JP4330312B2 - オイルボディ及び油脂の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、オイルボディ及び油脂の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
油糧種子から油脂を製造する方法としては、一般的には、圧搾法、溶剤抽出法、酵素法又はこれらの方法を併用する方法が使用されている。
圧搾法は、普通スクリュウ式プレス機が用いられるが、圧搾法ではどうしても粕に残留する油が多いので、ごま、カカオ豆など油分の多いものに用いられている。
菜種、綿実などでは、先ず、予備圧搾で油分をある程度搾って、含有率20%ぐらいまでにした後、溶剤抽出するのが一般的である。
また、大豆など油分が少ないものは、溶剤抽出法が利用されている。溶剤抽出法における溶剤としては、通常ヘキサンが用いられている。
【0003】
例えば、大豆は、大豆蛋白質と大豆油を含み、食用に供されており、極めて重要な食用油でありながら、大豆油の含油量が20%内外と少ないことから、通常は、ヘキサンなどの溶媒を用いる抽出法が用いられている。そして、抽出後の脱脂大豆(ミール)は、飼料のほか、みそ、醤油など伝統的な大豆発酵食品にも幅広く使われている。
このように、溶媒抽出法は、効率のよい方法であるが、溶剤(ヘキサン)の回収が必要になる。
現実的な問題として、ヘキサンは、極めて引火性、爆発性に富む溶媒であることから、その取り扱い設備は高度のものが要求される。
【0004】
そこで、上記の問題を発生させないよう、溶剤を使用しない油脂の製造法が研究されている。例えば、落花生種子乳濁液を、セルラーゼ、又はセルラーゼ及びペクチナーゼ混合物を用いて処理して、油脂分と蛋白質分を製造する方法(特開平4−84861)、オリーブ果実にセルラーゼ又はセルラーゼとプロテアーゼを添加し、撹拌反応した後、溶出したオリーブ油を分離する方法(特開平5−59390)等が挙げられる。
【0005】
ところで、油糧種子の油貯蓄形態は、種子中にオイルボディと呼ばれるものに蓄えられている。オイルボディは、0.5〜5μmの大きさであり、オレオシン蛋白やリン脂質が油を抱合する組織形態であるとされている(Murphy et.al.Trends in Biochemical Sciences ,Voll.24,Issue 3, 1 March 1999,109-115)。
従って、油脂の製造において、この「オイルボディ」の存在状態が重要であり、更にこれを採取した時の品質が製造効率を左右する。
【0006】
オリーブや油ヤシ等のように中果皮に存在する油脂と、大豆、菜種、ひまわり、ごま等の油糧種子中の「オイルボディ」と称される小器管に存在する油脂とは、その存在状態が著しく異なっている。
酵素的処理を適用した場合、オリーブなどの中果皮に含まれる中性油は容易に抽出することができる。しかし、「オイルボディ」と称される小器管に貯蔵油脂として存在する油脂を酵素的処理すると、該処理により、中性油、リン脂質、塩基性蛋白質、貯蔵蛋白質及びこれらの部分分解物等の成分に分解され、その結果、該成分によって乳化物が形成され、一旦形成された乳化物を含む組成物から油脂と蛋白質を分別することが極めて困難な事態となる。このような乳化現象は、含油量が少なく、蛋白質が多い、大豆等のような油糧種子の場合に、特に生起する可能性が高い。
【0007】
そこで、このようなエマルジョン現象を防止し、油脂と蛋白質との分離を容易にする方法が研究されている。このような方法としては、例えば、油糧種子に担子菌類または子嚢菌類の子実体を収穫後の菌根部分からの水抽出液を添加して反応させる方法(特開平9−316483)、油糧種子の水抽出物に、油脂を蛋白質の一部と凝集させる作用を有する物質を加え、油脂含有率45%以上の油脂・蛋白質複合物を凝集物として沈降もしくは浮上させ、これを回収して未変性蛋白質と分離する方法(特開平11−56248)、該方法において、油糧種子の水抽出物に1価カチオンを添加し、溶液のpHをアルカリ性とした後に、これを40〜50℃に加温し、0.5〜4時間保温した後、生じた浮上凝集物を、該抽出物中の中性油脂含有率70%以上の高濃度油脂含有物として回収する方法(特開2002−20781)等がある。
