JP2002295242A - ディーゼルエンジンの排気浄化装置及び排気浄化方法 - Google Patents
ディーゼルエンジンの排気浄化装置及び排気浄化方法Info
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Abstract
を低下させるとともにHC濃度を適度に高めることがで
きるディーゼルエンジンの排気浄化装置を提供する 【解決手段】 ディーゼルエンジンの排気通路に介設さ
れた排気浄化装置には、O2過剰雰囲気でNOxを吸収
する一方、O2濃度の低下によりNOxを放出するNO
x吸収材を用いたNOxトラップ触媒が装填されてい
る。そして、このエンジンにおいては、圧縮行程上死点
付近で主噴射が実行され、主噴射後の膨張行程におい
て、主噴射により噴射された燃料の拡散燃焼終了時期付
近で後噴射燃料が燃焼するように後噴射が実行される。
この後噴射により、煤の発生を低減しつつ排気ガス中の
O2濃度を低下させるとともにHC濃度を適度に高める
ことができ、NOxトラップ触媒によるNOx浄化を促
進することができる。
Description
ンの排気浄化装置及び排気浄化方法に関するものであ
る。
から排出された排気ガスには、NOx(窒素酸化物)、
CO(一酸化炭素)、HC(炭化水素)等の大気汚染物
質が含まれているので、これらを浄化するために、排気
通路には排気ガス浄化触媒を用いた排気浄化装置が介設
される。しかしながら、NOxを浄化するにはこれを還
元しなければならないので、排気ガス中のO2(酸素)
濃度が比較的高くなることが多いディーゼルエンジンで
は、普通の排気ガス浄化触媒(例えば、三元触媒)でN
Oxを浄化するのは容易でない。
に応じて、排気ガスの一部をEGRとして吸気系に還流
させ、燃料の燃焼温度を低下させることによりNOx発
生量を低減するEGR装置が設けられる。しかしなが
ら、EGR装置を設けても、NOxの発生をなくすこと
はできないので、やはり排気ガス中のNOxを浄化しな
ければならない。
いときにはNOxを吸収する一方、O2濃度が低くなっ
たときにこのNOxを放出するNOx吸収材を用いたN
Oxトラップ触媒(排気ガス浄化触媒)が普及しつつあ
る(例えば、特開2000−170585号公報参
照)。かかるNOxトラップ触媒では、排気ガス中のO
2濃度が低くなったときにNOx吸収材から放出された
NOxを、排気ガス中のHCを還元剤として用いて、N
2に還元するようにしている。
ルエンジンにNOxトラップ触媒を設けた場合、NOx
を有効に浄化するには、適宜、NOx吸収材からNOx
を放出させるために排気ガスをO2濃度が低くかつ適度
にHCを含む状態にすることが必要である。しかしなが
ら、ディーゼルエンジンの運転状態を、主噴射量を増量
したり、主噴射以外に単純に膨張行程で後噴射等を行っ
てこのような状態にすると、煤(スモーク)が発生する
ことが多い。そして、煤の発生量が多い場合は、排気浄
化装置が目詰まりを起こすおそれがあるといった問題が
ある。
になされたものであって、排気ガス中のNOxの浄化に
NOxトラップ触媒を用いる場合、適宜、煤の発生を低
減しつつ排気ガス中のO2濃度を低下させるとともにH
C濃度を適度に高めることができ、NOx吸収材からN
Oxを容易に放出させてこのNOxを有効に浄化するこ
とができるディーゼルエンジンの排気浄化装置を提供す
ることを解決すべき課題とする。
になされた、本発明にかかるディーゼルエンジンの排気
浄化装置は、(i)燃焼室内に燃料を噴射する燃料噴射
弁と、(ii)圧縮行程上死点付近で燃料噴射弁に燃料を
噴射させて主噴射(多段噴射を含む)を実行する主噴射
手段と、(iii)主噴射後において膨張行程の所定期間
内で(ないしは、主噴射から膨張行程の間の所定の期間
で)、主噴射により噴射された燃料(以下、「主噴射燃
料」という。)の燃焼(拡散燃焼)が終了する時期(す
なわち、熱発生率がほぼ0以下となる時期)に基づいて
燃料噴射弁に燃料を噴射させて後噴射(多段噴射を含
む)を実行する後噴射手段とを備えているディーゼルエ
ンジンの排気浄化装置であって、(iv)排気通路に配置
され、O2過剰雰囲気でNOxを吸収する一方、O2濃
度の低下によりこのNOxを放出するNOx吸収材を備
えていて、(v)後噴射手段が、NOx吸収材からのN
Ox放出時に後噴射を実行するようになっていることを
特徴とするものである。
主噴射燃料の燃焼により煤が発生することが多い。しか
しながら、本願発明者は、ディーゼルエンジンにおい
て、主噴射燃料の拡散燃焼が終了する時期、すなわち熱
発生率がほぼ0以下となる時期に後噴射を行えば、煤
(スモーク)の発生量が非常に少なくなるといった事実
を、実験により見出した。そして、本発明にかかるディ
ーゼルエンジンの排気浄化装置では、後噴射は、主噴射
燃料の拡散燃焼が終了する時期に基づいて、例えば主噴
射燃料の拡散燃焼が終了した直後等に行われる。したが
って、NOx吸収材に吸収されているNOxを放出させ
るために後噴射を行う際の煤の発生量が少なくなる。よ
って、適宜、後噴射を行うことにより、煤の発生を低減
しつつ排気ガス中のO2濃度を低下させるとともに、H
C濃度を適度に高めることができ、NOx吸収材からN
Oxを容易に放出させることができ、このNOxを有効
に浄化することができる。
浄化装置においては、後噴射手段が、HCが増大するよ
うにその噴射量を所定値以上に設定して後噴射を実行す
るようになっているのが好ましい。このようにすれば、
NOx吸収材からNOxを放出させる際に、煤の発生量
を低減しつつ、還元材であるHCを十分に供給すること
ができる。このため、NOx還元性ないしはNOx浄化
性が向上する。
浄化装置においては、主噴射による燃料噴射量(以下、
「主噴射量」という。)と後噴射による燃料噴射量(以
下、「後噴射量」という。)との合計量に対する後噴射
量の割合が20%以上であるのが好ましい。このように
すれば、NOx吸収材からNOxを放出させる際に、煤
の発生量を低減しつつ、還元材であるHCをより十分に
供給することができる。このため、NOx還元性ないし
はNOx浄化性がさらに向上する。
おいては、後噴射手段が、所定エンジン回転数以下(低
回転)又は所定負荷以下(低負荷)の運転領域(あるい
は、低回転・低負荷領域)で、NOx吸収材からNOx
を放出させるための後噴射を実行するようになっている
のが好ましい。一般に、低回転領域、低負荷領域あるい
は低回転・低負荷領域では、排気ガス中にHCが残留し
やすいので、このようにすれば還元材であるHCを十分
に供給することができる。このため、NOx還元性ない
