JP2002355079A - 内分泌かく乱物質の検出方法 - Google Patents

内分泌かく乱物質の検出方法

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JP2002355079A
JP2002355079A JP2002069354A JP2002069354A JP2002355079A JP 2002355079 A JP2002355079 A JP 2002355079A JP 2002069354 A JP2002069354 A JP 2002069354A JP 2002069354 A JP2002069354 A JP 2002069354A JP 2002355079 A JP2002355079 A JP 2002355079A
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JP2002069354A
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Akihiro Kondo
昭宏 近藤
Takeshi Takeda
健 武田
Shigetoshi Mizutani
滋利 水谷
Yoshimasa Tsujimoto
善政 辻本
Ryokichi Takashima
良吉 高嶋
Yoshiki Enoki
由樹 榎
Ikunoshin Kato
郁之進 加藤
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Takara Bio Inc
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 内分泌かく乱作用により影響を受ける遺伝
子、内分泌かく乱作用により影響を受ける遺伝子を利用
した、内分泌かく乱作用を有する物質の検出方法及び内
分泌かく乱作用を有する物質の検出方法に使用されるD
NAアレイあるいはそれに準ずるものを提供すること。 【解決手段】 内分泌かく乱作用により影響を受ける遺
伝子、内分泌かく乱作用により影響を受ける遺伝子を利
用した、内分泌かく乱作用を有する物質の検出方法及び
内分泌かく乱作用を有する物質の検出方法に使用される
装置。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、内分泌かく乱作用
が疑われる物質について内分泌かく乱作用の有無を評価
する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】内分泌かく乱物質(環境ホルモンともい
われる)は、環境中に放出された化学物質のうちモルモ
ン類似作用あるいは抗ホルモン作用が見出されたものの
総称をいう。野生動物の生態系への影響としては、生殖
能の変化、特に雄の雌化、生殖能の低下、孵化率の低
下、胎仔の生存率の低下、生殖行動の異常等が報告され
ている。また、ヒトの健康への影響としては、精子数の
減少、子宮内膜症、不妊、卵巣ガン、子宮ガン、前立腺
ガン等が疑われているが、証明はされていない。上記の
内分泌かく乱を引き起こすと考えられている物質として
アルキルフェノール、ビスフェノールA、ダイオキシン
類、DDTおよびその代謝物、フタル酸エステル、トリ
ブチルスズ、塩素化炭化水素類、有機金属、植物エスト
ロゲン等が知られている。
【0003】これらの物質の一次作用としては、1)ホ
ルモンレセプターとの直接作用(合成ホルモン剤、DD
T、フタル酸エステル等)、2)他のレセプターを介す
る作用(ダイオキシン等)、3)代謝阻害作用(ステロ
イド代謝阻害剤、アロマターゼや5α―レダクターゼの
阻害剤等)、4)他のシステムを介する作用(神経系や
免疫系に影響を与える物質)などが知られており、作用
様式は多様である[化学、第53巻、第7号、第12〜
15頁(1998)]。
【0004】一方、内分泌かく乱物質の測定法として
は、インビトロ(in vitro)とインビボ(in
vivo)の2通りの方法が知られており、前者では
エストロゲンレセプターやアンドロゲンレセプターとの
結合活性を測定する方法や、ホルモン合成酵素系の阻害
活性を測定する方法が知られている。後者では、出生後
日齢の異なるラットの各種ホルモン産生および組織形成
異常を測定する方法、カエルの変態異常を測定する方
法、サカナの成熟異常を測定する方法等が知られている
[アナリティカル ケミストリー(Analytical Chemistr
y)、第70巻、第15号、第528A〜532A頁(1
998)]。
【0005】しかし、現在のところ注目されている内分
泌かく乱物質と疑われている物質が本当に内分泌かく乱
を引き起こすのか、もし引き起こすのならどのようなメ
カニズムで影響を及ぼしているのか、さらにどのくらい
の量をどれくらいの時間摂取すると危険なのかについて
の明解な解答は得られていない。例えば、現在行われて
いるホルモンレセプターとの結合試験は、一次スクリー
ニングという見地からすれば、必要かつ重要な方法であ
る。しかしながら、この方法で得られる結果は、内分泌
かく乱物質であることを保証するものではない。すなわ
ち、エストラジオール(女性ホルモン)もジエチルスチ
ルベストロール(DES、内分泌かく乱物質)もイソフ
ラボン(豆に含まれるヒトには無害な成分)もビスフェ
ノールA(内分泌かく乱物質と疑われている物質)もE
C50の値に差はあるものの、すべてエストロゲンレセ
プターに結合するため、このアッセイ方法ではどの内分
泌かく乱作用を持っているのか区別できない。これは、
従来の酵母を用いたアッセイ系、培養細胞を用いる系、
ネズミの子宮重量を測定する系などのいずれの方法でも
同じである。
【0006】このように現在のホルモンレセプターへの
結合活性やホルモン合成酵素系の阻害活性をインビトロ
で測定する方法は、内分泌かく乱物質測定法としての必
要条件は満たしているが、決して十分条件ではない。ま
た、ラット、カエル、サカナ等の生育や形態形成に及ぼ
す影響をインビボで調べる方法は、感度が低い上、複雑
で、多数のサンプルを調べるには長時間を必要とする。
また、環境ホルモンと称されるものは、ごく少量で内分
泌系に影響するといわれ、これをいわゆるバイオアッセ
イで評価するのは極めて困難である。従って、環境ホル
モンの問題において、その作用が疑われる物質について
内分泌かく乱作用の有無を判定し、毒性という観点では
なく動物の種の存続という観点において危険なものであ
るかどうかを判定する方法の開発が望まれていた。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、内分
泌かく乱作用により影響を受ける遺伝子を利用した、当
該作用を有する物質の検出方法及び該方法に使用される
DNAアレイあるいはそれに準ずるものを提供すること
にある。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者はかかる目的を
達成するために鋭意検討した結果、内分泌かく乱物質の
作用により影響を受ける遺伝子を多数見出し、迅速、高
感度でしかも同時に多数の試料について内分泌かく乱作
用の有無を評価する方法を構築し本発明を完成した。
【0009】即ち、本発明の第1の発明は、内分泌かく
乱物質を検出するための方法であって、試料を暴露させ
た細胞、組織又は生物体における表5〜表114、表1
17〜表397に記載の遺伝子であって、トリブチルス
ズによって発現量が変化する遺伝子群、4−オクチルフ
ェノールによって発現量が変化する遺伝子群、4−ノニ
ルフェノールによって発現量が変化する遺伝子群、フタ
ル酸ジ−n−ブチルによって発現量が変化する遺伝子
群、フタル酸ジシクロヘキシルによって発現量が変化す
る遺伝子群、オクタクロロスチレンによって発現量が変
化する遺伝子群、ベンゾフェノンによって発現量が変化
する遺伝子群、フタル酸ジエチルヘキシルによって発現
量が変化する遺伝子群、ジエチルスチルベストロールに
よって発現量が変化する遺伝子群、17β−エストラジ
オールによって発現量が変化する遺伝子群のそれぞれか
ら選択される少なくとも1種以上の遺伝子の発現量を、
該試料を暴露させなかった細胞、組織又は生物体におけ
る該遺伝子の発現量と比較する工程を包含することを特
徴とする内分泌かく乱物質の検出方法に関する。
【0010】本発明の第1の発明においては、細胞、組
織又は生物体におけるmRNA量を指標として遺伝子の
発現量を比較することができる。この場合、mRNA量
は、ハイブリダイゼーション法または核酸増幅法により
測定することができる。また、発現量を測定しようとす
る遺伝子、もしくはその断片が支持体上のあらかじめ定
められた領域に固定化されたアレイを使用するハイブリ
ダイゼーション法によってmRNA量を測定することが
できる。あるいは、ポリメラーゼ連鎖反応または鎖置換
反応を核酸増幅法として用いることができる。
【0011】本発明の第1の発明においては、遺伝子の
発現量の指標として細胞、組織又は生物体におけるタン
パク質の発現量の変化を用いることができ、該タンパク
質の発現の変化は、該タンパク質を認識する抗体を利用
して測定することができる。
【0012】本発明の第2の発明は、本発明の内分泌か
く乱物質の検出方法により内分泌かく乱物質を検出する
ためのDNAアレイであって、表5〜表114、表11
7〜表397に記載の遺伝子であって、トリブチルスズ
によって発現量が変化する遺伝子群、4−オクチルフェ
ノールによって発現量が変化する遺伝子群、4−ノニル
フェノールによって発現量が変化する遺伝子群、フタル
酸ジ−n−ブチルによって発現量が変化する遺伝子群、
フタル酸ジシクロヘキシルによって発現量が変化する遺
伝子群、オクタクロロスチレンによって発現量が変化す
る遺伝子群、ベンゾフェノンによって発現量が変化する
遺伝子群、フタル酸ジエチルヘキシルによって発現量が
変化する遺伝子群、ジエチルスチルベストロールによっ
て発現量が変化する遺伝子群、17β−エストラジオー
ルによって発現量が変化する遺伝子群のそれぞれから選
択される少なくとも1種以上の遺伝子、もしくはその断
片がそれぞれ支持体上の定められた領域に固定化されて
いることを特徴とするアレイに関する。
【0013】本発明の第2の発明において遺伝子もしく
はその断片は、スライドグラスに固定されているものが
好適に使用できる。
【0014】本発明の第3の発明は、内分泌かく乱物質
を検出するためのキットであって、表5〜表114、表
117〜表397に記載の遺伝子であって、トリブチル
スズによって発現量が変化する遺伝子群、4−オクチル
フェノールによって発現量が変化する遺伝子群、4−ノ
ニルフェノールによって発現量が変化する遺伝子群、フ
タル酸ジ−n−ブチルによって発現量が変化する遺伝子
群、フタル酸ジシクロヘキシルによって発現量が変化す
る遺伝子群、オクタクロロスチレンによって発現量が変
化する遺伝子群、ベンゾフェノンによって発現量が変化
する遺伝子群、フタル酸ジエチルヘキシルによって発現
量が変化する遺伝子群、ジエチルスチルベストロールに
よって発現量が変化する遺伝子群、17β−エストラジ
オールによって発現量が変化する遺伝子群のそれぞれか
ら選択される少なくとも1種以上の遺伝子から転写され
るmRNAにハイブリダイズするプローブを含むことを
特徴とするキットに関する。
【0015】本発明の第4の発明は、内分泌かく乱物質
を検出するためのキットであって、表5〜表114、表
117〜表397に記載の遺伝子であって、トリブチル
スズによって発現量が変化する遺伝子群、4−オクチル
フェノールによって発現量が変化する遺伝子群、4−ノ
ニルフェノールによって発現量が変化する遺伝子群、フ
タル酸ジ−n−ブチルによって発現量が変化する遺伝子
群、フタル酸ジシクロヘキシルによって発現量が変化す
る遺伝子群、オクタクロロスチレンによって発現量が変
化する遺伝子群、ベンゾフェノンによって発現量が変化
する遺伝子群、フタル酸ジエチルヘキシルによって発現
量が変化する遺伝子群、ジエチルスチルベストロールに
よって発現量が変化する遺伝子群、17β−エストラジ
オールによって発現量が変化する遺伝子群のそれぞれか
ら選択される少なくとも1種以上の遺伝子から転写され
るmRNA、もしくはその断片由来の核酸を増幅するた
めに使用されるプライマーを含むことを特徴とするキッ
トに関する。
【0016】本発明の第5の発明は、内分泌かく乱物質
を検出するためのキットであって、表5〜表114、表
117〜表397に記載の遺伝子であって、トリブチル
スズによって発現量が変化する遺伝子群、4−オクチル
フェノールによって発現量が変化する遺伝子群、4−ノ
ニルフェノールによって発現量が変化する遺伝子群、フ
タル酸ジ−n−ブチルによって発現量が変化する遺伝子
群、フタル酸ジシクロヘキシルによって発現量が変化す
る遺伝子群、オクタクロロスチレンによって発現量が変
化する遺伝子群、ベンゾフェノンによって発現量が変化
する遺伝子群、フタル酸ジエチルヘキシルによって発現
量が変化する遺伝子群、ジエチルスチルベストロールに
よって発現量が変化する遺伝子群、17β−エストラジ
オールによって発現量が変化する遺伝子群のそれぞれか
ら選択される少なくとも1種以上の遺伝子から発現され
るタンパク質を認識する抗体またはその断片を含むこと
を特徴とするキットに関する。
【0017】
【発明の実施の形態】本明細書において内分泌かく乱物
質とは、外因性内分泌かく乱物質もしくは環境ホルモン
とも称されるが、動物の生体内に取り込まれた場合に、
本来その生体内で営まれている正常なホルモン作用に影
響を与える外因性の物質を意味し、正常なホルモン作用
を維持するもの、促進するものも含まれる。また、正常
なホルモン作用に影響を与える可能性のある物質も含ま
れる。該物質については特に限定されるものではない
が、例えばヒトの膣癌を引き起こすことが知られている
DESや骨粗鬆症治療に有効であり、かつ乳癌のリスク
を低減させることが知られている植物エストロゲンのイ
ソフラボン等が挙げられる。さらに、上記内分泌かく乱
物質には、ヒト以外の動物において内分泌かく乱作用が
