JP2002324935A - 光通信システム - Google Patents

光通信システム

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JP2002324935A
JP2002324935A JP2002045469A JP2002045469A JP2002324935A JP 2002324935 A JP2002324935 A JP 2002324935A JP 2002045469 A JP2002045469 A JP 2002045469A JP 2002045469 A JP2002045469 A JP 2002045469A JP 2002324935 A JP2002324935 A JP 2002324935A
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Takuro Sekiya
卓朗 関谷
Akira Sakurai
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Masayoshi Kato
正良 加藤
Teruyuki Furuta
輝幸 古田
Kazuya Miyagaki
一也 宮垣
Takeshi Kanai
健 金井
Atsuyuki Watada
篤行 和多田
Shunichi Sato
俊一 佐藤
Yukie Suzuki
幸栄 鈴木
Shuichi Hikiji
秀一 曳地
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新治 佐藤
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Takashi Takahashi
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 動作電圧、発振閾値電流等を低くできる面発
光型半導体レーザ素子チップを発光光源として利用し、
受光素子として1.1μm〜1.7μmの波長に感度を
有する受光素子を新規に必要としない光通信システムを
提案することにある。 【解決手段】 n−GaAs基板2上に、n−半導体分
布ブラッグ反射鏡3を形成し、その上にλ/4の厚さの
n−GaIn1−xAs1−y層11を積層し
た。そしてその上にアンドープ下部GaAsスペーサ層
4と、3層のGaIn1−xAs量子井戸層である活
性層(量子井戸活性層)12とGaAsバリア層(20
nm)13からなる多重量子井戸活性層と、アンドープ
上部GaAsスペーサ層4とが積層されて、媒質内にお
ける発振波長λの1波長分の厚さ(λの厚さ)の共振器
を形成している。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、光通信などに用い
られる半導体レーザならびにその光送受信システムに関
し、さらに詳しくは、半導体レーザとして製作に使用す
る半導体基板面に対して垂直方向に光を発するいわゆる
面発光レーザを用い複数のレーザ素子を形成して、大容
量の通信を可能にした光通信システムに関するものであ
る。
【0002】
【従来の技術】面発光半導体レーザは、基板の表面から
垂直方向にレーザ光を放射するので2次元並列集積が可
能であり、更に、その出力光の広がり角が比較的狭い
(10度前後)ので光ファイバとの結合が容易であるほ
か、素子の検査が容易であるという特徴を有している。
そのため、特に、並列伝送型の光送信モジュール(光イ
ンタコネクション装置)を構成するのに適した素子とし
て開発が盛んに行なわれている。光インタコネクション
装置の当面の応用対象は、コンピュータ等の筐体間やボ
ード間の並列接続のほか、短距離の光ファイバー通信で
あるが、将来の期待される応用として大規模なコンピュ
ータ・ネットワークや長距離大容量通信の幹線系があ
る。一般に、面発光半導体レーザは、GaAs又はGa
InAsからなる活性層と、当該活性層を上下に挟んで
配置された上部の半導体分布ブラッグ反射鏡と基板側の
下部の半導体分布ブラッグ反射鏡からなる光共振器をも
って構成するのが普通であるが、端面発光型半導体レー
ザの場合に比較して光共振器の長さが著しく短いため、
反射鏡の反射率を極めて高い値(99%以上)に設定す
ることによってレーザ発振を起こし易くする必要があ
る。このため、通常は、AlAsからなる低屈折率材料
とGaAsからなる高屈折率材料を1/4波長の周期で
交互に積層することによって形成した半導体分布ブラッ
グ反射鏡が使用されている。
【0003】ところで上記のように、光通信に使用され
るようなレーザ波長が1.1μm以上の長波長帯レー
ザ、例えばレーザ波長が1.3μm帯や1.55μm帯
であるような長波長帯レーザは、製作基板にInPが用
いられ、活性層にInGaAsPが用いられるが、基板
のInPの格子定数が大きく、これに整合する反射鏡材
料では屈折率差が大きく取れず、従って積層数を40対
以上とする必要がある。またInP基板上に形成される
半導体レーザには、別の問題として、温度によって特性
が大きく変化する点がある。そのため、温度を一定にす
る装置を付加して使用する必要があり、民生用等一般用
に供することが困難であり、このような積層数と温度特
性の問題から、実用的な長波長帯面発光半導体は、未だ
実用化されるに至っていない。このような問題を解決す
るためになされた発明として、特開平9−237942
号公報に開示されたものが知られている。それによる
と、製作基板としてGaAs基板を用い、基板側の下部
上部のうち少なくとも一方の半導体分布ブラッグ反射鏡
の低屈折率層に同基板と格子整合が取れるAlInPか
らなる半導体層を用い、さらに、下部上部のうち少なく
とも一方の半導体分布ブラッグ反射鏡の高屈折率層にG
aInNAsからなる半導体層を用い、従来よりも大き
い屈折率差を得るようにし、少ない積層数で高反射率の
半導体分布ブラッグ反射鏡を実現しようというものであ
る。また、GaInNAsを活性層の材料として使用し
ている。これは、N組成を増加させることによってバン
ドギャップ(禁制帯幅)を1.4eVから0eVへ向か
って低下させることができるので、0.85μmよりも
長い波長を発光する材料として用いることが可能となる
からである。しかもGaAs基板と格子整合が可能なの
で、GaInNAsからなる半導体層は、1.3μm帯
及び1.55μm帯の長波長帯面発光半導体レーザのた
めの材料として好ましい点についても言及している。
【0004】しかしながら、従来は0.85μmよりも
長い波長帯の面発光半導体レーザ実現の可能性を示唆す
るにとどまっているだけであり、実際にはそのようなも
のは実現していない。これは基本的な構成は理論的には
ほぼ決まってはいるものの、実際に安定したレーザ発光
が得られるようにするための、より具体的な構成がまだ
不明だからである。一例を挙げると、上記のようにAl
Asからなる低屈折率材料とGaAsからなる高屈折率
材料を1/4波長の周期で交互に積層することによって
形成した半導体分布ブラッグ反射鏡を使用したものや、
あるいは特開平9−237942号公報に開示されたも
ののように、半導体分布ブラッグ反射鏡の低屈折率層に
同基板と格子整合が取れるAlInPからなる半導体層
を用いたものにおいては、レーザ素子が全く発光しなか
ったり、あるいは、発光してもその発光効率が低く、実
用レベルには程遠いものであった。これは、Alを含ん
だ材料が化学的に非常に活性であり、Alに起因する結
晶欠陥が生じ易いためである。これを解決するために
は、特開平8−340146号公報や特開平7−307
525号公報に開示された発明のようにAlを含まない
GaInNPとGaAsとから半導体分布ブラッグ反射
鏡を構成する提案がある。しかしながら、GaInNP
とGaAsとの屈折率差はAlAsとGaAsとの屈折
率差に比べて約半分であり、反射鏡の積層数を非常に多
くなり製作が困難となる。
【0005】すなわち現状では、コンピュータ・ネット
ワークなどで光ファイバー通信が期待されているが、そ
れに使用できるレーザ波長が1.1μm〜1.7μmの
長波長帯面発光半導体レーザおよびそれを用いた通信シ
ステムが存在せず、その出現が切望されている。また、
レーザ発振波長が1.1μm〜1.7μmの長波長帯面
発光半導体レーザを用いた光通信システムにおいては、
通常のSiからなる受光素子では1.1μm〜1.7μ
mの波長を検出できないため、1.1μm〜1.7μm
の波長に感度を有する受光素子を使用しなければならな
い。しかしながら比較的低価格なSi受光素子に比べ
て、1.1μm〜1.7μmの波長に感度を有する受光
素子は価格が高く、単純にSi受光素子を1.1μm〜
1.7μmの波長に感度を有する受光素子へ置き換えた
だけでは、光通信システム全体の価格を上げてしまう原
因となってしまう。したがって1.1μm〜1.7μm
の長波長帯面発光半導体レーザを用いた光通信システム
に対しては、単純な受光素子の置き換えではないシステ
ムの実現が期待されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、かかる課題
に鑑み、光通信などに用いられるレーザ発振波長が1.
1μm〜1.7μmの長波長帯面発光半導体レーザなら
びにその光通信システムに関するものであり、その第1
の目的は、動作電圧、発振閾値電流等を低くできる面発
光型半導体レーザ素子チップを発光光源として利用し、
受光素子として1.1μm〜1.7μmの波長に感度を
有する受光素子を新規に必要としない光通信システムを
提案することにある。また第2の目的は、安定して使用
できるレーザ発振波長が1.1μm〜1.7μmの長波
長帯面発光半導体レーザ素子チップを発光光源として利
用し、受光素子として1.1μm〜1.7μmの波長に
感度を有する受光素子を新規に必要としない光通信シス
テムを提案することにある。さらに第3の目的は、この
ような光通信システムにおいて、前記面発光半導体レー
ザの出力検出用の受光素子を新規に必要としない構成を
提案することにある。また第4の目的は、このような光
通信システムにおいて、受信信号を検出する為の受光素
子を新規に必要としない構成を提案することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明はかかる課題を解
決するために、請求項1は、レーザチップと該レーザチ
ップと接続される光通信システムにおいて、前記レーザ
チップは発振波長が1.1μm〜1.7μmであり、光
を発生する活性層の主たる元素がGa、In、N、As
からなる層、もしくはGa、In、Asよりなる層と
し、レーザ光を得るために前記活性層の上部及び下部に
設けられた反射鏡を含んだ共振器構造を有する面発光型
半導体レーザ素子チップであって、前記反射鏡は反射波
長が1.1μm以上で該反射鏡を構成する材料層の屈折
率が小大と異なる値に周期的に変化し、入射光を光波干
渉によって反射する半導体分布ブラッグ反射鏡であると
ともに、前記屈折率が小の材料層はAlGa1−x
s(0<x≦1)とし、前記屈折率が大の材料層はAl
Ga1−yAs(0≦y<x≦1)とし、かつ前記屈
折率が小と大の材料層の間に該屈折率が小と大の間の値
をとるAlGa1− As(0≦y<z<x≦1)よ
りなるヘテロスパイク緩衝層を20nm〜50nmの厚
さに設けた反射鏡であるような面発光型半導体レーザ素
子チップを発光光源とした光通信システムであって、前
記レーザチップ上には前記面発光型半導体レーザ素子に
対応した受光素子がモノリシックに集積されていること
を特徴とする。
【0008】コンピュータ・ネットワーク、長距離大容
量通信の幹線系など光ファイバー通信が期待されている
レーザ発振波長が1.1μm帯〜1.7μm帯の分野に
おいて、動作電圧、発振閾値電流等を低くでき、レーザ
素子の発熱も少なく安定した発振ができる面発光型半導
体レーザおよびそれを用いた通信システムが存在しなか
ったが、本発明のように半導体分布ブラッグ反射鏡を工
夫することにより、動作電圧、発振閾値電流等を低くで
き、レーザ素子の発熱も少なく安定した発振ができ、ま
た低コストで実用的な光通信システムが実現できた。さ
らに、従来受光素子として1.1μm〜1.7μmの波
長に感度を有する受光素子を新規に必要としていたが、
本発明により面発光型半導体レーザ素子に対応した受光
素子がチップ上にモノリシックに集積されているので、
新規に受光素子を必要としない低コストで実用的な光通
信システムが実現できた。かかる発明によれば、半導体
分布ブラッグ反射鏡を工夫することにより、動作電圧、
発振閾値電流等を低くでき、レーザ素子の発熱も少なく
安定した発振ができ、また低コストで実用的な光通信シ
ステムが実現できた。さらに、従来受光素子として1.
