JP2002302972A - 軸受部の水素脆性防止方法、軸受部用の潤滑剤および軸受装置 - Google Patents
軸受部の水素脆性防止方法、軸受部用の潤滑剤および軸受装置Info
- Publication number
- JP2002302972A JP2002302972A JP2001107462A JP2001107462A JP2002302972A JP 2002302972 A JP2002302972 A JP 2002302972A JP 2001107462 A JP2001107462 A JP 2001107462A JP 2001107462 A JP2001107462 A JP 2001107462A JP 2002302972 A JP2002302972 A JP 2002302972A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- lubricant
- hydrogen
- bearing
- metal powder
- outer ring
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Pending
Links
Landscapes
- Component Parts Of Construction Machinery (AREA)
- Rolling Contact Bearings (AREA)
- Lubricants (AREA)
Abstract
(57)【要約】
【課題】 軸受部の摺動面が潤滑剤から発生する水素の
影響で脆性劣化するのを防止し、耐久性、寿命を向上で
きるようにする。 【解決手段】 旋回用の油圧モータ10の回転を減速機
4内の遊星歯車減速機構14,19によって2段階に減
速し、減速機4の出力軸24から高トルクの回転力を取
り出す。出力軸24のピニオン25が噛合する旋回輪3
2の内輪34と外輪35との間には複数の鋼球36を設
け、各鋼球36の摺動面側にはグリースによる油膜を形
成する。そして、このグリース中には予め水素を吸着・
吸蔵可能な金属粉末を添加し混合しておく。出力軸24
の回転により旋回輪32の外輪35が回転し、高温条件
下でグリース中の水分から水素が発生した場合に、この
水素を金属粉末で吸着し、水素が外輪35等の結晶粒界
に浸入するのを防止する。
影響で脆性劣化するのを防止し、耐久性、寿命を向上で
きるようにする。 【解決手段】 旋回用の油圧モータ10の回転を減速機
4内の遊星歯車減速機構14,19によって2段階に減
速し、減速機4の出力軸24から高トルクの回転力を取
り出す。出力軸24のピニオン25が噛合する旋回輪3
2の内輪34と外輪35との間には複数の鋼球36を設
け、各鋼球36の摺動面側にはグリースによる油膜を形
成する。そして、このグリース中には予め水素を吸着・
吸蔵可能な金属粉末を添加し混合しておく。出力軸24
の回転により旋回輪32の外輪35が回転し、高温条件
下でグリース中の水分から水素が発生した場合に、この
水素を金属粉末で吸着し、水素が外輪35等の結晶粒界
に浸入するのを防止する。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、例えば油圧ショベ
ル、油圧クレーン等の旋回式建設機械に好適に用いられ
る軸受部の水素脆性防止方法、軸受部用の潤滑剤および
軸受装置に関する。
ル、油圧クレーン等の旋回式建設機械に好適に用いられ
る軸受部の水素脆性防止方法、軸受部用の潤滑剤および
軸受装置に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に、油圧ショベル、油圧クレーン等
の建設機械は、下部側の走行体と、この走行体上に旋回
可能に搭載された上部側の旋回体とからなり、この旋回
体と走行体との間には、前記旋回体を走行体上で旋回駆
動するための旋回装置が設けられている。
の建設機械は、下部側の走行体と、この走行体上に旋回
可能に搭載された上部側の旋回体とからなり、この旋回
体と走行体との間には、前記旋回体を走行体上で旋回駆
動するための旋回装置が設けられている。
【0003】そして、このような旋回装置は、下端側が
旋回体に取付けられ上端側に回転源が設けられた旋回用
減速機のハウジングと、このハウジング内に設けられ前
記回転源の回転を減速する減速機構と、前記ハウジング
内から走行体側に向けて突出し前記減速機構により減速
された回転を出力するピニオンを有した出力軸と、前記
出力軸の軸方向に離間して前記ハウジングと出力軸との
間に設けられ前記出力軸を回転可能に支持する上,下の
軸受と、前記旋回体と走行体との間に設けられ前記出力
軸のピニオンに噛合する旋回輪とを備えている(例え
ば、特開平9−21143号公報等)。
旋回体に取付けられ上端側に回転源が設けられた旋回用
減速機のハウジングと、このハウジング内に設けられ前
記回転源の回転を減速する減速機構と、前記ハウジング
内から走行体側に向けて突出し前記減速機構により減速
された回転を出力するピニオンを有した出力軸と、前記
出力軸の軸方向に離間して前記ハウジングと出力軸との
間に設けられ前記出力軸を回転可能に支持する上,下の
軸受と、前記旋回体と走行体との間に設けられ前記出力
軸のピニオンに噛合する旋回輪とを備えている(例え
ば、特開平9−21143号公報等)。
【0004】この種の従来技術による旋回装置は、旋回
用の油圧モータからなる回転源によりピニオンを回転駆
動すると、前記ピニオンが旋回輪の内輪に設けた内歯と
噛合しつつ内輪の周囲を公転することにより、このピニ
オンの公転力を旋回装置のハウジングを介して旋回体側
に伝え、これによって旋回体を走行体に対し低速、高ト
ルクで旋回駆動するものである。
用の油圧モータからなる回転源によりピニオンを回転駆
動すると、前記ピニオンが旋回輪の内輪に設けた内歯と
噛合しつつ内輪の周囲を公転することにより、このピニ
オンの公転力を旋回装置のハウジングを介して旋回体側
に伝え、これによって旋回体を走行体に対し低速、高ト
ルクで旋回駆動するものである。
【0005】このとき、旋回体側に設けられた旋回輪の
外輪は、走行体側に固定して設けられた旋回輪の内輪に
対しボール、ローラ等の転動体を介して相対回転し、こ
れらの転動体と内輪、外輪との摺動面(転動面)は、グ
リース等の潤滑剤を用いて油膜が形成されることにより
潤滑状態に保持されている。
外輪は、走行体側に固定して設けられた旋回輪の内輪に
対しボール、ローラ等の転動体を介して相対回転し、こ
れらの転動体と内輪、外輪との摺動面(転動面)は、グ
リース等の潤滑剤を用いて油膜が形成されることにより
潤滑状態に保持されている。
【0006】また、旋回用減速機のハウジングと出力軸
との間に設けた上,下の軸受についても、外輪と内輪と
の間にボール、ローラ等の転動体を設けると共に、その
摺動面(転動面)には潤滑剤を供給することにより出力
軸の円滑な回転を補償しているものである。
との間に設けた上,下の軸受についても、外輪と内輪と
の間にボール、ローラ等の転動体を設けると共に、その
摺動面(転動面)には潤滑剤を供給することにより出力
軸の円滑な回転を補償しているものである。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】ところで、上述した従
来技術では、建設機械の高速化、高機能化の要求に伴っ
て、例えば旋回装置の旋回輪、ハウジング内の軸受等
が、より過酷な条件下で使用されるようになっており、
これらの軸受部の耐久性、寿命を向上させることが大き
な課題となっている。
来技術では、建設機械の高速化、高機能化の要求に伴っ
て、例えば旋回装置の旋回輪、ハウジング内の軸受等
が、より過酷な条件下で使用されるようになっており、
これらの軸受部の耐久性、寿命を向上させることが大き
な課題となっている。
【0008】即ち、このような軸受部の外輪と内輪と
は、ボール、ローラ等の転動体を介して相対回転し、各
転動体と内輪、外輪との間の摺動面には、グリース等の
潤滑剤を供給することにより潤滑状態に保つようにして
いる。
は、ボール、ローラ等の転動体を介して相対回転し、各
転動体と内輪、外輪との間の摺動面には、グリース等の
潤滑剤を供給することにより潤滑状態に保つようにして
いる。
【0009】しかし、高速、高荷重等の過酷な条件下で
使用される軸受部は、潤滑剤が高温状態となって、潤滑
剤中に含まれた水分が分解し水素が発生することがあ
る。そして、このような水素は、例えば外輪側の摺動面
から内部の結晶粒界中に浸入して拡散し、鋼材等からな
る外輪の結晶粒界では、水素の影響により結晶間の結合
力が低下して所謂脆性劣化を起こす原因となる。
使用される軸受部は、潤滑剤が高温状態となって、潤滑
剤中に含まれた水分が分解し水素が発生することがあ
る。そして、このような水素は、例えば外輪側の摺動面
から内部の結晶粒界中に浸入して拡散し、鋼材等からな
る外輪の結晶粒界では、水素の影響により結晶間の結合
力が低下して所謂脆性劣化を起こす原因となる。
【0010】このため、従来技術では、軸受部の摺動面
に新生面(例えば、油膜が切れて摩耗、損傷等が生じ易
くなった面)が発生し、軸受寿命が低下するばかりでな
く、機械全体の耐久性、寿命が低下するという問題があ
る。