【0008】
しかし、何れも、油糧種子から高品質のオイルボディを得る方法ではない。
例えば、上記の最後の方法(特開2002−20781)は、出発物質が豆乳であり、この時点で大豆原料油分の約2割が損失しているため、オイルボディ及び油脂の製造としては、完全なものとは言えない。また、同時に抽出された蛋白質を食品として用いる場合、脱塩工程が必要となり、この点からみても、好ましい方法とは言えない。
従って、油糧種子から、エマルジョンを形成させることなく、高品質のオイルボディを製造する方法の開発が待たれているのが現状である。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、油糧種子から、溶剤を使用しない方法により、エマルジョンを形成させずに、高品質のオイルボディを製造する方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決するため鋭意研究を重ねたところ、通常では、油糧種子中のオイルボディをそのままの形で分離することは困難であるが、特定の方法を組み合わせれば、該オイルボディをそのままの形で多量に含むオイルボディ含有物を得ることが可能であることを見出し、更に研究を重ねた結果、遂に本発明を完成した。
【0011】
即ち、本発明の構成は、以下の通りである。
1.油糧種子を熱水処理により単細胞化処理した後、セルラーゼにより一次細胞壁分解処理し、次いでペクチナーゼにより二次細胞壁分解処理することを特徴とするオイルボディの製造方法。
2.上記1記載のオイルボディから油脂を分離することを特徴とする油脂の製造方法。
3.オイルボディからの油脂の分離が、圧搾法及び/又は溶剤抽出法によるものである上記2記載の油脂の製造方法。
4.油糧種子が大豆である上記1記載のオイルボディの製造方法。
5.油糧種子が大豆である上記2又は3記載の油脂の製造方法。
【0012】
本発明のオイルボディとは、蛋白質とリン脂質からなる膜内に油脂を包含する、マイクロカプセル状のものであり、或いは、マイクロカプセル状のものを多量に含み、その他、糖質、蛋白質などが存在しているものを言う。
【0013】
本発明の特徴は、油糧種子を単細胞化処理した後、先ず、一次細胞壁分解酵素により一次細胞壁分解、次いで二次細胞壁分解酵素により二次細胞壁分解して、オイルボディを製造するものであって、細胞内のオイルボディを、そのままの形、即ち、マイクロカプセル状で分離する点にある。
本発明は、オイルボディ(油脂含量40%以上)を得るだけではなく、細胞内にオイルボディから滲み出て来ている油脂(18〜20%)をも、エマルジョン化させずに、分離する点において、優れた効果を奏するものである。
本発明は、油糧種子から油脂を分離するという技術的な視点からは、ほぼ完全に、その目的を達成していると言っても過言ではない。
本発明によれば、油脂をオイルボディとして分離、保存することが可能である。油脂の取得を目的とした場合、オイルボディから油脂を分離する必要があるが、該分離を、溶媒抽出によらずに、圧搾法等により分離する方法が好適である。
【0014】
一方、オイルボディからの油脂の分離を、圧搾法によらずに、溶剤抽出法を用いたとしても、従来法に比し、溶剤の使用量を低減することができる。
なぜならば、本発明では、オイルボディとして分離される油脂は、例えば大豆の場合、通常、種子中の油脂の約8割であり、また、本発明のオイルボディは、単細胞化され、しかも細胞壁や細胞膜も除去されているので、抽出効率は向上し、抽出溶剤は少なくて済む。
従って、従来法の溶剤抽出法に比し、抽出溶剤の使用量は大幅に少なくすることができる。
