JP2002256281A - 単細胞化処理を特徴とする油糧種子の処理方法 - Google Patents

単細胞化処理を特徴とする油糧種子の処理方法

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JP2002256281A
JP2002256281A JP2001056684A JP2001056684A JP2002256281A JP 2002256281 A JP2002256281 A JP 2002256281A JP 2001056684 A JP2001056684 A JP 2001056684A JP 2001056684 A JP2001056684 A JP 2001056684A JP 2002256281 A JP2002256281 A JP 2002256281A
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enzyme
fat
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soybean
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Naoya Kasai
尚哉 笠井
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Osaka Prefecture
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Abstract

(57)【要約】 【課題】油糧種子に含まれる成分(油脂、蛋白質、糖類
等)を分離する方法。 【解決手段】油糧種子を単細胞化処理することにより、
油糧種子に含まれる成分(油脂、蛋白質、糖類等)を分
離する方法、特に油糧種子を水処理、熱水処理して蛋白
質、糖類を抽出した後、細胞壁溶解酵素で細胞壁を溶解
し油脂を製造する方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、油糧種子を単細胞
化処理することにより、油糧種子に含まれる成分(油
脂、蛋白質、糖類等)を分離する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】油糧種子は大豆、らっかせい、ごまな
ど、油脂を多く含む種子類であり、油脂の原料として重
要である。油脂含量の多い油糧種子は、主として圧搾に
より製造されている。また、油脂を取った残りは蛋白質
を多く含んでいるので飼料原料に用いられるほか、食品
原料にも供される。とくに最近は開発途上国向けの食糧
タンパク源として注目されており、たとえば、綿実の脱
脂物を穀粉等と混合した幼児向け食糧が開発されてい
る。また、近年、油糧種子である菜種、ごま、ひまわり
などについてはマセラーゼ、プロテアーゼ、セルラーゼ
を中心とした酵素群を用いて、より簡単に、より効率的
に採油しようとする試みがなされてきており、いくらか
の効果をあげている。
【0003】油糧作物における油はオレオシン蛋白と呼
ばれる疎水的蛋白質によりマイクロカプセル化されたオ
イルボディとして各細胞質中に貯蔵されていることが知
られている(Murphy et. al. Trends in Biochemical
Sciences, Voll. 24, Issue3, 1 March 1999, 109-11
5)。このため、油を回収するためには細胞壁及びオイル
ボディを破壊する方法が必要とされるが、従来の圧搾や
エクスパンダーによる粉砕がこれに該当する。
【0004】しかしながら、溶媒抽出を使わず、酵素法
を適応するには、破砕されたものを水溶液に懸濁する
が、油糧種子中には油の他に蛋白質等の他の成分も含ま
れているため、このような機械的に破壊する方法では、
油と油糧種子中の他の成分(蛋白質、糖質など)とが混
在したものしか得られず、この混在したものから油や他
の成分を分別するためにはさらに複雑な工程が必要とな
るか、成分によってはエマルジョン化し分別不可能とな
る問題がある。従って、油以外の他の成分の分別も可能
な方法が望まれている。
【0005】このような問題は、特に、油脂含量が比較
