【発明の詳細な説明】
多搬送波伝送システムにおいてデータを部分的に
変調及び復調するための改善された方法
発明の分野
本発明は、データの多搬送波伝送のためのシステムに関し、特に、かかるシス
テムで使用するデータのサブセットの送信及び受信を行うための改善された方法
に関する。
発明の背景
多搬送波(multicarrier)システムでは、固定帯域幅を有する通信経路が、異な
る周波数を有する複数の副帯域へと分割される。該副帯域の幅は、各副帯域にお
ける歪みを当該帯域毎に単一の減衰及び移相によりモデル化することが可能とな
るよう十分に小さく選定される。各帯域におけるノイズレベルが既知であれば、
各帯域で送られるデータの量は、チャネルで得られるSN比と一致する最大数の
シンボルを有するシンボルセットを選択することにより、最適化することが可能
である。各副帯域をその最大容量で使用することにより、通信経路で送信するこ
とができるデータの量が最大となる。
実際には、かかるシステムは、高速フーリエ変換その他の以下で詳述する変換
を利用する一組のディジタルフィルタにより実施される。M個の副帯域へと分割
された通信経路を介して単一のデータストリームが伝送される場合について考察
する。各通信サイクルにおいて、該データストリームのうちの送信すべき部分が
、様々な通信チャネルの容量に一致するよう選択されたM個のシンボルへと変換
される。各シンボルは、対応する副搬送波の振幅である。通信経路上へ送られる
べき時間領域(time domain)信号は、各々の副搬送波をその対応する振幅で変調
し、次いで該変調後の搬送波を加算して通信経路に送るべき信号を形成すること
により、得られる。該操作は、通常は、M個のシンボルのベクトルを直交変換に
より変換して、通信経路上で順次送られるM個の時間領域値を生成することによ
り、実施される。該通信経路の他端では、M個の時間領域値が蓄積され、及び逆
変換により変換され、チャネル中で発生した減衰及び移相を補正するよう変換後
のデ
ータの等化を行った後に、元のM個のシンボルが回復される。
マルチユーザシステムでは、ユーザと中央オフィス又はヘッドエンドターミナ
ルとの間のメッセージのために通信チャネルの一部が各ユーザに割り当てられる
。基本的に、各ユーザは、一組のM個のフィルタを使用して、中央オフィスから
送られてくるメッセージをデコードし、及び次いでユーザにとって問題となる情
報を含むサブチャネルを選択することが可能である。同様に、各ユーザは、一組
のディジタルフィルタを使用して該ユーザの搬送波を変調させることが可能であ
る。中央オフィスからのメッセージをデコードするのに必要な計算上の負荷は、
フーリエ変換ベースのエンコードシステムが使用される場合には、「MlogM」と
いうオーダーとなる。この計算上の負荷は、各ユーザの場所におけるハードウェ
アコストのうちのごく僅かな部分に相当する計算ハードウェアしか要求しないも
のである。このため、任意の所与のユーザについてM個の副帯域のうちの一部し
かデータを含まないことが意図される場合に一層少ないハードウェアしか必要と
しないシステムを得ることが有利である。
広範には、本発明の目的は、改善された多搬送波伝送システムを提供すること
にある。
本発明の更なる目的は、マルチユーザシステムにおける各ユーザが、データス
トリームのうち特定のユーザを意図した部分のみを、データストリーム全体のデ
コードに要する計算負荷よりも低い計算負荷でデコードすることを可能にする、
多搬送波伝送システムを提供することにある。
本発明の上述その他の目的は、以下の本発明の詳細な説明及びそれに関連する
図面から当業者には明らかとなろう。
発明の概要
本発明は、通信チャネルからシンボルのサブセットを抽出し又は通信チャネル
にシンボルのサブセットを挿入するためのデコーダ及びエンコーダを備えている
。この場合、前記シンボルは、M個の正弦搬送波の振幅として伝送される。デコ
ーダは、1フレーム周期中にM個の正弦搬送波を変調させることにより生成され
たアナログ信号からK個のシンボルSp,...,Sp+K-1を回復させる。各搬送波は
