JP2002503887A - トンネル効果磁気抵抗体およびこれを用いた磁気センサ - Google Patents

トンネル効果磁気抵抗体およびこれを用いた磁気センサ

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ベルナール ディエニー,
ローランス ジャコモニ,
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コミツサリア タ レネルジー アトミーク
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Abstract

(57)【要約】 − 第1の自由磁化磁性材料層(12)と、− 電気的絶縁材料から構成された「バリア」層(16)と、− 第2の固定磁化磁性材料層(14)とを積層状態に配してなるトンネル効果磁気抵抗体である。この発明によれば、第1の層(12)の厚さは10nmより小さい。この発明は、特に、磁気データ読み取りヘッドの製造に適用される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】 (発明の分野) この発明は、「磁気バルブ」磁気抵抗体としても知られる、トンネル効果磁気
抵抗体およびそのような磁気抵抗体を用いた磁気センサに関するものである。
【0002】 磁気センサは、磁場または磁束を感知する。これにより、この発明に係る磁気
センサは、例えば、磁気データ記憶媒体に記録されたデータを読みとるために使
用される。さらに、この発明は、磁気RAM素子を製造するために使用すること
もできる。
【0003】 磁気センサは、配線を流れる電流を、該配線の近傍に形成される磁場を測定す
ることにより決定するためにも使用される。 また、位置センサまたは磁気抵抗型コンパスのような、磁気センサの他の用途
も想定することができる。
【0004】 さらに一般には、この発明は、磁場、特に、弱い磁場、すなわち、数A/m〜
数1000A/mの範囲の磁場を検出または測定することができる全ての種類の
センサまたは磁気抵抗体に関するものである。
【0005】 (従来の技術) 最近まで、特に、磁気記録の分野において、弱い磁場を検出するために使用さ
れる磁気抵抗センサは、そのほとんどが、「磁気抵抗異方性」効果に基づくセン
サであった。
【0006】 磁気抵抗異方性効果は、ニッケル、コバルトまたは鉄系合金のような強磁性遷
移金属に見ることができる。この効果は、金属を通過して流れる測定電流と材料
の磁化方向との間の角度に依存した磁性材料の抵抗率の変化からなっている。
【0007】 Δρ/ρとして表現される、磁性材料の抵抗率ρにおける相対変化は、固体強
磁性遷移金属においては、1kA/m程度の磁場に対して、室温で4〜5%に達
する。しかしながら、同じ材料が、厚さ15〜30nmの薄い層に堆積される場
合には、この大きさは1〜2%に低減される。この厚さの範囲は、現在の磁気抵
抗センサを製造するために使用されているものである。したがって、これらのセ
ンサの抵抗率は制限される。さらに、それらの応答は線形的ではない。すなわち
、抵抗率の変化は、測定電流と磁化方向との間の角度の余弦の2乗に比例する。
【0008】 「巨大磁気抵抗」効果に従って作動するセンサは公知である。この効果は、最
初に、鉄−クロム型多層構造において発見され、その後、強磁性遷移金属層およ
び非磁性金属層を変更することによって構成された他の多層システムにおいて発
見された。 これらのシステムにおいて、磁気抵抗効果は、本質的に、連続した強磁性層の
磁化の相対方向の変化に関連している。この効果は、通常、「巨大磁気抵抗」ま
たは「スピンバルブ効果」の語句を用いて参照される。
【0009】 スピンバルブ型磁気抵抗体において、感応強磁性層、すなわち、自由磁化層は
、最大磁気抵抗を得るために6〜12nmの厚さを有している。6nm以下では
、磁気抵抗は、かなり小さい応答振幅を有している。したがって、この種の磁気
抵抗体は、低磁束量に対する感度が制限される。 この明細書の末尾において参照されている文献1は、磁場センサを製造するた