に新生面(例えば、油膜が切れて摩耗、損傷等が生じ易
くなった面)が発生し、軸受寿命が低下するばかりでな
く、機械全体の耐久性、寿命が低下するという問題があ
る。
【0011】本発明は上述した従来技術の問題に鑑みな
されたもので、本発明の目的は、軸受部の摺動面が潤滑
剤から発生する水素の影響で脆性劣化するのを防止で
き、耐久性、寿命を向上できるようにした軸受部の水素
脆性防止方法、軸受部用の潤滑剤および軸受装置を提供
することにある。
されたもので、本発明の目的は、軸受部の摺動面が潤滑
剤から発生する水素の影響で脆性劣化するのを防止で
き、耐久性、寿命を向上できるようにした軸受部の水素
脆性防止方法、軸受部用の潤滑剤および軸受装置を提供
することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】上述した課題を解決する
ために、請求項1の発明は、潤滑剤による油膜を形成し
た軸受部の摺動面が前記潤滑剤から発生する水素の影響
によって脆性劣化するのを防ぐため、水素を吸着・吸蔵
する金属粉末を前記潤滑剤に添加してなる軸受部の水素
脆性防止方法を採用している。
ために、請求項1の発明は、潤滑剤による油膜を形成し
た軸受部の摺動面が前記潤滑剤から発生する水素の影響
によって脆性劣化するのを防ぐため、水素を吸着・吸蔵
する金属粉末を前記潤滑剤に添加してなる軸受部の水素
脆性防止方法を採用している。
【0013】このような水素脆性防止方法を採用するこ
とにより、例えば軸受部の転動体が内輪、外輪の摺動面
に転動(摺動)を繰返して発熱し、この熱影響で潤滑剤
の温度が上昇して潤滑剤中の水分から水素が分解(発
生)した場合でも、潤滑剤に予め添加した金属粉末は周
囲の水素を吸着・吸蔵することができるので、例えば内
輪、外輪の摺動面から内部の結晶粒界中に水素が浸入し
拡散するのを防止でき、軸受部が水素の影響で脆性劣化
するのを抑えることができる。
とにより、例えば軸受部の転動体が内輪、外輪の摺動面
に転動(摺動)を繰返して発熱し、この熱影響で潤滑剤
の温度が上昇して潤滑剤中の水分から水素が分解(発
生)した場合でも、潤滑剤に予め添加した金属粉末は周
囲の水素を吸着・吸蔵することができるので、例えば内
輪、外輪の摺動面から内部の結晶粒界中に水素が浸入し
拡散するのを防止でき、軸受部が水素の影響で脆性劣化
するのを抑えることができる。
【0014】また、請求項2の発明によると、金属粉末
は、潤滑剤中に1〜17重量%の比率で添加している。
これにより、金属粉末は旋回装置の軸受部等でも十分な
水素吸蔵作用を発揮することができる。
は、潤滑剤中に1〜17重量%の比率で添加している。
これにより、金属粉末は旋回装置の軸受部等でも十分な
水素吸蔵作用を発揮することができる。
【0015】一方、請求項3の発明は、潤滑剤による油
膜を形成した軸受部の摺動面が前記潤滑剤から発生する
水素の影響によって脆性劣化するのを防ぐため、水素を
吸着・吸蔵する金属粉末を前記摺動面に塗布してなる軸
受部の水素脆性防止方法を採用している。
膜を形成した軸受部の摺動面が前記潤滑剤から発生する
水素の影響によって脆性劣化するのを防ぐため、水素を
吸着・吸蔵する金属粉末を前記摺動面に塗布してなる軸
受部の水素脆性防止方法を採用している。
【0016】これにより、軸受部の摺動面に塗布した金
属粉末は、潤滑剤中の水分から発生した水素を吸着・吸
蔵することができるので、例えば内輪、外輪の摺動面か
ら内部の結晶粒界中に水素が浸入し拡散するのを防止で
き、軸受部が水素の影響で脆性劣化するのを抑えること
ができる。
属粉末は、潤滑剤中の水分から発生した水素を吸着・吸
蔵することができるので、例えば内輪、外輪の摺動面か
ら内部の結晶粒界中に水素が浸入し拡散するのを防止で
き、軸受部が水素の影響で脆性劣化するのを抑えること
ができる。
【0017】また、請求項4の発明によると、金属粉末
は、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)、銅(Cu)、
パラジウム(Pd)のうち少なくともいずれか一つの純
金属、チタン−銅(Ti−Cu)系、チタン−ニッケル
(Ti−Ni)系、ランタン−ニッケル(La−Ni)
系のアモルファス合金または酸化鉛(PbO)を用いた
金属酸化物からなる。
は、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)、銅(Cu)、
パラジウム(Pd)のうち少なくともいずれか一つの純
金属、チタン−銅(Ti−Cu)系、チタン−ニッケル
(Ti−Ni)系、ランタン−ニッケル(La−Ni)
系のアモルファス合金または酸化鉛(PbO)を用いた
金属酸化物からなる。
【0018】この場合には、ニッケル(Ni)、チタン
(Ti)、銅(Cu)またはパラジウム(Pd)のうち
少なくともいずれか一つの純金属を金属粉末として用い
ることにより、潤滑剤中の水分が分解して発生した水素
を効率的に吸着・吸蔵することができる。また、前記金
属粉末として、チタン−銅(Ti−Cu)系、チタン−
ニッケル(Ti−Ni)系、ランタン−ニッケル(La
−Ni)系のアモルファス合金または酸化鉛(PbO)
からなる金属酸化物を用いた場合でも、潤滑剤中の水分
が分解して発生した水素を効率的に吸着・吸蔵すること
ができる。
(Ti)、銅(Cu)またはパラジウム(Pd)のうち
少なくともいずれか一つの純金属を金属粉末として用い
ることにより、潤滑剤中の水分が分解して発生した水素
を効率的に吸着・吸蔵することができる。また、前記金
属粉末として、チタン−銅(Ti−Cu)系、チタン−
ニッケル(Ti−Ni)系、ランタン−ニッケル(La
−Ni)系のアモルファス合金または酸化鉛(PbO)
からなる金属酸化物を用いた場合でも、潤滑剤中の水分
が分解して発生した水素を効率的に吸着・吸蔵すること
ができる。
【0019】一方、請求項5の発明は、軸受部の摺動面
に油膜を形成するために用いる軸受部用の潤滑剤におい
て、高温条件下で発生する水素の影響により前記摺動面
が脆性劣化するのを防ぐため、水素を吸着・吸蔵する金
属粉末を添加して混合する構成としたことを特徴として
いる。
に油膜を形成するために用いる軸受部用の潤滑剤におい
て、高温条件下で発生する水素の影響により前記摺動面
が脆性劣化するのを防ぐため、水素を吸着・吸蔵する金
属粉末を添加して混合する構成としたことを特徴として
いる。
【0020】これにより、高温条件下で潤滑剤中の水分
が分解し水素が発生した場合でも、潤滑剤に予め添加し
て混合した金属粉末が水素を吸着したり、吸蔵したりす
るので、例えば軸受部の内輪または外輪の摺動面から内
部の結晶粒界中に水素が浸入し拡散するのを防止でき、
軸受部が水素の影響で脆性劣化するのを抑えることがで
きる。
が分解し水素が発生した場合でも、潤滑剤に予め添加し
て混合した金属粉末が水素を吸着したり、吸蔵したりす
るので、例えば軸受部の内輪または外輪の摺動面から内
部の結晶粒界中に水素が浸入し拡散するのを防止でき、
軸受部が水素の影響で脆性劣化するのを抑えることがで
きる。
【0021】また、請求項6の発明は、転動体を挟んで
互いに相対回転可能となった内輪と外輪とを有し、前記
内輪、外輪と各転動体との摺動面間に潤滑剤を介在させ
てなる軸受装置において、前記潤滑剤には潤滑剤から発
生した水素を吸着・吸蔵する金属粉末を添加する構成と
したことを特徴としている。
互いに相対回転可能となった内輪と外輪とを有し、前記
内輪、外輪と各転動体との摺動面間に潤滑剤を介在させ
てなる軸受装置において、前記潤滑剤には潤滑剤から発
生した水素を吸着・吸蔵する金属粉末を添加する構成と
したことを特徴としている。
【0022】このように構成したことにより、例えば軸
受装置の転動体が内輪、外輪の摺動面に転動(摺動)を
繰返して発熱し、この熱影響で潤滑剤の温度が上昇して
潤滑剤中の水分から水素が分解して発生した場合でも、
前記潤滑剤に予め添加した金属粉末が水素を吸着した
り、吸蔵したりするので、例えば内,外輪の摺動面から
内部の結晶粒界中に水素が浸入し拡散するのを防止で
き、軸受装置が水素の影響で脆性劣化するのを抑えるこ
とができる。
受装置の転動体が内輪、外輪の摺動面に転動(摺動)を
繰返して発熱し、この熱影響で潤滑剤の温度が上昇して
潤滑剤中の水分から水素が分解して発生した場合でも、
前記潤滑剤に予め添加した金属粉末が水素を吸着した
り、吸蔵したりするので、例えば内,外輪の摺動面から
内部の結晶粒界中に水素が浸入し拡散するのを防止で
き、軸受装置が水素の影響で脆性劣化するのを抑えるこ
とができる。
【0023】さらに、請求項7の発明によると、転動体
を挟んで互いに相対回転可能となった内輪と外輪とを有
し、前記内輪、外輪と各転動体との摺動面間に潤滑剤を
介在させてなる軸受装置において、前記内輪、外輪と各
転動体との摺動面には、前記潤滑剤から発生した水素を
吸着・吸蔵する金属粉末を塗布する構成としたことを特
徴としている。
を挟んで互いに相対回転可能となった内輪と外輪とを有
し、前記内輪、外輪と各転動体との摺動面間に潤滑剤を
介在させてなる軸受装置において、前記内輪、外輪と各
転動体との摺動面には、前記潤滑剤から発生した水素を
吸着・吸蔵する金属粉末を塗布する構成としたことを特
徴としている。
【0024】この場合でも、前記摺動面に予め塗布した
