JP5402080B2 - 動力伝達装置 - Google Patents

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本発明は、動力源から回転軸に出力された回転動力を被回転軸へ伝達するための動力伝達装置に関し、具体的には、当該装置内に供給された潤滑剤(一例として、給油された潤滑油)の流動性を向上させるための潤滑機構の改良に関する。
従来から、自動車や鉄道車両、あるいはシールド掘削機や発電機、圧延機などへの組込装置の一つとして、これらに搭載されたエンジンやモータなどの動力源から回転軸に出力された回転動力を被回転軸へ伝達するための装置(例えば、自動車のデファレンシャルギア装置やプラネタリー減速装置などの動力伝達装置)が知られている。
図2には、かかる動力伝達装置の構成例として、自動車のデファレンシャルギア装置における装置構成の一例が示されている。かかるデファレンシャルギア装置は、一対の転がり軸受(図2においては、円すいころ軸受(以下、ピニオン軸受4,6という))で支持されたピニオン軸8の端部(同図においては、右端部)のドライブピニオンギア10と、ピニオン軸受4,6とは別個の一対の転がり軸受(同図においては、円すいころ軸受(以下、車軸軸受12という))で支持された車軸(ドライブシャフト)14のリングギア16が、噛合状態でデファレンシャルケース2内に組み込まれて構成されている。この状態で、ガソリンエンジンや電動モータなどから出力された回転動力により回転するピニオン軸8の回転動力を、ドライブピニオンギア10及びリングギア16を介して車軸14に伝達し、当該車軸14を回転させることで自動車の車輪(図示しない)を回転させているとともに、旋回時における内側車輪と外側車輪の回転数差を吸収し、自動車のスムーズなコーナリングの実現を図っている。
また、自動車の走行時、デファレンシャルギア装置は非常に高速で回転するため、ピニオン軸8を支持するピニオン軸受4,6、及び車軸14を支持する車軸軸受12の焼き付きなどを防止すべく、これらを十分に潤滑する必要がある。したがって、ピニオン軸受4,6及び車軸軸受12が潤滑不良となることなく、これらが常に良好な潤滑状態に保たれるように、潤滑効率を向上させるための様々な方策が従来から講じられている。
例えば、特許文献1には、デファレンシャルケース内に油溜り室を設け、当該油溜り室に潤滑油を溜めるとともに、当該潤滑油をデファレンシャルケース内で流動させることにより、ピニオン軸受の潤滑を効率的に行う潤滑機構を備えたデファレンシャルギア装置の構成が開示されている。
実公平6−2080号公報
しかしながら、特許文献1に開示された潤滑機構では、油溜り室に潤滑油を溜めるべく、予め潤滑油をデファレンシャルケース内へ必要以上に給油(注入)しておかなければならない。したがって、潤滑油の給油量の増加を招くこととなり、コストアップにつながり易いという問題がある。
また、低温環境下などにおいては、自動車の発進時に潤滑油がデファレンシャルケース内で十分に流動せず、油溜り室の潤滑油が循環し難く、ピニオン軸受が潤滑不良となり易いという問題もある。
本発明は、このような課題を解決するためになされており、その目的は、装置内部に供給された潤滑剤(一例として、給油された潤滑油)の流動性を向上させることで、潤滑剤の供給量を増加させることなく、装置内部(具体的には、回転軸を支持する軸受)を長期に亘って良好な潤滑状態に保つことを可能とする動力伝達装置(その潤滑機構)を提供することにある。
このような目的を達成するために、本発明は、軸受によって回転自在に支持され、動力源から回転動力が出力される回転軸と、当該回転軸に取り付けられた第1の歯車と、当該第1の歯車と噛合する第2の歯車と、前記回転軸へ出力された回転動力が前記第1の歯車及び前記第2の歯車を介して伝達されることで回転する被回転軸と、これら各構成部材を取り囲み、前記軸受を取付けた外筐を備えた動力伝達装置であって、前記装置内には、前記軸受を潤滑するための潤滑剤が供給されており、前記回転軸はピニオン軸であり、前記第1の歯車はドライブピニオンギアであり、前記外筐はデファレンシャルケースであり、前記デファレンシャルケースには、その内面と前記潤滑剤との摩擦抵抗を低下させるべく、当該内面が金属接触する部位を除いた範囲の全部に撥油加工が施されている
