JP2002338821A - ガスバリアフイルム用材料 - Google Patents

ガスバリアフイルム用材料

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JP2002338821A
JP2002338821A JP2001148023A JP2001148023A JP2002338821A JP 2002338821 A JP2002338821 A JP 2002338821A JP 2001148023 A JP2001148023 A JP 2001148023A JP 2001148023 A JP2001148023 A JP 2001148023A JP 2002338821 A JP2002338821 A JP 2002338821A
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Japan
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gas barrier
acid
barrier film
water
compound
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Application number
JP2001148023A
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English (en)
Inventor
Toshihiko Takagi
斗志彦 高木
Masaru Tanabe
勝 田辺
Yasuhiko Haga
康彦 芳賀
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Mitsui Chemicals Inc
Original Assignee
Mitsui Chemicals Inc
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 高いガスバリア能を持つ、ガスバリアフイル
ム用材料およびガスバリアフィルムの提供。 【解決手段】(A)平均粒径500nm以下の水難溶性
無機微粒子が(a)周期表2族元素、アルミニウム、ケ
イ素、第4周期遷移金属、亜鉛、ジルコニウム、銀、錫
から選ばれる1種以上を必須成分とする無機化合物また
はそれらの混合物と、(b)有機酸、無機酸およびそれ
らの塩類から選ばれる1種以上の化合物を反応して合成
される非層状構造のイオン結晶であり、(A)が(B)
高分子化合物中に分散・複合化されたガスバリアフイル
ム用材料およびそれを用いてフィルムを作製する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はガスバリア性に優れ
るフイルムまたは塗膜を形成する水難溶性無機微粒子/
高分子化合物から構成されることを特徴とするガスバリ
ア用材料に関する。
【0002】
【従来の技術】食品包装分野において食品の風味や鮮度
を保つために、ガスバリア性能は基本的に求められる機
能である。古来より食品を保存するために金属やガラス
の容器が使用されてきたが、酸素ガスバリア性の高い樹
脂が見出されると、加工性、透明性、軽量化などの長所
を生かして、広範囲にわたる食品で樹脂製の容器が使用
されるようになった。ガスバリア性が最も高い樹脂の1
つに、ポリビニルアルコール(PVA)系の樹脂が知ら
れているが、PVAは乾燥条件下では十分に高いガスバ
リア性を示すものの、高湿度条件下ではその能力が失わ
れる問題点がある。また、PVAに匹敵するガスバリア
性能をもつポリ塩化ビニリデン(PVDC)樹脂は、高
湿度条件下でもその能力を保つ優れた樹脂であるが、近
年の環境問題に対する意識の高まりから、燃焼時にダイ
オキシン類を発生する可能性が指摘され、極力使用を削
減する状況にある。このような状況を受けて、ガスバリ
ア性の劣る樹脂と無機のフィラーとを複合化してガスバ
リア性を高める技術、あるいは高湿度下でのガスバリア
性低下を抑える技術が開発されてきた。
【0003】例えば、特開平6−172605号公報で
は水膨潤性粘土鉱物をアクリル樹脂組成物に分散させる
ことでガスバリア性を向上させる技術が開示されてい
る。また、特開平6−93133号公報では、粒径が5
μm以下、アスペクト比が50以上5000以下の無機
層状化合物と樹脂とを含むフイルムに関する技術が開示
されている。これらの技術は、基本的に樹脂のガスバリ
ア性が劣るあるいは低下する問題を、ガスバリア性を示
す水膨潤性粘土鉱物または無機層状化合物で補強するこ
とを意図したものである。ここで使用される水膨潤性粘
土鉱物はモンモリロナイト、ヘクトライト、サポナイト
などのスメクタイト系粘土鉱物や、水膨潤性フッ素化マ
イカを、無機層状化合物にはグラファイト、リン酸塩系
誘導体型化合物(リン酸ジルコニウム系化合物)、カル
コゲン化物、粘土系鉱物をさす。これらの化合物類は、
大きなアスペクト比をもつ平板状粒子であり、ガスバリ
ア効果発現機構に関して定説はないが、一般には粒子が
気体分子を遮蔽する作用によりガスバリア性が向上する
ものと考えられている。また、これらの無機化合物は薄
膜が積層した構造をとっており、層間に有機分子が挿入
することによって、膨潤、へき開する性質をもつ。この
性質を利用してガスバリア性を向上する技術が開示され
ている(特開平11−246729号公報)。これには膨
潤・へき開するためには4級アンモニウム塩をもつアク
リル樹脂を使用する方法や、高圧分散装置を使用する方
法が開示されているものの、層状化合物の単層構造まで
微分散させることは困難であり、期待されるガスバリア
性や包装材料に要求される透明性において十分な性能を
引き出すには至っていない。
【0004】また、特開平6−80873号公報には、
層状珪酸塩(モンモリロナイト)を膨潤した状態でポリ
アミド樹脂と混合、混練する均一に混合することにより
ガスバリア性を向上させる技術が開示されている。ここ
でいう均一にとは、層状珪酸塩の単層または5層以下の
多層物が局所的な塊をつくることなく分散する状態をい
う。層状珪酸塩の配合量は15質量%以下であり、それ
を越えると引張特性などの他の特性が低下するため好ま
しくないとされている。無機層状化合物をガスバリア材
料の目的で使用する場合、単層までへき開した粒子を均
一に分散することが理想的ではあるが、膨潤、へき開に
伴い粘度が増大するため、均一な分散は困難になる場合
が多い。また、ガスバリア性を向上するために添加量を
増やそうとしても、やはり粘度が非常に大きくなるた
め、均一に混合することは一段と困難になり、実質的に
配合できる無機層状化合物の添加量には限界がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明者らは、従来ガ
スバリア性を向上させるために提案されてきた無機層状
化合物を分散、または膨潤・へき開して均一に分散する
手法に代わる、高いガスバリア性の材料を提供すること
にある。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、無機層状
化合物以外にも、水に難溶なイオン結晶微粒子を高分子
化合物と複合化することで、優れたガスバリア性を示
し、透明性にも優れた包装材料として利用価値の高い素
材となることを見出し本発明に至った。即ち本発明は、
以下により構成される。
【0007】 平均粒径500nm以下の水難溶性無
機微粒子(A)と高分子化合物(B)から構成されるガ
