JP2002241907A - 高周波磁気特性及び打ち抜き加工性に優れる無方向性電磁鋼板 - Google Patents

高周波磁気特性及び打ち抜き加工性に優れる無方向性電磁鋼板

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JP2002241907A
JP2002241907A JP2001041704A JP2001041704A JP2002241907A JP 2002241907 A JP2002241907 A JP 2002241907A JP 2001041704 A JP2001041704 A JP 2001041704A JP 2001041704 A JP2001041704 A JP 2001041704A JP 2002241907 A JP2002241907 A JP 2002241907A
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Akio Fujita
明男 藤田
Osamu Kondo
修 近藤
Masaaki Kono
雅昭 河野
Yuka Komori
ゆか 小森
Masaki Kono
正樹 河野
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Kawasaki Steel Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 高い電気抵抗と良好な高周波磁気特性を有
し、しかも耐食性や低廉性をも兼ね備えたFe−Cr−Si系
合金鋼において、特に打ち抜き加工性を向上する。 【解決手段】 Cr:1.5 mass%以上20mass%以下及びS
i:2.5 mass%以上10mass%以下を含有させ、Ti、Nb、
V及びZrを合計量で100 ppm 以下に低減するとともに、
C及びNを合計量で50ppm 以下に低減する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、磁気特性及び打
ち抜き加工性に優れる無方向性電磁鋼板、特に商用周波
数よりも高い周波数域において優れた磁気特性を有する
無方向性電磁鋼板に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、地球環境の保護や改善を目的とし
て、様々な分野で省エネルギーが推進されている。電気
機器の分野では、その高効率化や省電力化のために、イ
ンバーター方式を採用する製品が増えてきており、その
周波数も高効率化のために高周波域へと年々移ってきて
いる。従来、インバーター化や高周波数化に伴い、力率
改善目的でリアクトルが使用され、更に電源汚染を防ぐ
目的でインバーター機器に高周波リアクトルの使用が増
加している。
【0003】ここで、電気機器に用いられる電磁鋼板
は、軟質磁気特性に優れるFe−Si系合金材が一般に知ら
れていて、主にSi量が3.5 mass%以下の電磁鋼板として
商用周波数用の各種鉄心を中心に多用されている。しか
し、上記の高周波リアクトルに代表される、1kHz 以
上、更には10kHz 以上の高周波数域で使用される場合な
ど、電磁鋼板の使用周波数が商用周波数よりも高い場合
には、かかるSi量3.5 mass%以下の電磁鋼板では鉄損が
大きくなる不利がある。そのため、商用周波数よりも高
い周波域での鉄損特性を改善するためには、更に電気抵
抗の高い材料が求められている。
【0004】ここに、鋼中のSi量を増やせば電気抵抗が
増大するから、上記のような高周波域での鉄損を低減す
る上で好都合である。しかし、その一方で、Si量が3.5
mass%を超えると、合金が極めて硬く脆くなって加工性
が阻害される結果、圧延による製造並びに加工が困難と
なる。特に、Si量が5.0 mass%を超える場合には、冷間
加工は勿論のこと、温間加工も不可能になる。
【0005】このようなSi含有量の高い鋼における加工
性を改良する技術としては、特開昭61−166923号公報に
開示されている、高珪素鋼板の熱間圧延において低温強
圧下を行う方法や、特開昭62−227078号公報に開示され
ている、Siの拡散浸透処理による方法、などがある。
【0006】しかし、前者の特開昭61−166923号公報に
開示された技術は、合金としての脆性を見かけ上改善す
べく圧延組織の微妙な調整を必要とするものであり、製
造過程で厳密な制御を行わなければならないことから、
工業的に安定して生産するのは困難である。
【0007】一方、後者の特開昭62−227078号公報に開
示された技術では、特殊な拡散浸透法を用いるため、工