めの前記巨大磁気抵抗効果の使用の非常に一般的な記述を与えている。
【0010】 最後に、伝導電子のためのポテンシャルバリアを構成する絶縁材料の薄膜が2
つの磁性材料層の間に挿入されている、金属絶縁材料金属トンネル効果接合にお
いて磁気抵抗効果が存在することが知られている。 磁性材料は、例えば、Fe,Co,Niまたはそれらの合金から選択され、厚
さ数nmの絶縁材材料層は、例えば、Al,MgO,AlN,Ta ,HfO,NiOから選択された材料から構成されている。
【0011】 この種の接合において、該接合を電流源に接続し、または、2つの磁性材料層
間に電圧を印加することにより、トンネル効果によって電子がバリアを通過する
ように強制される場合には、絶縁材料によって構成されているバリアのいずれか
の側における磁性材料層の磁化の相対的な方向に応じて、接合のコンダクタンス
Gが(光学的な偏光子−検光子システムのように)変化することが観測される。
【0012】 「磁気バルブ効果」と呼ばれるこの効果は、最初に、低温においてのみ観測さ
れ、その大きさは非常に小さいものであった。 しかしながら、Fe/Al/Al/FeCo形式の接合を伴う特定の磁
性材料/絶縁材料/磁性材料形式の構造は、室温において、17%程度の大きさ
で、コンダクタンスの変化を得ることを可能にしている。
【0013】 磁気バルブ効果構造は、例えば、文献2,3,4に開示されている。同様に、
トンネル効果接合に対する実験は、文献5,6に開示されている。これらの文献
は、この明細書の末尾において参照されている。
【0014】 近年、特に、絶縁バリアの品質制御に関して、かなり進歩した接合構造が開発
されている。 絶縁バリアは、例えば、接合の金属電極の内の1つに、アルミニウム薄膜を堆
積し、その後、酸素プラズマでそのアルミニウム層を酸化することにより、製造
される。
【0015】 したがって、酸素プラズマによる酸化時間によって、絶縁バリアの厚さおよび
電気抵抗を検査することができる。 また、空気中でアルミニウム層を酸化することも可能である。この場合には、
その結果および絶縁バリアの品質は、あまり再現可能ではない。
【0016】 M−O−M′と表される磁性材料−酸化物−磁性材料形式の構造を有する磁気
バルブ効果接合においては、磁性材料は、磁性材料層の内の一方(例えば、M′
a)の磁化は所定の方向に固定された状態に維持されるように選択される一方、
他層(この例ではM)の磁化方向は、与えられた磁場の変化に従うことができる
。第1の層は「固定層」と呼ばれる一方、第2の層は、「感応層」と呼ばれる。
スピンバルブ構造に関連する磁気バルブ接合の利点は、大きな測定振幅(5〜9
%に代えて17%)を提供することができることである。
【0017】 (発明の概要) この発明は、大きなコンダクタンス変動振幅を与える、上述したようなトンネ
ル効果磁気抵抗体に関連している。 また、この発明は、改善された感度を有し、よりコンパクトなサイズを提供す
る磁気抵抗体に関するものである。
【0018】 この発明は、特に、超高密度磁気記録(10Gbit/inchより大きい)のため の磁気センサに関し、非常に少量の磁束を使用してデータを読み出すことを可能
としている。
【0019】 これらの目的を達成するために、この発明は、さらに詳細には、 − 自由磁化磁性材料からなる第1の層と、 − 電気絶縁材料からなる「バリア」層と、 − 固定磁化磁性材料層からなる第2の層とを 積層した状態で具備するトンネル効果磁気抵抗体に関するものである。
【0020】 この発明によれば、第1の磁性材料層の厚さは、7nm以下である。 特に良好な磁気抵抗感度は、第1の磁性材料層の厚さが0.2nm〜2nmの
範囲にあるときに得ることができる。
【0021】 第1の磁性材料層が極端に薄いことによって、特に、磁気抵抗体は、供給され
る磁束の小さな変動値に対して、大きな振幅のコンダクタンス変化を示す。 したがって、そのような磁気抵抗体は、高いデータ密度のデータ媒体、例えば