スバリアフイルム用材料において、(A)が(a)周期
表2族元素、アルミニウム、ケイ素、第4周期遷移金
属、亜鉛、ジルコニウム、銀、錫から選ばれる1種以上
を必須成分とする無機化合物またはそれらの混合物と、
(b)有機酸、無機酸およびそれらの塩類から選ばれる
1種以上の化合物を反応して合成される非層状構造のイ
オン結晶であることを特徴とするガスバリアフイルム用
材料。
【0008】 平均粒径500nm以下の水難溶性無
機微粒子(A)と高分子化合物(B)から構成されるガ
スバリアフイルム用材料において、(A)が(B)存在
下に合成されることを特徴とする記載のガスバリアフ
イルム用材料。
【0009】 高分子化合物(B)が水溶性または水
分散性の高分子化合物であることを特徴とする、また
は記載のガスバリアフイルム用材料。
【0010】 水溶性または水分散性の高分子化合物
が、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコー
ル共重合物、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリル酸
(塩)、ポリ(メタ)アクリルアミド、ポリアクリロニ
トリル、セルロース誘導体およびそれらの変性物から選
ばれる1種以上の高分子化合物から構成されることを特
徴とする、〜の何れかに記載のガスバリアフイルム
材料。
【0011】 (a)周期表2族元素がマグネシウ
ム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムから選ばれ
る1種以上の元素であることを特徴とする〜の何れ
かに記載のガスバリアフイルム用材料。
【0012】 (b)有機酸、無機酸およびそれらの
塩類が、硫酸、リン酸、炭酸およびそれらの塩類である
ことを特徴とする〜の何れかに記載のガスバリアフ
イルム用材料。
【0013】 〜の何れかに記載のガスバリアフ
ィルム用材料を用いたガスバリアフィルム。
【0014】
【発明の実施の形態】本発明は、平均粒径500nm以
下の水難溶性無機微粒子(A)と高分子化合物(B)か
ら構成されるガスバリアフイルム用材料において、
(A)が(a)周期表2族元素、アルミニウム、ケイ
素、第4周期遷移金属、亜鉛、ジルコニウム、銀、錫か
ら選ばれる1種以上を必須成分とする無機化合物または
それらの混合物と、(b)有機酸、無機酸およびそれら
の塩類から選ばれる1種以上の化合物を反応して合成さ
れるイオン結晶であることを特徴とするガスバリアフイ
ルム用材料である。
【0015】本発明は、好ましくは平均粒子径が500
nm以下の水難溶性無機微粒子(A)が高分子化合物
(B)中で、凝集あるいは分離等を起こさず均一に分散
した、新規な高分子化合物/無機微粒子複合体系のガス
バリア材料に関する。本発明のガスバリア材料は、高分
子材料の存在下に無機材料を合成することが可能であ
り、従来利用されていた無機層状化合物を分散、または
膨潤・へき開する方法に比べて分散状態がより均一にで
きる利点がある。
【0016】本発明で使用される高分子化合物は、基本
的にはフイルム形成能を持つものであれば合成高分子、
半合成高分子、天然高分子何れでも良い。本発明は複合
前の高分子化合物に比べてガスバリア性能を向上する目
的で実施されるので、特に高分子化合物の種類に制限さ
れるようなことはなく、ガスバリア性を向上させたい対
象について適用できる。具体的には、低密度ポリエチレ
ン、高密度ポリエチレン、エチレン−プロピレン共重合
体、ポリプロピレンなどのポリオレフィン類、エチレン
−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メチルメタクリレー
ト共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、
エチレン−アクリル酸(塩)共重合体などのエチレン共重
合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレ
フタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエス
テル類、ナイロン−6、ナイロン−66、ナイロン−1
2およびそれらの共重合体などのポリアミド類、ポリメ
チルメタクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリアク
リルアミド、ポリアクリル酸(塩)およびそれらの共重
合体などのポリアクリル類、ポリスチレン、スチレン−
アクリロニトリル共重合体、スチレン−アクリロニトリ
ル−ブタジエン共重合体などのポリスチレン類、酢酸セ
ルロース類、ポリ塩化ビニル類、ポリ塩化ビニリデン
類、テフロン類、ポリビニルアルコール類、エチレン−
ビニルアルコール共重合体類、ポリカーボネート類、ポ
リサルホン類、ポリエーテルエーテルケトン類、ポリフ
ェニレンオキシド類、ポリイミド類、ポリアミドイミド
類などがあり、これらの混合物、ブロック共重合物、グ
ラフト共重合物なども含まれる。
【0017】本発明のガスバリア材料は、それ自身をフ
イルム化して利用する方法、あるいは他の基材に貼り合
せまたは塗工により積層して利用する方法などで使用さ
れる。
【0018】本発明の方法では、水難溶性無機微粒子
(A)が(a)周期表2族元素、アルミニウム、ケイ
素、第4周期遷移金属、亜鉛、ジルコニウム、銀、錫か
ら選ばれる1種以上を必須成分とする無機化合物または
それらの混合物と、(b)有機酸、無機酸およびそれら
の塩類から選ばれる1種以上の化合物を反応して合成さ
れる非層状構造のイオン結晶が高分子化合物中に混合・
分散されたものが用いられる。
【0019】イオン結晶と高分子化合物とを混合・分散
する方法は後述するように機械的に混合・分散する手法
が一般的であるが、複合化するポリマー存在下にイオン
結晶を合成する方法も好ましく取り得る。
【0020】本発明で使用されるイオン結晶は、特に複
合化したい高分子化合物が結晶成長を抑制する効果をも
つ場合には、その存在下で合成すると工程が簡略化され
るだけではなく、その場で平均粒子径が500nm以下
の粒子が容易に合成できるため、粉砕などのプロセスは
不要であり、しかも高分子化合物中への分散性が向上す
る点で優れた手法である。
【0021】イオン結晶の多くは水溶液中で合成される
ため、ポリマー存在下にイオン結晶を合成する手法を用
いて複合化する際は水溶性または水分散性の高分子化合
物を使う必要がある。本発明で使用される水溶性または
水分散性の高分子化合物は、ポリビニルアルコール、エ
チレン−ビニルアルコール共重合物、ポリ塩化ビニリデ
ン、ポリアクリロニトリル、ポリアクリル酸(塩)、ポ
リ(メタ)アクリルアミド、セルロース誘導体およびそ
れらの変性物から選ばれる1種以上の高分子化合物であ
る。
【0022】ポリビニルアルコール(PVA)は、通常
はビニルエステル化合物重合体またはビニルエステル化
合物と各種モノマーとの共重合体をケン化したもの、お
よび/または末端にチオール基を有するポリビニルアル
コール系重合体の存在下、各種モノマーをラジカル共重
合したものが使用される。共重合に使用されるモノマー
には、水難溶性微粒子との相互作用が働く官能基を持つ
ものが好ましく、カルボン酸(塩)やスルホン酸(塩)
などのアニオン性の置換基を持つもの、各種1〜4級ア
ミンのカチオン性の置換基を持つもの、その他シリル
基、チオール基、アミド基、アルキル基などを含有する
ものが使用される。
【0023】本発明のPVAのケン化度は85−99.
