JP2002371010A - ラミニン様活性ペプチドと生分解性膜複合体による人工基底膜 - Google Patents
ラミニン様活性ペプチドと生分解性膜複合体による人工基底膜Info
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Abstract
るいは研究上利用可能な、ラミニン様活性ペプチドと生
分解性膜を有効成分とする人工基底膜とそれらを用いた
組織再生療方法を提供する。 【解決手段】 ラミニン様活性ペプチドと生分解性膜複
合体、ラミニン様活性ペプチドと生分解性膜を有効成分
とする人工基底膜及び該人工基底膜を利用した組織再生
方法。
Description
いは試薬として臨床上あるいは研究上利用可能な、ラミ
ニン様活性ペプチドと生分解性膜を有効成分とする人工
基底膜とそれらを用いた組織再生療方法を提供する。
胞などの周囲に存在する細胞外マトリックスであり、多
くの生物活性を持っている。基底膜は、コラーゲン、ラ
ミニン、エンタクチンなどのタンパク質と、パーレカン
などのプロテオグリカンで構成されている(中村桂子ら
監訳、細胞の分子生物学 第3版 Newton Press, 199
5)。特に基底膜は神経再生など組織の再生に重要な働
きをすることが知られている(Rupert Timpl, Current
Opinion in Cell Biology 8:618-624; 1996)。また基
底膜は、細胞の支持体としての機能も果たすことが知ら
れている。生体から生物活性と立体的構築を保ったまま
基底膜を取り出すことは難しい。近年基底膜を構成する
ラミニンタンパク質を固相化した材料が報告されている
(特許第2801818号など)。
ンパク質には20種以上の受容体が知られており、多く
の副作用が生じる問題点がある。さらに、生体内にラミ
ニンタンパク質固相化材料を適用すると、ラミニンタン
パクの抗原性の問題が生じる。また、固相化材料は必ず
しも細胞外マトリックスとしての支持体の役割をしてい
ない。これらの問題点を解決した人工基底膜を提供でき
れば、組織再生をより容易に行うことができるばかり
か、移植医療の材料ならびに医薬として組織再生が必要
な疾患への治療も可能となる。
構成成分であり、基底膜の生物活性に寄与するラミニン
の活性を有するペプチドと、物理的支持体となりうる生
分解性膜を化学的結合または物理的親和力により複合体
とし、人工基底膜を形成させた。さらに、その複合体を
用いて、ラミニン様活性ペプチドの神経突起の伸長作用
がペプチドのみをプラスティックプレートに固相化して
用いた場合より増強することを見出し本発明を完成させ
るに至った。
れた、すなわち一つないし数個の受容体のリガンドとな
るラミニン様活性ペプチドを用いるため、ラミニンタン
パク質を用いた基材と異なり副作用は少なく、抗原性も
少ない。さらに、後の実施例で示すように、本発明人工
基底膜は、ラミニン様ペプチドをプラスティックに固相
化した材料よりも組織再生活性が強くなった。このこと
は、本発明ラミニン様ペプチド生分解性膜複合体による
人工基底膜が、物理的支持体として生物活性に寄与した
結果である。従って本発明により、組織再生、臓器移植
などに適した人工基底膜を提供することが可能となっ
た。
(2) ラミニン様活性ペプチドと生分解性膜を有効成
分とする人工基底膜、(3) ラミニン様活性ペプチド
が、ラミニンの部分ペプチドである(2)の人工基底
膜、(4) ラミニン様活性ペプチドが、A-10, A-13,
A-24, A-51, A-64, A-99, A-112, A-119, A-167, A-20
8, AG-10, AG-32, AG-73, B-7, B-31, B-54, B-133, B-
160, C-16, C-28, C-64, C-68, LRE, A3G-75, A3G-76,
