JP2002249501A - 光反応性ヒアルロン酸およびその製造方法ならびに光架橋ヒアルロン酸および医用材料 - Google Patents

光反応性ヒアルロン酸およびその製造方法ならびに光架橋ヒアルロン酸および医用材料

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Abstract

(57)【要約】 【課題】親水性が高められ、その水性溶液の濾過性が改
善された光反応性ヒアルロン酸を提供する。 【解決手段】ヒアルロン酸と光架橋基とが結合した光反
応性ヒアルロン酸であって、固形の状態の光反応性ヒア
ルロン酸を1.0重量%で水性溶媒に溶解して得られる
水性溶液が24℃の温度条件下、5.0Kg/cm2
加圧下で多孔質フィルター(孔径(ポアサイズ)が0.
45μmで直径が25mm)を1分間に2ml以上通過
可能であることを特徴とする光反応性ヒアルロン酸。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、光反応性ヒアルロ
ン酸およびその製造方法ならびに光架橋ヒアルロン酸お
よび医用材料に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、ヒアルロン酸の生体内での滞
留性を高めるために、ヒアルロン酸を架橋させて生分解
性を制御する技術が知られている(特表平3−5037
04号公報など)。先に、簡便な操作で架橋することが
可能で、未反応の架橋基の除去を容易として安全性を担
保した、光反応性残基を有する架橋基(光架橋基)を使
用して架橋する方法が提案されている(特開平6−73
102号公報、同8−143604号公報、同9−86
336号公報)。
【0003】ところで、ヒアルロン酸に光架橋基を結合
させて光反応性ヒアルロンに変換すると、ヒアルロン酸
のヒドロキシル基やカルボキシル基に光架橋基が置換す
るため、ヒアルロン酸が本来有している親水性の低下を
伴う。そして、光反応性ヒアルロン酸の親水性の低下
は、その水性溶液中における分子分散特性に影響を及ぼ
す。ところが、光反応性ヒアルロン酸を光架橋して医薬
や医療用具として使用するに際し、予めその水性溶液を
マイクロフィルター等により濾過し、水性溶液の滅菌、
除菌、異物除去などを行うことが望ましく、そのために
は、光反応性ヒアルロン酸が十分に溶解した水性溶液を
調製する必要がある。従って、光反応性ヒアルロン酸に
変換した際に惹起される親水性の低下は好ましいことで
はない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記実情に
鑑みなされたものであり、その目的は、親水性が高めら
れ、その水性溶液の濾過性が改善された光反応性ヒアル
ロン酸およびその製造方法を提供することにある。ま
た、本発明の他の目的は、上記の光反応性ヒアルロン酸
を光架橋して得られる光架橋ヒアルロン酸およびそれを
含む医用材料を提供することにある。
【0005】本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、ヒ
アルロン酸に光架橋基を結合した光反応性ヒアルロン酸
は、例えば炭酸水素ナトリウム等のアルカリによる処理
でその親水性が高められるとの意外な知見を得た。アル
カリ処理された光反応性ヒアルロン酸は、未処理の光反
応性ヒアルロン酸に比し、親水性が高いため、その水性
溶液中における分子分散特性が高いと言う意外な物性的
特徴を備えている。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記の知見に
基づき達成されたものであり、複数の発明から成り、各
発明の要旨は次の通りである。
【0007】本発明の第1の要旨は、ヒアルロン酸と光
架橋基とが結合した光反応性ヒアルロン酸であって、固
形の状態の光反応性ヒアルロン酸を1.0重量%で水性
溶媒に溶解して得られる水性溶液が24℃の温度条件
下、5.0Kg/cm2の加圧下で多孔質フィルター
(孔径(ポアサイズ)が0.45μmで直径が25m
m)を1分間に2ml以上通過可能であることを特徴と
する光反応性ヒアルロン酸に存する。
【0008】本発明の第2の要旨は、光架橋基が結合し
たヒアルロン酸の水性溶液をアルカリで処理することを
特徴とする光反応性ヒアルロン酸の製造法に存する。
【0009】本発明の第3の要旨は、前記の光反応性ヒ
アルロン酸に紫外線を照射して得られることを特徴とす
る光架橋ヒアルロン酸に存する。
【0010】本発明の第4の要旨は、前記の光反応性ヒ
アルロン酸の水性溶液に紫外線を照射して得られる光架
橋ヒアルロン酸溶液であって、濃度1.0重量%で温度