しはNOx浄化性がさらに向上する。
浄化装置には、NOx放出時に新気量(新気の吸入量)
を減少させる新気量低減手段が設けられているのが好ま
しい。このようにすれば、NOx吸収材からNOxを放
出させる際に、O2濃度をより有効に低減することがで
き、NOx還元性ないしはNOx浄化性がさらに向上す
る。ここで、ディーゼルエンジンに、過給圧の調整が可
能なターボ過給機(VGT)が設けられている場合は、
新気量低減手段は、ターボ過給機に過給圧を低減させる
ことにより新気量を減少させるようになっているのが好
ましい。このようにすれば、NOx吸収材からNOxを
放出させる際に、O2濃度を一層有効に低減することが
でき、NOx還元性ないしはNOx浄化性が一層向上す
る。なお、このようにターボ過給機を設けた場合は、空
気利用率の向上作用によっても煤の発生量が低減され
る。
浄化方法は、(i)燃焼室内に燃料を噴射する燃料噴射
弁と、排気通路に配置されO2過剰雰囲気でNOxを吸
収する一方O2濃度の低下によりこのNOxを放出する
NOx吸収材とを備えていて、圧縮行程上死点付近で燃
料噴射弁に燃料を噴射させて主噴射を実行するようにな
っているディーゼルエンジンの排気浄化方法であって、
(ii)膨張行程において、主噴射により噴射された燃料
の燃焼が終了する時期を設定する燃焼終了時期設定工程
と、(iii)NOx吸収材からのNOx放出時に、燃焼
終了時期設定工程で設定された燃焼終了時期に基づいて
燃料噴射弁に燃料を噴射させて後噴射を実行する後噴射
工程とを含んでいることを特徴とするものである。
おいては、後噴射は、主噴射燃料の拡散燃焼が終了する
時期に基づいて行われるので、NOx吸収材に吸収され
ているNOxを放出させるために後噴射を行った場合、
煤の発生量が少なくなる。よって、適宜、後噴射を行う
ことにより、煤の発生を低減しつつ排気ガス中のO2濃
度を低下させるとともにHC濃度を適度に高めることが
でき、NOx吸収材からNOxを容易に放出させること
ができ、このNOxを有効に浄化することができる。
的に説明する。図1は、本発明に係る排気浄化装置を備
えた自動車用ディーゼルエンジン(以下、単に「エンジ
ン」という。)の構成を示している。図1に示すよう
に、このエンジンの本体部1(以下、「エンジン本体
1」という。)は、複数の気筒2(1つのみ図示)を有
し、各気筒2内にはそれぞれピストン3が往復動可能に
嵌挿されている。そして、ピストン3の上面によって気
筒2内に燃焼室4が画成されている。また、燃焼室4の
天井面のほぼ中央部には燃料噴射弁5が配設され、この
燃料噴射弁5から燃焼室4内に所定のタイミングで燃料
が直接噴射されるようになっている。さらに、エンジン
本体1のウォータジャケット(図示せず)に臨んで、エ
ンジンの冷却水温度(エンジン温度)を検出する水温セ
ンサ18が設けられている。
モンレール6に接続されている。このコモンレール6に
は、その内部の燃料圧(コモンレール圧)を検出する圧
力センサ6aが配設されるとともに、クランク軸7によ
って駆動される高圧燃料供給ポンプ8が接続されてい
る。高圧燃料供給ポンプ8は、燃料の供給圧力を制御す
ることにより、圧力センサ6aによって検出されたコモ
ンレール6内の燃料圧を、例えばアイドル運転時にはお
よそ20MPa以上に保持し、その以外の運転時にはお
よそ50MPa以上に保持するようになっている。
検出するクランク角センサ9が設けられている。このク
ランク角センサ9は、詳しくは図示していないが、クラ
ンク軸7の端部に設けられた被検出プレートと、その外
周部に対向するように配設された電磁ピックアップとか
らなり、電磁ピックアップが被検出プレートの外周部に
形成された突起部の通過を検出してパルス信号を出力す
るようになっている。
の下流端は、サージタンク(図示せず)を介して各気筒
2ごとに分岐し、この分岐部がそれぞれ吸気ポートを介
して各気筒2の燃焼室4に接続されている。また、サー
ジタンクには、各気筒2内に供給される吸気の圧力を検
出する吸気圧センサ10aが設けられている。
流側から順に、エンジン本体1内に吸入される吸気流量
を検出するエアフローセンサ11と、後で説明するター
ビン21によって駆動され吸気を圧縮するブロワ12
と、このブロワ12によって圧縮されて高温化した空気
を冷却するインタークーラー13と、吸気の流通面積を
変化させる吸気絞り弁14とが設けられている。
通できるように切欠きが設けられたバタフライバルブか
らなる。この吸気絞り弁14は、後で説明するEGR弁
24と同様に、負圧制御用の電磁弁16によってダイヤ
フラム式のアクチュエータ15に作用する負圧の大きさ
に応じて、弁開度が変更される。また、吸気絞り弁14
の設置部には、その弁開度を検出するセンサ(図示せ
ず)が設けられている。
の上流端は、各気筒2ごとに分岐し、この分岐部がそれ
ぞれ排気ポートを介して各気筒2の燃焼室4に接続され
ている。排気通路20には、排気流れ方向にみて上流側
から順に、排気ガス流により回転駆動されるタービン2
1と、排気ガス中のNOx等の大気汚染物質を浄化する
排気浄化装置22と、この排気浄化装置22を通過した
排気ガス中のNOx濃度を検出するNOxセンサ19とが
配設されている。この排気浄化装置22は、O2過剰雰
囲気でNOxを吸収する一方、O2濃度の低下によりこ
のNOxを放出するNOx吸収材を備えたNOxトラッ
プ触媒(NOx吸収触媒)を用いている。
るPtと、NOx吸収材であるBaと、担体であるAl
2O3とを含んでいる。ここで、Baは排気ガス中のO
2含有率が比較的高いとき(リーンなとき)は、排気ガ
ス中のNOx(NO、NO2)を吸収する。なお、Ba
は、Ba(NO3)2の形態でNOxを吸収することが
多い。他方、Baは、排気ガス中のO2含有率が低いと
き(リッチなとき)は、吸収しているNOxを、排気ガ
ス中にNOあるいはNO2の形態で放出する。そして、
このときPtは、排気ガス中のHCを還元剤として利用
して、NOxを無害のN2に還元・浄化する。
22は、詳しくは図示していないが、排気の流れ方向に
沿って互いに平行に延びる多数の小径の孔部(貫通孔)
を有するハニカム構造に形成されたコージェライト製の
担体を備え、その各貫通孔壁面にNOxトラップ触媒層
を形成したものである。具体的には、前記のNOxトラ
ップ触媒を含む触媒層が、多孔質材であるMFI型ゼオ
ライト(ZSM5)等の担体に担持されている。そし
て、排気ガスは、担体に形成された多数の孔部内を流通
する。このため、排気ガスに含まれる煤(スモーク)の
