JP2002316805A - フッ化水素の製造方法およびそのための装置 - Google Patents

フッ化水素の製造方法およびそのための装置

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JP2002316805A
JP2002316805A JP2001115283A JP2001115283A JP2002316805A JP 2002316805 A JP2002316805 A JP 2002316805A JP 2001115283 A JP2001115283 A JP 2001115283A JP 2001115283 A JP2001115283 A JP 2001115283A JP 2002316805 A JP2002316805 A JP 2002316805A
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hydrogen fluoride
reactor
reaction
reaction mixture
rotary kiln
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JP2001115283A
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Erhard Kemnitz
エアハルト・ケムニッツ
Hironobu Nishimura
啓伸 西村
Yukio Homoto
幸生 穂本
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Daikin Industries Ltd
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Daikin Industries Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 蛍石と硫酸とを反応させてフッ化水素を生成
する新規なフッ化水素の製造方法を提供する。 【解決手段】 蛍石と硫酸とを反応器にて反応させてフ
ッ化水素を生成させる新規なフッ化水素の製造方法が提
供される。この方法では、101.3kPa(大気圧)
以上である反応器内の気相のフッ化水素の分圧下にて反
応を実施する。この方法ではフッ化水素を触媒的に作用
させることにより、中間生成物である酸性硫酸カルシウ
ムを低温分解できるので、好ましくは、反応器内の温度
を例えば50〜150℃とすることができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はフッ化水素の製造方
法およびそのための装置に関する。より詳細には、本発
明は、蛍石と硫酸とを反応させてフッ化水素を工業規模
で製造する方法およびそのための装置に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に、フッ化水素(HF)の工業的製
造方法は、蛍石(CaF)および硫酸(HSO
からフッ化水素(HF)を得る反応を利用している。こ
のフッ化水素生成反応は、以下の一般式(A)で表され
る吸熱反応であり、目的生成物であるHFを生じると共
に、副生成物として石膏(CaSO)を生じる。
【化1】
【0003】このフッ化水素生成反応(A)を利用する
フッ化水素の製造方法のうち最もよく知られている方法
は、予備反応器とロータリーキルンとを組み合せて用い
るタイプの方法である。このようなタイプのフッ化水素
の製造方法は、例えば、特公平4−40282号公報に
記載されている。
【0004】このタイプの製造方法においては、上記の
フッ化水素生成反応(A)は、3段階の反応を経て進行
することが知られている。以下、このタイプの従来のフ
ッ化水素の製造方法について図1を参照しながら説明す
る。図1に示す従来のフッ化水素製造装置20は、概略
的には予備反応器3およびこれに接続された外部加熱式
のロータリーキルン5により構成される。予備反応器3
には、固−液混練が可能な外部加熱式のコニーダーなど
が用いられる。
【0005】まず、反応原料である粉末状の蛍石(Ca
)と液状の硫酸(HSO)とを予備反応器3
に、実質的に等モルの量でライン1および2を通して別
個の入口から連続的に供給する。この予備反応器3にて
反応原料を混練すると共に、予備反応器3の壁面からの
伝熱によって反応原料を約100℃まで加熱する。この
ような温度条件下では、以下の式(1)に示す反応が支
配的に起こる。式(1)の反応は吸熱反応であり、14
0℃以下の温度で進行すると考えられている。
【化2】
【0006】式(1)の反応により生成した反応生成物
(および未反応の反応原料)を含む反応混合物は、予備
反応器3の出口を通してライン4へと排出される。式
(1)の反応により生成したHFは、反応混合物からガ
ス状物の形態でライン6を通して分離される。他方、未
反応のCaF(およびHSO)と、中間生成物で
ある粉末状のCa(HSO(酸性硫酸カルシウ
ム)とを主に含む、ガス状物を除いた残りの反応混合物
はライン4を通してロータリーキルン5に送られる。
【0007】予備反応器3の出口(ライン4との接続部
付近)におけるCaFの転化率は、CaFおよびH
SOが等モルの量で予備反応器3に供給されている
ことから、全てのHSOがその半分のモル数のCa
と反応して消費された場合に理論上最大の50%と
なり得るが、反応条件にもよるが、実際には15〜45
