JP2002309689A - 断熱と伝熱を行なう壁構造体 - Google Patents

断熱と伝熱を行なう壁構造体

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JP2002309689A JP2001119354A JP2001119354A JP2002309689A JP 2002309689 A JP2002309689 A JP 2002309689A JP 2001119354 A JP2001119354 A JP 2001119354A JP 2001119354 A JP2001119354 A JP 2001119354A JP 2002309689 A JP2002309689 A JP 2002309689A
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満春 大西
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 この壁構造体は,断熱壁体又は伝熱壁体に変
更し,室内を適正な温度に調節する。 【解決手段】 壁構造体20は,熱流方向に直交して指
向配置された等温面を形成する高熱伝導性プレート7,
その面に垂直に厚さ方向に延びるセル状空間を形成する
縦プレート8と横プレート9から成る低熱伝導性格子
体,及び室内1と室外2とを仕切る外側プレート5と内
側プレート4から成る中空壁体3を有する。壁構造体2
0は,シャッタ12,13による開口部10,11の閉
鎖状態では断熱壁体として機能し,開口部10,11の
開放状態では横プレート9が支点14を中心に枢動して
流れ通路17が形成され,伝熱壁体として機能する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は,中空壁体内に高
熱伝導性プレートと低熱伝導性格子体を配置して構成さ
れる断熱と伝熱を行なう壁構造体に関する。
【0002】
【従来の技術】地球温暖化の原因の一つとされている二
酸化炭素の発生量を削減するため,熱エネルギを利用す
る各種設備や装置は,熱の高効率利用が進められてい
る。かかる設備や装置における高温部と低温部との境界
に配設される断熱を行なう壁構造体の高性能化は,高温
や低温状態の熱を高効率で利用する上で重要な技術の一
つとされている。従来,高性能に断熱を行う断熱壁構造
体は,セラミックファイバ,グラスファイバ,多孔体等
の可能な限り低熱伝導率の固体を中空壁体内に充填して
遮熱層を形成することが望ましいと考えられていた。
【0003】一般に,熱が移動する形式としては,熱伝
導,熱伝達及び熱放射の三基本形式があり,断熱壁構造
体は,断熱材が熱を遮断しているのではなく,これらの
三基本形式による熱の移動を行い難い材料に選定し,熱
遮断の構造を工夫している。従来の断熱壁構造体は,例
えば,熱伝導を考慮し,中空壁体内に低熱伝導率物質を
充填したものであり,中空壁体内に熱伝達に関与する対
流発生を抑制するように,断熱壁として低熱伝導物質が
利用されている。
【0004】従来,密閉された気体透過性のない包囲体
内に,形状保持材と低熱伝導率ガスを封入した断熱壁構
造体が提案されている(例えば,特開平7−15631
3号公報参照)。該断熱壁構造体は,形状保持材と低熱
伝導率ガスとの封入については,包囲体内に発泡性樹脂
の原料を注入し,発泡硬化させた後に,包囲体内を大気
圧以下に減圧し,次いで,低熱伝導率ガスを封入して包
囲体を密閉することによって形成されている。
【0005】また,特開平6−221750号公報に開
示されている断熱パネルは,2枚の金属製表面板間に断
熱材が介在されており,一方の金属製表面板の内面側に
作動流体路と冷熱流体路が形成されている。金属製表面
板は,作動流体路内に作動流体が封入されてヒートパイ
プ化され,作動流体路を金属製表面板全面がほぼ均一な
温度分布となるパターンとなる作動流体封入部が形成さ
れ,また,冷熱用流体が通過する作動流体路は,作動流
体封入部に隣接して設けられている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら,従来の
断熱壁構造体は,高断熱を得るために,低熱伝導材の挿
入割合を変化させずに,断熱壁を厚くしているが,断熱
壁を厚くすると,熱伝達に関与する対流が発生し易くな
り,対流発生限界を超えると,熱伝達による熱移動が始
まり,断熱度を低下させる現象が発生する。また,断熱