的低く(約20%)蛋白質含量が比較的高い(約35-40
%)大豆においては蛋白質のゲル化物等が生成するた
め、顕著である。従って、大豆油の採油においては油と
他の成分とが混在したものをヘキサンなどの有機溶媒で
70℃程度の条件下で抽出する方法が採用されている。さ
らに、有機溶媒抽出を効率よく進めるために、有機溶媒
抽出前にセルラーゼ等で酵素処理することも行われてい
る(Dominguezら(Food Chemistry, 54, (1995) 223-23
1)。しかしながら、この有機溶媒抽出法においては、
有機溶媒と油の蒸留分別が必要になるため、経済的、環
境的問題を考えた場合には問題が残り、また、採油後の
脱脂大豆の食品への利用(飼料、豆腐、みそ、醤油な
ど)を考えた場合には、脱脂大豆に残存する有機溶媒や
有機溶媒に含有される毒性物質の吸着に対して懸念が残
るため、或いは、溶媒によるタンパク質の変性も起こり
劣化する。また、ヘキサン等の有機溶媒は揮発性である
ため、できるだけ温和な条件下で油脂を採取する方法が
望まれる。また、大豆にはグリシニンやコングリシニン
をはじめとするゲル化タンパク質や発泡性タンパク質な
ど多くの有用なタンパク質や糖が含まれているが、大豆
の機械的破壊で油等と混在させることによって分別不可
能或いは分別困難になるため、これら有用な蛋白質や糖
の分別方法も必要とされる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、油糧種子に
含まれる成分(油脂、蛋白質、糖類等)を分離する方法
に関する。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者は、上記の観点
から鋭意研究を行い、油糧種子を単細胞化し、その細胞
をできうる限り非破壊的に処理することにより、油糧種
子中の成分、特に油脂、蛋白質、糖類を効率的に分離で
きることを見出し、本発明を完成した。
【0008】すなわち、本発明は以下の製造方法を提供
するものである。 項1.油糧種子を単細胞化処理し、油脂を回収すること
を特徴とする油脂の製造方法。 項2.圧搾又は有機溶媒抽出によって油脂を回収するこ
とを特徴とする項1に記載の油脂の製造方法。 項3.単細胞化処理された油糧種子を酵素処理すること
を特徴とする項1に記載の油脂の製造方法。 項4.酵素処理液から油脂を回収し、酵素処理された油
糧種子から圧搾又は有機溶媒抽出によって油脂を回収す
るあることを特徴とする項3に記載の油脂の製造方法。 項5.油糧種子が大豆又は菜種である項1〜4のいずれ
かに記載の油脂の製造方法。 項6.油糧種子が大豆である項1〜4のいずれかに記載
の油脂の製造方法 項7.酵素処理に使用される酵素が細胞壁溶解酵素であ
ることを特徴とする項3又は4に記載の油脂の製造方
法。 項8.酵素処理に使用される酵素が細胞壁溶解酵素及び
プロテアーゼであることを特徴とする項3又は4に記載
の油脂の製造方法。 項9.細胞壁溶解酵素がセルラーゼであることを特徴と
する項7又は8に記載の油脂の製造方法。 項10.油糧種子を単細胞化処理することを特徴とする
蛋白質又は糖類の製造方法。 項11.油糧種子が大豆又は菜種である項10に記載の
蛋白質又は糖類の製造方法。 項12.油糧種子が大豆である請項10に記載の蛋白質
又は糖類の製造方法。 項13.油糧種子を単細胞化処理することを特徴とする
細胞壁の製造方法。
【0009】
【発明の実施の形態】本発明において、油糧種子とは、
植物の種子のうち油脂含量が多いものをいい、例として
は、大豆、菜種、あまに、ひまわり、綿実、ゴマ、サフ
ラワー、落花生、コーン、カカオ豆、ひまし、つばき種
子等が挙げられる。好ましくは、大豆、菜種、コーンで
あり、さらに好ましくは大豆、菜種、より一層好ましく
は大豆である。
【0010】油脂を製造する場合、水処理又は熱水処理
に供する油糧種子は、そのままでも良いが、種子表面積
を増加させる目的で、種子の細胞組織が多く破壊されな
い程度に破砕や分割することが好ましい。種子内の蛋白
質等が水処理又は熱水処理で抽出され易くなり、続く油
脂回収工程で蛋白質と油脂とがエマルジョン化すること
がなくなる。
【0011】また、油糧種子の種皮はあってもなくても
よい。油脂を製造する場合には、種皮がない方が良い。