業的な製造を行う場合にはコスト的に極めて不利であ
る。しかも、良好な高周波磁気特性を得るために、更に
電気抵抗を上げるには限界があるものの、Si量をこれら
の方法で増量しても、高々80μΩ・cmの水準に止まらざ
るを得ない。特に、通常の工業的な圧延法で製造できる
3.5 mass%以下のSi量の場合、50μΩ・cm台までの比抵
抗しか得られなかった。また、これらのFe−Si合金は、
耐食性が劣る点も鉄心などの用途においては問題とな
る。
【0008】また、Alは磁気特性の観点でSiと同様に電
気抵抗を増大させる効果があり、しかもSiほどは加工性
を劣化させない。そこで、Siの一部をAlで置換すること
により、加工性が改善されることが知られている。すな
わち、AlはSiよりコスト高であり、磁束密度の減少が大
きいなどの弱点があるものの、例えばSi:3mass%及び
Al:0.7 mass%を含む組成の鋼は、Si:3.7mass %を含
む組成の鋼よりも加工性及び冷間圧延性が良好であり、
磁気特性もほぼ同等となる。しかし、Si:3mass%以上
を含む鋼において、SiとAlとの合計量が4mass%以上に
なると、冷間圧延が不能となり、更に、SiとAlとの合計
量が6mass%を超える場合には、温間圧延も困難になっ
ていた。この場合も結局、工業的には60μΩ・ cm未満の
比抵抗しか得られていなかった。
【0009】いずれにしても、単なるSiやAlの増加によ
り高周波域での鉄損低減を図るよりも、本質的に加工性
の改善された新たな成分系の合金によって、高周波域に
わたる磁気特性と共に加工性をも確保し、さらに耐食性
並びに低廉性を満たすことが望ましい。
【0010】なお、Fe−Si合金の耐食性を改善する手段
として、Crを一定量添加する方法が、特開昭52−24117
号公報及び特開昭61−27352 号公報に開示されている。
しかし、これらの公報に開示された合金は、いずれも磁
気特性が従来の合金と同程度であり、高周波域にわたる
磁気特性を満足することができない。
【0011】この問題に対して、特開平11−343544号公
報では、珪素鋼にCrを添加することに加え、C及びNを
低減することにより、従来のSi含有量を増した珪素鋼
(例えば6.5 %珪素鋼)に比べて、格段に加工性に優れ
る鋼板を製造することが提案されている。しかし、この
技術を利用してもなお、打ち抜き加工時に金型摩耗によ
る、かえりが大きくなるという問題点があり、例えば電
磁鋼板の自動積層時にトラブルを発生させることが懸念
されていた。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】上述したように、従来
技術においては、例えば1kHz 以上高周波数用途に利
用できるまで固有抵抗を高めることは、Si、Alの利用の
他は行われておらず、そして、鋼の固有抵抗を高めた高
Si、Al鋼の素材自体が本質的にそなえる脆性を改善する
ことが十分に達成されていないのが現状であった。
【0013】そこで、この発明は、高い電気抵抗と良好
な高周波磁気特性を有し、しかも耐食性や低廉性をも兼
ね備えたFe−Cr−Si系合金鋼において、特に打ち抜き加
工性を向上することを目的としている。
【0014】
【課題を解決するための手段】発明者らは、鋼板の打ち
抜き性が阻害されるのは、打ち抜き加工時の金型摩耗に
起因して発生する、鋼板のかえりが大きいためであり、
この鋼板のかえりを抑制するには、主原料の鉄鉱石、そ
の他の成分調整用の副原料(FeSi,FeCr,クロム鉱石、
金属クロム等)に不純物として含まれることから不可避
に混入される、Ti、Nb、V及びZrの総量を低減するとと
もに、C及びNの合計量を低減することが極めて有利で
あることを新たに見出し、この発明を完成するに到っ
た。
【0015】すなわち、この発明の要旨構成は次の通り
である。 (1)Cr:1.5 mass%以上20mass%以下及びSi:2.5 ma
ss%以上10mass%以下を含有し、Ti、Nb、V及びZrを合
計量で100 ppm 以下に低減するとともに、C及びNを合
計量で50ppm 以下に低減し、残部は鉄及び不可避的不純
物からなり、比抵抗が60μΩ・cm以上であることを特徴
とする高周波磁気特性及び打ち抜き加工性に優れる無方
向性電磁鋼板。
【0016】(2)上記(1)において、さらにAl:5
mass%以下を含有することを特徴とする高周波磁気特性
及び打ち抜き加工性に優れる無方向性電磁鋼板。
【0017】(3)上記(1)または(2)において、
さらにMn及びPのいずれか1種または2種を合計で1ma
ss%以下にて含有することを特徴とする高周波磁気特性
