JP2002312923A - 磁気記録媒体 - Google Patents
磁気記録媒体Info
- Publication number
- JP2002312923A JP2002312923A JP2001114241A JP2001114241A JP2002312923A JP 2002312923 A JP2002312923 A JP 2002312923A JP 2001114241 A JP2001114241 A JP 2001114241A JP 2001114241 A JP2001114241 A JP 2001114241A JP 2002312923 A JP2002312923 A JP 2002312923A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- protective film
- magnetic recording
- carbon
- layer
- recording medium
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Withdrawn
Links
Landscapes
- Physical Vapour Deposition (AREA)
- Chemical Vapour Deposition (AREA)
- Magnetic Record Carriers (AREA)
Abstract
(57)【要約】
【課題】 炭素系保護膜の機械的強度を保持したまま、
その保護膜に対する潤滑剤の付着力を強化できる磁気記
録媒体を提供すること。 【解決手段】 非磁性の基板の上に、磁気記録層、炭素
系保護膜及び潤滑剤層を有する磁気記録媒体において、
炭素系保護膜の炭素間結合としてSP3結合とSP2結合
が混在しており、該保護膜の表層部分において、SP2
結合の量がSP3結合の量よりも大であるように構成す
る。
その保護膜に対する潤滑剤の付着力を強化できる磁気記
録媒体を提供すること。 【解決手段】 非磁性の基板の上に、磁気記録層、炭素
系保護膜及び潤滑剤層を有する磁気記録媒体において、
炭素系保護膜の炭素間結合としてSP3結合とSP2結合
が混在しており、該保護膜の表層部分において、SP2
結合の量がSP3結合の量よりも大であるように構成す
る。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は磁気記録媒体に関
し、さらに詳しく述べると、機械的強度が高く、それに
対する潤滑剤の付着力が強い炭素系保護膜を備えた磁気
記録媒体に関する。
し、さらに詳しく述べると、機械的強度が高く、それに
対する潤滑剤の付着力が強い炭素系保護膜を備えた磁気
記録媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】磁気記録媒体である磁気ディスクは、コ
ンピュータや各種の携帯情報端末、例えばモバイルパソ
コン、ゲーム機、携帯電話、ディジタルカメラ、車載ナ
ビゲーション等の外部記憶装置として一般に広く使用さ
れており、また、近年の情報量の増大に伴い、一層の高
密度化、大容量化が進行している。
ンピュータや各種の携帯情報端末、例えばモバイルパソ
コン、ゲーム機、携帯電話、ディジタルカメラ、車載ナ
ビゲーション等の外部記憶装置として一般に広く使用さ
れており、また、近年の情報量の増大に伴い、一層の高
密度化、大容量化が進行している。
【0003】従来の磁気ディスクは、一般的に、非磁性
の硬質基板の上に、良好な磁気特性を示す磁気記録層
(磁性層ともいう)を設けた構造を有している。磁気記
録層は、通常、コバルト系の合金を薄膜で積層すること
によって形成されている。また、かかる磁性合金層は、
耐久性、耐蝕性、耐衝撃性などが著しく劣るので、磁気
ヘッドの接触やその摺動による摩擦、磨耗に原因して、
あるいは湿気の吸着による腐食の発生に原因して、磁気
特性の劣化や、機械的又は化学的損傷が生じ易い。
の硬質基板の上に、良好な磁気特性を示す磁気記録層
(磁性層ともいう)を設けた構造を有している。磁気記
録層は、通常、コバルト系の合金を薄膜で積層すること
によって形成されている。また、かかる磁性合金層は、
耐久性、耐蝕性、耐衝撃性などが著しく劣るので、磁気
ヘッドの接触やその摺動による摩擦、磨耗に原因して、
あるいは湿気の吸着による腐食の発生に原因して、磁気
特性の劣化や、機械的又は化学的損傷が生じ易い。
【0004】磁気記録層における上述のような問題を解
消するため、現在、磁気記録層の上に、一般に耐熱性、
耐蝕性、耐磨耗性等に優れた炭素系材料からなる保護膜
を設けることが一般的に行われている。この保護膜は、
炭素系保護膜と呼ばれており、スパッタリング法、化学
的気相成長法(以下、「CVD法」と呼ぶ)、イオンビ
ーム堆積法、イオンビーム蒸着法などを使用して成膜さ
れている。また、この炭素系保護膜に対して高められた
耐久性を付与するため、その炭素系保護膜に水素や窒素
を添加することも行われている。
消するため、現在、磁気記録層の上に、一般に耐熱性、
耐蝕性、耐磨耗性等に優れた炭素系材料からなる保護膜
を設けることが一般的に行われている。この保護膜は、
炭素系保護膜と呼ばれており、スパッタリング法、化学
的気相成長法(以下、「CVD法」と呼ぶ)、イオンビ
ーム堆積法、イオンビーム蒸着法などを使用して成膜さ
れている。また、この炭素系保護膜に対して高められた
耐久性を付与するため、その炭素系保護膜に水素や窒素
を添加することも行われている。
【0005】さらに、炭素系保護膜の直上には、液体の
潤滑剤、例えばフルオロカーボン系の液体潤滑剤が、デ
ィップコート法、スピンコート法、スプレーコート法な
どで塗布、付着されている。かかる潤滑剤層を形成する
ことで、磁気ディスクの耐久性、耐蝕性を図ることがで
き、また、磁気ヘッドの円滑な浮上も図ることができ
る。
潤滑剤、例えばフルオロカーボン系の液体潤滑剤が、デ
ィップコート法、スピンコート法、スプレーコート法な
どで塗布、付着されている。かかる潤滑剤層を形成する
ことで、磁気ディスクの耐久性、耐蝕性を図ることがで
き、また、磁気ヘッドの円滑な浮上も図ることができ
る。
【0006】ところで、炭素系保護膜の上述のような優
れた特性は、その膜中に含まれる炭素間結合に大きく由
来していることが知られている。すなわち、炭素系保護
膜の炭素間結合は、ダイヤモンド的であるSP3結合と
グラファイト的であるSP2結合の両者が混在している
状態であるが、SP2/SP3で表される存在量の比がよ
り小さいほど、より高硬度となることが知られている。
したがって、SP3結合性の高い保護膜を形成すること
は、その機械的強度、ひいては磁気ディスクの機械的強
度を向上させる点で有効である。実際、ダイヤモンドラ
イクカーボン(DLC)と称される高硬度の炭素系保護膜
が、広く用いられている。
れた特性は、その膜中に含まれる炭素間結合に大きく由
来していることが知られている。すなわち、炭素系保護
膜の炭素間結合は、ダイヤモンド的であるSP3結合と
グラファイト的であるSP2結合の両者が混在している
状態であるが、SP2/SP3で表される存在量の比がよ
り小さいほど、より高硬度となることが知られている。
したがって、SP3結合性の高い保護膜を形成すること
は、その機械的強度、ひいては磁気ディスクの機械的強
度を向上させる点で有効である。実際、ダイヤモンドラ
イクカーボン(DLC)と称される高硬度の炭素系保護膜
が、広く用いられている。
【0007】しかしながら、SP2/SP3比が小さい炭
素系保護膜の場合、それに対する潤滑剤の付着が十分で
ないという問題をかかえている。これは、潤滑剤がその
末端に各種の極性基を有しているので、表面安定な炭素
系保護膜の上に乗りにくいからである。したがって、磁
気ディスクを長期間にわたって使いつづけると、ディス
クの回転に伴う遠心力により潤滑剤がディスクの円周部
へ移行せしめられたり、飛散せしめられたりする。すな
わち、炭素系保護膜から潤滑剤層が除かれた状態となる
ので、磁気記録層が損傷や破損を被ったり、磁気ヘッド
がクラッシュを生じたりする。
素系保護膜の場合、それに対する潤滑剤の付着が十分で
ないという問題をかかえている。これは、潤滑剤がその
末端に各種の極性基を有しているので、表面安定な炭素
系保護膜の上に乗りにくいからである。したがって、磁
気ディスクを長期間にわたって使いつづけると、ディス
クの回転に伴う遠心力により潤滑剤がディスクの円周部
へ移行せしめられたり、飛散せしめられたりする。すな
わち、炭素系保護膜から潤滑剤層が除かれた状態となる
ので、磁気記録層が損傷や破損を被ったり、磁気ヘッド
がクラッシュを生じたりする。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、上記
した従来の技術の問題点を解消して、炭素系保護膜の優
れた特性、特に耐久性(機械的強度など)を保持したま
ま、その保護膜に対する潤滑剤の付着力を強化し、かつ
その付着力を長期間にわたって安定に保持できるよう
な、改良された磁気記録媒体を提供することにある。
した従来の技術の問題点を解消して、炭素系保護膜の優
れた特性、特に耐久性(機械的強度など)を保持したま
ま、その保護膜に対する潤滑剤の付着力を強化し、かつ
その付着力を長期間にわたって安定に保持できるよう
な、改良された磁気記録媒体を提供することにある。
【0009】本発明の上記した目的及びその他の目的
は、以下の詳細な説明から容易に理解することができる
であろう。
は、以下の詳細な説明から容易に理解することができる
であろう。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記した
目的を達成するために鋭意研究した結果、非磁性の基板
の上に磁気記録層、炭素系保護膜、そして潤滑剤層を順
次積層して磁気記録媒体を製造するに当たって、炭素系
保護膜の炭素間結合の分布を調整することが有効である
という知見を得、本発明を完成した。
目的を達成するために鋭意研究した結果、非磁性の基板
の上に磁気記録層、炭素系保護膜、そして潤滑剤層を順
次積層して磁気記録媒体を製造するに当たって、炭素系
保護膜の炭素間結合の分布を調整することが有効である
という知見を得、本発明を完成した。
【0011】本発明は、したがって、非磁性の基板の上
に、磁気記録層、炭素系保護膜及び潤滑剤層が順次積層
された磁気記録媒体において、前記炭素系保護膜の炭素
間結合としてSP3結合とSP2結合が混在しており、該
保護膜の表層部分において、前記SP2結合の量が前記
SP3結合の量よりも大であることを特徴とする磁気記
録媒体にある。
に、磁気記録層、炭素系保護膜及び潤滑剤層が順次積層
された磁気記録媒体において、前記炭素系保護膜の炭素
間結合としてSP3結合とSP2結合が混在しており、該
保護膜の表層部分において、前記SP2結合の量が前記
SP3結合の量よりも大であることを特徴とする磁気記
録媒体にある。
【0012】磁気記録媒体で使用される炭素系保護膜に