24℃の条件下において、23ゲージの注射針より水平
方向から45°の斜め下方に向けて0.2ml/秒の速
度で押し出した際、切れることなく3cm以上の長さの
ものが注射針先端開口部から垂れ下がる性質(高曳糸
性)を有していることを特徴とする光架橋ヒアルロン酸
溶液に存する。
【0011】本発明の第5の要旨は、上記の光反応性ヒ
アルロン酸を含む医用材料に存し、そして、本発明の第
6の要旨は、上記の光架橋ヒアルロン酸を含む医用材料
に存する。
【0012】
【発明の実施の形態】以下、本発明を詳細に説明する。
先ず、説明の便宜上、本発明の光反応性ヒアルロン酸の
製造法について説明する。
【0013】本発明においては、光架橋基が結合したヒ
アルロン酸の水性溶液をアルカリ処理することで光反応
性ヒアルロン酸を得ることが出来る。
【0014】ヒアルロン酸の由来は、特に限定されない
が、一般的には天然物、好ましくは脊椎動物または微生
物由来である。ヒアルロン酸の重量平均分子量は、通常
は概ね40万〜1000万、好ましくは60万〜600
万である。また、そのカルボキシル基は、塩の形態でも
よく、この際、アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属
塩の何れの形でもよいが、特にナトリウム塩またはカリ
ウム塩が好ましい。
【0015】光架橋基(すなわち光反応性残基を有する
架橋基)のヒアルロン酸における結合部位(ヒアルロン
酸の官能基)は、光架橋基の導入反応の容易性からカル
ボキシル基の方が好ましいが、ヒドロキシル基であって
もよい。光反応性残基としては、紫外線照射によって光
二量化反応または光重合反応を生じる化合物の残基であ
ればよく、その化合物の具体例としては、ケイ皮酸、置
換ケイ皮酸(例えばアミノケイ皮酸(ベンゼン環のいず
れかの水素がアミノ基に置換したケイ皮酸:好ましくは
p−アミノケイ皮酸)、アクリル酸、マレイン酸、フマ
ル酸、ソルビン酸、クマリン、チミン等が挙げられる。
これらの中では、光によりシクロブタン環を形成可能な
ビニレン基を有したものであることが好ましく光反応性
および安全性の面からケイ皮酸又は置換ケイ皮酸(特に
アミノケイ皮酸)が好ましい。また、光反応性残基のヒ
アルロン酸に対する影響を極力低下させるために光架橋
基がスペーサーを含んでいて、該スペーサーを介してヒ
アルロン酸に結合していることが好ましい。従って、ケ
イ皮酸又は置換ケイ皮酸にスペーサーが結合した誘導体
が光架橋基としては最も好ましい。
【0016】上記の最も好ましい光架橋基としては、例
えば、ケイ皮酸のカルボキシル基にアミノアルコール
(H2N−(CH2n−OH:n=1〜18、H2N−(CH2−O)m
−CH2 −OH:m=1〜9)がエステル結合したケイ皮酸
アミノアルキルエステル誘導体、(Ph−CH=CH−
CO−O−(CH2n−NH2,Ph−CH=CH−C
O−O−CH2−(OCH2m−NH2:n、mは上記と
同じ、Phはフェニル基を表す)、ジアミン(H2N−(C
H2l−NH2:l=1〜10)、ジオール(HO−(CH2k
−OH:k=1〜10)が導入された誘導体、(Ph−C
H=CH−CO−NH−(CH2l−NH2,Ph−C
H=CH−CO−O−(CH2k−OH:l、k、Ph
は上記と同じ)、アミノ酸(HOOC−(CHR)j−NH2:j
=1〜10、Rはアミノ酸の側鎖を示す)、ペプチド等
を置換ケイ皮酸(アミノケイ皮酸)に導入した誘導体
(OC−CH=CH−Ph−NH−CO−(CH
R)j、OC−CH=CH−Ph−NH−(ペプチ
ド):R、j、Phは上記と同じ)等が挙げられるが、
好ましくはケイ皮酸のカルボキシル基にアミノアルコー
ルが導入された誘導体(ケイ皮酸アミノアルキルエステ
ル)であり、アミノアルコールは上記一般式においてn
が1〜18が好ましく、特に3〜6が好ましく、3〜4
が極めて好ましい。特にケイ皮酸アミノアルキルエステ
ルを光架橋基として使用する場合には、アミノアルキル
のアミノ基とヒアルロン酸のカルボキシル基とがアミド
結合することによって光架橋基がヒアルロン酸に結合さ
れる。
【0017】光架橋基が結合したヒアルロン酸を得る方
法としては、例えば、水溶性カルボジイミド(例えば、
1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カル
ボジイミド塩酸塩(EDCI・HCl)、1−シクロヘ
キシル−3−(2−モルホリノエチル)カルボジイミド
−メト−p−トルエンスルホネート、1−シクロヘキシ
ル−3−(2−モルホリノエチルカルボジイミド塩酸塩
など)等の水溶性の縮合剤を使用する方法、N−ヒドロ