及び打ち抜き加工性に優れる無方向性電磁鋼板。
【0018】(4)上記(1)ないし(3)のいずれか
において、鋼板の厚みが0.01〜0.4mmであることを特徴
とする高周波磁気特性及び打ち抜き加工性に優れる無方
向性電磁鋼板。
【0019】
【発明の実施の形態】この発明の無方向性電磁鋼板に関
して、磁気特性については、CrをSiとともに含有させる
ことにより、固有抵抗の増大に相乗的な効果が現れる。
その結果、特に高周波域での鉄損を、Si及びAlのみ、な
いしはSi及びAlを含有する合金系に比べて格段に低減す
ることができる。
【0020】また、これまでの高い固有抵抗の材料は圧
延性が悪く、通常の圧延法によっては、0.5 mm程度まで
しか減厚されていなかった。また、単に厚みを減じても
ヒステリシス損失のために、十分な鉄損低減ができない
とされてきた。しかし、発明者らの鋭意研究の結果、こ
の発明にあるように、成分と純度を制御することによ
り、減厚した場合の高周波鉄損特性の効果を促進し得る
ことが判明した。
【0021】従って、この発明の無方向性電磁鋼板は、
高周波域での磁気特性が優れているため、インバーター
エアコン用のリアクトルや太陽光発電等のリアクトル素
材として最も適しており、この発明の鋼板を用いること
で、各種特性を改善し、発熱が少なく、効率のよいリア
クトル製品が得られる。
【0022】さらに、この発明の無方向性電磁鋼板で
は、更なる成分組成の規制によって、特に鋼板の打ち抜
き加工性を向上する。次に、この打ち抜き加工性を向上
するための手段を導くに到った実験結果について説明す
る。すなわち、表1に示す、Ti、Nb、V及びZrの合計量
並びにC及びNの合計量を種々に変化した成分組成に調
整した鋼塊(厚み:220 mm)を1200℃に加熱後、熱間圧
延を施して板厚:2.0 mmの熱延板とした。この熱延板に
850 ℃で1時間の熱延板焼鈍を施した後、冷間圧延によ
り板厚:0.20mmの冷延板とした後、800 ℃で30秒間の仕
上げ焼鈍を施した。次いで、CrO3: 100重量部に対し
て、A1:20重量部(Al金属換算)、H3PO4 :30重量部、
エチレングリコール:35重量部及びアクリル/スチレン
/エポキシ樹脂:40重量部を含む処理液を、鋼板表面に
目付量1.0 g/m2 で塗布し、到達板温度250 ℃で焼き
付けて絶縁被膜を形成した。かくして得られた絶縁被膜
付き電磁鋼板について、オイルレス打ち抜き試験(打ち
抜き径:10mmφ)を実施し、その打ち抜き断面を観察す
ることにより、かえり高さを測定した。
【0023】
【表1】
【0024】図1に各鋼種におけるかえり高さを示すよ
うに、Ti、Nb、V及びZr、そしてC及びNのいずれの成
分も低減していない鋼種Dに比べて、Ti、Nb、V及びZr
の合計量、またはC及びNの合計量を低減した鋼種B並
びにCは若干打ち抜き性が改善され、その両方を低減し
た鋼種Aは他の鋼種に比べて、格段の改善効果が認めら
れることがわかる。すなわち、Cr−Si系合金において、
Ti、Nb、V及びZrの合計量並びにC及びNの合計量の両
方を低減することにより、打ち抜き加工性が向上するこ
とが、新たに判明したのである。
【0025】ここで、Cr−Si系合金において、このよう
なTi、Nb、V及びZrの合計量とC及びNの合計量とを低
減することにより、打ち抜き加工性が改善される理由に
ついては未だ明らかでないが、おおよそ以下のような理
由によるものであると考えられる。一般的に、Ti、Nb、
V及びZrは鋼中で炭窒化物を生成する元素であることが
知られている。ところで、析出物が数μm〜100 μm 径
程度と粗大である場合、打ち抜き加工性の観点からは、
このような析出物が存在する方が破壊発生起点となるた
め、塑性変形を伴わない打抜きが可能となる。しかし、
炭窒化物は径が1μm 以下と微細均一な析出形態をとる
ことが多く、このような析出物は地鉄部分に比べてはる
かに硬度が高く、金型摩耗の促進につながると考えられ
る。したがって、炭窒化物を形成する元素であるTi、N
b、V及びZrの総量、そしてC及びNの合計量を低減す
ることにより、鋼中の炭窒化物数が減少する結果、金型
摩耗が抑制されて打ち抜き加工性が改善されるものと考
えられる。
【0026】以下、この発明の無方向性電磁鋼板につい
て、その成分組成における各成分の含有範囲の限定理由
を説明する。 Cr:1.5 mass%以上20.0mass%以下 Crは、Siまたは/及びAlとの相乗効果によって電気抵抗
を大幅に向上させて高周波域での鉄損を低減し、更には
耐食性を向上させる基本的な合金成分であり、特に、3.