確認されているが、ヒトにおいて該作用が調べられてい
ない物質、すなわち内分泌かく乱作用の可能性がある物
質あるいは内分泌かく乱作用の疑いがある物質も包含さ
れる。
【0018】本明細書において内分泌かく乱物質の影響
を受ける遺伝子とは、上記の内分泌かく乱物質によって
その発現が対照と比較して亢進(促進)または抑制され
る遺伝子を意味する。該遺伝子は、1種類でも複数の種
類であってもよい。さらに、内分泌かく乱物質が直接的
に影響を与えるもの及び間接的にその発現に影響を与え
る遺伝子も含まれる。該遺伝子としては特に限定される
ものではないが、例えば、上記DESやイソフラボンが
結合することが知られているエストロゲンレセプター遺
伝子およびそのシグナル伝達経路に関与する遺伝子等が
挙げられる。以下、本発明を詳細に説明する。
【0019】(1)本発明の内分泌かく乱物質の検出方
法 本発明の内分泌かく乱物質の検出方法は、試料と接触さ
せた細胞、組織又は生物体における表5〜表114、表
117〜表397に記載の遺伝子であって、トリブチル
スズによって発現量が変化する遺伝子群、4−オクチル
フェノールによって発現量が変化する遺伝子群、4−ノ
ニルフェノールによって発現量が変化する遺伝子群、フ
タル酸ジ−n−ブチルによって発現量が変化する遺伝子
群、フタル酸ジシクロヘキシルによって発現量が変化す
る遺伝子群、オクタクロロスチレンによって発現量が変
化する遺伝子群、ベンゾフェノンによって発現量が変化
する遺伝子群、フタル酸ジエチルヘキシルによって発現
量が変化する遺伝子群、ジエチルスチルベストロールに
よって発現量が変化する遺伝子群、17β−エストラジ
オール(E)によって発現量が変化する遺伝子群のそ
れぞれから選択される少なくとも1種以上の遺伝子の発
現量を、該試料を接触させなかった細胞、組織又は生物
体における発現量と比較する工程を包含することを特徴
とする。すなわち、本発明の内分泌かく乱物質の検出方
法は、下記ステップ: 被検試料を細胞、組織又は生物体に接触させるステ
ップ、 上記細胞、組織又は生物体において、表5〜表11
4、表117〜表397に記載の遺伝子であって、トリ
ブチルスズによって発現量が変化する遺伝子群、4−オ
クチルフェノールによって発現量が変化する遺伝子群、
4−ノニルフェノールによって発現量が変化する遺伝子
群、フタル酸ジ−n−ブチルによって発現量が変化する
遺伝子群、フタル酸ジシクロヘキシルによって発現量が
変化する遺伝子群、オクタクロロスチレンによって発現
量が変化する遺伝子群、ベンゾフェノンによって発現量
が変化する遺伝子群、フタル酸ジエチルヘキシルによっ
て発現量が変化する遺伝子群、ジエチルスチルベストロ
ールによって発現量が変化する遺伝子群、17β−エス
トラジオールによって発現量が変化する遺伝子群のそれ
ぞれから選択される少なくとも1種以上の遺伝子の発現
量を測定するステップ、及び で得られた各遺伝子の発現量を該試料を接触させ
なかった細胞、組織又は生物体のものと比較し、この結
果よりに基づき、内分泌かく乱物質の存在を確認するス
テップ を行なうことを1つの特徴とする。
【0020】本発明の検出方法によれば、表5〜表11
4、表117〜表397に記載された遺伝子群の発現を
変化させることが知られている内分泌かく乱物質、なら
びに該物質と同等の作用を有する物質を検出することが
できる。従って、簡便で、かつ迅速に高い信頼度で内分
泌かく乱物質を検出することができるという優れた効果
を発揮する。
【0021】前記被検試料としては、特に限定はされな
いが例えば、これまでに内分泌かく乱を引き起こすと考
えられている物質、アルキルフェノール、ビスフェノー
ルA、ダイオキシン類、DDTおよびその代謝物、フタ
ル酸エステル、トリブチルスズ、塩素化炭化水素類、有
機金属、植物エストロゲン等により表5〜表114、表
117〜表259に記載された遺伝子群の発現の変化と
同じパターンを示す可能性のある物質を含む試料が例示
される。
【0022】本発明の評価方法に用いられる表5〜表1
14、表117〜表397に記載された遺伝子群は、
「内分泌かく乱物質の作用によってその発現が影響を受
ける遺伝子」であり、言い換えれば、前記物質の作用に
よってその発現が有意に亢進又は抑制される遺伝子をい
う。特に限定はされないが、例えば、表5〜表114、
表117〜表397に記載の遺伝子であって、トリブチ
ルスズによって発現量が変化する遺伝子群、4−オクチ
ルフェノールによって発現量が変化する遺伝子群、4−
ノニルフェノールによって発現量が変化する遺伝子群、
フタル酸ジ−n−ブチルによって発現量が変化する遺伝
子群、フタル酸ジシクロヘキシルによって発現量が変化
する遺伝子群、オクタクロロスチレンによって発現量が
変化する遺伝子群、ベンゾフェノンによって発現量が変
化する遺伝子群、フタル酸ジエチルヘキシルによって発
現量が変化する遺伝子群、ジエチルスチルベストロール
によって発現量が変化する遺伝子群、17β−エストラ
ジオールによって発現量が変化する遺伝子群が挙げられ
る。本発明に使用される遺伝子の検出においては、遺伝
子操作技術の進歩に伴い、その解析に様々な手法が開発
されているmRNAを指標とするのが効率的である。
【0023】上記mRNAを指標にした遺伝子発現の変
化を確認する手法としては、ノーザンハイブリダイゼー
ション法、RT−PCR法、サブトラクション法、ディ
ファレンシャル・ディスプレイ法等が挙げられ、これら
の方法を適宜選択して本発明に使用される遺伝子を見出
すことができる。さらに、数百、数千といった多数の遺
伝子の発現の変化を同時に検出する方法としては、DN
Aアレイを使用した方法(DNAチップハイブリダイゼ
ーション解析、DNAマクロアレイハイブリダイゼーシ
ョン解析等)が知られている。
【0024】本発明を特に限定するものではないが、例
えば「内分泌かく乱物質の作用によってその発現が影響
を受ける遺伝子」は、内分泌かく乱物質の作用を調べよ
うとする生物が保有する種々の遺伝子に対応する核酸又
はその断片が固定化されたDNAアレイを使用すること
により得られる。例えば、ヒトやマウス由来の各種遺伝
子の断片を固定化したDNAマイクロアレイが市販され
ており(IntelliGeneHuman Cancer CHIP 、宝酒造社
製)、これを使用して本発明に使用される遺伝子を見出
すことができる。前記「内分泌かく乱物質の作用によっ
てその発現が影響を受ける遺伝子」は、例えば以下のよ
うな遺伝子選別方法により得ることができる。
【0025】遺伝子選別方法:例えば、既知の内分泌か
く乱物質に暴露された細胞からmRNAを調製し、該m
RNAを鋳型とした逆転写反応を行なう。この際、例え
ば適切な標識を付したプライマーや標識ヌクレオチドを
使用することにより、標識されたcDNAを得ることが
できる。上記、内分泌かく乱物質に暴露させる細胞は、
生物体から採取したものでも培養細胞でもよい。また、
組織は、内分泌かく乱物質によって影響が出ていると思
われる部位であれば特に限定はない。さらに使用する細
胞、組織もしくは生物体は、特にヒトに限定されるわけ
ではない。一方、対照とする細胞、組織または生物体よ
りmRNAもしくはそのcDNAを含む核酸試料につい
ても上記と同様に調製し、ハイブリダイゼーションさせ
る。核酸試料がDNAアレイ上のDNAとハイブリダイ
ゼーションしているか否かの結果を容易に確認できるよ
うに下記のように適当な標識をしておくことができる。
【0026】上記標識方法としては特に限定されるもの
ではないが、例えば放射性同位元素、蛍光物質、化学発
光物質、ビオチンのようなリガンド、適当な抗体により
認識される抗原等の物質を使用することができる。ま
た、核酸試料を認識することなくハイブリダイゼーショ
ンを行い、その後に蛍光、化学発光を発するインターカ
レーター物質を使用してもよい。
【0027】次に、上記の標識cDNAと、適当な遺伝
子に対応する核酸又はその断片を固定化されたDNAア
レイとの間でハイブリダイゼーションを実施する。ハイ
ブリダイゼーションは公知の方法で実施すればよく、そ
の条件は使用するDNAアレイや標識cDNAに適した
ものを適宜選択すればよい。例えばモレキュラー・クロ
ーニング、ア・ラボラトリーマニュアル(Molecular cl
oning, A laboratorymanual)、第2版、第9.52−
9.55頁(1989)に記載の条件で行なうことがで
きる。
【0028】また、前記と同様のハイブリダイゼーショ
ン条件下に対照試料(内分泌かく乱物質に暴露しない細
胞)由来の核酸と前記DNAアレイとのハイブリダイゼ
ーションを行なう。これらのヒト由来の試料は、採取か
ら遺伝子発現量の測定までに時間がかかり、RNA分解
酵素の作用によりmRNAが分解を受ける可能性があ
る。被検試料と対照試料との遺伝子発現の差を測定する
ためには、比較的発現変動の少ない標準的な遺伝子を用
いて両者のmRNA量を補正する必要がある。さらに、
以下に述べる2種類の蛍光を用いて1枚のDNAアレイ
上で競合ハイブリダイゼーションを行なう場合には、2
種の蛍光物質間の強度差を補正する必要もある。このよ
うな補正の目的に使用される核酸としては、非病変部位
由来の核酸;ハウスキーピング遺伝子〔例えば、グリセ
ルアルデヒド3−リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPD)遺伝
子、シクロフィリン遺伝子、β−アクチン遺伝子、α−
チューブリン遺伝子、ホスフォリパーゼA2遺伝子等〕
に対応する核酸等が挙げられ、また、非特異的なハイブ
リダイゼーションでないことを確認するための陰性対照
としては、プラスミドpUC18が挙げられる。
【0029】ついで、内分泌かく乱物質に暴露された細
胞由来の試料とのハイブリダイゼーション及び対照試料
とのハイブリダイゼーションのそれぞれ結果を比較する
ことにより、両者で発現量異なる遺伝子を検出すること
ができる。具体的には、上記の方法で標識された核酸試
料とハイブリダイゼーションを行なったアレイについ
て、使用された標識方法に応じて適切なシグナルの検出
を行ない、アレイ上の各遺伝子の内分泌かく乱物質に暴
露された細胞由来の試料、対照試料中の発現量を比較す
ることができる。好ましくは、複数の標識、例えば2種
類の蛍光を検出することができる多波長検出蛍光アナラ
イザーを用いれば、内分泌かく乱物質に暴露された細胞
由来の試料における遺伝子発現量と対照試料での遺伝子
発現量との差を同じDNAアレイ上で競合ハイブリダイ
ゼーションにて比較することができる。例えば、内分泌
かく乱物質に暴露された細胞由来の試料についてはCy
5−dUTPで蛍光標識を行ない、対照の核酸試料につ
いてはCy3−dUTPで蛍光標識する。両者を等量混
合してDNAアレイとハイブリダイゼーションを行なう
ことで両者の遺伝子発現量の差を、シグナルの色及び蛍
光強度の違いとして検出することができる。
【0030】こうして得られたシグナルの強度に有意な
差のある遺伝子は、内分泌かく乱物質への暴露に伴って
発現量が変化する遺伝子であり、内分泌かく乱物質検出
の指標として使用可能な遺伝子である。本発明に用いら
れる「内分泌かく乱物質の作用によってその発現が影響
を受ける遺伝子」は、発現量の差の大きな遺伝子ほど指
標として望ましい。
【0031】前記した遺伝子選別方法における目的遺伝
子の選別基準は、特に限定するものではないが、例え
ば、被検試料または対照試料における発現強度が、陰性
対照遺伝子の発現強度の2倍以上もしくは1/2以下で
あることが挙げられる。なお、具体的選別法を実施例1
に記載する。
【0032】以上に例示された方法によって取得され
る、本発明に使用することができる「内分泌かく乱物質
の作用によってその発現が影響を受ける遺伝子」として
は、例えばトリブチルスズ、4−オクチルフェノール、
4−ノニルフェノール、フタル酸ジ−N−ブチル、フタ
ル酸ジシクロヘキシル、オクタクロロスチレン、ベンゾ
フェノン、フタル酸ジエチルヘキシル、ジエチルスチル
ベストロール、17β−エストラジオール等に暴露され
た際にその発現が影響を受ける遺伝子を挙げることがで
き、これらは下記表5〜表114、表117〜表397
に記載されている。
【0033】本発明の内分泌かく乱物質の検出方法にお
いては、遺伝子の発現量は、該遺伝子より転写されるm
RNA量又は該遺伝子にコードされたポリペプチド量か
ら測定することができる。
【0034】前記mRNA量の測定には、公知の種々の
方法、例えば、ノーザン・ハイブリダイゼーション法、
in situハイブリダイゼーション法、ドット・ブ
ロット・ハイブリダイゼーション法、DNAアレイを使
用する方法等に代表されるハイブリダイゼーション法、
RT−PCR法に代表される核酸増幅法等が使用でき
る。十分なmRNAの検出感度を得る観点から、ハイブ
リダイゼーション法又は核酸増幅法が好ましく、より具
体的には、発現量を測定しようとする遺伝子に対応する
核酸又はその断片が支持体上のそれぞれ定められた領域
に固定化されたアレイ(例えば、DNAアレイ)を使用
するハイブリダイゼーション法、RT−PCR法が好適
である。多数の遺伝子の発現を同時に測定する観点か
ら、DNAアレイを使用するハイブリダイゼーション法
が特に好適である。特に限定はされないが、例えば下記
(2)記載のDNAアレイが好適に使用できる。
【0035】このようなDNAアレイを使用することに
より、核酸試料中に含まれる多種類の核酸分子の量を同
時に測定することができる。また、少量の核酸試料でも
測定できるという利点がある。例えば、試料中のmRN
Aを標識するか、もしくはmRNAを鋳型として標識さ
れたcDNAを調製し、これとDNAアレイの間でハイ
ブリダイゼーションを実施することにより、試料中で発
現されているmRNAを同時に検出し、さらにその発現
量を測定することができる。
【0036】標識に用いられる標識物質としては、放射
性同位元素、蛍光物質、化学発光物質、発光団を有する
物質等の物質を用いることができる。例えば、蛍光物質
としては、Cy2、FluorX、Cy3、Cy3.
