JP2002355063A - 新規疾患関連遺伝子およびその用途 - Google Patents

新規疾患関連遺伝子およびその用途

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JP2002355063A
JP2002355063A JP2001320441A JP2001320441A JP2002355063A JP 2002355063 A JP2002355063 A JP 2002355063A JP 2001320441 A JP2001320441 A JP 2001320441A JP 2001320441 A JP2001320441 A JP 2001320441A JP 2002355063 A JP2002355063 A JP 2002355063A
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protein
salt
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dna
cells
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JP2001320441A
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Nobuyuki Koyama
信行 小山
Seiichi Tanida
清一 谷田
Toshifumi Watanabe
敏文 渡邉
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Takeda Pharmaceutical Co Ltd
Original Assignee
Takeda Chemical Industries Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】新規疾患関連遺伝子およびタンパク質の用途の
提供など。 【解決手段】 本発明は新規疾患関連遺伝子および本発
明タンパク質またはその塩は該タンパク質およびその
塩を用いたスクリーニング方法およびスクリーニング用
キット、該スクリーニング方法、該スクリーニング用
キットを用いて得られる該タンパク質の活性を調節する
化合物またはその塩、該タンパク質の活性を調節する
中和抗体心疾患の予防・治療剤等の医薬等として有用
である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、疾患(例、心疾
患)関連遺伝子、タンパク質、その塩およびそれをコー
ドするポリヌクレオチド、該タンパク質またはその塩お
よび部分ペプチドの製造方法、該ポリヌクレオチドを含
有する組み換えベクターおよび形質転換体、該タンパク
質およびその塩を用いるスクリーニング方法およびスク
リーニング用キット、該スクリーニング方法およびスク
リーニング用キットを用いて得られる化合物およびその
塩などに関する。
【0002】
【従来の技術】心不全とは、心筋の収縮不全と考えられ
ている。発症の機序としては、次のようなものが考えら
れる。心筋の障害、心臓ポンプの機械的、機能的異常、
高血圧及び肺高血圧による圧負荷、貧血、急性腎炎など
容量負荷などが原因となり、生体の需要に応じた血液量
を心臓が拍出し得なくなる状態が生じる。これに対し
て、交感神経系、神経−体液−内分泌系などの代償機序
が作動し、生体の恒常性の維持に向かう。心不全の代償
機序では、1)前述の負荷が増大して心臓の収縮力が増
し、サルコメアの長さの増大に伴って心拡大が生じる、
2)心筋の収縮単位が増し、その結果として心筋肥大が
生じる、3)全身に必要な血液を駆出できない状態を補
うため神経液性因子が活性化され、局所的には心筋繊維
化が進展する。基本的には与えられた負荷に、適応しよ
うとする機序であるが、不十分な作動によって心不全が
促進する場合もあれば、逆に過剰な作動によって心筋傷
害を生じ、心不全を悪化させる場合もある。代償機序が
作動した結果として、心筋細胞が肥大し、心肥大が生じ
る。しかしながら、前述の障害あるいは負荷が慢性的に
継続された場合、その代償機序が破綻する。つまり、肥
大した心筋細胞に十分な量の血液が供給されずに虚血に
陥り、これが原因で心筋収縮不全などの心筋障害が生
じ、心拍出量の低下、臓器循環障害、静脈鬱血、体液貯
留などを伴う心不全症候群を来すことになる。これに対
する治療としては、心筋細胞障害の改善、心保護作用の
強化、心筋収縮不全による心機能低下の回復及びその原
因である生体の代償破綻の抑制あるいは過剰な代償機序
の改善が必要となる。現在、該心不全症候群の治療に
は、臨床的には強心薬として1)ジゴキシンなどの強心
配糖体、2)ドブタミンなどの交感神経作動薬、3)ア
ムリノンなどのホスホジエステラーゼ阻害薬が、また血
管拡張薬としてはヒドララジン、カルシウム拮抗薬及び
アンジオテンシンI変換酵素阻害薬、アンジオテンシン
II受容体拮抗薬などが使用されている。また、他拡張
型心筋症の治療には、βブロッカーなどが使用されてい
る。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、早やか
な代償性機序の作動、過剰な代償性機序を抑制あるいは
代償破綻を抑制(アポトーシス抑制を含む)する治療薬
はない。早やかな代償性機序の作動や過剰な代償機序あ
るいは代償破綻の抑制という観点から治療薬の開発を目
指した。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明は、探索ターゲッ
トを心不全発症時に心臓において発現が上昇する遺伝子
に着目し、本発明者らは、上記の課題を解決するために
鋭意研究を重ねた結果、冠動脈結紮による心筋梗塞モデ
ルラットの心不全発症時において発現が増加するmRN
Aを見出した(配列番号:2)。該mRNAの発現プロ
ファイルを詳細に検討した結果、このmRNAは、術後
1週でやや増加し、術後8週で逆に減少し、術後20
週、30週で顕著に増加することが明らかとなった。こ
の塩基配列を用いて公知の遺伝子との相同性を調べた結
果、その塩基配列からマウスG蛋白質シグナルレギュレ
ターと高い相同性を示す遺伝子であることが判明した。
これらの知見に基づいて、さらに検討を重ねた結果、本
発明を完成するに至った。本発明の遺伝子産物であるタ
ンパク質およびその塩、または部分ペプチドを用いたス
クリーニング方法およびスクリーニング用キットより得
られる化合物は、心不全または該遺伝子により引き起こ
される疾患の予防・治療方法、診断剤および医薬品とし
て有用である。また、本発明のDNA導入動物およびノ
ックアウト動物作成する事により心不全および、該タン
パク質関連疾病の原因究明および治療法の検討に有用で
ある。よって本発明では、該タンパク質の活性を調節す
る化合物のスクリーニング方法、該スクリーニング方法
で得られる化合物またはその塩、その塩を含有してなる
医薬、本発明のDNA導入動物およびノックアウト動物
なども提供する。
【0005】すなわち、本発明は、(1)配列番号:1
で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一の
アミノ酸配列を有するタンパク質またはその塩、(2)
配列番号:1で表されるアミノ酸配列を含有するタンパ
ク質またはその塩、(3)前記(1)記載のタンパク質
の部分ペプチドまたはその塩、(4)前記(1)記載の
タンパク質もしくはその塩または前記(3)記載の部分
ペプチドもしくはその塩をコードするポリヌクレオチド
を含有するポリヌクレオチド、(5)DNAである前記
(4)記載のポリヌクレオチド、(6)配列番号:2で
表される塩基配列を含有する前記(5)記載のDNA、
(7)前記(4)記載のポリヌクレオチドを含有する組
換えベクター、(8)前記(7)記載の組換えベクター
で形質転換された形質転換体、(9)前記(8)記載の
形質転換体を培養し、前記(1)記載のタンパク質もし
くはその塩または前記(3)記載の部分ペプチドまたは
その塩を生成、蓄積せしめ、これを採取することを特徴
とする前記(1)記載のタンパク質もしくはその塩また
は前記(3)記載の部分ペプチドもしくはその塩の製造
方法、(10)前記(1)記載のタンパク質もしくはそ
の塩または前記(3)記載の部分ペプチドもしくはその
塩を含有してなる医薬、(11)前記(1)記載のタン
パク質もしくはその塩または前記(3)記載の部分ペプ
チドもしくはその塩に対する抗体、(12)前記(1
1)記載の抗体を含有する診断薬、(13)前記(1)
記載のタンパク質もしくはその塩または前記(3)記載
の部分ペプチドもしくはその塩を用いることを特徴とす
る、前記(1)記載のタンパク質もしくはその塩または
前記(3)記載の部分ペプチドもしくはその塩の活性を
調節する化合物またはその塩のスクリーニング方法、
(14)前記(1)記載のタンパク質もしくはその塩ま
たは前記(3)記載の部分ペプチドもしくはその塩が、
前記(1)記載のタンパク質もしくはその塩または前記
(3)記載の部分ペプチドもしくはその塩をコードする
DNAを含有するDNAで形質転換された形質転換体の
細胞質内に発現されたものである前記(13)記載のス
クリーニング方法、(15)前記(1)記載のタンパク
質もしくはその塩または前記(3)記載の部分ペプチド
もしくはその塩を含有することを特徴とする、前記
(1)記載のタンパク質もしくはその塩または前記
(3)記載の部分ペプチドもしくはその塩の活性を調節
する化合物またはその塩のスクリーニング用キット、
(16)前記(13)記載のスクリーニング方法または
前記(15)記載のスクリーニング用キットを用いて得
られる、前記(1)記載のタンパク質もしくはその塩ま
たは前記(3)記載の部分ペプチドもしくはその塩の活
性を調節する化合物またはその塩、(17)前記(1
6)記載の化合物またはその塩を含有してなる医薬、
(18)心疾患の予防・治療剤である前記(17)記載
の医薬、(19)前記(1)記載のタンパク質もしくは
その塩または前記(3)記載の部分ペプチドもしくはそ
の塩をコードするDNAに相補的もしくは実質的に相補
的な塩基配列を有するアンチセンスヌクレオチド、(2
0)前記(19)記載のアンチセンスヌクレオチドを含
有してなる医薬、(21)前記(4)記載のポリヌクレ
オチドを含有してなる医薬、(22)前記(4)記載の
ポリヌクレオチドを含有してなる診断薬、(23)哺乳
動物に対して、前記(16)記載の化合物またはその塩
の有効量を投与することを特徴とする心疾患の予防・治
療方法、(24)心疾患の予防・治療剤を製造するため
の前記(16)記載の化合物またはその塩の使用などを
提供する。さらに、本発明は、(25)前記(1)記載
のタンパク質をコードするDNAまたはその変異DNA
を有する非ヒトDNA導入動物、(26)非ヒト動物が
ゲッ歯動物である前記(25)記載の動物、(27)ゲ
ッ歯動物がマウスまたはラットである前記(26)記載
の動物、(28)本発明のDNAが不活性化された非ヒ
ト哺乳動物胚幹細胞、(29)該DNAがレポーター遺
伝子(例、大腸菌由来のβ−ガラクトシダーゼ遺伝子)
を導入することにより不活性化された前記(28)記載
の胚幹細胞、(30)ネオマイシン耐性である前記(2
8)記載の胚幹細胞、(31)非ヒト哺乳動物がゲッ歯
動物である前記(28)記載の胚幹細胞、(32)ゲッ
歯動物がマウスである前記(31)記載の胚幹細胞、
(33)本発明のDNAが不活性化された該DNA発現
不全非ヒト哺乳動物、(34)該DNAがレポーター遺
伝子(例、大腸菌由来のβ−ガラクトシダーゼ遺伝子)
を導入することにより不活性化され、該レポーター遺伝
子が本発明のDNAに対するプロモーターの制御下で発
現しうる前記(32)記載の非ヒト哺乳動物、(35)
非ヒト哺乳動物がゲッ歯動物である前記(32)記載の非
ヒト哺乳動物、(36)ゲッ歯動物がマウスである前記
(35)記載の非ヒト哺乳動物、および(37)前記
(36)記載の動物に、試験化合物を投与し、レポータ
ー遺伝子の発現を検出することを特徴とする本発明のD
NAに対するプロモーター活性を促進または阻害する化
合物またはその塩のスクリーニング方法なども提供す
る。
【0006】
【発明の実施の形態】本発明の配列番号:1で表される
アミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配
列を含有するタンパク質(以下、本発明のタンパク質ま
たは本発明で用いられるタンパク質と称することもあ
る。)は、ヒトまたはその他の温血動物(例えば、モル
モット、ラット、マウス、ニワトリ、ウサギ、ブタ、ヒ
ツジ、ウシ、サルなど)の細胞(例えば、肝細胞、脾細
胞、神経細胞、グリア細胞、膵臓β細胞、骨髄細胞、メ
サンギウム細胞、ランゲルハンス細胞、表皮細胞、上皮
細胞、杯細胞、内皮細胞、平滑筋細胞、繊維芽細胞、繊
維細胞、筋細胞、脂肪細胞、免疫細胞(例、マクロファ
ージ、T細胞、B細胞、ナチュラルキラー細胞、肥満細
胞、好中球、好塩基球、好酸球、単球)、巨核球、滑膜
細胞、軟骨細胞、骨細胞、骨芽細胞、破骨細胞、乳腺細
胞、肝細胞もしくは間質細胞、またはこれら細胞の前駆
細胞、幹細胞もしくはガン細胞など)もしくはそれらの
細胞が存在するあらゆる組織、例えば、脳、脳の各部位
(例、嗅球、扁桃核、大脳基底球、海馬、視床、視床下
部、大脳皮質、延髄、小脳)、脊髄、下垂体、胃、膵
臓、腎臓、肝臓、生殖腺、甲状腺、胆のう、骨髄、副
腎、皮膚、筋肉、肺、消化管(例、大腸、小腸)、血
管、心臓、胸腺、脾臓、顎下腺、末梢血、前立腺、睾
丸、卵巣、胎盤、子宮、骨、関節、骨格筋などに由来す
るタンパク質であってもよく、合成タンパク質であって
もよい。
【0007】配列番号:1で表されるアミノ酸配列と実
質的に同一のアミノ酸配列としては、配列番号:1で表
されるアミノ酸配列と約97%以上、好ましくは約98
%以上、さらに好ましくは約99%以上の相同性を有す
るアミノ酸配列などが挙げられる。配列番号:1で表さ
れるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を含有
するタンパク質としては、例えば、前記の配列番号:1
で表されるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列
を含有し、配列番号:1で表されるアミノ酸配列を有す
るタンパク質と実質的に同質の活性を有するタンパク質
などが好ましい。実質的に同質の活性としては、例え
ば、心機能低下促進活性などが挙げられる。実質的に同
質とは、その活性が性質的に(例、生理学的に、または
薬理学的に)同質であることを示す。したがって、心機
能低下促進活性が同等(例、約0.01〜100倍、好
ましくは約0.1〜10倍、より好ましくは0.5〜2
倍)であることが好ましいが、この活性の程度、タンパ
ク質の分子量などの量的要素は異なっていてもよい。心
機能低下促進活性などの活性の測定は、心エコー測定装
置(セル、第97巻、189頁−198頁、1999
年)または心臓カテーテルによる心機能測定(サーキュ
レーションリサーチ、第69巻、370−377頁、1
991年)によって行うことができる。更に例えばアン
ジオテンシンI変換酵素(ACE)などのレニンアンジ
オテンシン系(RAS)の亢進を市販の測定キット
(例、ペニンスラー社製、フェニックス社製など)を用
いて測定したり、血中カテコラミンの増加活性(東ソー
社製、全自動カテコールアミン分析計)などを指標に該
活性を測定することができる。
【0008】また、本発明のタンパク質としては、例え
ば、配列番号:1で表されるアミノ酸配列中の1また
は2個以上(好ましくは、1〜5個)のアミノ酸が欠失
したアミノ酸配列、配列番号:1で表されるアミノ酸
配列に1または2個以上(好ましくは、1〜30個程
度、好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは1〜
5個のアミノ酸が付加したアミノ酸配列、配列番号:
1で表されるアミノ酸配列に1または2個以上(好まし
くは、1〜5個)のアミノ酸が挿入されたアミノ酸配
列、配列番号:1で表されるアミノ酸配列中の1また
は2個以上(好ましくは、1〜5個)のアミノ酸が他の
アミノ酸で置換されたアミノ酸配列、またはそれらを
組み合わせたアミノ酸配列を含有するタンパク質などの
いわゆるムテインも含まれる。
【0009】本明細書におけるタンパク質は、ペプチド
標記の慣例に従って左端がN末端(アミノ末端)、右端
がC末端(カルボキシル末端)である。配列番号:1で
表されるアミノ酸配列を有するタンパク質をはじめとす
る、本発明で用いられるタンパク質は、C末端がカルボ
キシル基(−COOH)、カルボキシレート(−CO
-)、アミド(−CONH2)またはエステル(−CO
OR)のいずれであってもよい。ここでエステルにおけ
るRとしては、例えば、メチル、エチル、n−プロピ
ル、イソプロピル、n−ブチルなどのC1-6アルキル
基、例えば、シクロペンチル、シクロヘキシルなどのC
3-8シクロアルキル基、例えば、フェニル、α−ナフチ
ルなどのC6-12アリール基、例えば、ベンジル、フェネ
チルなどのフェニル−C1-2アルキル基もしくはα−ナ
フチルメチルなどのα−ナフチル−C1-2アルキル基な
どのC7-14アラルキル基、ピバロイルオキシメチル基な
どが用いられる。本発明のタンパク質がC末端以外にカ
ルボキシル基(またはカルボキシレート)を有している
場合、カルボキシル基がアミド化またはエステル化され
ているものも本発明で用いられるタンパク質に含まれ
る。この場合のエステルとしては、例えば上記したC末
端のエステルなどが用いられる。さらに、本発明のタン
パク質には、N末端のアミノ酸残基(例、メチオニン残
基)のアミノ基が保護基(例えば、ホルミル基、アセチ
ル基などのC1-6アルカノイルなどのC1-6アシル基な
ど)で保護されているもの、生体内で切断されて生成す
るN末端のグルタミン残基がピログルタミン酸化したも
の、分子内のアミノ酸の側鎖上の置換基(例えば−O
H、−SH、アミノ基、イミダゾール基、インドール
基、グアニジノ基など)が適当な保護基(例えば、ホル
ミル基、アセチル基などのC1-6アルカノイル基などの
1-6アシル基など)で保護されているもの、あるいは
糖鎖が結合したいわゆる糖タンパク質などの複合タンパ
ク質なども含まれる。本発明のタンパク質の具体例とし
ては、例えば、配列番号:1で表されるアミノ酸配列を
含有するラット由来のタンパク質などがあげられる。
【0010】本発明のタンパク質の部分ペプチド(以
下、本発明の部分ペプチドと称する場合がある。本発明
の部分ペプチドは、そのアミド体およびエステル体も包
含する意味で用いられる場合がある。)としては、前記
した本発明のタンパク質の部分ペプチドであって、好ま
しくは、前記した本発明のタンパク質と同様の活性を有
するものであればいずれのものでもよい。例えば、本発
明のタンパク質の構成アミノ酸配列のうち少なくとも2
0個以上、好ましくは50個以上、さらに好ましくは7
0個以上、より好ましくは100個以上、最も好ましく
は150個以上のアミノ酸配列を有するペプチドなどが
用いられる。また、本発明の部分ペプチドは、そのアミ
ノ酸配列中の1または2個以上(好ましくは、1〜5
個)のアミノ酸が欠失し、または、そのアミノ酸配列に
1または2個以上(好ましくは、1〜20個程度、より
好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは数1〜5
個のアミノ酸が付加し、または、そのアミノ酸配列に1
または2個以上(好ましくは、1〜5個)のアミノ酸が
挿入され、または、そのアミノ酸配列中の1または2個
以上(好ましくは、1〜5個)のアミノ酸が他のアミノ
酸で置換されていてもよい。
【0011】また、本発明の部分ペプチドはC末端はカ
ルボキシル基(−COOH)、カルボキシレート(−C
OO-)、アミド(−CONH2)またはエステル(−C
OOR)(Rは上記と同意義を示す)の何れであっても
よい。さらに、本発明の部分ペプチドには、前記した本
発明のタンパク質と同様に、N末端のアミノ酸残基
(例、メチオニン残基)のアミノ基が保護基で保護され
ているもの、N端側が生体内で切断され生成したグルタ
ミン残基がピログルタミン酸化したもの、分子内のアミ
ノ酸の側鎖上の置換基が適当な保護基で保護されている
もの、あるいは糖鎖が結合したいわゆる糖ペプチドなど
の複合ペプチドなども含まれる。本発明の部分ペプチド
は抗体作成のための抗原としても用いることができる。
