JP2002508187A - P53+新生細胞の選択的殺死及び診断 - Google Patents

P53+新生細胞の選択的殺死及び診断

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Abstract

(57)【要約】 新生物形成疾患を治療及び診断するためのウイルスを用いた方法及び組成物を提供する。好ましくは、p53 を結合する及び/又は不活性化するウイルスタンパク質を欠失したアデノウイルス変異体を、p53 を有し、且つミスマッチ修復活性を欠失した細胞を含有する新生物を有する患者に投与する。本ウイルス変異体は、その様な新生細胞において複製表現型を実質的に発現できるが、正常なp53 機能を本質的に有する非複製性の非新生細胞では複製表現型を実質的に発現できない。新生細胞における選択的な複製表現型の発現により、直接的に、又はウイルス複製表現型を発現する細胞における細胞毒性遺伝子の発現を介して、新生細胞を選択的に殺死することができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】技術分野 本発明は、ガンの分野に属し、p53 腫瘍抑制因子活性を有するが、ミスマッチ
修復酵素活性を欠失している新生細胞のウイルスによる治療及び診断に関する。
【0002】背景 正常細胞の増殖は、増殖促進性のガン原遺伝子と、それに対抗する増殖抑制性
の腫瘍抑制因子遺伝子との平衡により調節されると考えられている。活性を強化
する変異を介してガン原遺伝子からガン遺伝子が生成し、これが新生細胞の増殖
を誘起する。逆に、腫瘍抑制因子遺伝子を不活性化する、一般的には変異を介し
た遺伝子損傷は、不活性化腫瘍抑制因子の対立遺伝子がホモ接合体となる細胞を
誘導し、その様な細胞では、当遺伝子による正常な複製制限が解除される。通常
は、不活性化された腫瘍抑制因子遺伝子(例えばp53, RB, DCC, NF-1)と、活性
化されたガン遺伝子(すなわち活性化を導く構造上又は制御上の変異を受けたガ
ン原遺伝子)との組合せにより、本質的に無制限に増殖し得る新生細胞が発生す
る。
【0003】 細胞のガン性転換により、細胞の代謝、生理、及び形態において多数の変化が
起きる。ガン性に形質転換された細胞における1つの特徴的な変化は、通常は細
胞増殖制御性遺伝子の適当な発現による細胞増殖及び分化に対する制御に対して
応答し無くなることである。
【0004】 異なるタイプの遺伝子変化により、細胞増殖制御因子の発現又は機能が変化し
、そして異常増殖に至る可能性があるが、正常細胞が新生物に形質転換して悪性
新生物に成るためには、1つ以上の変化の発生が必要であると考えられている(
Land et el. (1983) Nature 304 : 596 ; Weinberg RA (1989) Cancer Res. 49
: 3713) 。大部分のタイプの細胞において、悪性転換を誘導する正確な分子経路
及びその二次変化は明かではない。細胞周期調節機能が推定され、そして/又は
機能性転写複合体の形成が指摘されているいくつかのタンパク質、例えばp53 及
びRB、の発現又は活性が変化することにより、細胞における増殖調節が失なわれ
る実例が多数報告されている(Ullrich et al. (1992) J. Biol. Chem. 267 : 1
5259 ; Hollstein et al. (1991) Science 253 : 49 ; Sager R (1992) Curr. O
pin. Cell. Biol. 4 : 155 ; Levine et al. (1991) Nature 351 : 453) 。
【0005】 かなりの種類のガンにおいて、いくつかのガン遺伝子が、特有の活性化変異を
有することが見つかっている。例えば、 rasH 及び rasK のコード領域における
特定の変異(例えば、コドン12、コドン16;Parada et al. (1984) Nature 312
: 649)は、培養細胞のガン性転換に関与しているし、人間の特定のガン(例えば
大腸アデノカルシノーマ、膀胱カルシノーマ、肺カルシノーマ及びアデノカルシ
ノーマ、肝カルシノーマ)に高率で存在している。これらの事実から、前記ガン
遺伝子の活性型を特異的に認識する診断及び治療用試薬が開発されてきた(米国
特許 4,798,787及び 4,762,706)。
【0006】 他のガン遺伝子、例えばmyc, erbB-2 及びpim-1 の異常な過剰発現により、そ
のコード領域上に活性化変異が必ずしも存在しなくても、明かにガン性転換を促
進することができる。erbB-2の過剰発現が、しばしば乳房、胃、及び卵巣のアデ
ノカルシノーマで見つかっており、それらの細胞におけるerbB-2レベルは、新生
物形成を示す診断マーカーとして機能し得るし、そして/又は腫瘍の特定の表現
型(例えば、特定の薬剤に対する耐性、増殖速度、分化状態)と相関するであろ
う。
【0007】 種々のガン遺伝子(米国特許 4,736,866及び 5,087,571)又は機能破壊した腫
瘍抑制因子遺伝子(Donehower et al. (1992) Nature 356 : 215)を保有するト
ランスジェニック動物が、潜在的な用途の1つである発ガン物質の選別検査のた
めに報告されている。
【0008】 表現型転換と新生物形成の基礎となる分子機構の明確なモデルが発展してきた
にもかかわらず、通常の化学療法を超える有用なガン治療法はほとんど開発され
ていない。多くの通常の化学療法剤の治療指数は低く、治療に有効な投与量は、
毒性を示す投与量に等しいか、又は近い。大部分の通常の化学療法剤における毒
性副作用は、副作用の中でも好ましくないものであり、生命を脅す骨髄抑制を引
き起す。
【0009】 先天的な疾患、例えば嚢胞性線維症、を引き起す欠陥対立遺伝子を修正又は補
完するための遺伝子治療が最近試みられ、限られた初期の成功が報告された。い
くつかの遺伝子治療法は、欠陥対立遺伝子の機能性コピーを発現するポリヌクレ
オチド配列を、複製欠陥組換えアデノウイルスによってインビボで細胞に導入す
ることである(Rosenfeld et al. (1992) Cell 68 : 143)。これらの遺伝子治療
法のいくつかは、患者から外植した単離細胞に、ポリヌクレオチドを導入するこ
とには有効であるが、インビボでは高い効率を示さなかった。腫瘍壊死因子(TN
F )及びインターロイキン2(IL-2)をコードするポリヌクレオチドを、外植し
た腫瘍細胞に導入することによるガン治療法が報告されている(Pardoll D (199
2) Curr. Opin. Oncol. 4 : 1124)。
【0010】 将来、遺伝子治療により、形質転換細胞内のガン遺伝子又は腫瘍抑制遺伝子の
欠陥対立遺伝子を修正することが可能となるであろうが、現在、その場で実際的
に遺伝子治療するために十分な量の新生細胞に効率よく導入すること、及び正確
に目標に到達させること(例えば相同組換えによる)が可能な遺伝子治療法は、
報告されていない。
【0011】 効率的な治療のためには、ガンの生物学的性質から、実質的な分量の新生細胞
を、好ましくは、形質転換細胞に由来する全ての子孫細胞を除く必要がある。ま
た現在の遺伝子治療法は非常に高価であり、患者に再導入する前に、外植した細
胞をエクソビボで培養する必要がある。この様な方法がたとえ有効であったとし
ても、その方法の普及には法外な経費がかかるであろう。
【0012】 従って、当業界では、新生物形成性疾患の診断及び治療のための方法及び組成
物、特に、通常の抗新生物化学療法の特徴である非新生細胞の希望しない殺死な
しに、選択的に新生細胞を除く方法が求められている。
【0013】 この点から、腫瘍抑制因子p53 を欠失した新生細胞を、変異アデノウイルスに
