JPH10265498A - ヒト尿由来の神経グリア細胞増殖因子とその製造法 - Google Patents

ヒト尿由来の神経グリア細胞増殖因子とその製造法

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JPH10265498A
JPH10265498A JP9090305A JP9030597A JPH10265498A JP H10265498 A JPH10265498 A JP H10265498A JP 9090305 A JP9090305 A JP 9090305A JP 9030597 A JP9030597 A JP 9030597A JP H10265498 A JPH10265498 A JP H10265498A
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JP
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growth factor
human urine
factor
amino acid
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JP9090305A
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Shoichiro Kamei
正一郎 亀井
Kiyoshi Kirihara
清 桐原
Rie Nishinaka
理恵 西中
Hiroyuki Kino
浩之 城野
Junichi Koga
淳一 古賀
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NIPPON CHEM RES KK
JCR Pharmaceuticals Co Ltd
Original Assignee
NIPPON CHEM RES KK
JCR Pharmaceuticals Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 ヒト尿に存在する新規なグリア細胞増殖因子
とその製造法を提供すること。 【構成】 ヒト尿から限外ろ過、硫安による塩析、ゲル
ろ過、イオン交換クロマトグラフィーおよび逆相クロマ
トグラフィーにより精製することができ、SDS−PA
GEによる分子量が約29kDaである神経グリア細胞
増殖因子。 【効果】 本発明のグリア細胞増殖因子はグリア細胞を
増殖させる作用のほか同細胞のNGF因子分泌を促進さ
せ、また神経細胞のコリンアセチルトランスフェラーゼ
活性を増殖させる作用を示し、種々の神経系疾患の治療
への用途が期待され、また同因子を遺伝子工学の手法に
よって製造する途が開かれる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は神経細胞の一部であ
るグリア細胞の新規な増殖因子に関し、この因子は種々
の神経系疾患の治療に応用されうるものである。
【0002】
【従来の技術と発明が解決しようとする課題】神経系は
神経細胞(ニューロン)とグリア細胞から構成され、そ
の神経細胞は細胞本体と他の神経細胞に情報を伝える突
起細胞からなり、突起の接着部(シナプス)を通じて神
経情報が次の神経細胞に伝えられる。グリア細胞の役割
は、一般に神経細胞への栄養供給として知られ、オート
クリン的及びパラクリン的に神経栄養因子を分泌して、
神経細胞の分化、成長、生存維持を調節している。中枢
神経系のグリア細胞種としてはアストロサイト、オリゴ
デンドロサイト、ミクログリア細胞があり、また末梢神
経系にはシュワン細胞などが存在している。
【0003】神経系に於いて、神経細胞は出生後に増殖
を止めるが、グリア細胞は絶えず分化、増殖、成長を繰
り返すことを特徴としている。グリア細胞種であるシュ
ワン細胞は末梢神経の神経軸索の周囲にミエリン梢を形
成して神経細胞を支持し、この様なミエリン梢の弱体化
は、即ちシュワン細胞の損傷や成長不全は、末梢神経系
の疾患に深く関連していると推察されている。
【0004】神経細胞系の発達、恒常性の維持や機能は
宿主の神経栄養因子に媒介される細胞間の相互作用によ
り調節されている〔T.Ebendal,et a
l.,Journal of Neuroscienc
e Research 40,276−284,199
