JP2002281700A - 埋込み磁石型回転機の回転子 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】回転子鉄心１０上の同一回転子磁極５に対応す
る磁石挿入スロットを１３Ａ，１３Ｂに分割してそれぞ
れ永久磁石４Ａ，４Ｂを埋込み、極間鉄心部１４以外に
磁石スロット間鉄心部１５を設けて耐遠心力強度を増す
埋込み磁石型回転機にて、磁石から磁石スロット間鉄心
部１５に流れる漏洩磁束を減じ、且つ磁石側部を保持す
る。 【解決手段】磁石スロット間鉄心部１５には、その磁気
抵抗を増すために幅方向（本例では回転子周方向）に鉄
心幅が狭く、長手方向（本例では回転子径方向）に直線
状の２つの高磁気抵抗部１５１を設けるとともに、高磁
気抵抗部１５１の間に鉄心幅が広い磁石止め部１５２を
設けて、この磁石止め部１５２により磁石４Ａ，４Ｂの
回転子周方向の位置決めを行う。そして応力の集中しや
すい高磁気抵抗部１５１の長手方向の付け根の角部分に
は円弧部を設ける。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】この発明は、永久磁石を埋込
んで回転子の磁極を形成した電動機または発電機として
の、いわゆる埋込み磁石型回転機の回転子であって、特
に同一の回転子磁極に対応して回転子の周方向に複数個
の永久磁石を配置しながら、回転子の遠心力に対する強
度を高め、且つ永久磁石の漏洩磁束を減じ得るようにし
た埋込み磁石型回転機の回転子に関する。

【０００２】なお、以下各図において同一の符号は同一
もしくは相当部分を示す。

【０００３】

【従来の技術】図４は従来の小形の埋込み磁石型電動機
の回転子の１極分を主体とした構造の概念図で、同図
ａ）は固定子を含む構成を示し、同図ｂ）は同図ａ）の
回転子鉄心の要部を拡大して示す。図４，ａ）におい
て、１は回転子、２は固定子（この場合、電機子ともい
う）、３は回転子１と固定子２との間の空隙、４は永久
磁石（単に磁石ともいう）、５は回転子磁極である。

【０００４】この電動機は回転軸心Ｏを通り、紙面に垂
直な回転軸を中心に回転するものとし、本例は回転子磁
極５の数Ｐ＝８極、つまり回転子磁極５の１極当たりの
中心角θ＝３６０°／Ｐ＝４５°の場合を示す。回転子
１は、例えば鋼板のような磁性金属板材を回転軸方向
に、本例では全体として厚肉円筒状に積層した回転子鉄
心１０上の回転子磁極５ごとに設けられた磁石挿入スロ
ット１３に、それぞれ磁石４を挿入して構成されてい
る。

【０００５】磁石４は、本例では直方体状に形成されて
おり、ｎは磁石４のＮ極（面）、ｓはＳ極（面）であ
る。そして磁石４は、本図の奥行き方向に延びるその各
極面ｎ，ｓが回転軸に平行となるように磁石挿入スロッ
ト１３に挿入されている。また磁石４によって回転子１
の外周上に形成される回転子磁極５は隣接する回転子磁
極間で互いに逆極性となるので、回転子磁極５のＮ極を
形成する磁石挿入スロット１３に挿入された磁石４の磁
化方向と、回転子磁極５のＳ極を形成する隣接極の磁石
挿入スロット１３に挿入された磁石４の磁化方向とは回
転子１の径方向に対して互いに逆になっている。

【０００６】次に、図４，ｂ）の回転子鉄心１０におい
て、１１は回転子磁極５ごとに設けられ、磁石挿入スロ
ット１３の回転子外周側の面によって、挿入された磁石
４の回転子外周側の磁極面に接すると共に、空隙３を介
して固定子２に対向し、当該の磁石４と固定子２との間
の磁束の流路となる鉄心部分（換言すれば回転子１の磁
極を形成する部分）としての磁極鉄心部である。