キシコハク酸イミド(HOSu)やN−ヒドロキシベン
ゾトリアゾール(HOBt)等の縮合補助剤と上記の縮
合剤とを使用する方法、活性エステル法、酸無水物法な
どが挙げられる。これらの中では、水性媒体の存在下の
反応として、水溶性の縮合剤を使用する方法または反応
補助剤と水溶性の縮合剤とを使用する方法が好ましい。
水性媒体としては、水の単独溶媒の他、水と水可溶性有
機溶媒、例えば、ジオキサン、ジメチルホルムアミド
(DMF)、アセトン、アルコール(メタノール、エタ
ノール等)等との混合溶媒が挙げられる。
【0018】なお、本発明におけるヒアルロン酸への光
架橋基の導入率(実施例記載の方法により測定すること
が出来る)は、0.3〜30%、好ましくは1〜20
%、最も好ましくは2〜10%であり、この値は反応さ
せるヒアルロン酸のモル数と光架橋基のモル数とを調節
することにより、適宜変更、調節することが可能であ
る。この様な光反応性ヒアルロン酸の分子量は、光架橋
基の導入率によって変化するが、概ね40万〜1000
万、好ましくは60万〜600万となる。
【0019】光架橋基が結合したヒアルロン酸の水性溶
液、好ましくはヒアルロン酸に光架橋基を導入する反応
を行った後の反応液をアルカリで処理して光反応性ヒア
ルロン酸の水性溶液を得ることが出来る。アルカリの種
類は、特に制限されず、有機塩基または無機塩基のいず
れでもよい。しかしながら、水性媒体中での処理を考慮
すれば無機塩基の方が好ましい。そして、無機塩基の中
では、ヒアルロン酸の低分子化や架橋基の分解などに影
響を及ぼす恐れがない点で水酸化ナトリウムの様な強ア
ルカリよりも炭酸水素ナトリウムや炭酸ナトリウムの様
な弱アルカリの方が好ましい。ここで、アルカリ処理の
pH条件は、7.2〜11、好ましくは7.5〜10が例
示される。
【0020】アルカリの使用量や処理時間は目的とする
親水性の程度(すなわち後述のフィルター通過性の有
無)に応じて適宜調節される。例えばヒアルロン酸1g
相当量に対し炭酸水素ナトリウム500mg(ヒアルロ
ン酸のモル数に対して10倍量以上)を使用する場合は
2〜3時間撹拌処理することにより親水性が十分に高め
られた光反応性ヒアルロン酸が得られる。
【0021】上記の様にして調製された光反応ヒアルロ
ン酸は、場合により、酢酸などの有機酸または無機酸に
よる中和を行った後、エタノール沈殿、エタノール洗
浄、乾燥の各処理を適用することにより固体状態として
単離することが出来る。
【0022】次に、本発明の親水性が高められた光反応
性ヒアルロン酸について説明する。本発明の光反応性ヒ
アルロン酸の化学構造は、光架橋基を使用する前述の従
来技術によって得られた光反応性ヒアルロン酸と同じで
あるが、高次構造(立体構造)は異っていると考えら
れ、これは物性の相違に現れる。
【0023】従って、本発明の光反応性ヒアルロン酸
は、その水性溶液中における分子分散特性が高いという
物性によって従来の光反応性ヒアルロン酸と明確に区別
される。すなわち、本発明の光反応性ヒアルロン酸は、
固形の状態の光反応性ヒアルロン酸を1.0重量%で水
性溶媒に溶解して得られる水性溶液が24℃の温度条件
下、5.0Kg/cm2の加圧下で多孔質フィルター
(孔径(ポアサイズ)が0.45μmで直径が25m
m)を1分間に2ml以上通過可能であることを特徴と
し、このフィルター通過性の高さは上記の分子分散特性
の高さを示す。なお、上記フィルター通過性は、多孔質
フィルターを通過した前後の水性溶液中の光反応性ヒア
ルロン酸の濃度を比較することにより確認することが可
能であり、上記条件で本発明の光反応性ヒアルロン酸水
溶液を通過させた場合、通過前後で水性溶液中の光反応
性ヒアルロン酸の濃度の変化がない。そして、斯かる本
発明の光反応性ヒアルロン酸は次の様な主要な性質を備
えている。
【0024】光架橋基を使用する前述の従来技術によっ
て得られた光反応性ヒアルロン酸は、光架橋基の導入反
応後に、水性媒体反応液に対し、エタノール沈殿、エタ
ノール洗浄、乾燥の各処理を行うことによって固形物と
して得られる。ところが、これを水性媒体に再度溶解し
ようとすると、その溶解性は原料のヒアルロン酸より著
しく低く、時には十分に溶解しないことがある。この場
合は、勿論、前記の分子分散特性を確認するための多孔
質フィルター通過試験では全く通過しないという結果を
与える。これに対し、本発明の光反応性ヒアルロン酸の
場合、その溶解性は原料のヒアルロン酸とほぼ同等であ
り、水性媒体に再度溶解しようとした際に不溶化やゲル
化することがないので、フィルターを使用した除菌・殺
菌を容易に行なうことが出来る。この様な光反応性ヒア
ルロン酸は、そのまま術中または術後の癒着を防止する