【0012】本発明のタンパク質または部分ペプチドの
塩としては、生理学的に許容される酸(例、無機酸、有
機酸)や塩基(例、アルカリ金属塩)などとの塩が用い
られ、とりわけ生理学的に許容される酸付加塩が好まし
い。この様な塩としては、例えば、無機酸(例えば、塩
酸、リン酸、臭化水素酸、硫酸)との塩、あるいは有機
酸(例えば、酢酸、ギ酸、プロピオン酸、フマル酸、マ
レイン酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、蓚
酸、安息香酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン
酸)との塩などが用いられる。本発明のタンパク質もし
くはその部分ペプチドまたはその塩は、前述したヒトま
たはその他の温血動物の細胞または組織より公知のタン
パク質の精製方法により製造、またはタンパク質をコー
ドするDNAを含有する形質転換体を培養することによ
り製造することができる。また、後述のペプチド合成法
に準じて製造することもできる。ヒトまたはその他の温
血動物の組織または細胞から製造する場合、ヒトまたは
その他の温血動物の組織または細胞をホモジナイズした
後、酸などで抽出を行ない、該抽出液を逆相クロマトグ
ラフィー、イオン交換クロマトグラフィーなどのクロマ
トグラフィーを組み合わせることにより精製単離するこ
とができる。
【0013】本発明のタンパク質もしくは部分ペプチド
またはその塩、またはそのアミド体の合成には、通常市
販のタンパク質合成用樹脂を用いることができる。その
ような樹脂としては、例えば、クロロメチル樹脂、ヒド
ロキシメチル樹脂、ベンズヒドリルアミン樹脂、アミノ
メチル樹脂、4−ベンジルオキシベンジルアルコール樹
脂、4−メチルベンズヒドリルアミン樹脂、PAM樹
脂、4−ヒドロキシメチルメチルフェニルアセトアミド
メチル樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、4−(2’,
4’−ジメトキシフェニル−ヒドロキシメチル)フェノ
キシ樹脂、4−(2’,4’−ジメトキシフェニル−F
mocアミノエチル)フェノキシ樹脂などを挙げること
ができる。このような樹脂を用い、α−アミノ基と側鎖
官能基を適当に保護したアミノ酸を、目的とするタンパ
ク質の配列通りに、公知の各種縮合方法に従い、樹脂上
で縮合させる。反応の最後に樹脂からタンパク質を切り
出すと同時に各種保護基を除去し、さらに高希釈溶液中
で分子内ジスルフィド結合形成反応を実施し、目的のタ
ンパク質もしくは部分ペプチドまたはそれらのアミド体
を取得する。上記した保護アミノ酸の縮合に関しては、
タンパク質合成に使用できる各種活性化試薬を用いるこ
とができるが、特に、カルボジイミド類がよい。カルボ
ジイミド類としては、DCC、N,N’−ジイソプロピ
ルカルボジイミド、N−エチル−N’−(3−ジメチル
アミノプロリル)カルボジイミドなどが用いられる。こ
れらによる活性化にはラセミ化抑制添加剤(例えば、H
OBt,HOOBt)とともに保護アミノ酸を直接樹脂
に添加するかまたは、対称酸無水物またはHOBtエス
テルあるいはHOOBtエステルとしてあらかじめ保護
アミノ酸の活性化を行なった後に樹脂に添加することが
できる。
【0014】保護アミノ酸の活性化や樹脂との縮合に用
いられる溶媒としては、タンパク質縮合反応に使用しう
ることが知られている溶媒から適宜選択されうる。例え
ば、N,N−ジメチルホルムアミド,N,N−ジメチル
アセトアミド,N−メチルピロリドンなどの酸アミド
類、塩化メチレン,クロロホルムなどのハロゲン化炭化
水素類、トリフルオロエタノールなどのアルコール類、
ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類、ピリジ
ン,ジオキサン,テトラヒドロフランなどのエーテル
類、アセトニトリル,プロピオニトリルなどのニトリル
類、酢酸メチル,酢酸エチルなどのエステル類あるいは
これらの適宜の混合物などが用いられる。反応温度はタ
ンパク質結合形成反応に使用され得ることが知られてい
る範囲から適宜選択され、通常約−20℃〜50℃の範
囲から適宜選択される。活性化されたアミノ酸誘導体は
通常1.5〜4倍過剰で用いられる。ニンヒドリン反応
を用いたテストの結果、縮合が不十分な場合には保護基
の脱離を行なうことなく縮合反応を繰り返すことにより
十分な縮合を行なうことができる。反応を繰り返しても
十分な縮合が得られないときには、無水酢酸またはアセ
チルイミダゾールを用いて未反応アミノ酸をアセチル化
することによって、後の反応に影響を与えないようにす
ることができる。
【0015】原料のアミノ基の保護基としては、例え
ば、Z、Boc、t−ペンチルオキシカルボニル、イソ
ボルニルオキシカルボニル、4−メトキシベンジルオキ
シカルボニル、Cl−Z、Br−Z、アダマンチルオキ
シカルボニル、トリフルオロアセチル、フタロイル、ホ
ルミル、2−ニトロフェニルスルフェニル、ジフェニル
ホスフィノチオイル、Fmocなどが用いられる。カル
ボキシル基は、例えば、アルキルエステル化(例えば、
メチル、エチル、プロピル、ブチル、t−ブチル、シク
ロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロ
オクチル、2−アダマンチルなどの直鎖状、分枝状もし
くは環状アルキルエステル化)、アラルキルエステル化
(例えば、ベンジルエステル、4−ニトロベンジルエス
テル、4−メトキシベンジルエステル、4−クロロベン
ジルエステル、ベンズヒドリルエステル化)、フェナシ
ルエステル化、ベンジルオキシカルボニルヒドラジド
化、t−ブトキシカルボニルヒドラジド化、トリチルヒ
ドラジド化などによって保護することができる。セリン
の水酸基は、例えば、エステル化またはエーテル化によ
って保護することができる。このエステル化に適する基
としては、例えば、アセチル基などの低級(C1-6)ア
ルカノイル基、ベンゾイル基などのアロイル基、ベンジ
ルオキシカルボニル基、エトキシカルボニル基などの炭
酸から誘導される基などが用いられる。また、エーテル
化に適する基としては、例えば、ベンジル基、テトラヒ
ドロピラニル基、t−ブチル基などである。チロシンの
フェノール性水酸基の保護基としては、例えば、Bz
l、Cl2−Bzl、2−ニトロベンジル、Br−Z、
t−ブチルなどが用いられる。ヒスチジンのイミダゾー
ルの保護基としては、例えば、Tos、4−メトキシ−
2,3,6−トリメチルベンゼンスルホニル、DNP、
ベンジルオキシメチル、Bum、Boc、Trt、Fm
ocなどが用いられる。
【0016】原料のカルボキシル基の活性化されたもの
としては、例えば、対応する酸無水物、アジド、活性エ
ステル〔アルコール(例えば、ペンタクロロフェノー
ル、2,4,5−トリクロロフェノール、2,4−ジニ
トロフェノール、シアノメチルアルコール、パラニトロ
フェノール、HONB、N−ヒドロキシスクシミド、N
−ヒドロキシフタルイミド、HOBt)とのエステル〕
などが用いられる。原料のアミノ基の活性化されたもの
としては、例えば、対応するリン酸アミドが用いられ
る。保護基の除去(脱離)方法としては、例えば、Pd
−黒あるいはPd−炭素などの触媒の存在下での水素気
流中での接触還元や、また、無水フッ化水素、メタンス
ルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオ
ロ酢酸あるいはこれらの混合液などによる酸処理や、ジ
イソプロピルエチルアミン、トリエチルアミン、ピペリ
ジン、ピペラジンなどによる塩基処理、また液体アンモ
ニア中ナトリウムによる還元なども用いられる。上記酸
処理による脱離反応は、一般に約−20℃〜40℃の温
度で行なわれるが、酸処理においては、例えば、アニソ
ール、フェノール、チオアニソール、メタクレゾール、
パラクレゾール、ジメチルスルフィド、1,4−ブタン
ジチオール、1,2−エタンジチオールなどのようなカ
チオン捕捉剤の添加が有効である。また、ヒスチジンの
イミダゾール保護基として用いられる2,4−ジニトロ
フェニル基はチオフェノール処理により除去され、トリ
プトファンのインドール保護基として用いられるホルミ
ル基は上記の1,2−エタンジチオール、1,4−ブタ
ンジチオールなどの存在下の酸処理による脱保護以外
に、希水酸化ナトリウム溶液、希アンモニアなどによる
アルカリ処理によっても除去される。
【0017】原料の反応に関与すべきでない官能基の保
護ならびに保護基、およびその保護基の脱離、反応に関
与する官能基の活性化などは公知の基または公知の手段
から適宜選択しうる。タンパク質または部分ペプチドの
アミド体を得る別の方法としては、例えば、まず、カル
ボキシ末端アミノ酸のα−カルボキシル基をアミド化し
て保護した後、アミノ基側にペプチド(タンパク質)鎖
を所望の鎖長まで延ばした後、該ペプチド鎖のN末端の
α−アミノ基の保護基のみを除いたタンパク質または部
分ペプチドとC末端のカルボキシル基の保護基のみを除
去したタンパク質または部分ペプチドとを製造し、これ
らのタンパク質またはペプチドを上記したような混合溶
媒中で縮合させる。縮合反応の詳細については上記と同
様である。縮合により得られた保護タンパク質またはペ
プチドを精製した後、上記方法によりすべての保護基を
除去し、所望の粗タンパク質またはペプチドを得ること
ができる。この粗タンパク質またはペプチドは既知の各
種精製手段を駆使して精製し、主要画分を凍結乾燥する
ことで所望のタンパク質またはペプチドのアミド体を得
ることができる。タンパク質またはペプチドのエステル
体を得るには、例えば、カルボキシ末端アミノ酸のα−
カルボキシル基を所望のアルコール類と縮合しアミノ酸
エステルとした後、タンパク質またはペプチドのアミド
体と同様にして、所望のタンパク質またはペプチドのエ
ステル体を得ることができる。
【0018】本発明のタンパク質およびその部分ペプチ
ドまたはその塩は、公知のペプチドの合成法に従って、
あるいは本発明で用いられるタンパク質を適当なペプチ
ダーゼで切断することによって製造することができる。
ペプチドの合成法としては、例えば、固相合成法、液相
合成法のいずれによっても良い。すなわち、本発明の部
分ペプチドを構成し得る部分ペプチドもしくはアミノ酸
と残余部分とを縮合させ、生成物が保護基を有する場合
は保護基を脱離することにより目的のペプチドを製造す
ることができる。公知の縮合方法や保護基の脱離として
は、例えば、以下の〜に記載された方法が挙げられ
る。 M. Bodanszky および M.A. Ondetti、ペプチド・シン
セシス (Peptide Synthesis), Interscience Publisher
s, New York (1966年) Schroeder および Luebke、ザ・ペプチド(The Peptid
e), Academic Press, New York (1965年) 泉屋信夫他、ペプチド合成の基礎と実験、 丸善(株)
(1975年) 矢島治明 および榊原俊平、生化学実験講座 1、 タン
パク質の化学IV、 205、(1977年) 矢島治明監修、続医薬品の開発、第14巻、ペプチド合
成、広川書店 また、反応後は通常の精製法、例えば、溶媒抽出・蒸留
・カラムクロマトグラフィー・液体クロマトグラフィー
・再結晶などを組み合わせて本発明の部分ペプチドを精
製単離することができる。上記方法で得られるタンパク
質または部分ペプチドが遊離体である場合は、公知の方
法あるいはそれに準じる方法によって適当な塩に変換す
ることができるし、逆に塩で得られた場合は、公知の方
法あるいはそれに準じる方法によって遊離体または他の
塩に変換することができる。
【0019】本発明のタンパク質をコードするポリヌク
レオチドとしては、上記した本発明のタンパク質をコー
ドする塩基配列(DNAまたはRNA、好ましくはDN
A)を含有するものであればいかなるものであってもよ
い。該ポリヌクレオチドとしては、本発明のタンパク質
をコードするDNA、mRNA等のRNAであり、二本
鎖であっても、一本鎖であってもよい。二本鎖の場合
は、二本鎖DNA、二本鎖RNAまたはDNA:RNA
のハイブリッドでもよい。一本鎖の場合は、センス鎖
(すなわち、コード鎖)であっても、アンチセンス鎖
(すなわち、非コード鎖)であってもよい。本発明のタ
ンパク質をコードするポリヌクレオチドを用いて、例え
ば、公知の実験医学増刊「新PCRとその応用」15
(7)、1997記載の方法またはそれに準じた方法により、
本発明のタンパク質のmRNAを定量することができ
る。本発明のタンパク質をコードするDNAとしては、
前述した本発明のタンパク質をコードする塩基配列を含
有するものであればいかなるものであってもよい。ま
た、ゲノムDNA、ゲノムDNAライブラリー、前記し
た細胞・組織由来のcDNA、前記した細胞・組織由来
のcDNAライブラリー、合成DNAのいずれでもよ
い。ライブラリーに使用するベクターは、バクテリオフ
ァージ、プラスミド、コスミド、ファージミドなどいず
れであってもよい。また、前記した細胞・組織よりtota
lRNAまたはmRNA画分を調製したものを用いて直
接 Reverse Transcriptase Polymerase Chain Reaction
(以下、RT−PCR法と略称する)によって増幅する
こともできる。本発明のタンパク質をコードするDNA
としては、例えば、配列番号:2で表される塩基配列を
含有するDNA、または配列番号:2で表される塩基配
列を含有するDNAとハイストリンジェントな条件下で
ハイブリダイズするDNAを有し、本発明の配列番号:
1で表わされるアミノ酸配列を含有するタンパク質と実
質的に同質の性質を有するタンパク質をコードするDN
Aであれば何れのものでもよい。
【0020】配列番号:2で表される塩基配列を含有す
るDNAとハイストリンジェントな条件下でハイブリダ
イズできるDNAとしては、例えば、配列番号:2で表
される塩基配列と約97%以上、好ましくは約98%以
上、さらに好ましくは約99%以上の相同性を有する塩
基配列を含有するDNAなどが用いられる。ハイブリダ
イゼーションは、公知の方法あるいはそれに準じる方
法、例えば、モレキュラー・クローニング(Molecular
Cloning)2nd(J. Sambrook et al., Cold Spring H
arbor Lab. Press, 1989)に記載の方法などに従って行
なうことができる。また、市販のライブラリーを使用す
る場合、添付の使用説明書に記載の方法に従って行なう
ことができる。より好ましくは、ハイストリンジェント
な条件に従って行なうことができる。ハイストリンジェ
ントな条件とは、例えば、ナトリウム濃度が約19〜4
0mM、好ましくは約19〜20mMで、温度が約50
〜70℃、好ましくは約60〜65℃の条件を示す。特
に、ナトリウム濃度が約19mMで温度が約65℃の場
合が最も好ましい。より具体的には、配列番号:1で表
されるアミノ酸配列を含有するタンパク質をコードする
DNAとして、配列番号:2で表される塩基配列を含有
するDNAなどが用いられる。本発明のタンパク質をコ
ードするDNAの塩基配列の一部、または該DNAと相
補的な塩基配列の一部を含有してなるポリヌクレオチド
とは、下記の本発明の部分ペプチドをコードするDNA
を包含するだけではなく、RNAをも包含する意味で用
いられる。本発明に従えば、本発明のタンパク質遺伝子
の複製または発現を阻害することのできるアンチセンス
・ポリヌクレオチド(核酸)を、クローン化した、ある
いは決定されたタンパク質をコードするDNAの塩基配
列情報に基づき設計し、合成しうる。かかるポリヌクレ
オチド(核酸)は、本発明のタンパク質遺伝子のRNA
とハイブリダイズすることができ、該RNAの合成また
は機能を阻害することができるか、あるいは本発明のタ
ンパク質関連RNAとの相互作用を介して本発明のタン
パク質遺伝子の発現を調節・制御することができる。本
発明のタンパク質関連RNAの選択された配列に相補的
なポリヌクレオチド、および本発明のタンパク質関連R
NAと特異的にハイブリダイズすることができるポリヌ
クレオチドは、生体内および生体外で本発明のタンパク
質遺伝子の発現を調節・制御するのに有用であり、また
病気などの治療または診断に有用である。用語「対応す
る」とは、遺伝子を含めたヌクレオチド、塩基配列また
は核酸の特定の配列に相同性を有するあるいは相補的で
あることを意味する。ヌクレオチド、塩基配列または核
酸とペプチド(蛋白質)との間で「対応する」とは、ヌ
クレオチド(核酸)の配列またはその相補体から誘導さ
れる指令にあるペプチド(蛋白質)のアミノ酸を通常指
している。タンパク質遺伝子の5’端ヘアピンループ、
5’端6−ベースペア・リピート、5’端非翻訳領域、
ポリペプチド翻訳開始コドン、蛋白質コード領域、OR
F翻訳終止コドン、3’端非翻訳領域、3’端パリンド
ローム領域、および3’端ヘアピンループは好ましい対
象領域として選択しうるが、タンパク質遺伝子内の如何
なる領域も対象として選択しうる。目的核酸と、対象領
域の少なくとも一部に相補的なポリヌクレオチドとの関
係は、対象物とハイブリダイズすることができるポリヌ
クレオチドとの関係は、「アンチセンス」であるという
ことができる。アンチセンス・ポリヌクレオチドは、2
−デオキシ−D−リボースを含有しているポリヌクレオ
チド、D−リボースを含有しているポリヌクレオチド、
プリンまたはピリミジン塩基のN−グリコシドであるそ
の他のタイプのポリヌクレオチド、あるいは非ヌクレオ
チド骨格を有するその他のポリマー(例えば、市販の蛋
白質核酸および合成配列特異的な核酸ポリマー)または
特殊な結合を含有するその他のポリマー(但し、該ポリ
マーはDNAやRNA中に見出されるような塩基のペア
リングや塩基の付着を許容する配置をもつヌクレオチド
を含有する)などが挙げられる。それらは、2本鎖DN
A、1本鎖DNA、2本鎖RNA、1本鎖RNA、さら
にDNA:RNAハイブリッドであることができ、さら
に非修飾ポリヌクレオチド(または非修飾オリゴヌクレ
オチド)、さらには公知の修飾の付加されたもの、例え
ば当該分野で知られた標識のあるもの、キャップの付い
たもの、メチル化されたもの、1個以上の天然のヌクレ
オチドを類縁物で置換したもの、分子内ヌクレオチド修
飾のされたもの、例えば非荷電結合(例えば、メチルホ
スホネート、ホスホトリエステル、ホスホルアミデー
ト、カルバメートなど)を持つもの、電荷を有する結合
または硫黄含有結合(例えば、ホスホロチオエート、ホ
スホロジチオエートなど)を持つもの、例えば蛋白質
(ヌクレアーゼ、ヌクレアーゼ・インヒビター、トキシ
ン、抗体、シグナルペプチド、ポリ−L−リジンなど)
や糖(例えば、モノサッカライドなど)などの側鎖基を
有しているもの、インターカレント化合物(例えば、ア
クリジン、ソラレンなど)を持つもの、キレート化合物
(例えば、金属、放射活性をもつ金属、ホウ素、酸化性
の金属など)を含有するもの、アルキル化剤を含有する
もの、修飾された結合を持つもの(例えば、αアノマー
型の核酸など)であってもよい。ここで「ヌクレオシ
ド」、「ヌクレオチド」および「核酸」とは、プリンお
よびピリミジン塩基を含有するのみでなく、修飾された
その他の複素環型塩基をもつようなものを含んでいて良
い。こうした修飾物は、メチル化されたプリンおよびピ
リミジン、アシル化されたプリンおよびピリミジン、あ
るいはその他の複素環を含むものであってよい。修飾さ
れたヌクレオチドおよび修飾されたヌクレオチドはまた
糖部分が修飾されていてよく、例えば、1個以上の水酸
基がハロゲンとか、脂肪族基などで置換されていたり、
あるいはエーテル、アミンなどの官能基に変換されてい
てよい。本発明のアンチセンス・ポリヌクレオチド(核
酸)は、RNA、DNA、あるいは修飾された核酸(R
NA、DNA)である。修飾された核酸の具体例として
は核酸の硫黄誘導体やチオホスフェート誘導体、そして
ポリヌクレオシドアミドやオリゴヌクレオシドアミドの
分解に抵抗性のものが挙げられるが、それに限定される
ものではない。本発明のアンチセンス核酸は次のような
方針で好ましく設計されうる。すなわち、細胞内でのア
ンチセンス核酸をより安定なものにする、アンチセンス
核酸の細胞透過性をより高める、目標とするセンス鎖に
対する親和性をより大きなものにする、そしてもし毒性
があるならアンチセンス核酸の毒性をより小さなものに
する。こうして修飾は当該分野で数多く知られており、
例えば J. Kawakami et al.,Pharm Tech Japan, Vol.