A3G-83, A4G-82, A5G-81からなる群から選択される
(3)の人工基底膜、(5) ラミニン様活性ペプチド
が配列番号2または配列番号4に示すペプチドである
(3)の人工基底膜、(6) ラミニン様活性ペプチド
が配列番号6または配列番号7に示すペプチドである
(3)の人工基底膜、(7) ラミニン様活性ペプチド
が配列番号5に示すペプチドである(3)の人工基底
膜、(8) 生分解性膜が、多糖類を主成分とする
(2)〜(7)のいずれかの人工基底膜、(9) 生分
解性膜が、キトサン、アルギン酸、セルロースからなる
群から選択される化合物を主成分とする(8)の人工基
底膜、(10) 生分解性膜が、蛋白質を主成分とする
(2)〜(7)のいずれかの人工基底膜、(11) 生
分解性膜が、プロテオグリカンを主成分とする(2)〜
(7)のいずれかの人工基底膜、(12) ラミニン様
活性ペプチドと生分解性膜が化学結合している(2)〜
(11)のいずれかの人工基底膜、(13) ラミニン
様活性ペプチドと生分解性膜が二価性架橋試薬を介して
化学結合している(12)の人工基底膜、(14)
(2)〜(13)のいずれかの人工基底膜を有効成分と
する組織再生治療剤、(15) (2)〜(13)のい
ずれかの人工基底膜を利用した組織再生方法、および
(16) 組織が神経組織である(15)の組織再生方
法。
チドのラミニン様活性ペプチドは、基底膜を構成するラ
ミニンの持つ生物活性を有するペプチドである。ラミニ
ンの生物活性としては細胞接着作用、細胞増殖作用、血
管新生作用、癌転移抑制作用、創傷治癒作用、神経突起
伸長作用などが報告されている(Makino, M. et al. Co
nnective Tissue 31:227-234, 1999)。
は具体的には、ラミニンの持つ生物活性を有する、アミ
ノ酸がペプチド結合により3個以上結合した物質をい
う。また、ペプチドから容易に類推でき、同様な作用を
有するラミニンペプチド誘導体も含まれる。当然なが
ら、ペプチドを構成するアミノ酸に非アミノ酸成分を結
合させたヘテロメリックペプチドも含まれる。さらに具
体的には、ラミニンの部分ペプチドであるA-10, A-13,
A-24, A-51, A-64, A-99, A-112, A-119, A-167, A-20
8, AG-10, AG-32, AG-73, B-7, B-31, B-54, B-133, B-
160, C-16, C-28, C-64, C-68, LREなど(Makino M et a
l. Connective Tissue 31:227-234, 1999)、またはA3G-
75, A3G-76, A3G-83, A4G-82, A5G-81など(Kato, K et
al. In Shioiri編集: Peptide Science 2000, Protein
Research Foundation, Osaka, Japan, 251-254, 200
1)が挙げられる。また、A208の部分ペプチドIKVAV(配
列番号5)も挙げられる。また、これらの部分ペプチド
のアミノ酸配列において1個または数個のアミノ酸に置
換、欠失、付加等の変異が生じたアミノ酸配列を有する
ペプチドであって、ラミニンの生物活性を有するペプチ
ドも含まれる。
ロテアーゼ等で分解して得ることができ、またFmoc固相
合成法等の化学合成によっても得ることができ、さらに
遺伝子工学的手法によりリコンビナントペプチドとして
も得ることができる。
分子化合物で、膜状構造を有し、細胞の物理的支持体と
なりうる物質をいう。例えば、キトサン、キチン、アル
ギン酸、セルロースなどの多糖類や、コラーゲン、ゼラ
チンなどのタンパク質、プロテオグリカンなどが挙げら
れる。これらの物質またはこれらの物質を化学的若しく
は物理的方法により組み合わせ膜状に調製することによ