種子内の蛋白質等が水処理又は熱水処理で抽出され易く
なり、続く油脂回収工程で蛋白質と油脂とがエマルジョ
ン化することがなくなる。蛋白質又は糖類を製造する場
合には種皮の有無によって抽出できる蛋白質、糖類が変
化するので、目的とする蛋白質、糖類に応じて種皮の有
無が決定される。種皮の除去は種子に物理的な力、例え
ば細胞が破砕されない程度にローラーをかけることによ
って可能であるし、種子を機械的に2〜8分割程度に割
り、その後物理的な振動を与えることによっても可能で
ある。
【0012】本発明において、単細胞化とは、油糧種子
中の全細胞が完全に単細胞化されていることが望ましい
が、細胞のいくつかが細胞間接着物質を介して他の細胞
と接触していてもかまわない。好ましくは、完全に単細
胞化された細胞が60%以上であり、さらに好ましくは
80%以上である。
【0013】単細胞化処理としては、油糧種子を水処
理、熱水処理の順に処理する方法、熱水処理する方法、
細胞間接着物質を酵素(例えば、プロテアーゼ)で分解
する方法などが可能である。油脂を製造する場合に好ま
しいのは、水処理、熱水処理の順に処理する方法並びに
熱水処理であり、さらに好ましいのは水処理、熱水処理
の順に処理する方法である。細胞間接着物質を酵素で分
解する方法は単細胞化の過程で蛋白質、糖類等を分離す
ることはできないが、単細胞化によって細胞壁を溶解す
る酵素による処理が理想的に行われ、油脂を回収する際
に、例えば圧搾では加える力を弱くすることができるた
め蛋白質と油脂とのエマルジョン化を極力減らすことが
でき、有機溶媒抽出では抽出条件を緩和にすることが可
能となる。蛋白質又は糖類を製造する場合には、油糧種
子の種皮の有無、分割の有無と水処理、熱水処理との組
み合わせによって得られる蛋白質又は糖類が変化するた
め、目的とする蛋白質に応じて、水処理及び熱水処理の
少なくとも一処理が行われる。例えば、種皮のある分割
していない大豆を水処理した場合、抽出液は透明でマグ
ネシウムの添加によりゲル化しやすく、酸性にしてもゲ
ル化しやすく、水溶性蛋白質が多く含まれている。ま
た、全糖量に対する還元糖の比はおよそ2から11程度で
ある。種皮の無い分割していない大豆を水処理した場
合、抽出液は透明でマグネシウムの添加によっても、ゲ
ル化能が弱いが、酸性にすれば白濁沈殿となりやすく、
接着蛋白質が多く含まれている。また、全糖量に対する
還元糖の比はおよそ80から90程度である。種皮のある分
割していない大豆を熱水処理した場合、その抽出液は透
明であり、マグネシウムの添加によりゲル化しやすく、
しかもゲルの透明度が高い。また酸性にしてもゲル化し
やすく、この場合も透明度が高く、水溶性蛋白質が多く
含まれている。種皮の無い分割していない大豆を熱水処
理した場合、抽出液は透明でなく、濁っており、マグネ
シウムの添加により白くゲル化するが、酸性にすれば白
濁沈殿となりやすく、水溶性蛋白質が多く含まれてい
る。さらに、種皮のある分割していない大豆を熱水処理
したあとに、さらに続いて種皮を除くかあるいは2以上
に分割したものを熱水処理すると、マグネシウムの添加
によってもゲル化せず、酸性にしても沈殿しにくく、さ
らには発泡性の高い抽出液が得られる。すなわち、ゲル
化能のある蛋白質を含む画分とゲル化能のない発泡性を
有する蛋白質を多く含む画分が分別的に得られる。
【0014】なお、接着蛋白質とは、細胞間接着物質及
びその分解物を主成分とする蛋白質をいう。
【0015】単細胞化処理は、必要に応じて、単細胞化
をより促進させるために、種子の細胞組織が多く破壊さ
れない程度に力を加えられてもよい。力を加える方法と
しては、具体的に、攪拌、超音波照射などの方法が可能
である。
【0016】水処理は、油糧種子を、水が液体である最
低温度(0℃を超える温度)〜80℃、好ましくは水が液
体である最低温度〜40℃、さらに好ましくは水が液体で
ある最低温度〜20℃で、種子の2倍容以上、好ましくは
5倍容以上の水に、温度によっても異なるが、3時間〜2
4時間、好ましくは8〜15時間、浸漬することにより行わ
れる。抽出効果を上げるために、水を数回交換すること
が好ましい。
【0017】油糧種子を水処理することによって、油糧
種子中の水溶性蛋白質、水溶性糖類等の水溶性物質が水