99モル%が好ましく、より好ましくは90−99.9
5モル%、更に好ましくは92−99.90モル%であ
る。ケン化度が88モル%以上であれはガスバリア性や
耐水性が十分であるが、99.99モル%を越えるもの
は工業的に製造することが困難である。また、PVAの
重合度は3000未満が好ましく、これ未満の重合度で
は溶液の粘度が適当で、複合化反応や、製膜、塗工性が
容易で好ましい。
【0024】末端にチオール基を有するポリビニルアル
コール系重合体は、チオ酢酸のようなチオール基を含有
する連鎖移動剤の存在下にビニルエステル化合物を重合
し、その後ケン化反応を行うことにより得られる。重合
の際には、カルボキシル基変性ポリビニルアルコールの
水溶性や安定性等に支障をきたさない程度に共重合可能
なモノマーと共重合させることも可能である。この末端
にチオール基を有するポリビニルアルコール系重合体存
在下に共重合可能なモノマーを共重合させることが可能
である。その種類についてはPAAおよびPAMの重合
に関する部分で挙げたモノマー類が使用できる。モノマ
ーの種類により異なるが、ケン化反応前のビニルエステ
ル化合物に対して概ね1〜50質量%の範囲にある。
【0025】エチレン−ビニルアルコール共重合物(E
VOH)は、エチレン含有量が20〜50モル%のEV
OHを、イオン性の高分子化合物または界面活性剤を、
場合によっては両者を併用することによって水に分散さ
せたものを使用する。EVOHは完全ケン化型のものが
ガスバリア性の面から好ましい。この時に使用されるイ
オン性の高分子化合物は、EVOHにイオン性の官能基
を導入したものや、後述するポリ(メタ)アクリル酸
(塩)やポリ(メタ)アクリルアミドを使用することに
より無機微粒子との相互作用が期待できる化合物である
ことが好ましいが、これらの化合物に限定されるもので
はない。
【0026】ポリ塩化ビニリデン(PVDC)は、アク
リル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリ
ル酸エステル、アクリロニトリル、塩化ビニル、架橋剤
などから選ばれる1種以上の共重合成分を0〜20%含
有したエマルションである。
【0027】ポリアクリロニトリル(PAN)は、アク
リル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリ
ル酸エステル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、架橋剤な
どから選ばれる1種以上の共重合成分を0〜20%含有
したエマルションである。
【0028】ポリ(メタ)アクリル酸(塩)(PA
A)、ポリ(メタ)アクリルアミド(PAM)は、通常
はラジカル開始剤を用いて重合を行い、水溶性の重合体
が得られる。(メタ)アクリルアミドにはN−置換型の
(メタ)アクリルアミド誘導体類も含まれる。それぞれ
共重合可能なモノマーには、アクリルアミド、メタクリ
ルアミド、N−置換(メタ)アクリルアミド誘導体、N
−ビニル−2−ピロリドン類、N−ビニルオキサゾリド
ン類、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミ
ド、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート類、
(メタ)アリルアルコール類、(メタ)アクリル酸
(塩)などの不飽和カルボン酸化合物類、ビニルスルホ
ン酸(塩)などの不飽和スルホン酸化合物類、リン酸モ
ノ(2−ヒドロキシエチル)メタクリルエステル等の不
飽和リン酸化合物類、アリルアミン、N,N−ジメチル
アミノエチルアクリレート、N,N−ジメチルアミノエ
チルメタクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル
アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルメタ
クリルアミド等のアミノ基を含有するビニル化合物とそ
れらの塩および四級化したビニル化合物や、ジメチルジ
アリルアンモニウムクロリドなどをあげることができ
る。
【0029】また、水溶性あるいは水分散性を損なわな
い程度にエチレン性の疎水性不飽和化合物を共重合する
ことが可能である。疎水性不飽和化合物の共重合比率は
モノマーの種類や共重合の組み合わせ等により変わるの
で特定できないが、比率が高くなると水溶性を失うた
め、疎水性不飽和化合物の量は概ね99〜0質量%の範
囲、好ましくは95〜1質量%であって、しかも共重合
体の水溶性を失わない程度に抑える必要がある。
【0030】エチレン性の疎水性不飽和化合物の例とし
ては、スチレンなどの芳香族ビニル化合物、(メタ)ア
クリロニトリルなどのシアン化ビニル化合物、ブタジエ
ン、イソプレンなどのジエン化合物、メチルメタクリレ
ートなどの不飽和カルボン酸エステル化合物、ビニルメ
チルエーテルなどのアルキルビニルエーテル化合物、そ
の他、酢酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデンなどの
疎水性ビニル化合物、および疎水性アリル化合物からな
る群より選択された一種以上の化合物である。PAA、
PAMの重量平均分子量は、概ね10,000〜1,0
00,000の範囲にある。分子量が10,000以上
の場合は強度が優れたフイルムとなり、1,000,0
00を以下であれば水溶液の粘度が適当で、複合化や製
膜、塗工が容易で好ましい。
【0031】セルロース誘導体としては、カルボキシメ
チルセルロースやメチルセルロース、エチルセルロース
などのセルロースアルキルエーテル類がある。これらの
セルロース誘導体のエーテル化度(置換度)は、0.5
〜2.0の範囲にあり、2%水溶液粘度(25℃、B型
粘度計)が500mPa・s以下のものが好ましい。
【0032】本発明に用いられるPVA、EVOH、セ
ルロース誘導体以外の高分子化合物を製造する方法は公
知の重合方法、例えば水溶液重合、沈殿重合、乳化重合
等を用いることが出来る。回分重合、半回分重合の何れ
の組み合わせでもよく、重合方法は何等制限されない。
【0033】ラジカル重合を行う場合、通常はラジカル
重合開始剤の存在下、重合溶液を所定温度に保つことに
より重合を行う。重合中同一温度に保つ必要はなく、重
合の進行にともない適宜変えてよく、必要に応じて加熱
あるいは除熱しながら行う。重合温度は使用するモノマ
ーの種類や重合開始剤の種類などにより異なり、単一開
始剤の場合には概ね30〜100℃の範囲であり、レド
ックス系重合開始剤の場合にはより低く、一括で重合を
