JP2002235150A - レール頭部の幅方向に均一な硬度を持つ耐表面損傷レール、およびその製造方法 - Google Patents

レール頭部の幅方向に均一な硬度を持つ耐表面損傷レール、およびその製造方法

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JP2002235150A
JP2002235150A JP2001029194A JP2001029194A JP2002235150A JP 2002235150 A JP2002235150 A JP 2002235150A JP 2001029194 A JP2001029194 A JP 2001029194A JP 2001029194 A JP2001029194 A JP 2001029194A JP 2002235150 A JP2002235150 A JP 2002235150A
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Kenichi Karimine
健一 狩峰
Koichi Uchino
耕一 内野
Masafumi Shibata
雅文 芝田
Takuya Sato
琢也 佐藤
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 幅方向に均一な硬度分布を持つ耐ダークスポ
ット損傷ベイナイト鋼レール及びその効率的な製造法を
提供する。 【解決手段】 質量%で、C:0.15〜0.45% 、Si:0.
02〜2.00%、Mn:0.3〜1.5%、Cr:0.5 〜1.5%、そ
の他必要に応じて合金元素を含有し、残部がFe及び不
可避的不純物からなり、レール頭部の表面から少なくと
も深さ20mmまでが実質ベイナイト組織を呈し、レール
頭部表面の頭頂部と頭頂部からコーナーに向かって20
mm点との硬度の差、及び頭部表面から深さ20mmにおけ
る、頭頂部と頭頂部からコーナーに向かって20mm点と
の硬度の差がいずれもHv50以下、かつ頭頂部におけ
る頭部表面と表面から深さ40mmにおける硬度の差がH
v50以上であることを特徴とするレール頭部の幅方向
に均一な硬度を持つ耐表面損傷レール。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は頭部の硬度が均一
で、耐表面損傷性に優れたレールおよびその製造方法に
関する。
【0002】
【従来の技術】まず本明細書で用いるレール部位の呼称
を図1を用いて説明する。図1においてレール最上面1
を頭頂面、レール肩部2をゲージコーナー、頭部側面3
を頭側面と呼ぶ。近年、鉄道列車の高速化や貨物列車の
重積載化が進められており、レールの使用環境はますま
す苛酷になっている。レール使用時における従来からの
課題は曲線軌道におけるレール摩耗であった。この課題
に対し、熱処理により硬化させた高強度レールの導入に
より、曲線部における摩耗は大幅に改善されてきてい
る。この高耐摩耗レールは、加速冷却によってフェライ
ト・セメンタイトのラメラー間隔を微細化した高強度パ
ーライト鋼である。
【0003】一方、直線軌道では摩耗はほとんど問題に
ならないが、近年ダークスポット損傷、もしくは頭頂面
シェリングと呼ばれるころがり疲労損傷が発生するよう
になってきている。この損傷はレールが車輪と接触する
接触面直下の加工変質層が摩耗で除去されない場合に、
疲労き裂が徐々に進展して顕在化するものと考えられて
いる。この損傷は最終的にレール折損を引き起こす場合
があり、列車運行に支障を与えることがある。
【0004】ダークスポット損傷は、従来から使用され
てきたパーライト組織や、焼戻しマルテンサイト組織を
有するレール鋼にいずれも生じる。このダークスポット
損傷への対策として、レール材を多く摩耗させることに
より、疲労き裂の起点となる加工変質層を除去させる方
法が考案され、この特性を有する鋼材としてベイナイト
鋼を適用したレールが開発されている。例えば特開平5
−271871号公報や、特開平6−316727号公
報に記載されているように、ベイナイト鋼レールはCが