%程度である。
【0008】次に、ロータリーキルン5へライン4を通
して導入された残りの反応混合物は、円筒状のロータリ
ーキルン5が円周方向に回転することによって、その内
部を転動しながらロータリーキルン5の軸方向にその出
口に向かって進行する。このとき反応混合物は、ロータ
リーキルン5の壁面からの熱伝導によって更に加熱され
て昇温される。反応混合物の温度は、ロータリーキルン
5の入口(ライン4との接続部付近)では約100℃で
あり、出口に向かうに従って上昇して、ロータリーキル
ン5の出口(ライン7との接続部付近)では約300℃
となる。
【0009】ロータリーキルン5での昇温過程において
反応混合物が急激に加熱されると、中間生成物であるC
a(HSOが以下の式(2a)の反応により分解
する。この結果、式(1)の反応でCaFのモル数に
等しいモル数よりも過剰に消費された分のHSO
液状物の形態で再び現れると共に、副生成物として粉末
状の石膏(CaSO)が生じる。式(2a)の反応
は、一般的には約175℃以上の温度で進行すると考え
られている。
【化3】
【0010】式(2a)の反応により生じたHSO
は反応混合物中に存在する未反応のCaFと反応する
が、ロータリーキルン5内におけるような高温下では、
上記の式(1)に示す反応ではなく、以下の式(3)に
示す反応が支配的に起こる。尚、予備反応器3内におけ
るような低温条件下では式(1)の反応が支配的に起こ
るが、式(3)の反応もわずかに起こり得る。
【化4】
【0011】式(3)の反応によりロータリーキルン5
内で生成したHFは、予備反応器3にて生成したHFと
同様に、ロータリーキルン5内の反応混合物(図示せ
ず)からガス状物の形態でライン6を通して分離され
る。他方、ガス状物を除いた残りの反応混合物(副生成
物であるCaSOを主に含み、少量の中間生成物であ
るCa(HSOおよび未反応原料を含み得る)
は、ロータリーキルン5の出口からライン7を通して排
出される。
【0012】ロータリーキルン5の出口での最終的なC
aFの転化率は、式(2a)の反応によりCa(HS
が全て分解し、式(3)の反応により残りの全
てのCaFがHSOと反応した場合に理論上10
0%となり得るが、実際には96〜99.5%程度であ
る。
【0013】以上のようにして、予備反応器3における
低温条件での操作およびロータリーキルン5における高
温条件での操作により、目的のフッ化水素を得ることが
できる。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述の
ような従来のフッ化水素の製造方法では、ロータリーキ
ルンの入口付近に、反応混合物がペースト状の形態とな
る領域、いわゆるペースティゾーンが形成される。この
ペースティゾーンにおいては、ペースト状の反応混合物
がロータリーキルンの内壁面に張り付いて厚いスケール
を形成し、また、ロータリーキルンの内壁面がペースト
状の反応混合物により著しく腐蝕されるという問題があ
る。一般的には、ペースティゾーンはロータリーキルン
の入口からロータリーキルンの1/4長さまでの領域で
ある。この領域では、ロータリーキルンの他の領域に比
べて反応混合物中の硫酸の割合が高くなるために上述の
ような問題を招くものと考えられる。以下、これについ
て詳述する。
【0015】未反応の反応原料および反応生成物から成
る反応混合物は、予備反応器を出るときには約100℃
の温度を有し、固体の粉末状の未反応のCaF、固体
の粉末状のCa(HSOおよび少量の液状のH
SO(および式(3)の反応に由来する少量のCaS
)を含んでいる。このような反応混合物をロータリ
ーキルンに移すと、ロータリーキルンの入口近傍にて約
175℃以上に急激に加熱されるため、式(2a)の分
解反応が急速に進んでほぼ全てのCa(HSO
分解され、固体の粉末状のCaSOと液状のHSO
とを大量に生じる。このとき、反応混合物中の硫酸の
割合がロータリーキルンの入口近傍の領域において非常
に高くなる。これは、常套的なロータリーキルンでの操
作条件においては、式(2a)の硫酸を生成する反応の
速度よりも、続く式(3)の硫酸を消費する反応の速度
の方が小さいためであると考えられ得る。その後、反応
混合物がロータリーキルン内を出口に向かって移動する
と共に式(3)の反応が進行して硫酸が次第に消費さ
れ、上記の領域より下流においては反応混合物中の硫酸
の割合が低下する。この結果、ロータリーキルンの入口
近傍の領域では液状の硫酸が反応混合物中に比較的高い
割合で存在し、反応混合物は液体を比較的多く含んだ固
液混層の状態(またはペースト状)となる。これによ
り、ロータリーキルンの入口近傍の領域にペースティゾ
ーンが形成される。
【0016】このようなペースティゾーンでは、反応混
合物はペースト状の形態を成しているため、ロータリー
キルンの内壁に張り付き易く、スケールを形成し易いと
考えられる。更に、反応混合物はスケールが無い部分よ
りも、スケールがある部分に張り付き易いため、一旦ス
ケールが形成されるとそのスケールに反応混合物が次々
と張り付く。よって、装置の運転時間が長くなるにつれ
てスケールの厚さが増加する。厚いスケールが形成され
ると、ロータリーキルンの内壁面(即ち伝熱表面)から
反応混合物の本体(即ち、スケールを形成していない反
応混合物)への伝熱効率が低下し、製造能力を著しく低
下させるという更なる問題を引き起こす。
【0017】一般的には、スケール形成を防止して製造
能力の低下を回避するために、スケールを掻き取るため