また、油脂を殆ど含まない蛋白質又は糖類を主成分とする抽出液が、副生成物として得られる点においても有利である。
【0015】
このように、本発明は、(1)熱水処理により単細胞化処理、(2)セルラーゼによる一次細胞壁分解処理、次いで(3)ペクチナーゼによる二次細胞壁分解処理という特定の手段を採用することにより、エマルジョンを形成せずに、高品質のオイルボディを効率よく製造することができるものである。
【0016】
以下、本発明について、更に詳細に説明する。
本発明の特徴は、油糧種子を熱水処理により単細胞化した後、先ず、セルラーゼによる一次細胞壁分解酵素により一次細胞壁分解、次いでペクチナーゼによる二次細胞壁分解酵素により二次細胞壁分解して、オイルボディを製造するものであって、細胞内のオイルボディを、そのままの形、即ち、マイクロカプセル状で得る点にあり、該オイルボディから油脂を分離することができる。
【0017】
本発明を実施するために必要な構成要件について、以下説明する。
(1)油糧種子
本発明において、油糧種子とは、植物の種子の内、工業的に油脂の製造に用いられるものをいうが、例としては、大豆、菜種、あまに、ひまわり、綿実、ゴマ、サフラワー、落花生、コーン、カカオ豆、ひまし、つばき種子等が挙げられる。好ましくは、大豆、菜種、コーンであり、さらに好ましくは大豆、菜種、より一層好ましくは大豆である。
本発明は、油糧種子の中で、比較的油分含量の少ないものにも適用することができる点に特徴を有するので、比較的油分含量の少ないもの、例えば、大豆を用いても好結果が得られる。
【0018】
(2)種子外皮除去
本発明では、次に述べるように、熱水処理による油糧種子の単細胞化を行うが、その前に、油糧種子の外皮を除去するのがよい。なぜならば、脱皮により、種子表面積が増加するとともに、種子内の蛋白質等が熱水処理で抽出され易くなるからである。
種子の外皮を除去する操作は、従来の機械的な方法が採用し得る。場合によっては、種子を2〜8分割程度に機械的に割り、その後、物理的な振動を与えて、外皮と種子本体との分離を行うこともできる。
【0019】
(3)単細胞化
本発明では、先ず、油糧種子の単細胞化を行う必要がある。単細胞化の主な目的は、その後の酵素処理をより効果的に行うためのものである。
このため、本発明の単細胞化は、油糧種子中の全細胞が完全に単細胞化されていることが望ましいが、細胞のいくつかが他の細胞と接触していてもかまわない。好ましくは、完全に単細胞化された細胞が60%以上であり、更に好ましくは80%以上である。
【0020】
単細胞化手段としては、熱水処理を採用する必要がある。
熱水処理は、油糧種子を、必要とする水温に応じて加圧し、100〜150℃、好ましくは110〜130℃、種子の2倍容以上、好ましくは5倍容以上の熱水に種子を浸した状態で、10分間〜2時間、好ましくは10〜60分間、熱水の温度を維持しながら浸漬することにより行われる。抽出効果を上げるために、熱水を数回交換することが好ましい。また、熱水処理は複数回繰り返してもよい。上記熱水処理は殺菌効果もあり、従来行われている蒸煮は、種子が水蒸気にさらされるだけであったが、本発明における熱水処理は、種子が熱水に浸っている点で異なる。
【0021】
油糧種子を熱水処理することによって、油糧種子中の細胞間接着物質などが熱水に溶け出す。具体的には、細胞間接着タンパク質、ガラクツロン酸、ヘミセルロース等が溶出する。特に、大豆の熱水処理では、上記の他、グリシン高含有蛋白質が溶出する。また、熱水処理により、油糧種子中の蛋白質は軽度に変性する。
熱水処理された油糧種子は、細胞間接着物質が溶出し、単細胞化され、酵素と接触する表面積が増大し、酵素が作用し易くなる。また、熱水処理された油糧種子は、必要に応じて、オイルボディが破壊されない程度に物理的な力を加えることによってペースト状とすることができる。力を加える方法としては、ローラー、振動、撹拌する方法等が使用可能である。
【0022】
