JP2002275431A - カチオン電着塗料組成物、カチオン電着塗装方法及び被膜を有する被塗装物 - Google Patents

カチオン電着塗料組成物、カチオン電着塗装方法及び被膜を有する被塗装物

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JP2002275431A
JP2002275431A JP2001076940A JP2001076940A JP2002275431A JP 2002275431 A JP2002275431 A JP 2002275431A JP 2001076940 A JP2001076940 A JP 2001076940A JP 2001076940 A JP2001076940 A JP 2001076940A JP 2002275431 A JP2002275431 A JP 2002275431A
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cationic electrodeposition
electrodeposition coating
resin
coating composition
group
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JP2001076940A
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Kazuo Morichika
和生 森近
Toshitaka Kawanami
俊孝 川浪
Ichiro Kawakami
一郎 川上
Hiroyuki Sakamoto
裕之 坂本
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Nippon Paint Co Ltd
Original Assignee
Nippon Paint Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 スルホニウム基とプロパルギル基とを持つ樹
脂組成物を含有するカチオン電着塗料により得られる電
着被膜の平滑性を維持しつつ、防錆性、防食性を向上さ
せることのできるカチオン電着塗料組成物を提供する。 【解決手段】 スルホニウム基とプロパルギル基とを持
つ樹脂組成物、及び、結晶性無機化合物を含むカチオン
電着塗料組成物であって、上記結晶性無機化合物は、ア
スペクト比が4〜30であり、短径が1〜18μmであ
ることを特徴とするカチオン電着塗料組成物。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、カチオン電着塗料
組成物、これを用いるカチオン電着塗装方法及びそれに
よって得られる被膜を有する被塗装物に関し、更に詳し
くは、電着被膜の防錆性及び防食性を向上させるととも
に、平滑性をも維持することができるカチオン電着塗料
組成物、これを用いるカチオン電着塗装方法及びそれに
よって得られる被膜を有する被塗装物に関する。
【0002】
【従来の技術】自動車等の塗装工程は、一般的には、リ
ン酸塩等により予め化成処理が施された被塗装物に、カ
チオン電着塗料による下塗り塗装をした後、中塗り塗
料、次いで上塗り塗料が塗装され、得られる塗膜を加熱
硬化させることからなる。
【0003】このうち、下塗り塗装として行われるカチ
オン電着塗装は、防食、防錆等を主目的として行われる
ものであり、特開2000−38525号公報には、ス
ルホニウム基とプロパルギル基とを持つ樹脂組成物を含
有するカチオン電着塗料を用いる複層塗膜形成方法が開
示されている。このスルホニウム基とプロパルギル基と
を持つ樹脂組成物を含有するカチオン電着塗料はつきま
わり性及び耐衝撃性に優れた電着塗膜を形成することが
できるものである。
【0004】一方、塗膜に防食性や防錆性を付与するた
め、従来、防錆顔料や防錆剤が塗料に添加される場合が
ある。例えば、防錆顔料として、塩基性けい酸鉛、リン
モリブデン酸アルミニウム等が挙げられ、防錆剤とし
て、亜リン酸カルシウム、亜リン酸亜鉛カルシウム、カ
ルシウム担持シリカ、カルシウム担持ゼオライト等が挙
げられる。しかしながら、これら従来の防錆顔料や防錆
剤を、上述のスルホニウム基とプロパルギル基とを持つ
樹脂組成物を含有するカチオン電着塗料に添加した場
合、得られる電着被膜の防錆性や耐塩水性は向上しない
どころか、場合によっては低下することがあった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、上記
問題に鑑み、スルホニウム基とプロパルギル基とを持つ
樹脂組成物を含有するカチオン電着塗料により得られる
電着被膜の平滑性を維持しつつ、防錆性、防食性を向上
させることのできるカチオン電着塗料組成物を提供する
ことにある。
【0006】即ち、本発明者は、アスペクト比が4〜3
0であり、短径が1〜18μmである結晶性無機化合物
を、スルホニウム基とプロパルギル基とを持つ樹脂組成
物を含有するカチオン電着塗料に添加することにより、
上記電着塗料から得られる電着被膜において、水分等が
侵入しやすい等の環境から被膜を遮断する性能(遮断
性)が向上され、これにより、優れた防錆性、防食性が
得られるとともに、被膜表面の平滑性をも維持すること
ができることを見出し、本発明を完成した。
【0007】即ち、本発明は、スルホニウム基とプロパ
ルギル基とを持つ樹脂組成物、及び、結晶性無機化合物
を含むカチオン電着塗料組成物であって、上記結晶性無
機化合物は、アスペクト比が4〜30であり、短径が1
〜18μmであることを特徴とするカチオン電着塗料組
成物である。上記結晶性無機化合物は、カチオン電着塗
料組成物中の樹脂固形分重量に対して、好ましくは0.