行う場合には概ね−5〜50℃であり、逐次添加する場
合には概ね30〜90℃である。重合器内の雰囲気は特
に限定はないが、重合を速やかに行わせるには窒素ガス
のような不活性ガスで置換した方がよい。重合時間は特
に限定はないが、概ね1〜40時間である。
【0034】重合溶媒としては水を用いるが、メタノー
ル、エタノール、イソプロパノール、アセトン、エチレ
ングリコール、プロピレングリコール等の有機溶剤を併
用してもよい。
【0035】ラジカル重合開始剤としては一般の水溶性
の開始剤が使用できる。過酸化物系では、例えば過硫酸
アンモニウム、過硫酸カリウム、過酸化水素、tert
−ブチルパーオキサイド等があげられる。この場合、単
独でも使用できるが、還元剤と組み合わせてレドックス
系重合剤としても使える。還元剤としては、例えば亜硫
酸塩、亜硫酸水素塩、鉄、銅、コバルト等の低次のイオ
ンの塩、次亜リン酸、次亜リン酸塩、N,N,N',N'-テトラ
メチルエチレンジアミン等の有機アミン、更にはアルド
ース、ケトース等の還元糖等をあげることができる。ま
た、アゾ化合物系では、2,2'-アゾビス-2-アミジノプロ
パン塩酸塩、2,2'-アゾビス-2,4-ジメチルバレロニトリ
ル、4,4'-アゾビス-4-シアノバレイン酸及びその塩等を
使用することができる。更に上記した重合開始剤を2種
以上併用してもよい。重合開始剤の添加量は単量体に対
して0.0001〜10質量%の範囲であり、好ましくは0.01〜
8質量%である。また、レドックス系の場合には、重合
開始剤に対して還元剤の添加量はモル基準で0.1〜1
00%、好ましくは0.2〜80%である。
【0036】親水性モノマーの重合は、分子量あるいは
重合速度を調整するなどの目的で、必要に応じてpH調
整剤、連鎖移動剤等を使用してもよい。
【0037】pH調整剤としては、水酸化ナトリウム、
水酸化カリウム,アンモニア等の無機塩基類、エタノー
ルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン等の有
機塩基類、及び炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、
酢酸ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム等の塩類等が
あげられる。
【0038】連鎖移動剤としては、公知のものが用いら
れ、例えばイソプロピルアルコール、α−チオグリセロ
ール、メルカプトコハク酸、チオグリコール酸、トリエ
チルアミン、次亜リン酸ナトリウム等のなかから1種ま
たは2種以上の混合物を適宜使用することができる。
【0039】また、金属イオンを封止するあるいは重合
速度を調整する等の目的で、エチレンジアミン4酢酸ナ
トリウム(EDTA−Na)や尿素、チオ尿素等の化合
物を併用してもよい。pH調整剤、連鎖移動剤等の使用
量は、使用目的に応じて異なるが、概ねモノマー質量に
対してpH調整剤は100ppm〜10質量%、連鎖移動
剤やその他の添加剤は1.0ppm〜5.0質量%の範囲にあ
る。
【0040】本発明の水難溶性無機微粒子は、平均粒径
が500nm以下、好ましくは400nm以下の粒子、
さらに好ましくは300nmである。ここでいう粒径と
は粒子の最長径である。粒子の形状は球状、楕円体状、
針状、板状、柱状、不定形、およびそれらの粒子が複数
個集合した粒子であっても良いが、平均粒径は500n
mを越えることはない。また、本発明の水難溶性無機微
粒子は一般的には液相合成法により合成され、周期表2
族元素、アルミニウム、ケイ素、第4周期遷移金属、亜
鉛、ジルコニウム、銀、錫から選ばれる1種以上を必須
成分とする無機化合物と有機酸、無機酸またはそれらの
塩類を種々の割合で混合し、適宜温度を選択して反応す
ることにより得られる。反応が進行する組み合わせであ
れば均一系でも不均一系(固−液反応または固−固反
応)何れの方法でもよい。また、反応温度は合成される
無機化合物により異なり特に制限はないが、後述するよ
うなポリマー存在下に合成を行う場合にはポリマーの分
解点以下の温度で反応を行うことが好ましい。無機微粒
子を製造する際には、500nm以上の粒子が成長しな
いように、適宜温度や濃度を制御しながら反応を行う。
特に、粒子の成長を抑える働きをもつ化合物を共存させ
て反応を行う方法が有効であり、ポリマー存在下に無機
微粒子を合成する方法はこの方法に属する手法である。
なお、無機微粒子を合成する時点では、必ずしも微粒子
は500nm以下である必要はなく、最終的に均一に分
散される単位構造体の集合体として500nm以上とな
っていても問題はない。
【0041】水に可溶あるいは難溶な周期表2族元素、
アルミニウム、ケイ素、第4周期遷移金属、亜鉛、ジル
コニウム、銀、錫から選ばれる1種以上を必須成分とす
る無機化合物と有機酸、無機酸またはそれらの塩類とを
反応することにより水難溶性無機微粒子が合成される。
沈殿法とも称せられるように、通常は生成した水難溶性
無機微粒子は沈澱し、濾過後乾燥あるいは熱分解するこ
とにより粉末が得られる。この時、濾過することなくス
プレードライヤー、凍結乾燥機、媒体流動乾燥機などを
用いてそのまま乾燥することで、ポリマーと混合する際
に混合が容易になる粉末とすることも可能である。粉末
は必要に応じて、ボールミル、ポットミル、回転刃式、
衝突式、ロール式、遠心式などの粉砕機を用いて粉砕し
た後に高分子化合物と混合する。本発明においては、前
記したような微粒子との相互作用を有する高分子化合物
を存在させておくことにより、沈澱することなくコロイ
ド状に均一に分散した分散安定性に優れた有機重合体/
無機微粒子分散水溶液となる場合があり、その際はその
ままガスバリアフイルムまたはコーティング材料として
使用することが可能である。このような分散安定性に優
れた有機重合体/無機微粒子分散水溶液が生成する理由
に関しては、必ずしも完全に解明された訳ではないが、
無機微粒子を構成する元素と高分子化合物中の官能基が
イオン的な相互作用により結合することが本発明者らの
実験結果から示唆されており、そのために結晶成長が抑
制され、500nm以上に平均粒径が成長しないこと
と、結合した高分子化合物の保護コロイド的な作用のた
めに粒子間の凝集を抑制していることがその理由と考え
られる。
【0042】本発明の水難溶性無機微粒子は、20℃に
おける水への溶解度が概ね3.0(質量%)以下のもので
ある。周期表2族元素、アルミニウム、ケイ素、第4周
期遷移金属、亜鉛、ジルコニウム、銀、錫から選ばれる
1種以上を必須成分とする無機化合物と有機酸、無機酸
