JP2002352416A - 磁気記録媒体及びその製造方法 - Google Patents

磁気記録媒体及びその製造方法

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JP2002352416A
JP2002352416A JP2001155350A JP2001155350A JP2002352416A JP 2002352416 A JP2002352416 A JP 2002352416A JP 2001155350 A JP2001155350 A JP 2001155350A JP 2001155350 A JP2001155350 A JP 2001155350A JP 2002352416 A JP2002352416 A JP 2002352416A
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JP2001155350A
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English (en)
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Hideki Okumura
英樹 奥村
Yukikazu Ochi
幸和 大地
Taiji Shinokawa
泰治 篠川
Yasuhiro Nishizawa
康弘 西澤
Masaki Matsui
正樹 松井
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Panasonic Holdings Corp
Original Assignee
Matsushita Electric Industrial Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 テープ状の磁気記録媒体において幅方向に湾
曲するカールの発生を抑制する。 【解決手段】 非磁性支持体(1)の磁性層(2)を有
する面とは反対の面に、第1バックコート層(5)を金
属の真空蒸着により形成し、第2バックコート層(6)
を、非磁性粒子および結合剤を含む塗布液を第1バック
コート層の上に塗布し、これを温度Td(℃)で乾燥し
た後、温度Ta(℃)でアニール処理することにより形
成するとともに、その形成に際し、Td(℃)、Ta
(℃)および第2バックコート層の結合剤のガラス転移
温度Tg(℃)を、Td>TaおよびTa≦Tg≦Ta
+15の関係を満たすように選択することによって、カ
ールの発生が抑制された、実用信頼性の高い高密度磁気
記録媒体を得る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、非磁性支持体の一
方の面に磁性層(即ち、記録層)を、他方の面にバック
コート層を有する磁気記録媒体およびその製造方法に関
し、特に磁性層が高密度磁気記録に適した強磁性金属薄
膜である磁気記録媒体およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、磁気記録分野においては、より多
くの情報を記録し得る、より小型の磁気記録媒体が要求
されている。
【0003】この要求を満たす1つの方法として、強磁
性金属が蒸着されて成る金属薄膜で磁性層を構成し、磁
性層そのものを高密度記録に適したものにする方法があ
る。そのような方法で磁性層が構成される磁気記録媒体
は、一般に金属薄膜型磁気記録媒体または高密度磁気記
録媒体と称されている。
【0004】また、前記要求を満たす別法として、磁気
記録媒体をより薄くし、所定寸法のパッケージにより多
くの磁気記録媒体が収納されるようにする方法がある。
この方法によれば、省資源および低コストといった効果
ももたらされる。
【0005】磁気記録媒体を薄くする最も効果的な方法
は、磁気記録媒体の厚みの多くを占める非磁性支持体の
厚さを薄くすることである。しかし、非磁性支持体の厚
さを小さくすると、磁気記録媒体の剛性(スティフネ
ス)が小さくなり、実用上問題が生じる場合がある。
【0006】そこで、非磁性支持体の磁性層が形成され
ている面とは反対の面に形成されるバックコート層を金
属の蒸着により形成した金属薄膜とし、この金属薄膜を
補強層として作用させることによって剛性を確保した磁
気記録媒体が提案されている。そのような磁気記録媒体
は、例えば特開平2−132628号公報、特開平7−
37244号公報、特開平7−85466号公報、特開
平10−27328号公報および特開平10−1059
41号公報等に記載されている。
【0007】金属薄膜から成るバックコート層は、湿式
塗布法により形成される一般的なバックコート層、即
ち、カーボン粒子およびポリエステル樹脂等を溶媒に溶
解および/または分散させた塗布液を塗布した後、乾燥
することにより形成したバックコート層と比較して、磁
気記録媒体全体の剛性をより大きくする。したがって、
金属薄膜でバックコート層を形成すれば、非磁性支持体
をより薄くすることが可能となる。
【0008】非磁性支持体の一方の面に磁性層が、他方
の面に金属薄膜から成るバックコート層が形成された高
密度磁気記録媒体の一例を、図2を参照して説明する。
【0009】図2に示す高密度磁気記録媒体(110)
は、非磁性支持体(11)の一方の面に形成された磁性層
(12)、磁性層(12)の上に形成された保護層(13)、
および保護層(13)の上に形成された潤滑剤層(14)、
ならびに非磁性支持体の他方の面に形成された金属薄膜