壁については,高断熱を得るために低熱伝導材の挿入割
合を増加させると,挿入密度が増し,熱伝導による熱移
動に関係する熱伝導率が大きくなり,断熱度を低下させ
る現象が発生する。断熱構造体は,上記のような低熱伝
導材を中空壁体内に充填することが必ずしも十分な遮熱
度を確保できるものではないことが分かってきた。断熱
壁構造体について,中空壁体内の密閉空間に低熱伝導材
を充填した時は,密閉空間それ自体において温度差が発
生して内部自然熱対流が発生して熱移動が生じ,遮熱度
を低下させる原因となる。
【0007】そこで,断熱壁構造体として,ケース等の
中空壁体内にグラスファイバ,セラミックファイバ等の
遮熱繊維材料を充填すると共に,遮熱繊維材料内に有効
熱伝導率の高いヒートパイプを単層又は多層に配設する
ことが考えられる。このような断熱壁構造体は,熱流方
向と直交する方向に延びる中空壁体内の密閉空間を等温
にすることによって,中空壁体内の密閉空間における熱
対流の発生を抑制し,それによって断熱性能を向上させ
ることが分かった。
【0008】しかしながら,上記の断熱壁構造体は,中
空壁体内にグラスファイバ,セラミックファイバ等の遮
熱繊維材料を充填すると共に,該遮熱繊維材料内に有効
熱伝導率の高いヒートパイプを配設するものであり,高
価な遮熱繊維材料を用いる以上,断熱壁構造体の製造コ
ストを上昇させると共に,中空壁体内の密閉空間にグラ
スファイバ,セラミックファイバ等の遮熱繊維材料を充
填するということが,中空壁体内の成層における等温性
を確保して内部熱対流を抑制するという技術的思想には
貢献せず,場合によっては,内部熱対流を発生させて遮
熱度を低下させる現象があることが分かった。
【0009】そこで,断熱壁構造体について,ヒートパ
イプを中空壁体内の密閉空間に指向配置して熱流方向と
直交する方向(例えば,水平方向,垂直方向)における
成層での等温性を高め,中空壁体内の密閉空間での内部
熱対流の発生を抑制して断熱性能を向上させることに着
目し,遮熱繊維材料等の低熱伝導性固体を中空壁体内に
充填することによる技術的思想とは全く異なり,密閉空
間に低熱伝導性固体を配置することなく,高熱伝導性固
体のみを中空壁体内の密閉空間に熱流方向に直交する方
向に拡げて指向配置することによって成層での等温性を
確保し,断熱効果を向上させることが有効であると考え
た。
【0010】また,断熱壁構造体を建造物等の密閉室の
壁体に適用すると,図6及び図7に示すように,夏季日
中において,太陽18が昇って室外2の外部温度が上昇
する場合に,室内1は断熱壁体21によって遮熱され,
室内1の温度は温度計16が示すように,徐々ではある
が上昇していくが,所定の温度範囲に維持され,過熱状
態は発生しない。しかしながら,月19が出たりする夜
間等の外気即ち室外2の外部温度が低下するが,室内1
の温度は,断熱壁体21の遮熱作用が悪影響となり,日
中に上昇した室内温度のままの高温状態が維持されるこ
とになり,実用上余り好ましくない状態が維持されるこ
とになる。そこで,建造物等の壁体では,日中において
は室内が断熱壁体21によって室外から遮熱されるが,
夜間になると,室外2の外気の温度低下に従って室内1
が低下していくことが望ましい状態である。即ち,建造
物等の壁体としては,夏季日中等の室外温度が高い場合
には室内が室外から遮熱され,また,冬季や夜間になる
と,室外の温度が低い場合には,室内の熱が屋外等の室
外に壁体を通じて放熱される状態になることが望まれ
る。更に,冬季等の室外温度が余りにも低く,電気部品
等に悪影響がある場合には,壁体を遮熱状態にして室内
温度を適正な温度に維持することが好ましい。
【0011】ところで,近年急増している携帯電話無線
基地局等の密閉室内には,電源設備,無線,制御装置等
が設備されており,これらの設備は,ごみ,粉塵,高温
を嫌う設備であり,これらの電気部品からも発熱すると
いう現象があり,また,近年の携帯電話通信データ量が
増大し,更なる温度上昇が発生する現状であり,そこ
で,従来の携帯電話無線基地局等の室内には高価な冷房
設備を設けているのが現状である。
【0012】上記のような携帯電話無線基地局,密閉倉
庫等の建造物の壁体において,断熱壁体と伝熱壁体との
両機能を実現できる壁体が適用できれば,室内の通風の
ための人手を必要とせず,エアコン等の高価な設備を不
用にし,省エネルギーを実現できるが,従来の壁体では
両機能を壁体に持たせるという技術的思想が実現されて
いないのが現状であり,上記のような壁体として如何に