1〜5重量%、より好ましくは0.5〜3重量%であ
る。
【0008】上記スルホニウム基とプロパルギル基とを
持つ樹脂組成物は、上記カチオン電着塗料組成物中の樹
脂固形分100g当り、スルホニウム基を5〜400m
mol及びプロパルギル基を10〜495mmol含有
し、スルホニウム基及びプロパルギル基の合計含有量が
500mmol以下であることが好ましい。上記スルホ
ニウム基とプロパルギル基とを持つ樹脂組成物は、ま
た、ノボラックフェノール型エポキシ樹脂又はノボラッ
ククレゾール型エポキシ樹脂を骨格とする樹脂からなる
ものであって、数平均分子量として700〜5000を
有するものであり、上記樹脂組成物の固形分100g当
り、スルホニウム基を5〜250mmol及びプロパル
ギル基を20〜395mmol含有し、スルホニウム基
及びプロパルギル基の合計含有量が400mmol以下
であることが好ましい。本発明は、また、被塗装物に上
記カチオン電着塗料組成物を電着塗装し、得られる被膜
を加熱硬化させる工程を含むことを特徴とするカチオン
電着塗装方法である。本発明は、更に、上記カチオン電
着塗装方法によって得られる被膜を有することを特徴と
する被塗装物である。以下、本発明を詳細に説明する。
【0009】カチオン電着塗料組成物 本発明のカチオン電着塗料組成物は、結晶性無機化合物
を含むものである。上記結晶性無機化合物は、アスペク
ト比が4〜30である。上記アスペクト比は、本発明で
用いられる上記結晶性無機化合物が非等方的形状をなす
粒子からなるところ、この形状について長径及び短径を
有する面並びに上記面と垂直の方向に厚さをとる場合に
おいて、長径の厚さに対する比である。
【0010】上記アスペクト比が4未満であると、粒子
は球状又はこれに近い形状となる傾向にあり、得られる
被膜の遮断性が低下して防錆性、耐塩水性に劣る。30
を超えると、粒子は針状若しくはこれに近い形状となる
傾向、又は、厚さに対して上記厚さの方向と垂直方向に
ある面が広くなりすぎ、過度の偏平さゆえに脆く細分化
する傾向にあり、遮断性の低下による防錆性や耐塩水性
の悪化を招くほか、上記粒子が電着被膜表面に突出して
被膜の平滑性が損なわれることがある。好ましくは、4
〜25であり、より好ましくは、5〜20である。本明
細書において、上記アスペクト比は、顕微鏡による実測
値から算出する。
【0011】上記結晶性無機化合物は、上述の非等方的
形状の粒子における長径が2〜30μmであることが好
ましい。2μm未満であると、粒子が小さくなりすぎ、
防錆性、防食性の防止が不充分となる傾向にあり、30
μmを超えると、過度に偏平となり、粒子が脆く細分化
して、遮断性の低下による防錆性、防食性の悪化を招き
やすい。好ましくは、3〜20μmである。
【0012】上記結晶性無機化合物は、上述の非等方的
形状の粒子における厚さが0.05〜7μmであること
が好ましい。0.05μm未満であると、過度に増した
偏平さゆえに脆く細分化しやすい粒子となり、遮断性が
低下して防錆性、防食性が悪化する傾向にあり、7μm
を超えると、粒子が大きくなりすぎ、作業性や塗膜物性
が低下する場合がある。好ましくは、0.1〜5μmで
ある。
【0013】上記結晶性無機化合物は、更に、短径が1
〜18μmである。上記短径は、上述の非等方的形状の
粒子における短径である。1μm未満であると、粒子は
針状又はこれに近い形状となったり、粒子が微小化する
傾向にあり、遮断性の低下による防錆性や耐塩水性の悪
化を招く。18μmを超えると、粒子は偏平さを増し、
脆くなって、上記範囲内のアスペクト比及び短径を有す
る形状を維持することが困難となったり、上記粒子が電
着被膜表面に突出すること等により被膜の平滑性が損な
われる。好ましくは、1〜15μmであり、より好まし
くは、2〜10μmである。
【0014】上記特定範囲内のアスペクト比及び短径を
有する粒子は、例えば、板状結晶又は鱗片状結晶と称す
ることもでき、多くの場合、通常針状と称される形状は
除かれることとなる。このような形状を有する結晶性無
機化合物は、電着被膜表面に対し平行に配向する傾向に
あり、これにより電着被膜の遮断機能が向上する一方、
針状粒子と異なり、被膜表面に突き出る等の頭出しの状
態とならないので、被膜表面の平滑性が維持され、これ
らの性質が相俟って防錆性、防食性の向上に寄与するほ
か、外観も向上する。
【0015】上記結晶性無機化合物は、上記特定範囲内
のアスペクト比及び短径を有するものであれば特に限定
されず、例えば、上記特定範囲内のアスペクト比及び短
径を有することを条件として、顔料が挙げられ、好まし
くは、体質顔料、防錆顔料であり、より好ましくはタル
ク、オルソリン酸亜鉛であり、更に好ましくはタルクで
ある。上記結晶性無機化合物としては、例えば、市販品
を用いることができ、例えば、タルクとしてPK−50
(アスペクト比8、短径5.0μm;土屋カオリン工業
社製)、オルソリン酸亜鉛としてZP−DL(アスペク
ト比15、短径2.5μm;キクチカラー社製)等が挙
げられる。上記結晶性無機化合物は、1種又は2種以上
を用いることができる。
【0016】上記結晶性無機化合物は、カチオン電着塗
料組成物中の樹脂固形分重量に対して、0.1〜5重量
%であることが好ましい。0.1重量%未満であると、
得られる電着被膜の防錆性、耐塩水性が不充分となりや
すく、5重量%を超えると、塗料の流動性や取り扱い性
の低下を招き、得られる被膜の物性にも劣る傾向にあ
る。より好ましくは、0.8〜4重量%であり、更に好
ましくは、1.5〜3重量%である。本発明のカチオン