から成るバックコート層(15)を有する。
【0010】非磁性支持体(11)はポリエチレンテレフ
タレート、ポリエチレンナフタレート、ポリパラテトラ
アミド(以下、順にPET、PEN、PPTAと略する
場合がある)等の非磁性体から成る。これらの材料から
成る非磁性支持体の磁性層と接する側の面には、SiO
2もしくはZnO等の無機物質から成る超微粒子または
イミド等の有機物質から成る超微粒子が分散・固着され
ている場合が多い。非磁性支持体(11)の厚さは一般に
約2〜7μmである。
【0011】磁性層(12)は強磁性金属薄膜である。磁
性層(12)は、例えばCo、NiもしくはFeのような
強磁性金属、またはこれらを主成分とする合金から成
る。磁性層(12)は単層または多層構造を有する。磁性
層(12)は、例えば連続的に金属蒸気の入射角を変化さ
せる斜方蒸着法等によって形成される。斜方蒸着を酸素
雰囲気下で実施すると、磁性層は酸素を含むものとな
る。あるいは、磁性層(12)は垂直磁化膜であってよ
い。垂直磁化膜は、例えばCo−CrまたはCoを必要
に応じて酸素雰囲気中で傾斜蒸着させることにより形成
される。磁性層(12)の厚さは一般に30〜300nmで
ある。
【0012】保護層(13)は、外から加えられる力等に
よって磁性層(12)がダメージ(損傷)を受けることを
防止するために形成される。保護層(13)を構成する材
料は、例えばダイヤモンドライクカーボンのような硬度
の大きい物質である。保護層(13)の厚さは一般に1〜
100nmである。
【0013】潤滑剤層(14)は、磁気記録媒体の走行性
を向上させるために形成される。潤滑剤層(14)は、例
えばパーフルオロポリエーテルまたは含フッ素カルボン
酸の潤滑剤が塗布されて形成された層である。潤滑剤層
(14)の厚さは一般に0.05〜10nmである。
【0014】図示した態様において、バックコート層
(15)は金属薄膜から成る。バックコート層(15)は、
適当な金属を例えば蒸着させて形成することができる。
蒸着は酸素存在下で実施してよく、その場合、バックコ
ート層(15)は金属酸化物を含む金属薄膜となる。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】バックコート層を金属
薄膜とすることにより、磁気記録媒体全体の剛性を大き
くすることができ、したがって磁気記録媒体を薄型化す
ることが可能となる。しかし、金属薄膜をバックコート
層として形成すると、テープ状の磁気記録媒体の幅方向
においてカール(湾曲)が生じやすくなる。例えば、金
属薄膜をアルミニウムで形成した場合、カールは、図3
に示すようにテープのバックコート層側表面が凸となる
ように生じる傾向にある。
【0016】カールの発生は、磁気記録媒体の走行性に
悪影響を及ぼす。また、テープ状の磁気記録媒体にカー
ルが生じると、磁気記録媒体と磁気ヘッドとの接触状態
が不良となるために、エンベロープ不良が発生する。エ
ンベロープ不良は再生信号の品質低下をもたらす。
【0017】このように、金属薄膜でバックコート層を
形成すると、剛性の大きい磁気記録媒体を得ることがで
きる一方で、カールの発生という実用上無視し得ない問
題を招く。本発明はかかる実情に鑑みてなされたもので
あり、非磁性支持体の一方の面に磁性層を、他方の面に
バックコート層を有して成る磁気記録媒であって、全体
として適当な剛性を有し、かつカールの発生が抑制され
た磁気記録媒体およびその製造方法を提供することを課
題とする。
【0018】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するた
め、本発明は、非磁性支持体の一方の面に磁性層を有
し、他方の面にバックコート層を有して成る磁気記録媒
体であって、バックコート層が第1バックコート層と第
1バックコート層の上に形成された第2バックコート層
から構成され、第1バックコート層が金属薄膜から成
り、第2バックコート層が、非磁性粒子および結合剤を
含む塗布液を塗布した後、温度Td(℃)で乾燥し、さ
らにTdよりも低い温度Ta(℃)でアニール処理する
ことにより形成された層であって、結合剤のガラス転移
温度Tg(℃)がTa≦Tg≦Ta+15である磁気記
録媒体を提供する。
【0019】本発明の磁気記録媒体は、 i)バックコート層が、金属薄膜から成る第1バックコ
ート層、ならびに湿式塗布法により形成された、非磁性
粒子および結合剤を含んで成る第2バックコート層から
構成されること、ならびに ii)第2バックコート層がアニール処理されたものであ
って、アニール処理を実施する温度(即ち、アニール温
度)Ta(℃)および結合剤のガラス転移温度Tg
(℃)がTa≦Tg≦Ta+15の関係を満たすことを
特徴とする。このバックコート層において、上記特徴を
有する第2バックコート層は幅方向で収縮しようとする
性質を有すると考えられる。したがって、この第2バッ
クコート層は、バックコート層側表面が凸となるカール
をフラットにするのに特に有効であると考えられる。
【0020】かかる構成を有する本発明の磁気記録媒体
は、第1バックコート層により磁気記録媒体全体の剛性
が確保され、第2バックコート層により第1バックコー
ト層の形成に起因して生じるカールの発生が抑制された
ものとなる。したがって、本発明の磁気記録媒体は、剛
性が大きく優れた耐久性を示すとともに、カールの発生
に起因するエンベロープ不良の発生が極めて抑制され
た、ヘッドタッチの良好なものとなるから、より高い実
用信頼性を示す。また、本発明の磁気記録媒体は、剛性
