JP2002226738A

JP2002226738A - インクジェット記録用インクセット及びこれを用いたインクジェット記録方法

Info

Publication number: JP2002226738A
Application number: JP2001021655A
Authority: JP
Inventors: Junichi Sakurai; 純一櫻井
Original assignee: Canon Aptex Inc
Current assignee: Canon Finetech Nisca Inc
Priority date: 2001-01-30
Filing date: 2001-01-30
Publication date: 2002-08-14

Abstract

(57)【要約】（修正有）【課題】形成されるカラー画像が色再現性、耐光性、
画像品位に優れ、インクの定着性や発一性、長期間のイ
ンク保存安定性に優れる顔料系インクを用いるインクジ
ェット記録用インクセット、これを用いた記録方法の提
供。【解決手段】黄、赤、青、及び黒インクからなるイン
クセットの各水系顔料インクが顔料１〜１０重量％、分
散剤を顔料に対して５〜５０重量％、アセチレングリコ
ール化合物０．２〜２重量％を含み、黄インクが0.08〜
0.18μmのC.I.ピグメントイエロー９３を有し、赤イン
クが0.04〜0.18μmのC.I.ピグメントレッド１２２を有
し、青インクが0.04〜0.13μmのC.I．ピグメントブルー
１５：３を有し、黒インクが0.07〜0.12μmのカーボン
ブラックを有するインクジェット記録用インクセット及
びインクジェット記録方法。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、インクジェットカ
ラー記録において、鮮明で高品質な画像を与え、しかも
該画像が優れた耐光性を有するインクジェット記録用イ
ンクセット及びインクジェットカラー記録方法に関す
る。

【０００２】

【従来の技術】従来、液体インクをインクジェットヘッ
ドノズルから噴射することにより、上質紙、コピー用
紙、レター紙等のいわゆる普通紙や、表面にインク受容
層が設けられているインクジェット用記録媒体、更に
は、プラスチックや布等の被記録媒体上にプリントする
インクジェット記録装置には、水系溶媒に色材として染
料を溶解した水系染料インクや、又、液中に分散剤等で
顔料を分散した顔料分散体を色材として用いた水系顔料
インクが使用されている。一般的に、インクジェット記
録には水系染料インクが用いられるが、染料系インクの
大きな問題点としては、形成される画像の耐水性能及び
耐光性能が悪いという点が挙げられる。即ち、染料系イ
ンクの色材に用いられる染料は、その本来の性質として
耐光性性能が悪いため、かかる染料インクによって印字
出力された印字画像の耐光性も悪かった。これに対し、
近年、水溶性高分子樹脂等を分散剤に用いて、顔料粒子
を微細分散した顔料分散体を色材とする水系顔料インク
を、オンデマンドインクジェット記録に用いた記録装置
が上梓されるようになってきている。

【０００３】これ迄に知られている顔料インクを用いた
インクジェット記録方法としては、例えば、特開平６−
００１９３６公報に、使用する顔料粒子の平均粒径、及
びインクの表面張力を規定し、且つ、アセチレングリコ
ールを含ませることにより滲みのない画像が得られる記
録方法が提案されている。又、特開２０００−２１２４
８６公報には、インクを構成する、顔料、分散剤、アセ
チレングリコール、及び高分子分散剤を規定することに
より、定着性の良好なインク組成物を得ることが提案さ
れているが、本発明者らの検討によれば、かかるインク
は、インク中の不純物によって、長期間における保存安
定性を確保することが困難である。

【０００４】又、特開平１０−２３７３６６公報には、
水性媒体中の表面活性水素含有量を規定し、アセチレン
グリコールのアルキレンオキサイド付加物を含ませるこ
とにより、環境変動の少ないインクとすることが提案さ
れている。しかし、本発明者等が検討した結果、使用す
る顔料の種類によっては、耐光性能の悪いものがあるこ
と、更には、水系顔料インクに、アセチレングリコール
化合物が一定量以上が含有されると、長期間におけるイ
ンクの保存安定性が低下することが確認された。

