JP2002343388A - 燃料電池へ供給する水の処理方法 - Google Patents

燃料電池へ供給する水の処理方法

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裕久 久保田
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 燃料電池から排出された高温の水を回収し、
これを精製処理して燃料電池に供給することができる水
の処理方法を提供する。 【解決手段】 一般式(1)で表される構造単位を有す
る強塩基性アニオン交換樹脂を用いることを特徴とする
燃料電池へ供給する水の処理方法。 (式中、Aは炭素数3〜8の直鎖若しくは分岐アルキレ
ン基又はメチレン基でベンゼン環に結合する炭素数4〜
8のアルキレンオキシメチル基を表し、R1、R2及びR
3は、独立して、炭素数6以下のアルキル基又は炭素数
6以下のヒドロキシアルキル基を表し、X-は対イオン
を表す。)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、燃料電池に供給す
る水の処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】燃料電池は、イオン交換膜電解質をはさ
んで空気極と燃料極という一対の電極を配置し、一方の
空気極には空気又は酸素を主体とする酸化剤、他方の燃
料極には水素などを主体とする燃料である還元剤を供給
し、電力を発生させる発電装置である。燃料電池には、
通常、装置の温度を制御するための冷却器が付設されて
いる。
【0003】燃料電池を運転するためには、燃料極に燃
料と共に、水を供給しなければならない。通常の燃料電
池では、空気極から排出される水を回収し、これをイオ
ン交換樹脂により精製して燃料極に供給している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】燃料電池の定常的な作
動温度は、固体高分子型燃料電池では室温〜150℃、
好ましくは50℃〜120℃、リン酸型燃料電池では通
常200℃前後であり、回収水は高温となる。燃料電池
では、エネルギー効率を高めるため、回収水を冷却せず
に高温のまま精製して使用することが好ましい。
【0005】したがって、本発明は、燃料電池から排出
された高温の水を回収し、これを高温のままで精製処理
して燃料電池に供給することのできる、水の処理方法を
提供しようとするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明によれば、燃料電
池へ供給する水をイオン交換樹脂で処理する際に、一般
式(1)
【0007】
【化3】
【0008】(式中、Aは炭素数3〜8の直鎖若しくは
分岐アルキレン基又はメチレン基でベンゼン環に結合す
る炭素数4〜8のアルキレンオキシメチル基を表し、R
1、R2及びR3は、独立して、炭素数6以下のアルキル
基又は炭素数6以下のヒドロキシアルキル基を表し、X
-は対イオンを表す。)で表される構造単位を有する強
塩基性アニオン交換樹脂を用いることにより、水を高純
度に精製することができる。
【0009】
【発明の実施の形態】以下に本発明を詳細に説明する。
一般式(1)において、Aは炭素数3〜8の直鎖若しく
は分岐アルキレン基又はメチレン基でベンゼン環に結合
する炭素数4〜8のアルキレンオキシメチレン基を表
す。直鎖又は分岐アルキレン基としては、トリメチレン
基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチ
レン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基、メチル
エチレン基及びエチルエチレン基等が挙げられ、アルキ
レンオキシメチレン基としては、テトラメチレンオキシ
メチレン基、ヘキサメチレンオキシメチレン基等が挙げ
られる。Aはベンゼン環の任意の位置に結合していても