量が多いと、該孔部が目詰まりを起こすおそれがある。
しかしながら、このエンジンでは、後で説明するよう
に、後噴射により煤の発生量が低減されているので、こ
のような不具合は生じない。
気通路20に配設されたタービン21とを備えたターボ
過給機25は、排気通路20のノズル断面積を変化させ
ることができるバリアブルジオメトリーターボ(VG
T)である。このターボ過給機25には、そのノズル断
面積を変化させるためのダイヤフラム式のアクチュエー
タ30と、このアクチュエータ30の負圧を制御するた
めの電磁弁31とが設けられている。
0には、排気ガスの一部をEGRとして吸気通路10に
還流させるための排気還流通路23(以下、「EGR通
路23」という。)が接続されている。、そして、EG
R通路23の下流端は、吸気絞り弁14の下流側におい
て吸気通路10に接続されている。EGR通路23の下
流側部分には、弁開度が調節可能な負圧作動式の排気還
流量調節弁24(以下、「EGR弁24」という。)が
配設され、このEGR弁24とEGR通路23とにより
排気ガス還流手段33が構成されている。なお、排気ガ
ス還流手段33は、主として、燃料の燃焼温度を低下さ
せてNOx発生量を低減するために設けられている。
が、弁本体がスプリングによって閉弁方向に付勢される
とともに、ダイヤフラム式のアクチュエータ24aによ
り開弁方向に駆動され、これによりEGR通路23の開
度をリニアに調節する。アクチュエータ24aには負圧
通路27が接続され、この負圧通路27は負圧制御用の
電磁弁28を介してバキュームポンプ29(負圧源)に
接続されている。そして、電磁弁28は、負圧通路27
を連通させ又は遮断することによりEGR弁駆動用の負
圧を調節し、これによりEGR弁24が開閉駆動され
る。また、EGR弁24の設置部には、その弁本体の位
置を検出するリフトセンサ26が設けられている。
気絞り弁14、EGR弁24、ターボ過給機25等は、
後で説明するエンジンコントロールユニット35(以
下、「ECU35」という。)から出力される制御信号
に応じて、その作動状態が制御される。また、ECU3
5には、圧力センサ6aの出力信号と、クランク角セン
サ9の出力信号と、エアフローセンサ11の出力信号
と、水温センサ18の出力信号と、運転者によって操作
されるアクセルペダルの操作量を検出するアクセルセン
サ32の出力信号とが入力される。
排気還流制御手段39と、主噴射制御手段40と、後噴
射制御手段41とを備えている。ここで、活性状態判定
手段37は、排気浄化装置22(NOxトラップ触媒)
が活性状態にあるか否かを判定する。排気還流制御手段
39は、エンジンの運転状態に応じてEGR弁24を駆
動して、排気還流量を制御する。
ンジンの運転状態に応じて、圧縮行程上死点付近で燃料
噴射弁5から主噴射により噴射される燃料(主噴射燃
料)の噴射状態を制御する。後噴射制御手段41(後噴
射手段)は、燃料の主噴射時期から膨張行程までの間の
所定時期(主噴射後における膨張行程の所定期間内)
に、主噴射燃料の燃焼が終了する時期(以下、「主噴射
燃料燃焼終了時期」ないしは「拡散燃焼終了時期」とい
う。)に基づいて、燃料噴射弁5から後噴射により噴射
される燃料(後噴射燃料)の噴射状態を制御する。な
お、後で説明するように、後噴射制御手段41は、NO
x吸収材からのNOx放出時に、後噴射を実行する。
多い運転状態、例えばエンジンが中負荷・中回転以上の
運転状態にある場合、あるいは排気浄化装置22(NO
xトラップ触媒)が不活性状態にある場合等において
は、後噴射は、主噴射後において圧縮上死点後30°〜
60°CA(クランク角)の範囲内における所定時期に
行われる。これにより、大気中へのNOxの放出が抑制
(制御)される。
時期に後噴射を行うことにより、主噴射により発生した
煤を低減することができる。この場合、燃焼室4から排
出される煤の量が多くなる傾向にある運転状態では、主
噴射による燃料の拡散燃焼が終了した時点を基準にして
設定された所定時期(エンジン回転数が1500rpm
以上の運転状態では、圧縮上死点後の30°〜60°C
Aの時期)に、燃料の後噴射が行われ、これにより煤の
排出量が低減される。なお、上記の煤の排出量が多い運
転状態としては、例えば、エンジン負荷が中負荷以上の
運転状態、エンジン回転数が2000rpm程度の中回
転数以上の運転状態、あるいは排気通路20にディーゼ
ルパティキュレートフィルタ(DPF)が設置されてい
る場合においてDPFが300°以下の低温状態にあ
り、その浄化機能が低い場合などがあげられる。
射量、あるいはそれ以上の噴射量でもって、吸気行程か
ら膨張行程初期の所定時期に行われる噴射である。この
主噴射により燃料の全部又は一部の拡散燃焼が行われる
場合は、煤が発生するため、後噴射は、煤を低減するた
めに行われる。この場合、圧縮行程上死点付近から膨張
行程初期にかけての所期時期に主噴射を行えば、軽負荷
の場合を除き、全ての燃料について拡散燃焼が行われ
る。他方、軽負荷の場合には、一部の燃料について予混
合燃焼が行われ、残りの燃料について拡散燃焼が行われ
る。
死点より前にかけて行うと、予混合燃焼が主体となり、
この燃焼の場合、煤はほとんど発生しない。ただし、燃
焼室壁面に付着した燃料が、圧縮行程上死点付近で着火
して拡散燃焼が行われ、煤を発生させる場合もある。し
かしながら、このような場合でも、後噴射により煤を低
減することができる。なお、これには、主噴射が、吸気
行程から圧縮上死点までの所定時期と、圧縮上死点付近
から膨張行程初期までの所定時期との少なくとも2回に
分けて行われる場合も含まれる。
の制御手法を説明する。まず、図2に示すフローチャー
トを参照しつつ、この燃料噴射制御における基本制御の
制御手法を説明する。図2に示すように、この燃料噴射
制御においては、まずステップS1で各センサの検出デ
ータが入力される。続いて、ステップS2で、エンジン
の要求トルクに対応する主噴射における燃料噴射量QM
及び主噴射時期IMが、予め設定されたマップから読み
出されて設定される。この後、ステップS3で、エンジ
ンが定常運転状態にあるか否かが判定される。
と判定された場合は(YES)、ステップS4で、EC
U35に設けられた活性状態判定手段37により、排気
浄化装置22(NOxトラップ触媒)が所定温度以上の
活性状態にあるか否かが判定される。ここで、排気浄化
装置22が活性状態にあると判定されれば(YES)、
ステップS5で、エンジン負荷が中負荷以上であるか否
かが判定される。そして、エンジン負荷が中負荷以上で
ないと判定されれば(NO)、ステップS6で、エンジ