5 mass%以上のSiを含有する場合、又は3mass%以上の
Siかつ1mass%を超えるAlを含有する場合であっても、
温間圧延可能な程度の靱性を得るのに極めて有効であ
り、その観点からは2mass%以上を要する。なお、Si量
やAl量が上記範囲よりも少ない場合には、Cr量が2mass
%未満でも加工性が確保できるが、Crの加工性向上効果
を発揮させ、かつ合金の比抵抗を60μΩcm以上とするた
めには、1.5 mass%以上のCrが必須である。一方、Cr量
が20mass%を超えると靱性向上の効果が飽和するととも
に、コスト上昇を招くため、Crの含有量は1.5 mass%以
上20mass%以下、好ましくは2〜10mass%、より好まし
くは3〜7mass%と規定する。
【0027】Si:2.5 mass%以上10mass%以下 Siは、Crとの相乗効果によって電気抵抗を大幅に上昇さ
せ、高周波域での鉄損を低減するのに有効な成分であ
る。しかし、Si量が2.5 mass%未満ではCrやAlを併用し
ても磁束密度をあまり犠牲にせずに60μΩ・cm以上の比
抵抗を得るには至らない。一方、10mass%を超えるとCr
を含有させても温間圧延可能なまでの靱性が確保できな
いため、Siの含有量は2.5 mass%以上10mass%以下、好
ましくは2.5 mass%以上7mass%以下、より好ましくは
3.5 mass%以上7mass%以下とする。
【0028】Ti、Nb、V及びZr:合計で100 ppm 以下 Ti、Nb、V及びZrは、先に図1に示したように、打ち抜
き性を改善するために含有量を低減する必要があり、こ
れらの合計量を100ppm以下にする必要があり、より好ま
しくは70ppm 以下とする。なお、Ti、Nb、V及びZrの各
々はTi:20ppm以下、Nb:30ppm 以下、V:30ppm 以下
及びZr:20ppm 以下に規制することが好ましく、より好
ましくはTi:10ppm 以下、Nb:20ppm 以下、V:20ppm
以下及びZr:10ppm 以下とする。
【0029】C及びN:合計量で100 ppm 以下 C及びNは、Fe−Cr−Si系合金の靱性を劣化させるため
にできる限り低減する必要があり、この発明に従うCr
量、Si量及びAl量の下で高靱性を確保するためには、合
計量で100ppm以下に抑えることが肝要である。好ましく
は、C及びNの各々が50 ppm以下、より好ましくは各30
ppm以下とする。
【0030】なお、C及びN以外の不純物量は特に限定
されないが、例えばSについては20ppm 以下、好ましく
は10ppm 以下、より好ましくは5ppm 以下に、Oについ
ては50ppm 以下、好ましくは30ppm 以下、より好ましく
は15ppm 以下に、又は、不純物C+S+N+Oの合計量
で120 ppm 以下、好ましくは50ppm 以下に、規制するこ
とが推奨される。
【0031】また、この発明の無方向性電磁鋼板では、
上記の成分組成に、さらにAlと、Mn及びPのいずれか1
種または2種と、の一方または両方を含有させることが
可能である。 Al:5mass%以下 Alは、Siと同様、Crとの相乗効果によって電気抵抗を大
幅に向上させ、高周波域での鉄損を低減するのに有効な
成分であり、また溶接性の改善にも有効であるため、こ
の発明では必要に応じてAlを含有させることができる。
しかし、Al量が5mass%を超えると、コスト上昇を招く
上に、Siが2.5 mass%以上含有されている場合にCrを含
有させても温間圧延可能なまでの靱性が確保できなくな
るため、Alは5mass%以下の下で含有させる必要があ
る。一方、Alの下限は特に限定する必要はないが、脱酸
や結晶粒成長性の改善を所期する場合は、0.005 〜0.3
mass%程度を含有させ、またAlを積極的に電気抵抗の増
大のために活用する場合は、0.5 mass%以上の範囲で含
有させることが好ましい。したがって、Alは0.005 mass
%以上で含有させることが好ましく、より好ましくは0.