金属粉末が水素を吸着したり、吸蔵したりするので、例
えば内,外輪の摺動面から内部の結晶粒界中に水素が浸
入し拡散するのを防止でき、軸受装置が水素の影響で脆
性劣化するのを抑えることができる。
金属粉末が水素を吸着したり、吸蔵したりするので、例
えば内,外輪の摺動面から内部の結晶粒界中に水素が浸
入し拡散するのを防止でき、軸受装置が水素の影響で脆
性劣化するのを抑えることができる。
【0025】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態による
軸受部の水素脆性防止方法、軸受部用の潤滑剤および軸
受装置を、建設機械の旋回装置に適用した場合を例に挙
げ、添付図面に従って詳細に説明する。
軸受部の水素脆性防止方法、軸受部用の潤滑剤および軸
受装置を、建設機械の旋回装置に適用した場合を例に挙
げ、添付図面に従って詳細に説明する。
【0026】ここで、図1ないし図6は本発明の第1の
実施の形態を示している。図中、1は建設機械の走行体
(図示せず)の一部を構成する丸胴、2は旋回体(図示
せず)の一部を構成する旋回フレームをそれぞれ示して
いる。
実施の形態を示している。図中、1は建設機械の走行体
(図示せず)の一部を構成する丸胴、2は旋回体(図示
せず)の一部を構成する旋回フレームをそれぞれ示して
いる。
【0027】3は走行体側の丸胴1に対して旋回体側の
旋回フレーム2を旋回駆動するための旋回装置を示し、
この旋回装置3は、後述する旋回用の減速機4と、旋回
用の油圧モータ10および旋回輪32等とにより構成さ
れている。
旋回フレーム2を旋回駆動するための旋回装置を示し、
この旋回装置3は、後述する旋回用の減速機4と、旋回
用の油圧モータ10および旋回輪32等とにより構成さ
れている。
【0028】4は旋回フレーム2上に設けられた旋回用
の減速機で、この減速機4は、後述のハウジング5、遊
星歯車減速機構14,19、出力軸24、ピニオン2
5、上側軸受26、下側軸受28等から大略構成されて
いる。
の減速機で、この減速機4は、後述のハウジング5、遊
星歯車減速機構14,19、出力軸24、ピニオン2
5、上側軸受26、下側軸受28等から大略構成されて
いる。
【0029】5は減速機4の外殻をなす筒状のハウジン
グで、このハウジング5は、下端側が旋回フレーム2の
上面側に固着された下側ハウジング6と、下側ハウジン
グ6の上端側に固着して設けられた上側ハウジング7等
とにより構成されている。
グで、このハウジング5は、下端側が旋回フレーム2の
上面側に固着された下側ハウジング6と、下側ハウジン
グ6の上端側に固着して設けられた上側ハウジング7等
とにより構成されている。
【0030】ここで、下側ハウジング6の下端側には、
径方向外向きに突出しボルト8等により旋回フレーム2
に固着された下フランジ部6Aと、下フランジ部6Aの
径方向内側に位置して下向きに突出し、内周側に後述の
下側軸受28が取付けられた環状の軸受取付部6Bとが
形成されている。
径方向外向きに突出しボルト8等により旋回フレーム2
に固着された下フランジ部6Aと、下フランジ部6Aの
径方向内側に位置して下向きに突出し、内周側に後述の
下側軸受28が取付けられた環状の軸受取付部6Bとが
形成されている。
【0031】また、下側ハウジング6の内周側には、軸
受取付部6Bよりも上側に位置して後述のシールリング
31が装着されるシール装着部6Cと、シール装着部6
Cの上側に位置して後述の上側軸受26が取付られる他
の軸受取付部6Dとが設けられている。そして、下側ハ
ウジング6の上端側にはテーパ状に拡径した上フランジ
部6Eが形成され、この上フランジ部6Eには上側ハウ
ジング7の下端側がボルト9等によって固着されてい
る。
受取付部6Bよりも上側に位置して後述のシールリング
31が装着されるシール装着部6Cと、シール装着部6
Cの上側に位置して後述の上側軸受26が取付られる他
の軸受取付部6Dとが設けられている。そして、下側ハ
ウジング6の上端側にはテーパ状に拡径した上フランジ
部6Eが形成され、この上フランジ部6Eには上側ハウ
ジング7の下端側がボルト9等によって固着されてい
る。
【0032】ここで、上側ハウジング7の上端側には、
回転源としての旋回用の油圧モータ10がボルト11等
により固着され、前記油圧モータ10の回転軸10A
は、上側ハウジング7内へと下向きに伸長している。ま
た、上側ハウジング7の内周側には、上下方向(軸方向
に)に離間して2つの内歯12,13が全周に亘って形
成されている。
回転源としての旋回用の油圧モータ10がボルト11等
により固着され、前記油圧モータ10の回転軸10A
は、上側ハウジング7内へと下向きに伸長している。ま
た、上側ハウジング7の内周側には、上下方向(軸方向
に)に離間して2つの内歯12,13が全周に亘って形
成されている。
【0033】14は油圧モータ10の下方に位置して上
側ハウジング7内に配設された1段目の遊星歯車減速機
構で、この遊星歯車減速機構14は、油圧モータ10の
回転軸10Aにスプライン結合された太陽歯車15と、
太陽歯車15と上側ハウジング7の内歯12とに噛合
し、太陽歯車15の周囲を自転しつつ公転する複数の遊
星歯車16(1個のみ図示)と、前記各遊星歯車16を
ピン17を介して回転可能に支持するキャリア18とか
ら構成されている。
側ハウジング7内に配設された1段目の遊星歯車減速機
構で、この遊星歯車減速機構14は、油圧モータ10の
回転軸10Aにスプライン結合された太陽歯車15と、
太陽歯車15と上側ハウジング7の内歯12とに噛合
し、太陽歯車15の周囲を自転しつつ公転する複数の遊
星歯車16(1個のみ図示)と、前記各遊星歯車16を
ピン17を介して回転可能に支持するキャリア18とか
ら構成されている。
【0034】19は遊星歯車減速機構14の下方に位置
して上側ハウジング7内に配設された2段目の遊星歯車
減速機構で、この遊星歯車減速機構19は、遊星歯車減
速機構14のキャリア18にスプライン結合された太陽
歯車20と、太陽歯車20と上側ハウジング7の内歯1
3とに噛合し、太陽歯車20の周囲を自転しつつ公転す
る複数の遊星歯車21(1個のみ図示)と、各遊星歯車
21をピン22を介して回転可能に支持するキャリア2
3とから構成されている。
して上側ハウジング7内に配設された2段目の遊星歯車
減速機構で、この遊星歯車減速機構19は、遊星歯車減
速機構14のキャリア18にスプライン結合された太陽
歯車20と、太陽歯車20と上側ハウジング7の内歯1
3とに噛合し、太陽歯車20の周囲を自転しつつ公転す
る複数の遊星歯車21(1個のみ図示)と、各遊星歯車
21をピン22を介して回転可能に支持するキャリア2
3とから構成されている。
【0035】そして、キャリア23は、後述する出力軸
24の上端側にスプライン結合され、各遊星歯車21の
公転を出力軸24に伝達するものである。これにより油
圧モータ10は、回転軸10Aの回転が遊星歯車減速機
構14,19によって2段階に減速され、出力軸24を
大トルクで回転させる。
24の上端側にスプライン結合され、各遊星歯車21の
公転を出力軸24に伝達するものである。これにより油
圧モータ10は、回転軸10Aの回転が遊星歯車減速機
構14,19によって2段階に減速され、出力軸24を
大トルクで回転させる。
【0036】24はハウジング5内に回転可能に設けら
れた出力軸を示し、この出力軸24は下側ハウジング6
内で後述の上側軸受26と下側軸受28により回転可能
に支持されている。そして、出力軸24は、油圧モータ
10の回転を各遊星歯車減速機構14,19により減速
して出力するものである。
れた出力軸を示し、この出力軸24は下側ハウジング6
内で後述の上側軸受26と下側軸受28により回転可能
に支持されている。そして、出力軸24は、油圧モータ
10の回転を各遊星歯車減速機構14,19により減速
して出力するものである。
【0037】25は出力軸24の下端側に一体に設けら
れたピニオンで、このピニオン25は、下側ハウジング
6の軸受取付部6Bよりも下方へと後述のグリースバス
38内に向けて突出し、後述する旋回輪32の内歯37
と噛合している。
れたピニオンで、このピニオン25は、下側ハウジング
6の軸受取付部6Bよりも下方へと後述のグリースバス
38内に向けて突出し、後述する旋回輪32の内歯37
と噛合している。
【0038】26は下側ハウジング6の軸受取付部6D
と出力軸24との間に設けられた上側軸受で、この上側
軸受26は、図2に示す如く下側ハウジング6の軸受取
付部6D内周側に嵌合された外輪26Aと、出力軸24
の外周側に挿嵌された内輪26Bと、外輪26Aと内輪
26Bとの間に設けられた複数の転動体としてのローラ
26C(2個のみ図示)等とにより構成されている。
と出力軸24との間に設けられた上側軸受で、この上側
軸受26は、図2に示す如く下側ハウジング6の軸受取
付部6D内周側に嵌合された外輪26Aと、出力軸24
の外周側に挿嵌された内輪26Bと、外輪26Aと内輪
26Bとの間に設けられた複数の転動体としてのローラ
26C(2個のみ図示)等とにより構成されている。
【0039】そして、上側軸受26は、後述の下側軸受
28と共に出力軸24を回転可能に支持しているもので
ある。また、上側軸受26は、出力軸24の外周側に螺