、M個のシンボルのうちの1つの値に比例する振幅で変調され、即ちi番目の搬
送波
はシンボルSiにより変調される。K個のシンボルは、M個のシンボルの連続的
なサブセットである。デコーダは、通信チャネル上の変調信号のダウンコンバー
トを行ってダウンコンバート信号を生成するダウンコンバータを備えており、こ
の場合、Sp,...,Sp+K-1に対応する搬送波は0から始まる周波数を占めている
。アナログディジタルコンバータは、各フレーム周期毎にダウンコンバート信号
からK個の時間領域サンプルを生成する。これらの時間領域サンプルは、オーバ
ーラップ変換(overlapped transform)に基づき、時間領域−周波数領域コンバー
タにより、シンボルSp,...,Sp+K-1を表すK個の周波数領域値へとコンバート
される。エンコーダは、K個のシンボルS1,...,SKを、K個の正弦搬送波の振
幅としてエンコードし、該K個の正弦搬送波は、M個の正弦搬送波からなる信号
中の連続する搬送波ブロックから構成され、該搬送波の各々は、1フレーム周期
に等しい時間についてのシンボルのうちの1つの値により決定される振幅を有す
る信号により変調されている。エンコーダは、K個のシンボルからK個の時間領
域サンプルを生成する周波数領域−時間領域オーバーラップ変換を有しており、
該時間領域サンプルは、K個のシンボルのうちの1つの値により決定される振幅
を有する信号により各々変調されているK個の正弦搬送波からなる変調された搬
送波を表すものである。ディジタルアナログコンバータは、K個の時間領域サン
プルをアナログ信号へと変換する。次いで、S1により変調された正弦搬送波が
、M個の正弦搬送波からなる一組の正弦搬送波のうちのp番目(p≧0)の搬送
波と等しい周波数を有するように、前記アナログ信号がアップコンバートされる
。
図面の簡単な説明
図1は、多搬送波送受信器を示すブロック図である。
図2は、本発明によるデコーダを利用した受信器200を示すブロック図である
。
図3は、本発明によるエンコーダを利用した送信器を備えた通信システムの一
部を示すブロック図である。発明の詳細な説明
本発明が動作する態様は、多搬送波送受信器100のブロック図を示す図1を参
照することにより一層容易に理解されよう。該多搬送波送受信器100は、通信リ
ンク113上でデータを伝送する。入力データストリームはシンボル生成器102に
より受信され、該シンボル生成器102は、一連のデータビットを、レジスタ104中
に格納されるM個のシンボルS1,S2,...,SMへと変換する。各シンボル毎の考
え得る状態の数は、送信チャネル113上の対応する周波数帯域におけるノイズレ
ベルによって決まることになる。本発明の説明のためには、各シンボルが、0か
ら何らかの所定の上限値まで絶対値が変動する数値であり、及び一連のデータビ
ットがMよりも遥かに大きいものである、という点に留意すれば十分である。
多搬送波送受信器100は、シンボルSiを狭い周波数帯域における信号の振幅で
あるかのように取り扱う。周波数−時間領域変換回路106は、1からMまでのi
について、周波数成分Siを有する時間領域信号Xiを生成する。該時間領域信号
はシフトレジスタ108内に格納される。該変換は、完全再構築型(perfect-recons
truction)又は略完全再構築型(near-perfect-reconstruction)のフィルタバンク
対に基づくオーバーラップ変換である。P.P.Vaidyanathan著の「Multirate Syst
ems and Filter Banks」(Prentice Hall,Englewood Cliffs,NJ,1993)を参照さ
れたい(なお、本引用をもってその開示内容全体を本書中に包含させたものとす
る)。これについて説明するためには、かかるフィルタバンク対がM個の別個の
「合成」フィルタfi(i=1〜M)から構成される点に留意すれば十分である
。各フィルタは、長さW(W>M)をしている。該フィルタバンク対の第2の部
分は、一組の「分析」フィルタhi(i=1〜M)であり、これもまた長さWを