のインターナルブレーカーが、ロータリーキルンに取り
付けられ、またはロータリーキルンにルーズに(即ち取
り付けられずに)挿入されている。このインターナルブ
レーカーは、ロータリーキルンの内壁面に対して相対的
に回転することによって、ロータリーキルンの内壁面に
付着する反応混合物を掻き取るように機能する。インタ
ーナルブレーカーには、例えば、スパイラルフィン、ス
タッド、またはブレード付きの棒状内挿物などが用いら
れる。
【0018】また、上記のようなペースティゾーンで
は、約175℃以上という高温条件下で反応混合物中に
硫酸が比較的高い割合で存在することにより、反応混合
物(または反応系)は極めて高い腐蝕性を有する。この
ため、大量に硫酸の存在するペースティゾーンにおいて
ロータリーキルンの内壁面が著しく腐蝕されると考えら
れる。
【0019】このようなロータリーキルン内壁面の腐蝕
を低減するために、Ni、Cr、Mo、およびFeなど
から成る耐食性合金材料(例えばハステロイ(商品
名))で構成されるか、あるいはこのような耐食性合金
材料でライニングした内壁表面を有するロータリーキル
ンが一般的に用いられる。このような耐食性合金材料
は、式(2a)の分解反応により生成される硫酸および
式(3)の反応により生成するHFによって、ロータリ
ーキルンの内壁表面に不働態皮膜(あるいは酸化物およ
び/またはフッ化物の皮膜)を形成し、これにより耐食
性を示す。
【0020】しかし、スケール形成を防止するために上
述のようなインターナルブレーカーを用いると、ロータ
リーキルンの内壁面に形成されたスケールとインターナ
ルブレーカーとの衝突力を利用して内壁面からスケール
を機械的に掻き取るだけでなく、内壁表面の不働態皮膜
をも掻き取って除去する。この結果、合金材料が不働態
膜を形成してもインターナルブレーカーにより不働態膜
が除去され、合金材料が表面に露出して反応混合物によ
る腐蝕が進行する。従って、ロータリーキルンの内壁面
の材料に耐食性合金材料を用いても、スケール形成を防
止するためにインターナルブレーカーを用いると、ロー
タリーキルンの内壁面の腐蝕を十分に低減することがで
きず、スケール形成と腐蝕の問題を同時に解決すること
は困難である。
【0021】そこで、本発明の目的は、蛍石と硫酸とを
反応させてフッ化水素を生成するフッ化水素の製造方法
であって、上記従来の課題を緩和または好ましくは解決
することのできる新規な方法およびその方法を実施する
ための装置を提供することにある。
【0022】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、ロータリ
ーキルンの内壁の腐蝕およびスケール形成を効果的に低
減するために、ペースティゾーンを生じる上述のような
メカニズムに着目し、式(2a)のCa(HSO
の分解反応をより低温で進行させることによりペーステ
ィゾーンを生じないようにすることのできる方法につい
て検討した。
【0023】上述したように、ロータリーキルンのペー
スティゾーンは、式(1)の反応により生成されるCa
(HSOが予備反応器では分解されず、予備反応
器からロータリーキルンへ移されて175℃以上の高い
温度に加熱されて初めて式(2a)の反応により分解さ
れ、大量の液状のHSOを直ちに生じることにより
形成される。よって、Ca(HSOの分解反応に
よりロータリーキルンにて現れる硫酸の量をより少なく
することによりペースティゾーンを生じなくさせること
が可能となる。このような観点によれば、式(1)の反
応により予備反応器内で生じるCa(HSOを式
(1)の反応の条件と同じ低温条件下で速やかに分解
し、予備反応器内でより多くの硫酸をフッ化水素生成に
寄与させることが考えられる。
【0024】Ca(HSOの分解反応は、式(2
a)に示すように175℃以上の高温条件(但しH
無し)で進行するほか、以下の式(2b)に示すように
Oの存在下において低温条件でも進行することが本
発明者らにより確認された。このとき、HOは分解反
応の触媒として作用する。
【化5】
【0025】よって、ペースティゾーンの形成を回避す
るために、反応系にHOを添加し、上記のようなH
Oの触媒作用を利用して式(2b)の分解反応を予備反
応器内の温度と同等の低温条件下で起させることが考え
られる。
【0026】例えば、独国特許第DD 251 538
A1号公報には、蛍石および硫酸を含む反応混合物に
20%以下の水を含む含水気体混合物を接触させること
により、フッ化水素の生成反応を50〜190℃の低温
で、特に50〜150℃の温度条件下で終了させること
が記載されている。本発明者らによれば、このような方
法は、Ca(HSOの分解反応にHOの触媒作
用を利用したものであると考えられる。
【0027】しかし、このような反応系に水を加える方
法は、反応系に硫酸と水とが共存することにより、反応
混合物の腐蝕性が極端に高くなり反応器内壁を激しく腐
蝕することになるため好ましくない。本発明者らは更な
る鋭意検討の結果、Ca(HSOの分解反応を触
媒するものとして、水に代えてフッ化水素(HF)を用
いることができることを見出し、本発明を完成するに至
った。
【0028】本発明の1つの要旨によれば、蛍石と硫酸
とを反応器にて反応させてフッ化水素を生成させるフッ
化水素の製造方法であって、反応器の周囲圧力、例えば
大気圧である101.3kPa以上である反応器内の気
相のフッ化水素の分圧下にて反応を実施することを含む
方法が提供される。この反応器には、例えば従来のフッ