【０００５】一方、アセチレングリコール化合物を含有
させない場合は、一定期間記録ヘッドを印字させない状
態で大気中に曝露すると、その後の吐出性能に影響を及
ぼすことも確認された。それは、印字の際、大気中に曝
露されている非印字ノズル部においては、インク中の揮
発成分が蒸発し、インクの粘度が上昇してしまうため、
次の吐出の際にドットが小径化し、画像品質の劣化を生
じてしまうからであると考えられる。そのため、こうし
た記録装置では、印字中に定期的に、記録に関係ないイ
ンクを吐出させ（これを予備吐という）、フレッシュな
インクを印字ノズル部に供給する必要があり、キャリッ
ジに記録ヘッドを搭載してキャリッジを走査するシリア
ル型記録装置では、印字中にプラテン両端の非記録領域
で予備吐を行い、フルマルチ記録ヘッドの場合は、印字
を一時停止し、キャップ等にヘッドを移動させて予備吐
させている。そのため、特に、フルマルチ記録ヘッドの
場合は、印字速度が低下するという問題が発生するの
で、大気曝露後の吐出性能は重要である（この性能を発
一性という）。

【０００６】以上述べたように、従来の技術では、顔料
系インクを用い、形成されるカラー画像が、色再現性、
耐光性、及び画像品位に優れたものであり、インクの定
着性や、インクジェット記録ヘッドにおける発一性に優
れ、長期間におけるインクの保存安定性にも優れる等、
全ての特性を満足するインクジェット記録方法を提供す
ることは困難であった。

【０００７】

【発明が解決しようとする課題】従って、本発明の目的
は、顔料系インクを用いるインクジェット記録方法にお
いて、形成されるカラー画像が、色再現性、耐光性、及
び画像品位に優れたものであり、しかも、インクの定着
性やインクジェット記録ヘッドにおける発一性にも優
れ、更に、長期間におけるインクの保存安定性に優れる
等、全ての特性を満足するインクジェット記録用インク
セット、該方法を用いたインクジェット記録方法を提供
することにある。

【０００８】

【課題を解決するための手段】上記の目的は、下記の本
発明によって達成される。即ち、本発明は、インクジェ
ット記録装置に搭載されて使用されるイエローインク、
マゼンタインク、シアンインク及びブラックインクから
なるインクジェット記録用インクセットにおいて、各イ
ンクが、少なくとも顔料、分散剤、アセチレングリコー
ル化合物、及び水系媒体を含有し、（ａ）顔料がインク
中に１〜１０重量％含まれ、（ｂ）分散剤が、前記顔料
分に対して５〜５０重量％含まれ、（ｃ）アセチレング
リコール化合物がインク中に０．２〜２重量％含まれ、
上記顔料として、（ｄ）イエローインク中にＣ．Ｉ．ピ
グメントイエロー９３を含有し、且つ、分散された状態
での顔料の平均粒径が０．０８〜０．１８μｍの範囲内
であり、（ｅ）マゼンタインク中にＣ．Ｉ．ピグメント
レッド１２２を含有し、且つ、分散された状態での顔料
の平均粒径が０．０４〜０．１８μｍの範囲内であり、
（ｆ）シアンインク中にＣ．Ｉ．ピグメントブルー１
５：３を含有し、且つ、分散された状態での顔料の平均
粒径が０．０４〜０．１３μｍの範囲であり、（ｇ）ブ
ラックインク中にカーボンブラックを含有し、且つ、分
散された状態での顔料の平均粒径が０．０７〜０．１２
μｍの範囲内であることを特徴とするインクジェット記
録用インクセット、及び該インクセットを用いたインク
ジェット記録方法である。

【０００９】本発明の好ましい形態としては、各インク
中に含まれるリンの量が、６０ｐｐｍ以下に制御されて
いるもの、各インク中に含まれるカルシウムの量が、１
００ｐｐｍ以下に制御されているもの、各インク中に含
まれる鉄の量が、２０ｐｐｍ以下に制御されているも
の、各インク中に含まれる珪素の量が、２０ｐｐｍ以下
に制御されているもの、更に、各インク中に含まれるリ
ンの量が６０ｐｐｍ以下、カルシウムの量が１００ｐｐ
ｍ以下、鉄の量が２０ｐｐｍ以下、及び珪素の量が２０
ｐｐｍ以下にそれぞれ制御されているものが挙げられ
る。