0.15〜0.45%で、JIS−E1101、E11
20などに規定されている従来のレール鋼に比べて低
く、Mn,Cr,Moなどの合金元素の増量によりフェ
ライト・パーライト変態を抑制してベイナイト組織を安
定化している。
【0005】一方、海外の鉱山鉄道などの重荷重軌道で
はころがり疲労損傷に加え、耐摩耗性や耐挫屈強度も重
要であり、高強度、高硬度が求められる。ベイナイト鋼
の硬度はオーステナイト温度域から冷却されてベイナイ
ト変態する際の変態温度によって左右され、低温で変態
するほど高硬度になる。変態温度を下げるには、加速冷
却により過冷状態を促進するか、変態開始を遅らせる合
金を増量する。
【0006】レールの熱処理は圧延後の高温の状態ない
し、圧延後一旦冷却した後、オーステナイト高温域に再
加熱してから加速冷却し、さらに必要に応じて焼戻しな
どが施される。レールの熱処理用冷却装置は、従来から
いくつかの形式が提示されている。特開昭61−149
436号公報では、レール頭部を取り囲む半円形の一体
式空気噴射ノズルが提示されている。また特開昭61−
279626号公報では、レール頭頂面、頭側面にそれ
ぞれ対向して配置された3分割式空気噴射ノズルが示さ
れている。さらに特開昭63−293115号公報で
は、3本の水冷ノズルがレール頭頂面、頭側面にそれぞ
れ対向して配置された装置が示されている。
【0007】また、ベイナイト鋼レールの熱処理製造に
関しては、特開平06−316727号公報において、
1〜10℃/secの冷却速度によりベイナイト組織を得る
方法が提示されており、一方特開平05−271871
号公報では、圧延後の自然放冷により高硬度のベイナイ
ト組織を得る方法が提示されている。またレール頭部の
断面内硬度分布については、特開平06−240361
号公報に、ゲージコーナーの硬度を頭頂より高めた硬度
分布を有するレールが提示されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、直線軌道に
おいて発生するダークスポット損傷を防止するために開
発されたベイナイト鋼レールにおいて、以下に説明する
(1)材質上の課題と、(2)製造工程における課題に
鑑み発明したものである。
【0009】(1)材質上の課題:従来からレール使用
上の重要課題は曲線軌道におけるレール摩耗であった。
曲線軌道に敷設されたレールは、ゲージコーナーから頭
側面において強く車輪に接触するため、著しく摩耗す
る。従来から耐摩耗用レールを製造する場合、頭頂面に
加えて、このゲージコーナーから頭側面も緻密で硬いパ
ーライト組織を得る必要があった。
【0010】パーライト鋼を硬化するためにはパーライ
ト変態温度を下げる必要がある。そのためには加速冷却
を行うか、合金添加により焼入れ性を上げて、高温で生
じるパーライト変態を抑制する方法がある。このうち、
レールの溶接性、電気抵抗、合金元素の省資源を考える
と合金成分は低い方が良く、加速冷却を有効に活用する
ことが好ましい。また、合金元素を増加する方法は鋳造
時に生じる中心偏析部の焼入れ性を過剰に高め、この部
分にマルテンサイト組織や残留オーステナイト組織など
の第2相を生じる危険性が高くなるため、好ましくな
い。
【0011】また、加速冷却によってフェライト、パー
ライト変態を抑制する方法は、加速冷却の条件によって
硬度が調整できるため、同一鋼材から複数の強度レベル
のレールを作り分けることが可能となり、生産のフレキ
シビリティーの点で優れる。
【0012】このようなパーライト鋼レールの高強度化
における、加速冷却熱処理法の合金増加法に対する優位
性は、ベイナイト鋼レールでも全く同じである。特にベ
イナイト鋼レールは、高温で生じるフェライト・パーラ
イト変態を防止するために、パーライト鋼レールよりも
合金添加量を増加させる必要性があり、電気抵抗、溶接
性が問題とならないようにするためには、合金添加量を
最低限に止めて、加速冷却を最大限に活用することが望
ましい。
【0013】加速冷却方法については従来から特開平0
6−240361号公報などで開示されており、その冷
媒噴射ノズルの形式を図2に模式的に示す。この公報に