、ハードディスク上のデータを読み出すのに適している。すなわち、ハードディ
スクに記憶されているデータの密度が高ければ高いほど、読み取りヘッドによっ
て取り出される2つの隣接したデータビット間の磁気遷移によって生起される磁
束φの量は小さくなる。この磁束は、φ≒L・e・Ms・Δθによって与えられ
る感応磁性材料層の磁化の回転Δθを誘起する。この式において、L・eは感応
磁性材料層の磁束φが入る断面積を示し、eは、前記感応層の厚さ、Msはその
自発磁化を表している。上記式は、磁束φの大きさが等しい場合には、感応層の
厚さeが薄ければ薄いほど、その磁化の回転Δθは大きくなるということを意味
している。
【0022】 接合のコンダクタンスG(Δθ)は、下式に従って変化する。 G(Δθ)=Gantiparallel+(Gparallel−Gantiparallel)((1+co
s(Δθ))/2)
【0023】 この式において、GparallelおよびGantiparallelは、それぞれ、平行または
反平行の形態におけるコンダクタンスを表している。Δθが大きければ大きいほ
ど、コンダクタンス変化が大きくなり、したがって、センサの感度が高くなるこ
とがわかる。
【0024】 公知の従来の構造と比較するために、磁気抵抗異方性効果に基づく金属磁気抵
抗センサ、または、AMRでは、感応層の厚さは少なくとも15nmであること
を指摘しておく。そのようなセンサにおいて、感応層の厚さを大幅に低減するこ
とは困難である。すなわち、AMRセンサにおいて、コンダクタンス変動効果の
大きさは感応層の厚さが20nm以下の場合には、大幅に低下する。同様にして
、文献5,6に示されているように、トンネル効果接合において使用される電極
は、例えば、30nmより大きなかなりの厚さを有している。
【0025】 この発明の一側面によれば、固定磁化を有する第2の磁性材料層が、第1の磁
性材料層に匹敵する厚さで製造されてもよい。例えば、その厚さは、0.4〜2
nmである。
【0026】 第2の磁性材料層が薄い場合には、磁化が固定される第2の層と、磁化が自由
な第1の層との間の静磁気相互作用は小さい。このようにして、第1の磁性材料
層は、非常に小さい磁気抵抗体構造においてさえも、影響を受けることなく、そ
の自由磁化特性を良好に維持する。
【0027】 この発明の他の側面によれば、磁気抵抗体は、第1の磁性材料層Mと絶縁層O
との間に反強磁性層NMを具備していてもよい。この層NMの目的は、単一カテ
ゴリの伝導電子(または、層Mの磁化に平行なスピン電子、または、層Mの磁化
に反平行なスピン電子)に対する反射防止被覆を形成することである。これによ
り、トンネル効果によって絶縁バリアを通過する電子の効率的な偏光が増大し、
それによって、磁気抵抗体の大きさが大きくなる。
【0028】 この効果は、文献7に、理論的観点から説明されている。このスピンに依存し
た反射防止効果の物理的起源は、層NMの厚さが変化する場合には、周期M/N
Mの多層構造において観測される反強磁性層を通した磁気結合振動によるものと
同じである。このことは、N/NM境界面における電子反射係数が、層Mの磁化
に関連する電子スピンに依存するという事実に基づいている。これに関するさら
なる情報については、この明細書の末尾にリストアップされている文献8,9を
参照することができる。その結果、この発明に係るトンネル接合におけるこの選
択的スピン反射防止効果から利益を得るために、対応する周期M/NMの多層が
層NMの厚さに依存した結合振動を示すように磁性金属/反強磁性金属対を選択
することが必要である。これらの結合振動多層構造についてはかなりの文献が現
在利用可能である(例えば、文献8)。この文献は、材料M/NMを選択するた
めのデータベースとして使用することもできる。トンネル接合のための特に適正
な選択は、CoまたはCoリッチなCo1−xFe合金(xは0〜50%)か
らなる磁性金属層および反強磁性層のためのCuからなる層を使用することから
なっている。さらに、Co/Cu多層構造は、Cuを通してかなりの結合振動を
