライシングによって区別される複数の転写産物とし
て発現することが知られている。本発明に係る方法は、トロポエラスチンの異な
ったスプライス型にも応用することができる。当業者は、トロポエラスチンのさ
まざまなスプライス型に本発明に係る方法を応用するにあたって、問題となって
いる特定のスプライス型のアミノ酸配列に、同定された切断部位が存在するか否
かを考慮しなければならないことを容易に想定しえよう。
【0016】 ヒトトロポエラスチンについては、Indikら (1990)、およびTassabehjiら (19
97)によって説明されている。Bressanら (1987)は、ニワトリのトロポエラスチ
ンのアミノ酸配列について述べており、Rajuら (1987)は、ウシトロポエラスチ
ンのアミノ酸配列について述べており、また、Pierceら (1992)は、ラットトロ
ポエラスチンのアミノ酸配列について述べている。アミノ酸配列の変異および異
なったスプライス型が存在することを再び考慮すれば、当業者は、本発明に係る
方法が、別の生物種由来のトロポエラスチンにも応用できることを容易に想定し
えよう。
【0017】 第一の態様において、本発明は、トロポエラスチンまたはトロポエラスチン変
異体のアミノ酸配列のタンパク質分解に対する感受性を低下または消失させる方
法を提供しており、本方法にはタンパク質分解に対するトロポエラスチンまたは
トロポエラスチン変異体の感受性を低下または消失させるために、トロポエラス
チンまたはトロポエラスチン変異体のアミノ酸配列において少なくとも一つの部
分配列を変異させることを含む。
【0018】 本明細書および請求の範囲において、「部分配列」とは、トロポエラスチンま
たはトロポエラスチン変異体が機能的な高次構造に折りたたまれているとき、プ
ロテアーゼによって切断(換言すれば、分解)されうる配列を意味する。「機能
的な高次構造」とは、トロポエラスチンのエラスチン様特性と高分子結合特性と
を付与する高次構造である。部分配列は、タンパク質分解に感受性のトロポエラ
スチン領域中のアミノ酸配列に相当する。
【0019】 一般的には、変異は、感受性を低下または消失させるために、少なくとも1つ
または2つの残基を変更することを含む。より好ましくは、少なくとも1つの部
分配列が変異していることであり、より好ましくは、トロポエラスチンはヒトト
ロポエラスチンである。
【0020】 セリンプロテアーゼによって分解することができる一つ以上の部分配列を除去
するための変異は、トロポエラスチンにとって血清中の主要なタンパク質分解活
性はセリンプロテアーゼ活性であるため、トロポエラスチンまたはトロポエラス
チン変異体が血清に曝露されたときに特に有益であると想定される。
【0021】 本発明の第一の態様における実施態様の一つにおいて、部分配列は、セリンプ
ロテアーゼによって分解することができ、RAAAG配列を含むアミノ酸配列、
または、配列番号17から44で示される配列グループから選択されるアミノ酸
配列を有する。部分配列が、配列番号17から44で示される配列グループから
選択されるアミノ酸配列であるとき、または、RAAAGという配列を含むアミ
ノ酸配列を有するときは、部分配列は、部分配列中のアルギニンをアラニンで置
換することによって変異させることが好ましい。好ましくは、部分配列は、トロ
ンビンによって分解することができ、配列番号8または9で示されるアミノ酸配
列を有する。好ましくは、部分配列は、プラスミンによって分解することができ
、配列番号11または12で示されるアミノ酸配列を有する。より好ましくは、
カリクレインによって分解することができる。さらに好ましくは、部分配列は、
カリクレインによって分解することができ、配列番号9または10のいずれかで
示されるアミノ酸配列を有する。
【0022】 本発明者は、SHBLとSHELδ26Aをメタロプロテイナーゼで切断する
と、明らかに好ましい切断部位をもつ再現性のあるパターンが現れることに気づ
き、本明細書において説明されている方法と同様の方法を用いて証明した。メタ
ロプロテイナーゼの例には、ゼラチナーゼAおよびB、72kDと92kDのプ
ロテアーゼ、およびマトリックスメタロエラスターゼなどがある。少なくともい
くつかの明らかな実例において、切断が表1に記載したようなセリンプロテアー
ゼに見られる認識配列と異なることが、SDS−PAGEによって十分に示され
ている。92kDaメタロプロテイナーゼを用いて、好ましくは、より濃厚なバ
ンドの明白な証拠と共に、特徴的なバンドパターンが得られた。例えば、本明細
書で述べる方法をセリンプロテアーゼに用いて、SHELに由来する約10kD
aのバンドのN末端側の配列を決定し、LAAAKAAKYGAAという配列を
明らかにした。SHELにおけるこの配列の位置を図2に示した。それによると
、好ましい認識部位は、この断片について同定された配列のN末端側上流にある
AとLの間に存在する。トロポエラスチンまたはトロポエラスチン変異体配列を
変異させて、メタロプロテイナーゼによって分解される一つ以上の部分配列を取
り除くことは、トロポエラスチンまたはトロポエラスチン変異体が、例えば、傷
害部位、組織損傷および再建部位など、トロポエラスチンまたはトロポエラスチ
ン変異体がメタロプロテイナーゼに曝露する可能性のある部位に曝露するときに
特に有益である。
【0023】 本発明の第一の態様における別の実施態様において、部分配列は、メタロプロ
テイナーゼによって分解することができ、ALAAAという配列を含むアミノ酸
配列か、または配列番号45から70で示される配列グループから選択されるア
ミノ酸配列を有する。好ましくは、部分配列はゼラチナーゼAまたはBによって
分解することができる。好ましくは、部分配列が、配列番号13で示されるアミ
ノ酸配列を有する。部分配列が、配列番号45から70で示される配列グループ
から選択されるアミノ酸配列であるとき、または、ALAAAという配列を含む
アミノ酸配列であるときは、この部分配列は、部分配列中のいずれかの位置にあ
るアラニンを別のアミノ酸残基に置換することによって変異させることが好まし
い。より好ましくは、ロイシンに対してN末端側にあるアラニンを別のアミノ酸
残基で置換することによって変異させる。
【0024】 本発明の第二の態様は、対応するトロポエラスチン、または対応するトロポエ
ラスチン変異体に比べ、感受性の低下または消失を示す低下型トロポエラスチン
派生体を提供するものであり、この低下型トロポエラスチン派生体はタンパク質
分解に対する低下型トロポエラスチン派生体の感受性を低下または消失させるた
めに、対応するトロポエラスチン、または対応するトロポエラスチン変異体アミ
ノ酸配列の部分配列を変異させることを特徴とする。
【0025】 一般的には、部分配列の少なくとも1つまたは2つの残基が変異している。よ
り好ましくは、少なくとも1つの部分配列が変異している。更に好ましくは、ト
ロポエラスチンはヒトトロポエラスチンである。
【0026】 本発明の第二の態様における一つの実施態様において、変異部分配列は、セリ
ンプロテアーゼによる分解に対する感受性を低下または消失させている。好まし
くは、この変異部分配列は、配列中のアルギニンがアラニンで置換されているこ
とを条件として、RAAAG配列を含むか、または配列番号17から44で示さ
れる配列グループから選択される配列である。好ましくは、配列中の少なくとも
一つのアミノ酸残基が変異していることを条件として、変異部分配列は、トロン
ビンによる分解に対する感受性を低下または消失させており、かつ、変異部分配
列が配列番号8または9で示される配列を有する。好ましくは、部分配列は配列
中の少なくとも一つのアミノ酸残基が変異していることを条件として、変異プラ
スミンによる分解に対する感受性を低下または消失させており、かつ、配列番号
11または12で示される配列を有する。より好ましくは、変異部分配列は、カ
リクレインによる分解に対する感受性を低下または消失させている。さらにより
好ましくは、配列中の少なくとも一つのアミノ酸残基が変異していることを条件
に、変異部分配列は、カリクレインによる分解に対する感受性を低下または消失
させており、かつ配列番号9または10で示される配列を有する。
【0027】 本発明の第二の態様における別の実施態様において、変異部分配列はメタロプ
ロテイナーゼによる分解に対する感受性を低下または消失させている。好ましく
は、配列中のいずれかの位置にあるアラニンが、アラニン以外のアミノ酸残基で
置換されていることを条件として、変異部分配列は、ALAAAという配列を含
むか、または配列番号45から70で示される配列グループから選択される配列
である。より好ましくは、変異部分配列は、ゼラチナーゼAまたはBによる分解
に対する感受性を低下または消失させている。より好ましくは、配列中の少なく
とも一つのアミノ酸残基が変異しているという条件で、変異部分配列は、ゼラチ
ナーゼBによる分解に対する感受性を低下または消失させており、また配列番号
13で示される配列を有する。より好ましくは、ロイシンに対してN末端側にあ
るアラニンが、別のアミノ酸残基によって置換されることにより変異している。
【0028】 第二の態様における低下型トロポエラスチン派生体で、それらの使用環境に適
合した変異を持つものは、血清または傷害滲出物が存在する部位などの、トロポ
エラスチンまたはトロポエラスチン変異体に対するプロテアーゼによる攻撃の危
険性がある部位において、in vivoで有益に使用することができる。例えば、架
橋されたトロポエラスチン、または架橋されたトロポエラスチン変異体を血管壁
で治療的に使用すれば、血清によって誘発される分解を抑制できるため有益であ
ろう。さらに、一つ以上の感受性領域を改変して、内因性宿主プロテアーゼによ
る攻撃を最小限にできれば、ある種の改変によって、低下型トロポエラスチン派
生体の精製におけるプロテアーゼ阻害剤使用の必要性が低下するはずであり、そ
れによって、より大量の全長物質が得られるはずである。
【0029】 本発明の第三の態様は、トロポエラスチンまたはトロポエラスチン変異体を血
清、またはカリクレイン、トロンビン、トリプシンおよびエラスターゼなど類縁
のセリンプロテアーゼよりなるグループから選択されるプロテアーゼによる分解
から保護する方法を提供するものであり、本方法にはタンパク質分解に対するト
ロポエラスチンまたはトロポエラスチン変異体の感受性を低下または消失させる
ために、トロポエラスチンまたはトロポエラスチン変異体アミノ酸配列中の少な
くとも一つの部分配列を変異させることを含む。好ましくは、トロポエラスチン
はヒトトロポエラスチンである。好ましくは、プロテアーゼはカリクレインであ
る。
【0030】 本発明の第四の態様は、タンパク質分解攻撃による分解からトロポエラスチン
またはトロポエラスチン変異体を保護する方法を提供するものであり、本方法に
はトロポエラスチンまたはトロポエラスチン変異体アミノ酸配列中の少なくとも
一つの部分配列を変異させて、トロポエラスチンまたはトロポエラスチン変異体
のタンパク質分解に対する感受性を低下または消失させることを含む。一つの実
施態様において、部分配列はメタロプロテアーゼによって分解される。
【0031】 上述したように、ニワトリトロポエラスチン、ウシトロポエラスチン、および
ラットトロポエラスチンなど、ヒト以外のトロポエラスチンのアミノ酸配列は決
定されている(Bressanら、1987, Rajuら、1987, Pierceら、1992)。これらのヒ
ト以外のトロポエラスチンのアミノ酸配列をトロポエラスチンと比較すると、本
発明でも同定されたように、タンパク質分解感受性をもつトロポエラスチンの特
定領域は、これらのヒト以外のトロポエラスチンでは保存されていることが分か
る。したがって、ヒト以外のトロポエラスチンにおけるこれら特定領域が、タン
パク質分解に対して感受性である可能性が高い。
【0032】 表1に記載された部分配列を、ヒト以外のトロポエラスチンまたはエラスチン
の配列とともに、「nr」データベースによって、NCBIのBlastサイト
(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST)で「tblastn」を用いて解析した
ところ、以下の結果を示した: (i) ヒトトロポエラスチン: 554 VPTGAGVKPKAPGVGGAF 607 ウシトロポエラスチン,エクソン14 373 VPTGAGVKPKAPGGGGAF 426 マウストロポエラスチンmRNA 完全長コーディング配列 694 VPTGTGVKAKAPGGGGAF 747 ウシエラスチンa mRNA 完全長コーディング配列 545 VPTGAGVKPKAQVGAGAF 598 ウシエラスチンb mRNA 完全長コーディング配列 545 VPTGAGVKPKAQVGAGAF 598 ウシエラスチンc mRNA 完全長コーディング配列 545 VPTGAGVKPKAQVGAGAF 598 ラットトロポエラスチン mRNA 3'端 646 VPTGTGVKAKVPGGGG 693 ニワトリトロポエラスチン mRNA 完全長コーディング配列 572 VPTGTGIKAKGPGAG 616 (ii) ヒトトロポエラスチン: 1664 KVAAKAQLRAAAGLGAG 1714 ラットトロポエラスチン mRNA 3'端 1837 KAAAKAQYRAAAGLGAG 1887 マウストロポエラスチン mRNA 完全長コーディング配列 1795 KAAAKAQYRAAAGLGAG 1845 ウシエラスチンa mRNA 完全長コーディング配列 1649 KAAAKAQFRAAAGLPAG 1699 ウシエラスチンb mRNA 完全長コーディング配列 1607 KAAAKAQFRAAAGLPAG 1657 ウシエラスチンc mRNA 完全長コーディング配列 1547 KAAAKAQFRAAAGLPAG 1597 表1で同定された部分配列が、ヒト以外のトロポエラスチンまたはエラスチン
の配列と高い相同性をもつことが示されているが、このことは、配列の違いを考
慮することによって、本発明に係る方法を、異なるトロポエラスチン分子種に応
用できるという主張を裏付けている。
【0033】 また、本解析は、カリクレインおよびトロンビンによって切断されるトロポエ
ラスチン中の部位について、コンセンサス配列:AKAAAKAQN0R/AAAGLN1AGN2Pを示
すものである。ここで、N0は、芳香族残基または疎水残基であり、N1はPまたは
Gであり、Nは疎水残基である。例えば、タンパク質分解に対する感受性が低
下または消失している、本発明に係る派生体を提供するためにこのコンセンサス
配列の定義内にあるアミノ酸配列を、本発明に係る方法によって変異させてもよ
い。
【0034】 本明細書でより詳細に説明され、配列番号4に記載されているヒトトロポエラ
スチンスプライス型において、血清中での切断は、515番目と516番目の残
基、564番目と565番目の残基、441番目と442番目の残基、503番
目と504番目の残基の間に起きる。したがって、このスプライス型については
、セリンプロテアーゼ感受性に影響するような配列改変は、好ましくは515番
目、516番目、564番目、565番目、441番目、442番目、503番
目、504番目、564番目および565番目の残基の少なくとも一つを変更す
ることを含む。
【0035】 プロテアーゼによる攻撃に対する感受性を低下させるような改変は、認識部位
の除去または変更を含むと考えられる。このような変更の例は、リシンまたはア
ルギニンを正に荷電していないアミノ酸残基によって置換することである。この
ような方法の例は、キットという形態で市販されている突然変異誘発法など、一
般的な方法を用いて、表1のR/AAAGLGという配列中のアルギニンを置換するため
にロイシンを使用することである。
【0036】 本発明に係る低下型トロポエラスチン派生体は、以下のものを含む: ・SHELδ26a(図3に表示、配列番号5) ・SHELδmod(図4に表示、配列番号6) ・配列番号71から74で示される配列
【0037】 本発明者は、タンパク質分解に対して感受性のトロポエラスチンの領域を決定
しているため、トロポエラスチンの感受性領域中のアミノ酸配列に対応する配列
を、トロポエラスチンのアミノ酸配列中に挿入することによって、トロポエラス
チンを改変することができ、それによって、特定の条件下でトロポエラスチンの
プロテアーゼ感受性と比較した場合にプロテアーゼ感受性を上昇させる上昇型ト
ロポエラスチン派生体を提供しうる。
【0038】 本明細書および請求の範囲において、「上昇型トロポエラスチン派生体」とは
トロポエラスチンの感受性領域中のアミノ酸配列に一致する配列を、トロポエラ
スチンのアミノ酸配列に挿入することにより作出される分子を意味し、この分子
は機能的な高次構造に折りたたまれている分子である。感受性領域中のアミノ酸
配列に一致するアミノ酸配列を挿入すると、プロテアーゼ感受性の上昇をもたら
す。上昇型トロポエラスチン派生体は、全長トロポエラスチン分子、トロポエラ
スチン遺伝子の特定のエクソンによってコードされているトロポエラスチンの単
一ドメイン、またはトロポエラスチン遺伝子の隣り合う2つのエクソンの全てま
たは一部によってコードされているペプチドに一致してもよい。
【0039】 トロポエラスチンへのアミノ酸配列の挿入は、例えば、トロポエラスチンの感
受性領域と一致するアミノ酸配列をもつペプチドをトロポエラスチンの中にスプ
ライシングすることによって生じうる。したがって、上昇型トロポエラスチン派
生体は、トロポエラスチンのアミノ酸配列において、トロポエラスチンの感受性
領域中のアミノ酸配列と一致するペプチドの挿入をもたらすヌクレオチド配列中
の変異などの突然変異事象によって作出してもよい。
【0040】 あるいは、トロポエラスチンの感受性領域中のアミノ酸配列と同一である、ト
ロポエラスチン中の該領域におけるアミノ酸配列を作出するために、残基を挿入
、置換、または欠失することによって、トロポエラスチンの該領域中のアミノ酸
配列を改変してトロポエラスチンへのアミノ酸配列の挿入を生じさせてもよい。
したがって、トロポエラスチンの領域中に残基の挿入、置換、または欠失をもた
らすヌクレオチド配列の突然変異を含む変異事象により、上昇型トロポエラスチ
ン派生体を作出してもよく、ここで変異事象によって、トロポエラスチンの感受
性領域と一致するアミノ酸配列を該領域で生じさせる。
【0041】 上記のいずれかによって挿入アミノ酸配列をもつ上昇型トロポエラスチン派生
体は、残基の挿入、置換、または欠失によって、または、さらにアミノ酸配列を
挿入することによって、さらに変異させることができる。このさらなる変異は、
上昇型トロポエラスチン派生体のプロテアーゼ感受性を変化させるものであって
も、変化させるものではなくてもよい。これらの変異を含む上昇型トロポエラス
チン派生体は、合成によって作出してもよい。
【0042】 上昇型トロポエラスチン派生体は、プロテアーゼ分解に対して感受性のトロポ
エラスチン領域において、トロポエラスチン変異体のアミノ酸配列を改変するこ
とによって作出することができる。
【0043】 したがって、トロポエラスチン変異体のアミノ酸配列において、ペプチド挿入
をもたらすようなヌクレオチド配列中の変異を含む、トロポエラスチン変異アミ
ノ酸配列の変異によって上昇型トロポエラスチン派生体は作出してもよく、ここ
でペプチドはトロポエラスチンの感受性領域中のアミノ酸配列に一致する。
【0044】 あるいは、上昇型トロポエラスチン派生体は、トロポエラスチン変異体のアミ
ノ酸配列の領域において残基の挿入、置換、または欠失をもたらすヌクレオチド
配列の変異など、トロポエラスチン変異体のアミノ酸配列の変異によって作出し
てもよい。ここでその変異事象が、該領域でトロポエラスチンの感受性領域と一
致するアミノ酸配列を作出するものである。
【0045】 上記のいずれかによって挿入アミノ酸配列をもつ上昇型トロポエラスチン派生
体は、トロポエラスチン変異体のアミノ酸配列における残基の挿入、置換または
欠失によって、または、さらにアミノ酸配列を挿入することによって、さらに変
異させてもよい。このさらなる変異は、上昇型トロポエラスチン派生体のプロテ
アーゼ感受性を変化させるものであっても、変化させるものではなくてもよい。
これらの変異を有する上昇型トロポエラスチン派生体は、合成によって、または
組換え方法によって作出してもよい。
【0046】 上記のように、トロポエラスチンのアミノ酸配列は、ヒトおよびヒト以外の動
物においてさまざまなmRNAスプライス型に翻訳されることが知られている。
さらに、ヒトとヒト以外のトロポエラスチンのアミノ酸配列を比較すると、トロ
ポエラスチンのアミノ酸配列間には相同性があることが示される。したがって、
ヒトおよびヒト以外のトロポエラスチンのこれらさまざまなアイソフォームと、
それらをコードするmRNAのスプライス型を改変して、本発明に係る上昇型ト