またはそれらの塩類とを反応することにより合成される
イオン結晶には、それぞれの元素を含有する水酸化物
塩、フッ化物塩、炭酸塩、リン酸塩、硫酸塩、ケイ酸
塩、アルミノケイ酸塩、アルミン酸塩、シュウ酸塩、ク
エン酸塩、乳酸塩などがある。
【0043】本発明の水難溶性無機微粒子の合成に使用
される周期表2族元素、アルミニウム、ケイ素、第4周
期遷移金属、亜鉛、ジルコニウム、銀、錫から選ばれる
1種以上を必須成分とする無機化合物の例としては、酢
酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、塩化マグネシウ
ム、ケイフッ化マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸
化マグネシウム、硝酸マグネシウム、硫酸マグネシウ
ム、酢酸カルシウム、リン酸二水素カルシウム、水酸化
カルシウム、乳酸カルシウム、クエン酸カルシウム、炭
酸カルシウム、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、硫酸
カルシウム、チオ硫酸カルシウム、炭酸ストロンチウ
ム、硝酸ストロンチウム、塩化ストロンチウム、酢酸バ
リウム、塩化バリウム、硝酸バリウム、硫酸バリウム、
水酸化バリウム、フッ化バリウム、水酸化アルミニウ
ム、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、アルミン酸
ナトリウム、アルミン酸カリウム、アルミン酸マグネシ
ウム、アルミノケイ酸ナトリウム、アルミノケイ酸カリ
ウム、第4周期遷移金属の塩化物、硝酸塩、炭酸塩、酢
酸塩、水酸化物、塩化亜鉛、硝酸亜鉛、炭酸亜鉛、酢酸
亜鉛、水酸化亜鉛、水酸化ジルコニル、硝酸ジルコニ
ル、炭酸ジルコニルアンモニウム、塩化銀、硝酸銀、塩
化スズ、硝酸スズ、水酸化スズなどから選ばれる1種以
上の化合物があげられる。
【0044】本発明で使用される無機酸、有機酸および
それらの塩類は、上記化合物と反応して水難溶性無機微
粒子を生成するものであればよい。なかでもオキソ酸と
ハロゲン化水素酸およびそれらの塩類が好ましい。オキ
ソ酸の例としては、ホウ酸、メタホウ酸、炭酸、イソシ
アン酸、雷酸、オルトケイ酸、メタケイ酸、硝酸、亜硝
酸、リン酸(オルトリン酸)、ピロリン酸(二リン
酸)、メタリン酸、ホスホン酸(亜リン酸)、ジホスホ
ン酸(二亜リン酸)、ホスフィン酸(次亜リン酸)、硫
酸、二硫酸、チオ硫酸、亜硫酸、クロム酸、二クロム
酸、過塩素酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、シュ
ウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、
マレイン酸、フマル酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、安息
香酸、フタル酸などがあげられる。ハロゲン化水素酸の
例には、フッ化水素酸、塩化水素酸、臭化水素酸、ヨウ
化水素酸などがある。オキソ酸とハロゲン化水素酸の塩
類の例としては、それらのアルカリ金属塩、アルカリ土
類金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩などがある。
【0045】水難溶性無機微粒子の例としては、リン酸
カルシウム、リン酸水素カルシウム、炭酸カルシウム、
硫酸カルシウム、リン酸マグネシウム、炭酸マグネシウ
ム、炭酸バリウム、硫酸バリウム、炭酸ストロンチウ
ム、硫酸ストロンチウム、リン酸ストロンチウム、水酸
化アルミニウム、リン酸アルミニウム、リン酸亜鉛、リ
ン酸スズなどがあるが、これらの化合物に限定されるも
のではなく、上記した化合物を反応して得られる水難溶
性のイオン結晶であればよい。
【0046】本発明で使用されるリン酸カルシウムは、
リン酸に由来する部分とカルシウム原子の合計が50質
量%以上含まれるものである。例としてはヒドロキシア
パタイト、フッ素アパタイト、塩素アパタイト、炭酸含
有アパタイト、マグネシウム含有アパタイト、鉄含有ア
パタイト等のアパタイト化合物、リン酸三カルシウム等
が挙げられる。本発明のリン酸カルシウムに含まれるア
パタイト化合物は、基本組成がM10(RO4 )6
X2 で表され、基本的にMサイトにカルシウムイオン
(Ca2+)、RO4 サイトにリン酸イオン(PO4
3−)が存在している化合物であるが、M、RO4
、Xの各サイトは種々のイオン等と置換が可能であ
り、また、空孔ともなり得るものである。置換量および
空孔量はそのイオン等の種類により異なるが、リン酸に
由来する部分とカルシウム原子の合計が50質量%以上
含まれていれば他のイオン等と置換していても差し支え
ない。
【0047】リン酸に由来する部分とカルシウム原子の
合計が50質量%を下回るとリン酸カルシウムとしての
特性が失われることがあるために好ましくない。Mサイ
トは基本的にCa2+であるが、置換可能なイオン種の
例として、H+ 、Na+、K+ 、H3 O+ 、S
r2+、Ba2+、Cd2+、Pb2+、Zn2+、M
g2+、Fe2+、Mn2+、Ni2+、Cu2+、H
g2+、Ra2+、Al3+、Fe3+、Y3+、Ce
3+、Nd3+、La3+、Dy3+、Eu3+、Zr
4+等があげられる。RO4 サイトは基本的にPO4
3−であるが、置換可能なイオン種の例として、SO
4 2−、CO3 2−、HPO42−、PO3 F2
−、AsO4 3−、VO4 3−、CrO4 3−、
BO3 3−、SiO4 4−、GeO4 4−、BO
4 5−、AlO4 5−、H4 O4 4−等があげ
られる。Xサイトに入るイオン種や分子の例として、O
H− 、F− 、Cl− 、Br− 、I− 、O2
−、CO3 2−、H2O等があげられる。
【0048】本発明で使用されるリン酸カルシウムにつ
いては詳細に記載したが、他のイオン結晶化合物に関し
ても、上述したような反応で合成可能な水難溶性微粒子
であれば、化学式から若干組成がずれているものや、一
部他の元素に置換わったもの、複塩の形で存在するもの
なども含まれる。
【0049】本発明のガスバリアフイルム材料中に含ま
れる水難溶性無機微粒子の平均粒径は500nm以下で
ある。平均粒径が500nmを越えるとガスバリア性能
が不十分であるばかりか、フイルムの強度や透明性を損
なってしまう。
【0050】高分子化合物(B)と水難溶性無機微粒子
(A)の質量比は10:90〜99.9:0.1、好ま
しくは20:80〜99.5:0.5、さらに好ましく
は25:75〜99:1の範囲である。
