JP2002338360A - 窒化ケイ素製ベアリングボールとその製造方法、およびそれを用いたベアリングとスピンドルモータ - Google Patents

窒化ケイ素製ベアリングボールとその製造方法、およびそれを用いたベアリングとスピンドルモータ

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JP2002338360A
JP2002338360A JP2001139151A JP2001139151A JP2002338360A JP 2002338360 A JP2002338360 A JP 2002338360A JP 2001139151 A JP2001139151 A JP 2001139151A JP 2001139151 A JP2001139151 A JP 2001139151A JP 2002338360 A JP2002338360 A JP 2002338360A
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bearing ball
bearing
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conductivity
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Yoshiyuki Fukuda
悦幸 福田
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Original Assignee
Toshiba Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 HDDのような電子機器用のベアリングボー
ルに適用した際に、静電気による不具合を解消すると共
に、高速回転の信頼性を高めた窒化ケイ素製ベアリング
ボールが求められている。 【解決手段】 窒化ケイ素焼結体からなるベアリングボ
ール11である。ベアリングボール11は、内層部12
より電気抵抗値が低い表層部13を有する。表層部13
は例えば10-3〜104Ω・mの範囲の電気抵抗値を有してお
り、このような電気抵抗値は表層部13に金属炭化物や
金属窒化物などからなる導電性付与材を含有させること
により実現される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電子機器などに用
いた際の静電気による不具合を改善した窒化ケイ素製ベ
アリングボールとその製造方法、およびそれを用いたベ
アリングとスピンドルモータに関する。
【0002】
【従来の技術】近年、ハードディスクドライブ(HD
D)やプロッピーディスクドライブ(FDD)などの磁
気記録装置、CD−ROMやDVDなどの光ディスク装
置、各種ゲーム機器などの発達には目覚しいものがあ
る。これら電子機器においては、通常、スピンドルモー
タなどの回転駆動装置により回転軸を高速回転させ、こ
の回転軸に装着された各種ディスクを機能させている。
【0003】従来、このような回転軸を支える軸受部
材、特にベアリングボールには軸受鋼などの金属が主と
して用いられてきた。しかし、軸受鋼などの金属材料は
耐摩耗性が不十分であることから、例えば電子機器のよ
うに5000rpm以上の高速回転が要求される分野において
は、寿命のバラツキが増大することで信頼性のある回転
駆動が提供できないというような問題が生じている。
【0004】このような不具合を解消するために、近年
ではベアリングボールに窒化ケイ素焼結体などのセラミ
ックス材料が用いられるようになってきている(例えば
特開2000-314426号公報参照)。窒化ケイ素焼結体はセ
ラミックス材料の中でも摺動特性に優れ、良好な耐摩耗
性を有するものである。従って、高速回転を行う場合に
おいても、機械的に信頼性のある回転駆動を提供するこ
とが可能となる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、窒化ケ
イ素製ベアリングボールは電気的に絶縁物であるため、
高速回転を行った際に発生する静電気を、軸受鋼などの
金属材料からなる回転軸やボール受け部材などのベアリ
ングボール以外の軸受部材に上手く逃がすことができな
いといった問題が発生してしまう。
【0006】このように、回転駆動部の高速回転に伴う
静電気を上手く発散することができず、それによりベア
リングや周辺部品が必要以上に帯電してしまうと、例え
ばHDDのように磁気的信号を用いる記録装置では記録
媒体に悪影響を与えることになる。その結果として、H
DD内の記録内容が失われてしまったり、さらにはHD
Dなどの電子機器そのものが正常に動作しなくなるとい
った現象が起きることが懸念されている。
【0007】さらに、携帯用パソコン、電子手帳、各種
モバイル製品などは年々小型化されており、それらに用
いられるHDDなどに対しても年々高容量化、小型化の
要望が強くなっている。このような要求に応じるため
に、例えばHDDではさらなる高速回転化が進められて
おり、将来的には約10000rpm以上の高速回転が実現され
ることが予測されている。このようなことから、ベアリ
ングボールの高速回転への対応性をより一層高めること
が求められている。
【0008】本発明はこのような問題を解決するために
なされたものであって、安定した高速回転を実現すると
共に、必要以上に静電気が蓄積することを防止した窒化
ケイ素製ベアリングボールとその製造方法を提供するこ
とを目的としており、さらにそのようなベアリングボー
ルを用いることによって、HDDのような磁気記録装置