良いが、通常はm−位又はp−位に結合している。Aの
炭素数が8を超えると、一般式(1)で表される構造単
位の分子量が大きくなるため、イオン交換樹脂の交換容
量が低下するので、好ましくない。置換基R1、R2及び
3は、それぞれ独立して、炭素数6以下のアルキル基
又は炭素数6以下のヒドロキシアルキル基を表す。アル
キル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブ
チル基、ペンチル基及びヘキシル基が挙げられる。ヒド
ロキシアルキル基としては、ヒドロキシエチル基、ヒド
ロキシプロピル基、ヒドロキシブチル基、ヒドロキシペ
ンチル基及びヒドロキシヘキシル基が挙げられる。
1、R2及びR3それぞれの炭素数が6を超えると、樹
脂の交換容量が低下すると共に、樹脂の有機汚染、熱安
定性の低下につながるため好ましくない。−N+12
3で表される基としては、トリメチルアンモニウム
基、トリエチルアンモニウム基、ジメチルヒドロキシエ
チルアンモニウム基又はジメチルヒドロキシプロピルア
ンモニウム基が好ましく、トリメチルアンモニウム基又
はジメチルヒドロキシエチルアンモニウム基が、特に好
ましい。
【0010】X-は、第4級アンモニウム基の対イオン
を表し、水酸イオン、Cl-、Br-、I-、炭酸イオ
ン、炭酸水素イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、酢酸イ
オン、蟻酸イオン、ベンゼンスルホン酸イオンが挙げら
れる。対イオンが水酸イオン以外のものである場合に
は、樹脂を水処理に用いる前に予め水酸イオンに転換し
ておくことが必要である。
【0011】本発明で使用するアニオン交換樹脂は、一
般式(1)で表される構造単位と架橋基とから構成され
ている。架橋基としては、ジビニルベンゼン、ポリビニ
ルベンゼン、アルキルビニルベンゼン及びジアルキルジ
ビニルベンゼンが挙げられ、好ましくはジビニルベンゼ
ンである。アニオン交換樹脂は、一般式(1)の構造単
位を1〜99モル%、架橋基を構成する単位を0.1モ
ル%〜50モル%、好ましくは1モル%〜20モル%、
更に好ましくは2モル%〜10モル%含有している。イ
オン交換樹脂の交換容量を大きくするには、一般式
(1)の構造単位の含有率を高くすればよい。アニオン
交換樹脂の重量当たりの交換容量(中性塩分解容量)
は、通常0.1meq/g〜5.0meq/g(OH
形)であり、好ましくは、2.5meq/g〜5.0m
eq/g、更に好ましくは3.2meq/g〜4.5m
eq/gである。ここで、meq/gとは乾燥樹脂重量
当たりの交換容量を表す。
【0012】アニオン交換樹脂の体積当たりの中性塩分
解容量は樹脂の水分含有率により異なるが、通常0.1
meq/mL〜1.5meq/mL(OH形)であり、
好ましくは0.5meq/mL〜1.5meq/mL、
更に好ましくは0.8meq/mL〜1.5meq/m
Lである。ここで、meq/mLとは含水樹脂体積当た
りの交換容量を表す。
【0013】一般式(1)で表される構造単位を有する
アニオン交換樹脂としては、例えば特開平4−3499
41号及び同7−289921号公報に記載されている
樹脂が挙げられる。また、特開平10−245416号
及び同10−245417号公報には、一般式(1)で
表される構造単位を有する多孔性アニオン交換樹脂が記
載されているが、本発明では、これら多孔性アニオン交
換樹脂も用いることができる。
【0014】本発明では、一般式(1)で表される構造
単位を有する強塩基性アニオン交換樹脂は、単独で用い
ることもでき、また、他のイオン交換樹脂と併用するこ
ともできる。併用する樹脂としては、例えば弱塩基性ア
ニオン交換樹脂が挙げられる。この場合には、一般式
(1)で表される構造単位を有する強塩基性アニオン交
換樹脂は、全体の体積に対して、通常10%以上、好ま
しくは50%以上、更に好ましくは70%以上の割合で
使用する。強塩基性アニオン交換樹脂と弱塩基性アニオ