り生分解性膜を得ることができる。生分解性膜は、細胞
・動物組織などから抽出・精製することで得られる。ま
た、一部または全分子を化学合成で得ることも可能で、
タンパク質・プロテオグリカンなどは、既存の遺伝子操
作技術によって製造することができる。例えば、これら
の高分子化合物をプラスティックプレート、その他のポ
リマー材料、ガラスなどに、化学的結合、物理的親和力
で付着させることにより良好な膜が得られる。
性膜をペプチド結合などの化学結合または物理的親和力
で複合体とさせることで、基底膜の生物活性を有し、か
つ細胞や組織を物理的に支持可能な本発明の人工基底膜
を得ることができる。化学的な結合方法として、ラミニ
ン様活性ペプチドのアミノ酸のNH2、COOH、OH、SH等の
官能基と生分解性膜のアミノ酸、糖のこれらの官能基を
利用して結合させる方法が挙げられる。この際、二価性
架橋試薬を用いて結合させることができるし、二価性架
橋試薬を用いないでチオール基同士をジスルフィド結合
で架橋したり、カルボキシル基とアミノ基間をアミド結
合で架橋する等の方法をとり得る。二価性架橋試薬とし
て、クロロ酢酸、ブロモ酢酸、ヨウ化酢酸等が挙げられ
る。この際、ラミニン様活性ペプチドの活性が阻害され
ないような方法で結合させることが望ましい。例えば、
ラミニン様活性ペプチドの末端にシステイン残基を導入
し、マレイミドを介することにより生分解性膜と結合さ
せることができる。化学的に結合させる場合は、スペー
サーを加えて結合させることもできる。例えば、ラミニ
ン様活性ペプチドの末端にシステイン残基を導入する際
に1個〜数個のアミノ酸をスペーサーとして導入するこ
とができる。この際のアミノ酸の種類は特に限定されな
い。すなわち、ラミニン様活性ペプチドと生分解性膜を
結合するためにラミニン様活性ペプチドに1個〜数個の
アミノ酸残基が付加されたペプチドと生分解性膜の複合
体も本明細書でいうラミニン様活性ペプチドと生分解性
膜の複合体またはラミニン様活性ペプチドと生分解性膜
を有効成分とする人工基底膜に含まれる。ラミニン様ペ
プチドと生分解性膜との化学結合は、新生化学実験講座
1 タンパク質IV 日本生化学会編 東京化学同人(199
1) 等に記載の周知のタンパク質の修飾方法、架橋方法
により行うことができる。ラミニン様活性ペプチドと生
分解性膜との結合は、疎水性相互作用、イオン相互作
用、ファンデルワールス相互作用等によっても達成可能
である。
より条件が異なる場合があるが、一般的にはペプチドと
生分解性膜を化学結合させる場合、膜成分1に対してペ
プチドは1〜1/100万(重量比)、望ましくは膜成分1
に対してペプチド1/2〜1/200(重量比)を反応させ、化
学結合を形成させる。また、物理的親和力によって複合
体を作製する場合、膜成分1に対してペプチドは1〜1/
100万(重量比)、望ましくは膜成分1に対してペプチド1
〜1/100(重量比)を反応させて製造する。
または臓器の再生療法時の薬理作用を有する支持体とし
て利用することができる。また、臓器移植時や外科手術
時に接合部分の薬理作用を有する支持体としても利用で
きる。さらに、生体材料を用いた人工臓器・体外循環シ
ステム・養子療法などの薬理作用を有する支持体として
も応用することができる。再生の対象組織としては、神
経や血管が考えられるが、これらに限定するものではな
い。
を作製することによって、これらの生物活性を強く抑制
することも可能である。さらに、本発明人工基底膜を化
学修飾し、活性のさらなる増強、副作用の低減、安定性
の向上、溶解性の改善をすることも可能である。
づく疾患治療効果すべてに医薬として適用可能である。
すなわち、神経系疾患、循環・血液系疾患、炎症性疾
患、癌、消化器疾患、感染症、皮膚疾患、呼吸器疾患、
内分泌・代謝性疾患、自己免疫性疾患などである。さら
に具体的には、本発明基底膜の神経突起伸長作用を応用
