JP2002369691A - イネ植物体で活発に転移するline型のレトロトランスポゾン、及びその利用 - Google Patents
イネ植物体で活発に転移するline型のレトロトランスポゾン、及びその利用Info
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Abstract
トロトランスポゾンを見出すと共に、その利用方法を提
供する。 【解決手段】 本願発明者等がイネから単離したレトロ
トランスポゾンKarma は、LINE型のレトロトランス
ポゾンであり、組織培養により活性化された場合、組織
培養後の再分化植物(初代植物)の後代の植物(その子
孫植物)中において転移する性質を有する。上記レトロ
トランスポゾンKarma は、組織培養等でひとたび活性化
されると、その後何世代にもわたって転移し続けるた
め、イネ遺伝子の機能解析に代表される種々の遺伝子機
能解析に有効に利用できる。
Description
に転移するLINE型のレトロトランスポゾン、及びそ
の利用に関するものである。
ansposable genetic element) または可動性遺伝因子
(mobile genetic element, movable genetic element)
とも呼ばれ、染色体DNA上のある部位から他の部位へ
転移する性質を有するDNA断片のことをいう。トラン
スポゾンは、ランダムな位置に転移し、遺伝子の不活性
化等を起こすため、動植物を問わず広く生物学の分野に
おいて、遺伝子解析のツールとして利用されている。
て、文献Annu.Rev.Genet.1999.33:479-532には、植物
のレトロトランスポゾンの種類等が紹介されている。ま
た、文献The Plant Journal (2001)25(2),169-179 に
は、イネのゲノム全体にこうしたトランスポゾンがいく
つ存在するかが推測されている。
られているほか、イネの内在性レトロトランスポゾンTo
s17 が知られている(文献「植物のゲノム研究プロト
コール」秀潤社66-72 頁参照)。
(Long Terminal Repeat;端に長いリピートを持つ)タ
イプのレトロトランスポゾンであり(上記文献参
照)、文献Proc.Natl.Acad.Sci.USA Vol.93,pp.7783-77
88,July 1996には、上記Tos17 が培養中に転移すること
が報告されている。
TRタイプが存在し、non-LTRタイプとしてはLIN
E(long interspersed repetitive elements) 型のレト
ロトランスポゾンなどが知られている。動物細胞では、
レトロトランスポゾンの殆どはnon-LTRタイプである
が、植物では、逆にnon-LTRタイプは稀である(上記
文献参照)。
ールとして利用されており(文献Trends in Plant Scie
nce Vol.6 No.3 March 2001 参照)、上記レトロトラン
スポゾンTos17 も、その転移能を利用して遺伝子を破壊
し、その機能を解析することに広く利用されている(上
記文献参照)。
来の活発に転移するLTR型のレトロトランスポゾンで
あるが、イネ由来のnon-LTR型のレトロトランスポゾ
ンの存在についてはよく知られていなかった。
は、non-LTR型に属する複数のLINE様断片をイネ
から単離したことが報告されているが、これらはいずれ
も断片にすぎず、スナップが入ったりフレームが合わな
いなど正確にタンパク質をコードしておらず、機能も未
知のものである。
移し、つまり、組織培養中にそのコピー数を増やし、そ
の後の再分化世代では安定であるが、これに対して、組
織培養等でひとたび活性化されると、その後何世代にも
わたって転移し続けるレトロトランスポゾンがあれば、
遺伝子機能解析のツールとして非常に有用である。
であり、その目的は、イネ植物体で活発に転移するLI
NE型のレトロトランスポゾンを見出すと共に、その利
用方法を提供することにある。
突然変異体の解析から、イネ植物体で活発に転移し、産
業上有用な新規なレトロトランスポゾンを見出し、本発
明を完成させるに至った。
は、イネから単離されたLINE型のレトロトランスポ
ゾンである。
性を有するレトロトランスポゾンは、すべてLTR型で