【００１０】

【発明の実施の形態】本発明者等は、上記した従来技術
の課題を解決すべく、水系インク中の顔料の分散性に影
響を与える種々の要因について鋭意検討した結果、イエ
ロー、マゼンタ、シアン及びブラックの各水系顔料イン
クを組み合わせたインクジェット記録用インクセットに
おいて、各顔料インクの、顔料種、顔料粒子の粒径、顔
料の含有量を所望のものとし、且つアセチレングリコー
ル化合物の含有量を制限することで、更に好ましくは、
インク中に含まれる不純物量を制限することによって、
かかるインクセットを用いて得られる画像は、色再現
性、耐光性及び画像品位に優れ、しかも、かかるインク
セットは、インクの定着性及び発一性に優れ、更に、長
期間にわたってインクの保存安定性を維持できる優れた
ものであることを見出して本発明に至った。

【００１１】本発明のインクジェット記録用インクセッ
トは、イエローインク、マゼンタインク、シアンインク
及びブラックインクからなり、これらの各インクが、少
なくとも、顔料、分散剤、アセチレングリコール化合
物、及び水系媒体を含有してなり、且つ、それぞれの含
有量が、（ａ）顔料が、インク中に１〜１０重量％、
（ｂ）分散剤が、前記顔料分に対して５〜５０重量％、
（ｃ）アセチレングリコール化合物が、インク中に０．
２〜２重量％となるように構成される。更に、これに加
えて、これらの各インクに含まれる顔料の組み合わせ
が、（ｄ）イエローインク中には、Ｃ．Ｉ．ピグメント
イエロー９３が含有され、且つ、分散された状態での顔
料の平均粒径が０．０８〜０．１８μｍの範囲内であ
り、（ｅ）マゼンタインク中には、Ｃ．Ｉ．ピグメント
レッド１２２が含有され、且つ、分散された状態での顔
料の平均粒径が０．０４〜０．１８μｍの範囲内であ
り、（ｆ）シアンインク中には、Ｃ．Ｉ．ピグメントブ
ルー１５：３が含有され、且つ、分散された状態での顔
料の平均粒径が０．０４〜０．１３μｍの範囲であり、
（ｇ）ブラックインク中には、カーボンブラックが含有
され、且つ、分散された状態での顔料の平均粒径が０．
０７〜０．１２μｍの範囲内となるように構成されてい
ることを特徴とする。

【００１２】上記したように、本発明のインクジェット
記録用インクセットを構成する各インクの特徴の一つ
は、アセチレングリコール化合物が、インク中に０．２
〜２重量％含有されることにある。先に述べたように、
インク中にアセチレングリコール化合物を含有させる
と、インクの特性を向上させる種々の効果が得られる
が、本発明者らの検討によれば、水系顔料インク中に、
アセチレングリコール化合物が一定量以上含有される
と、長期間における保存安定性が低下するため、含有量
を上記したように規定する必要があることがわかった。
アセチレングリコール化合物をインクに含有させると保
存安定性が低下する原因は、次のように考えられる。ア
セチレングリコール化合物は、水系顔料インク中で水溶
化しているため、表面活性の強いアセチレングリコール
化合物が、顔料の分散剤として用いられている高分子分
散剤と置き換わり、顔料に吸着することが起こる。顔料
表面に吸着していた高分子分散剤と比べ、アセチレング
リコール化合物の立体障害効果は小さいため、顔料の分
散性は低下する。このため、水系顔料インク中にアセチ
レングリコール化合物が一定量以上含有された場合に、
長期間における保存安定性が低下することが生じるもの
と考えられる。

【００１３】本発明者らの検討の結果、本発明のインク
ジェット記録用インクセットを構成する各水系顔料イン
ク中には、アセチレングリコール化合物を、０．２〜２
重量％の範囲で含有させることが必要であることがわか
った。即ち、アセチレングリコール化合物の添加量が
０．２重量％以下の場合は、所望の発一性能が得られな
い。これは、ノズル部材や、ヒーター表面でのインクの
ぬれ性が十分に得られないため、発一性能が低下するた
めと考えられる。一方、アセチレングリコール化合物の
添加量が２重量％以上の場合、上述した理由により、顔
料の分散性が著しく低下し、顔料インクの長期保存安定
性が損なわれる。更に、より長期間での分散安定性と発
一性能を両立させるためには、アセチレングリコール化
合物の添加量を０．５〜１重量％とすることが好まし
い。