1μm〜1.7μmの波長に感度を有する受光素子を新
規に必要としていたが、本発明により面発光型半導体レ
ーザ素子に対応した受光素子がチップ上にモノリシック
に集積されているので、新規に受光素子を必要としない
低コストで実用的な光通信システムが実現できた。
【0009】請求項2は、レーザチップと該レーザチッ
プと接続される光通信システムにおいて、前記レーザチ
ップは発振波長が1.1μm〜1.7μmであり、光を
発生する活性層の主たる元素がGa、In、N、Asか
らなる層、もしくはGa、In、Asよりなる層とし、
レーザ光を得るために前記活性層の上部及び下部に設け
られた反射鏡を含んだ共振器構造を有する面発光型半導
体レーザ素子チップであって、前記反射鏡は反射波長が
1.1μm以上でそれを構成する材料層の屈折率が小大
と異なる値に周期的に変化し、入射光を光波干渉によっ
て反射する半導体分布ブラッグ反射鏡であるとともに、
前記屈折率が小の材料層はAlGa −xAs(0<
x≦1)とし、前記屈折率が大の材料層はAlGa
1−yAs(0≦y<x≦1)とした反射鏡であり、前
記活性層と前記反射鏡の間に主たる組成がGaIn
1−xAs1−y(0<x≦1、0<y≦1)層よ
りなる非発光再結合防止層を設けてなる面発光型半導体
レーザ素子チップを発光光源とした光通信システムであ
って、前記レーザチップ上には前記面発光型半導体レー
ザ素子に対応した受光素子がモノリシックに集積されて
いることを特徴とする。コンピュータ・ネットワーク、
長距離大容量通信の幹線系など光ファイバー通信が期待
されているレーザ発振波長が1.1μm帯〜1.7μm
帯の分野において、安定して使用できる長波長帯面発光
半導体レーザおよびそれを用いた通信システムが存在し
なかったが、本発明のように、非発光再結合防止層を設
けてなる面発光型半導体レーザ素子チップとすることに
より安定した発振が可能となり、これを発光光源とした
実用的な光通信システムが実現できた。さらに、従来受
光素子として1.1μm〜1.7μmの波長に感度を有
する受光素子を新規に必要としていたが、本発明により
面発光型半導体レーザ素子に対応した受光素子がチップ
上にモノリシックに集積されているので、新規に受光素
子を必要としない低コストで実用的な光通信システムが
実現できた。かかる発明によれば、非発光再結合防止層
を設けてなる面発光型半導体レーザ素子チップとするこ
とにより安定した発振が可能となり、これを発光光源と
した実用的な光通信システムが実現できた。さらに、従
来受光素子として1.1μm〜1.7μmの波長に感度
を有する受光素子を新規に必要としていたが、本発明に
より面発光型半導体レーザ素子に対応した受光素子がチ
ップ上にモノリシックに集積されているので、新規に受
光素子を必要としない低コストで実用的な光通信システ
ムが実現できた。
【0010】請求項3は、前記受光素子を用いて、対応
する面発光型半導体レーザ素子の光出力の検出を、該面
発光型半導体レーザ素子の主たる発光方向に対して横方
向に漏れた漏れ光を検出することによって行うことも本
発明の有効な手段である。かかる技術手段によれば、面
発光型半導体レーザチップ上にモノリシックに一体的に
受光素子を形成したハイブリッドチップを用いるように
し、面発光型半導体レーザ素子の漏れ光を検出するよう
にしたので、面発光半導体レーザの出力検出用の受光素
子を別物で独立に設ける必要がなく、低コストで実用的
な構成を実現できた。請求項4は、前記面発光型半導体
レーザ素子に対応して形成された受光素子を用いて、前
記光通信システムの相手側からの送信信号を検出するこ
とも本発明の有効な手段である。かかる技術手段によれ
ば、面発光型半導体レーザ素子に対応して受光素子を一
体的に形成されたハイブリッドチップを用いるように
し、光通信システムの相手側からの送信信号を検出する
ようにしたので、相手側からの送信信号を検出する為の
受光素子を別物で独立に設ける必要がなく、低コストで
実用的な構成を実現できた。
【0011】
【発明の実施の形態】以下、本発明を図に示した実施形
態を用いて詳細に説明する。但し、この実施形態に記載
される構成要素、種類、組み合わせ、形状、その相対配
置などは特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそ
れのみに限定する主旨ではなく単なる説明例に過ぎな
い。まず最初に、本発明の光通信システムに適用される
発光素子である伝送ロスの少ないレーザ発振波長が1.
1μm〜1.7μmの長波長帯面発光半導体レーザの一
例について図1を用いて説明する。前述のように、従来
は本発明が適用しようとしているレーザ発振波長が1.
1μm〜1.7μmの長波長帯面発光半導体レーザに関
しては、その可能性の示唆があるのみで、実現のための
材料、ならびにより具体的、詳細な構成は不明であっ
た。本発明では、活性層としてGaInNAs等の材料
を使用し、さらに具体的な構成を明確にした。以下にそ
れを詳述する。本発明では、面方位(100)のn−G
aAs基板2上に、それぞれの媒質内における発振波長
λの1/4倍の厚さ(λ/4の厚さ)でn−AlGa
1−xAs(x=1.0)(低屈折率層〜屈折率小の
層)とn−AlGa1−yAs(y=0)(高屈折率
層〜屈折率大の層)を交互に35周期積層したn−半導
体分布ブラッグ反射鏡3(AlAs/GaAs下部半導
体分布ブラッグ反射鏡)を形成し、その上にλ/4の厚
さのn−GaIn1−xAs1−y(x=0.
5、y=1)層11を積層した。この例ではn−Ga
In1−xAs −y(x=0.5、y=1)層も
下部反射鏡の一部であり低屈折率層(屈折率小の層)と
なっている。
【0012】そしてその上にアンドープ下部GaAsス
ペーサ層4と、3層のGaIn −xAs量子井戸層
である活性層(量子井戸活性層)12とGaAsバリア
層(20nm)13からなる多重量子井戸活性層と、ア
ンドープ上部GaAsスペーサ層とが積層されて、媒質
内における発振波長λの1波長分の厚さ(λの厚さ)の
共振器を形成している。さらにその上に、C(炭素)ド
ープのp−GaIn1−xAs1−y(x=0.
5、y=1)層とZnドープp−AlGa1−xAs
(x=0)をそれぞれの媒質内における発振波長λの1
/4倍の厚さで交互に積層した周期構造(1周期)を積
層し、その上にCドープのp−AlGa1−xAs
(x=0.9)とZnドープp−AlGa1−xAs
(x=0)をそれぞれの媒質内における発振波長λの1
/4倍の厚さで交互に積層した周期構造(25周期)と
からなる半導体分布ブラッグ反射鏡5(Al0.9Ga
0.1As/GaAs上部半導体分布ブラッグ反射鏡)
を形成している。この例ではp−GaIn1−x
As1−y(x=0.5、y=1)層も上部反射鏡の一
部であり、低屈折率層(屈折率小の層)となっている。
なおここで、上部/下部反射鏡ともそれぞれ低屈折率層
(屈折率小の層)/高屈折率層(屈折率大の層)を交互
に積層して形成するが、本発明ではこれらの間に、屈折
率が小と大の間の値をとるAlGa1−zAs(0≦
y<z<x≦1)よりなるヘテロスパイク緩衝層を設け
ている。
【0013】図2により本発明に適用される面発光半導
体レーザの反射波長が1.1μm以上の反射鏡について
より具体的に説明する。本発明に適用される反射波長が
1.1μm以上の反射鏡では、低屈折率層(屈折率小の
層)と高屈折率層(屈折率大の層)の間に、屈折率が小
と大の間の値をとるヘテロスパイク緩衝層AlGa
1−zAs(0≦y<z<x≦1)15を設けている。
図2は半導体分布ブラッグ反射鏡の一部を示したもので
ある(図1では図が複雑になるので図示することを省略
している)。従来レーザ波長が0.85μm帯の半導体
レーザに関して、このようなヘテロスパイク緩衝層15
を設けることも検討はされているが、まだ検討段階であ
り、その材料、あるいはその厚さなどまで詳細には検討
されていない。また本発明のようなレーザ発振波長が
1.1μm〜1.7μmの長波長帯面発光半導体レーザ
に関しては全く検討されていない。その理由はこの分野
(レーザ発振波長が1.1μm〜1.7μmの長波長帯
面発光半導体レーザ)が新しい分野であり、まだほとん
ど研究が進んでいないからである。本発明者はいち早く
この分野(レーザ発振波長が1.1μm〜1.7μmの
長波長帯面発光半導体レーザおよびそれを用いた光通
信)の有用性に気付き、それを実現するために鋭意検討
を行った。このようなヘテロスパイク緩衝層は形成時に
ガス流量をコントロールするなどして、そのAl組成を
連続的もしくは段階的に変えるようにしてその材料層の
屈折率が連続的もしくは段階的に変化するようにして形
成する。より具体的には、AlGa1−zAs(0≦
y<z<x≦1)層のzの値を0から1.0まで変わる
ように、つまりGaAs〜AlGaAs〜AlAsとい
う具合にAlとGaの比率が徐々に変わるようにして形
成する。これは前述のように層形成時にガス流量をコン
トロールすることによって作成される。また、AlとG