おいて、その保護膜の潤滑剤層との界面領域に、グラフ
ァイト的結合であるSP2結合が多く存在するように構
成すると、SP3結合には存在しないπ電子によって、
保護膜と潤滑剤層との相互作用が強まり、結果として、
保護膜に対する潤滑剤層の付着力が増大する。また、本
発明のこのような効果やその他の効果は、SP2結合量
の分布に傾斜があり、炭素系保護膜の磁気記録層の側か
ら潤滑剤層の側に向けてSP2結合量が段階的に増加し
ている場合に、あるいはSP2結合量の分布に傾斜があ
り、炭素系保護膜の磁気記録層の側から潤滑剤層の側に
向けてSP2結合量が連続的に増加している場合に、と
りわけ顕著となる。
おいて、その保護膜の潤滑剤層との界面領域に、グラフ
ァイト的結合であるSP2結合が多く存在するように構
成すると、SP3結合には存在しないπ電子によって、
保護膜と潤滑剤層との相互作用が強まり、結果として、
保護膜に対する潤滑剤層の付着力が増大する。また、本
発明のこのような効果やその他の効果は、SP2結合量
の分布に傾斜があり、炭素系保護膜の磁気記録層の側か
ら潤滑剤層の側に向けてSP2結合量が段階的に増加し
ている場合に、あるいはSP2結合量の分布に傾斜があ
り、炭素系保護膜の磁気記録層の側から潤滑剤層の側に
向けてSP2結合量が連続的に増加している場合に、と
りわけ顕著となる。
【0013】さらに、本発明の磁気記録媒体では、その
炭素系保護膜において電子エネルギー損失分光法(EE
LS分析法)によりπ*ピーク及びσ*ピークを測定した
場合に、両者の積分強度比Iπ*/Iσ*が、保護膜の表
層部分(潤滑剤層に接する領域)において0.100も
しくはそれ以上であることが好ましい。さらにまた、本
発明の磁気記録媒体では、その炭素系保護膜が2層もし
くはそれ以上の多層構造を有しているとともに、潤滑剤
層に接する上層の保護膜のSP 2結合量が、その保護膜
よりも下層に位置する保護膜のSP2結合量よりも大で
あることが好ましい。
炭素系保護膜において電子エネルギー損失分光法(EE
LS分析法)によりπ*ピーク及びσ*ピークを測定した
場合に、両者の積分強度比Iπ*/Iσ*が、保護膜の表
層部分(潤滑剤層に接する領域)において0.100も
しくはそれ以上であることが好ましい。さらにまた、本
発明の磁気記録媒体では、その炭素系保護膜が2層もし
くはそれ以上の多層構造を有しているとともに、潤滑剤
層に接する上層の保護膜のSP 2結合量が、その保護膜
よりも下層に位置する保護膜のSP2結合量よりも大で
あることが好ましい。
【0014】
【発明の実施の形態】本発明による磁気記録媒体は、炭
素系保護膜における上記しかつ以下において詳述する相
違点を除いて、磁気記録媒体として一般的に知られてい
る層構成を有することができ、よって、以下、図1の基
本構成を参照して本発明の磁気記録媒体を説明する。
素系保護膜における上記しかつ以下において詳述する相
違点を除いて、磁気記録媒体として一般的に知られてい
る層構成を有することができ、よって、以下、図1の基
本構成を参照して本発明の磁気記録媒体を説明する。
【0015】図1の磁気記録媒体10は、非磁性の基板
1の上に硬化層2を形成した後、その上にさらに、下地
層3、磁気記録層4、炭素系保護膜5、そして潤滑剤層
6を順次形成している。炭素系保護膜5は、単層構造で
も、多層構造でもよいけれども、図示の例では、2層構
造が採用されている。すなわち、炭素系保護膜5は、下
層保護膜5aと上層保護膜5bとから構成されている。
磁気記録媒体10は、本発明の範囲内において種々の変
更や改良、例えば、磁気記録層4の多層化、任意の位置
における中間層の追加などを行うことができる。実際、
現用の磁気記録媒体の層構成は、図示したものよりも非
常に複雑になっている。また、磁気記録媒体10は、通
常ディスクの形態をとるけれども、必要ならば、カード
等の形態であってもよい。
1の上に硬化層2を形成した後、その上にさらに、下地
層3、磁気記録層4、炭素系保護膜5、そして潤滑剤層
6を順次形成している。炭素系保護膜5は、単層構造で
も、多層構造でもよいけれども、図示の例では、2層構
造が採用されている。すなわち、炭素系保護膜5は、下
層保護膜5aと上層保護膜5bとから構成されている。
磁気記録媒体10は、本発明の範囲内において種々の変
更や改良、例えば、磁気記録層4の多層化、任意の位置
における中間層の追加などを行うことができる。実際、
現用の磁気記録媒体の層構成は、図示したものよりも非
常に複雑になっている。また、磁気記録媒体10は、通
常ディスクの形態をとるけれども、必要ならば、カード
等の形態であってもよい。
【0016】本発明の磁気記録媒体において、非磁性の
基板は、この技術分野において常用のいろいろな材料か
ら形成することができる。適当な非磁性の基板として
は、以下に列挙するものに限定されるわけではないけれ
ども、例えば、アルミニウム又はアルミニウム合金の基
板、ガラス又は強化ガラスの基板、表面酸化膜(例えば
シリコン酸化膜)を有するシリコン基板、SiC基板、
カーボン基板、プラスチック基板、セラミック基板など
を挙げることができる。特に、アルミニウム又はアルミ
ニウム合金の基板やガラス又は強化ガラスの基板を有利
に使用することができる。
基板は、この技術分野において常用のいろいろな材料か
ら形成することができる。適当な非磁性の基板として
は、以下に列挙するものに限定されるわけではないけれ
ども、例えば、アルミニウム又はアルミニウム合金の基
板、ガラス又は強化ガラスの基板、表面酸化膜(例えば
シリコン酸化膜)を有するシリコン基板、SiC基板、
カーボン基板、プラスチック基板、セラミック基板など
を挙げることができる。特に、アルミニウム又はアルミ
ニウム合金の基板やガラス又は強化ガラスの基板を有利
に使用することができる。
【0017】非磁性の基板の上には、必要に応じて、非
磁性の金属の薄膜が硬化層として積層される。金属硬化
層の存在によって、基板の機械的強度を高めることがで
きるからである。通常、NiPのめっき層などが、硬化
層として有利に使用される。また、かかる硬化層を備え
た非磁性の基板は、この分野において非磁性の基体とも
呼ばれている。
磁性の金属の薄膜が硬化層として積層される。金属硬化
層の存在によって、基板の機械的強度を高めることがで
きるからである。通常、NiPのめっき層などが、硬化
層として有利に使用される。また、かかる硬化層を備え
た非磁性の基板は、この分野において非磁性の基体とも
呼ばれている。
【0018】非磁性の基板あるいは非磁性の基体の表面
には、通常、磁気記録媒体に対する磁気ヘッドの吸着を
防ぐために、「テクスチャ」と呼ばれるミクロな凹凸
(通常、0.01μmのオーダ)を加工するのが好まし
い。テクスチャ加工は、研磨テープやスラリー(遊離砥
粒)を用いて行うことができる。非磁性の基板の上の下
地層は、磁気記録媒体において常用の一般的な非磁性金
属材料から形成することができ、好ましくは、クロムを
主成分とする非磁性金属材料から形成することができ
る。下地層は、単層であっても2層もしくはそれ以上の
多層構造であってもよい。多層構造の下地層の場合、そ
れぞれの層の組成は任意に変更することができる。かか
る下地層は、特に、クロムのみを主成分とする金属材料
あるいはクロム及びモリブデンを主成分とする金属材料
から有利に構成することができる。例えば、磁気記録媒
体の磁気記録層に白金が含まれるような場合には、クロ
ム及びモリブデンを主成分とする金属材料から下地層を
構成するのが好ましい。すなわち、モリブデンの添加に
よって、格子面間隔を広げることができ、また、磁気記
録層の組成、特に白金量によって広がる磁気記録層の格
子面間隔に対して下地層の格子面間隔を近くしてやるこ
とにより、磁気記録層(CoCr系合金)のC軸の面内
への優先配向を促すことができるからである。適当な下
地層の材料の例として、例えば、Cr、CrW、Cr
V、CrTi、CrMoなどを挙げることができる。こ
のような下地層は、好ましくは、例えばマグネトロンス
パッタ法などのスパッタ法により、常用の成膜条件によ
り形成することができる。特に、保磁力を高めるため、
DC負バイアスの印加下にスパッタ法を実施するのが好
ましい。適当な成膜条件として、例えば、約100〜3
00℃の成膜温度、約1〜10mTorrのArガス圧
力、そして約100〜300VのDC負バイアスを挙げ
ることができる。また、必要に応じて、スパッタ法に代
えて、他の成膜法、例えば蒸着法、イオンビームスパッ
タ法等を使用してもよい。かかる下地層の膜厚は、種々
のファクタに応じて広い範囲で変更することができる。
下地層の膜厚は、この範囲に限定されるものではないけ
れども、S/N比を高めるため、一般的には5〜60nm
の範囲である。下地層の膜厚が5nmを下回ると、磁気特
性が十分に発現しないおそれがあり、また、反対に60
nmを上回ると、ノイズが増大するおそれがある。
には、通常、磁気記録媒体に対する磁気ヘッドの吸着を
防ぐために、「テクスチャ」と呼ばれるミクロな凹凸
(通常、0.01μmのオーダ)を加工するのが好まし
い。テクスチャ加工は、研磨テープやスラリー(遊離砥
粒)を用いて行うことができる。非磁性の基板の上の下
地層は、磁気記録媒体において常用の一般的な非磁性金
属材料から形成することができ、好ましくは、クロムを
主成分とする非磁性金属材料から形成することができ
る。下地層は、単層であっても2層もしくはそれ以上の
多層構造であってもよい。多層構造の下地層の場合、そ
れぞれの層の組成は任意に変更することができる。かか
る下地層は、特に、クロムのみを主成分とする金属材料
あるいはクロム及びモリブデンを主成分とする金属材料
から有利に構成することができる。例えば、磁気記録媒
体の磁気記録層に白金が含まれるような場合には、クロ
ム及びモリブデンを主成分とする金属材料から下地層を
構成するのが好ましい。すなわち、モリブデンの添加に
よって、格子面間隔を広げることができ、また、磁気記
録層の組成、特に白金量によって広がる磁気記録層の格
子面間隔に対して下地層の格子面間隔を近くしてやるこ
とにより、磁気記録層(CoCr系合金)のC軸の面内
への優先配向を促すことができるからである。適当な下
地層の材料の例として、例えば、Cr、CrW、Cr
V、CrTi、CrMoなどを挙げることができる。こ
のような下地層は、好ましくは、例えばマグネトロンス
パッタ法などのスパッタ法により、常用の成膜条件によ
り形成することができる。特に、保磁力を高めるため、
DC負バイアスの印加下にスパッタ法を実施するのが好
ましい。適当な成膜条件として、例えば、約100〜3
00℃の成膜温度、約1〜10mTorrのArガス圧
力、そして約100〜300VのDC負バイアスを挙げ
ることができる。また、必要に応じて、スパッタ法に代
えて、他の成膜法、例えば蒸着法、イオンビームスパッ
タ法等を使用してもよい。かかる下地層の膜厚は、種々
のファクタに応じて広い範囲で変更することができる。
下地層の膜厚は、この範囲に限定されるものではないけ
