JP2002235149A - 棒線材とその製造方法 - Google Patents

棒線材とその製造方法

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JP2002235149A
JP2002235149A JP2001030857A JP2001030857A JP2002235149A JP 2002235149 A JP2002235149 A JP 2002235149A JP 2001030857 A JP2001030857 A JP 2001030857A JP 2001030857 A JP2001030857 A JP 2001030857A JP 2002235149 A JP2002235149 A JP 2002235149A
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cooling
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carbide
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Masamichi Kono
正道 河野
Masaki Shinkawa
雅樹 新川
Takufumi Hayashi
琢文 林
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Daido Steel Co Ltd
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Daido Steel Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 圧延ままの状態で伸線などの冷間加工が可能
な棒線材とその製造方法を提供する。 【解決手段】 C:0.25〜0.50質量%を必須成分
として含む高焼入性中炭素鋼の熱間圧延材であって、圧
延ままの状態において、フェライト組織とパーライト組
織の合量の面積率が85%以上であり、真円相当径が
0.2〜2μmでかつ針状比(長軸長/短軸長)が3以
下である炭化物の全炭化物に占める面積率が70%以上
であり、ビッカース硬さ(Hv)が230以下である棒線
材であり、これは、粗列圧延,中間列圧延、および仕上
列圧延から成る熱間圧延,巻線、ならびに冷却を連続的
に行う際に、巻線後に610〜710℃の温度で20分
以上の恒温保持を行ったのち冷却して製造される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は棒線材とそれを熱間
圧延で製造する方法に関し、更に詳しくは、圧延ままの
状態であっても軟質な組織になっているので、ただちに
伸線などの生引きを行うことができる棒線材とその製造
方法に関する。
【0002】
【従来の技術】例えば自動車用の強靱ボルトは、一般
に、C含有量が0.28〜0.48質量%であり、またC
rとMoを積極的に添加して焼入性を高めた高焼入性中
炭素鋼の熱間圧延材である棒線材を素材とし、この素材
に対する冷間鍛造品として製造されている。
【0003】その場合の一連の製造ラインの概略を図6
に示す。図6において、上記した組成の中炭素鋼の熱間
圧延材である棒線材に対しては、まず、熱軟化処理Aを
行って軟質化する。ついで、伸線加工Aを行って所定の
線径に加工したのち、熱軟化処理Bに移送して加工硬化
を除去し、同時に炭化物を球状化組織に改変する。そし
て、伸線加工Bで仕上加工を行い、最後に冷間鍛造が行
われる。
【0004】一方、上記した製造ラインにおける出発素
材である棒線材は、概ね、図7で示した製造ラインで製
造されている。この製造ラインは、大きくは、加熱工