示すことが知られている。N,NM対の他の取り得る選択例は、(Fe,Cr)
、(Co,Ru)および(Fe,Au)である。層NMの厚さは、0〜約10n
m、好ましくは0.04〜3nmの範囲で変化してもよい。
【0029】 これらの反射防止層NMは、絶縁バリアOのいずれかの側の磁性材料層と絶縁
バリアとの間に挿入されていることが好ましい。 また、磁気抵抗体は、磁性材料層Mと層NMとの間の境界面、または、層NM
がない場合には、層Mと絶縁バリアOとの間に挿入される、少なくとも1つの磁
性材料またはドーピング層を具備していてもよい。 ドーピング層は、トンネル効果によってバリア層を通過する電子の偏光を増加
させることを可能にする非常に薄い層である。
【0030】 これらは、コバルト、鉄またはCo1−xFe合金から構成されていてもよ
い。ここで、xは0と1の間のパラメータである。必要であれば、ドーピング層
は少量の他の材料、例えば、ニッケルを含んでいてもよい。
【0031】 この発明は、例えば、上述した1以上の磁気抵抗体を具備する、データを読み
とるための磁気センサにも関連している。 この発明の他の特徴および効果は、添付図面を参照した以下の説明においてよ
り明確になる。この説明は、単に例示を目的としたものであって、この発明を網
羅的に示しているものではない。
【0032】 (図面の簡単な説明) − 図1は、この発明に係る磁気抵抗体の概略断面を示している。 − 図2は、図1の磁気抵抗体の磁性材料層における磁化方向を示す概略図で
ある。 − 図3,4,5は、磁気抵抗体の自由磁化磁性材料層の厚さの関数として磁
気抵抗体応答振幅を示すグラフである。
【0033】 (発明の実施形態の詳細な説明) 図1を説明する前に、この図はこの発明に係る磁気抵抗体の尺度を再現してい
ないことを特筆しておく必要がある。すなわち、明確化のために、いくつかの断
面の厚さは誇張表示されている。
【0034】 図1の磁気抵抗体10は、概して、自由磁化磁性材料12からなる第1の層1
2と、固定磁化磁性材料からなる第2の層14と、電気的絶縁材料からなり、第
1および第2の磁性材料層を分離する「バリア」層とを具備している。
【0035】 第1の磁性材料層12は、感応磁気抵抗層である。該第1の磁性材料層12は
磁気的に穏やかな材料、例えば、パーマロイ(登録商標)から構成されている。
これにより、その磁化は、印加される外部磁場の変化に容易に応答する。
【0036】 この発明によれば、この層は、その磁化が、弱い磁束の影響下において大きく
回転することができるように、非常に薄い。第1の磁性材料層12の厚さは、上
述したように、0.2〜2mmの範囲で選択されることが好ましい。
【0037】 第2の磁性材料層14は、例えば、好ましくは金属の反強磁性層と異方性を交
換することにより、固定磁化磁性材料からなっている。 図1の例では、第2の磁性材料層14は、反強磁性合金からなる固定層18と
接触し、かつ、結合している。固定層を製造するために使用することができる材
料には、合金:FeMn,IrMn,CrMn,CrPtMn,IrCrMn,
PtMn,NaMnが含まれる。
【0038】 第2の層14の磁性材料は、Fe,Co,NiおよびFe1-x-yCoxNiy合 金から選択されてもよく、FeリッチまたはCoリッチであること(yが0〜3
0%、xが0〜100%)であることが好ましい。さらに、第2の層14は、0
.4〜2nmの厚さで製造されることが好ましい。
【0039】 薄い第2の層14を製造することにより、(反強磁性層18と組み合わせて)
異方性を交換することによる磁化の固定を促進する利点が提供される。さらに、
磁気固定場は、固定層の厚さの逆関数である。これにより、薄い層の方が厚い層
よりも大きな固定場を有することになる。
【0040】 第2の磁性材料層14の厚さに関連する他の利点は、前記層のエッジ間に存在
しがちな漏れ場が低減されることである。 前記漏れ場を低減することにより、第1および第2の層間の寄生静磁気結合を
回避し、それによって、第1の磁性材料層12の磁気的に穏やかな特性を、薄い