電着塗料組成物は、更に、上記特定範囲内のアスペクト
比及び短径を有する結晶性無機化合物以外に、アスペク
ト比及び/又は短径が上記特定範囲内にない結晶性無機
化合物を含むものであってもよい。
【0017】本発明のカチオン電着塗料組成物は、更
に、スルホニウム基とプロパルギル基とを持つ樹脂組成
物を含むものである。このような樹脂組成物を含むこと
により、本発明のカチオン電着塗料組成物は、カチオン
電着塗装において優れたつきまわり性が得られ、特に、
得られる未硬化の電着塗膜の上に中塗り塗料を塗装した
後、得られる両未硬化塗膜を同時に加熱する複層塗膜形
成方法にも好適に用いることができる。
【0018】上記樹脂組成物を構成する樹脂は、一分子
中にスルホニウム基及びプロパルギル基の両者を持って
いてもよいが、必ずしもその必要はなく、例えば、一分
子中にスルホニウム基又はプロパルギル基の何れか一方
だけを持っていてもよい。この後者の場合には、樹脂組
成物全体として、これら2種の硬化性官能基の全てを持
っている。すなわち、上記樹脂組成物は、スルホニウム
基及びプロパルギル基を持つ樹脂からなるか、スルホニ
ウム基だけを持つ樹脂及びプロパルギル基だけを持つ樹
脂の混合物からなるか、又は、これらすべての混合物か
らなるものであってもよい。本発明のカチオン電着塗料
組成物に含まれる樹脂組成物は、上述の意味においてス
ルホニウム基及びプロパルギル基を持つ。
【0019】上記スルホニウム基は、上記樹脂組成物の
水和官能基である。スルホニウム基は、電着塗装過程で
一定以上の電圧又は電流を与えられると、電極上で電解
還元反応をうけてイオン性基が消失し、不可逆的に不導
体化することができる。本発明のカチオン電着塗料組成
物は、このことにより高度のつきまわり性を発揮するこ
とができるものと考えられる。
【0020】本発明のカチオン電着塗料組成物が使用さ
れる電着塗装過程においては、電極反応が引き起こさ
れ、生じた水酸化物イオンをスルホニウム基が保持する
ことにより電解発生塩基が電着被膜中に発生するものと
考えられる。この電解発生塩基は、電着被膜中に存在す
る加熱による反応性の低いプロパルギル基を、加熱によ
る反応性の高いアレン結合に変換することができる。
【0021】本発明のカチオン電着塗料組成物に含まれ
る樹脂組成物の骨格となる樹脂としては、特に限定され
るものではないが、エポキシ樹脂が好適に用いられる。
エポキシ樹脂としては、1分子中に少なくとも2つ以上
のエポキシ基を有するものが好適に用いられ、具体的に
は、例えば、エピビスエポキシ樹脂、これをジオール、
ジカルボン酸、ジアミン等により鎖延長したもの;エポ
キシ化ポリブタジエン;ノボラックフェノール型ポリエ
ポキシ樹脂;ノボラッククレゾール型ポリエポキシ樹
脂;ポリグリシジルアクリレート;脂肪族ポリオール又
はポリエーテルポリオールのポリグリシジルエーテル;
多塩基性カルボン酸のポリグリシジルエステル等のポリ
エポキシ樹脂を挙げることができる。これらのうち、硬
化性を高めるための多官能基化が容易であるので、ノボ
ラックフェノール型ポリエポキシ樹脂、ノボラッククレ
ゾール型ポリエポキシ樹脂、ポリグリシジルアクリレー
トが好ましい。なお、上記エポキシ樹脂の一部は、モノ
エポキシ樹脂であってもかまわない。
【0022】本発明のカチオン電着塗料組成物に含まれ
る樹脂組成物は、上記エポキシ樹脂を骨格とする樹脂か
らなり、数平均分子量は、500〜20000である。
数平均分子量が500未満であると、カチオン電着塗装
の塗装効率が悪くなり、20000を超えると被塗物表
面で良好な被膜を形成することができない。上記数平均
分子量は樹脂骨格に応じてより好ましい分子量を設定可
能であり、例えば、ノボラックフェノール型エポキシ樹
脂又はノボラッククレゾール型エポキシ樹脂を骨格とす
る場合には、700〜5000であることがより好まし
い。
【0023】本発明のカチオン電着塗料組成物中の樹脂
組成物におけるスルホニウム基の含有量は、後述するス
ルホニウム基及びプロパルギル基の含有量の条件を充た
した上で、上記カチオン電着塗料組成物中の樹脂固形分
100gあたり5〜400mmolである。5mmol
/100g未満であると、十分なつきまわり性や硬化性
を発揮することができず、また、水和性、浴安定性が悪
くなる。400mmol/100gを超えると、被塗物
表面への被膜の析出が悪くなる。上記スルホニウム基の
含有量は、用いられる樹脂骨格に応じてより好ましい含
有量を設定可能であり、例えば、上記樹脂組成物がノボ
ラックフェノール型エポキシ樹脂又はノボラッククレゾ
ール型エポキシ樹脂を骨格とする樹脂からなる場合に
は、本発明のカチオン電着塗料組成物中の樹脂固形分1
00gあたり5〜250mmolであることがより好ま
しく、10〜150mmolが更に好ましい。
【0024】本発明のカチオン電着塗料組成物中の樹脂
組成物におけるプロパルギル基は、上記カチオン電着塗
料において、硬化官能基として作用するのみならず、理
由は不明であるが、スルホニウム基と併存することによ
り、上記カチオン電着塗料組成物のつきまわり性を一層
向上させることができる。
【0025】本発明のカチオン電着塗料組成物中の樹脂
組成物におけるプロパルギル基の含有量は、後述するス
ルホニウム基及びプロパルギル基の含有量の条件を充た
した上で、上記カチオン電着塗料組成物中の樹脂固形分
100gあたり10〜495mmolである。10mm
ol/100g未満であると、十分なつきまわり性や硬
化性を発揮することができず、495mmol/100
gを超えると、カチオン電着塗料として使用した場合の