やDVDのような光ディスク装置などの電子機器の高機
能化や高信頼性化などを実現可能とするベアリングおよ
びスピンドルモータを提供することを目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明の窒化ケイ素製ベ
アリングボールは、請求項1に記載したように、窒化ケ
イ素焼結体からなる窒化ケイ素製ベアリングボールであ
って、前記窒化ケイ素焼結体は、内層部と、前記内層部
より電気抵抗値が低い表層部とを具備することを特徴と
している。
【0010】本発明の窒化ケイ素製ベアリングボール
は、請求項2に記載したように、表層部が10-3〜104Ω・
mの範囲の電気抵抗値を有すること、さらに請求項3に
記載したように、表層部が10-5Ω・m以下の電気抵抗値を
有する導電性付与材を含有することを特徴としている。
【0011】本発明の窒化ケイ素製ベアリングボールに
おいて、表層部はベアリングボールの半径に対して表面
から1/3までの範囲に形成されていること、さらに表面
から10μm以上の範囲に形成されていることが好まし
い。また、表層部の最大厚さをW1、最小厚さをW2とし
たとき、W1/W2≦1.2であることが好ましい。導電性
付与材に関しては、その凝集部の最大径が10μm以下で
あることが好ましい。
【0012】さらに、本発明の窒化ケイ素製ベアリング
ボールは、通常の工作機械などに用いてもよいが、電子
機器の回転駆動部に好適に用いられるものである。本発
明の窒化ケイ素製ベアリングボールが好適に使用される
電子機器としては、例えばHDDやFDDなどの磁気記
録装置、CD−ROMやDVDなどの光ディスク装置、
各種ゲーム機器などが挙げられる。
【0013】本発明の窒化ケイ素製ベアリングボールに
おいては、例えば表層部のみに適当量の導電性付与材を
含有させることによって、内層部より電気抵抗値が低い
表層部を設けている。具体的には、表層部に電子機器な
どに対して種々の悪影響を及ぼす静電気を外部に逃がす
ことが可能な程度の導電性を付与しているため、本発明
の窒化ケイ素製ベアリングボールを電子機器の回転駆動
部などに適用した際に、静電気による不具合を解消する
ことが可能となる。
【0014】さらに、導電性付与材の配合はベアリング
ボールの表層部に限定し、内層部は通常の窒化ケイ素焼
結体で構成しているため、ベアリングボール全体として
の特性は窒化ケイ素焼結体が本来有する硬度、耐摩耗
性、破壊靭性値などが維持されている。従って、このよ
うな本発明のベアリングボールを用いることによって、
電子機器などの回転駆動部において、信頼性に優れる高
速回転を実現することが可能となる。
【0015】本発明の窒化ケイ素製ベアリングボールの
製造方法は、上記した本発明の窒化ケイ素製ベアリング
ボールの製造方法であって、導電性付与材を含有しない
第1の窒化ケイ素原料粉末を用いて、前記内層部を構成
する球状成形体を作製する工程と、前記球状成形体の外
周面に、導電性付与材を含有する第2の窒化ケイ素原料
粉末を転動造粒により付着させ、前記表層部を構成する
成形層を形成する工程と、前記転動造粒により作製した
2層構造の球状成形体にCIP成形を施し、さらに焼結
を行って前記内層部と表層部を有する窒化ケイ素焼結体
を作製する工程とを有することを特徴としている。この
ような本発明の製造方法によれば、導電性付与材を含有
する表層部を均一に形成することができる。
【0016】本発明のベアリングは、上記した本発明の
窒化ケイ素製ベアリングボールを具備することを特徴と
している。本発明のスピンドルモータは、本発明のベア
リングを具備することを特徴としている。本発明のスピ
ンドルモータの具体的な形態としては、前記ベアリング
が装着された固定軸と、前記固定軸に前記ベアリングを
介して回転可能に支持され、かつロータ磁石を有するロ
ータ部と、前記ロータ磁石と所定の間隙を持って対向配
置されたステータコイルを有するステータ部とを具備す
る構造が挙げられる。
【0017】
【発明の実施の形態】以下、本発明を実施するための形
態について説明する。
【0018】本発明のベアリングボールは、窒化ケイ素
を主成分とする焼結体(窒化ケイ素焼結体)からなるも
のである。窒化ケイ素焼結体自体は絶縁性が高く、一般
的には電気抵抗値が108Ω・m以上であるため、このまま
では静電気を除去することはできない。そこで、本発明
の窒化ケイ素製ベアリングボールにおいては、電気抵抗
値が内層部より低い表層部を設けている。
【0019】図1は本発明の一実施形態によるベアリン
グボール11の構成を示す断面図である。図1に示すベ
アリングボール11は、窒化ケイ素単独の焼結体からな
る内層部12と、この内層部12より電気抵抗値が低い
表層部13とを有している。電気抵抗値が内層部12よ
り低い表層部13の形成方法は特に限定されるものでは
ないが、ベアリングボール11の使用形態を考慮して表
層部13を構成する窒化ケイ素焼結体中に導電性付与材
を含有させることによって、表層部13の電気抵抗値を
下げることが好ましい。なお、内層部12および表層部
13共に必要に応じて焼結助剤を添加してよいものとす
る。
【0020】例えば、ベアリングボール11の表面に導
電性膜を形成することによっても、表面の電気抵抗値を
下げることができるが、ベアリングボール11のように
常に摺動する部材では膜剥離などの問題が発生するおそ
れが大きい。これに対して、表層部13を構成する窒化
ケイ素焼結体中に導電性付与材を含有させることによっ
て、ベアリングボール11の電気抵抗値(導電性)の劣
化などを抑制することができる。導電性付与材は10-5Ω
・m(10-3Ω・cm)以下の電気抵抗値を有することが好ま