着されたリングナット27により、内輪26B側が出力
軸24の軸方向に位置決めされている。
28と共に出力軸24を回転可能に支持しているもので
ある。また、上側軸受26は、出力軸24の外周側に螺
着されたリングナット27により、内輪26B側が出力
軸24の軸方向に位置決めされている。
【0040】28は下側ハウジング6と出力軸24との
間に設けられた下側軸受で、この下側軸受28は、図2
に示す如く下側ハウジング6の軸受取付部6B内周側に
嵌合された外輪28Aと、出力軸24の下部側外周に挿
嵌された内輪28Bと、外輪28Aと内輪28Bとの間
に設けられた複数の転動体としてのローラ28C(2個
のみ図示)等とにより構成されている。
間に設けられた下側軸受で、この下側軸受28は、図2
に示す如く下側ハウジング6の軸受取付部6B内周側に
嵌合された外輪28Aと、出力軸24の下部側外周に挿
嵌された内輪28Bと、外輪28Aと内輪28Bとの間
に設けられた複数の転動体としてのローラ28C(2個
のみ図示)等とにより構成されている。
【0041】そして、下側軸受28は、外輪28Aと内
輪28Bとの間に位置してローラ28Cの軸方向両側
(上,下両側)等に固形潤滑剤29が設けられた自己潤
滑性の軸受として構成され、上側軸受26と共に出力軸
24を回転可能に支持するものである。
輪28Bとの間に位置してローラ28Cの軸方向両側
(上,下両側)等に固形潤滑剤29が設けられた自己潤
滑性の軸受として構成され、上側軸受26と共に出力軸
24を回転可能に支持するものである。
【0042】ここで、前記固形潤滑剤29は、例えばポ
リアミド、ポリエチレン、フッ素樹脂等からなる液状の
樹脂材料にグリース等の潤滑剤を含浸させ、これを加
熱、冷却することにより固形油として形成されるもので
ある。なお、この場合でも、グリース等の潤滑剤には後
述の如く金属粉末41が添加して混合されている。
リアミド、ポリエチレン、フッ素樹脂等からなる液状の
樹脂材料にグリース等の潤滑剤を含浸させ、これを加
熱、冷却することにより固形油として形成されるもので
ある。なお、この場合でも、グリース等の潤滑剤には後
述の如く金属粉末41が添加して混合されている。
【0043】また、このような固形潤滑剤29は、例え
ば下側軸受28の組立工程等において、外輪28Aと内
輪28Bとの間にローラ28Cの上,下両側または一側
から液状のまま充填され、この状態で固形化されること
によりローラ28Cの上,下両側を覆うように配置され
る。
ば下側軸受28の組立工程等において、外輪28Aと内
輪28Bとの間にローラ28Cの上,下両側または一側
から液状のまま充填され、この状態で固形化されること
によりローラ28Cの上,下両側を覆うように配置され
る。
【0044】そして、下側軸受28は、外輪28Aと内
輪28Bとの間でローラ28Cが転動するときに、固形
潤滑剤29が両者の転動面に徐々に滲み出し、これによ
って外輪28A、内輪28Bとローラ28Cとの間の転
動面を常に潤滑状態に保持するものである。
輪28Bとの間でローラ28Cが転動するときに、固形
潤滑剤29が両者の転動面に徐々に滲み出し、これによ
って外輪28A、内輪28Bとローラ28Cとの間の転
動面を常に潤滑状態に保持するものである。
【0045】30は下側軸受28とピニオン25との間
に設けられた環状の間座で、この間座30は、図1、図
2に示す如く下側軸受28の内輪28Bとピニオン25
との間に位置して出力軸24の外周に嵌合され、下側軸
受28の内輪28Bを出力軸24の軸方向に位置決めす
るものである。
に設けられた環状の間座で、この間座30は、図1、図
2に示す如く下側軸受28の内輪28Bとピニオン25
との間に位置して出力軸24の外周に嵌合され、下側軸
受28の内輪28Bを出力軸24の軸方向に位置決めす
るものである。
【0046】31は上側軸受26と下側軸受28との間
に位置してハウジング5内に設けられたシール部材とし
てのシールリングで、このシールリング31は、外周側
が下側ハウジング6のシール装着部6Cに装着され、内
周側が出力軸24の外周面に適度な弾性力をもって液密
に摺接している。
に位置してハウジング5内に設けられたシール部材とし
てのシールリングで、このシールリング31は、外周側
が下側ハウジング6のシール装着部6Cに装着され、内
周側が出力軸24の外周面に適度な弾性力をもって液密
に摺接している。
【0047】そして、シールリング31は、遊星歯車減
速機構14,19および上側軸受26等を潤滑するため
図1に示す如くハウジング5内に収容した後述の潤滑油
39を、下側ハウジング6のシール装着部6Cと出力軸
24との間で封止すると共に、この潤滑油39が下側ハ
ウジング6内でシール装着部6Cよりも下方へと漏洩す
るのを阻止している。
速機構14,19および上側軸受26等を潤滑するため
図1に示す如くハウジング5内に収容した後述の潤滑油
39を、下側ハウジング6のシール装着部6Cと出力軸
24との間で封止すると共に、この潤滑油39が下側ハ
ウジング6内でシール装着部6Cよりも下方へと漏洩す
るのを阻止している。
【0048】32は丸胴1と旋回フレーム2との間には
設けられた旋回輪で、この旋回輪32は、丸胴1の上面
にボルト33等を用いて固着された内輪34と、旋回フ
レーム2の下面に他のボルト(図示せず)等を用いて固
着された外輪35と、内輪34と外輪35との間に配設
された複数の転動体としての鋼球36(1個のみ図示)
とにより構成され、旋回フレーム2を丸胴1に対して旋
回可能に支持するものである。
設けられた旋回輪で、この旋回輪32は、丸胴1の上面
にボルト33等を用いて固着された内輪34と、旋回フ
レーム2の下面に他のボルト(図示せず)等を用いて固
着された外輪35と、内輪34と外輪35との間に配設
された複数の転動体としての鋼球36(1個のみ図示)
とにより構成され、旋回フレーム2を丸胴1に対して旋
回可能に支持するものである。
【0049】また、旋回輪32には内輪34の内周側に
内歯37が全周に亘って形成され、この内歯37には前
述した減速機4のピニオン25が噛合している。そし
て、旋回輪32は、ピニオン25の公転力が減速機4の
ハウジング5側に伝えられるときに、外輪35が旋回フ
レーム2と一緒に内輪34の周囲を回転し、これにより
旋回体は走行体に対して高トルクで旋回駆動されるもの
である。
内歯37が全周に亘って形成され、この内歯37には前
述した減速機4のピニオン25が噛合している。そし
て、旋回輪32は、ピニオン25の公転力が減速機4の
ハウジング5側に伝えられるときに、外輪35が旋回フ
レーム2と一緒に内輪34の周囲を回転し、これにより
旋回体は走行体に対して高トルクで旋回駆動されるもの
である。
【0050】ここで、旋回輪32の内輪34には、図3
に示す如く鋼球36が転動する凹溝状の摺動面34Aが
形成され、外輪35には同じく凹溝からなる摺動面35
Aが形成されている。そして、これらの摺動面34A,
35Aと各鋼球36との間には、図3および図4に示す
如く後述のグリース40が供給(給脂)され、このグリ
ース40中には、後述の金属粉末41が予め添加して混
合されている。
に示す如く鋼球36が転動する凹溝状の摺動面34Aが
形成され、外輪35には同じく凹溝からなる摺動面35
Aが形成されている。そして、これらの摺動面34A,
35Aと各鋼球36との間には、図3および図4に示す
如く後述のグリース40が供給(給脂)され、このグリ
ース40中には、後述の金属粉末41が予め添加して混
合されている。
【0051】38は内歯37の下側に位置して走行体の
丸胴1に設けられたグリースバスを示し、このグリース
バス38は、旋回輪32の内側に位置して丸胴1の上端
側内周に固着して設けられている。そして、グリースバ
ス38内には、内輪34に設けられた内歯37とピニオ
ン25との噛合部を潤滑するため、グリース等の潤滑剤
Gが図1、図2中に二点鎖線で示す如く収容されてい
る。
丸胴1に設けられたグリースバスを示し、このグリース
バス38は、旋回輪32の内側に位置して丸胴1の上端
側内周に固着して設けられている。そして、グリースバ
ス38内には、内輪34に設けられた内歯37とピニオ
ン25との噛合部を潤滑するため、グリース等の潤滑剤
Gが図1、図2中に二点鎖線で示す如く収容されてい
る。
【0052】39は減速機4のハウジング5内に収容さ
れた潤滑剤としての潤滑油で、この潤滑油39は、図1
に示す如く減速機4のハウジング5内で遊星歯車減速機
構14,19および上側軸受26等を潤滑状態に保持す
るものである。また、この潤滑油39中には、後述する
ように金属粉末41が添加して混合されている。
れた潤滑剤としての潤滑油で、この潤滑油39は、図1
に示す如く減速機4のハウジング5内で遊星歯車減速機
構14,19および上側軸受26等を潤滑状態に保持す
るものである。また、この潤滑油39中には、後述する
ように金属粉末41が添加して混合されている。
【0053】40は旋回輪32の内輪34、外輪35と
各鋼球36との間に介在された潤滑剤としてのグリース
で、このグリース40は、図3および図4に示すように
内輪34の摺動面34A、外輪35の摺動面35Aと各
鋼球36との間に給脂され、これらの摺動面34A,3
5A等を潤滑状態に保持するものである。また、このグ