5、Cy5、Cy5.5、Cy7、イソチオシアン酸フ
ルオレセイン(FITC)、テキサスレッド、ローダミ
ン等が挙げられる。また、同時に検出できる点から、2
種類以上の蛍光物質を用いて、被検試料、対照として用
いる試料をそれぞれ異なった蛍光物質で標識することが
望ましい。ここで試料の標識は、試料中のmRNA、該
mRNA由来のcDNAもしくは該cDNAより転写あ
るいは増幅された核酸を標識することによって実施され
る。
【0037】標識の検出法は、用いられる標識物質の種
類により、適宜選択することができる。例えば、前記C
y3及びCy5を標識物質として用いる場合、Cy3は
532nm、Cy5は635nmの波長でスキャンする
ことにより検出することができる。なお、標識の強度を
遺伝子の発現量の指標とする。
【0038】核酸増幅法、特にRT−PCR法によりm
RNA量を測定する場合、例えば、競合PCR法、Ta
qMan法〔例えば、リンダ・ジー・リー(Linda
G.Lee)ら、ヌクレイック アシッズ リサーチ
(Nucleic Acids Res.)、第21
巻、第3761−3766頁(1993)〕等により、
mRNA量を測定できる。
【0039】前記遺伝子にコードされたポリペプチド量
は、該ポリペプチド又はその断片に対する抗体を用いて
測定することができる。具体的には、例えば、標識抗体
を用い、慣用のELISA法等により行なうことができ
る。
【0040】(2)本発明のDNAアレイ 本明細書において「DNAアレイ」とは、遺伝子又は遺
伝子由来のDNA断片が支持体上の定められた領域に固
定されているものを指し、例えばDNAチップと呼称さ
れているものを包含する。また、遺伝子又は遺伝子由来
のDNA断片が支持体上に高密度に固定されているもの
はDNAマイクロアレイとも呼ばれる。
【0041】ここで、「それぞれ定められた位置に固定
化される」とは、おのおのの遺伝子に対応する核酸又は
その断片の固定化されている位置が支持体上においてあ
らかじめ決定されていることを意味する。すなわち、こ
のようなアレイを使用した場合には、検出されたシグナ
ルの位置からこのシグナルがどの遺伝子の核酸又はその
断片に由来するのかを知ることができる。
【0042】本発明のアレイに用いる支持体は、ハイブ
リダイゼーションに使用可能なものであれば特に限定は
なく、通常スライドグラス、シリコンチップ、ニトロセ
ルロースやナイロンの膜等が使用される。更に好ましく
は、非多孔性で、表面滑らかな構造を有する材質であれ
ばよく、特に限定はないが、例えばスライドガラス等の
ガラスが好適に使用できる。支持体の表面は、共有結合
又は非共有結合により一本鎖DNAを固定化できるもの
であればいずれでもよく、支持体の表面に親水性又は疎
水性の官能基を有しているものが好適に使用でき、特に
限定はないが、例えば、水酸基、アミノ基、チオール
基、アルデヒド基、カルボキシル基、アシル基等を有し
ているものが好適に使用できる。これらの官能基は、支
持体自体の表面特性として存在していてもよいが、表面
処理によって導入してもよい。このような表面処理物と
しては、例えば、ガラスをアミノアルキルシラン等の市
販のシランカップリング剤で処理したものや、ポリリジ
ンやポリエチレンイミン等のポリ陽イオンで処理したも
の等が挙げられる。また、これらの処理を施したスライ
ドガラスの一部は市販されている。
【0043】本発明のアレイにおいては、核酸又はその
断片は、一本鎖、二本鎖のどちらが固定されていてもよ
い。例えば、該核酸又はその断片が、変性された二本の
鎖として支持体に整列固定化されたDNAアレイや、固
定化されたDNAの少なくとも一部が一本鎖DNAであ
るDNAアレイでもよい。また、本発明のアレイは、二
本鎖DNAを変性下において、同一支持体に整列させて
スポットしたDNAアレイでもよい。
【0044】さらに、本発明のアレイにおいては、固定
化される遺伝子の核酸あるいはその断片の支持体上にお
ける密度について特に限定はないが、例えば多数の遺伝
子の発現量を測定する場合には、高密度のアレイでもよ
く、100ドット/cm以上の密度で核酸、特にDN
Aが固定化されたアレイが好適に使用できる。
【0045】支持体上に固定化される核酸又はその断片
には特に限定はなく、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレ
オチドのいずれであってもよい。また、その製法にも特
に限定はなく、化学的に合成したもの、天然の核酸から
単離、精製したもの、酵素的に合成したもの、さらには
これらを組み合わせて使用することができる。
【0046】支持体上に固定される核酸又はその断片と
しては、特に限定するものではないが、例えば、鎖長が
50塩基長以上の二本鎖ポリヌクレオチド又はその誘導
体であって、PCR(polymerase chai
n reaction)法等により、酵素的に増幅して
調製されるものを、DNAの固定化支持体への固定化時
に変性し、一本鎖DNA又はその誘導体としたものが好
適に使用できる。該誘導体としては、支持体表面への固
定化を可能にするような修飾を付されたものであれば良
く、特に限定するものではないが、例えばDNAの5’
末端にアミノ基やチオール基等の官能基が導入されたD
NAが挙げられる。
【0047】例えば、ゲノムDNAライブラリーあるい
はcDNAライブラリーを鋳型としたPCR等によって
増幅されたDNAを使用することができる。この場合、
核酸増幅方法に適したプライマーは、目的の領域を効率
よく増幅できるものであれば特に限定はなく、例えば市
販のプライマー構築ソフト、OLIGOTM Prim
er Analysis software(宝酒造社
製)を使用して選択する事ができる。また、上記OLI
GOTM Primer Analysissoftw
areを用いて、ハイブリダイズに好適な領域を検索
し、該領域を市販のDNA合成機等で合成してもよい。
【0048】上記の遺伝子に対応する核酸又はその断片
は、公知の方法、例えばアミノ基を導入した支持体上に
固定することにより該アレイを作製することができる。
また、上記固定化の操作をDNAアレイ作製装置、例え
ばアフィメトリックス社製のDNAチップ作製装置を使
用して行なうことにより、遺伝子に対応する核酸が整
列、固定化された本発明のアレイを作製することができ
る。
【0049】アレイに核酸の断片を固定する場合、該断
片の鎖長は、特に限定されるものではなく、例えば、約
100塩基長〜約1キロ塩基長であることが望ましく、
また、該鎖長より短いあるいは長いものであっても被検
試料由来の核酸とハイブリダイゼーションにおいて特異
的にハイブリダイズするものであればよい。
【0050】本発明のアレイに用いられる遺伝子は、内
分泌かく乱物質の作用によってその発現が影響を受ける
遺伝子であればよく、特に限定されるものではないが、
例えば、表5〜表114、表117〜表397に記載の
遺伝子であって、トリブチルスズによって発現量が変化
する遺伝子群、4−オクチルフェノールによって発現量
が変化する遺伝子群、4−ノニルフェノールによって発
現量が変化する遺伝子群、フタル酸ジ−n−ブチルによ
って発現量が変化する遺伝子群、フタル酸ジシクロヘキ
シルによって発現量が変化する遺伝子群、オクタクロロ
スチレンによって発現量が変化する遺伝子群、ベンゾフ
ェノンによって発現量が変化する遺伝子群、フタル酸ジ
エチルヘキシルによって発現量が変化する遺伝子群、ジ
エチルスチルベストロールによって発現量が変化する遺
伝子群、17β−エストラジオールによって発現量が変
化する遺伝子群のそれぞれから選択される少なくとも1
種以上の遺伝子が挙げられる。
【0051】特に限定はされないが、例えばホルモンの
作用発現に関連した機能を有するタンパクをコードする
遺伝子またはその断片が固定される。このような遺伝子
としては、特に限定されるものではないが、例えばホル
モンレセプター遺伝子、レセプターのコファクターをコ
ードする遺伝子、レセプターからのシグナル伝達に関与
するタンパクをコードする遺伝子、ホルモンの生合成も
しくは代謝に関与するタンパクをコードする遺伝子、ま
たはオンコジーン等が挙げられる。
【0052】また、別の態様として、内分泌かく乱物質
の影響を受ける遺伝子の発現を指標とした内分泌かく乱
作用の評価に用いることができる。すなわち、上記内分
泌かく乱物質の影響を受けていることが確認できた遺伝
子について、上記のような方法で固定化したDNAアレ
イを作製する。次に内分泌かく乱物質によって影響を受
けていると考えられる細胞、組織または生物体より上記
のように核酸試料を調製し、上記と同様にハイブリダイ
ズさせて、シグナル強度の差から遺伝子発現の変化を測
定することができる。その結果から内分泌かく乱作用の
有無を評価することができる。あるいは、内分泌かく乱
物質の影響を受けていることが確認できた遺伝子のmR
NAの競合RT−PCR法により影響を受けている遺伝
子の発現の度合いを定量的に測定することからも内分泌
かく乱作用の有無を確認することもできる。
【0053】さらに別の態様としては、内分泌かく乱を
引き起こす可能性のある物質の検出に用いることができ
る。この場合、内分泌かく乱を引き起こす可能性のある
物質とは、本来その生体内で営まれている正常なホルモ
ン作用に影響を与える可能性のある物質を意味し、その
作用が確認されたものおよびいまだ確認されていないも
のも含まれる。内分泌かく乱を引き起こす可能性のある
物質の検出のためのDNAアレイは、上記(1)記載の
方法で内分泌かく乱物質の影響を受けていることが確認
できた遺伝子を上記と同様の方法で固定化して作製す
る。次に内分泌かく乱を引き起こす可能性のある物質を
含むと予想される試料と接触させた細胞、組織または生
物体より上記のように核酸試料を調製し、上記と同様に
ハイブリダイズさせて、遺伝子発現の変化をシグナル強
度差として測定することができる。その結果から該物質
が、内分泌かく乱作用を有しているかどうかを判断する
ことができる。また、該DNAアレイ上の全DNAにお
いてシグナルの変化が確認される場合のみならずその一
部のDNAにおいてシグナルの変化が確認される場合に
おいても同様にその結果から該物質が、内分泌かく乱作
用を有していると判断することができる。
【0054】特にその一部のDNAにおいてシグナルの
変化が、複数の内分泌かく乱物質の作用で共通に影響が
みられる遺伝子あるいはその産物においては、バイオマ
ーカーとしてこれらを別に選別して検出方法を最適化
し、さらに的確に該物質の内分泌かく乱作用を有するか
どうかを評価することができる。あるいは、上記のよう
に内分泌かく乱物質の影響を受けていることが確認でき
た遺伝子のmRNAの競合RNAもしくはDNAを作製
し、それを内部標準とした競合RT−PCR法により内
分泌かく乱を引き起こす度合いを遺伝子の発現より定量
的に検出することもできる。
【0055】以上のように本発明のDNAアレイは、例
えば動物であれば何世代にも渡って、単なる毒性だけで
なく形態の異常、生殖の異常、生態系そのものの異常を
評価しなければならないのに比べ、極めて迅速に、しか
も少量の試料を用いて、その物質が内分泌かく乱作用を
有するかどうかを判定することができる。また、多数の
試料中の内分泌かく乱物質の存在を迅速、高感度でしか
も同時に評価することができる。
【0056】(3)本発明の内分泌かく乱物質を検出す
るためのキット 本発明の内分泌かく乱物質を検出するためのキットとし
ては、表5〜表114、表117〜表397に記載の
遺伝子であって、トリブチルスズによって発現量が変化
する遺伝子群、4−オクチルフェノールによって発現量
が変化する遺伝子群、4−ノニルフェノールによって発
現量が変化する遺伝子群、フタル酸ジ−n−ブチルによ
って発現量が変化する遺伝子群、フタル酸ジシクロヘキ
シルによって発現量が変化する遺伝子群、オクタクロロ
スチレンによって発現量が変化する遺伝子群、ベンゾフ
ェノンによって発現量が変化する遺伝子群、フタル酸ジ
エチルヘキシルによって発現量が変化する遺伝子群、ジ
エチルスチルベストロールによって発現量が変化する遺
伝子群、17β−エストラジオールによって発現量が変
化する遺伝子群のそれぞれから選択される少なくとも1
種以上の遺伝子から転写されるmRNA又はその断片を
検出するためのプライマー及び/又はプローブを含有し
たキット、並びに表5〜表114、表117〜表39
7に記載の遺伝子であって、トリブチルスズによって発
現量が変化する遺伝子群、4−オクチルフェノールによ
って発現量が変化する遺伝子群、4−ノニルフェノール
によって発現量が変化する遺伝子群、フタル酸ジ−n−
ブチルによって発現量が変化する遺伝子群、フタル酸ジ
シクロヘキシルによって発現量が変化する遺伝子群、オ
クタクロロスチレンによって発現量が変化する遺伝子
群、ベンゾフェノンによって発現量が変化する遺伝子
群、フタル酸ジエチルヘキシルによって発現量が変化す
る遺伝子群、ジエチルスチルベストロールによって発現
量が変化する遺伝子群、17β−エストラジオールによ
って発現量が変化する遺伝子群のそれぞれから選択され