して実現させるかの課題がある。
【0013】
【課題を解決するための手段】この発明の目的は,建造
物,構造物,冷蔵冷凍庫,恒温庫,温蔵庫,物体収容ケ
ース,シェル等の密閉室を形成する中空壁体に適用さ
れ,室外が室内より高温時又は過度に低い時には,室内
を室外から遮熱するため断熱壁体として機能させ,ま
た,夜間等の室外温度が低下した状態では室内から室外
へ放熱させて室内を適正な温度に低下させる伝熱壁体と
して機能させる壁構造体であり,中空壁体内に熱流方向
に実質的に直交する方向に指向配置された高熱伝導性プ
レートに垂直な多数のセル状空間を形成する低熱伝導性
格子体を配置し,中空壁体内の自然熱対流の発生を抑制
して遮熱度をアップし,又は中空壁体内を通風して伝熱
促進し,省エネルギへ貢献すると共に低温度や高温度の
極限環境において容易に適用できる製造コストが安価で
軽量に構成された断熱と伝熱を行なう壁構造体を提供す
ることである。
【0014】この発明は,室内と室外を仕切る外側プレ
ートと内側プレートから構成された中空壁体,該中空壁
体内に配置され且つ熱流に直交する方向の全域に指向配
置された等温面を形成する少なくとも1層の高熱伝導性
プレート,及び前記中空壁体内に配置され且つ前記高熱
伝導性プレートに垂直で厚さ方向に延びる多数のセル状
空間を形成する縦プレートと横プレートから構成される
低熱伝導性格子体を有し,前記横プレートが一辺を支点
として枢動可能に取り付けられていることから成る断熱
と伝熱を行なう壁構造体に関する。
【0015】前記横プレートは,少なくとも前記中空壁
体の前記内側プレートに隣接する前記セル状空間に配置
されたもののみ又は全てが枢動可能に構成されている。
また,前記横プレートは,前記中空壁体,前記高熱伝導
性プレート及び/又は前記縦プレートに対して枢動可能
に取り付けられている。
【0016】また,前記中空壁体を構成する前記外側プ
レートと前記内側プレートは,高熱伝導性材料で作製さ
れている。
【0017】この壁構造体は,前記外側プレートの上部
と下部とに形成された開口部,該開口部を開閉するシャ
ッタ,及び該シャッタを開閉作動する開閉作動手段を有
するものである。
【0018】前記シャッタを開閉作動する前記開閉作動
手段は,温度変動によって変形する形状記憶合金,前記
室内と前記室外の温度差に応答して変形するバイメタ
ル,及び/又は前記温度差に応答して作動するリンク機
構である。
【0019】この壁構造体は,前記シャッタによる前記
開口部の閉鎖時には,前記横プレートが前記高熱伝導性
プレートに対して垂直方向に延びて前記縦プレートに沿
う流れを阻止して前記中空壁体内が断熱状態になるもの
である。
【0020】また,この壁構造体は,前記シャッタによ
る前記開口部の開放時には,前記横プレートが枢動して
前記セル状空間が連通し,前記室外からの外気が前記中
空壁体内に流入して前記縦プレートに沿って流れが発生
して前記中空壁体内が伝熱状態になるものである。更
に,この壁構造体は,前記シャッタによる前記開口部の
開放時には,前記中空壁体内に発生する上昇自然対流,
高温部から低温部への自然対流,及び/又は前記開口部
に設けられたファンの駆動によって強制的に外気を導入
して強制通風を行ない,前記室内から前記室外へ放熱す
るものである。開口部近傍にファンを設けた場合には,
ファンの駆動はシャッタによる開口部の開放作動と連動
して作動されるように構成しておけばよい。
【0021】前記横プレートを枢動させる作動手段は,
温度変動によって変形する形状記憶合金,前記室内と前
記室外の温度差に応答して変形するバイメタル,前記温
度差に応答して作動するリンク機構,前記開口部の開放
によって前記中空壁体内に発生する上昇自然対流又は高
温部から低温部への自然対流,及び/又は前記開口部に
設けられたファンの駆動によって発生する強制的な通風
から構成されている。
【0022】この壁構造体は,建造物,構造物,冷蔵冷
凍庫,恒温庫,温蔵庫,物体収容ケース,シェル等の密
閉室の壁体に適用される。
【0023】この壁構造体は,前記高熱伝導性プレート
に接する前記低熱伝導性格子体におけるそれぞれの前記
セル状空間を形成する前記横プレート間の長さLと前記
低熱伝導性格子体の奥行きとなる前記高熱伝導性プレー
ト間の長さDとは,前記セル状空間内に自然熱対流の発
生を抑制して遮熱度を適正化するアペックス比(L/
D)に設定されている。また,前記低熱伝導性格子体の
前記セル状空間は,前記横プレート間と前記縦プレート