が大きいから、非磁性支持体の厚さを薄くして構成する
ことができ、したがって長時間記録が可能な製品とする
ことができる。
【0021】本発明の磁気記録媒体に発生するカール
は、その高さが実用上問題を生じない程度に小さい(即
ち、曲率が小さい)ものである。本発明の磁気記録媒体
は、具体的には、初期カールの高さ、および60℃、5
〜20%RH(相対湿度)にて144時間保存した後に
発生する保存後カールの高さが、いずれも−500μm
〜+500μmの範囲内にあるものである。
【0022】カールの高さはテープ状の磁気記録媒体を
幅方向に沿って切断した断面において、エッジが位置す
る面を基準としたときの弧の頂点の高さに相当する。初
期カールとは、磁気記録媒体を製造した直後に磁気記録
媒体に生じているカールをいう。また、「−(マイナ
ス)」の符号は磁性層側表面が凸となるようにカールし
ていることを、「プラス(+)」の符号はバックコート
層側表面が凸となるようにカールしていることを表す。
本発明の磁気記録媒体は初期および保存後カールの高さ
がともに低いものであるから、長期間保管しても、カー
ルに起因する出力低下等の問題が発生しない。
【0023】本発明はまた、非磁性支持体の一方の面に
磁性層を有し、他方の面にバックコート層を有し、バッ
クコート層が第1バックコート層と第1バックコート層
の上に形成された第2バックコート層から構成された磁
気記録媒体の製造方法であって、第1バックコート層を
金属の真空蒸着により形成すること、ならびに第2バッ
クコート層を、非磁性粒子および結合剤を含む塗布液を
第1バックコート層の上に塗布した後、温度Td(℃)
で乾燥し、さらに温度Ta(℃)でアニール処理するこ
とにより形成することを含み、Td(℃)、Ta(℃)
および第2バックコート層の結合剤のガラス転移温度T
g(℃)が、Td>TaおよびTa≦Tg≦Ta+15
の関係を満たすように選択される製造方法を提供する。
【0024】本発明の磁気記録媒体の製造方法は、第2
バックコート層の形成工程がアニール処理を含み、第2
バックコート層の形成工程において乾燥を実施する温度
(即ち、乾燥温度)Td(℃)、アニールを実施する温
度Ta(℃)、および第2バックコート層の結合剤のガ
ラス転移温度Tg(℃)を上記の関係を満たすように選
択することを特徴とする。かかる特徴により、バックコ
ート層として金属薄膜を有する場合でも、カールの発生
が抑制される磁気記録媒が得られる。カールの発生が抑
制されるのは、Td(℃)、Ta(℃)およびTg
(℃)が上記の関係を満たすことによって、先に説明し
たように第2バックコート層がテープの幅方向において
収縮する性質を有し、それによりカールをフラットにす
るためであると考えられる。
【0025】
【発明の実施の形態】以下、本発明の具体的な形態を説
明する。以下の説明を含む本明細書において、磁気記録
媒体を構成する各層または膜の「表面」とは、各層また
は膜が形成されたときに露出している面、即ち、各層ま
たは膜の非磁性支持体から遠い側の面を意味する。磁気
記録媒体の構成に関して、磁気記録媒体を構成する各層
または膜の「上に」というときは、特に断りのない限
り、各層または膜の「非磁性支持体から遠い側の面の上
に」を意味する。したがって、例えば、「第1バックコ
ート層の上に」というときは、「第1バックコート層の
非磁性支持体から遠い側の面に隣接する位置に」を意味
する。また、各層または膜の「上方に」というときは、
各層または膜から「非磁性支持体から遠ざかる方向に離
れた位置に」を意味する。
【0026】本明細書において、磁気記録媒体の「磁性
層側表面」とは、磁気記録媒体の露出表面であって、磁
性層の上もしくは上方に形成された層または膜の露出表
面をいう。したがって、例えば、磁性層の上に保護層が
形成され、保護層の上に潤滑剤層が形成されている場
合、当該潤滑剤層の露出表面が「磁性層側表面」に相当
する。磁気記録媒体の「バックコート層側表面」とは、
磁気記録媒体の露出表面であって、バックコート層の表
面、あるいはバックコート層の上または上方に形成され
た層もしくは膜の露出表面をいう。本発明の磁気記録媒
体は第1バックコート層の上に第2バックコート層が形
成されたものであるから、第2バックコート層の露出表
面が「バックコート層側表面」に相当する。第2バック
コート層の上に更に別の層が形成されている場合には、
当該別の層の露出表面が「バックコート層側表面」に相
当する。
【0027】最初に、本発明の磁気記録媒体を構成する
バックコート層について説明する。バックコート層は、
第1バックコート層と第2バックコート層の2層で構成
される。第1バックコート層は、非磁性支持体の磁性層
が形成される面とは反対の面に形成され、第2バックコ
ート層は第1バックコート層の上に形成される。
【0028】第1バックコート層は金属薄膜である。金
属薄膜は、磁性層の磁性に悪影響を及ばさないよう、非
磁性体の金属から成るものであることが好ましい。第1
バックコート層は、例えば、Ti、Cr、Mn、Fe、
Al、Cu、Zn、Sn、Ni、Ag、PbおよびCo
ならびにこれらの合金等から成るグループから選択され
る1または複数の金属材料を用いて形成される。Fe、
NiおよびCoは磁性体であるから、これらを使用する
場合には、酸化して非磁性体にした状態で第1バックコ
ート層中に存在させることが好ましい。金属薄膜は、単
層膜の形態であってもよく、あるいは多層膜の形態であ
ってもよい。金属薄膜の厚さは10〜300nmとするこ
とが好ましい。
【0029】金属薄膜は、非磁性支持体の磁性層が位置