8, pp.247, 1992; Vol. 8, pp.395, 1992; S. T. Crook
e et al. ed., Antisense Research and Applications,
CRC Press, 1993 などに開示がある。本発明のアンチ
センス核酸は、変化せしめられたり、修飾された糖、塩
基、結合を含有していて良く、リポゾーム、ミクロスフ
ェアのような特殊な形態で供与されたり、遺伝子治療に
より適用されたり、付加された形態で与えられることが
できうる。こうして付加形態で用いられるものとして
は、リン酸基骨格の電荷を中和するように働くポリリジ
ンのようなポリカチオン体、細胞膜との相互作用を高め
たり、核酸の取込みを増大せしめるような脂質(例え
ば、ホスホリピド、コレステロールなど)といった粗水
性のものが挙げられる。付加するに好ましい脂質として
は、コレステロールやその誘導体(例えば、コレステリ
ルクロロホルメート、コール酸など)が挙げられる。こ
うしたものは、核酸の3’端あるいは5’端に付着させ
ることができ、塩基、糖、分子内ヌクレオシド結合を介
して付着させることができうる。その他の基としては、
核酸の3’端あるいは5’端に特異的に配置されたキャ
ップ用の基で、エキソヌクレアーゼ、RNaseなどの
ヌクレアーゼによる分解を阻止するためのものが挙げら
れる。こうしたキャップ用の基としては、ポリエチレン
グリコール、テトラエチレングリコールなどのグリコー
ルをはじめとした当該分野で知られた水酸基の保護基が
挙げられるが、それに限定されるものではない。アンチ
センス核酸の阻害活性は、本発明の形質転換体、本発明
の生体内や生体外の遺伝子発現系、あるいは本発明のタ
ンパク質の生体内や生体外の翻訳系を用いて調べること
ができる。該核酸公知の各種の方法で細胞に適用でき
る。
【0021】本発明の部分ペプチドをコードするDNA
としては、前記した本発明の部分ペプチドをコードする
塩基配列を含有するDNAであればいかなるものであっ
てもよい。また、ゲノムDNA、ゲノムDNAライブラ
リー、前記した細胞・組織由来のcDNA、前記した細
胞・組織由来のcDNAライブラリー、合成DNAのい
ずれでもよい。本発明の部分ペプチドをコードするDN
Aとしては、例えば、配列番号:2で表される塩基配列
を含有するDNAの部分塩基配列を有するDNA、また
は配列番号:2で表される塩基配列を含有するDNAと
ハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズするD
NAを有し、本発明の配列番号:1で表わされるアミノ
酸配列を含有するタンパク質と実質的に同質の活性を有
するタンパク質をコードするDNAの部分塩基配列を有
するDNAなどが用いられる。配列番号:2で表される
塩基配列を含有するDNAとハイストリンジェントな条
件下でハイブリダイズできるDNAとしては、例えば配
列番号:2で表される塩基配列と約97%以上、好まし
くは約98%、より好ましくは約99%以上の相同性を
有する塩基配列を含有するDNAなどが用いられる。ハ
イブリダイゼーションの方法およびハイストリンジェン
トな条件は前記と同様のものが用いられる。
【0022】本発明のタンパク質または本発明の部分ペ
プチド(以下、これらをコードするDNAのクローニン
グおよび発現の説明においては、これらを単に本発明の
タンパク質と略記する場合がある)を完全にコードする
DNAのクローニングの手段としては、本発明のタンパ
ク質をコードする塩基配列の一部分を有する合成DNA
プライマーを用いてPCR法によって増幅するか、また
は適当なベクターに組み込んだDNAを本発明のタンパ
ク質の一部または全領域をコードするDNA断片もしく
は合成DNAを用いて標識したものとのハイブリダイゼ
ーションによって選別することができる。ハイブリダイ
ゼーションの方法は、例えば、モレキュラー・クローニ
ング(Molecular Cloning)2nd(J. Sambrook et a
l., ColdSpring Harbor Lab. Press, 1989)に記載の方
法などに従って行なうことができる。また、市販のライ
ブラリーを使用する場合、添付の使用説明書に記載の方
法に従って行なうことができる。DNAの塩基配列の変
換は、PCRや公知のキット、例えば、MutanTM
super Express Km(宝酒造(株))、M
utanTM−K(宝酒造(株))などを用いて、ODA
−LA PCR法、Gapped duplex法、Ku
nkel法などの公知の方法あるいはそれらに準じる方
法に従って行なうことができる。クローン化されたタン
パク質をコードするDNAは目的によりそのまま、また
は所望により制限酵素で消化したり、リンカーを付加し
て使用することができる。該DNAはその5’末端側に
翻訳開始コドンとしてのATGを有し、また3’末端側
には翻訳終止コドンとしてのTAA、TGAまたはTA
Gを有していてもよい。これらの翻訳開始コドンや翻訳
終止コドンは、適当な合成DNAアダプターを用いて付
加することもできる。本発明のタンパク質の発現ベクタ
ーは、例えば、(イ)本発明のタンパク質をコードする
DNAから目的とするDNA断片を切り出し、(ロ)該
DNA断片を適当な発現ベクター中のプロモーターの下
流に連結することにより製造することができる。
【0023】ベクターとしては、大腸菌由来のプラスミ
ド(例、pBR322,pBR325,pUC12,p
UC13)、枯草菌由来のプラスミド(例、pUB11
0,pTP5,pC194)、酵母由来プラスミド
(例、pSH19,pSH15)、λファージなどのバ
クテリオファージ、レトロウイルス,ワクシニアウイル
ス,バキュロウイルスなどの動物ウイルスなどの他、p
A1−11、pXT1、pRc/CMV、pRc/RS
V、pcDNAI/Neoなどが用いられる。本発明で
用いられるプロモーターとしては、遺伝子の発現に用い
る宿主に対応して適切なプロモーターであればいかなる
ものでもよい。例えば、動物細胞を宿主として用いる場
合は、SRαプロモーター、SV40プロモーター、L
TRプロモーター、CMVプロモーター、HSV-TK
プロモーターなどが挙げられる。これらのうち、CMV
(サイトメガロウイルス)プロモーター、SRαプロモ
ーターなどを用いるのが好ましい。宿主がエシェリヒア
属菌である場合は、trpプロモーター、lacプロモ
ーター、recAプロモーター、λPLプロモーター、
lppプロモーター、T7プロモーターなどが、宿主が
バチルス属菌である場合は、SPO1プロモーター、S
PO2プロモーター、penPプロモーターなど、宿主
が酵母である場合は、PHO5プロモーター、PGKプ
ロモーター、GAPプロモーター、ADHプロモーター
などが好ましい。宿主が昆虫細胞である場合は、ポリヘ
ドリンプロモーター、P10プロモーターなどが好まし
い。
【0024】発現ベクターには、以上の他に、所望によ
りエンハンサー、スプライシングシグナル、ポリA付加
シグナル、選択マーカー、SV40複製オリジン(以
下、SV40oriと略称する場合がある)などを含有
しているものを用いることができる。選択マーカーとし
ては、例えば、ジヒドロ葉酸還元酵素(以下、dhfr
と略称する場合がある)遺伝子〔メソトレキセート(M
TX)耐性〕、アンピシリン耐性遺伝子(以下、Amp
rと略称する場合がある)、ネオマイシン耐性遺伝子
(以下、Neorと略称する場合がある、G418耐
性)等が挙げられる。特に、dhfr遺伝子欠損チャイ
ニーズハムスター細胞を用いてdhfr遺伝子を選択マ
ーカーとして使用する場合、目的遺伝子をチミジンを含
まない培地によっても選択できる。また、必要に応じ
て、宿主に合ったシグナル配列を、本発明のタンパク質
のN端末側に付加する。宿主がエシェリヒア属菌である
場合は、PhoA・シグナル配列、OmpA・シグナル
配列などが、宿主がバチルス属菌である場合は、α−ア
ミラーゼ・シグナル配列、サブチリシン・シグナル配列
などが、宿主が酵母である場合は、MFα・シグナル配
列、SUC2・シグナル配列など、宿主が動物細胞であ
る場合には、インシュリン・シグナル配列、α−インタ
ーフェロン・シグナル配列、抗体分子・シグナル配列な
どがそれぞれ利用できる。このようにして構築された本
発明のタンパク質をコードするDNAを含有するベクタ
ーを用いて、形質転換体を製造することができる。
【0025】宿主としては、例えば、エシェリヒア属
菌、バチルス属菌、酵母、昆虫細胞、昆虫、動物細胞な
どが用いられる。エシェリヒア属菌の具体例としては、
例えば、エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)K1
2・DH1〔プロシージングズ・オブ・ザ・ナショナル
・アカデミー・オブ・サイエンシイズ・オブ・ザ・ユー
エスエー(Proc. Natl. Acad. Sci. USA),60
巻,160(1968)〕,JM103〔ヌクイレック・
アシッズ・リサーチ,(Nucleic Acids Research),9
巻,309(1981)〕,JA221〔ジャーナル・オ
ブ・モレキュラー・バイオロジー(Journal of Molecul
ar Biology),120巻,517(1978)〕,HB1
01〔ジャーナル・オブ・モレキュラー・バイオロジ
ー,41巻,459(1969)〕,C600〔ジェネテ
ィックス(Genetics),39巻,440(1954)〕な
どが用いられる。バチルス属菌としては、例えば、バチ
ルス・サブチルス(Bacillus subtilis)MI114
〔ジーン,24巻,255(1983)〕,207−21
〔ジャーナル・オブ・バイオケミストリー(Journal of
Biochemistry),95巻,87(1984)〕などが用
いられる。酵母としては、例えば、サッカロマイセス
セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)AH22,A
H22R−,NA87−11A,DKD−5D,20B
−12、シゾサッカロマイセス ポンベ(Schizosaccha
romyces pombe)NCYC1913,NCYC203
6、ピキア パストリス(Pichia pastoris)KM71
などが用いられる。
【0026】昆虫細胞としては、例えば、ウイルスがA
cNPVの場合は、夜盗蛾の幼虫由来株化細胞(Spodop
tera frugiperda cell;Sf細胞)、Trichoplusia ni
の中腸由来のMG1細胞、Trichoplusia niの卵由来のH
igh FiveTM細胞、Mamestra brassicae由来の細胞または
Estigmena acrea由来の細胞などが用いられる。ウイル
スがBmNPVの場合は、蚕由来株化細胞(Bombyx mor
i N 細胞;BmN細胞)などが用いられる。該Sf細胞
としては、例えば、Sf9細胞(ATCC CRL1711)、Sf
21細胞(以上、Vaughn, J.L.ら、イン・ヴィボ(In V
ivo),13, 213-217,(1977))などが用いられる。昆虫と
しては、例えば、カイコの幼虫などが用いられる〔前田
ら、ネイチャー(Nature),315巻,592(198
5)〕。動物細胞としては、例えば、サル細胞COS−
7,Vero,チャイニーズハムスター細胞CHO(以
下、CHO細胞と略記),dhfr遺伝子欠損チャイニ
ーズハムスター細胞CHO(以下、CHO(dhf
-)細胞と略記),マウスL細胞,マウスAtT−2
0,マウスミエローマ細胞,ラットGH3,ヒトFL細
胞、H9c2細胞などが用いられる。エシェリヒア属菌
を形質転換するには、例えば、プロシージングズ・オブ
・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンジイズ
・オブ・ザ・ユーエスエー(Proc. Natl. Acad. Sci. U
SA),69巻,2110(1972)、ジーン(Gen
e),17巻,107(1982)などに記載の方法に従
って行なうことができる。
【0027】バチルス属菌を形質転換するには、例え
ば、モレキュラー・アンド・ジェネラル・ジェネティッ
クス(Molecular & General Genetics),168巻,
111(1979)などに記載の方法に従って行なうこと
ができる。酵母を形質転換するには、例えば、メソッズ
・イン・エンザイモロジー(Methods in Enzymolog
y),194巻,182−187(1991)、プロシ
ージングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ
・サイエンシイズ・オブ・ザ・ユーエスエー(Proc. Na
tl. Acad. Sci. USA),75巻,1929(1978)
などに記載の方法に従って行なうことができる。昆虫細
胞または昆虫を形質転換するには、例えば、バイオ/テ
クノロジー(Bio/Technology),6, 47-55(1988)などに
記載の方法に従って行なうことができる。動物細胞を形
質転換するには、例えば、細胞工学別冊8 新細胞工学
実験プロトコール.263−267(1995)(秀潤
社発行)、ヴィロロジー(Virology),52巻,456
(1973)に記載の方法に従って行なうことができる。
このようにして、タンパク質をコードするDNAを含有
する発現ベクターで形質転換された形質転換体を得るこ
とができる。宿主がエシェリヒア属菌、バチルス属菌で
ある形質転換体を培養する際、培養に使用される培地と
しては液体培地が適当であり、その中には該形質転換体
の生育に必要な炭素源、窒素源、無機物その他が含有せ
しめられる。炭素源としては、例えば、グルコース、デ
キストリン、可溶性澱粉、ショ糖など、窒素源として
は、例えば、アンモニウム塩類、硝酸塩類、コーンスチ
ープ・リカー、ペプトン、カゼイン、肉エキス、大豆
粕、バレイショ抽出液などの無機または有機物質、無機
物としては、例えば、塩化カルシウム、リン酸二水素ナ
トリウム、塩化マグネシウムなどが挙げられる。また、
酵母エキス、ビタミン類、生長促進因子などを添加して
もよい。培地のpHは約5〜8が望ましい。
【0028】エシェリヒア属菌を培養する際の培地とし
ては、例えば、グルコース、カザミノ酸を含むM9培地
〔ミラー(Miller),ジャーナル・オブ・エクスペリメ
ンツ・イン・モレキュラー・ジェネティックス(Journa
l of Experiments in Molecular Genetics),431−
433,Cold Spring Harbor Laboratory, New York1
972〕が好ましい。ここに必要によりプロモーターを
効率よく働かせるために、例えば、3β−インドリルア
クリル酸のような薬剤を加えることができる。宿主がエ
シェリヒア属菌の場合、培養は通常約15〜43℃で約
3〜24時間行ない、必要により、通気や撹拌を加える
こともできる。宿主がバチルス属菌の場合、培養は通常
約30〜40℃で約6〜24時間行ない、必要により通
気や撹拌を加えることもできる。宿主が酵母である形質
転換体を培養する際、培地としては、例えば、バークホ
ールダー(Burkholder)最小培地〔Bostian, K. L.