リース40中には、後述の金属粉末41が予め添加して
混合されている。
各鋼球36との間に介在された潤滑剤としてのグリース
で、このグリース40は、図3および図4に示すように
内輪34の摺動面34A、外輪35の摺動面35Aと各
鋼球36との間に給脂され、これらの摺動面34A,3
5A等を潤滑状態に保持するものである。また、このグ
リース40中には、後述の金属粉末41が予め添加して
混合されている。
【0054】41,41,…は前記グリース40等の潤
滑剤中に添加して混合された金属粉末で、これらの金属
粉末41は、図6に示す如く水素42を吸着・吸蔵可能
な材料、例えばニッケル(Ni)、チタン(Ti)、銅
(Cu)またはパラジウム(Pd)のうち少なくともい
ずれか一つの純金属により構成されている。そして、金
属粉末41は、グリース40等の潤滑剤中に1〜17重
量%、好ましくは8〜12重量%の比率で添加されてい
る。
滑剤中に添加して混合された金属粉末で、これらの金属
粉末41は、図6に示す如く水素42を吸着・吸蔵可能
な材料、例えばニッケル(Ni)、チタン(Ti)、銅
(Cu)またはパラジウム(Pd)のうち少なくともい
ずれか一つの純金属により構成されている。そして、金
属粉末41は、グリース40等の潤滑剤中に1〜17重
量%、好ましくは8〜12重量%の比率で添加されてい
る。
【0055】ここで、例えばチタン、ニッケル等を用い
て金属粉末41を構成した場合に、1g当たりの金属粉
末41は、3.51〜31.5m mol(ミリモル)/g
程度の水素42を吸蔵する水素吸蔵能力を有している。
て金属粉末41を構成した場合に、1g当たりの金属粉
末41は、3.51〜31.5m mol(ミリモル)/g
程度の水素42を吸蔵する水素吸蔵能力を有している。
【0056】そして、1g当たりの金属粉末41に要求
される水素吸蔵能力としては、0.01m mol(ミリモ
ル)/g以上の水素吸蔵能力があれば、十分であること
が確認されている。これにより、これらの金属粉末41
は、例えば20ppm/g程度の水素吸蔵能力を有して
おけば十分なものである。
される水素吸蔵能力としては、0.01m mol(ミリモ
ル)/g以上の水素吸蔵能力があれば、十分であること
が確認されている。これにより、これらの金属粉末41
は、例えば20ppm/g程度の水素吸蔵能力を有して
おけば十分なものである。
【0057】また、金属粉末41は、チタン−銅(Ti
−Cu)系、チタン−ニッケル(Ti−Ni)系、ラン
タン−ニッケル(La−Ni)系のアモルファス合金ま
たは酸化鉛(PbO)を用いた金属酸化物により構成し
てもよい。そして、この場合でも、金属粉末41は、グ
リース40等の潤滑剤中に1〜17重量%、好ましくは
8〜12重量%の比率で添加することにより、十分な水
素吸蔵能力を発揮できるものである。
−Cu)系、チタン−ニッケル(Ti−Ni)系、ラン
タン−ニッケル(La−Ni)系のアモルファス合金ま
たは酸化鉛(PbO)を用いた金属酸化物により構成し
てもよい。そして、この場合でも、金属粉末41は、グ
リース40等の潤滑剤中に1〜17重量%、好ましくは
8〜12重量%の比率で添加することにより、十分な水
素吸蔵能力を発揮できるものである。
【0058】なお、旋回輪32の内輪34と外輪35と
の間にグリース40を給脂する場合には、予め金属粉末
41を添加して混合したグリース40を、グリースガン
等の給脂具(図示せず)を用いて旋回輪32の外側から
給脂すればよいものである。
の間にグリース40を給脂する場合には、予め金属粉末
41を添加して混合したグリース40を、グリースガン
等の給脂具(図示せず)を用いて旋回輪32の外側から
給脂すればよいものである。
【0059】本実施の形態による建設機械の旋回装置3
は上述の如き構成を有するもので、次にその作動につい
て説明する。
は上述の如き構成を有するもので、次にその作動につい
て説明する。
【0060】まず、旋回用の油圧モータ10に外部から
圧油を給排して回転軸10Aを回転駆動すると、この回
転は減速機4のハウジング5内で遊星歯車減速機構1
4,19によって2段階に減速され、減速機4の出力軸
24には高トルクの回転力が伝達される。
圧油を給排して回転軸10Aを回転駆動すると、この回
転は減速機4のハウジング5内で遊星歯車減速機構1
4,19によって2段階に減速され、減速機4の出力軸
24には高トルクの回転力が伝達される。
【0061】そして、前記出力軸24のピニオン25
は、旋回輪32の内輪34に設けられた内歯37に噛合
し、前記内歯37に沿って公転する。この場合、旋回輪
32は内輪34が走行体の丸胴1に固着され、外輪35
が旋回体の旋回フレーム2に固着されているから、ピニ
オン25の公転が出力軸24からハウジング5を介して
旋回フレーム2に伝達され、旋回体が走行体上で旋回駆
動される。
は、旋回輪32の内輪34に設けられた内歯37に噛合
し、前記内歯37に沿って公転する。この場合、旋回輪
32は内輪34が走行体の丸胴1に固着され、外輪35
が旋回体の旋回フレーム2に固着されているから、ピニ
オン25の公転が出力軸24からハウジング5を介して
旋回フレーム2に伝達され、旋回体が走行体上で旋回駆
動される。
【0062】また、このように減速機4が作動している
間は、図3に示す如く旋回輪32の各鋼球36が内輪3
4の摺動面34Aと外輪35の摺動面35Aとの間で転
動、摺動を繰返し、これらの摺動面34A,35Aはグ
リース40により潤滑状態に保持されるため、旋回輪3
2の内輪34に対して外輪35が円滑に相対回転するこ
とが補償されている。
間は、図3に示す如く旋回輪32の各鋼球36が内輪3
4の摺動面34Aと外輪35の摺動面35Aとの間で転
動、摺動を繰返し、これらの摺動面34A,35Aはグ
リース40により潤滑状態に保持されるため、旋回輪3
2の内輪34に対して外輪35が円滑に相対回転するこ
とが補償されている。
【0063】ところで、旋回輪32の内輪34と外輪3
5との間には、図3、図4に示す如く荷重Wが付加され
た状態で、鋼球36が摺動面34A,35Aに対して矢
示A方向に回転するように転動、摺動を繰返すため、こ
れらの摺動面34A,35Aと鋼球36との間に油膜を
形成したグリース40は発熱し、この熱影響でグリース
40中の水分が分解して水素を発生させることがある。
5との間には、図3、図4に示す如く荷重Wが付加され
た状態で、鋼球36が摺動面34A,35Aに対して矢
示A方向に回転するように転動、摺動を繰返すため、こ
れらの摺動面34A,35Aと鋼球36との間に油膜を
形成したグリース40は発熱し、この熱影響でグリース
40中の水分が分解して水素を発生させることがある。
【0064】そして、このような水素は、図4に例示す
るように外輪35(内輪34)側の摺動面35A(34
A)から、例えば外輪35を構成する鋼材の結晶粒界4
3中に浸入して拡散し、外輪35の結晶粒界43では、
水素の影響により結晶間の結合力が低下して所謂脆性劣
化を起こす原因となる。
るように外輪35(内輪34)側の摺動面35A(34
A)から、例えば外輪35を構成する鋼材の結晶粒界4
3中に浸入して拡散し、外輪35の結晶粒界43では、
水素の影響により結晶間の結合力が低下して所謂脆性劣
化を起こす原因となる。
【0065】特に、このような現象は、例えば結晶粒界
43側の温度Tが、グリース40側の温度Tg よりも高
くなると(T>Tg )、グリース40から発生した水素
が結晶粒界43側に浸入し易くなり、両振りせん断応力
Τ45(鋼球36等の回転によって生じる表面応力)の箇
所に水素が集積し、結晶粒界43中にミクロクラックを
生じさせる。
43側の温度Tが、グリース40側の温度Tg よりも高
くなると(T>Tg )、グリース40から発生した水素
が結晶粒界43側に浸入し易くなり、両振りせん断応力
Τ45(鋼球36等の回転によって生じる表面応力)の箇
所に水素が集積し、結晶粒界43中にミクロクラックを
生じさせる。
【0066】そして、このようなミクロクラックは、前
記摺動面34A,35Aと鋼球36との間に繰返し負荷
される外力(図3に示す荷重W)によって徐々に進行し
て大きくなり、前記結晶粒界43間に剥離を起こして摺
動面34A,35Aには脆性劣化による摩耗、損傷が発
生すると考えられる。
記摺動面34A,35Aと鋼球36との間に繰返し負荷
される外力(図3に示す荷重W)によって徐々に進行し
て大きくなり、前記結晶粒界43間に剥離を起こして摺
動面34A,35Aには脆性劣化による摩耗、損傷が発
生すると考えられる。
【0067】そこで、本実施の形態では、グリース40
等の潤滑剤中に水素を吸着・吸蔵可能な金属粉末41
を、例えばグリースタンク内のグリース40中に1〜1
7重量%、好ましくは8〜12重量%の比率で添加して
混合する方法を採用している。
等の潤滑剤中に水素を吸着・吸蔵可能な金属粉末41
を、例えばグリースタンク内のグリース40中に1〜1
7重量%、好ましくは8〜12重量%の比率で添加して
混合する方法を採用している。
【0068】そして、これらの金属粉末41が混合され
たグリース40は、前記グリースタンク内からグリース
ガン等を用いて旋回輪32の内輪34と外輪35との間
に給脂する構成としている。
たグリース40は、前記グリースタンク内からグリース