る少なくとも1種以上の遺伝子にコードされたポリペプ
チド又はその断片に対する抗体又はその断片を含有した
キットが挙げられる。
【0057】上記のキットは、上記(1)記載の本発明
の内分泌かく乱物質の検出方法に用いることができ、よ
り簡便、かつ迅速な操作を可能にする。
【0058】前記のキットは、表5〜表114、表1
17〜表397に記載の遺伝子であって、トリブチルス
ズによって発現量が変化する遺伝子群、4−オクチルフ
ェノールによって発現量が変化する遺伝子群、4−ノニ
ルフェノールによって発現量が変化する遺伝子群、フタ
ル酸ジ−n−ブチルによって発現量が変化する遺伝子
群、フタル酸ジシクロヘキシルによって発現量が変化す
る遺伝子群、オクタクロロスチレンによって発現量が変
化する遺伝子群、ベンゾフェノンによって発現量が変化
する遺伝子群、フタル酸ジエチルヘキシルによって発現
量が変化する遺伝子群、ジエチルスチルベストロールに
よって発現量が変化する遺伝子群、17β−エストラジ
オールによって発現量が変化する遺伝子群のそれぞれか
ら選択される少なくとも1種以上の遺伝子から転写され
るmRNA又はその断片を核酸増幅する方法、具体的に
は、例えばRT−PCR法によって検出するためのプラ
イマー及び/又はプローブを含有する。さらに、本発明
のキットは、検出用試薬等を適宜含有してもよい。
【0059】前記プライマー及び/又はプローブは、内
分泌かく乱物質の作用によってその発現が影響を受ける
遺伝子、又は該遺伝子に相補的な塩基配列を有する核酸
にストリンジェントな条件下にハイブリダイズするもの
であればよい。
【0060】上記「ストリンジェントな条件」とは、特
に限定されないが、例えば、6×SSC、0.5%SD
S、5×デンハルト、100μg/mlニシン精子DN
Aを含む溶液中、〔前記プライマー及び/又はプローブ
のTm−25℃〕の温度で一晩保温する条件等をいう。
【0061】また、上記のプライマーの塩基配列は、通
常の核酸増幅法、特にRT−PCRにおける反応条件下
に、前記遺伝子に対応する核酸を特異的に増幅しうる配
列であればよい。特に限定はされないが、例えば市販の
プライマー構築ソフト、OligoTM Primer
Analysis softwareを用いて選択し
たプライマー対であってもよい。
【0062】一方、プローブの塩基配列も、前記遺伝子
に対応する核酸に前記ストリンジェントな条件下にハイ
ブリダイズしうる核酸の配列であればよい。特に限定は
されないが、例えば上記OligoTM Primer
Analysis softwareを用いて選択し
たプローブであってもよい。
【0063】なお、プローブ又はプライマーのTmは、
例えば、下記式: Tm=81.5−16.6(log10[Na])+
0.41(%G+C)−(600/N) (式中、Nはプローブ又はプライマーの鎖長であり、%
G+Cはプローブ又はプライマー中のグアニン及びシト
シン残基の含有量である)により求められる。
【0064】また、プローブ又はプライマーの鎖長が1
8塩基より短い場合、Tmは、例えば、A+T(アデニ
ン+チミン)残基の含有量と2℃との積と、G+C(グ
アニン+シトシン)残基の含有量と4℃との積との和
〔(A+T)×2+(G+C)×4〕により推定するこ
とができる。
【0065】前記プローブの鎖長は、特に限定はない
が、非特異的なハイブリダイゼーションを防止する観点
から、15塩基以上であり、好ましくは18塩基以上で
あることが望ましい。
【0066】また、プライマーの鎖長は、特に限定はな
いが、例えば、15〜40塩基長であり、好ましくは1
7〜30塩基長であることが望ましい。
【0067】前記のキットにおいて、ポリペプチド
は、表5〜表114、表117〜表397に記載の遺伝
子であって、トリブチルスズによって発現量が変化する
遺伝子群、4−オクチルフェノールによって発現量が変
化する遺伝子群、4−ノニルフェノールによって発現量
が変化する遺伝子群、フタル酸ジ−n−ブチルによって
発現量が変化する遺伝子群、フタル酸ジシクロヘキシル
によって発現量が変化する遺伝子群、オクタクロロスチ
レンによって発現量が変化する遺伝子群、ベンゾフェノ
ンによって発現量が変化する遺伝子群、フタル酸ジエチ
ルヘキシルによって発現量が変化する遺伝子群、ジエチ
ルスチルベストロールによって発現量が変化する遺伝子
群、17β−エストラジオールによって発現量が変化す
る遺伝子群のそれぞれから選択される少なくとも1種以
上の遺伝子にコードされたポリペプチドが挙げられる。
【0068】抗体は、前記ポリペプチドに特異的に結合
する能力を有するものであれば、特に限定はなく、ポリ
クローナル抗体、モノクローナル抗体のどちらでもよ
い。さらに、公知技術により修飾された抗体や抗体の誘
導体、例えばヒト化抗体、Fabフラグメント、単鎖抗体
等を使用することもできる。前記抗体は、例えば、1992
年、ジョン・ワイリー&サンズ社(John Wiel
y & Sons,Inc)発行、ジョン・E・コリガ
ン(John E. Coligan)編集、カレント
・プロトコルズ・イン・イムノロジー(Current
Protocols in Immunology)
に記載の方法により、前記ポリペプチドの全部又は一部
を用いてウサギやラット、マウス等を免疫することによ
り、容易に作製され得る。こうして得られた抗体を精製
後、ペプチダーゼ等により処理することにより、抗体の
断片が得られる。また、遺伝子工学的に抗体を作製する
こともできる。さらに、本発明の抗体又はその断片は、
酵素免疫測定法、蛍光免疫測定法、発光免疫測定法等に
よる検出を容易にするために、各種修飾をしてもよい。
【0069】また、上記の抗体又はその断片には、ポリ
ペプチドのある部分断片に特異的に結合しうるものも含
まれる。
【0070】以上のように本発明の方法により迅速、高
感度でしかも同時に多数の試料について内分泌かく乱作
用の有無を評価することができる。また、該方法のため
のツール、例えばDNAアレイを作製することができ、
迅速、高感度でしかも同時に多数の試料について内分泌
かく乱作用の有無を評価することができる。さらに、本
発明の試料の内分泌かく乱作用の有無を評価するキット
を用いることにより、安価で迅速、高感度でしかも同時
に多数の試料について内分泌かく乱作用の有無を評価す
ることができる。
【0071】
【実施例】以下、実施例を挙げて、本発明を更に具体的
に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定され
るものではない。
【0072】実施例1 妊娠マウス由来の雄胎仔を用い
た遺伝子の解析 (1)内分泌かく乱物質の投与量の設定 妊娠後10日目のBALB/cマウスを日本SLCより
購入し、温度24〜26℃、湿度約50%でSPFに準
ずる条件下で飼育した。それぞれのマウスにはストレス
を与えないように個別のケージに入れて飼育した。妊娠
マウスへの投与量は、げっ歯類への経口投与によるLD
50を基準とした。無作用量と考えられる100分の1
量のさらに10分の1量、すなわちLD50の1000
分の1量と設定した。経口投与での毒性が認められず、
LD50が分からない物質については、最大投与量の1
000分の1量とした。表1に投与量を示す。
【0073】
【表1】
【0074】内分泌かく乱物質を表1の投与量で、1%
DMSOを含む落花生油をVehicleとして妊娠
10日目に購入したBALB/cに、購入当日より連日
7日間、皮下に投与した。コントロールにはVehic
leのみを注射した。最終投与の翌日、すなわち妊娠1
7日目に解剖し胎仔を摘出した。組織の一部を別に採取
し、PCRによる雌雄判別に用いるためにRNAlat
er試薬(Ambion社製)に入れ、試験の当日まで
−80℃で保存した。また、胎仔は頭部をRNAlat
er試薬に入れ、RNA抽出の当日まで−80℃で保存
した。
【0075】(2)胎仔の雌雄の判別 胎仔の雌雄の判別には、凍結保存されていた組織の一部
を解凍し、すみやかにLysis buffer(10
mM Tris−HCl(pH8.0)、100mM
NaCl、10mM EDTA、39mM DTT、2
% SDS)100μlに入れ、100μg/mlとな
るようにProteinase Kを加えて、60℃で
3時間インキュベートした。ここにRNase Aを1
0μg/mlとなるように加え、さらに37℃で1時間
インキュベートした。0.1MTris−HCl(pH
8.0)で飽和したフェノール/クロロホルム/イソア
ミルアルコール(25:24:1 v/v)で抽出し、
通常のエタノール沈殿法によりゲノムDNAを回収し
た。これを適量のTE bufferに溶解し、その一
部をとってOD260とOD280を測定し、ゲノムD
NAの濃度を算出し、PCR反応に供した。
【0076】上記ゲノムDNA 0.03〜0.1μg
を鋳型にして、50pmolの雌雄判別用プライマーZ
fy−sense(配列番号1)及びZfy−anti
sense(配列番号2)を用い、50μlの容量でP
CRを行なった。PCRでのDNAポリメラーゼはタカ
ラExタック(宝酒造社製)を添付のプロトコールに従
って用い、94℃で3分保持した後96℃で40秒、6
5℃で70秒、72℃で100秒を1サイクルとし、3
0サイクル行い最後に72℃で10分保持した。上記の
PCR反応液の一部をとり染色液と一緒に2%アガロー
スゲルにアプライし、電気泳動を行なった。雄のゲノム
DNAがあれば、 618bpの大きさの位置にバンド
が検出される。内分泌かく乱物質各群には妊娠マウスを
3匹ずつ用いた。Vehicle群は5匹を用いた。そ
の結果、各群より得られた総胎仔数、胎仔の雌雄の数を
表2に示す。
【0077】
【表2】
【0078】妊娠マウスより得られた胎仔の雄と雌の比
率は、各個体でバラツキはみられるもののVehicl
e群と比較して大きな差があるとは考えられなかった。
【0079】(3)雄の胎仔の頭部からのtotal
RNAの抽出 胎仔の個体差が出ないように、各群より5匹分の胎仔を
選別し、一緒にしてからRNAを抽出した。選別方法
は、各母体から少なくとも1匹ずつを選んだ。凍結保存
してあった頭部の組織を解凍し、選別した5匹分を一緒
に20ml容のホモゲナイザーに入れ、TRI rea
gent(Sigma社製)を10ml加えて、組織片
がみえなくなるまでホモゲナイズした。これを予め乾熱
滅菌したステンレスの遠沈管に入れ、4℃条件下 1
2,000×gで10分間遠心した。上清を1mlずつ
10本のエッペンチューブに入れ、これにクロロホルム
(ナカライテスク社製)を0.2mlずつ加え、ミキサ
ーでよく攪拌した。これを室温で5分間静置後、4℃条
件下で12,000×g10分間遠心分離した。この上
清を新たに用意したエッペンチューブに移し、2―プロ
パノール0.5mlを加えてミキサーで混合し5〜10
分間静置した。これを4℃条件下12,000×gで1
0分間遠心し上清を除去した。70%エタノール0.5
mlを入れRNAのペレットを洗浄し12,000×g
で5分間遠心して上清を除去した。ペレットを風乾した
後、エッペンチューブ1本あたり100μlのジエチル
ピロカーボネート(DEPC)処理した水を加えて溶解
した。各群10本分のRNAを一緒にして混ぜた後、再
度分注することにより均一化した。その1μlをとり1
19μlのTE bufferで希釈して吸光度OD2
60とOD280を測定し、total RNA量と純
度を算出した。その結果を表3に示す。残りのRNAは
mRNAを抽出するまで−80℃で保存した。
【0080】
【表3】
【0081】各群5匹から得られたtotal RNA
の量は、各群間で大きな差は認められなかった。
【0082】(4)total RNAからのmRNA
の抽出 実施例1−(3)で組織から抽出したtotal RN
A約1mgを用いてmRNAを抽出した。抽出はOli
gotex−MAG mRNA Purificait
on kit (宝酒造社製)を用いて行なった。エッ
ペンチューブ一本につきtotal RNA量が約12
5μgとなるように8本あるいはVehicle群では
48本に分注し、DEPC処理した水を加えて全量で1
50μlとした。これに同量の2×Binding b
ufferを加え混合した後Oligotex−MAG
を30μl入れ軽く混合し70℃の温浴中で3分間イン
キュベートした。その後室温で10分間静置した後Ma
gnetight Separation Stand
(宝酒造社製)にセットし2分間静置後、Oligot
ex−MAGビーズを吸い取らないように上清を除去し
た。チューブをスタンドからはずし、350μlのWa
sh bufferを加えて混和した後、同じスタンド
にセットし2分間静置後、Oligotex−MAGビ
ーズを吸い取らないように上清を除去した。同量のWa
sh bufferを用いて同じ操作を繰り返しOli
gotex−MAGビーズを洗浄した後、予め70℃に
加温しておいたDEPC処理水をチューブ1本あたり1
00μl加えよく混和してからスタンドにセットし2分
間静置した。Oligotex−MAGビーズを吸い取