ロポエラスチン派生体を提供することができる。
【0047】 第五の態様は本発明のトロポエラスチンまたはトロポエラスチン変異アミノ酸
配列のタンパク質分解に対する感受性を上昇させる方法を提供するものであり、
本方法にはタンパク質分解に対するトロポエラスチンまたはトロポエラスチン変
異体の感受性を上昇させるために、トロポエラスチンまたはトロポエラスチン変
異体のアミノ酸配列に、一つの部分配列を挿入することを含む。上述したように
、本明細書および請求の範囲において、「部分配列」とはトロポエラスチンまた
はトロポエラスチン変異体が機能的な高次構造に折りたたまれているとき、プロ
テアーゼによって切断されうる配列を意味する。部分配列は、タンパク質分解に
感受性のトロポエラスチン領域中のアミノ酸配列に相当する。一般的には、少な
くとも一つの部分配列が、トロポエラスチンまたはトロポエラスチン変異体アミ
ノ酸配列の中に挿入されている。好ましくは、このトロポエラスチンは、ヒトト
ロポエラスチンである。
【0048】 本発明の第五の態様における実施態様の一つにおいて、挿入される部分配列は
、セリンプロテアーゼによって分解することができ、RAAAG配列を含むアミ
ノ酸配列、または配列番号17から44で示される配列グループから選択される
アミノ酸配列を有する。好ましくは、部分配列はトロンビンによって分解するこ
とができ、配列番号8または9で示されるアミノ酸配列を有する。好ましくは、
部分配列は、プラスミンによって分解することができ、配列番号11または12
で示されるアミノ酸配列を有する。より好ましくは、部分配列はカリクレインに
よって分解することができる。さらにより好ましくは、部分配列は、カリクレイ
ンによって分解することができ、配列番号9または10で示されるアミノ酸配列
を有する。
【0049】 本発明の第五の態様における別の実施態様において、部分配列はメタロプロテ
イナーゼによって分解することができ、ALAAA配列を含むアミノ酸配列、ま
たは配列番号45から70で示される配列グループから選択されるアミノ酸配列
を有する。好ましくは、部分配列は、ゼラチナーゼAまたはBによって分解する
ことができる。好ましくは、部分配列は、配列番号13で示されるアミノ酸配列
を有する。
【0050】 本発明の第六の態様は、対応するトロポエラスチンまたはトロポエラスチン変
異体に比べ、タンパク質分解に対し感受性の上昇を示す上昇型トロポエラスチン
派生体を提供するものであり、ここで上昇型トロポエラスチン派生体はタンパク
質分解に対する上昇型トロポエラスチン派生体の感受性を上昇させるために、上
昇型トロポエラスチン派生体のアミノ酸配列の中に部分配列が挿入されているこ
とを特徴とする。一般的には、少なくとも一つの部分配列がトロポエラスチンま
たはトロポエラスチン変異体アミノ酸配列の中に挿入されている。好ましくは、
このトロポエラスチンはヒトトロポエラスチンである。
【0051】 本発明の第六の態様における一つの実施態様において、挿入される部分配列は
セリンプロテアーゼによって分解することができる。好ましくは、挿入部分配列
は、RAAAG配列を含むか、または配列番号17から44で示される配列グル
ープから選択される配列である。好ましくは、挿入部分配列は、トロンビンによ
って分解することができ、かつ配列番号8または9で示される配列を有する。好
ましくは、挿入部分配列は、プラスミンによって分解することができ、配列番号
11または12で示される配列を有する。より好ましくは、挿入部分配列は、カ
リクレインによって分解することができる。さらにより好ましくは、挿入部分配
列はカリクレインによって分解することができ、配列番号9または10で示され
る配列を有する。
【0052】 本発明の第六の態様における別の実施態様において、挿入される部分配列はメ
タロプロテイナーゼによって分解することができる。好ましくは、挿入部分配列
はALAAA配列を含むか、または配列番号45から70で記載される配列グル
ープから選択される配列である。より好ましくは、挿入部分配列はゼラチナーゼ
AまたはBによって分解することができる。より好ましくは、挿入部分配列は、
ゼラチナーゼBによって分解することができ、かつ配列番号13で示される配列
を有する。
【0053】 第六の態様の上昇型トロポエラスチン派生体は、派生体に対するプロテアーゼ
の攻撃を強化したい部位において、in vivoで有益に用いることができる。操作
に適した分子には、ヒトトロポエラスチン分子が含まれる。この場合、トロポエ
ラスチンまたはトロポエラスチン変異体を速やかに分解することが望まれる状況
下で、改変されたトロポエラスチンが役立つ。このような状況には、組織修復を
促進するために、所望の特性をもつペプチドを接触および/または放出すること
が含まれる。
【0054】 本発明者は、タンパク質分解に対して感受性のトロポエラスチン中の領域を決
定しているため、トロポエラスチンの感受性領域中のアミノ酸配列に対応する配
列を、ポリペプチドのアミノ酸配列中に挿入することによって、タンパク質分解
に対する該ポリペプチドの感受性を改変することができ、それによって、特定の
条件下で、前記挿入配列を含まない同様のポリペプチド(対応するポリペプチド
)と比較してプロテアーゼ感受性が上昇した上昇型トロポエラスチン派生体を提
供することができる。
【0055】 本明細書および請求の範囲において、「ポリペプチド派生体」とは、トロポエ
ラスチンの感受性領域中のアミノ酸配列と一致する配列をポリペプチド配列に挿
入して作出されるポリペプチドを意味する。トロポエラスチンの感受性領域のア
ミノ酸配列と一致するアミノ酸配列をポリペプチド配列に挿入すると、ポリペプ
チド派生体のプロテアーゼ感受性を上昇させる結果になる。
【0056】 ポリペプチド配列へのアミノ酸配列の挿入は、例えば、トロポエラスチンの感
受性領域に一致するアミノ酸配列をもつポリペプチドをポリペプチドの中にスプ
ライスすることによって生じうる。したがって、ポリペプチド派生体は、ポリペ
プチドのアミノ酸配列に、ペプチドの挿入をもたらすヌクレオチド配列中の変異
を含む変異事象によって生じうる。この挿入ペプチドはトロポエラスチンの感受
性領域中のアミノ酸配列に一致する。
【0057】 あるいは、残基を挿入、置換、または欠失することによって、ポリペプチドの
該領域中のアミノ酸配列を改変して、ポリペプチド配列へのアミノ酸配列の挿入
を生じさせることができ、これによってトロポエラスチンの感受性領域中のアミ
ノ酸配列と同一である、ポリペプチド中の該領域においてアミノ酸配列を作出す
ることができる。したがって、ポリペプチドの領域中に残基の挿入、置換、また
は欠失をもたらすヌクレオチド配列変異を含む変異事象により、ポリペプチド派
生体を作出することができる。ここで変異事象はトロポエラスチンの感受性領域
と一致するアミノ酸配列を該領域に生じさせる。
【0058】 これらの変異を含むポリペプチド派生体は、合成または組換え型DNA方法に
よって作出してもよい。
【0059】 したがって、本発明の第七の態様は、タンパク質分解に対するポリペプチドア
ミノ酸配列の感受性を上昇させる方法を提供するものであり、本方法にはトロポ
エラスチンの感受性領域中のアミノ酸配列に一致するアミノ酸配列をポリペプチ
ドのアミノ酸配列の中に挿入して、タンパク質分解に対するポリペプチドの感受
性を上昇させることを含む。一般的には、トロポエラスチンの感受性領域中のア
ミノ酸配列に一致する、少なくとも一つのアミノ酸配列をポリペプチドのアミノ
酸配列中に挿入する。
【0060】 一つの実施態様において、挿入配列はトロンビン、カリクレイン、トリプシン
およびエラスターゼなど類縁のセリンプロテアーゼよりなるグループから選択さ
れるプロテアーゼによって分解できる。別の実施態様においては、挿入配列はメ
タロプロテイナーゼによって分解される。
【0061】 第八の態様において、本発明は対応するポリペプチドに比べて、タンパク質分
解に対する感受性の上昇を示すポリペプチド派生体を提供しており、このポリペ
プチド派生体はトロポエラスチンの感受性領域中のアミノ酸配列と一致するアミ
ノ酸配列を該ポリペプチドのアミノ酸配列中に挿入して、タンパク質分解に対す
る該ポリペプチドの感受性を上昇させることを特徴とする。一般的には、トロポ
エラスチンの感受性領域中のアミノ酸配列と一致する、少なくとも一つの配列が
、ポリペプチドのアミノ酸配列中に挿入されている。
【0062】 一つの実施態様において、挿入される配列は、セリンプロテアーゼによって分
解することができる。好ましくは、このセリンプロテアーゼはカリクレインであ
る。別の実施態様においては、この挿入配列は、メタロプロテイナーゼによって
分解することができる。
【0063】 本発明者は、タンパク質分解に対して感受性である、トロポエラスチン中の領
域を決定しているため、それらの領域は本発明の第二および第六の態様に係る低
下型または上昇型のトロポエラスチン派生体から、ペプチドドメインを特異的に
放出させるため、または本発明の第八の態様に係るポリペプチド派生体からペプ
チドを特異的に放出させるために用いられる。一般的には、トロポエラスチンの
感受性領域に対応するアミノ酸配列を、派生体とペプチドドメインの間に挿入す
ることによって、感受性領域で特異的なプロテアーゼによって分解され、該派生
体からペプチドドメインを放出することができるキメラ派生体が提供される。
【0064】 本明細書と請求の範囲において、「キメラ派生体」とは、低下型トロポエラス
チン派生体、上昇型トロポエラスチン派生体、およびポリペプチド派生体からな
るグループより選択される派生体を、トロポエラスチンの感受性領域中のアミノ
酸配列に対応するアミノ酸配列によって、ペプチドドメインと結合させることに
よって作出される分子を意味する。キメラ派生体が特定のプロテアーゼで分解さ
れると、トロポエラスチンの感受性領域中のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配
列が、該派生体からペプチドドメインを放出させる。
【0065】 キメラ派生体は、例えば、派生体、感受性領域、およびペプチドドメインをコ
ードするヌクレオチド配列を単一のオープンリーディングフレームに構築するな
どの組換え型DNA技術によって作出してもよい。あるいは、合成または組換え
型DNA法によってキメラ派生体を作出してもよい。
【0066】 第九の態様において、本発明は、キメラ派生体の作出方法を提供するものであ
り、本方法には低下型トロポエラスチン派生体、上昇型トロポエラスチン派生体
、およびポリペプチド派生体からなるグループより選択される派生体を、トロポ
エラスチンの感受性領域中のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列によって、ペ
プチドドメインと結合させることを含む。
【0067】 一つの実施態様において、トロポエラスチンの感受性領域中のアミノ酸配列に
対応するアミノ酸配列は、セリンプロテアーゼによって分解してもよい。好まし
くは、セリンプロテアーゼはカリクレインである。別の実施態様において、配列
はメタロプロテイナーゼによって分解してもよい。
【0068】 第十の態様において、本発明は低下型トロポエラスチン派生体、上昇型トロポ
エラスチン派生体、およびポリペプチド派生体からなるグループより選択される
派生体を含むキメラ派生体を提供するものであり、このキメラ派生体はトロポエ
ラスチンの感受性領域中のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列によって、ペプ
チドドメインと結合する。
【0069】 一つの実施態様において、トロポエラスチン配列の感受性領域中のアミノ酸配
列に対応するアミノ酸配列は、セリンプロテアーゼによって分解されてもよい。
好ましくは、セリンプロテアーゼはカリクレインである。別の実施態様において
、配列はメタロプロテイナーゼによって分解されてもよい。
【0070】 本発明に係るキメラ派生体は、ペプチドドメインが、例えば走化性、細胞増殖
または細胞活性化など、特定の生物学的機能をもっている場合には有用である。
これらの生物学的機能は、派生体ドメインからペプチドドメインを放出させるた
めに、部分配列で特定のプロテアーゼによってキメラ派生体を分解することによ
って影響を受ける。
【0071】 本発明による変異は、従来からの部位特異的突然変異誘発法または無作為突然
変異誘発法によって作出することができる。オリゴヌクレオチド特異的突然変異
誘発法が、さらに別の選択肢である。この方法は、 1.所望のヌクレオチド置換(変異)を含む配列で、オリゴヌクレオチドを合成
すること、 2.オリゴヌクレオチドを、トロポエラスチンをコードする構造的配列を含む鋳
型にハイブリダイズさせること、および、 3.プライマーとしてオリゴヌクレオチドを伸長させるためDNAポリメラーゼ
を使用することを含む。
【0072】 制限酵素部位で区切られているオリゴヌクレオチドブロックからトロポエラス
チンをコードする合成ポリヌクレオチドを調製する場合に特に適したもう一つの
方法は、制限酵素断片全体が置換されるカセット式突然変異誘発法である。
【0073】 本発明者は、タンパク質分解に感受性をもつ、トロポエラスチンにおける領域
を同定しているため、この感受性領域の中のアミノ酸配列を用いて、ペプチド模
倣分子としても知られるプロテアーゼ阻害分子を調製することが可能である。本
明細書および請求の範囲において、「ペプチド模倣分子」とは、タンパク質分解
に対して感受性をもつ、トロポエラスチンにおける領域を模倣し、そのため、プ
ロテアーゼの触媒ドメインについて、感受性領域と競合する分子を意味する。一
般的には、ペプチド模倣分子は、ペプチドまたはペプチド様分子である。
【0074】 本発明に係るペプチド模倣分子は、構造的にペプチドに類似していてよい。こ
れらの分子には、タンパク質分解部位であるか、それを含むトロポエラスチンの
アミノ酸配列、またはトロポエラスチン変異体のアミノ酸配列を含んでよい。本
発明に係るペプチド模倣分子は、1つ以上の化学基において修飾されたアミノ酸
残基を含んでよく、非ペプチド結合によって結合させてもよい。これらの分子は
、関連するプロテアーゼの作用を阻止することが望ましい場合に使用することが
できる。
【0075】 第十一の態様において、本発明はKAPGVGGAF、RAAAGLG、RSLSPELREGD、KAAQFGL
VPGV、KSAAKVAAKAQLRAA、RSLSPELREおよびLAAAKAAKYGAAからなるグループより選
択されるペプチドの全てまたは一部を含むペプチドまたはペプチド模倣分子を提
供する。
【0076】 本発明の本態様に係るペプチドは、それぞれ上流側配列と結合しているKAPGVG
GAF、RAAAGLG、RSLSPELREGD、KAAQFGLVPGV、KSAAKVAAKAQLRAA、RSLSPELREおよび
LAAAKAAKYGAAからなるグループより選択される配列の全てまたは一部からなる短
いペプチドでよく、一般的には、15残基のオーダーのペプチドを作り出すのに
用いる。ただし、場合によっては、これよりも短いペプチドを使用することもで
きるし、しばしば、これよりも長い配列を使用することもできよう。ペプチドは
、これらの配列を一つ以上含む、より大きな分子である。さらに、これらのペプ
チドの構造的な類縁化合物も、本発明に係るペプチド模倣分子の範囲に含まれて
おり、また、例えば改変したアミノ酸残基を含む分子も含まれる。
【0077】 好ましい分子は、天然の切断部位が一般的にはペプチドまたはペプチド模倣分
子のほぼ中央に位置している分子である。ペプチドの例としては、トロポエラス
チン配列内のコンテクストにある配列RAAAGLGAに基づいたH-Ala-Ala-Lys-Ala-Gl
n-Leu-Arg-Ala-Ala-Ala-Gly-Leu-Gly-Ala-OHである。この分子のペプチド模倣型
は、H-Ala-Ala-Lys-Ala-Gln-Leu-Arg-R-Ala-Ala-Ala-Gly-Leu-Gly-Ala-OH(ここ
で、Rは還元型ペプチド結合)である。また、好ましくは、次のレトロインベル
ソ(retro-inverso)シュードペプチドである:H-D-Ala-Gly-D-Leu-Gly-D-Ala-D
-Ala-D-Ala-(還元型)-D-Arg-D-Leu-D-Gln-D-Ala-D-Lys-D-Ala-D-Ala-OHおよびH-
D-Ala-Gly-D-Leu-Gly-D-Ala-D-Ala-D-Ala-D-Arg-D-Leu-D-Gln-D-Ala-D-Lys-D-Al
a-D-Ala-OH。好ましくは、これらのペプチドはN末端またはC末端によって基質
と結合している。
【0078】 また、好ましいものとして、次のペプチドがある:H-Val-Pro-Gly-Ala-Leu-Al
a-Ala-Ala-OH;H-Val-Pro-Gly-Ala-(還元型)-Leu-Ala-Ala-Ala-OHおよびレトロ
インベルソシュードペプチド:H-D-Ala-D-Ala-D-Ala-D-Leu-(還元型)-D-Ala-Gly
-D-Pro-D-Val-OHおよびH-D-Ala-D-Ala-D-Ala-D-Leu-D-Ala-Gly-D-Pro-D-Val-OH
。好ましくは、これらのペプチドは、N末端またはC末端によって基質と結合し
ている。
【0079】 分子のさらなるカテゴリーには、相互作用するプロテアーゼを共有結合修飾し
て、さらにプロテアーゼの活性を阻害するために結合した一つ以上の反応基を含
んでいる。本発明は、反応基を結合させるために、内因性または外因性のリジル
オキシダーゼを使用することを想定している。生化学的試薬として利用できる化
学反応基で、化学的架橋剤の構築によく利用される反応基がたくさんあることも
知られている。本発明は、反応基を結合させるために、内因性または外因性のリ
シルオキシダーゼを使用することを想定している。これらの一部が、ピアス社製
品カタログ(Pierce Product Catalog:1997年)の133〜154頁(第7章)
に記載されている。この反応基は、反応部位に近接するよう、分子の末端か内部
に置かれる。
【0080】 本発明に係るペプチドおよびペプチド模倣分子は、エラスチンに対するエラス
チン分解プロテアーゼの攻撃に関連した損傷(喫煙者の肺損傷の主要原因)から
肺組織を保護するために、吸入剤の形で提供することのできる薬剤としてトロポ
エラスチンを精製する場合や、これらのペプチドを認識するプロテアーゼ活性部
位を競合的に阻害することが望まれる場合など、多くの異なった状況において有
用である。
【0081】 本発明に係るペプチドおよびペプチド模倣分子は、癌の局所的増殖および転移
を阻害または抑制する上でも有用である。特に、発明者らは本発明に係るペプチ
ドおよびペプチド模倣分子は、新生物細胞によって分泌されるプロテアーゼに対
して、内因性トロポエラスチンと競合させるときに有用であろうことを認めてい
る。これらのプロテアーゼの分泌は、一般的には、癌の局所的増殖または転移と
関連している。したがって、本発明に係るペプチドおよびペプチド模倣分子の、
プロテアーゼに対して内因性トロポエラスチンと競合できる能力により、癌の局
所的増殖または転移を阻害または低下させうる。このような適用では、本発明に
係るペプチドおよびペプチド模倣分子は、基質に結合していてもよい。
【0082】 第十二の態様において、本発明はトロポエラスチンまたはトロポエラスチン変
異体の精製を促進させる方法を提供しており、本方法には本発明の第十一の態様
に係るペプチドまたはペプチド模倣分子を少なくとも一つを精製されるトロポエ
ラスチンまたはトロポエラスチン変異体の粗調製物中に含んでいる。
【0083】 第十三の態様において、本発明は低下型トロポエラスチン派生体、上昇型トロ
ポエラスチン派生体、ポリペプチド派生体およびキメラ派生体からなるグループ
より選択される派生体、または本発明に係るペプチドまたはペプチド模倣分子を
、薬学的に許容できる担体または希釈剤とともに含む製剤組成物を提供する。派
生体または本発明に係るペプチドまたはペプチド模倣分子の処方製剤は、通常の
製薬技術にしたがって調製される。本発明による好ましい処方製剤には、吸入型
の処方製剤、局所的に使用するために設計された乳化剤へ取り込ませるもの、ス
テント用および注射用処方製剤など表面に付着させるものなどがある。さらに、
本発明者は、塞栓形成をもたらすようなプロテアーゼ活性を制限することが望ま
れる状況下での使用に本発明に係る組成物を採用できることを認めている。
【0084】 第十四の態様において、本発明は低下型トロポエラスチン派生体、上昇型トロ
ポエラスチン派生体、ポリペプチド派生体およびキメラ派生体からなるグループ
より選択される派生体、または本発明に係るペプチドまたはペプチド模倣分子を
コードするヌクレオチド配列を提供する。
【0085】 ヌクレオチドは、ベクターDNAを含む組換え型DNA分子として提供されて