間との長さは同一長さに形成することができ,その場合
には,製造上から考慮して容易であり,また,遮熱度を
適正に調整する上からも設定が容易である。
【0024】この壁構造体は,前記低熱伝導性格子体の
前記セル状空間には,空気が存在するものである。場合
によっては,前記セル状空間には,低熱伝導性多孔質セ
ラミックス,低熱伝導性繊維セラミックス等の断熱材が
充填されている。
【0025】前記高熱伝導性プレートは,銅,銀,アル
ミニウム,それらの合金等の金属から成る繊維,不織布
又はパンチング板材,マイクロヒートパイプ,又はAl
N,SiC,Si3 4 等のセラミック繊維,不織布又
は板材,或いはこれらの複合材から成る平らな層状に形
成されている。
【0026】この壁構造体は,上記のように構成されて
いるので,室外が室内より高温の時又は室外が過度に低
温の時には,室内を室外から遮熱するように断熱壁体と
して機能し,また,室外が室内より低温で室内温度が高
過ぎる時には,室内から室外へ放熱するように伝熱壁体
として機能させることができる。例えば,この壁構造体
は,夏季日中等の室外が室内より高温になる時には,断
熱壁体として作用して室外からの熱を遮断して室内を低
温状態の適正な温度に維持し,室内に冷房装置等を設け
ている場合にはその消費電力を低減でき,また,夜間等
の室外が室内より低温になり,室内が適正な温度より高
い時には,伝熱壁体として機能し,室内から室外に放熱
して,室内を適正な低温状態にすることができる。
【0027】この壁構造体は,室外が高温の時に室内を
室外から遮熱する場合には,中空壁体を構成する外側プ
レートの上下に設けた開口部を閉鎖し,それによって,
高熱伝導性プレートによって熱流方向に直交する方向に
等温成層を確保でき,セル状空間内の自然熱対流の発生
を防止し,熱流方向に対して内部熱対流による熱の移動
を遮断し,一層ごとの高熱伝導性プレートの一面が等温
に近づき,断熱壁の内部温度分布が伝導状態になろうと
し,中空壁体の内部自然対流が抑制されて低熱伝導性格
子体によって遮熱作用を発揮する。また,高熱伝導性プ
レートを低熱伝導性格子体でサンドイッチ構造に構成し
ているので,縦プレートと横プレートとが構造材として
機能し,断熱壁の強度をアップさせることができる。し
かも,低熱伝導性格子体は,多数の横縦のプレートの組
み合わせによってセル状空間が構成されているので,1
つ1つのセル状空間内での自然熱対流が独立的に抑制さ
れ,全体として内部自然対流が抑制され,セル状空間に
存在する気体の熱伝導率に近づき,高効率の断熱壁体を
形成することができる。
【0028】更に,この壁構造体は,室内を室外から断
熱する時には,熱流方向に直交して指向配置された高熱
伝導性プレートに接して配置された低熱伝導性格子体に
温度の不均一が生じた場合に,高熱伝導性プレートが直
ちにその高い熱伝導性によって低熱伝導性格子体の熱流
方向に直交する水平方向における成層を等温化し,高熱
伝導性プレートの存在によって低熱伝導性格子体のセル
状空間に温度分布として安定した成層を形成し,低熱伝
導性格子体の温度が均一化し,その結果,低熱伝導性格
子体の内部熱対流が防止され,熱流方向の熱の流れが抑
制され,遮熱性が向上する。また,低熱伝導性格子体を
構成するプレートは,低熱伝導性の材料から構成されて
いるので,たとえ何れかのセル状空間に自然熱対流が発
生したとしても,プレートによって遮断され,他のセル
状空間への波及がなく,壁構造体全体として高度の遮熱
性を確保することができる。
【0029】また,この壁構造体は,夜間,冬季等にお
いて室外温度が室内温度よりも低下して室内の温度が高
くて好ましくない状態では,室内から室外へ放熱するこ
とが好ましく,その場合には,中空壁体を構成する外側
プレートの上部と下部に設けた開口部をそれぞれ開放
し,それによって,室外の外気が下部の開口部から中空
壁体内に流入し,その気流は室内の熱を受熱して上昇等
で移動し,上部の開口部から放出され,中空壁体が伝熱
壁体として機能し,室内温度が室外温度へと近付いて室
内温度が低下し,室内が適正な温度になる。
【0030】
【発明の実施の形態】以下,図面を参照して,この発明
による断熱と伝熱を行なう壁構造体の実施例を説明す
る。図1はこの発明による断熱と伝熱を行なう壁構造体
の一実施例を示し,断熱壁体として機能する構造を示す
断面図,図2は図1の断熱と伝熱を行なう壁構造体にお
いて伝熱壁体として機能する構造を示す断面図,図3は