れども、S/N比を高めるため、一般的には5〜60nm
の範囲である。下地層の膜厚が5nmを下回ると、磁気特
性が十分に発現しないおそれがあり、また、反対に60
nmを上回ると、ノイズが増大するおそれがある。
【0019】本発明の磁気記録媒体は、必要に応じて、
非磁性の基板あるいは非磁性の基体とその上方の前記下
地層との中間に、チタンを主成分とする金属材料からな
る追加の下地層、好ましくはTi薄膜を有していてもよ
い。このような中間層は、両者の結合関係をより向上さ
せるであろう。本発明の磁気記録媒体において、非磁性
の下地層の上に形成されるべき磁気記録層は、下地層と
同様に、磁気記録媒体において常用の一般的な磁気記録
層から形成することができる。磁気記録層は、単層であ
ってもよく、2層もしくはそれ以上の多層構造であって
もよい。多層構造の磁気記録層の場合、それぞれの磁気
記録層の組成は同一もしくは異なっていてもよく、ま
た、必要に応じて、磁気記録層の間に中間層を介在させ
て、磁気記録特性の向上などを図ってもよい。
非磁性の基板あるいは非磁性の基体とその上方の前記下
地層との中間に、チタンを主成分とする金属材料からな
る追加の下地層、好ましくはTi薄膜を有していてもよ
い。このような中間層は、両者の結合関係をより向上さ
せるであろう。本発明の磁気記録媒体において、非磁性
の下地層の上に形成されるべき磁気記録層は、下地層と
同様に、磁気記録媒体において常用の一般的な磁気記録
層から形成することができる。磁気記録層は、単層であ
ってもよく、2層もしくはそれ以上の多層構造であって
もよい。多層構造の磁気記録層の場合、それぞれの磁気
記録層の組成は同一もしくは異なっていてもよく、ま
た、必要に応じて、磁気記録層の間に中間層を介在させ
て、磁気記録特性の向上などを図ってもよい。
【0020】例えば、磁気記録層は、コバルト合金層か
ら有利に形成することができる。例えば、磁気記録層
は、それが単層構造を有している場合、コバルトを主成
分として含有するとともに、14〜23at%のクロム
と、1〜20at%の白金を含むことができる。また、
かかるコバルト合金に、タングステン、カーボンなどを
添加して、四元系合金又は五元系合金としてもよい。
ら有利に形成することができる。例えば、磁気記録層
は、それが単層構造を有している場合、コバルトを主成
分として含有するとともに、14〜23at%のクロム
と、1〜20at%の白金を含むことができる。また、
かかるコバルト合金に、タングステン、カーボンなどを
添加して、四元系合金又は五元系合金としてもよい。
【0021】さらに具体的に説明すると、単層構造の磁
気記録層又は2層構造の上層磁気記録層の五元系合金
は、例えば、次式により表される組成範囲: Cobal.−Cr14-23 −Pt1-20−Wx −Cy (上式中、bal.はバランス量を意味し、そしてx+yは
1〜7at%である)を有することができる。このよう
に、磁気記録層をCoCrPt合金から構成し、これに
W及びCの両方を添加し、さらに層構成や成膜プロセス
を最適化することにより、ノイズの大幅な低減を図るこ
とができ、したがって、高いS/N比が得られ、よっ
て、高密度記録媒体を具現することができる。
気記録層又は2層構造の上層磁気記録層の五元系合金
は、例えば、次式により表される組成範囲: Cobal.−Cr14-23 −Pt1-20−Wx −Cy (上式中、bal.はバランス量を意味し、そしてx+yは
1〜7at%である)を有することができる。このよう
に、磁気記録層をCoCrPt合金から構成し、これに
W及びCの両方を添加し、さらに層構成や成膜プロセス
を最適化することにより、ノイズの大幅な低減を図るこ
とができ、したがって、高いS/N比が得られ、よっ
て、高密度記録媒体を具現することができる。
【0022】また、2層構造の磁気記録層において、そ
の上層磁気記録層は、例えば、次式により表される組成
範囲: Cobal.−Cr13-21 −Pt1-20−Tax −Nby (上式中、bal.はバランス量を意味し、そしてx+yは
1〜7at%である)を有することができる。このよう
な場合に、下層磁気記録層の五元系合金において、タン
タル及びニオブの添加量は、同等もしくはほぼ同等であ
りかつ合計量が1〜7at%であることが好ましい。一
例を示すと、この下層磁気記録層を、マグネトロンスパ
ッタ装置を使用して、200℃以上の成膜温度で、−8
0〜−400V程度のバイアス電圧を印加して成膜した
とすると、例えばCo74Cr17Pt 5 Ta2 Nb2 媒体
の磁気特性は、tBr=100Gμm 、Hc=2500
Oe、S=0.8、S* =0.8の最適値となる。
の上層磁気記録層は、例えば、次式により表される組成
範囲: Cobal.−Cr13-21 −Pt1-20−Tax −Nby (上式中、bal.はバランス量を意味し、そしてx+yは
1〜7at%である)を有することができる。このよう
な場合に、下層磁気記録層の五元系合金において、タン
タル及びニオブの添加量は、同等もしくはほぼ同等であ
りかつ合計量が1〜7at%であることが好ましい。一
例を示すと、この下層磁気記録層を、マグネトロンスパ
ッタ装置を使用して、200℃以上の成膜温度で、−8
0〜−400V程度のバイアス電圧を印加して成膜した
とすると、例えばCo74Cr17Pt 5 Ta2 Nb2 媒体
の磁気特性は、tBr=100Gμm 、Hc=2500
Oe、S=0.8、S* =0.8の最適値となる。
【0023】上述のように、下層磁気記録層に極めてノ
イズの低いCo74Cr17Pt5 Ta 2 Nb2 を用い、さ
らにその上層に、分解能に優れ、ノイズも抑制されたC
oba l.−Cr14-23 −Pt1-20−Wx −Cy を用いるこ
とにより、高分解能、低ノイズな媒体を作製することが
できる。本発明の磁気記録媒体において、その磁気記録
層は、単層構造及び2層構造にかかわりなく、30〜1
80Gμm のtBr(磁気記録層の膜厚tと残留磁化密
度Brの積)を有していることが好ましい。特に、単層
構造の磁気記録層は、50〜180Gμm のtBrを有
していることが好ましく、また、2層構造の磁気記録層
は、30〜160Gμm のtBrを有していることが好
ましい。本発明の磁気記録層は、従来の磁気記録層に比
較して低Brに構成したことにより、特にMRヘッドを
はじめとした磁気抵抗効果型ヘッド用として最適であ
る。
イズの低いCo74Cr17Pt5 Ta 2 Nb2 を用い、さ
らにその上層に、分解能に優れ、ノイズも抑制されたC
oba l.−Cr14-23 −Pt1-20−Wx −Cy を用いるこ
とにより、高分解能、低ノイズな媒体を作製することが
できる。本発明の磁気記録媒体において、その磁気記録
層は、単層構造及び2層構造にかかわりなく、30〜1
80Gμm のtBr(磁気記録層の膜厚tと残留磁化密
度Brの積)を有していることが好ましい。特に、単層
構造の磁気記録層は、50〜180Gμm のtBrを有
していることが好ましく、また、2層構造の磁気記録層
は、30〜160Gμm のtBrを有していることが好
ましい。本発明の磁気記録層は、従来の磁気記録層に比
較して低Brに構成したことにより、特にMRヘッドを
はじめとした磁気抵抗効果型ヘッド用として最適であ
る。
【0024】非磁性基板上に下地層を介して設けられる
磁気記録層は、好ましくは、スパッタ法により、特定の
成膜条件下で有利に形成することができる。特に、保磁
力を高めるため、DC負バイアスの印加下にスパッタ法
を実施するのが好ましい。スパッタ法としては、上記し
た下地層の成膜と同様、例えばマグネトロンスパッタ法
などを使用することができる。適当な成膜条件として、
例えば、約100〜350℃の成膜温度、好ましくは約
200〜320℃の温度、特に好ましくは250℃前後
の温度、約1〜10mTorrのArガス圧力、そして
約80〜400VのDC負バイアスを挙げることができ
る。ここで、約350℃を上回る成膜温度は、本来非磁
性であるべき基板において磁性を発現する可能性がある
ので、その使用を避けることが望ましい。また、必要に
応じて、スパッタ法に代えて、他の成膜法、例えば蒸着
法、イオンビームスパッタ法等を使用してもよい。磁気
記録層の形成の好ましい一例を示すと、非磁性基板がN
iPめっき付きのアルミニウム基板である場合、前記磁
気記録層を、スパッタ法で、DC負バイアスの印加下
に、約220〜320℃の成膜温度で、上記の合金から
有利に形成することができる。
磁気記録層は、好ましくは、スパッタ法により、特定の
成膜条件下で有利に形成することができる。特に、保磁
力を高めるため、DC負バイアスの印加下にスパッタ法
を実施するのが好ましい。スパッタ法としては、上記し
た下地層の成膜と同様、例えばマグネトロンスパッタ法
などを使用することができる。適当な成膜条件として、
例えば、約100〜350℃の成膜温度、好ましくは約
200〜320℃の温度、特に好ましくは250℃前後
の温度、約1〜10mTorrのArガス圧力、そして
約80〜400VのDC負バイアスを挙げることができ
る。ここで、約350℃を上回る成膜温度は、本来非磁
性であるべき基板において磁性を発現する可能性がある
ので、その使用を避けることが望ましい。また、必要に
応じて、スパッタ法に代えて、他の成膜法、例えば蒸着
法、イオンビームスパッタ法等を使用してもよい。磁気
記録層の形成の好ましい一例を示すと、非磁性基板がN
iPめっき付きのアルミニウム基板である場合、前記磁
気記録層を、スパッタ法で、DC負バイアスの印加下
に、約220〜320℃の成膜温度で、上記の合金から
有利に形成することができる。
【0025】本発明の磁気記録媒体は、磁気記録層の上
に、それを保護する炭素系保護膜を備える。炭素系保護
膜は、通常、カーボンの単独から、あるいはカーボン化
合物、例えばWC、SiC、B4 C、水素含有Cなどか
ら、単層で、SP3結合とSP2結合が混在しており、S
P2結合の量が、保護膜の表層部分においてSP3結合の
量よりも多量になるように、形成される。場合によって
は、かかるカーボンあるいはカーボン化合物中に、窒素
などがドープされていてもよい。
に、それを保護する炭素系保護膜を備える。炭素系保護
膜は、通常、カーボンの単独から、あるいはカーボン化
合物、例えばWC、SiC、B4 C、水素含有Cなどか
ら、単層で、SP3結合とSP2結合が混在しており、S
P2結合の量が、保護膜の表層部分においてSP3結合の
量よりも多量になるように、形成される。場合によって
は、かかるカーボンあるいはカーボン化合物中に、窒素
などがドープされていてもよい。
【0026】炭素系保護膜は、上記したような要件が満
たされる限り、多層で形成されてもよい。多層構造の炭
素系保護膜を形成する場合には、SP2結合の量が、上
層で多く、下層で少なくなるように配慮することが好ま
しい。上層及び下層の保護膜は、通常、上記したような
カーボン又はカーボン化合物を任意に組み合わせて形成
することができる。