もよい。ポリヌクレオチドは、ハイブリッド改変ポリヌクレオチド分子を形成す
るために合成法およびcDNA技術を組み合わせて用いて調製することができる
。これらの分子も、本発明の範囲内に含まれる。
【0086】 本発明において有用なベクターは、プラスミド、ファージおよびファージミド
などである。本発明に係る合成ポリヌクレオチドは、組込み型発現系、また溶菌
的もしくはそれと同等の発現系に用いることができる。
【0087】 一般的に適当なベクターには、使用するつもりの発現宿主と適合性のある種由
来の複製起点および調節配列が含まれるであろう。一般的には、これらのベクタ
ーは、該ポリヌクレオチドの上流に位置するプロモーターを、原核生物で発現さ
せようとするときにはリボソーム結合部位とともに含み、また抗生物質耐性を付
与したり、栄養要求性要件を補うような表現型選択遺伝子を含んでいる。作出用
ベクターとしては、分配を通じて高度の安定性を保つベクターを選択してもよい
。組み込みベクターを用いるときは、ベクターが複製起点を有することは必要で
はない。溶菌的または他の同等の発現系では、ベクターを宿主の中で維持するの
に必要なこれらの機能を持つ必要はない。
【0088】 大腸菌(E. coli)用の一般的なベクターとしては、pBR322、pBluescript II
SK+、pGEX-2T、pTrc99A、pETシリーズのベクター、特にpET3aおよびpET3d(Studi
erら、1990)、およびこれらのベクターから派生したベクターなどがある。
【0089】 第十五の態様において、本発明は本発明の第十四の態様におけるヌクレオチド
配列を含む細胞を提供する。
【0090】 好ましい発現系は、大腸菌発現系である。しかし、大腸菌で使用するために設
計されたポリヌクレオチドからタンパク質を発現させることのできる他の宿主を
使用すること、および別の微生物発現系など他の発現系で使用するのに適した合
成ポリヌクレオチドを使用することも、本発明の範囲内に含まれる。これらの他
の発現系には、酵母、バクテリア発現系、昆虫細胞発現系、および他の真核生物
細胞系や生物そのものを用いる発現系などがある。
【0091】 大腸菌宿主の例としては、大腸菌B菌株の派生株(Studierら、1990)、NM522 (G
oughとMurray、1983)、およびXL1-Blue(Bullockら、1987)などがある。
【0092】 第十六の態様において、本発明は、本発明の第十五の態様における細胞からの
、本発明の第十四の態様におけるヌクレオチド配列によってコードされた発現産
物を提供する。
【0093】 本発明に係る発現産物は、ベクターによってコードされているタンパク質の全
てまたは一部を、発現産物のペプチド結合に含む融合発現産物でもよい。これら
は、例えばN末端メチオニン、または産物の伸縮性を永久には損わない、その他
の付加的残基を含んでいてもよい。
【0094】 一般的には、所望の発現産物のN末端側に融合させる。適当なタンパク質の例
としては、グルタチオンS−トランスフェラーゼである(SmithとJohnson、 1988
)。融合タンパク質の配列は、精製を簡単にするため、または細胞質タンパク質
として発現させるために発現産物が分泌されるようなもの、または、細胞表面タ
ンパク質として発現されるようなものを選択してもよい。
【0095】 発現させた融合産物は、次に、遊離した改変トロポエラスチンを提供するため
に、融合タンパク質の配列を取り除くよう処理してもよい。処理は、一般的にプ
ロテアーゼ処理によって行われるか、分泌による除去では宿主に内在する分泌装
置によって行われる。この例は、出芽酵母(S. cerevisae)および分裂酵母酵母
(S. pombe)などの酵母であるが、これらに限られるわけではない。
【0096】 非融合系は、予め存在しているメチオニンコドンを導入または使用することを
含む。この例は、大腸菌でpET3aおよびpET3dを使用することである。
【0097】 本発明の第十七の態様によれば、第十六の態様に係る発現産物を製造する過程
を提供するものであり、本過程において、第十五の態様に係る細胞を提供するこ
と、この細胞を、第十六の態様に係る産物を発現させるのに適した条件下で培養
すること、および発現産物を回収することを含む方法が提供される。
【0098】 第十八の態様において、本発明は低下型トロポエラスチン派生体、上昇型トロ
ポエラスチン派生体、ポリペプチド派生体およびキメラ派生体からなるグループ
より選択される一つ以上の派生体から形成されるインプラントを提供する。派生
体がタンパク質分解に対する感受性を低下させている場合は、このインプラント
は、かなり長期間にわたってin situで保持を意図されるものであるが、派生体
がタンパク質分解に対する感受性を上昇させている場合は、このインプラントは
短期間in situで保持することを意図したものである。実際、インプラントを内
因性結合組織によって置き換えたい場合などには、インプラントは、速やかに分
解されることが望ましい。
【0099】 本発明に係るトロポエラスチン派生体(すなわち、低下型トロポエラスチン派
生体および上昇型トロポエラスチン派生体)は、架橋させてエラスチンまたはエ
ラスチン様物質を形成させることができる。あるいは、別の生物学的分子または
合成分子とともに架橋して、複合物質を作ることもできる。トロポエラスチン派
生体の架橋は、ルテニウムテトロキシド媒介の酸化、およびキノン媒介の酸化な
どの方法を用いて、リシル側鎖を化学的に酸化することにより、または、ジチオ
ビス(サクシンイミジルプロピオン酸)、ジメチルアジピミデート、またはジメ
チルピメリミデートおよびUV活性化架橋ドメインを含む薬剤など、異種性の部
位に存在する物質などの二官能性化学的架橋剤を用いて行なうことができる。こ
の他には、リシンおよびグルタミン酸側鎖の架橋がある。
【0100】 トロポエラスチン派生体(すなわち、低下型トロポエラスチン派生体および上
昇型トロポエラスチン派生体)は、リシルオキシダーゼ媒介の酸化などの方法に
よって酵素的に架橋してもよく、あるいはガンマ線照射を用いて架橋してもよい
。インプラントを所望の形するための鋳型中でトロポエラスチン派生体を架橋す
ることによって、インプラントを必要な形に形成する。インプラントをシート状
にして使用する必要があるときには、この派生体を平面上で架橋させる。関連す
る方法が、例えば、米国特許第4 474 851号および第5 250 516号に記載されてい
る。エラストマー材料は、一つ以上の派生体から独占的に調製してもよい。ある
いは、他の材料とともに一つ以上の派生体から調製された複合物でもよい。
【0101】 図面の簡単な説明 図1は、血清、カリクレインおよびトロンビンについてN末端配列の決定によ
り同定されたプロテアーゼ部位の相対位置を示す模式図を示している。主要部位
を実線で示し、副次的な部位を破線で示す。ほとんどのプラスミン断片が、同一
のN末端配列を含んでいたため、切断部位を一義的に同定することはできなかっ
た。同じようにして同定したトリプシン断片も、すべて同じN末端配列を含んで
いた。したがって、プラスミンとトリプシンで切断される部位の可能性が高い領
域は示されていない。
【0102】 図2は、SHELのヌクレオチド配列とアミノ酸配列とを示している。プロテアー
ゼ認識部位の位置を下線で示す。SHELのアミノ酸を配列番号4で示す。
【0103】 図3は、SHELのアミノ酸配列と比較したSHELδ26Aのアミノ酸配列(下側の配
列)を示している。SHELδ26Aのアミノ酸配列を配列番号5で示す。
【0104】 図4は、SHELδmodのヌクレオチド配列とアミノ酸配列とを示している。SHEL
δmodのアミノ酸配列を配列番号6で示す。
【0105】 図5は、血清とともに1、2、3または18時間インキュベートした後のSHEL
を10%SDS-PAGEで解析した結果を示している(レーン1から4)。レーン5と6
:それぞれ、SHELとSHELδ26Aを血清によって分解してできたペプチド断片を、
ブタノール可溶化処理によって精製したもの。産生された断片のおおよそのサイ
ズはkDaで示す。分子量マーカーをkDaで示した。
【0106】 図6は、血清によるSHEL分解に対するプロテアーゼ阻害剤の効果を8%SDS-PA
GEで解析した結果を示している。レーン1、3、5、7、9:血清とともにイン
キュベートしたSHEL;レーン2:血清および0.5 mMペファブロックSC(Pefabloc
SC)とともにインキュベートしたSHEL;レーン4:血清および5 mM PMSFとと
もにインキュベートしたSHEL;レーン6:血清およびEDTAとともにインキュベー
トしたSHEL;レーン8:血清および50 mMペファブロックPK(Pefabloc PK)とと
もにインキュベートしたSHEL;レーン10:血清および1ユニットのヒルジン(Hir
udin)とともにインキュベートしたSHEL。
【0107】 図7は、SHELおよびSHELδ26Aに対するトロンビンの効果を8%SDS-PAGEで解析
した結果を示している。SHELに加えるトロンビンの量を以下のように上昇させた
:レーン1(0.01ユニット);レーン2(0.05ユニット);レーン3(0.10ユニ
ット);レーン4(0.15ユニット);レーン5(0.20ユニット);レーン6(0.
25ユニット)。レーン7および8:SHELおよびSHELδ26Aそれぞれの分解に対す
るトロンビンの効果。断片のサイズは、kDaで推定した。分子量マーカーをkDa
で示した。
【0108】 図8は、SHELおよびSHELδ26Aに対するカリクレインの効果を8%SDS-PAGEで解
析した結果を示している。SHELに加えるカリクレインの濃度を以下のように上昇
させた:レーン1:3.0×10-4;レーン2:6.0×10-4;レーン3:1.5×10-3
レーン4:3.0×10-3。レーン5および6:SHELおよびSHELδ26Aそれぞれの分解
に対するカリクレイン(6.0×10-4ユニット)の効果。断片のサイズと分子量マ
ーカーをkDaで示した。
【0109】 図9は、SHELおよびSHELδ26Aに対するウシトリプシンの効果を10%SDS-PAGE
で解析した結果を示している。SHELに加えるウシトリプシンの濃度を以下のよう
に上昇させた:レーン1:5×10-4;レーン2:1×10-3;レーン3:2×10-3
レーン4:4×10-3。レーン5および6:SHELおよびSHELδ26Aそれぞれの分解に
対するウシトリプシン(2×10-3ユニット)の効果。断片のサイズと分子量マー
カーをkDaで示した。
【0110】 図10は、SHELおよびSHELδ26Aに対するプラスミンの効果を10%SDS-PAGEで
解析した結果を示している。SHELに加えるプラスミンの濃度を以下のように上昇
させた:レーン1:3.7×10-7;レーン2:7.4×10-7;レーン3:3.7×10-6
レーン4:7.4×10-6、レーン5:3.7×10-5;レーン6:7.4×10-5。レーン7
および8:SHELおよびSHELδ26Aそれぞれに対するプラスミン(7.4×10-5ユニッ
ト)の効果。断片のサイズと分子量マーカーをkDaで示した。
【0111】 図11は、SHELおよびSHELδ26Aに対するヒト白血球エラスターゼ(HLE)の効
果を10%SDS-PAGEで解析した結果を示している。SHELに加えるHLEの濃度を以下
のように上昇させた:レーン1:1.6×10-4;レーン2:3.2×10-4;レーン3:
8.0×10-4;レーン4:1.6×10-3、レーン5:3.2×10-3。レーン6および7:S
HELおよびSHELδ26Aそれぞれに対するHLE(1.6×10-3ユニット)の効果。断片の
サイズと分子量マーカーをkDaで示した。
【0112】 図12は、A:血清、1/2希釈、20分間;B:トリプシン、20分間;C:プラスミ
ン、1.5×10-5ユニット、20分間;D:カリクレイン、15×10-4ユニット、40分間
;E:トロンビン0.1ユニット、20分間;F:HLE、70分間によるSHEL分解に対する
S-GALおよびSPS-ペプチドの効果を10%SDS-PAGEで解析した結果を示している。
トロンビンとカリクレインは、100:1の比率で使用した。デンシトメトリーによ
りゲルを走査して、全長のSHELバンドの相対量をヒストグラムで示した。
【0113】 図13は、プロテアーゼによるSHEL分解に対するコアセルベーションの効果を
SDS-PAGEで解析した結果を示している。37℃でSHELのコアセルベーションをもた
らす濃度のNaClの存在下(+)または非存在下(-)で、A:カリクレイン、B:ト
ロンビン、C:HLE、D:トリプシン、E:プラスミン、F:血清とともにSHELをイ
ンキュベートした。あるいは、16℃でSHELのコアセルベーションをもたらす濃度
のNaClの存在下(+)または非存在下(-)で、G:カリクレイン、H:トロンビン
、I:HLE、J:トリプシン、K:プラスミン、L:血清とともにSHELをインキュベ
ートした。
【0114】 図14は、GST-SHELを含む可溶性細胞溶解質のトロンビンによる切断効果を8
%SDS-PAGEで解析した結果を示している。可溶性細胞溶解質に加えるトロンビン
の量をを以下のように上昇させた:レーン1:0.001ユニット;レーン2:0.005
ユニット;レーン3:0.010ユニット;レーン4:0.50ユニット;レーン5:0.1
00ユニット;レーン6:0.500ユニット;レーン7:1.000ユニット。
【0115】 図15は、pSHELFδ26Aを構築するための概要を示している。pSHELFおよび異
常型pSHELFδmodの両方をSpeIおよびBssHIIで消化した。BssHIIは、どちらのプ
ラスミドも2回を切断し、SpeIは1回を切断した結果、3つの断片が生じた。5
424塩基対と946塩基対の断片をpSHELFから、またpSHELFδmodからの短い
338塩基対の断片をアガロースゲルから精製した。5424塩基対の断片をCI
P処理して再環化するのを抑制した後、3つの断片をDNAライゲースを用いて
16℃で一晩ライゲーションした。最終産物であるpSHELFδ26Aは、SHEL遺伝子
エクソンからの26Aの所望した欠失を含んでおり、その他の変異は生じていな
かった。
【0116】 図16は、血清(レーン1)、ペファブロックSC添加の血清(レーン2)また
はカリクレイン(レーン3)で分解したSHELのザイモグラム解析の結果を示して
いる。
【0117】 図17は、Ca2+(レーン1)、Zn2+(レーン2)、Ca2+とZn2+(レーン3)、
およびCa2+、Zn2+ およびEDTA(レーン4)存在下での血清によるゼラチン分解
のザイモグラム解析の結果を示している。
【0118】 図18は、AMPAで活性化したゼラチナーゼA(レーン1)、非活性化ゼラチナ
ーゼA(レーン2)、および血清(レーン3)によるゼラチン分解のザイモグラ
ム解析の結果を示している。
【0119】 図19は、溶液中における、SHELのプロテアーゼ分解の結果を示している。レ
ーン1:標準;レーン2:SHEL;レーン3:SHEL+血清;レーン4:SHEL+72kD
aゼラチナーゼ;レーン5:SHEL+92kDaゼラチナーゼ;レーン6および7:血清
+APMA(1時間インキュベーション)、レーン8および9:血清+APMA(一晩イ
ンキュベーション)。
【0120】 図20は、尿素存在下または非存在下でのリン酸ナトリウム緩衝液(pH 7.8)
中における、SHELのヒト血清カリクレイン分解の結果を示している。レーン1:
標準;レーン2:SHEL(インキュベーションなし);レーン3:緩衝液中でイン
キュベートしたSHEL(カリクレインなし);レーン4:SHEL+カリクレイン;レ
ーン5:緩衝液中SHEL+尿素(カリクレインなし);レーン6:0.3 M尿素中SHE
L+カリクレイン;レーン7:1 M尿素中SHEL+カリクレイン。
【0121】 発明の実施の形態 用いた組換え法および合成法は、Sambrookら(1989)など、標準的なテキストに
記載されている。
【0122】 本発明に係るトロポエラスチン派生体および発現産物の精製も、分子を精製す
ることになる環境に左右される各例において、実際の工程順序により標準的な技
術を用いて行なわれる。PCT/AU93/00655で開示された精製法の概要が、実施例に
よって説明されている。
【0123】 本発明にしたがった処方製剤は、標準的な技術によって処方される。
【0124】 単回投与形態を製造するための、担体または希釈剤を組み合わせてよいトロポ
エラスチン派生体またはペプチド模倣分子の量は、その処方製剤が使用される状
態、および個々の投与方法によってさまざまである。
【0125】 それぞれの宿主への具体的な投与量は、年齢、性別、体重、および全身の健康
状態、ならびに使用されるトロポエラスチンの特定の特徴、また投与法などの要
因によって影響されうることを理解されたい。
【0126】 例えば、滅菌注射液または油脂性懸濁液などの注射用製剤は、適当な拡散剤ま
たは湿潤剤、および懸濁剤を用いる公知の技術により処方することができる。滅
菌注射用製剤は、毒性のない非経口投与に許容される希釈剤または溶媒中の滅菌
注射用溶液または懸濁液でもよい。使用してよい賦形剤または溶媒は、水、リン
ゲル液、等イオン点塩化ナトリウム溶液である。さらに、滅菌した不揮発油が、
溶媒または懸濁媒体として従来から使用されている。この目的には、合成モノグ
リセリドまたはジグリセリドなど、どのような無刺激性の不揮発油を用いてもよ
い。なお、オレイン酸および有機溶媒などの脂肪酸は、注射可能な物質の調製に
用いられる。
【0127】 投与経路、投与用量、および投与回数はすべて、当業における通常の技術を用
いて最適化することができる要素である。
【0128】 さらに、派生体および発現産物は、例えば抗皺用のハンドローションなど、局
所用製剤としてこのような処方製剤を調製するための通常の技術を用いて調製し
てもよい。
【0129】 それらは、また、通常の技術を用いて、例えば、患者の肺に投与するためのエ
アロゾル形態、あるいは外科用インプラント、食物または工業製品の形に調製し
てもよい。
【0130】
【実施例】
材料および方法 試薬 ヒルジン、PMSF、ヒトトロンビン、ヒト血漿カリクレイン、ヒトプラスミンお
よびヒト白血球エラスターゼ(HLE)はシグマ社(Sigma)から購入した。ウシト
リプシン、ペファブロックSCはベーリンガーマンハイム社(Boehringer-Mannhei
m)から、またペファブロックPKはスイスにあるペンタファーム社(Pentapharm
)から購入した。ゼラチナーゼA(72kDaゼラチナーゼ)とゼラチナーゼB(92kDa
ゼラチナーゼ)は、ベーリンガーマンハイムロシュダイアグノスティック社(Bo
ehringer Mannheim Roche Diagnostics)から購入した。
【0131】 SHELは、国際公開公報第94/14958号に記載されている方法によって得た。
【0132】 SHELδ26Aは、エクソン26Aに対応する合成コーディング配列を取り除くことに
よってSHELから派生させることができる。SHELの配列とSHELδ26Aの配列との比
較を図3に示す。そのタンパク質産物は、トロポエラスチンの天然ヒトスプライ
ス型と外見上一致している。
【0133】 トランスフォーマー突然変異誘発キット(Transformer Mutagenesis Kit)(
米国にあるクローンテック社(Clontech))をpSHELF(国際公開公報第94/14958号
記載)とともに、添付のプロトコールにしたがって用いて、エクソン26Aに対応
するDNAを取り除いた。使用した突然変異プライマーの配列(オーストラリアに
あるベックマン社(Beckman)製)は、5' CGG GTT TCG GTG CTG TTC CGG GCG CG
C TGG 3'で、エクソン26Aの両側15塩基対のところに隣接し正確な欠失を生じ
た。特有の制限酵素部位を別の制限酵素部位に変異させる別の選択用プライマー
がプロトコールでは通常使用されているが、エクソン26Aの欠失は、特有の制限
酵素部位であるPmlIの欠失ももたらすため、本実験では使用しなかった。したが
って、製造業者の指示に従い、この酵素を用いて変異反応物を切断して、突然変
異を起こさなかった親プラスミドをすべて直鎖化し、その結果、変異プラスミド
を濃縮した。この反応混合液は、製造業者が添付したプロトコールに従い、ジー
ンパルサー(Gene Pulser)装置(BioRad USA)を用いて実施した電気泳動によ
って、ミスマッチ修復欠損大腸菌株BMH17-18 mutSコンピテントセルを形質転換
するのに用いた。電気泳動を受容することのできる細胞は、クローンテック社か
ら供給された標準プロトコールに従って作製した。コンピテントセルは、小分け
して-80℃で保存した。電気泳動を行なった後、細胞を1 mlのLBの中で、37℃、2