ための医用材料(癒着防止材)、生体内の空間を保持す
るための医用材料(空間保持材)及び人工体液(人工関
節液、人工涙液、眼科用手術補助材など)として利用す
ることが出来、必要に応じて生体内において紫外線を照
射して光架橋させ、不溶化して使用することが出来る。
【0025】次に、本発明の光架橋ヒアルロン酸につい
て説明する。本発明の光架橋ヒアルロン酸(架橋物)
は、上記の本発明の光反応性ヒアルロン酸に紫外線を照
射することにより得られる。
【0026】本発明の親水性が高められた光反応性ヒア
ルロン酸は原料のヒアルロン酸と同等の溶解性を有して
いるため、紫外線照射の際、成形したい型に流し込んだ
り、シリンジ等の容器への充填を容易にすることが出来
る。また、本発明で使用する光反応性ヒアルロン酸は、
分子分散特性で説明した様に多孔質フィルターを容易に
通過することが出来るため、紫外線照射による架橋前に
濾過することにより、異物を除去したり、除菌や滅菌し
たりすることが出来、これを光架橋することにより、ク
リーンな光架橋ヒアルロン酸を容易に得ることが出来
る。
【0027】照射する紫外線としては、ヒアルロン酸の
グリコシド結合を切断せず且つ光架橋基に光架橋反応
(二量化)を生じさせる波長(例えば200〜600n
m)の紫外線が選択される。紫外線ランプとしては、高
圧水銀ランプ又はメタルハライドランプが好ましく、更
には、それらランプにより発生した紫外線の不要波長光
を例えばカットフィルターで除去することが好ましい。
カットフィルターとしては、専用の加工フィルターが好
ましいが、硬質ガラスでも十分に対応できる。
【0028】本発明の光架橋ヒアルロン酸は、その濃度
や架橋率により様々な形態を採り得る。ここで、光反応
により二量体を形成するケイ皮酸又は置換ケイ皮酸の様
な光反応性残基を使用する場合の架橋率は、ヒアルロン
に導入された光架橋基のモル数に対する二量体のモル数
の2倍の数の比(百分率)として表すことが出来る。
【0029】上記光架橋ヒアルロン酸の代表的な形態と
しては、不定形状態としては溶液またはゲルであり、定
形状態としては、弾性体(シート、フィルム、ペレッ
ト、チューブ等)の様々な形態を採り得る。そして、上
記の光架橋ヒアルロン酸ゲルは、原料(光反応性ヒアル
ロン酸の水性溶液)の濃度が1.0〜3.0重量%に高
められている場合に一層容易に得ることが出来る。ま
た、上記の弾性体は、高濃度(3.0〜10重量%)の
光反応性ヒアルロン酸に紫外線照射することにより得ら
れる。すなわち、上記の様な高濃度の光反応性ヒアルロ
ン酸の水性溶液を架橋すると、固形状態に近くなり、水
性媒体を含有した弾性体となる。なお、ゲルとは、あら
ゆる溶媒に不溶の三次元網目構造を持つ高分子およびそ
の膨潤体と定義されている(1988年11月25日、
朝倉書店発行「新版高分子辞典」、第129頁)が、本
明細書においては、温度24℃の条件下で、23ゲージ
の注射針から5.0Kg/cm2の押出圧により押出可
能なものを「溶液」、押出不可能のものを「ゲル」と定
義して使用する。
【0030】次に、本発明に係る高曳糸性を有する光架
橋ヒアルロン酸溶液について説明する。ここに高曳糸性
とは、専ら溶液が有する性質であり、濃度1.0重量%
の光架橋ヒアルロン酸溶液とした際、温度24℃の条件
下において、23ゲージの注射針より水平方向から45
°の斜め下方に向けて0.2ml/秒の速度で押し出し
た際、切れることなく3cm以上の長さのものが注射針
先端開口部から垂れ下がる性質を意味する。ヒアルロン
酸溶液は、ヒアルロン酸の高分子性により曳糸性を有す
るとされているが、上記の様な本発明の光架橋ヒアルロ
ン酸溶液の高曳糸性は従来のヒアルロン酸溶液の曳糸性
とは著しく異なる。上記の高曳糸性における、注射針先
端開口部から垂れ下がる長さは、好ましくは5cm以上
であり、更に好ましくは7cm以上である。一方、ヒア
ルロン酸の1.0重量%溶液の場合は、1cm未満であ
る。
【0031】上記の高曳糸性は、原料(光反応性ヒアル
ロン酸の水性溶液)の濃度や、これに紫外線を照射する
ことによって得られた架橋物(光架橋ヒアルロン酸溶
液)における架橋率を適切に調節することにより付与さ
れる。通常、濃度が0.1〜1.0重量%で架橋率が3
〜40%の範囲、好ましくは、濃度が0.3〜1.0重
量%で架橋率が4〜35%の範囲、更に好ましくは、濃
度が0.3〜1.0重量%で架橋率が5〜30%の範囲
とされる。
【0032】本発明の親水性が高められた光反応性ヒア
ルロン酸は、光架橋反応の効率がよく、高架橋率(10
%以上、好ましくは20%以上)にすることが容易であ
るため、光架橋ヒアルロン酸(溶液、ゲル、弾性体)と
