JP2002289964A - 光集積装置 - Google Patents

光集積装置

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JP2002289964A
JP2002289964A JP2001089488A JP2001089488A JP2002289964A JP 2002289964 A JP2002289964 A JP 2002289964A JP 2001089488 A JP2001089488 A JP 2001089488A JP 2001089488 A JP2001089488 A JP 2001089488A JP 2002289964 A JP2002289964 A JP 2002289964A
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JP2001089488A
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English (en)
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Kenji Orita
賢児 折田
Toru Takayama
徹 高山
Masaaki Yuri
正昭 油利
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Panasonic Holdings Corp
Original Assignee
Matsushita Electric Industrial Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 複数の導波路を集積した光集積装置に関し、
反射光と入射光の相互干渉による素子特性不良や歩留ま
り低下などを少なくする。 【解決手段】 ストライプ状の窓9(a)により形成さ
れている光導波路は、2つの光導波路9(a1)と光導
波路9(a2)とが光学的に接続したものである。光導
波路9(a1)は導波光方向が利得領域近傍の端面12
に対して直交するように終端している。光導波路9(a
2)はDBR領域近傍の端面13に対して、導波光方向
が端面13に斜めに交わるように終端している。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、複数の光導波路を
集積した光集積装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】コンパクトで低価格という利点を有する
半導体レーザ素子は光情報処理や光計測などの光源とし
て広く利用されている。半導体レーザ素子のうち、半導
体の劈開端面がミラーであるファブリペロー(以下FP
という)共振器を利用したFP型半導体レーザ素子は、
作製が容易であり光ディスクのピックアップ光源として
量産されている。しかし、温度により発振波長が変化し
たり、高速変調時に複数の縦モードで発振するなどの欠
点がある。
【0003】一方、大容量伝送の光通信や高精度の光計
測においては、高速変調時でも純度の高い単一縦モード
発振を維持する半導体レーザ素子が必要である。
【0004】半導体レーザ素子のコンパクトさを損なわ
ずに上記の欠点を解決する技術として、光増幅を行う活
性光導波路と、鋭い波長選択特性を持つ回折格子とを内
蔵した受動光導波路とを接続し光共振器を形成すること
により帰還を行う半導体レーザ素子が知られている。こ
れがいわゆる分布ブラッグ反射(DBR;Distib
uted Bragg Reflector)レーザであ
る。
【0005】以下、従来の代表的な光集積装置であるD
BRレーザについて簡単に説明する。
【0006】図4は従来のDBRレーザの、導波路方向
に沿った断面図である。なお、図4において、煩雑さを
避けるために一部ハッチングを省略した。
【0007】基板20の上に積層された半導体多層構造
を利用して、活性層21aを含む活性光導波路である利
得領域22と、活性層21bを含み回折格子23が形成
された受動光導波路であるDBR領域24との2つの光
導波路が、光学的に接続するように集積されている。な
お、活性層21bのバンドギャップは、DBR領域24
での損失を低減するために、活性層21aのバンドギャ
ップよりも大きくなるように形成されている。
【0008】DBRレーザの端面26には、利得領域2
2において発生する光に対して反射率がほとんど0の無
反射膜27が形成されている。端面26での反射率を最