らないようにmRNAを溶出した上清を別のチューブに
回収した。同量のDEPC処理水を用いてさらに1回、
同じ操作を繰り返しmRNAを回収した。回収したmR
NAを含む溶出液は400〜500μlずつ分注した後
10分の1量の3M酢酸ナトリウム溶液を加え、さらに
全量と等量の2―プロパノール(ナカライテスク社製)
を加えて5分間程度室温で静置した後12,000×g
で10分間遠心分離した。上清を除いた後、mRNAの
沈殿を70%エタノール水溶液を用いて洗浄し乾燥させ
た後、沈殿をチューブ1本あたり4〜5μlのTE b
ufferに溶解した。最後に各群で1本のチューブに
まとめ混合し均一化した。ここから1μlをとり119
μlのTE bufferで希釈してOD260とOD
280の吸光度を測定しRNA量を算出した。残りのm
RNAはDNAチップの解析に使用するまで−80℃で
保存した。使用したtotal RNA量と得られたm
RNAの量を表4に示す。
【0083】
【表4】
【0084】total RNAからのmRNAの回収
率は、2.2〜3.8%であった。回収したmRNA
は、アジレント2100バイオアナライザ(アジレント
テクノロジー社製)を用いて解析を行なったところrR
NAの量はtotal RNAに含まれている量に比べ
てかなり少なくなっており、mRNAが純度よく回収さ
れていることが確認された。
【0085】(5)DNAチップを用いた遺伝子解析 a.蛍光プローブの調製 実施例1−(4)で調製したmRNAを0.2μg/μ
lとなるようにTEbufferで希釈し、その5μl
とOligo dT primer (100pmol
/μl)の5μlを混ぜ、70℃で5分間インキュベー
トした後、直ちに氷上に置いた。これに5×AMV b
uffer(宝酒造社製)を4μl、10×dNTP
mixture(宝酒造社製)を2μl、RNase
Inhibitorを20U(宝酒造社製)、AMV
RTase(宝酒造社製)を30U、1mM Cy3又
はCy5−dUTP(アマシャムファルマシア社製)を
0.7μl加えた。42℃で60分間インキュベートし
た後再度AMV RTaseを30Uを加え、42℃で
60分間、続いて70℃で10分間インキュベートし
た。以上の方法で調製した蛍光プローブをCentri
Sep(Princeton Separations
社製)で精製し、通常のとおりエタノール沈殿した後、
70%エタノールで沈殿を洗浄し、風乾させ10μlの
ハイブリダイゼーションバッファー(6×SSC bu
ffer、0.2% SDS、5×Denhard’t
solution、1mg/ml salmon s
perm DNA)に溶解した。
【0086】b.DNAチップのプレハイブリダイゼー
ション 10μlのプレハイブリバッファーをDNAチップ(I
ntelliGeneMouse CHIP Set
I ver.1.0;宝酒造社製)上にのせ、カバーガ
ラスをのせてペーパーボンドにてシールし密封し、これ
を室温で2時間インキュベートした。ペーパーボンドと
カバーガラスを除去し2×SSC bufferでDN
Aチップを洗浄した後、さらに0.2% SSC bu
fferで洗浄した。1000rpmで5分間遠心し、
DNAチップを乾燥させた。
【0087】c.ハイブリダイゼーション a.の操作で調製した蛍光プローブ溶液のうち10μl
を95℃で2分間処理し、直ちに氷上に置いた。150
00rpmで10分間遠心し、上清を回収した。これを
プレハイブリダイゼーションの時と同様に、あらかじめ
プレハイブリダイゼーションを行ったDNAチップにの
せ、カバーガラスとペーパーボンドで密封し、65℃で
一晩ハイブリダイゼーションをおこなった。ハイブリダ
イゼーション終了後、2×SSC buffer中でペ
ーパーボンドとカバーガラスを取り除いた。このDNA
チップを0.2%SDSを含む2×SSC buffe
rで振とうしながら55℃で30分間洗浄した後、bu
fferを交換して再度洗浄した。次に同じbuffe
rを用いて同様に65℃で5分間洗浄し、さらに0.0
5×SSC bufferを用いて室温で5分間振とう
しながら洗浄した。1000rpm、5分間の遠心によ
りDNAチップを乾燥させ、これをスキャニングして解
析した。その結果を表5から表114に示す。蛍光色素
Cy3の蛍光強度を蛍光色素Cy5の蛍光強度で割った
数値がCy3/Cy5*(H)の値であり、この数値が
2以上のものは薬物の作用により発現が誘導された遺伝
子を示し、0.5以下のものは発現が抑制された遺伝子
を表す。
【0088】
【表5】
【0089】
【表6】
【0090】
【表7】
【0091】
【表8】
【0092】
【表9】
【0093】
【表10】
【0094】
【表11】
【0095】
【表12】
【0096】
【表13】
【0097】
【表14】
【0098】
【表15】
【0099】
【表16】
【0100】
【表17】
【0101】
【表18】
【0102】
【表19】
【0103】
【表20】
【0104】
【表21】
【0105】
【表22】
【0106】
【表23】
【0107】
【表24】
【0108】
【表25】
【0109】
【表26】
【0110】
【表27】
【0111】
【表28】
【0112】
【表29】
【0113】
【表30】
【0114】
【表31】
【0115】
【表32】
【0116】
【表33】
【0117】
【表34】
【0118】
【表35】
【0119】
【表36】
【0120】
【表37】
【0121】
【表38】
【0122】
【表39】
【0123】
【表40】
【0124】
【表41】
【0125】
【表42】
【0126】
【表43】
【0127】
【表44】
【0128】
【表45】
【0129】
【表46】
【0130】
【表47】
【0131】
【表48】
【0132】
【表49】
【0133】
【表50】
【0134】
【表51】
【0135】
【表52】
【0136】
【表53】
【0137】
【表54】
【0138】
【表55】
【0139】
【表56】
【0140】
【表57】
【0141】
【表58】
【0142】
【表59】
【0143】
【表60】
【0144】
【表61】
【0145】
【表62】
【0146】
【表63】
【0147】
【表64】
【0148】
【表65】
【0149】
【表66】
【0150】
【表67】
【0151】
【表68】
【0152】
【表69】
【0153】
【表70】
【0154】
【表71】
【0155】
【表72】
【0156】
【表73】
【0157】
【表74】
【0158】
【表75】
【0159】
【表76】
【0160】
【表77】
【0161】
【表78】
【0162】
【表79】
【0163】
【表80】
【0164】
【表81】
【0165】
【表82】
【0166】
【表83】
【0167】
【表84】
【0168】
【表85】
【0169】
【表86】
【0170】
【表87】
【0171】
【表88】
【0172】
【表89】
【0173】
【表90】
【0174】
【表91】
【0175】
【表92】
【0176】
【表93】
【0177】
【表94】
【0178】
【表95】
【0179】
【表96】
【0180】
【表97】
【0181】
【表98】
【0182】
【表99】
【0183】
【表100】
【0184】
【表101】
【0185】
【表102】
【0186】
【表103】
【0187】
【表104】
【0188】
【表105】
【0189】
【表106】
【0190】
【表107】
【0191】
【表108】
【0192】
【表109】
【0193】
【表110】
【0194】
【表111】
【0195】
【表112】
【0196】
【表113】
【0197】
【表114】
【0198】実施例2 ヒト乳癌細胞MCF−7および
T−47Dを用いた遺伝子の解析転移性乳癌患者の胸水
浸出細胞から樹立された細胞であるMCF−7細胞は、
上皮様で多角形の細胞であり、分化した乳腺上皮細胞の
特徴であるドーム形成をおこなうという特徴がある。こ
の細胞はエストロゲン投与によって細胞増殖を促進され
るなど、エストロゲン応答性を示す。また、エストロゲ
ン受容体、プロゲステロン受容体を有する。特にエスト
ロゲン受容体レベルが高く、エストロゲンによる遺伝子
発現や細胞増殖の調節を研究する上で有用な細胞株であ
る。また、転移性乳癌患者の胸水浸出細胞から樹立され
た細胞であるT−47D細胞も、上皮様で多角形の細胞
であり、分化した乳腺上皮細胞の特徴であるドーム形成
をおこなう。この細胞はエストロゲン投与によって細胞
増殖を促進されるなど、エストロゲン応答性を示す。ま
た、エストロゲン受容体、プロゲステロン受容体を有す
る。特にプロゲステロン受容体レベルが高くこれらを利
用した研究に用いられる。
【0199】(1)MCF−7細胞およびT47D細胞
からのmRNAの調製 a. 活性炭処理した牛胎仔血清の調製 活性炭処理した牛胎仔血清の作成は、Stanleyら
の方法に従って行った[セル(Cell)、第10巻、
第35〜44頁(1977)]。非働化牛仔児血清(5
6℃,30分間処理したもの)500mlに活性化した
活性炭(活性炭25gを蒸留水中で撹拌後、濾紙でろ過
したもの)を5%w/vの濃度及びDextranを
0.5%w/vとなるように添加し、この溶液を数回撹
拌後4℃で終夜放置した。その後、200rpmで20
分間遠心分離して上清を回収しろ紙を用いてろ過した。
そして、これをフィルター(0.22μm;ミリポア社
製)滅菌し−20℃で保管した。
【0200】b.細胞の培養 細胞の培養は、phenol redを含まないDul
becco’s modification of E
agle's medium(DMEM)培地(Bio
Whitakker社製)に2mMのL−グルタミンお
よびpenicillin−streptomycin
(BioWhitakker社製)5mlを添加した培
地(無血清培地)を用いて行い、37℃、飽和湿度、5
%の二酸化炭素/95%空気の条件で培養した。MCF
−7細胞は5日間、T−47D細胞は4日間プレインキ
ュベートし、トリブチルスズ(TBT)、4−オクチル
フェノール(OP)、4−ノニルフェノール(NP)、
フタル酸ジ-n-ブチル(DBP)、フタル酸ジシクロヘ
キシル(DCHP)、オクタクロロスチレン(OC
S)、ベンゾフェノン(BP)を添加した。すなわち細
胞に添加する濃度は、一般的に用いられるWST−1ア
ッセイにおいて細胞増殖活性(アゴニスト活性)を示し
た物質に対しては増殖率が最も高い濃度に、アゴニスト
活性を示さなかった物質に対しては、被験物質添加24
時間後の所見で細胞毒性が見られなかった最も高い濃度
を用いることにした。つまり、TBTは10nM、OP
は200nM、NPは1μM、DBPは2μM、DCH
P2μM、OCSは470mM、BPは2μMである。
この7物質の処理時間は6時間と設定した。
【0201】DNAチップを用いて実験を行うためのM
CF−7細胞の大量培養は、血清培地で一定期間培養し
たMCF−7細胞をトリプシン処理し遠心分離で細胞を
回収後(1000rpm、1min)、無血清培地で細
胞の洗浄を行った。その後、無血清培地でパスツールピ
ペットを用いて単細胞になるまで懸濁し、1×10
/プレートとなるように直径10cmの培養プレートに
調製し、3日後に培地を交換後さらに2日間培養を行っ
た。そして細胞を回収後、上記7種類の試験試薬を溶解
したジメチルスルホキシドの持ち込みが0.1%になる
ように添加し、6時間培養を行った。そして、これらの
細胞をPBSで洗浄後トリプシン処理し遠心分離(10
00rpm、3分間)で細胞の回収を行った。
【0202】T−47D細胞の培養は、phenol
redとL−グルタミン酸を含むDMEM(BioWh
itakker社製)にpenicillin−str
eptomycin(BioWhitakker社製)
と10%になるように非働化牛胎仔血清を添加した培地
(血清培地)で一定期間培養したT−47D細胞をトリ
プシン処理し遠心分離で細胞を回収後(1000rp
m、3分間)、無血清培地で細胞の洗浄を行った。その
後、無血清培地でパスツールピペットを用いて単細胞に
なるまで懸濁し、1×10個/プレートとなるように
10cmの培養プレートに調製し4日間培養を行った。
そして細胞を回収後、上記7種類の試験試薬を前述と同
様に添加し6時間培養を行った。そして、これらの細胞
をPBSで洗浄後トリプシン処理し遠心分離(1000
rpm、3分間)で細胞の回収を行った。
【0203】c. total RNAの回収 total RNAの回収は、ストラタジーン社のSt
rataPrepを用いてマニュアルに従って行った。
ここで得られたtotal RNAの濃度は吸光度OD
260から、また純度はOD260/OD280の比よ
り算出した。直径10cmの培養プレートからtota
l RNAの回収を行った結果、MCF−7細胞および
T−47D細胞から培養プレート1枚あたり16〜31
μgのtotal RNAが回収された。得られたto