した場合、通常のヒアルロン酸や従来の光架橋ヒアルロ
ン酸に比して高い耐熱性を有する。具体的には、医薬品
や医療用具での滅菌保証の一つの条件である121℃で
20分の湿熱滅菌を施してもその形状や高曳糸性を損な
うことがない。斯かる耐熱性は、より高い架橋率を有す
るもの程、高い傾向を示し、通常5〜70%(好ましく
は10〜80%)の架橋率の場合に高い耐熱性を示す。
【0033】通常、ヒアルロン酸は、耐熱性が低く、1
21℃の湿熱処理を施すとグルコシド結合の解裂が起
き、ヒアルロン酸は低分子化を起こし、高分子量のヒア
ルロン酸が有していた形状や性質は、ヒアルロン酸の低
分子化に伴って低減または消滅する。ところが、本発明
の光架橋ヒアルロン酸の持つ形状や性質は、熱によって
グルコシド結合が解裂しても低減または消失しない。す
なわち、ゲルの形状を有する光架橋ヒアルロン酸は、湿
熱滅菌後においてもゲルの形状を呈し、シート状の光架
橋ヒアルロン酸は、湿熱滅菌後においてもシート状態を
呈する。斯かる耐熱性は、光架橋によるグルコシド結合
以外の他の結合様式による分子間の結合によって生じる
3次元網目構造によるところが大きいと考えられる。こ
の様な光架橋ヒアルロン酸は、術中または術後の癒着を
防止するための医用材料(癒着防止材)、生体内の空間
を保持するための医用材料(空間保持材)及び人工体液
(人工関節液、人工涙液、眼科用手術補助材など)とし
て利用することが出来る。
【0034】
【実施例】以下、本発明を実施例により更に詳細に説明
するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実
施例に限定されるものではない。
【0035】(1)フィルター通過性試験:5mMリン
酸緩衝生理食塩水によって濃度が1.0重量%に調整さ
れた被検物質を調製する。24℃条件下5.0Kg/c
2の加圧下で多孔質フィルター(孔径が0.45μmで
直径が25mm)に上記の被検物質を通過させ、1分間
当たりの通過量(ml)を測定する。2ml以上通過し
た場合を○、2ml未満通過した場合を△、通過しない
場合をラで表す。
【0036】(2)形状試験:温度24℃の条件下にお
いて、23ゲージの注射針(25mm)を備えた5ml
シリンジに被検物質(24℃)を充填し、5.0Kg/
cm2の押出圧により押し出す。押出可能なものを溶
液、押出不可能のものをゲルとする。
【0037】(3)曳糸性評価試験:5mMリン酸緩衝
生理食塩水によって濃度が1.0重量%に調整された被
検物質を調製する。温度24℃の条件下において、23
ゲージの注射針(25mm)を備えた5mlシリンジに
被検物質(24℃)を充填し、水平方向から45°の斜
め下方に向けて0.2ml/秒の速度で押し出す。被検
物質が切れることなく注射針から垂れ下がった長さを測
定する。長さが7cm以上の場合を++、長さが3cm
以上で7cm未満の場合を+、長さが3cm未満の場合
を−で表した。
【0038】(4)架橋剤の導入率:架橋剤の導入率
は、ヒアルロン酸の繰り返し二糖単位当たりに導入され
た光架橋基の数を百分率で表した値を意味する。導入率
の算出に必要なヒアルロン酸の量は、検量線を利用した
カルバゾール測定法により測定し、光架橋基の光反応性
残基としてケイ皮酸又はアミノケイ皮酸を使用した場合
のケイ皮酸の量は、検量線を利用した吸光度測定法(測
定波長269nm)により測定した。
【0039】(5)架橋率:架橋率は、1M水酸化ナト
リウム1mlで被検物質1gを1時間鹸化した後、得ら
れた溶液を酸性にして酢酸エチルで光架橋基由来物(単
量体、二量体)を抽出し、HPLCにより解析し、検量
線法によって二量体の量を測定する。そして、ヒアルロ
ン酸に導入された光架橋基に対する二量体となった光架
橋基のモル数を百分率で算出した。
【0040】(6)粘度:E型回転粘度計を使用し、3
℃×R14、1ppm(25℃)の条件で測定し、Pa
・sで表す。
【0041】実施例1(アミノケイ皮酸誘導体結合ヒア
ルロン酸) 重量平均分子量約90万のヒアルロン酸ナトリウム40
0mgを水60mLに溶解させ、ジオキサン30mLを
加えて撹拌した。室温でN−ヒドロキシコハク酸イミド
34mg/水1mL、EDCI・HCl 29mg/水
1mL、4−(6−アミノヘキサンアミド)ケイ皮酸エ
チル塩酸塩(HCl・H2N(CH25CONH−Ph−CH=CH−COOCH2
CH3:Phはフェニレン基を示す)51mg/水1mLを
順次に加えて3時間撹拌した。
【0042】1M水酸化ナトリウム水溶液1mLを加え
て1時間30分撹拌した後、25重量%塩化ナトリウム
水溶液1.6mLを加えた。この反応溶液を300mL