あり、本発明のレトロトランスポゾンはイネなどの植物
ではじめて転移が確認されたLTRを持たない非LTR
型のレトロトランスポゾンである。なお、ここで、「L
INE型」とは、上記文献等に記載されているLIN
E型と同じ意味で用いている。
養などにより活性化されるが、活性化の方法は組織培養
に限定されず、これ以外の方法により活性化できる可能
性もある。組織培養により活性化された場合、本発明の
レトロトランスポゾンは、組織培養後の再分化植物(初
代植物)の後代の植物(その子孫植物)中において転移
する性質を有する。
ロトランスポゾンの転移を活性化し、再分化植物でコピ
ー数の増加が見られることは知られていたが、再分化当
代(初代植物)後の世代で転移が確認された例はない。
例えば、従来のTos17 は培養中にコピー数を増やすのに
対して、本発明のレトロトランスポゾンは、培養中にお
そらく活性化されるものの、実際に転移が起こるのは後
代の植物中である。したがって、本発明のレトロトラン
スポゾンは、組織培養後の後代の植物体中で活発に転移
することが示された初のレトロトランスポゾンである。
よれば、これを活性化することにより、遺伝子を破壊す
る方法が提供され、この遺伝子破壊方法により作製され
た遺伝子破壊体が提供される。
トロトランスポゾンが遺伝子内もしくはその近傍位置に
挿入されるなどして、その遺伝子産物の正常な発現が妨
げられ、またはその発現量が変化することを含む意味で
ある。
ず、本発明のレトロトランスポゾンにより目的とする任
意の遺伝子が破壊された微生物、動植物細胞、個体とし
ての動植物、およびその組織を含む意義であり、植物お
よびその組織には、プロトプラスト、カルス、再生個体
(初代植物)およびその子孫植物、さらには植物個体か
ら単離された植物組織(根、茎、葉等)および種子等が
含まれ、動植物の種類(対象)は、特に限定されるもの
ではない。
能を確実に解析する手法への要求はますます高くなって
いる。トランスポゾンは、遺伝子機能解析において非常
に有効であり、本発明のレトロトランスポゾンは、ゲノ
ム配列決定後のイネ遺伝子の機能解析に代表される種々
の遺伝子機能解析に有効に利用できるものであり、さら
に発展的に遺伝子治療の開発など種々の分野に利用でき
る可能性もある。
離した本発明に係るレトロトランスポゾンKarma は、配
列番号1で表される配列からなり、配列番号2で表され
るアミノ酸配列をコードする第1のオープンリーディン
グフレーム、および、配列番号3で表されるアミノ酸配
列をコードする第2のオープンリーディングフレームを
有する。
れば、配列番号2で表されるアミノ酸配列からなり、少
なくともその一部が本発明のレトロトランスポゾンの転
写産物のパッケージングに寄与するタンパク質が提供さ
れると共に、このタンパク質をコードするDNAが提供
される。
よれば、配列番号3で表されるアミノ酸配列からなり、
エンドヌクレアーゼ領域と逆転写酵素領域とを有するタ
ンパク質が提供されると共に、このタンパク質をコード
するDNAが提供される。
から単離精製された状態であってもよいし、タンパク質
をコードする遺伝子を宿主細胞に導入して、そのタンパ
ク質を細胞内発現させた状態であってもよい。また、本
発明のタンパク質は、付加的なポリペプチドを含むもの
であってもよい。
のみならず、それを構成するセンス鎖およびアンチセン
ス鎖といった各1本鎖DNAを包含する。また、上記
「DNA」は、本発明のタンパク質をコードする配列以
外に、ベクター配列(発現ベクター配列を含む)などの
配列を含むものであってもよい。例えば、本発明のタン
パク質をコードする配列をベクター配列につないで本発
明のDNAを構成し、これを適当な宿主で増幅させるこ
とにより、本発明のDNAを所望に増幅させることがで
きる。
は、2本鎖DNAのみならず、それを構成するセンス鎖
およびアンチセンス鎖といった各1本鎖DNAを包含す
る。また、本発明のレトロトランスポゾンは、ベクター
配列などの他の配列を含むものであってもよい。
面に基づいて説明すれば、以下のとおりである。
Karma の構造 本願発明者等は、後述の実施例においても詳述するよう
に、イネの突然変異体の解析から、イネ植物体で活発に
転移するレトロトランスポゾンKarma を単離し、その塩