する面とは反対の面(以下バック面とも呼ぶ)に形成さ
れる。金属薄膜は、好ましくは、スパッタ法、真空蒸着
法、イオンプレーティング法、またはプラズマCVD法
等により形成される。
【0030】金属薄膜をアルミニウムの真空蒸着等によ
り形成する場合、金属薄膜は酸素雰囲気中で形成し、金
属薄膜がアルミニウムの酸化物を含むようにすることが
好ましい。酸化物を含むアルミニウムの薄膜は優れた耐
食性を有する。金属薄膜は酸化アルミニウムの他に金属
と結合してない酸素を含んでいてよい。
【0031】第2バックコート層は湿式塗布法により第
1バックコート層の上に形成される膜である。第2バッ
クコート層は、具体的には、非磁性粒子および結合剤を
適当な溶媒に溶解し及び/または分散させた塗布液を調
製し、この塗布液を第1バックコート層の上に塗布した
後、乾燥して溶媒を蒸発させ、さらにアニール処理を実
施することにより形成される。
【0032】非磁性粒子および結合剤は、最終的に第2
バックコート層を構成する成分である。非磁性粒子は、
カーボンブラックのようなカーボン粒子、α−Fe23
および炭化カルシウムから選択される1または複数種の
粒子である。
【0033】結合剤は、そのガラス転移温度Tg(℃)
と第2バックコート層の形成工程におけるアニール処理
温度Ta(℃)とが、Ta≦Tg≦Ta+15の関係を
満たすように選択される。結合剤のガラス転移温度Tg
は、熱分析することにより測定される。アニール処理温
度Ta(℃)は、後述するように、第1および第2バッ
クコート層を構成する材料の種類、非磁性支持体の種
類、および非磁性支持体の上に磁性層が形成されている
場合には磁性層の材料の種類等を考慮して選択される。
したがって、結合剤は、Taを設定した後、Taおよび
Tgが上記関係を満たすように選択される。
【0034】例えば、後述するように、高分子フィルム
である非磁性支持体の上にコバルト系金属から成る磁性
層が形成され、第1バックコート層が酸素雰囲気下でA
lを真空蒸着することにより形成した金属薄膜である場
合、アニール処理温度は約60℃とすることが好まし
く、したがって、結合剤はTgが60〜75℃の範囲内
にある樹脂であることが好ましい。
【0035】あるいは、後述するように、結合剤を先に
選択し、そのTgに基づいてTaを設定してもよい。
【0036】TgがTaよりも低いと、バックコート層
の粘着性が大きくなり、好ましくない。TgがTa+1
5を越えると、第2バックコート層を形成してもカール
の発生が抑制されない。
【0037】結合剤としては、例えば、ポリウレタン樹
脂またはポリエステル樹脂を使用できる。両者は混合し
て使用してよい。
【0038】ポリウレタン樹脂の種類は、TgがTaと
上記の関係を満たす限りにおいて特に限定されない。好
ましくは、ポリエステル系のポリウレタンが用いられ
る。ポリエステル系のポリウレタンは、ポリエステルポ
リオールと、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメ
タンジイソシアネートまたはヘキサメチレンジイソシア
ネート等である有機ジイソシアネートとを反応させて得
たポリウレタンである。
【0039】ポリエステル樹脂は、ポリエチレンテレフ
タレート、ポリブチレンテレフタレート、および変性ポ
リエステル等のいずれであってもよい。
【0040】好ましくは、非磁性粒子および結合剤は、
第1バックコート層を形成する金属の種類に応じて、第
1バックコート層の形成に起因するカールの発生を有効
に抑制し得るように選択される。例えば、第1バックコ
ート層が酸素雰囲気下でAlを真空蒸着することにより
形成した金属薄膜である場合、非磁性粒子としてカーボ
ン粒子を、結合剤としてポリウレタン樹脂を用いること
が好ましい。
【0041】塗布液は、非磁性粒子および結合剤を、そ
の種類に応じて適当な溶媒に溶解し及び/または分散さ
せることにより調製する。溶媒は、例えば、メチルエチ
ルケトン、トルエン、シクロヘキサノンおよびシクロペ
ンタノンから選択される。溶媒は、これらの溶媒から選
択した2種以上の溶媒が混合されて成る混合溶媒であっ
てよい。
【0042】塗布液は必要に応じて、第2バックコート
層を形成する成分として、バリウムフェライト、硫酸バ
リウム、および炭酸カルシウムから選択される1または
複数の成分をさらに含んでよい。
【0043】第2バックコート層の厚さは、一般には2
00〜1000nmである。好ましくは、第2バックコー
ト層の厚さは、第1バックコート層の厚さとの関係にお
いて、カールの発生が有効に抑制されるように選択する
ことが好ましい。例えば、第1バックコート層の厚さが
30〜200nmである場合、第2バックコート層の厚さ
は200〜1000nmとすることが好ましい。
【0044】第2バックコート層の形成方法についてさ
らに詳細に説明する。非磁性粒子および結合剤を含む塗
布液の塗布は、リバースコーティング法、バーコーティ
ング法、グラビアコーティング法、ダイコーティング
法、またはディッピング法等により実施される。
【0045】塗布液の乾燥は、塗布液中の溶媒が蒸発す
るように実施する。乾燥条件は塗布液中に含まれる溶媒
の種類に応じて決定される。さらに、乾燥条件は、第1
バックコート層、非磁性支持体、および他の層(例えば
磁性層)が既に非磁性支持体上に形成されている場合に
は当該他の層に悪影響を及ぼさないように選択する必要
がある。乾燥は、一般には、乾燥温度Td(℃)を90
〜130℃に設定して実施する。より具体的には、乾燥