に溶け出す。水溶性蛋白質としては、レシチン等が例示
される。また、水溶性糖類としては、オリゴ糖、マルト
ース等が例示される。特に、大豆の水処理では、レシチ
ン、マルトース、オリゴ糖等が得られる。
【0018】このような水処理分離物は、必要に応じ
て、酸沈殿、酸アルコール洗浄、活性炭吸着、イオン交
換樹脂等の公知の方法によってさらに精製される。
【0019】熱水処理は、油糧種子を、必要とする水温
に応じて加圧し、100〜150℃、好ましくは110〜130℃、
さらに好ましくは115〜125℃で、種子の2倍容以上、好
ましくは5倍容以上の熱水に、10分間〜2時間、好まし
くは10〜60分間、さらに好ましくは10分間〜20分間、熱
水の温度を維持しながら浸漬することにより行われる。
好ましくは115〜125℃、0.8〜1.2気圧で10〜20分間処理
する。抽出効果を上げるために、熱水を数回交換するこ
とが好ましい。また、熱水処理は複数回繰り返してもよ
い。上記熱水処理は殺菌効果もあり、従来行われていた
蒸煮は、種子が水蒸気にさらされるだけであったが、熱
水処理は、種子が熱水に浸っている点で異なる。
【0020】油糧種子を熱水処理することによって、油
糧種子中の細胞間接着物質などが熱水に溶け出す。具体
的には、細胞間接着タンパク質、ガラクツロン酸、ヘミ
セルロース等が得られる。特に、大豆の熱水処理では、
上記の他、グリシン高含有タンパク質等が得られる。
【0021】このような熱水処理分離物は、必要に応じ
て、酸沈殿、酸アルコール洗浄、活性炭吸着、イオン交
換樹脂、UF膜等の公知の方法によってさらに精製され
る。
【0022】熱水処理された油糧種子は、細胞間接着物
質が溶解し、単細胞化され、その表面積が増大し、酵素
が作用しやすくなる。また、熱水処理された油糧種子
は、必要に応じて、物理的な力を加えることによってペ
ースト状とすることができる。力を加える方法として
は、ローラー、振動、攪拌する方法等が使用可能であ
る。
【0023】上記のように単細胞化された油糧種子は、
必要に応じて酵素処理される。酵素処理は、細胞壁溶解
酵素及び細胞壁溶解酵素とプロテアーゼとを併用するこ
とによって行う。細胞壁溶解酵素としては、セルラー
ゼ、ペクチナーゼ、マセラーゼ、ヘミセルラーゼなどが
例示される。好ましくはセルラーゼである。単細胞化処
理された油糧種子は、酵素処理より細胞壁等の基質に酵
素が作用し易くなるため、単細胞化処理をしない場合と
比較して、酵素処理条件が有利になる。単細胞化処理さ
れた種子を酵素処理すると、種子はプロトプラスト化さ
れ、さらに次の油脂回収工程において油脂を分離するの
が容易になる。また、プロテアーゼはオイルボディに作
用し、それに含まれる油を流動化するため、油脂を分離
する場合、細胞壁溶解酵素に加えてプロテアーゼを併用
することが好ましい。
【0024】上記酵素を用いた酵素処理は、適当な緩衝
液中で行うことが好ましい。緩衝液のpHは使用する酵
素に応じて適宜選択されるが、セルラーゼの場合、pH
3〜8、好ましくはpH4〜6である。酵素処理の温度及び
時間は、使用する酵素の種類や量、酵素非処理物の種類
や量等に応じて適宜選択されるが、0〜80℃、好ましく
は20〜40℃で、2〜48時間、好ましくは8〜15時間処理す
る。
【0025】油脂を製造する場合、上記のように単細胞
化処理された又は単細胞化処理後に酵素処理された種子
は、次に油脂を回収する工程に供される。油脂を回収す
る工程としては、圧搾法、遠心分離等の物理的方法、有
機溶媒抽出法等の化学的方法などが使用可能であるが、
酵素処理が行われる場合には酵素処理液から油脂を回収
する方法(単細胞化処理された油糧種子を含有する酵素
処理液を酵素処理時又は酵素処理後に撹拌し、その後遠
心処理等により油脂を浮遊させて回収する方法)なども
使用可能である。好ましくは、圧搾法又は有機溶媒抽出
法である。酵素処理液中に油脂が含まれている場合に
は、酵素処理液から油脂を回収し、酵素処理された油糧
種子から圧搾法又は有機溶媒抽出法で油脂を回収するこ
とが好ましい。圧搾法としては、従来の方法、装置が使
用可能である。有機溶媒抽出法において、溶媒として
は、ヘキサン、酢酸エチル、イソプロピルアルコール、
エタノール等の少なくとも一種が使用可能である。好ま