化水素の製造方法に利用される予備反応器と実質的に同
様のものを用いることができる。この方法において、反
応器にて実施される反応は、上述のような分圧条件下に
て蛍石および硫酸(および中間生成物)とからフッ化水
素を生成するあらゆる反応であり得る。本発明の方法に
おける反応は、蛍石および硫酸から生成される中間体を
経てフッ化水素を生成する反応を含み得る。一般的に
は、1つまたはそれ以上の反応が反応器内で起こる。よ
り詳細には、後述するように、反応器内で式(1)およ
び(2c)の反応、あるいは式(B)の反応が支配的に
起こってフッ化水素を生成する。
【0029】図1を参照しながら説明した従来のフッ化
水素の製造方法においては、通常、フッ化水素ガスが装
置外部に洩出しないように、予備反応器およびロータリ
ーキルンの内部の圧力を、装置外部の圧力である大気圧
よりも低くした減圧条件下でフッ化水素を製造してい
る。このとき、装置内の気相のフッ化水素の分圧は大気
圧(1atm、即ち101.3kPa)よりも低い圧力
となっている。
【0030】これに対して本発明の方法によれば、反応
器内の気相のフッ化水素の分圧を101.3kPa以上
としているので、従来よりも高いフッ化水素分圧下でフ
ッ化水素を製造している。このようなより高いフッ化水
素分圧条件下では、フッ化水素が効果的に触媒として働
いて、以下の式(1)および(2c)の反応が低温条件
下にある反応器内にて連続的に進行する。
【化6】
【化7】
【0031】式(1)の反応では、CaFがその2倍
のモル数のHSOと反応して目的生成物であるHF
と副生成物であるCa(HSOとを生じる。式
(1)の反応により生成したCa(HSOは、本
発明のような反応器内の気相のフッ化水素の分圧条件に
おいて式(2c)の反応が進行することにより分解され
て、Ca(HSOとそれぞれ等モルのCaSO
およびHSOを生じる。これにより、式(1)の反
応でCaFのモル数と等しいモル数よりも過剰に消費
された分のHSOが生じ、生じたHSOは式
(1)の反応に再び寄与する。
【0032】しかし、式(1)の反応により生じたCa
(HSOは、そのような反応条件下では不安定で
あるため、式(2c)の反応により速やかに分解され
る。よって、そのような条件下ではCa(HSO
は実質的に存在しないか、存在してもごくわずかの量で
ある。このため、見かけ上は以下の式(B)の反応が起
こると考えてよい。
【化8】
【0033】従来の方法では、予備反応器内の低温およ
び減圧条件下では、式(1)の反応しか実際的に起こら
ず、CaFとHSOとを等モルで予備反応器に供
給する場合、予備反応器出口でのCaFの転化率は理
論上最大で50%である。これに対して、本発明によれ
ばフッ化水素分圧をより高くしているので、式(1)の
反応により過剰に消費されたHSOが、その反応条
件下で式(2c)の反応が進行することにより再び生
じ、式(1)の反応に寄与する。この結果、式(B)の
反応が見かけ上起こって、CaFおよびHSO
らCaSOを生じる。これにより、従来の予備反応器
と実質的に同等の反応器を用い、従来の方法と同等の低
温条件で操作する場合であっても、本発明の方法のよう
にフッ化水素分圧をより高くすることにより、反応器出
口でのCaFの転化率を従来のフッ化水素の製造方法
における場合より高く、例えば50%より高く、好まし
くは65%以上とすることができる。本発明によれば、
反応器内の滞留時間との関係を考慮する必要があるが、
反応器出口でのCaFの転化率をほぼ100%とする
ことが理論上は可能である。
【0034】本発明において、反応器内の気相のフッ化
水素の分圧は101.3kPa以上であれば従来のフッ
化水素の製造方法における場合の分圧(101.3kP
aより低い値)よりも高く、反応器出口にてより高いC
aFの転化率を得ることができるが、好ましくは10
1.5kPa以上、より好ましくは103kPa以上で
ある。他方、反応器を含む設備の費用や、フッ化水素を
高圧で用いることの危険性を回避する観点から、反応器
内のフッ化水素の分圧は300kPa以下とすることが
好ましい。例えば、フッ化水素の分圧は、101.3〜
140kPa、好ましくは103〜110kPaであ
る。
【0035】本発明の方法において反応器内の気相のフ
ッ化水素の分圧は、フッ化水素生成反応を実施する間中
に亘って必ずしも一定に保つ必要はなく、連続的または
段階的に変化させるようにしてもよい。また、本発明の
方法においてフッ化水素の分圧は、フッ化水素生成反応
を実施する全期間に亘って101.3kPa以上に維持
する必要は必ずしもなく、フッ化水素生成反応を実施す
る間の少なくとも一部の期間において101.3kPa
以上、好ましくは101.5kPa以上、より好ましく
は103kPa以上となる期間が存在すればよい。もち
ろん、フッ化水素生成反応を実施する全期間に亘ってフ
ッ化水素の分圧を101.3kPa以上に維持するよう
にしてもよい。
【0036】本発明の方法をバッチ式で実施する場合、
フッ化水素分圧を経時的に変化させることができ、フッ
化水素生成反応を実施する間の少なくとも一部の期間に
おいてフッ化水素分圧を101.3kPa以上とするこ
とができる。例えば、反応初期においてはフッ化水素分
圧を101.3kPa以下に維持し、反応がある程度進
行した時点、例えばCaFの転化率が35〜45%に
達した時点で、103〜110kPaに上昇させて維持
するようにしてよい。
【0037】また、本発明の方法を連続式で実施する場