より選択的に殺死するという報告は、特に注目に値する。米国特許 5,677,178及
びBischoff, J.R., et al., Science, vol.274, p.373-376 (1996)を参照するこ
と。この選択的殺死は、新生細胞内では複製し、その細胞を溶解させるが、非新
生細胞内では複製しない変異アデノウイルスによる分別性を活用することに拠る
。詳しくは、ある複製欠陥組換えアデノウイルス、特にE1b 機能を欠失したもの
( E1b- )は、p53 腫瘍抑制因子機能を欠失した新生細胞内で複製し、その細胞
を効率的に殺死することが示された。また、正常なp53 機能を有する非新生細胞
は、複製欠陥組換えアデノウイルスによる殺死に比較的に耐性を示す。
【0014】 p53 を有し、しかも E1b- アデノウイルス変異体によって殺死される新生細胞
の一群が存在することが現在報告されている。Heise, C., et al. Nature Medic
ine, vol.3, p.639-645 (1997)。この様な新生細胞において E1b- による殺死を
促進する遺伝的素因は知られていない。従って、患者の腫瘍が、 E1b- アデノウ
イルス変異体による殺死に感受性を示す p53+ 細胞から成るか否か決定する方法
を持つことは、そのガン患者の治療を行う医師にとって特に有益であろう。
【0015】 本文中に記載した参考文献は、本出願の提出日前に開示されたもののみである
【0016】発明の要旨 本発明は、腫瘍抑制因子p53 を有する新生細胞を診断及び/又は除去するため
の、しかし非新生細胞に対してはほとんど又は全く効果を示さない新規な方法及
び組成物であって、機能性p53 腫瘍抑制因子遺伝子産物と結合することができる
ウイルスガンタンパク質を発現しない複製欠陥組換えアデノウイルスを用いた前
記方法及び組成物を提供する。この新生細胞は、ミスマッチ修復活性の欠失、又
は実質的な低下により、仕組みはわからないが、p53 機能の低下を示すものであ
る。このミスマッチ修復活性は、ウイルス複製を支援する細胞の能力から評価さ
れる。新生細胞と非新生細胞とにおける本発明のアデノウイルス構成体の複製表
現型の差が、ウイルスによるガン治療の生物学的基礎になっている。アデノウイ
ルスによる細胞変性効果の発現は、本発明の組換えアデノウイルス構成体を感染
させた新生細胞に特徴的なアデノウイルスの複製表現型と相関しており、従って
新生細胞と非新生細胞とを区別して、新生細胞に選択的な細胞毒性を与える。本
方法は、特にアデノウイルス構成体のために詳細に記載されているが、非新生細
胞内に存在するが、新生細胞内には実質的に存在しないか又はその機能を欠失し
ている宿主細胞タンパク質(例えばp53 )が結合及び/又は隔離及び/又は不活
性化されることが、有効な複製のために必要である任意のタイプのウイルスに本
質的に適用できるであろう。
【0017】 アデノウイルスが細胞内で効率よく複製するために、アデノウイルスE1b 遺伝
子産物p55 が、宿主細胞のp53 タンパク質と複合体を形成し、それによりp53 が
隔離及び/又は不活性化され、その結果p53 機能を欠失した細胞が生じる。この
ことは、ミスマッチ修復活性が欠失した、又は実質的に存在しない p53+ 細胞に
おいても起きる。この様なp53 機能が欠失した細胞は、アデノウイルスの複製を
支援できた。すなわち、アデノウイルスp55 タンパク質が宿主細胞のp53 タンパ
ク質を不活性化及び/又は隔離するので、野生型アデノウイルスは、p53 を含有
する細胞内で複製できる。
【0018】 前述した通り、p53 陽性の新生細胞は、ミスマッチ修復活性の欠失又は損失に
より、ウイルス複製の欠失を誘導するp53 の機能を失なってしまう。従って、そ
の様な細胞は、本発明のウイルスによって殺死される。
【0019】 本発明の1つの態様では、感染細胞においてp53 と機能的複合体を形成するこ
とが実質的にできないp55 タンパク質変異体をコードするE1b 遺伝子座を含有す
る組換えアデノウイルスを、この組換えアデノウイルスが感染可能な新生細胞を
含む個々の又は集団の細胞に投与する。感染した非新生細胞では、この組換えア
デノウイルスがp53 タンパク質を効率的に隔離することが実質的に不可能なので
、非新生細胞に導入された組換えアデノウイルスのポリヌクレオチドは、複製表
現型を表すことができない。これに対し、機能的なp53 タンパク質を欠失した新
生細胞は、導入された組換えアデノウイルスの複製表現型の発現を支援するので
、その新生細胞はアデノウイルスによる細胞変性効果により除去され、そして/
又はその複製表現型に結び付いたネガティブ選択遺伝子を発現する。好ましい態
様では、この組換えアデノウイルスは、p53 と実質的に結合できない変異p55 を
コードするE1b 遺伝子座を含み、場合により機能性p19 タンパク質を欠失するこ
ともある(すなわち、E1a ポリペプチドの存在下に、アデノウイルスの初期領域
遺伝子の発現を抑制できなくなる)。本発明の組換えアデノウイルスは、更に、
細胞変性効果を増強する変異p19 遺伝子、例えば当業界でp19 cyt 変異遺伝子と
して知られている変異遺伝子、を含むこともあり得る。しかし、感染中にウイル
スDNA の完全性を維持するために、いくつかの変異体では機能性p19 を保持する
ことも好ましいであろう。
【0020】 本発明は、非新生細胞では複製せず、機能性p53 を欠失している新生細胞では
複製することができる組換えアデノウイルス構成体を提供する。この新規なアデ
ノウイルス構成体は、E1b 遺伝子領域中に、特にE1b のp55 タンパク質をコード
する配列中に、変異、例えば欠失変異又は点変異を有する。
【0021】 更に本発明は、p53 と結合する及び/又はp53 を不活性化する機能性タンパク
質を欠失した組換えパポバウイルス、例えばヒトパピローマウイルス(HPV )、
ポリオーマウイルス(例えばBK, JC) 及びSV40を提供する。機能性E6タンパク質
を発現しないヒトパピローマウイルス変異体は、p53 を効率的に分解する能力を
実質的に欠いており、従って、 p53- 細胞内ではその複製表現型を表示できるが
、十分量の機能性p53 を有する細胞内ではできない。
【0022】 更に本発明は、新生物形成性疾患を治療するための新規な方法であって、非新
生細胞群に比べて、新生細胞群において選択的に複製表現型を示し、そして/又
は細胞変性効果を示すことのできる組換えウイルスを、患者に投与する過程を含
んで成る前記方法を提供する。
【0023】定義 特に明記しない限り、本文中の全ての技術及び科学用語は、本発明の属する技
術分野の通常の技術者が一般的に理解しているものと同じ意味を指す。本発明の
実施又は試験では、本文に記載したものと類似又は等価の任意の方法及び物質を
用いることができるが、本文では好ましい方法及び物質を記載する。本発明のた
めに、以下の用語を以下の様に定義する。
【0024】 ある対象物に対して用いられる用語「天然の」とは、その対象物が自然界で見
つかり得ることを指す。例えば、自然界の源から単離され得る生物体(ウイルス
を含む)中に存在し、且つ研究室内で人間によって意図的に修飾されていないポ
リペプチド又はポリヌクレオチドは、天然のものである。用語「組換え体」とは
、部分的に人間によって意図的に修飾することによって作られたポリヌクレオチ
ド構成体(例えばアデノウイルスゲノム)を指す。
【0025】 用語「複製欠陥ウイルス」とは、ウイルスの複製表現型の発現を支援すること
が予め決定された細胞集団(例えばp53 を実質的に欠失した細胞)では、優先的
に細胞増殖を阻害するか又はアポトーシスを誘導するが、非複製性の非形質転換
細胞に特有の正常なp53 レベルを含有する細胞では、細胞増殖の阻害、アポトー