5 mass%以上3mass%以下とする。
【0032】Mn及びPのいずれか1種または2種を合計
で1mass%以下 Mn及びPは、Fe−Cr−Si系合金に添加することにより、
一層の電気抵抗の上昇を付与することができる。これら
の1種または2種の成分の添加により、この発明の趣旨
が損なわれることなく、更なる鉄損の低減が達成でき
る。しかし、これらの1種または2種の成分を大量に添
加すると、コストの上昇を招くため、添加量は合計で1
mass%以下とする。より好ましくは、それぞれ0.5 mass
%以下とする。
【0033】なお、この発明において、磁気特性、耐食
性、加工性などを更に向上させる目的で、従来知られて
いる合金成分を追加添加することは、この発明の効果を
損なうものではなく、それらの成分を含有させることも
可能である。それらの成分の代表例を以下に列記する。
【0034】すなわち、5mass%以下のNiは、耐食性改
善成分であるとともに、延性−脆性遷移温度を下げ、加
工性を向上させるほか、結晶粒を微細にさせ易いため、
渦電流損を抑制し、高周波鉄損の低減にも効果がある。
1mass%以下のCuにもNiと同様の効果がある。5mass%
以下のMoやWは耐食性を改善する。1mass%以下のLa、
VやNb、0.1 mass%以下のTi、YやZr、0.1 mass%以下
のBは、靱性を高めて加工性を向上させる効果がある。
5mass%以下のCoは、磁束密度を向上させ、ひいては鉄
損低減に効果がある。0.1 mass%以下のSbやSnは、集合
組織を改善し、ひいては鉄損低減に効果がある。
【0035】ちなみに、この発明の無方向性電磁鋼板
は、以下の方法により製造することができる。すなわ
ち、前述した成分組成範囲に調整された合金素材は、連
続鋳造または造塊−分塊圧延によりスラブとする。ま
た、薄スラブ連続鋳造法を用いて、厚みの薄いスラブを
製造することもできる。得られたスラブは、加熱保持後
に熱間圧延に供するか、または連続鋳造後直送して圧延
する方法(CC−DR法)や連続鋳造後に保温を行う方法
(HCR 法)のように、連続鋳造時の顕熱を保持させたま
ま加熱することなく熱間圧延に供する。
【0036】その後の熱間圧延は、極力薄くまで圧延す
ることによって、次工程の冷間圧延ないしは温間圧延に
おける加工性、すなわち圧延性を良好にすることができ
る。これは、この発明のFe−Cr−Si系合金組成の場合に
は、熱延板の表面部分の方が中心部分よりも靱性が高
く、加工性が優れているとの新規知見に基づくものであ
る。そのためには、熱延板の厚みを3mm以下、好ましく
は2.5mm 以下、より好ましくは1.5 mm以下とする。
【0037】次いで、熱延板の靱性が改善されているた
め、更に温間や冷間で圧延して0.4mm以下の厚みの薄板
とすることができる。一般に、板厚を減じると、とりわ
け高周波において渦電流損が有利に抑制され、低鉄損に
なることは周知である。しかし、これまでは高電気抵抗
の材料は圧延性が悪く、通常の圧延法によっては0.5mm
程度までしか減厚されていなかった。また、単に厚みを
減じてもヒステリシス損失のために、十分な鉄損低減が
できないとされてきた。この点、この発明では、成分系
と純度を規制することにより、減厚した場合の高周波鉄
損特性の効果を促進し得ることを見出したのである。か
かる減厚の効果を得るためには、板厚を0.4 mm以下とす
ることが有効である。ただし、0.01mmよりも薄くするに
は、コスト上、また工業的に無理があるため、板厚の範
囲を0.01〜0.4mm 、好ましくは0.03〜0.35mmと規定す
る。
【0038】このような減厚のための圧延においては、
材料の加工性が優れているため、特に従来のように熱延
板を焼鈍したり、冷間圧延ないし温間圧延の途中で中間
焼鈍を施すなど、圧延性を確保することは必ずしも必要
でなく、熱延板焼鈍や中間焼鈍を省略して作業能率向
上、省エネルギーの促進、そしてコスト低減を図ること