は、第1バックコート層を形成した非磁性支持体を20
〜40m/分の速度で走行させながら、50〜90℃の
温風を吹きつけることにより実施される。
【0046】乾燥が終了した後、アニール処理を実施す
る。アニール処理は、上記塗布および乾燥工程の間に膜
内に生じた、熱的な不均一性およびエネルギー的な歪み
を緩和する又は無くすために実施される。アニール処理
は、温度Ta(℃)の雰囲気中に、数時間〜数十時間、
第2バックコート層が形成された非磁性支持体を放置し
た後、徐冷することにより実施する。アニール処理を実
施する温度Ta(℃)は、第1バックコート層、非磁性
支持体、および他の層(例えば磁性層)が既に非磁性支
持体に形成されている場合には当該他の層に悪影響を及
ぼさない温度であって、Td(℃)よりも低く、結合剤
のTg(℃)とTa≦Tg≦Ta+15の関係を満たす
ように選択される。アニール処理は、具体的には、テー
プ状の磁気記録媒体を巻取軸に巻き取った状態にて、所
定の温度に設定した恒温槽内に放置することにより実施
する。このアニール処理を実施することにより、第2バ
ックコート層は硬化剤(架橋剤)を含んでいなくとも、
優れた耐久性を有するものとなる。
【0047】磁性層等への影響を考慮する必要があるた
めに、一般に、TdおよびTaが先に決定され、それに
基づいてTgが選択される。例えば、高分子フィルムで
ある非磁性支持体の上にコバルト系金属から成る磁性層
が形成され、第1バックコート層が酸素雰囲気下でAl
を真空蒸着することにより形成した金属薄膜であり、第
2バックコート層がカーボン粒子、ポリウレタン樹脂お
よびメチルエチルケトン/トルエン/シクロヘキサノン
の混合溶媒を含む塗布液で形成される場合、Td(℃)
を100℃とし、Ta(℃)を約60℃とすることが好
ましい。したがって、Tgは60〜75℃となるように
選択される。即ち、結合剤はTgがこの範囲内にあるポ
リウレタン樹脂から選択される。
【0048】尤も、結合剤が先に決定されている場合に
は、Tgに基づいてTaを決定し、Taに基づいてTd
を決定してよい。その場合、アニール処理温度Taは、
(Tg−15)以上Tg以下となるように、即ち、Tg
との間でTg−15≦Ta≦Tgの関係を満たすように
選択される。
【0049】本発明は、バックコート層の構成が上記の
ような構成である限りにおいて、任意の構成とすること
ができる。以下、上記において説明したバックコート層
以外の要素、即ち、非磁性支持体、磁性層ならびに必要
に応じて形成される保護層および潤滑剤層の構成を、図
面を参照して説明する。
【0050】図1は、本発明の磁気記録媒体の一例の断
面を模式的に示す。図1に示す磁気記録媒体(10)は磁
気テープであり、非磁性支持体(1)の一方の面に形成
された磁性層(2)、磁性層(2)の上に形成された保
護層(3)、保護層(3)の上に形成された潤滑剤層
(4)、ならびに非磁性支持体(1)の磁性層(2)が
形成された面とは反対の面に形成された第1バックコー
ト層(5)、および第1バックコート層(5)の上に形
成された第2バックコート層(6)を有する。
【0051】一般に、非磁性支持体(1)は高分子から
成るフィルムである。非磁性支持体(1)は常套の材料
および方法を用いて形成したものであってよい。第1バ
ックコート層(5)が磁気記録媒体に必要な剛性を確保
するので、非磁性支持体(1)の厚さは薄くてもよい。
具体的には、非磁性支持体(1)の厚さは2〜5μmで
あることが好ましい。非磁性支持体(1)の厚さが2μ
m未満であると表面に磁性層(2)を形成することが困
難となる。非磁性支持体(1)の厚さが5μmを越える
と磁気記録媒体全体に占める非磁性支持体の割合が大き
くなり、高密度磁気記録媒体としては不利である。
【0052】非磁性支持体(1)の材料および構造は特
に限定されない。例えば、非磁性支持体の材料は、PE
T、PENおよびPPTA等から成る群から選択でき
る。
【0053】磁気記録媒体の磁性層側表面の走行性を向
上させるために、非磁性支持体(1)の磁性層(2)が
形成される面(即ち、磁性層(2)と接する側の面)に
は超微粒子が分散し固着して、微細な突起が形成されて
いることが好ましい。超微粒子は、SiO2もしくはZ
nO等の無機物質またはイミド等の有機物質から成る直
径5〜50nmの超微粒子である。そのような超微粒子は
1μm2につき3〜150個、分散し固着していること
が望ましい。超微粒子は、非磁性支持体(1)のバック
面にも分散し固着していてよい。表面に微細な突起を有
する非磁性支持体は、超微粒子を含む高分子材料でフィ
ルムを製造することによっても得られる。表面に突起を
有する非磁性支持体の例は、特開平9−164644号
公報および特開平10−261215号公報等に開示さ
れている。
【0054】本発明の磁気記録媒体は、金属薄膜型磁気
記録媒体に好ましく適用される。金属薄膜型磁気記録媒
体を構成する磁性層(2)は強磁性金属薄膜である。磁
性層に適した強磁性金属としては、Fe系金属、Co系
金属、およびNi系金属がある。本発明において、磁性
層は好ましくはCo系金属で形成される。ここで、「C
o系金属」とは、コバルト、およびコバルトを主成分と
して好ましくは50原子%以上含む合金をいう。「Fe
系金属」および「Ni系金属」も同様である。
【0055】磁性層(2)は、具体的には、Fe、Co
およびNi、ならびにCo−Ni、Co−Fe、Co−
Cr、Co−Cu、Co−Pt、Co−Pd、Co−S
n、Co−Au、Fe−Cr、Fe−Co−Ni、Fe
−Cu、Ni−Cr、Fe−Co−Cr、Co−Ni−