【0051】水難溶性無機微粒子量が0.1質量%より
多いとガスバリア向上効果があり、90%を以下では均
一な複合体フイルムまたは塗膜を形成でききるので好ま
しい。本発明では、実施例に記載するように、従来使用
されてきた無機層状化合物では困難であった、無機成分
を50%以上に配合した場合でも透明性に優れるフイル
ムを形成し、高いガスバリア性を可能にするのである。
【0052】水難溶性微粒子と高分子化合物とを混合あ
るいは混練する方法の場合は、必要に応じて高分子化合
物を加熱下に攪拌しながら微粒子を連続的または断続的
に投入して行われる。高いガスバリア性と透明性を発現
するためにはできる限り均一に混合する必要があるた
め、複合化に用いられる高分子化合物または微粒子の種
類によっては高い剪断力や圧縮力をかけながら混合を行
う。
【0053】比較的温和な条件下で水難溶性無機微粒子
が合成できる場合には、無機微粒子と相互作用できる水
溶性または水分散性の高分子化合物の存在下に水難溶性
無機微粒子を製造することで、無機微粒子がコロイド状
に分散して凝集を起こさずに安定な水溶液となる場合が
ある。特にPVAやEVOH、PVDC、PAN、PA
A、PAMなどのガスバリア性の高い樹脂を用いた場合
には、そのコロイド状分散液からガスバリアフイルムを
形成することが可能であり、また後述のように他のフイ
ルム基材に塗工することでガスバリア性を向上させる塗
工剤としての利用も可能である。
【0054】水難溶性無機微粒子の製造方法は、水分散
性の高分子化合物存在下に可能な方法であればいかなる
方法でもかまわない。(a)周期表2族元素、アルミニ
ウム、ケイ素、第4周期遷移金属、亜鉛、ジルコニウ
ム、銀、錫から選ばれる1種以上を必須成分とする無機
化合物またはそれらの混合物と、(b)有機酸、無機酸
およびそれらの塩類から選ばれる1種以上の化合物との
反応は、反応容器の中に(a)と(b)を一括添加する
か、または一方の水溶液または水分散液の中へ他方を添
加する方式、あるいは(a)と(b)とを別個に同時添
加する方法が取られる。高分子化合物は反応容器の中に
予め投入しておいても良いし、(a)や(b)と一緒に
添加しても良いが、(a)と(b)の反応が生じる状況
下では高分子化合物が存在するように設定する。反応は
攪拌機を備えた反応器や、各種の乳化・分散装置、ある
いは超音波分散機を使用することができる。滴下時間に
ついては特に制限はないが、概ね5分〜24時間であ
る。反応は滴下終了後、必要に応じて熟成させる。
【0055】通常は反応溶液を適当な温度を選択して反
応を行う。反応中同一温度に保つ必要はなく、反応の進
行にともない適宜変えてよく、必要に応じて加熱あるい
は冷却しながら行う。反応温度は概ね5〜95℃の範囲
にある。反応器内の雰囲気は特に限定はなく通常は空気
中で行われるが、炭酸ガスを吸収して微粒子中に取り込
まれて支障がある場合などでは窒素ガスのような不活性
ガスで置換した方がよい。また、pHにより生成種が影
響を受ける場合には、適当な酸またはアルカリを添加し
てpHをコントロールしながら合成する。合成時間は特
に限定はないが、滴下、熟成時間を合わせて概ね1〜1
20時間である。
【0056】反応溶媒としては水を用いるが、メタノー
ル、エタノール、イソプロパノール、アセトン、エチレ
ングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の
有機溶剤を併用してもよい。
【0057】本発明のガスバリアフイルム材料をフィル
ムに加工する場合には、材料が水溶液となる場合にはそ
のまま、あるいは濃縮処理やpH調整、必要に応じてエ
チレングリコールやグリセリン等の公知の可塑剤や、架
橋剤、増粘剤、充填剤、着色剤、酸化防止剤、紫外線吸
収剤、熱安定剤等の添加剤を混合した後に、ガラス、石
英、金属、セラミックス、プラスチック、ゴム等の基
板、ロール、ベルト等の上に上記の安定な分散液を塗布
・製膜し、必要に応じて加熱、減圧、送気、赤外線照
射、極超短波照射等の処理を行って乾燥させることによ
り製造することができる。材料が有機溶剤に可溶な場合
にも同様の方法でフイルム化できる。塗布方法は特に制
限はなく、流し塗り法、浸漬法、スプレー法等があり、
バーコーター、スピンコーター、ロールコーター、ナイ
フコーター、ブレードコーター、カーテンコーター、グ
ラビアコーター、スプレーコーター、ダイコーター、デ
ィップコーター等の公知の塗工機を使用できる。塗布厚
み(乾燥前の厚み)は概ね1μm〜10mmで、塗布法
の選択により任意に厚みを設定できる。乾燥温度は0〜
150℃の温度範囲で行い、常圧あるいは減圧下に行
う。その際に乾燥空気あるいは乾燥窒素を流通させて乾
燥時間を短縮することができる。乾燥フイルムはそのま
ま使用することも可能であるが、ガスバリア性を向上さ
せる目的で延伸処理を行うこともできる。さらに、ガス
バリア性を向上する、および/または耐水性を付与する
等の目的で、40〜200℃で数秒〜数十分間熱処理を
行ってもよい。 また本発明のガスバリアフイルム用
材料が熱可塑性の高分子化合物に水難溶性微粒子を混合
・混練して製造される場合には、インフレーション形成
法、Tダイ形成法などの押出し成形法によりフイルムと
する。ガスバリア性を向上させる目的で延伸処理を行う
こともできるし、さらに40〜200℃で数秒〜数十分
間熱処理を行ってもよい。これらの方法で製造されるフ
ィルムは透明性に優れる特徴を有する。これは、水難溶
性微粒子のサイズが可視光の波長領域以下であり、個々
の粒子が凝集を起こすことなくポリマーマトリックス中
に均一に分散していることを示す。透明性については、
400nmと700nmでの可視光透過率により定量的
に評価できる。ここでいう透明性に優れるとは膜厚が2
〜300μmにおける700nm波長の光透過率が50
%以上を示すものをいう。これらのフイルムは単独で使
用することもできるが、後述する塗工法で使用されるフ
イルムにラミネートして使用しても良い。
【0058】本発明のガスバリアフイルム材料で、特に
水溶性または水分散性の高分子化合物を使用する場合に
は、他のプラスチックフイルム上に塗工してガスバリア
性を付与することもできる。プラスチック表面には、コ
ロナ処理やアンカーコート等の表面処理がなされていて
も良い。塗工基材として用いられるプラスチックフイル
ムは、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチ
レン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重