そして、熱水処理した場合、油糧種子から可溶性蛋白質や可溶性糖類が抽出されることになる。また、酵素処理によってさらに糖質が抽出され、その結果、酵素処理した後の生成液中の油脂は、エマルジョン化することがないので、目的のオイルボディの分離は容易となる。
また、熱水処理は、同時に殺菌効果も達成されるので、有利である。
このように、単細胞化方法として、熱水処理を採用する効果は大である。
【0023】
(4)細胞壁分解
細胞壁分解処理は、一次細胞壁を分解し、次いで二次細胞壁を分解することにより行う。一次細胞壁とは細胞の最外部を覆っている細胞壁であり、二次細胞壁とは一次細胞壁の内側に形成されているものである。
【0024】
一次細胞壁分解処理は、酵素を用いる方法が使用されるが、該酵素としては、セルラーゼを用いるのが好ましい。
酵素処理の条件は、酵素処理液のpHは、セルラーゼの場合、pH3〜8、好ましくはpH4〜6である。酵素処理の温度及び時間は、使用する酵素及び被処理物の種類や量に応じて適宜選択されるが、0〜80℃、好ましくは20〜60℃、2〜48時間、好ましくは8〜15時間処理するのがよい。
【0025】
一次細胞壁が除去された単細胞は、更に残る二次細胞壁で覆われている(図1−A)。オイルボディは、この二次細胞壁内に存在するため(図1−C)、オイルボディを得るためには、オイルボディを形成している膜は分解せず、この二次細胞壁だけを選択的に分解する必要がある。
なぜならば、二次細胞壁の分解と同時にオイルボディを形成している膜まで分解すると、油脂、オイルボディの膜成分(蛋白質やリン脂質等)の分解物等がエマルジョンを形成し、油脂の分離が困難になるからである。また、オイルボディから滲み出たと考えられる浮遊の油脂(図1−B)もエマルジョンを形成することなく分離する必要がある。
従って、本発明の選択的な二次細胞壁分解処理は、酵素を用いる方法がよいが、該酵素としては、選択的に二次細胞壁を分解する作用を有するものであれば、如何なるものも使用可能である。例えば、ペクチナーゼを用いるのがよい。
この場合の酵素処理条件は、上記の一次細胞壁分解に使用される酵素処理条件と同様な条件で行うことができる。
【0026】
(5)オイルボディの分離
上記の二次細胞壁分解処理した後には、上層が油脂からなる層及び下層がオイルボディからなる層によって形成された生成物が得られるが、本生成物は、従来のように、エマルジョンを形成していないので、従来のように、特殊な手段を用いなくても、通常の分離手段、例えば、濾過や遠心分離等によって、オイルボディを簡単に分離取得することができる。このようにして得たオイルボディは、更に、噴霧又は凍結乾燥等により、高品質の粉末状のものにすることができる。
【0027】
(6)油脂の分離
本発明の酵素処理後の生成物は、上層が油脂からなる層及び下層がオイルボディからなる層によって形成された生成物として得られる。
本発明の油糧種子中の油脂の取得形態をみると、通常、該油脂の約20%がオイルボディ外の油脂として、その他の約80%の油脂は、オイルボディ内の油脂(油脂含有率40%以上)として取得される。
【0028】
従って、油脂の取得を目的とした場合、オイルボディ外の油脂の取得は特に問題がないが、オイルボディ内の油脂はこれを分離する必要があるが、このオイルボディからの油脂分離は、エマルジョンを形成しない方法さえ採用すれば、特に問題なく行うことができる。例えば、圧搾法や溶剤抽出法等を採用すればよい。
例えば、大豆の場合、オイルボディからの油脂の回収率は、圧搾法では90%程度、溶剤抽出法では、95%以上であった。
従って、本発明による、油糧種子からの油脂の採油率は、総合的にみても、非常に高い結果となる。
【0029】
(7)用途
本発明のオイルボディは、0.5〜5μmの大きさで、オレオシンタンパクとリン脂質からなる膜内に油脂を包含するものである。