した、神経変性疾患の治療が可能である。神経変性疾患
とは、筋萎縮性側策硬化症、多発ニューロパチー、精神
分裂症、パーキンソン病、脊髄小脳変性症、アルツハイ
マー病、痴呆、脳梗塞、てんかん、事故などによる神経
障害、薬物性神経障害、糖尿病神経症、糖尿病網膜症、
網膜変性症などを含む。
知の薬理学に許容される担体、賦形剤などと混合した医
薬・医療材料組成物として、経口または非経口的に投与
することができる。
は錠剤、丸剤、カプセル剤、顆粒剤、シロップ剤、乳
剤、懸濁剤などが挙げられる。かかる剤形は、自体公知
の方法によって製造され、製剤分野において通常用いら
れる担体もしくは賦形剤を含有するものである。例えば
錠剤用の担体、賦形剤としては、ラクトース、マルトー
ス、サッカロース、澱粉、ステアリン酸マグネシウムな
どが挙げられる。
ば、軟膏剤、クリーム剤、注射剤、湿布剤、塗布剤、坐
剤、点眼剤、経鼻吸収剤、経肺吸収剤、経皮吸収剤など
が挙げられ、特に眼科の局所投与用途では、注射剤(全
身投与、硝子体内投与、網膜下投与、テノン嚢投与、結
膜下投与等)、経角結膜剤、点眼剤、眼軟膏などが好ま
しい。溶液製剤は自体公知の方法、例えば、本因子を通
常、注射剤に用いられた無菌の水溶液に溶解、あるいは
抽出液に懸濁、さらには乳化してリポソームに包埋させ
た状態で調製され得る。製剤処方としては、等張化剤
(塩化ナトリウム、塩化カリウム、ホウ酸、グリセリン
など)や緩衝剤(ホウ酸緩衝液、リン酸緩衝液、酢酸緩
衝液など)、可溶化剤(界面活性剤、シクロデキストリ
ン類など)、安定化剤(クエン酸、エチレンジアミン四
酢酸、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウムな
ど)、粘ちょう化剤(合成高分子、セルロース類、多価
アルコール類など)を調合して作製することができる。
さらに、高分子ポリマー剤、マイクロスフェア製剤、ゾ
ル、ゲル、軟膏などの剤型としても調製し得る。
ば、本因子にマンニトール、トレハロース、ソルビトー
ル、ラクトース、グルコースなどを賦形剤として加え、
凍結乾燥物として調製され得る。さらにこれを粉体化し
て用いることもできる。ゲル化剤としては、自体公知の
方法、例えば、本因子をグリセリン、ポリエチレングリ
コール、メチルセルロース、カルボキシルメチルセルロ
ース、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸などの増粘剤
や多糖に溶解した状態で調製され得る。
ヒト血清アルブミン、ヒト免疫グロブリン、α2マクロ
グロブリン、アミノ酸などを添加することができ、また
分散剤あるいは吸収促進剤として本因子の生理活性を損
なわない範囲でアルコール、糖アルコール、イオン性界
面活性剤、非イオン性界面活性剤などを添加することが
できる。また、微量金属や有機酸塩も必要に応じて加え
ることができる。
るいは局所投与で行われ、有効投与量および投与回数
は、投与剤形、投与ルート、患者の年齢、体重、治療対
象疾患、症状もしくは重篤度によっても異なるが、通
常、成人1人あたり0.001〜100mgを,好ましくは0.01〜
10mgを1回または数回に分けて投与することができる。
た培養系に動物細胞や組織などを加え、培養することで
再生組織を得ることができる。この際、適切な増殖因
子、サイトカイン、血清、分化誘導因子、またはこれら
の活性を模倣する低分子化合物を培養系に共存させるこ
ともできる。このように、生体外で再生させた組織を生
体に戻して治療することも可能である。また、本発明人
工基底膜を、サージカルテープ(surgical tape)など
として人体または動物の傷害部位や手術部位に適用し、
組織再生を促進することができる。さらに、生体に直接
本発明品を移植して、疾患部位の組織再生に応用するこ
とも可能である。