aの比率が前述のように連続的に変わるようにして形成
しても良いし、段階的にその比率が変わるようにしても
同等の効果がある。このようなヘテロスパイク緩衝層を
設ける理由は、半導体分布ブラッグ反射鏡の持つ問題点
の一つであるp−半導体分布ブラッグ反射鏡の電気抵抗
が高いという課題を解決するためである。これは半導体
分布ブラッグ反射鏡を構成する2種類の半導体層の界面
に生じるヘテロ障壁が原因であるが、本発明のように低
屈折率層17と高屈折率層16の界面に一方の組成から
他方の組成へ次第にAl組成が変化するようにして、屈
折率も変化させることによってヘテロ障壁の発生を抑制
することが可能である。
【0014】このようなヘテロスパイク緩衝層について
より具体的に説明する。図3は半導体分布ブラッグ反射
鏡を構成する2種類の半導体層の間にヘテロスパイク緩
衝層を設けた半導体分布ブラッグ反射鏡の例を示すもの
である。図では、半導体分布ブラッグ反射鏡の材料の例
としてAlGaAs系半導体材料(AlGa1−z
s(0≦y<z<x≦1))について示している。半導
体分布ブラッグ反射鏡を構成する2種類の半導体層はA
lAs、GaAsであり、AlAs、GaAsの中間の
価電子帯エネルギーを持つヘテロスパイク緩衝層とし
て、これの間にAl組成を変化させた組成傾斜層を設け
ている。すなわち、AlGa1−zAs(0≦y<z
<x≦1)層のzの値を0から1.0まで変わるよう
に、つまりGaAs〜AlGaAs〜AlAsという具
合にAlとGaの比率が徐々に変わるようにしている。
AlGaAs系半導体材料は、Al組成の増加と伴に、
バンドギャップエネルギーが大きくなり、屈折率が低下
する。またこの際、伝導帯では、Al組成0.43ま
で、エネルギーが増加した後減少を始めるが、価電子帯
では単調に、略Al組成の増加量に比例して価電子帯エ
ネルギーが低下する(トータルとして、バンドギャップ
エネルギーは組成に対して増加している。)。この他に
もAlGaInP系材料を例に挙げると、この材料は4
元材料であるが、AlInP組成の増加に伴い、AlG
aAs系におけるAl組成の増加と同様の傾向を示す。
伝導帯エネルギーは、AlInP組成0.7まで増加し
た後減少を始める。しかし価電子帯エネルギーは、Al
InP組成の増加に対し同様に単調に減少する。
【0015】図3の例では、GaAs層の近くの領域の
(図3では、領域I)組成傾斜率(バンドギャップエネ
ルギーの増加率)を、AlAs層の近くの領域の(図3
では領域II)組成傾斜率に比べて大きくしている。比較
のために、単に線形にAl組成を変化させた線形組成傾
斜層をヘテロスパイク緩衝層とした構造を図4に示す。
図5は、反射波長1.3μmのAlAs・GaAsの界
面に厚さ20nmの図3のヘテロスパイク緩衝層を設け
た4ペアp−DBRの電気抵抗を見積もった結果であ
る。図5では、ヘテロスパイク緩衝層を含むDBRの各
層のキャリア密度を1E18[cm−3]のP型として
おり、縦軸にゼロバイアス付近における微分シート抵抗
値を示している。横軸は、領域IのAl組成傾斜率であ
り、異なる領域Iの厚さ(図中に示している)について
それぞれ示している。領域Iと領域IIの和は常に20n
mであり、領域IIの厚さ及び組成傾斜率は、領域Iの厚
さと組成傾斜率から決まる。単純にGaAs層とAlA
s層間に線形組成傾斜層を設けた場合のAl組成傾斜率
は0.05[nm−1]であり、これは、図のA点に当
たる。図5のように、領域IのAl組成傾斜度を大きく
していくことにより、従来のように単に組成傾斜率を線
形とした場合に比べ、抵抗値が減少する。また、極小と
なる最適なAl組成傾斜率が存在していることが分か
る。例えば、領域Iの厚さが10nm(領域IIと同じ厚
さ)では、Al組成傾斜率0.09[nm−1]で従来
の80%程度に低抵抗化している(また、この傾向は印
加電圧に依らない。)。
【0016】次にこの理由について説明する。図6は、
AlAs/GaAsによるDBRヘテロ界面の熱平衡状
態のバンド図を表すものである。図のように、バンド不
連続に起因するヘテロスパイクはおもに禁則帯幅の広い
AlAs層側で顕著に現れており、ほとんどGaAs層
側ではノッチが発生しない。GaAs層側に発生するノ
ッチは、本来、高抵抗化の原因とはならないのでAlA
s層側に発生するスパイクを、限られたヘテロスパイク
緩衝層の厚さで効率良く平坦にすることが、低抵抗化に
対し重要である。図3の構造では、ノッチが発生するG
aAs側で急激に組成を増加させて、スパイクが発生す
るAlAs側の組成傾斜を緩やかに変化させたことに対
応している。これによって、ヘテロスパイク緩衝層の組
成変化を単純に線形とした場合に比べてスパイクの発生
を低減させる事ができる(従って、逆に領域IのAl組
成傾斜率を領域IIより小さくすると、抵抗値が増加す
る。)。図7に、図3の熱平衡状態のバンド図の模式図
を示す。従来の単純な組成傾斜層に比べ、同じ厚さでA
lAs側の組成傾斜率を緩やかにすることができる。以
上より、領域Iの組成傾斜率を大きくすることで、従来
よりも電気抵抗を低減することができることがわかる。
【0017】次にこのような屈折率が小と大の間の値を
とるヘテロスパイク緩衝層AlGa1−zAs(0≦
y<z<x≦1)の最適厚さについて、検討した結果を
説明する。図8は、1.3μmに反射中心波長を持つA
lAs/GaAsによる4ペアDBRについて、ヘテロ
スパイク緩衝層厚さを変えて、ゼロバイアス付近での微
分電気抵抗率を計算した結果である。DBR層のドーピ
ング密度は1E18cm とし、ヘテロスパイク緩衝
層を含む各層のドーピング密度は一様としている。ま
た、破線で示す値は、各半導体層のバルク抵抗から求め
た抵抗率であり、ヘテロ界面の影響が全く無いとした場
合に得られるDBRの抵抗率を示したものである。図8
の様にヘテロスパイク緩衝層を設けないDBR(ヘテロ
スパイク緩衝層厚さが0)では抵抗率が1Ωcmと非
常に高抵抗であり、現実的な問題として20ペア以上積
層したDBRを通し素子に通電させる事自体が困難であ
り、更に通電させる為には非常に高い電圧を必要とす
る。従って、この様なDBRを備えた面発光レーザ素子
は現実に発振させる事は困難である。しかしながら、5
nmのヘテロスパイク緩衝層を設けた場合には、ヘテロ
スパイク緩衝層を設けない場合に比べて、約2桁程度抵
抗率を低減する事が可能であり、素子の通電が容易にな
って発振を得る事が可能となる。更に、通電に必要な電
圧も低減するので、素子の破壊、故障等、信頼性に関す
る諸問題も大きく改善する。更に、ヘテロスパイク緩衝
層を厚くするに従って抵抗率は急激に低減しており、特
に20nm以上では、抵抗率はほぼ一定の値となる。図
8はヘテロスパイク緩衝層、及び各層のp型ドーピング
密度を1E18cm −3として一様のドープした場合の
構造について示したものである。なお、このドーピング
濃度は通常DBRに用いられる標準的な値である。図8
のDBRの構造では抵抗率の減少が飽和し始めるヘテロ
スパイク緩衝層の厚さは約20nmであり、この時の抵
抗率は、バルク抵抗率のおよそ2.5倍程度と非常に低
い値まで低減されている。
【0018】つまり、テロスパイク緩衝層厚さの下限値
を20nmとし、それ以上の厚さにすれば素子の動作電
圧を最も低い値とすることができ、素子発熱も最小限に
することができる。従って発振を維持できる温度、並び
に得られる光出力が増加する。しかしながら、これに反
してDBRの光学的特性には、ヘテロスパイク緩衝層が
厚くなるに従って反射率が低下するという問題がある。
図9は、ヘテロスパイク緩衝層厚さの変化に対するDB
Rの反射率の減少の様子を詳しく示したものである。図
に示した直線と比較すると、ヘテロスパイク緩衝層の厚
さが50nm以上から急激に反射率の変化率が大きくな
る様子が分かる。素子の発振閾値電流はこれに対応して
急激に増加し始める。従って、ヘテロスパイク緩衝層の
厚さの上限は50nmとするのが適当である。以上の様
に20nm以上、50nm以下のヘテロスパイク緩衝層
を設けたDBRでは、ヘテロ界面の影響による抵抗を有
効に低減する事が可能であり、また、高い反射率を同時
に得る事ができる。これを用いた面発光レーザ素子で
は、現実的な駆動条件において、容易に低閾値電流での
発振を得る事が可能である。
【0019】本発明のようなレーザ発振波長が1.1μ
m〜1.7μmの長波長帯面発光半導体レーザの場合、
20nm〜50nmの厚さとするのが良く、これより薄
いと抵抗が大となり電流が流れにくく、素子が発熱した
り、駆動エネルギーが高くなるという不具合がある。ま
た厚いと抵抗が小となり、素子の発熱や、駆動エネルギ
ーの面で有利になるが、今度は反射率がとれないという
不具合があり、前述のように最適の範囲(20nm〜5
0nmの厚さ)を選ぶ必要がある。なお、前述のように
従来のレーザ波長が0.85μm帯の半導体レーザに関
してこのようなヘテロスパイク緩衝層を設けることも検
討されているが、本発明のようなレーザ発振波長が1.