程,圧延工程,巻線工程、および冷却工程で構成され、
そのうちの圧延工程は、粗列圧延,中間列圧延、および
仕上列圧延の3工程で構成されている。
【0005】まず、上記した中炭素鋼から成る鋼片は加
熱炉で加熱されたのち所定の抽出温度で加熱炉から抽出
される。ついで、粗列,中間列の熱間圧延を順次経由
し、最後に仕上列で所定の線径に熱間圧延されたのち巻
線工程に移送されて所定の巻取り温度でコイリングさ
れ、最後に、所定の冷却速度で冷却される。ところで、
図6で示した製造ラインにおいて、熱軟化処理Aは棒線
材を軟質化して伸線加工Aにおける断線を防止するとと
もに、伸線ダイスの寿命向上のために行われる処理であ
る。しかしながら、この熱軟化処理Aは高温下で長時間
行うことが必要であるため、熱経費の点と処理時間の点
で、この熱軟化処理Aを省略することが要求されてい
る。すなわち、熱間圧延ままの状態にある棒線材に対し
てただちに伸線加工Aを行うこと、棒線材のいわゆる
「生引き」に対する要求が強まっている。
【0006】そして、図7で示した製造ラインで得られ
た棒線材の場合、それが熱間圧延ままの状態であって
も、その引張強さ(Ts)が800MPa以下、別の特性表
示で示せば、そのビッカース硬さ(Hv)が230以下の
値を示すものであれば、その棒線材は軟質であり、ただ
ちに伸線工程Aで生引きすることが可能である。ところ
で、図7の製造ラインで中炭素鋼を熱間圧延した場合、
圧延ままの状態、すなわち巻線工程が終了した段階で
は、得られた棒線材は、一般に、フェライト組織,パー
ライト組織,ベイナイト組織、およびマルテンサイト組
織が混在する組織になっている。そして、CrやMoな
どの焼入性の向上成分を含有する中炭素鋼の場合は、巻
線後の冷却過程でベイナイト組織やマルテンサイト組織
を生じて冷間加工性の劣化が起こりやすい。
【0007】このようなことを考慮すると、圧延ままの
状態における棒線材のHv値を230以下にして、その冷
間加工性を良好にするためには、その棒線材は、ベイナ
イト組織やマルテンサイト組織が極力少なく、大部分が
フェライト組織とパーライト組織になっていることが好
ましいことになる。このような観点に立って、従来か
ら、図7で示した製造ラインにおける巻線後の制御冷
却、または仕上列の圧延時における制御圧延と巻線後の
制御冷却との組み合わせにより、圧延ままの状態での生
引きが行われている。
【0008】例えば巻線後の制御冷却の場合、通常、
0.5〜5℃/秒の冷却速度で巻線が冷却されるように
管理されている。その場合、焼入性の向上成分であるC
rやMoが含有されていない中炭素鋼では、上記した冷
却速度であっても、ベイナイト組織やマルテンサイト組
織の生成が抑制され、得られた棒線材は大部分がフェラ
イト組織とパーライト組織で構成されるので、圧延まま
の状態でも生引きは可能になる。
【0009】しかしながら、上記した焼入性の向上成分
を含有する中炭素鋼の場合は、上記した冷却速度では、
ベイナイト組織とマルテンサイト組織が生成する。その
ため、例えば鋼片の抽出温度を1000℃とし、仕上列
の圧延時の仕上温度を950℃とし、巻線時の巻取り温
度を750〜850℃とし、その後の制御冷却を約0.
2℃/秒という緩徐な冷却速度で温度640℃まで徐冷
するという態様が実施されている。この場合には、温度
640℃までの制御冷却の過程でベイナイト組織とマル
テンサイト組織の生成が抑制された状態でフェライト変
態とパーライト変態は完了するので、得られた棒線材の
生引きは可能になる。
【0010】また、仕上列の制御圧延と制御冷却との組
み合わせの場合には、仕上列圧延時の仕上温度を低温
(例えば880℃)側に設定すると同時に大きな加工歪
みを付加してオーステナイト組織を微細化したのち、例
えば温度750℃で巻取り、その後の制御冷却を約0.