tal RNA量と純度を表115と表116に示す。
【0204】
【表115】
【0205】
【表116】
【0206】(2) DNA chipを用いた遺伝子
の解析 a.プローブの作製 解析する細胞から回収した比較する2種のtotal
RNA 20μgに100pmol/μl Oligo
dTプライマー3μlを加え、70℃で5分熱変成し
た後に氷上で急冷を行った。その後、4μlの5×AM
V buffer、2.0μlの10×dNTP mi
xture(宝酒造社製)、1μlの1mM Cy3も
しくはCy5−dUTP(アマシャムファルマシア社
製)、20UのRibonucrease inhib
itor(宝酒造社製)、30UのAMV(宝酒造社
製)を加えて全量を20μlとした後、42℃で90分
インキュベートを行った。ここで、コントロール群はC
y5標識、テスト群はCy3標識した。そして、70℃
で10分処理した後にCentriSepを用いてプロ
ーブの精製を行った。この溶出液をDEPC処理水で1
00μlとし等量のクロロホルム:イソアミルアルコー
ル(24:1 v/v)を加え、ボルテックスで撹拌
後、遠心分離(14500rpm、5分)を行い水層を
回収した。この水層に2μlの5×Competito
r I(Human)(宝酒造社製)を添加しエタノー
ル沈殿を行い10μlのハイブリダイゼーション溶液
(6×SSC、0.2% SDS、5×Denhar
d’'t solution、0.1mg/ml sa
lmon sperm DNA)に溶解し、これをプロ
ーブ溶液とした。
【0207】b.プレハイブリダイゼーション DNAチップは、IntelliGene Human
DNA CHIPfor endocrine di
sruption study version 1.
1(表中DNA chip for EDC stud
y、宝酒造社製)と、IntelliGene Hum
an DNA CHIP 1K Set I vers
ion 1.0(表中human 1K DNA ch
ip、宝酒造社製)を用いた。DNAチップ上にカバー
ガラス(宝社製)をのせ、10μlのプレハイブリダイ
ゼーション溶液を流し込み室温で2時間インキュベート
した。これを2×SSC、続いて0.2×SSCで洗浄
を行った。これを遠心(1000rpm、3分)を行っ
てスライドガラスを乾燥させた。
【0208】c.ハイブリダイゼーションおよび洗浄 プローブ溶液を95℃で2分間処理し熱変性を行った後
に室温で数分間インキュベートした。そして、この溶液
を遠心分離(14500rpm、10分間、20℃)を
行い沈殿物を除去した。その後、カバーガラスを載せた
DNAチップに、この溶液を流し込みハイブリダイゼー
ションチャンバーで65℃終夜ハイブリダイゼーション
を行った。ハイブリダイゼーション終了後、スライドガ
ラスを2×SSC/0.2%SDS溶液中でカバーガラ
スを静かにはがし、2×SSC、0.2%SDSの溶液
で55℃、30分間の洗浄を2回、続いて2×SSC、
0.2%SDSの溶液で65℃、5分間の洗浄を行っ
た。最後に0.05×SSC室温で5分間の洗浄を行い
SDSを除去した後、遠心分離(1000rpm、5分
間)しDNAチップを乾燥させた。このDNAチップを
Affymetrix418TM Array Sca
nner(宝酒造社製)を用いて各スポットのCy3,
Cy5それぞれの蛍光量を測定した。結果を表117か
ら表220に示す。なお、表中の数字はCy3/Cy5
*(H)の数値を示し、コントロール(0.1%ジメチ
ルスルホキシドを培地に添加したVehicle群)に
対する試験試薬添加群のシグナル強度の比を表す。この
値が2以上であればコントロールに対して、その遺伝子
の発現が亢進されたことを示し、0.5以下であれば抑
制されたことを示す。表117〜表133、表158〜
表160、表165〜表192および表211〜表21
5は、被験物質である7物質のうち少なくとも1物質に
ついて遺伝子の発現の亢進が見られたものを示し、表1
34〜表157、表161〜表164、表193〜表2
10および表216〜表220は、被験物質である7物
質のうち少なくとも1物質について遺伝子の発現の抑制
が見られたものを示す。また、TBTはトリブチルスズ
を、OPは4−オクチルフェノール、NPは4−ノニル
フェノール、DBPはフタル酸ジ-n-ブチル、DCHP
はフタル酸ジシクロヘキシル、OCSはオクタクロロス
チレン、BPはベンゾフェノンをそれぞれ表す。
【0209】
【表117】
【0210】
【表118】
【0211】
【表119】
【0212】
【表120】
【0213】
【表121】
【0214】
【表122】
【0215】
【表123】
【0216】
【表124】
【0217】
【表125】
【0218】
【表126】
【0219】
【表127】
【0220】
【表128】
【0221】
【表129】
【0222】
【表130】
【0223】
【表131】
【0224】
【表132】
【0225】
【表133】
【0226】
【表134】
【0227】
【表135】
【0228】
【表136】
【0229】
【表137】
【0230】
【表138】
【0231】
【表139】
【0232】
【表140】
【0233】
【表141】
【0234】
【表142】
【0235】
【表143】
【0236】
【表144】
【0237】
【表145】
【0238】
【表146】
【0239】
【表147】
【0240】
【表148】
【0241】
【表149】
【0242】
【表150】
【0243】
【表151】
【0244】
【表152】
【0245】
【表153】
【0246】
【表154】
【0247】
【表155】
【0248】
【表156】
【0249】
【表157】
【0250】
【表158】
【0251】
【表159】
【0252】
【表160】
【0253】
【表161】
【0254】
【表162】
【0255】
【表163】
【0256】
【表164】
【0257】
【表165】
【0258】
【表166】
【0259】
【表167】
【0260】
【表168】
【0261】
【表169】
【0262】
【表170】
【0263】
【表171】
【0264】
【表172】
【0265】
【表173】
【0266】
【表174】
【0267】
【表175】
【0268】
【表176】
【0269】
【表177】
【0270】
【表178】
【0271】
【表179】
【0272】
【表180】
【0273】
【表181】
【0274】
【表182】
【0275】
【表183】
【0276】
【表184】
【0277】
【表185】
【0278】
【表186】
【0279】
【表187】
【0280】
【表188】
【0281】
【表189】
【0282】
【表190】
【0283】
【表191】
【0284】
【表192】
【0285】
【表193】
【0286】
【表194】
【0287】
【表195】
【0288】
【表196】
【0289】
【表197】
【0290】
【表198】
【0291】
【表199】
【0292】
【表200】
【0293】
【表201】
【0294】
【表202】
【0295】
【表203】
【0296】
【表204】
【0297】
【表205】
【0298】
【表206】
【0299】
【表207】
【0300】
【表208】
【0301】
【表209】
【0302】
【表210】
【0303】
【表211】
【0304】
【表212】
【0305】
【表213】
【0306】
【表214】
【0307】
【表215】
【0308】
【表216】
【0309】
【表217】
【0310】
【表218】
【0311】
【表219】
【0312】
【表220】
【0313】実施例3 マウス精巣由来セルトリ細胞
(TM4)とライディッヒ細胞(TM3)を用いた遺伝
子の解析 精細胞に栄養や諸因子を供給するセルトリ細胞とテスト
ステロンを産生するライディッヒ細胞は共に精子形成に
重要な役割を果たす。それぞれの株化細胞TM4および
TM3を用いて被験7物質の影響を遺伝子発現レベルで
解析し変動する遺伝子を選別した。
【0314】(1)精巣由来細胞からのmRNAの調製 a.Charcoal−dextran処理血清(DC
−FCS) 培地添加物である血清からステロイドホルモンを抜くた
め、ウシ胎仔血清を以下のようにCharcoal−d
extran(CD)処理した。50ml遠心チューブ
(IWAKI社製)に蒸留水33ml、Charcoa
l activated(SIGMA社製)3.3gを
加えて軽くチューブを振りなじませた。2000rp
m、3分間遠心し、水を除去した。これに蒸留水33m
lとDextran T70(アマシャムファルマシア
社製)1.65gを加えて軽く振ってなじませた後、6
00rpm、6分間遠心し、水を除去した。ここへウシ
胎仔血清30mlを加え、37℃、1時間緩やかに加温
振盪した。3000rpm、20分間で遠心後、上清の
血清をフィルター滅菌し、−20℃で保存した。
【0315】b.細胞の培養 細胞の培養には、DMEM培地、DMEM/F−12培
地(通常製品、Phenol Red Free製
品)、Insulin Transferrin−Se
lenium−X Supplement(培地添加
物:ITS−X)、トリプシンはGIBCO社製、ウシ
胎仔血清(Fetal Bovine Serum:F
BS)はJRH BIOSCIENCE社製、PBS
(−)(細胞培養用ダルベッコphosphate b
uffer saline(−)「ニッスイ」粉末D)
は日水製薬社製を用いた。その他、特に記述がある場合
以外は、試薬は市販試薬特級を用いた。
【0316】TM4細胞はATCC(American
Type Culture Collection,
Manassas,VA:CRL−1715)より入手
した。この細胞はBALB/cマウス精巣正常組織から
分離樹立されたセルトリ細胞である。FSH、アンドロ
ゲン、エストロゲン、プロゲステロンの各レセプターを
発現しており、初代培養細胞より弱いながらFSHに応
答しcAMPを産生する。またトランスフェリン、H−
Yアンチゲン、プラスミノーゲン活性化因子を産生する
ことが報告されている。TM3はATCC(CRL−1
714)より入手した。この細胞はBALB/cマウス
精巣正常組織から分離樹立されたライディッヒ細胞であ
る。LH、EGF、アンドロゲン、エストロゲン、プロ
ゲステロンの各レセプターを発現しており、LHに応答
しcAMPを産生するがFSHには応答しない。またプ
ロスタグランジンF2aを産生することが報告されてい
る。
【0317】それぞれの細胞の継代維持は以下のように
行った。TM4細胞:培養ディッシュ(IWAKI社
製)中の培地を除去し、PBS(−)3mlで洗浄後、
0.5mlの0.25%トリプシン溶液を添加した。3
7℃、5%COインキュベータに2分間放置した後、
10%FBS添加DMEM/F−12培地10mlで細
胞浮遊液として、細胞密度を調製した後、新たな培養デ
ィッシュに移し37℃、5%COインキュベータで培
養した。
【0318】TM3細胞:培養ディッシュ(IWAKI
社製)中の培地を除去し、PBS(−)3mlで洗浄
後、1mlの0.25%トリプシン溶液を添加した。3
2℃、5%COインキュベータに3分間放置した後、
10%FBS添加DMEM/F−12培地10mlで細
胞浮遊液として、細胞密度を調製した後、新たな培養デ
ィッシュに移し32℃、5%COインキュベータで培
養した。
【0319】ホルモン低減培養法:通常液体培地に添加
されているpH指示薬であるフェノールレッドは、エス
トロゲン様作用があることが知られている。そこで、実
験系におけるホルモンの影響を除くため、細胞内外のス
テロイドホルモン類を低減する処理をした。通常の培地
により播種した細胞を18−24時間静置培養し安定さ
せた。その後、培地を除去しホルモン低減培養用の培地
(DC−FCSを含み(TM4:1%、TM3:1
%)、ITS−X培地添加物1%を含むフェノールレッ
ド非添加のD−MEM/F12液体培地)に交換し24
時間培養した。その培地を除去後、ITS−X1%を含
むフェノールレッド非添加D−MEM/F−12液体培
地に被験試薬を添加し培養した。
【0320】c.細胞毒性試験と試薬処理濃度決定 被験物質の濃度を決定するため、細胞生存率を指標に被
験物質の細胞毒性を調べた。生細胞の測定にはWST−
1法を用いた。6×10cells/mlの細胞懸濁
液を、96穴マイクロプレートに各ウェル180μlず
つまき、1日培養後、各ウェルに定められた濃度に調製
した試薬溶液をそれぞれ作用させた。なお、溶媒である
エタノールは最終濃度として0.1%となるように調製
した。被験物質添加後24時間静置培養し、WST−1
Cell CountingKit(DOJINDO
社製)の測定用試薬をPBSで2倍希釈したものを加え
た。各ウェルに20μlずつ加え、37℃、5%CO
インキュベーター内で2〜3時間放置した。放置後適度