5〕。それらの神経栄養因子としてNGF、脳由来神経
栄養因子としてBDNF、ニューロトロフィンとしてN
T−3、NT−4、グリア細胞由来の神経発育因子も報
告され、またシュワン細胞由来神経発育因子などが知ら
れている。
【0005】現在の医療で治癒困難とされている、アル
ツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮側索硬化症など
の各種の神経疾患の細胞レベルでの特徴は、神経細胞の
顕著な脱落・消失であることが確認されている。この様
な理由で、神経細胞の生存維持が病状の軽減やその進行
を遅延させると推察される。脳神経系の細胞の死滅を防
ぐには、これらの細胞の賦活化が効果的であり、特に細
胞数で神経細胞の約10倍を占めて増殖・分化能力を有
するグリア細胞を賦活化することが出来れば神経細胞の
賦活、生存維持が神経疾患の重要な改善方策になると期
待されるが、未だグリア細胞を賦活し、維持する有効な
手段は知られていない。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、これまで
にラット胚・脳中隔野神経細胞を用いた生物活性スクリ
ーニング系を確立し、これを用いてヒト生体由来の画分
中の神経栄養活性の存在について検索した。その結果、
ヒト尿画分に神経細胞のコリンアセチルトランスフェラ
ーゼ(ChAT)活性を増加させる物質を見いだし、単
離、精製を行った。
【0007】すなわち、本発明者らは、ラット胚・脳中
隔野神経細胞の初代培養系を用い、尿・血液などの生体
画分の神経栄養活性について探索した結果、ヒト尿HP
A25樹脂非吸着画分に神経細胞のChAT活性を増加
させる活性が存在することを発見し、その活性因子の単
離・精製することに成功した。具体的には、尿を限外ろ
過膜(M.W,50,000 cut off)でろ過
し、そのろ過液を2.2−2.9Mの硫酸アンモニウム
で塩析し、沈澱物を溶解してSuperdex−200
を用いるゲルろ過クロマトグラフィーで処理した(図
1)。ChAT活性画分を集めて、アニオン交換クロマ
トグラフィー及び逆相クロマトグラフィーで精製し、凍
結乾燥処理して活性なグリア細胞増殖因子を得た。精製
した活性因子はSDS−PAGEで分子量約29kDa
付近にブロードなバンドを示し(図3)、逆相液体クロ
マトグラフィーで一つのピークを示した(図2)。SD
S−PAGEにおいて幅広いバンドを示すために、活性
因子の蛋白質に糖鎖が結合していると推察される。バン
ドは、β−メルカプトエタノールの有無にかかわらず、
分子量の位置に変化は見られず、したがって単量体のポ
リペプチドから構成されていることを示した(図3)。
【0008】ヒト尿より本発明の細胞増殖因子を単離・
精製するには、公知の分離精製方法を適切に組み合わせ
て行うことができる。塩析や沈澱法などの溶解度を利用
する方法、透析法、限外ろ過法、ゲルろ過法、SDS−
ポリアクリルアミドゲル電気泳動法などの主として分子
量の差を利用する方法、イオン交換クロマトグラフィ
ー、等電点電気泳動などの電荷の差を利用する方法、ア
フィニティークロマトグラフィーなどの特異的親和性を
利用する方法、逆相高速液体クロマトグラフィーなどの
疎水性の差を利用する方法などが挙げられる。この様な
操作で、効率よく該蛋白質の濃縮、精製を行うことが可
能である。
【0009】本活性因子のN−末端アミノ酸配列の39
残基の配列が決定された(図6、図7)。この配列につ
いてSwiss−Plotアミノ酸配列データベースと
のホモロジー検索で、新規な蛋白質であることが判明し
た。N−末端のアミノ酸について二種類のセリンとチロ
シンが認められ、二番目のアミノ酸残基以下が1種類の
アミノ酸配列が認められるために、2種類の変異体が存
在すると考えられる。
【0010】本発明の活性化因子をラット胚・脳中隔野
神経細胞の初代培養系に添加すると(最終濃度0.00
1 O.D.unit/ml)、神経細胞のChAT活
性を増加し、グリア細胞の増殖を示した(図4
(a))。本活性因子とDNA合成阻害剤のシトシンア
ラビノシド〔Cytosine arabinosid
e(Ara C)〕を同時に添加すると増殖は抑制され
た(図4(b))。培養に無血清培地 Neuroba
sal(商標、Gibco BRL)を用いるため、本
来の細胞の増殖は抑制される(図4(c))〔G.J.