ン交換樹脂とは、混合床として用いても良く、弱塩基性
アニオン交換樹脂を強塩基性アニオン交換樹脂の前段に
配置しても良い。
【0015】更に、本発明では、アニオン交換樹脂とカ
チオン交換樹脂とを併用することもできる。カチオン交
換樹脂としては、一般式(2)で表される構造単位と架
橋単位とを有する強酸性カチオン交換樹脂が挙げられ
る。
【0016】
【化4】
【0017】一般式(2)中、スルホン酸基はベンゼン
環の任意の位置に結合しても良いが、通常はm−位又は
p−位に結合している。Y+は、スルホン酸基に配位し
た対イオンを表し、水素イオン、Liイオン、Naイオ
ン、Caイオン、Baイオン、アンモニウムイオン及び
トリメチルアンモニウムイオン等が挙げられる。対イオ
ンが水素イオン以外のものである場合には、使用前に予
め対イオンを水素イオンに転換する。架橋基単位として
は、ジビニルベンゼン、ポリビニルベンゼン、アルキル
ビニルベンゼン、ジアルキルジビニルベンゼン等が挙げ
られ、好ましくはジビニルベンゼンである。カチオン交
換樹脂は、一般式(2)の構造単位を1〜99モル%、
架橋基単位を0.1モル%〜50モル%、好ましくは1
モル%〜20モル%、更に好ましくは2モル%〜10モ
ル%含有している。イオン交換容量を高くするには、一
般式(2)の構造単位の含有率を高くする。
【0018】また、本発明では、上記の強酸性カチオン
交換樹脂に代えて、又はこれと共にカルボキシル基を有
する弱酸性カチオン交換樹脂を使用することもできる。
強酸性カチオン交換樹脂と弱酸性カチオン交換樹脂とを
併用する場合には、強酸性カチオン交換樹脂は、両者の
合計体積に対して、通常20%以上、好ましくは50%
以上、更に好ましくは70%以上の割合で使用する。強
酸性カチオン交換樹脂と弱酸性カチオン交換樹脂とは、
混合床として用いても良く、弱酸性カチオン交換樹脂を
強酸性カチオン交換樹脂の前段に配置しても良い。
【0019】なお、本発明で使用するイオン交換樹脂
は、そのイオン交換基の如何を問わず、約0.3mm〜
1.0mmの平均粒子径を有する球状粒子であることが
好ましい。また、樹脂はゲル型及びポーラス型のいずれ
のであっても良い。本発明においてアニオン交換樹脂と
カチオン交換樹脂とを併用する場合には、両者はそれぞ
れ単独床として用いても良く、また混合床として用いて
いも良い。
【0020】混合床で使用するときのアニオン交換樹脂
とカチオン交換樹脂との混合比は、各イオン交換樹脂の
交換容量等により異なるが、アニオン交換樹脂/カチオ
ン交換樹脂の交換容量比が、0.1〜10の範囲、特に
0.3〜3の範囲であることが好ましい。本発明では、
イオン交換樹脂床への通水速度は、処理すべき水の水
質、イオン交換樹脂の粒径、水温等により異なるが、通
常はSV1〜1000である。水槽から水の一部を抜き
出して精製した後水槽に戻す場合には、イオン交換樹脂
への通液速度はSV20〜SV1000が好ましく、水
槽の水を処理してそのまま燃料極へ供給する場合にはS
V0.5〜SV50が好ましい。
【0021】なお、本発明は、回収水だけでなく、冷却
器の熱媒の処理にも適用することができる。例えば、冷
却器の熱媒としてはエチレングリコールが用いられるこ
とが多いが、この熱媒の電気伝導度が高いと、これを通
して短絡電流が流れ、発電効率が低下する。本発明で
は、この熱媒を高温状態で脱塩することができる。
【0022】
【実施例】以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明
するが、本発明は要旨を超えない限り、以下の実施例に
限定されるものではない。 実施例−1 H型の強酸性カチオン交換樹脂(ダイヤイオンSKT1
0L、三菱化学製)0.5Lを直径5cmの円筒状の容
器に、特開平4−349941号公報の製造例2に従っ
て製造したトリメチルアンモニオブチル基を交換基とす
るOH型の強塩基性アニオン交換樹脂1.0Lを別の円