施例を示す。 〔実施例1〕 本発明人工基底膜の製造法 1.ラミニン様活性ペプチドの合成:すべてのペプチド
はFmoc固相合成法(9-フルオレニルメトキシカルボニル
法)により4-(2',4'-ジメトキシフェニル-Fmoc-アミノ
メチル)-フェノキシレジン(リンクアミドレジン)を使
用し手動で合成を行った。合成中の溶媒としてはジメチ
ルホルムアミドを用いた。縮合剤にはジイソプロピルカ
ルボジイミド/N-ヒドロキシベンゾトリアゾールを用
い、Fmoc基の脱保護には20%ピぺリジンを含むジメチル
ホルムアミドを用いた。本合成において使用したN-保護
アミノ酸の側鎖の保護基は以下の通りである。 Asn, Cys, Gln, His:トリチル Asp, Glu, Ser, Thr, Tyr:t-ブチル Arg:2,2,5,7,8-ペンタメチルクロマン-6-スルフォニル Lys:t-ブトキシカルボニル
酸:チオアニソール:m-クレゾール:1,2-エタンジチオ
ール:水(80:5:5:5:5, v/v)を用い20℃で3 時間処理し
て樹脂から脱離させ脱保護を行った後、ジエチルエーテ
ルにて粉末を得た。これを20〜70%酢酸水溶液に溶解さ
せ、逆相高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により精
製した。HPLCはVydac 5C18カラムを用い、溶出液はA液
を0.1%TFAを含む水、B液を0.1%TFAを含むアセトニトリ
ルとし、グラジエントはA液に対するB液の割り合いを直
線的に変化させた。ペプチドの純度はHPLCを用いた分析
によって確かめた。また、ペプチドの同定はマススペク
トルによって確かめた。
(配列番号1)の合成 プロテオグリカンをレセプターとするラミニン-1の細
胞接着活性部位であるアミノ酸配列RKRLQVQLSIRT(配列
番号2)を有するAG73を含むペプチドを上記の方法を用
いて合成した。ただし、N-(マレイミドベンゾイルオキ
シ)スクシンイミド(MBS)を介してキトサンへ固定化
させるためにアミノ基末端にシステインを導入し、シス
テインとAG73(RKRLQVQLSIRT)の間にスペーサーとして
GGを導入した。
(配列番号3)の合成 ラミニン-1の細胞接着活性部位であるA208(AASIKVAVSA
DR)配列(配列番号4)を含むペプチドのアミノ基末端
にシステインを導入し、システインとA208の間にスペー
サーとしてA208のN末端側を3アミノ酸残基(RKQ)延長し
た。
分解性膜としてキトサンを用いた。キトサンはキチン
(Flonac C, 共和テクノス; 平均分子量=40, 000)を繰
り返し脱アセチル化して調製した。キトサンの脱アセチ
ル化度0.99(脱アセチル化率99%)はIRスペクトルによ
り決定した。キトサン(1.71 g, 単糖単位10.6 mmol)
の5%酢酸(84 ml)- N,N-ジメチルホルムアミド(DMF,
20 ml)溶液に、N-(m-マレイミドベンゾイルオキシ)
スクシンイミド(0.100 g, 0.32 mmol)のDMF(8 ml)
溶液を0℃で加えた。反応混合物を遮光条件下、室温で2
4時間撹拌し、5%アンモニア水溶液(60 ml)に静かに
注いだ。生じた沈澱を遠心分離(10, 000 rpm, 15 mi
n)により集めた。これをDMF(150 ml)に懸濁し、激し
く撹拌したのち遠心分離により集めた。この操作を3回
繰り返した。この沈澱をイオン交換水で同様の操作によ
り洗浄し、次いで凍結乾燥して白色生成物1. 55 gを得
た。1H NMRスペクトルの特徴的な吸収ピークの化学シフ
トは次の通りである。1H NMR (95:5 (v/v) D2O- CD3COO
D)δ (ppm) 3.1-3.2 (br s, H-2), 3.6-4.1 (multi, H-
3, 4, 5,6a and 6b), 4.8-5.0 (br s, H-1) and 7.5-7.