4℃/秒で行うことによって、ベイナイト組織とマルテ
ンサイト組織の混入を抑制するという態様が実施されて
いる。
【0011】この場合には、ベイナイト組織とマルテン
サイト組織の混入が抑制され、また微細なオーステナイ
ト組織にはフェライト組織の析出サイトが多数存在して
いるのでフェライト変態が促進されることになり、得ら
れた棒線材の組織はフェライト組織とパーライト組織が
大部分を占め、そのHv値も230以下になる。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】上記したように、高焼
入性の中炭素鋼の棒線材を圧延ままの状態で生引きする
ことは、図7で示した製造ラインにおける運転条件を制
御することによって可能である。しかしながら、上記し
た制御冷却,仕上列圧延制御と制御冷却との組み合わせ
のいずれの場合であっても、巻線後の制御冷却時に緩徐
な冷却速度を採用することが必要であるため、冷却時間
は長くなり、棒線材が冷却ラインに滞留する時間も長く
なり、それに対応できるように長いラインコンベアの設
置が必要になるという問題がある。
【0013】この問題は、巻線時の巻取り温度を低下せ
しめることにより、冷却時間を短縮することによって解
消できる。しかしながら、巻取り温度が低下すると、そ
れに応じてフェライト変態点とパーライト変態点はいず
れも低下し、フェライト組織の微細化とパーライト組織
におけるラメラ間隔が狭くなって棒線材は硬化し、ま
た、巻取り温度が低下すればするほど、巻取られる棒線
材の中炭素鋼におけるベイナイト変態はそのTTT曲線
のノーズ近辺に位置するようになるため、仮にその後の
制御冷却が0.2℃/秒程度の冷却速度で行われても、
得られた棒線材にはベイナイト組織が混入してくる。こ
のようなことから、圧延ままでの生引きを目標とした場
合、巻取り温度を750℃より下げることは不適切であ
る。
【0014】また、例えば仕上列圧延時の仕上温度や巻
取り温度などの制御冷却の前段における各ユニット工程
の運転条件が変動すると、得られる棒線材における組織
も微妙に変化するものと考えられるが、その組織変化に
対応して前記した制御冷却における冷却速度も変化させ
ることが必要になると考えられる。しかしながら、上記
運転条件の変動に対応して後段の制御冷却の条件を変化
させて、圧延ままで生引きが可能な棒線材を連続的に製
造することは、図7で示した実際の製造ラインのルーチ
ン稼働の点からいえば極めて困難である。
【0015】このようなことから、圧延ままの状態で生
引きが可能な棒線材を図7で示した製造ラインで製造す
る場合、巻線後の制御冷却時における冷却速度を大きく
することは、生産性の点や設置スペースの点からいって
も有用である。また、仮に、制御冷却の前段の各ユニッ
ト工程の運転条件の変動に伴う組織変化を吸収・消去で
きるユニット工程を、制御冷却の直前に配置することが
できるとすれば、そのことは、図6の製造ラインで、圧
延ままの状態で生引きが可能な棒線材を安定してかつ効
率よく製造することを可能にするので有用である。
【0016】本発明は、上記した課題を実現することを
目的とし、具体的には、圧延ままの状態での生引きが可
能な棒線材と、それを熱間圧延で製造する方法であっ
て、最終工程の制御冷却の直前に、それまでのユニット
工程の運転条件の変動に伴う棒線材の組織の変化を解消
・消去することができる後述の恒温保持工程を配置した
ことを特徴とする棒線材の製造方法の提供を目的とす
る。
【0017】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記した
目的を達成するために強靱鋼を用いて次のような実験を
行った。まず、強靱鋼の鋼片を3℃/秒の昇温速度で温
度860℃にまで加熱して60秒間保持し、ついで、温
度750℃,圧下率33%,ロール周速200mm/秒の
熱間圧延を行ったのち、各種の一定温度(Tk℃)で20
分間保持したのち、冷却速度3℃/秒で温度280℃ま
で冷却した。
【0018】そして、得られた各処理片につきHv値を測