また、本発明は、軸受によって回転自在に支持され、動力源から回転動力が出力される回転軸と、当該回転軸に取り付けられた第1の歯車と、当該第1の歯車と噛合する第2の歯車と、前記回転軸へ出力された回転動力が前記第1の歯車及び前記第2の歯車を介して伝達されることで回転する被回転軸と、これら各構成部材を取り囲み、前記軸受を取付けた外筐を備えた動力伝達装置であって、前記装置内には、前記軸受を潤滑するための潤滑剤が供給されており、前記回転軸はピニオン軸であり、前記第1の歯車はドライブピニオンギアであり、前記第2の歯車はリングギアであり、前記外筐はデファレンシャルケースであり、前記デファレンシャルケースには、その内面と前記潤滑剤との摩擦抵抗を低下させるべく、当該内面が金属接触する部位を除いた範囲の全部に撥油加工が施されていると共に、前記ドライブピニオンギア及び前記リングギアには、その表面に撥油加工が施されている。
本発明の動力伝達装置によれば、内面の少なくとも一部に対して撥油加工を施した外筐構造とすることで、装置内に供給された潤滑剤(一例として、給油された潤滑油)の流動性を格段に向上させることができる。これにより、潤滑剤の供給量を増加させることなく、動力伝達装置の内部(具体的には、回転軸を支持する軸受)を長期に亘って良好な潤滑状態に保つことができ、当該軸受に対する焼き付き等の損傷の発生を確実に防止することが可能となる。
本発明の一実施形態に係る動力伝達装置(自動車のデファレンシャルギア装置)の構成を示す縦断面図。 従来の動力伝達装置(自動車のデファレンシャルギア装置)の構成例を示す縦断面図。
以下、本発明の一実施形態に係る動力伝達装置について、添付図面を参照して説明する。なお、本発明に係る動力伝達装置は、例えば、自動車や鉄道車両、あるいはシールド掘削機や発電機、圧延機などへの組込装置の一つとして、これらに搭載されたエンジンやモータなどの動力源から回転軸に出力された回転動力を被回転軸へ伝達するための装置として構成することが可能である。したがって、本実施形態においては一例として、動力伝達装置が自動車のデファレンシャルギア装置として構成されている場合を想定し、以下、当該デファレンシャルギア装置の構成について説明する。
図1には、本実施形態に係る動力伝達装置(自動車のデファレンシャルギア装置)Mの構成の一例が示されている。この場合、かかるデファレンシャルギア装置Mの基本的な構成については、上述した従来のデファレンシャルギア装置(図2)と同様である場合を想定しており、当該装置と同一の部材については図面上で同一の符号を付している。
デファレンシャルギア装置Mには、軸受(以下、ピニオン軸受という)4,6によって回転自在に支持され、動力源(図示しないガソリンエンジンや電動モータなど)から回転動力が出力される回転軸(以下、ピニオン軸という)8と、当該ピニオン軸8に取り付けられた第1の歯車(同、ドライブピニオンギア)10と、当該ドライブピニオンギア10と噛合する第2の歯車(同、リングギア)16と、前記ピニオン軸8へ出力された回転動力が前記ドライブピニオンギア10及びリングギア16を介して伝達されることで回転する被回転軸(同、車軸(ドライブシャフト))14と、これら各構成部材(ピニオン軸受4,6、ピニオン軸8、車軸14、ドライブピニオンギア10及びリングギア16)を取り囲む外筐(以下、デファレンシャルケースという)2が備えられている。
この場合、ピニオン軸8は、一対のピニオン軸受4,6(図1においては、円すいころ軸受)によって回転自在に支持されているとともに、その端部(同、右端部)にドライブピニオンギア10が取り付けられた構造を成している。これに対し、車軸14は、一対の軸受(図1においては、円すいころ軸受(以下、車軸軸受12という))によって回転自在に支持されているとともに、ドライブピニオンギア10とリングギア16が噛合することで回転される構造を成している。また、リングギア16は、左右一対の車軸14にそれぞれ連結された一対の歯車(サイドギア)(図示しない)、及びこれらと噛合する小歯車(ピニオンギア)(図示しない)を収容した枠体(図示しない)が直結された構造を成すとともに、当該枠体(サイドギア及びピニオンギア)と一体的に回転可能な構造を成している。
このような構成とすることにより、デファレンシャルギア装置Mは、ピニオン軸8に出力された回転動力をドライブピニオンギア10及びリングギア16を介して車軸14へ伝達し、当該車軸14に取り付けられた車輪(図示しない)を回転させているとともに、旋回時における内側車輪と外側車輪の回転数差を吸収し、自動車のスムーズなコーナリングの実現を図っている。