のエタノールに投入し、沈殿物を析出させ、この沈殿物
を80%エタノールで2回、エタノールで2回洗浄した
後、40℃で一晩乾燥させ、360mgの目的化合物の
白色固体(4−(6−アミノヘキサンアミド)ケイ皮酸
エチルエステル導入ヒアルロン酸:「アミノケイ皮酸誘
導体導入ヒアルロン酸」と記載する)を得た。ヒアルロ
ン酸繰り返し二糖単位当たりのアミノケイ皮酸誘導体の
導入率は4.5%であった。この被検物質のフィルター
通過性試験の結果を表1に示す。なお、1M水酸化ナト
リウム水溶液1mLを加える処理を行なわない以外は、
上記と同様に調製したアミノケイ皮酸誘導体導入ヒアル
ロン酸(アミノケイ皮酸誘導体の導入率4.5%)を対
照1として使用した。
【0043】次いで、ヒアルロン酸換算濃度が0.2〜
2.5重量%となる様に、上記のアミノケイ皮酸誘導体
導入ヒアルロン酸を5mMリン酸緩衝生理的食塩水に溶
解した。更に、これら溶液を内径15mmのパイレック
ス(登録商標)製ガラス試験管に入れ、また、パイレッ
クス製ガラス板2枚の間隙2mmで挟み込み、水冷式紫
外線照射装置(3kWメタルハライドランプ使用)に2
0分照射し、架橋体の形状および形状が溶液の場合は曳
糸性の有無を調べた。結果を表2に示す。なお、以下の
記載において、HAの略語でヒアルロン酸を表すことが
ある。
【0044】
【表1】
【0045】
【表2】
【0046】実施例2(ケイ皮酸誘導体導入ヒアルロン
酸) 1重量%ヒアルロン酸ナトリウム(重量平均分子量90
万)水溶液500gに、水/ジオキサン=250mL/
375mLの混合溶液を加えて撹拌した。室温でN−ヒ
ドロキシコハク酸イミド860mg/水2mL(0.6
当量/HA二糖単位(mol/mol))、EDCI・
HCl 717mg/水2mL(0.3当量/HA二糖
単位(mol/mol))、ケイ皮酸アミノプロピル塩
酸塩(HCl・H2N(CH23OCO−CH=CH−Ph:Phはフェニル
基を示す)903mg/水2mL(0.3当量/HA二
糖単位(mol/mol))を順次に加え、2時間30
分撹拌した。炭酸水素ナトリウム2.5g/水50mL
を加えて一昼夜撹拌した後、塩化ナトリウム30gを加
えた。この反応溶液に2Lのエタノールを投入し、沈殿
物を析出させ、この沈殿物を80%エタノールで2回、
エタノールで2回洗浄した後、室温で一晩乾燥させ、
5.24gの白色固体(ケイ皮酸3−アミノプロピルエ
ステル導入ヒアルロン酸:「ケイ皮酸誘導体導入ヒアル
ロン酸」と記載する)を得た。ヒアルロン酸繰り返し二
糖単位当たりのケイ皮酸導入率は8.4%であった(表
3中のNo.5)。また、N−ヒドロキシコハク酸イミ
ド(HOSu)、EDCI・HCl、ケイ皮酸アミノプ
ロピル塩酸塩の当量を変え、表3に示す異なる導入率の
ケイ皮酸誘導体導入ヒアルロン酸(No.1〜4)を合
成した。
【0047】次いで、上記No.1〜5のケイ皮酸誘導
体導入ヒアルロン酸をヒアルロン酸濃度が1.0重量%
となる様に5mMリン酸緩衝生理的食塩水に溶解し、フ
ィルター通過性を調べた。結果を表3に示す。なお、対
照として、原料のヒアルロン酸ナトリウム(重量平均分
子量:約90万)と、炭酸水素ナトリウム(2.5g/
水50ml)の添加を行わない以外はNo.1−5と同
様に調製したケイ皮酸誘導体導入ヒアルロン酸とを対照
としてフィルター通過性を調べた。また、原料のヒアル
ロン酸のフィルター通過性評価は○であった。
【0048】
【表3】
【0049】表3に示す様に、アルカリ(炭酸水素ナト
リウム)処理されないケイ皮酸誘導体導入ヒアルロン酸
はフィルター通過性を有さないのに対し、アルカリ処理
されたケイ皮酸誘導体導入ヒアルロン酸は高いフィルタ
ー通過性を示し親水性が高められていることが分かる。
【0050】因に、ケイ皮酸誘導体導入率が高くなる
(疎水性が高められる)に従い、水性媒体に対する不溶
部分が増加し、溶液が不透明となるが、高いフィルター
通過性を示し親水性が高められた本発明のケイ皮酸誘導
体導入ヒアルロン酸の溶液は高い透明性を示す。
【0051】実施例3(種々の架橋ヒアルロン酸) 上記実施例2の1.0重量%濃度のケイ皮酸誘導体導入
ヒアルロン酸/リン酸緩衝生理的食塩水性溶液に水冷式
紫外線照射装置により紫外線照射した。結果を表4に示
す。
【0052】
【表4】
【0053】実施例4(アルカリによる影響/時間) 1重量%ヒアルロン酸ナトリウム(重量平均分子量90
万)水性溶液1Lに、水/ジオキサン=500mL/7
50mLの混合溶液を加え撹拌した。室温でN−ヒドロ
キシコハク酸イミド1.721g/水4mL(0.6当
量/HA二糖単位(mol/mol))、EDCI・H