80 rpmで1時間増殖させた。完全に形質転換した細胞培養物を5 mlのLB+アン
ピシリン中で一晩培養した。変異プラスミドと親プラスミドを含む混合プラスミ
ドDNAを、キアゲンスピンプラスミド単離用キット(Qiagen Spin Plasmid isola
tion kit)を用いて培養から分離し、プラスミドDNAをPmlIで切断し、親プラス
ミドを直鎖化した。ここで変異プラスミドが濃縮されたプラスミドDNAを用いて
、上記のごとく電気泳動により大腸菌HMS174を形質転換し、75μg/mlアンピシリ
ンを含むLBプレート上で形質転換体を選択した。
【0134】 コロニーを一晩培養し、10 mlのスクリューキャップ付き試験管に入れた3 ml
のLB+アンピシリン培地に単一コロニーを植菌し、37℃で振とうしながら一晩培
養して、プラスミドの微量調製を行なった。Sambrookら(1989)によるアルカリ分
解プロトコールに従って、プラスミドを抽出した。HMS174についてはフェノール
/クロロホルム/イソアミルアルコールで抽出を2回行なった。PmlIを用いて構築
物をスクリーニングし、切断に反応しなかったものをさらにKpnI/PstIの二重切
断によってスクリーニングした。6F (5' GGG TGT TGG CGT TGC ACC AG 3')、お
よび 7R (5' TGC ACC TAC AAC ACC GCC CG 3')プライマーを用いて、(本明細書
に記載したように)手動で候補クローンの配列を決定し、欠失領域の両側にある
配列の統一性を確認した。
【0135】 Sequi-Net(米国コロラド州立大学、生化学部門)またはSUPAMAC(シドニー大
学およびプリンスアルフレッド病院、高分子解析センター)を用いて、自動配列
決定を行なった。DNAは、塩化セシウム勾配またはキアゲンTip 20(キアゲン社
(Qiagen)、ドイツ)のいずれかによって精製した後に適用し、手動配列決定に
用いたのと同じプライマーを用いて配列決定を行なった。プライマー: 1R (5' TGC CTT TGC CGG TTT GTA CG 3') 3F (5' TCC AGG TGG CTA CGG TCT GC 3') 3R (5' GAG TAC CTA CGC CTG CGA TAC 3') 5R (5'GGA GTA CCA ACG CCG TAC TT 3') 6F (5'GGG TGT TGG CGT TGC ACC AG 3') 7R (5'TGC ACC TAC AAC ACC GCC CG 3') pETフォワード (5'GCA CTC ACT ATA GGG AGA CC 3') pETリバース (5'GCC AAC TCA GCT TCC TTT CG3') を用いて配列決定し、残りの配列を確認した。多くの望ましくない変異が発見さ
れたため、さらにDNAに操作を加える必要が生じた。この変異DNAをpSHELFδmod
と名づけた。
【0136】 配列決定によって、欠失部分を取り囲むすぐ近くの領域は正しいことが確認さ
れた。pSHELFδmodの正しい領域を囲むPstIとBssHII制限酵素部位を用いて、所
望の分節を取り出して、pSHELFの対応部位に再挿入した。6.5μgのpSHELFと7.5
μgのpSHELFδmodをBssHIIで切断しPstIで沈殿化し切断した。適当な3つの断片
(図15)をゲル精製して、1ユニットのDNAリガーゼ(ベーリンガーマンハイム
社製、ドイツ)を用いて、16℃で一晩ライゲーションを行なった。DNAを大腸菌X
L1-Blueに形質転換し、75μg/mlアンピシリンを含むプレート上で形質転換体を
選択した。
【0137】 微量調製によって、プラスミドを単離し、BglI消化を用いてスクリーニングし
た。制限酵素消化によって候補クローンをさらに解析し、その後、プライマー1R
、3F、5R、6F、7RおよびT7フォワード(5' TAA TAC GAC TCA CTA TAG GG 3')を用
いて自動配列決定を行なって、全配列を確認した。正確な配列をpSHELFδ26Aと
名づけた。
【0138】 SHELFδ26Aは、SHELよりも強いプロテアーゼ耐性を示す。
【0139】 SHELの血清によるタンパク質分解 新鮮な静脈血を2000gで遠心分離して赤血球細胞を取り除き、次に凝血させて
から血清を取り出して、ヒト血清を得た。小分けして(20μl)-20℃で保存し、
必要時に解凍した。50 mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH 7.8)中15μgのトロポエ
ラスチンを0.5μlの血清とともに37℃で1時間から18時間、20μlの反応液中でイ
ンキュベートした。阻害剤の前添加のある場合とない場合で同様の実験を行なっ
た。阻害剤は以下の濃度で加えた;0.5または1ユニットのヒルジン、0.5または5
mMのペファブロックSC、1または5mMのPMSF、25mM EDTA、50または250μMのペフ
ァブロックPK。PMSF以外の阻害剤はすべて水に溶解し、PMSFはイソプロパノール
に溶解させた。反応を8%SDS-PAGEで解析した。血清で分解したペプチドで、配
列決定に用いるものは、1.5容量のn-プロパノールを加えて精製した後、2.5容量
のn-ブタノールを加えてから一晩撹拌した。回転蒸発によって有機溶媒を取り除
いてから、50 mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH 7.8)中にペプチドを再懸濁した
【0140】 タンパク質分解アッセイ 以後の実験にとって最適な量を決定するために、ある程度の範囲の酵素濃度を
初めに用いた。トロンビン(0.01〜1ユニット)、ヒト血漿カリクレイン (3×10-4
から3×10-3ユニット)、ヒトプラスミン (7×10-5から4×10-7ユニット)、ウシ
トリプシン (5×10-4から4×10-3ユニット)、およびヒト白血球エラスターゼ (1
.6×10-4 から3.2×10-3ユニット)を、50 mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH 7.8)
中10μgのSHELまたはSHELδ26Aに全容量20μlとなるように加えた。反応はすべ
て、37℃で1時間行なった。ゼラチナーゼAおよびBは、0.8 mMのAPMAを用いて、3
7℃で30分間(ゼラチナーゼA)、または37℃で45分間(ゼラチナーゼB)活性化
した。ゼラチナーゼA(4×10-3〜4×10-2)およびゼラチナーゼB(2×10-5〜1×
10-4)を15 mgのSHELまたはSHELFδ26Aに全容量が50 mLとなるように加えた。ゼ
ラチナーゼBの反応は、0.75 mMのAPMA存在下で行なった。分解プロフィールを8
%、10%または12%SDS-PAGEによって解析した。
【0141】 ザイモグラム解析 (1mg/ml)ブタゼラチンまたはSHELを基質に用いて、8%または10%ザイモグ
ラムゲルを泳動した。電気泳動後、100mLの2.5% Triton-X 100で20分間ずつ2回
、次に100mLの50mM トリス-HCl(pH7.8)、30mM NaClで5分間ずつ2回洗浄して
から、50mM トリス-HCl(pH7.8)、30mM NaCl、5 mM CaCl2の中で、37℃で一晩
インキュベートした。25%イソプロパノール、10%酢酸でゲルを固定してから20
0mLの水で3回洗浄し、ゲルコード(Gelcode)(ピアス社)で染色した。
【0142】 N末端配列決定 新鮮なアクリルアミド保存液、および通常の半量のAPSとTEMEDを用いてゲルを
注入した。ゲルを16〜24時間放置した。シンプルなタンパク質プロフィールをみ
るには、上部バッファー槽には10μl/Lのチオグリコール酸を含む150mM トリスH
Cl(pH8.8)緩衝液を用いて、20 mAで4時間室温にてゲルの前泳動を行った。サ
ンプルを投入し、新鮮な緩衝液で4℃にて約3時間泳動した。より複雑なプロフィ
ールを見るには、トリス-グリシン緩衝液(25mM トリスHCl, 192mM グリシン、0
.1%(w/v)SDS, pH 約8.3)中で室温にて前泳動を行って、新鮮な緩衝液を加え
てゲルを室温まで平衡させてから、サンプルを加えて、上部バッファー槽に加え
た10μl/Lのチオグリコール酸で20 mAにて泳動した。前染色スタンダード(カレ
ードスコープ;バイオラッド社、米国)を用いて、移動の程度をモニタリングし
た。
【0143】 ゲルは、製品説明書にしたがって処理したポリビニリデンジフルオライド(PV
DF)膜(プロブロット;アプライドバイオシステムズ社、米国)に、10mM CAPS
(pH 11.0)、10%メタノールおよび10 μl/Lチオグリコール酸緩衝液を用いて4
℃で撹拌しながら、70mAで一晩ブロットした。ヘッファートランスブロット(Ho
efer Transblot)装置を用いてブロッティングを行ない、製品説明書にしたがっ
て使用した。この膜は、50%メタノール中0.1%クーマシーブルー-Rによって染色
し、50%メタノール、10%酢酸中で脱染した。膜は、水で一晩洗浄してから風乾し
た。清潔なメスでバンドを切り出した。上記のようにして、サンプルをPVDF上に
ブロットした。清潔なメスでバンドを切り出し、アプライドバイオシステムズ社
のハードウエアとプロトコールを用いてシドニー大学およびプリンスアルフレッ
ド病院高分子解析センター(SUPAMAC)で配列決定を行なった。あるいは、配列
決定を行なうため、サンプルをキャンベラにあるオーストラリア国立大学、生体
分子資源学部に送った。
【0144】 ペプチド調製と使用 S-GAL、すなわちN-VVGSPSAQDEASPLS-Cは、EBP(HinekとRabinovitch、1994)
のエラスチン結合ドメインを代表するペプチドである。これは、カイロンミモト
ープ社(Chiron Mimotopes、オーストラリア)によって合成され、次のようにし
て、RP-HPLCで精製した。50mMの酢酸アンモニウムで濃縮したペプチドを、0〜10
0%アセトニトリル、 0.1%トリフルオロ酢酸 (TFA)勾配に沿って、9ml/分で7分間
泳動したR2逆相カラム(4.6 × 100mm)を用いて、まず、潅流クロマトグラフィ
ー(POROS;パーセプティブバイオシステムズ社、米国)によってRP-HPLC で処
理した。あるいは、テコゲル10 C18(Techogel10 C18)カラム(2.2 × 25cm)
を流速8ml/分で用いた。まず、30%アセトニトリル/0.1% TFAで10分間洗浄した後
、0〜100%アセトニトリル、 0.1%トリフルオロ酢酸 (TFA)勾配を55分間用いた。
カラムの容量が大きいため、泳動の間に10分間カラムを平衡させた。最大で30か
ら50mgのペプチドを一度に泳動させた。どちらの方法でも、サンプル検出は、21
4 nmと280nmで同時に行なった。どちらの方法も、ファルマシア社(Pharmacia、
スウェーデン)製のポンプと検出器を用いて行なった。回収したサンプルから凍
結乾燥によって溶液を取り除き、精製したペプチドを計量して収量を測定した。
【0145】 ミリQ(Milli-Q)水中の過剰モルのS-GAL(10から200倍)を、50 mMリン酸ナ
トリウム緩衝液(pH 7.8)中15μgのSHELに加えて全量を40μlにしてから、Hine
kとRabinovitch(1994)が提唱する方法に従い、37℃で1時間プレインキュベー
トし、次に選択しプロテアーゼ(カリクレイン、6〜15×10-4U;トロンビン、0.
1〜0.2U;トリプシン、2×10-3U;プラスミン、1.5〜3.7×10-5U;ヒト白血球エ
ラスターゼ、1.6 ×10-3U;血清、1μl)を、10から80分間、上記で決定し最適
量にしたがって加えた。血清は、50 mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH 7.8)で、1
/2から1/50まで、さまざまに希釈したものを用い、いずれの実験にも、SHELとSH
ELδ26Aの両方を用いた。
【0146】 セリンプロテアーゼの選択により切断される、SHELの領域を表すペプチド、す
なわちN-AAKAQLRAAAGLGA-C(セリンプロテアーゼ部位ペプチド、SPS-ペプチド)
は、カイロンミモトープ社(オーストラリア)が合成し、それが存在することで
競合物質としてSHELを分解から保護することができるかを調べた。実験は、同一
の手順(上記参照)を用いて、S-GALと並行して行なった。SHELとSHELδ26Aの両
方を用いた。各反応は10%SDS-PAGEで分解した。デンシトメトリーによってゲル
を走査し、全長SHELの容量を次のように算出した。モレキュラーダイナミクス社
(Molecular Dynamics)製のパーソナルデンシトメーターを用いて染色ゲルのデ
ンシトメトリーの走査を行なった。ImageQuantソフトウエア(バージョン3.2、
モレキュラーダイナミクス社、米国)を用いて、画像を解析して定量した。
【0147】 コアセルベーション過程でのタンパク質分解 50 mMリン酸ナトリウム(pH 7.8)および150mM NaCl中10mg/mlのSHELを、37℃
で曇るまでコアセルベーションし、その後ヒト血漿カリクレイン(6×10-4U)、
トロンビン(1U)、プラスミン(1.5×10-5U)、トリプシン(2×10-3U)、HLE
(1.6×10-3U)および血清(0.75μl)を1時間加えた。対照反応は、16℃で3時
間行なった。SDS-PAGEによって、タンパク質分解の程度をモニタリングした。
【0148】 結果 A.血清によるSHELの分解 ヒトトロポエラスチンはヒト血清によって分解され、更なる分解に耐性をもつ
別々のバンドに分かれた。SDS-PAGEでは、1時間インキュベートしたときと同じ
分解プロフィールが、一晩インキュベートしたときにも見られた(図5)。図5
は、ブタノールを用いて血清から精製した後のペプチド断片を明確に示している
。主要なバンドのサイズは、約50、45、35、28、27、25、22および18 kDaであり
、外見的には、Romeroら(1986)が、ブタトロポエラスチンを用いて得たバンド
と同じである。これによって生じたペプチドパターンは、多くの別の実験でも再
現性があった。SHELδ26Aでも同様の結果が得られた(図5)が、22 kDaと18kDa
のバンドは見られず、15kDaのバンドが換わりにみられた。
【0149】 B.血清による分解に対するプロテアーゼ阻害剤の効果 図6は、さまざまなプロテアーゼ阻害剤の存在下または非存在下で、血清とイ
ンキュベートした後の全長SHEL量を示している。ペファブロックSCもPMSFもトロ
ポエラスチンを切断から保護するため、広範なスペクトラムのセリンプロテアー
ゼ阻害剤が分解を阻害することが認められた(図6)。それに対して、メタロプ
ロテイナーゼの阻害剤であるEDTAは、分解を促進するようにみえた。これは、メ
タロプロテイナーゼであるゼラチナーゼAとゼラチナーゼBがトロポエラスチンを
分解することを考えれば、予想外の結果である(図19)。セリンプロテアーゼ
のトロンビンおよびカリクレインに特異的なプロテアーゼ阻害剤も調べた。トロ
ンビンの非常に特異的な阻害剤であるヒルジンは、分解を有意に阻害するように
は見えなかったが、カリクレインに特異的なペファブロックPKはタンパク質分解
を阻害した(図6)。
【0150】 C.特異的プロテアーゼによるSHELの分解 ヒトトロンビン トロンビンは、GST-SHELを広範かつ再現性のある方法に切断することができる
。グルタチオンアガロースに結合しているGST-SHELの切断を、ビーズを1xトロン
ビン切断用緩衝液(50mM トリス-HCl(pH8.0)、150mM NaCl、2.5mM CaCl)で
洗浄および再懸濁し、0.1%から1%(w/v)のトロンビン:融合タンパク質から
のヒトトロンビン(シグマ社製)を25℃で1時間加えた(SmithとJohnston、1988
)。基質として使用される可溶性細菌溶解質を、10x保存液から加えた1xトロン
ビン切断用緩衝液とともに、同じようにインキュベートした。SDS-PAGEでは、GS
T(26kDa)がビーズ上に存在することは明らかであったが、SHELは、多くの実験
でも上清中に存在することを確認できなかった。トロンビンがSHELを分解してい
るか否かを判定するために、トロンビンの濃度を上げながら、細胞溶解質全体に
ついて切断を行なった。0.01Uのトロンビンが、切断のための最低濃度であるが
、0.05U以上はより効果的であった(図14)。GSTは、明らかに存在していた。
しかし、0.01Uのトロンビンでは、SHELを示しうるほぼ64kDaのところにバンドを
認めることができた。ただし、このバンドはGSTのバンドほど強くはなかった。
トロンビンの濃度を上げるとこのバンドは消失し、より短い断片が45、34および
22kDaのところに見られ、SHELが実際にトロンビンによって切断されていること
が示された。
【0151】 トロンビンの量を増加させながら、純粋なSHELに加えたところ、SDS-PAGEでは
、かすかな主要でないバンドの他、45、34、22および13 kDaのところに4つの主
要な断片が同定された(図7)。主要産物のサイズは、GST-SHEL溶解質をトロン
ビンで分解したときに見られるものと非常によく似ていた。過剰量のトロンビン
(1U/10μg SHEL)を加えても短いバンドは、更なる分解に対しては耐性があるが
、45kDaの断片は消失した。分解のパターンは、血清によって作出されたペプチ
ドと同じようには見えなかった。反応にヒルジンを加えると、血清で見られた結
果とは異なり分解が阻害された(図示せず)。SHELδ26Aで見られた分解パター
ンは、26Aを含まない断片と一致する約15 kDa の大きさに減少する22kDaの断片
について僅かに異なっていた(図7)。
【0152】 ヒト血漿カリクレイン トロンビンと同様に、ヒト血漿カリクレインの量を増加させながらSHELに加え
ると、特異的かつ再現性のある分解が起きた。これら3つの主要断片をSDS-PAGE
で測ると、かすかな主要でないバンドの他、45、22および18 kDaと推測される3
つの主要な断片が同定された。45kDaと18kDaでの主要バンドは、更なる分解に対
しては耐性があるが、22kDaの断片は最終的に消失した。ここでも、分解のパタ
ーンは血清で見られたパターンと同じではなかった。ペファブロックPKはカリク
レインによる分解を阻害し得た(図示せず)。SHELδ26Aの分解パターンは、22k
Daと18kDa断片が失われ、15 kDaの断片に置き換わっていたという点(図8)で
、血清で見られたパターンとやや異なっていた。
【0153】 ウシトリプシン トリプシンによるSHEL分解は非常に広範で、長時間処理すると完全な分解が起
きる。しかし、酵素の希釈量(4×10-3U)では、約50、45、40、38、34、31、22
および18 kDaのところに主要なバンドを同定することができ、全体的なパターン
は、血清産物と同様であった(図9)。実際、酵素濃度が低いとトリプシンの分
解プロフィールは血清の分解パターンと実質的に同一に見えた。しかしSHELに対
するトリプシンの作用が強烈であるため、トリプシン分解を再現することは容易
でなかった。SHELδ26Aを用いても、カリクレインおよび血清について34kDa未満
の短い断片のサイズがすべて約4kDaずつ減少していたこと、および22kDaと18kDa
断片は15 kDaの単一の断片に置き換わっていたことを除けば同様の結果が得られ
た(図9)。
【0154】 ヒトプラスミン プラスミンを低濃度で用いても、血清およびトリプシンの両方で非常に類似し
たプロフィールが得られた(図10)が、高濃度では、広範な分解が起きた。低
濃度のプラスミンを用いて単離できた主要なバンドは、55、45、40、34、28、22
および18kDaであり、血清による分解産物と似ていたが同一ではなかった。SHEL
δ26Aを用いても、34kDa未満の短い断片が約4kDaずつ減少していたこと、および
22kDaと18kDa断片は17kDaと15 kDaの断片に置き換わっていたことを除けば同様
の結果が得られた(図10)。
【0155】 ヒト白血球エラスターゼ(HLE) HLEは、長期間放置されると、広範な分解を生じさせる。1.6×10-2Uを用いる
と、32 kDaと18kDaでの2つの顕著な断片とともに多くの断片が見られた(図1
1)。しかし断片を単離することは非常に困難で、すぐに過剰分解が起きた。SH
ELδ26Aも同様のプロフィールを生じたが、それぞれの断片が4kDaずつ短かった
(図11)。
【0156】 D.血清およびプロテアーゼのザイモグラム解析 血清によるSHELの分解に関与するプロテアーゼの実体を確かめるために、SHEL
を基質として用いたザイモグラムを使用して血清および特異的プロテアーゼによ