1μm〜1.7μmの長波長帯面発光半導体レーザの場
合は、より効果的である。なぜなら、例えば同等の反射
率(例えば99.5%以上)を得るためには、0.85
μm帯よりも1.1μm帯〜1.7μm帯の場合、この
ような材料層を約2倍程度にすることができるので、半
導体分布ブラッグ反射鏡の抵抗値を低減させることがで
き、動作電圧、発振閾値電流等が低くなり、レーザ素子
の発熱防止ならびに安定発振、少エネルギー駆動の面で
有利となる。つまり半導体分布ブラッグ反射鏡にこのよ
うなヘテロスパイク緩衝層を設けることは、本発明のよ
うなレーザ発振波長が1.1μm〜1.7μmの長波長
帯面発光半導体レーザの場合に特に効果的な工夫といえ
る。なお効果的な反射率を得るためのより詳細な検討結
果の一例を挙げると、例えば1.3μm帯面発光型レー
ザ素子では、AlGa1−xAs(x=1.0)(低
屈折率層〜屈折率小の層)とAlGa1−yAs(y
=0)(高屈折率層〜屈折率大の層)を20周期積層し
た場合においては、半導体分布ブラッグ反射鏡の反射率
が99.7%以下となるAlGa1−zAs(0≦y
<z<x≦1)層の厚さは30nmである.また、反射
率が99.5%以上となる波長帯域は53nmであり、
反射率を99.5%以上と設計した場合、±2%の膜厚
制御ができればよい.そこでこれと同等およびこれより
薄い、10nm、20nm、30nmのものを試作した
ところ、反射率を実用上問題のない程度に保つことがで
き、半導体分布ブラッグ反射鏡の抵抗値を低減させるこ
とができた1.3μm帯面発光型レーザ素子を実現、レ
ーザ発振に成功した。なお試作したレーザ素子の他の構
成は後述のとおりである。
【0020】なお多層膜反射鏡においては設計波長(膜
厚制御が完全にできたとして)を含んで反射率の高い帯
域がある。高反射率の帯域(反射率が狙いの波長に対し
て必要値以上である領域を含む)と呼ぶ。設計波長の反
射率が最も高く、波長が離れるにしたがってごくわずか
ずつ低下している領域である。これはある領域から急激
に低下する。そして狙いの波長に対して必要な反射率以
上となるように、本来、多層膜反射鏡の膜厚を原子層レ
ベルで完全に制御する必要がある。しかし実際には±1
%程度の膜厚誤差は生じるので狙いの波長と最も反射率
の高い波長はずれてしまう。例えば狙いの波長が1.3
μmの場合、膜厚制御が1%ずれたとき、最も反射率の
高い波長は13nmずれてしまう。よってこの高反射率
の帯域(ここでは反射率が狙いの波長に対して必要値以
上である領域)は広い方が望ましい。このように本発明
のようなレーザ発振波長が1.1μm〜1.7μmの長
波長帯面発光半導体レーザにおいて、このような半導体
分布ブラッグ反射鏡の構成を工夫、最適化することによ
り、反射率を高く維持したまま抵抗値を低減させること
ができるので、動作電圧、発振閾値電流等を低くでき、
レーザ素子の発熱防止ならびに安定発振、少エネルギー
駆動が可能となる。
【0021】再び図1に戻り、最上部の、p−Al
1−xAs(x=0)層は、電極とコンタクトを取る
ためのコンタクト層(p−コンタクト層)としての役割
も持っている。ここで、量子井戸活性層のIn組成xは
39%(Ga0.61In0.39As)とした。また
量子井戸活性層の厚さは7nmとした。なお量子井戸活
性層は、GaAs基板に対して約2.8%の圧縮歪を有
していた。またこの面発光型半導体レーザ全体の成長方
法はMOCVD法で行った。この場合、格子緩和は見ら
れなかった。半導体レーザの各層を構成する原料には、
TMA(トリメチルアルミニウム)、TMG(トリメチ
ルガリウム)、TMI(トリメチルインジウム)、As
(アルシン)、PH(フォスフィン)を用いた。
また、キャリアガスにはHを用いた。図1に示した素
子の活性層(量子井戸活性層)のように歪が大きい場合
は、非平衡となる低温成長が好ましい。ここでは、Ga
InAs層(量子井戸活性層)は550℃で成長させて
いる。ここで使用したMOCVD法は過飽和度が高く高
歪活性層の結晶成長に適している。またMBE法のよう
な高真空を必要とせず、原料ガスの供給流量や供給時間
を制御すれば良いので量産性にも優れている。
【0022】またこの例では、電流経路外の部分をプロ
トン(H)照射によって絶縁層(高抵抗部)を作っ
て、電流狭さく部を形成した。そしてこの例では、上部
反射鏡の最上部の層であり上部反射鏡一部となっている
p−コンタクト層上に光出射部を除いてp側電極を形成
し、基板の裏面にn側電極を形成した。この例では、上
下反射鏡に挟まれた、キャリアが注入され再結合する活
性領域(本実施例では上部及び下部スペーサ層と多重量
子井戸活性層とからなる共振器)において、活性領域内
にはAlを含んだ材料(III族に占める割合が1%以
上)を用いず、さらに、下部及び上部反射鏡の低屈折率
層の最も活性層に近い層をGaIn1−xAs
1−y(0<x≦1、0<y≦1)の非発光再結合防止
層としている。すなわちxあるいはyの値を適宜選ぶこ
とにより、GaInPもしくはGaInPAsもしくは
GaPAsが非発光再結合防止層とされる。なおこの層
には、Al以外の他の材料を微量添加する場合もある
が、主たる材料は、GaIn1−xAs
1−y(0<x≦1、0<y≦1)である。キャリア
は、活性層に最も近くワイドギャップである上部及び下
部反射鏡の低屈折率層間に閉じ込められるので、活性領
域のみをAlを含まない層(III族に占める割合が1%
以下)で構成しても活性領域に接する反射鏡の低屈折率
層(ワイドギャップ層)にAlを含んだ構造としたので
は、キャリアが注入され再結合する時、この界面で非発
光再結合が生じ発光効率は低下してしまう。よって活性
領域はAlを含まない層で構成することが望ましい。ま
たこの主たる組成がGaIn1−xAs
1−y(0<x≦1、0<y≦1)よりなる非発光再結
合防止層は、その格子定数がGaAs基板よりも小さ
く、引張り歪を有している。エピタキシャル成長では下
地の情報を反映して成長するので基板表面に欠陥がある
と成長層へ這い上がっていく。しかし歪層があるとその
ような欠陥の這い上がりが抑えられ効果があることが知
られている。上記欠陥が活性層に達すると発光効率を低
減させてしまう。また、歪を有する活性層では臨界膜厚
が低減し必要な厚さの層を成長できないなどの問題が生
じる。特に活性層の圧縮歪量が例えば2%以上と大きい
場合や、歪層の厚さ臨界膜厚より厚く成長する場合、低
温成長などの非平衡成長を行っても欠陥の存在で成長で
きないなど、特に問題となる。歪層があるとそのような
欠陥の這い上がりが抑えられるので、発光効率を改善し
たり、活性層の圧縮歪量が例えば2%以上の層を成長で
きたり、歪層の厚さを臨界膜厚より厚く成長することが
可能となる。
【0023】このGaIn1−xAs1−y(0
<x≦1、0<y≦1)層は活性領域に接しており活性
領域にキャリアを閉じ込める役割も持っているが、Ga
In1−xAs1−y(0<x≦1、0<y≦
1)層は格子定数が小さくなるほどバンドギャップエネ
ルギーを大きく取り得る。例えばGaIn1−x
(y=1の場合)の場合、xが大きくなりGaPに近づ
くと格子定数が大きくなり、バンドギャップは大きくな
る。バンドギャップEgは、直接遷移でEg(Γ)=
1.351+0.643x+0.786x、間接遷移
でEg(X)=2.24+0.02xと与えられてい
る。よって活性領域とGaIn1−xAs 1−y
(0<x≦1、0<y≦1)層のヘテロ障壁は大きくな
るのでキャリア閉じ込めが良好となり、しきい値電流低
減、温度特性改善などの効果がある。さらにこのGa
In1−xAs1−y(0<x≦1、0<y≦1)
層よりなる非発光再結合防止層は、その格子定数がGa
As基板よりも大きく、圧縮歪を有しており、かつ前記
活性層の格子定数が前記GaIn1−xAs
−y(0<x≦1、0<y≦1)層よりも大きく圧縮歪
を有している。またこのGaIn1−xAs
1−y(0<x≦1、0<y≦1)層の歪の方向が活性
層と同じ方向なので、活性層が感じる実質的な圧縮歪量
を低減する方向に働く。歪が大きいほど外的要因の影響
を受けやすいので、活性層の圧縮歪量が例えば2%以上
と大きい場合や、臨界膜厚を超えた場合に特に有効であ
る。例えば発振波長が1.3μm帯の面発光型レーザは
GaAs基板上に形成するのが好ましく、共振器には半
導体多層膜反射鏡を用いる場合が多く、トータル厚さが
5〜8μmで50〜80層の半導体層を活性層成長前に
成長する必要がある(一方、端面発光型レーザの場合、
活性層成長前のトータル厚さは2μm程度で3層程度の
半導体層を成長するだけで良い)。この場合、高品質の
GaAs基板を用いてもさまざまな原因(一度発生した
欠陥は基本的には結晶成長方向に這い上がるし、ヘテロ
界面での欠陥発生などがある)でGaAs基板表面の欠
陥密度に比べて活性層成長直前の表面の欠陥密度はどう
しても増えてしまう。活性層成長以前に、歪層の挿入
や、活性層が感じる実質的な圧縮歪量が低減すると、活
性層成長直前の表面にある欠陥の影響を低減できるよう
になる。この例では、活性領域内及び反射鏡と活性領域
との界面にAlを含まない構成としたので、キャリア注
入時にAlに起因していた結晶欠陥が原因となる非発光
再結合がなくなり、非発光再結合が低減した。
【0024】前述のように、反射鏡と活性領域との界面
にAlを含まない構成とする、すなわち非発光再結合防
止層を設けることを、上下反射鏡ともに適用することが
好ましいが、一方の反射鏡に適用するだけでも効果があ
る。またこの例では、上下反射鏡とも半導体分布ブラッ
グ反射鏡としたが、一方の反射鏡を半導体分布ブラッグ
反射鏡とし、他方の反射鏡を誘電体反射鏡としても良
い。また前述の例では、反射鏡低屈折率層の最も活性層
に近い層のみをGaIn1−xAs1−y(0<
x≦1、0<y≦1)の非発光再結合防止層としている
が、複数層のGa In1−xAs1−y(0<x
≦1、0<y≦1)を非発光再結合防止層としても良
い。さらにこの例では、GaAs基板と活性層との間の
下部反射鏡にこの考えを適用し、活性層の成長時に問題
となる、Alに起因する結晶欠陥の活性層への這い上が
りによる悪影響が押さえられ、活性層を高品質に結晶成
長することができる。これらにより、発光効率は高く、
信頼性は実用上十分な面発光型半導体レーザが得られ
た。また、半導体分布ブラッグ反射鏡の低屈折率層のす
べてではなく、少なくとも活性領域に最も近い部分をA
lを含まないGaIn1−xAs 1−y(0<x
≦1、0<y≦1)層としただけなので、反射鏡の積層
数を特に増加させることなく、上記効果を得ることがで
きている。このようにして製作した面発光型半導体レー
ザの発振波長は約1.2μmであった。GaAs基板上
のGaInAsは、In組成の増加で長波長化するが歪
み量の増加をともない、従来1.1μmまでが長波長化
の限界と考えられていた(文献「IEEE Photonics.Techn
ol.Lett.Vol.9(1997)pp.1319-1321」参照)。
【0025】しかしながら今回発明者が製作したよう
に、600℃以下の低温成長などの非平衡度の高い成長
法により高歪のGaInAs量子井戸活性層を従来より
厚くコヒーレント成長することが可能となり、波長は
1.2μmまで到達できた。なおこの波長はSi半導体
基板に対して透明である。従ってSi基板上に電子素子
と光素子を集積した回路チップにおいてSi基板を通し
た光伝送が可能となる。以上の説明より明らかなように
In組成が大きい高圧縮歪のGaInAsを活性層に用
いることにより、GaAs基板上に長波長帯の面発光型
半導体レーザを形成できることがわかった。なお前述の
ように、このような面発光型半導体レーザは、MOCV
D法で成長させることができるが、MBE法等の他の成
長方法を用いることもできる。また活性層の積層構造と
して、3重量子井戸構造(TQW)の例を示したが、他
の井戸数の量子井戸を用いた構造(SQW、MQW)等
を用いることもできる。レーザの構造も他の構造にして
もかまわない。また共振器長はλの厚さとしたがλ/2
の整数倍とすることができる。望ましくはλの整数倍で
ある。また半導体基板としてGaAsを用いた例を示し
たが、InPなどの他の半導体基板を用いた場合でも上
記の考え方を適用できる。反射鏡の周期は他の周期でも
良い。なおこの例では活性層として、主たる元素がG
a、In、Asよりなる層、すなわちGaIn1−x
As(GaInAs活性層)の例を示したが、より長波
長のレーザ発振を行うためには、Nを添加し主たる元素
がGa、In、N、Asからなる層(GaInNAs活
性層)とすればよい。実際にGaInNAs活性層の組
成を変えることにより、1.3μm帯、1.55μm帯
のそれぞれにおいて、レーザ発振を行うことが可能であ
った。組成を検討することにより、さらに長波長の例え
ば1.7μm帯の面発光レーザも可能となる。また、活
性層にGaAsSbを用いてもGaAs基板上に1.3
μm帯面発光レーザを実現できる。このように波長1.