筒状容器に充填して、それぞれ樹脂床を形成した。酢酸
ナトリウム0.6ミリモル/L及び水酸化ナトリウム
0.6ミリモル/Lを含むエチレングリコール溶液を、
カチオン交換樹脂床、アニオン交換樹脂床の順に通液
し、定常状態に達したときの出口水の電気電導度を測定
した。なお、通液はアニオン交換樹脂のSV=240で
行った。結果を表1に示す。
【0023】電気電導度(電導度計TOA EP−24
1)は、流通型セル(セル定数 θ=0.1)を用いて測
定した。
【0024】
【表1】
【0025】実施例−2 実施例−1で用いたのと同じカチオン交換樹脂(H型)
とアニオン交換樹脂(OH形)とを、容積比1:2で混合
し、窒素雰囲気下エチレングリコール中90℃で3か月
間保存した。次いで、アニオン交換樹脂とカチオン交換
樹脂とを分離し、それぞれに再生処理を施した後、実施
例−1と同様にして、脱塩試験を行った。結果を表2に
示す。 比較例―1 強塩基性アニオン交換樹脂として、トリメチルアンモニ
オメチル基を交換基とする強塩基性アニオン交換樹脂
(ダイヤイオンSA10A(三菱化学製))を用いた以
外は、実施例2と同様にして、樹脂の熱処理及び脱塩試
験を行った。結果を表2に示す。
【0026】
【表2】
【0027】
【発明の効果】本発明の方法によれば、70〜90℃と
いう高温度でも、溶液を高純度に精製することができ
る。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) H01M 8/06 H01M 8/06 W // H01M 8/10 8/10

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 燃料電池へ供給する水をイオン交換樹脂
    で処理するに際し、一般式(1) 【化1】 (式中、Aは炭素数3〜8の直鎖若しくは分岐アルキレ
    ン基又はメチレン基でベンゼン環に結合する炭素数4〜
    8のアルキレンオキシメチレン基を表し、R1、R2及び
    3は、独立して、炭素数6以下のアルキル基又は炭素
    数6以下のヒドロキシアルキル基を表し、X-は対イオ
    ンを表す。)で表される構造単位を有する強塩基性アニ
    オン交換樹脂を用いることを特徴とする燃料電池へ供給
    する水の処理方法。
  2. 【請求項2】 燃料電池へ供給する水が、燃料電池から
    排出された水を回収したものであることを特徴とする請
    求項1記載の方法。
  3. 【請求項3】 強塩基性アニオン交換樹脂の交換容量
    が、OH形で1meq/mL以上であることを特徴とす
    る請求項1又は2記載の方法。
  4. 【請求項4】 強塩基性アニオン交換樹脂と弱塩基性ア
    ニオン交換樹脂とを併用することを特徴とする請求項1
    乃至3のいずれかに記載の方法。
  5. 【請求項5】 強塩基性アニオン交換樹脂とカチオン交
    換樹脂とを併用することを特徴とする請求項1項乃至4
    のいずれかに記載の方法。
  6. 【請求項6】 燃料電池へ供給する水を、強塩基性アニ
    オン交換樹脂で処理した後、カチオン交換樹脂で処理す
    ることを特徴とする請求項5記載の方法。
  7. 【請求項7】 燃料電池へ供給する水を、強塩基性アニ
    オン交換樹脂とカチオン交換樹脂との混合系で処理する
    ことを特徴とする請求項4記載の方法。
  8. 【請求項8】 強塩基性アニオン交換樹脂とカチオン交
    換樹脂とが、交換容量比0.1〜10の割合で混合され
    ていることを特徴とする請求項7記載の方法。
  9. 【請求項9】 カチオン交換樹脂が、一般式(2) 【化2】 (式中、Y+は対イオンを表す。)で表される構造単位
    を有する強酸性カチオン交換樹脂であることを特徴とす
    る請求項5乃至8のいずれかに記載の方法。
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