シスの誘導又は複製表現型の発現を実質的に行えないウイルスを指す。典型的に
は、複製欠陥ウイルスでは、正常なp53 機能を有する細胞上でのプラーク形成効
率が実質的に低下する。
【0026】 ミスマッチ修復活性(MMR )とは、DNA の複製、組換え又は化学的修飾の最中
に、ゲノム内で種々の機構により発生する塩基対ミスマッチ及び一本鎖の挿入/
欠損ループ(ILP )を認識及び修復することに関与するタンパク質の活性系を指
す。
【0027】 MMR 活性の損失は、いくつかの機構、例えば、タンパク質をコードする遺伝子
が存在する染色体の損失、その遺伝子の変異、関連する酵素の分解などを介して
発生し得る。
【0028】 用語「p53 機能」とは、p53 遺伝子をコードするポリペプチドが(組織学的に
同一種の非新生細胞に対して)本質的に正常なレベルにおいて示す特性を指し、
このp53 ポリペプチドは、野生型アデノウイルス2又は5型のE1b タンパク質p5
5 と結合することができるものである。例えば、p53 機能は、p53 の不活性型(
すなわち変異体)の生産、又はp53 ポリペプチド発現の実質的減少又は完全な欠
失により損失し得る。また、p53 機能は、野生型p53 タンパク質をコードするp5
3 対立遺伝子を含有する新生細胞においても実質的に損失することがある。例え
ば、p53 遺伝子座の外側の遺伝子変化、例えば、p53 の異常な細胞内プロセシン
グ又は局在化を引き起こす変異(例えば、核よりも細胞質内に優勢にp53 を局在
化させる変異)は、p53 機能の損失を引き起こす。
【0029】 新生細胞が野生型p53 タンパク質を有し、且つその細胞が本発明のウイルスに
より除去される場合、この現象は、p53 と関係する一部又は全部の活性の発現に
作用する又は必要である細胞内要素の変化により引き起こされ得る。本発明の重
要な観点は、この現象が発生し得る1つの場合が、新生細胞がミスマッチ修復(
MMR )酵素活性を欠失している場合であることを見い出したことである。Anthon
ey, D.A., et al. Cancer Research, vol.56, pages 1374-1381, (1996) : 及び
Drummond, J.T., et al. Journal of Biological Chemistry, vol.271, pages 1
9645-19648 (1996) を参照すること。従って、ある新生細胞は、正常な野生型p5
3 の機能を有するが、ミスマッチ修復活性を欠失又は実質的に欠失しているので
、E1b p55 を欠失したアデノウイルスの複製を支援することが期待される。実際
に、ミスマッチ修復経路とp53 経路とは、生化学的につながっていることが示唆
されている。Drummond, J.T., et al. Journal of Biological Chemistry, vol.
271, pages 19645-19648 (1996) を参照すること。
【0030】 用語「複製表現型」とは、ウイルス、例えば複製欠陥アデノウイルスを感染さ
せた細胞における下記の1つ以上の表現型の特徴を指す:(1)後期遺伝子産物
、例えばキャップシッドタンパク質(例えばアデノウイルスのペントン塩基ポリ
ペプチド)、又はウイルスの後期遺伝子プロモーターから転写されたRNA の実質
的な発現;(2)ウイルスゲノムの複製又は複製中間体の形成;(3)ウイルス
キャップシッド又はパッケージングされたビリオン粒子の集合;(4)感染細胞
における細胞変性効果(CPE )の出現;(5)ウイルス溶菌サイクルの完了;及
び(6)機能性ガンタンパク質をコードする複製可能な野生型DNA ウイルスを感
染させた非新生細胞における、p53 の除去に典型的に付随するその他の表現型変
化。複製表現型とは、上に挙げた表現型の特徴を少くとも1つ、好ましくは複数
含む。
【0031】 用語「抗新生物形成性の複製欠陥ウイルス」とは、感染した新生細胞を、組織
学的に同一型の感染した非複製性の非新生細胞に比べて優先的に殺死することに
より、人間における新生物の発生又は進行を阻害するという機能特性を有する組
換えウイルスを指す。
【0032】 「新生細胞」及び「新生物」とは、相対的に自律的な増殖を示し、そのために
、細胞増殖調節の有意な損失によって特徴づけられる異常増殖表現型を示す細胞
を指す。新生細胞は、活発に複製している細胞又は一時的に複製していない休止
状態(G1 又はG0 )にある細胞を含み得る。同様に新生細胞は、十分に分化し
た表現型を有する細胞、ほとんど分化していない表現型を有する細胞、又は、両
方の型の細胞混合物を含み得る。従って、全ての新生細胞が必ずしも、ある時点
において細胞複製しているとは限らない。新生細胞として定義された細胞は、良
性及び悪性(又は明白な)新生物中の細胞から成る。明白な新生細胞はしばしば
ガンと呼ばれ、典型的には、内胚葉又は外胚葉起源の細胞に由来する場合カルシ
ノーマと称し、中胚葉起源の細胞に由来する場合サルコーマと称す。
【0033】 用語「作用可能な連結」とは、機能関係を保ったポリヌクレオチド要素の連結
を指す。ある核酸を、別の核酸配列内に、機能関係を有する様に配置した場合、
それらの核酸は作用可能に連結されたことになる。例えば、コード配列の転写に
作用した場合に、プロモーター又はエンハンサーは、コード配列に作用可能に連
結されたことになる。作用可能な連結とは、連結されるDNA 配列が典型的には隣
接すること、そして2つのタンパク質のコード領域を連結する場合には、隣接し
、且つそれらの読み枠が合うことを意味する。しかし、エンハンサーは、一般的
にプロモーターから数kb離れている場合に機能し、そしてイントロン配列の長さ
は変化し得るので、いくつかのポリヌクレオチド要素は、隣接することなく、作
用可能に連結され得る。
【0034】 「生理的条件」とは、完全な哺乳動物細胞又は生きた哺乳動物の組織間又は臓
器における条件と実質的に相同なイオン強度、pH、及び温度を有する水性環境を
指す。典型的な生理的条件は、約150mM NaCl(場合によりKCl), pH6.5〜8.1 、
及び温度約20〜45℃を呈する水溶液である。一般に生理的条件とは、生物高分子
の分子間相互作用のために適当な結合条件のことである。例えば 150mM NaCl, p
H7.4, 37℃という生理的条件が、一般的に適当である。
【0035】詳細な説明 一般に、以下で用いる命名法、並びに、細胞培養、分子遺伝学、及び分子ウイ
ルス学における研究方法は、当分野で周知であり且つ一般的に使われている方法
である。核酸組換え法、ポリヌクレオチド合成、ポリペプチド合成、ウイルス保
存液の調製及び増幅(複製欠陥ウイルス保存液のトランス補完が可能な細胞株を
含む)、及び細胞培養などのために、標準的な技術を用いる。一般に、酵素反応
及び精製を製造業者の取扱説明書に従って行う。一般に、これらの技術及び手法
を、当分野における通常方法及び種々の一般的参考書(一般に、Sambrook et al
. Molecular Cloning : A Laboratory Manual, 2d ed. (1989) Cold Spring Har
bor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y. ; Virology, Second editio
n, eds. Fields BN and Knipe DM, (1990) Raven Press, New York, NYを参考に
して行う。それらの手法は、当分野に周知であるだろう。
【0036】 新生物形成とは、部分的には、種々の遺伝子型及び表現型を呈する新生細胞の
形成によって特徴づけられる生理的状態のことである。いくつかの腫瘍細胞はp5