な発色が見られていることを確認した後、96穴マイク
ロプレートリーダー(Model 550、バイオラッ
ド社製)を用いて吸光度を測定した。測定波長は、45
0nmを使用した。生存率算出方法は、細胞の入ってい
ないウェルの吸光度をバックグラウンドとし、全てウェ
ルの吸光度の値から引いた後、溶媒のみを加えた時の値
を100%として細胞生存率を算出した。
【0321】その結果より被験物質の処理濃度は毒性が
出始める濃度の2オーダー下を基準に決定した。OP、
NP、DBP、DCHP、OCS、BPはそれぞれ10
nM、TBTは毒性が強く、1nMとした。
【0322】(2)DNAチップを用いた解析 TM3、TM4、15P−1細胞をそれぞれディッシュ
に播種し18〜24時間培養後さらに24時間ホルモン
低減培養法で培養した。次に、この培地を除去、PBS
(−)で洗浄し、Phenol red free D
−MEM/F12培地に1%ITS−Xを加えた無血清
培地に被験物質を加えたものに交換した。
【0323】次に被験7物質および17β−エストラジ
オール(E)を上記方法により各々の細胞に6時間曝
露した。また同様に溶媒のみを試料添加時と同量曝露し
たものを対照として用意した。実施例2と同様にして得
られたtotal RNAからOligotex dT
−30 super(宝酒造社製)によりPoly A
RNA(mRNA)を抽出した。total RN
A 200μgを滅菌蒸留水100μlに溶解した。こ
の液に、1M Tris−HCl(pH 8.0)2m
l、0.5MEDTA 400μl、10%SDS 2
mlを滅菌蒸留水で全量を100mlとした2×Elu
tion buffer100μlを加え、予めボルテ
ックスで攪拌したOligotex dT−30を20
0μl加え混合し、65℃、5分間加熱後、氷浴上に3
分間放置した。さらに5M NaCl 50μlを加え
て再度攪拌し、37℃で10分間加温した。加温後、1
5000rpm、3分間遠心し上清を除去した後、滅菌
精製水200μlを加えピペッティングした。その後、
65℃、5分間加熱後、氷浴上に3分間放置し、150
00rpm、3分間遠心した後、上清を別のチューブへ
移した。これを再度繰り返した。得られたmRNA溶液
は、3M CHCOONa、エタノール1000μl
を加え攪拌し、−80℃で30分以上放置した(エタノ
ール沈殿法)。沈殿後、4℃、15000rpmで15
分間遠心し、上清を除き、75% エタノール200μ
lを加えて沈殿物を洗浄した。次に4℃、15000r
pmで5分間遠心し、上清を除去した後、風乾した。乾
燥後、滅菌蒸留水に溶解し、濃度を測定した。この過程
を2回行うことで、純度の高いmRNAを得た。
【0324】DNAチップを用いた発現遺伝子の解析
は、米国Incyte社が受託分析に用いているDNA
チップであり8000種以上の遺伝子がスポットされて
いるMouse GEM(Gene Expressi
on Microarray)解析サービスを利用する
ことにより行った。発現変動の大きさは標準化されデー
タベースとなり、必要により閲覧、検索することができ
た。遺伝子配列はIncyte clone ID(I
ncyte社のクローン番号)によりインターネット
(hppt://www.incyte.com)で見
ることができ、クローンの市販もされている。また、実
際のハイブリダイゼーションの様子も、PDF(por
table document format)ファイ
ルとして閲覧および入手できた。それらのデータを整
理、解析し被験7物質およびEによる遺伝子発現の変
動パターンを比較検討した。
【0325】TM4、TM3にE(1nM)および被
験7物質を上記の濃度で添加し6時間培養した(暴露処
理)後mRNAを抽出し、無処理のTM4、TM3のm
RNA量と調べるためDNAチップによる解析を行い、
遺伝子発現変動をE曝露の場合と比較した。その結果
を表221〜表259に示す。
【0326】DNAチップでの発現量比較は、それぞれ
のスポットの蛍光強度を比較することで行った。すなわ
ち、ある遺伝子について(化学物質に暴露させた細胞か
ら抽出したmRNA量)/(無処理細胞から抽出したm
RNA量)の値が2.00であるということは、暴露す
ることによりその遺伝子の発現量が2倍に亢進したこと
を示しており、値が0.20であればその遺伝子の発現
量が無処理に比べて5分の1に抑制されたことを示す。
表中の数字は、発現亢進の場合2倍以上、抑制の場合は
2分の1以下を対象とし記載した。それ以外の値(0.
50より大きく2.00より小さい)の場合はその遺伝
子の発現量の変化は無しとし、表中では−で示した。ま
た、表中のNDはシグナルが検出されなかったことを示
す。
【0327】TM4細胞とTM3細胞において、E
露では応答しない遺伝子が被験7物質曝露では多数変動
した。しかし被験物質による発現変動パターンはTM4
細胞とTM3細胞においては大きく異なり、TM4細胞
の方が変動遺伝子数が多かった。TBT、DCHP曝露
により両細胞で多くの遺伝子が変動した。一方DBPお
よびNP曝露はTM3細胞では変動遺伝子がほとんどな
かったのに対し、TM4細胞では数多くの遺伝子が変動
した。7物質により発現が抑制された遺伝子の割合は、
亢進された遺伝子より少なかった。糖新生の重要な律速
酵素のFructose bisphosphatas
e 1の遺伝子はTM4細胞でTBT、DCHP、DB
P、NPにより、TM3ではTBT、DCHP、OC
S、BPにより共に発現亢進がみられた。
【0328】
【表221】
【0329】
【表222】
【0330】
【表223】
【0331】
【表224】
【0332】
【表225】
【0333】
【表226】
【0334】
【表227】
【0335】
【表228】
【0336】
【表229】
【0337】
【表230】
【0338】
【表231】
【0339】
【表232】
【0340】
【表233】
【0341】
【表234】
【0342】
【表235】
【0343】
【表236】
【0344】
【表237】
【0345】
【表238】
【0346】
【表239】
【0347】
【表240】
【0348】
【表241】
【0349】
【表242】
【0350】
【表243】
【0351】
【表244】
【0352】
【表245】
【0353】
【表246】
【0354】
【表247】
【0355】
【表248】
【0356】
【表249】
【0357】
【表250】
【0358】
【表251】
【0359】
【表252】
【0360】
【表253】
【0361】
【表254】
【0362】
【表255】
【0363】
【表256】
【0364】
【表257】
【0365】
【表258】
【0366】
【表259】
【0367】実施例4 化合物の低用量を皮下投与した
妊娠マウス由来の雄胎仔の頭部におけるIntelli
Gene DNAチップを用いた遺伝子の解析 実施例1の表1で示す化合物のうち、DESと17β−
エストラジオールを除いた8物質について100分の1
量を同様に皮下投与した妊娠マウスより胎仔を採取し
た。PCRによる雌雄判別を行い、得られた雄胎仔の頭
部より抽出したmRNA 1μgをDNAチップ解析に
供した。DNAチップを用いた発現遺伝子の解析は、I
ntelliGene Mouse CHIP Set
I ver.1.0(宝酒造社製)を用いて行なっ
た。
【0368】DNAチップでの発現量の比較は、実施例
1と同様に(化学物質に暴露させた雄胎仔から抽出した
mRNA量)/(無処理雄胎仔から抽出したmRNA
量)の値を用いた。その結果を、表260〜288に示
す。表中の数字は、発現亢進の場合1.5倍以上、抑制
の場合は1.5分の1以下を対象とし記載した。それ以
外の値(1.5分の1より大きく1.5より小さい)の
場合あるいはシグナルが検出されなかった場合は、その
遺伝子の発現量の変化は無し(表では空欄)とした。表
中においてTBTはトリブチルスズを、OPは4−オク
チルフェノールを、NPは4−ノニルフェノールを,D
BPはフタル酸ジ−N−ブチルを、DCHPはフタル酸
ジシクロヘキシルを、OCSはオクタクロロスチレン
を、BPはベンゾフェノンを、DEHPはフタル酸ジエ
チルヘキシルを各々示すものとする。
【0369】
【表260】
【0370】
【表261】
【0371】
【表262】
【0372】
【表263】
【0373】
【表264】
【0374】
【表265】
【0375】
【表266】
【0376】
【表267】
【0377】
【表268】
【0378】
【表269】
【0379】
【表270】
【0380】
【表271】
【0381】
【表272】
【0382】
【表273】
【0383】
【表274】
【0384】
【表275】
【0385】
【表276】
【0386】
【表277】
【0387】
【表278】
【0388】
【表279】
【0389】
【表280】
【0390】
【表281】
【0391】
【表282】
【0392】
【表283】
【0393】
【表284】
【0394】
【表285】
【0395】
【表286】
【0396】
【表287】
【0397】
【表288】
【0398】実施例5 化合物を経口投与した妊娠マウ
ス由来の雄胎仔の頭部におけるIntelliGene
DNAチップを用いた遺伝子の解析 実施例1の表1で示す化合物のうち、DES、17β−エ
ストラジオールおよびフタル酸ジエチルヘキシルを除く
7物質について同じ量を妊娠10日目より連日7日間経
口投与し、同17日目に胎仔を摘出し、実施例1と同様
に雌雄の判別、total RNAの抽出、mRNAの
抽出を行い、mRNA 1μgをDNAチップ解析に供
した。DNAチップを用いた発現遺伝子の解析は、In
telliGene Mouse CHIP Set
I ver.1.0(宝酒造社製)を用いて行なった。
【0399】DNAチップでの発現量の比較は、実施例
1と同様に(化学物質に暴露させた雄胎仔から抽出した
mRNA量)/(無処理雄胎仔から抽出したmRNA
量)の値を用いた。結果を表289〜307に示す。表
中の数字は、発現亢進の場合1.5倍以上、抑制の場合
は1.5分の1以下を対象とし記載した。それ以外の値
(1.5分の1より大きく1.5より小さい)の場合あ
るいはシグナルが検出されなかった場合は、その遺伝子
の発現量の変化は無し(表では空欄)とした。表中にお
いてTBTはトリブチルスズを、OPは4−オクチルフ
ェノールを、NPは4−ノニルフェノールを、DBPは
フタル酸ジ−N−ブチルを、DCHPはフタル酸ジシク
ロヘキシルを、OCSはオクタクロロスチレンを、BP
はベンゾフェノンを各々示すものとする。
【0400】
【表289】
【0401】
【表290】
【0402】
【表291】
【0403】
【表292】
【0404】
【表293】
【0405】
【表294】
【0406】
【表295】
【0407】
【表296】
【0408】
【表297】
【0409】
【表298】
【0410】
【表299】
【0411】
【表300】
【0412】
【表301】
【0413】
【表302】
【0414】
【表303】
【0415】
【表304】
【0416】
【表305】
【0417】
【表306】
【0418】
【表307】
【0419】実施例6 化合物を皮下投与した妊娠マウ
ス由来の雄胎仔の頭部におけるIncyte社DNAチ
ップを用いた遺伝子の解析 実施例1で用いたのと同じmRNA 1μg、あるいは
実施例4で用いた8物質を投与して得られた同じmRN
A 1μgをDNAチップ解析に供した。DNAチップ
を用いた発現遺伝子の解析は、実施例3と同様に米国I
ncyte社のMouse GEM2 Microar
rayを用いた解析サービスを利用することにより行な
った。
【0420】DNAチップでの発現量の比較は、実施例
1と同様に(化学物質に暴露させた雄胎仔から抽出した
mRNA量)/(無処理雄胎仔から抽出したmRNA
量)の値を用いた。結果を表308〜361に示す。表
中の数字は、発現亢進の場合1.5倍以上、抑制の場合
は1.5分の1以下を対象とし記載した。それ以外の値
(1.5分の1より大きく1.5より小さい)の場合あ
るいはシグナルが検出されなかった場合は、その遺伝子
の発現量の変化は無し(表では空欄)とした。表中、
(実施例1で用いたmRNAの結果)/(実施例4で用
いたmRNAの結果)で表記されている。表中において
TBTはトリブチルスズを、OPは4−オクチルフェノ
ールを、NPは4−ノニルフェノールを、DBPはフタ
ル酸ジ−N−ブチルを、DCHPはフタル酸ジシクロヘ
キシルを、OCSはオクタクロロスチレンを、BPはベ
ンゾフェノンを、DEHPはフタル酸ジエチルヘキシル
を、E は17β−エストラジオールを、DESはジエ
チルスチルベストロールを各々示すものとする。
【0421】
【表308】
【0422】
【表309】
【0423】
【表310】
【0424】
【表311】
【0425】
【表312】
【0426】
【表313】
【0427】
【表314】
【0428】
【表315】
【0429】