【００１４】本発明で用いるアセチレングリコール化合
物としては、下記式で表されるものが挙げられる。（ここで、Ｒ¹、Ｒ²、Ｒ³、及びＲ⁴はそれぞれ独立し
て、炭素数１〜６のアルキル基を表し、ｍ及びｎはそれ
らの和が０〜３０となる整数である）このようなアセチレングリコール化合物としては、具体
的には、例えば、３，５−ジメチル−１−ヘキシン−３
オール、２，４，７，９−テトラメチル−５−デシン−
４，７−ジオール、３，６−ジメチル−４−オクチン−
３，６−ジオール、アセチレノールＥＨ、ＥＬ（川研フ
ァインケミカル製）、サーフィノール１０４、８２、４
６５、４８５（日信化学製）等が挙げられる。

【００１５】更に、本発明のインクジェット記録用イン
クセットのもう一つの特徴は、インクセットを構成する
各インクに用いられる顔料の組み合わせが、イエロー
（Ｙ）インクが、Ｃ．Ｉ．ピグメントイエロー９３を含
有し、且つ、分散された状態での顔料の平均粒径が０．
０８〜０．１８μｍの範囲内であり、マゼンタ（Ｍ）イ
ンクが、Ｃ．Ｉ．ピグメントレッド１２２を含有し、且
つ、分散された状態での顔料の平均粒径が０．０４〜
０．１８μｍの範囲内であり、シアン（Ｃ）インクが、
Ｃ．Ｉ．ピグメントブルー１５：３を含有し、且つ、分
散された状態での顔料の平均粒径が０．０４〜０．１３
μｍの範囲であり、ブラック（Ｂｋ）インクがカーボン
ブラックを含有し、且つ、分散された状態での顔料の平
均粒径が０．０７〜０．１２μｍの範囲内であることに
ある。

【００１６】本発明者らは、上記したような範囲でアセ
チレングリコール化合物を含む各色水系顔料インクに使
用する顔料の組み合わせについて、上記の項目を満足す
る各種の顔料インクの調製を行ない、該インクを用いて
記録画像を形成し、その記録画像の色特性及び耐光性を
評価して検討した結果、先ず、最適なインクセットが得
られる顔料の組み合わせを見いだした。即ち、イエロー
顔料としてＣ．Ｉ．ピグメントイエロー９３、マゼンタ
顔料としてＣ．Ｉ．ピグメントレッド１２２、シアン顔
料としてＣ．Ｉ．ピグメントブルー１５：３、ブラック
顔料としてカーボンブラックをそれぞれ用いて、Ｙ、
Ｍ、Ｃ、Ｂｋの各色水系顔料インクとする組み合わせ
が、望ましい結果を与えることがわかった。

【００１７】更に、使用する顔料について詳細な検討を
行った結果、インクに使用する各顔料の平均粒径が、下
記の範囲にあるものを使用することがより望ましいこと
がわかった。即ち、アゾ系有機顔料等、化学構造的に耐
光性が完全でない顔料は、粒子径を微細化し過ぎると耐
光性の低下を招くため、イエローインクに用いるＣ．
Ｉ．ピグメントイエロー９３としては、その平均粒径
が、分散された状態で０．０８〜０．１８μｍの範囲の
ものを使用する。一方、キナクリドン骨格やフタロシア
ニン骨格を有する有機顔料は、微細化しても耐光性の低
下が少ないため、長期保存安定性の観点より、マゼンタ
インクに用いるＣ．Ｉ．ピグメントレッド１２２として
は、その平均粒径が、分散された状態で０．０４〜０．
１８μｍ、シアンインクに用いるＣ．Ｉ．ピグメントブ
ルー１５：３としては、その平均粒径が、分散された状
態で０．０４〜０．１３μｍの範囲のものを用いる。
又、ブラックインクに用いるカーボンブラックとして
は、その平均粒径が、分散された状態で０．０７〜０．
１２μｍの範囲のものを用いる。使用するカーボンブラ
ックの平均粒径が、上記規定範囲よりも小さい場合、ブ
ラックインクは記録画像がグレーになる傾向がある。一
方、カーボンブラックの平均粒径が、上記規定範囲より
も大きい場合は、長期保存時において顔料粒子の沈降が
発生し易くなり、プリントヘッドのノズル内、或いはノ
ズルに至るインク流路において目詰まりの原因となる。