Drewr et al,J.Neurosci.Re
s.,35:567(1993)〕。また、神経細胞と
グリア細胞の初代培養細胞を血清除去の培地で本活性因
子の添加の有無の条件で培養し、培養5日間で顕著な細
胞増加数をMTT法により確認した(図5)。本活性因
子添加の条件下では、経時的に細胞数の増加が認めら
れ、その無添加の条件では細胞数に殆ど変化が検出され
ない。
【0011】本活性因子を他の細胞種、例えば神経芽細
胞腫のGolo細胞に、無血清培地下で添加しても細胞
増殖は示されず、本活性因子が細胞種特異性をもつこと
を示した。グリア細胞が増殖していることを確認する一
つの方法として、細胞の免疫染色を行った。グリア細胞
のアストロサイトに極在する蛋白質〔Glial fi
brillary acidic protein(G
FAP)〕に対し、酵素β−galactosidas
eを結合した抗GFAP抗体を反応染色させることによ
りアストロサイトを確認できる。増殖細胞をこの抗体で
処理すると、増殖した細胞の約半分が染色された。増殖
した細胞の半分がアストロサイトで、抗GFAP抗体で
染色しない細胞は、その形態よりO−2A幹細胞(アス
トロサイト−タイプIIとオリゴデンドロサイトの幹細
胞)であることを示した(実施例3)。
【0012】本活性因子を神経培養に添加し、神経細胞
のChAT活性の培養日数に従う変化を測定した(図
8)。本活性化因子を添加することにより、培養6日目
以降著しくChAT活性の増加を示した。本活性化因子
とDNA合成阻害剤のAraCを加えると、グリア細胞
の増殖と神経細胞のChATの増加が抑制された。Ar
a Cのみの添加の場合と活性因子の無添加の場合で
は、ChAT活性に変化が無く、これらの結果はAra
C自体が神経細胞のChAT活性を抑制しないことを
示している。この様にグリア細胞の増殖と神経細胞のC
hAT活性の増加に正の相関関係があり、グリア細胞の
増殖により、グリア細胞由来の神経栄養因子量が増大し
ていると推察された。
【0013】これまでにグリア細胞由来の神経栄養因子
として神経成長因子(NGF)、Glia cell
line−derived neurotrophic
factor(GDNF)等が知られている。そこ
で、NGFに対する中和抗体を本活性因子とともに加え
てChAT活性を比較すると、神経細胞のChAT活性
の増加は顕著に抑制された(図9)。このとき、グリア
細胞の増殖の抑制は認められない。NGF抗体(1ug
/ml)添加で本活性因子のChATに対する効果は抑
制され、NGF抗体のみではChAT活性に変化はみら
れず、神経細胞のChAT活性の増加が、グリア細胞の
増殖に伴ったグリア細胞由来のNGFの増加に原因する
ことを示している。
【0014】本活性因子は、神経栄養活性を指標に精製
したが、栄養活性は常にグリア細胞の増殖とともに示さ
れた。DNA合成阻害剤の同時添加によりグリア細胞の
増殖を抑制した場合、神経細胞のChAT活性の増加は
見られず、本活性因子は神経細胞に間接的に作用してい
ると考えられる。従って、本活性因子の添加によるCh
AT活性の増加は、本因子によるグリア細胞の増殖促進
に伴いグリア細胞由来の栄養因子の増加により促進され
た結果である。
【0015】本発明は本活性因子のN−末端側アミノ酸
配列を含有するグリア細胞増殖因子を含み、また、本活
性因子のN−末端側アミノ酸配列をコードするデオキシ