図1の断熱と伝熱を行なう壁構造体における低熱伝導性
格子体と高熱伝導性プレートとの関係構造を説明するた
めに,外側プレートを排除して多数のセル状空間の形状
を示す斜視図,図4は図1の断熱と伝熱を行なう壁構造
体を建造物に適用した場合の断熱状態を示す説明図,及
び図5は図4の壁構造体を建造物に適用した場合の伝熱
状態を示す説明図である。
【0031】この発明による壁構造体20は,密閉空間
等の空間を形成する壁体,例えば,建造物,構造物,冷
蔵冷凍庫,恒温庫,温蔵庫,物体収容ケース,シェル等
を構成する密閉室の壁体に適用することができる。壁構
造体20は,例えば,近年急増している携帯電話無線基
地局等の制御室にはごみ,粉塵,高温を嫌う電源設備,
無線装置,制御装置等が設備され,これらの電気部品か
らの発熱現象があるが,このような密閉室の壁体として
適用し,断熱状態又は伝熱状態に対応する壁体として機
能させるものである。
【0032】壁構造体20は,主として,熱流方向Qに
実質的に直交する方向の全域に指向配置された等温面を
形成する少なくとも1層の高熱伝導性プレート7,及び
高熱伝導性プレート7の熱流方向Qに実質的に直交する
方向において両側から挟み込んだサンドイッチ構造に配
置された低熱伝導性格子体15から構成されている。低
熱伝導性格子体15は,高熱伝導性プレート7の面に対
して垂直方向に延びる低熱伝導性の縦プレート8と横プ
レート9から構成され,プレート8,9によって多数の
セル状空間6が形成されている。従って,高熱伝導性プ
レート7は,低熱伝導性格子体15のそれぞれのプレー
ト8,9によって熱流方向Qに実質的に直交する方向に
位置決めされると共に,支持固定されている。
【0033】壁構造体20は,高熱伝導性プレート7に
接する低熱伝導性格子体15のセル状空間6を形成する
縦プレート8又は横プレート9間の長さL(図1では,
L=L1 又はL2 )と,高熱伝導性プレート7に対して
垂直に延びる方向の低熱伝導性格子体15のプレート
8,9のプレート間の長さ即ち奥行きDとは,セル状空
間6内に自然熱対流の発生を抑制して遮熱度を調整する
適正なアペックス比(L/D)に設定されている。例え
ば,セル状空間6が正方形に形成されている場合には,
正方形の辺の長さ(L1 =L2 )とセル状空間6の奥行
きDとの比,即ち,アスペクト比を,平均温度,温度
差,セル状空間6内に充填された空気等の種類,セル状
空間6のサイズ等の条件を考慮して適正に調節すること
によって,セル状空間6内の自然熱対流を抑制し,最適
の遮熱度に調節することができる。
【0034】壁構造体20は,特に,低熱伝導性格子体
15と高熱伝導性プレート7とが配置され且つ室内1と
室外2とを仕切る外側プレート5と内側プレート4から
構成された中空壁体3を有し,横プレート9が一辺を支
点14として枢動可能に取り付けられていることに特徴
を有する。横プレート9は,図示では,高熱伝導性プレ
ート7及び中空壁体3の内側プレート4に対して枢動可
能に取り付けられているが,その構造に限られることな
く,例えば,縦プレート8に対して枢動可能に取り付け
ることもでき,その場合には低熱伝導性格子体15とし
て縦プレート8と横プレート9とを組立体として構成す
ることができる。
【0035】この壁構造体20では,横プレート9は,
少なくとも中空壁体3の内側プレート4に隣接するセル
状空間3に配置されたもののみ,又は全てが枢動可能に
構成されている。横プレート9は,内側プレート4に隣
接するセル状空間6に位置するもののみを枢動可能に構
成すれば,伝熱壁体として十分な伝熱促進をさせること
ができる。内側プレート4に隣接するセル状空間6に位
置する横プレート9のみを枢動させる時には,他のセル
状空間6では縦プレート8と横プレート9を固定状態に
構成でき,低熱伝導性格子体15の構造をシンプルに構
成でき,製造コストを低減できる。
【0036】また,壁構造体20では,中空壁体3を構
成する外側プレート5と内側プレート4は,高熱伝導性
プレート7を用いてもよく,又は高熱伝導性材料で作製
してもよく,少なくとも内側プレート4は高熱伝導性材
料で作製することが好ましい。更に,この壁構造体で
は,図示していないが,高熱伝導性プレート7,外側プ
レート5及び内側プレート4に等温性及び/又は伝導性
を促進するため,フィン等を設けてもよいことは勿論で
ある。
【0037】壁構造体20は,外側プレート5の上部に
形成された開口部10,下部に形成された開口部11,