ン回転数が中回転以上であるか否かが判定される。
2(NOxトラップ触媒)が活性状態でない(不活性状
態である)と判定された場合(NO)、ステップS5で
エンジン負荷が中負荷以上であると判定された場合(Y
ES)、又はステップS6でエンジン回転数が中回転以
上であると判定された場合は(YES)、ステップS7
で、予め設定されたマップからエンジンの運転状態に対
応する後噴射における燃料噴射量QF及び後噴射時期I
Fが読み出されて設定される。これにより、主噴射後に
おけるATDC(圧縮上死点後)30°〜60°CAの
範囲内の所定時期に、後噴射時期が設定される。この
後、ステップS8で、燃料の噴射制御が実行される。
0°〜60°CAの範囲内で後噴射を行う場合、主噴射
により燃焼室4内に噴射された燃料(以下、「主噴射燃
料」という。)が予混合燃焼した後に生じる拡散燃焼が
終了した時点(以下、「拡散燃焼終了時期」という。)
で、後噴射により燃焼室4内に噴射された燃料(以下、
「後噴射燃料」という。)の燃焼が行われる。このた
め、拡散燃焼終了時期に燃焼室4内に存在する煤と酸素
との混合が促進される。このように、着火し易い状態
で、後噴射燃料が噴射されてその燃焼が始まるため、煤
の発生を低減することができる。
説明する。拡散燃焼の態様は熱発生率に基づいて求めら
れる。例えば、書籍「内燃機関講義(株式会社養賢堂出
版、長尾不二夫著)」によれば、熱発生率は、次の式1
で表される。
置CB566のマニュアル書によれば、比熱比Kθは、
次の式2〜式5で表される。 Kθ=Cp/Cv…………………………………………………………式2 Cp=ap+b・(Tθ/100)+c・(Tθ/100)2 +d・(100/Tθ)…………………………………………式3 Cv=Cp−(A・Ro)/M …………………………………………式4 Tθ=(Pθ・Vθ)/29.27・G……………………………………式5 Cp:定圧比熱 Cv:定容比熱 Ro:ガス定数 M :空気の分子量 Tθ :ガス温度 G :ガス重量 ap、b、c、d:その他の定数
生率dQ/dθは、筒内圧力Pθと行程容積Vθとを独
立変数とする関数f(Pθ,Vθ)となる。また、行程
容積Vθを、ボア径B及びストロークSに基づいて表す
と、次の式6のようになる。 Vθ=(π・B2・S/8)・(1−cosθ)………………………式6 したがって、熱発生率dQ/dθは、次の式7で表され
る。 dQ/dθ=[f(Pθ+Δθ,Vθ+Δθ)−f(Pθ,Vθ)]/Δθ… …式7 よって、クランク角毎の筒内圧力データがあれば、これ
に基づいて熱発生率を計算することができる。
ルリフトパターン(燃料噴射量)が互いに異なる3つの
ケースについて、このようにして求めた熱発生率の経時
変化をグラフで示す。図3(a)〜(c)に示すよう
に、主噴射燃料の燃焼に伴って熱発生率が正方向に大き
な値を示した後、拡散燃焼の終了に伴って熱発生率が0
となる。このため、熱発生率がほぼ0となる時点t1に
基づき、拡散燃焼終了時期を求めることができる。な
お、図3(a)〜(c)において、A1〜A3(破線)
は、それぞれ、後噴射燃料の燃焼による熱発生率(F/
UPによる熱発生)を示している。
求められた時点t1の近傍で後噴射燃料の燃焼が開始さ
れるよう、後噴射時期が設定されている。この後噴射時
期は、運転状態に基づいて予め設定された着火遅れ時間
τF(例えば、0.4〜0.7msの間)を考慮して、t
1よりもこの着火遅れ時間τF分だけ早く設定されてい
る。着火遅れ時間τFは、エンジン排気量、燃料噴射圧
力にもよるが、1000〜3000ccクラスのエンジ
ンにおいて、噴射圧力が50〜200MPaの場合は、
0.4〜0.7ms程度となる(運転状態によりまちまち
である)。
は、圧縮行程上死点付近で行われる主噴射の着火遅れ時
間τmain(約0.1(高回転時)〜0.3ms(低回
転時))よりも長いが、これは後噴射が圧縮上死点後の
筒内温度が比較的低い温度の時に行われるからである。
また、燃料噴射弁5への噴射駆動信号は、着火遅れ時間
τF、τmainに加えて、さらに噴射弁開閉信号から
実際に噴射の開始・終了が起こる間の無効時間(駆動遅
れ時間)も考慮されて、ECUに記憶されている。
に応じて変化し、エンジン負荷あるいは回転数が上昇す
るほど、拡散燃焼終了時期が遅くなる傾向がある。例え
ば、エンジン回転数が2000rpmに制御されるとと
もに、平均有効圧力Peが0.57MPaに制御される
中負荷・中回転時に、クランク角に対応するシリンダ内
の圧力変化と、シリンダの容積変化とに基づき、燃焼室
4内の熱発生率を熱力学的に計算してグラフ化すると、
図3(b)に示すようになる。この場合、、ピストンの
圧縮上死点近傍で噴射された主噴射燃料の予混合燃焼に
よる熱発生Yと、これとほぼ同程度の拡散燃焼による熱
発生Kとが生じる。そして、ATDC35°CA程度よ
り約0.5ms遅れた時点t1で、拡散燃焼が終了する
ことが確認されている。
2500rpmに制御されるとともに、平均有効圧力P
eが0.9MPaに制御される高負荷・高回転時には、
図3(c)に示すように、主噴射燃料の予混合燃焼によ
る熱発生Yに比べて、かなりの長期間にわたって拡散燃
焼による熱発生Kが生じる。この場合、拡散燃焼は、A
TDC47°CA程度より約0.7ms遅れた、かなり
遅い時点t1で終了することが確認されている。
rpmに制御されるとともに、平均有効圧力Peが0.
3MPaに制御される低負荷・低回転時には、図3
(a)に示すように、主噴射燃料の予混合燃焼と拡散燃
焼とを熱発生状態によって区別することは困難である。
この場合、ATDC30°CA程度より約0.6ms遅
れた、比較的に早い時点t1で燃焼が終了することが確
認されている。
始することによる煤の低減効果について説明する。図4
(a)に、エンジン回転数が1500rpmに制御され
るとともに、平均有効圧力Peが0.3MPaに制御さ
れたエンジンの低負荷・低回転時において、主噴射後に
後噴射時期を種々変化させて煤の発生量を測定した結果
を示す。図4(a)に示すように、後噴射時期を、主噴
射後においてATDC30°CA以降に設定した場合、
煤の発生量が顕著に低減される。
rpmに制御されるとともに、平均有効圧力Peが0.
57MPaに制御された中負荷・中回転時において、主
噴射後に後噴射時期を種々変化させて煤の発生量を測定
した結果を示す。図4(b)に示すように、後噴射時期
を、主噴射後においてATDC35°CA以降に設定し
た場合、煤の発生量が顕著に低減される。
rpmに制御されるとともに、平均有効圧力Peが0.