水和安定性に悪影響を及ぼすおそれがある。上記プロパ
ルギル基の含有量は、用いられる樹脂骨格に応じてより
好ましい含有量を設定可能であり、例えば、上記樹脂組
成物がノボラックフェノール型エポキシ樹脂又はノボラ
ッククレゾール型エポキシ樹脂を骨格とする樹脂からな
る場合には、本発明のカチオン電着塗料組成物中の樹脂
固形分100gあたり20〜395mmolであること
がより好ましい。
【0026】また、本発明のカチオン電着塗料組成物に
含まれる樹脂組成物中のスルホニウム基及びプロパルギ
ル基の合計含有量は、上記カチオン電着塗料組成物中の
樹脂固形分100gあたり500mmol以下である。
500mmolを超えると、樹脂が実際には得られなか
ったり、目的とする性能が得られないことがある。上記
樹脂組成物中のスルホニウム基及びプロパルギル基の合
計含有量は、用いられる樹脂骨格に応じてより好ましい
含有量を設定可能であり、例えば、ノボラックフェノー
ル型エポキシ樹脂、ノボラッククレゾール型エポキシ樹
脂の場合には、400mmol以下であることがより好
ましい。
【0027】本発明のカチオン電着塗料組成物に含まれ
る樹脂組成物中のプロパルギル基の一部は、アセチリド
化されていてもよい。アセチリドは、塩類似の金属アセ
チレン化物である。上記樹脂組成物中のアセチリド化さ
れるプロパルギル基の含有量は、樹脂組成物固形分10
0gあたり0.1〜40mmolであることが好まし
い。0.1mmol未満であると、アセチリド化による
効果が十分発揮されず、40mmolを超えると、アセ
チリド化が困難である。この含有量は、使用する金属に
応じてより好ましい範囲を設定することが可能である。
【0028】上記アセチリド化されたプロパルギル基に
含まれる金属としては、触媒作用を発揮する金属であれ
ば特に限定されず、例えば、銅、銀、バリウム等の遷移
金属を挙げることができる。これらのうち、環境適合性
を考慮するならば、銅、銀が好ましく、入手容易性か
ら、銅がより好ましい。銅を使用する場合、上記樹脂組
成物中のアセチリド化されるプロパルギル基の含有量
は、本発明のカチオン電着塗料組成物中の樹脂固形分1
00gあたり0.1〜20mmolであることがより好
ましい。
【0029】本発明のカチオン電着塗料組成物に含まれ
る樹脂組成物中のプロパルギル基の一部をアセチリド化
することにより、硬化触媒を樹脂中に導入することがで
きる。このようにすれば、一般に、有機溶媒や水に溶解
又は分散しにくい有機遷移金属錯体を使用する必要がな
く、遷移金属であっても容易にアセチリド化して導入可
能であるので、難溶性の遷移金属化合物であっても自由
に塗料組成物に使用可能である。また、遷移金属有機酸
塩を使用する場合のように、有機酸塩がアニオンとして
電着浴中に存在することを回避でき、更に、金属イオン
が限外ろ過によって除去されることはなく、浴管理やカ
チオン電着塗料の設計が容易となる。
【0030】本発明のカチオン電着塗料組成物に含まれ
る樹脂組成物には、所望により、炭素−炭素二重結合を
含有させてもよい。上記炭素−炭素二重結合は、反応性
が高いので硬化性を一層向上させることができる。
【0031】上記炭素−炭素二重結合の含有量は、後述
するプロパルギル基及び炭素−炭素二重結合の含有量の
条件を充たした上で、本発明のカチオン電着塗料組成物
中の樹脂固形分100gあたり10〜485mmolが
好ましい。10mmol/100g未満であると、添加
により十分な硬化性を発揮することができず、485m
mol/100gを超えると、カチオン電着塗料として
使用した場合の水和安定性に悪影響を及ぼすおそれがあ
る。上記炭素−炭素二重結合の含有量は、用いられる樹
脂骨格に応じてより好ましい含有量を設定可能であり、
例えば、上記樹脂組成物がノボラックフェノール型エポ
キシ樹脂又はノボラッククレゾール型エポキシ樹脂を骨
格とする樹脂からなる場合には、20〜375mmol
であることがより好ましい。
【0032】本発明のカチオン電着塗料組成物に含まれ
る樹脂組成物が上記炭素−炭素二重結合を含有する場
合、上記プロパルギル基及び炭素−炭素二重結合の合計
含有量は、本発明のカチオン電着塗料組成物中の樹脂固
形分100gあたり80〜450mmolの範囲内であ
ることが好ましい。80mmol未満であると硬化性が
不十分となるおそれがあり、450mmolを超えると
スルホニウム基の含有量が少なくなり、つきまわり性が
不十分となるおそれがある。上記プロパルギル基及び炭
素−炭素二重結合の合計含有量は、用いられる樹脂骨格
に応じてより好ましい含有量を設定可能であり、例え
ば、上記カチオン電着塗料組成物に含まれる樹脂組成物
がノボラックフェノール型エポキシ樹脂又はノボラック
クレゾール型エポキシ樹脂を骨格とする樹脂からなる場
合には、100〜395mmolであることがより好ま
しい。
【0033】本発明のカチオン電着塗料組成物に含まれ
る樹脂組成物が上記炭素−炭素二重結合を含有する場
合、上記スルホニウム基、プロパルギル基及び炭素−炭
素二重結合の合計含有量は、上記カチオン電着塗料組成
物中の樹脂固形分100gあたり500mmol以下で
あることが好ましい。500mmolを超えると、樹脂
が実際には得られなかったり、目的とする性能が得られ
ないことがある。上記スルホニウム基、プロパルギル基
及び炭素−炭素二重結合の合計含有量は、用いられる樹
脂骨格に応じて、より好ましい含有量を設定可能であ
り、例えば、上記樹脂組成物がノボラックフェノール型
エポキシ樹脂又はノボラッククレゾール型エポキシ樹脂