開口部10を開閉する外側プレート5の上部に設けられ
たシャッタ12,開口部11を開閉する外側プレート5
の下部に設けられたシャッタ13,及びシャッタ12,
13を開閉作動する開閉作動手段を有している。シャッ
タ12,13を開閉作動する開閉作動手段は,図示して
いないが,温度変動によって変形する形状記憶合金,室
内1と室外2との温度差によって変形するバイメタル,
及び/又は温度センサによる室内1と室外2との温度差
の検出値に応答して作動するリンク機構で構成すること
ができる。シャッタ12,13の開閉作動をリンク機構
に構成した場合には,温度センサによる室内1と室外2
との温度差が予め決められた所定の温度差以上に応答し
てシャッタ12,13を作動するように構成すればよ
い。
【0038】シャッタ12,13による開口部10,1
1の閉鎖時には,横プレート9が高熱伝導性プレート7
に対して垂直方向に延びて多数のセル状空間6がそれぞ
れ遮蔽され,縦プレート8に沿う自然対流が阻止されて
断熱状態になる。
【0039】また,横プレート9を枢動させる作動手段
は,図示していないが,温度変動によって変形する形状
記憶合金,室内1と室外2との温度差によって変形する
バイメタル,温度センサによる室内1と室外2との温度
差の検出値に応答して作動するリンク機構,開口部1
0,11の開放によって中空壁体3内に発生する上昇自
然対流又は高温部から低温部への自然対流,及び/又は
開口部10又は11に設けられたファン22の駆動によ
って強制的に外気を導入して強制通風によって構成され
ている。開口部10又は11の近傍にファン22を設け
た場合には,ファン22の駆動は,シャッタ12,13
による開口部10,11の開放作動と連動して作動され
るように構成しておけばよい。また,横プレート9を枢
動作動をリンク機構に構成した場合には,シャッタ1
2,13による開口部10,11の開放作動と連動して
作動されるように構成しておけばよい。
【0040】壁構造体20は,上記の構成によって,シ
ャッタ12,13による開口部10,11の開放時に
は,横プレート9が支点14を中心に枢動し,セル状空
間6が連通して縦プレート8に沿って熱流に垂直な方向
の流れ通路17が形成され,室外2からの外気が下部の
開口部11から中空壁体3内に流入し,上部の開口10
から室外2へ流出し,縦プレート8に沿って流れが発生
して中空壁体3が伝熱壁体となって伝熱状態になる。
【0041】低熱伝導性格子体15のセル状空間6に
は,空気が存在するものである。更に,セル状空間6に
は,低熱伝導性多孔質セラミックス,低熱伝導性繊維セ
ラミックス等の断熱材が充填してもよいものである。ま
た,低熱伝導性格子体15のプレート8,9によって形
成されるセル状空間6は,高熱伝導性プレート7に対向
する面が四角形,ハニカム,蜂の巣状等の多角形に形成
することができるが,縦プレート8と横プレート9とを
考慮した場合には,伝熱状態にすることから四角形であ
ることが好ましい。更に,壁構造体20における低熱伝
導性格子体15は,通常,可能な限り薄く構成すること
が好ましく,熱が流れようとする熱流方向Qに直交する
方向に配置され,熱流によって断熱性を損なわないよう
に,縦プレート8と横プレート9とを低熱伝導性の材料
で製作することが好ましく,縦プレート8と横プレート
9との熱伝導を少なくするため,例えば,内外面を鏡面
部材,アルミニウム箔,銅箔等を貼り付けて,輻射熱を
阻止する構造に構成することもできる。
【0042】更に,高熱伝導性プレート7は,銅,銀,
アルミニウム,それらの合金等の金属から成る繊維,不
織布又はパンチング板材,マイクロヒートパイプ,又は
AlN,SiC,Si3 4 等のセラミック繊維,不織
布又は板材,或いはこれらの複合材から成る平らな層状
に形成されている。また,高熱伝導性プレート7は,上
記の材料から選定された材料から形成された繊維やプレ
ートが層状の形状に形成されたものである。従って,高
熱伝導性プレート7は,層状面内の温度に差が生じると
速やかに熱伝導が行われ,層状面内温度を速やかに均一
化し,低熱伝導性格子体15のセル状空間6内を等温化
し,内部自然熱対流の発生を防止することができる。
【0043】
【発明の効果】この発明による断熱と伝熱を行なう壁構
造体は,上記のように構成されているので,低熱伝導性
格子体に形成されたセル状空間に基本的にはファイバ等
の低熱伝導率固体を充填せずに,熱流方向に対して直交
して高熱伝導性プレートのみを指向配置したので,中空