ガン等を用いて旋回輪32の内輪34と外輪35との間
に給脂する構成としている。
【0069】これらの金属粉末41は、例えばニッケ
ル、チタン、銅またはパラジウムのうち少なくともいず
れか一つの純金属により構成してもよく、チタン−銅
系、チタン−ニッケル系、ランタン−ニッケル系のアモ
ルファス合金または酸化鉛を用いた金属酸化物により構
成してもよいものである。
ル、チタン、銅またはパラジウムのうち少なくともいず
れか一つの純金属により構成してもよく、チタン−銅
系、チタン−ニッケル系、ランタン−ニッケル系のアモ
ルファス合金または酸化鉛を用いた金属酸化物により構
成してもよいものである。
【0070】これにより、図5に示すようにグリース4
0中に混入された金属粉末41は、グリース40から発
生した水素42を図6に示す如く吸着、または吸蔵する
ので、例えば外輪35(内輪34)の摺動面35A(3
4A)から内部の結晶粒界43中に水素が浸入し拡散す
るのを防止でき、これらの結晶粒界43が水素の影響で
脆性劣化するのを抑えることができる。
0中に混入された金属粉末41は、グリース40から発
生した水素42を図6に示す如く吸着、または吸蔵する
ので、例えば外輪35(内輪34)の摺動面35A(3
4A)から内部の結晶粒界43中に水素が浸入し拡散す
るのを防止でき、これらの結晶粒界43が水素の影響で
脆性劣化するのを抑えることができる。
【0071】かくして、本実施の形態によれば、例えば
外輪35の摺動面35A等が水素の影響で脆性劣化し、
例えば摩耗、損傷等の生じ易い新生面が摺動面35A等
に発生するのを防止でき、旋回輪32の軸受寿命を確実
に向上させることができる。この点は、内輪34の摺動
面34Aについても同様である。
外輪35の摺動面35A等が水素の影響で脆性劣化し、
例えば摩耗、損傷等の生じ易い新生面が摺動面35A等
に発生するのを防止でき、旋回輪32の軸受寿命を確実
に向上させることができる。この点は、内輪34の摺動
面34Aについても同様である。
【0072】また、このような金属粉末41は、旋回輪
32に給脂されるグリース40に限るものではなく、減
速機4のハウジング5と出力軸24との間に設ける下側
軸受28の固形潤滑剤29に対しても適用できるもので
ある。
32に給脂されるグリース40に限るものではなく、減
速機4のハウジング5と出力軸24との間に設ける下側
軸受28の固形潤滑剤29に対しても適用できるもので
ある。
【0073】即ち、下側軸受28の固形潤滑剤29は、
例えばポリアミド、ポリエチレン、フッ素樹脂等からな
る液状の樹脂材料にグリース等の潤滑剤を含浸させ、こ
れを加熱、冷却することにより固形油として形成され
る。そこで、この場合には、前記液状の樹脂材料にグリ
ース等の潤滑剤を含浸させるときに、この潤滑剤中に予
め金属粉末41を添加して混合するものである。
例えばポリアミド、ポリエチレン、フッ素樹脂等からな
る液状の樹脂材料にグリース等の潤滑剤を含浸させ、こ
れを加熱、冷却することにより固形油として形成され
る。そこで、この場合には、前記液状の樹脂材料にグリ
ース等の潤滑剤を含浸させるときに、この潤滑剤中に予
め金属粉末41を添加して混合するものである。
【0074】そして、このような固形潤滑剤29を、例
えば下側軸受28の組立工程等において、外輪28Aと
内輪28Bとの間にローラ28Cの上,下両側または一
側から液状のまま充填し、この状態で固形化することに
よりローラ28Cの上,下両側を覆うように配置できる
ものである。
えば下側軸受28の組立工程等において、外輪28Aと
内輪28Bとの間にローラ28Cの上,下両側または一
側から液状のまま充填し、この状態で固形化することに
よりローラ28Cの上,下両側を覆うように配置できる
ものである。
【0075】また、減速機4のハウジング5と出力軸2
4との間に設ける上側軸受26に対しては、例えば図1
に示す如くハウジング5内に収容する潤滑剤としての潤
滑油39中に、前記金属粉末41を予め添加して混合す
ることにより、対処することができる。
4との間に設ける上側軸受26に対しては、例えば図1
に示す如くハウジング5内に収容する潤滑剤としての潤
滑油39中に、前記金属粉末41を予め添加して混合す
ることにより、対処することができる。
【0076】そして、この場合には上側軸受26の外輪
26A、内輪26Bとローラ26Cとの間の摺動面が、
潤滑油39中から分解して発生した水素で脆性劣化する
のを防止できるものである。
26A、内輪26Bとローラ26Cとの間の摺動面が、
潤滑油39中から分解して発生した水素で脆性劣化する
のを防止できるものである。
【0077】従って、本実施の形態では、上側軸受2
6、下側軸受28および旋回輪32等の摺動面が潤滑剤
から発生する水素の影響で脆性劣化するのを防止でき、
それぞれの耐久性、寿命を確実に向上することができ
る。
6、下側軸受28および旋回輪32等の摺動面が潤滑剤
から発生する水素の影響で脆性劣化するのを防止でき、
それぞれの耐久性、寿命を確実に向上することができ
る。
【0078】次に、図7および図8は本発明の第2の実
施の形態を示し、本実施の形態の特徴は、水素を吸着・
吸蔵する金属粉末を軸受装置の摺動面に塗布する構成と
したことにある。
施の形態を示し、本実施の形態の特徴は、水素を吸着・
吸蔵する金属粉末を軸受装置の摺動面に塗布する構成と
したことにある。
【0079】図中、51は本実施の形態で採用した軸受
装置で、この軸受装置51は、図8に示す如く、内輪5
2と、外輪53と、これらの内輪52と外輪53との間
に設けられた複数の転動体としてのローラ54(1個の
み図示)等とによりローラ軸受として構成されている。
装置で、この軸受装置51は、図8に示す如く、内輪5
2と、外輪53と、これらの内輪52と外輪53との間
に設けられた複数の転動体としてのローラ54(1個の
み図示)等とによりローラ軸受として構成されている。
【0080】55,55,…は軸受装置51の摺動面側
に塗布された金属粉末で、これらの金属粉末55は、第
1の実施の形態で述べた金属粉末41と同様の構成を有
し、例えば図7に示す如く軸受装置51の内輪52に対
して各ローラ54を取付ける前に、内輪52の摺動面側
に塗布等の手段を用いて付着されている。
に塗布された金属粉末で、これらの金属粉末55は、第
1の実施の形態で述べた金属粉末41と同様の構成を有
し、例えば図7に示す如く軸受装置51の内輪52に対
して各ローラ54を取付ける前に、内輪52の摺動面側
に塗布等の手段を用いて付着されている。
【0081】また、軸受装置51の外輪53に対して
は、図8に示す如く内輪52の外側に外輪53を取付け
る前に、外輪53の摺動面側に金属粉末55を塗布等の
手段を用いて付着させる。そして、この状態で内輪52
の外側に外輪53を組付けることにより軸受装置51は
組立られるものである。
は、図8に示す如く内輪52の外側に外輪53を取付け
る前に、外輪53の摺動面側に金属粉末55を塗布等の
手段を用いて付着させる。そして、この状態で内輪52
の外側に外輪53を組付けることにより軸受装置51は
組立られるものである。
【0082】この場合、これらの金属粉末55は、例え
ばグリース等の潤滑剤中に予め金属粉末55を添加して
混合させ、この状態で潤滑剤と金属粉末55との混合体
を内輪52、外輪53の摺動面側に塗布するようにして
もよい。また、ローラ54の外周面に金属粉末55を塗
布するようにしてもよい。
ばグリース等の潤滑剤中に予め金属粉末55を添加して
混合させ、この状態で潤滑剤と金属粉末55との混合体
を内輪52、外輪53の摺動面側に塗布するようにして
もよい。また、ローラ54の外周面に金属粉末55を塗
布するようにしてもよい。
【0083】そして、当該軸受装置51は、前記第1の
実施の形態で述べた上側軸受26に替えて、図1に例示
した下側ハウジング6の軸受取付部6Dと出力軸24と
の間に設ける構成としてもよい。また、第1の実施の形
態で述べた下側軸受28に替えて、下側ハウジング6の
軸受取付部6Bと出力軸24との間に設ける構成として
もよい。
実施の形態で述べた上側軸受26に替えて、図1に例示
した下側ハウジング6の軸受取付部6Dと出力軸24と
の間に設ける構成としてもよい。また、第1の実施の形
態で述べた下側軸受28に替えて、下側ハウジング6の
軸受取付部6Bと出力軸24との間に設ける構成として
もよい。
【0084】かくして、このように構成される本実施の
形態でも、前記第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果
を得ることができるが、特に本実施の形態では、軸受装
置51の内輪52、外輪53と各ローラ54との間の摺
動面側に金属粉末55を塗布することにより、これらの
摺動面が水素により脆性劣化するのを防止することがで
きる。
形態でも、前記第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果
を得ることができるが、特に本実施の形態では、軸受装
置51の内輪52、外輪53と各ローラ54との間の摺
動面側に金属粉末55を塗布することにより、これらの
摺動面が水素により脆性劣化するのを防止することがで
きる。
【0085】なお、前記第2の実施の形態では、軸受装