3 機能を欠失している。この様な細胞を p53- と表す。また、本質的に正常なレ
ベルのp53 を有する新生細胞( p53+ )もある。正常なp53 を有するこの様な細
胞は、複製表現型を優先的に表示できる抗新生物性ウイルス構成体を作る基礎に
なり得る他のガン遺伝子産物(例えば、p53 以外の腫瘍抑制因子遺伝子産物、す
なわちRB)を欠失してもよい。
【0037】 本発明の基礎は、哺乳動物細胞に感染するいくつかのDNA ウイルス(例えばア
デノウイルス;パポバウイルス、例えばBK及びJC、SV40、並びにパピローマウイ
ルス、例えばHPV 、など)が、複製サイクルを介したウイルスの効率的な増幅に
必要なウイルスタンパク質をコードしていることである。これらのウイルスタン
パク質のいくつかは、ウイルスの効率的な複製の必要条件として、細胞タンパク
質、例えば細胞周期調節及び/又は転写複合体の形成に関与する細胞タンパク質
を隔離するものである。p53 を結合、隔離又は分解するウイルスタンパク質がな
い場合、ウイルス複製は実質的に阻害される。p53 を隔離又は分解する能力のな
い変異ウイルスを感染させた正常(すなわち非新生)細胞は、通常その変異ウイ
ルスの複製を支援することができず、従ってその様な変異ウイルスは、複製欠陥
(又は複製欠失)とみなされる。しかし機能的p53 を欠失した細胞( p53- )は
、ウイルス複製のためにp53 の隔離又は分解を必要としないので、p53 を隔離又
は分解できない複製欠陥変異ウイルスは、その様な p53- 細胞において、本質的
に正常なp53 機能を有する細胞よりも高程度に複製表現型を表示し得る。新生細
胞はしばしばp53 機能を欠失している( p53- 細胞)。従っていくつかの複製欠
陥変異ウイルスは、新生細胞において優先的に複製表現型を表示し得る。
【0038】 機能的なp53 不活性化タンパク質(例えば、アデノウイルスE1b p55, HPV E6
タンパク質)を発現する能力のない変異ウイルスは、 p53- 細胞において複製表
現型を表示するだろう。従って複製表現型の発現と連結した細胞毒性は、 p53- 表現型を有する新生細胞を優先的に殺死する原因になり得る。いくつかの複製性
の非新生細胞は、細胞周期を介した増殖中に一時的に p53- 表現型を表示するこ
ともあるが、本発明の変異ウイルスを、必ずしも完全に選択的ではないが、新生
細胞の選択的な殺死に用いることができ、従って、単独で又は他の治療法との組
合せで抗新生物治療法に用いることができる。
【0039】 下記の方法及び組成物は、特に複製欠陥アデノウイルス構成体を用いた方法に
ついて記載されているが、p53 タンパク質を隔離する又はその分解を促進するガ
ンタンパク質をコードする他のDNA ウイルス、例えば、p53 を実質的に排除する
E6の変異を有する複製欠陥パピローマウイルス(例えばHPV タイプ16, 18, 33)
を用いて、本発明を実施することも可能であろう。アデノウイルス科(特にマス
トアデノウイルス属)のウイルスに加えて、p53 を隔離及び/又は不活性化する
ウイルスタンパク質をコードするパポバウイルス科のウイルス、特にパピローマ
ウイルス及びポリオーマウイルスが、本発明の方法に適すると考えられる。
【0040】 アデノウイルス及びパポバウイルスの生物学に関する一般的な説明のために、
Virology, Second edition, eds. Fields BN and Knipe DM, vol.2, pp. 1651-1
740, Raven Press, New York, NYを参照することができる。以下の記載は、限定
ではないが、血清型5アデノウイルス及び血清型2アデノウイルスに関する。血
清型2アデノウイルスを、E1b のウイルス遺伝子領域及び他のウイルス遺伝子領
域の慣習的番号付けのために便宜的に参照する。当業者は、他の血清型のアデノ
ウイルスの対応する位置を容易に同定できるだろう。ヒトパピローマウイルスに
関しては、一般に新生物形成に関係する型(例えば16, 18又は33型)を参照する
が、非ガン遺伝子型もまた用いられ得る。
【0041】E1b 変異体 細胞内リン酸化タンパク質p53 の機能は、細胞周期を介して哺乳動物細胞の増
殖を抑制することである。野生型アデノウイルスのE1b タンパク質p55 は、p53
を有する感染細胞内でp53 と結合し、おそらくp53 を不活性型として隔離するこ
とによってp53 機能を実質的に不活性化する。機能性のE1b タンパク質p55 は、
機能性p53 を有する細胞内での効率的なアデノウイルス複製に必要である。従っ
てp53 との結合能を実質的に欠失しているアデノウイルス変異体は、正常レベル
の機能性p53 を有する非複製性の非新生細胞内では複製されない。
【0042】 人間の腫瘍細胞は、変異したp53 対立遺伝子(例えば置換、欠失、フレームシ
フト変異)のホモ接合体又はヘテロ接合体であることが多く、正常な細胞周期制
御のために必要なp53 機能を欠失している(Hollstein et al. (1991) Science
253 : 49 ; Levine et al. (1991) 前出)。従って多くの新生細胞は、十分量の
p53 タンパク質を欠くので、そして/又は、p53 機能が実質的に不能であるp53
変異体、並びに野生型p53 が存在したとしてもp53 機能を実質的に低下させ得る
(例えば機能性多量体の形成阻害による)p53 変異体を発現するので、 p53-
ある。いくつかの新生細胞は、野生型p53 タンパク質を本質的にコードする対立
遺伝子を含み得るが、p53 機能を実質的に排除する別の部位の変異、例えばp53
タンパク質を核よりも細胞質に局在化させる変異を含み得る。この様な別の部位
の変異もまた実質的にp53 機能を欠失させる。
【0043】 p53 との複合体形成能を欠くが、他の本質的なウイルス複製機能が実質的に保
持されている複製欠陥アデノウイルスは、p53 機能を欠失した細胞(例えば、実
質的に欠失したp53 対立遺伝子のホモ接合体である細胞、本質的に機能性のない
p53 タンパク質変異体を含有する細胞、野生型p53 を有するが、ミスマッチ修復
(MMR )活性を欠損又は欠失した細胞)において、複製表現型を表示するだろう
。しかし非複製性の非新生細胞においては複製表現型を実質的に表示しないだろ
う。この様な複製欠陥アデノウイルスを、簡便化のために本文中では、 E1b-p53 - 複製欠陥アデノウイルスと称する。
【0044】 p53 機能を欠失した新生細胞の亜集団と、正常なp53 機能を本質的に発現した
非新生細胞の亜集団とを含有する細胞集団(混合細胞培養又は人間のガン患者)
を、感染条件(すなわち、前記細胞集団がアデノウイルスに感染するために適し
た条件、典型的な生理的条件)下に、感染可能な投与量の E1b-p53- 複製欠陥ア
デノウイルスを含有する組成物に接触させることができる。この接触の結果、前
記細胞集団が E1b-p53- 複製欠陥アデノウイルスに感染する。この感染により、
p53 機能を欠失した新生細胞の亜集団内の有意な分量の細胞が、優先的に複製表
現型を発現するが、正常なp53 機能を本質的に有する非新生細胞の亜集団は、複
製表現型を実質的に発現しない。感染した p53- 細胞で複製表現型が発現するこ
とにより、細胞死、例えば細胞変性効果(CPE )による細胞死、細胞溶解、アポ
トーシスなどが起こり、その結果、前記細胞集団から p53- の新生細胞が選択的
に除去される。
【0045】 p53- 新生細胞を選択的に殺死するために適した E1b-p53- 複製欠陥アデノウ
イルス構成体は、典型的には、p53 タンパク質と効率的に結合するE1b タンパク
質p55 の機能を不活性化する変異(例えば、欠失、置換、フレームシフト)を含