横寸法(1ミクロン程度)を有する装置においてさえも維持することができる。
【0041】 バリア層16は、アルミナのような電気絶縁材料からなる薄い層である。その
厚さは、0.5nm〜数nmであることが好ましい。バリア層は、アルミニウム
層を酸素プラズマで酸化することにより得ることとしてもよい。
【0042】 符号20は、Fe,CoまたはCo−Fe合金のような材料からなる薄い層で
あって、第1の磁性材料層12とバリア層16との間に挿入された層を示してい
る。この薄い層20は、ドーピング層とも呼ばれ、トンネル効果によってバリア
層を通過する電子の偏光を増大させることができる。ドーピング層20の厚さは
、0.1〜0.4nmの間であることが好ましい。
【0043】 上述したドーピング層20と等価な他のドーピング層22も、第2の磁性材料
層14とバリア層との間に設けられている。 図1における符号24は、第1の磁性材料層12のドーピング層20と絶縁バ
リア層16との間に挿入された、Cuからなる層のような反強磁性金属層を示し
ている。反強磁性層の厚さは、0〜数nmの範囲で変化する。これは、上述した
ように選択的スピン反射防止層として機能する。反強磁性層24と等価な他の層
26は、絶縁バリア層16とドーピング層22との間に挿入されていることが好
ましい。
【0044】 第1の導体層30および第2の導体層32が、測定電流を磁気抵抗体の端子に
供給するために設けられている。これらの導体層は、第1および第2の磁性材料
層にそれぞれ電気的に接触している。
【0045】 第1の磁性材料層12は、1つ(またはそれ以上)の導電バッファ層28によ
って、第1の導体電流供給層30に接続されている。例えば、バッファ層は、T
i,V,Cr,Co,Nb,Ru,Ta,Wから選択することができる。バッフ
ァ層の役割は、磁気抵抗体の他の層の満足のいく成長を促進することを目的とし
ているので、磁気抵抗体の製造に関連している。
【0046】 バッファ層28の厚さは、1〜数nm程度である。この厚さは、磁気抵抗体全
体の厚さを増加させないように、従って、磁気抵抗体の磁極(端子)間の距離を
増加させないように、小さいことが好ましい。このことは、良好な線形分解能を
有する磁気トラック読み取りヘッドを得るために、特に好ましいことである。
【0047】 第2の導体電流供給層32は、固定層18によって第2の磁性材料層14に接
続されている。 磁気抵抗体が、磁気トラック読み取りヘッドにおけるセンサとして使用するこ
とを意図しているものである場合には、一般には、専門家に周知の「垂直」ヘッ
ドに提供される磁気スクリーンは、導体電流供給層30,32として使用される
ことが好ましい。前記スクリーンは、しばしば、パーマロイ(登録商標)または
CoZrB合金から構成されている。
【0048】 符号40,42は、電流発生器および電流変動測定装置をそれぞれ示している
。これらの装置は、電流供給層30,32間に固定されている。
【0049】 電流発生器40は、磁気抵抗体を通して積層方向にほぼ垂直な測定電流を循環
させるために使用される。さらに、測定装置42は、検出された外部磁場の変動
に応じた磁気抵抗体のコンダクタンスに基づいて、磁気抵抗体素子の端子におけ
る電圧変動を記録するために使用される。
【0050】 図1は、この発明に係る磁気抵抗体の1つの特定の実施形態を表しているのみ
である。他の実施形態を想定することもできる。例えば、層の順序を以下のとお
りとすることもできる。すなわち、電流供給層、バッファ層、反強磁性磁化固定
層、薄い固定磁化磁性材料層、ドーピング層、反射防止層、絶縁バリア、反射防
止層、ドーピング層、自由磁化磁性材料層、電流供給層の順である。
【0051】 これらの構造において、例えば、ドーピング層、反射防止層またはバッファ層
のようないくつかの層は、本質的なものではない。他の方法では、第2の磁性材
料層の磁化は、反強磁性固定材料からなる層を使用せずに固定することとしても
よい。 例えば、第2の磁性材料層が、永久磁石形式の高保磁力層またはCo50Fe 50 と同様の組成を有する合金層であってもよい。