壁体内の高熱伝導性プレートによって熱流方向と直交す
る方向の等温性を維持し,中空壁体内の低熱伝導性格子
体のセル状空間に封入された気体に自然熱対流が発生す
るのが抑制され,断熱性能を向上させることができる。
従って,この壁構造体は,自動車等の車両の冷蔵冷凍
庫,恒温庫,温蔵庫等の壁体は勿論のこと,住宅,ビル
等の建造物,構造物の壁体として適用して断熱性能を高
め,省エネルギへ貢献すると共に,中空壁体内の電子機
器,機械装置,気体や液体の流体,食品等を温度影響か
ら保護し,各種の壁体に適用して極めて好ましいもので
ある。また,この壁構造体は,室内が室外より高温状態
であり,室内を高温状態に維持することが好ましくない
場合には,中空壁体の外側プレートに設けたシャッタを
作動して開口部を開放し,伝熱壁体にし,室内から室外
へ放熱して室内の温度低下を行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明による断熱と伝熱を行なう壁構造体の
一実施例を示し,断熱壁体として機能する構造を示す断
面図である。
【図2】図1の断熱と伝熱を行なう壁構造体において伝
熱壁体として機能する構造を示す断面図である。
【図3】図1の断熱と伝熱を行なう壁構造体における低
熱伝導性格子体と高熱伝導性プレートとの関係構造を示
す斜視図である。
【図4】図1の断熱と伝熱を行なう壁構造体を建造物に
適用した場合の断熱状態を示す説明図である。
【図5】図4の壁構造体を建造物に適用した場合の伝熱
状態を示す説明図である。
【図6】従来の壁構造体を建造物に適用した場合の断熱
状態を示す説明図である。
【図7】図6の壁構造体を建造物に適用した場合の伝熱
状態を示す説明図である。
【符号の説明】
1 室内 2 室外 3 中空壁体 4 内側プレート 5 外側プレート 6 セル状空間 7 高熱伝導性プレート 8 縦プレート 9 横プレート 10,11 開口部 12,13 シャッタ 14 支点 15 低熱伝導性格子体 16 温度センサ 17 流れ通路 20 壁構造体 22 ファン D 奥行き(横プレート間の長さ) Q 熱流方向 L プレート間の長さ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (71)出願人 591065549 福岡県 福岡県福岡市博多区東公園7番7号 (71)出願人 390001568 昭和鉄工株式会社 福岡県福岡市東区箱崎ふ頭3丁目1番35号 (71)出願人 000127064 株式会社アルム 福岡県大牟田市四山町80番地の23 (71)出願人 592071118 株式会社佐電工 佐賀県佐賀市天神1丁目4番3号 (72)発明者 増岡 隆士 福岡県北九州市八幡西区折尾4−31−24 (72)発明者 谷川 洋文 福岡県遠賀郡遠賀町大字今古賀789−2 (72)発明者 中村 裕章 福岡県田川市大字夏吉1261−41 (72)発明者 大西 満春 福岡県福岡市南区大楠3−24−15−304 (72)発明者 右田 慎司 福岡県大牟田市亀甲町67−3 (72)発明者 島田 義充 佐賀県佐賀市新郷本町19番35号 Fターム(参考) 2E001 DD00 FA04 GA48 HB01 NA07 ND12

Claims (15)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 室内と室外を仕切る外側プレートと内側
    プレートから構成された中空壁体,該中空壁体内に配置
    され且つ熱流に直交する方向の全域に指向配置された等
    温面を形成する少なくとも1層の高熱伝導性プレート,
    及び前記中空壁体内に配置され且つ前記高熱伝導性プレ
    ートに垂直で厚さ方向に延びる多数のセル状空間を形成
    する縦プレートと横プレートから構成される低熱伝導性
    格子体を有し,前記横プレートが一辺を支点として枢動
    可能に取り付けられていることから成る断熱と伝熱を行
    なう壁構造体。
  2. 【請求項2】 前記横プレートは,少なくとも前記中空
    壁体の前記内側プレートに隣接する前記セル状空間に配
    置されたもののみ又は全てが枢動可能に構成されている
    ことから成る請求項1に記載の断熱と伝熱を行なう壁構
    造体。
  3. 【請求項3】 前記横プレートは,前記中空壁体,前記
    高熱伝導性プレート及び/又は前記縦プレートに対して
    枢動可能に取り付けられていることから成る請求項1に
    記載の断熱と伝熱を行なう壁構造体。