るSHELの分解を解析した(図16)。
【0157】 血清によって分解されたSHELのザイモグラムは64kDaのところにはっきりと透
明なゾーンを示し、それよりもずっとかすかな、もう一つの透明ゾーンを示した
(図16)。血清中では別の血清プロテアーゼと一致する透明ゾーンは検出され
なかった。この結果は、これらのプロテアーゼが血清中に豊富に存在すること、
およびザイモグラム中にプロテアーゼの分子がアンフォールドする程度による可
能性が高い。
【0158】 もう一つの透明ゾーンは、セリンプロテアーゼ阻害剤であるPMSFを解析に用い
ると見られなくなった。このことは、この第二の透明ゾーンがカリクレインによ
るSHELの分解に対応していることを示している。SHELに対するカリクレインの活
性をさらに確認するため、SHELを含むザイモグラムゲルで血清を電気泳動し、血
清を含むゲル断片を切り出して約3 mmのストリップにし、各ゲルストリップを30
mgのSHELとともに溶液中でインキュベートした。そして、上清をSDS-PAGEで解析
した。カリクレイン領域に対応するザイモグラム由来のゲルストリップから、カ
リクレインと一致するパターンが見られた(図示せず)。これによって、血清中
でのカリクレイン活性が確認された。
【0159】 血清によって分解されたSHELのザイモグラム解析で同定された64kDaゾーンは
、解析したどのセリンプロテアーゼにも対応しなかった。2次元ザイモグラム(
1次元等電点電気泳動ゲル)は、64kDaゾーンに対応する酵素の等電点がpI 5〜5
.5であることを示唆していた(データは示さず)。pIと分子量を組み合わせたス
イスプロット(SwissProt)データベース検索によって、64kDaゾーンに対応する
酵素はゼラチナーゼAまたはBであるらしいことが示された。ゼラチナーゼAまた
は血清で分解したゼラチンのザイモグラム解析は、64kDaに対応する分解ゾーン
を示した(図18)。これによって、さらに血清によって分解されたSHELのザイ
モグラム解析で見られた64kDaゾーンがゼラチナーゼAと一致することが確かめら
れる。ゼラチナーゼBに対応する透明ゾーンが、このザイモグラム解析において
異なった位置に見られた。血清で分解したゼラチンのザイモグラム解析では、64
kDaゾーンはEDTA存在下、または、CaCl2非存在下、あるいはZnCl2のみが存在す
るところでは見られなかった(図17)。分解液にCaCl2またはZnCl2を加えると
、64kDaゾーンが見られた(図17)。これらの結果は、さらに、血清によって
分解されたSHELのザイモグラム解析における64kDaゾーンに対応する酵素はゼラ
チナーゼAであるとの主張を裏付けている。活性化されていないゼラチナーゼAお
よびBとAPMAで活性化したゼラチナーゼAおよびBとをゼラチンのザイモグラフィ
ーによって解析した。非活性化ゼラチナーゼAによって分解されたゼラチンのザ
イモグラムでは、64kDaゾーンが見られた(図18)。このことは、SHELのザイ
モグラムを血清で分解したときに64kDaのところで見られるタンパク質分解活性
が、ゼラチナーゼAの非活性型に媒介されることを示した。APMAで活性化したゼ
ラチナーゼAにより分解されたゼラチンのザイモグラムでは、約60kDaに相当する
ゾーンが見られた(図18)。
【0160】 E.プロテアーゼ感受性部位のマッピング 図5から11において、矢印で示されたトロンビン、カリクレイン、プラスミ
ン、トリプシンおよび血清によって産生されるペプチドのN末端の配列を決定し
て、SHELの領域における位置を決めた。ペプチドは、SHELのN末端、またはリシ
ンまたはアルギニンのC末端側に隣接する切断部位に対応していた。表1に示し
、ペプチド配列を切断部位の位置を図1で図式的に示した。
【0161】 表1に示されている断片のkDaで示された実際のサイズを、アミノ酸配列によ
って決定して、括弧内に示した。これが、SDS-PAGEで決定した外見上のサイズと
異なる場合もある。面白いことに、515番目と516番目の残基(アルギニン
とアラニン)の間にある1部位は、トロンビンとカリクレインに共通していた。
さらにこの同じ部位はヒト血清によっても切断された。この部位は配列決定によ
って、26Aの内部に位置することが特定された。したがって、SHEL δ26Aでは、
カリクレインによって作出される第二の断片が存在しないことは、このアイソフ
ォームにこの部位が欠けていることと一致している。この他に血清によって作出
されるバンドで比較的主要でないものは特有であり、ペプチドの混合物からでき
ているように見えたため、命名は仮のものである。これらのペプチドは、SHELで
もSHELδ26Aでも同じサイズであり(図7)、それによりそれらが主にN末端側に
あったことまた他のペプチド断片はずっと低いレベルで存在していることを示し
ている。SHELδ26Aにおけるこれら他の部位での有意なタンパク質分解によって
、ペプチドのサイズが4kDa減少する結果になるが、これは明らかではなかった。
トリプシンとプラスミンで見られる激しい分解により、短い方の断片は配列決定
するに十分な量を単離することができなかった。しかし、断片のサイズにより、
トリプシンおよびプラスミンの22および18kDaの断片がおそらくカリクレインと
血清に対するのと同じ配列であろうことが示される。配列決定されたプラスミン
によって作出されるバンドはいずれも、同定された同じ配列で、他のプロテアー
ゼまたは血清では見られない配列の混合物であった。N末端側の配列も同様であ
る。プラスミンとトリプシンによって作出されるペプチドのすべてが、一義的に
同定できたわけではないので、これらの酵素については、切断の可能性のある領
域は図1に示していない。
【0162】 F.S-GalおよびSPS-ペプチドの分解に対する効果 SHELにおいて、トロンビン、カリクレイン、血清およびおそらくトリプシンと
プラスミンに共通すると固定された主要セリンプロテアーゼ部位(R/AAAGLG)を
、14アミノ酸のペプチドとして隣接するいくつかのアミノ酸残基(SPS-peptid
e)で作出した。これをSHELおよびSHELδ26Aのタンパク質分解液に加えて、この
ペプチドがプロテアーゼによって認識および切断される部位に代わる部位として
働くことによって、分解を阻害することができるか否かを測定した。さらに、EB
Pのエラスチン結合ドメインと一致する15アミノ酸のペプチドであるS-GALを作
製して、ブタすい臓エラスターゼの阻害(HinekおよびRabinovitch、1994)。は
、トロポエラスチンを分解することができる他のプロテアーゼに広げることがで
きるかどうかを測定した。SHELに対して100:1でモル過剰なSPS-ペプチドを用い
、トリプシン、プラスミン、カリクレインおよび血清を用いて対照と比較したと
ころ、SDS-PAGEによって見えるところから判断し、デンシトメトリーを走査して
確認したところによると、全長SHELの量が多くなることが明らかになった(図1
2)。この効果はインキュベーションする時間を短くする(20分間)と非常に
明白になり、SHELでもSHELδ26Aでも見られた(図示せず)。また、トロンビン
およびHLEを用いると、SPS-ペプチドはより多くの全長SHELを生じさせたが、そ
の程度は小さかった(図12)。トロンビンと長時間インキュベーションすると
いくらかの阻害を示すように見えた(図12)。しかし、HLEによる分解はイン
キュベーション時間を長くし、SPSペプチドによる阻害がもはや見られなくなっ
ても、S-GALによって一貫して阻害されるが、共には抑制されなかった(図12
)。
【0163】 G.SHELの分解に対するコアセルベーションの効果 SHELは、37℃でコアセルベーションされた状態にあるとき、トロンビンとカリ
クレイン両者による分解から有意に保護された(図13)が、プラスミンによる
分解には影響がなかった。HLF、トリプシンおよび血清の阻害もややあった(図
13)。37℃でコアセルベーションしないような低濃度のSHEL(図示せず)を用
いた対照反応、およびコアセルベーションを生じさせないような低い温度で行な
う反応ではNaClの有無にかかわらず分解に違いを生じなかったため、この分解阻
害は、反応混合液中に高濃度のNaClが存在することのよるものではなかった。
【0164】 考察 SHELの血清による分解の阻害実験 ヒト血清は、トロポエラスチンを分解して、特異的かつ再現性のある方法で少
なくとも5つまたは6つの主要なペプチド断片にすることができた。血清につい
て、SDS-PAGEにおけるバンド形成パターンは、外見上、Romeroら(1986)のパタ
ーンと似ていた。さまざまな阻害剤実験によって、広範なスペクトラムのセリン
プロテアーゼ阻害剤であるペファブロックSCとPMSFによって阻害することができ
るセリンプロテアーゼとなるプロテアーゼを確認した。
【0165】 EDTAが血清による分解を阻害できないことで、メタロプロテイナーゼ活性がSH
EL分解の主要な誘因ではないことが示唆されていた。実際、EDTAは血清による分
解をおそらく血清プロテアーゼ阻害剤の作用を調節することによって促進するよ
うに見えた。しかし、ゼラチナーゼAおよびゼラチナーゼBによって分解されたSH
ELのSDS-PAGE解析およびザイモグラム解析によって明らかになったところによれ
ば、SHELは、これらの酵素によって分解されるため、メタロプロテイナーゼが、
トロポエラスチンを分解することは明らかである。
【0166】 トロポエラスチンが傷害滲出物に曝露されたとき、メタロプロテイナーゼがタ
ンパク質分解活性の主な原因となると予想されている。実際、多くの実験によっ
て傷害滲出物中にはMMP-2(ゼラチナーゼA)およびMMP-9(ゼラチナーゼB)(Tar
ltonら、1997)などのメタロプロテイナーゼが存在することが示されている。し
たがって、本発明は、本発明に係る方法、派生体およびペプチド模倣分子を使用
することによって、傷害滲出物中でメタロプロテイナーゼによるトロポエラスチ
ンの分解を改変することを想定している。
【0167】 血清による分解が、トロンビン特異的阻害剤であるヒルジンによって実質的に
阻害されなかったため、トロンビンは、大部分の血清による分解の原因となると
は考えられなかったが、トロポエラスチンおよびトロンビンを用いた抑制は阻害
された。カリクレイン特異的なペファブロックPKは、分解を阻害した。Romeroら
(1986)は、トロポエラスチンをカリクレインとインキュベーションすると、血
清とインキュベーションしたときにやや類似したプロフィールが得られることを
発見した。したがって、ペファブロックPKを用いた本阻害剤実験は、カリクレイ
ンおよび/プロテアーゼとまたは関与する類似した挙動についての実験と矛盾し
ない。しかし、阻害剤であるペファブロックPKは、カリクレインに完全には特異
的ではない。製造業者によって提供されたデータによると、血漿カリクレインに
ついて阻害定数は0.7μmol/Lであり、カリクレインの次に阻害される可能性が最
も高い酵素はトリプシンは、その阻害定数は1.3μmol/Lとなり、そプラスミンの
10μmol/Lがそれに続く。したがって、ペファブロックPKは、過剰量存在すれば
、これらの酵素も分解するかもしれない。しかし、完全な阻害が見られる最低濃
度(50μM)が、血漿サンプル中のカリクレインを阻害するために、製造業者に
よって推奨された量であった。
【0168】 血清によるタンパク質分解の同定 多くの酵素が、血清によるトロポエラスチン分解の原因であると提唱されてき
た。カリクレイン(Romeroら、1986)およびプラスミン(McGowanら、1996)が
、タンパク質分解の原因である可能性があると提唱されてきた一方で、トロポエ
ラスチンを組織から分離したときに見られる分解産物の原因となるのはトリプシ
ン様プロテアーゼであると考えられていた(MechamとFoster 1977)。血清から
のSHEL分解産物を目視によって、それぞれのプロテアーゼによる分解産物と比較
すると、カリクレインおよびトロンビンによって産生されるペプチドとは、限ら
れた範囲でしか類似性のないことが明らかになったが、トリプシンとプラスミン
による分解の方は、低濃度で使用したときに限り、血清によって分解されるペプ
チドにより類似しているように見えた。濃度を高くしたり、インキュベートする
時間を長くしたりすると、血清とともに長時間インキュベートしてもパターンは
大して変化しなかったのとは対照的に、SHELとSHELδ26Aを完全に分解した。
【0169】 トロンビンの量を増加させると、SHELを簡単に分解したが、血清によって産生
されたペプチドでは5〜6種類の断片が見られたのとは異なり、3種類のみの主
要な断片が見られた。トロンビン特異的阻害剤であるヒルジンは血清による分解
を実質的には阻害しなかったという阻害剤実験から得られた観察結果と合わせる
と、トロンビンはSHELの血清によるタンパク質分解に関与する主要な酵素とは考
えられない。このことは、トロンビンによって認識される2つの部位のうち一つ
は血清にも同じように認識されるが、もう一つは認識されないということを示し
たペプチド産物の配列決定によって証明された。これは、トロンビンの濃度が低
いことによる結果であるかもしれないが、2つの部位が同程度に認識されるとは
考えにくい(図7)。
【0170】 同じように、カリクレインによる分解の後に見られるSHELのプロフィールは血
清によって生じるプロフィールと限られた範囲でのみ、すなわち、45kDaの断片
と約20kDaの2つの断片が現れるという点で類似性が示されたにすぎない。ペプ
チド配列決定によって、カリクレインによって認識される2つの部位が血清によ
って認識されることが示された。しかし、その他の血清によって産生される断片
は、そのうちのいくつかの断片は非常に低量存在したが、カリクレインによる分
解の主要産物とは思えなかった(図8)。カリクレインとともに長時間(一晩)
インキュベーションしても、他の断片の強度が増加することはなく、血清によっ
て分解されてできる産物との類似性が高くなることもなかった(図示せず)が、
このことは、カリクレインが、その他の血清によって産出される断片の原因であ
る可能性は少ないことを示唆している。配列決定データ、カリクレイン特異的プ
ロテアーゼ阻害剤、SDS-PAGEによって見える分解産物の様子はすべて、血清によ
る分解にカリクレインが関与していることと矛盾しない。しかし、カリクレイン
による分解の主要産物とは思えない、その他の血清ペプチド断片の存在は、カリ
クレインだけが、血清による分解で見られるパターンの原因ではないことを示唆
している。
【0171】 トロンビンおよびカリクレインとは対照的に、プラスミンおよびトリプシンに
よる処理は、広範な分解をもたらし、長時間のインキュベーションにより、SHEL
を完全に分解できた。プラスミンについて見られた分解プロフィールは、68 kDa
と45kDaのバンドのみが見られたという、McGowanら(1996)によって観察されたプ
ロフィールとは全く異なっていたが、このことは、McGowanらの場合にはそれほ
ど分解が進んでいなかったことを示唆している。これらの分解プロフィールはい
ずれも、トロンビンとカリクレインよりも、血清による産物の方によく似ていた
。目視によって検視したところ、トリプシンとプラスミンは、血清による分解に
も相互でもほぼ等しく見えたが、これは低濃度のときに限られた。
【0172】 プラスミンおよびトリプシンのペプチド配列を決定するのはやや困難であった
。プラスミンによって産生されるペプチドで配列決定したものは、配列決定した
ペプチド断片のすべてで同じであった、78/79および81/82(K/AAKおよびK/AGA)
の位置で重なり合う、少なくとも2つの配列の混合物からなることが分かった。
さらにSHELのN末端の配列も存在していることも、これらのペプチドを一義的に
同定することを非常に難しくした。それぞれの断片に全て同じペプチドが存在す
るのは、この配列が全ゲル中を他のペプチドと共に移動することから生じた各ペ
プチドの汚染によるアーティファクトかもしれない(J. McGovern、オーストリ
ア国立大学、ジョンカーティン医学研究大学院、生体分子資源学部(Biomolecul
ar Resource Facility、John Curtin School of Medical Research、Australian
National University)、私信)。これは、プラスミンによる激しい分解のため
、各断片について得られたペプチド量が低いことも影響していたのかもしれない
【0173】 同様に、低量であることと、解析度が低いこととが、短い方のトリプシンペプ
チドの配列を得にくくした。しかし、長い方の断片については、はっきりとした
配列データが得られ、それらは血清からの同一ペプチドの場合と同じように、す
べてN末端配列に対応していた。これをペファブロックPKが、制御された反応液
中でトリプシンを阻害することもできたとの観察所見(図示せず)と合わせてみ
ると、ペプチド断片の外見上類似していることは、トリプシン様酵素が、血清に
よるタンパク質分解に関与することと矛盾はしないが、より情報として役立つ短
い方の断片に関する配列データがないため、このことを明確に確認することはで
きない。同じように、外見上の類似は、プラスミンが関与することとも矛盾しな
いが、このことを配列決定によって確認することはできなかった。血清によるタ
ンパク質分解は、プラスミンまたはトリプシン単独の場合よりもより限定的であ
るため、このことは血清中では、おそらくトリプシン様活性の存在がずっと少な
かったり、より容易に破壊されたりすること、またはその両方を示唆している。
【0174】 HLEによる分解プロフィールも広範であるが、血清、トリプシン、およびプラ
スミンとは異なっていた。HLEは、セリンエラスターゼであり、主にバリン残基
を切断する(Keil、1992)。もっとも長い断片を含むほとんどの断片がSHELδ26
Aではより小さかったため、エラスターゼによる分解のSHELとSHELδ26Aの間での
差がより顕著であった。このことは、分解がN末端側から優先的に起きており、
その他の酵素や血清の場合とは同じでないと思われる。したがって、血清による
タンパク質分解へのHLE関与の可能性はない。
【0175】 ゼラチナーゼAおよびゼラチナーゼB(それぞれ、予めAPMAで処理した)によっ
てSHELを分解したところ、優先的に切断される断片のSDS-PAGEパターンが明らか
になった。これらのプロテアーゼのそれぞれに関するSDS-PAGE上でのバンド形成
パターンは類似していて、ゼラチナーゼAとゼラチナーゼBが一つの部位または一
致する部位で切断する可能性が高いことを示している。したがって、これらのメ
タロプロテイナーゼに関する配列特異性も似ていた。これらのパターンは、AMPA
で処理した血清、未処理血清およびセリンプロテアーゼとは異なっていた。MMP
による分解によって、複数のバンドが出現した。インキュベーション時間を延長
すると、トロポエラスチンは顕著な断片化を示した。
【0176】 まとめると、N末端の配列決定によって、血清の分解プロフィールとの比較に
よって分解プロフィールと、阻害剤の効果とを目視によって調査したところ、少
なくとも一つの別の酵素がおそらく低量存在しているということ、および同じよ
うな切断パターンを作り出すことのできるカリクレインおよび/またはプロテア
ーゼが関与していることと一致している。プラスミンまたは別のトリプシン様酵
素、またはそれらの酵素の組み合わせがSHELの血清による分解に関与している可
能性がもっとも高い。
【0177】 プロテアーゼ感受性部位のマッピング 別の研究者によって観察された精製トロポエラスチンの分解パターンは、本発
明者らのタンパク質分解実験によって作出されたペプチドのサイズとが類似して
いる。トリプシン様プロテアーゼによりMechamとFoster (1977)によって観察さ
れたサイズでは、トロポエラスチンの57、45、36、24.5および13〜14kDaという
サイズに関連しており、血清および各セリンプロテアーゼによってSHELおよびSH
ELδ26Aについて作出されるペプチドの数およびサイズと非常によく類似してい
る。このことは切断が、同一または一致した場所で起きていることを示唆してい
る。同様のプロフィールが、ヒト線維芽細胞の培養液由来のトロポエラスチン(
DavidsonとSephel、1987)で見られた。配列決定によって、515番目と516
番目の残基の間にある部位が、トロンビン、カリクレインおよび血清と共通して
おり、またSDS-PAGEパターンからすると、おそらくプラスミンおよびトリプシン
とも共通していることが確認された。配列決定したペプチドのすべてにより、多
くのセリンプロテアーゼについて予想されている通り、リシンとアルギニンの後
で切断が起きることが確認された(Keil、1992)。トロポエラスチンは、多数の