置51の内輪52、外輪53と各ローラ54との間の摺
動面側に金属粉末55を塗布する場合を例に挙げて説明
したが、本発明はこれに限るものではなく、例えば図1
に示す旋回輪32の内輪34、外輪35と各鋼球36と
の摺動面に予め金属粉末55等を塗布する構成としても
よいものである。
置51の内輪52、外輪53と各ローラ54との間の摺
動面側に金属粉末55を塗布する場合を例に挙げて説明
したが、本発明はこれに限るものではなく、例えば図1
に示す旋回輪32の内輪34、外輪35と各鋼球36と
の摺動面に予め金属粉末55等を塗布する構成としても
よいものである。
【0086】また、前記第1の実施の形態では、例えば
旋回輪32に給脂するグリース40に対して予め金属粉
末41を添加して混合する場合を例に挙げて説明した
が、本発明はこれに限るものではなく、例えばフロント
のピン結合部(ブッシュ等の軸受部)等に給脂されるグ
リースに対しても予め金属粉末41を添加して混合する
構成としてもよいものである。
旋回輪32に給脂するグリース40に対して予め金属粉
末41を添加して混合する場合を例に挙げて説明した
が、本発明はこれに限るものではなく、例えばフロント
のピン結合部(ブッシュ等の軸受部)等に給脂されるグ
リースに対しても予め金属粉末41を添加して混合する
構成としてもよいものである。
【0087】また、このようなピン結合部に用いる軸受
装置にあっても、例えばブッシュの摺動面等に、第2の
実施の形態で述べたように金属粉末55を予め塗布する
構成としてもよい。
装置にあっても、例えばブッシュの摺動面等に、第2の
実施の形態で述べたように金属粉末55を予め塗布する
構成としてもよい。
【0088】
【発明の効果】以上詳述した如く、請求項1に記載の発
明によれば、潤滑剤による油膜を形成した軸受部におい
て、水素を吸着・吸蔵する金属粉末を前記潤滑剤に添加
してなる水素脆性防止方法を採用しているため、例えば
軸受部の転動体が内輪、外輪の摺動面に転動(摺動)を
繰返すことにより、潤滑剤が温度上昇して潤滑剤中の水
分から水素が発生したときには、前記金属粉末により水
素を吸着・吸蔵することができ、軸受部が水素の影響で
脆性劣化するのを防止できると共に、軸受部の耐久性、
寿命を確実に向上することができる。
明によれば、潤滑剤による油膜を形成した軸受部におい
て、水素を吸着・吸蔵する金属粉末を前記潤滑剤に添加
してなる水素脆性防止方法を採用しているため、例えば
軸受部の転動体が内輪、外輪の摺動面に転動(摺動)を
繰返すことにより、潤滑剤が温度上昇して潤滑剤中の水
分から水素が発生したときには、前記金属粉末により水
素を吸着・吸蔵することができ、軸受部が水素の影響で
脆性劣化するのを防止できると共に、軸受部の耐久性、
寿命を確実に向上することができる。
【0089】また、請求項2に記載の発明は、金属粉末
を潤滑剤中に1〜17重量%の比率で添加しているの
で、旋回装置の軸受部等でも十分な水素吸蔵効果を発揮
することができる。
を潤滑剤中に1〜17重量%の比率で添加しているの
で、旋回装置の軸受部等でも十分な水素吸蔵効果を発揮
することができる。
【0090】また、請求項3に記載の発明は、潤滑剤に
よる油膜を形成した軸受部の摺動面に対して、水素を吸
着・吸蔵する金属粉末を塗布してなる水素脆性防止方法
を採用しているため、前記金属粉末により水素を吸着・
吸蔵することができ、軸受部が水素の影響で脆性劣化す
るのを防止できると共に、軸受部の耐久性、寿命を確実
に向上することができる。
よる油膜を形成した軸受部の摺動面に対して、水素を吸
着・吸蔵する金属粉末を塗布してなる水素脆性防止方法
を採用しているため、前記金属粉末により水素を吸着・
吸蔵することができ、軸受部が水素の影響で脆性劣化す
るのを防止できると共に、軸受部の耐久性、寿命を確実
に向上することができる。
【0091】また、請求項4に記載の発明は、金属粉末
として、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)、銅(C
u)、パラジウム(Pd)のうち少なくともいずれか一
つの純金属、チタン−銅(Ti−Cu)系、チタン−ニ
ッケル(Ti−Ni)系、ランタン−ニッケル(La−
Ni)系のアモルファス合金または酸化鉛(PbO)か
らなる金属酸化物を用いているので、ニッケル、チタ
ン、銅、パラジウムからなる純金属の粉末、前記アモル
ファス合金または金属酸化物の粉末により、潤滑剤中の
水分が分解して発生した水素を、効率的に吸着・吸蔵す
ることができる。
として、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)、銅(C
u)、パラジウム(Pd)のうち少なくともいずれか一
つの純金属、チタン−銅(Ti−Cu)系、チタン−ニ
ッケル(Ti−Ni)系、ランタン−ニッケル(La−
Ni)系のアモルファス合金または酸化鉛(PbO)か
らなる金属酸化物を用いているので、ニッケル、チタ
ン、銅、パラジウムからなる純金属の粉末、前記アモル
ファス合金または金属酸化物の粉末により、潤滑剤中の
水分が分解して発生した水素を、効率的に吸着・吸蔵す
ることができる。
【0092】一方、請求項5に記載の発明は、軸受部の
摺動面に油膜を形成するために用いる軸受部用の潤滑剤
に、水素を吸着・吸蔵する金属粉末を添加して混合する
構成としているので、高温条件下で潤滑剤中の水分が分
解して水素が発生した場合でも、これらの水素を金属粉
末により吸着・吸蔵することができ、軸受部が水素の影
響で脆性劣化するのを防止できると共に、軸受部の耐久
性、寿命を確実に向上することができる。
摺動面に油膜を形成するために用いる軸受部用の潤滑剤
に、水素を吸着・吸蔵する金属粉末を添加して混合する
構成としているので、高温条件下で潤滑剤中の水分が分
解して水素が発生した場合でも、これらの水素を金属粉
末により吸着・吸蔵することができ、軸受部が水素の影
響で脆性劣化するのを防止できると共に、軸受部の耐久
性、寿命を確実に向上することができる。
【0093】また、請求項6に記載の発明は、内輪、外
輪と各転動体との摺動面間に潤滑剤を介在させてなる軸
受装置において、前記潤滑剤から発生した水素を吸着・
吸蔵する金属粉末を前記潤滑剤に添加する構成としてい
るので、潤滑剤中に予め添加した金属粉末により水素を
吸着・吸蔵することができ、軸受装置が水素の影響で脆
性劣化するのを防止できると共に、軸受装置全体の耐久
性、寿命を確実に向上することができる。
輪と各転動体との摺動面間に潤滑剤を介在させてなる軸
受装置において、前記潤滑剤から発生した水素を吸着・
吸蔵する金属粉末を前記潤滑剤に添加する構成としてい
るので、潤滑剤中に予め添加した金属粉末により水素を
吸着・吸蔵することができ、軸受装置が水素の影響で脆
性劣化するのを防止できると共に、軸受装置全体の耐久
性、寿命を確実に向上することができる。
【0094】さらに、請求項7に記載の発明によると、
軸受装置の内輪、外輪と各転動体との摺動面には、潤滑
剤から発生した水素を吸着・吸蔵する金属粉末を塗布す
る構成としているので、前記摺動面に予め塗布した金属
粉末により水素を吸着・吸蔵でき、軸受装置が水素の影
響で脆性劣化するのを防止できると共に、軸受装置全体
の耐久性、寿命を確実に向上することができる。
軸受装置の内輪、外輪と各転動体との摺動面には、潤滑
剤から発生した水素を吸着・吸蔵する金属粉末を塗布す
る構成としているので、前記摺動面に予め塗布した金属
粉末により水素を吸着・吸蔵でき、軸受装置が水素の影
響で脆性劣化するのを防止できると共に、軸受装置全体
の耐久性、寿命を確実に向上することができる。
【図1】本発明の第1の実施の形態による建設機械の旋
回装置を示す縦断面図である。
回装置を示す縦断面図である。
【図2】図1中の出力軸、ピニオン、旋回輪およびグリ
ースバス等を示す拡大断面図である。
ースバス等を示す拡大断面図である。
【図3】図2に示す旋回輪の要部拡大図である。
【図4】旋回輪の鋼球が摺動する摺動面等を模式的に示
す結晶粒界等の組成図である。
す結晶粒界等の組成図である。
【図5】図4中の摺動面側をさらに拡大して示す拡大組
成図である。
成図である。
【図6】図5中の金属粉末が水素を吸着・吸蔵する状態
を示す説明図である。
を示す説明図である。
【図7】第2の実施の形態による軸受装置の内輪にロー
ラを取付ける前の状態を示す断面図である。
ラを取付ける前の状態を示す断面図である。
【図8】図7の内輪に対して外輪を取付ける状態を示す
軸受装置の断面図である。
軸受装置の断面図である。
1 丸胴(走行体) 2 旋回フレーム(旋回体) 3 旋回装置 4 減速機 5 ハウジング 6 下側ハウジング 10 油圧モータ(回転源) 14,19 遊星歯車減速機構 24 出力軸 25 ピニオン 26 上側軸受(軸受装置) 26A,28A 外輪 26B,28B 内輪 26C,28C ローラ(転動体) 28 下側軸受(軸受装置) 29 固形潤滑剤 32 旋回輪(軸受装置) 34 内輪 34A,35A 摺動面 35 外輪 36 鋼球(転動体) 37 内歯 39 潤滑油(潤滑剤) 40 グリース(潤滑剤) 41,55 金属粉末 42 水素 43 結晶粒界 51 軸受装置 52 内輪 53 外輪 54 ローラ(転動体)