基配列を決定した。決定した塩基配列は、配列番号1に
示される配列(図1〜3にも同配列を示す)である。ま
た、解析の結果、上記レトロトランスポゾンKarma が転
写された一つのRNAからは、二つのオープンリーディ
ングフレーム(ORF)がつくられることがわかった。
二つのORFのうち、第一のオープンリーディングフレ
ーム(ORF1)がコードするアミノ酸配列は、配列番
号2に示される配列(図4にも同配列を各アミノ酸1文
字表記の形で示す)であり、第二のオープンリーディン
グフレーム(ORF2)がコードするアミノ酸配列は、
配列番号3に示される配列(図5にも同配列を各アミノ
酸1文字表記の形で示す)である。
なった上記レトロトランスポゾンKarma の模式的構成が
示される。レトロトランスポゾンKarma は、7084b
pからなり、上記ORF1に対応するgag様遺伝子
と、上記ORF2に対応するpol遺伝子とを持つ。g
ag様遺伝子は、LTR型のgagタンパク質と相同性
の高い領域を持つgag様タンパク質をコードし、po
l遺伝子は少なくともエンドヌクレアーゼおよび逆転写
酵素をコードするものと考えられる。また、上記ORF
1の+30bpに位置し、GCGGTGGの配列からな
るプロモーターを有する。このレトロトランスポゾンKa
rma のプロモーターは、DrosophilaやLiliumのLINE
型のプロモーターで保存されているGACGTGPyの
配列モチーフに類似するものである。
アミノ酸からなるタンパク質は、上記gag様タンパク
質と考えられ、このうち、LTR型のgagタンパク質
と特に相同性の高いgag領域(アミノ酸配列では28
2番目〜328番目、塩基配列では845番目〜985
番目に相当) は、核酸との結合に関係するCX2CX4
HX4Cのシステインモチーフ(CFRCLGSDHQ
VKDC)を含んでいる。このシステインモチーフは、
LINE型のORF1で良好に保存されており、また、
LTR型のレトロトランスポゾン、レトロウイルス、カ
リモウイルスのgagタンパク質でも良好に保存されて
いる。上記gag様タンパク質は、少なくともその一部
が、レトロトランスポゾンのカプシド化(capsidation
)、つまり、レトロトランスポゾンKarma の転写産物
をパッケージングし、ウイルス様粒子(VLP) を形成する
際に寄与するものと考えられる。
アミノ酸からなるタンパク質は、エンドヌクレアーゼ領
域(アミノ酸配列では14番目〜152番目、塩基配列
では3442番目〜3858番目に相当) と、逆転写酵
素領域(アミノ酸配列では462番目〜762番目、塩
基配列では4786番目〜5688番目に相当) とを有
する。エンドヌクレアーゼ領域は、すべてのLINE型
で良好に保存されており、このエンドヌクレアーゼは、
本発明に係るレトロトランスポゾンKarma がゲノムDN
Aに組み込まれる際の標的DNAの開裂に関係すると考
えられる。逆転写酵素領域は、すべてのLINE型のO
RF2で良好に保存されている7つのドメインからな
り、挿入(インテグレーション)時における核酸との結
合に関係するCX1-3 CX7-8 HX4のシステインモチ
ーフ(CDICSTTDETADHLSFN)を含んで
いる。この逆転写酵素は、本発明に係るレトロトランス
ポゾンKarma の転写産物からDNAへの逆転写に関係す
ると考えられる。
第7染色体上に存在し、後述の実施例においても詳述す
るように、野生型イネには2コピー存在しているが、組
織培養などにより活性化され、再分化植物の後代で転移
する。その結果、再分化植物の後代で上記レトロトラン
スポゾンKarma のコピー数が増加する。一旦、転移能が
活性化された後は、上記レトロトランスポゾンKarma の
転移活性は消失せず、再分化後自殖を繰り返した植物に
おいても転移活性が維持され、コピー数が増加し続け
る。
再分化植物7〜8世代目でも転移が観察されている。し
たがって、上記レトロトランスポゾンKarma は、ひとた
び活性化されると、後はただ育てているだけで転移し続
けるということができ、予備的な実験の結果では、1コ
ピー/1世代程度に増えることが確認されている。
培養により活性化されるまでは、過去何千年もサイレン
トだったものと推定されるが、このような特徴を有する