なお、図1には、ピニオン軸受4,6及び車軸軸受12をいずれも円すいころ軸受とした構成を一例として示しているが、軸受形式はこれに限定されない。例えば、ピニオン軸受4,6及び車軸軸受12を円筒ころ軸受として構成してもよいし、あるいはこれらを球面ころ軸受や玉軸受などとして構成することも可能である。さらに、ピニオン軸受4,6及び車軸軸受12は、それぞれ異なる軸受形式であっても構わない。
ここで、デファレンシャルギア装置Mにおいては、ピニオン軸8にドライブピニオンギア10から大きな軸方向荷重が加わり、当該荷重がピニオン軸8を回転支持するピニオン軸受4,6によって負荷される構造となっている。また、自動車の前進時と後進時でピニオン軸8の回転方向が逆向きとなるため、これに伴って、ドライブピニオンギア10から負荷される荷重方向も逆向きとなる。したがって、その際のピニオン軸8の移動を抑制すべく、ピニオン軸8に組み付けられたピニオン軸受4,6には、ピニオン軸端ナット18の締め付けによって予圧が付与されている。なおこの場合、ピニオン軸受4,6は、これらの間に介在させた間座20を挟んでピニオン軸8に組み付けられており、ピニオン軸端ナット18の締め付け力を調整することによりピニオン軸受4,6の間(具体的にはこれらの内輪間)で間座20を撓ませることで、当該間座20から生じる押圧力によって軸方向(図1の左右方向)への予圧が付与される構成となっている。
また、自動車の走行時にデファレンシャルギア装置M(ピニオン軸8及び車軸14)が高速で回転することによるピニオン軸受4,6及び車軸軸受12の焼き付きなどを防止すべく、デファレンシャルギア装置Mの装置内には、これらのピニオン軸受4,6及び車軸軸受12を潤滑するための潤滑剤が供給されている。本実施形態においては、潤滑剤が常温で液状を成す潤滑油、並びに圧縮エア等と混合されてミスト状や油滴状などを成す潤滑油など、各種の状態を含めた潤滑油全般である場合を一例として想定している。ただし、動力伝達装置の構成によっては、基油に増ちょう剤が含有されてなるグリースなども想定可能である。
そして、本実施形態において、デファレンシャルケース2は、その内面と潤滑油との摩擦抵抗を低下させるべく、当該内面の少なくとも一部に対し、撥油加工が施された構成となっている。図1には、デファレンシャルケース2の内面2sの略全体に対して撥油加工を施し、所定の撥油層22が形成されたデファレンシャルギア装置Mの構成、換言すれば、当該デファレンシャルギア装置Mを構成するピニオン軸受、ピニオン軸8、車軸14、ドライブピニオンギア10及びリングギア16が撥油加工を施したデファレンシャルケース2の内面2s(すなわち撥油層22)によって取り囲まれたデファレンシャルギア装置Mの構成が一例として示されている。
図1に示す構成のように、撥油加工は、デファレンシャルケース2の内面2sの略全体に施すことが好ましいが、当該内面2sの一部(例えば、デファレンシャルケース2の内面2sが金属接触する部位を除いた範囲の一部あるいは全部など)にのみ施すことも可能である。なお、ドライブピニオンギア10やリングギア16の表面に対しても、撥油加工を施すことは可能である。
また、撥油加工は、既知の各種加工法を用いてデファレンシャルケース2の内面2sに対して施せばよい。
例えば、デファレンシャルケース2を成形した後、当該成形後のデファレンシャルケース2の内面2sに対し、撥油性を有する所定の素材でなる撥油コーティング剤を塗布あるいは噴射等により付着させることで、当該撥油コーティング剤でなる被膜を形成することができる。なお、このような撥油加工を施す前に、成形後のデファレンシャルケース2の内面2sに対し、当該撥油加工を施し易くする(例えば、塗布や噴射した撥油コーティング剤を内面2sに付着させ易くする)ための下処理や、形成した被膜を内面2sから剥離し難くするための下処理などを行うことも任意である。さらに、形成する被膜の厚さもデファレンシャルケース2の大きさなどに応じて、任意に設定すればよい。
あるいは、上述したような撥油コーティング剤による被膜の形成ではなく、デファレンシャルケース2自体を撥油性素材で形成することにより、内面2sに対して撥油加工を施した場合と同様の状態とする構成としてもよい。