有している。該フィルタは、次の関係を満たし、また略完全再構築型フィルタの
場合には次の関係をほぼ満たすことになる。
ここで、x≠yの場合にはδx,y=0、及びx=yの場合にはδx,y=1である。
量W/Mは、正の整数であり、以下の説明では変換の「種(genus)」と呼ばれる
ことになる。一般には、量W=Mg(M及びgは両方とも整数)である。
周波数領域−時間領域オーバーラップ変換は、多搬送波送受信器で使用される
場合に幾つかの利点を有する。殆どの先行技術による多搬送波システムは、ブロ
ックフーリエ変換(FFT)を利用したものである。かかるサブチャネル化のた
めの方法は、−13dBでサイドローブを有するフィルタを採用しており、これは、
チャネル歪みが存在する場合に近接する周波数帯域間での情報の著しい混合に通
ずるものとなる。また、FFTフィルタのゆっくりとしたロールオフ(rolloff)
は、ラジオ局といった狭帯域の干渉が、かかる干渉が作用しているチャネルに隣
接した多数のチャネルの有用性を破壊することを可能にする。これとは対照的に
、オーバーラップ変換を用いるフィルタバンクは、変換の種に依存して決まる大
きさを有するサイドローブを有しており、該種の値が妥当なものである場合には
大幅に低いサイドローブを提供するものとなる。該低いサイドローブは、混合の
大幅な低減、及び狭帯域の干渉に対する免疫性の大幅な増大に通じるものである
。
有用な種類のかかるフィルタの1つとして、余弦変調型(cosine modulated)フ
ィルタバンクがある。かかるフィルタバンクでは、最初に長さWのFIRフィル
タh[n]の「多相成分」でデータをウィンドウ化し(windowing)、次いで結果的に
得られる2M個の多相ウィンドウ出力の適当な組み合わせにM点離散余弦変換(M
-point Discrete Cosine Transform(DCT))を適用することにより、分析フィルタ
hiが得られる。同様に、DCTを適用し、次いで多相成分を同じウィンドウh[n
]でウィンドウ化することにより、合成変換が得られる。
図1に関して説明した種類の送受信器に関連して使用した場合、M個のシンボ
ルストリームSiの各々は、Mの因子でアップサンプリング(upsample)され、次
いで合成フィルタバンクマトリクスのi番目の応答fiと一緒にされて、次式で
示す出力yiが生成される。
次いで、M個の出力yiが加算されて、シフトレジスタ108にロードされるXk(
次式に示す)が生成される。
各シンボルストリームSiのグループをなすg個のサンプルは、オーバーラップ
型周波数領域−時間領域変換を実行するためにメモリ中に保持されなければなら
ない、ということに留意されたい。ここで、gは変換の種である。
シフトレジスタ108の内容は、通信リンク113を介して実際に送信されること
になる信号の次のセグメントをディジタル形式で表すものとなる。実際の送信は
、ディジタル値をD/Aコンバータ110を用いてアナログ電圧に変換した後に(
おそらくは無線周波数へのアップコンバートの後に)所定クロックに合わせて送
信リンク113上に出力することにより行われる。クロック107は、該動作のための
タイミングパルスを提供する。D/Aコンバータ110の出力は、通信リンク113上
に出力される前にフィルタ112によりローパスフィルタリングされる。M個の時
間領域サンプルを通信リンク上にクロックに合わせて出力するのに要する時間が
、フレーム周期と呼ばれるものとなる。1フレーム周期中にM個のシンボルが送
信される。次の1フレーム周期中には、シンボル生成器102により新しいM個の
シンボルが生成されてレジスタ104にロードされ、この場合に、各々のg要素シ
ンボルストリームSiがFIFO方式で1回だけシフトされ、このため、各シン
ボルストリーム中の「最も古い」又は最も最近でない時期に使用された要素が除
去される。なお、連続するフレーム間には間隔は存在しないものとする。
送信リンク113の受信端では、送信セグメントが回復される。通信リンク113上
で受信された信号は、高周波数ノイズ遷移による影響を低減させるためにローパ