9MPaに制御された高負荷・高回転時において、主噴
射後に後噴射時期を種々変化させて煤の発生量を測定し
た結果を示す。図4(c)に示すように、後噴射時期
を、主噴射後においてATDC47°以降に設定した場
合、煤の発生量が顕著に低減される。なお、上記測定で
は、エンジン負荷を一定に設定するとともに、主噴射燃
料量に対する後噴射燃料量の比率を20%に設定してい
る。図4(a)〜図4(c)において、縦軸のSは、後
噴射を行わない場合の煤発生量(以下、「基準値」とい
う。)を示している。なお、後で説明するHC量(図
5)、燃費率(図6)、NOx量(図7)の場合も同様
である。
回転数が1500rpmに制御されるとともに、平均有
効圧力Peが0.3MPaに制御された低負荷・低回転
時に、主噴射燃料の拡散燃焼終了時点の近傍よりも着火
遅れ分だけ進角した時点であると考えられるATDC3
0°CAの時点で後噴射を行った場合において、主噴射
燃料量に対する後噴射燃料量の比率(以下、「後噴射割
合」という。)を10〜45%の範囲内で種々変化させ
て煤の発生量を測定した結果を示す。図8(a)中に実
線で示すように、後噴射割合の増加に伴って煤発生量が
減少する。これに対して、図8(a)中に破線で示すよ
うに、拡散燃焼終了時期より前であると考えられるAT
DC8°CAの時点で後噴射を行った場合は、後噴射量
割合の増大に伴って煤発生量が増加する。
rpmに制御されるとともに、平均有効圧力Peが0.
57MPaに制御された中負荷・中回転時において、拡
散燃焼終了時点の近傍よりも着火遅れ分だけ進角した時
点であると考えられるATDC35°CAの時点と、拡
散燃焼終了時期より前であると考えられるATDC20
°CAの時点とで後噴射を行って、図8(a)の場合と
同様に煤の発生量を測定した結果を示す。
rpmに制御されるとともに、平均有効圧力Peが0.
9MPaに制御された高負荷・高回転時において、拡散
燃焼終了時期の近傍よりも着火遅れ分だけ進角した時点
であると考えられるATDC48°CAの時点と、拡散
燃焼終了時期より前であると考えられるATDC20°
CAの時点とで後噴射を行って、図8(a)の場合と同
様に煤の発生量を測定した結果を示す。図8(b)、
(c)から明らかなとおり、図8(a)に示す低負荷・
低回転時の場合と同傾向の結果が得られている。
燃焼終了時期を基準にして後噴射時期を設定し、拡散燃
焼終了時期又はその前後近傍で後噴射燃料が着火するよ
うにすれば、燃焼室4内に存在する炭素と酸素とが充分
に混合された状態で後噴射が行われ、炭素が効果的に燃
焼させられ、燃焼室4内から排気通路20への煤の排出
量が低減されることがわかる。
はエンジン回転数等に応じて変化する。このため、例え
ば図3(a)〜図3(c)に示すような、拡散燃焼によ
る熱発生率が0となる時点t1を、それぞれエンジンの
運転状態が異なる種々の実験データに基づいてマップ化
し、このマップからを読み出すことにより設定すること
ができる。
ンサの検出信号、燃焼光センサの検出信号、あるいは燃
焼室4内に存在する電荷が偏った反応性の高い水素や炭
化水素等の量を検出するセンサの検出信号等に基づいて
拡散燃焼状態を判別する燃焼状態判別手段を設けてもよ
い。この場合、燃焼状態判別手段により、主噴射後の温
度が所定温度以下の低温となった否か、燃焼光の発光が
がなくなったか否か、あるいは水素や炭化水素の量が急
減したか否か等を判別することにより、拡散燃焼終了時
期を求め、これを基準にして次の燃焼サイクルでの後噴
射時期を設定するようにしてもよい。さらに、温度セン
サによって検出された気筒内温度から断熱膨張温度を減
算した値の微分値を求め、この微分値が−の値から0に
なった時点を検出することにより、拡散燃焼終了時期を
判別するようにしてもよい。
て判別された拡散燃焼終了時期に基づいて、この拡散燃
焼終了時期付近(クランク角で±5°以内)の時期、好
ましくは拡散燃焼終了直後に後噴射燃料の燃焼が開始さ
れるように、それぞれの運転状態に応じて燃料の後噴射
の開始時期を設定すれば、エンジンの運転状態に応じて
最適時期に後噴射を行うことができ、煤の排出量を効果
的に低減することができる。
NOx低減効果について説明する。図5(a)に、エン
ジン回転数が1500rpmに制御されるとともに、平
均有効圧力Peが0.3MPaに制御された低負荷・低
回転時において、主噴射後のATDC2.5〜50°の
範囲内で後噴射時期を種々変化させてHC量を測定した
結果を示す。図5(a)に示すように、後噴射時期を、
主噴射後のATDC30°CA以降に設定した場合、H
C量が顕著に増加する。
rpmに制御されるとともに、平均有効圧力Peが0.
57MPaに制御された中負荷・中回転時において、後
噴射時期を種々変化させてHC量を測定した結果を示
す。図5(b)に示すように、後噴射時期を、主噴射後
のATDC35°CA以降に設定した場合、HC量が顕
著に増加する。
rpmに制御されるとともに、平均有効圧力Peが0.