定した。その結果、圧延ままの状態で生引きが可能であ
る230以下というHv値は、後述するTk値の範囲内にあ
ることを見出した。また、各Tk値の恒温保持によって得
られた鋼片の組織を走査電子顕微鏡で観察し、Hv値が2
30以下である鋼片の組織とHv値が230から大きく外
れる鋼片の組織とを比較検討した。
【0019】その結果、いずれの鋼片にも炭化物が認め
られるが、Hv値が230以下である鋼片の場合は、その
炭化物の全体形状は大きく、しかも球状化が進んでいる
との事実を見出した。しかも、顕微鏡の視野内において
は、フェライト組織とパーライト組織がほとんどであ
り、ベイナイト組織は基本的には認められなかったか、
存在していてもわずかであった。
【0020】これらの知見に基づき、本発明者らは更に
研究を重ね、本発明で規定する組織を有する棒線材とそ
の製造方法を開発するに至った。すなわち、本発明の棒
線材は、C:0.25〜0.50質量%を必須成分として
含む高焼入性中炭素鋼の熱間圧延材であって、圧延まま
の状態において、フェライト組織とパーライト組織の合
量の面積率が85%以上であり、真円相当径が0.2〜
2μmでかつ針状比(長軸長/短軸長)が3以下である
炭化物の全炭化物に占める面積率が70%以上であり、
ビッカース硬さ(Hv)が230以下であることを特徴と
する。
【0021】また、本発明においては、C:0.25〜
0.50質量%を必須成分として含む高焼入性中炭素鋼
の鋼片に、粗列圧延,中間列圧延、および仕上列圧延か
ら成る熱間圧延,巻線、ならびに冷却を連続的に行う棒
線材の製造方法において、巻線後に610〜710℃の
温度で20分以上の恒温保持を行ったのち冷却すること
を特徴とする棒線材の製造方法が提供される。
【0022】
【発明の実施の形態】本発明の棒線材は高焼入性中炭素
鋼の圧延材である。具体的には、C:0.25〜0.50
質量%を必須成分とし、更に積極的に、Mn,Cr,M
oなどの焼入性向上成分を添加して成る中炭素鋼の圧延
材である。このような高焼入性中炭素鋼としては、例え
ば、Mn鋼,Mn−Cr鋼,Cr鋼,Ni−Cr鋼,M
o−Cr鋼,Ni−Cr−Mo鋼,B鋼などの強靱鋼を
あげることができる。
【0023】とくに、C:0.25〜0.50質量%,S
i:0.15〜1.0質量%,Mn:0.30〜2.0質量
%,Cr:0.3〜2.0質量%,Mo:0.10〜0.5
質量%,Al:0.01〜0.05質量%,N:0.00
1〜0.05質量%,残部がFeおよび不可避的不純物
から成る中炭素鋼は、自動車用の各種強靱ボルトとして
の用途が多く、この点で好適である。
【0024】本発明の棒線材は、後述する図1で示した
製造ラインで製造されるものであるが、巻線工程の終了
後、すなわち圧延ままの状態で、そのHv値は230以下
になっている。したがって、この棒線材は、この状態
(圧延ままの状態)でも図6で示した熱軟化処理Aを行
うことなく、直接、伸線などの冷間加工を行うことがで
きる。
【0025】そして、この棒線材は、圧延ままの状態
で、その組織を顕微鏡にてある視野で観察したときに、
フェライト組織とパーライト組織の領域を合わせた面積
の割合(面積率:%)が、視野の全体に対して85%以
上になっている。また、組織には炭化物が析出してい
て、そのうち、真円相当径が0.2〜2μmでありかつ
針状比(長軸長/短軸長)が3以下である炭化物は全炭
化物のうち面積率で70%以上になっていることを特徴
とする。
【0026】ここで、フェライト組織とパーライト組織
の合量の面積率(VFP)とは次のようにして測定された
値のことをいう。まず、同一部位を撮影した適当な倍率
の組織写真を2枚用意する。そして、それぞれの写真に
おける組織撮像部位の面積をA0とする。1枚目の写真
上におけるフェライト組織の領域を着色し、画像処理に
よって着色部の面積(AF)を求める。同様にもう1枚
の写真上におけるパーライト組織の領域を着色し、同じ
く画像処理によってその着色部の面積(AP)を求め
る。
【0027】ついで、100×AF/A0,100×AP
/A0を計算し、それぞれ、フェライト分率:VF(%)