スフィルタリングされる。次いで、該信号は、ディジタル化されて、シフトレジ
スタ118中へシフト入力される。M個の値がレジスタ118内へシフト入力されると
、その内容が時間領域−周波数領域変換回路120を介して変換されて、一組の周
波数領域シンボルS'iが生成される。この変換は、周波数−時間領域変換106に
より生成される変換の逆である。通信リンク113は、一般にXiにより表される信
号の減衰及び移相の両方を行うものとなることに留意されたい。このため、ロー
パスフィルタ114及びA/Dコンバータ118により受信される信号の値は、元の信
号の値とは異なることになる。したがって、シフトレジスタ118の内容は、対応
するシフトレジスタ108からの値とは一致しないことになる。このため、シフト
レジスタ118の内容はX'iで表される。同様に、時間−周波数領域変換の出力も
また、元のシンボルSiとは異なることになり、このため、レジスタ122の内容は
、S'iにより表される。イコライザ124は、通信リンク113を介した伝送の結果と
して生じる減衰及び移相についてS'iの補正を行って元のシンボルを回復させ、
該元のシンボルがバッファ126に格納される。更に、イコライザ124は、
送信機と受信器との間の同期誤差に起因するシンボル間干渉についてシンボルを
補正する。これらの補正は、イコライザ124の訓練に使用される既知の訓練用サ
ンプルをシステムを介して送ることにより達成される。最後に、シンボルデコー
ダ128によりバッファ126の内容がデコードされて元のデータストリームが再生さ
れる。
変換のエンコード及びデコード処理は、好適には、FFT、高速DCT、又は
それらと等価なものに基づく高速アルゴリズムを使用して行われる。しかし、か
かる高速アルゴリズムが利用される場合であっても、データストリームからM個
のシンボルを回復させることの計算上の複雑さは、M(g+0.75log2M)という
オーダーとなる。上述のように、デコードの実施に必要となる計算用ハードウェ
アは、かかる送受信器の受信部のコストのうちのごく僅かなものとすることがで
きる。本発明は、M個のシンボルの一部しか問題となる受信器にとって意図され
ていない場合に、計算上の負荷を軽減するものとなる。
各フレームで送られるM個のシンボルのうちのK個しか受信器にとって意図さ
れていない場合について考察する。ここで、M/K=L(K,Lは整数)である
と仮定する。本発明が利用するデコード機構では、K個のシンボルのデコードに
必要となる計算上の複雑さは、余弦変調型フィルタバンクを使用してシンボルの
エンコード及びデコードが行われる場合には、K(g+0.75log2K)というオー
ダーのものとなる。
リモートステーションに周波数fpを中心とするK個の副帯域が割り当てられ
、該一組のK個の副帯域が総帯域幅Bを有している場合について考察する。かか
るK個のシンボルは、以下の説明ではSp〜Sp+k-1と示すこととする。本発明は
、該K個のシンボルがK個の副帯域のみについて動作するKシンボル/フレーム
の時間領域−周波数領域変換によりかかるK個のシンボルが生成されるようにK
個のトーン(tone)をベースバンドへと移すことと等価な、かかるシンボルの複雑
なダウンコンバートを提供する。次いで、一層少ない計算上の複雑さを有するK
個のシンボルのオーバーラップ変換が適用されて、信号の復調が行われる。
それらK個の副帯域と、該K個の副帯域よりも上または下の周波数を有する任
意の副帯域との間に、保護帯域が存在するものと仮定する。ここで図2を参照
する。同図は、本発明による受信器200を示すブロック図である。該受信器200は
、最初に通信リンク113上の変調信号をダウンコンバートし、次いで、図1に示
す送信器101により送信されたM個のシンボルからなる各フレーム毎にK個の時
間領域サンプル値を生成する速度で前記ダウンコンバートされた信号をサンプリ
ングすることにより、動作する。最初に入力信号がミキサ201,202及びローパス
フィルタ202,212によりダウンコンバートされて、周波数領域におけるゼロ周波
数を中心とする信号の直角分が生成される。前記ローパスフィルタの出力は、A