たされる限り、多層で形成されてもよい。多層構造の炭
素系保護膜を形成する場合には、SP2結合の量が、上
層で多く、下層で少なくなるように配慮することが好ま
しい。上層及び下層の保護膜は、通常、上記したような
カーボン又はカーボン化合物を任意に組み合わせて形成
することができる。
【0027】炭素系保護膜は、それが単層構造あるいは
多層構造のいずれであろうとも、磁気記録媒体に一般的
に使用されているようないろいろな膜厚を有することが
できる。炭素系保護膜の膜厚は、通常、50nm以下であ
り、好ましくは1〜20nmであり、さらに好ましくは5
〜10nmである。本発明の炭素系保護膜の膜厚は、それ
が50nm以下の薄膜の時でも十分にその作用効果を発揮
することができ、また、従来の技術では耐久性の維持が
難しいとされてきた5nmもしくはそれ以下の膜厚の時で
も、高い耐久性を長期にわたって維持することができ
る。もちろん、かかる薄膜の形であっても、液体潤滑剤
とのすぐれた密着性を、炭素系保護膜は示すことができ
る。なお、炭素系保護膜の膜厚が1nmを下回ると、その
特性が経時的に劣化したり、連続した膜が得られないと
いった問題が発生する。また、炭素系保護膜は、もしも
それが2層もしくはそれ以上の多層構造を有する場合、
それぞれの層の特性のバランスを考慮して、最適な膜厚
を選択することができる。
多層構造のいずれであろうとも、磁気記録媒体に一般的
に使用されているようないろいろな膜厚を有することが
できる。炭素系保護膜の膜厚は、通常、50nm以下であ
り、好ましくは1〜20nmであり、さらに好ましくは5
〜10nmである。本発明の炭素系保護膜の膜厚は、それ
が50nm以下の薄膜の時でも十分にその作用効果を発揮
することができ、また、従来の技術では耐久性の維持が
難しいとされてきた5nmもしくはそれ以下の膜厚の時で
も、高い耐久性を長期にわたって維持することができ
る。もちろん、かかる薄膜の形であっても、液体潤滑剤
とのすぐれた密着性を、炭素系保護膜は示すことができ
る。なお、炭素系保護膜の膜厚が1nmを下回ると、その
特性が経時的に劣化したり、連続した膜が得られないと
いった問題が発生する。また、炭素系保護膜は、もしも
それが2層もしくはそれ以上の多層構造を有する場合、
それぞれの層の特性のバランスを考慮して、最適な膜厚
を選択することができる。
【0028】本発明の炭素系保護膜において、その優れ
た耐久性とそれに対する潤滑剤の付着力は、いろいろな
方法で評価することができる。例えば、炭素系保護膜の
耐久性は、ピンオンディスク摺動試験法を用いて適正に
表すことができる。ピンオンディスク摺動試験法は、磁
気記録媒体の上に球状のAl2O3−TiC製ピン(直径
2mm)を荷重10gfで載置し、回転数600rpmで磁気
記録媒体を回転させて実施する。炭素系保護膜の表面に
おいて破断が発生した時点で媒体の回転を中止し、その
時のパス回転数(回)を評価する。本発明の炭素系保護
膜では、予想もさらなかったことに、パス回転数が10
000回を超えても、保護膜の破壊が発生しない。
た耐久性とそれに対する潤滑剤の付着力は、いろいろな
方法で評価することができる。例えば、炭素系保護膜の
耐久性は、ピンオンディスク摺動試験法を用いて適正に
表すことができる。ピンオンディスク摺動試験法は、磁
気記録媒体の上に球状のAl2O3−TiC製ピン(直径
2mm)を荷重10gfで載置し、回転数600rpmで磁気
記録媒体を回転させて実施する。炭素系保護膜の表面に
おいて破断が発生した時点で媒体の回転を中止し、その
時のパス回転数(回)を評価する。本発明の炭素系保護
膜では、予想もさらなかったことに、パス回転数が10
000回を超えても、保護膜の破壊が発生しない。
【0029】また、炭素系保護膜に対する潤滑剤の付着
力は、その保護膜の純水の接触角から簡易に評価するこ
とができる。本発明の炭素系保護膜の純水に対する接触
角は、成膜後30分以内で測定した時、好ましいこと
に、50°以下である。純水に対する接触角が50°を
上回るようになると、炭素系保護膜の液体潤滑剤に対す
る吸着性が低下し、磁気記録媒体の寿命が大幅に低下す
る。
力は、その保護膜の純水の接触角から簡易に評価するこ
とができる。本発明の炭素系保護膜の純水に対する接触
角は、成膜後30分以内で測定した時、好ましいこと
に、50°以下である。純水に対する接触角が50°を
上回るようになると、炭素系保護膜の液体潤滑剤に対す
る吸着性が低下し、磁気記録媒体の寿命が大幅に低下す
る。
【0030】本発明の炭素系保護膜は、上記したよう特
定の炭素系保護膜が得られる限りにおいて、任意の成膜
法に従って形成することができる。適当な成膜法として
は、例えば、下記のものに限定されるわけではないけれ
ども、スパッタリング法、CVD法、イオンビーム堆積
法、イオンビーム蒸着法などを挙げることができる。ま
た、必要に応じて、最近開発された技術であるFiltered
Cathodic Arc 法(FCA法)を用いてもよい。高被覆
性、高硬度の面から、CVD法などを特に有利に使用す
ることができる。
定の炭素系保護膜が得られる限りにおいて、任意の成膜
法に従って形成することができる。適当な成膜法として
は、例えば、下記のものに限定されるわけではないけれ
ども、スパッタリング法、CVD法、イオンビーム堆積
法、イオンビーム蒸着法などを挙げることができる。ま
た、必要に応じて、最近開発された技術であるFiltered
Cathodic Arc 法(FCA法)を用いてもよい。高被覆
性、高硬度の面から、CVD法などを特に有利に使用す
ることができる。
【0031】本発明の実施では、かかる成膜法の条件も
重要である。すなわち、所期の作用効果を達成するため
に、まず、得られた炭素系保護膜においてSP3結合と
SP2結合が混在するとともに、SP2結合の量が、保護
膜の表層部分においてSP3結合の量よりも大きくなる
ように、成膜条件を最適化しなければならない。成膜条
件の最適化は、当業者がよく行っているように、成膜速
度を膜厚方向に変更するなどして、容易に行うことがで
きる。
重要である。すなわち、所期の作用効果を達成するため
に、まず、得られた炭素系保護膜においてSP3結合と
SP2結合が混在するとともに、SP2結合の量が、保護
膜の表層部分においてSP3結合の量よりも大きくなる
ように、成膜条件を最適化しなければならない。成膜条
件の最適化は、当業者がよく行っているように、成膜速
度を膜厚方向に変更するなどして、容易に行うことがで
きる。
【0032】上記したようなSP3結合とSP2結合の特
徴的な分布は、いろいろに変更することができる。例え
ば、炭素系保護膜においてSP2結合量の分布に傾斜を
もたせるとともに、その際、磁気記録層の側から潤滑剤
層の側に向けてSP2結合量が段階的に増加しているよ
うに構成してもよく、さもなければ、磁気記録層の側か
ら潤滑剤層の側に向けてSP2結合量が連続的に増加し
ているように構成してもよい。SP2結合量の段階的な
増加も、連続的な増加も、成膜速度を膜厚方向に変更す
る際に、原料組成や成膜のタイミングをコントロールす
ることによって、容易に達成できる。
徴的な分布は、いろいろに変更することができる。例え
ば、炭素系保護膜においてSP2結合量の分布に傾斜を
もたせるとともに、その際、磁気記録層の側から潤滑剤
層の側に向けてSP2結合量が段階的に増加しているよ
うに構成してもよく、さもなければ、磁気記録層の側か
ら潤滑剤層の側に向けてSP2結合量が連続的に増加し
ているように構成してもよい。SP2結合量の段階的な
増加も、連続的な増加も、成膜速度を膜厚方向に変更す
る際に、原料組成や成膜のタイミングをコントロールす
ることによって、容易に達成できる。
【0033】また、上記のようなSP3結合とSP2結合
の特徴的な分布は、炭素系保護膜を多層構造とすること
によっても、容易に達成することができる。例えば炭素
系保護膜を2層構造とし、上層の保護膜のSP2結合量
が、下層の保護膜のそれよりも大であるように、2種類
の保護膜を順次積層すればよい。本発明の磁気記録媒体
の場合、上記した炭素系保護膜の上に、潤滑剤が薄く塗
布及び含浸されているか、さもなければ、別の潤滑処理
が施されていることも、本発明で顕著な効果を得るため
に必要である。適当な潤滑剤は、フルオロカーボン樹脂
系の液体潤滑剤であり、例えば、フォンブリン(Fombli
n)、クライトックス(Krytox)などという商品名で容
易に入手可能である。かかる潤滑剤は、磁気ヘッドと磁
気記録媒体が接触して磁気記録データを破壊するヘッド
クラッシュを防止し、しかもヘッドと媒体の摺動に伴う
摩擦力を低減させ、媒体の寿命を延ばす働きがある。
の特徴的な分布は、炭素系保護膜を多層構造とすること
によっても、容易に達成することができる。例えば炭素
系保護膜を2層構造とし、上層の保護膜のSP2結合量
が、下層の保護膜のそれよりも大であるように、2種類
の保護膜を順次積層すればよい。本発明の磁気記録媒体
の場合、上記した炭素系保護膜の上に、潤滑剤が薄く塗
布及び含浸されているか、さもなければ、別の潤滑処理
が施されていることも、本発明で顕著な効果を得るため
に必要である。適当な潤滑剤は、フルオロカーボン樹脂
系の液体潤滑剤であり、例えば、フォンブリン(Fombli
n)、クライトックス(Krytox)などという商品名で容
易に入手可能である。かかる潤滑剤は、磁気ヘッドと磁
気記録媒体が接触して磁気記録データを破壊するヘッド
クラッシュを防止し、しかもヘッドと媒体の摺動に伴う
摩擦力を低減させ、媒体の寿命を延ばす働きがある。
【0034】上記したような潤滑剤層は、ディップコー
ト法、スピンコート法、スプレーコート法などの常用の
塗工法を使用して、所望とする膜厚で形成することがで
きる。潤滑剤層の膜厚は、通常、約0.1〜0.5nmの
範囲である。本発明の磁気記録媒体では、上記したよう
な必須の層及び任意に使用可能な層に加えて、この技術
分野において常用の追加の層を有していたり、さもなけ
れば、含まれる層に任意の化学処理等が施されていても
よい。
ト法、スピンコート法、スプレーコート法などの常用の
塗工法を使用して、所望とする膜厚で形成することがで
きる。潤滑剤層の膜厚は、通常、約0.1〜0.5nmの
範囲である。本発明の磁気記録媒体では、上記したよう
な必須の層及び任意に使用可能な層に加えて、この技術
分野において常用の追加の層を有していたり、さもなけ
れば、含まれる層に任意の化学処理等が施されていても
よい。
【0035】ところで、上記したような炭素系保護膜
は、磁気記録媒体の他に、磁気ヘッドやその他のデバイ
スでも保護膜として有利に応用することができる。例え
ば、磁気ヘッドに本発明の炭素系保護膜を使用する場
合、炭素系保護膜は、所望とする効果に応じて磁気ヘッ
ドの任意の位置に配置することができるけれども、下地
の保護のため、ヘッドの最上層に配置することが好まし
い。
は、磁気記録媒体の他に、磁気ヘッドやその他のデバイ
スでも保護膜として有利に応用することができる。例え
ば、磁気ヘッドに本発明の炭素系保護膜を使用する場