合体、エチレン−メチルメタクリレート共重合体、エチ
レン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−アクリ
ル酸(塩)共重合体、ポリプロピレンなどのポリオレフィ
ン類、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレ
フタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエス
テル類、ナイロン−6、ナイロン−66、ナイロン−1
2およびそれらの共重合体などのポリアミド類、ポリメ
チルメタクリレート、ポリアクリロニトリルなどのポリ
アクリル類、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリ
ル共重合体、スチレン−アクリロニトリル−ブタジエン
共重合体などのポリスチレン類、酢酸セルロース類、ポ
リ塩化ビニル類、ポリ塩化ビニリデン類、テフロン(登
録商標)類、ポリビニルアルコール類、エチレン−ビニ
ルアルコール共重合体類、ポリカーボネート類、ポリサ
ルホン類、ポリエーテルエーテルケトン類、ポリフェニ
レンオキシド類、ポリイミド類、ポリアミドイミド類が
ある。
【0059】これらのプラスチックフイルム基材は、未
延伸、一軸延伸、二軸延伸の何れでも良く、塗工液を塗
布後または乾燥後に延伸処理を行うことも可能である。
【0060】塗工液には必要に応じて、エチレングリコ
ールやグリセリン等の公知の可塑剤や、メタノール、エ
タノール、イソプロピルアルコールなどの低級アルコー
ル、架橋剤、増粘剤、充填剤、着色剤、酸化防止剤、紫
外線吸収剤、熱安定剤等の添加剤を混合する。塗工方
法、乾燥方法、熱処理条件は前述したフイルム製造と同
様の方法、条件を適用することができる。
【0061】また、本発明においては、従来公知の蒸着
法やスパッタ法で金属または金属酸化物でコートしたフ
イルムに貼り合せまたは塗工する方法や、本発明のガス
バリアフイルム材料からなるフイルムまたは塗工フイル
ムに蒸着、スパッタ法で金属または金属酸化物層を設け
ることも可能である。
【0062】水溶性または水分散性の高分子化合物に微
粒子を分散させて塗工したフィルムは、高湿度下ではガ
スバリア性が低下する場合がある。これを防ぐには、該
塗工層の上に水蒸気透過性の低いフィルムを積層する方
法が好適に用いられる。水蒸気透過性の低いフィルムと
しては、前述したプラスチック基材フィルムがあり、従
来公知の方法で積層でき、通常押出しラミネート法、あ
るいはドライラミネート法により積層できる。積層する
場合、デラミネーションを起こさないように接着性の樹
脂をはさんで積層する方法をとるが、実用上問題が生じ
ない場合には接着性の樹脂を使用する必要はない。積層
体の構造については特に制限はなく、複数のフィルムを
積層し、さらに多層にしても良い。
【0063】
【実施例】以下、実施例で本発明を詳細に説明するが、
本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。ま
た、以下の例において用いる%は特記のない限り質量基
準を示す。粘度は25℃においてB型粘度計〔(株)トキ
メック社製〕により計測した値である。 <PVAとリン酸カルシウム複合体合成例> [複合化実施例1]予め蒸留水で溶解しておいたカルボ
キシル基変性ポリビニルアルコール(PVA KM−1
18(商品名);(株)クラレ社製、ケン化度 97.0モ
ル%、重合度 1,800 )水溶液(PVA15.04質量%)6
6.49g 、蒸留水256.14g、イソプロピルアルコール10.0g
からなる溶液を日本精機社製のマキシムホモジナイザー
容器に入れ、10%水酸化ナトリウム0.18g を加えた後
に、水酸化カルシウム7.375gを攪拌しながら加えて懸濁
液とした。攪拌速度10,000rpmで攪拌しながら、10.5%
リン酸水溶液55.6g 、蒸留水4.37gを混合溶解した水溶
液を、ミクロチューブポンプを用いて連続的に1時間か
けて添加した。添加後さらに15分間攪拌を行ない、ポ
リビニルアルコール/リン酸カルシウム微粒子(50:
50)分散水溶液(a−1)を得た。反応温度は40℃
を越えないように適宜冷却した。得られた分散水溶液の
pHは7.24であり、25℃におけるブルックフィールド粘
度は23.9mPa ・ s であった。沈降物の生成はほとんど認
められず、数週間静置しても分離、沈降等の変化を起こ
さずに安定であった。さらに、得られた微粒子分散液を
2,000rpmで10分間遠心処理を行ったが、分離、沈降等
の変化は認められなかった。反応液の固形分濃度は5.2
%であった。
【0064】この分散液中の微粒子の粒度分布は、透過
性電子顕微鏡で観察した粒子の長軸径っと短軸径とを、
画像解析(Planetron社:Image Pro
−Plus)によって求めた。長軸径の最大値は197
nm、平均径は78nmであり、短軸径の最大値は94
nm、平均径は24nmであった。
【0065】層状構造であれば、X線回折法で(00
1)面の解析パターンが観測される。本分散液を凍結乾
燥法により粉末化してX線回折測定を行うと、典型的な
ヒドロキシアパタイトの回折パターンが得られ、層状構
造ではないことが証明される。
【0066】[複合化実施例2]予め蒸留水で溶解して
おいたカルボキシル基変性ポリビニルアルコール(PV
A KM−118(商品名);(株)クラレ社製、ケン
化度 97.0モル%、重合度 1,800 )水溶液(PVA15.0
4質量%)119.68g 、蒸留水208.84g、イソプロピルアル
コール10.0gを日本精機社製のマキシムホモジナイザー
容器に入れ、10%水酸化ナトリウム0.32g を加えた後
に、水酸化カルシウム1.475gを攪拌しながら加えて懸濁
液とした。攪拌速度10,000rpmで攪拌しながら、10.5%
リン酸水溶液11.13g 、蒸留水48.87gを混合溶解した水
溶液を、ミクロチューブポンプを用いて連続的に1時間
かけて添加した。添加後さらに15分間攪拌を行ない、
カルボキシル基変性ポリビニルアルコール/リン酸カル
シウム微粒子(90:10)分散水溶液(a−2)を得
た。反応温度は40℃を越えないように適宜冷却した。
得られた分散水溶液のpHは5.65であり、25℃における
ブルックフィールド粘度は47.7mPa ・ s であった。沈降
物の生成はほとんど認められず、数週間静置しても分
離、沈降等の変化を起こさずに安定であった。さらに、
得られた微粒子分散液を2,000rpmで10分間遠心処理を
行ったが、分離、沈降等の変化は認められなかった。反