【0052】 スピンバルブ形式の構造において使用される他の固定プロセスが選択されても
よい。例えば、固定磁化磁性材料からなる第2の層は、2つのCo−Ru−Co
形式の反強磁性結合磁性材料層から構成されていても良く、それらの層の厚さは
、例えば、1nm、0.4nmおよび1nmである。
【0053】 図2には、第1および第2の磁性材料層12,14のみが示されている。Iは
、磁性材料層間の絶縁バリアを通したトンネル効果により循環する測定電流を示
している。この電流は、両矢印によって表されている。同様にして、磁気抵抗体
に印加される外部磁場Hも両矢印によって表されている。
【0054】 第2の磁性材料層14の固定磁化方向は、矢印Mによって示されている。図
示された例では、磁気抵抗体は、固定された磁化Mがほぼ外部磁場Hに平行と
なるように方向付けられている。 穏やかな磁性材料からなる第1の磁性材料層12の磁化方向は、自由である。
【0055】 矢印M1aは、外部磁場が印加されていないときの第1の磁性材料層12の磁
化方向を示している。この方向は、磁気的に穏やかな材料からなる層の自由磁化
軸に対応している。 設計により、第1および第2の磁性材料層は、第1の磁性材料層12の自由磁
化軸が、第2の磁性材料層14の磁化固定方向とほぼ垂直となるように配列され
ている。
【0056】 磁場Hが、磁気抵抗体に印加されるときには、第1の磁性材料層12の磁化方
向が変化させられる。この層の磁化は、磁場が飽和値に達したときには、第2の
磁性材料層14の磁化方向に平行、または、反平行の方向に整列される。
【0057】 磁場Hの存在下における第1の磁性材料層の磁化方向は、矢印M1bで示され
ている。外部磁場がMに沿って印加された場合には、磁化方向M1b,M
平行になる。外部磁場がMとは反対方向に印加された場合には、磁化方向M ,Mは反平行になる。
【0058】 図3,4,5は、第1の磁性材料層の厚さを変化させたときのコンダクタンス
の相対変動ΔR/RをY軸に表したグラフである。厚さはナノメートル単位で与
えられている。 これらのグラフは、1つの非磁性(半無限)金属層、1つの磁性材料層、1つ
の酸化物バリア層、1つの磁性材料層および1つの非磁性(半無限)金属層から
なる構造を有する、この発明に係る磁気抵抗体について計算により描いたもので
ある。
【0059】 ここで、kは使用材料のフェルミレベル波ベクトルを意味し、↑および↓は電
子スピンを意味するものとすると、グラフを描くためのパラメータは以下のとお
りとなる。 − 非磁性材料層に対して: k↑=k↓=1Å−1 − 磁性材料層に対して: k↑=0.2Å−1、k↓=1.4Å−1 − 絶縁酸化物バリアに対して: k↑=k↓=1iÅ−1
【0060】 波のベクトルは、金属では実数、絶縁材料(減衰波)では虚数である。磁性材
料層のために選択されたパラメータ値は、42%のトンネル電子偏光に相当して
いる。この偏光は、鉄について測定された値(40%)と非常に近似している。
【0061】 図3は、磁性材料層12の厚さが0〜10nmの間で変化するときの、接合の
磁気抵抗体変動を表している。破線は、磁性材料層の厚さが無限であるときに得
られる磁気抵抗体の漸近値に相当している。
【0062】 この図から、厚さ2nmより小さい絶縁材料層12に対して、最大振幅が得ら
れていることがわかる。この振幅は、7nm程度の厚さにおいて、漸近値に到達
するように漸次減少する。したがって、この発明によれば、第1の磁性材料層1
2は、厚さ7nm以下となるように選択される。
【0063】 図4は、0〜2nmの範囲で変化する磁性材料層の厚さに対して、図3のグラ
フを拡大して示したものである。振動は、非磁性金属−磁性金属、および、磁性
金属−絶縁酸化物バリアの境界面において生ずる反射に関連した量子干渉効果に
よるものである。 これらの干渉効果は、層間の境界面において一定の粗さを示す実際の接合では
消滅する。
【0064】 図5は、非磁性金属/磁性金属および磁性金属/酸化物の境界面において0.