低にするために、無反射膜27の膜厚はλ/4n(λは
レーザの発振波長、nは絶縁体のλにおける屈折率)と
なっている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従
来の構成では、無反射膜27を形成しても端面26にお
ける反射率は実際には0とはならない。なぜならば、端
面26における反射率を0とするには、無反射膜27の
屈折率nを、空気の屈折率とDBR領域24の実効屈折
率との中間に設定し、かつ無反射膜27の膜厚をλ/
(4n)に制御する必要があるが、実際には作製プロセ
ス上のバラツキにより、無反射膜27の屈折率や無反射
膜27の膜厚を正確にλ/(4n)とすることは非常に
困難であるからである。
【0010】以上のことから、従来の構成では端面26
における反射率は、実際には数%であった。
【0011】そのため、回折格子23によりブラッグ反
射を受けなかった導波光が端面26で反射され、再びD
BR領域24に入射し、ブラッグ反射を受けた光との干
渉が起こり、DBRレーザの重要な特性である単一縦モ
ード性に悪影響を与えるという問題があった。
【0012】また、素子温度を低温もしくは高温にした
とき、またはDBR領域24の活性層21bによる導波
光の吸収を低減するためにブラッグ波長と活性層の利得
ピーク波長を10nm以上と大きく離したときにおいて
は、端面25と端面26とをミラーとする光共振器が形
成されるため、利得ピーク波長近傍の導波光もまた大き
な利得を得る。そのため、DBRレーザにおいては高光
出力時などで活性層21aへの注入電流が大きい場合に
は、利得ピーク波長近傍の導波光の利得がブラッグ波長
の導波光の利得よりも大きくなって利得ピーク波長近傍
でレーザ発振し、高速変調時などに単一縦モード性が実
現しないという問題も生じていた。
【0013】本発明は上記従来の課題を解決するもので
あり、反射光と入射光の相互干渉による、素子特性不良
や歩留まり低下などを少なくした光集積装置を提供する
ことを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
に本発明の光集積装置は、基板の上に形成されたストラ
イプ状の導波路に沿って利得領域と分布ブラッグ反射領
域とが配列された光集積装置であって、前記ストライプ
状の導波路と前記光集積装置の前記分布ブラッグ反射領
域側の端面とが斜交することを特徴とするものである。
【0015】この構成により、ストライプ状の導波路と
光集積装置の分布ブラッグ反射領域側の端面とが斜交す
ることで、利得領域において発生する光と光集積装置の
端面における反射光との相互干渉を抑制することができ
る。
【0016】本発明の光集積装置は、さらに前記ストラ
イプ状の導波路と前記光集積装置の前記利得領域側の端
面とが直交することが好ましい。この構成により、光集
積装置の利得領域側の端面において光を反射させて再び
導波路へ導くことができる。
【0017】本発明の光集積装置は、さらに前記端面は
基板を劈開してなる劈開面を有することが好ましい。
【0018】本発明の光集積装置は、さらに前記利得領
域と前記分布ブラッグ反射領域との間に位相制御領域が
配列されたことが好ましい。
【0019】本発明の光集積装置は、さらに前記利得領
域における導波路での実効屈折率の実部が前記導波路の
両側における実効屈折率の実部より大きいことが好まし
い。この構成により、導波路の幅方向の光閉じ込めが導
波路内外の実屈折率差によって実現するため、前記導波
路における光の横モードを精密に再現性良く制御するこ
とができる。
【0020】本発明の光集積装置は、さらに前記利得領
域および前記分布ブラッグ反射領域はそれぞれ前記基板
上に形成された活性層と、前記活性層の上に形成され
た、ストライプ状の窓を有する電流ブロック層と、前記
電流ブロック層の前記窓に埋込まれたクラッド層とを有
することが好ましい。
【0021】本発明の光集積装置は、さらに前記利得領
域および前記分布ブラッグ反射領域はそれぞれ前記基板
上に形成された活性層と、前記活性層の上に形成された
リッジストライプ状のクラッド層と、前記活性層の上に
形成されかつ前記クラッド層の前記ストライプ方向に沿
った側面上に形成された電流ブロック層とを有すること
が好ましい。
【0022】本発明の光集積装置は、さらに前記分布ブ
ラッグ反射領域は前記端面近傍に設けられたことが好ま
しい。
【0023】本発明の光集積装置は、さらに前記利得領
域における前記クラッド層での実効屈折率の実部が前記