1μm〜1.7μmの半導体レーザは従来適した材料が
なかったが、活性層に高歪のGaInAs、GaInN
As、GaAsSbを用い、かつ、非発光再結合防止層
を設けることにより、従来安定発振が困難であった波長
1.1μm〜1.7μm帯の長波長領域において、高性
能な面発光レーザを実現できるようになった。
【0026】次に本発明の光送受信システムに適用され
る発光素子である長波長帯面発光型半導体レーザの他の
構成について、図10を用いて説明する。この場合も図
1の場合と同様に面方位(100)のn−GaAs基板
21を使用している。それぞれの媒質内における発振波
長λの1/4倍の厚さ(λ/4の厚さ)でn−Al
1−xAs(x=0.9)とn−AlGa1−x
s(x=0)を交互に35周期積層したn−半導体分布
ブラッグ反射鏡24(Al 0.9Ga0.1As/Ga
As下部反射鏡)を形成し、その上にλ/4の厚さのn
−GaIn1−xAs1−y(x=0.5、y=
1)層を積層した。この例ではn−GaIn1−x
As1−y(x=0.5、y=1)層も下部反射鏡の
一部であり低屈折率層となっている。そしてその上に、
アンドープ下部GaAsスペーサ層23と、3層のGa
In1−xAs1−y量子井戸層である活性層3
3(量子井戸活性層)とGaAsバリア層34(15n
m)から構成される多重量子井戸活性層(この例では3
重量子井戸(TQW))と、アンドープ上部GaAsス
ペーサ層23とが積層されて、媒質内における発振波長
の1波長分の厚さ(λの厚さ)の共振器を形成してい
る。さらにその上に、p−半導体分布ブラッグ反射鏡
(上部反射鏡)24が形成されている。上部反射鏡は、
被選択酸化層となるAlAs層27を、GaInP層と
AlGaAs層で挟んだ3λ/4の厚さの低屈折率層
(厚さが(λ/4−15nm)のCドープp−Ga
1−xAs1−y(x=0.5、y=1)層、C
ドープp−AlGa1−zAs(z=1)被選択酸化
層(厚さ30nm)、厚さが(2λ/4−15nm)の
Cドープp−AlGa1−xAs層(x=0.9))
と、厚さがλ/4のGaAs層(1周期)と、Cドープ
のp−AlGa −xAs層(x=0.9)とp−A
Ga1−xAs(x=0)層をそれぞれの媒質内に
おける発振波長の1/4倍の厚さで交互に積層した周期
構造(22周期)とから構成されている半導体分布ブラ
ッグ反射鏡(Al0.9Ga0.1As/GaAs上部
反射鏡)である。
【0027】なおこの例においても、図10では複雑に
なるので図示することは省略しているが、半導体分布ブ
ラッグ反射鏡の構造は、図2に示したような低屈折率層
(屈折率小の層)と高屈折率層(屈折率大の層)の間
に、屈折率が小と大の間の値をとるAlGa1−z
s(0≦y<z<x≦1)よりなるヘテロスパイク緩衝
層を設けたものである。そして、最上部の、p−Al
Ga1−xAs(x=0)層は、電極とコンタクトを取
るためのコンタクト層(p−コンタクト層)としての役
割も持たせている。ここで量子井戸活性層のIn組成x
は37%、N(窒素)組成は0.5%とした。また量子
井戸活性層の厚さは7nmとした。またこの面発光型半
導体レーザの成長方法はMOCVD法で行った。半導体
レーザの各層を構成する原料には、TMA(トリメチル
アルミニウム)、TMG(トリメチルガリウム)、TM
I(トリメチルインジウム)、AsH(アルシン)、
PH(フォスフィン)、そして窒素の原料にはDMH
y(ジメチルヒドラジン)を用いた。DMHyは低温で
分解するので600℃以下のような低温成長に適してお
り、特に低温成長の必要な歪みの大きい量子井戸層を成
長する場合に好ましい。なおキャリアガスにはHを用
いた。またこの例では、GaInNAs層(量子井戸活
性層)は540℃で成長した。MOCVD法は過飽和度
が高くNと他のV族を同時に含んだ材料の結晶成長に適
している。またMBE法のような高真空を必要とせず、
原料ガスの供給流量や供給時間を制御すれば良いので量
産性にも優れている。さらにこの例では、所定の大きさ
のメサ部分をp−GaIn1−xAs 1−y(x
=0.5、y=1)層に達するまで、p−AlGa
1−zAs(z=1)被選択酸化層の側面を露出させて
形成し、側面の現れたAlGa1−zAs(z=1)
層を水蒸気で側面から酸化してAl電流狭さく層
を形成している。
【0028】最後にポリイミド(絶縁膜)でメサエッチ
ングで除去した部分を埋め込んで平坦化し、上部反射鏡
上のポリイミドを除去し、p−コンタクト層上に光出射
部を除いてp側電極を形成し、GaAs基板の裏面にn
側電極を形成した。この例においては、被選択酸化層の
下部に上部反射鏡の一部としてGaIn 1−x
1−y(0<x≦1、0<y≦1)層を挿入してい
る。例えばウェットエッチングの場合では、硫酸系エッ
チャントを用いれば、AlGaAs系に対してGaIn
PAs系はエッチング停止層として用いることができる
ため、GaIn1−xAs1−y(0<x≦1、
0<y≦1)層が挿入されていることで、選択酸化のた
めのメサエッチングの高さを厳密に制御できる。このた
め、均一性、再現性を高められ、低コスト化が図れる。
またこの例の面発光型半導体レーザ(素子)を一次元ま
たは二次元に集積した場合、素子製作時における制御性
が良好になることにより、アレイ内の各素子の素子特性
の均一性、再現性も極めて良好になるという効果があ
る。なおこの例では、エッチングストップ層を兼ねるG
In1−xAs −y(0<x≦1、0<y≦
1)層を上部反射鏡側に設けたが、下部反射鏡側に設け
ても良い。またこの例においても、上下反射鏡に挟まれ
た、キャリアが注入され再結合する活性領域(本実施例
では上部及び下部スペーサ層と多重量子井戸活性層とか
らなる共振器)において、活性領域内にはAlを含んだ
材料を用いず、さらに下部及び上部反射鏡の低屈折率層
の最も活性層に近い層をGaIn1−xAs
1−y(0<x≦1、0<y≦1)の非発光再結合防止
層としている。つまりこの例では、活性領域内及び反射
鏡と活性領域との界面に、Alを含まない構成としてい
るので、キャリア注入時に、Alに起因していた結晶欠
陥が原因となる非発光再結合を低減させることができ
る。なお反射鏡と活性領域との界面にAlを含まない構
成を、この例のように上下反射鏡に適用することが好ま
しいが、いずれか一方の反射鏡に適用するだけでも効果
がある。またこの例では、上下反射鏡とも半導体分布ブ
ラッグ反射鏡としたが、一方の反射鏡を半導体分布ブラ
ッグ反射鏡とし、他方の反射鏡を誘電体反射鏡としても
良い。さらにこの例でも、GaAs基板と活性層との間
の下部反射鏡に図1の例の場合と同様の考えを適用した
ので、活性層の成長時に問題となるAlに起因する結晶
欠陥の活性層への這い上がりによる悪影響が押さえら
れ、活性層を高品質に結晶成長することができる。な
お、このような非発光再結合防止層は、図1、図10の
いずれの構成においても半導体分布ブラッグ反射鏡の一
部を構成するので、その厚さは、媒質内における発振波
長λの1/4倍の厚さ(λ/4の厚さ)としている。あ
るいはそれを複数層も設けても良い。
【0029】以上、半導体ブラッグ反射鏡の一部に非発
光再結合防止層を設けた例について示してきたが、非発
光再結合防止層を共振器の中に設けても良い。例えば、
共振器部をGaInNAs量子井戸層とGaAs障壁層
とからなる活性層と、GaAsを第1の障壁層、GaI
nPAs、GaAsP、GaInPからなる非発光再結
合防止層を第二の障壁層とした構造があげられる。共振
器部の厚さは1波長分の厚さとすることができる。非発
光再結合防止層はGaAs第1の障壁層よりバンドギャ
ップが大きいのでキャリアが注入される活性領域は実質
GaAs障壁層までとなる。また、残留したAl原料、
またはAl反応物、またはAl化合物、またはAlを除
去する工程を設ける場合は、非発光再結合防止層の途中
で設けたり、非発光再結合防止層とAlを含んだ層との
間にGaAs層を設けてその層の途中などで行うことが
できる。以上の説明より明らかなように、このような構
成により、発光効率は高く、信頼性は実用上十分な面発
光型半導体レーザが得られた。また、半導体分布ブラッ
グ反射鏡の低屈折率層のすべてではなく、少なくとも活
性領域に最も近い部分をAlを含まないGaIn
1−xAs1−y(0<x≦1、0<y≦1)の非
発光再結合防止層としただけなので、反射鏡の積層数を
特に増加させることなく、上記効果を得ることができ
た。またこのような構成にしても、ポリイミドの埋め込
みは容易であるので、配線(この例ではp側電極)が段
切れしにくく、素子の信頼性は高いものが得られる。こ
のように製作した面発光型半導体レーザの発振波長は約
1.3μmであった。この例では、主たる元素がGa、
In、N、Asからなる層を活性層に用いた(GaIn
NAs活性層)ので、GaAs基板上に長波長帯の面発
光型半導体レーザを形成できた。またAlとAsを主成
分とした被選択酸化層の選択酸化により電流狭さくを行
ったので、しきい値電流は低かった。
【0030】被選択酸化層を選択酸化したAl酸化膜か
らなる電流狭さく層を用いた電流狭さく構造によると、
電流狭さく層を活性層に近づけて形成することで電流の
広がりを抑えられ、大気に触れない微小領域に効率良く
キャリアを閉じ込めることができる。更に酸化してAl
酸化膜となることで屈折率が小さくなり凸レンズの効果
でキャリアの閉じ込められた微小領域に効率良く光を閉
じ込めることができ、極めて効率が良くなり、しきい値
電流は低減できる。また容易に電流狭さく構造を形成で
きることから、製造コストを低減できる。以上の説明か
ら明らかなように図10のような構成においても図1の
場合と同様に、1.3μm帯の面発光型半導体レーザを
実現でき、しかも低消費電力で低コストの素子が得られ
る。なお、図10の面発光型半導体レーザも図1の場合
と同様にMOCVD法で成長させることができるが、M
BE法等の他の成長方法を用いることもできる。また窒
素の原料に、DMHyを用いたが、活性化した窒素やN
等他の窒素化合物を用いることもできる。さらに活
性層の積層構造として3重量子井戸構造(TQW)の例
を示したが、他の井戸数の量子井戸を用いた構造(SQ
W、DQW、MQW)等を用いることもできる。レーザ
の構造も他の構造にしてもかまわない。また図10の面
発光型半導体レーザにおいて、GaInNAs活性層の