【００１８】更に、本発明においては、上記した各顔料
のインク中における含有量を１〜１０重量％とする。こ
れは、顔料の含有量が１重量％よりも少ない場合は、記
録媒体上で十分な画像濃度が得られず、一方１０重量％
よりも多い場合は、顔料の含有量の増加と共に、使用す
る高分子分散剤等の分散剤の量が増加することとなるた
め、インクの粘度が上昇し、プリントヘッドの周波数応
答性が悪化するためである。

【００１９】本発明のインクジェット記録用インクセッ
トは、インクセットを構成するＹ、Ｍ、Ｃ、Ｂｋの各色
水系顔料インクが、上記のように構成されていることを
特徴とするが、更に、インク中に含まれる不純物の量
が、リンの濃度が６０ｐｐｍ以下、カルシウムの濃度が
１００ｐｐｍ以下、鉄の濃度が２０ｐｐｍ以下、珪素の
量が２０ｐｐｍ以下となるように制御されていることが
好ましい。リン、カルシウム、鉄、珪素等の金属は、イ
ンク中でイオン化し、多価のカチオン、或いは酸化物と
して存在しているため、インク中に一定量以上存在する
と、顔料の分散安定性に影響を与えることとなるからで
ある。特に、リン、カルシウム、鉄、珪素の濃度の合計
が、２００ｐｐｍを超えると、溶解性、分散性が低下す
るため、各色水系顔料インク中において、リン、カルシ
ウム、鉄、カリウム、珪素の濃度の合計が、２００ｐｐ
ｍ以下となるように制御されていることが好ましい。更
には、１５０ｐｐｍ以下、より好ましくは、１００ｐｐ
ｍ以下となるように構成するとよい。特に、鉄、珪素は
分散性だけでなくヒータ表面でのコゲーションの原因に
もなり得るので、２０ｐｐｍ以下にすることが好まし
い。インク中のこれらのカチオン濃度は、例えば、原子
吸光分析法や誘導プラズマ発光分析法で測定することが
できる。

【００２０】本発明のインクジェット記録用インクセッ
トを構成する各水系顔料インクを調製する場合は、公知
のインク配合物と同様に、先ず、顔料及び分散剤を含む
原料を混合後、分散機にて分散させて、色材となる顔料
分散体を製造する。この際に使用する分散機は、一般に
使用される分散装置等、先に説明した顔料の平均粒径が
効率よく所望の範囲のものが得られるならば、いかなる
ものでもよい。例えば、ボールミル、サンドミル、ロー
ルミル等が挙げられる。その中でも、高速型のサンドミ
ルが好ましく、例えば、スーパーミル、サンドグライン
ダー、ビーズミル、アジテーターミル、グレンミル、ダ
イノーミル、パールミル、コボルミル、（いずれも商品
名）等が挙げられる。又、分散メディアを使用しないメ
ディアフリーの分散機も好ましく用いられる。このよう
なものとしては、例えば、マイクロフルイダイザー、超
音波ホモジナイザー等が挙げられる。特に、流路構造を
持たない超音波ホモジナイザーは、流路詰まりが発生し
ないため好適である。本発明において、所望の粒度分布
を有する顔料分散体を得る方法としては、分散機の粉砕
メディアのサイズを小さくする、粉砕後加圧濾過、遠心
分離で分級する等の手法が用いられる。又は、それらの
組み合わせを用いることが挙げられる。更に、分散効果
が高めるため、分散に使用する水溶液を脱気、脱泡する
ことも好ましい。

【００２１】又、上記のようにして、顔料インクの色材
として用いる顔料分散体を作製する場合に使用される分
散剤としては、次に説明するような高分子分散剤を使用
することが好ましい。高分子分散剤は、アルカリ可溶型
の水溶性樹脂であり、その重量平均分子量が１，０００
〜３０，０００の範囲のもの、より好ましくは、３，０
００〜１５，０００の範囲のものを使用する。このよう
な高分子分散剤としては、具体的には、スチレン、スチ
レン誘導体、ビニルナフタレン、ビニルナフタレン誘導
体、アルリル酸のアルキルエステル、メタクリル酸のア
ルキルエステル等の疎水性モノマーと、α，β−エチレ
ン性不飽和カルボン酸及びその脂肪族アルコールエステ
ル、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン
酸、フマール酸、及びそれらの誘導体、等の親水性モノ
マーからなる共重合体及びそれらの塩等が挙げられる。
共重合体は、ランダム、ブロック、及びグラフト等のい
ずれの構造を有していてもよく、その酸価は、８０〜４
３０、好ましくは１００〜３００の範囲のものを使用す
る。