利得領域における前記電流ブロック層の実効屈折率の実
部より大きいことが好ましい。この構成により、クラッ
ド層内の光の閉じ込めがクラッド層と電流ブロック層と
の間の実屈折率差によって実現し、それにより導波路の
幅方向の光閉じ込めが実現するため、前記導波路におけ
る光の横モードを精密に再現性良く制御することができ
る。
【0024】本発明の光集積装置は、さらに前記分布ブ
ラッグ反射領域が活性層を有しないことが好ましい。こ
の構成により、前記分布ブラッグ反射領域において活性
層による光吸収を抑制することができる。
【0025】本発明の光集積装置は、さらに前記活性層
が多重量子井戸構造を有し、前記分布ブラッグ反射領域
において前記活性層が無秩序化されていることが好まし
い。この構成により、前記分布ブラッグ反射領域または
位相制御領域において活性層による光吸収を抑制するこ
とができる。
【0026】本発明の光集積装置は、さらに前記利得領
域における活性層のバンドギャップが、前記分布ブラッ
グ反射領域における活性層のバンドギャップよりも小さ
いことが好ましい。この構成により、前記分布ブラッグ
反射領域において活性層による光吸収を抑制することが
できる。
【0027】本発明の光集積装置は、さらに前記活性
層、前記電流ブロック層および前記クラッド層が、V族
元素としてAs、PまたはNを含むIII−V族半導体よ
りなることが好ましい。
【0028】本発明の光集積装置は、光軸を共通に有す
る複数の導波路を有し、そのうち1つの光導波路の光軸
とこの光導波路の終端面とが斜交するものである。
【0029】この構成により、導波路と終端面とが斜交
することで、導波路を伝わる光と終端面における反射光
との相互干渉を抑制することができる。
【0030】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態につい
て、図面を参照しながら説明する。なお、煩雑さを避け
るため、以下に示す断面図において、一部ハッチングを
省略している。
【0031】図2は、本発明の実施の形態における光集
積装置であるDBRレーザの斜視図である。図2におい
て、n型GaAs基板1の上にn型GaAsバッファ層
2、n型Ga0.5Al0.5As第一クラッド層3、Ga
0.7Al0.3As障壁層とGaAs井戸層との多重量子井
戸である活性層4、p型Ga0.5Al0.5As第二クラッ
ド層5、第二クラッド層5上に、導波光に対して分布ブ
ラッグ反射作用を有する回折格子6(a)が一部に形成
されたp型Ga0.8Al0.2As回折格子層6、回折格子
層6上にp型Ga0.5Al0.5As光ガイド層7、p型G
0.8Al0.2As第三クラッド層8が設置されている。
その上に、電流狭窄のためにストライプ状の窓9(a)
が形成されたn型Ga0.4Al0.6As電流ブロック層9
が形成されている。さらに、ストライプ状の窓9(a)
を含めた電流ブロック層9の上にp型Ga0.44Al0.56
As第四クラッド層10、共振器方向に3分割されたp
型GaAsコンタクト層11(a)〜11(c)が設置
されている。p型GaAsコンタクト層11(a)、1
1(b)は、回折格子6(a)が形成されていない領域
を共振器方向に対して2分割するように形成されてお
り、p型GaAsコンタクト層11(c)は、回折格子
6(a)を含む領域に設けられている。
【0032】以下、p型GaAsコンタクト層11
(a)の含む領域を利得領域、p型GaAsコンタクト
層11(b)の含む領域を位相制御領域、p型GaAs
コンタクト層11(c)の含む領域をDBR領域と呼
ぶ。
【0033】位相制御領域及びDBR領域との、活性層
4(a)は、イオン注入や不純物拡散と熱処理、または
マスク層装荷と熱処理などの方法で相互拡散を行わせ
て、無秩序化されている。活性層4(a)のバンドギャ
ップは利得領域の活性層4(b)のバンドギャップより
も、大きくなっている。したがって、利得領域で発光し
た導波光は、位相制御領域及びDBR領域との、活性層
4(a)で吸収されないため、位相制御領域及びDBR
領域の導波損失が低減する。その結果、発光効率の向上
と、鋭い波長選択特性の実現につながる。
【0034】この時、位相制御領域やDBR領域での吸
収を低減し、位相制御領域やDBR領域に電流注入を行
った場合の発光が、利得領域の発光特性に影響を及ぼさ
ないようにする必要がある。そのためには、位相制御領
域やDBR領域のバンドギャップに相当するバンドギャ
ップ波長はできるだけ短い方が良い。そのためには活性