組成を変えることで、1.55μm帯、更にはもっと長
波長の1.7μm帯の面発光型半導体レーザも可能とな
る。GaInNAs活性層にTl、Sb、Pなど他のII
I−V族元素が含まれていてもかまわない。また活性層
にGaAsSbを用いても、GaAs基板上に1.3μ
m帯の面発光型半導体レーザを実現できる。
【0031】なお本発明では活性層として、主たる元素
がGa、In、Asよりなる層(GaInAs活性
層)、あるいはNを添加し主たる元素がGa、In、
N、Asからなる層(GaInNAs活性層)を用いる
説明をしてきたが、他にGaNAs、GaPN、GaN
PAs、GaInNP、GaNAsSb、GaInNA
sSb等も好適に使用できる。特にこれらの例のよう
に、窒素を含む活性層の場合、本発明の非発光再結合防
止層は特に効果的である。以下にそれを説明する。図1
1は、我々のMOCVD装置で作製したGaInNAs
量子井戸層とGaAsバリア層とからなるGaInNA
s/GaAs2重量子井戸構造からなる活性層の室温フ
ォトルミネッセンススペクトルを示している。図12は
試料構造である。GaAs基板上201に、下部クラッ
ド層202、中間層203、窒素を含む活性層204、
中間層203、上部クラッド層205が順次積層されて
いる。図11において、AはAlGaAsクラッド層上
にGaAs中間層をはさんで2重量子井戸構造を形成し
た試料であり、BはGaInPクラッド層上にGaAs
中間層をはさんで2重量子井戸構造を連続的に形成した
試料である。図11に示すように、試料Aでは試料Bに
比べてフォトルミネッセンス強度が半分以下に低下して
いる。従って、1台のMOCVD装置を用いてAlGa
As等のAlを構成元素として含む半導体層上に、Ga
InNAs等の窒素を含む活性層を連続的に形成する
と、活性層の発光強度が劣化してしまうという問題が生
じた。そのため、AlGaAsクラッド層上に形成した
GaInNAs系レーザの閾電流密度は、GaInPク
ラッド層上に形成した場合に比べて2倍以上高くなって
しまう。
【0032】この原因解明について検討した。図13は
クラッド層をAlGaAsとし、中間層をGaAsと
し、活性層をGaInNAs/GaAs2重量子井戸構
造として構成した素子を1台のエピタキシャル成長装置
(MOCVD)を用いて形成したときの、窒素と酸素濃
度の深さ方向分布を示した図である。測定はSIMSに
よって行った。表1に測定条件を示す。
【表1】 図13において、GaInNAs/GaAs2重量子井
戸構造に対応して、活性層中に2つの窒素ピークが見ら
れる。そして、活性層において、酸素のピークが検出さ
れている。しかし、NとAlを含まない中間層における
酸素濃度は活性層の酸素濃度よりも約1桁低い濃度とな
っている。一方、クラッド層をGaInPとし、中間層
をGaAsとし、活性層をGaInNAs/GaAs2
重量子井戸構造として構成した素子について、酸素濃度
の深さ方向分布を測定した場合には、活性層中の酸素濃
度はバックグラウンドレベルであった。即ち、窒素化合
物原料と有機金属Al原料を用いて、1台のエピタキシ
ャル成長装置により、基板と窒素を含む活性層との間に
Alを含む半導体層を設けた半導体発光素子を連続的に
結晶成長すると、窒素を含む活性層中に酸素が取りこま
れることが我々の実験により明らかとなった。活性層に
取りこまれた酸素は非発光再結合準位を形成するため、
活性層の発光効率を低下させてしまう。この活性層に取
りこまれた酸素が、基板と窒素を含む活性層との間にA
lを含む半導体層を設けた半導体発光素子における発光
効率を低下させる原因であることが新たに判明した。こ
の酸素の起源は装置内に残留している酸素を含んだ物
質、または窒素化合物原料中に不純物として含まれる酸
素を含んだ物質と考えられる。
【0033】次に酸素の取りこまれる原因について検討
した。図14は、図13と同じ試料のAl濃度の深さ方
向分布を示した図である。測定はSIMSによって行っ
た。表2に測定条件を示す。
【表2】 図14より、本来Al原料を導入していない活性層にお
いて、Alが検出されている。しかし、Alを含む半導
体層(クラッド層)に隣接した中間層(GaAs層)に
おいては、Al濃度は活性層よりも約1桁低い濃度とな
っている。これは、活性層中のAlがAlを含む半導体
層(クラッド層)から拡散、置換して混入したものでは
ないことを示している。一方、GaInPのようにAl
を含まない半導体層上に窒素を含む活性層を成長した場
合には、活性層中にAlは検出されなかった。従って、
活性層中に検出されたAlは、成長室内またはガス供給
ラインに残留したAl原料、またはAl反応物、または
Al化合物、またはAlが、窒素化合物原料または窒素
化合物原料中の不純物(水分等)と結合して活性層中に
取りこまれたものである。すなわち、窒素化合物原料と
有機金属Al原料を用いて、1台のエピタキシャル成長
装置により、基板と窒素を含む活性層との間にAlを含
む半導体層を設けた半導体発光素子を連続的に結晶成長
すると、窒素を含む活性層中に自然にAlが取りこまれ
てしまうことが新たにわかった。図14に示した同じ素
子における窒素と酸素濃度の深さ方向分布と比較する
と、2重量子井戸活性層中の2つの酸素ピークプロファ
イルは、窒素濃度のピークプロファイルと対応しておら
ず、図14のAl濃度プロファイルと対応している。こ
のことから、GaInNAs井戸層中の酸素不純物は、
窒素原料と共に取りこまれるというよりも、むしろ井戸
層中に取りこまれたAlと結合して一緒に取りこまれて
いることが明らかとなった。即ち、成長室内に残留した
Al原料、またはAl反応物、またはAl化合物、また
はAlが窒素化合物原料と接触すると、Alと窒素化合
物原料中に含まれる水分またはガスラインや反応室中に
残留する水分などの酸素を含んだ物質とが結合して、活
性層中にAlと酸素が取りこまれる。この活性層に取り
込まれた酸素が活性層の発光効率を低下させていたこと
が我々の実験により初めて明らかとなった。よってこれ
を改善するためには、少なくとも成長室内の窒素化合物
原料または窒素化合物原料中に含まれる不純物が触れる
場所に残留したAl原料、またはAl反応物、またはA
l化合物、またはAlを除去する工程を設けることが必
要であることがわかった。
【0034】Alを含んだ半導体層成長後、窒素を含む
活性層成長開始までの間にこの工程を設けると、窒素を
含む活性層を成長するため成長室に窒素化合物原料を供
給したときに、残留したAl原料、またはAl反応物、
またはAl化合物、またはAlと、窒素化合物原料また
は窒素化合物原料中に含まれる不純物及び装置内に残留
する酸素を含んだ物質とが反応して、活性層に取り込ま
れるAl及び酸素不純物の濃度を低減することができ
た。更に、非発光再結合防止層成長終了後までに除去し
ておくと、電流注入によって活性層にキャリアが注入さ
れる時、活性層での非発光再結合への悪影響を抑えられ
るので好ましい。例えば、窒素を含む活性層中のAl濃
度を1×1019cm−3以下に低減することにより、
室温連続発振が可能となった。さらに、窒素を含む活性
層中のAl濃度を2×1018cm−3以下に低減する
ことにより、Alを含まない半導体層上に形成した場合
と同等の発光特性が得られた。成長室内の窒素化合物原
料または窒素化合物原料中に含まれる不純物が触れる場
所に残留したAl原料、またはAl反応物、またはAl
化合物、またはAlを除去する工程とは例えば、キャリ
アガスでパージする工程を設けることがあげられる。こ
こで、パージ工程の時間は、Alを含む半導体層の成長
が終了して成長室へのAl原料の供給が停止してから、
窒素を含む半導体層の成長を開始するために窒素化合物
原料を成長室に供給するまでの間隔をいう。上記パージ
の方法として、Alと窒素のいずれも含まない中間層中
で成長中断をしてキャリアガスでパージする方法があ
る。成長中断をしてパージする場合は、成長中断する場
所を、Alを含んだ半導体層成長後から非発光再結合防
止層の途中までの間に設けることができる。
【0035】図15は、本発明におけるキャリアガスで
パージする工程を設けることを説明するための半導体発
光素子の断面構造図の1例を示している。図15におい
て、基板上201にAlを構成元素として含む第1の半
導体層202、第1の下部中間層601、第2の下部中
間層602、窒素を含む活性層204、上部中間層20
3、第2の半導体層205が順次積層されている。結晶
成長は有機金属Al原料と有機窒素原料を用いたエピタ
キシャル成長装置を用いている。そして、第1の下部中
間層成長後と第2の下部中間層の成長開始との間に成長
中断工程を設けたことを特徴としている。成長中断中
に、成長室内の窒素化合物原料または窒素化合物原料中
に含まれる不純物が触れる場所に残留したAl原料、ま
たはAl反応物、またはAl化合物、またはAlを、キ
ャリアガスである水素でパージして除去している。図1
6は、第1の下部中間層601と第2の下部中間層60
2の間で成長中断し、パージ時間を60分設けた半導体
発光素子におけるAl濃度の深さ方向分布の測定結果で
ある。図16に示すように、活性層中のAl濃度は3×
1017cm−3以下まで低減することができた。この
値は、中間層中のAl濃度と同程度となっている。図1
7は、同じ素子について、窒素と酸素濃度の深さ方向分
布を測定した結果である。図17に示すように、活性層
中の酸素濃度は、1×1017cm−3とバックグラウ
ンドレベルまで低減できた。なお、下部中間層中で酸素
濃度にピークが現れているのは、成長中断界面に酸素が
偏析したためである。よって、成長中断をしてパージす
る場合は、成長中断する場所を、Alを含んだ半導体層
成長後から非発光再結合防止層成長終了までの間に設け
ることが好ましい。非発光再結合防止層は量子井戸活性
層や障壁層よりバンドギャップエネルギーを大きくする
ことができ、電流注入によって活性層にキャリアが注入
される時、成長中断界面に偏析した酸素による非発光再
結合による悪影響を抑えられるからである。このように
窒素を含む活性層を用いる場合は非発光再結合防止層を
設けることは特に効果がある。この半導体発光素子は、
第1の下部中間層と第2の下部中間層の間で成長中断
し、パージ時間を60分設けることにより、窒素を含む
活性層中のAlやO等の不純物濃度を低減することがで