すなわち、デファレンシャルケース2の内面2sが撥油性を有するように加工することが可能であれば、コストなどに応じて任意の撥油加工法を採用することが可能である。
なお、コーティング剤やデファレンシャルケース2自体の素材は、撥油性を有するとともに、デファレンシャルギア装置M内に供給された潤滑剤(一例として、給油された潤滑油)と接しても変質せず、常に安定した状態(材質)を保つことが可能な素材を選択することが好ましい。
このように、デファレンシャルケース2の内面2sに撥油加工を施すことで、当該撥油加工が施された内面2s部分(図1における撥油層22の形成部分)においては、デファレンシャルギア装置M内に供給された潤滑剤(一例として、給油された潤滑油)をはじくことができ、内面2sに潤滑油が付着された状態(なじんだ状態)となることを防止することができる。この結果、デファレンシャルギア装置M内に給油された潤滑油が流動する際における内面2sとの間の摩擦抵抗を低下させることができ、これに伴って装置M内での潤滑油の流速を上げることができる。
したがって、デファレンシャルギア装置M内に給油された潤滑油の流動性や循環性を格段に向上させることができるとともに、装置M内へ給油されてはいるものの、デファレンシャルケース2の内面2sに付着してピニオン軸受4,6及び車軸軸受12の潤滑に寄与しない潤滑油量、いわば潤滑油のロスを格段に減少させ、これら軸受4,6,12の潤滑自体に寄与する潤滑油量を増加させることができる。また、例えば、低温環境下での自動車の発進時などにおいても、直ちにデファレンシャルギア装置M内で潤滑油をスムーズに流動させることができるとともに、当該潤滑油を円滑に循環させることができる。
このように、本実施形態に係るデファレンシャルギア装置Mによれば、装置M内への潤滑油の給油量を増加させることなく、ピニオン軸受4,6及び車軸軸受12を長期に亘って良好な潤滑状態に保つことができ、これらの軸受4,6,12に対する焼き付き等の損傷の発生を確実に防止することが可能となるとともに、これらの長寿命化を図ることが可能となる。
2 外筐(デファレンシャルケース)
4,6 転がり軸受(ピニオン軸受)
8 回転軸(ピニオン軸)
10 第1の歯車(ピニオンギア)
14 被回転軸(車軸)
16 第2の歯車(リングギア)
22 撥油層
M 動力伝達装置(デファレンシャルギア装置)

Claims (2)

  1. 軸受によって回転自在に支持され、動力源から回転動力が出力される回転軸と、当該回転軸に取り付けられた第1の歯車と、当該第1の歯車と噛合する第2の歯車と、前記回転軸へ出力された回転動力が前記第1の歯車及び前記第2の歯車を介して伝達されることで回転する被回転軸と、これら各構成部材を取り囲み、前記軸受を取付けた外筐を備えた動力伝達装置であって、
    前記装置内には、前記軸受を潤滑するための潤滑剤が供給されており、
    前記回転軸はピニオン軸であり、前記第1の歯車はドライブピニオンギアであり、前記外筐はデファレンシャルケースであり、
    前記デファレンシャルケースには、その内面と前記潤滑剤との摩擦抵抗を低下させるべく、当該内面が金属接触する部位を除いた範囲の全部に撥油加工が施されていることを特徴とする動力伝達装置。
  2. 軸受によって回転自在に支持され、動力源から回転動力が出力される回転軸と、当該回転軸に取り付けられた第1の歯車と、当該第1の歯車と噛合する第2の歯車と、前記回転軸へ出力された回転動力が前記第1の歯車及び前記第2の歯車を介して伝達されることで回転する被回転軸と、これら各構成部材を取り囲み、前記軸受を取付けた外筐を備えた動力伝達装置であって、
    前記装置内には、前記軸受を潤滑するための潤滑剤が供給されており、
    前記回転軸はピニオン軸であり、前記第1の歯車はドライブピニオンギアであり、前記第2の歯車はリングギアであり、前記外筐はデファレンシャルケースであり、
    前記デファレンシャルケースには、その内面と前記潤滑剤との摩擦抵抗を低下させるべく、当該内面が金属接触する部位を除いた範囲の全部に撥油加工が施されていると共に、
    前記ドライブピニオンギア及び前記リングギアには、その表面に撥油加工が施されていることを特徴とする動力伝達装置。
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