層4(a)に注入するイオンや拡散する不純物を大量に
し、あるいは熱処理を高温・長時間するなどを行えばよ
い。
【0035】一方、位相制御領域やDBR領域の活性層
4(a)のバンドギャップに相当するバンドギャップ波
長を短波長化しすぎるとデバイス特性に悪影響を及ぼ
す。たとえば、注入するイオンや拡散する不純物によ
る、あるいは無秩序化の過程で生じる結晶欠陥による吸
収や散乱のために、位相制御領域やDBR領域の導波損
失が逆に増加することがある。また、位相制御領域の活
性層4(a)と利得領域の活性層4(b)のバンドギャ
ップが大きく異なると、位相制御領域における導波光の
分布と利得領域における導波光の分布とが大きく異なる
ため、位相制御領域と利得領域との間の接続損失や反射
が生じてしまう。これらの現象が起きた場合、発光効率
と波長選択特性の低下を招く。
【0036】従って、位相制御領域やDBR領域の活性
層4(a)のバンドギャップ波長の短波長化には、最適
な範囲が存在する。具体的には、波長利得領域の活性層
(b)のバンドギャップ波長に比べて、活性層4(a)
のバンドギャップ波長は、10nm以上、80nm以下
の範囲で短波長化させる必要がある。本実施の形態で
は、20nm短波長となるように、DBR領域、位相制
御領域の活性層を無秩序化している。この時、DBR領
域、位相制御領域での光導波路損失は10cm-1以下と
なる。
【0037】図1は、図2のDBRレーザにおけるスト
ライプ状の窓9(a)のパターンをp型GaAsコンタ
クト層11から眺めた図である。ストライプ状の窓9
(a)により形成されている光導波路は、2つの光導波
路9(a1)と光導波路9(a2)とが光学的に接続し
たものである。光導波路9(a1)は導波光方向が利得
領域近傍の端面12に対して直交するように終端してい
る。光導波路9(a2)はDBR領域近傍の端面13に
対して、導波光方向が端面13に斜めに交わるように終
端している。なお、光導波路9(a1)と光導波路9
(a2)の接続部での散乱損失を抑制するために、接続
部の光導波路は円弧をなすことが望ましい。
【0038】上記の構造において、光導波路9(a2)
から端面13に向けて導波する光のうち端面13で反射
した光は、光導波路9(a2)が端面13と斜めに交わ
っているため、光導波路9(a2)の導波光方向とは異
なる方向に反射される。この反射光が再び光導波路9
(a2)を通じて光導波路9(a1)に帰還される割合
は、光導波路9(a2)の導波光方向と端面13の垂線
のなす角が大きいほど、また光導波路9(a2)の長さ
が長いほど抑えることができる。
【0039】一方、光導波路9(a2)の導波光方向と
端面13の垂線のなす角が大きいほど、光導波路9(a
1)と光導波路9(a2)のなす角が大きくなり、光導
波路9(a1)と光導波路9(a2)の接続部での散乱
損失が大きくなる。また、光導波路9(a2)の長さを
長くすると、素子サイズが大きくなり、コスト的に問題
となる。
【0040】従って、光導波路9(a2)の導波光方向
と端面13の垂線のなす角と光導波路9(a2)の長さ
には、適切な範囲が存在する。
【0041】本実施の形態では、光導波路9(a2)の
導波光方向と端面13の垂線のなす角を5°、光導波路
9(a2)の長さを200μmとしている。この場合、
端面13での反射光が再び光導波路9(a1)に帰還さ
れる割合を、図3に示すように、10-6以下のレベルに
非常に小さく抑えることができる。すなわち端面13で
の反射率を実質的に0にすることができる。
【0042】本実施の形態の構造においては端面13で
の実質的な無反射は、結晶成長とエッチングにより形成
される光導波路9(a2)が端面13に対して斜めに交
わっていることによって実現している。光導波路9(a
2)は、結晶成長とエッチングにより精密に再現性良く
形成することができる。また、光導波路9(a2)が端
面13となす角も、エッチングのマスクにより精密に再
現性良く制御することができる。その結果、端面13で
の実質的な無反射を安定に歩留まり良く実現することが
できる。
【0043】本実施の形態の構造において、p型GaA
sコンタクト層11(a)から利得領域に注入される電
流はn型Ga0.4Al0.6As電流ブロック層9によりス
トライプ状の窓9(a)に閉じ込められ、p型GaAs
コンタクト層11(a)の下部にある活性層4で光を生
じる。このとき生じる光は導波チャンネルを導波し、回
折格子6(a)側の共振器端面12に向かう。この導波
光のうちブラッグ波長の導波光のみが回折格子6(a)