9MPaに制御された高負荷・高回転時において、後噴
射時期を種々変化させてHC量を測定した結果を示す。
図5(c)に示すように、後燃料時期を、主噴射後のA
TDC45°CA以降に設定した場合、HC量が顕著に
増加する。上記測定では、エンジン負荷を一定に制御す
るとともに、主噴射燃料量に対する後噴射燃料量の比率
をそれぞれ20%に設定している。なお、図5(a)〜
図5(c)において、縦軸のSは、HC量の基準値を示
している。
C30°CA以降に後噴射を行った場合、HC量が増加
してNOxの還元剤となる電荷が偏った反応性の高い水
素や炭化水素量が増加し、燃焼室4内から排気通路20
へのRawNOxの排出量を低減することができること
がわかる。
負荷・低回転時と、中負荷・中回転時と、高負荷・高回
転時とにおいて、後噴射時期を種々変化させて燃費率
(燃料消費率)を測定した結果を示す。なお、図6
(a)〜図6(c)において、縦軸のSは、燃費率の基
準値を示している。図6(a)〜図6(c)に示すよう
に、後噴射時期が遅くなるほど燃費率が悪化することが
わかる。これは、後噴射時期を遅くするほど、後噴射燃
料がエンジン出力の向上に寄与しなくなるからである。
したがって、燃費が悪化するのを防止するには、後噴射
時期を、主噴射後のATDC60°CA以前に設定する
のが好ましい。かくして、例えば、主噴射後のATDC
30〜60°CAの範囲内における所定時期に後噴射を
行うことにより、燃費性能を悪化させることなく、大気
中へのNOxの放出を効果的に防止して排気ガスを浄化
できる。
負荷・低回転時と、中負荷・中回転時と、高負荷・高回
転時とにおいて、後噴射時期を種々変化させてNOx排
出量を測定した結果を示す。なお、図7(a)〜図7
(c)において、縦軸のSは、NOx排出量の基準値を
示している。図7(a)〜図7(c)に示すように、主
噴射後のATDC30〜60°CAの範囲内における所
定時期に後噴射を行うことにより、燃費を悪化させるこ
となく、大気中へのNOxの放出を効果的に防止して排
気ガスを浄化することができる。上記測定では、排気還
流率は一定となるように制御されている。排気還流制御
手段39による排気ガスの還流制御が実行されると、後
噴射によって生じる排圧上昇によるEGR効果によりR
awNOxの発生量が変化し、後噴射によるRawNOx
の低減効果を正確に確認することが困難となるからであ
る。
設定するのではなく、タイマに基づいて設定される時間
に応じて設定してもよい。この場合、主噴射後において
圧縮上死点後の1.2〜4msの範囲内における所定時
期に後噴射を行うことにより、燃費を悪化させることな
く、大気中へのNOxの放出を効果的に防止することが
できる。
によれば、煤の発生量の低減と、NOxの発生量の低減
とを両立させるでき、かつ後噴射時期を主噴射後の拡散
燃焼終了時期を基準にして設定して燃費性能を向上させ
ることができる。例えば、エンジン回転数が1500r
pmで低負荷の場合は、拡散燃焼終了時期はATDC3
0°CAより約0.5ms遅れた時点である。したがっ
て、煤の発生量及びNOxの発生量を低減するには、後
噴射時期を、ATDC30°CA付近、例えばATDC
27〜35°CAに設定すればよく、最適な時期はAT
DC30°CAである。
の場合は、拡散燃焼終了時期はATDC35°CAより
約0.5ms遅れた時点である。したがって、後噴射時
期を、ATDC35°CA付近、例えばATDC33〜
40°CAに設定すればよく、最適な時期はATDC3
5°CAである。また、エンジン回転数が2500rp
mで高負荷の場合は、拡散燃焼終了時期はATDC47
°CAより約0.7ms遅れた時点である。したがっ
て、後噴射時期を、ATDC47°付近、例えばATD
C45〜48°CAに設定すればよく、最適な時期はA
TDC47°CAである。
給するターボ過給機25を備えたこのディーゼルエンジ
ンでは、上記のように、主噴射後に所定量の燃料が後噴
射されると排気ガス圧力が上昇してターボ過給機25の
過給作用が高められる。その結果、燃焼室4内に導入さ
れる新気量が増大され、これにより燃焼室4内に残存す
る炭素の燃焼が促進され、煤の発生が効果的に抑制され
る。そして、ターボ過給機25の過給作用により吸入空
気量が増大すると、主噴射燃料の拡散燃焼終了時期が早
くなる傾向がある。このため、この拡散燃焼終了時期に
応じて後噴射時期を補正することにより、煤の発生を効
果的に抑制して排気通路20に排出される煤の導出量
を、より低減することができる。
ーゼルエンジンには、排気ガスの一部を吸気系に還流さ
せる排気ガス還流手段33が設けられている。ここで、
ECU35に設けられた排気還流制御手段39により排
気ガスの還流率を目標値に追従するようフィードバック
制御する場合、ターボ過給機25の過給作用により吸入
空気量が増大すると、これに対応して吸気系に還流され
る排気ガスが増量される。このため、燃焼室4内から排
気通路20へRawNOxの排出量が、さらに効果的に
低減される。
化装置22内のNOxトラップ触媒が不活性状態にある
場合、拡散燃焼終了時期を基準にして後噴射時期を設定
するといった制御を行えば、上記のとおり、燃焼室4内
で反応性の高い水素量等を増大させてRawNOxを低
減する作用と、炭素の燃焼を促進させて煤の排出量を低
減する作用とが同時に得られる。
ある場合は、NOxトラップ触媒に供給される還元剤の
量が充分に確保される時期、すなわちATDC60°〜
180°CAの範囲内における所定時期に後噴射時期を
設定する一方、NOxトラップ触媒が不活性状態にある
場合は、後噴射時期を進角させることにより拡散燃焼終
了時期に対応させて後噴射を行うようにしてもよい。こ
のようにすれば、NOxトラップ触媒の活性時には、そ
の浄化作用により大気中へのNOxの放出を抑制するこ
とができる。他方、NOxトラップ触媒の不活性時に
は、燃焼室4内における反応性の高い水素量を増大させ
るなどして、燃焼室4から排気通路20へのNOx排出
量を効果的に低減することができる。
実線で示すように、実験に基づく後噴射割合と煤発生量
との対応関係によれば、低負荷・低回転時、中負荷・中
回転時及び高負荷・高回転時のいずれの運転状態におい
ても、後噴射割合を大きくすればするほど、煤の発生を
抑制することができることがわかる。
rpmに制御されるとともに、平均有効圧力Peが0.
3MPaに制御された低負荷・低回転時に、ATDC3
0°CAの時点とATDC8°CAの時点とで後噴射を
行った場合において、後噴射割合を種々変化させてHC
量を測定した結果を示す。図9(a)中に実線で示すよ
うに、拡散燃料終了時期付近であるATDC30°CA
の時点で後噴射を行った場合、後噴射割合の増加に伴っ
てHC量が増加する。これに対して、図9(a)中に破
線で示すように、拡散燃料終了時期よりかなり前のAT
DC8°CAの時点で後噴射を行った場合は、HC量は
ほとんど変化しない。
rpmに制御されるとともに、平均有効圧力Peが0.
57MPaに制御された中負荷・中回転時において、A
TDC35°CAの時点とATDC20°CAの時点と
で後噴射を行って、図9(a)の場合と同様にHC量を
測定した結果を示す。この場合も、図9(b)中に実線
で示すように、拡散燃料終了時期付近であるATDC3
5°CAの時点で後噴射を行った場合は、後噴射割合の
増加に伴ってHC量が増加する。これに対して、図9
(b)中に破線で示すように、拡散燃料終了時期よりか
なり前のATDC20°CAの時点で後噴射を行った場
合は、HC量は後噴射割合に対して単調には増加・減少
しない。
rpmに制御されるとともに、平均有効圧力Peが0.