7 (multi, aromatic). 置換度は芳香族プロトンとピラ
ノースプロトンのピーク面積比から0.003 (0.3 %)と計
算された。1H NMRスペクトルは95:5 (v/v) 重水−酢酸-
d4 中3-(トリメチルシリル)プロピオン酸ナトリウム-d4
(TSP) を内部標準として40 ℃、300.13 MHzでBruker A
SX-300分光器により測定した。
の結合物作製 MB-キトサンを4%酢酸水溶液に溶解(0.1mg/ml)させ、
その溶液を24ウェルプレート(ウェルの直径:16mm)に
500μl/wellキャストし、一晩乾燥させてMB-キトサン膜
を作製した。MB-キトサン膜を1M水酸化ナトリウム水溶
液(500μl)で処理し、0.1%TFAを含む水に溶解させた
ペプチド溶液を各ウェルに500μlずつ加えた。ペプチド
溶液の入った各ウェルにpH8から9となるように1%炭酸
水素ナトリウム水溶液を100μl〜300μl加え、室温で3
時間インキュベートして、本発明ラミニン様ペプチドと
生分解性膜結合物を得た。
経突起成長増進作用1 実施例1で製造した人工基底膜のうち、A208ペプチド-
キトサン結合物を用いた。本発明人工基底膜(A208ペプ
チド-キトサン結合物)上にラット神経細胞PC12細胞を
培養した。PC12細胞のディッシュにはアッセイの24時間
前にNGF(NerveGrowth Factor:神経成長因子)を100ng
/mlとなるように加えた。アッセイ時PC12細胞は培地を
激しく懸濁することによってディッシュからはがし、細
胞溶液(100μg/mlトランスフェリン、5μg/mlインシュ
リン、20nMプロゲステロン、30nM亜セレン酸ナトリウム
を含むDMEM/F12(血清無し))を4.0×104個/mlの濃度
に調整し、500μlずつ各ウェルに加え(20000個/wel
l)、37℃、5%CO2条件下で24時間インキュベートし
た。インキュベート後、細胞を固定化するために各ウェ
ルにはホルマリンを125μl加えて室温で10分間インキュ
ベートした。0.2%クリスタルバイオレット溶液(250μ
l/well)で10分間染色し、脱イオン水で洗浄後、光学顕
微鏡下で観察した。神経突起伸長をした細胞(神経突起
の長さが細胞体の2倍以上の長さをもつもの)の%は各
ウェルにおいて接着した細胞を3ケ所・100個ずつ選び、
その中で神経突起伸長をした細胞数を数えることによっ
て計算した。尚、対照群として使用したA208ペプチドの
みのコーティングの場合は、水に溶解させたペプチド溶
液を500μl/wellキャストし、一晩乾燥させた。A208ペ
プチド-キトサン膜のウェルは1%BSAを含むDMEMを500μ
l加えて30分間室温でインキュベートすることによってB
SAブロックを行った後、DMEM(血清無し)500μlで2回
洗浄した。A208ペプチドのみをコートしたウェルはBSA
ブロックを行わずにDMEM(血清なし)500μl で2回洗浄
した。
ラスティックプレートに単純に固相化したA208ペプチド
よりも、A208ペプチドキトサン−結合物、すなわち本発
明人工基底膜を用いた場合のほうが、強力に神経突起伸
長を示すことが明らかになった。
経突起成長増進作用2 実施例1で製造した人工基底膜のうち、AG73ペプチド-
キトサン結合物を用いた。本発明人工基底膜(AG73ペプ
チド-キトサン結合物)上にラット神経細胞PC12細胞を
培養した。PC12細胞のディッシュにはアッセイの24時間
前にNGF(NerveGrowth Factor:神経成長因子)を100ng
/mlとなるように加えた。アッセイ時PC12細胞は培地を
激しく懸濁することによってディッシュからはがし、細
胞溶液(100μg/mlトランスフェリン、5μg/mlインシュ
リン、20nMプロゲステロン、30nM亜セレン酸ナトリウム
を含むDMEM/F12(血清無し))を4.0×104個/mlの濃度
に調整し、500μlずつ各ウェルに加え(20000個/wel
l)、37℃、5%CO2条件下で24時間インキュベートし
た。インキュベート後、細胞を固定化するために各ウェ
ルにはホルマリンを125μl加えて室温で10分間インキュ