により選択的に分布ブラッグ反射を受ける結果、単一縦
モード発振を生じることになる。
【0044】ブラッグ反射されなかった光は光導波路9
(a2)まで到達するが端面13の実質的な反射率は0
であるため、端面13での反射光が、光導波路9(a
1)の導波光と干渉することがない。この結果、端面1
3での反射光の影響を受けることがないため、高出力動
作時や高速変調時も分布ブラッグ反射により大きな帰還
を受ける波長のみをよくレーザ発振させることができ、
良好な単一縦モード性を実現することができる。
【0045】本実施の形態のDBRレーザにおいては、
発振波長すなわちブラッグ波長を制御することが可能で
ある。ブラッグ波長λbは下式によって決まる。
【0046】
【数1】
【0047】ここで、NeqDBRはDBR領域の等価屈折
率、Λは回折格子の周期、qはブラッグ反射の次数であ
る。本実施の形態では、ブラッグ波長は820nmであ
る。
【0048】発振波長の制御は、GaAsコンタクト層
11(c)を通じてDBR領域へ電流注入することによ
り行う。電流注入によってDBR領域におけるNeqが変
化するため、(数1)式に従いブラッグ波長を制御する
ことができる。
【0049】電流注入によって半導体の屈折率Nが変化
する機構は主に、プラズマ効果と熱効果の2つである。
【0050】プラズマ効果は、注入キャリアにより発生
する。注入キャリアΔneによる屈折率の変化ΔNpは、
次式で与えられる。
【0051】
【数2】
【0052】ここでeは単位電荷、neはキャリア数、
*は電子の有効質量、εは誘電率、ωは光の角周波数
である。
【0053】熱効果は、電流注入による電力消費により
発生する。電流Iによる屈折率の変化ΔNTは、次式で
与えられる。
【0054】
【数3】
【0055】
【数4】
【0056】ここでTは温度、ZTは熱抵抗、PDは消費
電力、Vjはp−n接合の順電圧、Rsは直列抵抗であ
り、いずれも電流注入した領域における値である。
【0057】1.5μm帯などの長波長のDBRレーザ
では発振波長のωが小さいため、主にプラズマ効果によ
り屈折率は減少する。その結果、電流注入によってブラ
ッグ波長は短波長側に変化する。
【0058】一方、本実施の形態のような820nm帯
などの900nmより短波長の発振波長のDBRレーザ
では、ωが大きいためプラズマ効果が小さい。従って、
主に熱効果により屈折率が増加する。その結果、電流注
入によってブラッグ波長は長波長側に変化する。
【0059】ここで、DBR領域の長さが長い場合、回
折格子と導波光との結合が高まるため高いDBR反射率
と鋭い波長選択性を得ることができる。一方、DBR領
域の長すぎる場合は、DBR領域の放熱性が向上し、本
実施の形態のような820nm帯のDBRレーザでは、
発熱による発振波長の可変性が損なわれる。したがっ
て、DBR領域の長さは100μm以上、700μm以
下にする必要がある。本実施の形態では、DBR領域の
長さは300μmとしている。その結果、DBR領域に
注入する電流値を0mAから100mAまで変化させる
ことにより、発振波長を3nm長波長側に変化させるこ
とができる。
【0060】ところで、DBR領域に電流注入すること
だけでは、発振波長は縦モード間隔で非連続的にしか変
化できない。なぜならば、実際にレーザ発振している縦
モードは必ずしもブラッグ波長の縦モードではなく、光
共振器の位相条件を満たす縦モードのうち、ブラッグ波
長にもっとも波長が近い縦モードが発振するためであ
る。
【0061】縦モードの位相条件は、
【0062】
【数5】
【0063】ここで、NeggainとNeqpcはそれぞれ利得
領域と位相制御領域の実効屈折率、LeggainとLeqpc
それぞれ利得領域と位相制御領域の長さである。また、
φDB RはDBR反射位相である。
【0064】発振波長を連続的に変化させるには、導波
光の位相を制御し、縦モードの波長を変化させなければ
ならない。そのために、本実施の形態においては、共振
器内部に導波光の位相を変化させる位相制御領域を設け
ている。
【0065】DBR領域への電流注入の場合と同様に、
GaAsコンタクト層11(b)を通じて位相制御領域
へ電流注入することにより、位相制御領域におけるNeq
を変化させ、位相の制御を行う。位相制御領域とDBR
領域への注入電流を適切に設定することによって、発振
波長を連続的に変化させることができる。
【0066】位相制御領域の長さが長い場合、光増幅や
ブラッグ反射などの機能を有しない位相制御領域の導波