ら、プロシージングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデ
ミー・オブ・サイエンシイズ・オブ・ザ・ユーエスエー
(Proc. Natl. Acad. Sci. USA),77巻,4505
(1980)〕や0.5%カザミノ酸を含有するSD培地
〔Bitter, G. A. ら、プロシージングズ・オブ・ザ・ナ
ショナル・アカデミー・オブ・サイエンシイズ・オブ・
ザ・ユーエスエー(Proc. Natl. Acad. Sci. USA),8
1巻,5330(1984)〕が挙げられる。培地のp
Hは約5〜8に調整するのが好ましい。培養は通常約2
0℃〜35℃で約24〜72時間行ない、必要に応じて
通気や撹拌を加える。宿主が昆虫細胞または昆虫である
形質転換体を培養する際、培地としては、Grace’s Ins
ect Medium(Grace, T.C.C.,ネイチャー(Nature),19
5,788(1962))に非動化した10%ウシ血清等の添加物
を適宜加えたものなどが用いられる。培地のpHは約
6.2〜6.4に調整するのが好ましい。培養は通常約
27℃で約3〜5日間行ない、必要に応じて通気や撹拌
を加える。宿主が動物細胞である形質転換体を培養する
際、培地としては、例えば、約5〜20%の胎児牛血清
を含むMEM培地〔サイエンス(Science),122
巻,501(1952)〕,DMEM培地〔ヴィロロジー
(Virology),8巻,396(1959)〕,RPMI
1640培地〔ジャーナル・オブ・ザ・アメリカン・メ
ディカル・アソシエーション(The Journal of the Ame
rican Medical Association)199巻,519(196
7)〕,199培地〔プロシージング・オブ・ザ・ソサ
イエティ・フォー・ザ・バイオロジカル・メディスン
(Proceeding ofthe Society for the Biological Medi
cine),73巻,1(1950)〕などが用いられる。p
Hは約6〜8であるのが好ましい。培養は通常約30℃
〜40℃で約15〜60時間行ない、必要に応じて通気
や撹拌を加える。以上のようにして、形質転換体の細胞
質内または細胞外に本発明のタンパク質を生成せしめる
ことができる。
【0029】上記培養物から本発明のタンパク質を分離
精製するには、例えば、下記の方法により行なうことが
できる。本発明のタンパク質を培養菌体あるいは細胞か
ら抽出するに際しては、培養後、公知の方法で菌体ある
いは細胞を集め、これを適当な緩衝液に懸濁し、超音
波、リゾチームおよび/または凍結融解などによって菌
体あるいは細胞を破壊したのち、遠心分離やろ過により
タンパク質の粗抽出液を得る方法などが適宜用いられ
る。緩衝液の中に尿素や塩酸グアニジンなどの蛋白質変
性剤や、トリトンX−100TMなどの界面活性剤が含ま
れていてもよい。培養液中にタンパク質が分泌される場
合には、培養終了後、公知の方法で菌体あるいは細胞と
上清とを分離し、上清を集める。このようにして得られ
た培養上清、あるいは抽出液中に含まれるタンパク質の
精製は、公知の分離・精製法を適切に組み合わせて行な
うことができる。これらの公知の分離、精製法として
は、塩析や溶媒沈澱法などの溶解度を利用する方法、透
析法、限外ろ過法、ゲルろ過法、およびSDS−ポリア
クリルアミドゲル電気泳動法などの主として分子量の差
を利用する方法、イオン交換クロマトグラフィーなどの
荷電の差を利用する方法、アフィニティークロマトグラ
フィーなどの特異的親和性を利用する方法、逆相高速液
体クロマトグラフィーなどの疎水性の差を利用する方
法、等電点電気泳動法などの等電点の差を利用する方法
などが用いられる。
【0030】かくして得られるタンパク質が遊離体で得
られた場合には、公知の方法あるいはそれに準じる方法
によって塩に変換することができ、逆に塩で得られた場
合には公知の方法あるいはそれに準じる方法により、遊
離体または他の塩に変換することができる。なお、組換
え体が産生するタンパク質を、精製前または精製後に適
当な蛋白修飾酵素を作用させることにより、任意に修飾
を加えたり、ポリペプチドを部分的に除去することもで
きる。蛋白修飾酵素としては、例えば、トリプシン、キ
モトリプシン、アルギニルエンドペプチダーゼ、プロテ
インキナーゼ、グリコシダーゼなどが用いられる。かく
して生成する本発明のタンパク質の存在は、特異抗体を
用いたエンザイムイムノアッセイやウエスタンブロッテ
ィングなどにより測定することができる。
【0031】本発明のタンパク質もしくは部分ペプチド
またはその塩に対する抗体は、本発明のタンパク質もし
くは部分ペプチドまたはその塩を認識し得る抗体であれ
ば、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体の何れで
あってもよい。本発明のタンパク質もしくは部分ペプチ
ドまたはその塩(以下、抗体の説明においては、これら
を単に本発明のタンパク質と略記する場合がある)に対
する抗体は、本発明のタンパク質を抗原として用い、公
知の抗体または抗血清の製造法に従って製造することが
できる。 〔モノクローナル抗体の作製〕 (a)モノクローナル抗体産生細胞の作製 本発明のタンパク質は、温血動物に対して投与により抗
体産生が可能な部位にそれ自体あるいは担体、希釈剤と
ともに投与される。投与に際して抗体産生能を高めるた
め、完全フロイントアジュバントや不完全フロイントア
ジュバントを投与してもよい。投与は通常2〜6週毎に
1回ずつ、計2〜10回程度行われる。用いられる温血
動物としては、例えば、サル、ウサギ、イヌ、モルモッ
ト、マウス、ラット、ヒツジ、ヤギ、ニワトリが挙げら
れるが、マウスおよびラットが好ましく用いられる。モ
ノクローナル抗体産生細胞の作製に際しては、抗原で免
疫された温血動物、例えばマウスから抗体価の認められ
た個体を選択し最終免疫の2〜5日後に脾臓またはリン
パ節を採取し、それらに含まれる抗体産生細胞を同種ま
たは異種動物の骨髄腫細胞と融合させることにより、モ
ノクローナル抗体産生ハイブリドーマを調製することが
できる。抗血清中の抗体価の測定は、例えば、後記の標
識化タンパク質と抗血清とを反応させたのち、抗体に結
合した標識剤の活性を測定することにより行なうことが
できる。融合操作は既知の方法、例えば、ケーラーとミ
ルスタインの方法〔ネイチャー(Nature)、256、495 (1
975)〕に従い実施することができる。融合促進剤として
は、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)やセン
ダイウィルスなどが挙げられるが、好ましくはPEGが
用いられる。
【0032】骨髄腫細胞としては、例えば、NS−1、
P3U1、SP2/0、AP−1などの温血動物の骨髄
腫細胞が挙げられるが、P3U1が好ましく用いられ
る。用いられる抗体産生細胞(脾臓細胞)数と骨髄腫細
胞数との好ましい比率は1:1〜20:1程度であり、
PEG(好ましくはPEG1000〜PEG6000)
が10〜80%程度の濃度で添加され、20〜40℃、
好ましくは30〜37℃で1〜10分間インキュベート
することにより効率よく細胞融合を実施できる。モノク
ローナル抗体産生ハイブリドーマのスクリーニングには
種々の方法が使用できるが、例えば、タンパク質抗原を
直接あるいは担体とともに吸着させた固相(例、マイク
ロプレート)にハイブリドーマ培養上清を添加し、次に
放射性物質や酵素などで標識した抗免疫グロブリン抗体
(細胞融合に用いられる細胞がマウスの場合、抗マウス
免疫グロブリン抗体が用いられる)またはプロテインA
を加え、固相に結合したモノクローナル抗体を検出する
方法、抗免疫グロブリン抗体またはプロテインAを吸着
させた固相にハイブリドーマ培養上清を添加し、放射性
物質や酵素などで標識したタンパク質を加え、固相に結
合したモノクローナル抗体を検出する方法などが挙げら
れる。モノクローナル抗体の選別は、公知あるいはそれ
に準じる方法に従って行なうことができる。通常HAT
(ヒポキサンチン、アミノプテリン、チミジン)を添加
した動物細胞用培地で行なうことができる。選別および
育種用培地としては、ハイブリドーマが生育できるもの
ならばどのような培地を用いても良い。例えば、1〜2
0%、好ましくは10〜20%の牛胎児血清を含むRP
MI 1640培地、1〜10%の牛胎児血清を含むG
IT培地(和光純薬工業(株))あるいはハイブリドー
マ培養用無血清培地(SFM−101、日水製薬
(株))などを用いることができる。培養温度は、通常
20〜40℃、好ましくは約37℃である。培養時間
は、通常5日〜3週間、好ましくは1週間〜2週間であ
る。培養は、通常5%炭酸ガス下で行なうことができ
る。ハイブリドーマ培養上清の抗体価は、上記の抗血清
中の抗体価の測定と同様にして測定できる。
【0033】(b)モノクローナル抗体の精製 モノクローナル抗体の分離精製は、公知の方法、例え
ば、免疫グロブリンの分離精製法〔例、塩析法、アルコ
ール沈殿法、等電点沈殿法、電気泳動法、イオン交換体
(例、DEAE)による吸脱着法、超遠心法、ゲルろ過
法、抗原結合固相あるいはプロテインAあるいはプロテ
インGなどの活性吸着剤により抗体のみを採取し、結合
を解離させて抗体を得る特異的精製法〕に従って行なう
ことができる。
【0034】〔ポリクローナル抗体の作製〕本発明のポ
リクローナル抗体は、公知あるいはそれに準じる方法に
従って製造することができる。例えば、免疫抗原(本発
明のタンパク質等の抗原)とキャリアータンパク質との
複合体をつくり、上記のモノクローナル抗体の製造法と
同様に温血動物に免疫を行ない、該免疫動物から本発明
のタンパク質に対する抗体含有物を採取して、抗体の分
離精製を行なうことにより製造することができる。温血
動物を免疫するために用いられる免疫抗原とキャリアー
タンパク質との複合体に関し、キャリアータンパク質の
種類およびキャリアーとハプテンとの混合比は、キャリ
アーに架橋させて免疫したハプテンに対して抗体が効率
良くできれば、どの様なものをどの様な比率で架橋させ
てもよいが、例えば、ウシ血清アルブミンやウシサイロ
グロブリン、ヘモシアニン等を重量比でハプテン1に対
し、約0.1〜20、好ましくは約1〜5の割合でカプ
ルさせる方法が用いられる。また、ハプテンとキャリア
ーのカプリングには、種々の縮合剤を用いることができ
るが、グルタルアルデヒドやカルボジイミド、マレイミ
ド活性エステル、チオール基、ジチオビリジル基を含有
する活性エステル試薬等が用いられる。縮合生成物は、
温血動物に対して、抗体産生が可能な部位にそれ自体あ
るいは担体、希釈剤とともに投与される。投与に際して
抗体産生能を高めるため、完全フロイントアジュバント
や不完全フロイントアジュバントを投与してもよい。投
与は、通常約2〜6週毎に1回ずつ、計約3〜10回程
度行なわれる。ポリクローナル抗体は、上記の方法で免
疫された温血動物の血液、腹水など、好ましくは血液か
ら採取することができる。抗血清中のポリクローナル抗
体価の測定は、上記の抗血清中の抗体価の測定と同様に
して測定できる。ポリクローナル抗体の分離精製は、上
記のモノクローナル抗体の分離精製と同様の免疫グロブ
リンの分離精製法に従って行なうことができる。
【0035】本発明のタンパク質または部分ペプチドを
コードするDNA(以下、アンチセンスヌクレオチドの
説明においては、これらのDNAを本発明のDNAと略
記する)に相補的な、または実質的に相補的な塩基配列
またはその一部を有するアンチセンスヌクレオチドとし
ては、本発明のDNAに相補的な、または実質的に相補
的な塩基配列またはその一部を有し、該DNAの発現を
抑制し得る作用を有するものであれば、いずれのアンチ
センスヌクレオチドであってもよいが、アンチセンスD
NAが好ましい。本発明のDNAに実質的に相補的な塩
基配列とは、例えば、本発明のDNAに相補的な塩基配
列(すなわち、本発明のDNAの相補鎖)の全塩基配列
または部分塩基配列と約97%以上、好ましくは約98
%以上、さらに好ましくは約99%以上の相同性を有す
る塩基配列などが挙げられる。特に、本発明のDNAの
相補鎖の全塩基配列うち、本発明のタンパク質のN末端
部位をコードする部分の塩基配列(例えば、開始コドン
付近の塩基配列など)の相補鎖と約97%以上、好まし
くは約98%以上、さらに好ましくは約99%以上の相
同性を有するアンチセンスヌクレオチドが好適である。
アンチセンスヌクレオチドは通常、10〜40個程度、
好ましくは15〜30個程度の塩基から構成される。ヌ
クレアーゼなどの加水分解酵素による分解を防ぐため
に、アンチセンスヌクレオチドを構成する各ヌクレオチ
ドのリン酸残基(ホスフェート)は、例えば、ホスホロ
チオエート、メチルホスホネート、ホスホロジチオネー
トなどの化学修飾リン酸残基に置換されていてもよい。
これらのアンチセンスヌクレオチドは、公知のDNA合
成装置などを用いて製造することができる。
【0036】以下に、本発明のタンパク質もしくは部分
ペプチドまたはその塩(以下、本発明のタンパク質と略
記する場合がある)、本発明のタンパク質または部分ペ
プチドをコードするDNA(以下、本発明のDNAと略
記する場合がある)、本発明のタンパク質もしくは部分
ペプチドまたはその塩に対する抗体(以下、本発明の抗
体と略記する場合がある)、および本発明のDNAのア
ンチセンスヌクレオチド(以下、本発明のアンチセンス
ヌクレオチドと略記する場合がある)の用途を説明す
る。
【0037】本発明のタンパク質は心筋梗塞後の心不全
移行期の心臓に発現が上昇するので、疾患マーカーとし
て利用することができる。すなわち、心機能の低下を特
徴とする疾病(例、心筋梗塞後の心不全;狭心症;心筋
症;狭心症、心筋症などの疾患に由来する心不全などの
心疾患など)の早期診断、症状の重症度の判定、疾患進
行の予測のためのマーカーとして有用である。本発明の
タンパク質をコードする遺伝子のアンチセンスヌクレオ
チド、本発明のタンパク質の活性を調節する化合物もし
くはその塩または本発明のタンパク質に対する抗体を含
有する医薬は、例えば、心機能の低下を特徴とする疾病
(例、心筋梗塞後の心不全;狭心症;心筋症;狭心症、
心筋症などの疾患に由来する心不全などの心疾患など)
などの治療・予防剤として有用である。
【0038】〔1〕疾病に対する医薬候補化合物のスク
リーニング 本発明のタンパク質は心筋梗塞後の心機能低下とともに
発現が増加するので、本発明のタンパク質の活性を調節
する化合物またはその塩は、例えば、心機能の低下を特
徴とする疾病(例、心筋梗塞後の心不全;狭心症;心筋
症;狭心症、心筋症などの疾患に由来する心不全などの
心疾患など)などの治療・予防薬として使用できる。し
たがって、本発明のタンパク質は、本発明のタンパク質
の活性を調節する化合物またはその塩のスクリーニング
のための試薬として有用である。すなわち、本発明は、
(1)本発明のタンパク質を用いることを特徴とする本
発明のタンパク質の活性を調節する化合物またはその塩
のスクリーニング方法等を提供する。具体的には、例え
ば(2)(i)本発明のタンパク質を産生する能力を有す
る細胞を、好ましくは低酸素条件下で伸展刺激を加えた
場合と(ii)本発明のタンパク質を産生する能力を有す
る細胞と試験化合物の混合物とを、好ましくは低酸素条
件下で伸展刺激を加えた場合との比較を行うことを特徴
とする本発明のタンパク質の活性を調節する化合物また
はその塩のスクリーニング方法を提供する。より具体的
には、上記スクリーニング方法においては、例えば、
(i)と(ii)の場合における、本発明のタンパク質の
遺伝子発現量を測定して、比較することを特徴とするも
のである。本発明のタンパク質の活性としては、例え
ば、代償破綻に伴う心機能低下促進活性、過剰な代償機
序の抑制作用などが挙げられる。ここで、上記低酸素条
件下とは例えば20%O2以下の酸素濃度で例えば2%
(ネイチャー、第394巻、485頁−490頁、19
98年)の条件を意味する。また、伸展刺激とは心筋細
胞を伸展可能なシリコン膜上に培養し、シリコン膜を引
っ張ることで機械的負荷を加える刺激である(J.B.
C.第271巻、33592頁−33597頁、199
6年、サーキュレーション、第89巻、2204頁−2
211頁、1994年、J.B.C.第271巻、32
21頁−3228頁、1996年)。さらには、(3)
(iii)本発明のタンパク質を産生する能力を有する細
胞または本発明のタンパク質をコードするcDNAを導
入した細胞を致死的な条件下で培養を行った場合(具体
例としては、血清除去下あるいは心筋細胞に比較的毒性
の強いアドリアマイシンなどの抗癌剤を加えて培養した
場合)と(iv)本発明のタンパク質を産生する能力を有
する細胞または本発明のタンパク質をコードするcDN
Aを導入した細胞と試験化合物の混合物とを致死的な条
件下で培養を行った場合(具体例としては、血清除去下
あるいは心筋細胞に比較的毒性の強いアドリアマイシン
などの抗癌剤を加えて培養した場合)との比較を行うこ
とを特徴とする本発明のタンパク質の活性を調節する化
合物またはその塩のスクリーニング方法を提供する。上
記スクリーニング方法においては、例えば、(iii)と
(iv)の場合における、細胞保護作用や、本発明のタン
パク質をコードする遺伝子の発現量を公知の方法などで
測定して、比較する。細胞保護作用は、心筋細胞の活性
化あるいは生存率によって示すことができる。具体的に
は一般によく用いられる呼吸活性を測定することができ
るMTT(3-(4,5-Dimethyl-2-thiazolyl)-2,5-dipheny
l-2H-tetrazolium)法やトリパンブルー染色法あるいは
TUNNEL染色法(Terminal deoxytransferase-medi
ated dUTP-X nick end labeling, セル、第97巻、1
89頁−198頁、1999年)で測定することができ
る。細胞死または細胞障害時の適度な発現増強は、細胞
保護作用が期待できる。また、過剰な発現増強は、細胞
の過剰な活性化を引き起こし、細胞の疲弊を加速すると
考えられる。従って発現量を適切にコントロールするこ
とが大切であると考えられる。例えば心不全期のように
発現促進によって細胞障害が生じていると考えられる場
合には、阻害薬(本発明のタンパク質の活性を阻害する
化合物またはその塩)を投与し、例えば、心筋梗塞後の
急性期または十分な代償機序が発揮されていない時期の
ように発現低下によって細胞障害が生じていると考えら
れる場合には、促進薬(本発明のタンパク質の活性を促
進する化合物またはその塩)を投与する。本発明のタン
パク質はG蛋白質のGTPアーゼ活性を活性化すると考
えられる。G蛋白質のGTPアーゼ活性は、G蛋白質の
サブユニット解離を促進して、G蛋白質を介したシグナ
ル伝達を抑制することが知られている。心不全において
β受容体の脱感作等、G蛋白質シグナル伝達機構の異常
によって心不全病態が増悪すると考えられているため、
本発明のタンパク質または部分ペプチドをコードするD
NA(以下、本発明のDNAと称することもある)の発
現促進は心不全増悪に関与しているものと考えられる。
よって、本発明のタンパク質を産生する能力を有する細
胞あるいは本発明のタンパク質をコードするcDNAを
導入した細胞を用いて、リガンド刺激によるG蛋白質由
来のシグナル伝達物質(例、cAMP、カルシウムな
ど)の産生を指標にして、本発明のタンパク質の活性を
調節する化合物またはその塩をスクリーニングすること
もできる。具体例としては、(v)本発明のタンパク質
を産生する能力を有する細胞または本発明のタンパク質
をコードするcDNAを導入した細胞に、例えばβ刺激
などG蛋白質共役型受容体に対するリガンド刺激を加
え、培養した場合と(vi)本発明のタンパク質を産生す
る能力を有する細胞または本発明のタンパク質をコード
するcDNAを導入した細胞と試験化合物の混合物と
に、例えばβ刺激などG蛋白質共役型受容体に対するリ
ガンド刺激を加え、培養を行った場合との比較を行うこ
とを特徴とする本発明のタンパク質をコードする遺伝子
の発現を調節する化合物またはその塩のスクリーニング
方法を提供する。上記スクリーニング方法においては、
例えば、(v)と(vi)の場合における、シグナル伝達の
抑制または促進作用を公知の方法などで測定して、比較
する。細胞として、好ましくは、ラットまたはマウス初