/Dコンバータ203,213によりディジタル化される。これらのコンバータは、ク
ロック周波数Cで動作する(ここで、C=FK/Mであり、Fは、サンプルがレ
ジスタ108からD/Aコンバータ110へシフト入力される際の周波数である)。各
A/Dコンバータは、1フレームにつきK個のサンプルを生成する。該サンプル
が、乗算回路204,214及び加算回路215により組み合わされてデータストリームが
形成される。該データストリームにおいて、偶数番目のサンプルは、A/Dコン
バータ202の出力に(−1)k/2を乗算したものであり、奇数番目のサンプルは、
A/Dコンバータ212の出力に(−1)(k-1)/2を乗算したものである。ここで、
kはA/Dコンバータへのクロック入力のクロックサイクル数である。該データ
ストリームはレジスタ220中へシフト入力される。A/Dコンバータ202により出
力される奇数番目のサンプル及びA/Dコンバータ212により出力される偶数番
目のサンプルは、ゼロの乗算により事実上破棄される。したがって、乗算回路20
4,214及び加算回路215は、適当なサインチェンジ(又は符号反転)を有する2つ
のデータストリームをインタリーブする(又は交互に重ねる)効果を有するもの
となる。各フレームで、K個のサンプルがレジスタ220にシフト入力されること
になる。次いで、これらの時間領域サンプルは、時間領域−周波数領域変換回路
221により、対応するシンボル値へと変換される。該時間領域−周波数領域変換
が、余弦変調型フィルタバンクとして実施される場合には、一層少数のK点変換
を、K点DCTとファクタL=M/Kによるダウンサンプリングにより元のウィ
ンドウh[n]から得られたウィンドウhK(次式参照)とを用いて実施することが
可能である。
hK[n]=h[nL]
このダウンサンプリングされたウィンドウが使用される場合には、A/Dコン
バータ203,213は、完全再構築型の特性を維持するために、(M−K)/(2K
)という僅かにずれた時間でそれぞれの信号をサンプリングしなければならない
。
図2に示すシステムを実際に実施する場合には、次のような代替的な実施態様
を使用することが望まれる可能性がある。即ち、該代替的な実施態様では、A/
Dコンバータ203,213が最終的なサンプリングレートの数倍(例えば4倍又は8倍
)でサンプリングを行い、その後、それらの信号をFIRディジタルローパスフ
ィルタに通し、次いで当該数倍でダウンサンプリングを行った後、乗算回路204,
214に入力する。この方法は、ダウンサンプリングに起因するエーリアシング(al
iasing)によって誤差が生じる場合、及び、出力その他の制限によってフィルタ2
02,212に十分に高性能なアナログローパスフィルタを使用することが妨げられる
場合に、好適なものである。
アナログローパスフィルタ202,212の理想的でない性質は、本システムの実際
の実施に別の変更を課すものとなる。これは、完全な組をなすK個の副帯域を使
用することができなくなるからである。特に、該組の各端部における幾つかの副
帯域は、ローパスフィルタの動作により破壊されることになる。このため、幾つ
かの副帯域は、保護トーンとして別に確保しておき、Ko<Kの副帯域のみを実
際のデータの送信に使用すべきである。
シンボル値は、シンボルが通信リンク113上の歪みにより破壊されている可能
性を反映するようにS'p〜S'p+k-1で示される。かかる歪みが生じる場合には、
シンボルは、図1を参照して上述したようにイコライザにより破壊される可能性
がある。
図2に示す構成は、対象となる帯域、即ちシンボルSp〜Sp+k-1に対応する帯
域がゼロ周波数を中心とするように入力信号が最初にダウンコンバートされるダ
ウンコンバートシステムと等価なものである。複雑な信号をローパスフィルタリ
ングした後、Spがベースバンドにくるように該信号がアップコンバートされる
。次いで、該アップコンバートされた信号が、Kサンプル/フレーム周期という
サンプリングレートでサンプリングされる。図2に示す回路は、その等価回路よ