示されている頭部3方向(頭頂用冷媒噴射ノズル4及び
頭側用冷媒噴射ノズル5,5)、または水平2方向(頭
側用冷媒噴射ノズル5,5)からの冷却を行うと、レー
ル断面内硬度分布は、図3(a)に示すように頭頂部と
ゲージコーナー部、頭側部の硬度がほぼ等しいか、図3
(b)に示すように頭頂部よりむしろゲージコーナー
部、頭側部の方が硬度が高められる。
【0014】また特開昭61−149436号公報に示
されている、一体型で頭部を取り囲む半円形ノズルや、
特開昭63−293115号公報に示されている、3方
水冷ノズルとエアーノズルが組み合わされた装置でも、
頭頂部に比べてゲージコーナー部、頭側部の方が硬度が
高くなりやすい。
【0015】一方、ベイナイト鋼レールは直線敷設が前
提となるため、ゲージコーナーや頭側部はほとんど摩耗
せず、主に頭頂部が摩耗する。このため直線軌道では経
年使用により、図4に示すように水平に近い形に摩耗
(点線部)していく。その際に頭側、ゲージコーナーの
硬度が高いレールであれば、頭頂の摩耗面の中でレール
中央が柔らかく、両サイドが硬い不均一な硬度分布が顕
在化し、中央部の偏摩耗が生じやすくなる。
【0016】(2)製造上の課題:ベイナイト変態温度
は500℃以下で生じ、600℃以上で生じるパーライ
ト変態に比較して低温であるため、ベイナイト鋼レール
の熱処理は、パーライト鋼レールより低温まで冷却する
必要がある。そのため熱処理の所要時間はパーライト鋼
に比較して長く、生産効率が下がると共に、冷媒噴射の
ためのエネルギー消費量が増え、省資源、環境保全の観
点から好ましくない。
【0017】本発明は、上記ベイナイト鋼レールの硬度
分布の課題、および製造における生産効率の課題に鑑
み、これを改善するために創案したものである。
【0018】
【課題を解決するための手段】ベイナイト鋼レールは、
直線軌道において発生するダークスポット損傷を防止す
るために開発されたレールであり、敷設場所は直線また
は緩曲線軌道に限定される。これらの軌道ではゲージコ
ーナーや頭側面には車輪は強く接触しないため、高い硬
度は必要ない。また直線軌道での摩耗形状を考慮する
と、図5に示すように、硬度分布はレール幅方向に均一
であることが望ましく、このような硬度分布を持つレー
ルであれば、図6に示すように使用中に頭頂面が摩耗し
ても、摩耗表面における幅方向の硬度差が少なく、幅方
向に均一な摩耗が維持される。
【0019】本発明は以上の考え方に基づいてなされた
ものであり、その要旨は以下の通りである。 (1) 鋼の化学成分が質量%で、 C :0.15〜0.45%、 Si:0.02〜2.00%、 Mn:0.3〜1.5%、 Cr:0.5〜1.5% を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、
レール頭部の表面から少なくとも深さ20mmまでが実質
ベイナイト組織を呈し、レール頭部表面の頭頂部と頭頂
部からコーナーに向かって20mm点との硬度の差、およ
び頭部表面から深さ20mmにおける、頭頂部と頭頂部か
らコーナーに向かって20mm点との硬度の差がいずれも
Hv50以下、かつ頭頂部における頭部表面と表面から
深さ40mmにおける硬度の差がHv50以上であること
を特徴とするレール頭部の幅方向に均一な硬度を持つ耐
表面損傷レール。 (2) 鋼の化学成分が質量%でさらに、Mo:0.0
1〜1.00%、Ni:0.05〜1.00%の1種ま
たは2種を含有することを特徴とする前記(1)記載の
レール頭部の幅方向に均一な硬度を持つ耐表面損傷レー
ル。 (3) 鋼の化学成分が質量%でさらに、Nb:0.0
05〜0.050%、V:0.01〜1.00%、T
i:0.005〜0.050%、の1種または2種以上
を含有することを特徴とする前記(1)もしくは(2)
に記載のレール頭部の幅方向に均一な硬度を持つ耐表面
損傷レール。 (4) 鋼の化学成分が質量%でさらに、Cu:0.0
5〜1.00%を含有することを特徴とする前記(1)
ないし(3)のいずれか1項に記載のレール頭部の幅方
向に均一な硬度を持つ耐表面損傷レール。 (5) 鋼の化学成分が質量%でさらに、B:0.00