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C10N 10:06 C10N 10:06 10:08 10:08 10:16 10:16 20:06 20:06 Z 30:12 30:12 40:02 40:02 50:10 50:10 Fターム(参考) 2D015 DA02 DA04 3J101 AA02 AA12 AA52 AA54 AA62 BA02 BA55 CA15 EA64 FA60 GA51 4H104 AA08C AA13C FA01 FA03 FA04 FA08 LA06 PA01 QA18
Claims (7)
- 【請求項1】 潤滑剤による油膜を形成した軸受部の摺
動面が前記潤滑剤から発生する水素の影響によって脆性
劣化するのを防ぐため、水素を吸着・吸蔵する金属粉末
を前記潤滑剤に添加してなる軸受部の水素脆性防止方
法。 - 【請求項2】 前記金属粉末は、前記潤滑剤中に1〜1
7重量%の比率で添加してなる請求項1に記載の軸受部
の水素脆性防止方法。 - 【請求項3】 潤滑剤による油膜を形成した軸受部の摺
動面が前記潤滑剤から発生する水素の影響によって脆性
劣化するのを防ぐため、水素を吸着・吸蔵する金属粉末
を前記摺動面に塗布してなる軸受部の水素脆性防止方
法。 - 【請求項4】 前記金属粉末は、ニッケル(Ni)、チ
タン(Ti)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)のうち
少なくともいずれか一つの純金属、チタン−銅(Ti−
Cu)系、チタン−ニッケル(Ti−Ni)系、ランタ
ン−ニッケル(La−Ni)系のアモルファス合金また
は酸化鉛(PbO)を用いた金属酸化物からなる請求項
1,2または3に記載の軸受部の水素脆性防止方法。 - 【請求項5】 軸受部の摺動面に油膜を形成するために
用いる軸受部用の潤滑剤において、高温条件下で発生す
る水素の影響により前記摺動面が脆性劣化するのを防ぐ
ため、水素を吸着・吸蔵する金属粉末を添加して混合す
る構成としたことを特徴とする軸受部用の潤滑剤。 - 【請求項6】 転動体を挟んで互いに相対回転可能とな
った内輪と外輪とを有し、前記内輪、外輪と各転動体と
の摺動面間に潤滑剤を介在させてなる軸受装置におい
て、前記潤滑剤には潤滑剤から発生した水素を吸着・吸
蔵する金属粉末を添加する構成としたことを特徴とする
軸受装置。 - 【請求項7】 転動体を挟んで互いに相対回転可能とな
った内輪と外輪とを有し、前記内輪、外輪と各転動体と
の摺動面間に潤滑剤を介在させてなる軸受装置におい
て、前記内輪、外輪と各転動体との摺動面には、前記潤
滑剤から発生した水素を吸着・吸蔵する金属粉末を塗布
する構成としたことを特徴とする軸受装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2001107462A JP2002302972A (ja) | 2001-04-05 | 2001-04-05 | 軸受部の水素脆性防止方法、軸受部用の潤滑剤および軸受装置 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2001107462A JP2002302972A (ja) | 2001-04-05 | 2001-04-05 | 軸受部の水素脆性防止方法、軸受部用の潤滑剤および軸受装置 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2002302972A true JP2002302972A (ja) | 2002-10-18 |
Family
ID=18959785
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2001107462A Pending JP2002302972A (ja) | 2001-04-05 | 2001-04-05 | 軸受部の水素脆性防止方法、軸受部用の潤滑剤および軸受装置 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2002302972A (ja) |
Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2007094405A1 (ja) * | 2006-02-16 | 2007-08-23 | Ntn Corporation | グリース組成物、グリース封入軸受、および一方向クラッチ |
JP2007255493A (ja) * | 2006-03-22 | 2007-10-04 | Ntn Corp | 自動車電装・補機用転がり軸受 |
JP2008266424A (ja) * | 2007-04-18 | 2008-11-06 | Ntn Corp | グリース組成物およびグリース封入軸受 |
EP3196366A1 (en) | 2016-01-25 | 2017-07-26 | Kobelco Construction Machinery Co., Ltd. | Slewing type working machine |
-
2001
- 2001-04-05 JP JP2001107462A patent/JP2002302972A/ja active Pending
Cited By (6)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2007094405A1 (ja) * | 2006-02-16 | 2007-08-23 | Ntn Corporation | グリース組成物、グリース封入軸受、および一方向クラッチ |
US9394500B2 (en) | 2006-02-16 | 2016-07-19 | Ntn Corporation | Grease composition, grease-enclosed bearing, and one-way clutch |
JP2007255493A (ja) * | 2006-03-22 | 2007-10-04 | Ntn Corp | 自動車電装・補機用転がり軸受 |
JP2008266424A (ja) * | 2007-04-18 | 2008-11-06 | Ntn Corp | グリース組成物およびグリース封入軸受 |
EP3196366A1 (en) | 2016-01-25 | 2017-07-26 | Kobelco Construction Machinery Co., Ltd. | Slewing type working machine |
US9938690B2 (en) | 2016-01-25 | 2018-04-10 | Kobelco Construction Machinery Co., Ltd. | Slewing type working machine |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP7134693B2 (ja) | 滑り軸受ブッシュを形成する方法 | |
JP6018203B2 (ja) | 周転円運動型変速機において使用するためのジャーナル軸受およびジャーナル軸受における流体力学的油流を促進する方法 | |
CN202182159U (zh) | 用于风力发电设备的行星齿轮变速器 | |
JP6575944B2 (ja) | 流体動圧オイル流、荷重容量、および軸受性能の最適化を促進するジャーナル軸受および方法 | |
US20110077120A1 (en) | Planetary gear unit for a gearbox for a wind turbine | |
WO2005024076A1 (ja) | 焼結摺動材料、摺動部材、連結装置および摺動部材が適用される装置 | |
CN101955136B (zh) | 一种汽车起重机回转减速装置 | |
JP2009079627A (ja) | 減速機 | |
JP2002302972A (ja) | 軸受部の水素脆性防止方法、軸受部用の潤滑剤および軸受装置 | |
JPH08128505A (ja) | 遊星歯車のキャリア用ワッシャ | |
JP3760110B2 (ja) | 建設機械の旋回装置 | |
JP5112919B2 (ja) | 減速機付き縦型モータ装置 | |
JP2938786B2 (ja) | 旋回装置 | |
JP2007002981A (ja) | 減速装置 | |
CN207579458U (zh) | 一种小型纯电动客车用驱动后桥总成 | |
JP2005176527A (ja) | 電動アクチュエータ | |
CN115654082B (zh) | 双臂行星组件及偏航齿轮箱 | |
JPH1047443A (ja) | 遊星歯車減速装置 | |
JP5402080B2 (ja) | 動力伝達装置 | |
JP2004052977A (ja) | 減速装置 | |
JP2594602Y2 (ja) | ピン歯車式減速機 | |
JPH051748A (ja) | 遊星歯車減速装置 | |
JP2002146836A (ja) | 建設機械の旋回装置 | |
JP4079307B2 (ja) | 軸受装置 | |
JP4136619B2 (ja) | 旋回軸受 |