りも好適なものである。これは、該回路によりアップコンバートの必要がなく
なるからである。更に、図2に示す回路におけるA/Dコンバータは、前記等価
なダウンコンバート設計におけるA/Dコンバータのたった半分のサンプリング
レートで信号をサンプリングすれば良いものとなる。
1グループをなすK個のシンボルは、受信器に対する上述の動作の逆を行う送
信器を用いることにより、通信リンク上に挿入することができる。ここで図3を
参照する。同図は、図1に示す受信器150等の受信器により1つのMシンボルフ
レームにおいてK個のシンボルがシンボルSp〜Sp+k-1として受信されるように
K個のシンボルを通信ストリーム中に挿入するための送信器300のブロック図で
ある。各フレームにおける残りのシンボルはシステム中の他の送信器により生成
される。それら送信器の全てが、それぞれのシンボルを通信リンク333上の受信
器に送る。送信器300は、各フレーム周期中にK個のシンボルを受信する。該シ
ンボルはレジスタ301へシフト入力される。該レジスタ301の内容は、2つの別個
の周波数領域−時間領域変換手段302,312へ1フレームにつき1回入力される。
周波数領域−時間領域変換手段302,312の各々は、1フレーム周期につきK個の
時間領域サンプルを生成し、該サンプルはレジスタ303,313中にそれぞれ格納さ
れる。該周波数領域−時間領域変換手段は、分析フィルタバンク又はオーバーラ
ップ変換手段302、及び該変換手段302の出力のヒルバート変換を計算する相捕オ
ーバーラップ変換手段312である。該変換手段302,312は共に、チャネル333上へ
の後続の単一側波帯変調のための信号の同相及び直角成分を生成する。受信器に
おける完全なMシンボル時間領域−周波数領域変換120が、ローパスプロトタイ
プフィルタh[n]を有する余弦変調型フィルタバンクに基づくものである場合には
、送信器におけるKシンボル変換手段302,312は、h[n]をファクタL=M/Kで
ダウンサンプリングすることにより得られるローパスプロトタイプフィルタhk[n
](即ちhk[n]=h[Ln])に基づくものとすることが可能である。
次いで、シフトレジスタ303,313からのK個の時間領域値が、D/Aコンバー
タ304,314へシフト入力されて、サンプリングレートC=FK/M(FはA/D
コンバータ116からレジスタ118へサンプルがシフト入力される速度)でサンプリ
ングされたアナログ信号が生成される。余弦変調及び重畳型(cosine-modulated
lapped)変換の場合に、プロトタイプフィルタが上述のダウンサンプリング式に
よ
り得られる場合には、D/Aコンバータ304,314は、完全再構築型の変換特性を
維持するために、(M−K)/(2K)という僅かな時間オフセットでそれぞれ
の信号をサンプリングしなければならない。D/Aコンバータ304,314の出力は
、ローパスフィルタ305,315に通される。該ローパスフィルタ305,315の出力は、
ミキサ306,316によりアップコンバートされる。該ミキサ306は、偶数の索引が付
された(even-indexed)サンプルを全てゼロにし(zeros out)、ミキサ316は、奇数
の索引が付された(odd-indexed)サンプルを全てゼロにする。このため、ミキサ
の出力が加算器317により加算されると、その結果は、ローパスフィルタ305,315
からのサインチェンジ(又は符号反転)及び中央周波数Fpまでの変調を有する
交互のサンプルをインターリーブする(即ち交互に重ねた)ことになる。同相及
び直角変換手段301,312と相まって、これは、通信リンク333上のFpを中心とす
る周波数帯域への部分帯域信号の単一側波帯アップコンバートを達成する。
上述のようにして生成されたアナログ信号は、加算器330により通信リンク333
上の他の信号と組み合わされる。該組み合わされた信号は、符号340〜343で示す
要素からなるM点/フレーム受信器によりデコードされる。特に、M個の時間領
域点X'1,...,X'Mが、A/Dコンバータ340により各フレーム周期で回復され、