代心筋細胞、ラット心室由来細胞株であるH9c2など
が用いられる。例えば、発現低下が認められるような心
不全の代償期の患者には、本発明の遺伝子の発現を促進
する化合物またはその塩が好ましく用いられる。発現が
過剰な心不全期では発現を抑制する化合物またはその塩
が好ましく用いられる。試験化合物としては、例えば、
ペプチド、タンパク、生体由来非ペプチド性化合物(糖
質、脂質など)、合成化合物、微生物培養物、細胞抽出
液、植物抽出液、動物組織抽出液などが挙げられ、これ
ら化合物は新規化合物であってもよいし、公知の化合物
であってもよい。上記のスクリーニング方法を実施する
には、本発明のタンパク質を産生する能力を有する細胞
をスクリーニングに適した培地を用いて培養する。培地
は、本発明のタンパク質の遺伝子発現に影響を与えない
ものであればいずれでもよい。本発明のタンパク質を産
生する能力を有する細胞としては、例えば、本来本発明
のタンパク質を産生する能力を有する初代心筋細胞ある
いは前述した本発明のタンパク質をコードするDNAを
含有するベクターで形質転換された宿主(形質転換体)
などが用いられる。宿主としては、例えば、H9c2細
胞(ATCCNo。CRL−1446)などの動物細胞
が好ましく用いられる。該スクリーニングには、例え
ば、前述の方法で培養することによって、本発明のタン
パク質を細胞質内に発現させた形質転換体が好ましく用
いられる。遺伝子発現量は、公知の方法、例えば、ノー
ザンブロッティングやReverse transcription-polymera
se chain reaction(RT−PCR)、リアルタイムP
CR解析システム(ABI社製、TaqMan polymerase ch
ain reaction)などの方法あるいはそれに準じる方法に
したがって測定することができる。例えば、上記(ii)
の場合における遺伝子発現量を、上記(i)の場合に比
べて、約20%以上、好ましくは30%以上、より好ま
しくは約50%以上阻害または促進する試験化合物を、
本発明のタンパク質の活性を阻害または促進する化合物
として選択することができる。上記スクリーニング法に
より選択された本発明のタンパク質の活性を阻害する化
合物またはその塩(阻害薬)は、本発明のDNA(遺伝
子)の発現促進が認められる心不全末期に投与すること
により心機能回復効果が期待できる。また、上記スクリ
ーニング法により選択された本発明のタンパク質の活性
を促進する化合物またはその塩(促進薬)は発現低下が
認められる心不全慢性期に投与することにより過剰な代
償機序を抑制し、心筋細胞を保護することによる心保護
効果(heart protective effect)が期待できる。
【0039】本発明のスクリーニング用キットは、本発
明で用いられるタンパク質もしくは部分ペプチドまたは
その塩、または本発明で用いられるタンパク質もしくは
部分ペプチドを産生する能力を有する細胞を含有するも
のである。
【0040】本発明のスクリーニング方法またはスクリ
ーニング用キットを用いて得られる化合物(本発明のタ
ンパク質の活性を促進または阻害する化合物)またはそ
の塩は、上記した試験化合物、例えば、ペプチド、タン
パク質、生体由来非ペプチド性化合物(例、糖質、脂質
など)、合成化合物、微生物培養物、発酵生産物、細胞
抽出液、植物抽出液、動物組織抽出液、血漿などから選
ばれた化合物またはその塩であり、本発明のタンパク質
の活性(心機能低下促進活性など)を調節(促進または
阻害)する化合物またはその塩である。該化合物の塩と
しては、前記した本発明のタンパク質の塩と同様のもの
が用いられる。本発明のタンパク質の活性を調節(促進
または阻害)する化合物またはその塩は、例えば、心機
能の低下を特徴とする疾病(例、心筋梗塞後の心不全;
狭心症;心筋症;狭心症、心筋症などの疾患に由来する
心不全などの心疾患など)などの治療・予防剤などの医
薬として有用である。
【0041】本発明のスクリーニング方法またはスクリ
ーニング用キットを用いて得られる化合物またはその塩
を上述の治療・予防剤として使用する場合、常套手段に
従って製剤化することができる。例えば、錠剤、カプセ
ル剤、エリキシル剤、マイクロカプセル剤、無菌性溶
液、懸濁液剤などとすることができる。このようにして
得られる製剤は安全で低毒性であるので、例えば、ヒト
またはその他の温血動物(例えば、マウス、ラット、ウ
サギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ウマ、トリ、ネコ、イヌ、
サル、チンパンジーなど)に対して経口的にまたは非経
口的に投与することができる。該化合物またはその塩の
投与量は、その作用、対象疾患、投与対象、投与ルート
などにより差異はあるが、例えば、心不全治療の目的で
本発明のタンパク質の活性を調節する化合物またはその
塩を経口投与する場合、一般的に成人(体重60kgと
して)においては、一日につき該化合物またはその塩を
約0.1〜100mg、好ましくは約1.0〜50m
g、より好ましくは約1.0〜20mg投与する。非経
口的に投与する場合は、該化合物またはその塩の1回投
与量は投与対象、対象疾患などによっても異なるが、例
えば、心不全治療の目的で本発明のタンパク質の活性を
調節する化合物またはその塩を注射剤の形で通常成人
(60kgとして)に投与する場合、一日につき該化合
物またはその塩を約0.01〜30mg程度、好ましく
は約0.1〜20mg程度、より好ましくは約0.1〜
10mg程度を静脈注射により投与するのが好都合であ
る。他の動物の場合も、60kg当たりに換算した量を
投与することができる。
【0042】〔2〕本発明のタンパク質、その部分ペプ
チドまたはその塩の定量 本発明のタンパク質に対する抗体(以下、本発明の抗体
と略記する場合がある)は、本発明のタンパク質を特異
的に認識することができるので、被検液中の本発明のタ
ンパク質の定量、特にサンドイッチ免疫測定法による定
量などに使用することができる。すなわち、本発明は、
(i)本発明の抗体と、被検液および標識化された本発
明のタンパク質とを競合的に反応させ、該抗体に結合し
た標識化された本発明のタンパク質の割合を測定するこ
とを特徴とする被検液中の本発明のタンパク質の定量
法、および(ii)被検液と担体上に不溶化した本発明の
抗体および標識化された本発明の別の抗体とを同時ある
いは連続的に反応させたのち、不溶化担体上の標識剤の
活性を測定することを特徴とする被検液中の本発明のタ
ンパク質の定量法を提供する。上記(ii)の定量法にお
いては、一方の抗体が本発明のタンパク質のN端部を認
識する抗体で、他方の抗体が本発明のタンパク質のC端
部に反応する抗体であることが望ましい。
【0043】また、本発明のタンパク質に対するモノク
ローナル抗体(以下、本発明のモノクローナル抗体と称
する場合がある)を用いて本発明のタンパク質の定量を
行なえるほか、組織染色等による検出を行なうこともで
きる。これらの目的には、抗体分子そのものを用いても
よく、また、抗体分子のF(ab’)2 、Fab’、ある
いはFab画分を用いてもよい。本発明の抗体を用いる
本発明のタンパク質の定量法は、特に制限されるべきも
のではなく、被測定液中の抗原量(例えば、タンパク質
量)に対応した抗体、抗原もしくは抗体−抗原複合体の
量を化学的または物理的手段により検出し、これを既知
量の抗原を含む標準液を用いて作製した標準曲線より算
出する測定法であれば、いずれの測定法を用いてもよ
い。例えば、ネフロメトリー、競合法、イムノメトリッ
ク法およびサンドイッチ法が好適に用いられるが、感
度、特異性の点で、後述するサンドイッチ法を用いるの
が特に好ましい。標識物質を用いる測定法に用いられる
標識剤としては、例えば、放射性同位元素、酵素、蛍光
物質、発光物質などが用いられる。放射性同位元素とし
ては、例えば、〔125I〕、〔131I〕、〔3H〕、〔14
C〕などが用いられる。上記酵素としては、安定で比活
性の大きなものが好ましく、例えば、β−ガラクトシダ
ーゼ、β−グルコシダーゼ、アルカリフォスファター
ゼ、パーオキシダーゼ、リンゴ酸脱水素酵素などが用い
られる。蛍光物質としては、例えば、フルオレスカミ
ン、フルオレッセンイソチオシアネートなどが用いられ
る。発光物質としては、例えば、ルミノール、ルミノー
ル誘導体、ルシフェリン、ルシゲニンなどが用いられ
る。さらに、抗体あるいは抗原と標識剤との結合にビオ
チン−アビジン系を用いることもできる。
【0044】抗原あるいは抗体の不溶化に当っては、物
理吸着を用いてもよく、また通常タンパク質あるいは酵
素等を不溶化、固定化するのに用いられる化学結合を用
いる方法でもよい。担体としては、アガロース、デキス
トラン、セルロースなどの不溶性多糖類、ポリスチレ
ン、ポリアクリルアミド、シリコン等の合成樹脂、ある
いはガラス等が挙げられる。サンドイッチ法においては
不溶化した本発明のモノクローナル抗体に被検液を反応
させ(1次反応)、さらに標識化した別の本発明のモノ
クローナル抗体を反応させ(2次反応)たのち、不溶化
担体上の標識剤の活性を測定することにより被検液中の
本発明のタンパク質量を定量することができる。1次反
応と2次反応は逆の順序に行っても、また、同時に行な
ってもよいし時間をずらして行なってもよい。標識化剤
および不溶化の方法は前記のそれらに準じることができ
る。また、サンドイッチ法による免疫測定法において、
固相用抗体あるいは標識用抗体に用いられる抗体は必ず
しも1種類である必要はなく、測定感度を向上させる等
の目的で2種類以上の抗体の混合物を用いてもよい。本
発明のサンドイッチ法による本発明のタンパク質の測定
法においては、1次反応と2次反応に用いられる本発明
のモノクローナル抗体は、本発明のタンパク質の結合す
る部位が相異なる抗体が好ましく用いられる。すなわ
ち、1次反応および2次反応に用いられる抗体は、例え
ば、2次反応で用いられる抗体が、本発明のタンパク質
のC端部を認識する場合、1次反応で用いられる抗体
は、好ましくはC端部以外、例えばN端部を認識する抗
体が用いられる。
【0045】本発明のモノクローナル抗体をサンドイッ
チ法以外の測定システム、例えば、競合法、イムノメト
リック法あるいはネフロメトリーなどに用いることがで
きる。競合法では、被検液中の抗原と標識抗原とを抗体
に対して競合的に反応させたのち、未反応の標識抗原
(F)と、抗体と結合した標識抗原(B)とを分離し
(B/F分離)、B,Fいずれかの標識量を測定し、被
検液中の抗原量を定量する。本反応法には、抗体として
可溶性抗体を用い、B/F分離をポリエチレングリコー
ル、前記抗体に対する第2抗体などを用いる液相法、お
よび、第1抗体として固相化抗体を用いるか、あるい
は、第1抗体は可溶性のものを用い第2抗体として固相
化抗体を用いる固相化法とが用いられる。イムノメトリ
ック法では、被検液中の抗原と固相化抗原とを一定量の
標識化抗体に対して競合反応させた後固相と液相を分離
するか、あるいは、被検液中の抗原と過剰量の標識化抗
体とを反応させ、次に固相化抗原を加え未反応の標識化
抗体を固相に結合させたのち、固相と液相を分離する。
次に、いずれかの相の標識量を測定し被検液中の抗原量
を定量する。また、ネフロメトリーでは、ゲル内あるい
は溶液中で抗原抗体反応の結果生じた不溶性の沈降物の
量を測定する。被検液中の抗原量が僅かであり、少量の
沈降物しか得られない場合にもレーザーの散乱を利用す
るレーザーネフロメトリーなどが好適に用いられる。
【0046】これら個々の免疫学的測定法を本発明の定
量方法に適用するにあたっては、特別の条件、操作等の
設定は必要とされない。それぞれの方法における通常の
条件、操作法に当業者の通常の技術的配慮を加えて本発
明のタンパク質の測定系を構築すればよい。これらの一
般的な技術手段の詳細については、総説、成書などを参
照することができる。例えば、入江 寛編「ラジオイム
ノアッセイ」(講談社、昭和49年発行)、入江 寛編
「続ラジオイムノアッセイ」(講談社、昭和54年発
行)、石川栄治ら編「酵素免疫測定法」(医学書院、昭
和53年発行)、石川栄治ら編「酵素免疫測定法」(第
2版)(医学書院、昭和57年発行)、石川栄治ら編
「酵素免疫測定法」(第3版)(医学書院、昭和62年
発行)、「Methods in ENZYMOLOGY」Vol. 70(Immunochem
ical Techniques(Part A))、 同書 Vol. 73(Immunochem
ical Techniques(Part B))、 同書 Vol. 74(Immunochem
ical Techniques(Part C))、 同書 Vol. 84(Immunochem
ical Techniques(Part D:Selected Immunoassays))、
同書 Vol. 92(Immunochemical Techniques(Part E:Mono
clonal Antibodies and General Immunoassay Method
s))、 同書 Vol. 121(Immunochemical Techniques(Part
I:Hybridoma Technology and Monoclonal Antibodie
s))(以上、アカデミックプレス社発行)などを参照する
ことができる。以上のようにして、本発明の抗体を用い
ることによって、本発明のタンパク質を感度良く定量す
ることができる。さらには、本発明の抗体を用いて本発
明のタンパク質の濃度を定量することによって、本発明
のタンパク質の濃度の増加が検出された場合、例えば、
心機能の低下を特徴とする疾病(例、心筋梗塞後の心不
全;狭心症;心筋症;狭心症、心筋症などの疾患に由来
する心不全などの心疾患など)である、または将来罹患
する可能性が高いと診断することができる。また、本発
明の抗体は、体液や組織などの被検体中に存在する本発
明のタンパク質を検出するために使用することができ
る。また、本発明のタンパク質を精製するために使用す
る抗体カラムの作製、精製時の各分画中の本発明のタン
パク質の検出、被検細胞内における本発明のタンパク質
の挙動の分析などのために使用することができる。
【0047】〔3〕遺伝子診断剤 本発明のDNAは、例えば、プローブとして使用するこ
とにより、ヒトまたはその他の温血動物(例えば、ラッ
ト、マウス、モルモット、ウサギ、トリ、ヒツジ、ブ
タ、ウシ、ウマ、ネコ、イヌ、サル、チンパンジーな
ど)における本発明のタンパク質またはその部分ペプチ
ドをコードするDNAまたはmRNAの異常(遺伝子異
常)を検出することができるので、例えば、該DNAま
たはmRNAの損傷、突然変異あるいは発現低下や、該
DNAまたはmRNAの増加あるいは発現過多などの遺
伝子診断剤として有用である。本発明のDNAを用いる
上記の遺伝子診断は、例えば、公知のノーザンハイブリ
ダイゼーションやPCR−SSCP法(ゲノミックス
(Genomics),第5巻,874〜879頁(1989
年)、プロシージングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカ
デミー・オブ・サイエンシイズ・オブ・ユーエスエー
(Proceedings of theNational Academy of Sciences o
f the United States of America),第86巻,276
6〜2770頁(1989年))などにより実施するこ
とができる。例えば、ノーザンハイブリダイゼーション
により発現過多が検出された場合やPCR−SSCP法
によりDNAの突然変異が検出された場合は、例えば、
心機能低下を伴う心疾患などの疾病である可能性が高い
と診断することができる。
【0048】〔4〕アンチセンスヌクレオチドを含有す
る医薬 本発明のDNAに相補的に結合し、該DNAの発現を抑
制することができる本発明のアンチセンスヌクレオチド
は低毒性であり、生体内における本発明のタンパク質ま
たは本発明のDNAの機能(心機能低下促進活性など)
を調節(阻害)することができるので、例えば、心機能
の低下を特徴とする疾病(例、心筋梗塞後の心不全;狭
心症;心筋症;狭心症、心筋症などの疾患に由来する心
不全などの心疾患など)などの治療・予防剤として使用
することができる。上記アンチセンスヌクレオチドを上
記の治療・予防剤として使用する場合、公知の方法に従
って製剤化し、投与することができる。例えば、該アン
チセンスヌクレオチドを用いる場合、該アンチセンスヌ
クレオチドを単独あるいはレトロウイルスベクター、ア
デノウイルスベクター、アデノウイルスアソシエーテッ
ドウイルスベクターなどの適当なベクターに挿入した
後、常套手段に従って、ヒトまたはその他の温血動物
(例えば、マウス、ラット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウ
シ、ウマ、トリ、ネコ、イヌ、サル、チンパンジーな
ど)に対して経口的または非経口的に投与することがで
きる。該アンチセンスヌクレオチドは、そのままで、あ
るいは摂取促進のために補助剤などの生理学的に認めら
れる担体とともに製剤化し、遺伝子銃やハイドロゲルカ
テーテルのようなカテーテルによって投与できる。該ア
ンチセンスヌクレオチドの投与量は、対象疾患、投与対
象、投与ルートなどにより差異はあるが、例えば、心不
全の治療の目的で本発明のアンチセンスヌクレオチドを
経口投与する場合、一般的に成人(体重60kg)にお
いては、一日につき該アンチセンスヌクレオチドを約
0.1〜100mg投与する。さらに、該アンチセンス
ヌクレオチドは、組織や細胞における本発明のDNAの
存在やその発現状況を調べるための診断用オリゴヌクレ
オチドプローブとして使用することもできる。本発明
は、さらに 本発明のタンパク質をコードするRNAの一部を含有
する二重鎖RNA、 前記二重鎖RNAを含有してなる医薬、 本発明のタンパク質をコードするRNAの一部を含有
するリボザイム、 前記リボザイムを含有してなる医薬を提供する。 これらの二重鎖RNA、リボザイムなどは、上記アンチ
センスポリヌクレオチドと同様に、本発明のポリヌクレ
オチド(例、DNA)の発現を抑制することができ、生
体内における本発明のペプチドまたは本発明のポリヌク
レオチド(例、DNA)の機能(心機能低下促進活性な
ど)を調節(阻害)することができるので、例えば、心
機能の低下を特徴とする疾病(例、心筋梗塞後の心不
全;狭心症;心筋症;狭心症、心筋症などの疾患に由来
する心不全などの心疾患など)などの治療・予防剤とし
て使用することができる。二重鎖RNAは、公知の方法
(例、Nature, 411巻, 494頁, 2001年)に準じて、本発
明のポリヌクレオチドの配列を基に設計して製造するこ
とができる。リボザイムは、公知の方法(例、TRENDS i
n Molecular Medicine, 7巻, 221頁, 2001年)に準じ
て、本発明のポリヌクレオチドの配列を基に設計して製
造することができる。例えば、本発明のペプチドをコー
ドするRNAの一部に公知のリボザイムを連結すること
によって製造することができる。本発明のペプチドをコ
ードするRNAの一部としては、公知のリボザイムによ
って切断され得る本発明のRNA上の切断部位に近接し
た部分(RNA断片)が挙げられる。上記の二重鎖RN
Aまたはリボザイムを上記予防・治療剤として使用する
場合、アンチセンスポリヌクレオチドと同様にして製剤
化し、投与することができる。
【0049】〔5〕本発明の抗体を含有する医薬 本発明のタンパク質の活性を中和する作用を有する本発
明の抗体は、心機能の低下を特徴とする疾病(例、心筋
梗塞後の心不全;狭心症;心筋症;狭心症、心筋症など
の疾患に由来する心不全などの心疾患など)などの予防
・治療剤として使用することができる。本発明の抗体を
含有する上記疾病の予防・治療剤は低毒性であり、その
まま液剤として、または適当な剤型の医薬組成物とし
て、ヒトまたはその他の温血動物(例えば、マウス、ラ
ット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ウマ、トリ、ネ
コ、イヌ、サル、チンパンジーなど)に対して経口的ま
たは非経口的に投与することができる。投与量は、投与
対象、対象疾患、症状、投与ルートなどによっても異な
るが、例えば、成人の心不全の治療・予防のために使用
する場合には、本発明の抗体を1回量として、通常0.