01〜0.0050%を含有することを特徴とする前記
(1)ないし(4)のいずれか1項に記載のレール頭部
の幅方向に均一な硬度を持つ耐表面損傷レール。 (6) 鋼の化学成分が質量%でさらに、N:0.00
60〜0.0500%を含有することを特徴とする前記
(1)ないし(5)のいずれか1項に記載のレール頭部
の幅方向に均一な硬度を持つ耐表面損傷レール。 (7) 前記(1)ないし(6)のいずれか1項に記載
の成分を含有する鋼片を熱間圧延し、高温度のまま、も
しくは加熱した後、オーステナイト域から200〜50
0℃の加速冷却停止温度までを、頭頂面の真上から頭頂
面に向けて一方向に冷媒を噴射して、頭頂表面を1〜1
0℃/secの冷却速度で冷却することを特徴とするレ
ール頭部の幅方向に均一な硬度を持つ耐表面損傷レール
の熱処理製造方法。
【0020】
【発明の実施の形態】以下に本発明の実施形態について
説明する。本発明において、レール鋼は転炉、電気炉な
どで溶製し、ここで合金成分が調整される。以下にレー
ル鋼成分における各元素の役割とその限定理由を述べ
る。含有率は質量%で示す。
【0021】Cはレール鋼において必要な強度を確保す
ると共に、ベイナイト変態に欠くべからざる元素であ
り、0.15%未満ではレール鋼としての最低限の耐摩
耗性を確保することができない。また0.45%を超え
るとフェライト、パーライト組織が相当量生成して摩耗
を抑制するため、亀裂の起点となる微細な塑性変形部を
摩耗により除去することを狙いとした、本来のベイナイ
ト鋼レールの目的が達成できなくなるため好ましくな
い。
【0022】Siはベイナイト組織の素地に固溶して強
度を向上させる元素であるが、0.02%未満ではその
効果が弱く、2%を超えるとレール製造時に表面疵を生
成させることがあるため好ましくない。
【0023】Mnは焼入れ性を高め、安定してベイナイ
ト組織を生成させるために欠かかせない元素であるが、
0.3%未満ではその効果が少なく、1.5%を超える
と焼入れ性が過剰に高まり、延靭性に有害なマルテンサ
イト組織が混入するため好ましくない。
【0024】Crはフェライト変態を遅滞させ、強度を
確保するために有効な元素であるが、0.5%未満では
その効果が少なく、1.5%を超えると焼入れ性が過剰
に高まり、延靭性に有害なマルテンサイト組織を多量に
混入させてしまうため、好ましくない。
【0025】さらに上記成分の他に、ベイナイト素地の
強靭化、耐食性の向上、焼入れ性の向上によるベイナイ
ト変態の安定化、などを目的とし、必要性に応じて1種
または2種以上のMo,Ni,Nb,V,Ti,Cu,
B,Nを添加する。これらの化学成分を限定した理由を
以下に説明する。
【0026】Moは焼き入れ性を向上し、ベイナイト組
織の安定化に有効な元素であるが、0.01%未満では
その効果が得られず、1.00%を超えると炭化物の粗
大化が生じるばかりか、ベイナイト変態速度を過剰に抑
制することによりマルテンサイト組織を多量に混入させ
てしまうため、好ましくない。
【0027】Niはオーステナイト組識を安定化する元
素であり、焼入れ性を向上させてベイナイト組識を微細
化させ、延靭性の向上に寄与する。ただし、Ni量が
0.05%未満ではその効果が得られず、1.00%を
超えて添加してもそれ以上の効果が期待できない。
【0028】Cuは耐食性を向上させるために添加され
ることがあるが、0.05%未満ではその効果が得られ
ず、1.0%を超える添加はレール圧延時の熱間脆性を
顕在化させるため、好ましくない。
【0029】Vは変態を遅滞させて鋼材の強度を増加さ
せると共に、V(C,N)の析出によりベイナイト組織
を強化するのに有効である。ただしVが0.01%未満
ではその効果が得られず、1.0%を超えるとV(C,
N)の粗大化によってかえって脆化が生じるため、好ま
しくない。
【0030】Tiは、析出したTiNが高温でも溶解し
にくいことを利用して、レール圧延時のオーステナイト
粒を細粒にし、変態後の組織を微細化して延性を向上す
るために添加される。ただしTiが0.005%未満で
はその効果が得られず、0.050%を超えるとTiN