を骨格とする樹脂からなる場合には、400mmol以
下であることがより好ましい。
【0034】本発明のカチオン電着塗料組成物に含まれ
る樹脂組成物は、例えば、一分子中に少なくとも2つの
エポキシ基を有するエポキシ樹脂に、エポキシ基と反応
する官能基及びプロパルギル基を有する化合物(A)を
反応させて、プロパルギル基を持つエポキシ樹脂組成物
を得る工程(i)、及び、工程(i)で得られたプロパ
ルギル基を持つエポキシ樹脂組成物中の残存エポキシ基
に、スルフィド/酸混合物を反応させて、スルホニウム
基を導入する工程(ii)により好適に製造することが
できる。
【0035】本発明のカチオン電着塗料組成物に含まれ
る樹脂組成物に、必要に応じて炭素−炭素二重結合を持
たせる場合には、上記工程(i)において、エポキシ基
と反応する官能基及び炭素−炭素二重結合を有する化合
物(B)を、上記化合物(A)と併用すればよい。
【0036】本発明のカチオン電着塗料組成物に含まれ
る樹脂組成物が有するプロパルギル基の一部をアセチリ
ド化する場合は、上記工程(i)で得られたプロパルギ
ル基を持つエポキシ樹脂組成物に、例えば銅、銀又はバ
リウム等の遷移金属の錯体又は塩等の金属化合物を反応
させて、上記エポキシ樹脂組成物中の一部のプロパルギ
ル基をアセチリド化する工程を施すことができる。上記
本発明のカチオン電着塗料組成物に含まれる樹脂組成物
は、特開2000−189891号公報等に記載の製造
方法に従って得ることができる。
【0037】本発明のカチオン電着塗料組成物において
は、上述のようにスルホニウム基とプロパルギル基とを
持つ樹脂組成物が含まれており、上記樹脂組成物自体が
硬化性を有するので、硬化剤の使用は必ずしも必要な
い。しかし、硬化性を更に向上させるために使用しても
よい。このような硬化剤としては、例えば、プロパルギ
ル基及び炭素−炭素二重結合のうち少なくとも1種を複
数個有する化合物、例えば、ノボラックフェノール等の
ポリエポキシドやペンタエリスリットテトラグリシジル
エーテル等に、プロパルギルアルコール等のプロパルギ
ル基を有する化合物やアクリル酸等の炭素−炭素二重結
合を有する化合物を付加反応させて得た化合物等を挙げ
ることができる。
【0038】本発明のカチオン電着塗料組成物には、硬
化触媒を必ずしも使用する必要はない。しかし、硬化反
応条件により、更に硬化性を向上させる必要がある場合
には、必要に応じて、通常用いられる遷移金属化合物等
を適宜添加してもよい。このような化合物としては特に
限定されず、例えば、ニッケル、コバルト、マンガン、
パラジウム、ロジウム等の遷移金属に対して、シクロペ
ンタジエンやアセチルアセトン等の配位子や酢酸等のカ
ルボン酸等が結合したもの等を挙げることができる。上
記硬化触媒の配合量は、上記カチオン電着塗料組成物中
の樹脂固形分100gあたり0.1〜20mmolであ
ることが好ましい。
【0039】本発明のカチオン電着塗料組成物には、ア
ミンを配合することができる。上記アミンの配合によ
り、電着過程における電解還元によるスルホニウム基の
スルフィドへの変換率が増大する。上記アミンとしては
特に限定されず、例えば、1級〜3級の単官能及び多官
能の脂肪族アミン、脂環族アミン、芳香族アミン等のア
ミン化合物を挙げることができる。これらのうち、水溶
性又は水分散性のものが好ましく、例えば、モノメチル
アミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチ
ルアミン、プロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ト
リブチルアミン等の炭素数2〜8のアルキルアミン;モ
ノエタノールアミン、ジメタノールアミン、メチルエタ
ノールアミン、ジメチルエタノールアミン、シクロヘキ
シルアミン、モルホリン、N−メチルモルホリン、ピリ
ジン、ピラジン、ピペリジン、イミダゾリン、イミダゾ
ール等を挙げることができる。これらは単独で使用して
もよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、水分散
安定性が優れているので、モノエタノールアミン、ジエ
タノールアミン、ジメチルエタノールアミン等のヒドロ
キシアミンが好ましい。
【0040】上記アミンは、直接、本発明のカチオン電
着塗料組成物中に配合することができる。従来の中和型
アミン系のカチオン電着塗料では、遊離のアミンを添加
すると、樹脂中の中和酸を奪うことになり、電着溶液の
安定性が著しく悪化するが、本発明においては、このよ
うな浴安定性の阻害が生じることはない。
【0041】上記アミンの配合量は、本発明のカチオン
電着塗料組成物中の樹脂固形分100gあたり、0.3
〜25meqが好ましい。0.3meq/100g未満
であると、つきまわり性に対して十分な効果を得ること
ができず、25meq/100gを超えると、添加量に
応じた効果を得ることができず不経済である。より好ま
しくは、1〜15meq/100gである。
【0042】本発明のカチオン電着塗料組成物は、更
に、必要に応じて、上述の特定範囲内のアスペクト比及
び短径を有する結晶性無機化合物以外のその他の防錆顔
料や防錆剤を併用してもよい。上記その他の防錆顔料と
しては、特に限定されず、例えば、塩基性けい酸鉛、リ
ンモリブデン酸アルミニウム等、通常のカチオン電着塗
料に用いられる防錆顔料が挙げられる。上記その他の防
錆剤としては、具体的には、亜リン酸カルシウム、亜リ
ン酸亜鉛カルシウム、カルシウム担持シリカ、カルシウ