【０００７】１２は磁石挿入スロット１３の回転子軸側
の面によって磁石４の回転子軸側の磁極面に接すると共
に、本例では全回転子磁極分一体に形成され、磁石４の
回転子軸側の磁極間の磁束の流路となる軸側鉄心部で、
この軸側鉄心部１２は図外の手段によって回転子１の図
外の回転軸と一体に結合されている。１４は磁極鉄心部
１１の相互間に位置する回転子鉄心１０の部分としての
極間鉄心部で、磁極鉄心部１１の回転子周方向の配置を
維持しつつ、磁極鉄心部１１を回転子の軸側に結合する
役割を持つ。

【０００８】この極間鉄心部１４は、本例では磁極鉄心
部１１の相互間を結合する高磁気抵抗部１４１と、高磁
気抵抗部１４１の回転子周方向の中間点と軸側鉄心部１
２とを結合するブリッジ部１４２と、ブリッジ部１４２
の軸側鉄心部１２への付け根部分にあって、磁石４の回
転子周方向の位置決めを行う磁石位置決め部１４３とか
らなる。

【０００９】図４，ａ）中に破線で示すφｍ，φｐは、
このようにして磁石４が出力する磁束とその環路の例を
示す。ここで、磁束φｍは固定子２を通り固定子内の図
外の電機子巻線と鎖交する有効な磁束成分となるが、磁
束φｐは極間鉄心部１４を通って回転子磁極５の相互間
を直接短絡する無効な磁束成分としての漏洩磁束とな
る。

【００１０】この漏洩磁束φｐは当然、少ないことが望
ましい。このため漏洩磁束φｐの流路となる極間鉄心部
１４内の高磁気抵抗部１４１は、その幅Ｗｐを薄くして
高磁気抵抗となるように形成されている。

【００１１】

【発明が解決しようとする課題】ところで、回転子１の
径が大きく、特に磁極鉄心部１１に加わる遠心力が大き
くなる、中、大形の回転機では、強度的に極間鉄心部１
４の高磁気抵抗部１４１を薄く構成することが不可能で
あり、極間の漏洩磁束φｐが大きくなるという問題があ
る。

【００１２】そこで、回転子磁極５の１極あたりの磁石
挿入スロット１３を、これに挿入された磁石４と共に複
数個に分割して周方向に配置し、この分割された各磁石
挿入スロット及び磁石同士の間にできるブリッジ状鉄心
により磁極鉄心部１１を軸側鉄心部１２に結合すること
により、この新たなブリッジ状鉄心と高磁気抵抗部１４
１を薄く構成したままの極間鉄心部１４とで、遠心力に
耐えるようにする構造が考えられる。

【００１３】しかしながら、回転子１をこのような形状
とした場合、分割された磁石挿入スロット相互間のブリ
ッジ状鉄心部分に磁石の極ｎｓ間を短絡する漏洩磁束φ
ｓが流れることとなり（後述の図３参照）、磁石から発
して固定子２の電機子巻線に鎖交する有効磁束φｍが減
ってしまうという問題が新たに生ずる。そこで本発明
は、遠心力に強く且つ同一回転子磁極内の漏洩磁束が少
ない、そして磁石の位置を正しく固定して磁石の割れや
削れなどが発生しない鉄心形状を持つ埋込み磁石型回転
機の回転子を提供することを課題とする。