合、炭素系保護膜は、所望とする効果に応じて磁気ヘッ
ドの任意の位置に配置することができるけれども、下地
の保護のため、ヘッドの最上層に配置することが好まし
い。
【0036】磁気ヘッドの場合、近年における情報処理
技術の発達に伴い、コンピュータの外部記憶装置に用い
られる磁気ディスク装置に対して高密度化の要求が高ま
っていることを考慮して、従来の巻線型のインダクティ
ブ薄膜磁気ヘッドに代えて、磁界の強さに応じて電気抵
抗が変化する磁気抵抗素子を使用した磁気抵抗効果型ヘ
ッド、すなわち、MRヘッドを使用することが推奨され
る。MRヘッドは、磁性体の電気抵抗が外部磁界により
変化する磁気抵抗効果を記録媒体上の信号の再生に応用
したもので、従来のインダクティブ薄膜磁気ヘッドに較
べて数倍も大きな再生出力幅が得られること、イングク
タンスが小さいこと、大きなS/N比が期待できるこ
と、などを特徴としている。また、このMRヘッドとと
もに、異方性磁気抵抗効果を利用したAMRヘッド、巨
大磁気抵抗効果を利用したGMRヘッド、そしてその実
用タイプであるスピンバルブGMRヘッドの使用も推奨
される。本発明の炭素系保護膜は、かかる最新の磁気ヘ
ッドにおいてその威力を発揮するであろう。
技術の発達に伴い、コンピュータの外部記憶装置に用い
られる磁気ディスク装置に対して高密度化の要求が高ま
っていることを考慮して、従来の巻線型のインダクティ
ブ薄膜磁気ヘッドに代えて、磁界の強さに応じて電気抵
抗が変化する磁気抵抗素子を使用した磁気抵抗効果型ヘ
ッド、すなわち、MRヘッドを使用することが推奨され
る。MRヘッドは、磁性体の電気抵抗が外部磁界により
変化する磁気抵抗効果を記録媒体上の信号の再生に応用
したもので、従来のインダクティブ薄膜磁気ヘッドに較
べて数倍も大きな再生出力幅が得られること、イングク
タンスが小さいこと、大きなS/N比が期待できるこ
と、などを特徴としている。また、このMRヘッドとと
もに、異方性磁気抵抗効果を利用したAMRヘッド、巨
大磁気抵抗効果を利用したGMRヘッド、そしてその実
用タイプであるスピンバルブGMRヘッドの使用も推奨
される。本発明の炭素系保護膜は、かかる最新の磁気ヘ
ッドにおいてその威力を発揮するであろう。
【0037】
【実施例】引き続いて、本発明をその実施例を参照して
説明する。なお、本発明は、下記の実施例に限定される
ものではない。実施例1 磁気記録媒体の作製 下記の層構成を有する磁気ディスクを作製した。
説明する。なお、本発明は、下記の実施例に限定される
ものではない。実施例1 磁気記録媒体の作製 下記の層構成を有する磁気ディスクを作製した。
【0038】 ─────────────────── 潤滑剤層 ─────────────────── 2層構造の炭素系保護膜 ─────────────────── 磁気記録層(CoCrPtTaNb) ─────────────────── 下地層(CrMo10) ─────────────────── NiPめっき付きアルミニウム基板 ─────────────────── ドーナッツ状のアルミニウム(Al)基板の上にNiP
をめっきしてNiPめっき層を形成した後、その表面を
良く洗浄し、さらにテクスチャ処理を施した。テクスチ
ャ処理は、回転している基板の表面に研磨テープを押し
当てることで実施した。円周方向に、微細なテクスチャ
溝が形成された。
をめっきしてNiPめっき層を形成した後、その表面を
良く洗浄し、さらにテクスチャ処理を施した。テクスチ
ャ処理は、回転している基板の表面に研磨テープを押し
当てることで実施した。円周方向に、微細なテクスチャ
溝が形成された。
【0039】次いで、得られたNiP/Al基板に、D
Cマグネトロンスパッタ装置により、CrMo10(a
t%)下地層、そしてCoCrPtTaNb系磁気記録
層を順次積層した。まず、下地層の成膜前にスパッタ室
内を3×10-7Torr以下に排気し、基板温度を28
0℃に高め、Arガスを導入してスパッタ室内を5mT
orrに保持し、−200Vのバイアスを印加しなが
ら、下地層としてのCrMoを30nm厚に成膜した。さ
らに、下地層の成膜に続けて、CoCrPtTaNb膜
をそのBrtが100Gμm(27nm厚)となるように
成膜した。成膜に使用したターゲットは、CoCrター
ゲットにPt、Ta、Nbチップを配置した複合ターゲ
ットであった。
Cマグネトロンスパッタ装置により、CrMo10(a
t%)下地層、そしてCoCrPtTaNb系磁気記録
層を順次積層した。まず、下地層の成膜前にスパッタ室
内を3×10-7Torr以下に排気し、基板温度を28
0℃に高め、Arガスを導入してスパッタ室内を5mT
orrに保持し、−200Vのバイアスを印加しなが
ら、下地層としてのCrMoを30nm厚に成膜した。さ
らに、下地層の成膜に続けて、CoCrPtTaNb膜
をそのBrtが100Gμm(27nm厚)となるように
成膜した。成膜に使用したターゲットは、CoCrター
ゲットにPt、Ta、Nbチップを配置した複合ターゲ
ットであった。
【0040】上記のようにして磁気記録層を形成した
後、その上に2層構造の炭素系保護膜を次のような手法
に従って形成した。下層の炭素系保護膜をCVD法で形
成した。まず、RFプラズマCVD装置に原料ガスを導
入した。本例で使用した原料ガスは、炭化水素(メタ
ン)と放電ガス(アルゴン)の1:1の混合物である。
放電出力700W、成膜室内圧力3mТоrrの条件で
CVD法を実施したところ、DLC膜が膜厚7nmで得ら
れた。
後、その上に2層構造の炭素系保護膜を次のような手法
に従って形成した。下層の炭素系保護膜をCVD法で形
成した。まず、RFプラズマCVD装置に原料ガスを導
入した。本例で使用した原料ガスは、炭化水素(メタ
ン)と放電ガス(アルゴン)の1:1の混合物である。
放電出力700W、成膜室内圧力3mТоrrの条件で
CVD法を実施したところ、DLC膜が膜厚7nmで得ら
れた。
【0041】次いで、上層の炭素系保護膜をスパッタリ
ング法で形成した。グラファイト焼結体をターゲット
に、アルゴン及び水素を放電ガスとして使用した。放電
出力3kW、成膜室内圧力2mТоrrの条件でスパッ
タリング法を実施したところ、DLC膜が膜厚3nmで得
られた。したがって、炭素系保護膜の膜厚は、合計して
10nmであった。
ング法で形成した。グラファイト焼結体をターゲット
に、アルゴン及び水素を放電ガスとして使用した。放電
出力3kW、成膜室内圧力2mТоrrの条件でスパッ
タリング法を実施したところ、DLC膜が膜厚3nmで得
られた。したがって、炭素系保護膜の膜厚は、合計して
10nmであった。
【0042】得られた炭素系保護膜の表面極性を調べる
ため、純水による接触角をJISK6800に記載の指
針に準じて測定した。接触角は45°であり、潤滑剤の
付着が良好に行われることを証明している。また、炭素
系保護膜中の水素対炭素の濃度比をラザフォード後方散
乱法(RBS)及び水素前方散乱法(HFS)で測定し
たところ、3:7であった。このことは、本発明の効果
は、保護膜中に導入された水素(H)の量に依存してい
ないことを立証している。
ため、純水による接触角をJISK6800に記載の指
針に準じて測定した。接触角は45°であり、潤滑剤の
付着が良好に行われることを証明している。また、炭素
系保護膜中の水素対炭素の濃度比をラザフォード後方散
乱法(RBS)及び水素前方散乱法(HFS)で測定し
たところ、3:7であった。このことは、本発明の効果
は、保護膜中に導入された水素(H)の量に依存してい
ないことを立証している。
【0043】さらに、炭素系保護膜の炭素結合比を確認
するため、電子エネルギー損失分光法(EELS分析
法)によってC‐Kエッジのスペクトルを観察したとこ
ろ、図2にプロットしたようなスペクトル図が得られ
た。SP2結合に由来するπ*ピークとSP3結合に由来
するσ*ピークの積分強度比Iπ*/Iσ*を求めたとこ
ろ、磁気記録層上7nmまではIπ*/Iσ*が0.085
であったのに反して、その上方の3nmでは、Iπ*/I
σ*が0.105であった。すなわち、この炭素系保護
膜の場合、炭素間結合としてSP3結合とSP2結合が混
在しているけれども、保護膜の表層部分では、SP2結
合量がSP3結合量よりも多いということが明らかであ
る。
するため、電子エネルギー損失分光法(EELS分析
法)によってC‐Kエッジのスペクトルを観察したとこ
ろ、図2にプロットしたようなスペクトル図が得られ
た。SP2結合に由来するπ*ピークとSP3結合に由来
するσ*ピークの積分強度比Iπ*/Iσ*を求めたとこ
ろ、磁気記録層上7nmまではIπ*/Iσ*が0.085
であったのに反して、その上方の3nmでは、Iπ*/I
σ*が0.105であった。すなわち、この炭素系保護
膜の場合、炭素間結合としてSP3結合とSP2結合が混
在しているけれども、保護膜の表層部分では、SP2結
合量がSP3結合量よりも多いということが明らかであ
る。
【0044】引き続いて、上記のようにして形成した炭
素系保護膜の表面に潤滑剤を塗布し、潤滑剤層を形成し
た。本例では、イタリア・アウジモンド社製の「フォン
ブリンAM3001」(商品名)を潤滑剤として使用し
た。この潤滑剤を約0.2容量%に希釈した後、得られ
た潤滑剤溶液を用いて、浸漬時間30秒、引き上げ速度
800mm/分でディップコートを行った。潤滑剤層が
膜厚2nmで得られた。この潤滑剤層をフルオロカーボン
系溶剤、スリーエム社製の「フロリナート」(商品名)
で洗浄し、洗浄前の膜厚(初期膜厚)と洗浄後の膜厚の
比較から残膜率を求めた。残膜率は56%であり、耐溶
剤性に優れていることを証明している。
素系保護膜の表面に潤滑剤を塗布し、潤滑剤層を形成し
た。本例では、イタリア・アウジモンド社製の「フォン
ブリンAM3001」(商品名)を潤滑剤として使用し
た。この潤滑剤を約0.2容量%に希釈した後、得られ
た潤滑剤溶液を用いて、浸漬時間30秒、引き上げ速度
800mm/分でディップコートを行った。潤滑剤層が
膜厚2nmで得られた。この潤滑剤層をフルオロカーボン
系溶剤、スリーエム社製の「フロリナート」(商品名)
で洗浄し、洗浄前の膜厚(初期膜厚)と洗浄後の膜厚の
比較から残膜率を求めた。残膜率は56%であり、耐溶
剤性に優れていることを証明している。
【0045】さらに、潤滑剤塗布後の炭素系保護膜の耐
久性をピンオンディスク摺動試験法を用いて測定した。
上記のようにして作製した磁気ディスクの上に球状のA
l2O3−TiC製ピン(直径2mm)を荷重10gfで載置
し、磁気ディスクを600rpmで回転させた。保護膜
が破断するまでピンを摺動させたところ、10000周
回を超えても、保護膜は破壊しなかった。
久性をピンオンディスク摺動試験法を用いて測定した。
上記のようにして作製した磁気ディスクの上に球状のA
l2O3−TiC製ピン(直径2mm)を荷重10gfで載置
し、磁気ディスクを600rpmで回転させた。保護膜
が破断するまでピンを摺動させたところ、10000周