このように、オイルボディは、蛋白質と油脂からなるものであるため、栄養学的にみても、非常に価値があるとともに、その形態がマイクロカプセル状である点、非常に興味のあるものと言える。しかし、残念ながら、このオイルボディを安全且つ高品質なものとして容易に得る、技術は、今までなかったので、その用途も限られていた。
しかしながら、本発明において、容易に、オイルボディを安全且つ高品質なものとして得ることが可能となったので、その利用の発展が期待し得る。
【0030】
用途としては、例えば、食品用、医薬品用、化粧品用、飼料用の添加剤や栄養剤等が考えられる。
最近、油脂及び蛋白質を含有する栄養剤が注目されている。しかし、従来のこれら栄養剤は、遊離の油脂を含むため、嗜好性に欠ける欠点があった。
これに対して、本発明のオイルボディは蛋白質等からなる膜で覆われているため、これを栄養剤とした場合、従来のような、嗜好性に欠けるという欠点は全くなくなり、有利である。
そして、本発明のオイルボディは、蛋白質とリン脂質からなる膜で形成されているので、蛋白質や脂質からなるものに対し、なじみ易く配合性がよいし、また、噴霧又は凍結乾燥等により、粉末状で得られるので、流動性がよい等の点で、加工性においても優れている。
【0031】
【発明の実施の形態】
以下、実施例をもって更に具体的に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【0032】
【実施例1】
大豆種皮を除去し、4分割に割砕した大豆500gに、水2500mlを加え、121℃で、10分間、オートクレーブ中で熱水処理を行った。次いで、濾紙で濾過して、熱水処理された大豆を湿重で1556g(乾燥重量487g)得た。
【0033】
このものに、新たに、水1000mlを加え、ヘラで押し漬して、ペースト状にした後、セルラーゼ(セルラーゼT「アマノ4」、天野エンザイム社製)を10g加え、反応温度40℃で、12hr、スターラーで穏やかに撹拌しながら酵素処理を行った。反応終了後、反応液を遠心処理し、沈澱部を回収した(湿重1060g、乾燥重量414g)。
【0034】
その後、更に水1000mlを加え、ペクチナーゼ(ペクチネックス、ノボザイムズ社製)10gを加え、反応温度40℃、12hr、スターラーで穏やかに撹拌しながら酵素処理を行った。反応終了後、得られた反応液を遠心処理(3000rpm×10min)し、大豆細胞内に存在し、オイルボディ内には存在しない大豆油を黄色の油滴として浮遊させ、19.0g回収した。この時、水層は乳化しなかった。また、得られた遠心沈澱物(湿重884g)を凍結乾燥させ、オイルボディ207gを得た。このものの含油率は、別途ソックスレー抽出機でヘキサンを用いて測定した結果、40.3%(原料大豆油分の79.8%)であった。
【0035】
また、得られたオイルボディを、簡易ジャッキを用いて150kg/cm2、5分間圧搾したところ、大豆油を収率90.2%(原料大豆油分の72.0%)で回収できた。
以上の結果、遊離採油した油(大豆細胞内に存在し、オイルボディ内には存在しない)とオイルボディから搾油した油の収量を合計すると、大豆からの採油率は90.2%となった。
【0036】
【比較例1】
(熱水処理を行わず、しかも酵素処理を同時に行った場合)
大豆種皮を除去し、ミキサーにて粉砕した大豆500gに水2500mlを加えた後、セルラーゼ(セルラーゼT「アマノ4」、天野エンザイム社製)10g、及びペクチナーゼ(ペクチネックス、ノボザイムズ社製)10gを加え、反応温度40℃、12hr、スターラーで穏やかに撹拌しながら酵素処理を行った。反応終了後、この反応液を遠心処理(3000rpm×10min )したが、上層に油は分離せず、水層は乳化した。
【0037】
上記の遠心処理により、沈澱物を湿重1110g(乾燥重量437g)回収し、その油分を測定した結果、19.2%(原料大豆油分の80.3%)であった。
また、このものを、簡易ジャッキを用いて150kg/cm2、5分間圧搾したところ、大豆油の採油率は、69.3%(原料大豆油分の55.6%)であった。
【0038】