【００２２】本発明で使用することのできる高分子分散
剤としては、更に、ポリビニルアルコール、カルボキシ
メチルセルロース等の水溶性ポリマー、ナフタレンスル
ホン酸ホルムアルデヒド縮合物、ポリスチレンスルホン
酸等の水溶性樹脂も使用可能である。しかし、先に説明
したアルカリ可溶性の水溶性樹脂の方が、得られる顔料
分散体の低粘度化が可能で、分散も容易であるという利
点がある。以上に挙げたようなの高分子分散剤の使用量
は、顔料分に対して５〜５０重量％の範囲である。適性
な比率は、選択した顔料と高分子分散剤とを用いて実験
的に決定されるが、顔料に吸着せず溶解している水溶性
樹脂の量が、インク中で２重量％以下となるようにする
ことが好ましい。

【００２３】本発明のインクジェット記録用インクセッ
トを構成する各水系顔料インクを調製するためには、分
散剤を水系にて用いるため、塩基が必要となる。そのた
めに好適な塩基としては、例えば、エタノールアミン、
ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、Ｎ−メチ
ルエタノールアミン、Ｎ−エチルジエタノールアミン、
２−アミノ−２−メチルプロパノール、２−エチル−２
−アミノ−１，３−プロパンジオール、２-(２−アミノ
エチル）エタノールアミン、トリス（ヒドロキシメチ
ル）アミノメタン、アンモニア、ピペリジン、モルフォ
リン、β−ジヒドロキシエチル尿素等の有機塩基；水酸
化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等の無
機塩基が用いられる。最適な塩基種は、選択した顔料及
び分散剤の種類によって異なるが、不揮発性で安定で、
且つ、保水性の高いものを使用することが好ましい。用
いる塩基の量は、基本的には高分子分散剤の酸価から計
算される量から、それを中和するに必要な塩基量として
それぞれ用いられる。場合によっては、酸の当量を上回
る量の塩基を用いる場合がある。それは、分散性向上、
インクのｐＨ調整、記録性能の調整、保湿性の向上等の
目的で行う。

【００２４】本発明のインクジェット記録用インクセッ
トを構成する各水系顔料インクは、上記で説明したよう
にして顔料及び高分子分散剤から調製される顔料分散体
を色材として用い、該顔料分散体を水系媒体中に分散し
て得られる。この際に用いる水系媒体としては、水を主
体とし、水溶性有機溶媒を混合して用いることが好まし
い。水系顔料インクにおける水溶性有機溶媒の総量は、
概ねインク全体に対して５〜４０重量％の範囲である。
本発明において使用する水系顔料インクを調製する上
で、インクの保存安定性と保湿性、そして、普通紙にお
ける定着性を調節するために、水系媒体を構成する水溶
性有機溶媒の選択は重要である。水溶性有機溶剤は、以
下の３群に分類して考えるのが便利である。

【００２５】第１群の有機溶媒は、保湿性、分散安定性
に適性を持ち、普通紙に対して抑制されたぬれ性を有す
るゆえに、インクに含有させると印字品位がよくなる。
その含有率は、インク中で５重量％以上、好ましくは１
０重量％以上のとすることが好ましい。第１群の有機溶
剤は、インク中に比較的多量に用いても、浸透性を高め
過ぎ、印字品位を悪くしてしまうことはない。

【００２６】第２群の有機溶媒は、普通紙に対するぬれ
性が非常によいので、少量の添加でインクの紙に対する
初期の湿潤性を改善し、定着性を向上させることができ
る。インク中では、５重量％以下の範囲で使用すること
が好ましい。

【００２７】第３群の有機溶媒は、ぬれ性では第１群と
第２群の中間の大きさに位置し、第２群の有機溶媒より
も多く加えても品位の低下は少なく、主として吐出安定
性を付与するために添加される。ここで吐出安定性と
は、例えば、バブルジェット（登録商標）方式のインク
ジェットヘッドにおける液滴の体積と、飛行速度のばら
つき、周波数応答性等を意味している。