応液の固形分濃度は5.2質量%であった。
【0067】この分散液中の微粒子の粒度分布は、複合
化実施例1と同様の方法で求めた。長軸径の最大値は3
20nm、平均径は102nmであり、短軸径は非常に
細かったため本手法では数値化できなかった。
【0068】[フィルム作成例1]複合化実施例1、2
で得られた分散溶液(a−1、a−2)を直径90mm
のポリメチルペンテン樹脂製のシャーレに入れ、水平台
上にのせて乾燥窒素を流すことによって、透明性に優れ
る複合フィルムを製造した。全ての試料が透明なフィル
ムとなった。シャーレに入れる液量を調節することによ
り、種々の厚みを持つフイルムを作成した。乾燥フイル
ムは更に110℃で4min熱処理を行った後にガス透
過試験を行った。
【0069】[フイルム作成例2]分散溶液a−1、a
−2を10%濃度に濃縮処理を行い、必要に応じて濾布
または金属メッシュで濾過処理を行った後、表面にUV
インキ・酸化重合インキ易接着層をもつポリエチレンテ
レフタレートフイルム(A−4100:東洋紡績製)の
接着層側にベーカーアプリケーターで所定の厚みに塗布
し、フイルムを固定して110℃で4min乾燥して透
明性に優れるPVA/リン酸カルシウム複合体を表面に
コートしたフイルムを作成した。
【0070】[フイルム作成比較例1]複合体分散水溶
液を使用する代りに、PVAのみからなるフイルムをフ
イルム作成例1と同様の方法で作成した。PVAはKM
−118および117((株)クラレ社製、ケン化度 9
7.4モル%、重合度 1,700 )について行った。
【0071】[フイルム作成比較例2]複合体分散水溶
液を使用する代りに、PVAのみからなる塗工液を用
い、フイルム作成例2と同様の方法で塗工フイルムを作
成した。 [ヘリウムガスバリア測定]フイルム作成例1およびフ
イルム作成比較例1で作成したフイルムに関して、ヘリ
ウムガス透過試験を実施した。ヘリウムの透過度は、特
開平6−241978に開示されている四重極型質量分
析計を検出器としたフイルム用ガス透過率測定装置を用
いて、10cm2のフイルムを透過するヘリウムガス量
を測定した。結果は表1に示した。
【0072】[酸素ガスバリア測定]フイルム作成例
1、2およびフイルム作成比較例1、2で作成したフイ
ルム及びコートフイルムについて、ASTM D−3
985に従い、MOCON社製の酸素透過度試験装置
(OX−TRAN 2/20型)を用い、65%RHお
よび80%RH条件下で測定した。結果は表2に示し
た。
【0073】
【表1】
【0074】
【表2】
【0075】
【発明の効果】本発明のイオン結晶を複合化したフイル
ムは、表1、2に示したように同程度の膜厚で比較する
と、複合化していないフイルムに対して大きくガス透過
量を抑えることができる。本発明では実施例にも記載し
たように、無機成分を50%含有する系でも透明性に優
れたフイルムを形成し、高いガスバリア性が発現する。
フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C08K 5/09 C08K 5/09 (72)発明者 芳賀 康彦 千葉県袖ヶ浦市長浦580−32 三井化学株 式会社内 Fターム(参考) 4F071 AA01 AA15 AA25 AA29 AA32 AA34 AA35 AA73 AB11 AB13 AB15 AB16 AB17 AB18 AB19 AB21 AB24 AB26 AC09 AF07 AH04 AH05 BC01 4J002 AB011 BD101 BE021 BE031 BG041 BG091 BG121 BG131 DB006 DD006 DD036 DD046 DD066 DD076 DE166 DE206 DE216 DE236 DE246 DE266 DE276 DE286 DF036 DG046 DG056 EG006 EG016 EG026 EG036 EG046 EG056 GG00 GG01 GG02

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 平均粒径500nm以下の水難溶性無機
    微粒子(A)と高分子化合物(B)から構成されるガス
    バリアフイルム用材料において、(A)が(a)周期表
    2族元素、アルミニウム、ケイ素、第4周期遷移金属、
    亜鉛、ジルコニウム、銀、錫から選ばれる1種以上を必
    須成分とする無機化合物またはそれらの混合物と、
    (b)有機酸、無機酸およびそれらの塩類から選ばれる
    1種以上の化合物を反応して合成される非層状構造のイ
    オン結晶であることを特徴とするガスバリアフイルム用
    材料。
  2. 【請求項2】 平均粒径500nm以下の水難溶性無機
    微粒子(A)と高分子化合物(B)から構成されるガス
    バリアフイルム用材料において、(A)が(B)存在下
    に合成されることを特徴とする請求項1記載のガスバリ
    アフイルム用材料。
  3. 【請求項3】 高分子化合物(B)が水溶性または水分
    散性の高分子化合物であることを特徴とする、請求項1
    または2記載のガスバリアフイルム用材料。
  4. 【請求項4】 水溶性または水分散性の高分子化合物
    が、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコー
    ル共重合物、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリル酸
    (塩)、ポリ(メタ)アクリルアミド、ポリアクリロニ
    トリル、セルロース誘導体およびそれらの変性物から選
    ばれる1種以上の高分子化合物から構成されることを特
    徴とする、請求項1〜3の何れかに記載のガスバリアフ
    イルム材料。
  5. 【請求項5】 (a)周期表2族元素がマグネシウム、
    カルシウム、ストロンチウム、バリウムから選ばれる1
    種以上の元素であることを特徴とする、請求項1〜4の
    何れかに記載のガスバリアフイルム用材料。
  6. 【請求項6】 (b)有機酸、無機酸およびそれらの塩
    類が、硫酸、リン酸、炭酸およびそれらの塩類であるこ
    とを特徴とする、請求項1〜5の何れかに記載のガスバ
    リアフイルム用材料。
  7. 【請求項7】 請求項1〜6の何れかに記載のガスバリ
    アフィルム用材料を用いたガスバリアフィルム。
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