んでいる。この様な不活性化変異は、典型的には、p55 内のp53 結合領域に存在
する。場合により、このE1b 変異領域は、E1b 領域の残りの部分によりコードさ
れる機能性p19 タンパク質をコードする領域、及びそれを発現させる領域でもよ
く、そこは、E1a ポリペプチドの非存在下に、アデノウイルスの初期遺伝子をト
ランス活性化する際に機能する領域である。
【0046】 本発明の方法及び組成物での使用に適した E1b-p53- 複製欠陥アデノウイルス
構成体には、限定ではないが、以下の例がある:(1)2型dl 1520 アデノウイ
ルスであって、ヌクレオチドの位置2022においてCからTへの変異を有し、その
ためp55 の翻訳開始用AUG コドンから3アミノ酸下流に停止コドンが生じ、且つ
ヌクレオチド2496から3323までを欠損し、そこを、ヌクレオチド3336において第
2の停止コドンが生じる様に短いリンカー挿入体で置換したもの、この場合p19
タンパク質の発現は、本質的に影響を受けない(Barker and Berk (1987) Virol
ogy 156 : 17) ; (2)少くとも2022の位置の前記変異及び/又は2496−3323の
欠失変異又はそれの実質的部分の欠失変異、並びにp19 cyt 変異体を調製するた
めのp19 中の追加変異を含有する2型dl 1520 アデノウイルスを含有する混成型
アデノウイルス構成体。この混成型ウイルス構成体は、p55 を欠失し、且つ細胞
変性効果を増強するp19 cyt 変異体を含む。2型dl 1520 アデノウイルスは、Dr
. A. Berk, University of California at Los Angeles, Los Angeles, CA から
入手可能であり、Barker and Berk (1987) Virology 156 : 107 などの文献に記
載されている。
【0047】 新生細胞内で E1b-p53- 変異体の複製を支援する感染性ビリオンの形成を阻害
するために、前記アデノウイルス構成体に追加変異を組込むことも好ましいであ
ろう。この様な追加の不活性化変異は、隣接する細胞に拡散して感染し得る感染
性ビリオンを形成する完全なウイルス複製を望まない治療様式において、好まし
いであろう。これらの完全に不活性化した変異を、複製不能 E1b-p53- 変異と称
する。この様な複製不能変異は、 p53- RB- 細胞においてさえ感染性ビリオンの
形成を抑制する変異を含有する。この様な変異は、典型的には、必須ビリオンタ
ンパク質又はプロテアーゼ内の構造上の変異である。
【0048】 しかし多くの様式では、変異ウイルスが複製可能であること、並びに拡散して
他の細胞に感染し得る、変異ウイルスゲノムを含有する感染性ビリオンを形成す
ることが望ましく、その結果、初回投与量の変異ウイルスの抗新生物活性が増幅
される。
【0049】 当業者は、p53 との結合能を欠失している他の E1b- 変異体を、p55 ポリペプ
チドをコードするE1b 遺伝子領域内に変異を生成させ、p55 ポリペプチド変異体
を発現させ、p55 ポリペプチド変異体を水性結合条件下にp53 又はp53 の結合断
片と接触させ、そして、本発明での使用に適する E1b- 変異体の候補として、p5
3 と特異的に結合しないE1b ポリペプチド変異体を同定することにより調製する
ことができる。
【0050】 より典型的には、 E1b- 変異体の候補を同定するために機能検査を行う。例え
ば、p53 機能を決定するためのFriend検査を、本質的にFrebourg et al. (1992)
Caucer Res. 52 : 6977に記載の通りに行う。p53 を不活性化する能力を欠失し
たE1b 変異体が、 E1b- 複製欠陥変異体の候補として同定されるだろう。 本発明において、E1b 変異を有する多数のアデノウイルスを用いることができ
る。そのいくつかが、米国特許出願 60/034616、提出日1996年12月31日、に記載
されている。
【0051】E1a/E1b 二重変異体 網膜芽細胞腫の腫瘍抑制因子(RB)遺伝子の機能の欠損は、種々の型の腫瘍の
病因に関係している。いくつかの人間の腫瘍細胞は、一方又は両方のタンパク質
の不活性化変異又は欠失変異により、p53 機能及びRB機能の両方を欠失している
。この様な細胞を p53- RB- 細胞と称する。
【0052】 p53 と結合する能力を欠き、更にRBと結合する能力を欠いているが、他の本質
的なウイルス複製機能が実質的に保持されている複製欠陥アデノウイルスは、 p
53- RB- 細胞において優先的に複製表現型を表示するだろう。 p53+ であるが、
ミスマッチ修復活性を欠失または欠損している腫瘍細胞でも、複製表現型が表示
されるだろう。本文中では便宜上、この様な複製欠陥アデノウイルスを、E1a-RB - /E1b-p53- 複製欠陥アデノウイルス、又は単にE1a/E1b 二重変異体と称する。
この様なE1a/E1b 二重変異体を、米国特許 5,677,178の記載通りに調製すること
ができる。
【0053】ネガティブ選別ウイルス構成体 感染細胞におけるアデノウイルスの複製表現型の発現は、一般的には細胞溶解
、細胞変性効果(CPE )、アポトーシス、又は他の細胞死機構を介して、ウイル
ス誘導性の細胞毒性と相関するが、抗新生物治療に使用する予定の組換えアデノ
ウイルスの細胞毒性を増加させることも、しばしば好ましいであろう。この様な
増加は、典型的には、組換えアデノウイルスにおいて、複製表現型を発現する細
胞内で正の転写調節を示すアデノウイルスプロモーターに作用可能に連結された
ネガティブ選別遺伝子を含む形態を取り得る。米国特許 5,677,178を参照するこ
と。例えば、HSV のtk遺伝子カセットを、複製欠陥アデノウイルスのE3プロモー
ターの直ぐ下流に作用可能に連結することができる。しばしば、ネガティブ選別
カセットを収容するために、アデノウイルスゲノムの不要な部分(すなわちウイ
ルス複製及びパッケージングのために不要な部分)を除去することが望まれる。
従ってE3遺伝子領域の実質的な部分を除去し、ネガティブ選別カセット、例えば
E2プロモーター(及びエンハンサー)又はその他適当なプロモーター/エンハン
サーに作用可能に連結したHSV のtk遺伝子で置換することもできる。あるいは、
後期遺伝子プロモーターからの転写を特徴とする複製表現型を示す細胞において
、ネガティブ選別遺伝子産物を効率的に発現させるために、そのネガティブ選別
遺伝子をアデノウイルスの後期領域プロモーターに作用可能に連結することもで
きる。
【0054】 細胞を、ネガティブ選別薬、例えばガンシクロビル又はFIAUに接触させない限
り、HSV のtk遺伝子の細胞内発現は、細胞に対して直接的に毒性を示さない。ネ
ガティブ選別遺伝子を実質的に発現し、且つ複製表現型を発現している感染細胞
では、tk遺伝子を発現している当感染細胞を選択的に除去するために選別に有効
な用量のネガティブ選別薬(例えばガンシクロビル)を投与するまでは、付加的
な細胞毒性が本質的に生じ得ない。従って細胞変性殺死を増強するために、及び
/又は、複製表現型を示す細胞を殺死することによりウイルス複製を更に低下さ
せるために、ネガティブ選別を用いることができる。
【0055】 好ましい態様では、tk発現カセットを調製するために、ポリアデニル化部位と
共に、5型アデノウイルスNT dl 1110のE2プロモーター又は代りのプロモーター
及び/又はエンハンサー(例えば主要後期プロモーター、E1a プロモーター/エ
ンハンサー、E1b プロモーター/エンハンサー)を作用可能に連結したHSV のtk
遺伝子カセット(Zjilstra et al. (1989) Nature 342 : 435 ; Mansour et al.