損失が閾値電流増大などの素子特性悪化を招く。また、
逆に位相制御領域が短いと、位相制御領域の直列抵抗が
増大し、位相制御領域に電流注入するための動作電圧が
上昇してしまい、DBRレーザ駆動回路の構成上、電流
注入が困難になる。したがって、位相制御領域の長さに
は適切な範囲があり、100μm以上、700μm以下
にする必要がある。本実施の形態では、位相制御領域の
長さは300μmとしている。
【0067】また、Ga0.4Al0.6As電流ブロック層
9のバンドギャップは活性層4のバンドギャップよりも
大きいので、従来のDBRレーザのように電流ブロック
層9による導波光の吸収がない。従って、大幅に光導波
路、特に受動光導波路となる位相制御領域とDBR領域
の導波損失を低減することができ、低動作電流化が図れ
る。
【0068】また本実施の形態では、電流ブロック層9
のAlAs混晶比を第四クラッド層10のAlAs混晶
比より高く、0.6に設定している。例えば、電流ブロ
ック層9のAlAs混晶比が第四クラッド層10と同じ
である場合、電流注入時のプラズマ効果によるストライ
プ内の屈折率の低下があり、アンチガイドの光導波路と
なり単一な横モード発振は得られない。高出力レーザを
安定して歩留まり良く作製するためには、Δnを3〜5
×10-3程度に精密に制御する必要がある。ここで、ス
トライプ状の窓9(a)内外の実効屈折率差(Δn)
は、利得領域における電流ブロック層9と活性層との距
離、すなわち、第二クラッド層5、回折格子層6、光ガ
イド層7、第三クラッド層8の合計膜厚(td)と、第
四クラッド層10と電流ブロック層9のAlAs混晶比
の差(Δx)により制御することができる。tdが大き
い場合、電流ブロック層9と活性層4との間に位置する
層を通って、電流注入ストライプ外の方向へ電流が拡が
り、レーザ発振に寄与しない無効電流が増大するため、
tdは厚すぎないほうがよく、通常は0.2μm以下で
作製される。また、tdが0.05μm以下と薄すぎる
と、上述の無効電流は低減されるが、Δnが10-2以上
の大きな値になり、また、第四クラッド層10をp型に
するための不純物であるZnが活性層4に拡散し、温度
特性の劣化につながる。このため、tdは0.05μm
以上の厚さとしている。本実施の形態では、tdは0.
15μmとしている。また、Δnを制御するためのもう
1つの重要なパラメータであるΔxが大きい場合、Δx
の製造上の再現性がΔnへ与える影響が大きくなるた
め、Δxは大きくなり過ぎない方がよい。逆に、Δxが
小さいと、光分布をストライプ内に安定に閉じ込めるこ
とができなくなり、安定な基本横モード発振を得ること
ができなくなる。そこで、Δxは、0.02以上、0.
1以下であることが望ましい。本実施の形態では、Δx
は0.04としている。tdとΔxを上述の範囲内で作
製することにより、無効電流の低減と10-3台のΔnの
精密な制御を両立させることができる。本実施の形態で
は、安定な高出力まで基本横モード発振を得ることがで
きるようΔnの値を3×10-3と5×10-3の間の値に
設定しており、3.5×10-3としている。
【0069】また、第一光ガイド層5のAlAs混晶比
と、回折格子層6のAlAs混晶比との差(Δxg)は
できるだけ大きい方が望ましい。すなわち、回折格子を
エッチングで作製する場合、Δxgが小さい場合、回折
格子層のみを選択的にエッチングすることが困難にな
る。回折格子をエッチングで作製する場合、回折格子の
形状の制御は、導波光と回折格子との結合係数に大きく
影響するために、非常に重要である。したがって、例え
ば、エッチング時間による回折格子の形状制御よりも、
回折格子層7がエッチングされその下地となる第一光ガ
イド層が露出した時点でエッチングが停止する、選択エ
ッチングプロセスにより回折格子の形状を制御した方
が、回折格子の形状制御性が高くなる。選択エッチング
性を向上させるためには、Δxgはある程度大きい方が
よく、0.05以上に大きくする必要がある。
【0070】第三光クラッド層8のAlAs混晶比もで
きるだけ小さい方が望ましい。これは、第三光ガイド層
8のAlAs混晶比が大きい場合、第四光ガイド層10
は、第三光ガイド層8上の再成長となるため、再成長界
面の酸化を受けやすくなり、再成長後の素子の電流―電
圧特性が高抵抗特性を示しやすくなるためである。さら
に、第三クラッド層8のAlAs混晶比としては、Ga
0.4Al0.6As電流ブロック層9とのエッチングの選択
比が高くでき、その上への再成長が容易な0.3以下が