Cl 1.433g/水4mL(0.3当量/HA二糖
単位(mol/mol))、ケイ皮酸アミノプロピル塩
酸塩(HCl・H2N(CH23OCO−CH=CH−Ph:Phはフェニル
基を示す)1.807g/水4mL(0.3当量/HA
二糖単位(mol/mol))を順次に加え、2時間3
0分時間撹拌した。
【0054】そして、炭酸水素ナトリウム2.0g/水
40mLを加えた(0.2g/HA1g)。この溶液よ
り炭酸水素ナトリウム添加後、2、3、4、6、8、2
0時間後毎に225mLづつ採取し、採取した溶液に塩
化ナトリウム6gを加え、2Lのエタノールを投入し、
それぞれケイ皮酸誘導体導入ヒアルロン酸の沈殿物を析
出させた。各沈殿物を80%エタノールで2回、エタノ
ールで2回洗浄した後、室温で一晩乾燥させ、白色固体
のケイ皮酸誘導体導入ヒアルロン酸をそれぞれ得た。ま
た、炭酸水素ナトリウムを添加しない以外は同様の処理
を施したケイ皮酸誘導体導入ヒアルロン酸を対照とし
た。これらの試料のそれぞれについてフィルター通過性
を調べた。
【0055】また、ヒアルロン酸濃度が1.5重量%と
なる様に上記で得られた各試料をリン酸緩衝生理的食塩
水に溶解した。炭酸水素ナトリウムの添加量を1g
(0.1g/HA1g)及び5g(0.5g/HA1
g)に変更した以外は、上記と同様にして調製した誘導
体についても同様の測定を行なった。結果を表5に示し
た。
【0056】
【表5】
【0057】上記の表5に示す様に、アルカリ(炭酸水
素ナトリウム)処理されないケイ皮酸誘導体導入ヒアル
ロン酸はフィルター通過性を有さないのに対し、アルカ
リ処理されたケイ皮酸誘導体導入ヒアルロン酸はフィル
ター通過性が飛躍的に向上して親水性が高められている
ことが分かる。
【0058】実施例5(沈殿処理方法のフィルター通過
性への影響) 光反応性ヒアルロン酸の水溶液からの分離の方法がフィ
ルター通過性に影響を与えないことを確認するために、
異なる沈殿処理方法によって得た光反応性ヒアルロン酸
のフィルター通過性を比較した。
【0059】すなわち、塩化ナトリウム添加後エタノー
ルによる沈殿によって分離した本発明物質(A)、酢酸
ナトリウム飽和のエタノールによる沈殿によって分離し
た本発明物質(B)及びアルカリ処理を行わずに酢酸ナ
トリウム飽和のエタノールによる沈殿によって分離した
対照物質のフィルター通過性を調べた(表6)。この結
果から、アルカリ処理を行わずに、酢酸ナトリウム飽和
のエタノールで沈殿を行ったとしても、被検物質のフィ
ルター通過性に変化は見られないことが判明した。
【0060】
【表6】
【0061】なお、本発明物質(A)、本発明物質
(B)、対照物質の調製は以下の通り行った。
【0062】(1)本発明物質(A)の調製 (i)2.0gのヒアルロン酸ナトリウム(重量平均分
子量100万)を蒸留水300mLに溶解し、ジオキサ
ン150mLを加え、N−ヒドロキシコハク酸イミド
344mg(0.6当量/HA二糖単位(mol/mo
l))、EDCI・HCl 286mg(0.3当量/
HA二糖単位(mol/mol))、及びケイ皮酸アミ
ノプロピル塩酸塩(HCl・H2N(CH23OCO−CH=CH−Ph:P
hはフェニル基を示す)362mg(0.3当量/HA
二糖単位(mol/mol))を順次加え、室温で2時
間30分撹拌した。 (ii)その後、炭酸水素ナトリウム1.0gを加えて3
時間撹拌した。反応液に2.25Mの酢酸水溶液0.2
mLを添加して中和した。 (iii)塩化ナトリウム12gを添加し、更にエタノー
ル1Lを加えて光反応性ヒアルロン酸を析出させた。こ
の沈殿物を80%エタノールで2回、エタノールで2回
洗浄した後、減圧乾燥して、本発明物質(A)とした。
【0063】(2)本発明物質(B)の調製 本発明物質(A)の調製工程の(ii)を終了後、100
mlをサンプリングして飽和酢酸ナトリウム/エタノー
ルに投入し、光反応性ヒアルロン酸を析出させた。沈殿
物を80%エタノールで2回、エタノールで2回洗浄
後、減圧して乾燥し、これを本発明物質(B)とした。
【0064】(3)対照物質の調製 本発明物質(A)の調製工程の(i)を終了後、100
mlをサンプリングして飽和酢酸ナトリウム/エタノー
ルに投入し、光反応性ヒアルロン酸を析出させた。沈殿
物を80%エタノールで2回、エタノールで2回洗浄
後、減圧乾燥し、これを対照物質とした。
【0065】実施例6(湿熱処理後の架橋ヒアルロン酸
ゲル) 1重量%ヒアルロン酸ナトリウム(重量平均分子量90
万)水性溶液500gに、水/ジオキサン=250mL
/375mLの混合溶液を加えて撹拌した。室温でN−
ヒドロキシコハク酸イミド860mg/水2mL(0.