レトロトランスポゾンKarma は、単に現象が面白いとい
うだけではなく、後述のように、遺伝子機能解析のツー
ルとしても高い有用性を有するものである。
方法、その活性化方法 上記レトロトランスポゾンKarma を取得する方法は、後
述の実施例に記載の方法に限定されず、得られた配列情
報等に基づいて種々の方法により、上記レトロトランス
ポゾンKarma を含むDNA断片を単離し、クローニング
することができる。例えば、上記レトロトランスポゾン
Karma (またはその近傍領域)の塩基配列と特異的にハ
イブリダイズするプローブを調製し、イネのゲノムDN
Aライブラリーをスクリーニングすればよい。このよう
なプローブとしては、上記レトロトランスポゾンKarma
(またはその近傍領域)の塩基配列またはその相補配列
の少なくとも一部に特異的にハイブリダイズするプロー
ブであれば、いずれの配列・長さのものを用いてもよ
い。また、上記スクリーニングにおける各ステップにつ
いては、通常用いられる条件の下で行えばよい。
ーンは、制限酵素地図の作成およびその塩基配列決定
(シークエンシング)によって、さらに詳しく解析する
ことができる。これらの解析によって、本発明に係るレ
トロトランスポゾンKarma を含むDNA断片を取得した
か容易に確認することができる。
のレトロトランスポゾンで良好に保存されている領域
(例えば、図6に示されるエンドヌクレアーゼ領域)の
中から選択し、イネのゲノムDNAライブラリーをスク
リーニングすれば、上記レトロトランスポゾンKarma 以
外のLINE型のレトロトランスポゾンをイネから単離
できる可能性がある。
する方法は特に限定されるものではなく、組織培養によ
り活性化する場合の組織培養の条件、組織培養に供され
る組織についても特に限定されるものではないが、後述
の実施例において活性化のために行った組織培養の条件
は、以下のステップ1〜3のとおりである。
を含む下記培地で約1カ月培養する。培養温度は28
〜30℃である(下記ステップ2・3でも同じ温度範囲
に設定した)。培地 MS培地あるいはR2培地 3%ショ糖 4mg/l 2,4-D (オーキシン) 0.8%アガロース ステップ2 完熟種子から形成されたカルスを液体培地(下記培地
)で2〜3カ月培養する。この間、10日から2週間
に一度、新しい培地に植え替える。定した)。培地 MS培地あるいはR2培地 3%ショ糖 4mg/l 2,4-D (オーキシン) ステップ3 下記培地でカルスから植物体を再分化させる。培地 R2培地 3%ショ糖、3%ソルビトール 1%アガロース 組織培養以外に上記レトロトランスポゾンKarma を活性
化する方法としては、高温、低温、乾燥、UV照射、変
異原物質の使用など極端なストレスを与えることで転移
を活性化する方法が考えられる。
方法(遺伝子破壊体の作製方法) 他のトランスポゾンであるAcやTos17 などを利用した
遺伝子破壊体の解析と同様に、既知の配列を持つプライ
マーと上記レトロトランスポゾンKarma 中の配列から選
ばれたプライマーとを用いてPCR を行うことにより、既
知の遺伝子配列に上記レトロトランスポゾンKarma が挿
入している(つまり、その遺伝子機能が破壊されている
可能性が高い)植物体を同定することができる。
を3次元的にプールして多数の個体の効率的なスクリー
ニングを行うシステムを作ることもできる(例えば、
「植物のゲノム研究プロトコール」秀潤社73-81 頁参
照)。
すると、レトロトランスポゾンは一般に転移先のゲノム
で安定に維持されるため、すべての転移を解析対象とで
きる利点がある。また、同じイネのレトロトランスポゾ
ンであり遺伝子機能解析に利用されているTos17 やタバ
コのレトロトランスポゾンTto が組織培養中にのみ転移
する(=その後の再分化世代では安定)のに対して、今
回発見した上記レトロトランスポゾンKarma は、組織培
養に由来する系統であれば再分化後代でも転移を続ける
(後述のように、現在再分化後7世代目でも転移してい
ることが確認されている)ため、少数の再分化個体を作
製し、その後代を育成することにより容易に解析個体の
集団規模を拡大することができる。
にもわたり育成し、新たな突然変異体(遺伝子破壊体)
が出現すれば、その変異は上記レトロトランスポゾンKa