(1988) Nature 336 : 348 ; Johnson et al. (1989) Science 245 : 1234 : Ad
air et al. (1989) Proc. Natl. Acad. Sci (U.S.A.) 86 : 4574 ; Capecchi, M
. (1989) Science 244 : 1288)を用いる。このtk発現カセット(又は他のネガテ
ィブ選別発現カセット)を、当アデノウイルスゲノム内に、例えばE3遺伝子を実
質的に除去する置換体として挿入する。 本発明のビリオンと共に用いることが好ましい別のネガティブ選別遺伝子は、
シトシンデアミナーゼである。これは、米国特許 5,358,866に記載されている。
【0056】診断及びインビトロでの使用 p53+ であるが、p53 機能を欠失した細胞の存在を検出するために、本発明の
複製欠陥アデノウイルスを用いることができる。 特に注目に値する本発明の診断への適用として、正常レベルの野生型p53 を有
するが、ミスマッチ修復酵素活性を欠失した新生細胞を、E1b 変異体ビリオンに
よって処理することがある。従って患者の腫瘍が正常なp53 レベルを示す場合、
ウイルスによる除去効果は、ミスマッチ修復活性の欠失のためである可能性が高
い。従って、医師が患者に最善の治療方法を推めるための助けとして、この事実
を用いることができる。
【0057】 p53 遺伝子の状態、すなわち正常であるか変異しているかを、周知の配列決定
法により、あるいは米国特許 5,362,623又はEPA 518 650 に記載の通り決定する
ことができる。これらの参考文献には、p53 と特異的に結合するDNA 配列を用い
て、細胞抽出物内のp53 を検出する方法が記載されている。 またミスマッチ修復活性を、Hawn, M.T., et al., Cancer Research vol.55,
pages 3721-3725 (1995)の記載通りに検査することができる。
【0058】 他の診断上の使用及びその変種が明白である。例えば、複製欠陥アデノウイル
スにおいてネガティブ選別遺伝子の代りにレポーター遺伝子(例えばルシフェラ
ーゼ、β−ガラクトシダーゼ)を用いれば、細胞におけるp53 及び/又はRBの欠
失を示す複製表現型の発現は、レポーター遺伝子の発現と相関するので、形質転
換した細胞を(例えば細胞試料検査又は形質転換検査において)評価することが
できる。
【0059】治療方法 本発明の複製欠陥アデノウイルス、例えば複製欠陥アデノウイルス、 E1b-p53 - 複製欠陥アデノウイルス、E1a/E1b 二重変異体、及びネガティブ選別遺伝子を
更に有する複製欠陥アデノウイルス、を含有する組成物を、患者に投与すること
により、新生物形成疾患を治療することができる。典型的には、医師が患者の腫
瘍を生検して、そのp53 状態及びミスマッチ修復状態を決定する。 p53+ 又は p
53- 細胞の亜集団の存在を検出するためには、免疫組織化学による検査が好まし
いであろう。
【0060】 p53 を有するが、ミスマッチ修復活性の欠失又は実質的な欠失によりp53 機能
を欠失している細胞を含有する人間の新生物を、本発明の複製欠陥アデノウイル
ス構成体により治療することができる。限定ではないが、例えば、気管支原性カ
ルシノーマ、鼻咽頭カルシノーマ、喉頭カルシノーマ、小細胞性及び非小細胞性
肺カルシノーマ、肺アデノカルシノーマ、肝カルシノーマ、膵カルシノーマ、膀
胱カルシノーマ、大腸カルシノーマ、乳房カルシノーマ、頸部カルシノーマ、卵
巣カルシノーマ、又はリンパ性白血病に罹っている人間の患者又は人間でない哺
乳動物を、抗新生物活性を示す有効な用量の適当な複製欠陥アデノウイルスを投
与することにより治療することができる。感染性のアデノウイルス粒子の懸濁液
を、種々の経路で、例えば静脈内、腹腔内、筋肉内、皮下、及び局所で、新生物
形成組織に投与することができる。1mlあたり約103 〜1013又はそれ以上のビリ
オン粒子を含むアデノウイルス懸濁液を、霧状で吸入させること(例えば気管支
原性カルシノーマ、小細胞性肺カルシノーマ、非小細胞性肺カルシノーマ、肺ア
デノカルシノーマ又は喉頭ガンを治療するために肺に供給する場合)、腫瘍(例
えば、気管支原性カルシノーマ、鼻咽頭カルシノーマ、喉頭カルシノーマ、頸部
カルシノーマ)を治療するためにその腫瘍部位に直接に綿棒で塗ること、注入(
例えば卵巣ガンを治療するために腹膜腔内への、肝カルシノーマ又は、肝臓以外
の原発性腫瘍から転移した肝臓ガンを治療するために門静脈内への注入)によっ
て、あるいはその他適当な経路、例えば腫瘍塊(例えば乳房腫瘍)への直接注射
、浣腸(例えば大腸ガン)又はカテーテル(例えば膀胱ガン)によって投与する
ことができる。
【0061】 新生物形成疾患に罹った患者に治療上及び診断上投与するために、抗新生物性
の複製欠陥アデノウイルス変異体を調合することができる。治療上又は予防上使
用するために、薬理効果を呈する用量の1又は複数の抗新生物形成性の複製欠陥
アデノウイルス変異体を含有する無菌組成物を、新生物形成症状を治療するため
に、人間の患者又は人間以外の動物に投与する。一般的には、この組成物は、懸
濁水溶液中に約103 〜1015又はそれ以上のアデノウイルス粒子を含有するだろう
。この様な無菌組成物に、しばしば医薬上容認された担体又は賦形剤を用いる。
種々の水溶液、例えば水、緩衝剤含有水、 0.4%塩水、 0.3%グリシンなどを用
いることができる。これらの水溶液は無菌であり、一般的には希望するアデノウ
イルスビリオン以外の粒子物を含まない。この組成物は、生理的条件に近似させ
るために必要な医薬上容認された補助物質、例えば、pHを調整及び緩衝する剤、
毒性を調整する剤など、例えば酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム
、塩化カルシウム、乳酸ナトリウムなどを含んでもよい。アデノウイルスの細胞
感染性を促進する賦形剤を含んでもよい。
【0062】 リポソーム又は免疫リポソーム系によって、複製欠陥ウイルスを新生細胞に供
給することができる。この様な供給系は、新生細胞集団上に存在する細胞表面特
性(例えば、免疫リポソームの免疫グロブリンに結合する細胞表面タンパクの存
在)に基づいて、選択的に新生細胞を標的にし得るものである。典型的には、当
ビリオンを含有する懸濁水溶液を、リポソーム又は免疫リポソーム内に封入する
。例えば、通常の方法で複製欠陥アデノウイルスビリオンの懸濁液をミセル内に
封入して、免疫リポソームを作ることができる(U.S. Patent 5,043,164, U.S.