【比較例2】
(熱水処理は行ったが、酵素処理を同時に行った場合)
実施例1と同様の操作でペーストを作製し、セルラーゼ(セルラーゼT「アマノ4」、天野エンザイム社製)10g、及びペクチナーゼ(ペクチネックス、ノボザイムズ社製)10gを加え、反応温度40℃、12hr、スターラーで穏やかに撹拌しながら行った。反応終了後、この反応液を遠心処理(3000rpm×10min )したが、上層に油は分離せず、水層は乳化した。
【0039】
上記の遠心処理により、沈澱物を湿重884g(乾燥重量209g)回収し、その油分を測定した結果、38.8%(原料大豆油分の77.5%)であった。
また、このものを、簡易ジャッキを用いて150kg/cm2、5分間圧搾したところ、大豆油の採油率は、87.7%(原料大豆油分の68.0%)であった。
【0040】
以上の実施例と比較例の結果から、本発明においては、熱水処理による単細胞化後、セルラーゼ処理による一次細胞壁分解、次いでペクチナーゼ処理による二次細胞壁分解を行うことは必須の要件であることが分かる。
【0041】
【発明の効果】
(1)本発明では、製造工程中にエマルジョンが形成しないので、油糧種子から高品質のオイルボディを効率よく製造することができる。
【0042】
(2)本発明では、油糧種子中の油脂は、その殆どが、上層の油滴及び下層のオイルボディ内に存在するので、オイルボディからの油脂の分離法にもよるが、その損失は殆どない。
【0043】
(3)従来では、油脂含量が比較的少ない油糧種子に対しては、溶剤抽出法が使用されているが、本方法は、油脂含量が比較的少ない油糧種子(大豆等)にも好適に採用し得る。
【0044】
(4)従って、オイルボディからの油脂の分離は、簡単な方法で行うことができることを合わせ考えると、本発明は、油糧種子から油脂を製造する方法として、非常に優れた方法であるといえる。
【0045】
(5)本発明では、全く有機溶剤を使用しないで、油糧種子から油脂の採油が可能であるから、本発明は、無溶剤法であるということができ、安全性の面からも優れている。
また、オイルボディからの油脂の分離を、溶剤抽出法を用いた場合、厳密には、無溶剤法とは言えないかもしれないが、前述したように、本発明のオイルボディは、単細胞化され、しかも細胞壁が除去されているので、抽出効率は向上するので、抽出溶剤は少なくて済む等の理由で、従来法の溶剤抽出法に比し、抽出溶剤の使用量は大幅に少なくて済む。
【0046】
(6)本発明のオイルボディは、安全且つ高品質で容易に得られので、食品用、医薬品用、化粧品用、飼料用等の添加剤や栄養剤として利用し得る。その場合、内部に油脂を含有するマイクロカプセル状のため、嗜好性の点で欠点がない。
【0047】
(7)本発明のオイルボディは、蛋白質とリン脂質からなる膜で形成されているので、蛋白質や脂質からなるものに対し、なじみ易く、配合性がよいし、また、噴霧又は凍結乾燥等により、粉末状で得られ、流動性がよいので、加工性の点においても優れている。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の二次細胞壁で覆われた単細胞の写真である。
【符号の説明】
A 二次細胞壁
B オイルボディ外の油脂
C オイルボディ
Claims (5)
- 油糧種子を熱水処理により単細胞化処理した後、セルラーゼにより一次細胞壁分解処理し、次いでペクチナーゼにより二次細胞壁分解処理することを特徴とするオイルボディの製造方法。
- 請求項1記載のオイルボディから油脂を分離することを特徴とする油脂の製造方法。
- オイルボディからの油脂の分離が、圧搾法及び/又は溶剤抽出法によるものである請求項2記載の油脂の製造方法。
- 油糧種子が大豆である請求項1記載のオイルボディの製造方法。
- 油糧種子が大豆である請求項2又は3記載の油脂の製造方法。
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