ベートした。0.2%クリスタルバイオレット溶液(250μ
l/well)で10分間染色し、脱イオン水で洗浄後、光学顕
微鏡下で観察した。神経突起伸長をした細胞(神経突起
の長さが細胞体の2倍以上の長さをもつもの)の%は各
ウェルにおいて接着した細胞を3ケ所・100個ずつ選び、
その中で神経突起伸長をした細胞数を数えることによっ
て計算した。尚、対照群として使用したAG73ペプチドの
みのコーティングの場合は、水に溶解させたペプチド溶
液を500μl/wellキャストし、一晩乾燥させた。AG73ペ
プチド-キトサン膜のウェルは1%BSAを含むDMEMを500μ
l加えて30分間室温でインキュベートすることによってB
SAブロックを行った後、DMEM(血清無し)500μlで2回
洗浄した。AG73ペプチドのみをコートしたウェルはBSA
ブロックを行わずにDMEM(血清なし)500μl で2回洗浄
した。
ドよりも、AG73ペプチドキトサン−結合物、すなわち本
発明人工基底膜を用いた場合のほうが、強力に神経突起
伸長を示すことが明らかになった。
ロ酢酸無水物を用いたペプチド-キトサン膜の神経突起
伸長活性 キトサンとペプチドを結合させる二価性架橋試薬として
クロロ酢酸無水物を用いた。ペプチドは皮膚特異的なラ
ミニンα3鎖由来の活性ペプチドであるA3G75とA3G83を
用いた。A3G75およびA3G83の配列は、それぞれKNSFMALY
LSKG(配列番号6)およびGNSTISIRAPVY(配列番号7)
であった。A3G75およびA3G83は、実施例1記載の方法で
合成した。
ことにより、クロロアセチル化キトサンを合成した。得
られたクロロアセチル化キトサンを4%酢酸水溶液に溶
解し、24ウェルプレートにコートした後アルカリ処理を
して膜を作成した。キトサンのクロロアセチル基と反応
させるためにN末端にシステインを導入したCysペプチド
(Cys-A3G75:CKNSFMALYLSKG(配列番号8)、 Cys-A3G
83:CGNSTISIRAPVY(配列番号9))を合成し、0.1%TF
A水溶液に溶解した。各ペプチド溶液をウェルに加え、
クロロアセチル化キトサン膜とカップリングさせること
によりペプチド-キトサン膜を調製し、PC12細胞を用い
て神経突起伸長アッセイを行った。
サン膜はそれぞれ図3に示したような神経突起伸長活性
を持っていることが明らかになった。
チドと生分解性膜からなる人工基底膜を提供し、組織再
生効果を有する医療材料または医薬に利用することがで
きる。
部分ペプチド
す図である。
す図である。
たペプチド-キトサン膜の神経突起伸長活性を示す図で
ある。
Claims (16)
- 【請求項1】 ラミニン様活性ペプチドと生分解性膜複
合体。 - 【請求項2】 ラミニン様活性ペプチドと生分解性膜を
有効成分とする人工基底膜。 - 【請求項3】 ラミニン様活性ペプチドが、ラミニンの
部分ペプチドである請求項2に記載の人工基底膜。 - 【請求項4】 ラミニン様活性ペプチドが、A-10, A-1
3, A-24, A-51, A-64, A-99, A-112, A-119, A-167, A-
208, AG-10, AG-32, AG-73, B-7, B-31, B-54, B-133,
B-160, C-16, C-28, C-64, C-68, LRE, A3G-75, A3G-7
6, A3G-83, A4G-82, A5G-81からなる群から選択される
請求項3に記載の人工基底膜。 - 【請求項5】 ラミニン様活性ペプチドが配列番号2ま
たは配列番号4に示すペプチドである請求項3に記載の
人工基底膜。 - 【請求項6】 ラミニン様活性ペプチドが配列番号6ま
たは配列番号7に示すペプチドである請求項3に記載の
人工基底膜。 - 【請求項7】 ラミニン様活性ペプチドが配列番号5に
示すペプチドである請求項3に記載の人工基底膜。 - 【請求項8】 生分解性膜が、多糖類を主成分とする請
求項2〜7のいずれか1項に記載の人工基底膜。 - 【請求項9】 生分解性膜が、キトサン、アルギン酸、
セルロースからなる群から選択される化合物を主成分と