【表316】
【0430】
【表317】
【0431】
【表318】
【0432】
【表319】
【0433】
【表320】
【0434】
【表321】
【0435】
【表322】
【0436】
【表323】
【0437】
【表324】
【0438】
【表325】
【0439】
【表326】
【0440】
【表327】
【0441】
【表328】
【0442】
【表329】
【0443】
【表330】
【0444】
【表331】
【0445】
【表332】
【0446】
【表333】
【0447】
【表334】
【0448】
【表335】
【0449】
【表336】
【0450】
【表337】
【0451】
【表338】
【0452】
【表339】
【0453】
【表340】
【0454】
【表341】
【0455】
【表342】
【0456】
【表343】
【0457】
【表344】
【0458】
【表345】
【0459】
【表346】
【0460】
【表347】
【0461】
【表348】
【0462】
【表349】
【0463】
【表350】
【0464】
【表351】
【0465】
【表352】
【0466】
【表353】
【0467】
【表354】
【0468】
【表355】
【0469】
【表356】
【0470】
【表357】
【0471】
【表358】
【0472】
【表359】
【0473】
【表360】
【0474】
【表361】
【0475】実施例7 化合物を経口投与した妊娠マウ
ス由来の雄胎仔の頭部におけるIncyte社DNAチ
ップを用いた遺伝子の解析 実施例1で用いた化合物のうち、オクタクロロスチレ
ン、フタル酸ジエチルヘキシル、DESおよび17β−エ
ストラジオールを除く6物質について表1で示すのと同
じ投与量で妊娠10日目のマウスに連日7日間経口投与
し、妊娠17日目に母獣より得られた雄胎仔の頭部より
抽出したmRNA 1μgをDNAチップ解析に供し
た。DNAチップを用いた発現遺伝子の解析は、実施例
3と同様に米国Incyte社のMouse GEM2
Microarrayを用いた解析サービスを利用す
ることにより行なった。
【0476】DNAチップでの発現量の比較は、実施例
1と同様に(化学物質に暴露させた雄胎仔から抽出した
mRNA量)/(無処理雄胎仔から抽出したmRNA
量)の値を用いた。結果を表362〜385に示す。表
中の数字は、発現亢進の場合1.5倍以上、抑制の場合
は1.5分の1以下を対象とし記載した。それ以外の値
(1.5分の1より大きく1.5より小さい)の場合あ
るいはシグナルが検出されなかった場合は、その遺伝子
の発現量の変化は無し(表では空欄)とした。表中にお
いてTBTはトリブチルスズを、OPは4−オクチルフ
ェノールを、NPは4−ノニルフェノールを、DBPは
フタル酸ジ−N−ブチルを、DCHPはフタル酸ジシク
ロヘキシルを、BPはベンゾフェノンを、各々示すもの
とする。
【0477】
【表362】
【0478】
【表363】
【0479】
【表364】
【0480】
【表365】
【0481】
【表366】
【0482】
【表367】
【0483】
【表368】
【0484】
【表369】
【0485】
【表370】
【0486】
【表371】
【0487】
【表372】
【0488】
【表373】
【0489】
【表374】
【0490】
【表375】
【0491】
【表376】
【0492】
【表377】
【0493】
【表378】
【0494】
【表379】
【0495】
【表380】
【0496】
【表381】
【0497】
【表382】
【0498】
【表383】
【0499】
【表384】
【0500】
【表385】
【0501】実施例8 MCF−7におけるIncyt
e社DNAチップを用いた遺伝子の解析 実施例2で用いたのと同様に調製したヒト乳癌細胞MC
F−7由来のtotal RNAを、実施例1−(4)
で示したのと同じようにOligotex−MAG m
RNA Purification kit(宝酒造社
製)を用いてmRNAを抽出し、その1μgをDNAチ
ップ解析に供した。DNAチップを用いた発現遺伝子の
解析は、実施例3と同様に米国Incyte社のUni
GEM Human V2.41 Microarra
yを用いた解析サービスを利用することにより行なっ
た。
【0502】DNAチップでの発現量の比較は、実施例
1と同様に(化学物質に暴露させた雄胎仔から抽出した
mRNA量)/(無処理雄胎仔から抽出したmRNA
量)の値を用いた。結果を表386〜397に示す。表
中の数字は、発現亢進の場合1.5倍以上、抑制の場合
は1.5分の1以下を対象とし記載した。表中において
TBTはトリブチルスズを、OPは4−オクチルフェノ
ールを、NPは4−ノニルフェノールを、DBPはフタ
ル酸ジ−N−ブチルを、DCHPはフタル酸ジシクロヘ
キシルを、OCSはオクタクロロスチレンを、BPはベ
ンゾフェノンを、E2は17β−エストラジオールを、
DESはジエチルスチルベストロールを各々示すものと
する。
【0503】
【表386】
【0504】
【表387】
【0505】
【表388】
【0506】
【表389】
【0507】
【表390】
【0508】
【表391】
【0509】
【表392】
【0510】
【表393】
【0511】
【表394】
【0512】
【表395】
【0513】
【表396】
【0514】
【表397】
【0515】
【発明の効果】本発明により内分泌かく乱作用により影
響を受ける遺伝子、これらを特異的に検出できるDNA
チップあるいはそれに準ずるもの、及びこれらを用いて
内分泌かく乱作用の有無を評価する方法が提供される。
【0516】
【配列表フリーテキスト】 SEQ ID NO:1: PCR primer Zfy-sense for sex distinct
ion. SEQ ID NO:2: PCR primer Zfy-antisense for sex dist
inction.
【0517】
【配列表】 SEQUENCE LISTING <110> Takara Shuzo Co., Ltd. <120> Method for detection of endocrine disrupting chemicals <130> T-1751 <160> 2 <210> 1 <211> 26 <212> DNA <213> Artificial Sequence <220> <223> PCR primer Zfy-sense for sex distinction. <400> 1 aagataagct tacataatca catgga 26 <210> 2 <211> 26 <212> DNA <213> Artificial Sequence <220> <223> PCR primer Zfy-antisense for sex distinction. <400> 2 cctatgaaat cctttgctgc acatgt 26
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) G01N 37/00 102 C12N 15/00 F (72)発明者 辻本 善政 滋賀県大津市瀬田3丁目4番1号 寳酒造 株式会社中央研究所内 (72)発明者 高嶋 良吉 滋賀県大津市瀬田3丁目4番1号 寳酒造 株式会社中央研究所内 (72)発明者 榎 由樹 滋賀県大津市瀬田3丁目4番1号 寳酒造 株式会社中央研究所内 (72)発明者 加藤 郁之進 滋賀県大津市瀬田3丁目4番1号 寳酒造 株式会社中央研究所内 Fターム(参考) 4B024 AA11 CA04 CA09 CA12 HA14 4B063 QA01 QA18 QQ08 QQ43 QQ53 QQ79 QR32 QR36 QR48 QR56 QR62 QS12 QS22 QS25 QS34 QS39 QX02 QX07

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 内分泌かく乱物質を検出するための方法
    であって、試料を暴露させた細胞、組織又は生物体にお
    いて、表5〜表114、表117〜表397に記載の遺
    伝子であって、トリブチルスズによって発現量が変化す
    る遺伝子群、4−オクチルフェノールによって発現量が
    変化する遺伝子群、4−ノニルフェノールによって発現
    量が変化する遺伝子群、フタル酸ジ−n−ブチルによっ
    て発現量が変化する遺伝子群、フタル酸ジシクロヘキシ
    ルによって発現量が変化する遺伝子群、オクタクロロス
    チレンによって発現量が変化する遺伝子群、ベンゾフェ
    ノンによって発現量が変化する遺伝子群、フタル酸ジエ
    チルヘキシルによって発現量が変化する遺伝子群、ジエ
    チルスチルベストロールによって発現量が変化する遺伝
    子群、17β−エストラジオールによって発現量が変化
    する遺伝子群のそれぞれから選択される少なくとも1種
    以上の遺伝子の発現量を、該試料を暴露させなかった細
    胞、組織又は生物体における該遺伝子の発現量と比較す
    る工程を包含することを特徴とする内分泌かく乱物質の
    検出方法。
  2. 【請求項2】 発現量を測定しようとする遺伝子、もし
    くはその断片が支持体上のあらかじめ定められた領域に
    固定化されたアレイを使用するハイブリダイゼーション
    法によってmRNA量を測定することにより内分泌かく
    乱物質を検出するためのDNAアレイであって、表5〜
    表114、表117〜表397に記載の遺伝子であっ
    て、トリブチルスズによって発現量が変化する遺伝子
    群、4−オクチルフェノールによって発現量が変化する
    遺伝子群、4−ノニルフェノールによって発現量が変化
    する遺伝子群、フタル酸ジ−n−ブチルによって発現量
    が変化する遺伝子群、フタル酸ジシクロヘキシルによっ
    て発現量が変化する遺伝子群、オクタクロロスチレンに
    よって発現量が変化する遺伝子群、ベンゾフェノンによ
    って発現量が変化する遺伝子群、フタル酸ジエチルヘキ
    シルによって発現量が変化する遺伝子群、ジエチルスチ
    ルベストロールによって発現量が変化する遺伝子群、1
    7β−エストラジオールによって発現量が変化する遺伝
    子群のそれぞれから選択される少なくとも1種以上の遺
    伝子、もしくはその断片がそれぞれ支持体上の定められ
    た領域に固定化されていることを特徴とするアレイ。
  3. 【請求項3】 mRNA量が、ハイブリダイゼーション
    法または核酸増幅法により測定される方法により内分泌
    かく乱物質を検出するためのキットであって、表5〜表
    114、表117〜表397に記載の遺伝子であって、
    トリブチルスズによって発現量が変化する遺伝子群、4
    −オクチルフェノールによって発現量が変化する遺伝子
    群、4−ノニルフェノールによって発現量が変化する遺
    伝子群、フタル酸ジ−n−ブチルによって発現量が変化
    する遺伝子群、フタル酸ジシクロヘキシルによって発現
    量が変化する遺伝子群、オクタクロロスチレンによって
    発現量が変化する遺伝子群、ベンゾフェノンによって発
    現量が変化する遺伝子群、フタル酸ジエチルヘキシルに
    よって発現量が変化する遺伝子群、ジエチルスチルベス
    トロールによって発現量が変化する遺伝子群、17β−
    エストラジオールによって発現量が変化する遺伝子群の
    それぞれから選択される少なくとも1種以上の遺伝子か
    ら転写されるmRNAにハイブリダイズするプローブを
    含むことを特徴とするキット。
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Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2008069342A1 (ja) * 2006-12-05 2008-06-12 Incorporated Administrative Agency National Agriculture And Food Research Organization アレルゲン性又は抗アレルギー性判定用プローブ
JP2016007213A (ja) * 2014-06-26 2016-01-18 コリア・インスティテュート・オヴ・サイエンス・アンド・テクノロジー ヘキサナール特異的暴露有無確認用バイオマーカーおよびそれを用いた確認方法
CN106442802A (zh) * 2016-11-15 2017-02-22 中国农业科学院兰州畜牧与兽药研究所 一种测定牛奶中八氯苯乙烯的方法
WO2021193097A1 (ja) * 2020-03-23 2021-09-30 住友化学株式会社 化学物質が有する内分泌系に影響を与える要因の判別方法

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