Cr、Co−Pt−Cr、Fe−Co−Ni−Cr、M
n−BiおよびMn−Al等の合金から選択される1ま
たは複数の材料で形成される。磁性層は酸素を含んでい
てよく、酸素はこれらの金属または合金の酸化物の形態
で含まれていてよい。磁性層は、単層膜の形態であって
もよく、あるいは多層膜の形態であってもよい。また、
磁性層は記録に関与しない下地層を有していてよい。磁
性層の厚さは30〜200nmとすることが好ましい。
【0056】磁性層(2)は、例えば電子ビーム蒸着に
より形成される。具体的には、磁性層(2)は、Coも
しくはCo−Ni合金等の強磁性金属に所定範囲の入射
角で電子ビームを照射して金属を蒸発させ、これを、キ
ャン状回転体等の冷却回転支持体に沿って移動する非磁
性支持体表面に付着させることにより形成される。酸素
雰囲気中で蒸着を実施すれば、酸素を含む強磁性金属薄
膜が形成される。磁性層(2)は、これ以外の方法、例
えば、抵抗加熱法もしくは外熱るつぼ法等で金属を加熱
して実施する蒸着、イオンプレーティング、またはスパ
ッタリング等により形成することができる。
【0057】磁性層(2)は、磁性層の形成(または成
膜)速度の観点から、強磁性金属を斜方から非磁性支持
体の表面に付着させる斜方蒸着法によって形成すること
が好ましい。この場合、非磁性支持体の冷却回転支持体
は、キャン状回転体またはベルト状支持体であってよ
い。生産効率の点からは、蒸着領域の広いベルト状支持
体を用いることが望ましい。
【0058】保護層(3)は、例えば、スパッタリング
もしくはプラズマCVD等の方法で得られる、アモルフ
ァス状、グラファイト状もしくはダイヤモンド状の炭素
から成る炭素膜、あるいはそれらの炭素を混合および/
または積層して形成した炭素膜である。
【0059】保護層(3)は、特にダイヤモンド状の炭
素、すなわちダイヤモンドライクカーボンで形成するこ
とが好ましい。ダイヤモンドライクカーボンは適度な硬
度を有するため、磁性層側表面と接する走行系部材およ
び磁気ヘッドを損傷することなく、磁気記録媒体の損傷
を抑制することから、最も好ましい材料である。
【0060】いずれの材料を用いて保護層(3)を形成
する場合も、保護層(3)の厚さは1〜30nmであるこ
とが好ましい。
【0061】潤滑剤層(4)は、磁気記録媒体の潤滑剤
として汎用されている潤滑剤で形成してよい。潤滑剤
は、例えば、パーフルオロポリエーテルまたは含フッ素
カルボン酸等の含フッ素有機化合物であることが好まし
い。潤滑剤層(4)は、潤滑剤以外の成分として、例え
ば極圧剤、防錆剤等を含んでよい。潤滑剤層は、例え
ば、潤滑剤を適当な溶剤(溶媒)に溶解し又は分散させ
た塗布液を保護層(保護層が形成されていない場合には
磁性層)の上に塗布した後、溶剤を蒸発させることによ
り形成される。潤滑剤層の厚さは、好ましくは0.05
〜10nmであり、より好ましくは1〜10nmである。
【0062】第1バックコート層(5)および第2バッ
クコート層(6)に関しては先に説明したとおりである
から、ここではその詳細な説明を省略する。
【0063】このようにして形成される本発明の磁気記
録媒体は、カールの発生が極めて抑制されたものとな
る。具体的には、本発明の磁気記録媒体において幅方向
に発生する初期カールの高さ、および60℃、5〜20
%RHで144時間保存した後の保存後カールの高さ
は、−500μm〜+500μmとなる。即ち、本発明
の磁気記録媒体において、磁性層側表面およびバックコ
ート層側表面のいずれが凸となるように幅方向にカール
が生じても、その高さは500μm以下である。
【0064】カールの高さが大きいとエンベロープ特性
が悪化し、出力不安定および出力低下等を招く。500
μmという高さは、実用上問題のない再生出力を得るこ
とができる上限値に相当する。
【0065】
【実施例】以下、本発明を実施例により具体的に説明す
る。 (試験例1)磁気記録媒体の非磁性支持体として、厚さ
4.5μm、幅200mm、長さ1000mのPETフィ
ルムを用意した。このフィルムの磁性層形成面には、S
iO 2から成る直径30〜70nmの微粒子が1μm2あた
り5〜20個、均一に分散し固着していた。このフィル
ムのバックコート層を形成する面はSiO2から成る微
粒子およびバインダー等により荒らされ、その中心線平
均粗さ(Ra)は2.5〜3nmであった。
【0066】このPETフィルムに磁性層を斜方蒸着法
により連続的に形成した。磁性層は、Coを蒸発させ、
蒸発したコバルトを、冷却回転支持体であるベルト状支
持体上に沿って走行するPETフィルムの表面に付着さ
せて形成した。磁性層の厚さは200nmとした。
【0067】次に、蒸着装置を用いて、非磁性支持体の
磁性層が形成された面とは反対の面(バック面)に第1
バックコート層を形成した。その手順は次のとおりであ
る。まず、排気装置を用いて真空室内のガスを排出さ
せ、真空室内の圧力を7×10 -3Paとした。真空室内
には、キャン状支持体を設け、これに沿って非磁性支持
体を走行させることにより、蒸着を連続的に実施できる
ようにした。蒸着は、非磁性支持体の走行速度を5m/
分、蒸着領域の面積を0.05m2に設定し、アルミニ
ウム金属の入ったるつぼを加熱して、蒸発レートを0.
13μm/秒として実施した。蒸着中、蒸着領域の終端
付近に非磁性支持体から約10mm離して設置した酸素導
入ノズルより、酸素を非磁性支持体に向けて供給した。
第1バックコート層の厚さは200nmとした。前述のと
おり、非磁性支持体のバック面の中心線平均粗さが2.