する請求項8に記載の人工基底膜。 - 【請求項10】 生分解性膜が、蛋白質を主成分とする
請求項2〜7のいずれか1項に記載の人工基底膜。 - 【請求項11】 生分解性膜が、プロテオグリカンを主
成分とする請求項2〜7のいずれか1項に記載の人工基
底膜。 - 【請求項12】 ラミニン様活性ペプチドと生分解性膜
が化学結合している請求項2〜11のいずれか1項に記
載の人工基底膜。 - 【請求項13】 ラミニン様活性ペプチドと生分解性膜
が二価性架橋試薬を介して化学結合している請求項12
に記載の人工基底膜。 - 【請求項14】 請求項2〜13のいずれか1項に記載
の人工基底膜を有効成分とする組織再生治療剤。 - 【請求項15】 請求項2〜13のいずれか1項に記載
の人工基底膜を利用した組織再生方法。 - 【請求項16】 組織が神経組織である請求項15に記
載の組織再生方法。
Priority Applications (1)
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---|---|---|---|
JP2002110521A JP2002371010A (ja) | 2001-04-13 | 2002-04-12 | ラミニン様活性ペプチドと生分解性膜複合体による人工基底膜 |
Applications Claiming Priority (3)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2001115833 | 2001-04-13 | ||
JP2001-115833 | 2001-04-13 | ||
JP2002110521A JP2002371010A (ja) | 2001-04-13 | 2002-04-12 | ラミニン様活性ペプチドと生分解性膜複合体による人工基底膜 |
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Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2002371010A true JP2002371010A (ja) | 2002-12-26 |
Family
ID=26613591
Family Applications (1)
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Country Status (1)
Country | Link |
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JP (1) | JP2002371010A (ja) |
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2006517186A (ja) * | 2002-09-04 | 2006-07-20 | ボード オブ リージェンツ ユニバーシティ オブ テキサス システム | 二機能性の生体材料の組成物、方法、および使用 |
JP2012051946A (ja) * | 2006-01-23 | 2012-03-15 | Kwangju Inst Of Science & Technology | 薬理活性物質と粘膜粘着性高分子とが共有結合されたコンジュゲート及びこれを用いた薬理活性物質の経粘膜運搬方法 |
-
2002
- 2002-04-12 JP JP2002110521A patent/JP2002371010A/ja active Pending
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JP2012051946A (ja) * | 2006-01-23 | 2012-03-15 | Kwangju Inst Of Science & Technology | 薬理活性物質と粘膜粘着性高分子とが共有結合されたコンジュゲート及びこれを用いた薬理活性物質の経粘膜運搬方法 |
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