9MPaに制御された高負荷・高回転時において、AT
DC48°CAの時点とATDC20°CAの時点とで
後噴射を行って、図9(a)の場合と同様にHC量を測
定した結果を示す。この場合は、いずれにおいても、H
C量は後噴射割合に対して単調には増加・減少しない。
0rpmに制御されるとともに、平均有効圧力Peが
0.3MPaに制御された低負荷・低回転時において、
ATDC30°CAの時点とATDC8°CAの時点と
で後噴射を行った場合において、後噴射割合を種々変化
させて燃費率を測定した結果を示す。図10(a)中に
破線で示すように、拡散燃料終了時期よりかなり前のA
TDC8°CAの時点で後噴射を行った場合、後噴射割
合の増大に対して燃費率はほとんで変化しない。これに
対して、図10(a)中に実線で示すように、拡散燃焼
終了時期付近で後噴射燃料の燃焼が行われると考えられ
るATDC30°CAの時点で後噴射を行った場合に
は、後噴射割合の増加に伴って、燃費率が顕著に悪化す
る。
0rpmに制御されるとともに、平均有効圧力Peが
0.57MPaに制御された中負荷・中回転時におい
て、ATDC35°CAの時点とATDC20°CAの
時点とで後噴射を行って、図10(a)の場合と同様に
燃費率を測定した結果を示す。また、図10(c)に、
エンジン回転数が2500rpmに制御されるととも
に、平均有効圧力Peが0.9MPaに制御された高負
荷・高回転時において、ATDC48°CAの時点とA
TDC20°CAの時点とで後噴射を行って、図10
(a)の場合と同様に燃費率を測定した結果を示す。図
10(b)、(c)から明らかなとおり、図10(a)
に示す低負荷・低回転時の場合と同傾向の結果が得られ
ている。
て後噴射時期を設定し、拡散燃焼終了時期、又はその前
後付近で後噴射燃料が着火するようにすれば、後噴射燃
料量を、総燃料噴射量の0.2%〜50%に、好ましく
は15%〜35%の範囲内に設定することにより、燃費
を悪化させることなく、煤の発生量を効果的に低減する
ことができる。
プ触媒の活性状態や、エンジン負荷及びエンジン回転数
に応じて後噴射を実行するようにしているが、後噴射の
実行形態はこれに限られず、種々の変形が可能である。
例えば、エンジンの全ての運転状態で燃料の後噴射を実
行するようにしてもよい。
チャートを参照しつつ、このエンジンの燃料噴射制御に
おける、NOxトラップ触媒のNOx吸収材からNOx
を放出させて還元・浄化するための燃料噴射制御の制御
手法を説明する。図11(a)に示すように、この制御
ルーチンにおいては、まずステップS11で各種データ
が入力された後、ステップS12で、アクセル開度と車
速とに基づいて目標トルクTrが設定(セット)され
る。なお、目標トルクTrは、アクセル開度が大きいと
きほど、また車速が高いときほど大きくなるように設定
される。
触媒のNOx吸収量ないしはNOx吸着量が推定される
(以下、「NOx推定量」という。)。続いて、ステッ
プS14で、NOx推定量(NOx量)がしきい値NO
x0を超えているか否かが判定される。ここで、NOx
推定量がしきい値NOx0を超えていれば(YES)、
ステップS16とステップS17とで、それぞれ、エン
ジン回転数Neが設定値Ne0未満であるか否かと、目
標トルクTrが設定値Tr0未満であるか否かとが判定
される。
数Neが設定値Ne0未満であると判定された場合(Y
ES)、又はステップS17で目標トルクTrが設定値
Tr 0未満であると判定された場合(YES)、すなわ
ちエンジンが低負荷状態(ないしは、低中負荷状態)又
は低回転状態(ないしは、低中回転状態)であれば、ス
テップS18〜S20で、NOx放出時用の燃料噴射条
件(燃料噴射量及び燃料噴射時期)が設定される。他
方、ステップS16でエンジン回転数Neが設定値Ne
0以上であると判定され(NO)、かつステップS17
で目標トルクTrが設定値Tr0以上であると判定され
た場合(NO)、すなわちエンジンが高負荷・高回転状
態(高中負荷・高中回転状態)であれば、ステップS2
3で、通常時用の噴射条件(燃料噴射量及び燃料噴射時
期)が設定される。
回転数及び目標トルクをパラメータとする噴射量マップ
において、折れ線L1(アイドル域)と折れ線L2(全
負荷)との間の領域において、斜線を付した領域ではN
Ox放出時用の燃料噴射量が設定され、斜線を付してい
ない領域では通常時用の燃料噴射量が設定される(燃料
噴射時期は両者同じ)。
図11(b)に示すステップS24を挿入してもよい。
この場合は、ステップS24で、エンジン回転数Neが
設定値Ne0未満であり、かつ目標トルクTrが設定値
Tr0未満であると判定されたとき(YES)、すなわ
ちエンジンが低負荷・低回転状態(ないしは、低中負荷
・低中回転状態)であるときは、ステップS18〜S2
0でNOx放出時用の燃料噴射量及び燃料噴射条件が設
定される。それ以外の場合は、ステップS23で通常時
用の燃料噴射条件が設定される。この場合は、図13
(b)に示すように、NOx放出時用の燃料噴射量が設
定される領域(斜線部)が小さくなる。
る場合は、まずステップS18でタイマTのカウント値
が1だけインクリメントされ、続いてステップS19で
タイマTのカウント値が設定値T0未満であるか否かが
判定される。このタイマTは、NOx放出時用の燃料噴
射制御を所定時間T0だけ実行させるためのタイマであ
る。つまり、初期値が0であるタイマTは、NOx推定
量がNOx0を超えてNOx放出時用の燃料噴射制御が
開始された時点からカウントを開始し、ステップS19
でそのカウント値が所定値T0に達したと判定されたと
きに、今回のNOx放出時用の燃料噴射制御が終了す
る。
開始されて、タイマTがカウントを開始した後は、たと
えステップS14でNOx推定量がしきい値NOx0以
下であると判定されても、タイマTがカウントアップす
るまではNOx放出時用の燃料噴射制御が継続される。
すなわち、ステップS14でNOx推定量がしきい値N
Ox0以下であると判定された場合は、ステップS15
でタイマTがカウント中であるか否かが判定され、カウ
ント中であれば(YES)、ステップS18が実行され
る。
カウント値が設定値T0未満であると判定された場合は
(YES)、ステップS20でNOx放出時用の燃料噴
射条件が設定され、カウント値がT0以上であると判定
された場合は(NO)、ステップS22でNOx推定量
及びタイマTがリセットされた後、ステップS23で通
常時用の燃料噴射条件が設定される
噴射燃料量QM1及び主噴射時期I Mと、後噴射燃料量
QF1及び後噴射時期IFとが設定される。この後、ス
テップS21で、ステップS20で設定された燃料噴射
条件に従って主噴射及び後噴射が実行され、ステップS
11に復帰する。
噴射燃料量QM2及び主噴射時期I Mと、後噴射燃料量
QF2及び後噴射時期IFとが設定される。この場合
は、主噴射燃料量QM2と後噴射燃料量QF2との合計
噴射量が目標トルクTrに対応するように、燃料噴射量
が設定される。この後、ステップS21で、ステップS