しくはヘキサンである。有機溶媒抽出の条件としては、
使用する溶媒の種類や量、非処理物の種類や量に応じて
適宜選択されるが、ヘキサンを用いる場合、0〜60℃、
好ましくは10〜20℃で5〜60分間、好ましくは、5〜30分
間、より好ましくは5〜20分間行われる。有機溶媒抽出
法に使用される有機溶媒としてはヘキサンが好ましい。
【0026】油脂を回収する工程として物理的方法を使
用する場合、単細胞化処理には水処理、熱水処理の順に
処理する方法が好ましい。水処理、熱水処理において種
子中の糖類、蛋白質が分離され、物理的方法(例えば圧
搾)時に油脂と糖類又は蛋白質とがエマルジョンを形成
しにくくなるからである。また、単細胞化処理に細胞間
接着物質を酵素で分解する方法を使用した場合、物理的
方法により油脂を回収する際に加える力は、単細胞化処
理しない従来の物理的方法(例えば圧搾)で加える力よ
り少なくてすむため、やはり油脂と蛋白質又は糖質との
エマルジョンの形成が抑制され、油脂、蛋白質、糖質の
分離に有利である。
【0027】また、油脂を回収する工程としての酵素処
理液から油を回収する方法(単細胞を含有する酵素処理
液を酵素処理時又は酵素処理後に撹拌し、その後遠心処
理等により油を浮遊させて回収する方法)の一例を述べ
る。単細胞処理後に酵素処理された細胞は細胞壁が除か
れ、細胞内に漏れ出た油は原形質膜によって細胞外へ出
ることはほとんどない。しかし、この細胞を含有する酵
素処理液に撹拌等の力を加えると原形質膜は容易に破
れ、細胞内に漏れ出ていた油が酵素処理液中に出てく
る。水処理又は熱水処理によって蛋白質がほとんど抽出
されているため、酵素処理液中に出た油はエマルジョン
化することがないので、酵素処理液を遠心処理等するこ
とによって容易に油を浮遊させ、回収することが可能で
ある。
【0028】本発明によれば、油糧種子に含まれる細胞
壁を得ることが可能である。単細胞化処理された油糧種
子を、適当なアルカリ水、例えば、0.1-1N程度の水酸
化ナトリウム等に、0〜100℃、好ましくは30〜80℃で、
10分間〜4時間、好ましくは30分間〜2時間浸漬すること
によって容易に得られる。
【0029】
【発明の効果】従来は油糧種子を圧搾(大豆の場合には
圧搾又は有機溶媒抽出)によって油脂と脱脂油糧種子を
得ていたが、本発明では単細胞化処理をすることによっ
て、単細胞化処理の過程で種々の蛋白質、糖類等を分離
でき、また油脂の分離条件を緩やかにすることが可能と
なる。特に従来の圧搾法では大豆油の分離が50-60%程
度であったものが、単細胞化処理をすることによって有
機溶媒抽出を行わなくても80-90%程度まで可能とな
る。また、有機溶媒抽出を行う場合でもその抽出時間、
温度を低く設定することが可能となり、工業的にも有利
である。さらに、有機溶媒抽出前に蛋白質、糖類等を分
離できるため、有機溶媒が蛋白質、糖類等に残存するこ
ともない。
【0030】
【実施例】以下、実施例をもってさらに具体的に説明す
るが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
なお、実施例中の%は特に記載のないかぎり%(W/W)表
す。
【0031】[実施例1] 水処理 種皮を除去し、4分割した大豆10.8グラムを水50mlに浸
漬し、4℃で一晩放置した。その後、大豆を濾別し、そ
の濾液を分析した。
【0032】蒸発乾固物:1.21g 蛋白質含量(Lowry法):0.44g 全糖(フェノール硫酸法):0.54g 還元糖(ソモギーネルソン法):0.02g ヘキサン抽出物:認めず。
【0033】[実施例2] 熱水処理 実施例1で得られた水処理大豆27.3gに水50ml加えて、1
21℃で、20分間熱処理を行った。処理された大豆を濾別
し、その濾液を実施例1と同様に分析した。また、本処
理により単細胞化された大豆細胞の顕微鏡写真を図1に
示す。
【0034】蒸発乾固物:2.73g 蛋白質含量(Lowry法):1.27g 全糖(フェノール硫酸法):0.52g 還元糖(ソモギーネルソン法):0.04g ヘキサン抽出物:認めず。
【0035】[実施例3] 酵素処理 実施例2で得られた熱水処理大豆5.5gに0.1M酢酸緩衝