きた。これにより、窒素を含む活性層の発光効率を改善
することができた。
【0036】なお、成長室内をキャリアガスでパージす
る工程において、サセプターを加熱しながらパージする
ことにより、サセプターまたはサセプター周辺に吸着し
たAl原料や反応生成物を脱ガスさせて、効率良く除去
することができる。ただし、基板を同時に加熱する場合
は、最表面の半導体層が熱分解するのを防止するため、
成長中断中においてもAsHもしくはPH等のV族
原料ガスを成長室に供給し続ける必要がある。また、成
長室内をキャリアガスでパージする際に、基板を成長室
から別室に搬送しておくこともできる。基板を成長室か
ら別室に搬送することにより、サセプターを加熱しなが
らパージを行う最に、AsHもしくはPH等のV族
原料ガスを成長室に供給する必要がない。従って、サセ
プターまたはサセプター周辺に堆積したAlを含む反応
生成物の熱分解をより促進させることができる。これに
より、効率よく成長室内のAl濃度を低減することがで
きる。また、中間層を成長しながらパージを行う方法が
ある。Alを含んだAlGaAs系からなる反射鏡と窒
素を含む活性層との間に非発光再結合防止層を設けてい
ることから、Alを含んだ層と窒素を含む活性層との距
離が長くなるため、成長しながらパージを行う場合でも
パージの時間を長くできるメリットがある。この場合は
成長速度を遅くして時間を長くすると良い。また、Al
を含んだAlGaAs系からなる反射鏡と窒素を含む活
性層とを別装置で形成する方法もある。この場合でも再
成長界面を非発光再結合防止層の下部に設けると、窒素
を含む活性層のAlやO等の不純物濃度を低減すること
ができる。
【0037】通常のMBE法のように、有機金属Al原
料と窒素化合物原料を用いない結晶成長方法で作製した
場合には、基板と窒素を含む活性層との間にAlを含む
半導体層を設けた半導体発光素子における発光効率低下
については報告されていない。一方、MOCVD法で
は、Alを含む半導体層上に形成したGaInNAs活
性層の発光効率の低下が報告されている。Electron.Let
t.、 2000、 36 (21)、 pp1776-1777において、同じMOC
VD成長室でAlGaAsクラッド層上にGaAsから
なる中間層を設けた場合でも、連続的にGaInNAs
量子井戸層を成長すると、フォトルミネッセンス強度が
著しく劣化することが報告されている。上記報告におい
ては、フォトルミネッセンス強度を改善するために、A
lGaAsクラッド層とGaInNAs活性層を異なる
MOCVD成長室で成長させている。従って、MOCV
D法のように、有機金属Al原料と窒素化合物原料を用
いる結晶成長方法の場合には少なくても起きる問題であ
る。MBE法は超減圧(高真空中)で結晶成長が行われ
るのに対して、MOCVD法は通常数10Torrから
大気圧程度と、MBE法に比べて反応室の圧力が高いた
め、平均自由行程が圧倒的に短く、供給された原料やキ
ャリアガスがガスラインや反応室等で他と接触、反応す
るためと考えられる。よって、MOCVD法のように、
反応室やガスラインの圧力が高い成長方法の場合、Al
を含んだ半導体層成長後、窒素を含んだ活性層成長前ま
でに、更に好ましくは非発光再結合防止層成長終了後ま
での間に、成長室内の窒素化合物原料または窒素化合物
原料中に含まれる不純物が触れる場所に残留したAl原
料、またはAl反応物、またはAl化合物、またはAl
を除去する工程を設けると、窒素を含んだ活性層へ酸素
が取りこまれることを防止する効果が高い。
【0038】たとえばAlを含んだ半導体層を成長後、
窒素を含む活性層を成長する前に、ガスラインや成長室
を真空引きする方法もある。この場合加熱して行うと効
果が高い。また、Alを含んだ半導体層を成長後、窒素
を含む活性層を成長する前に、エッチングガスを流して
除去する方法もある。Al系残留物と反応し除去するこ
とのできるガスの一例として有機系化合物ガスが上げら
れる。上述のように窒素を含んだ活性層成長時に有機系
化合物ガスの一つであるDMHyガスをDMHyシリン
ダーを用いて供給するとAl系残留物と反応することは
明らかである。よってAlを含んだ半導体層成長後、窒
素を含んだ活性層成長の前までに、有機系化合物ガスシ
リンダーを用いて有機系化合物ガスを供給すると反応室
側壁、加熱帯、基板を保持する治具等に残留しているA
l系残留物と反応し除去することのできるので、活性層
への酸素の取り込みを抑えることができる。更に窒素を
含む活性層の窒素原料と同じガスを用いると、特別にガ
スラインを追加する必要がないので好ましい。この工程
は成長中断して行っても良く、GaNAs、GaInN
As、GaInNP層など窒素を含む層を活性層とは別
にダミー層として結晶成長して行っても良い。成長中断
して行う場合に比べて、結晶成長でAl除去工程を行う
と時間的ロスがなくなり好ましい。なお活性層にGaI
nAsを用いた場合、従来1.1μmまでが長波長化の
限界と考えられていたが、600℃以下の低温成長によ
り高歪のGaInAs量子井戸活性層を従来よりも厚く
成長することが可能となり、波長は1.2μmまで到達
できる。このように、波長1.1μm〜1.7μmの半
導体レーザは従来適した材料がなかったが、活性層に高
歪のGaInAs、GaInNAs、GaAsSbを用
い、かつ非発光再結合防止層を設けることにより、従来
安定発振が困難であった波長1.1μm〜1.7μm帯
の長波長領域において、高性能な面発光レーザを実現で
きるようになり、光通信システムへの応用ができるよう
になった。
【0039】図18はこのような長波長帯面発光半導体
レーザ素子を、面方位(100)のn−GaAsウエハ
40に多数のチップとして形成した例、ならびにレーザ
素子チップを示したものである。ここで示したレーザ素
子チップには、1〜n個のレーザ素子41が形成されて
いるが、その個数nはその用途に応じて、数ならびに配
列方法が決められる。図19は本発明による長波長帯面
発光半導体レーザを用いた光通信システムで使用される
半導体レーザチップの一例であり、図19(a)は平面
図を、図19(b)はA−A’での断面図をそれぞれ示
している。なお、図19(a)と図19(b)の縮尺は
同じではない。この半導体レーザチップ上には、長波長
帯面発光半導体レーザ素子50とそれに対応する受光素
子51がモノリシックに形成されている。受光素子51
は長波長帯面発光半導体レーザ素子50と同様な半導体
積層構造を有しており、面発光半導体レーザ素子と同じ
工程で一括して形成される(面発光半導体レーザ素子の
半導体積層構造を逆バイアスまたは無バイアスで使用す
る事により、受光素子として使用する)。この受光素子
は面発光半導体レーザ素子の波長に対して感度を有し、
光量を検出する事が可能である。受光素子51の外形は
平面図からわかる様に長波長帯面発光半導体レーザ素子
50を取り囲むような形に形成されている。各素子の平
面には上部電極52が形成されており、半導体レーザチ
ップ53の下面には下部電極54が形成されている。長
波長帯面発光半導体レーザ素子50の上部電極52には
光出力取り出し用の窓が開いているが、受光素子の上部
電極52には窓が形成されていない。
【0040】図20は図19に示した半導体レーザチッ
プの動作を説明するための図である。面発光半導体レー
ザチップ53のレーザ発光面は、光ファイバー55の端
面に対向した構成となっており、面発光半導体レーザ素
子50からの出射光56が光ファイバー55のコア59
に入射するよう位置合わせされている。面発光半導体レ
ーザ素子50の側面からは、主たる発光方向に対して横
方向に出射光の漏れ光57が発生しており、隣接した受
光素子51により検出される。面発光半導体レーザ50
の側面からの漏れ光量はそれほど多くはないが、受光素
子51は面発光半導体レーザ素子50を取り囲むように
近接して形成されているため、漏れ光57を検出する事
が可能となっている。ここで受光素子51の上面には、
半導体分布ブラッグ反射鏡や上部電極が形成されている
ため、図示しない相手側からの光通信情報である光ファ
イバーからの入射光58等は図中の矢印で示されるよう
に受光素子51上面で反射され、受光素子51では検出
されない。以上の様な構成及び動作説明より明らかなよ
うに、面発光半導体レーザの出力検出用の受光素子を面
発光半導体レーザチップ上に一体的に形成したハイブリ
ッドチップを用いた光通信システムを構成することが可
能となる。
【0041】図21は本発明による長波長帯面発光半導
体レーザを用いた光通信システムで使用される半道程レ
ーザチップの他の例であり、図21(a)は平面図を、
図21(b)はA−A’での断面図をそれぞれ示してい
る。なお、図21(a)と図21(b)の縮尺は同じで
はない。この半導体レーザチップ上には、長波長帯面発
光半導体レーザ素子60とそれに対応する受光素子61
がモノリシックに形成されている。受光素子61は長波
長帯面発光半導体レーザ素子60と同様な半導体積層構
造を有しており、面発光半導体レーザ素子と同じ工程で
一括して形成される(面発光半導体レーザ素子の半導体
積層構造を逆バイアスまたは無バイアスで使用する事に
より、受光素子として使用する)。この受光素子61は
面発光半導体レーザ素子60の波長に対して感度を有
し、光量を検出する事が可能である。ただし受光素子6
1の上部半導体分布ブラッグ反射鏡はエッチングで除去
されており、外形は平面図からわかる様に長波長帯面発
光半導体レーザ素子60を取り囲むような形に形成され
ている。各素子の上面には光入出力用の窓が開いた上部
電極62が形成されており、半導体レーザチップ63の
下面には下部電極64が形成されている。
【0042】図22は図21に示した半導体レーザチッ
プの動作を説明するための図である。面発光半導体レー
ザチップ63のレーザ発光面は、光ファイバー65の端
面に対向した構成となっており、面発光半導体レーザ素
子60からの出射光が光ファイバー65のコア69に入
射するよう位置合わせされている。面発光半導体レーザ
素子60や受光素子61の側面は上部電極62で覆われ
ているため、素子側面からの漏れ光は発生しない。ここ
で図示しない相手側からの光通信情報である光ファイバ
ーからの入射光68は図中の矢印で示されるように受光
素子上面に広がりながら入射するので、面発光半導体レ
ーザ60を取り囲む形で形成された受光素子61で検出