リシンとアルギニンを含んでいるが、これら残基のほんの少数が実際に認識され
て切断された。これら同一の部位が異なったセリンプロテアーゼによって認識さ
れうるという事実は、それらの接近容易性および/または周囲のアミノ酸が原因
なのかもしれない。
【0178】 カリクレインとトロンビンに関して好ましい認識部位は、隣接するアミノ酸残
基によって強く影響される(Chang、1985; Keil、1992)が、先見的にヒトトロ
ポエラスチンのどこで優先的な切断が起きるのかを予測することは、まだ可能で
はないだろう。例えば、カリクレインは、かさ高い残基が前にあるアルギニン残
基のところで優先的に切断する(Keil、1992)。N末端配列決定によって同定さ
れた部位は、515番目のところではLeu-Argに、564番目のところではArg-A
rgになっていて、いずれもこの範疇に含まれる。しかし、例えばロイシンが前に
あるアルギニンは571番目にもあるが、認識されないようである。カリクレイ
ンがSHELおよびSHELδ26Aを高度に特異的かつ限定的にタンパク質を分解するこ
とから、さらなる研究のため、トロポエラスチンの単離C末端部位を作出するた
めにカリクレイン処理を用いることが可能になった(S. JensenおよびA.S. Weis
s、未発表)。しかし同定されたトロンビン認識部位はトロンビンにとって優先
的な部位に適合しない。トロンビンは、リシンよりアルギニンをはるかに優先し
て(Keil、1992)、P2またはP1'がグリシンであるときは、P2-Lys/Arg-P1'を、P
4およびP3が疎水基で、P1'およびP2'が非酸性残基であるときはP4-P3-Pro-Arg/L
ys-P1'-P2"を優先的に認識する(Chang、1985)。SHELとSHELδ26Aは、いずれも
この部位に正確に一致する部位を含んでいないが、152番目のところの部位(L
ys-Pro-Lys-Ala-Pro)が、後者の認識部位P3-Pro-Lys-P1'-P2'に類似している。
したがって、どの部位が認識され、切断されるかは、トロポエラスチンの二次構
造に影響されよう。トリプシンはよりアルギニンを優先しつつもアルギニンとリ
シンのところで主に切断するが、プラスミンは、リシンを優先的に切断する(Ke
il、1992)。トロポエラスチンではアルギニンよりもリシンの数の方が多いので
、これらのプロテアーゼは、この例で明らかなように、より広範に切断するであ
ろうと予測できる。
【0179】 分解からの保護 実験によって、EBPは主にトロポエラスチンのVGVAPG配列に結合することによ
って、トロポエラスチンを分解から保護することができることが示されている(
Mechamら、1989)。EBPのエラスチン結合部位を代表するペプチドS-GALが、以前
から相互作用のモデルに用いられてきた(HinekとRabinovitch、1994)。S-GAL
およびEBPがカリクレイン、HLE、およびプラスミンのようなプロテアーゼのN末
端配列といくらかの相同性をもつことが注目されているためトロポエラスチン中
の同じ配列にも結合して、プロテアーゼの競合阻害剤として作用するという提唱
がなされている(HinekとRabinovitch、1994;Hinekら、1993 )。HinekとRabino
vitch(1994)は、ブタすい臓エラスターゼによるエラスチン分解をS-GALが有意に
阻害できることを示し、HLEやその他のセリンプロテアーゼも同様にトロポエラ
スチン分解を阻害されうるという推定がなされた。本研究では、S-GALを使用し
ても血清、トリプシン、プラスミンまたはカリクレインによるSHELまたはSHELδ
26Aの有意な、または一貫したタンパク質分解阻害は示されなかった。ただし、
トロンビンではやや阻害が見られた。HLEでは有意かつ再現可能な阻害が見られ
たが、大過剰量のS-GALを用いても分解を完全に阻害することはできなかった。
使用したS-GALはHPLC精製して欠失産物をすべて取り除いたものであるから、こ
の処理によってペプチドが損傷を受けたか、不可逆的に変性してしまった可能性
もある。しかし、HPLC精製しなかったS-GALも、同様の結果を示した(図示せず
)。製造業者から提供された質量分析データによれば、正しい産物が合成されて
いた。したがって、S-GALはSHELまたはSHELδ26Aにあまり効果的に結合しなかっ
たか、プロテアーゼによって簡単に置換されてしまった。あるいは、プロテアー
ゼはトロポエラスチンの一つ以上の部位に結合しうることができるため、S-GAL
による影響を受けなかったのかもしれない。
【0180】 まとめると、S-GALは、HLEおよびトロンビンによるトロポエラスチン分解の一
部阻害を示したが、ブタすい臓エラスターゼを用いたHinekとRabinovitch (1994
)によって観察されたような徹底した阻害は起こらなかった。その他のプロテア
ーゼと血清のより広範阻害は一貫して見られなかった。N末端配列決定によって
、トロンビン、カリクレイン、血清、および、おそらくトリプシンとプラスミン
によって共通に認識された一つの部位がSHELにおいて明らかになった。この部位
およびそれに隣接するアミノ酸を合成して、このSPS-ペプチドを、SHELおよびSH
ELδ26Aのタンパク質分解する物に添加した。このペプチドがトロポエラスチン
に結合するとは予想されず、単にプロテアーゼによって認識されることで競合物
質として作用して、SHELおよびSHELδ26Aの分解を遅延させると考えられた。SPS
-ペプチドが存在することによって、SHELおよびSHELδ26Aの分解から保護された
という再現性のある証拠があった。全長タンパク質の量は、SPS-ペプチドが存在
するときの方が、S-GAL存在下または対照用分解におけるよりも多く、この結果
はどちらのアイソフォームについても同様であった。この結果は酵素濃度が低い
か、インキュベーション時間が短いときに最も顕著であり、トリプシン、プラス
ミン、カリクレインおよび血清でもっとも明白であった。ただし、低レベルであ
ったがその他のプロテアーゼからの保護も見られた。このことは、プロテアーゼ
および血清のそれぞれが、このペプチドをある程度認識することができるため、
これがトロポエラスチンのタンパク質分解阻害剤となる可能性があることを示し
ている。
【0181】 SPS-ペプチドがプロテアーゼによって切断されるとの直接的な証拠はない。し
かし、別のペプチド(S―GAL)が同じような量存在していても、同一の効果を発
揮しなかった。したがって、SPS-ペプチドのこの効果は、おそらくペプチドが反
応液中に非特異的に存在していたことによると単純にはいえないであろう。した
がって、SPS-ペプチドはプロテアーゼ(またはトロポエラスチン)と直接的に相
互作用して効果を発揮する可能性が高い。SPS-ペプチドは、ヒト血清などのプロ
テアーゼ存在下でもより長い時間トロポエラスチンの完全長を保持させることが
できる。
【0182】 まとめると、S-GALによるSHELおよびSHELδ26Aの分解阻害は、HLEで有意に見
られただけで、それ以上の徹底的な保護は見られなかった。しかし、SPS-ペプチ
ド存在下ではそれぞれのプロテアーゼと血清について再現性のある阻害が見られ
、トリプシン、カリクレインおよび血清で最も顕著であった。このペプチドは、
プロテアーゼとの相互作用を行なうもう一つの部位を提供し、全長トロポエラス
チンをより長期間存続させる結果をもたらす。
【0183】 コアセルベーションされたトロポエラスチンのタンパク質分解 SHELおよびSHELδ26Aを37℃でコアセルベーションすると、カリクレインおよ
びトロンビンによるタンパク質分解から有意に保護され、程度は低いがHLE、ト
リプシンおよび血清によるタンパク質分解からも保護される。プラスミンによる
攻撃からの保護は見られなかった。コアセルベーションを起こさないような条件
下(16℃)で行なった同じ反応液も、NaClの有無にかかわらず同程度に分解され
たため、150mM NaClが存在することが阻害の原因とは思えなかった。37℃で起き
る高次構造の単純な変化がタンパク質分解に対する感受性を変化させるのかもし
れないが、コアセルベーションしたSHELとコアセルベーションしていないSHELは
37℃で、異なる速度で分解されたため、この可能性は考えにくい。したがって、
タンパク質分解の阻害は、おそらくコアセルベート中での立体的制約が原因であ
ろう。調べた酵素の中で、カリクレインの活性が最も有意にコアセルベーション
によって阻害された。N末端側の配列決定結果から、カリクレインは主にSHEL中
の2つの部位のみを認識するだけで、その部位は近接していて、SHELδ26Aには
一つしか存在しないことがわかった。トロポエラスチンをコアセルベーションす
ると、これらの部位がカリクレインにとっては接触しにくくなると考えられる。
トロンビンについてはカリクレインほど阻害が完全ではない。トロンビンもSHEL
中の2つの部位を主に認識するが、これらは互いにもっと離れている。コアセル
ベーションの過程で、これらの部位がマスクされるのかもしれないが、どちらか
の部位が少しでもタンパク質分解を受けやすくなっていれば、その部位が結果的
に容易に接触を許すことになろう。他のプロテアーゼ(HLE、トリプシン、プラ
スミン)および血清は、SHEL中のもっと多くの部位を認識し切断するため、コア
セルベーションによってすべての部位を効果的にマスクするということは考えに
くく、いくつかの部位は認識とタンパク質分解を起こすために利用できる状態の
ままとなる。したがって、これらのプロテアーゼは、コアセルベーションによっ
て有意には阻害されない。これらの結果は、細胞外基質においてトロポエラスチ
ンをコアセルベーションすれば、ヒト血清によって生じるタンパク質分解などの
分解からある程度の保護を提供することによって、すでに提案された役割に、も
う一つの役割を追加する役に立つことを示唆している。これらの結果を生成中の
弾性線維にまで広げれば、ここでは新しくコアセルベーションされたトロポエラ
スチンは、細胞外プロテアーゼから広範に保護され、その後架橋によってこの保
護を本質的に永久的なものとすることができる。
【0184】 血清によるトロポエラスチン分解の考えられる結果 これらの結果およびその他の結果から、血清にはトロポエラスチンを分解する
ことのできる成分が含まれていることが明らかである。本明細書において、ヒト
血液中に存在する多くのセリンプロテアーゼが、特異的かつ再現性のある方法な
様でトロポエラスチンを分解できることが示された。したがって、トロポエラス
チンは、細胞によって細胞外基質に分泌されると、リシルオキシダーゼによって
不溶化され、架橋される前に、広範な分解を受ける。このことは、正常な血液凝
固過程でこれらのプロテアーゼを多数含みうる損傷血管において特に重要である
。この時分泌されたトロポエラスチンは例えばEBPやコアセルベーションによっ
て保護されていない場合、断片化される。これらの結果は、コアセルベーション
が、実際にコアセルベーションされたSHELの分解阻害で見られるような、分解か
らの何らかの保護を提供しうることを示唆している(図13)。しかし、保護は
、決して完全ではない。トロポエラスチンは、負のフィードバック自己調節を受
けているかもしれず、細胞外基質に蓄積するとエラスチンmRNAの産生を阻害す
るかもしれないと以前から示唆されている(FosterとCurtiss、1990)。プロテ
アーゼで損傷した培養細胞中でトロポエラスチン産生を活性化させながら、エラ
スターゼなどのプロテアーゼによって産生されるエラスチンペプチドを、損傷を
受けていない線維芽細胞培養液に加えると、負のフィードバック阻害を生じるこ
とが分かっている(Fosterら、1990)。セリンプロテアーゼ媒介のトロポエラス
チンのタンパク質分解が、トロポエラスチン産生の重要な調節因子であるかもし
れないこと、およびプラスミンがこの過程に関与しているかもしれないことが示
唆されている(McGowan ら、1996)。本発明者らの結果は、提案された特異的酵
素が少し異なるが、この提案と一致する。
【0185】 血清中で同定された切断のほとんどが、トロポエラスチン分子のC末端側の半
分で起きること、および大きい方の断片のほとんどが、N末端由来であることを
考えると興味深い(図1、表1)。したがって、血清中におけるトロポエラスチ
ンに対するプロテアーゼの作用は、大きなN末端にセグメントを残しながら、C
末端部位を分解するときに役に立つ。微小線維タンパク質との結合に関与するこ
とが分かっている、高度に保存されたC末端がないため、これら短くなった分子
は、新しく合成されたり増殖している弾性線維に取り込まれることはないかもし
れない(Brown-Ausburger ら、1996; 1994)。これは、エラスチン遺伝子の欠損
がトロポエラスチンのC末端を失わせ、それによって重度の動脈疾患を惹起する
弁下部大動脈狭窄症の場合と似ている(Ewart ら、1994)。同様に、ヒツジ胎児
動脈症では、C末端を欠損しトロポエラスチンが弾性線維に取り込まれなくなる
(HinekとRabinovitch、1993)。したがって、ヒトトロポエラスチンに対する血
清の作用は、不溶化されず、細胞外基質の中で存続できるようなトロポエラスチ
ン分子をもたらす。架橋した線維は、不適切に配置されると異常になり、弾性と
強度を失う結果となることがある。可溶性ペプチドを保持することは、負のフィ
ードバック阻害によって、更なるトロポエラスチンの産生を阻害するのに役立つ
のかもしれない(FosterとCurtiss、1990)。同時に、いくつかの研究(Bisacci
a ら、1994; GrossoとScott、1993)によって示されたように、ペプチドには走
化性があり、組織修復細胞を傷害部位に送り込む上で役に立ち、傷の修復を促進
するのかもしれない。走化性ペプチドは、例えばSHELおよび SHELδ26Aとはその
効果が異なるのかもしれない。
【0186】 結論 ヒト血清は、SHELおよび SHELδ26Aを多数の別々の断片に分解できることが示
された。この活性がセリンプロテアーゼに由来することが確認され、また血清に
対して感受性のある領域が、N末端の配列決定によって、正確にマッピングされ
た。その他多くのセリンプロテアーゼが、SHELおよび SHELδ26Aを分解できるこ
とが示された。分解パターン、選択的な阻害剤の使用およびN末端の配列決定か
ら、血清による分解の原因となるプロテアーゼは、トリプシン様プロテアーゼと
一致するが、カリクレインまたはカリクレイン様の挙動も原因因子である可能性
がある。S-GALを用いると、トロンビンとHLE以外でタンパク質分解を有意または
一貫して阻害することはできなかったが、SPS-ペプチドによって再現性のある阻
害が提供された。しかし、コアセルベーション処理が血清などによるタンパク質
分解に対するもっとも有意な保護を提供することが分かり、限られた数の部位を
切断するプロテアーゼでもっとも顕著であることが示された。
【0187】 明らかに好ましい切断部位で再現性のあるパターンを生じさせる、メタロプロ
テイナーゼによるSHELおよび SHELδ26Aの切断が明らかになった。
【0188】 産業上の利用可能性 本発明に係る派生体および発現産物は、医療、製薬、獣医学および化粧品の分
野で、組織の増量剤、および特に平滑筋細胞、上皮細胞、内皮細胞、線維芽細胞
、骨細胞、軟骨細胞および血小板における、細胞の化学走性、増殖、および増殖
阻害のための薬剤としてとりわけ有用である。
【表1】
【参考文献】
【配列表】
【図面の簡単な説明】
【図1】 血清、カリクレインおよびトロンビンについてN末端配列の決定により同定さ
れたプロテアーゼ部位の相対位置を示す模式図を示す。
【図2a】 SHELのヌクレオチド配列とアミノ酸配列とを示す。
【図2b】 SHELのヌクレオチド配列とアミノ酸配列とを示す。
【図2c】 SHELのヌクレオチド配列とアミノ酸配列とを示す。
【図2d】 SHELのヌクレオチド配列とアミノ酸配列とを示す。
【図2e】 SHELのヌクレオチド配列とアミノ酸配列とを示す。
【図3】 SHELのアミノ酸配列と比較したSHELδ26Aのアミノ酸配列(下側の配列)を示
す。
【図4a】 SHEδLmodのヌクレオチド配列とアミノ酸配列とを示す。
【図4b】 SHELδmodのヌクレオチド配列とアミノ酸配列とを示す。
【図4c】 SHELδmodのヌクレオチド配列とアミノ酸配列とを示す。
【図5】 血清とともに1、2、3または18時間インキュベートした後のSHELを10%SD
S-PAGEで解析した結果を示す(レーン1から4)。
【図6】 血清によるSHEL分解に対するプロテアーゼ阻害剤の効果を8%SDS-PAGEで解析
した結果を示す。
【図7】 SHELおよびSHELδ26Aに対するトロンビンの効果を8%SDS-PAGEで解析した結果
を示す。
【図8】 SHELおよびSHELδ26Aに対するカリクレインの効果を8%SDS-PAGEで解析した結
果を示す。
【図9】 SHELおよびSHELδ26Aに対するウシトリプシンの効果を10%SDS-PAGEで解析し
た結果を示す。
【図10】 SHELおよびSHELδ26Aに対するプラスミンの効果を10%SDS-PAGEで解析した結
果を示す。
【図11】 SHELおよびSHELδ26Aに対するヒト白血球エラスターゼ(HLE)の効果を10%SD
S-PAGEで解析した結果を示す。
【図12】 A:血清、1/2希釈、20分間;B:トリプシン、20分間;C:プラスミン、1.5×1
0-5ユニット、 20分間;D:カリクレイン、15×10-4ユニット、40分間;E:ト
ロンビン0.1ユニット、20分間;F:HLE、70分間によるSHEL分解に対するS-GALお
よびSPS-ペプチドの効果を10%SDS-PAGEで解析した結果を示す。
【図13】 プロテアーゼによるSHEL分解に対するコアセルベーションの効果をSDS-PAGEで
解析した結果を示す。
【図14】 GST-SHELを含む可溶性細胞溶解質のトロンビンによる切断効果を8%SDS-PAGE
で解析した結果を示す。
【図15】 pSHELFδ26Aを構築するための概要を示す。
【図16】 血清(レーン1)、ペファブロックSC添加の血清(レーン2)またはカリクレ
イン(レーン3)で分解したSHELのザイモグラム解析の結果を示す。
【図17】 Ca2+(レーン1)、Zn2+(レーン2)、Ca2+とZn2+(レーン3)、およびCa2+
、Zn2+ およびEDTA(レーン4)存在下での血清によるゼラチン分解のザイモグ
ラム解析の結果を示す。
【図18】 AMPAで活性化したゼラチナーゼA(レーン1)、非活性化ゼラチナーゼA(レー
ン2)、および血清(レーン3)によるゼラチン分解のザイモグラム解析の結果
を示す。
【図19】 溶液中における、SHELのプロテアーゼ分解の結果を示す。
【図20】 尿素存在下または非存在下でのリン酸ナトリウム緩衝液(pH 7.8)中における
、SHELのヒト血清カリクレイン分解の結果を示す。
【手続補正書】特許協力条約第34条補正の翻訳文提出書
【提出日】平成12年7月24日(2000.7.24)
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】特許請求の範囲
【補正方法】変更
【補正内容】
【特許請求の範囲】
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C07K 14/78 C07K 19/00 19/00 C12N 1/15 C12N 1/15 1/19 1/19 1/21 1/21 C12P 21/02 C 5/10 A61K 37/12 15/09 ZNA C12N 5/00 A C12P 21/02 15/00 ZNAA (81)指定国 EP(AT,BE,CH,CY, DE,DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,I T,LU,MC,NL,PT,SE),OA(BF,BJ ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GW,ML, MR,NE,SN,TD,TG),AP(GH,GM,K E,LS,MW,SD,SL,SZ,UG,ZW),E A(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ ,TM),AE,AL,AM,AT,AU,AZ,BA ,BB,BG,BR,BY,CA,CH,CN,CU, CZ,DE,DK,EE,ES,FI,GB,GD,G E,GH,GM,HR,HU,ID,IL,IN,IS ,JP,KE,KG,KP,KR,KZ,LC,LK, LR,LS,LT,LU,LV,MD,MG,MK,M N,MW,MX,NO,NZ,PL,PT,RO,RU ,SD,SE,SG,SI,SK,SL,TJ,TM, TR,TT,UA,UG,US,UZ,VN,YU,Z A,ZW