  4. 【請求項4】 前記中空壁体を構成する前記外側プレー
    トと前記内側プレートは,高熱伝導性材料で作製されて
    いることから成る請求項1に記載の断熱と伝熱を行なう
    壁構造体。
  5. 【請求項5】 前記外側プレートの上部と下部とに形成
    された開口部,該開口部を開閉するシャッタ,及び該シ
    ャッタを開閉作動する開閉作動手段を有することから成
    る請求項1に記載の断熱と伝熱を行なう壁構造体。
  6. 【請求項6】 前記シャッタを開閉作動する前記開閉作
    動手段は,温度変動によって変形する形状記憶合金,前
    記室内と前記室外の温度差に応答して変形するバイメタ
    ル,及び/又は前記温度差に応答して作動するリンク機
    構であることから成る請求項5に記載の断熱と伝熱を行
    なう壁構造体。
  7. 【請求項7】 前記シャッタによる前記開口部の閉鎖時
    には,前記横プレートが前記高熱伝導性プレートに対し
    て垂直方向に延びて前記縦プレートに沿う流れを阻止し
    て前記中空壁体内が断熱状態になることから成る請求項
    5に記載の断熱と伝熱を行なう壁構造体。
  8. 【請求項8】 前記シャッタによる前記開口部の開放時
    には,前記横プレートが枢動して前記セル状空間が連通
    し,前記室外からの外気が前記中空壁体内に流入して前
    記縦プレートに沿って流れが発生して前記中空壁体内が
    伝熱状態になることから成る請求項5に記載の断熱と伝
    熱を行なう壁構造体。
  9. 【請求項9】 前記シャッタによる前記開口部の開放時
    には,前記中空壁体内に発生する上昇自然対流,高温部
    から低温部への自然対流,及び/又は前記開口部に設け
    られたファンの駆動によって強制的に外気を導入して強
    制通風を行ない,前記室内から前記室外へ放熱すること
    から成る請求項8に記載の断熱と伝熱を行なう壁構造
    体。
  10. 【請求項10】 前記横プレートを枢動させる作動手段
    は,温度変動によって変形する形状記憶合金,前記室内
    と前記室外の温度差に応答して変形するバイメタル,前
    記温度差に応答して作動するリンク機構,前記開口部の
    開放によって前記中空壁体内に発生する上昇自然対流又
    は高温部から低温部への自然対流,及び/又は前記開口
    部に設けられたファンの駆動によって発生する強制的な
    通風から構成されていることから成る請求項1に記載の
    断熱と伝熱を行なう壁構造体。
  11. 【請求項11】 建造物,構造物,冷蔵冷凍庫,恒温
    庫,温蔵庫,物体収容ケース,シェル等の密閉室の壁体
    に適用されることから成る請求項1に記載の断熱と伝熱
    を行なう壁構造体。
  12. 【請求項12】 前記高熱伝導性プレートに接する前記
    低熱伝導性格子体におけるそれぞれの前記セル状空間を
    形成する前記横プレート間の長さLと前記低熱伝導性格
    子体の奥行きとなる前記高熱伝導性プレート間の長さD
    とは,前記セル状空間内に自然熱対流の発生を抑制して
    遮熱度を適正化するアペックス比(L/D)に設定され
    ていることから成る請求項1に記載の断熱と伝熱を行な
    う壁構造体。
  13. 【請求項13】 前記低熱伝導性格子体の前記セル状空
    間は,前記横プレート間と前記縦プレート間との長さは
    同一長さに形成されていることから成る請求項12に記
    載の断熱と伝熱を行なう壁構造体。
  14. 【請求項14】 前記低熱伝導性格子体の前記セル状空
    間には,空気又は低熱伝導性多孔質セラミックス,低熱
    伝導性繊維セラミックス等の断熱材が充填されているこ
    とから成る請求項13に記載の断熱と伝熱を行なう壁構
    造体。
  15. 【請求項15】 前記高熱伝導性プレートは,銅,銀,
    アルミニウム,それらの合金等の金属から成る繊維,不
    織布又はパンチング板材,マイクロヒートパイプ,又は
    AlN,SiC,Si3 4 等のセラミック繊維,不織
    布又は板材,或いはこれらの複合材から成る平らな層状
    に形成されていることから成る請求項1に記載の断熱と
    伝熱を行なう壁構造体。
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