合、複数の反応器を連結して用いてフッ化水素分圧を反
応器によって変化させ、少なくとも1つの反応器におい
てフッ化水素分圧を101.3kPa以上とすることが
できる。例えば、第1および第2の反応器を連結して用
い、第1の反応器ではフッ化水素の分圧を101.3k
Pa以下に維持し、第2の反応器ではフッ化水素の分圧
を103〜110kPaに維持するようにしてよい。こ
の場合、第1の反応器にて反応をある程度、例えばCa
の転化率が35〜45%に達するまで進行させ、次
いで第1の反応器内の反応混合物を第2の反応器に移し
て、第2の反応器にて反応を更に進行させ得る。
【0038】本発明の1つの態様においては、反応器内
の気相のフッ化水素の分圧を従来よりも高くするため
に、ガス状のフッ化水素を反応器内に供給すること、お
よび/または例えばバルブなどを用いて反応器内の気相
の全圧を調節することが実施される。例えば、反応によ
り生成したフッ化水素を含む、反応器から取り出された
ガス状物の一部を、例えばポンプなどを用いて反応器に
戻すことによりガス状のフッ化水素を反応器内に供給す
ることができる。
【0039】本発明においては反応器内の温度を、例え
ば50〜150℃、特に50〜100℃の低温とするこ
とができる。反応器内の温度を50℃以上とするのは、
上記の式(1)および(2c)の吸熱反応あるいは式
(B)の吸熱反応を効果的な速度で進行させるためであ
る。また、反応器内の温度を150℃以下とするのは、
反応混合物が硫酸を含むため、反応混合物による反応器
内壁の腐蝕を低減するように、反応器内の温度をなるべ
く低温とすることが好ましいからである。
【0040】以上のような本発明によれば、反応器出口
でのCaFの転化率を、従来のフッ化水素の製造方法
における予備反応器出口でのCaFの転化率よりも十
分に高くすることができるので、ロータリーキルンを場
合により省略することができる。しかし、本発明はこれ
に限定されず、予備反応器とロータリーキルンとを組み
合せて用いてもよい。本発明の別の要旨によれば、蛍石
と硫酸とを予備反応器にて反応させてフッ化水素を生成
させ、得られる反応混合物から、生成したフッ化水素を
含むガス状物を除き、残りの反応混合物をロータリーキ
ルンに移し入れ、反応混合物をロータリーキルンにて反
応させてフッ化水素を更に生成させ、得られる反応混合
物から、更に生成したフッ化水素を含むガス状物を除く
ことを含むフッ化水素の製造方法において、上述の本発
明の方法に言う反応器を予備反応器として用いて上述の
本発明の方法を適用する方法が提供される。
【0041】このような方法において、予備反応器にて
実施される反応は、上述のような分圧条件下にて蛍石お
よび硫酸(および中間生成物)とからフッ化水素を生成
するあらゆる反応であり得、また、ロータリーキルンに
て実施される反応は、任意の適切な分圧条件下にて蛍石
および硫酸(および中間生成物)とからフッ化水素を生
成するあらゆる反応であり得る。より詳細には、予備反
応器では上記の式(1)および(2c)の反応あるいは
式(B)の反応が支配的に起こってフッ化水素を生成
し、ロータリーキルンでは上記の式(2a)および
(3)の反応が支配的に起こってフッ化水素を生成す
る。予備反応器にて実施される反応は、ロータリーキル
ンにて実施される反応と異なっても、同じであってもよ
い。
【0042】本発明のこの方法によれば予備反応器内の
気相のフッ化水素の分圧を101.3kPa以上とす
る。このような方法においても上記と同様に、予備反応
器内の温度を、例えば50〜150℃の低温とすること
ができる。また、予備反応器内の気相のフッ化水素の分
圧をより高く、好ましくは約101.3kPa以上とす
るために、ポンプなどを用いてガス状のフッ化水素を予
備反応器内に供給すること、および/またはバルブなど
を用いて予備反応器内の気相の全圧を調節することが実
施される。例えば、反応により生成したフッ化水素を含
む、予備反応器および/またはロータリーキルンから取
り出されたガス状物の一部を、例えばポンプなどを用い
て予備反応器に戻すことによりガス状のフッ化水素を予
備反応器内に供給することができる。
【0043】このような本発明の方法によれば、予備反
応器出口でのCaFの転化率を50%以上、好ましく
は65%以上とし、予備反応器内でより多くのHSO
がHF生成に寄与するので、Ca(HSOの形
態でロータリーキルンに移され得るHSOの量をよ
り少なくすることができ、ロータリーキルン内での加熱
により生じる液状のHSOの量を従来よりも少なく
することができる。よって、ロータリーキルンの入口近
傍において反応混合物に含まれる液状物の割合を低下さ
せることができ、従来のペースティゾーンにあたるロー
タリーキルンの入口近傍の領域においても、反応混合物
の腐蝕性および付着性を比較的低くすることができ、好
ましくはペースティゾーンの形成を防止することができ
る。これにより、ロータリーキルン内壁の局所的な腐蝕
およびスケール形成を効果的に低減し、スケール形成に
起因する伝熱不良の問題を解消することが可能となる。
【0044】本発明の別の要旨によれば、蛍石と硫酸と
を反応させてフッ化水素を生成させるフッ化水素の製造
装置であって:蛍石を供給する入口と、硫酸を供給する
入口と、蛍石と硫酸との反応により生成するフッ化水素
を含む反応混合物を排出する出口とを有する反応器と;
出口から排出される反応混合物のうち、反応により生成
するフッ化水素を含むガス状物の一部を反応器内に戻す
手段とを含む装置が提供される。