ができる。その後の焼鈍や表面仕上げは、通常の電磁鋼
板や電磁ステンレス板と同様の工程が適用できる。
【0039】
【実施例】表2に示す成分組成に調整した溶鋼を、それ
ぞれ連続鋳造により厚さ220mm のスラブとした。これら
のスラブを1100℃に再加熱した後、熱間圧延により全て
2.3 mm厚の熱延板としたのち、コイルに巻き取った。そ
の後、熱延板の表面をショットブラストで手入れをして
から、途中焼鈍なしで200 ℃に予熱して温間圧延を実施
し、0.20mm及び0.10mm厚に仕上げた後、800 ℃で60秒の
焼鈍を施した。次いで、CrO3: 100重量部に対して、A
1:20重量部(Al金属換算)、H3PO4 :30重量部、エチ
レングリコール:35重量部及びアクリル/スチレン/エ
ポキシ樹脂:40重量部を含む処理液を、鋼板表面に目付
量1.0 g/m2で塗布し、到達板温度250 ℃で焼き付けて絶
縁被膜を形成した。
【0040】かくして得られた製品板から、外径30mm及
び内径20mmのリング状試験片を切り出し、BHアナライザ
により周波数10kHz 、磁束密度0.1 Tに対する鉄損値を
測定した。また、別途、幅30mm及び長さ280mm の試験片
を切り出して、四端子法によって比抵抗を測定した。さ
らに、オイルレス打ち抜き試験(打ち抜き径:10mmφ)
を実施し、50万回目の打ち抜き断面を観察することによ
り、かえり高さを測定した。これらの測定結果を、各鋼
種毎に表3に示すように、この発明に従う鋼板は、優れ
た高周波磁気特性及び打ち抜き加工性をそなえることが
わかる。
【0041】
【表2】
【0042】
【表3】
【0043】
【発明の効果】この発明の無方向性電磁鋼板は、優れた
高周波鉄損と磁束密度を併せ持ち、高周波用として特に
好適であり、しかも打ち抜き加工性にも優れているた
め、その工業的価値は大きいものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 鋼種毎の打ち抜き加工性を示すグラフであ
る。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 河野 雅昭 岡山県倉敷市水島川崎通1丁目(番地な し) 川崎製鉄株式会社水島製鉄所内 (72)発明者 小森 ゆか 岡山県倉敷市水島川崎通1丁目(番地な し) 川崎製鉄株式会社水島製鉄所内 (72)発明者 河野 正樹 岡山県倉敷市水島川崎通1丁目(番地な し) 川崎製鉄株式会社水島製鉄所内 Fターム(参考) 5E041 AA02 AA19 CA02 NN01

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Cr:1.5 mass%以上20mass%以下及びS
    i:2.5 mass%以上10mass%以下を含有し、Ti、Nb、V
    及びZrを合計量で100 ppm 以下に低減するとともに、C
    及びNを合計量で50ppm 以下に低減し、残部は鉄及び不
    可避的不純物からなり、比抵抗が60μΩ・cm以上である
    ことを特徴とする高周波磁気特性及び打ち抜き加工性に
    優れる無方向性電磁鋼板。
  2. 【請求項2】 請求項1において、さらにAl:5 mass%
    以下を含有することを特徴とする高周波磁気特性及び打
    ち抜き加工性に優れる無方向性電磁鋼板。
  3. 【請求項3】 請求項1または2において、さらにMn及
    びPのいずれか1種または2種を合計で1mass%以下に
    て含有することを特徴とする高周波磁気特性及び打ち抜
    き加工性に優れる無方向性電磁鋼板。
  4. 【請求項4】 請求項1ないし3のいずれかにおいて、
    鋼板の厚みが0.01〜0.4mmであることを特徴とする高周
    波磁気特性及び打ち抜き加工性に優れる無方向性電磁鋼
    板。
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