リポヌクレオチド配列を含有するグリア細胞増殖因子の
デオキシリポヌクレオチド配列を含む。さらに、グリア
細胞増殖因子のcDNAを得ることで、大腸菌や酵母な
どの微生物、哺乳動物の細胞を利用して遺伝子工学的に
生産が容易に可能である。グリア細胞増殖因子のcDN
Aに人為的にアミノ酸の欠損、置換、附加などの操作に
より実質的にそれの生物活性を維持したグリア細胞増殖
因子の誘導体を製造可能である。
【0016】神経系細胞由来の蛋白質・ペプチドである
神経栄養因子はこれまでに数種類見いだされているが、
これらの栄養因子の血流から脳への投与は脳関門で阻止
されるために、困難と見なされている。本発明の活性化
因子は、尿由来であり、組織への直接投与だけでなく血
管投与などの全身的な投与法の可能性を示唆し、脳神経
及び抹消神経の種々の疾患の治療薬になると期待され
る。
【0017】
【発明の実施の形態】本発明の活性因子は、たとえば、
ヒト尿をキトサンや陰イオン交換樹脂のような吸着剤へ
の吸着、溶出により予備処理したのち限外ろ過し、ろ液
を硫酸アンモニウムで塩析し、沈澱を緩衝液に溶解して
ゲルろ過してChAT活性画分を集め、陰イオン交換樹
脂を用いるクロマトグラフィー及び逆相クロマトグラフ
ィーによって精製物として得ることができる。
【0018】
【実施例】以下に実施例の形で本発明をさらに具体的に
説明する。
【0019】実施例1 活性因子の精製材料 ヒト尿、硫酸アンモニウム(日産化学または和光純
薬)、リン酸二水素ナトリウム二水和物(ナカライテス
ク)、塩化ナトリウム(和光純薬)、エチレンジアミン
四酢酸二ナトリウム(EDTA−2Na)(同仁化
学)、フッ化フェニルメチルスルフォニル(ナカライテ
スク)、PBS(−)(日水製薬)、トリフルオロ酢酸
(ナカライテスク)、高速液体クロマトグラフィー用ア
セトニトリル(和光純薬)、C18逆相HPLC co
lumn218TP54(Vydac)、Hitrap
−Q〔Q−Sepharose(Pharmaci
a)〕、Superdex 200pg(Pharma
cia)。
【0020】操作 濃縮したヒト尿を、キトサンに吸着、溶出した後に、6
0%飽和濃度の硫酸アンモニウムで硫安分画し、0.1
M NaClを含む50mMリン酸ナトリウム緩衝液
(pH5.5)で平衡化したHPA25陰イオン交換樹
脂に通した。樹脂への非吸着画分1Lを分画分子量5
0,000のOMEGA CELL(FILTRON)
を用いて限外ろ過した。ろ液に最終濃度2.2M(約5
5%飽和)になるように硫酸アンモニウムを加え、30
分穏やかに攪拌した。攪拌後、5,000xgで1時間
遠心し、その上清を回収した。上清に最終濃度2.9M
(約74%飽和)になるように硫酸アンモニウムを加
え、再度30分間穏やかに攪拌し、5,000xgで1
時間遠心して沈澱を回収した。沈澱物を10−15ml
のPBS(−)に溶解した後に、PBS(−)で平衡化
したHi Load26/60 Superdex 2
00pg(Pharmacia)で流速2ml/min
でゲルろ過した。ChAT活性画分は、0.75 C.
V.(column volume)−0.94 C.
V.に溶出した(図1)。その活性画分を等量の1mM
EDTAを含む10mM燐酸ナトリウム緩衝液(pH
7.0)と混合し、75mM NaCl、1mM ED
TAを含む10mM燐酸ナトリウム緩衝液(pH7.