望ましく、レーザの発振波長に対して吸収とならないこ
とが望ましい。本実施の形態では0.2としている。こ
れにより、再成長界面の高抵抗化を防ぐことができる。
また、第三クラッド層8の膜厚は光分布にあまり影響を
与えないようできるだけ薄い方が望ましい。本実施の形
態においては、第三光ガイド層8の膜厚は10nmとし
ている。このようにAlAs混晶比が小さく、かつ膜厚
の薄い第三クラッド層8を用いることにより、Δnの制
御性を損なわず、低抵抗の再成長界面を得ることができ
る。
【0071】回折格子層7の膜厚も、高出力動作を考え
た場合、DBR領域におけるΔnの10-3台の精密な制
御を行う必要があり、光分布に余り影響を与えないよう
できるだけ薄い方がよい。逆に薄すぎると、導波光と回
折格子との結合係数が小さくなり、DBR領域でのレー
ザ光の反射率が小さくなる。したがって回折格子層7の
膜厚は5nm以上、60nm以下で作製する必要があ
る。本実施の形態では、回折格子層の厚さを20nmと
している。
【0072】以上より、本実施の形態のDBRレーザ
は、利得領域、位相制御領域、DBR領域の全ての領域
において、Δnの10-3台という精密な制御に適した光
導波路構造となっており、高出力時でも安定な単一横モ
ード発振を得ることができる。
【0073】次に、Ga0.5Al0.5As第二クラッド層
5のAlAs混晶比は、活性層4のバンドギャップより
も十分大きなバンドギャップとなるよう十分に高くして
おり、活性層4へ有効にキャリアを閉じ込めている。8
20nm帯のレーザ発振を得るためにはAlAs混晶比
として約0.45以上が望ましく、本実施の形態では
0.5とした。
【0074】さらに、光分布を横方向に大きく広げ、端
面での最大光密度を低減するためにストライプ状の窓9
(a)の幅(W)は、基本横モードが得られる範囲内
で、出来るだけ広い方が良い。しかしながら、広くなり
すぎると、高次の横モードが発振可能となるため、広く
なりすぎることは好ましくない。したがって、Wは2μ
以上、5μm以下にする必要がある。本実施の形態で
は、幅を3.5μmとした。
【0075】Ga0.8Al0.2As回折格子層6に形成さ
れた回折格子6(a)と回折格子6(a)を埋込んでい
るGa0.5Al0.5As光ガイド層7の屈折率差によっ
て、回折格子6(a)による波長選択性は決定される。
回折格子層6のAlAs混晶比としては、良好な波長選
択性を実現し、さらにその上への再成長が容易な0.3
以下で、レーザの発振波長に対して吸収となることが望
ましい。本実施の形態では0.2としている。単一縦モ
ードに必要な回折格子層6との十分な屈折率差を実現す
るためには、光ガイド層7のAlAs混晶比は0.5以
上が望ましい。本実施の形態では0.5とした。
【0076】
【発明の効果】以上説明したように本発明の光集積素子
によれば、複数の光導波路を集積した光集積装置におい
て、端面近傍の光導波路を端面に斜めに交わらせること
によって、端面で反射した導波光が光導波路に再び入射
し、反射光と入射光の相互干渉を抑制することによっ
て、素子間の特性バラツキなく、安定な単一縦モード発
振などの優れた特性の光集積装置を実現するものであ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態の光集積素子に関するスト
ライプ状の窓のストライプパターンを示す上面図
【図2】本発明の実施の形態における、光集積装置の斜
視図
【図3】端面で反射された光が再び、導波路に帰還され
る割合を示す図
【図4】従来の光集積装置の導波路方向に沿った断面図
【符号の説明】
1 n型GaAs基板 2 n型GaAsバッファ層 3 n型Ga0.5Al0.5As第一クラッド層 4(a) 無秩序化した活性層 4(b) 活性層 5 p型Ga0.5Al0.5As第二クラッド層 6 p型Ga0.8Al0.2As回折格子層 6(a) 回折格子 7 p型Ga0.5Al0.5As光ガイド層 8 p型Ga0.8Al0.2As第三クラッド層 9 n型Ga0.4Al0.6As電流ブロック層 9(a) ストライプ状の窓 9(a1) 端面に対し直交する光導波路 9(a2) 端面に対し直交する光導波路 10 p型Ga0.44Al0.56As第四クラッド層 11(a) 利得領域のコンタクト層 11(b) 位相制御領域のコンタクト層 11(c) DBR領域のコンタクト層 20 基板 21(a) 利得領域の活性層 21(b) DBR領域の活性層 22 利得領域 23 回折格子 24 DBR領域 25 利得領域近傍の端面 26 DBR領域近傍の端面 27 無反射膜