Claims (86)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 タンパク質分解に対するトロポエラスチンまたはトロポエラ
    スチン変異体の感受性を低下または消失させる方法であり、トロポエラスチンま
    たはトロポエラスチン変異体の部分配列に変異を生じさせることにより、タンパ
    ク質分解に対するトロポエラスチンまたはトロポエラスチン変異体の感受性を低
    下または消失させる方法。
  2. 【請求項2】 1つの部分配列を変異させる、請求項1に記載の方法。
  3. 【請求項3】 部分配列中の1つのアミノ酸残基を変異させる、請求項1に記
    載の方法。
  4. 【請求項4】 部分配列がセリンプロテアーゼによって分解されることがで
    きる、請求項1に記載の方法。
  5. 【請求項5】 部分配列が、RAAAG配列を含むアミノ酸配列をもつ、請
    求項4に記載の方法。
  6. 【請求項6】 RAAAG配列中のアルギニンをアラニンに置換することに
    よって部分配列に変異を生じさせる、請求項5に記載の方法。
  7. 【請求項7】 部分配列が、配列番号17から44で示される配列グループ
    から選択されるアミノ酸配列をもつ、請求項4に記載の方法。
  8. 【請求項8】 配列番号17から44で示される配列グループから選択され
    る配列中のアルギニンをアラニンに置換することによって部分配列を変異させる
    、請求項7に記載の方法。
  9. 【請求項9】 部分配列がトロンビンによって分解されることができ、かつ
    配列番号8または9で示されるアミノ酸配列をもつ、請求項4に記載の方法。
  10. 【請求項10】 部分配列がプラスミンによって分解されることができ、か
    つ配列番号11または12で示されるアミノ酸配列をもつ、請求項4に記載の方
    法。
  11. 【請求項11】 部分配列がカリクレインによって分解されることができる
    、請求項4に記載の方法。
  12. 【請求項12】 部分配列が、配列番号9または10で示されるアミノ酸配
    列をもつ、請求項11に記載の方法。
  13. 【請求項13】 部分配列がメタロプロテイナーゼによって分解されること
    ができる、請求項1に記載の方法。
  14. 【請求項14】 部分配列が、ALAAA配列を含むアミノ酸配列をもつ、
    請求項13に記載の方法。
  15. 【請求項15】 ALAAA配列中のいずれかの位置にあるアラニンを別の
    アミノ酸残基に置換することによって部分配列を変異させる、請求項14に記載
    の方法。
  16. 【請求項16】 ALAAA配列中のロイシンに対してN末端側にあるアラ
    ニンを別のアミノ酸残基に置換することによって部分配列を変異させる、請求項
    15に記載の方法。
  17. 【請求項17】 部分配列が、配列番号45から70で示される配列グルー
    プから選択されるアミノ酸配列をもつ、請求項13に記載の方法。
  18. 【請求項18】 配列番号45から70で示される配列グループから選択さ
    れる配列中のいずれかの位置にあるアラニンを別のアミノ酸残基に置換すること
    によって部分配列を変異させる、請求項17に記載の方法。
  19. 【請求項19】 置換されるアラニンが、ロイシンに対してN末端側にある
    、請求項18に記載の方法。
  20. 【請求項20】 部分配列がゼラチナーゼAまたはBによって分解されるこ
    とができる、請求項13に記載の方法。
  21. 【請求項21】 部分配列が、配列番号13で示されるアミノ酸配列をもつ
    、請求項20に記載の方法。
  22. 【請求項22】 トロポエラスチンがヒトのトロポエラスチンである、請求
    項1から21のいずれかに記載の方法。
  23. 【請求項23】 トロポエラスチンまたはトロポエラスチン変異体のアミノ
    酸配列を含む派生体であり、変異された部分配列を含むことによりタンパク質分
    解に対するトロポエラスチンまたはトロポエラスチン変異体の感受性と比較して
    、タンパク質分解に対する派生体の感受性が低下または消失している派生体。
  24. 【請求項24】 1つの部分配列を変異させる、請求項23に記載の派生体
  25. 【請求項25】 部分配列中の1つのアミノ酸残基が変異している、請求項
    23に記載の派生体。
  26. 【請求項26】 変異部分配列が、セリンプロテアーゼによる分解に対する
    感受性を低下または消失させている、請求項23に記載の派生体。
  27. 【請求項27】 配列中のアルギニンがアラニンに置換されることを条件に
    変異部分配列がRAAAG配列を含む、請求項26に記載の派生体。
  28. 【請求項28】 配列中のアルギニンがアラニンに置換されることを条件に
    、変異部分配列が、配列番号17から44で示される配列グループから選択され
    る配列をもつ、請求項26に記載の派生体。
  29. 【請求項29】 変異部分配列が、トロンビンによる分解に対する感受性を
    低下または消失させており、かつ、配列中のアミノ酸残基が変異していることを
    条件に配列番号8または9で示される配列をもつ、請求項26に記載の派生体。
  30. 【請求項30】 変異部分配列が、プラスミンによる分解に対する感受性を
    低下または消失させており、かつ、配列中のアミノ酸残基が変異していることを
    条件に配列番号11または12で示される配列をもつ、請求項26に記載の派生
    体。
  31. 【請求項31】 変異部分配列が、カリクレインによる分解に対する感受性
    を低下または消失させている、請求項26に記載の派生体。
  32. 【請求項32】 配列中のアミノ酸残基が変異していることを条件に、変異
    部分配列が、配列番号9または10で示される配列をもつ、請求項31に記載の
    派生体。
  33. 【請求項33】 変異部分配列が、メタロプロテイナーゼによる分解に対す
    る感受性を低下または消失させている、請求項23に記載の派生体。
  34. 【請求項34】 配列中のいずれかの位置にあるアラニンが別のアミノ酸残
    基に置換されていることを条件に、変異部分配列がALAAA配列を含む、請求
    項33に記載の派生体。
  35. 【請求項35】 アラニンを別のアミノ酸残基に置換することによって、ロ
    イシンに対してN末端側にあるアラニンが変異している、請求項34に記載の派
    生体。
  36. 【請求項36】 配列中のいずれかの位置にあるアラニンが別のアミノ酸残
    基に置換されていることを条件に、変異部分配列が、配列番号45から70で示
    される配列グループから選択される配列である、請求項33に記載の派生体。
  37. 【請求項37】 アラニンを別のアミノ酸残基に置換することによって、ロ
    イシンに対してN末端側にあるアラニンが変異している、請求項36に記載の派
    生体。
  38. 【請求項38】 変異部分配列が、ゼラチナーゼAまたはBによる分解に対
    する感受性を低下または消失させている、請求項33に記載の派生体。
  39. 【請求項39】 配列中の少なくとも1つのアミノ酸残基が変異しているこ
    とを条件に、変異部分配列が配列番号13で示される配列をもつ、請求項38に
    記載の派生体。
  40. 【請求項40】 アラニンを別のアミノ酸残基に置換することによって、ロ
    イシンに対してN末端側にあるアラニンが変異していることを条件に、部分配列
    が、配列番号13で示される配列をもつ、請求項39に記載の派生体。
  41. 【請求項41】 トロポエラスチンがヒトのトロポエラスチンである、請求
    項23から40いずれかに記載の派生体。
  42. 【請求項42】 タンパク質分解に対するトロポエラスチンまたはトロポエ
    ラスチン変異体の感受性を高める方法であり、トロポエラスチンまたはトロポエ
    ラスチン変異体に部分配列を挿入することにより、タンパク質分解に対するトロ
    ポエラスチンまたはトロポエラスチン変異体の感受性が高まるようにする方法。
  43. 【請求項43】 1つの部分配列が挿入されている、請求項42に記載の方
    法。
  44. 【請求項44】 挿入部分配列がセリンプロテアーゼによって分解されるこ
    とができる、請求項42に記載の方法。
  45. 【請求項45】 挿入部分配列が、RAAAG配列を含むアミノ酸配列をも
    つ、請求項44に記載の方法。
  46. 【請求項46】 挿入部分配列が、配列番号17から44で示される配列グ
    ループから選択されるアミノ酸配列をもつ、請求項44に記載の方法。
  47. 【請求項47】 挿入部分配列がトロンビンによって分解されることができ
    、かつ配列番号8または9で示されるアミノ酸配列をもつ、請求項44に記載の
    方法。
  48. 【請求項48】 挿入部分配列がプラスミンによって分解されることができ
    、かつ配列番号11または12で示されるアミノ酸配列をもつ、請求項44に記
    載の方法。
  49. 【請求項49】 挿入部分配列がカリクレインによって分解されることがで
    きる、請求項44に記載の方法。
  50. 【請求項50】 挿入部分配列が、配列番号9または10で示されるアミノ
    酸配列をもつ、請求項49に記載の方法。
  51. 【請求項51】 挿入部分配列がメタロプロテイナーゼによって分解される
    ことができる、請求項42に記載の方法。
  52. 【請求項52】 挿入部分配列が、ALAAA配列を含むアミノ酸配列をも
    つ、請求項51に記載の方法。
  53. 【請求項53】 挿入部分配列が、配列番号45から70で示される配列グ
    ループから選択されるアミノ酸配列をもつ、請求項51に記載の方法。
  54. 【請求項54】 挿入部分配列がゼラチナーゼAまたはBによって分解され
    ることができる、請求項51に記載の方法。
  55. 【請求項55】 挿入部分配列が、配列番号13で示されるアミノ酸配列を
    もつ、請求項54に記載の方法。
  56. 【請求項56】 トロポエラスチンがヒトのトロポエラスチンである、請求
    項42から55のいずれかに記載の方法。
  57. 【請求項57】 トロポエラスチンまたはトロポエラスチン変異体のアミノ
    酸配列を含む派生体であり、タンパク質分解に対するトロポエラスチンまたはト
    ロポエラスチン変異体の感受性と比較して、タンパク質分解に対する派生体の感
    受性を高める挿入部分配列を含む派生体。
  58. 【請求項58】 アミノ酸配列が1つの挿入部分配列を含む、請求項57に
    記載の派生体。
  59. 【請求項59】 挿入部分配列がセリンプロテアーゼによって分解されるこ
    とができる、請求項57に記載の派生体。
  60. 【請求項60】 挿入部分配列がRAAAG配列を含む、請求項59に記載
    の派生体。
  61. 【請求項61】 挿入部分配列が、配列番号17から44で示される配列グ
    ループから選択される配列である、請求項59に記載の派生体。
  62. 【請求項62】 挿入部分配列が、トロンビンによって分解されることがで
    き、かつ配列番号8または9で示される配列をもつ、請求項59に記載の派生体
  63. 【請求項63】 挿入部分配列が、プラスミンによって分解されることがで
    き、かつ配列番号11または12で示される配列をもつ、請求項59に記載の派
    生体。
  64. 【請求項64】 挿入部分配列がカリクレインによって分解されることがで
    きる、請求項59に記載の派生体。
  65. 【請求項65】 挿入部分配列が、配列番号9または10で示される配列を
    もつ、請求項64に記載の派生体。
  66. 【請求項66】 挿入部分配列がメタロプロテイナーゼによって分解される
    ことができる、請求項57に記載の派生体。
  67. 【請求項67】 挿入部分配列がALAAA配列を含む、請求項66に記載
    の派生体。
  68. 【請求項68】 挿入部分配列が、配列番号45から70で示される配列グ
    ループから選択される配列である、請求項66に記載の派生体。
  69. 【請求項69】 挿入部分配列が、ゼラチナーゼAまたはBによって分解さ
    れることができる、請求項66に記載の派生体。
  70. 【請求項70】 挿入部分配列が、配列番号13で示される配列をもつ、請
    求項66に記載の派生体。
  71. 【請求項71】 トロポエラスチンがヒトのトロポエラスチンである、請求
    項57から70のいずれかに記載の派生体。
  72. 【請求項72】 タンパク質分解に対するポリペプチドの感受性を高める方
    法であり、トロポエラスチンの感受性領域に一致するアミノ酸配列を該ポリペプ
    チドに挿入することにより、タンパク質分解に対する該ポリペプチドの感受性を
    高める方法。
  73. 【請求項73】 対応するポリペプチドと比較して、タンパク質分解に対し
    て高い感受性を示すポリペプチド派生体であり、トロポエラスチンの感受性領域
    のアミノ酸配列に一致するアミノ酸配列を該ポリペプチドに挿入することにより
    、タンパク質分解に対する該ポリペプチドの感受性を高めることを特徴とするポ
    リペプチド派生体。
  74. 【請求項74】 キメラ派生体を製造する方法であり、請求項23、57ま
    たは73のいずれかに記載の派生体を、トロポエラスチンの感受性領域のアミノ
    酸配列と一致するアミノ酸配列によって、ペプチドと結合させることを含む方法
  75. 【請求項75】 請求項23、57または73のいずれかに記載の派生体を
    含むキメラ派生体であり、トロポエラスチンの感受性領域のアミノ酸配列と一致
    するアミノ酸配列によって、ペプチドドメインと結合されているキメラ派生体。
  76. 【請求項76】 KAPGVGGAF、RAAAGLG、RSLSPELREGD、KAAQFGLVPGV、KSAAKV
    AAKAQLRAA、RSLSPELREおよびLAAAKAAKYGAAからなるグループから選択されるペプ
    チドの全てまたは一部を含むペプチド模倣分子。
  77. 【請求項77】 H-Ala-Ala-Lys-Ala-Gln-Leu-Arg-Ala-Ala-Ala-Gly-Leu-Gl
    y-Ala-OH または H-Ala-Ala-Lys-Ala-Gln-Leu-Arg-R-Ala-Ala-Ala-Gly-Leu-Gly-
    Ala-OH(ここで、Rは還元されたペプチド結合)という配列をもつペプチド模倣
    分子。
  78. 【請求項78】 H-D-Ala-Gly-D-Leu-Gly-D-Ala-D-Ala-D-Ala-(R)-D-Arg-D-
    Leu-D-Gln-D-Ala-D-Lys-D-Ala-D-Ala-OH(ここで、Rは還元されたペプチド結合
    )または H-D-Ala-Gly-D-Leu-Gly-D-Ala-D-Ala-D-Ala-D-Arg-D-Leu-D-Gln-D-Ala
    -D-Lys-D-Ala-D-Ala-OHという配列をもつレトロ−インベルソ(retro-inverso)
    シュードペプチドであるペプチド模倣分子。
  79. 【請求項79】 H-Val-Pro-Gly-Ala-Leu-Ala-Ala-Ala-OHまたはH-Val-Pro-
    Gly-Ala-(R)-Leu-Ala-Ala-Ala-OH(ここで、Rは還元されたペプチド結合)とい
    う配列をもつペプチド模倣分子。
  80. 【請求項80】 H-D-Ala-D-Ala-D-Ala-D-Leu-(R)-D-Ala-Gly-D-Pro-D-Val-
    OH(ここで、Rは還元されたペプチド結合)またはH-D-Ala-D-Ala-D-Ala-D-Leu-
    D-Ala-Gly-D-Pro-D-Val-OHという配列をもつレトロ−インベルソ(retro-invers
    o)シュードペプチドであるペプチド模倣分子。
  81. 【請求項81】 トロポエラスチンまたはトロポエラスチン変異体の精製を
    向上させる方法であり、精製されるトロポエラスチンまたはトロポエラスチン変
    異体の粗調製物中に、請求項76から80のいずれかに記載のペプチド模倣分子
    を含む方法。
  82. 【請求項82】 請求項23、57、73および75のいずれかに記載の派
    生体、または請求項76から80のいずれかに記載のペプチド模倣分子を含み、
    薬学的に許容できる担体を含む製剤組成物。
  83. 【請求項83】 請求項23、57、73および75のいずれかに記載の派
    生体をコードするヌクレオチド配列。
  84. 【請求項84】 請求項83に記載のヌクレオチド配列を含む細胞。
  85. 【請求項85】 請求項23、57、73および75のいずれかに記載の派
    生体の製造方法であり、請求項85に記載の細胞を該派生体を産生するのに適し
    た状態に維持することを含む方法。
  86. 【請求項86】 請求項23、57、73および75のいずれかに記載の派
    生体を含むインプラント。
JP2000560149A 1998-07-17 1999-07-19 プロテアーゼ感受性ii Expired - Lifetime JP4342731B2 (ja)