しい。導電性付与材の電気抵抗値が10-5Ω・mを超える
と、表層部13に所定の電気抵抗値を付与するための配
合量が増大するため、窒化ケイ素焼結体の機械的特性な
どが低下するおそれがある。
【0021】このような導電性付与材には、窒化ケイ素
焼結体の電気抵抗値を制御することが可能な炭化物、窒
化物、金属などの種々の材料を使用することができる。
それらのうちでも、周期律表の4A族元素、5A族元
素、6A族元素、7A族元素、ケイ素、硼素の炭化物、
窒化物および金属単体から選ばれる少なくとも1種であ
ることが好ましい。これらのうち、炭化物や窒化物は化
学的に安定であり、耐熱性にも優れることから、ベアリ
ングボールなどが摺動した際に発生する熱による悪影響
を受けにくく、本発明に用いる導電性付与材として好適
である。なお、これら導電性付与材の存在はEPMAや
X線回折などの様々な方法により分析可能である。
【0022】導電性付与材としては、特に摺動特性に優
れる、タンタル(Ta)、ニオブ(Nb)、クロム(C
r)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、チタ
ン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(H
f)、マンガン(Mn)およびケイ素(Si)から選ば
れる少なくとも1種の炭化物を用いることが好ましい。
ベアリングボール11においては、表層部13に配合さ
せる導電性付与材も当然ながら窒化ケイ素焼結体と共に
摺動されることになる。従って、導電性付与材自体につ
いても、ある程度の摺動特性は要求されることから、上
述したような金属炭化物を用いることが好ましい。
【0023】上述した炭化物や窒化物などからなる導電
性付与材は、平均粒子径が2μm以下の粒子形状を有する
ことが好ましい。このような炭化物粉末や窒化物粉末を
用いることによって、表層部13を構成する窒化ケイ素
焼結体中に導電性付与材を良好に分散させることができ
る。一方、導電性付与材としてウイスカーや繊維状物を
用いると、これらがベアリングボール11の表面にトゲ
状の凸部として存在するおそれが生じる。表面にトゲ状
の凸部が存在すると、摺動時に例えばボール受け部など
の相手部材への攻撃性が高まると共に、破壊の起点とな
るおそれがある。
【0024】表層部13を構成する窒化ケイ素焼結体中
の導電性付与材の含有量は特に限定されるものではない
が、表層部13の電気抵抗値が10-3〜104Ω・mの範囲に
なるように含有させることが好ましい。表層部13の電
気抵抗値が104Ω・m(106Ω・cm)を超えると、静電気の
帯電防止効果を十分に得ることができないおそれがあ
る。
【0025】一方、表層部13の電気抵抗値が10-3Ω・m
(10-1Ω・cm)未満であっても、静電気の放散に関して
それ以上の効果が得られないだけでなく、そのような電
気抵抗値を得るためには多量の導電性付与材を添加する
必要が生じる。窒化ケイ素焼結体に多量の導電性付与材
を配合すると、導電性付与材同士の凝集などが生じやす
くなり、これにより表層部13の耐摩耗性などが損なわ
れるおそれがある。さらに、あまり多量に導電性付与材
を含有させると摺動中に内層部13と表層部12との間
に剥がれ現象が生じやすくなる。
【0026】言い換えると、表層部13の電気抵抗値を
10-3〜104Ω・mの範囲に設定した窒化ケイ素製ベアリン
グボール11によれば、硬度や耐摩耗性に優れるという
窒化ケイ素焼結体の利点を損なうことなく、例えば高速
回転させた際に生じる静電気による不具合を解消するこ
とが可能となる。表層部13を構成する窒化ケイ素焼結
体の電気抵抗値は10-2〜103Ω・mの範囲であることがよ
り好ましい。
【0027】導電性付与材の具体的な配合量は、使用し
た導電性付与材の電気抵抗値に応じて、表層部13の電
気抵抗値が10-3〜104Ω・mの範囲となるように適宜調整
される。導電性付与材として炭化物や窒化物を用いる場
合には、表層部13の窒化ケイ素焼結体の全量に対して
30体積%以下とすることが好ましい。導電性付与材の配
合量は15〜25体積%の範囲とすることがより好ましい。
【0028】本発明において、表層部13の電気抵抗値
を所定の値にすることのみを考慮するのであれば、導電
性付与材を30体積%以上含有させても特に問題はない
が、あまり含有量が多くなりすぎると窒化ケイ素焼結体
本来の硬度や耐摩耗性などの特性を十分に発揮させるこ
とができないおそれがある。なお、導電性付与材の含有
量が15体積%未満であると、電気抵抗値を所定の値に制
御することが困難になるため、あまり好ましくはない。
【0029】上述したような導電性付与材を含有させた
表層部13の厚さR2は、ベアリングボール11の半径
R1に対して表面から1/3までの範囲とすることが好まし
い。つまり1/3R1≧R2とすることが好ましい。導電性
付与材を含有する表層部13が半径R1の1/3を超えて存
在すると、表層部13と内層部12の2層構造とする効
果が低減するためである。
【0030】すなわち、ベアリングボール11の全体に
導電性付与材を分散含有させる方法であっても、静電気
の帯電防止効果は得られるが、このような効果はベアリ
ングボール11の表面のみに導電性(電気抵抗値の低い
部分)を付与することで得ることができる。従って、表
層部13のみに導電性付与材を含有させた形態であれ
ば、全体に導電性付与材を含有させた場合に比べて導電
性付与材の使用量を低減することができる。これはベア
リングボール11の製造コストの低減に寄与するだけで
なく、軽量化に対しても効果をもたらす。例えば、5000
rpm以上というような高速回転を行うベアリングでは、