回を超えても、保護膜は破壊しなかった。
【0046】さらにまた、「フォンブリンAM300
1」に代えて、官能基含有の潤滑剤である「フォンブリ
ン Zdol」(商品名)を使用した場合にも、上記と
同様な満足し得る結果を得ることができた。実施例2 前記実施例1に記載の手法を繰り返したが、本例では、
前記実施例1と同一の磁気記録層を形成した後、その上
に2層構造の炭素系保護膜を次のような手法に従って形
成した。
1」に代えて、官能基含有の潤滑剤である「フォンブリ
ン Zdol」(商品名)を使用した場合にも、上記と
同様な満足し得る結果を得ることができた。実施例2 前記実施例1に記載の手法を繰り返したが、本例では、
前記実施例1と同一の磁気記録層を形成した後、その上
に2層構造の炭素系保護膜を次のような手法に従って形
成した。
【0047】まず、前記実施例1で使用したものに同一
のRFプラズマCVD装置に原料ガスを導入した。本例
で使用した原料ガスも、メタンとアルゴンの1:1の混
合物である。放電出力700W、成膜室内圧力3mТо
rrの条件でCVD法を実施したところ、DLC膜が膜
厚7nmで得られた。その後、一旦放電を止めて、再びC
VD法を実施した。メタンとアルゴンの混合比を1:4
に変更し、放電出力700W、成膜室内圧力3mТоr
rの条件を適用した。DLC膜が膜厚3nmで得られた。
したがって、炭素系保護膜の膜厚は、合計して10nmで
あった。
のRFプラズマCVD装置に原料ガスを導入した。本例
で使用した原料ガスも、メタンとアルゴンの1:1の混
合物である。放電出力700W、成膜室内圧力3mТо
rrの条件でCVD法を実施したところ、DLC膜が膜
厚7nmで得られた。その後、一旦放電を止めて、再びC
VD法を実施した。メタンとアルゴンの混合比を1:4
に変更し、放電出力700W、成膜室内圧力3mТоr
rの条件を適用した。DLC膜が膜厚3nmで得られた。
したがって、炭素系保護膜の膜厚は、合計して10nmで
あった。
【0048】得られた炭素系保護膜の特性評価を前記実
施例1と同様に実施したところ、次のような満足し得る
結果が得られた。得られた保護膜の純水による接触角を
JIS K6800に記載の指針に準じて測定したとこ
ろ、接触角は45°であった。また、保護膜中の水素対
炭素の濃度比をRBS法及びHFS法で測定したとこ
ろ、3:7であった。
施例1と同様に実施したところ、次のような満足し得る
結果が得られた。得られた保護膜の純水による接触角を
JIS K6800に記載の指針に準じて測定したとこ
ろ、接触角は45°であった。また、保護膜中の水素対
炭素の濃度比をRBS法及びHFS法で測定したとこ
ろ、3:7であった。
【0049】さらに、EELS分析法によってC‐Kエ
ッジのスペクトルを観察し、SP2結合に由来するπ*ピ
ークとSP3結合に由来するσ*ピークの積分強度比Iπ
*/Iσ*を求めたところ、磁気記録層上7nmまではIπ
*/Iσ*が0.085であったのに反して、その上方の
3nmでは、Iπ*/Iσ*が0.101であった。引き続
いて、炭素系保護膜の表面に潤滑剤、「フォンブリンA
M3001」(商品名)を塗布して膜厚2nmの潤滑剤層
を形成した。この潤滑剤層をフルオロカーボン系溶剤、
スリーエム社製の「フロリナート」(商品名)で洗浄
し、洗浄前の膜厚(初期膜厚)と洗浄後の膜厚の比較か
ら残膜率を求めたところ、49%であった。
ッジのスペクトルを観察し、SP2結合に由来するπ*ピ
ークとSP3結合に由来するσ*ピークの積分強度比Iπ
*/Iσ*を求めたところ、磁気記録層上7nmまではIπ
*/Iσ*が0.085であったのに反して、その上方の
3nmでは、Iπ*/Iσ*が0.101であった。引き続
いて、炭素系保護膜の表面に潤滑剤、「フォンブリンA
M3001」(商品名)を塗布して膜厚2nmの潤滑剤層
を形成した。この潤滑剤層をフルオロカーボン系溶剤、
スリーエム社製の「フロリナート」(商品名)で洗浄
し、洗浄前の膜厚(初期膜厚)と洗浄後の膜厚の比較か
ら残膜率を求めたところ、49%であった。
【0050】さらに、潤滑剤塗布後の炭素系保護膜の耐
久性をピンオンディスク摺動試験法を用いて測定した。
保護膜が破断するまでピンを摺動させたところ、100
00周回を超えても、保護膜は破壊しなかった。さらに
また、「フォンブリンAM3001」に代えて、官能基
含有の潤滑剤である「フォンブリン Zdol」(商品
名)を使用した場合にも、上記と同様な満足し得る結果
を得ることができた。実施例3 前記実施例1に記載の手法を繰り返したが、本例では、
前記実施例1と同一の磁気記録層を形成した後、その上
に2層構造の炭素系保護膜を次のような手法に従って形
成した。
久性をピンオンディスク摺動試験法を用いて測定した。
保護膜が破断するまでピンを摺動させたところ、100
00周回を超えても、保護膜は破壊しなかった。さらに
また、「フォンブリンAM3001」に代えて、官能基
含有の潤滑剤である「フォンブリン Zdol」(商品
名)を使用した場合にも、上記と同様な満足し得る結果
を得ることができた。実施例3 前記実施例1に記載の手法を繰り返したが、本例では、
前記実施例1と同一の磁気記録層を形成した後、その上
に2層構造の炭素系保護膜を次のような手法に従って形
成した。
【0051】下層の炭素系保護膜をイオンビーム堆積法
で形成した。メタンを原料ガスとして用意し、成膜装置
に導入した後、アノード電圧80V、基板バイアス12
0V、成膜室内圧力4mТоrrの条件で成膜を行った
ところ、DLC膜が膜厚2nmで得られた。次いで、上層
の炭素系保護膜をCVD法で形成した。まず、前記実施
例1で使用したものに同一のRFプラズマCVD装置に
原料ガスを導入した。本例で使用した原料ガスは、メタ
ンとアルゴンの混合ガスであるが、その混合比を、膜厚
2nmまでごとに、1:1、1:2、1:3、そして1:
4に変更した。また、混合比の変更の際、その都度成膜
を中断する方法と、成膜を継続しながら混合比の切り替
えを行う方法の両方を試みた。放電出力700W、成膜
室内圧力3mТоrrの条件で順次CVD法を実施した
ところ、いずれの方法の場合にも、DLC膜が膜厚8nm
で得られた。したがって、炭素系保護膜の膜厚は、合計
して10nmであった。
で形成した。メタンを原料ガスとして用意し、成膜装置
に導入した後、アノード電圧80V、基板バイアス12
0V、成膜室内圧力4mТоrrの条件で成膜を行った
ところ、DLC膜が膜厚2nmで得られた。次いで、上層
の炭素系保護膜をCVD法で形成した。まず、前記実施
例1で使用したものに同一のRFプラズマCVD装置に
原料ガスを導入した。本例で使用した原料ガスは、メタ
ンとアルゴンの混合ガスであるが、その混合比を、膜厚
2nmまでごとに、1:1、1:2、1:3、そして1:
4に変更した。また、混合比の変更の際、その都度成膜
を中断する方法と、成膜を継続しながら混合比の切り替
えを行う方法の両方を試みた。放電出力700W、成膜
室内圧力3mТоrrの条件で順次CVD法を実施した
ところ、いずれの方法の場合にも、DLC膜が膜厚8nm
で得られた。したがって、炭素系保護膜の膜厚は、合計
して10nmであった。
【0052】得られた炭素系保護膜の特性評価を前記実
施例1と同様に実施したところ、次のような満足し得る
結果が得られた。得られた保護膜の純水による接触角を
JIS K6800に記載の指針に準じて測定したとこ
ろ、接触角は50°であった。また、保護膜中の水素対
炭素の濃度比をRBS法及びHFS法で測定したとこ
ろ、3:7であった。
施例1と同様に実施したところ、次のような満足し得る
結果が得られた。得られた保護膜の純水による接触角を
JIS K6800に記載の指針に準じて測定したとこ
ろ、接触角は50°であった。また、保護膜中の水素対
炭素の濃度比をRBS法及びHFS法で測定したとこ
ろ、3:7であった。
【0053】さらに、EELS分析法によってC‐Kエ
ッジのスペクトルを観察し、SP2結合に由来するπ*ピ
ークとSP3結合に由来するσ*ピークの積分強度比Iπ
*/Iσ*を求めたところ、磁気記録層に隣接する領域の
Iπ*/Iσ*が0.080であり、膜厚方向に徐々に変
化し、潤滑剤層に隣接する領域のIπ*/Iσ*は0.1
00であることが確認された。また、Iπ*/Iσ*の変
化の形態であるが、混合比の変更の都度成膜を中断した
時には、膜厚方向に段階的に変化し、一方、成膜を継続
しながら混合比の変更を行った時には、膜厚方向に連続
的に変化することも確認された。
ッジのスペクトルを観察し、SP2結合に由来するπ*ピ
ークとSP3結合に由来するσ*ピークの積分強度比Iπ
*/Iσ*を求めたところ、磁気記録層に隣接する領域の
Iπ*/Iσ*が0.080であり、膜厚方向に徐々に変
化し、潤滑剤層に隣接する領域のIπ*/Iσ*は0.1
00であることが確認された。また、Iπ*/Iσ*の変
化の形態であるが、混合比の変更の都度成膜を中断した
時には、膜厚方向に段階的に変化し、一方、成膜を継続
しながら混合比の変更を行った時には、膜厚方向に連続
的に変化することも確認された。
【0054】引き続いて、炭素系保護膜の表面に潤滑
剤、「フォンブリンAM3001」(商品名)を塗布し
て膜厚2nmの潤滑剤層を形成した。この潤滑剤層をフル
オロカーボン系溶剤、スリーエム社製の「フロリナー
ト」(商品名)で洗浄し、洗浄前の膜厚(初期膜厚)と
洗浄後の膜厚の比較から残膜率を求めたところ、49%
であった。
剤、「フォンブリンAM3001」(商品名)を塗布し
て膜厚2nmの潤滑剤層を形成した。この潤滑剤層をフル
オロカーボン系溶剤、スリーエム社製の「フロリナー
ト」(商品名)で洗浄し、洗浄前の膜厚(初期膜厚)と
洗浄後の膜厚の比較から残膜率を求めたところ、49%
であった。
【0055】さらに、潤滑剤塗布後の炭素系保護膜の耐
久性をピンオンディスク摺動試験法を用いて測定した。
保護膜が破断するまでピンを摺動させたところ、100
00周回を超えても、保護膜は破壊しなかった。さらに
また、「フォンブリンAM3001」に代えて、官能基
含有の潤滑剤である「フォンブリン Zdol」(商品
名)を使用した場合にも、上記と同様な満足し得る結果
を得ることができた。比較例1 前記実施例1に記載の手法を繰り返したが、本例では、
比較のため、前記実施例1と同一の磁気記録層を形成し
た後、その上に単層構造の炭素系保護膜を次のような手
法に従って形成した。
久性をピンオンディスク摺動試験法を用いて測定した。
保護膜が破断するまでピンを摺動させたところ、100
00周回を超えても、保護膜は破壊しなかった。さらに
また、「フォンブリンAM3001」に代えて、官能基
含有の潤滑剤である「フォンブリン Zdol」(商品
名)を使用した場合にも、上記と同様な満足し得る結果
を得ることができた。比較例1 前記実施例1に記載の手法を繰り返したが、本例では、
比較のため、前記実施例1と同一の磁気記録層を形成し
た後、その上に単層構造の炭素系保護膜を次のような手
法に従って形成した。