の粗大化によってかえって延靭性を損なうため、好まし
くない。
【0031】Nbはオーステナイト粒の微細化元素であ
り、レール鋼の靭性および延性を改善するために添加す
る。ただしNbが0.005%未満ではその効果が得ら
れず、0.050%を超えるとNbの金属間化合物が生
成し脆化を引き起こすため、好ましくない。
【0032】Bはベイナイト変態の際に、フェライトの
生成を抑制する効果があるため、ベイナイト組織を安定
的に生成させるために有効である。ただしBが0.00
01%未満ではその効果が弱く、0.0050%を超え
ると粗大な炭窒化物が生成し、延靭性を損なうため好ま
しくない。
【0033】Nは窒化物を形成し、ベイナイト組織の強
化に有効である。ただしNが0.0060%未満ではそ
の効果が得られず、0.0500%を超えると窒化物が
粗大化して、かえって脆化が生じるため好ましくない。
【0034】またP,Sはレール鋼に不可避不純物とし
て含まれる。P、Sいずれも0.03%以上になると延
靭性が著しく劣化するため、精錬過程で0.03%以下
に抑制することが好ましい。
【0035】上記成分を持つ圧延用素材はレール圧延に
際し、1000℃〜1350℃に再加熱されたあと、複
数の圧延機を通り、徐々にレール形状に成形され、最終
的に800℃以上のオーステナイト域温度でレール形状
に仕上げられる。その後、圧延時の高温の状態、もしく
は一旦冷却した後に再加熱して、高温のオーステナイト
温度域から冷却する際に、600℃以上の比較的高温で
生じるフェライト・パーライト変態を防止するために加
速冷却を行う。加速冷却による冷却速度は頭頂部表面〜
5mm点において、1℃/s未満ではほとんど変態挙動を
変化させる効果が無い。また冷却速度が10℃/sを超
えると鋼材表層と内部の冷却速度の差が著しくなり、両
部分の材質差が著しくなるため好ましくない。
【0036】本発明ではこのとき、加速冷却の冷媒はレ
ール鋼材の頭頂面に向けて1方向から噴射される。これ
により、主に頭頂方向への1方向の熱移動が起こり、レ
ール頭部は幅方向に均一に冷却される。その結果、ベイ
ナイト変態が生じる温度がレール幅方向に均一化され、
幅方向に均一な硬度が得られる。また、従来の複数の噴
射ノズルを用いる方法でレール頭側面に向けて噴射され
ていた冷媒も頭頂面に集約して流すことができ、頭頂面
に噴射される冷媒量が増加する結果、この部分の冷却速
度が増加し、冷却に要する時間を短縮することができ
る。
【0037】なお冷媒が直接頭頂面に噴射される幅は、
レールの頭幅の1/2以下では冷媒が頭頂の中央部に過
剰に集中するため、頭頂面中央部の硬度が過大になるた
め好ましくない。また冷媒が直接噴射される領域がゲー
ジコーナーにかかってくると、ゲージコーナーから頭側
部の硬度が上昇するため、本発明の本来の目的である幅
方向に均一な硬度分布が得られなくなる。
【0038】加速冷却の冷媒としては空気などの気体、
または空気、水の2相冷媒が熱伝達が均一であるため好
ましい。水、油などへの浸漬冷却、水スプレー冷却は鋼
材表面での膜沸騰の発生などにより冷却むらを生じ易
く、好ましくない。
【0039】また加速冷却を停止する温度は、500℃
超であるとフェライト・パーライト変態を起こす可能性
があるため好ましくない。また、加速冷却を停止する下
限温度は延靭性に有害なマルテンサイト組織の生成に関
連する。表層部の冷却速度の速い部分で、一旦微少なマ
ルテンサイトが生じても、その後のレール内部からの復
熱や、変態復熱による自己焼戻しによりマルテンサイト
が消失するため、加速冷却停止温度はマルテンサイト変
態開始温度より高くする必要はないが、加速冷却停止温
度が200℃を下回ると、一旦生じたマルテンサイト組
織が残存することがあるため好ましくない。
【0040】以上の製造方法により、レール使用上重要
な、レール頭部表面の頭頂部からコーナーに向かって2
0mmまでの範囲、および頭部表面から深さ20mm部
分における、頭頂部からコーナーに向かって20mm間
での範囲において、硬度の差がいずれもHv50以下と
なり、かつ頭頂部における頭部表面と表面から深さ40
mmにおける硬度の差をHv50以上とすることができ