ベアリングボール11の僅かな軽量化であっても大きな
効果が得られる。
【0031】さらに、内層部12を構成する窒化ケイ素
焼結体は導電性付与材を含まないため、窒化ケイ素焼結
体本来の特性が維持されている。従って、窒化ケイ素製
ベアリングボール11としての硬度、耐摩耗性、破壊靭
性値などの特性を、窒化ケイ素焼結体本来の特性により
近付けることができる。従って、このような本発明のベ
アリングボール11を用いることによって、例えば電子
機器などの回転駆動部における高速回転(例えば5000rp
m以上)を高信頼性の下で実現することが可能となる。
なお、導電性付与材の使用量の低減に伴う製造コストの
削減効果は、直径が3mm以下の小型のベアリングボール
11において特に有効に得ることができる。
【0032】表層部13の厚さR2は、さらに表面から1
0μm以上とすることが好ましい。表層部13の厚さが10
μm未満であると、表層部13中の導電性付与材が固定
され難く、ベアリングボール11として摺動した際に導
電性付与材の脱粒が起こりやすくなる。脱粒が起きると
そこが破壊起点となって、ベアリングボール11の寿命
が低下する。従って、導電性付与材を含有した表層部1
3の厚さR2は10μm以上で、かつ半径R1の1/3以下が好
ましい範囲となる。
【0033】なお、ベアリングボールが円柱状などの真
球状以外の形状を有する場合には、最短の半径を基本線
として表面から1/3の範囲、また表面から10μm以上の範
囲を導き出すものとする。すなわち、本発明のベアリン
グボールを構成する窒化ケイ素焼結体は種々の形状のベ
アリング部材として用いることができる。そのような場
合には、ベアリング部材の厚さ方向の表面から中心まで
の距離を基準とし、この距離に対して表面から1/3まで
の範囲に表層部を形成することが好ましい。また、表層
部はベアリング部材の厚さ方向に対して表面から10μm
以上の範囲に形成することが好ましい。
【0034】本発明の窒化ケイ素製ベアリングボール1
1においては、さらに図2に示すように、表層部13の
最大厚さW1と最小厚さW2の比がW1/W2≦1.2となる
ように、表層部13を形成することが好ましい。表層部
13と内層部12の実質的に2層構造を有するベアリン
グボール11において、表層部13の厚さにバラツキが
あると転がり寿命にバラツキが生じてしまう。すなわ
ち、ベアリングボール11を摺動させた際に、表層部1
3の厚さが薄いところに応力歪みが生じやすく、そこか
ら剥離現象を起こりやすくなる。従って、表層部13は
厚さのバラツキを低減することが好ましい。厚さの均一
性に優れた表層部13は、例えば後述する転動造粒を用
いることにより再現性よく得ることができる。
【0035】また、表層部13における導電性付与材の
存在形態は、それを構成する窒化ケイ素焼結体中に微細
に分散させることが好ましい。具体的には、導電性付与
材の凝集部の最大径が10μm以下となるように、導電性
付与材を窒化ケイ素焼結体中に分散させることが好まし
い。すなわち、導電性付与材の一部はベアリングボール
11の表面に存在し、この導電性付与材は当然摺動面の
一部を担うことになる。従って、導電性付与材の凝集径
が大きくなりすぎると、そこから破壊などが生じやすく
なるため、導電性付与材の凝集部の最大径は10μm以下
とすることが好ましい。凝集部の最大径は5μm以下がよ
り好ましく、さらに好ましくは3μm以下である。
【0036】ただし、導電性付与材の最大径があまり小
さすぎると均一分散し難いため、かえって導電性付与材
同士の凝集が起きやすくなり、その凝集粒子が摺動時に
脱粒するおそれが生じることから、最大径は0.2μm以上
であることが好ましい。導電性付与材の最大径(凝集部
の最大径を含む)は0.5〜3μmの範囲とすることが望ま
しい。なお、本発明における導電性付与材の最大径(凝
集部の最大径を含む)とは、導電性付与材の最も長い対
角線を示すものであり、簡易的には拡大写真中の導電性
付与材の最も長い対角線から測定することができる。
【0037】本発明の窒化ケイ素製ベアリングボール1
1においては、表層部13に導電性付与材を配合する以
外は一般的な窒化ケイ素焼結体と同様に、表層部13と
内層部12の各層に各種の金属化合物からなる焼結助剤
を含む窒化ケイ素焼結体を使用することができる。焼結
助剤には一般的な酸化イットリウムなどの希土類酸化
物、酸化アルミニウムや酸化マグネシウムなどの金属酸
化物などが好適であり、その添加量は特に限定されるも
のではないが、通常と同様に15質量%以下とすることが
好ましい。
【0038】本発明の窒化ケイ素製ベアリングボールの
製造方法は特に限定されるものではないが、例えば以下
に示すような方法により製造することが好ましい。
【0039】まず、内層部12用の窒化ケイ素原料粉末
(第1の原料粉末)と表層部13用の窒化ケイ素原料粉
末(第2の原料粉末)をそれぞれ調整する。第1の原料
粉末については、窒化ケイ素粉末と焼結助剤粉末を所定
量秤量し、これらを均一に混合する。第2の原料粉末に
ついては、窒化ケイ素粉末、焼結助剤粉末および導電性
付与材粉末をそれぞれ所定量秤量し、これらを均一に混
合する。
【0040】各粉末の粒子径に関しては、窒化ケイ素粉
末や焼結助剤粉末は0.2〜3μm程度の平均粒子径を有す
ることが好ましい。導電性付与材粉末については、前述
したように平均粒子径が2μm以下であることが好まし
く、さらに焼結後に凝集部の最大径が10μm以下となる
ような粒子径を有することが好ましい。例えば、標準偏
差が1.5μm以下というような粒子径のバラツキが少ない
粉末を用いることが好ましい。さらに、ベアリングボー