【００２８】第１群に属する有機溶媒としては、例え
ば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリ
エチレングリコール、トリプロピレングリコール、トリ
メチルプロパノール、グリセリン、１，２，４−ブタン
トリオール、１，２，６−ヘキサントリオール、１，
２，５−ペンタントリオール、１，２−ブタンジオー
ル、１，３−ブタンジオール、１，４−ブタンジオー
ル、ジメチルスルホキシド、ジアセトンアルコール、グ
リセリンモノアリルエーテル、プロピレングリコール、
ブチレングリコール、ポリエチレングリコール３００、
チオジグリコール、Ｎ−メチル−２−ピロリドン、２−
ピロリドン、γ−ブチロラクトン、１，３−ジメチル−
２−イミダゾリジノン、スルフォラン、トリメチロール
プロパン、トリメチロールエタン、ネオペンチルグリコ
ール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレ
ングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコール
モノイソブロピルエーテル、エチレングリコールモノア
リルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテ
ル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエ
チレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレング
リコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモ
ノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチル
エーテル、β−ジヒドロキシエチルウレア、ウレア、ア
セトニルアセトン、ペンタエリスリトール、１，４−シ
クロヘキサンジオール等が挙げられる。

【００２９】第２群に属する有機溶媒としては、例え
ば、ヘキシレングリコール、エチレングリコールモノプ
ロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテ
ル、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、エチ
レングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリ
コールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブ
チルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエ
ーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、
トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレ
ングリコールジジエチルエーテル、テトラエチレングリ
コールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジ
エチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエー
テル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジ
プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピ
レングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレング
リコールモノメチルエーテル、グリセリンモノアセテー
ト、グリセンリンジアセテート、グリセンリントリアセ
テート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテ
ート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテ
ート、シクロヘキサノール、１，２−シクロヘキサンジ
オール、１−ブタノール、３−メチル−１，５−ペンタ
ンジオール、３−ヘキセン−２，５−ジオール、２，３
−ブタンジオール、１，５−ペンタンジオール、２，４
−ペンタンジオール、２，５−ヘキサンジオール等が挙
げられる。

【００３０】第３群属する有機溶媒としては、例えば、
エタノール、ｎ−プロパノール、２−プロパノール、１
−メトキシ−２−プロパノール、フルフリルアルコー
ル、テトラヒドロフルフリルアルコール等が挙げられ
る。

【００３１】本発明で使用する水系顔料インクには、上
記した各材料に加えて、界面活性剤、防腐剤、酸化防止
剤、その他、必要に応じて物性調節のための補助材料を
添加することができる。使用できる界面活性剤として
は、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、
ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル類、ポ
リオキシエチレンアルキルエステル類、ソルビタンエス
テル類、ソルビタンエステルエーテル類、オキシエチレ
ンオキシプロピレンブロックポリマー類、オキシエチレ
ンアルキルアミン類、脂肪酸のアルコールアミド類、多
価アルコールの脂肪酸エステル類、アセチレングリコー
ルのエチレンオキシド付加化合物、等のノニオン界面活
性剤；ジメチルアルキル（ヤシ）ベタイン、ジメチルア
ルキルラウリルベタイン、アルキルグリシン、アミドベ
タイン型、イミダゾリン型等の両性界面活性剤；オクタ
デシルアミン酢酸塩、テトラデシルアミン酢酸塩、牛脂
アルキルプロピレンジアミン酢酸塩、オクタデシルトリ
メチルアンモニウムクロライド、アルキル（牛脂）トリ
メチルアンモニウムクロライド、ドデシルトリメチルア
ンモニウムクロライド、アルキル（ヤシ）トリメチルア
ンモニウムクロライド、ヘキサデシルトリメチルアンモ
ニウムクロライド、ベヘニルトリメチルアンモニウムク
ロライド、アルキル（牛脂）イミダゾリノン４級塩、ア
ルキルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、オク
タデシルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、ジ
オレイルジメチルアンモニウムクロライド、ポリオキシ
エチレンドデシルメチルアンモニウムクロライド等のカ
チオン界面活性剤が挙げられる。これらの界面活性剤
は、記録媒体として用いる紙への浸透性アップ、吐出デ
バイス部材とのぬれ性、流動特性、分散安定に対する補
助剤として等、添加の目的は多様である。