0)で平衡化したHi−Trap Q 5ml(Pha
rmacia)に吸着させた。NaCl濃度を130m
Mとした溶液でカラムを洗浄した後に、NaCl濃度を
160mMとした溶液で活性成分を溶出した。
【0021】活性画分をさらに逆相高速液体クロマトグ
ラフィー(逆相HPLC)により精製した。カラムはC
18 Vydac218TP54(Vydac)を用
い、溶媒に0.1%トリフルオロ酢酸を含むMilli
−Q 水−アセトニトリル系を用いた。流速は1ml/
minとし、溶出物の検出は波長214nmにおける吸
光度で測定した。活性は53−54%アセトニトリル溶
出画分に示される(図2上部)。画分を回収し、凍結乾
燥した後に再度逆相HPLCで精製した。最終的に逆相
HPLCにおいて一本のピークのみを示す活性画分が得
られた(図2下部)。以上の精製操作を室温で行った。
上記の逆相HPLCの詳細を次に記す。
【0022】逆相HPLC(図2)材料 トリフルオロ酢酸(ナカライテスク)、高速液体クロマ
トグラフィー用アセトニトリル(和光純薬)、C18逆
相HPLC column 218TP54(Vyda
c)。操作 溶媒に0.1%トリフルオロ酢酸を含むMilli−Q
水−アセトニトリル系を用い、流速を1ml/minと
した。0.1%トリフルオロ酢酸、5%アセトニトリル
を含むMilli−Q水で平衡化したC18逆相HPL
C column218TP54で、0.1%トリフル
オロ酢酸を含むMilli−Q水に溶解した活性因子を
移動分離した。図2の破線で示す様に、5−70%のア
セトニトリルの濃度勾配で溶出し、溶出物を波長214
nmで検出して、本活性因子のシャープなピークを認め
た。
【0023】実施例2 SDS−PAGE(図3)材料 酢酸(和光純薬)、メタノール(和光純薬)、濃度勾配
15−25%ポリアクリルアミドゲル「マルチゲル15
/25」(第一化学薬品)、クマーシーブリリアントブ
ルー(CBB)(Bio−Rad)、銀染色試薬「第
一」(第一化学薬品)、分子量マーカー(Bio−Ra
d)。操作 逆相HPLCによって精製した活性因子をトリス−SD
S溶液に溶解後に、90℃、2分間の熱処理を行い、こ
れをSDS−PAGE用の試料とした。試料を濃度勾配
15−25%のポリアクリルアミドゲル上で、40mA
の定電流下、泳動した。泳動後にゲルをCBB染色及び
銀染色した。CBB染色では、0.25% CBB(W
/V)を含むメタノール:酢酸:Milli−Q水
(9:2:9)の混合液に浸し染色後、メタノール:酢
酸:Milli−Q水(15:10:75)混合液で脱
色した。銀染色は、第一化学薬品社の銀染色試薬を用
い、添付の手順書に従って染色した。分子量約29kD
a付近にブロードな蛋白質バンドが認められ、β−メル
カプトエタノールによる還元及び非還元条件下で蛋白質
バンドに変化が見られず、本活性化因子は単量体のポリ
ペプチドであることを示した。
【0024】実施例3グリア細胞増殖因子のN−末端側のアミノ酸配列の決定 逆相HPLCで精製した本活性因子を凍結乾燥した後に
0.1%トリフルオロ酢酸を含むMilli−Q水に溶
解してN−末端アミノ酸配列決定用の試料とした。N−
末端アミノ酸配列の決定は、気相シーケンサーモデル4
76A(PERKIN ELMER)を用いた。アミノ
酸配列のホモロジー検索にインターネットを通じた検索
プログラムBLST及びDNASISを用いた。N−末
端がチロシンとセリンの二種のポリペプチドが見いださ
れた。
【0025】
【図6】
【図7】
【0026】実施例4 ラット胚・脳中隔野神経細胞の
初代培養材料 胎生17日目ラット胚、L−15 medium(Gi
bco BRL)、Neurobasal mediu
m(Gibco RRL)、PBS(−)(ニッス
イ)、B−27 supplimeni(Gibco
BRL)、L−グルタミン(Gibco BRL)、ゲ
ンタマイシン(Sigma)、ウマ血清(Gibco
BRL)、パパイン(和光純薬)、DL−システイン
HCl(Sigma)、ウシ血清アルブミン(Sigm
a)、グルコース(Gibco)、エーテル(和光純