ルとしての摺動特性を維持するために、ウイスカーや繊
維ではなく、粒子状粉末を用いることが好ましい。
【0041】そして、上述した第1の原料粉末(導電性
付与材を含有しない窒化ケイ素原料粉末)を用いて、内
層部12を構成する球状成形体を作製する。次いで、第
2の原料粉末(導電性付与材を含有する窒化ケイ素原料
粉末)上に、球状成形体を載せて転動造粒を行うことに
よって、内層部12を構成する球状成形体の表面に表層
部13を構成する成形層を形成する。
【0042】転動造粒は内層部12を構成する球状成形
体を転がしながら、表層部13を形成する原料粉末を付
着させて2層構造の成形体を作製する方法であり、厚さ
が均一な表層部を有する成形体が再現性よく得られる。
なお、成形型内に表層部を形成する原料粉末を所定量敷
き詰めた後に、内層部を構成する成形体を入れてプレス
成形する方法によっても、2層構造のベアリングボール
を作製することができるが、このような方法では表層部
の厚さにバラツキが生じやすい。
【0043】次に、転動造粒後の2層構造を有する球状
成形体に冷間静水圧プレス(CIP)を施す。CIPは
継続的に2回以上施すことが好ましい。内層部12を構
成する球状成形体を作製する際にもCIPを行えば、実
質的に2回以上CIPを行っているのと同じことにな
る。もちろん、転動造粒後の2層構造の球状成形体に対
して継続的に2回以上CIPを施してもよい。CIP成
形を2回以上行う方法を適用すると、成形体の気孔など
の形成量が抑えられるため、特性に優れたベアリングボ
ールが得られる。
【0044】焼結方法に関しては、常圧焼結や加圧焼結
のみであってもよいが、常圧焼結や加圧焼結を行った後
に熱間静水圧プレス(HIP)を行う2段焼結を適用す
ることが好ましい。特に、焼結時に形成された気孔をH
IP処理でふさぐことができるため、ベアリングボール
11としての摺動特性が向上すると共に、表面に存在す
る導電性付与材をより強固に固着させることができる。
これは導電性付与材の脱粒防止に効果を発揮する。この
ような焼結工程を経た後、ベアリングボールとしてJIS
規格により定めされた表面粗さを得るための表面研磨を
行う。
【0045】本発明の窒化ケイ素製ベアリングボール
は、各種電子機器の回転駆動部に好適に用いられるもの
である。本発明は特に直径が3mm以下と小さいベアリン
グボールに対して有効である。なお、ベアリングボール
の形状は、通常真球状が一般的であるが、必ずしもこれ
に限定されるものではない。すなわち、表層部のみに導
電性付与材を含有させた窒化ケイ素焼結体は、例えば円
柱状や棒状などの種々の形状の転動体に適用することが
できる。このように、本発明は玉軸受、ころ軸受、動圧
軸受などの種々のベアリングに適用可能である。
【0046】また、本発明の窒化ケイ素製ベアリングボ
ールを適用する電子機器としては、HDDやFDDなど
の磁気記録装置、CD−ROMやDVDなどの光ディス
ク装置、各種ゲーム機器などが挙げられる。光ディスク
装置は、光磁気記録装置、相変化型光記録装置、再生専
用型光ディスク装置など、種々の光記録装置を含むもの
である。さらに、これら以外にも回転駆動部を有する電
子機器であれば、本発明は種々の電子機器に対して適用
可能である。
【0047】上述したような本発明の窒化ケイ素製ベア
リングボールによれば、ボールの直径を3mm以下、さら
には2mm以下と小さくした場合においても、静電気によ
る不具合を良好に解消することができる。特に、回転数
を5000prm以上とした場合に発生する静電気を、例えば
直径が3mm以下のベアリングボールからボール受け部な
どに良好に逃がすことができる。本発明によれば、さら
に回転数を8000prm以上とした場合においても、同様に
静電気による不具合を良好に解消することができる。ま
た、直径3mm以下、さらには2mm以下のベアリングボール
を回転数5000rpm以上、さらには8000rpm以上と高速回転
させた場合においても、良好な耐摩耗性を得ることがで
きる。
【0048】本発明のベアリングは、上述したような本
発明の窒化ケイ素製ベアリングボールを有するものであ
る。図3は本発明の一実施形態によるベアリングの構成
を示す図である。図3に示すベアリング21は、本発明
に基づく複数の窒化ケイ素製ベアリングボール22と、
これらベアリングボール22を支持する内輪23および
外輪24とを有している。基本構成は通常のベアリング
と同様である。
【0049】上述したベアリング21は、HDDやFD
Dなどの磁気記録装置、CD−ROMやDVDなどの光
ディスク装置、各種ゲーム機器などの電子機器におい
て、各種ディスクの回転駆動部に用いられるものであ
る。具体的には、ディスク状の記録媒体を高速回転させ
るスピンドルモータなどの回転駆動部に使用される。
【0050】図4は本発明の一実施形態によるスピンド
ルモータの構成を示す断面図である。モータ台座31に
は固定軸32が立設されており、この固定軸32には上
下一対のベアリング21a、21bが装着されている。
ベアリング21a、21bの構成は上述した通りであ
る。モータ台座31には一体的にステータ33が固定さ
れており、このステータ33はコイル34を有してい
る。
【0051】固定軸32にはベアリング21a、21b
を介してハブ35が回転自在に取り付けられている。こ
のハブ35はロータを構成するものであり、コイル34
と所定の間隙を持って対向する位置にロータ磁石36が
設置されている。ハブ35には被回転体であるディスク
37が搭載される。
【0052】このようなスピンドルモータによれば、ベ
アリング21a、21bの構成に基づいて、信頼性のあ