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
AUPP4723A AUPP472398A0 (en) 1998-07-17 1998-07-17 Protease susceptibility II
AU4723 1998-07-17
PCT/AU1999/000580 WO2000004043A1 (en) 1998-07-17 1999-07-19 Protease susceptibility ii

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2002520421A true JP2002520421A (ja) 2002-07-09
JP4342731B2 JP4342731B2 (ja) 2009-10-14

Family

ID=3808961

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2000560149A Expired - Lifetime JP4342731B2 (ja) 1998-07-17 1999-07-19 プロテアーゼ感受性ii

Country Status (8)

Country Link
US (2) US7229788B1 (ja)
EP (1) EP1100815B1 (ja)
JP (1) JP4342731B2 (ja)
AT (1) ATE443076T1 (ja)
AU (1) AUPP472398A0 (ja)
CA (1) CA2335098C (ja)
DE (1) DE69941433D1 (ja)
WO (1) WO2000004043A1 (ja)

Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2014508147A (ja) * 2011-02-08 2014-04-03 キングス・カレッジ・ロンドン 心血管イメージングに関連する材料および方法
JP2015506956A (ja) * 2012-02-01 2015-03-05 レジャンティ アンテルナシオナルRegentis International 二官能性ペプチド
JP7503873B2 (ja) 2020-06-08 2024-06-21 シェンチェン チュリエ バイオテック カンパニー リミテッド フィブロネクチン由来ペプチドを標的とするインヒビターペプチド化合物及びびその用途

Families Citing this family (14)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
GB2393724B (en) * 2002-10-01 2006-04-12 Johnson & Johnson Medical Ltd Controlled release therapeutic wound dressings
KR101708622B1 (ko) 2009-03-10 2017-02-21 엘라스타겐 피티와이 리미티드 주사용 바이오물질
HUE044367T2 (hu) 2011-09-30 2019-10-28 Allergan Pharmaceuticals Int Ltd Elasztikus rostok in vivo szintézise
WO2014063194A1 (en) 2012-10-23 2014-05-01 The University Of Sydney Elastic hydrogel
CN105246520B (zh) 2012-12-10 2017-11-21 埃拉斯塔根私人有限公司 可缩放的三维弹性构建体制造
US20160194379A1 (en) 2013-08-13 2016-07-07 Elastagen Pty Ltd Regeneration of Damaged Tissue
EA201691512A1 (ru) * 2014-01-27 2017-01-30 Оспекс Фармасьютикалз, Инк. Бензохинолиновые ингибиторы везикулярного переносчика моноамина 2
US20190275087A1 (en) 2018-03-01 2019-09-12 Allergan Pharmaceuticals International Limited Expansion and differentiation of stem cells
EP3953380A4 (en) * 2019-04-12 2023-01-25 Geltor, Inc. RECOMBINATION ELASTIN AND ASSOCIATED PRODUCTION
WO2020225694A1 (en) 2019-05-03 2020-11-12 Allergan Pharmaceuticals International Limited Scar prevention and/or treatment
EP4017519A1 (en) 2019-08-23 2022-06-29 Allergan Pharmaceuticals International Limited Tropoelastin for use in treatment of acne scarring
US20230040485A1 (en) 2019-12-18 2023-02-09 Allergan Pharmaceuticals International Limited Hybrid polymeric materials and uses thereof
AU2021217239A1 (en) 2020-02-06 2022-09-22 Allergan Pharmaceuticals International Limited Tissue engineering scaffolds
CN115768496A (zh) 2020-05-14 2023-03-07 阿勒根制药国际有限公司 包括与透明质酸交联的原弹性蛋白的组合物及其使用方法

Family Cites Families (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO1994014958A1 (en) 1992-12-22 1994-07-07 The University Of Sydney Synthetic polynucleotides
US5726040A (en) 1993-11-10 1998-03-10 Ensley; Burt D. Cosmetic compositions including tropoelastin isomorphs
US7001328B1 (en) * 1994-11-15 2006-02-21 Kenton W. Gregory Method for using tropoelastin and for producing tropoelastin biomaterials
US6451326B2 (en) 1996-05-02 2002-09-17 Burt D. Ensley Cosmetic compositions
CA2262446A1 (en) 1996-08-07 1998-02-12 Protein Specialties, Ltd. Self-aligning peptides derived from elastin and other fibrous proteins
AUPO811797A0 (en) 1997-07-18 1997-08-14 University Of Sydney, The Tropoelastin derivatives
AU741851B2 (en) 1997-07-18 2001-12-13 Elastagen Pty Ltd Tropoelastin derivatives

Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2014508147A (ja) * 2011-02-08 2014-04-03 キングス・カレッジ・ロンドン 心血管イメージングに関連する材料および方法
JP2015506956A (ja) * 2012-02-01 2015-03-05 レジャンティ アンテルナシオナルRegentis International 二官能性ペプチド
JP7503873B2 (ja) 2020-06-08 2024-06-21 シェンチェン チュリエ バイオテック カンパニー リミテッド フィブロネクチン由来ペプチドを標的とするインヒビターペプチド化合物及びびその用途

Also Published As

Publication number Publication date
US7229788B1 (en) 2007-06-12
EP1100815B1 (en) 2009-09-16
CA2335098C (en) 2012-05-15
EP1100815A1 (en) 2001-05-23
ATE443076T1 (de) 2009-10-15
WO2000004043A1 (en) 2000-01-27
CA2335098A1 (en) 2000-01-27
DE69941433D1 (de) 2009-10-29
AUPP472398A0 (en) 1998-08-13
EP1100815A4 (en) 2005-05-25
JP4342731B2 (ja) 2009-10-14
US20080058261A1 (en) 2008-03-06

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US20080058261A1 (en) Protease susceptibility II
EP2409988B1 (en) Peptide fragments for inducing synthesis of extracellular matrix proteins
US6677116B1 (en) Methods for treating cancer by modulating β-catenin mediated gene expression
JP6567147B2 (ja) 皮膚状態改善活性を有するペプチド及びその用途
CA2082941A1 (en) Bone and cartilage inductive proteins
KR102060207B1 (ko) 세타-디펜신들로 염증성 프로테아제들의 차단
JP2006160640A (ja) 抗菌ペプチド及びその利用
US5955431A (en) Mast cell protease peptide inhibitors
EP0917539A1 (en) Anticoagulant peptide fragments derived from apolipoprotein b-100
JP2007529410A (ja) 子宮内膜症を治療又は防止するためのペプチド
AU2003213863B2 (en) Prothrombin activating protein
JP2002512018A (ja) マトリックス結合因子
WO1995030432A1 (en) Use of chondroitin sulphate proteoglycans for protection of neurons
AU771201B2 (en) Protease susceptibility II
US20040254099A1 (en) Compounds and methods for modulating beta-catenin mediated gene expression
JPH09505733A (ja) エンドテリン変換酵素
JP4677319B2 (ja) 神経分化抑制ペプチド及びその利用
AU744514B2 (en) Matrix binding factor
WO2003050141A2 (en) Calpain activators
Lauer et al. Design and use of Synthetic Peptides As Biological Models
Noelken et al. Chain composition of type IV collagen networks in basement membranes
KR20050016333A (ko) 프로트롬빈 활성화 단백질
JP2005281225A (ja) 新規塩基性抗菌ペプチド及びその利用
JP2003292456A (ja) アペリン用途
JP2577091C (ja)

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20060501

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20090303

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20090601

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20090626

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20090708

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120717

Year of fee payment: 3

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 4342731

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20090601

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130717

Year of fee payment: 4

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

S111 Request for change of ownership or part of ownership

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313113

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

EXPY Cancellation because of completion of term