とパーライト分率:VP(%)を求める。そして、VF
Pを計算し、これをVFP(%)とする。また、真円相
当径とは、組織を顕微鏡観察したときに、視認された炭
化物の面積を測定し、その面積と同じ面積を有する真円
の直径のことをいい、更に針状比とは、視認された炭化
物の長軸長と短軸長を測定し、その長軸長を短軸長で除
算して得られる値のことをいう。
【0028】圧延ままの状態における本発明の棒線材の
組織は、フェライト組織とパーライト組織を主体とする
基地の中に炭化物が分布した組織になっている。その場
合、棒線材の組織にはベイナイト組織やマルテンサイト
組織も混入しているが、上で規定した形状特性の炭化物
の全炭化物に対する面積率が前記したように規定されて
いることを前提にしたうえで、上記したVFP値が85%
以上の組織になっていれば、ベイナイト組織やマルテン
サイト組織が冷間加工性に及ぼす悪影響を消去して、棒
線材のHv値を230以下にすることができる。しかしな
がら、VFP値が85%より小さい組織の場合には、ベイ
ナイト組織やマルテンサイト組織の影響が強く発現して
Hv値を230以下にすることができず、その結果、圧延
ままの状態での生引きはできない。
【0029】次に、本発明の棒線材の組織における炭化
物について説明する。一般に、圧延ままの状態にあって
は炭化物は層状である。しかしながら、本発明の棒線材
の場合は、後述する恒温保持工程を経ることにより、あ
る針状比を有するある大きさの炭化物となり、それがあ
る割合で基地内に分布していることを特徴とする。
【0030】すなわち、針状比が3以下で、かつ、真円
相当径が0.2〜2μmであり、形状としては、比較的
大きく、また傾向として球状化している炭化物が基地内
に分布しており、そしてこの炭化物の炭化物全体に対す
る割合が面積率(これをVθとする)で70%以上にな
っていることである。なお、上記した条件を満たす炭化
物の面積率(Vθ)とは以下の手順で算出される値のこ
とをいう。
【0031】(1)任意の視野における炭化物の個数、
それぞれの面積、それぞれの真円相当径、およびそれぞ
れの針状比を求める。 (2)全炭化物の合計面積(VθA)を求める。 (3)針状比と真円相当径が、いずれも上記した数値条
件を満たしている炭化物の合計面積(VθS)を求め
る。
【0032】(4)100×VθS/VθAを算出し、こ
れをVθとする。これらの条件を同時に満たすとき、棒
線材のHv値は230以下となり、その生引きを実現する
ことができ、いずれか1つでも上記した値から外れてい
る場合、例えば、真円相当径が0.2μmより小さい微
細炭化物である場合や、上記形状特性は満たしているも
のの炭化物全体に対する割合が70%未満と少ない場合
には、棒線材は硬くなり、生引きを実現することはでき
なくなる。
【0033】次に、上記した棒線材の製造方法について
説明する。この棒線材は図1で示した製造ラインで製造
される。このラインは、図7で示した製造ラインにおい
て、巻線工程と冷間工程の間に後述する恒温保持工程を
介装して組み立てられている。ここで、恒温保持工程
は、巻線終了後の棒線材を、610〜710℃の温度域
内のある一定温度(Tk℃)で20分以上保持する工程で
ある。雰囲気は大気であってよい。
【0034】Tkを610℃より低い温度に設定すると、
層状の炭化物の分断とそれに伴う前記した形状特性の炭
化物の生成が進まず、しかも、その温度はTTT曲線の
ノーズ近辺の温度となるため、ベイナイト組織の生成・
混入が生起して、得られた棒線材のHv値を230以下に
することができなくなる。また、Tkを710℃より高温
に設定すると、炭化物の球状化は進むとはいえそれを実
現するためには、保持時間を長くしなければならず、更
には前記した形状特性を満たさなくなり、棒線材のHv値
は230以下にならない。
【0035】このようなことから、Tkは610〜710
℃に設定されることが必要である。また、保持時間は、
パーライト変態が終了するに必要な時間であればよく、
この鋼種の場合には、最短でも20分であればよい。勿