る高速回転を実現することができる。さらに、ディスク
37を高速回転させた場合においても、この高速回転に
より生じる静電気を内輪23、外輪24、固定軸32な
どを介して外部に逃がすことができる。すなわち、HD
Dなどの電子機器に対して悪影響を及ぼす静電気の必要
以上の帯電を良好に抑制することができる。このような
本発明のスピンドルモータは、HDDやFDDなどの磁
気記録装置、CD−ROMやDVDなどの光ディスク装
置、各種ゲーム機器などの電子機器に好適に用いられる
ものである。
【0053】
【実施例】次に、本発明の具体的な実施例およびその評
価結果について述べる。
【0054】実施例1、比較例1〜2 まず、平均粒子径が0.6μmの窒化ケイ素粉末、焼結助剤
として平均粒子径が1.2μmの酸化イットリウム粉末と平
均粒子径が0.6μmのアルミナ粉末、および導電性付与材
として平均粒子径が0.5μmの炭化ケイ素粉末をそれぞれ
用意した。これらの粉末を用いて、内層部用の混合原料
粉末と表層部用の混合原料粉末をそれぞれ以下のように
して調整した。
【0055】内層部用の原料粉末については、酸化イッ
トリウム粉末を5質量%、アルミナ粉末を2質量%含み、
残部が窒化ケイ素粉末からなる混合粉末を用意した。ま
た、表層部用の原料粉末については、酸化イットリウム
粉末を5質量%、アルミナ粉末を2質量%、および炭化ケ
イ素粉末を種々の配合量で含み、残部が窒化ケイ素粉末
からなる混合粉末を複数用意した。
【0056】次に、上記した内層部用原料粉末を用い
て、CIP成形により球状成形体を作製した。この内層
部用球状成形体を各表層部用原料粉末上に置き、転動造
粒を行って表層部と内層部を有する球状成形体をそれぞ
れ作製した。表層部の形成範囲は表面から半径の1/3ま
でとした。これらの球状成形体にさらにCIPを施した
後、1800℃で常圧焼結し、続いて1700℃でHIP焼結を
行った。なお、各ベアリングボールの最終形状は直径2m
mであり、表面粗さはグレード3とした。また、各ベアリ
ングボールの表層部の最大厚さW1と最小厚さW2の比
(W1/W2)はいずれも1.2以下とした。
【0057】なお、表層部の最大厚さW1と最小厚さW2
は、ベアリングボールの少なくとも3個所の任意の表層
部断面の拡大写真を撮り、それらの各拡大写真中に写し
出された表層部の最大厚さと最小厚さの各平均値を指す
ものとする。表層部と内層部の境界の判断が難しいとき
には、最も内側にある導電性付与材を基準にして、表層
部の最大厚さW1と最小厚さW2を求めてもよい。
【0058】これら各ベアリングボールの電気抵抗値と
破壊靭性値を測定した。ベアリングボールの電気抵抗値
は以下のようにして測定した。すなわち、図5に示すよ
うに、電気抵抗値の測定電極1、2に中心部にベアリン
グボール3の径に応じた開孔部4を有するものを使用す
る。このような測定電極1、2でベアリングボール3を
上下から挟み込む。ベアリングボール3を挟み込む力は
スプリング5などで調整する。なお、図中6は絶縁体、
7はテスタである。この測定法は基本的には体積抵抗を
測定する方法であるが、本発明のように表層部の電気抵
抗が低い場合には、この部分の電気抵抗値が測定値とし
て得られる。破壊靭性値はJIS-R-1607に基づくIF法に
基づいて測定した。これらの測定結果を表1に示す。
【0059】次に、上記した各ベアリングボールと軸受
鋼SUJ2製ボール受け部とを組合せて、それぞれ図3に示
したようなベアリングを作製した。これらのベアリング
をそれぞれスピンドルモータ(図4参照)に組込み、H
DD用モータとして使用した。これらのスピンドルモー
タを回転速度8000rpmで100時間連続稼動させ、その際の
静電気による不具合を調べた。静電気による不具合は、
HDDが静電気により通常の動作が損なわれたものの有
無により確認した。この測定結果を表1に併せて示す。
【0060】なお、表1中の比較例1、2は本発明との
比較として掲げたものであり、比較例1は導電性付与材
を含まない窒化ケイ素焼結体からなるベアリングボー
ル、比較例2は窒化ケイ素焼結体全体に過剰の導電性付
与材を含有させたベアリングボールである。これら比較
例1、2のベアリングボールについても、実施例1と同
様に電気抵抗値と破壊靭性値を測定し、さらにスピンド
ルモータに組込んだ際のHDDの静電気による不具合の
有無を調べた。
【0061】
【表1】
【0062】表1から明らかなように、表層部に適当量
の導電性付与材を含有させた窒化ケイ素製ベアリングボ
ール、すなわち実施例1による各ベアリングボールは、
静電気による不具合が発生しておらず、ベアリングの高
速回転に伴って生じる静電気の必要以上の帯電を防止す
ることが可能であることが分かる。また、破壊靭性値に
関しては、導電性付与材を含有させていない比較例1の
窒化ケイ素製ベアリングボールに近い値が維持されてい
ることが分かる。
【0063】一方、導電性付与材を添加していない比較
例1の窒化ケイ素製ベアリングボールは高い絶縁性を示
しているため、これらのベアリングボールを用いたベア
リングでは高速回転させた際に静電気による不具合が発
生した。具体的には、静電気による不具合が発生し、H
DDが起動しなくなってしまった。また、窒化ケイ素焼
結体全体に導電性付与材を多量に添加した比較例2で
は、破壊靭性値が低下していることが分かる。この破壊
靭性値の低下は、表層部のみに導電性付与材を多量に含
有させたものと比べても大きく、ベアリングボール全体
に導電性付与材を含有させると破壊靭性値に悪影響を及
ぼすことが確認された。
【0064】実施例2 表層部に配合する導電性付与材を表2に示した材質に変
える以外は、実施例1の試料3と同様にして窒化ケイ素