23で設定された燃料噴射条件に従って主噴射及び後噴
射が実行され、ステップS11に復帰する。
F1は、通常時用の後噴射燃料量Q F2よりも多くなっ
ている(QF1>QF2)。したがって、この例では、
NOx放出時用の後噴射燃料量QF1と通常時用の後噴
射燃料量QF2の差(QF1−QF2)が、実質的にN
Ox吸収材からNOxを放出させるための後噴射とな
る。なお、NOx放出時用の後噴射燃料量QF1は、排
気ガス中のO2濃度が2%以下となり、かつHCが増加
するように好ましく設定される。
では、目標トルク(エンジン負荷)及びエンジン回転数
によって、燃料噴射形態を切り替えている(ステップS
16、S17、あるいはステップS24)。しかしなが
ら、このようにせず(ステップS16、S17、あるい
はステップS24を削除する)、全負荷以外は後噴射燃
料量を増量する一方、高回転側ないしは高負荷側ほど増
量を少なくするようにしてもよい。この場合、低負荷・
低回転側から高負荷・高回転側にかけての後噴射燃料量
の変化特性は、例えば図13(c)中のグラフG2のよ
うに設定される。なお、図11に示す燃料噴射制御で
は、NOx放出時用及び通常時用の後噴射の、低負荷・
低回転側から高負荷・高回転側にかけての後噴射燃料量
の変化特性は、それぞれ、図13(c)中のグラフ
G1、G3のように設定される。
しつつ、このエンジンの燃料噴射制御におけるVGT制
御の制御手法を説明する。図12に示すように、この制
御ルーチンにおいては、まずステップS31でデータが
入力される。続いて、ステップS32で、エンジン回転
数Neと目標トルクTrとに応じて、基本VGT量VG
TBが設定(セット)される。図14に示すように、基
本VGT量VGTBは、高出力側(高トルク、高回転
側)ほど、VGT開度が大きくなるように設定されてい
る。
ント中であるか否か、すなわちNOx放出時用の燃料噴
射制御が行われているか否かが判定される。なお、タイ
マTは、図11に示す前記の燃料噴射制御ルーチンと共
通のタイマである。ここで、タイマTがカウント中であ
れば(YES)、すなわちNOx放出時であれば、ステ
ップS34で、基本VGT量VGTBに所定値αを加算
したものがVGT開度とされる。この場合、VGT開度
が大きくなり、ターボ過給機25の過給圧が低減され、
新気量(新気吸入量)が低減される。この後、ステップ
S36で、VGTが駆動される。
ント中でないと判定された場合(NO)、すなわち通常
時であれば、新気量を低減する必要はないので、基本V
GT量VGTBがそのままVGT開度とされる。この
後、ステップS36で、VGTが駆動される。
ト中であると判定されたときに、VGT開度を大きくし
て新気量を低減するのではなく、吸気絞り弁14の開度
を小さくし、あるいはEGR弁24の開度を大きくする
ことにより、新気量を低減するようにしてもよい。
ィーゼルエンジンのシステム構成図である。
基本的な制御方法を示すフローチャートである。
ける熱発生率の経時変化を示すタイムチャートである。
煤発生量との関係を示すグラフである。
排気ガス中のHC量との関係を示すグラフである。
燃費率との関係を示すグラフである。
排気ガス中のNOx量との関係を示すグラフである。
煤発生量との関係を示すグラフである。
排気ガス中のHC量との関係を示すグラフである。
と燃費率との関係を示すグラフである。
出時の燃料噴射制御の制御方法を示すフローチャートで
ある。
トである。
トルクと目標トルクとをパラメータとする噴射量マップ
の特性を示す図であり、(c)は後噴射燃料量のエンジ
ン回転数に対する変化特性を示す図である。
タとするVGT開度マップの特性を示す図である。
室、5…燃料噴射弁、6…コモンレール、7…クランク
軸、8…高圧燃料供給ポンプ、9…クランク角センサ、
10…吸気通路、11…エアフローセンサ、12…ブロ
ワ、13…インタークーラ、14…吸気絞り弁、20…
排気通路、21…タービン、22…排気浄化装置(NO
xトラップ触媒)、24…EGR弁、25…ターボ過給
機、33…排気ガス還流手段、35…ECU(コントロ
ールユニット)、37…活性状態判定手段、39…排気
還流制御手段、40…主噴射制御手段、41…後噴射制
御手段。
Claims (7)
- 【請求項1】 燃焼室内に燃料を噴射する燃料噴射弁
と、 圧縮行程上死点付近で燃料噴射弁に燃料を噴射させて主
噴射を実行する主噴射手段と、 主噴射後において膨張行程の所定期間内で、主噴射によ
り噴射された燃料の燃焼が終了する時期に基づいて燃料
噴射弁に燃料を噴射させて後噴射を実行する後噴射手段
とを備えているディーゼルエンジンの排気浄化装置であ
って、 排気通路に配置され、酸素過剰雰囲気でNOxを吸収す
る一方、酸素濃度の低下により上記NOxを放出するN
Ox吸収材を備えていて、 後噴射手段が、NOx吸収材からのNOx放出時に後噴
射を実行するようになっていることを特徴とするディー
ゼルエンジンの排気浄化装置。 - 【請求項2】 後噴射手段が、HCが増大するように噴
射量を所定値以上に設定して後噴射を実行するようにな
っていることを特徴とする請求項1に記載のディーゼル
エンジンの排気浄化装置。 - 【請求項3】 主噴射による燃料噴射量と後噴射による
燃料噴射量との合計量に対する後噴射による燃料噴射量
の割合が20%以上であることを特徴とする請求項2に
記載のディーゼルエンジンの排気浄化装置。 - 【請求項4】 後噴射手段が、所定エンジン回転数以下
又は所定負荷以下の運転領域で、NOx吸収材からNO
xを放出させるための後噴射を実行するようになってい
ることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載
のディーゼルエンジンの排気浄化装置。 - 【請求項5】 NOx放出時に新気量を減少させる新気
量低減手段が設けられていることを特徴とする請求項1
〜4のいずれか1つに記載のディーゼルエンジンの排気
浄化装置。 - 【請求項6】 過給圧の調整が可能なターボ過給機がデ
ィーゼルエンジンに設けられていて、 新気量低減手段が、ターボ過給機に過給圧を低減させる
ことにより新気量を減少させるようになっていることを
特徴とする請求項5に記載のディーゼルエンジンの排気
浄化装置。 - 【請求項7】 燃焼室内に燃料を噴射する燃料噴射弁
と、排気通路に配置され酸素過剰雰囲気でNOxを吸収
する一方酸素濃度の低下により上記NOxを放出するN
Ox吸収材とを備えていて、圧縮行程上死点付近で燃料
噴射弁に燃料を噴射させて主噴射を実行するようになっ
ているディーゼルエンジンの排気浄化方法であって、 膨張行程において、主噴射により噴射された燃料の燃焼
が終了する時期を設定する燃焼終了時期設定工程と、 NOx吸収材からのNOx放出時に、燃焼終了時期設定
工程で設定された燃焼終了時期に基づいて燃料噴射弁に
燃料を噴射させて後噴射を実行する後噴射工程とを含ん
でいることを特徴とするディーゼルエンジンの排気浄化
方法。
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