される。面発光半導体レーザ60の上面には半導体分布
ブラッグ反射鏡が形成されているので、入射光68は面
発光半導体レーザ内部にはほとんど入射しない。以上の
様な構成及び動作説明より明らかなように、面発光半導
体レーザの出力検出用の受光素子を面発光半導体レーザ
チップ上に一体的に形成したハイブリッドチップを用い
た光通信システムを構成することが可能となる。なお上
記の実施例に示した面発光半導体レーザと受光素子の組
み合わせは一例であるが、これを複数並べてアレイ化し
たり、面発光半導体レーザの出力検出用の受光素子と入
射光検出用の受光素子を組み合わせる場合も本発明の範
疇に入るものである。また当然の事ではあるが、本発明
は上記実施例に示した面発光半導体レーザ素子と受光素
子の互いの位置関係や形状に限定されるものではない。
【0043】
【発明の効果】以上記載のごとく請求項1の発明によれ
ば、半導体分布ブラッグ反射鏡を工夫することにより、
動作電圧、発振閾値電流等を低くでき、レーザ素子の発
熱も少なく安定した発振ができ、また低コストで実用的
な光通信システムが実現できた。さらに、従来受光素子
として1.1μm〜1.7μmの波長に感度を有する受
光素子を新規に必要としていたが、本発明により面発光
型半導体レーザ素子に対応した受光素子がチップ上にモ
ノリシックに集積されているので、新規に受光素子を必
要としない低コストで実用的な光通信システムが実現で
きた。また請求項2では、非発光再結合防止層を設けて
なる面発光型半導体レーザ素子チップとすることにより
安定した発振が可能となり、これを発光光源とした実用
的な光通信システムが実現できた。さらに、従来受光素
子として1.1μm〜1.7μmの波長に感度を有する
受光素子を新規に必要としていたが、本発明により面発
光型半導体レーザ素子に対応した受光素子がチップ上に
モノリシックに集積されているので、新規に受光素子を
必要としない低コストで実用的な光通信システムが実現
できた。また請求項3では、面発光型半導体レーザチッ
プ上にモノリシックに一体的に受光素子を形成したハイ
ブリッドチップを用いるようにし、面発光型半導体レー
ザ素子の漏れ光を検出するようにしたので、面発光半導
体レーザの出力検出用の受光素子を別物で独立に設ける
必要がなく、低コストで実用的な構成を実現できた。ま
た請求項4では、面発光型半導体レーザ素子に対応して
受光素子を一体的に形成されたハイブリッドチップを用
いるようにし、光通信システムの相手側からの送信信号
を検出するようにしたので、相手側からの送信信号を検
出する為の受光素子を別物で独立に設ける必要がなく、
低コストで実用的な構成を実現できた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係る長波長帯面発光半導
体レーザの素子部断面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る長波長帯面発光半導
体レーザの半導体分布ブラッグ反射鏡の構成の部分断面
図である。
【図3】本発明に適用される半導体分布ブラッグ反射鏡
のヘテロスパイク緩衝層の組成傾斜率をAlAs層より
もGaAs層の近くで大きくした例を示す図である。
【図4】ヘテロスパイク緩衝層のAl組成を線形に変化
させた例を示す図である。
【図5】図3のヘテロスパイク緩衝層の微分シート抵抗
を見積った結果を示す図である。
【図6】AlAs/GaAsによる半導体分布ブラッグ
反射鏡のDBRヘテロ界面の熱平衡状態のバンド図であ
る。
【図7】図3のヘテロスパイク緩衝層の熱平衡状態のバ
ンド図である。
【図8】AlAs/GaAs(p=1E18cm−3
4ペアの抵抗率を示す図である。
【図9】AlAs/GaAs半導体分布ブラッグ反射鏡
の反射率の変化率を示す図である。
【図10】本発明の一実施形態に係る長波長帯面発光半
導体レーザの他の構成の素子部断面図である。
【図11】本発明の一実施形態に係るGaInNAs/
GaAs2重量子井戸構造からなる活性層の室温フォト
ルミネッセンススペクトル図である。
【図12】試料構造図である。
【図13】窒素と酸素濃度の深さ方向分布を示す図であ
る。
【図14】Al濃度の深さ方向分布を示す図である。
【図15】キャリアガスパージで成長中断する場合の説
明構造図である。
【図16】成長中断工程を設けて水素でパージした場合
のAl濃度の深さ方向分布を示す図である。
【図17】成長中断工程を設けて水素でパージした場合
の窒素と酸素濃度の深さ方向分布を示す図である。
【図18】本発明の一実施形態に係る長波長帯面発光半
導体レーザ素子を形成したウエハ基板ならびにレーザ素
子チップを示す平面図である。
【図19】本発明の一実施形態に係る長波長帯面発光半
導体レーザチップの図である。
【図20】本発明の半導体レーザチップの動作を説明す
るための図である。
【図21】本発明の一実施形態に係る長波長帯面発光半
導体レーザチップの図である。
【図22】本発明の半導体レーザチップの動作を説明す
るための図である。
【符号の説明】
1 n側電極、2 n−GaAs基板、3 下部半導体
分布ブラッグ反射鏡、4 GaAsスペーサ層、5 上
部半導体分布ブラッグ反射鏡、6 p−コンタクト層、
12 TQW活性層、13 GaAsバリア層
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 加藤 正良 東京都大田区中馬込1丁目3番6号 株式 会社リコー内 (72)発明者 古田 輝幸 東京都大田区中馬込1丁目3番6号 株式 会社リコー内 (72)発明者 宮垣 一也 東京都大田区中馬込1丁目3番6号 株式 会社リコー内 (72)発明者 金井 健 東京都大田区中馬込1丁目3番6号 株式 会社リコー内 (72)発明者 和多田 篤行 東京都大田区中馬込1丁目3番6号 株式 会社リコー内 (72)発明者 佐藤 俊一 東京都大田区中馬込1丁目3番6号 株式 会社リコー内 (72)発明者 鈴木 幸栄 東京都大田区中馬込1丁目3番6号 株式 会社リコー内 (72)発明者 曳地 秀一 東京都大田区中馬込1丁目3番6号 株式 会社リコー内 (72)発明者 佐藤 新治 東京都大田区中馬込1丁目3番6号 株式 会社リコー内 (72)発明者 軸谷 直人 東京都大田区中馬込1丁目3番6号 株式 会社リコー内 (72)発明者 高橋 孝志 東京都大田区中馬込1丁目3番6号 株式 会社リコー内 Fターム(参考) 5F004 AA15 DA00 DA01 DA17 DA20 5F045 AC02 BB14 CA15 EB13 HA03 HA13 5F073 AA03 AA55 AA74 AB13 AB20 BA01 CA17 CB02 CB19 DA05 DA14 EA02

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 レーザチップと該レーザチップと接続さ
    れる光通信システムにおいて、前記レーザチップは発振
    波長が1.1μm〜1.7μmであり、光を発生する活
    性層の主たる元素がGa、In、N、Asからなる層、
    もしくはGa、In、Asよりなる層とし、レーザ光を
    得るために前記活性層の上部及び下部に設けられた反射
    鏡を含んだ共振器構造を有する面発光型半導体レーザ素
    子チップであって、前記反射鏡は反射波長が1.1μm
    以上で該反射鏡を構成する材料層の屈折率が小大異なる
    値に周期的に変化し、入射光を光波干渉によって反射す
    る半導体分布ブラッグ反射鏡であるとともに、前記屈折
    率が小の材料層はAlGa1−xAs(0<x≦1)
    とし、前記屈折率が大の材料層はAlGa1− As
    (0≦y<x≦1)とし、かつ前記屈折率が小と大の材
    料層の間に該屈折率が小と大の間の値をとるAlGa
    1−zAs(0≦y<z<x≦1)よりなるヘテロスパ
    イク緩衝層を20nm〜50nmの厚さに設けた反射鏡
    であるような面発光型半導体レーザ素子チップを発光光
    源とした光通信システムであって、前記レーザチップ上
    には前記面発光型半導体レーザ素子に対応した受光素子
    がモノリシックに集積されていることを特徴とする光通
    信システム。
  2. 【請求項2】 レーザチップと該レーザチップと接続さ
    れる光通信システムにおいて、前記レーザチップは発振
    波長が1.1μm〜1.7μmであり、光を発生する活
    性層の主たる元素がGa、In、N、Asからなる層、
    もしくはGa、In、Asよりなる層とし、レーザ光を
    得るために前記活性層の上部及び下部に設けられた反射
    鏡を含んだ共振器構造を有する面発光型半導体レーザ素
    子チップであって、前記反射鏡は反射波長が1.1μm
    以上でそれを構成する材料層の屈折率が小大異なる値に
    周期的に変化し、入射光を光波干渉によって反射する半
    導体分布ブラッグ反射鏡であるとともに、前記屈折率が
    小の材料層はAlGa 1−xAs(0<x≦1)と
    し、前記屈折率が大の材料層はAlGa1−yAs
    (0≦y<x≦1)とした反射鏡であり、前記活性層と
    前記反射鏡の間に主たる組成がGaIn1−x
    1−y(0<x≦1、0<y≦1)層よりなる非発光
    再結合防止層を設けてなる面発光型半導体レーザ素子チ
    ップを発光光源とした光通信システムであって、前記レ
    ーザチップ上には前記面発光型半導体レーザ素子に対応
    した受光素子がモノリシックに集積されていることを特
    徴とする光通信システム。
  3. 【請求項3】 前記受光素子を用いて、対応する面発光
    型半導体レーザ素子の光出力の検出を、該面発光型半導
    体レーザ素子の主たる発光方向に対して横方向に漏れた
    漏れ光を検出することによって行うことを特徴とする請
    求項1又は2に記載の光通信システム。
  4. 【請求項4】 前記面発光型半導体レーザ素子に対応し
    て形成された受光素子を用いて、前記光通信システムの
    相手側からの送信信号を検出することを特徴とする請求
    項1又は2に記載の光通信システム。
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