6当量/HA二糖単位(mol/mol))、EDCI
・HCl 717mg/水2mL(0.3当量/HA二
糖単位(mol/mol))、ケイ皮酸アミノプロピル
エステル塩酸塩(HCl・H2N(CH23OCO−CH=CH−Ph:Ph
はフェニル基を示す903mg/水2mL(0.3当量
/HA二糖単位(mol/mol))を順次に加え、2
時間30分時間撹拌した。
【0066】そして、炭酸水素ナトリウム2.5g/水
50mLを加え一昼夜撹拌した後、酢酸0.676g加
え、塩化ナトリウム30gを加えた。2Lのエタノール
を投入し、沈殿物を析出させ、この沈殿物を80%エタ
ノールで2回、エタノールで2回洗浄した後、室温で一
晩乾燥させ、4.93gの白色固体を得た。ヒアルロン
酸繰り返し二糖単位当たりのケイ皮酸誘導体導入率は
8.8%であった。
【0067】次いで、濃度1.5重量%となる様に、上
記のケイ皮酸誘導体導入ヒアルロン酸を5mMリン酸緩
衝生理食塩水に溶解した後、ガラスシリンジに充填し、
そのシリンジを水冷式紫外線照射装置にて1時間紫外線
照射した。架橋率22.2%、粘度127Pa・sのゲ
ル状物質となった。更に、得られた架橋ヒアルロン酸ゲ
ルを121℃、20分間の湿熱滅菌処理をしたが、上記
と同様のゲル状を維持した。粘度136Pa・sであっ
た。これらの結果は、上記の架橋ヒアルロン酸ゲルが湿
熱滅菌処理によっても実質的に分解されることがないこ
とを意味している。
【0068】
【発明の効果】以上説明した本発明によれば、親水性の
高められた光反応性ヒアルロン酸およびその製造方法が
提供され、本発明はヒアルロン酸を利用した医用材料分
野に寄与するところが大きい。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 4C081 AB05 AB21 AC01 BB04 CD081 DA15 EA05 EA14 4C090 AA02 AA05 AA09 BA67 BD03 BD08 BD37 BD42 CA23 CA33 CA35 DA09 DA24

Claims (13)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ヒアルロン酸と光架橋基とが結合した光
    反応性ヒアルロン酸であって、固形の状態の光反応性ヒ
    アルロン酸を1.0重量%で水性溶媒に溶解して得られ
    る水性溶液が24℃の温度条件下、5.0Kg/cm2
    の加圧下で多孔質フィルター(孔径(ポアサイズ)が
    0.45μmで直径が25mm)を1分間に2ml以上
    通過可能であることを特徴とする光反応性ヒアルロン
    酸。
  2. 【請求項2】 光架橋基がケイ皮酸もしくは置換ケイ皮
    酸またはそれらの誘導体である請求項1記載の光反応性
    ヒアルロン酸。
  3. 【請求項3】 光架橋基がヒアルロン酸のカルボキシル
    基に結合している請求項1又は2に記載の光反応性ヒア
    ルロン酸。
  4. 【請求項4】 光架橋基がケイ皮酸アミノアルキルエス
    テル残基である請求項3記載の光反応性ヒアルロン酸。
  5. 【請求項5】 重量平均分子量が40万〜1000万で
    ある請求項1〜4の何れかに記載の光反応性ヒアルロン
    酸。
  6. 【請求項6】 光架橋基が結合したヒアルロン酸の水性
    溶液をアルカリで処理することを特徴とする光反応性ヒ
    アルロン酸の製造法。
  7. 【請求項7】 アルカリ処理の後、更に水性溶液を中和
    する請求項6記載の光反応性ヒアルロン酸の製造法。
  8. 【請求項8】 請求項1〜5の何れかに記載の光反応性
    ヒアルロン酸に紫外線を照射して得られることを特徴と
    する光架橋ヒアルロン酸。
  9. 【請求項9】 請求項1〜5の何れかに記載の光反応性
    ヒアルロン酸の濃度が0.1〜10重量%である水溶液
    に紫外線を照射して得られることを特徴とする光架橋ヒ
    アルロン酸。
  10. 【請求項10】 請求項1〜5の何れかに記載の光反応
    性ヒアルロン酸の水性溶液に紫外線を照射して得られる
    光架橋ヒアルロン酸溶液であって、濃度1.0重量%で
    温度24℃の条件下において、23ゲージの注射針より
    水平方向から45°の斜め下方に向けて0.2ml/秒
    の速度で押し出した際、切れることなく3cm以上の長
    さのものが注射針先端開口部から垂れ下がる性質を有し
    ていることを特徴とする光架橋ヒアルロン酸溶液。
  11. 【請求項11】請求項1〜5の何れかに記載の光反応性
    ヒアルロン酸を含む医用材料。
  12. 【請求項12】請求項8又は9に記載の光架橋ヒアルロ
    ン酸を含む医用材料。
  13. 【請求項13】請求項10に記載の光架橋ヒアルロン酸
    溶液を含む医用材料。
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