ム担持ゼオライト等が挙げられる。
【0043】本発明のカチオン電着塗料組成物は、ま
た、必要に応じて、上述の結晶性無機化合物や上記防錆
顔料を除くその他の顔料を含むことができる。上記その
他の顔料としては特に限定されず、例えば、二酸化チタ
ン、カーボンブラック、ベンガラ等の着色顔料;カオリ
ン、クレー等の体質顔料等の一般にカチオン電着塗料に
使用されるもの等を挙げることができる。上述の特定範
囲内のアスペクト比及び短径を有する結晶性無機化合物
を除いて、上記各種顔料と防錆剤との合計配合量は、本
発明のカチオン電着塗料組成物中の固形分として0〜2
5重量%であることが好ましい。
【0044】本発明のカチオン電着塗料組成物は、ま
た、必要に応じて、通常のカチオン電着塗料に用いられ
るその他の成分を含んでいてもよい。上記その他の成分
としては特に限定されず、例えば、顔料分散樹脂、界面
活性剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の塗料用添加剤等
を挙げることができる。
【0045】上記顔料分散樹脂は、上記顔料をカチオン
電着塗料中に安定して分散させるために用いられる。顔
料分散樹脂としては、特に限定されるものではなく、一
般に使用されている顔料分散樹脂を使用することができ
る。また、樹脂中にスルホニウム基と不飽和結合とを含
有する顔料分散樹脂を使用してもよい。このようなスル
ホニウム基と不飽和結合とを含有する顔料分散樹脂は、
例えば、ビスフェノール型エポキシ樹脂とハーフブロッ
ク化イソシアネートとを反応させて得られる疎水性エポ
キシ樹脂に、スルフィド化合物を反応させるか、又は、
上記樹脂に、一塩基酸及び水酸基含有二塩基酸の存在下
でスルフィド化合物を反応させる方法等により得ること
ができる。上記非重金属防錆剤についても上記顔料分散
樹脂によってカチオン電着塗料中に安定して分散させる
ことができる。
【0046】本発明のカチオン電着塗料組成物の硬化温
度は、130〜220℃に設定されていることが好まし
い。硬化温度が130℃より低温である場合は、得られ
る塗膜の平滑性が低下する恐れがある。硬化温度が22
0℃より高温である場合は、得られる塗膜の物性が低下
したり、それに上塗り塗料等を塗装する場合に得られる
多層塗膜の外観が低下するおそれがある。上記硬化温度
の設定は、硬化官能基、硬化剤及び触媒の種類や量等の
調整といった当業者に公知の方法で行うことができる。
【0047】本発明における硬化温度とは、30分間の
加熱でゲル分率85%の塗膜を得るための温度のことを
いう。上記ゲル分率の測定は、試験塗板をアセトンに浸
漬し5時間還流させた時の、試験前後における試験塗板
の重量差から算出する方法により行われる。
【0048】本発明のカチオン電着塗料組成物は、これ
に含まれる上記樹脂組成物に、必要に応じて、上述の各
成分を混合し、水に溶解又は分散すること等により得る
ことができる。上述の特定範囲内のアスペクト比及び短
径を有する結晶性無機化合物は、上記カチオン電着塗料
組成物を調製するに先立って上記樹脂組成物に分散させ
ることにより配合してもよいし、上述の顔料分散樹脂に
加えてペースト化した後、得られるペーストを上記塗料
組成物の製造時又は製造後に添加することにより、配合
してもよい。上記カチオン電着塗料組成物は、これに含
まれる樹脂組成物中のプロパルギル基、炭素−炭素二重
結合及びスルホニウム基の含有量が上述の範囲を逸脱し
ないように調整することが好ましい。カチオン電着塗装
に用いる際には、上記カチオン電着塗料組成物は、不揮
発分が10〜30%の浴液となるように調製されること
が好ましい。
【0049】カチオン電着塗装方法 本発明のカチオン電着塗装方法は、上述のカチオン電着
塗料組成物を電着塗装し、得られる被膜を加熱硬化させ
る工程を含むものである。本発明のカチオン電着塗装方
法に用いられる被塗装物としては、特に限定されるもの
ではなく、カチオン電着すること及び硬化のための加熱
により変質しないものであれば特に限定されず、例え
ば、鉄板、鋼板、アルミニウム等の平板、成型物及びそ
れらを表面処理したもの等を挙げることができる。
【0050】上記電着塗装は、被塗装物を陰極とし、陽
極との間に、通常、50〜450Vの電圧を印加して行
う。印加電圧が50V未満であると電着が不十分とな
り、450Vを超えると、消費電力が大きくなり、不経
済である。上述のカチオン電着塗料組成物を使用して上
記範囲内で電圧を印加すると、電着過程における急激な
膜厚の上昇を生じることなく、被塗物全体に均一な被膜
を形成することができる。上記電圧を印加する場合の上
記カチオン電着塗料組成物の浴液温度は、通常、10〜
45℃が好ましい。
【0051】上記電着塗装は、上記カチオン電着塗料組
成物に被塗装物を浸漬する過程、上記被塗装物を陰極と
して陽極との間に電圧を印加し、被膜を析出させる過
程、析出させた上記被膜に、電圧を更に印加することに
より、上記被膜の単位体積あたりの電気抵抗値を増加さ
せる過程、から構成されることが好ましい。上記電圧印
加時間は、電着条件によって異なるが、一般には、2〜
4分とすることができる。このようにして得られるカチ
オン電着未硬化被膜は、電着過程の終了後、そのまま又
は水洗した後、セッティングされる。
【0052】上記電着未硬化被膜は、次いで、加熱硬化
される。加熱条件としては、例えば、上述のカチオン電
着塗料組成物の硬化温度より0〜15℃高い温度、即
ち、130〜235℃に設定された乾燥炉に、得られた
被塗装物を投入し、10〜60分間加熱することが挙げ
られる。