液(pH5.0)を5.5ml加え、セルラーゼ(大和化成製、CM
C分解活性1000unit/ml)を1100マイクロリッター加え、4
0℃にて15時間、原形質膜が破れない程度にゆるやかに
撹拌しながら、放置した。酵素処理物は、濾紙にて濾過
し、その濾液を分析した。
【0036】蒸発乾固物:1.46g 蛋白質含量(Lowry法):0.76g 全糖(フェノール硫酸法):0.33g 還元糖(ソモギーネルソン法):0.08g ヘキサン抽出物:0.093g 酵素処理された大豆の重量は、種皮除去された大豆の37
%になっていた。この処理大豆の大豆油含油量は、ソッ
クスレー抽出器にてヘキサンを用いて油脂を抽出し、ヘ
キサンを減圧留去後、40℃にて恒量となった重量から計
算した結果43.4%(油脂の損失がなければ47.68%)で
あり、油脂の損失はほとんど認められなかった。酵素処
理された大豆細胞の顕微鏡写真を図2及び3に示す。細
胞内に観察される丸いものが油である。原形質膜が残っ
ているのでそのままでは漏れ出さないが、この状態で撹
拌すると原形質膜が破れ油は漏れ出す。
【0037】なお、同様にして、酵素非存在下の場合の
濾液を分析したところ、以下の結果が得られた。
【0038】蒸発乾固物:0.44g 蛋白質含量(Lowry法):0.09g 全糖(フェノール硫酸法):0.09g 還元糖(ソモギーネルソン法):認めず ヘキサン抽出物:0.01g。
【0039】還元糖、全糖の測定結果から、細胞壁分解
物の存在が認められず、細胞壁の分解が行われていない
ことがわかる。 [実施例4] 酵素処理物のヘキサン抽出 実施例3で得られたうち、酵素処理大豆の1gをヘキサン
5mlとともに5分間撹拌し、ヘキサン層を分離し、40℃に
て減圧乾固した。得られた大豆油は0.464gであった。
もとの種皮を除去した原料大豆の大豆油は別途ソックス
レー抽出器にてヘキサンを用い70℃、15時間の条件下、
抽出した結果17.66%の大豆油が得られた。この結果
と、大豆処理物の重量変化を考えると、抽出率は93.9%
であった。
【0040】[実施例5] 熱水処理物の圧搾 実施例2で得られた熱水処理大豆を40℃で減圧乾固さ
せ、これを圧搾し得られる大豆油の量を求めた。濾紙
(アドバンテック社製、No.2、直径5.5cm)2枚に熱水処
理大豆試料0.1gを乗せ、さらに同濾紙2枚を試料の上か
ら重ね、150kg/cm2の圧力を加え、5分間その状態を保
ち、濾紙から潰された試料を除去のち、大豆油のしみこ
んだ濾紙を40℃で3時間乾燥させ、室温で1時間放置した
のち、その重量を測定した。得られた大豆油は、0.0241
gであった。種皮除去大豆からの大豆油回収率は86.7%
であった。
【0041】[実施例6] 酵素処理物の圧搾 実施例2で得られた大豆を乾燥させたもの10g(実施例1
における種皮を除去した原料大豆15.75gに相当)を0.1
M酢酸緩衝液(pH5.0)を10ml加え、セルラーゼ(大和
化成製、CMC分解活性1000unit/ml)を400マイクロリッタ
ー加え、40℃にて15時間撹拌しながら、放置した。撹拌
により、原形質膜は機械的に破壊され、細胞内部より油
が漏洩した。この油を回収するため、この酵素処理液を
10000rpm,4℃, 10分間遠心処理し、漏洩した油0.9595g
(原料大豆に含まれる大豆油のうち34.5%)を回収し
た。さらに酵素処理大豆を40℃で減圧乾固させ、この酵
素処理乾燥大豆を圧搾して得られる大豆油の量を求め
た。すなわち、本酵素処理乾燥大豆試料0.1g(大豆油含
量40.04%)を実施例5と同様の方法で圧搾し、大豆油の
量を測定した。得られた大豆油は、0.0200gであった。
種皮除去大豆からの収率は、先に得られた、酵素処理時
の漏洩大豆油(大豆を酵素処理した処理液を撹拌するこ
とによって処理液中に出る大豆油34.5%)と合算して求
めると84.4%であった。
【0042】[比較例1]種皮を除去した大豆を1-2mmの大
きさに砕き、これを0.1gとり、実施例5と同様の方法で
圧搾したところ、得られた大豆油は0.0099gであった。
種皮除去大豆からの収率は56.1%であった。
【0043】[実施例7]種皮があり分割していない大豆
を、(1):水抽出(4℃、15時間浸積)したもの、(2):