【0045】また、本発明の更に別の要旨によれば、蛍
石と硫酸とを反応させてフッ化水素を生成させるフッ化
水素の製造装置であって:蛍石を供給する入口と、硫酸
を供給する入口と、蛍石と硫酸との反応により生成する
フッ化水素を含む反応混合物を排出する出口とを有する
反応器と;反応器内の気相の全圧を調節する手段とを含
む装置が提供される。この装置は、出口から排出される
反応混合物のうち、反応により生成するフッ化水素を含
むガス状物の一部を反応器内に戻す手段を更に備え得
る。
【0046】これらの本発明の装置は、上述の本発明の
フッ化水素の製造方法を実施するために好適に用いられ
得る。即ち、101.3kPa以上である反応器内の気
相のフッ化水素の分圧を容易に得ることができ、よっ
て、本発明の方法を効果的に実施することができる。よ
り詳細には、反応混合物のうち反応により生成するフッ
化水素を含むガス状物の一部を反応器内に戻す手段およ
び/または反応器内の気相の全圧を調節する手段を用い
て、101.3kPa以上である反応器内の気相のフッ
化水素の分圧を得ることができる。
【0047】本発明の装置は、反応器(予備反応器)に
連結された上述のようなロータリーキルンを更に含んで
いても、いなくてもよい。
【0048】本発明の方法および/または装置に利用さ
れる反応器(ロータリーキルンと共に用いる場合には予
備反応器)としては、上述のように従来のフッ化水素の
製造方法に利用される予備反応器と実質的に同様のもの
を用いることができ、例えば、単軸式または複軸式の、
任意の適切な数の撹拌羽根を備える外部加熱式の反応器
を用いることができる。より具体的には、高粘度物を混
練し得るような、ヘリカル型、スパイラルフィン型、ス
タッド型、Σ型、Z型、および魚尾型などの1またはそ
れ以上の撹拌羽根を備える外部加熱式混練機(ニーダー
およびコニーダーなど)などを用い得る。Σ型、Z型、
および魚尾型などの1対の撹拌羽根を2つの軸の各々に
備える混練機では、撹拌羽根は切線形式および重畳形式
などの任意の適切な形式で操作され得る。
【0049】本発明において予備反応器と共にロータリ
ーキルンを用いる場合、従来のフッ化水素製造に利用さ
れるものと実質的に同様の外部加熱式のロータリーキル
ンを用いることができる。しかし、本発明によれば、ロ
ータリーキルンでのスケール形成が効果的に防止される
ので、従来スケールを除去するために用いられていたイ
ンターナルブレーカーを設けなくてもよい点で従来のも
のと異なり得る。インターナルブレーカーを設けない場
合、これに起因する反応器の内壁面の摩耗を防止するこ
とができる。更に、本発明の方法においては、ロータリ
ーキルン内で液状の硫酸が大量に発生することが効果的
に低減されるので、ロータリーキルンの材料として従来
用いられていたハステロイ(商品名)などの高価な耐食
性金属材料を用いなくてもよい。例えば炭素鋼および/
またはステンレス鋼などの比較的安価な金属材料を用い
てもよい。これに加えて、予備反応器出口でのCaF
の転化率を従来よりも向上させることができ、例えば6
5%以上とすることができるので、より小型のロータリ
ーキルンを用いて目的のCaFの総括転化率を得るこ
とが可能となる。
【0050】本発明において反応原料として用いられる
硫酸は、硫酸そのもの(例えば濃硫酸)を反応器に供給
することによって、および/または硫酸を生じることが
可能な材料を反応器に供給することによって提供され得
る。硫酸を生じることが可能な材料とは、例えば、発煙
硫酸(SO3及びH2SO4)と水、三酸化硫黄(SO3
と水、発煙硫酸および三酸化硫黄(SO3)と水の組合
せが挙げられる。
【0051】本明細書において「蛍石」とは、組成式C
aF2によって示される天然に産出される鉱物材料を意
味する。本発明に用いることができる蛍石は、金属元素
とフッ素とから成る金属フッ化物の1種であるフッ化カ
ルシウム(CaF2)を主成分とし、工業的に一般に用
いられているグレードのものであればよく、CaF2
外の成分を含むものであってもよい。また、蛍石に代え
て、フッ化カルシウム以外の金属フッ化物、例えば、フ
ッ化ナトリウム、フッ化カリウム、合成フッ化カルシウ
ム、およびフルオロケイ酸ナトリウム等の1種またはそ
れ以上を用いることも考えられ得る。
【0052】
【発明の実施の形態】以下、本発明の1つの実施形態に
ついて詳細に説明する。
【0053】本実施形態のフッ化水素製造装置(図示せ
ず)においては、反応器として図1を参照しながら上述
した従来のフッ化水素製造方法に用いられる予備反応器
を用いる。より具体的には、本実施形態の装置に用いら
れる反応器は、固−液混練が可能な外部加熱式のコニー
ダーであり、反応原料である蛍石(CaF)および濃
硫酸(HSO)を個々に供給するための2つの入口
と、蛍石および硫酸の反応により生成するフッ化水素を
含む反応混合物を排出する出口とを有する。反応器の外
部には、反応原料および反応が進行した場合には反応生
成物(本明細書において、未だ反応していない反応原料
および反応によって生成した反応生成物を含む混合物を
総称して単に「反応混合物」とも言う)を加熱するため
のジャケットなどの加熱手段が備えられる。この反応器
の内部には、反応混合物を混練または撹拌するため、な
らびに、反応器の内壁面に付着する反応混合物を掻き取
るための撹拌羽根などの撹拌手段が備えられる。反応器
の内壁表面は、例えば、ハステロイ(商品名)などの耐
食性金属材料からなることが好ましい。
【0054】本実施形態のフッ化水素製造装置は、反応