薬)、ナイロンメッシュ(CELL STRAINER
100um mesh:Falcon)、ポリ−L−
リジンコート プレート(セルタイトPLプレート:住
友ベークライト)、シトシンアラビノシド(Sigm
a)。
【0027】操作 妊娠17日目のラットをエーテルにより麻酔後、腹部を
切開して胎児の入っている子宮を摘出した。子宮よりラ
ット胚を取り出し、その胚から脳・中隔野を摘出した。
中隔野を細胞分散用酵素液(90units Papa
in、0.01% DNaseIをDL−システイン
HCl 2mg、ウシ血清アルブミン2mg、グルコー
ス50mgを含むPBS(−)10mlに溶解した液に
浸し、37℃、15分間処理後に、ウマ血清で酵素反応
を止め、ピペッティング操作により細胞を分散した。1
0分間室温で静置後、100um meshのナイロン
メッシュ(CELL STRAINER:Falco
n)でろ過して細胞塊や破砕した細胞から漏出したDN
Aを除去した。得られた細胞は、ポリ−L−リジンコー
ト プレート(住友ベークライト)に20×104 ce
ll/cm2 の密度で蒔く。培地に2mM L−グルタ
ミン、0.1mg/mlゲンタマイシンを含む無血清培
地 Neurobasal medium(Gibco
BRL)に添加物B−27(Gibco BRL)を
加えたものを用い、神経細胞を5% CO2 存在下、3
7℃で培養した。本活性因子を神経細胞の培養開始時に
添加して、適当な日数培養した後に、下記するように細
胞増殖と神経細胞のコリンアセチルトランスフェラーゼ
の活性を測定した。本活性因子とともに、DNA合成阻
害剤シトシンアラビノシドを添加した細胞群でも同様な
測定をした。本活性因子を添加すると細胞のコリンアセ
チルトランスフェラーゼ(ChAT)活性が増加し細胞
の増殖が示され、本活性因子と共にシトシンアラビノシ
ドを添加すると増殖は阻害された(図4、図8)。
【0028】細胞増殖測定(MTT法) 材料 96穴プレートで培養した中隔野神経細胞の初代培養細
胞、細胞増殖測定キット Cell Titer 96
(Promega)、プレートリーダー SPECTR
A MAX 250(Molecular Devic
e)。操作 摘出したラット胚・脳中隔野神経細胞を20×104
ell/cm2 の密度で96穴のポリ−L−リジンコー
トプレート(住友ベークライト)に蒔き、5%CO2
37℃の条件で目的の日数培養した後に、細胞増殖を測
定した。反応は、Promega社のCell Tit
er96を用いて添付の手順書に従った。反応後にプレ
ートリーダーSPECTRA MAX250(Mole
cular Device)を用いて、A670 −A630
nmの差吸光度を測定した。差吸光度を、本活性化因子
の添加有無の培養細胞で比較した。測定は各回毎に細胞
培養の4穴ずつ行い、それらの平均値を求めた(図4、
図5)。
【0029】コリンアセチルトランスフェラーゼ(Ch
AT)活性の測定(図8)材料 24穴プレートで培養した中隔野神経細胞の初代培養細
胞、PBS(−)、塩化ナトリウム(和光純薬)、Tr
itonX−100(ナカライテスク)、塩化コリン
(Sigma)、ESERINE(フィゾスチグミン硫
酸塩:Sigma)、〔1−14C〕acetyl Co
A(Amersham)、リン酸二水素カリウム(和光
純薬)、テトラフェニルホウ酸ナトリウム(ナカライテ
スク)、液体クロマトブラフィー用アセトニトリル(和
光純薬)、液体シンチレーション用トルエン(ナカライ
テスク)、シンチレーションカウンター(BECKMA
N)、抗NGF中和抗体(Boehringer Ma
nnheim)、シトシンアラビノシド(Sigm
a)。
【0030】操作 実施例2に記載の方法で摘出したラット胚中隔野神経細
胞を24穴ポリ−L−リジンコートプレートで目的の日
数培養し、プレートの培地を24G注射針を付けたアス
ピレーターで吸引除去した。各穴に細胞可溶化液(1M
NaCl、2.5g TritonX−100)10
ulと反応溶液(50mM PB−KpH6.8、0.