(1)の後、121℃、10分間熱水処理したもの、(3):(2)の
後、種皮を除去し熱水処理(121℃、10分間)したも
の、(4):(3)の後、さらに大豆をナイフで四分割し熱
水処理したものについて、その抽出物を観察および分析
した。その結果、(1)の画分には、マルトースをはじめ
とする、短い重合度の糖が多く含まれ、(2)の画分に
は、マグネシウムイオンやカルシウムイオン、あるいは
希酸にてゲル化するタンパク質画分が多く含まれ、(3)
および(4)には、マグネシウムイオンやカルシウムイオ
ンではゲル化せず、希酸にて弱くあるいはきめ細かくゆ
っくりとゲル化し、その抽出液は発泡する性質が認めら
れた。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例2で単細胞化処理された大豆の細胞を示
す顕微鏡写真である。
【図2】実施例3でセルラーゼ処理された大豆の細胞を
示す顕微鏡写真である。
【図3】実施例3でセルラーゼ処理された大豆の細胞を
示す顕微鏡写真である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) A23K 1/16 303 A23K 1/16 303D 4H045 304 304C 4H059 B01D 11/02 B01D 11/02 A 11/04 11/04 C C07H 3/04 C07H 3/04 3/06 3/06 C07K 1/12 C07K 1/12 14/415 14/415 C11B 1/06 C11B 1/06 1/10 1/10 C12P 7/64 C12P 7/64 Fターム(参考) 2B150 BB03 CE07 CJ07 DC13 DC23 DD31 4B026 DG01 DG04 DG05 DL09 DP10 4B064 AD85 AG01 CA21 CD22 DA10 DA16 4C057 AA01 BB03 BB04 4D056 AB14 AC02 AC06 AC09 CA01 CA39 4H045 AA20 BA10 CA30 CA33 FA70 4H059 AA04 BA01 BA12 BA30 BB02 BC13 BC48 CA02 CA04 CA12

Claims (13)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】油糧種子を単細胞化処理し、油脂を回収す
    ることを特徴とする油脂の製造方法。
  2. 【請求項2】圧搾又は有機溶媒抽出によって油脂を回収
    することを特徴とする請求項1に記載の油脂の製造方
    法。
  3. 【請求項3】単細胞化処理された油糧種子を酵素処理す
    ることを特徴とする請求項1に記載の油脂の製造方法。
  4. 【請求項4】酵素処理液から油脂を回収し、酵素処理さ
    れた油糧種子から圧搾又は有機溶媒抽出によって油脂を
    回収することを特徴とする請求項3に記載の油脂の製造
    方法。
  5. 【請求項5】油糧種子が大豆又は菜種である請求項1〜
    4のいずれかに記載の油脂の製造方法。
  6. 【請求項6】油糧種子が大豆である請求項1〜4のいず
    れかに記載の油脂の製造方法。
  7. 【請求項7】酵素処理に使用される酵素が細胞壁溶解酵
    素であることを特徴とする請求項3又は4に記載の油脂
    の製造方法。
  8. 【請求項8】酵素処理に使用される酵素が細胞壁溶解酵
    素及びプロテアーゼであることを特徴とする請求項3又
    は4に記載の油脂の製造方法。
  9. 【請求項9】細胞壁溶解酵素がセルラーゼであることを
    特徴とする請求項7又は8に記載の油脂の製造方法。
  10. 【請求項10】油糧種子を単細胞化処理することを特徴
    とする蛋白質又は糖類の製造方法。
  11. 【請求項11】油糧種子が大豆又は菜種である請求項1
    0に記載の蛋白質又は糖類の製造方法。
  12. 【請求項12】油糧種子が大豆である請求項10に記載
    の蛋白質又は糖類の製造方法。
  13. 【請求項13】油糧種子を単細胞化処理することを特徴
    とする細胞壁の製造方法。
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