器の内部のフッ化水素の分圧を大気圧(101.3kP
a)以上とすることの可能な手段を備える。例えば、反
応器の出口から排出される反応混合物のうち、反応によ
り生成するフッ化水素を含むガス状物の一部を反応器内
に戻す手段(例えばポンプおよび関連導管など)および
/または反応器内の気相の全圧を調節して、フッ化水素
の分圧を大気圧以上に高くする手段(例えばバルブな
ど)を備え得る。また、粉末状の蛍石を供給する際の雰
囲気ガスとしてフッ化水素ガスを用いるようにして、お
よび/または別個のフッ化水素ガスソースから反応器内
にフッ化水素ガスを別途供給するようにして、反応器内
のフッ化水素分圧を上昇させてもよい。
【0055】このようなフッ化水素製造装置を用いてフ
ッ化水素を製造する方法について以下に説明する。
【0056】まず、反応原料として、粉末状の蛍石(C
aF)と液状の濃硫酸(HSO )とを、Ca
:HSOのモル比を実質的に1:1として反応
器にそれぞれの入口から供給する。次いで、ジャケット
などの外部加熱手段によって反応器内の反応原料(反応
混合物)を約50〜150℃の温度に加熱して維持する
と共に、反応器に設けられた撹拌羽根を回転させること
によって内壁に付着する反応混合物を掻き取りながら混
練する。このとき、反応器内の気相のフッ化水素の分圧
を101.3kPa以上とする。このような温度および
圧力条件下で操作することにより、上記の式(1)およ
び式(2c)の反応あるいは式(B)の反応が進行して
目的物質であるフッ化水素を生成する。その後、反応器
出口から反応混合物を取り出す。反応混合物の反応器で
の平均滞留時間は、例えば約30〜200分とする。得
られた反応混合物は、50%以上(即ち、50〜100
%)、好ましくは65%以上(即ち、65〜100%)
の蛍石の転化率を有し、実質的に100%の転化率を得
ることを可能にし得る。
【0057】反応器にて生成した目的物質であるフッ化
水素(HF)は、ガス状物の形態で粗フッ化水素とし
て、反応混合物から分離される。得られた粗フッ化水素
は、必要に応じて洗浄および/または蒸留操作により分
離および精製され、これにより高純度のフッ化水素を得
ることができる。
【0058】上記のようなフッ化水素製造方法は工業規
模で連続的に実施され得るが、バッチ式で実施すること
も可能である。
【0059】このような本実施形態によれば、反応器内
の気相のフッ化水素の分圧を101.3kPa(大気
圧)以上とすることにより、フッ化水素を触媒的に作用
させて中間生成物である酸性硫酸カルシウムを低温分解
でき、これにより、反応器内の温度を例えば50〜15
0℃としてフッ化水素を高い収率で得ることができる。
この結果、従来必要であったロータリーキルンでの高温
条件下での操作は必ずしも必要でなくなり、このような
操作を行わない場合にはロータリーキルン内壁の腐蝕や
スケール形成といった問題を考慮する必要がなくなる。
【0060】しかし、本実施形態の反応器での低温条件
下での操作を予備反応器での操作に適用し、このような
操作とロータリーキルンでの高温条件下での操作とを組
み合せて用いてもよい。この場合、予備反応器での低温
条件下での操作により従来よりも高い転化率が予備反応
器出口にて得られるので、従来より小型のロータリーキ
ルンを用いて目的の転化率を得ることが可能となる。更
に、ロータリーキルン内壁の腐蝕およびスケール形成を
効果的に低減し、またスケール形成に起因する伝熱不良
の問題を削減または解消することができる。更に、スケ
ールを除去するための掻き取り手段をロータリーキルン
に設けることを要せず、ロータリーキルン内壁の摩耗お
よびこれに起因する腐蝕の進行を回避することができ
る。更に、ロータリーキルン内壁材料として高価な耐食
性金属材料を用いる必要がなく、より安価な金属材料を
代わりに利用することができる。
【0061】
【実施例】本発明の上記実施形態にて詳述したような容
量約2リットルのコニーダーを反応器として用いた。予
めフッ化水素ガスで満たした反応器に粉末状の蛍石40
0gと、この蛍石とほぼ等モルの濃硫酸280ミリリッ
トル(濃度約98%)とを仕込んだ。反応器の加熱温度
を約100℃に設定し、反応原料を約90〜100℃に
加熱しながら撹拌して反応させた。このとき、反応器の
出口を水封することによって、反応を実施する間中、反
応器内の気相の全圧を102〜103kPa(大気圧に
水封の水柱により加わる圧力を加えたもの、約1.01
atm)に保ち、反応器内のフッ化水素分圧を全圧とほ
ぼ等しい102〜103kPaとした。反応器内で反応
が進行することにより生成するフッ化水素ガスを含むガ
ス状物は、反応器出口から水封に用いた水の中に溶か
し、または水封を通して反応器の外部に排出させた。
【0062】以上のようにして蛍石と硫酸とを反応原料
とし、反応器内でフッ化水素を生成させた。反応時間を
種々に変化させて上記の操作を実施し、反応器内の反応
混合物を取り出してCaFの転化率を求めて、反応時
間(滞留時間)と転化率の関係を調べた。結果を図2に
示す。図2より、反応時間が約60分となったときにC
aFの転化率が50%を超え、更に100分の反応時
間では70%以上のCaFの転化率を得ることができ
ることが解る。図2の結果より、反応器内の気相のフッ
化水素の分圧を従来の大気圧(101.3kPa)より
も低い値から、102〜103kPaに増加させるだけ
で、CaFの転化率を劇的に増大させることが可能と
なることが示される。図2では反応時間を0〜120分