【0056】前記実施例1で使用したものに同一のRF
プラズマCVD装置に原料ガスを導入した。本例で使用
した原料ガスも、メタンとアルゴンの1:1の混合物で
ある。放電出力700W、成膜室内圧力3mТоrrの
条件でCVD法を実施したところ、DLC膜が膜厚10
nmで得られた。得られた炭素系保護膜の特性評価を前記
実施例1と同様に実施したところ、次のような許容し得
ない結果が得られた。
プラズマCVD装置に原料ガスを導入した。本例で使用
した原料ガスも、メタンとアルゴンの1:1の混合物で
ある。放電出力700W、成膜室内圧力3mТоrrの
条件でCVD法を実施したところ、DLC膜が膜厚10
nmで得られた。得られた炭素系保護膜の特性評価を前記
実施例1と同様に実施したところ、次のような許容し得
ない結果が得られた。
【0057】得られた保護膜の純水による接触角をJI
S K6800に記載の指針に準じて測定したところ、
接触角は62°であった。また、保護膜中の水素対炭素
の濃度比をRBS法及びHFS法で測定したところ、
3:7であった。さらに、EELS分析法によってC‐
Kエッジのスペクトルを観察し、SP2結合に由来する
π*ピークとSP3結合に由来するσ*ピークの積分強度
比Iπ*/Iσ*を求めたところ、全膜厚でIπ*/Iσ*
が0.085であった。
S K6800に記載の指針に準じて測定したところ、
接触角は62°であった。また、保護膜中の水素対炭素
の濃度比をRBS法及びHFS法で測定したところ、
3:7であった。さらに、EELS分析法によってC‐
Kエッジのスペクトルを観察し、SP2結合に由来する
π*ピークとSP3結合に由来するσ*ピークの積分強度
比Iπ*/Iσ*を求めたところ、全膜厚でIπ*/Iσ*
が0.085であった。
【0058】引き続いて、炭素系保護膜の表面に潤滑
剤、「フォンブリンAM3001」(商品名)を塗布し
て膜厚2nmの潤滑剤層を形成した。この潤滑剤層をフル
オロカーボン系溶剤、スリーエム社製の「フロリナー
ト」(商品名)で洗浄し、洗浄前の膜厚(初期膜厚)と
洗浄後の膜厚の比較から残膜率を求めたところ、33%
であった。
剤、「フォンブリンAM3001」(商品名)を塗布し
て膜厚2nmの潤滑剤層を形成した。この潤滑剤層をフル
オロカーボン系溶剤、スリーエム社製の「フロリナー
ト」(商品名)で洗浄し、洗浄前の膜厚(初期膜厚)と
洗浄後の膜厚の比較から残膜率を求めたところ、33%
であった。
【0059】さらに、潤滑剤塗布後の炭素系保護膜の耐
久性をピンオンディスク摺動試験法を用いて測定した。
保護膜が破断するまでピンを摺動させたところ、約70
00周回で保護膜に破壊が生じた。比較例2 前記実施例1に記載の手法を繰り返したが、本例では、
比較のため、前記実施例1と同一の磁気記録層を形成し
た後、その上に単層構造の炭素系保護膜を次のような手
法に従って形成した。
久性をピンオンディスク摺動試験法を用いて測定した。
保護膜が破断するまでピンを摺動させたところ、約70
00周回で保護膜に破壊が生じた。比較例2 前記実施例1に記載の手法を繰り返したが、本例では、
比較のため、前記実施例1と同一の磁気記録層を形成し
た後、その上に単層構造の炭素系保護膜を次のような手
法に従って形成した。
【0060】前記実施例1で使用したものに同一のスパ
ッタリング装置で、グラファイト焼結体をターゲット
に、アルゴン及び水素を放電ガスとして使用した。放電
出力3kW、成膜室内圧力2mТоrrの条件でスパッ
タリング法を実施したところ、DLC膜が膜厚10nmで
得られた。得られた炭素系保護膜の特性評価を前記実施
例1と同様に実施したところ、次のような許容し得ない
結果が得られた。
ッタリング装置で、グラファイト焼結体をターゲット
に、アルゴン及び水素を放電ガスとして使用した。放電
出力3kW、成膜室内圧力2mТоrrの条件でスパッ
タリング法を実施したところ、DLC膜が膜厚10nmで
得られた。得られた炭素系保護膜の特性評価を前記実施
例1と同様に実施したところ、次のような許容し得ない
結果が得られた。
【0061】得られた保護膜の純水による接触角をJI
S K6800に記載の指針に準じて測定したところ、
接触角は45°であった。また、保護膜中の水素対炭素
の濃度比をRBS法及びHFS法で測定したところ、
3:7であった。さらに、EELS分析法によってC‐
Kエッジのスペクトルを観察し、SP2結合に由来する
π*ピークとSP3結合に由来するσ*ピークの積分強度
比Iπ*/Iσ*を求めたところ、全膜厚でIπ*/Iσ*
が0.105であった。
S K6800に記載の指針に準じて測定したところ、
接触角は45°であった。また、保護膜中の水素対炭素
の濃度比をRBS法及びHFS法で測定したところ、
3:7であった。さらに、EELS分析法によってC‐
Kエッジのスペクトルを観察し、SP2結合に由来する
π*ピークとSP3結合に由来するσ*ピークの積分強度
比Iπ*/Iσ*を求めたところ、全膜厚でIπ*/Iσ*
が0.105であった。
【0062】引き続いて、炭素系保護膜の表面に潤滑
剤、「フォンブリンAM3001」(商品名)を塗布し
て膜厚2nmの潤滑剤層を形成した。この潤滑剤層をフル
オロカーボン系溶剤、スリーエム社製の「フロリナー
ト」(商品名)で洗浄し、洗浄前の膜厚(初期膜厚)と
洗浄後の膜厚の比較から残膜率を求めたところ、56%
であった。
剤、「フォンブリンAM3001」(商品名)を塗布し
て膜厚2nmの潤滑剤層を形成した。この潤滑剤層をフル
オロカーボン系溶剤、スリーエム社製の「フロリナー
ト」(商品名)で洗浄し、洗浄前の膜厚(初期膜厚)と
洗浄後の膜厚の比較から残膜率を求めたところ、56%
であった。
【0063】さらに、潤滑剤塗布後の炭素系保護膜の耐
久性をピンオンディスク摺動試験法を用いて測定した。
保護膜が破断するまでピンを摺動させたところ、約50
00周回で保護膜に破壊が生じた。 (考察)比較例1における摺動特性の劣化は、保護膜に
対する潤滑剤の付着力が弱いために、潤滑剤のマイグレ
ーションが容易に発生し、保護膜の破断が早まったこと
に原因があるものと考察される。また、比較例2の保護
膜は高い潤滑剤付着力を示すものの、SP2/SP3存在
量比が高いため、保護膜の機械的強度が低く、結果とし
て摺動特性が劣化したものと考察される。さらに、実施
例1の保護膜と比較例1の保護膜とでは膜中の水素対炭
素の濃度比が同じであることから、保護膜に対する潤滑
剤の付着力の向上は、潤滑剤界面付近のSP2結合成分
に大きく依存しているということがわかる。
久性をピンオンディスク摺動試験法を用いて測定した。
保護膜が破断するまでピンを摺動させたところ、約50
00周回で保護膜に破壊が生じた。 (考察)比較例1における摺動特性の劣化は、保護膜に
対する潤滑剤の付着力が弱いために、潤滑剤のマイグレ
ーションが容易に発生し、保護膜の破断が早まったこと
に原因があるものと考察される。また、比較例2の保護
膜は高い潤滑剤付着力を示すものの、SP2/SP3存在
量比が高いため、保護膜の機械的強度が低く、結果とし
て摺動特性が劣化したものと考察される。さらに、実施
例1の保護膜と比較例1の保護膜とでは膜中の水素対炭
素の濃度比が同じであることから、保護膜に対する潤滑
剤の付着力の向上は、潤滑剤界面付近のSP2結合成分
に大きく依存しているということがわかる。
【0064】以上、本発明を特にその好ましい実施の形
態及び実施例を参照して説明した。次いで、本発明のさ
らなる理解のため、本発明の好ましい態様を以下に記載
する。 (付記1) 非磁性の基板の上に、磁気記録層、炭素系
保護膜及び潤滑剤層が順次積層された磁気記録媒体にお
いて、前記炭素系保護膜の炭素間結合としてSP3結合
とSP2結合が混在しており、該保護膜の表層部分にお
いて、前記SP2結合の量が前記SP3結合の量よりも大
であることを特徴とする磁気記録媒体。
態及び実施例を参照して説明した。次いで、本発明のさ
らなる理解のため、本発明の好ましい態様を以下に記載
する。 (付記1) 非磁性の基板の上に、磁気記録層、炭素系
保護膜及び潤滑剤層が順次積層された磁気記録媒体にお
いて、前記炭素系保護膜の炭素間結合としてSP3結合
とSP2結合が混在しており、該保護膜の表層部分にお
いて、前記SP2結合の量が前記SP3結合の量よりも大
であることを特徴とする磁気記録媒体。
【0065】(付記2) 前記SP2結合量の分布に傾
斜があり、該保護膜の前記磁気記録層の側から前記潤滑
剤層の側に向けてSP2結合量が段階的に増加している
ことを特徴とする付記1に記載の磁気記録媒体。 (付記3) 前記SP2結合量の分布に傾斜があり、該
保護膜の前記磁気記録層の側から前記潤滑剤層の側に向
けてSP2結合量が連続的に増加していることを特徴と
する付記1に記載の磁気記録媒体。
斜があり、該保護膜の前記磁気記録層の側から前記潤滑
剤層の側に向けてSP2結合量が段階的に増加している
ことを特徴とする付記1に記載の磁気記録媒体。 (付記3) 前記SP2結合量の分布に傾斜があり、該
保護膜の前記磁気記録層の側から前記潤滑剤層の側に向
けてSP2結合量が連続的に増加していることを特徴と
する付記1に記載の磁気記録媒体。
【0066】(付記4) 前記炭素系保護膜において電
子エネルギー損失分光法(EELS分析法)によりπ*
ピーク及びσ*ピークを測定した場合に、両者の積分強
度比Iπ*/Iσ*が、前記表層部分において0.100
以上であることを特徴とする付記1〜3のいずれか1項
に記載の磁気記録媒体。 (付記5) 前記炭素系保護膜が多層構造を有してお
り、上層の保護膜のSP 2結合量が、下層の保護膜のそ
れよりも大であることを特徴とする付記1〜4のいずれ
か1項に記載の磁気記録媒体。
子エネルギー損失分光法(EELS分析法)によりπ*
ピーク及びσ*ピークを測定した場合に、両者の積分強
度比Iπ*/Iσ*が、前記表層部分において0.100
以上であることを特徴とする付記1〜3のいずれか1項
に記載の磁気記録媒体。 (付記5) 前記炭素系保護膜が多層構造を有してお
り、上層の保護膜のSP 2結合量が、下層の保護膜のそ
れよりも大であることを特徴とする付記1〜4のいずれ
か1項に記載の磁気記録媒体。
【0067】(付記6) 前記炭素系保護膜の膜厚が、
1〜50nmの範囲にあることを特徴とする付記1〜5の
いずれか1項に記載の磁気記録媒体。 (付記7) 前記炭素系保護膜が、カーボン又はその化
合物からなり、スパッタリング法、CVD法、イオンビ
ーム堆積法、イオンビーム蒸着法又はFCA法によって
成膜されたものであることを特徴とする付記1〜6のい
ずれか1項に記載の磁気記録媒体。
1〜50nmの範囲にあることを特徴とする付記1〜5の
いずれか1項に記載の磁気記録媒体。 (付記7) 前記炭素系保護膜が、カーボン又はその化
合物からなり、スパッタリング法、CVD法、イオンビ
ーム堆積法、イオンビーム蒸着法又はFCA法によって
成膜されたものであることを特徴とする付記1〜6のい
ずれか1項に記載の磁気記録媒体。
【0068】(付記8) 前記潤滑剤層の膜厚が、0.