【0053】本発明のカチオン電着塗装方法において
は、カチオン電着塗装により得られる電着被膜の上に、
必要に応じ、下地隠蔽性や耐チッピング性を付与するた
め中塗り塗料を塗布してもよく、更に、着色、外観向上
等のため上塗り塗料を重ね塗りしてもよい。この場合に
おいて、上記電着被膜や中塗り塗膜は、形成される度に
加熱硬化させてもよいし、上記中塗り塗料や上記上塗り
塗料の塗布前に加熱硬化させることなくウエット・オン
・ウエットで重ね塗りし、得られる複層塗膜を同時に加
熱硬化させてもよい。上記中塗り塗膜や上記上塗り塗膜
の加熱硬化は、例えば、上述の加熱条件により行うこと
ができる。
【0054】本発明のカチオン電着塗料組成物は、上述
のアスペクト比が4〜30であり、短径が2〜18μm
である結晶性無機化合物を含むものであるので、スルホ
ニウム基とプロパルギル基とを持つ樹脂組成物を含有す
るカチオン電着塗料に添加する場合に、得られる電着被
膜において、遮断性の向上による優れた防錆性、防食性
が得られるとともに、被膜表面の平滑性が維持され、優
れた外観を呈する。
【0055】本発明のカチオン電着塗料組成物は、ま
た、スルホニウム基とプロパルギル基とを持つ樹脂組成
物を含むものであるので、つきまわり性に優れた電着塗
膜が得られ、また、得られるカチオン電着被膜が未硬化
のまま、その上に中塗り塗料等を重ね塗りするウエット
・オン・ウエット方式による塗装を行う場合において
も、好適に用いられる。従って、本発明のカチオン電着
塗料組成物、上記カチオン電着塗料組成物を用いるカチ
オン電着塗装方法及び上記カチオン電着塗装方法により
得られる被膜を有する被塗装物は、特に自動車の車体や
部品等の塗装に好適に用いられる。
【0056】
【実施例】以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説
明するが、本発明はこれら実施例にのみ限定されるもの
ではない。製造例1 スルホニウム基とプロパルギル基とを持つエ
ポキシ樹脂組成物の製造 エポキシ当量200.4のエポトートYDCN−701
(東都化成社製のクレゾールノボラック型エポキシ樹
脂)100.0重量部にプロパルギルアルコール23.
6重量部、ジメチルベンジルアミン0.3重量部を攪拌
機、温度計、窒素導入管及び還流冷却管を備えたセパラ
ブルフラスコに加え、105℃に昇温し、3時間反応さ
せてエポキシ当量が1580のプロパルギル基を含有す
る樹脂組成物を得た。このものに銅アセチルアセトナー
ト2.5重量部を加え90℃で1.5時間反応させた。
プロトン(1H)NMRで付加プロパルギル基末端水素
の一部が消失していることを確認した(14mmol/
100g樹脂固形分相当量のアセチリド化されたプロパ
ルギル基を含有)。このものに、1−(2−ヒドロキシ
エチルチオ)−2,3−プロパンジオール10.6重量
部、氷酢酸4.7重量部、脱イオン水7.0重量部を入
れ75℃で保温しつつ6時間反応させ、残存酸価が5以
下であることを確認した後、脱イオン水43.8重量部
を加え、目的の樹脂組成物溶液を得た。このものの固形
分濃度は70.0重量%、スルホニウム価は28.0m
mol/100gワニスであった。数平均分子量(ポリ
スチレン換算GPC)は2443であった。
【0057】実施例1〜2 (カチオン電着塗料組成物の製造)製造例1で得られた
エポキシ樹脂組成物142.9重量部、結晶性無機化合
物として、それぞれ表1のアスペクト比及び短径を有す
るタルク(PK−50;長径10μm、厚さ1.2μ
m;土屋カオリン工業社製)又はオルソリン酸亜鉛(Z
P−DL;長径4.5μm、厚さ0.3μm;キクチカ
ラー社製)を上記エポキシ樹脂組成物の固形分重量に対
して1重量%又は2重量%、及び、脱イオン水157.
1重量部を加え、高速回転ミキサーで1時間攪拌後、更
に脱イオン水373.3重量部を加え、固型分濃度が1
5重量%となるように水溶液を調製し、カチオン電着塗
料組成物を得た。このカチオン電着塗料組成物の硬化温
度を測定したところ、150℃であった。
【0058】(カチオン電着塗装方法)得られたカチオ
ン電着塗料組成物をステンレス容器に移して電着浴と
し、ここに被塗装物として、リン酸亜鉛処理した冷間圧
延鋼板(JIS G3141 SPCC−SD、日本ペ
イント社製のリン酸亜鉛処理剤サーフダインSD−50
00で処理)が陰極となるようにして、乾燥膜厚が30
μmとなるように電着塗装を行った。電着塗装後、ステ
ンレス容器内の電着浴から引き上げた被塗装物を液面上
に上げた状態のまま、30秒間自然乾燥させた後水洗
し、180℃又は190℃で25分間加熱硬化させて塗
板を作成した。
【0059】(評価)得られた塗板について下記のよう
に評価し、結果を表1に示した。 1.ブリスタ 得られた塗板(横7cm×縦15cm)を55℃に加温
した5%NaCl水溶液中に浸してSDT(塩水浸漬試
験)を240時間行った後、水洗し水を切って室温で1
時間放置し、次いで、セロハンテープ(ニチバン社製)
を用いてテープ剥離を行い、測定面積当りのブリスタの
個数を調べた。測定面積は、塗板の下端から10cmの
部分(横7cm×縦10cm)のうち幅0.5mmの周
縁部を除く部分(横6cm×縦9cm)である。ブリス
タの個数は、直径10mmを超える大ブリスタは生じな
かったので、直径0.5mm未満の小ブリスタの個数及
び直径0.5〜10mmの中ブリスタの個数を数え、そ
の合計数とした。
【0060】2.片側剥離幅 上記1により得られた塗板(横7cm×縦15cm)の
右端から1.5cmの箇所に1本、及び、左端から1.