2M NaCl、8mM塩化コリン、1mM EDT
A、0.1mMエゼリン、0.5% TritonX−
100、25uM〔1−14C〕acetyl CoA
(2−10 mCi/mmol)100ulを添加して
37℃、30分インキュベートした。反応停止液(50
M PB−K pH6.5、1mM EDTA)250
ulを加えて酵素反応を停止した。反応液360ulを
カリグノスト液(0.5%テトラフェニルホウ酸ナトリ
ウム/アセトニトリル溶液)1ml及び液体シンチレー
ション用トルエン2mlを分注した試験管に加えた。ボ
ルテックスミキサーで1分間攪拌混和し、抽出した。5
000rpmで1分間遠心分離し、上層の有機溶媒層1
ml採取して、シンチレターULTIMA GOLD
(パッカードジャパン)1mlを分注したオムニバイア
ルに加えて混和した。オムニバイアルをラックに並べ、
シンチレーションカウンターで〔1−14C〕アセチルコ
リンの放射活性を測定した。本活性化因子を添加した神
経培養細胞と非添加の神経培養細胞のChAT活性を測
定した。また、本活性因子と同時に抗NGF中和抗体
(Boehringer Mannheim)またはシ
トシンアラビノシド(Sigma)を添加した神経培養
細胞で測定し、本活性因子のみを添加した神経培養細胞
と比較した(図8、図9)。
【0031】実施例5 神経の特異的蛋白質抗体による
免疫染色材料 胎生17日目ラット胚・中隔野神経細胞の初代培養細
胞、Anti−Neurofilament 160k
Da(Boehringer Mannheim)、A
nti−Glial Fibrillary Acid
ic Protein(GFAP)(Boehring
er Mannheim)、アルカリフォスファターゼ
標識抗マウスIgG(Promega)、PBS(−)
(ニッスイ)、ウシ血清アルブミン(Sigma)、発
色基質溶液NBT−BCIP stable mix
(Gibco BRL)、メタノール(和光純薬)、ポ
リ−D−リジンコートカバースリップ(BIO COA
T CELLWARE、Collaborative
Biomedical Products)。
【0032】操作 実施例4に記載の様に摘出したラット胚中隔野神経細胞
を12穴プレートにおいて、ポリ−D−リジンコートカ
バースリップ上に培養した。培養細胞液から培地を除
き、PBS(−)で細胞を濯う。予め−20℃で冷却し
たメタノールを加え、細胞を固定する。カバースリップ
を新しい12穴プレートへ移し、0.1%BSA/PB
S(−)を静かに加え、3分間静置した。さらに、0.
1% BSA/PBS(−)1mlの新しいウエルにカ
バースリップを移し、これを3回繰り返した。最後に、
カバースリップをウエルより取り出し、縁をキムワイプ
で拭いてPBS(−)を取り除く。モイスチャンバー
(チップケース)にカバースリップを移し、1次抗体
(Anti−Neuro−filament 160k
DaまたはAnti−GFAP)を添加した。30分室
温に静置した。カバースリップを0.1% BSA/P
BS(−)1mlで3回洗浄した。最後に、キムワイプ
で縁を拭いて、モイストチャンバーにカバースリップを
移し、2次抗体(アルカリフォスファターゼ標識ant
i−マウスIgG抗体)を添加した。30分室温に静置
する。カバースリップを0.1% BSA/PBS
(−)1mlで3回洗浄し、最後にキムワイプで拭った
後に、発色基質溶液NBT−BCIP stable
mixを添加した。15分間室温に静置した後に、位相
差顕微鏡で発色を確認後に、PBS(−)を分注した新
しいウエルに移し観察した。増殖した細胞の約半分が染
色されアストロサイトであることを示し、染色されない
細胞はその形態からO−2A幹細胞であることを示し
た。
【0033】
【発明の効果】本発明によれば、ヒト尿由来の新規なグ
リア細胞増殖因子が単離され、その分子量及びN末端ア
ミノ酸配列等の知見が提供され、同因子の量産への途が
開かれた。同因子はグリア細胞のNGF因子分泌を促進
させ、ChAT活性を増大させる作用を示すので種々の
神経系疾患の治療に応用されうる。
【図面の簡単な説明】
【図1】陰イオン交換樹脂HPA25非吸着画分を硫安
分画した試料をSuperdex 200 colum
n上でゲルろ過したときの本活性因子分画フラクション
の溶出パターン。 Superdex 200pg XK26/60(32
0ml) 緩衝液:PBS(−) 流速 :2ml/min 分画量:4ml 本活性因子は溶出開始から0.75C.V.−0.94
C.V.の灰色分画に溶出。
【図2】RP−HPLC上での本活性因子のクロマトグ
ラム。 カラム :C18、vydac218TP54 溶出液A:0.1% TFA in milli−Q 溶出液B:0.1% TFA in 70%アセトニト
リル 流速 :1.0ml/min 勾配 :破線 検出 :UV 214 nm