Patent 4,957,735, U.S. Patent 4,925,661 ; Connor and Huang (1985) J. Cel l Biol. 101 : 582 ; Lasic DD (1992) Nature 355 : 279 ; Novel Drug Delive ry (eds. Prescott LF and Nimmo WS : Wiley, New York, 1989) ; Reddy et al
. (1992) J. Immunol. 148 : 1585)。個体のガン細胞上に存在するガン細胞抗原
(例えば、CALLA, CEA) に特異的に結合する抗体を含有する免疫リポソームを用
いて、それらの標的細胞にビリオンを供給することができる。
【0063】 新生物形成疾患の予防処置及び/又は治療のために、本発明の抗新生物形成性
の複製欠陥アデノウイルスを含有する組成物又はそのカクテルを投与することが
できる。治療上の適用では、組成物を、特定の新生物形成疾患に既に冒された患
者に、その症状及び合併症を治癒するか、又は少くとも部分的に抑えるために十
分な量で投与する。このことを達成するために適する量を「治療効果を示す投与
量」又は「有効投与量」と定義する。この使用において有効な量は、症状の重症
度、患者の一般状態、及び投与経路に依存するだろう。
【0064】 予防上の適用では、抗新生物形成性の複製欠陥アデノウイルスを含有する組成
物又はそのカクテルを、現在新生物形成疾患に罹っていない患者に、新生物の再
発に対する患者の抵抗性を増強するために、又は緩解期間を延ばすために投与す
る。この様な量を「予防効果を示す投与量」と定義する。この使用においても、
その正確な量は、患者の健康状態及び一般免疫状態に依存する。
【0065】 本組成物の単回又は複数回投与を、治療担当医師により選択された投与量及び
投与様式に従って行い得る。いずれにしろ、本医薬剤によって、患者を効果的に
治療するために十分な量の本発明の抗新生物形成性の複製欠陥アデノウイルスを
供給するべきである。 本発明の抗新生物形成性の複製欠陥アデノウイルスによる治療を、その他の抗
新生物形成手段、例えば通常の化学療法と併用することができる。
【0066】変異アデノウイルスの増幅 本発明のアデノウイルス変異体(例えば複製欠陥アデノウイルス、 E1b-p53- 複製欠陥アデノウイルス)を、典型的には、感染性変異ビリオンの複製及び形成
を支援するためにE1a 機能、E1b 機能、又はE1a 及びE1b の両機能をトランス供
給できる細胞株(例えば293 細胞株ATCC # CRL 1573, American Type Culture C
ollection, Rockville, MD ; Graham et al. (1977) J. Gen. Virol. 36 : 59)
において増幅して、ウイルス保存液とする。 限定のためでなく、説明のために以下の実例を挙げる。これらの変種及び代替
の態様が、当業者には明白であろう。
【0067】実験例1 複製欠陥組換えアデノウイルス変異体によって、正常レベルのp53 を有してい
る新生細胞を、その細胞がミスマッチ修復酵素活性を欠失又は欠損している場合
に、選択的に殺死することができることを示すために、実験を行った。 大腸カルシノーマ細胞株HCT116を用いた。この細胞株は、ミスマッチ修復活性
を欠損していて、且つp53 陽性である。Anthoney, D.A., et al. Cancer Resear
ch, vol.56, pages 1374-1381, (1996) : and Drummond, J.T., et al. Journal
of Biological Chemistry, vol.271, pages 19645-19648 (1996) を参照するこ
と。その他にHCT116誘導体である2つの細胞株:ミスマッチ修復活性陽性の(MM
R+) HCT116 chr.3、及びミスマッチ修復活性陰性の(MMR-) HCT116 chr.3 rev.
も用いた。前者は、人間の正常な単一染色体をHCT116に移入することにより作成
した。Koi, M., et al. Cancer Research, vol.54, pages 4308-4312 (1994) を
参照すること。HCT116 chr.3 rev.(MMR-) は、N-メチル-N'-ニトロ-N- ニトロソ
グアニジン処理したHCT116 chr.3 (MMR+) の選択により作成した。Hawn, M.T.,
et al. Cancer Research vol.55, pages 3721-3725 (1995) を参照すること。
【0068】 HCT116細胞株において、ミスマッチ修復と、アデノウイルス複製及び細胞変性
効果との関係を決定するために、野生型(wt)アデノウイルス又は複製欠陥組換
えアデノウイルス変異体dl 1520 のいずれかを、前記細胞株に感染させた。前記
通り後者のウイルスは E1b- である。Burk, A., and Barker, J. Virology, vol
.156, pages 107-121 (1987)参照。
【0069】 米国特許 5,677,178の記載通りに本実験を行った。Heise, C., et al. Nature
Medicine, vol.3, pages 639-645 (1997)及びBischoff, J.R., et al., Scienc
e, vol.274, pages 373-376 (1996)も参照すること。最初の実験では、dl 1520
又は野生型アデノウイルスによる異なる細胞株に対する細胞変性効果を決定した
。簡単に述べると、dl 1520 又は野生型ウイルスを、1,0.1 又は0.01のm.o.i.
で細胞に加えた。ウイルスを添加しないコントロールでも実験した。細胞変性効
果の検査を、70〜90%密集状態の細胞で行った。種々のm.o.i.で細胞に90分間感
染させた。感染後4〜5日目に、細胞破壊の程度を決定するために、クリスタル
バイオレットでプレートを染色した。その結果、dl 1520 による細胞変性効果が
、HCT116細胞株のミスマッチ修復表現型(MMR-)と相関することが判明した。詳
しく述べると、dl 1520 は、1,0.1 及び0.01のm.o.i.で、MMR-且つ p53+ であ
るHCT116を有意に溶解した。MMR+且つ p53+ であるHCT116+chr3 に対して、dl 1
520 は m.o.i. 1で少量の細胞を溶解し、m.o.i. 0.1又は0.01ではほとんど又は
全く細胞を溶解しなかった。野生型ウイルスは、両細胞株に対して同程度に有効
であり、 m.o.i. 1及び0.1 で多量の溶解を示したが、m.o.i. 0.01 ではほとん
ど又は全く溶解を示さなかった。この結果を図1に示す。
【0070】 dl 1520 は、 m.o.i. 1及び0.1 で、復帰突然変異細胞株HCT116 chr3. rev.