rmaにより引き起こされている可能性が高い。したがっ
て、レトロトランスポゾンKarma を用いて原因遺伝子を
単離することができる。このように、突然変異体のスク
リーニングを何世代にもわたり行える点が、従来のレト
ロトランスポゾンとは大きく異なる上記レトロトランス
ポゾンKarma の利点である。
の場合は、少数の再分化植物からスタートして、それら
の後代を増殖させることによって、上記レトロトランス
ポゾンKarma の挿入により引き起こされた種々の遺伝子
破壊体(突然変異体)が得られることとなり、大規模な
プールを比較的容易に作製できるという利点がある。
イネ以外の植物に導入することにより、他の植物におい
ても遺伝子機能解析に用いることができる。特に、組織
培養や培養からの再分化が困難な植物種であっても、最
低1個体のレトロトランスポゾンKarma 導入植物を作製
するだけで、その個体からスタートることにより、理論
的には無限の規模のタグ集団を作ることができるため、
その利点は大きい。
スポゾンKarma の配列情報からプローブを調製しスクリ
ーニングを行うことにより、他種の植物から転移活性を
もつLINE型のレトロトランスポゾンを単離すること
ができる。イネ以外の植物種においても内在性の転移活
性をもつLINE型のレトロトランスポゾンを見出すこ
とができれば、これらのレトロトランスポゾンをその植
物種の遺伝子機能解析に用いることができる。
ポゾンKarma の転写は、組織特異的、あるいは成長時期
特異的に起こると考えられる。したがって、レトロトラ
ンスポゾンKarma のプロモーターは、組織特異的(ある
いは成長時期特異的)な遺伝子発現に利用できる可能性
がある。
本発明は、これに限定されるものではない。
fzp-k と同様の表現型を示す変異体fzp-m を得た。そし
て、Acが挿入しているゲノム領域(Ac-FZP)をAcの塩
基配列を利用したインバースPCR により取得した。さら
に、上記変異体fzp-m のサザン解析を行ったところ、fz
p-m 系統においても、fzp-k 系統でAcが挿入している
ゲノム領域に何らかの配列が挿入されていることが判明
した。しかしながら、AcおよびAc-FZPをプローブとし
たサザン解析の結果を比較することにより、fzp-m にお
いて、Ac-FZP領域に挿入されているのはAcでないこと
が分かった。既にAc-FZP領域の塩基配列は決定済みであ
ったので、この配列情報を用いてfzp-m に挿入されてい
る配列をfzp-m のゲノムDNAを鋳型としたPCR により
増幅した。
クローニングキットを利用してプラスミド(pGEM-T)にク
ローニングし、塩基配列を決定した。さらに、このDN
A断片をプローブとしてイネゲノムライブラリーをスク
リーニングし、約10kbのゲノム領域を得た。このゲノ
ム領域に上記レトロトランスポゾンKarma が含まれてお
り、その塩基配列等の解析を行った。塩基配列の決定に
はABI 社Dye-terminatorシークエンシングキット、ABI
社シークエンサー301 を用いた。塩基配列、アミノ酸配
列の解析は、アメリカNCBIが提供するBLAST サーチによ
り行った。
と保存領域 図6は、クローニングされた上記レトロトランスポゾン
Karma の構造を模式的に示すと共に、このレトロトラン
スポゾンKarma がコードするエンドヌクレアーゼ領域の
アミノ酸配列(OsLINE EN )を他のクローン(RILN1, R
ILN6, RILN12)と共に整列化してこれら配列の相同性を
比較した図である。これらのコンセンサス配列(Consen
sus )も最下段に示される。
LN12) は、その配列からイネのLINE型レトロトラン
スポゾンと予想されるものの、全長ではなく断片であ
り、また、タンパク質の全部をコードしておらず、機能
も未知である。
パク質がコードされている領域(gag-like domain)を、
「en」はエンドヌクレアーゼがコードされている領域
を、「rt」は逆転写酵素がコードされている領域をそ
れぞれ示す。また、両端の三角印は標的部位の重複部
(target site duplication )を、★印は多くのLIN
E型レトロトランスポゾンで保存されている部位を、斜