論、それより長い時間保持してもよいが、熱経済的に不
利である。なお、図1で示した製造ラインにおいて、上
記した恒温保持工程までの各ユニット工程の運転条件は
適宜に設定されるが、例えば次のように運転することが
好ましい。
【0036】すなわちまず、鋼片を温度750〜950
℃で加熱炉から抽出する。そして圧延工程においては、
仕上列圧延の前段圧延時における棒線材の中心部の最高
到達温度を950℃以下に規制し、仕上列圧延の直前に
おける棒線材の中心部の温度を650〜850℃に規制
し、仕上列圧延は2パス以上行い、かつ1パス当たりの
減面率を6%以上とする。そして、巻線工程において
は、棒線材の表面温度を650〜850℃に規制して巻
線する。
【0037】ところで、図1で示した製造ラインを運転
する場合、恒温保持工程の前段工程における運転条件
は、常に一定であるとは限らず、通常、微妙に変動して
いる。そのため、対象鋼種が同じであったとしても、巻
線後に得られる棒線材の組織が微妙に変化することもあ
り、その結果、Hv値も変化して冷間加工性に差異が生ず
ることもある。
【0038】しかしながら、本発明においては、巻線後
における棒線材の微妙な組織の差異は、上記した恒温保
持工程を経由する過程で解消されることになる。すなわ
ち、本発明で設定した恒温保持工程は、その前段工程に
おける運転条件の変動がもたらす棒線材組織の差異を消
去して、冷間加工性に優れた棒線材を安定した状態で製
造するためのユニット工程としても機能する。
【0039】なお、本発明の場合、この恒温保持工程の
後段に位置する冷却工程では、図7で示した従来の製造
ラインにおける制御冷却の場合のように、緩徐な冷却速
度を必須とする運転条件を必ずしも採用しなくてもよ
い。例えば3℃/秒以上という早い冷却速度を採用して
も、ベイナイト組織やマルテンサイト組織の生成は起こ
らず、Hv値を230以下に確保することができる。
【0040】したがって、本発明の製造ラインでは、図
7で示した製造ラインの場合に比べて、冷却ラインは短
くなり、またライン上の搬送時間も短縮されるので、全
体としての生産性が向上する。
【0041】
【実施例】鋼種がJIS SCM435で、1辺の長さ
が155mmの断面形状を有する鋼片を用い、図1で示し
た製造ラインで直径7.5mmの棒線材(コイル)を製造
した。なお、恒温保持工程の前段までのラインの運転条
件は次のように設定した。すなわち、加熱炉からの鋼片
の抽出温度:950℃、粗列圧延は6パス、中間列圧延
は14パス、仕上列圧延は2パスとし、仕上列圧延の前
段圧延における被圧延材中心部の最高到達温度:900
℃、仕上列圧延の直前における被圧延材中心部の温度:
800℃、仕上列圧延1パス当たりの減面率:7%に設
定し、巻取り時の表面温度:750℃で巻線を行った。
【0042】得られた巻線コイルにつき、表1で示した
温度(Tk)で20分間の恒温保持工程を行い、その後、
3℃/秒の冷却速度で温度280℃にまで冷却した。得
られた棒線材(コイル)につき、その中心部のHv値を測
定した。また、フェライト組織とパーライト組織の合量
の面積率(%)、炭化物の針状比と真円相当径を測定し
た。そして、針状比が3以下で、真円相当径が0.2〜
2μmである炭化物の全炭化物に対する面積率(%)を
求めた。以上の結果を一括して表1に示した。なお、保
持温度(Tk)とHv値については図2にも示した。
【0043】
【表1】
【0044】表1および図2から次のことが明らかであ
る。 (1)図2から明らかなように、棒線材のHv値は、Tkを
610〜710℃に設定したときに230以下となって
いる。すなわち、Tk値を上記温度域に設定することによ
り、棒線材は圧延ままの状態で生引きが可能になってい
る。 (2)表1から明らかなように、Hv値が230以下であ
る実施例の棒線材の場合、組織のVFP値は85%以上に
なっており、また炭化物に関しては、針状比が3以下で
かつ真円相当径が0.2〜2μmの炭化物の面積率が7
0%以上であるときに、Hv値が230以下になってい
る。
【0045】そこで、実施例1、比較例1および比較例