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 油利 正昭 大阪府門真市大字門真1006番地 松下電器 産業株式会社内 Fターム(参考) 5F073 AA44 AA55 AA65 AA74 AA83 CA04 CB02 CB07 EA03

Claims (14)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 基板の上に形成されたストライプ状の導
    波路に沿って利得領域と分布ブラッグ反射領域とが配列
    された光集積装置であって、前記ストライプ状の導波路
    と前記光集積装置の前記分布ブラッグ反射領域側の端面
    とが斜交することを特徴とする光集積装置。
  2. 【請求項2】 前記ストライプ状の導波路と前記光集積
    装置の前記利得領域側の端面とが直交することを特徴と
    する請求項1記載の光集積装置。
  3. 【請求項3】 前記端面は基板を劈開してなる劈開面を
    有することを特徴とする請求項1または2記載の光集積
    装置。
  4. 【請求項4】 前記利得領域と前記分布ブラッグ反射領
    域との間に位相制御領域が配列されたことを特徴とする
    請求項1記載の光集積装置。
  5. 【請求項5】 前記利得領域における導波路での実効屈
    折率の実部が前記導波路の両側における実効屈折率の実
    部より大きいことを特徴とする請求項1記載の光集積装
    置。
  6. 【請求項6】 前記利得領域および前記分布ブラッグ反
    射領域はそれぞれ前記基板上に形成された活性層と、前
    記活性層の上に形成された、ストライプ状の窓を有する
    電流ブロック層と、前記電流ブロック層の前記窓に埋込
    まれたクラッド層とを有することを特徴とする請求項1
    記載の光集積装置。
  7. 【請求項7】 前記利得領域および前記分布ブラッグ反
    射領域はそれぞれ前記基板上に形成された活性層と、前
    記活性層の上に形成されたリッジストライプ状のクラッ
    ド層と、前記活性層の上に形成されかつ前記クラッド層
    の前記ストライプ方向に沿った側面上に形成された電流
    ブロック層とを有することを特徴とする請求項1記載の
    光集積装置。
  8. 【請求項8】 前記分布ブラッグ反射領域は前記端面近
    傍に設けられたことを特徴とする請求項1、6または7
    記載の光集積装置。
  9. 【請求項9】 前記利得領域における前記クラッド層で
    の実効屈折率の実部が前記利得領域における前記電流ブ
    ロック層の実効屈折率の実部より大きいことを特徴とす
    る請求項6または7記載の光集積装置。
  10. 【請求項10】 前記分布ブラッグ反射領域が活性層を
    有しないことを特徴とする請求項6または7記載の光集
    積装置。
  11. 【請求項11】 前記活性層が多重量子井戸構造を有
    し、前記分布ブラッグ反射領域において前記活性層が無
    秩序化されていることを特徴とする請求項6または7記
    載の光集積装置。
  12. 【請求項12】 前記利得領域における活性層のバンド
    ギャップが、前記分布ブラッグ反射領域における活性層
    のバンドギャップよりも小さいことを特徴とする請求項
    6または7記載の光集積装置。
  13. 【請求項13】 前記活性層、前記電流ブロック層およ
    び前記クラッド層が、V族元素としてAs、PまたはN
    を含むIII−V族半導体よりなることを特徴とする請求
    項6または7記載の光集積装置。
  14. 【請求項14】 光軸を共通に有する複数の光導波路を
    有し、そのうち1つの光導波路の光軸とこの光導波路の
    端面とが斜交することを特徴とする光集積装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US7515626B2 (en) 2003-05-29 2009-04-07 Novera Optics, Inc. Light source capable of lasing that is wavelength locked by an injected light signal

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