01〜20mg/kg体重程度、好ましくは0.1〜1
0mg/kg体重程度、さらに好ましくは0.1〜5m
g/kg体重程度を、1日1〜5回程度、好ましくは1
日1〜3回程度、静脈注射により投与するのが好都合で
ある。他の非経口投与および経口投与の場合もこれに準
ずる量を投与することができる。症状が特に重い場合に
は、その症状に応じて増量してもよい。本発明の抗体
は、それ自体または適当な医薬組成物として投与するこ
とができる。上記投与に用いられる医薬組成物は、上記
抗体またはその塩と薬理学的に許容され得る担体、希釈
剤もしくは賦形剤とを含むものである。かかる組成物
は、経口または非経口投与に適する剤形として提供され
る。すなわち、例えば、経口投与のための組成物として
は、固体または液体の剤形、具体的には錠剤(糖衣錠、
フィルムコーティング錠を含む)、丸剤、顆粒剤、散
剤、カプセル剤(ソフトカプセル剤を含む)、シロップ
剤、乳剤、懸濁剤などがあげられる。かかる組成物は公
知の方法によって製造され、製剤分野において通常用い
られる担体、希釈剤もしくは賦形剤を含有するものであ
る。例えば、錠剤用の担体、賦形剤としては、乳糖、で
んぷん、蔗糖、ステアリン酸マグネシウムなどが用いら
れる。
【0050】非経口投与のための組成物としては、例え
ば、注射剤、坐剤などが用いられ、注射剤は静脈注射
剤、皮下注射剤、皮内注射剤、筋肉注射剤、点滴注射剤
などの剤形を包含する。かかる注射剤は、公知の方法に
従って、例えば、上記抗体またはその塩を通常注射剤に
用いられる無菌の水性もしくは油性液に溶解、懸濁また
は乳化することによって調製する。注射用の水性液とし
ては、例えば、生理食塩水、ブドウ糖やその他の補助薬
を含む等張液などが用いられ、適当な溶解補助剤、例え
ば、アルコール(例、エタノール)、ポリアルコール
(例、プロピレングリコール、ポリエチレングリコー
ル)、非イオン界面活性剤〔例、ポリソルベート80、
HCO−50(polyoxyethylene(50 mol)adduct of h
ydrogenated castor oil)〕などと併用してもよい。油
性液としては、例えば、ゴマ油、大豆油などが用いら
れ、溶解補助剤として安息香酸ベンジル、ベンジルアル
コールなどを併用してもよい。調製された注射液は、通
常、適当なアンプルに充填される。直腸投与に用いられ
る坐剤は、上記抗体またはその塩を通常の坐薬用基剤に
混合することによって調製される。上記の経口用または
非経口用医薬組成物は、活性成分の投与量に適合するよ
うな投薬単位の剤形に調製されることが好都合である。
かかる投薬単位の剤形としては、錠剤、丸剤、カプセル
剤、注射剤(アンプル)、坐剤などが例示され、それぞ
れの投薬単位剤形当たり通常5〜500mg、とりわけ
注射剤では5〜100mg、その他の剤形では10〜2
50mgの上記抗体が含有されていることが好ましい。
なお前記した各組成物は、上記抗体との配合により好ま
しくない相互作用を生じない限り他の活性成分を含有し
てもよい。
【0051】〔6〕本発明のタンパク質を含有する医薬 本発明の抗体を産生するためのワクチン等の医薬として
用いられる。該ワクチンは、本発明のタンパク質を用い
て、公知の方法により製造することができる。 〔7〕本発明のDNAを含有する医薬 本発明のDNAを含有する医薬は、心不全の遺伝子治療
に用いられる。本発明のDNAの機能は、過剰な代償機
序を抑制するための生体防御機構のひとつと考えられ
る。例えば、アドレナリンレセプターは交換神経から放
出されるアドレナリンと結合し、強心作用を発揮するこ
とが知られている。またアンジオテンシンIIレセプタ
ーは、アンジオテンシンIIと結合し、心肥大を含めた
心臓リモデリングに関与することが知られている。心臓
の代償機序にはこれらのメカニズムの活性化が含まれて
いる。しかしながら、アドレナリンの過剰な作動は心臓
の疲弊を加速することが考えられ、アンジオテンシンI
Iの過剰な作動による生じる心蔵リモデリングそのもの
は心不全の増悪作用のひとつと考えられている(内科、
第79巻、2−20頁、1997年)。上記レセプター
はG蛋白質共役型受容体であり、その受容体の拮抗薬は
心不全に有効であることが知られている。本発明のタン
パク質の機能は、受容体からのシグナル伝達を抑制する
ことであるため、本発明のDNAは心不全の遺伝子治療
にも有用と考えられる。 〔8〕本発明のDNAを有する動物の作製 本発明のDNAを用いて、本発明のタンパク質を発現す
るトランスジェニック動物を作製することができる。動
物としては、哺乳動物(例えば、ラット、マウス、ウサ
ギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ネコ、イヌ、サルなど)など
(以下、動物と略記する場合がある)が挙げられるが、
特に、マウス、ウサギなどが好適である。本発明のDN
Aを対象動物に導入させるにあたっては、該DNAを動
物細胞で発現させうるプロモーターの下流に結合した遺
伝子コンストラクトとして用いるのが一般に有利であ
る。例えば、ウサギ由来の本発明のDNAを導入させる
場合、これと相同性が高い動物由来の本発明のDNAを
動物細胞で発現させうる各種プロモーターの下流に結合
した遺伝子コンストラクトを、例えば、ウサギ受精卵へ
マイクロインジェクションすることによって本発明のタ
ンパク質を高産生するDNA導入動物を作出できる。こ
のプロモーターとしては、例えば、ウイルス由来プロモ
ーター、メタロチオネイン等のユビキアスな発現プロモ
ーターも使用しうるが、好ましくは脳で特異的に発現す
るNGF遺伝子プロモーターやエノラーゼ遺伝子プロモ
ーターなどが用いられる。受精卵細胞段階における本発
明のDNAの導入は、対象動物の胚芽細胞および体細胞
の全てに存在するように確保される。DNA導入後の作
出動物の胚芽細胞において本発明のタンパク質が存在す
ることは、作出動物の子孫が全てその胚芽細胞および体
細胞の全てに本発明のタンパク質を有することを意味す
る。遺伝子を受け継いだこの種の動物の子孫はその胚芽
細胞および体細胞の全てに本発明のタンパク質を有す
る。本発明のDNA導入動物は、交配により遺伝子を安
定に保持することを確認して、該DNA保有動物として
通常の飼育環境で飼育継代を行うことができる。さら
に、目的DNAを保有する雌雄の動物を交配することに
より、導入遺伝子を相同染色体の両方に持つホモザイゴ
ート動物を取得し、この雌雄の動物を交配することによ
りすべての子孫が該DNAを有するように繁殖継代する
ことができる。本発明のDNAが導入された動物は、本
発明のタンパク質が高発現させられているので、本発明
のタンパク質に対するアゴニストまたはアンタゴニスト
のスクリーニング用の動物などとして有用である。本発
明のDNA導入動物を、組織培養のための細胞源として
使用することもできる。例えば、本発明のDNA導入マ
ウスの組織中のDNAもしくはRNAを直接分析する
か、あるいは遺伝子により発現された本発明のレセプタ
ー蛋白質が存在する組織を分析することにより、本発明
のタンパク質について分析することができる。本発明の
タンパク質を有する組織の細胞を標準組織培養技術によ
り培養し、これらを使用して、例えば、脳や末梢組織由
来のような一般に培養困難な組織からの細胞の機能を研
究することができる。また、その細胞を用いることによ
り、例えば、各種組織の機能を高めるような医薬の選択
も可能である。また、高発現細胞株があれば、そこか
ら、本発明のタンパク質を単離精製することも可能であ
る。本発明のDNA導入動物に試験化合物を投与し、該
動物の心機能、心電図、心重量などを測定する。心重量
は心肥大のパラメーターである。具体的には体重当たり
の心臓重量、体重当たりの左心室重量、右心室重量当た
りの左心室重量を算出することによって心臓構造を調べ
ることができる。心肥大が生じると上記パラメーターは
増加するため、この増加を抑制することを指標として試
験化合物を評価することができる。本発明のDNA導入
動物に試験化合物を投与した後、心筋梗塞形成手術を行
い、該動物の心機能、心電図、心重量などを測定する。
また心筋梗塞手術を行った後、梗塞層を秤量することに
よって試験化合物の梗塞進展抑制活性を調べることがで
きる。試験化合物の投与は、梗塞形成手術後であっても
よい。また該動物と例えばSHRラットなど遺伝的高血
圧モデルラットと交配させ、新しい心不全モデルを作成
することができる。このようにして作成した心不全モデ
ルに化合物を投与し、該動物の心機能、心電図、心重
量、梗塞進展抑制活性などを調べる。
〔9〕ノックアウト動物 本発明は、本発明のDNAが不活性化された非ヒト哺乳
動物胚幹細胞および本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳
動物を提供する。すなわち、本発明は、(1)本発明の
DNAが不活性化された非ヒト哺乳動物胚幹細胞、
(2)該DNAがレポーター遺伝子(例、大腸菌由来の
β−ガラクトシダーゼ遺伝子)を導入することにより不
活性化された上記(1)記載の胚幹細胞、(3)ネオマ
イシン耐性である上記(1)記載の胚幹細胞、(4)非
ヒト哺乳動物がゲッ歯動物である上記(1)記載の胚幹
細胞、(5)ゲッ歯動物がマウスである上記(4)記載
の胚幹細胞、(6)本発明のDNAが不活性化された該
DNA発現不全非ヒト哺乳動物、(7)該DNAがレポ
ーター遺伝子(例、大腸菌由来のβ−ガラクトシダーゼ
遺伝子)を導入することにより不活性化され、該レポー
ター遺伝子が本発明のDNAに対するプロモーターの制
御下で発現しうる上記(6)記載の非ヒト哺乳動物、
(8)非ヒト哺乳動物がゲッ歯動物である上記(6)記
載の非ヒト哺乳動物、(9)ゲッ歯動物がマウスである
上記(8)記載の非ヒト哺乳動物、および(10)上記
(7)記載の動物に、試験化合物を投与し、レポーター
遺伝子の発現を検出することを特徴とする本発明のDN
Aに対するプロモーター活性を促進または阻害する化合
物またはその塩のスクリーニング方法を提供する。本発
明のDNAが不活性化された非ヒト哺乳動物胚幹細胞と
は、該非ヒト哺乳動物が有する本発明のDNAに人為的
に変異を加えることにより、DNAの発現能を抑制する
か、あるいは該DNAがコードしている本発明のポリペ
プチドの活性を実質的に喪失させることにより、DNA
が実質的に本発明のポリペプチドの発現能を有さない
(以下、本発明のノックアウトDNAと称することがあ
る)非ヒト哺乳動物の胚幹細胞(以下、ES細胞と略記
する)をいう。非ヒト哺乳動物としては、前記と同様の
ものが用いられる。本発明のDNAに人為的に変異を加
える方法としては、例えば、遺伝子工学的手法により該
DNA配列の一部又は全部の削除、他DNAを挿入また
は置換させることによって行なうことができる。これら
の変異により、例えば、コドンの読み取り枠をずらした
り、プロモーターあるいはエキソンの機能を破壊するこ
とにより本発明のノックアウトDNAを作製すればよ
い。本発明のDNAが不活性化された非ヒト哺乳動物胚
幹細胞(以下、本発明のDNA不活性化ES細胞または
本発明のノックアウトES細胞と略記する)の具体例と
しては、例えば、目的とする非ヒト哺乳動物が有する本
発明のDNAを単離し、そのエキソン部分にネオマイシ
ン耐性遺伝子、ハイグロマイシン耐性遺伝子を代表とす
る薬剤耐性遺伝子、あるいはlacZ(β−ガラクトシ
ダーゼ遺伝子)、cat(クロラムフェニコールアセチ
ルトランスフェラーゼ遺伝子)を代表とするレポーター
遺伝子等を挿入することによりエキソンの機能を破壊す
るか、あるいはエキソン間のイントロン部分に遺伝子の
転写を終結させるDNA配列(例えば、polyA付加
シグナルなど)を挿入し、完全なメッセンジャーRNA
を合成できなくすることによって、結果的に遺伝子を破
壊するように構築したDNA配列を有するDNA鎖(以
下、ターゲッティングベクターと略記する)を、例えば
相同組換え法により該動物の染色体に導入し、得られた
ES細胞について本発明のDNA上あるいはその近傍の
DNA配列をプローブとしたサザンハイブリダイゼーシ
ョン解析あるいはターゲッティングベクター上のDNA
配列とターゲッティングベクター作製に使用した本発明
のDNA以外の近傍領域のDNA配列をプライマーとし
たPCR法により解析し、本発明のノックアウトES細
胞を選別することにより得ることができる。また、相同
組換え法等により本発明のDNAを不活化させる元のE
S細胞としては、例えば、前述のような既に樹立された
ものを用いてもよく、また公知のEvansとKaufmanの方法
に準じて新しく樹立したものでもよい。例えば、マウス
のES細胞の場合、現在、一般的には129系のES細
胞が使用されているが、免疫学的背景がはっきりしてい
ないので、これに代わる純系で免疫学的に遺伝的背景が
明らかなES細胞を取得するなどの目的で例えば、C5
7BL/6マウスやC57BL/6の採卵数の少なさを
DBA/2との交雑により改善したBDF1マウス(C
57BL/6とDBA/2とのF1)を用いて樹立した
ものなども良好に用いうる。BDF1マウスは、採卵数
が多く、かつ、卵が丈夫であるという利点に加えて、C
57BL/6マウスを背景に持つので、これを用いて得
られたES細胞は病態モデルマウスを作出したとき、C
57BL/6マウスとバッククロスすることでその遺伝
的背景をC57BL/6マウスに代えることが可能であ
る点で有利に用い得る。また、ES細胞を樹立する場
合、一般には受精後3.5日目の胚盤胞を使用するが、
これ以外に8細胞期胚を採卵し胚盤胞まで培養して用い
ることにより効率よく多数の初期胚を取得することがで
きる。また、雌雄いずれのES細胞を用いてもよいが、
通常雄のES細胞の方が生殖系列キメラを作出するのに
都合が良い。また、煩雑な培養の手間を削減するために
もできるだけ早く雌雄の判別を行なうことが望ましい。
ES細胞の雌雄の判定方法としては、例えば、PCR法
によりY染色体上の性決定領域の遺伝子を増幅、検出す
る方法が、その1例としてあげることができる。この方
法を使用すれば、従来、核型分析をするのに約106
の細胞数を要していたのに対して、1コロニー程度のE
S細胞数(約50個)で済むので、培養初期におけるE
S細胞の第一次セレクションを雌雄の判別で行なうこと
が可能であり、早期に雄細胞の選定を可能にしたことに
より培養初期の手間は大幅に削減できる。また、第二次
セレクションとしては、例えば、G−バンディング法に
よる染色体数の確認等により行うことができる。得られ
るES細胞の染色体数は正常数の100%が望ましい
が、樹立の際の物理的操作等の関係上困難な場合は、E
S細胞の遺伝子をノックアウトした後、正常細胞(例え
ば、マウスでは染色体数が2n=40である細胞)に再
びクローニングすることが望ましい。このようにして得
られた胚幹細胞株は、通常その増殖性は大変良いが、個
体発生できる能力を失いやすいので、注意深く継代培養
することが必要である。例えば、STO繊維芽細胞のよ
うな適当なフィーダー細胞上でLIF(1−10000
U/ml)存在下に炭酸ガス培養器内(好ましくは、5%炭
酸ガス、95%空気または5%酸素、5%炭酸ガス、9
0%空気)で約37℃で培養するなどの方法で培養し、
継代時には、例えば、トリプシン/EDTA溶液(通常
0.001−0.5%トリプシン/0.1−5mM EDT
A、好ましくは約0.1%トリプシン/1mM EDT
A)処理により単細胞化し、新たに用意したフィーダー
細胞上に播種する方法などがとられる。このような継代
は、通常1−3日毎に行なうが、この際に細胞の観察を
行い、形態的に異常な細胞が見受けられた場合はその培
養細胞は放棄することが望まれる。ES細胞は、適当な
条件により、高密度に至るまで単層培養するか、または
細胞集塊を形成するまで浮遊培養することにより、頭頂
筋、内臓筋、心筋などの種々のタイプの細胞に分化させ
ることが可能であり〔M. J. Evans及びM. H. Kaufman,
ネイチャー(Nature)第292巻、154頁、1981年;G. R.
Martin プロシーディングス・オブ・ナショナル・アカ
デミー・オブ・サイエンス・ユーエスエー(Proc. Nat
l. Acad. Sci. U.S.A.)第78巻、7634頁、1981年;T.