までの範囲として示しているが、反応時間を更に長くす
ることにより実質的に100%のCaFの転化率を得
ることが可能であると考えられる。
【0063】
【発明の効果】本発明によれば、蛍石と硫酸とを反応さ
せてフッ化水素を生成する新規なフッ化水素の製造方法
およびそのための装置が提供される。このような製造方
法においては、反応器内の気相のフッ化水素の分圧を1
01.3kPa(大気圧)以上とすることにより、フッ
化水素を触媒的に作用させて中間生成物である酸性硫酸
カルシウムを低温分解でき、これにより、反応器内の温
度を例えば50〜150℃としてフッ化水素を高い収率
で得ることができる。この結果、従来必要であったロー
タリーキルンでの高温条件下での操作を不要とすること
ができるので、ロータリーキルン内壁の腐蝕やスケール
形成といった問題を考慮する必要がない。
【0064】しかし、本発明の方法を予備反応器での低
温条件下での操作に適用し、その後ロータリーキルンで
の高温条件下での操作を実施することにより、本発明の
方法とロータリーキルンを用いる操作とを組み合せて用
いてもよい。この場合、予備反応器での低温条件下での
操作によって従来よりも高い転化率が得られるので、よ
り小型のロータリーキルンを用いて目的の転化率を得る
ことが可能となる。更に、ロータリーキルン内壁の腐蝕
およびスケール形成を効果的に低減し、またスケール形
成に起因する伝熱不良の問題を削減または解消すること
ができる。更に、スケールを除去するための掻き取り手
段をロータリーキルンに設けることを要せず、ロータリ
ーキルン内壁の摩耗およびこれに起因する腐蝕の進行を
回避することができる。更に、ロータリーキルン内壁材
料として高価な耐食性金属材料を用いる必要がなく、よ
り安価な金属材料を利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 従来のフッ化水素製造装置の概略模式図であ
る。
【図2】 本発明の実施例における反応時間に対するC
aFの転化率を示す図である。
【符号の説明】
1、2、4、6、7 配管 3 予備反応器 5 ロータリーキルン 20 フッ化水素製造装置
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 穂本 幸生 大阪府摂津市西一津屋1番1号 ダイキン 工業株式会社淀川製作所内

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 蛍石と硫酸とを反応器にて反応させてフ
    ッ化水素を生成させるフッ化水素の製造方法であって、
    101.3kPa以上の反応器内の気相のフッ化水素の
    分圧下にて反応を実施することを含む方法。
  2. 【請求項2】 50〜150℃の温度にて反応を実施す
    る、請求項1に記載の方法。
  3. 【請求項3】 ガス状のフッ化水素を反応器内に供給す
    ることにより、反応器内の気相のフッ化水素の分圧を1
    01.3kPa以上とする、請求項1または2に記載の
    方法。
  4. 【請求項4】 反応器内の気相の全圧を調節することに
    より、反応器内の気相のフッ化水素の分圧を101.3
    kPa以上とする、請求項1〜3のいずれかに記載の方
    法。
  5. 【請求項5】 蛍石と硫酸とを予備反応器にて反応させ
    てフッ化水素を生成させ、得られる反応混合物から、生
    成したフッ化水素を含むガス状物を除き、残りの反応混
    合物をロータリーキルンに移し入れ、反応混合物をロー
    タリーキルンにて反応させてフッ化水素を更に生成させ
    ることを含むフッ化水素の製造方法において、前記反応
    器を予備反応器として用いて請求項1〜4のいずれかに
    記載の方法を適用する方法。
  6. 【請求項6】 蛍石と硫酸とを反応させてフッ化水素を
    生成させるフッ化水素の製造装置であって、 蛍石を供給する入口と、硫酸を供給する入口と、蛍石と
    硫酸との反応により生成するフッ化水素を含む反応混合
    物を排出する出口とを有する反応器と、 出口から排出される反応混合物のうち、反応により生成
    するフッ化水素を含むガス状物の一部を反応器内に戻す
    手段とを含む装置。
  7. 【請求項7】 反応混合物のうち反応により生成するフ
    ッ化水素を含むガス状物の一部を反応器内に戻す手段
    が、反応器内の気相のフッ化水素の分圧を101.3k
    Pa以上とするように用いられる、請求項6に記載の装
    置。
  8. 【請求項8】 蛍石と硫酸とを反応させてフッ化水素を
    生成させるフッ化水素の製造装置であって、 蛍石を供給する入口と、硫酸を供給する入口と、蛍石と
    硫酸との反応により生成するフッ化水素を含む反応混合
    物を排出する出口とを有する反応器と、 反応器内の気相の全圧を調節する手段とを含む装置。
  9. 【請求項9】 反応器内の気相の全圧を調節する手段
    が、反応器内の気相のフッ化水素の分圧を101.3k
    Pa以上とするように用いられる、請求項8に記載の装
    置。
  10. 【請求項10】 出口から排出される反応混合物のう
    ち、反応により生成するフッ化水素を含むガス状物の一
    部を反応器内に戻す手段を更に備える、請求項8または
    9に記載の装置。
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