る。これにより、使用中に摩耗が進んでも表面において
横方向に均一な硬度分布を持ち、かつ自然冷却による場
合よりも高い硬度としたベイナイト鋼レールを、効率的
に製造することができる。なおベイナイト組織は、車輪
からの負荷の加わるレールの頭部に少なくとも形成され
ている必要がある。
【0041】上記方法によれば、従来の加速冷却方法で
は頭頂部に加えて頭側に向けて強く噴射されていた冷媒
をレール頭頂部の冷却に集中的に使い、頭頂を強く冷却
することができる。その結果、ベイナイト鋼レールにと
って重要な頭頂面の冷却速度が上昇する。これにより、
熱処理に要する時間を短縮することが可能となる。本発
明はベイナイト鋼レールに適する硬度分布をレールに付
与することに加え、ベイナイト鋼レール製造において生
産効率を上げ、エネルギー消費量を低下することができ
る。
【0042】
【実施例】以下に本発明の実施例および比較例を示す。
表1は使用した鋼材の成分を示す。この鋼材を圧延後の
700℃以上のオーステナイト温度域から、空気噴射ノ
ズルを用いて加速冷却を行った。図7は本発明の空気噴
射ノズルを示す。冷却速度は噴射ノズルの内圧を調整し
て冷媒空気の流量を変えて調整し、レール頭頂面で輻射
温度計により測温して確認した。冷却停止温度は冷却開
始からの時間で調整した。
【0043】これらレールは室温まで冷却した後、レー
ル頭部断面の頭頂中央部から深さ10mmの位置におけ
る、光学顕微鏡による金属組織観察を行い、さらにレー
ル頭部表面および深さ20mm点における、頭頂中央部
と中央から側面方向に20mm位置における表面硬度の
差、およびレール頭部表面の頭頂中央部と頭部断面の頭
頂中央部から深さ40mm点の硬度の差をそれぞれ求め
た。硬度測定はビッカース硬度測定装置で行った。測定
結果を表2に示す。
【0044】本発明の実施例1〜5は、いずれもレール
頭部断面内で均一なベイナイト組織となり、中央部と頭
側部での硬度差がビッカース硬度番号で50以内と幅方
向に均一な硬さを持ち、かつ表面と内部の硬度差がビッ
カース硬度番号で50以上であり、表面強度の高いレー
ルが得られた。
【0045】一方、比較例1〜6は、鋼材成分は本発明
の範囲内であるが、比較例1は冷却速度が低いため、ベ
イナイト組織中にフェライト・パーライト組織が混入し
た。比較例2は冷却停止温度が高いため、ベイナイト組
織中にフェライト・パーライト組織が混入した。比較例
3〜6は3分割式空気噴射ノズルを用いたため、中央部
と頭側の硬度差が大きくなり、冷却に要する時間が長く
なり生産効率が下がった。比較例7〜9は使用鋼材が本
発明の範囲外であり、ベイナイト組織中にフェライト、
パーライト、マルテンサイトなどの異組織が混入した。
【0046】
【表1】
【0047】
【表2】
【0048】
【発明の効果】本発明の成分を有する鋼材を用い、熱間
圧延後の高温度の状態、または高温に加熱された該鋼レ
ール頭部を、レール頭頂面の直上から一方向に冷媒を噴
射することによって、頭頂方向への1方向の熱移動が起
こり、その結果、レール幅方向に均一にレールが冷却さ
れる。そして頭頂から20mmまでの範囲で、中央部と
頭側部での硬度差がビッカース硬度番号で50以内であ
り、幅方向に均一な硬さを持つベイナイト組織レールが
得られる。また、この方法は従来ゲージコーナーや頭側
部に噴射されていた冷媒を、頭頂に集中的に流すため、
頭頂部の冷却速度が上がり、より短時間で熱処理が完了
するので、生産効率が向上し、エネルギー消費量を低減
することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】レール各部の名称を示す図である。
【図2】従来の冷媒噴射ノズルを示す模式図である。
【図3】(a),(b)は従来の熱処理レールの断面内
硬度分布の模式図である。
【図4】従来の熱処理レールが直線軌道で使用された際
の摩耗形状を示す模式図である。
【図5】本発明のベイナイト鋼レールの断面内硬度分布
の模式図である。
【図6】本発明のベイナイト鋼レールが直線軌道で使用
された際の摩耗形状を示す模式図である。
【図7】本発明の冷媒噴射ノズルを示す模式図である。