製ベアリングボールを作製した。これらベアリングボー
ルの電気抵抗値と破壊靭性値を実施例1と同様にして測
定した。さらに、これら各ベアリングボールを用いて、
それぞれ実施例1と同様にベアリングおよびスピンドル
モータを組立てた。そして、実施例1と同様にして、各
スピンドルモータの静電気による不具合を調べた。これ
らの結果を表2に示す。
【0065】
【表2】
【0066】表2から明らかなように、導電性付与材の
材質を変えた場合においても、所定量の導電性付与材を
含む表層部を有する窒化ケイ素製ベアリングボールは、
いずれも良好な結果を示すことが確認された。
【0067】実施例3 上述した実施例1の試料3と同様の組成および製造方法
を適用して、複数の窒化ケイ素製ベアリングボールを作
製した。これらベアリングボールの作製にあたって、導
電性付与材の平均粒子径などを変化させることによっ
て、表層部に存在する導電性付与材の最大凝集径を制御
した。導電性付与材の最大凝集径は表3に示す通りであ
る。
【0068】次に、上記した各ベアリングボールを用い
て、それぞれ実施例1と同様にベアリングおよびスピン
ドルモータを組立てた。そして、これらのスピンドルモ
ータを回転速度8000rpmで100時間連続稼動させ、その際
の摺動特性(高速回転性)を調べた。また、ベアリング
の回転試験において、導電性付与材の脱粒の有無を調べ
た。これらの測定、評価結果を表3に示す。
【0069】なお、ベアリングの高速回転性は8000rpm
で連続100時間回転させ、最初の1時間の摺動音を100と
した場合の100時間後の摺動音の変化率により評価し
た。摺動音の変化率(%)は[{(100時間後の摺動音
−1時間後の摺動音)/1時間後の摺動音}×100]に基
づいて求めた。このような摺動音の変化率を測定するこ
とによって、ベアリングボールの高速回転性を評価する
ことができる。
【0070】
【表3】
【0071】表3から明らかなように、導電性付与材の
最大凝集径があまり大きすぎると、摺動音の変化率が大
きくなることが分かる。これは導電性付与材による摺動
個所が増えるためと考えられる。この評価結果から、導
電性付与材の最大凝集径は10μm以下、特に0.5〜3μmの
範囲が好ましいことが分かる。
【0072】実施例4 表4に示すように、実施例1の試料3と同様の材質を用
い、表層部の厚さおよび表層部の最大厚さW1と最小厚
さW2の比(W1/W2)を変化させた窒化ケイ素製ベア
リングボールをそれぞれ作製し、転がり寿命を確認し
た。各ベアリングボールは直径2mm(半径1mm)に統一
し、表面粗さをグレード3とした。
【0073】転がり寿命試験は、スラスト型軸受試験機
を用い、SUJ2鋼製の平板(相手材)上を回転させること
により実施した。転がり寿命は、1球あたりの最大接触
応力5.9GPa、回転数1200rpm、タービン油の油浴潤滑下
で400時間の回転を1回とし、ベアリングボールの表面が
剥離するまでの繰り返し回数として示した。この測定結
果を表4に示す。
【0074】
【表4】
【0075】表4から明らかなように、導電性付与材を
含有する表層部の厚さが、半径を基準として表面から10
μm以上でかつ半径の1/3以下の範囲であると共に、表層
部の最大厚さW1と最小厚さW2の比(W1/W2)が1.2
以下のベアリングボールは、優れた転がり寿命を示すこ
とが分かる。
【0076】試料6のように表面から1/2程度まで表層部
を形成したものであっても、同等の転がり寿命は得られ
るが、この場合には破壊靭性値がやや劣るため、電子機
器用のスピンドルモータのように高速回転する分野に適
用した場合には同期フレなどの問題(摺動音の増大な
ど)が生じやすい。また、導電性付与材の使用量が増え
ることからコスト増につながる。特に、直径が2mm以下
の小型のベアリングボールにおいては、コスト増は大き
な問題となる。一方、表層部の厚さが10μm未満である
試料1は、表層部の厚さが薄いことから転がり寿命が不
十分であった。これは表層部が薄いことに起因して、転
がり試験を行った際に表層部が剥がれやすくなってしま
うためである。
【0077】さらに、表層部の最大厚さW1と最小厚さ
W2の比(W1/W2)が1.2を超える試料7、8において
も、ある程度の転がり寿命を得られるが、表層部の厚さ
に不均一な場所が存在していると、ベアリングボールと
して使用した際に受ける応力を、ボール全体で均一に受
けることができなくなる。このため、表層部の厚さが均
一なベアリングボールに比べて転がり寿命が低下するも
のと考えられる。
【0078】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の窒化ケイ
素製ベアリングボールによれば、表層部の電気抵抗値を
内層部より低くしているため、例えばHDDのような電
子機器に用いた際に静電気による不具合を解消すること
が可能となる。また、表層部の電気抵抗値のみを低下さ
せているため、窒化ケイ素焼結体本来の特性が維持さ
れ、これにより各種電子機器の回転駆動部で信頼性に優
れる高速回転などを実現することが可能となる。そし
て、このような本発明のベアリングボールを用いたベア
リングおよびスピンドルモータは、各種電子機器の信頼
性や性能の向上に大きく寄与するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施形態による窒化ケイ素製ベア
リングボールの構成を示す断面図である。
【図2】 図1に示すベアリングボールにおける表層部
の最大厚さと最小厚さの一例を模式的に示す断面図であ
る。
【図3】 本発明の一実施形態によるベアリングの構成
を一部断面で示す図である。