2nmの粗さを考慮した場合の、磁性材料層の厚さに対する磁気抵抗の変化を示
している。この粗さは、磁性材料の厚さの空間的な変動に起因するものであり、
図4の量子振動を濾波し、その結果、平均的な変動のみを維持している。しかし
ながら、重要なポイントは、前記磁気接合において磁気抵抗効果を生じさせるの
には、非常に薄い磁性材料であれば十分であるということである。
【0065】 曲線は、以下に参照する文献7に説明されている理論的モデルによって計算し
た。 このように、この発明に係る磁気抵抗体は、自由磁化層の厚さを減少させるこ
とにより、所定の磁束に対する従来の磁気抵抗体に対して、より高い磁気抵抗感
度を得ることを可能にしている。
【0066】 (参考文献) (1) 米国特許第4949039号明細書 (2) PHYSICAL REVIEW B, vol. 39, No. 10, April 1, 1989, "Conductance a
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【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明に係る磁気抵抗体を示す概略縦断面図である。
【図2】 図1の磁気抵抗体の磁性材料層における磁化方向を示す概略図で
ある。
【図3】 磁気抵抗体の自由磁化磁性材料層の厚さに対する磁気抵抗応答振
幅を示すグラフである。
【図4】 図3を拡大したグラフである。
【図5】 図4の振動成分を除去したグラフである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 ヴェディアエフ, アナトリー ロシア共和国 105215 モスコー, ブー ルバール シレネヴュ, アパルトマン 52 Fターム(参考) 2G017 AD55 AD63 AD65 5D034 BA03 BA15 CA00 5E049 AA04 AB09 AC05 BA16

Claims (11)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 第1の自由磁化磁性材料層(12)と、 電気的な絶縁材料からなる「バリア」層(16)と、 第2の固定磁化磁性材料層(14)とを積層状態に配してなるトンネル効果磁
    気抵抗体であって、 前記第1の磁性材料層(12)の厚さが、7nm以下であることを特徴とする
    磁気抵抗体。
  2. 【請求項2】 前記第1の磁性材料層(12)の厚さが、0.2nm〜2n
    mの範囲であることを特徴とする請求項1記載の磁気抵抗体。
  3. 【請求項3】 前記第2の磁性材料層(14)の厚さが、0.4nm〜2n
    mの範囲であることを特徴とする請求項1記載の磁気抵抗体。
  4. 【請求項4】 前記第1の磁性材料層と前記絶縁バリア層との間に挿入され
    た、非強磁性金属からなる層(24)をさらに具備することを特徴とする請求項
    1記載の磁気抵抗体。
  5. 【請求項5】 前記絶縁バリア層と前記第2の磁性材料層との間に挿入され
    た、非強磁性金属からなる層(26)をさらに具備することを特徴とする請求項
    1記載の磁気抵抗体。
  6. 【請求項6】 前記第1および第2の磁性材料層の内の少なくとも一方にそ
    れぞれ接触する少なくとも1つの磁性材料層(20,22)またはドーピング層
    をさらに具備することを特徴とする請求項1記載の磁気抵抗体。
  7. 【請求項7】 前記ドーピング層(20,22)が、0≦x≦1であるxに
    対して、Co1-xFex合金から構成された層であることを特徴とする請求項6記
    載の磁気抵抗体。
  8. 【請求項8】 前記第2の絶縁材料層の磁化を固定するために、第2の磁性
    材料層(14)と接触状態の反強磁性層(18)をさらに具備することを特徴と
    する請求項1記載の磁気抵抗体。
  9. 【請求項9】 前記第1および第2の磁性材料層(12,14)にそれぞれ
    電気的に接触させられた2つの電流供給層(30,32)をさらに具備すること
    を特徴とする請求項1記載の磁気抵抗体。
  10. 【請求項10】 前記第1の磁性材料層(12)と、該第1の層に電気的に
    接触させられた前記電流供給層(30)との間に、少なくとも1つの金属層(2
    6)またはバッファ層をさらに具備することを特徴とする請求項9記載の磁気抵
    抗体。
  11. 【請求項11】 請求項1から請求項10のいずれかに記載の少なくとも1
    つの磁気抵抗体を具備することを特徴とする磁気センサ。
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