線領域は前述のシステインを含むモチーフをそれぞれ示
す。
ンKarma のコピー数の検討 図7は、野生型のノトヒカリの葉から抽出したゲノムD
NAにおいて、上記レトロトランスポゾンKarma のコピ
ー数がいくつあるかをサザンブロット法により解析した
結果を示す図である。また、同図には、上記レトロトラ
ンスポゾンKarma の模式的構造と共に、その塩基配列中
における4種の制限酵素(BamH1(B), EcoR1(EI), EcoRV
(EV), HindIII(H)) の切断部位がそれぞれ示される。
Aをそれぞれ上記4種の制限酵素で消化し、得られた各
サンプルを電気泳動後、ハイブリダイゼーションを行っ
た。プローブには、同図に示されるように第2611位
〜第4549位の範囲内のDNA配列を用い、65℃、
16時間でハイブリダイゼーションを行った。その後、
室温にて2×SSC,0.1%SDSで6回洗浄し、さ
らに、65℃にて0.1×SSC,0.1%SDSで1
5分洗浄した。その結果を図7左側に示す。同図に示す
ように、野生型植物は、上記レトロトランスポゾンKarm
a を2コピー持っていることが分かる。
トランスポゾンKarma のコピー数がいくつあるかをサザ
ンブロット法により解析した結果を示す図である。試料
には、野生型のcv.Kinmaze(ジャポニカ)の葉(L)、
5月齢(5m)、2年齢(2y)、4年齢(4y)のKi
nmaze の培養細胞、および C5924(インディカ)のOc
細胞を用い、各試料から抽出したゲノムDNAをそれぞ
れ制限酵素EcoRV で消化し、得られた各サンプルを電気
泳動後、ハイブリダイゼーションを行った。プローブお
よびハイブリダイゼーションの条件は上記と同様であ
る。上記Oc細胞は20年以上培養されているcell lin
e であるが、同図に示すように、組織培養のみでは、4
年経っても、それ以上でも、上記レトロトランスポゾン
Karma は転移しない(つまり、コピー数が増加しない)
ことが分かる。
ンスポゾンKarma のコピー数の増加 図9は、上記レトロトランスポゾンKarma が組織培養に
より活性化された後、その子孫植物の連続する2世代を
通じて、上記レトロトランスポゾンKarma のコピー数が
どのように増加しているかを解析した結果を示す図であ
る。
世代目の形質転換植物であり、35-6-3-3と59-8-8との2
系統が示される。「progeny 」はその子供であり、35-6
-3-3に対しては1〜4の4サンプル、59-8-8に対しては
1〜6の6サンプルが示される。「WT」は形質転換さ
れていない品種トリデの葉である。各試料から抽出した
ゲノムDNAをそれぞれ上記と同様に電気泳動後、ハイ
ブリダイゼーションを行った。プローブおよびハイブリ
ダイゼーションの条件は上記と同様である。
に示されるWTでは、上記レトロトランスポゾンKarma
のコピー数が2コピーであるが、再分化後7世代目のpa
rentalでは7〜8コピーになっていること、1世代経る
ことで、さらに転移が起こっていること(つまり、親に
はないバンドがprogeny に出現していること)が分か
る。
ンドは子孫に安定に伝わっており、一旦転移したバンド
は安定に子孫に伝わるものと考えられる。
rma については、転移に必要な何らかの活性化は組織培
養中に起こるが、実際の転移には減数分裂を経ることが
必要なのではないかと考えられる。これはおそらく、上
記レトロトランスポゾンKarma の転写がmeiosis-specif
icなためと推測される。
以上のように、イネから単離されたLINE型のレトロ
トランスポゾンであり、組織培養により活性化された場
合、組織培養後の再分化植物(初代植物)の後代の植物
(その子孫植物)中において転移する性質を有する。
は、組織培養等でひとたび活性化されると、その後何世
代にもわたって転移し続けるため、イネ遺伝子の機能解
析に代表される種々の遺伝子機能解析に有効に利用でき
る、という効果を奏する。
ゾンKarma の塩基配列(1〜2460)を示す図であ
る。
(2461〜4980)を示す図である。
(4981〜7084)を示す図である。
プンリーディングフレームがコードするアミノ酸配列を
示す図である。
プンリーディングフレームがコードするアミノ酸配列を
示す図である。