【図4】 本発明の一実施形態によるスピンドルモータ
の概略構成を示す断面図である。
【図5】 本発明のベアリングボールの電気抵抗値の測
定例を示す図である。
【符号の説明】
11……ベアリングボール,12……内層部,13……
導電性付与材を含有する表層部,21……ベアリング
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 3J101 AA02 AA42 AA52 AA62 BA10 EA44 EA72 FA31 GA53 4G001 BA03 BA09 BA21 BA22 BA23 BA24 BA31 BA32 BA33 BA37 BA61 BB03 BB09 BB21 BB22 BB23 BB24 BB31 BB32 BB33 BB37 BB61 BC22 BC23 BC43 BD12 BD22 BE31 5D109 BA14 BA16 BA18 BB01 BB13 BB16 BB21 BB22 BB31

Claims (14)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 窒化ケイ素焼結体からなる窒化ケイ素製
    ベアリングボールであって、 前記窒化ケイ素焼結体は、内層部と、前記内層部より電
    気抵抗値が低い表層部とを具備することを特徴とする窒
    化ケイ素製ベアリングボール。
  2. 【請求項2】 請求項1記載の窒化ケイ素製ベアリング
    ボールにおいて、 前記表層部は10-3〜104Ω・mの範囲の電気抵抗値を有す
    ることを特徴とする窒化ケイ素製ベアリングボール。
  3. 【請求項3】 請求項1または請求項2記載の窒化ケイ
    素製ベアリングボールにおいて、 前記表層部は10-5Ω・m以下の電気抵抗値を有する導電性
    付与材を含有することを特徴とする窒化ケイ素製ベアリ
    ングボール。
  4. 【請求項4】 請求項3記載の窒化ケイ素製ベアリング
    ボールにおいて、 前記導電性付与材は、4A族元素、5A族元素、6A族
    元素、7A族元素、ケイ素、硼素の炭化物、窒化物およ
    び金属単体から選ばれる少なくとも1種からなることを
    特徴とする窒化ケイ素製ベアリングボール。
  5. 【請求項5】 請求項4記載の窒化ケイ素製ベアリング
    ボールにおいて、 前記導電性付与材は、タンタル、ニオブ、クロム、タン
    グステン、モリブデン、チタン、ジルコニウム、ハフニ
    ウム、マンガンおよびケイ素から選ばれる少なくとも1
    種の炭化物からなることを特徴とする窒化ケイ素製ベア
    リングボール。
  6. 【請求項6】 請求項1ないし請求項5のいずれか1項
    記載の窒化ケイ素製ベアリングボールにおいて、 前記表層部は前記ベアリングボールの半径に対して表面
    から1/3までの範囲に形成されていることを特徴とする
    窒化ケイ素製ベアリングボール。
  7. 【請求項7】 請求項1ないし請求項6のいずれか1項
    記載の窒化ケイ素製ベアリングボールにおいて、 前記表層部は前記ベアリングボールの半径に対して表面
    から10μm以上の範囲に形成されていることを特徴とす
    る窒化ケイ素製ベアリングボール。
  8. 【請求項8】 請求項1ないし請求項7のいずれか1項
    記載の窒化ケイ素製ベアリングボールにおいて、 前記表層部の最大厚さをW1、最小厚さをW2としたと
    き、W1/W2≦1.2であることを特徴とする窒化ケイ素
    製ベアリングボール。
  9. 【請求項9】 請求項3ないし請求項8のいずれか1項
    記載の窒化ケイ素製ベアリングボールにおいて、 前記導電性付与材の凝集部の最大径が10μm以下である
    ことを特徴とする窒化ケイ素製ベアリングボール。
  10. 【請求項10】 請求項1ないし請求項9のいずれか1
    項記載の窒化ケイ素製ベアリングボールにおいて、 前記ベアリングボールは電子機器の回転駆動部に用いら
    れることを特徴とする窒化ケイ素製ベアリングボール。
  11. 【請求項11】 請求項1記載の窒化ケイ素製ベアリン
    グボールの製造方法であって、 導電性付与材を含有しない第1の窒化ケイ素原料粉末を
    用いて、前記内層部を構成する球状成形体を作製する工
    程と、 前記球状成形体の外周面に、導電性付与材を含有する第
    2の窒化ケイ素原料粉末を転動造粒により付着させ、前
    記表層部を構成する成形層を形成する工程と、 前記転動造粒により作製した2層構造の球状成形体にC
    IP成形を施した後に焼結を行うことにより、前記内層
    部と表層部を有する窒化ケイ素焼結体を作製する工程と
    を有することを特徴とする窒化ケイ素製ベアリングボー
    ルの製造方法。
  12. 【請求項12】 請求項1ないし請求項9記載の窒化ケ
    イ素製ベアリングボールを具備することを特徴とするベ
    アリング。
  13. 【請求項13】 請求項12記載のベアリングを具備す
    ることを特徴とするスピンドルモータ。
  14. 【請求項14】 請求項13記載のスピンドルモータに
    おいて、 前記ベアリングが装着された固定軸と、前記固定軸に前
    記ベアリングを介して回転可能に支持され、かつロータ
    磁石を有するロータ部と、前記ロータ磁石と所定の間隙
    を持って対向配置されたステータコイルを有するステー
    タ部とを具備することを特徴とするスピンドルモータ。
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