を効率的に溶解しだか、m.o.i. 0.01 では溶解しなかったことも観察された。こ
の細胞株は3番染色体を失っており、MMR-である。これは p53+ でもあり、従っ
てHCT116及びHCT116+chr3 に対する野生型アデノウイルスの場合と同程度の溶解
感受性を示す。
【0071】 これらの結果に基づくと、野生型アデノウイルスの細胞変性効果は、検査した
細胞株のミスマッチ修復表現型に依存せず、一方E1b 変異ウイルスdl 1520 の細
胞溶解能は、細胞株のミスマッチ修復活性に相関することが合理的に結論される
【0072】 p53+ であり且つミスマッチ修復が欠損している新生細胞において、E1b 変異
アデノウイルスの複製能を測定するために、dl 1520 又は野生型アデノウイルス
のいずれかを、上記のHCT 細胞株に感染させ、そしてプラーク検査によりウイル
ス生産を決定した。簡単に述べると、 m.o.i. 1又は10で、dl 1520 又は野生型
アデノウイルスのいずれかで感染させてから48時間後に、培地中で細胞をかきと
り凍結した。凍結融解を3回繰り返し、その後超音波水浴槽中で30秒間パルス処
理することによって、抽出物を調製した。この抽出物の連続希釈液の力価を、HE
K293細胞上で決定した。
【0073】 この結果を図2に示す。HCT116細胞を用いた場合、 m.o.i. 1又は10で、dl 1
520 及び野生型ウイルスの両方のpfu は同程度であった。しかし細胞株HCT116 c
hr3 (MMR+)を用いた場合、両m.o.i.で、野生型アデノウイルスのpfu は、dl 152
0 のpfu に比べてかなり大きかった。この事実は、 p53+ 細胞において、ミスマ
ッチ修復の欠失がE1b 変異体の効果を促進するという仮説に合致する。この事実
は、更に、HCT116 chr3. rev.(MMR-) を用いた実験からも支持される。この場合
、野生型ウイルス及びdl 1520 の両方のpfu は、 m.o.i. 1又は10のいずれでも
同程度であった。
【0074】 理解を助けるために、実例によって本発明をいくらか詳細に記載したが、特許
請求の範囲内で変更及び改修が実行可能であることは明白である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は、 p53+ 細胞株HCT116(MMR-)及び HCT116+chr3 (MMR+) に対する異な
るmoi でのdl 1520 又は野生型ウイルスによる細胞変性効果を示す。
【図2】 図2は、異なるmoi でdl 1520 又は野生型アデノウイルスを感染させた後、細
胞株HCT116(MMR-), HCT116+chr3 (MMR+) 及びHCT116+chr3. rev.(MMR-) によっ
て生産されたpfu を示す。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) G01N 33/50 A61K 35/76 // A61K 35/76 C12N 15/00 A (81)指定国 EP(AT,BE,CH,CY, DE,DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,I T,LU,MC,NL,PT,SE),OA(BF,BJ ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GW,ML, MR,NE,SN,TD,TG),AP(GH,GM,K E,LS,MW,SD,SZ,UG,ZW),EA(AM ,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ,TM) ,AL,AM,AT,AU,AZ,BA,BB,BG, BR,BY,CA,CH,CN,CU,CZ,DE,D K,EE,ES,FI,GB,GE,GH,GM,HR ,HU,ID,IL,IS,JP,KE,KG,KP, KR,KZ,LC,LK,LR,LS,LT,LU,L V,MD,MG,MK,MN,MW,MX,NO,NZ ,PL,PT,RO,RU,SD,SE,SG,SI, SK,SL,TJ,TM,TR,TT,UA,UG,U Z,VN,YU,ZW Fターム(参考) 2G045 AA26 AA40 CB01 CB02 FB03 4B024 AA01 AA12 BA32 DA03 EA02 HA01 4B063 QA01 QA19 QQ08 QQ42 QR32 QR39 QR55 QR60 QR79 QS05 QS34 QS38 QX01 QX02 4C084 AA13 MA01 NA14 ZB262 ZC782 4C087 AA01 BB65 BC83 MA01 NA14 ZB26 ZC78

Claims (12)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 下記の過程を含んで成る、細胞集団中の新生細胞を除去する
    方法: 感染条件下で、(1)機能性の腫瘍抑制因子遺伝子産物p53 と結合することが
    できるウイルスガンタンパク質の発現を欠失している組換え複製欠陥アデノウイ
    ルスを、(2)そのウイルスガンタンパク質と結合複合体を形成することができ
    る前記の機能性腫瘍抑制因子遺伝子産物を有する非新生細胞、並びに、前記の機
    能性腫瘍抑制因子遺伝子産物を有し、且つミスマッチ修復活性を欠失している、
    又は実質的に欠失している新生細胞を含有する細胞集団に接触させ、それによっ
    て感染した細胞集団を生成させる過程。
  2. 【請求項2】 前記のガンタンパク質がアデノウイルスのE1b ポリペプチド
    である、請求項2の方法。
  3. 【請求項3】 前記の新生細胞が p53+ である、請求項1の方法。
  4. 【請求項4】 前記の組換え複製欠陥アデノウイルスが、RBと結合すること
    ができるE1a ポリペプチドをコードしてなく、且つp53 と結合することができる
    E1b ポリペプチドp55 をもコードしていない、請求項3の方法。
  5. 【請求項5】 前記の組換え複製欠陥アデノウイルスがdl 1520 である、請
    求項1の方法。
  6. 【請求項6】 新生細胞及び非新生細胞を含有する前記の細胞集団が哺乳動
    物内に存在し、そして前記の接触過程が、前記の組換え複製欠陥アデノウイルス
    を個体に投与することによりインビボで行われる、請求項1の方法。
  7. 【請求項7】 前記の哺乳動物が人間である、請求項6の方法。
  8. 【請求項8】 前記の組換え複製欠陥アデノウイルスが、E1a/E1b 二重変異
    体である、請求項1の方法。
  9. 【請求項9】 組換えアデノウイルスによる治療に対する患者の腫瘍の感受
    性を診断する方法であって、ただし前記の腫瘍が、腫瘍抑制因子p53 を有する新
    生細胞を含有するものであり、前記の組換えアデノウイルスが、機能性の腫瘍抑
    制因子遺伝子産物p53 と結合することができるウイルスガンタンパク質の発現を
    欠失する特性を有するものであり、そして前記の新生細胞のミスマッチ修復活性
    を検査すること、並びに前記の新生細胞が、前記活性を欠失又は実質的に欠失し
    ているかどうかを決定することを含んで成る前記方法。
  10. 【請求項10】 前記の組換え複製欠陥アデノウイルスがE1b 変異体である
    、請求項9の方法。
  11. 【請求項11】 前記の組換え複製欠陥アデノウイルスが5型アデノウイル
    スdl 1520 である、請求項10の方法。
  12. 【請求項12】 前記のミスマッチ修復活性を酵素により検査する、請求項
    9の方法。
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