C. Doetschmanら、ジャーナル・オブ・エンブリオロジ
ー・アンド・エクスペリメンタル・モルフォロジー、第
87巻、27頁、1985年〕、本発明のES細胞を分化させて
得られる本発明のDNA発現不全細胞は、インビトロに
おける本発明のポリペプチドの細胞生物学的検討におい
て有用である。本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物
は、該動物のmRNA量を公知の方法を用いて測定して
間接的にその発現量を比較することにより、正常動物と
区別することが可能である。該非ヒト哺乳動物として
は、前記と同様のものが用いられる。本発明のDNA発
現不全非ヒト哺乳動物は、例えば、前述のようにして作
製したターゲッティングベクターをマウス胚幹細胞また
はマウス卵細胞に導入し、導入によりターゲッティング
ベクターの本発明のDNAが不活性化されたDNA配列
が遺伝子相同組換えにより、マウス胚幹細胞またはマウ
ス卵細胞の染色体上の本発明のDNAと入れ換わる相同
組換えをさせることにより、本発明のDNAをノックア
ウトさせることができる。本発明のDNAがノックアウ
トされた細胞は、本発明のDNA上またはその近傍のD
NA配列をプローブとしたサザンハイブリダイゼーショ
ン解析またはターゲッティングベクター上のDNA配列
と、ターゲッティングベクターに使用したマウス由来の
本発明のDNA以外の近傍領域のDNA配列とをプライ
マーとしたPCR法による解析で判定することができ
る。非ヒト哺乳動物胚幹細胞を用いた場合は、遺伝子相
同組換えにより、本発明のDNAが不活性化された細胞
株をクローニングし、その細胞を適当な時期、例えば、
8細胞期の非ヒト哺乳動物胚または胚盤胞に注入し、作
製したキメラ胚を偽妊娠させた該非ヒト哺乳動物の子宮
に移植する。作出された動物は正常な本発明のDNA座
をもつ細胞と人為的に変異した本発明のDNA座をもつ
細胞との両者から構成されるキメラ動物である。該キメ
ラ動物の生殖細胞の一部が変異した本発明のDNA座を
もつ場合、このようなキメラ個体と正常個体を交配する
ことにより得られた個体群より、全ての組織が人為的に
変異を加えた本発明のDNA座をもつ細胞で構成された
個体を、例えば、コートカラーの判定等により選別する
ことにより得られる。このようにして得られた個体は、
通常、本発明のポリペプチドのヘテロ発現不全個体であ
り、本発明のポリペプチドのヘテロ発現不全個体同志を
交配し、それらの産仔から本発明のポリペプチドのホモ
発現不全個体を得ることができる。卵細胞を使用する場
合は、例えば、卵細胞核内にマイクロインジェクション
法でDNA溶液を注入することによりターゲッティング
ベクターを染色体内に導入したトランスジェニック非ヒ
ト哺乳動物を得ることができ、これらのトランスジェニ
ック非ヒト哺乳動物に比べて、遺伝子相同組換えにより
本発明のDNA座に変異のあるものを選択することによ
り得られる。このようにして本発明のDNAがノックア
ウトされている個体は、交配により得られた動物個体も
該DNAがノックアウトされていることを確認して通常
の飼育環境で飼育継代を行なうことができる。さらに、
生殖系列の取得および保持についても常法に従えばよ
い。すなわち、該不活化DNAの保有する雌雄の動物を
交配することにより、該不活化DNAを相同染色体の両
方に持つホモザイゴート動物を取得しうる。得られたホ
モザイゴート動物は、母親動物に対して、正常個体1,
ホモザイゴート複数になるような状態で飼育することに
より効率的に得ることができる。ヘテロザイゴート動物
の雌雄を交配することにより、該不活化DNAを有する
ホモザイゴートおよびヘテロザイゴート動物を繁殖継代
する。本発明のDNAが不活性化された非ヒト哺乳動物
胚幹細胞は、本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物を
作出する上で、非常に有用である。また、本発明のDN
A発現不全非ヒト哺乳動物は、本発明のポリペプチドに
より誘導され得る種々の生物活性を欠失するため、本発
明のポリペプチドの生物活性の不活性化を原因とする疾
病のモデルとなり得るので、これらの疾病の原因究明及
び治療法の検討に有用である。 (9a)本発明のDNAの欠損や損傷などに起因する疾
病に対して治療・予防効果を有する化合物のスクリーニ
ング方法 本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物は、本発明のD
NAの欠損や損傷などに起因する疾病に対して治療・予
防効果を有する化合物のスクリーニングに用いることが
できる。すなわち、本発明は、本発明のDNA発現不全
非ヒト哺乳動物に試験化合物を投与し、該動物の変化を
観察・測定することを特徴とする、本発明のDNAの欠
損や損傷などに起因する疾病に対して治療・予防効果を
有する化合物またはその塩のスクリーニング方法を提供
する。該スクリーニング方法において用いられる本発明
のDNA発現不全非ヒト哺乳動物としては、前記と同様
のものがあげられる。試験化合物としては、例えば、ペ
プチド、タンパク、非ペプチド性化合物、合成化合物、
発酵生産物、細胞抽出液、植物抽出液、動物組織抽出
液、血漿などがあげられ、これら化合物は新規な化合物
であってもよいし、公知の化合物であってもよい。具体
的には、本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物を、試
験化合物で処理し、無処理の対照動物と比較し、該動物
の各器官、組織、疾病の症状などの変化を指標として試
験化合物の治療・予防効果を試験することができる。試
験動物を試験化合物で処理する方法としては、例えば、
経口投与、静脈注射などが用いられ、試験動物の症状、
試験化合物の性質などにあわせて適宜選択することがで
きる。また、試験化合物の投与量は、投与方法、試験化
合物の性質などにあわせて適宜選択することができる。
例えば、心機能の低下を特徴とする疾病(例、心筋梗塞
後の心不全;狭心症;心筋症;狭心症、心筋症などの疾
患に由来する心不全などの心疾患など)に対して予防・
治療効果を有する化合物をスクリーニングする場合、本
発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物に試験化合物を投
与し、該動物の心機能、心電図、心重量などを測定す
る。心重量は心肥大のパラメーターである。具体的には
体重当たりの心臓重量、体重当たりの左心室重量、右心
室重量当たりの左心室重量を算出することによって心臓
構造を調べることができる。心肥大が生じると上記パラ
メーターは増加するため、この増加を抑制することを指
標として試験化合物を評価することができる。本発明の
DNA発現不全非ヒト哺乳動物に試験化合物を投与した
後、心筋梗塞形成手術を行い、該動物の心機能、心電
図、心重量などを測定する。また心筋梗塞手術を行った
後、梗塞層を秤量することによって試験化合物の梗塞進
展抑制活性を調べることができる。試験化合物の投与
は、梗塞形成手術後であってもよい。また該動物と例え
ばSHRラットなど遺伝的高血圧モデルラットと交配さ
せ、新しい心不全モデルを作成することができる。この
ようにして作成した心不全モデルに化合物を投与し、該
動物の心機能、心電図、心重量、梗塞進展抑制活性など
を調べる。該スクリーニング方法を用いて得られる化合
物は、上記した試験化合物から選ばれた化合物であり、
本発明のポリペプチドの欠損や損傷などによって引き起
こされる疾患に対して予防・治療効果を有するので、該
疾患に対する安全で低毒性な予防・治療剤などの医薬と
して使用することができる。さらに、上記スクリーニン
グで得られた化合物から誘導される化合物も同様に用い
ることができる。該スクリーニング方法で得られた化合
物は塩を形成していてもよく、該化合物の塩としては、
生理学的に許容される酸(例、無機酸、有機酸など)や
塩基(例、アルカリ金属など)などとの塩が用いられ、
とりわけ生理学的に許容される酸付加塩が好ましい。こ
の様な塩としては、例えば、無機酸(例えば、塩酸、リ
ン酸、臭化水素酸、硫酸など)との塩、あるいは有機酸
(例えば、酢酸、ギ酸、プロピオン酸、フマル酸、マレ
イン酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、蓚
酸、安息香酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸
など)との塩などが用いられる。該スクリーニング方法
で得られた化合物またはその塩を含有する医薬は、前記
した本発明のタンパク質を含有する医薬と同様にして製
造することができる。このようにして得られる製剤は、
安全で低毒性であるので、例えば、ヒトまたは哺乳動物
(例えば、ラット、マウス、モルモット、ウサギ、ヒツ
ジ、ブタ、ウシ、ウマ、ネコ、イヌ、サルなど)に対し
て投与することができる。該化合物またはその塩の投与
量は、対象疾患、投与対象、投与ルートなどにより差異
はあるが、例えば、該化合物を経口投与する場合、一般
的に成人(体重60kgとして)の癌の患者において
は、一日につき該化合物を約0.1〜100mg、好ま
しくは約1.0〜50mg、より好ましくは約1.0〜
20mg投与する。非経口的に投与する場合は、該化合
物の1回投与量は投与対象、対象疾患などによっても異
なるが、例えば、該化合物を注射剤の形で通常成人(6
0kgとして)の心疾患の患者に投与する場合、一日に
つき該化合物を約0.01〜30mg程度、好ましくは
約0.1〜20mg程度、より好ましくは約0.1〜1
0mg程度を静脈注射により投与するのが好都合であ
る。他の動物の場合も、60kg当たりに換算した量を
投与することができる。 (9b)本発明のDNAに対するプロモーターの活性を
促進または阻害する化合物のスクリーニング方法 本発明は、本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物に、
試験化合物を投与し、レポーター遺伝子の発現を検出す
ることを特徴とする本発明のDNAに対するプロモータ
ーの活性を促進または阻害する化合物またはその塩のス
クリーニング方法を提供する。上記スクリーニング方法
において、本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物とし
ては、前記した本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物
の中でも、本発明のDNAがレポーター遺伝子を導入す
ることにより不活性化され、該レポーター遺伝子が本発
明のDNAに対するプロモーターの制御下で発現しうる
ものが用いられる。試験化合物としては、前記と同様の
ものがあげられる。レポーター遺伝子としては、前記と
同様のものが用いられ、β−ガラクトシダーゼ遺伝子
(lacZ)、可溶性アルカリフォスファターゼ遺伝子
またはルシフェラーゼ遺伝子などが好適である。本発明
のDNAをレポーター遺伝子で置換された本発明のDN
A発現不全非ヒト哺乳動物では、レポーター遺伝子が本
発明のDNAに対するプロモーターの支配下に存在する
ので、レポーター遺伝子がコードする物質の発現をトレ
ースすることにより、プロモーターの活性を検出するこ
とができる。例えば、本発明のポリペプチドをコードす
るDNA領域の一部を大腸菌由来のβ−ガラクトシダー
ゼ遺伝子(lacZ)で置換している場合、本来、本発
明のポリペプチドの発現する組織で、本発明のポリペプ
チドの代わりにβ−ガラクトシダーゼが発現する。従っ
て、例えば、5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル
−β−ガラクトピラノシド(X−gal)のようなβ−
ガラクトシダーゼの基質となる試薬を用いて染色するこ
とにより、簡便に本発明のポリペプチドの動物生体内に
おける発現状態を観察することができる。具体的には、
本発明のポリペプチド欠損マウスまたはその組織切片を
グルタルアルデヒドなどで固定し、リン酸緩衝生理食塩
液(PBS)で洗浄後、X−galを含む染色液で、室
温または37℃付近で、約30分ないし1時間反応させ
た後、組織標本を1mM EDTA/PBS溶液で洗浄
することによって、β−ガラクトシダーゼ反応を停止さ
せ、呈色を観察すればよい。また、常法に従い、lac
ZをコードするmRNAを検出してもよい。上記スクリ
ーニング方法を用いて得られる化合物またはその塩は、
上記した試験化合物から選ばれた化合物であり、本発明
のDNAに対するプロモーター活性を促進または阻害す
る化合物である。該スクリーニング方法で得られた化合
物は塩を形成していてもよく、該化合物の塩としては、
生理学的に許容される酸(例、無機酸など)や塩基
(例、有機酸など)などとの塩が用いられ、とりわけ生
理学的に許容される酸付加塩が好ましい。この様な塩と
しては、例えば、無機酸(例えば、塩酸、リン酸、臭化
水素酸、硫酸など)との塩、あるいは有機酸(例えば、
酢酸、ギ酸、プロピオン酸、フマル酸、マレイン酸、コ
ハク酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、蓚酸、安息香
酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸など)との
塩などが用いられる。本発明のDNAに対するプロモー
ター活性を促進する化合物またはその塩は、本発明のポ
リペプチドの発現を促進し、該ポリペプチドの機能を促
進することができるので、例えば、心機能の低下を特徴
とする疾病(例、心筋梗塞後の心不全;狭心症;心筋
症;狭心症、心筋症などの疾患に由来する心不全などの
心疾患など)などの予防・治療剤などの医薬として有用
である。また、本発明のDNAに対するプロモーター活
性を阻害する化合物またはその塩は、本発明のポリペプ
チドの発現を阻害し、該ポリペプチドの機能を阻害する
ことができるので、例えば心機能の低下を特徴とする疾
病(例、心筋梗塞後の心不全;狭心症;心筋症;狭心
症、心筋症などの疾患に由来する心不全などの心疾患な
ど)などの予防・治療剤などの医薬として有用である。
さらに、上記スクリーニングで得られた化合物から誘導
される化合物も同様に用いることができる。該スクリー
ニング方法で得られた化合物またはその塩を含有する医
薬は、前記した本発明のポリペプチドまたはその塩を含
有する医薬と同様にして製造することができる。このよ
うにして得られる製剤は、安全で低毒性であるので、例
えば、ヒトまたは哺乳動物(例えば、ラット、マウス、
モルモット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ウマ、ネ
コ、イヌ、サルなど)に対して投与することができる。
該化合物またはその塩の投与量は、対象疾患、投与対
象、投与ルートなどにより差異はあるが、例えば、本発
明のDNAに対するプロモーター活性を促進する化合物
を経口投与する場合、一般的に成人(体重60kgとし
て)の心疾患の患者においては、一日につき該化合物を
約0.1〜100mg、好ましくは約1.0〜50m
g、より好ましくは約1.0〜20mg投与する。非経
口的に投与する場合は、該化合物の1回投与量は投与対
象、対象疾患などによっても異なるが、例えば、本発明
のDNAに対するプロモーター活性を促進する化合物を
注射剤の形で通常成人(60kgとして)の心疾患の患
者に投与する場合、一日につき該化合物を約0.01〜
30mg程度、好ましくは約0.1〜20mg程度、よ
り好ましくは約0.1〜10mg程度を静脈注射により
投与するのが好都合である。他の動物の場合も、60k
g当たりに換算した量を投与することができる。一方、
例えば、本発明のDNAに対するプロモーター活性を阻
害する化合物を経口投与する場合、一般的に成人(体重
60kgとして)の心疾患の患者においては、一日につ
き該化合物を約0.1〜100mg、好ましくは約1.
0〜50mg、より好ましくは約1.0〜20mg投与
する。非経口的に投与する場合は、該化合物の1回投与
量は投与対象、対象疾患などによっても異なるが、例え
ば、本発明のDNAに対するプロモーター活性を阻害す
る化合物を注射剤の形で通常成人(60kgとして)の
心疾患の患者に投与する場合、一日につき該化合物を約
0.01〜30mg程度、好ましくは約0.1〜20m
g程度、より好ましくは約0.1〜10mg程度を静脈
注射により投与するのが好都合である。他の動物の場合
も、60kg当たりに換算した量を投与することができ
る。このように、本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動
物は、本発明のDNAに対するプロモーターの活性を促
進または阻害する化合物またはその塩をスクリーニング
する上で極めて有用であり、本発明のDNA発現不全に
起因する各種疾患の原因究明または予防・治療薬の開発
に大きく貢献することができる。また、本発明のタンパ
ク質のプロモーター領域を含有するDNAを使って、そ
の下流に種々のタンパクをコードする遺伝子を連結し、
これを動物の卵細胞に注入していわゆるトランスジェニ
ック動物(遺伝子移入動物)を作成すれば、特異的にそ
のポリペプチドを合成させ、その生体での作用を検討す
ることも可能となる。さらに上記プロモーター部分に適
当なレポータ遺伝子を結合させ、これが発現するような
細胞株を樹立すれば、本発明のタンパク質そのものの体
内での産生能力を特異的に促進もしくは抑制する作用を
持つ低分子化合物の探索系として使用できる。
【0052】本明細書および図面において、塩基やアミ
ノ酸などを略号で表示する場合、IUPAC−IUB
Commission on Biochemical Nomenclature による略号
あるいは当該分野における慣用略号に基づくものであ
り、その例を下記する。またアミノ酸に関し光学異性体
があり得る場合は、特に明示しなければL体を示すもの
とする。 DNA :デオキシリボ核酸 cDNA :相補的デオキシリボ核酸 A :アデニン T :チミン G :グアニン C :シトシン RNA :リボ核酸 mRNA :メッセンジャーリボ核酸 dATP :デオキシアデノシン三リン酸 dTTP :デオキシチミジン三リン酸 dGTP :デオキシグアノシン三リン酸 dCTP :デオキシシチジン三リン酸 ATP :アデノシン三リン酸 EDTA :エチレンジアミン四酢酸 SDS :ドデシル硫酸ナトリウム Gly :グリシン Ala :アラニン Val :バリン Leu :ロイシン Ile :イソロイシン Ser :セリン Thr :スレオニン Cys :システイン Met :メチオニン Glu :グルタミン酸 Asp :アスパラギン酸 Lys :リジン Arg :アルギニン His :ヒスチジン Phe :フェニルアラニン Tyr :チロシン Trp :トリプトファン Pro :プロリン Asn :アスパラギン Gln :グルタミン pGlu :ピログルタミン酸
【0053】また、本明細書中で繁用される置換基、保
護基および試薬を下記の記号で表記する。 Me :メチル基 Et :エチル基 Bu :ブチル基 Ph :フェニル基 TC :チアゾリジン−4(R)−カルボキサミド基 Tos :p−トルエンスルフォニル CHO :ホルミル Bzl :ベンジル Cl2−Bzl :2,6−ジクロロベンジル Bom :ベンジルオキシメチル Z :ベンジルオキシカルボニル Cl−Z :2−クロロベンジルオキシカルボニル Br−Z :2−ブロモベンジルオキシカルボニル Boc :t−ブトキシカルボニル DNP :ジニトロフェニル Trt :トリチル Bum :t−ブトキシメチル Fmoc :N−9−フルオレニルメトキシカルボニル HOBt :1−ヒドロキシベンズトリアゾール HOOBt :3,4−ジヒドロ−3−ヒドロキシ−4−オキソ− 1,2,3−ベンゾトリアジン HONB :1−ヒドロキシ−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボ キシイミド DCC :N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド
【0054】本願明細書の配列表の配列番号は、以下の
配列を示す。 〔配列番号:1〕実施例1−3)で得られた本発明のラ
ット由来新規遺伝子でコードされるタンパク質のアミノ
酸配列を示す。 〔配列番号:2〕実施例1で得られた本発明のラット由
来新規遺伝子の塩基配列を示す。 〔配列番号:3〕実施例1で得られた遺伝子断片の塩基
配列を示す。 〔配列番号:4〕実施例1で用いられたAP1プライマ
ーの塩基配列を示す。 〔配列番号:5〕実施例1で用いられたプライマーの塩
基配列を示す。 〔配列番号:6〕実施例1で得られた配列番号:2で表
される遺伝子の全塩基配列を示す。 〔配列番号:7〕実施例1で用いられたプライマーの塩
基配列を示す。 〔配列番号:8〕実施例1で用いられたプライマーの塩
基配列を示す。 〔配列番号:9〕実施例1で用いられたT7プライマー
の塩基配列を示す。 〔配列番号:10〕実施例1で用いられたSP6プライ
マーの塩基配列を示す。 〔配列番号:11〕実施例2で用いられたプライマーの
塩基配列を示す。 〔配列番号:12〕実施例3で用いられたプライマーの
塩基配列を示す。 〔配列番号:13〕実施例3で用いられたプライマーの
塩基配列を示す。 〔配列番号:14〕実施例3で用いられた蛍光プローブ
の塩基配列を示す。
【0055】後述の実施例1で得られた形質転換体Es
cherichia coli DH5α/pTB216
9は、2000年9月26日から大阪府大阪市淀川区十
三本町2−17−85(郵便番号532−8686)の
財団法人・発酵研究所(IFO)に受託番号IFO 1
6480として、2000年10月19日から日本国茨
城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6(郵便番号3
05−8566)の独立行政法人産業技術総合研究所
特許生物寄託センター(旧:通商産業省工業技術院生命
工学工業技術研究所(NIBH))に受託番号 FER
M BP−7331としてそれぞれ寄託されている。
【0056】
【実施例】以下に、実施例を挙げて本発明をさらに具体
的に説明するが、本発明はそれに限定されるものではな
い。なお、大腸菌を用いての遺伝子操作法は、モレキュ
ラー・クローニング(Molecular cloning), 2nd, J.Sa
mbrook et al., Cold Spring Harbor Lab. Press,1989
年に記載されている方法に従った。
【0057】実施例1 (1)心筋梗塞モデルラットの作製 渡邉らの報告(サーキュレーションリサーチ、第69
巻、370−377頁、1991年)に従い雄性ウイス
ターラット(11週齢:体重300−400g)をペン
トバルビタール(50mg/kg,i.p.)で麻酔
し、人工呼吸下で正中にて開胸した。心嚢膜を切開後、
心臓を露出させた。冠動脈の左前下行枝起始部で、糸付
き縫合針(エルプ社、5−0シルク)にて心筋ごと冠動
脈を絹糸で縛った後閉胸した。偽手術群は糸を縛らずに
閉胸した。麻酔から回復後、通常飼育した。 (2)Total RNAの抽出 術後1週経過、8週経過、20週経過、30週経過した
ラットをペントバルビタール麻酔下で開胸し、心臓を摘
出した後、生理食塩水で大動脈より逆行性に冠動脈を潅
流して血液を洗い流した。摘出した心臓からハサミで左
心室以外の組織を取り除いた後、梗塞形成を確認した後
に梗塞領域(スカー形成部位)を取り除き、非梗塞領域
のみとした。これをハサミで細かく細断した後、ISO
GEN(和光純薬社製)を用いてTotal RNAを
抽出した。 (3)新規ラットRGS5類似遺伝子のクローニング Total RNAからゲノムDNAを除去する目的で
enzyme setfor DD(宝酒造社製)を用い
てDNA分解操作を加えた後、Fluorescenc
e Differential Display kit
Fluorescein version(宝酒造社
製)を用いてディファレンシャルディスプレー(DD)
を行った。対照組織として偽手術した後8週経過した左
心室由来のTotal RNAを用いた。その結果、対
照組織と比較して術後1週、20週および30週経過し
た組織で顕著な増加を示し、術後8週で逆に低下するバ
ンドを見出した。このバンドをアクリルアミドゲルから
カッターで切り出し、滅菌蒸留水に懸濁し、95℃、1
0分間加熱することによりゲルから遺伝子断片を抽出し
た。次にPCRで再増幅した後、DNA塩基配列を解読
した。そこで明らかとなった塩基配列(配列番号:3)
を基に公のデータベースであるGenebleデータベ
ースを用いてBlastNによるホモロジー検索を行っ
たところ、その塩基配列からマウスG蛋白質シグナルレ
ギュレター(マウスRGS5;ジーンバンクアクセッシ
ョンナンバー:U67188)と約96%の高い相同性
を示すことが判明した。
【0058】次に、配列番号:3を基に5’RACE法
によって、その遺伝子断片の全長クローニングを行っ
た。クロンテック社製マラソンレディ心臓cDNAライ
ブラリーを鋳型として、AP1プライマー(配列番号:
4)と配列番号:5で表される塩基配列を有するプライ
マーの2種のプライマーDNAを用いてPCRを行い、
5’上流領域をクローニングした。塩基配列を解読した
結果、オープンリーディングフレーム(ORF)を含む
塩基配列(配列番号:6)を有していることが明らかと
なった。この配列を基に5’上流プライマー(配列番