的に示すと共に、このレトロトランスポゾンKarma がコ
ードするエンドヌクレアーゼ領域のアミノ酸配列を他の
クローンと共に整列化してこれら配列の相同性を比較し
た図である。
的に示すと共に、野生型のノトヒカリの葉から抽出した
ゲノムDNAにおいて、上記レトロトランスポゾンKarm
a のコピー数がいくつあるかをサザンブロット法により
解析した結果を示す図である。
ンKarma のコピー数がいくつあるかをサザンブロット法
により解析した結果を示す図である。
より活性化された後、その子孫植物の連続する2世代を
通じて、上記レトロトランスポゾンKarma のコピー数が
どのように増加しているかを解析した結果を示す図であ
る。
Claims (11)
- 【請求項1】イネから単離されたLINE型のレトロト
ランスポゾン。 - 【請求項2】組織培養後の再分化植物の後代の植物中に
おいて転移する性質を有する請求項1記載のレトロトラ
ンスポゾン。 - 【請求項3】配列番号1で表される配列からなる請求項
1記載のレトロトランスポゾン。 - 【請求項4】配列番号2で表されるアミノ酸配列をコー
ドするオープンリーディングフレームを有する請求項1
記載のレトロトランスポゾン。 - 【請求項5】配列番号3で表されるアミノ酸配列をコー
ドするオープンリーディングフレームを有する請求項1
記載のレトロトランスポゾン。 - 【請求項6】請求項1記載のレトロトランスポゾンを活
性化することにより遺伝子を破壊する方法。 - 【請求項7】請求項6記載の遺伝子破壊方法により作製
された遺伝子破壊体。 - 【請求項8】配列番号2で表されるアミノ酸配列からな
り、少なくともその一部が請求項1記載のレトロトラン
スポゾンの転写産物のパッケージングに寄与するタンパ
ク質。 - 【請求項9】請求項8記載のタンパク質をコードするD
NA。 - 【請求項10】配列番号3で表されるアミノ酸配列から
なり、エンドヌクレアーゼ領域と逆転写酵素領域とを有
するタンパク質。 - 【請求項11】請求項10記載のタンパク質をコードす
るDNA。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2001180020A JP2002369691A (ja) | 2001-06-14 | 2001-06-14 | イネ植物体で活発に転移するline型のレトロトランスポゾン、及びその利用 |
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Cited By (2)
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---|---|---|---|---|
JP2008545391A (ja) * | 2005-05-17 | 2008-12-18 | テマセク・ライフ・サイエンシーズ・ラボラトリー・リミテッド | 脊椎動物におけるトウモロコシac/ds因子の転移 |
WO2022186233A1 (ja) * | 2021-03-03 | 2022-09-09 | 株式会社Logomix | ゲノムdnaを改変する方法および改変を検出する方法 |
Citations (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JPH11206374A (ja) * | 1998-01-21 | 1999-08-03 | Mitsui Chem Inc | トランスポゾン様dnaおよびその利用方法 |
-
2001
- 2001-06-14 JP JP2001180020A patent/JP2002369691A/ja active Pending
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JPH11206374A (ja) * | 1998-01-21 | 1999-08-03 | Mitsui Chem Inc | トランスポゾン様dnaおよびその利用方法 |
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Title |
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