2の棒線材の組織につき、電子顕微鏡写真(×500
0)を撮影した。実施例1の場合を図3、比較例1の場
合を図4、比較例2の場合を図5として示した。図から
明らかなように、実施例1の棒線材の組織では、全体と
して炭化物の数が少なく、そして、粗大でしかも球状化
形状の炭化物の割合が大きくなっている。これに反し、
比較例1の場合は、炭化物は分断組織になっているが、
全体として微細であり、比較例2の場合は、炭化物は全
体として微細であり、しかもそのほとんどは偏平形状に
なっている。
【0046】このようなことから、本発明で規定する恒
温保持の条件は、図3のような組織を形成し、もって圧
延ままの状態で生引き可能な棒線材の製造を可能にす
る。
【0047】
【発明の効果】以上の説明で明らかなように、本発明で
規定する恒温保持の条件を付加して製造した棒線材は、
C:0.25〜0.50質量%を必須成分として含む高焼
入性中炭素鋼の熱間圧延材であって、圧延ままの状態に
おいて、フェライト組織とパーライト組織の合量の面積
率が85%以上であり、真円相当径が0.2〜2μmで
かつ針状比(長軸/短軸)が3以下である炭化物の全炭
化物に占める面積率が70%以上であり、ビッカース硬
さ(Hv)が230以下となり、そのままで伸線などの冷
間加工が可能である。
【0048】したがって、本発明の棒線材は高焼入性の
中炭素鋼から成るものであるが、そのHv値が230以下
となるように管理された材料であるため、圧延ままの状
態で伸線することができ、この棒線材を用いて高靭性ボ
ルトを製造する場合などには従来のような伸線に先立つ
熱軟化処理を行うことが不要となる。そして、本発明で
は、冷却の直前に恒温保持工程を配置したことにより、
冷却時の冷却速度を大幅に速めることが可能となる。
【0049】したがって、本発明によれば、制御冷却に
要する時間を短縮することができ、またコンベア長を短
くすることも可能となる。このようなことから、本発明
の棒線材とその製造方法の工業的価値は極めて大であ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の製造ラインを示す模式図である。
【図2】恒温保持温度と製造された棒線材のビッカース
硬さとの関係を示すグラフである。
【図3】実施例1の棒線材の組織の電子顕微鏡写真であ
る。
【図4】比較例1の棒線材の組織の電子顕微鏡写真であ
る。
【図5】比較例2の棒線材の組織の電子顕微鏡写真であ
る。
【図6】棒線材から冷間鍛造品を製造するときの製造ラ
インの1例を示す概略図である。
【図7】従来の棒線材の製造ラインを示す模式図であ
る。
フロントページの続き (72)発明者 林 琢文 愛知県知多郡阿久比町大字福住字高根台20 −12 Fターム(参考) 4K043 AA02 AB01 AB04 AB10 AB11 AB15 AB18 AB20 AB27 BA06 EA03 FA03

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 C:0.25〜0.50質量%を必須成分
    として含む高焼入性中炭素鋼の熱間圧延材であって、圧
    延ままの状態において、フェライト組織とパーライト組
    織の合量の面積率が85%以上であり、真円相当径が
    0.2〜2μmでかつ針状比(長軸長/短軸長)が3以
    下である炭化物の全炭化物に占める面積率が70%以上
    であり、ビッカース硬さ(Hv)が230以下であること
    を特徴とする棒線材。
  2. 【請求項2】 C:0.25〜0.50質量%を必須成分
    として含む高焼入性中炭素鋼の鋼片に、粗列圧延,中間
    列圧延、および仕上列圧延から成る熱間圧延,巻線、な
    らびに冷却を連続的に行う棒線材の製造方法において、 巻線後に610〜710℃の温度で20分以上の恒温保
    持を行ったのち冷却することを特徴とする棒線材の製造
    方法。
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