号:7)と3’下流プライマー(配列番号:8)との2
種のプライマーDNAを用いてPCRを行い、ORFを
取得した(配列番号:2)。PCR反応はPfu DN
Aポリメラーゼ(東洋紡社製)を用いてサーマルサイク
ラーgene amp PCR system 9700
(パーキンエルマー社製)にて行い、95℃で10秒、
60℃で30秒、72℃で3分を1サイクルとして33
サイクルを繰り返した。得られた配列番号:2で表され
る塩基配列を有するDNAをZero Blunt T
OPO PCR cloning Kit(インビトロ
ジェン社製)を用いてpCR II−Blunt TOP
Oベクターにクローニングし、本プラスミドをpTB2
169と命名した。さらに公知の合成プライマー〔T7
プライマー(配列番号:9)およびSP6プライマー
(配列番号:10)〕を用い、PEアプライドバイオシ
ステムズ社のサイクルシーケンスキットによって反応を
行い、蛍光DNAシーケンサー(ABI PRISM
377,パーキンエルマー社製)で塩基配列を決定し、
新規なRGS蛋白質をコードする遺伝子であることを確
認した。上記pTB2169を大腸菌に導入した形質変
換体を大腸菌(Escherichia coli) D
H5α/pTB2169と命名した。また、配列番号:
2で表される塩基配列を有するDNAによりコードされ
るタンパク質(配列番号:1で表される181個のアミ
ノ酸残基)と、公知のマウスRGS5(181アミノ酸
残基)とは、アミノ酸配列が7個所で異なることが明ら
かとなった。
【0059】実施例2 正常ラットにおける遺伝子の組織分布の解析 ノーザンブロッティング用のプローブを得るために、実
施例1で得られた配列番号:2で表される塩基配列を有
するcDNAを鋳型とし、配列番号:8で表される塩基
配列を有するプライマーと配列番号:11で表される塩
基配列を有するプライマーとを用いて実施例1−(3)
と同様の方法でPCRを行った。ノーザンブロッティン
グ用膜はクロンテック社製ラットMTN Blotを用
いた。ハイブリダイゼーション溶液としてExpres
s Hyb Hybridization soluti
on(クロンテック社製)を使用して、68℃でプレハ
イブリダイゼーションを行った。一方、プローブとして
上記で調製したラットRGS類似遺伝子断片を[α−32
P]dCTPとBcaBEST LabelingKi
t(宝酒造社製)を用いて標識した。ハイブリダイゼー
ションは標識プローブを含むExpress Hyb H
ybridization solution(クロン
テック社製)中で68℃、1時間の条件で行った。膜は
最終的に0.1xSSC,0.1%SDS液中50℃で
洗浄し、検出にはBAS−2000(フジフィルム社製)
を用いた。結果を〔図1〕に示す。これより、本発明の
新規RGS遺伝子(配列番号:2)は、心臓が主要な発
現臓器であることが分かった。また脳、骨格筋にもある
程度の発現が認められた。
【0060】実施例3 心筋梗塞モデルラットでの遺伝子の経時変化の解析 実施例1−(2)で記載した心筋梗塞形成術後1週、8
週、20週および30週経過ラットの左心室の非梗塞領
域由来のTotal RNAと、その対象として用いた
偽手術後8週経過した左心室由来のTotal RNA
とから、TaqMan Reverse Transc
ription Reagents(PEアプライドバ
イオシステムズ社製)を用いてcDNAを合成した。次
に、プライマーとして配列番号:12および配列番号:
13で表される塩基配列を有するDNAを用い、プロー
ブとして配列番号:14で表される塩基配列を有するD
NA(PEアプライドバイオシステムズ社製)の蛍光ラ
ベル体を用い、PCRによる配列番号:2で表される塩
基配列を有するcDNAのコピー数の定量をABI P
rism 7700 sequence Detecti
on Systemによって行った。この反応は、Ta
qMan PCR Core Reagents kit
(PEアプライドバイオシステムズ社製)を使用し、方
法は添付されている説明書に従って行った。定量化用ス
タンダードの調製法を以下に記す。心筋梗塞形成術後1
週経過ラット左心室の非梗塞領域由来のTotal R
NAからTaqMan Reverse Transcr
iption Reagents(PEアプライドバイ
オシステムズ社製)を用いてcDNAを合成した。次に
プライマーとして配列番号:12および配列番号:13
で表される塩基配列を有するDNAを用いてPCRを行
い、得られた配列番号:2で表される塩基配列の部分配
列を有する遺伝子断片をそのスタンダードとした。更に
算出されたコピー数を内部コントロールとして配列番
号:2で表される塩基配列を有するcDNAのコピー数
と同様に算出したグリセロール3リン酸脱水素酵素のコ
ピー数で補正した後、対照組織のコピー数と比較し、そ
の変動率としてデータ化した。結果を〔図2〕に示す。
左心室における配列番号:2で表される塩基配列を有す
るcDNAのコピー数(発現量)をハウスキーピング遺
伝子であるグリセロール3リン酸脱水素酵素遺伝子のコ
ピー数で割ることにより補正した後、偽手術群の測定値
で割ることによって変動率を算出し、フォールドインク
リースとして縦軸に表示した。横軸には、用いた心不全
モデルの経過を追ったサンプル名を示した。Sham
8wは偽手術群、MI 1wは手術後1週経過、MI 8
wは手術後8週経過、MI 20wは手術後20週経
過、およびMI 30wは手術後30週経過した心臓を
分析した際のサンプル名を示した。これより、配列番
号:2で表される塩基配列を有するcDNAは術後1週
で増加(3.98倍)した後、術後8週で顕著に減少
(0.22倍)し、術後20週、30週で(それぞれ
5.84倍、3.27倍)増加することが明らかとなっ
た。
【0061】手術直後から1週経過時は、梗塞が形成さ
れつつある時期と考えられ、結窄された冠動脈から下流
領域の心筋細胞が急速に死滅、脱落し、リンパ球の浸潤
により炎症が生じていると推測される。また術後20週
から30週は死亡例が見られる直前であることから、術
後8週は代償機序が作動している時期であり術後20週
以降は十分な代償機序が作動していないか、または過剰
な代償機序により代償破綻が生じている時期であると考
えられる。そこで術後1週経過時を急性期、術後8週経
過時を慢性期、術後20週以降を末期と考えた。心筋梗
塞から心不全への移行に関わる代償機序は、次のように
考えられる。心筋細胞が脱落(壊死あるいはアポトーシ
ス)すると失った心筋細胞の有していた機能を心臓全体
で代償するために残存心筋細胞は肥大し、心拡張や線維
化を伴う心臓の再構築(心リモデリング)が生じる。こ
れによって機能的に心機能は代償されることになるが、
一方でこの心リモデリングあるいは過剰な代償機序その
ものが心不全を発症する危険性をはらんでいると考えら
れている(内科、第79巻、2−20頁、1997
年)。しかしながら代償破綻そのものに関与する分子は
未だ同定されておらず、従ってそのメカニズムも明らか
にされていない。上記実施例1で得られた配列番号:2
で表される塩基配列を有するcDNAは、慢性期に顕著
に低下し、末期で増加する。従って心臓の代償機序と代
償破綻に関与することが推定でき、この遺伝子の発現を
正常化することによって病態を改善できると考えられ
る。この遺伝子の発現を適切にコントロール(発現低下
は過剰な代償機序を誘導し、発現増加は代償破綻を加速
する)することにより、過剰な代償機序と代償破綻をと
もに抑制し、心疾患予防・治療薬として有用である。
【0062】
【発明の効果】配列番号:1で表されるアミノ酸配列と
同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタ
ンパク質またはその塩は新規であり、該タンパク質また
はその塩の活性を調節する化合物またはその塩、および
該タンパク質またはその塩の活性を調節する抗体は、例
えば、心疾患などの予防・治療剤として使用することが
できる。該タンパク質またはその塩をコードするDNA
に相補もしくは実質的相補な塩基配列を有するアンチセ
ンスヌクレオチドは、該タンパク質またはその塩の発現
を抑制することができ、例えば、心疾患などの予防・治
療剤として使用することができる。また本発明のDNA
導入動物およびノックアウト動物の作出は心疾患および
関連疾病の原因究明、および予防・治療法に有用であ
る。
【0063】
【配列表】 SEQUENCE LISTING <110> Takeda Chemical Industries, Ltd. <120> New disease-related gene and its use <130> P01-0237 <150> JP 2000-319912 <151> 2000-10-19 <150> JP 2000-350183 <151> 2000-11-16 <160> 14 <210> 1 <211> 181 <212> PRT <213> Rat <400> 1 Met Cys Lys Gly Leu Ala Ala Leu Pro His Ser Cys Leu Glu Arg Ala 5 10 15 Lys Glu Ile Lys Ile Lys Leu Gly Ile Leu Leu Gln Lys Pro Asp Ser 20 25 30 Ala Val Asp Leu Val Ile Pro Tyr Asn Glu Lys Pro Glu Lys Pro Ala 35 40 45 Lys Ala His Lys Pro Ser Leu Glu Glu Val Leu Gln Trp Arg Gln Ser 50 55 60 Leu Asp Lys Leu Leu Gln Ser Asn Tyr Gly Phe Ala Ser Phe Lys Ser 65 70 75 80 Phe Leu Lys Ser Glu Phe Ser Glu Glu Asn Leu Glu Phe Trp Val Ala 85 90 95 Cys Glu Asn Tyr Lys Lys Ile Lys Ser Pro Ile Lys Met Ala Glu Lys 100 105 110 Ala Lys Gln Ile Tyr Glu Glu Phe Ile Gln Thr Glu Ala Pro Lys Glu 115 120 125 Val Asn Ile Asp His Phe Thr Lys Asp Ile Thr Met Lys Asn Leu Val 130 135 140 Glu Pro Ser Pro His Ser Phe Asp Leu Ala Gln Lys Arg Ile Tyr Ala 145 150 155 160 Leu Met Glu Lys Asp Ser Leu Pro Arg Phe Val Arg Ser Glu Phe Tyr 165 170 175 Lys Glu Leu Ile Asn 180 <210> 2 <211> 543 <212> DNA <213> Rat <400> 2 atgtgtaagg gactggcagc tctgccacac tcatgcctgg aaagggccaa agagatcaag 60 atcaaattgg gtattcttct ccagaagcca gactctgctg ttgaccttgt cattccatat 120 aatgagaagc cggagaagcc tgccaaggcg cacaagccct cgctggagga ggtcctgcaa 180 tggcgccaat ccctggacaa acttctccag agcaactacg gatttgccag cttcaaaagt 240 ttcctgaagt ctgaattcag tgaggaaaac cttgagttct gggttgcctg tgagaattac 300 aagaagatca agtcccccat caaaatggca gagaaggcaa agcaaatcta tgaagaattc 360 atccagacag aggcccctaa agaggtgaac attgaccact tcactaaaga catcaccatg 420 aagaacctgg tggaaccttc ccctcacagc tttgacctgg cccagaaaag gatctacgcc 480 ctgatggaga aggattctct gccccgcttc gtgcgctctg agttttataa ggagttaatc 540 aac 543 <210> 3 <211> 378 <212> DNA <213> Rat <400> 3 atcaaaatgg cagagaaggc aaagcaaatc tatgaagaat tcatccagac agaggcccct 60 aaagaggtga acattgacca cttcactaaa gacatcacca tgaagaacct ggtggaacct 120 tcccctcaca gctttgacct ggcccagaaa aggatctacg ccctgatgga gaaggattct 180 ctgccccgct tcgtgcgctc tgagttttat aaggagttaa tcaactagta attgggtcag 240 gcatcaaaaa gtcaccctgt gagttgagtt acatcctcta gagcagtaca gcatccccta 300 ggcacctgca catttctcca tagcagcttt gctccaagac acccaaacat aggcgaacca 360 caggccgtgt tgctaact 378 <210> 4 <211> 27 <212> DNA <213> Artificial Sequence <220> <223> AP1 Primer <400> 4 ccatcctaat acgactcact atagggc 27 <210> 5 <211> 20 <212> DNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Primer <400> 5 agttagcaac acggcctgtg 20 <210> 6 <211> 817 <212> DNA <213> Rat <400> 6 tccatcataa tacgactcac tatagggctc gagcgccgcc cgggcaggtg tttccacaga 60 cttacttgtt cgtctgttga gaggttcgtg ctcaagttga ggacttgagc cgcgcgccaa 120 aatgtgtaag ggactggcag ctctgccaca ctcatgcctg gaaagggcca aagagatcaa 180 gatcaaattg ggtattcttc tccagaagcc agactctgct gttgaccttg tcattccata 240 taatgagaag ccggagaagc ctgccaaggc gcacaagccc tcgctggagg aggtcctgca 300 atggcgccaa tccctggaca aacttctcca gagcaactac ggatttgcca gcttcaaaag 360 tttcctgaag tctgaattca gtgaggaaaa ccttgagttc tgggttgcct gtgagaatta 420 caagaagatc aagtccccca tcaaaatggc agagaaggca aagcaaatct atgaagaatt 480 catccagaca gaggccccta aagaggtgaa cattgaccac ttcactaaag acatcaccat 540 gaagaacctg gtggaacctt cccctcacag ctttgacctg gcccagaaaa ggatctacgc 600 cctgatggag aaggattctc tgccccgctt cgtgcgctct gagttttata aggagttaat 660 caactagtaa ttgggtcagg catcaaaaag tcaccctgtg agttgagtta catcctctag 720 agcagtacag catcccctag gcacctgcac atttctccat agcagctttg ctccaagaca 780 cccaaacata ggcgaaccac aggccgtgtt gctaact 817 <210> 7 <211> 21 <212> DNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Primer <400> 7 cgggcaggtg tttccacaga c 21 <210> 8 <211> 22 <212> DNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Primer <400> 8 ggtgtcttgg agcaaagctg ct 22 <210> 9 <211> 17 <212> DNA <213> Artificial Sequence <220> <223> T7 Primer <400> 9 taatacgact cactata 17 <210> 10 <211> 18 <212> DNA <213> Artificial Sequence <220> <223> SP6 Primer <400> 10 atttaggtga cactatag 18 <210> 11 <211> 24 <212> DNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Primer <400> 11 atcaaaatgg cagagaaggc aaag 24 <210> 12 <211> 21 <212> DNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Primer <400> 12 tgacctggcc cagaaaagga t 21 <210> 13 <211> 21 <212> DNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Primer <400> 13 aaaactcaga gcgcacgaag c 21 <210> 14 <211> 28 <212> DNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Probe <400> 14 tacgccctga tggagaagga ttctctgc 28
【図面の簡単な説明】
【図1】ノーザンブロッティング法による正常ラットで
の本発明の遺伝子の組織分布を示す。
【図2】心筋梗塞モデルラットでの配列番号:2で表さ
れる塩基配列を有するcDNAの経時変化を示す。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) A61P 9/04 C07K 14/47 4C084 9/10 16/18 4C086 C07K 14/47 C12N 1/15 4H045 16/18 1/19 C12N 1/15 1/21 1/19 C12P 21/02 C 1/21 C12Q 1/02 5/10 G01N 33/15 Z C12P 21/02 33/50 Z C12Q 1/02 33/53 D G01N 33/15 M 33/50 33/566 33/53 C12N 15/00 ZNAA 5/00 A 33/566 A61K 37/02 Fターム(参考) 2G045 AA25 AA40 BA11 BB50 DA12 DA13 DA14 DA36 FB02 FB03 4B024 AA01 AA11 BA80 CA04 CA11 DA01 DA02 DA05 DA11 EA01 EA02 EA03 EA04 FA02 GA11 HA01 HA11 4B063 QA08 QA18 QA19 QQ08 QQ42 QQ52 QQ79 QR08 QR33 QR42 QR59 QR62 QR77 QR80 QS05 QS36 QX02 4B064 AG01 CA01 CA19 CC24 DA01 DA13 4B065 AA01X AA57X AA87X AA90Y AB01 AB02 BA01 BA08 CA24 CA25 CA44 4C084 AA02 AA06 AA13 AA17 BA01 BA08 BA22 BA23 CA18 CA25 CA53 CA59 DC50 NA14 ZA362 ZA402 4C086 AA01 AA02 AA03 AA04 EA16 MA01 MA04 NA14 ZA36 ZA40 4H045 AA10 AA11 AA20 AA30 BA10 CA40 DA00 DA76 EA23 EA50 FA72 FA74

Claims (24)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 配列番号:1で表されるアミノ酸配列と
    同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を有するタン
    パク質またはその塩。
  2. 【請求項2】 配列番号:1で表されるアミノ酸配列を
    含有するタンパク質またはその塩。
  3. 【請求項3】 請求項1記載のタンパク質の部分ペプチ
    ドまたはその塩。
  4. 【請求項4】 請求項1記載のタンパク質もしくはその
    塩または請求項3記載の部分ペプチドもしくはその塩を
    コードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチ
    ド。
  5. 【請求項5】 DNAである請求項4記載のポリヌクレ
    オチド。
  6. 【請求項6】 配列番号:2で表される塩基配列を含有
    する請求項5記載のDNA。
  7. 【請求項7】 請求項4記載のポリヌクレオチドを含有
    する組換えベクター。
  8. 【請求項8】 請求項7記載の組換えベクターで形質転
    換された形質転換体。
  9. 【請求項9】 請求項8記載の形質転換体を培養し、請
    求項1記載のタンパク質もしくはその塩または請求項3
    記載の部分ペプチドまたはその塩を生成、蓄積せしめ、
    これを採取することを特徴とする請求項1記載のタンパ
    ク質もしくはその塩または請求項3記載の部分ペプチド
    もしくはその塩の製造方法。
  10. 【請求項10】 請求項1記載のタンパク質もしくはそ
    の塩または請求項3記載の部分ペプチドもしくはその塩
    を含有してなる医薬。
  11. 【請求項11】 請求項1記載のタンパク質もしくはそ
    の塩または請求項3記載の部分ペプチドもしくはその塩
    に対する抗体。
  12. 【請求項12】 請求項11記載の抗体を含有する診断
    薬。
  13. 【請求項13】 請求項1記載のタンパク質もしくはそ
    の塩または請求項3記載の部分ペプチドもしくはその塩
    を用いることを特徴とする、請求項1記載のタンパク質
    もしくはその塩または請求項3記載の部分ペプチドもし
    くはその塩の活性を調節する化合物またはその塩のスク
    リーニング方法。
  14. 【請求項14】 請求項1記載のタンパク質もしくはそ
    の塩または請求項3記載の部分ペプチドもしくはその塩
    が、請求項1記載のタンパク質もしくはその塩または請
    求項3記載の部分ペプチドもしくはその塩をコードする
    DNAを含有するDNAで形質転換された形質転換体の
    細胞質内に発現されたものである請求項13記載のスク
    リーニング方法。
  15. 【請求項15】 請求項1記載のタンパク質もしくはそ
    の塩または請求項3記載の部分ペプチドもしくはその塩
    を含有することを特徴とする、請求項1記載のタンパク
    質もしくはその塩または請求項3記載の部分ペプチドも
    しくはその塩の活性を調節する化合物またはその塩のス
    クリーニング用キット。
  16. 【請求項16】 請求項13記載のスクリーニング方法
    または請求項15記載のスクリーニング用キットを用い
    て得られる、請求項1記載のタンパク質もしくはその塩
    または請求項3記載の部分ペプチドもしくはその塩の活
    性を調節する化合物またはその塩。
  17. 【請求項17】 請求項16記載の化合物またはその塩
    を含有してなる医薬。
  18. 【請求項18】 心疾患の予防・治療剤である請求項1
    7記載の医薬。
  19. 【請求項19】 請求項1記載のタンパク質もしくはそ
    の塩または請求項3記載の部分ペプチドもしくはその塩
    をコードするDNAに相補的もしくは実質的に相補的な
    塩基配列を有するアンチセンスヌクレオチド。
  20. 【請求項20】 請求項19記載のアンチセンスヌクレ
    オチドを含有してなる医薬。
  21. 【請求項21】 請求項4記載のポリヌクレオチドを含
    有してなる医薬。
  22. 【請求項22】 請求項4記載のポリヌクレオチドを含
    有してなる診断薬。
  23. 【請求項23】 哺乳動物に対して、請求項16記載の
    化合物またはその塩の有効量を投与することを特徴とす
    る心疾患の予防・治療方法。
  24. 【請求項24】 心疾患の予防・治療剤を製造するため
    の請求項16記載の化合物またはその塩の使用。
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