【００１４】

【課題を解決するための手段】前記の課題を解決するた
めに、請求項１の埋込み磁石型回転機の回転子は、固定
子（２）と空隙（３）を介して対向する所定の偶数個の
回転子磁極（５）を持ち、該回転子磁極の少なくとも何
れかは、それぞれ当該回転子磁極に対応する所定の複数
個の磁石スロット（磁石挿入スロット１３Ａ，１３Ｂな
ど）を持つように回転子鉄心（１０）に一体に形成さ
れ、同一の前記回転子磁極に対応する前記複数個の磁石
スロットにはそれぞれ当該の回転子磁極を介し前記固定
子との間に磁束（φｍ）を環流させる永久磁石（４Ａ，
４Ｂなど）が埋込まれてなる埋込み磁石型回転機の回転
子において、同一の前記回転子磁極に対応して隣接する
前記磁石スロット相互間の前記回転子鉄心の部分として
の磁石スロット間鉄心部（１５）に、当該磁石スロット
相互の間隔を定める鉄心幅が、この幅方向にほぼ直交す
る長手方向のそれぞれ所定の長さの区間、それぞれ所定
のほぼ一様な狭い幅（Ｗｓ１）であり、且つ前記長手方
向に直列に配置された所定の複数個の狭幅鉄心部（高磁
気抵抗部１５１）を設け、この狭幅鉄心部とその両側の
永久磁石との間に空間を設け、さらに前記磁石スロット
間鉄心部には、前記直列に配置された狭幅鉄心部相互間
に挿入配置され、前記両側の永久磁石に当接して該永久
磁石の前記狭幅鉄心部側への移動を防ぐための、前記幅
方向の鉄心幅（Ｗｓ２）が広い広幅鉄心部（磁石止め部
１５２）を設けるようにする。

【００１５】また請求項２の埋込み磁石型回転機の回転
子は、請求項１に記載の埋込み磁石型回転機の回転子に
おいて、前記磁石スロット間鉄心部の前記長手方向にお
いて、少なくとも前記狭幅鉄心部の鉄心幅が不連続に変
化する角部には、該鉄心幅の変化を連続的に変える円弧
部（１５３）を設けるようにする。

【００１６】また請求項３の埋込み磁石型回転機の回転
子は、請求項１または２に記載の埋込み磁石型回転機の
回転子において、同一の前記磁石スロット間鉄心部にお
ける狭幅鉄心部の個数を２個とする。本発明の作用は、
回転子鉄心１０上の同一回転子磁極に対応する磁石挿入
スロット１３Ａと１３Ｂとの間の鉄心部分である磁石ス
ロット間鉄心部１５を次のように形成するものである。
即ち、磁気抵抗を増すために鉄心幅Ｗｓ１を狭くした直
線状の複数（本例では２つ）の高磁気抵抗部１５１を設
けて直列に配置し、この直列配置の高磁気抵抗部１５１
の間となる磁路の中間部に磁石の側端部の位置を定める
ために鉄心幅Ｗｓ２の広い磁石止め部１５２を設ける。
そしてさらに応力の集中しやすい高磁気抵抗部１５１の
付け根の角の部分に高磁気抵抗部１５１の鉄心幅Ｗｓ１
が高磁気抵抗部１５１の長手方向で連続的に変化するよ
うに円弧状の円弧部１５３を設ける。

【００１７】

【発明の実施の形態】図１は本発明の１実施例としての
回転子磁極の１極分を示し、この図は図４に対応してい
る。図１においては、図４に対し回転子磁極５の１極分
の磁石挿入スロットが１３Ａ，１３Ｂの２個に分割さ
れ、この磁石挿入スロット１３Ａと１３Ｂとの間に磁石
スロット間鉄心部１５が新設されている。そして、磁石
挿入スロット１３Ａと１３Ｂにはそれぞれ、同一の回転
子磁極５に対し同極性に磁化された直方体状の磁石４Ａ
と４Ｂが挿入されている。

【００１８】図２は磁石スロット間鉄心部１５の拡大図
を示す。この磁石スロット間鉄心部１５において、図の
上下２箇所にある１５１は、磁極鉄心部１１と軸側鉄心
部１２とを結合する高磁気抵抗部である。この高磁気抵
抗部１５１はその鉄心幅Ｗｓ１の方向と直交する方向
（長手方向という、本例では回転子の径方向）の所定長
の区間、鉄心幅Ｗｓ１が一様に狭く高磁気抵抗となるよ
うに構成されている。