【符号の説明】
1:頭頂面 2:ゲージコーナー 3:頭側面 4:頭頂用冷媒噴射ノズル 5:頭側用冷媒噴射ノズル 6:冷媒の流れ
フロントページの続き (72)発明者 芝田 雅文 北九州市戸畑区飛幡町1−1 新日本製鐵 株式会社八幡製鐵所内 (72)発明者 佐藤 琢也 北九州市戸畑区飛幡町1−1 新日本製鐵 株式会社八幡製鐵所内 Fターム(参考) 4K042 AA04 BA03 BA14 CA02 CA05 CA06 CA08 CA09 CA10 CA12 CA13 DA06 DC02 DC04 DC05 DE05 DE06

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 質量%で、 C :0.15〜0.45%、 Si:0.02〜2.00%、 Mn:0.3〜1.5%、 Cr:0.5〜1.5% を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、
    レール頭部の表面から少なくとも深さ20mmまでが実質
    ベイナイト組織を呈し、レール頭部表面の頭頂部と頭頂
    部からコーナーに向かって20mm点との硬度の差、およ
    び頭部表面から深さ20mmにおける、頭頂部と頭頂部か
    らコーナーに向かって20mm点との硬度の差がいずれも
    Hv50以下、かつ頭頂部における頭部表面と表面から
    深さ40mmにおける硬度の差がHv50以上であること
    を特徴とするレール頭部の幅方向に均一な硬度を持つ耐
    表面損傷レール。
  2. 【請求項2】 質量%でさらに、 Mo:0.01〜1.00%、 Ni:0.05〜1.00% の1種または2種を含有することを特徴とする請求項1
    記載のレール頭部の幅方向に均一な硬度を持つ耐表面損
    傷レール。
  3. 【請求項3】 質量%でさらに、 Nb:0.005〜0.050%、 V :0.01〜1.00%、 Ti:0.005〜0.050% の1種または2種以上を含有することを特徴とする請求
    項1もしくは2に記載のレール頭部の幅方向に均一な硬
    度を持つ耐表面損傷レール。
  4. 【請求項4】 質量%でさらに、 Cu:0.05〜1.00% を含有することを特徴とする請求項1ないし3のいずれ
    か1項に記載のレール頭部の幅方向に均一な硬度を持つ
    耐表面損傷レール。
  5. 【請求項5】 質量%でさらに、 B :0.0001〜0.0050% を含有することを特徴とする請求項1ないし4のいずれ
    か1項に記載のレール頭部の幅方向に均一な硬度を持つ
    耐表面損傷レール。
  6. 【請求項6】 質量%でさらに、 N :0.0060〜0.0500% を含有することを特徴とする請求項1ないし5のいずれ
    か1項に記載のレール頭部の幅方向に均一な硬度を持つ
    耐表面損傷レール。
  7. 【請求項7】 請求項1ないし6のいずれか1項に記載
    の成分を含有する鋼片を熱間圧延し、高温度のまま、も
    しくは加熱した後、オーステナイト域から200〜50
    0℃の加速冷却停止温度までを、頭頂面の真上から頭頂
    面に向けて一方向に冷媒を噴射して、頭頂表面を1〜1
    0℃/sec の冷却速度で冷却することを特徴とするレー
    ル頭部の幅方向に均一な硬度を持つ耐表面損傷レールの
    製造方法。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2012000617A (ja) * 2010-06-14 2012-01-05 Nippon Steel Corp パーライト系レールの圧延方法
JP2018003116A (ja) * 2016-07-05 2018-01-11 新日鐵住金株式会社 ベイナイト鋼レール
JP2021504573A (ja) * 2017-11-27 2021-02-15 アルセロールミタル レールの製造方法及び対応するレール

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