1〜0.5nmの範囲にあることを特徴とする付記1〜7
のいずれか1項に記載の磁気記録媒体。 (付記9) 前記潤滑剤層が、フルオロカーボン樹脂系
の液体潤滑剤からなり、ディップコート法、スピンコー
ト法又はスプレーコート法によって形成されたものであ
ることを特徴とする付記1〜8のいずれか1項に記載の
磁気記録媒体。
1〜0.5nmの範囲にあることを特徴とする付記1〜7
のいずれか1項に記載の磁気記録媒体。 (付記9) 前記潤滑剤層が、フルオロカーボン樹脂系
の液体潤滑剤からなり、ディップコート法、スピンコー
ト法又はスプレーコート法によって形成されたものであ
ることを特徴とする付記1〜8のいずれか1項に記載の
磁気記録媒体。
【0069】(付記10) 非磁性の基板と、その上に
順次積層された、非磁性金属からなる硬化層、クロム系
下地層、コバルト合金からなる磁気記録層、炭素系保護
膜、そして潤滑剤層とを含んでなることを特徴とする付
記1〜9のいずれか1項に記載の磁気記録媒体。
順次積層された、非磁性金属からなる硬化層、クロム系
下地層、コバルト合金からなる磁気記録層、炭素系保護
膜、そして潤滑剤層とを含んでなることを特徴とする付
記1〜9のいずれか1項に記載の磁気記録媒体。
【0070】
【発明の効果】以上に説明したように、本発明によれ
ば、炭素系保護膜の優れた耐久性を長期にわたって維持
するとともに、それに対する潤滑剤の付着力を改善でき
るので、高性能で長寿命な磁気記録媒体を提供すること
ができる。また、本発明によれば、炭素間結合の制御に
より、耐久性や潤滑剤の付着力を制御できるので、昨今
の多様化したニーズに応えた磁気記録媒体を提供するこ
とができる。
ば、炭素系保護膜の優れた耐久性を長期にわたって維持
するとともに、それに対する潤滑剤の付着力を改善でき
るので、高性能で長寿命な磁気記録媒体を提供すること
ができる。また、本発明によれば、炭素間結合の制御に
より、耐久性や潤滑剤の付着力を制御できるので、昨今
の多様化したニーズに応えた磁気記録媒体を提供するこ
とができる。
【0071】さらに、また本発明の磁気記録媒体を磁気
ディスク装置を始めとしたコンピュータのハードディス
ク装置に使用すると、近年の高度なニーズ(高記録密
度、高感度、高速度での記録及び読出など)に十分に応
えることができる。
ディスク装置を始めとしたコンピュータのハードディス
ク装置に使用すると、近年の高度なニーズ(高記録密
度、高感度、高速度での記録及び読出など)に十分に応
えることができる。
【図1】本発明の磁気記録媒体の典型的な例を示した断
面図である。
面図である。
【図2】炭素系保護膜のFELSスペクトル図である。
1…非磁性の基板 2…非磁性の硬化層 3…下地層 4…磁気記録層 5…炭素系保護膜 5a…下層保護膜 5b…上層保護膜 6…潤滑剤層 10…磁気記録媒体
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 押久保 由紀子 神奈川県川崎市中原区上小田中4丁目1番 1号 富士通株式会社内 (72)発明者 千葉 洋 神奈川県川崎市中原区上小田中4丁目1番 1号 富士通株式会社内 Fターム(参考) 4K029 AA01 BA21 BA24 BA34 BB02 BD11 CA05 DC05 DC39 FA07 GA03 4K030 AA10 AA16 BA27 BA28 CA02 FA01 HA02 LA20 5D006 AA05 AA06 EA03 FA06 FA07
Claims (5)
- 【請求項1】 非磁性の基板の上に、磁気記録層、炭素
系保護膜及び潤滑剤層が順次積層された磁気記録媒体に
おいて、 前記炭素系保護膜の炭素間結合としてSP3結合とSP2
結合が混在しており、該保護膜の表層部分において、前
記SP2結合の量が前記SP3結合の量よりも大であるこ
とを特徴とする磁気記録媒体。 - 【請求項2】 前記SP2結合量の分布に傾斜があり、
該保護膜の前記磁気記録層の側から前記潤滑剤層の側に
向けてSP2結合量が段階的に増加していることを特徴
とする請求項1に記載の磁気記録媒体。 - 【請求項3】 前記SP2結合量の分布に傾斜があり、
該保護膜の前記磁気記録層の側から前記潤滑剤層の側に
向けてSP2結合量が連続的に増加していることを特徴
とする請求項1に記載の磁気記録媒体。 - 【請求項4】 前記炭素系保護膜において電子エネルギ
ー損失分光法(EELS分析法)によりπ*ピーク及び
σ*ピークを測定した場合に、両者の積分強度比Iπ*/
Iσ*が、前記表層部分において0.100以上である
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の
磁気記録媒体。 - 【請求項5】 前記炭素系保護膜が多層構造を有してお
り、上層の保護膜のSP2結合量が、下層の保護膜のそ
れよりも大であることを特徴とする請求項1〜4のいず
れか1項に記載の磁気記録媒体。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2001114241A JP2002312923A (ja) | 2001-04-12 | 2001-04-12 | 磁気記録媒体 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2001114241A JP2002312923A (ja) | 2001-04-12 | 2001-04-12 | 磁気記録媒体 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2002312923A true JP2002312923A (ja) | 2002-10-25 |
Family
ID=18965343
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2001114241A Withdrawn JP2002312923A (ja) | 2001-04-12 | 2001-04-12 | 磁気記録媒体 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2002312923A (ja) |
Cited By (6)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2010086585A (ja) * | 2008-09-30 | 2010-04-15 | Hoya Corp | 磁気記録媒体の製造方法および磁気記録媒体 |
JP2010228972A (ja) * | 2009-03-27 | 2010-10-14 | Toyo Advanced Technologies Co Ltd | 炭素質膜及びその製造方法 |
JP2013037745A (ja) * | 2011-08-09 | 2013-02-21 | Fuji Electric Co Ltd | 磁気記録媒体 |
JP2015063714A (ja) * | 2013-09-24 | 2015-04-09 | ユニオンツール株式会社 | 非晶質炭素含有皮膜 |
US10984830B2 (en) | 2017-02-24 | 2021-04-20 | The National University Of Singapore | Two dimensional amorphous carbon as overcoat for heat assisted magnetic recording media |
US11114674B2 (en) | 2017-02-24 | 2021-09-07 | National University Of Singapore | Proton conductive two-dimensional amorphous carbon film for gas membrane and fuel cell applications |
-
2001
- 2001-04-12 JP JP2001114241A patent/JP2002312923A/ja not_active Withdrawn
Cited By (8)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2010086585A (ja) * | 2008-09-30 | 2010-04-15 | Hoya Corp | 磁気記録媒体の製造方法および磁気記録媒体 |
JP2010228972A (ja) * | 2009-03-27 | 2010-10-14 | Toyo Advanced Technologies Co Ltd | 炭素質膜及びその製造方法 |
JP2013037745A (ja) * | 2011-08-09 | 2013-02-21 | Fuji Electric Co Ltd | 磁気記録媒体 |
US9196282B2 (en) | 2011-08-09 | 2015-11-24 | Fuji Electric Co., Ltd. | Magnetic recording medium |
JP2015063714A (ja) * | 2013-09-24 | 2015-04-09 | ユニオンツール株式会社 | 非晶質炭素含有皮膜 |
US10984830B2 (en) | 2017-02-24 | 2021-04-20 | The National University Of Singapore | Two dimensional amorphous carbon as overcoat for heat assisted magnetic recording media |
US11114674B2 (en) | 2017-02-24 | 2021-09-07 | National University Of Singapore | Proton conductive two-dimensional amorphous carbon film for gas membrane and fuel cell applications |
US11192788B2 (en) | 2017-02-24 | 2021-12-07 | National University Of Singapore | Two-dimensional amorphous carbon coating and methods of growing and differentiating stem cells |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP5452928B2 (ja) | 磁気記録媒体の製造方法、及び積層体の製造方法 | |
TW561462B (en) | Magnetic recording medium, method for producing the same, and magnetic storage apparatus | |
WO2011001774A1 (ja) | 磁気記録媒体の製造方法 | |
US9040125B2 (en) | Covalently bound monolayer for a protective carbon overcoat | |
JP2009099247A (ja) | 垂直磁気記録媒体およびその製造方法 | |
US8043734B2 (en) | Oxidized conformal capping layer | |
US20060029806A1 (en) | Carbonaceous protective layer, magnetic recording medium, production method thereof, and magnetic disk apparatus | |
JP4032050B2 (ja) | 磁気記録媒体およびその製造方法 | |
US7175926B2 (en) | Dual-layer carbon-based protective overcoats for recording media by filtered cathodic ARC deposition | |
US6974642B2 (en) | Carbonaceous protective layer, magnetic recording medium, production method thereof, and magnetic disk apparatus | |
JP2002312923A (ja) | 磁気記録媒体 | |
JP2008276913A (ja) | 垂直磁気記録媒体およびその製造方法 | |
JP2002032907A (ja) | カーボン保護膜、磁気記録媒体及びそれらの製造方法ならびに磁気ディスク装置 | |
JPH05225556A (ja) | 保護膜を改良した磁気記録ディスク | |
US20050042481A1 (en) | Information recording medium with improved perpendicular magnetic anisotropy | |
JP3705474B2 (ja) | 磁気記録媒体 | |
JP2003223710A (ja) | 磁気記録媒体、潤滑膜及び磁気記録装置 | |
JPH1139647A (ja) | 磁気記録媒体及びその製造方法並びに磁気記憶装置 | |
JP4944471B2 (ja) | 磁気ディスク及びその製造方法 | |
Choong et al. | Overcoat Materials for Magnetic Recording Media | |
JP2004342231A (ja) | 磁気記録媒体及びその製造方法 | |
JPH11232630A (ja) | 磁気記録媒体 | |
JPH11149631A (ja) | 磁気記録媒体及びそれを用いた磁気記憶装置 | |
JPH03108121A (ja) | 磁気記録媒体および磁気記憶装置 | |
JP2003077119A (ja) | 磁気記録媒体及びその製造方法 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A300 | Withdrawal of application because of no request for examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A300 Effective date: 20080701 |