該A/Dコンバータ340が、該回復された点をレジスタ341にシフト入力する。次
いで、M点時間領域−周波数領域変換回路342が、レジスタ343に格納されている
M個のシンボルS1,...,SMを回復させるために、レジスタ341に格納されている
値を変換する。該変換回路342はまた、図1に関して上述したタイプのイコライ
ザ回路並びに受信器150に関して上述したその他の構成要素を備えることが可能
である、ということが理解されよう。それら構成要素は、図の単純化のために図
3では省略されている。
当業者には自明であるように、同相及び直角出力の組み合わせ並びにアップコ
ンバートを成功させるための搬送波周波数Fpへの変調を実施するための等価な
手段が存在する。例えば、D/Aコンバータ304,314は、全体的なサンプリング
レートの半分でサンプリングを行うことが可能であり、この場合、当該サンプル
の1/2が異相となる。次いで、ミキサ306,316及び加算器317が、それらのアナ
ログ信号の組み合わせを行い、完全なサンプリングレートでの情報を包含する
1つの信号が生成される。
図3に示したシステムを実際に実施する場合には、次のような代替的な実施態
様を使用することが望まれる可能性がある。即ち、該代替的な実施態様では、シ
フトレジスタ303,313の内容が、FIRディジタルローパスフィルタに通され、
次いで、何らかの整数ファクタ(例えば2、4、又は8)でアップサンプリング
が行われた後、D/Aコンバータ304,314へ入力される。該D/Aコンバータ304
,314は、元のサンプリングレートの数倍で(上記と同じ整数ファクタを用いて)
サンプリングを行うことになる。該代替的な方法は、アップサンプリングに起因
するイメージング(imaging)が問題となる場合、及び出力その他の制限によりフ
ィルタ305,315に十分に高性能なアナログローパスフィルタを使用することが妨
げられる場合に、好適なものである。
アナログローパスフィルタ305,315の理想的でない性質は、本システムの実際
の実施に別の変更を課すものとなる。これは、完全な組をなすK個の副帯域を使
用することができなくなるからである。該組の各端部における幾つかの副帯域は
、該ローパスフィルタの動作により破壊されることになる。該破壊される副帯域
の数は、理想的なフィルタからの実際のフィルタの偏差によって決まることにな
る。このため、幾つかの副帯域は、保護トーンとして別に確保しておき、KO<
Kの副帯域のみをデータの送信に使用すべきである。
本発明に対する様々な修正は、上記の説明及び図面から当業者には自明のもの
であろう。このため、本発明は、請求の範囲に記載の範囲にしか制限されないも
のである。
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フロントページの続き
(72)発明者 タネス,マイケル
アメリカ合衆国マサチューセッツ州02166,
ニュートン,キングスウッド・ロード・63
【要約の続き】p+K-1
を表すK個の周波数領域値へとコンバートされ
る。エンコーダ(200)は、K個のシンボルS1,...,SKを
K個の正弦搬送波の振幅としてエンコードし、該K個の
正弦搬送波は、M個の正弦搬送波からなる信号中の連続
する搬送波ブロックから構成され、該搬送波の各々は、
1フレーム周期に等しい時間についてのシンボルのうち
の1つの値により決定される振幅を有する信号により変
調される。エンコーダ(300)は、K個のシンボルからK
個の時間領域サンプルを生成する周波数領域−時間領域
オーバーラップ変換(302,312)を有しており、該時間領
域サンプルは、K個のシンボルのうちの1つの値により
決定される振幅を有する信号により各々変調されている
K個の正弦搬送波からなる変調された搬送波を表すもの
である。ディジタルアナログコンバータ(304,314)は、
K個の時間領域サンプルをアナログ信号へと変換する。
次いで、S1により変調された正弦搬送波がM個の正弦
搬送波のうちのp番目(p≧0)の搬送波と等しい周波
数を有するように、前記アナログ信号がアップコンバー
トされる。