5〜3.0nmであるために、第1バックコート層には8
nm以上60nm以下の間隙が形成されていた。
【0068】続いて、第1バックコート層の上に第2バ
ックコート層を次の手順に従って形成した。まず、下記
に示す組成の塗布液を調製した。 ・カーボンブラック(キャボット社製「BP−800」) 100重量部 ・ポリウレタン樹脂(Tg:20℃、東洋紡績製「UR−2300」) 80 重量部 ・メチルエチルケトン 540重量部 ・トルエン 520重量部 ・シクロヘキサノン 550重量部 塗布液は、上記組成物をニーダにて十分に混練混合した
後、サンドグラインドミルにて分散させ、分散液を平均
孔径0.5μmのフィルタでろ過することにより調製し
た。
【0069】上記塗布液を第1バックコート層の表面に
ダイコーターで塗布した。次いで、テープの送り速度を
30m/分として、100℃の乾燥炉で乾燥した後、テ
ープを巻き取った。続いて、巻き取ったテープをアニー
ル処理に付した。アニール処理は、60℃の空気中にテ
ープを48時間放置した後、徐冷することにより実施し
た。
【0070】次に、磁性層の上に、メタンをイオン化す
るプラズマCVD法によって厚さ10nmのダイヤモンド
ライクカーボンから成る保護層を形成した。さらに、保
護層上に、含フッ素カルボン酸系潤滑剤を有機溶媒に溶
解した溶液を塗布し、乾燥させて、厚さ4nmの潤滑剤層
を形成した。以上のようにして作製した試料を1/4イ
ンチ幅にスリットしてテープ状の磁気記録媒体を得た。
【0071】(試験例2)下記の組成の塗布液を調製
し、これを使用して第2バックコート層を形成したこと
を除いては、試験例1と同様にしてテープ状の磁気記録
媒体を得た。 ・カーボンブラック(キャボット社製「BP−800」) 100重量部 ・ポリウレタン樹脂(Tg:72℃、東洋紡績製「UR−8200」) 80 重量部 ・メチルエチルケトン 540重量部 ・トルエン 520重量部 ・シクロヘキサノン 550重量部
【0072】(試験例3)下記の組成の塗布液を調製
し、これを使用して第2バックコート層を形成したこと
を除いては、試験例1と同様にしてテープ状の磁気記録
媒体を得た。 ・カーボンブラック(キャボット社製「BP−800」) 100重量部 ・ポリウレタン樹脂(Tg:110℃) 80重量部 ・メチルエチルケトン 540重量部 ・トルエン 520重量部 ・シクロヘキサノン 550重量部
【0073】(試験例4)第2バックコート層を形成し
なかったことを除いては、試験例1と同様にしてテープ
状の磁気記録媒体を得た。
【0074】(試験例1’)第1バックコート層を形成
しなかったことを除いては、試験例1と同様にしてテー
プ状の磁気記録媒体を得た。
【0075】(試験例2’)第1バックコート層を形成
しなかったことを除いては、試験例2と同様にしてテー
プ状の磁気記録媒体を得た。
【0076】(試験例3’)第1バックコート層を形成
しなかったことを除いては、試験例3と同様にしてテー
プ状の磁気記録媒体を得た。
【0077】各試験例で得た試料を、DVフォーマット
のカセットに入れ、初期カールの高さと、60℃、5〜
20%RHの環境下で144時間保存した後の保存後カ
ールの高さを測定した。カールの高さの測定は、図4の
(a)に示すように、テープ(10)の一端をガラス板
(41)の上に両面接着テープで固定し、一端に10gの
おもり(42)をつるした状態にて顕微鏡を用いて測定し
た。おもり(42)はテープの幅にほぼ等しい幅のクリッ
プを用いてつるし、テープの一部に荷重が集中しないよ
うにした。テープ(10)は凸となっている表面が上にな
るように固定した。さらに、ローラ(43)の位置を調整
して、カールの高さを測定する位置でテープをガラス板
の表面から僅かに浮かせて、テープのカールがつぶれな
いようにした。図4の(b)に、図4の(a)のA−
A’に沿って切断した断面を示す。カールの高さは図4
の(b)に示すように、テープ(10)のエッジ(10a,
10b)が位置する面(破線で表示)を基準としたときの
弧の頂点の高さ(H)に相当する。弧の頂点の高さは、
幅方向に沿ってテープ表面に顕微鏡(44)の焦点を順次
合わせる際に、レンズを上下動させたときの距離から求
めた。
【0078】表1に、試験例1〜4で得られた磁気記録
媒体の初期および保存後カールの高さを、表2に試験例
1’〜3’で得られた磁気記録媒体の初期および保存後
カールの高さを示す。さらに、各試験例で得た磁気記録
媒体の実用可能性を、初期カールおよび保存後カールの
高さから判断し、実用可能性のあるものを「OK」、実
用可能性のないものを「NG」として表1および表2の
判定の欄に示した。
【0079】
【表1】
【0080】
【表2】
【0081】試験例1〜3の磁気記録媒体は、金属薄膜
から成る第1バックコート層の上にTgがそれぞれ異な
る樹脂を結合剤として用いて第2バックコート層を形成
したものである。試験例1〜3のうち、結合剤としてT
gが72℃のポリウレタン樹脂を用いた試験例2の磁気
記録媒体は、初期カールの高さが−50μm程度であ
り、保存後カールの高さが+0μmであって、いずれも
絶対値が500μmよりも小さく、実用上問題のないも
のであった。
【0082】試験例1の磁気記録媒体は、Tgが低すぎ
るためにバックコート層が粘着性を示し、実用不可能な
ものであった。Ta+15℃よりもTgが高いポリウレ
タン樹脂を用いた試験例3の磁気記録媒体は、初期カー
ルの高さは0μmであったが、保存後カールの高さが+
700μmであって保存性に劣り、実用不可能なもので
あった。
【0083】上記のように、試験例1〜4の結果から、
アルミニウムから成る第1バックコート層と、TgがT
a〜Ta+15の範囲内にあるポリウレタン樹脂との組
合せが、カールの発生を抑制するのに極めて有効である
ことがわかる。
【0084】試験例1’〜3’は、第1バックコート層
を形成することなく、試験例1〜3で使用した結合剤を
用いてバックコート層を非磁性支持体のバック面に形成
した磁気記録媒体に相当する。試験例1’〜3’の結果
から、湿式塗布法により形成されるバックコート層に含
まれる結合剤のTgが、磁気記録媒体のカールの発生に
影響を及ぼすことがわかる。
【0085】試験例1〜4および試験例1’〜3’の結
果から、金属薄膜をバックコート層として有する磁気記
録媒体で発生するカールは、Tgが適切な範囲内にある
結合剤を用いて湿式塗布法により第2バックコート層を
第1バックコート層(金属薄膜)の上に形成することに
よって、有効に抑制されることがわかる。
【0086】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の磁気記録
媒体は、非磁性支持体の磁性層が形成された面とは反対
の面に形成されるバックコート層が、第1および第2バ
ックコート層から成り、第1バックコート層が金属薄膜
であり、第2バックコート層が、非磁性粒子および結合
剤を含む塗布液を第1バックコート層の上に塗布した
後、温度Td(℃)で乾燥し、さらにTdよりも低い温
度Ta(℃)でアニール処理することにより形成された
層であり、結合剤のガラス転移温度Tg(℃)がTa≦
Tg≦Ta+15であることを特徴とする。この特徴に
より、本発明の磁気記録媒体は、例えばテープ状である
場合に、幅方向においてカールが発生しにくいものとな
る。したがって、本発明によれば、金属薄膜により剛性
が付与され、かつ磁気ヘッドとの当たりが良好で優れた
エンベロープ特性を示す、信頼性の高い高密度磁気記録
媒体を得ることができる。
【0087】また、本発明の磁気記録媒体の製造方法
は、第1バックコート層およびその上に形成された第2
バックコート層を有する磁気記録媒体の製造方法におい
て、第1バックコート層が金属の真空蒸着により形成さ
れ、第2バックコート層の形成工程が非磁性粒子および
結合剤を含有する塗布液の塗布及び乾燥に加えてアニー
ル処理を含み、乾燥温度Td(℃)、アニール温度Ta
(℃)、および第2バックコート層の結合剤のガラス転
移温度Tg(℃)がTd>TaおよびTa≦Tg≦Ta
+15の関係を満たすように選択されることを特徴とす
る。かかる製造方法によれば、幅方向におけるカールの
発生が抑制され、カールに起因する不都合が軽減された
テープ状の磁気記録媒体を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の磁気記録媒体の一例を模式的に示す
断面図である。
【図2】 従来の磁気記録媒体の一例を模式的に示す断
面図である。
【図3】 従来の磁気記録媒体において幅方向にカール
が生じた様子を模式的に示す断面図である。
【図4】 (a)および(b)はそれぞれ、カールの高
さの測定方法を示す模式図である。
【符号の説明】
1,11...非磁性支持体、2,12...磁性層(強磁性金属
薄膜)、3,13...保護層、4,14...潤滑剤層、15...