【図3】本活性因子のSDS−PAGE電気泳動分析の
写真。 レーン1:分子量マーカー(Bio−Rad) レーン2:非還元、銀染色 レーン3:還元、銀染色 レーン4:分子量マーカー レーン5:非還元、CBB染色 レーン6:還元、CBB染色
【図4】ラット胚・脳中隔野神経細胞を各添加物存在下
で7日間培養後の細胞の写真。 上)本活性化因子を添加した細胞 中)本活性化因子と1uMのシトシンアラビノシドを添
加した細胞 下)無添加の細胞
【図5】ラット胚・脳中隔野神経細胞を本活性因子の添
加および無添加の下に培養して細胞数の変化をMTT法
により測定したグラフ。初代培養細胞を2×104 ce
ll/cm2 の密度で蒔き、無血清培地Neuroba
sal medium下、培養日数に従い測定した。 (●):本活性因子添加(0.001 O.D.uni
ts/ml) (▲):本活性因子無添加
【図6】本活性因子のN−末端アミノ酸配列。1位がT
yr。
【図7】本活性因子のN−末端アミノ酸配列。1位がS
er。
【図8】神経細胞を血清除去の培地で、種々の項目の条
件で培養したときのアセチルコリントランスフェラーゼ
(ChAT)活性の経時変化を示すグラフ。 (●):本活性因子添加(0.001 O.D.uni
ts/ml)、 (○):本活性因子無添加、 (▲):本活性因子添加(0.001 O.D.uni
ts/ml)とシトシンアラビノシド(1uM)添加 (◆):シトシンアラビノシド(1uM)添加
【図9】抗NGF中和抗体による神経栄養因子効果の阻
害を示す棒グラフ。細胞を血清除去の培地に本活性因子
(0.001 O.D.units/ml)と抗NGF
中和抗体を(0、10、100、1000ng/ml)
を加えて8日間培養し、ChAT活性を測定した。デー
タはChATにより生成した14C−acetylcho
lineの放射活性値CPMで表した3検体の平均値を
測定値とした。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI C12N 15/09 ZNA A61K 37/02 AAA C12P 21/02 C12N 15/00 ZNAA (72)発明者 古賀 淳一 神戸市西区狩場台1−30−5

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ヒト尿から限外ろ過、硫安による塩析、
    ゲルろ過、イオン交換クロマトグラフィーおよび逆相ク
    ロマトグラフィーにより精製することができ、SDS−
    PAGEによる分子量が約29kDaである神経グリア
    細胞増殖因子。
  2. 【請求項2】 N−末端のアミノ酸配列が 【図6】である請求項1記載の増殖因子。
  3. 【請求項3】 N末端のアミノ酸配列が 【図7】である請求項1記載の増殖因子。
  4. 【請求項4】 請求項1の増殖因子よりなるグリア細胞
    の神経成長因子の分泌促進剤。
  5. 【請求項5】 請求項1の増殖因子よりなる神経細胞の
    コリンアセチルトランスフェラーゼ活性の増強剤。
  6. 【請求項6】 請求項2に記載のアミノ酸配列をコード
    するデオキシリボヌクレオチド配列を含有する神経グリ
    ア細胞増殖因子のデオキシリボヌクレオチド。
  7. 【請求項7】 請求項3に記載のアミノ酸配列をコード
    するデオキシリボヌクレオチド配列を含有する神経グリ
    ア細胞増殖因子のデオキシリボヌクレオチド。
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Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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Cited By (3)

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US6372473B1 (en) 1997-05-28 2002-04-16 Human Genome Sciences, Inc. Tissue plasminogen activator-like protease
US6815534B2 (en) 1997-05-28 2004-11-09 Human Genome Sciences, Inc. Tissue plasminogen activator-like protease
US7205139B2 (en) 1997-05-28 2007-04-17 Human Genome Sciences, Inc. Tissue plasminogen activator-like protease

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