【００１９】また、１５２は２つの高磁気抵抗部１５１
の間にあって鉄心幅Ｗｓ２が広く形成され磁石４Ａ，４
Ｂの回転子周方向の位置決めをする磁石止め部、１５３
は高磁気抵抗部１５１の磁極鉄心部１１，軸側鉄心部１
２および磁石止め部１５２に対する付け根の角部を埋め
る円弧部である。この円弧部１５３は、高磁気抵抗部１
５１の狭い鉄心幅Ｗｓ１の長手方向における不連続な変
化を防ぐもので、高磁気抵抗部１５１の付け根の鉄心角
部への遠心力による応力集中を防ぐ。

【００２０】図３は図２の動作を補足説明するための図
で、図３では磁石スロット間鉄心部１５の磁石止め部１
５２が省略されている。磁石スロット間鉄心部１５は磁
石４Ａと４Ｂの極ｎ，ｓ間を短絡することになるので、
図２においても図３の破線と同様な経路で無効な漏洩磁
束φｓが流れる。この漏洩磁束φｓを極力低減するため
に図２の高磁気抵抗部１５１の直線部全域の鉄心幅Ｗｓ
１が狭く構成されている。

【００２１】図３では図２の磁石止め部１５２が省略さ
れているが。図３のような形状としたとき、磁石挿入ス
ロット内に挿入される磁石４Ａ，４Ｂの、高磁気抵抗部
１５１側の端面は鉄心に当たらず、磁石４Ａ，４Ｂが衝
撃等によって高磁気抵抗部１５１方向に移動しようとし
たとき磁石の角が割れたり削れるなどの磁石保護上の問
題が生ずる。

【００２２】そこで、図２のように磁石スロット間鉄心
部１５の中央部の幅Ｗｓ２を広くして、磁石端面に接す
る様に磁石止め部５を設けると共に、狭い鉄心幅Ｗｓ１
の部分である高磁気抵抗部１５１を可能な限り残すよう
にしたものである。本実施例では、磁石スロット間鉄心
部１５における高磁気抵抗部１５１の幅Ｗｓ１を与える
対向面１５１ａが、この幅方向に直交する長手方向に所
定区間、平行（つまり幅Ｗｓ１が一様）である場合を示
したが、例えばこの対向面１５１ａが回転軸心Ｏを通る
というように互いに傾きを持つ場合や、あるいは対向面
１５１ａ自体が曲面である場合でも、幅Ｗｓ１がほぼ一
様な所定長の区間が長手方向に存在して高磁気抵抗が得
られる限り、本発明に包含される。

【００２３】また、本実施例では、同一回転子磁極に対
応する２つの磁石挿入スロット１３Ａ，１３Ｂが、回転
子の周方向に直線状に（つまり磁石４Ａ，４Ｂの磁極面
が同一平面上にあるように）並ぶ場合を示したが、例え
ば２つの磁石挿入スロット１３Ａ，１３Ｂが回転子の周
方向に「ハ」の字状に並ぶ（つまり磁石４Ａ，４Ｂの磁
極面が互いに傾きを持つ）場合であっても本発明を適用
することができる。