バックコート層、5...第1バックコート層、6...第2
バックコート層、10,110...磁気記録媒体(磁気テー
プ)、10a,10b...エッジ、41...ガラス板、42...お
もり、43...ローラ、44...顕微鏡。
フロントページの続き (72)発明者 篠川 泰治 大阪府門真市大字門真1006番地 松下電器 産業株式会社内 (72)発明者 西澤 康弘 大阪府門真市大字門真1006番地 松下電器 産業株式会社内 (72)発明者 松井 正樹 大阪府門真市大字門真1006番地 松下電器 産業株式会社内 Fターム(参考) 5D006 CB01 CC01 CC02 CC04 EA03 FA09 5D112 AA02 AA05 AA08 AA22 BA01 BB01 BD01 BD03 BD07 GB02 JJ04

Claims (11)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 非磁性支持体の一方の面に磁性層を有
    し、他方の面にバックコート層を有して成る磁気記録媒
    体であって、バックコート層が第1バックコート層と第
    1バックコート層の上に形成された第2バックコート層
    から構成され、 第1バックコート層が金属薄膜から成り、 第2バックコート層が、非磁性粒子および結合剤を含む
    塗布液を塗布した後、温度Td(℃)で乾燥し、さらに
    Tdよりも低い温度Ta(℃)でアニール処理すること
    により形成された層であって、結合剤のガラス転移温度
    Tg(℃)がTa≦Tg≦Ta+15である磁気記録媒
    体。
  2. 【請求項2】 初期カールの高さ、および60℃、5〜
    20%RHの環境下で144時間保存した後の保存後カ
    ールの高さが−500μm〜+500μmである請求項
    1に記載の磁気記録媒体。
  3. 【請求項3】 第2バックコート層が、非磁性粒子とし
    てカーボン粒子を、結合剤としてポリウレタン樹脂を含
    む請求項1または請求項2に記載の磁気記録媒体。
  4. 【請求項4】 第1バックコート層がAlおよび/また
    はその酸化物から成り、第2バックコート層が、非磁性
    粒子としてカーボン粒子を、結合剤としてポリウレタン
    樹脂を含む、請求項1または請求項2に記載の磁気記録
    媒体。
  5. 【請求項5】 第1バックコート層の厚さが30〜20
    0nmであり、第2バックコート層の厚さが200〜10
    00nmである請求項1〜4のいずれか1項に記載の磁気
    記録媒体。
  6. 【請求項6】 非磁性支持体が、ポリエチレンテレフタ
    レート、ポリエチレンナフタレート、またはポリパラテ
    トラアミドから成るフィルムである請求項1〜5のいず
    れか1項に記載の磁気記録媒体。
  7. 【請求項7】 磁性層が、コバルト系金属から成る強磁
    性金属薄膜である請求項1〜6のいずれか1項に記載の
    磁気記録媒体。
  8. 【請求項8】 磁性層の表面に形成された保護層、およ
    び保護層の上に形成された潤滑剤層をさらに含む請求項
    1〜7のいずれか1項に記載の磁気記録媒体。
  9. 【請求項9】 非磁性支持体の一方の面に磁性層を有
    し、他方の面にバックコート層を有し、バックコート層
    が第1バックコート層と第1バックコート層の上に形成
    された第2バックコート層から構成された磁気記録媒体
    の製造方法であって、 第1バックコート層を金属の真空蒸着により形成するこ
    と、ならびに第2バックコート層を、非磁性粒子および
    結合剤を含む塗布液を第1バックコート層の上に塗布し
    た後、温度Td(℃)で乾燥し、さらに温度Ta(℃)
    でアニール処理することにより形成することを含み、T
    d(℃)、Ta(℃)および第2バックコート層の結合
    剤のガラス転移温度Tg(℃)が、Td>TaおよびT
    a≦Tg≦Ta+15の関係を満たすように選択される
    製造方法。
  10. 【請求項10】 第1バックコート層をAlの真空蒸着
    により形成し、第2バックコート層を、非磁性粒子とし
    てカーボン粒子を使用し、結合剤としてポリウレタン樹
    脂を使用して形成する、請求項9に記載の磁気記録媒体
    の製造方法。
  11. 【請求項11】 請求項9または請求項10に記載の製
    造方法で製造された磁気記録媒体。
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