5cmの箇所に1本の合計2本の縦カットを入れて40
mm間隔の平行線とし、55℃に加温した5%NaCl
水溶液中に浸し、240時間後、水洗して、室温で1時
間放置後、上記1と同様にしてテープ剥離を行い、片側
剥離幅(mm)を調べた。
【0061】3.表面粗さ(Ra) 180℃×25分間で加熱硬化させて得られた塗膜の外
観について、サーフテスト SJ−201(ミツトヨ社
製)を用い、カットオフ値を0.8mm、サンプリング
間隔を0.5μmとして、JIS B 0601−19
94に従い、表面粗さRa(μm)を測定した。
【0062】比較例1〜4 PD−50又はZP−DLに代えて、それぞれ表1のア
スペクト比及び短径を有する下記結晶性無機化合物を用
いることの他は、実施例1〜2と同様にして、カチオン
電着塗料組成物を製造し、電着被膜を評価した。結果を
表1に示す。 − トリポリリン酸二水素アルミニウム(K−WHIT
E、テイカ社製) − オルソポリリン酸亜鉛(ZP−50S、キクチカラ
ー社製) − リン酸カルシウム(CP−Z、キクチカラー社製) − モリブデン酸カルシウム(MC−400WR、キク
チカラー社製)比較例5 結晶性無機化合物を添加しないことの他は、実施例1〜
2と同様にして、カチオン電着塗料組成物を製造し、電
着被膜を評価した。結果を表1に示す。
【0063】
【表1】
【0064】表1から、アスペクト比が小さすぎる等、
本発明の範囲内にない結晶性無機化合物を添加した比較
例1〜4では、結晶性無機化合物を添加しない比較例5
と比較して、何れも、有意に多いブリスタを生じ、片側
剥離幅が同等又は大きく、表面粗さが大きいので、被膜
の平滑性、防錆性、耐塩水性ともに劣ることが判った。
表1から、また、本発明の範囲内にある結晶性無機化合
物を添加した実施例では、上記比較例5と比較して、何
れも、ブリスタが少数であり、片側剥離幅は小さく、同
等程度の表面粗さを有するので、被膜の防錆性、耐塩水
性ともに向上され、平滑性は無添加の場合と同等程度に
優れることが判った。更に、実施例のうち、結晶性無機
化合物の添加量が、カチオン電着塗料組成物中の樹脂固
形分に対し、2重量%の方が1重量%よりもブリスタ数
が少ないので、防錆性、耐塩水性の向上及び平滑性の維
持に一層効果的であることが判った。
【0065】
【発明の効果】本発明のカチオン電着塗料組成物は、上
述の構成よりなることから、得られるカチオン電着被膜
において、防錆性、防食性の向上が効果的に行われ、ま
た、優れた平滑性が維持される。従って、本発明のカチ
オン電着塗料組成物、上記カチオン電着塗料組成物を用
いるカチオン電着塗装方法及び上記方法により得られる
被膜を有する被塗装物は、自動車の車体や部品類等の塗
装に好適に用いられる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 川上 一郎 大阪府寝屋川市池田中町19番17号 日本ペ イント株式会社内 (72)発明者 坂本 裕之 大阪府寝屋川市池田中町19番17号 日本ペ イント株式会社内 Fターム(参考) 4J038 DB031 DB071 DB091 DB201 DB221 DB301 DB401 GA01 GA13 HA416 HA536 KA19 MA12 MA14 NA01 NA03 NA04 PA04 PA19 PB07 PC02

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 スルホニウム基とプロパルギル基とを持
    つ樹脂組成物、及び、結晶性無機化合物を含むカチオン
    電着塗料組成物であって、前記結晶性無機化合物は、ア
    スペクト比が4〜30であり、短径が1〜18μmであ
    ることを特徴とするカチオン電着塗料組成物。
  2. 【請求項2】 結晶性無機化合物は、カチオン電着塗料
    組成物中の樹脂固形分重量に対して0.1〜5重量%で
    ある請求項1記載のカチオン電着塗料組成物。
  3. 【請求項3】 結晶性無機化合物は、カチオン電着塗料
    組成物中の樹脂固形分重量に対して0.5〜3重量%で
    ある請求項1記載のカチオン電着塗料組成物。
  4. 【請求項4】 スルホニウム基とプロパルギル基とを持
    つ樹脂組成物は、カチオン電着塗料組成物中の樹脂固形
    分100g当り、スルホニウム基を5〜400mmol
    及びプロパルギル基を10〜495mmol含有し、ス
    ルホニウム基及びプロパルギル基の合計含有量が500
    mmol以下である請求項1、2又は3記載のカチオン
    電着塗料組成物。
  5. 【請求項5】 スルホニウム基とプロパルギル基とを持
    つ樹脂組成物は、ノボラックフェノール型エポキシ樹脂
    又はノボラッククレゾール型エポキシ樹脂を骨格とする
    樹脂からなるものであって、数平均分子量として700
    〜5000を有するものであり、前記樹脂組成物の固形
    分100g当り、スルホニウム基を5〜250mmol
    及びプロパルギル基を20〜395mmol含有し、ス
    ルホニウム基及びプロパルギル基の合計含有量が400
    mmol以下である請求項1、2、3又は4記載のカチ
    オン電着塗料組成物。
  6. 【請求項6】 被塗装物に請求項1、2、3、4又は5
    記載のカチオン電着塗料組成物を電着塗装し、得られる
    被膜を加熱硬化させる工程を含むことを特徴とするカチ
    オン電着塗装方法。
  7. 【請求項7】 請求項6記載のカチオン電着塗装方法に
    よって得られる被膜を有することを特徴とする被塗装
    物。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
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