【００２４】なお、同一回転子磁極に対応する磁石挿入
スロットの数は本実施例のように２つに限定されるもの
ではなく、必要に応じて任意の複数個であってよい。

【００２５】

【発明の効果】本発明によれば、回転子鉄心１０上の磁
石挿入スロットに永久磁石を埋込み、回転子磁極を形成
した埋込み磁石型回転機において、同一回転子磁極に対
応する複数の磁石挿入スロット１３Ａと１３Ｂとの間の
鉄心部分である磁石スロット間鉄心部１５に、磁気抵抗
を増すために鉄心幅Ｗｓ１が狭く直線状の高磁気抵抗部
１５１を複数個設けて直列に配置すると共に、直列配置
した高磁気抵抗部１５１の間にあって磁石の側端部の位
置を定めるための広い鉄心幅Ｗｓ２を持つ磁石止め部１
５２を設け、さらに応力の集中しやすい高磁気抵抗部１
５１の付け根の角の部分には円弧部１５３を設けて高磁
気抵抗部１５１の鉄心幅Ｗｓ１がその長手方向で不連続
に変化しないようにしたしたので、回転子磁極に加わる
遠心力が大きくなる中，大型の埋込み磁石型回転機であ
っても、極間鉄心部１４の鉄心幅を増加して極間漏洩磁
束を増大させずに、同一回転子磁極内の漏洩磁束が少な
く、また磁石の割れ等を防ぐことができ、且つ高磁気抵
抗部１５１への応力が集中しない磁石スロット間鉄心部
１５を形成することができ、磁石磁束の利用率を低下さ
せずに遠心力に耐える回転子を形成することができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の１実施例としての回転子の要部の構成
図

【図２】図１における磁石スロット間鉄心部の拡大図

【図３】図２の動作の説明を補足する図

【図４】図１に対応する従来の回転子の要部の構成図

【符号の説明】

１ 回転子 ２ 固定子（電機子） ３ 空隙 ４ 永久磁石（磁石） ５ 回転子磁極 １０ 回転子鉄心 １１ 磁極鉄心部 １２ 軸側鉄心部 １３Ａ，１３Ｂ 磁石挿入スロット １４ 極間鉄心部 １５ 磁石スロット間鉄
心部 １４１ 高磁気抵抗部 １４２ ブリッジ部 １４３ 磁石位置決め部 １５１ 高磁気抵抗部 １５１ａ 高磁気抵抗部の
幅を定める対向面 １５２ 磁石止め部 １５３ 円弧部 Ｏ 回転軸心

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】固定子と空隙を介して対向する所定の偶数
   個の回転子磁極を持ち、該回転子磁極の少なくとも何れ
   かは、それぞれ当該回転子磁極に対応する所定の複数個
   の磁石スロットを持つように回転子鉄心に一体に形成さ
   れ、同一の前記回転子磁極に対応する前記複数個の磁石
   スロットにはそれぞれ当該の回転子磁極を介し前記固定
   子との間に磁束を環流させる永久磁石が埋込まれてなる
   埋込み磁石型回転機の回転子において、 同一の前記回転子磁極に対応して隣接する前記磁石スロ
   ット相互間の前記回転子鉄心の部分としての磁石スロッ
   ト間鉄心部に、当該磁石スロット相互の間隔を定める鉄
   心幅が、この幅方向にほぼ直交する長手方向のそれぞれ
   所定の長さの区間、それぞれ所定のほぼ一様な狭い幅で
   あり、且つ前記長手方向に直列に配置された所定の複数
   個の狭幅鉄心部を設け、 この狭幅鉄心部とその両側の永久磁石との間に空間を設
   け、 さらに前記磁石スロット間鉄心部には、前記直列に配置
   された狭幅鉄心部相互間に挿入配置され、前記両側の永
   久磁石に当接して該永久磁石の前記狭幅鉄心部側への移
   動を防ぐための、前記幅方向の鉄心幅が広い広幅鉄心部
   を設けたことを特徴とする埋込み磁石型回転機の回転
   子。
2. 【請求項２】請求項１に記載の埋込み磁石型回転機の回
   転子において、 前記磁石スロット間鉄心部の前記長手方向において、少
   なくとも前記狭幅鉄心部の鉄心幅が不連続に変化する角
   部には、該鉄心幅の変化を連続的に変える円弧部を設け
   たことを特徴とする埋込み磁石型回転機の回転子。
3. 【請求項３】請求項１または２に記載の埋込み磁石型回
   転機の回転子において、 同一の前記磁石スロット間鉄心部における狭幅鉄心部の
   個数を２個としたことを特徴とする埋込み磁石型回転機
   の回転子。