【００３２】本発明で使用する水系顔料インクの作製方
法としては、はじめに、分散剤の塩基性水溶液に顔料を
添加し、攪拌した後、前述した分散手段を用いて分散を
行い、粗大粒子を除くために遠心分離、メンブランを用
いた加圧濾過等を行い、所望の顔料分散体を得る。次
に、この顔料分散体に前記した水系媒体を加え、必要に
応じその他の添加剤（例えば、界面活性剤、ｐＨ調整
剤、防腐剤等）を加えて攪拌してインクとする。

【００３３】本発明では、使用する顔料に、下記のよう
な表面処理を事前に行って使用することもできる。例え
ば、エタノール、プロパノール等のアルコール類による
表面処理、界面活性剤処理、酸性基や塩基性基を置換す
る顔料誘導体処理、顔料表面を他の物質で被覆する顔料
被覆反応処理、縮合反応やグラフト反応により置換基を
導入する表面化学反応処理、シラン系カップリング剤、
チタネート系カップリング剤、ジルコネート系カップリ
ング剤、アルミネート系カップリング剤等で表面処理を
するカップリング反応処理、プラズマ反応処理、ＣＶＤ
処理等を行うことができる。

【００３４】又、先に説明したように、本発明のインク
セットに使用される水系顔料インクは、不純物の量を一
定量以下に制限するために、使用する顔料を洗浄、精製
を行ってから用いることが好ましい。市販の顔料は、有
機、無機の種々の不純物を多量に含有しており、それら
不純物の中でも、特に、リン、カルシウム、鉄、珪素の
不純物は、インクジェット記録ヘッドノズルへのインク
の目詰まり、コゲーション、保管安定性、記録信頼性等
に悪影響を及ぼすからである。このため、これらの不純
物を除去する目的で、顔料を予め洗浄、精製をして用い
ることが好ましい。洗浄方法・精製方法としては、濾
過、遠心分離、分離膜法、イオン交換樹脂処理法、逆浸
透法、活性炭法、ゼオライト法、水洗、溶剤抽出等が挙
げられる。洗浄、精製は、原料混合前、分散液作製後、
インク作製後に行うか、或いは、複数の段階で行った方
がよい。特に、こうした不純物の混入経路が、顔料自
体、分散時の分散メディア、分散容器からと考えられる
ため、原料混合前、或いは分散液作製後の処理が有効で
ある。

【００３５】本発明のインクジェットカラー記録方法
は、上記のようにして調製されるＹ、Ｍ、Ｃ、Ｂｋの各
色水系顔料インクからなる本発明のインクセットを用
い、インクジェット記録装置で記録画像を形成すること
を特徴とする。次に、上記本発明のインクジェットカラ
ー記録方法に好適なインクジェット記録装置について以
下に説明する。図１は、本発明で使用し得るインクジェ
ット記録装置の、インクジェット記録ヘッドにインク供
給チューブを介して供給されるインクを収容したインク
カートリッジ３の一例を示す模式断面図である。ここ
で、１は、供給用インクを収納したインク袋であり、そ
の先端にはゴム製の栓２が設けられている。この栓２に
針（不図示）を挿入することにより、インク袋１中のイ
ンクをヘッドに供給可能にできる。又、インクカートリ
ッジ内に廃インクを受容するインク吸収体を設けてもよ
い。本発明で使用されるインクジェット記録装置として
は、上記の如きインクジェット記録ヘッドとインクカー
トリッジとが別体となったものに限らず、それらが一体
になったものも好適に用いられる。

【００３６】図２は、後述する実施例に使用したバブル
ジェット記録ヘッドの構造を説明するための模式図であ
る。図２に示したように、かかるバブルジェット記録ヘ
ッドでは、各ノズル９には、それぞれに対応した発熱体
７（ヒータ）が設けられており、ヘッド駆動回路により
ヒータ７に所定のエネルギーが印加されることにより、
ヒータ７が加熱されることで気泡を発生させ、その作用
で吐出口５からインク液滴を吐出する構成となってい
る。尚、ヒータ７は、シリコン基板４の上に半導体製造
プロセスと同様の手法で形成される。６は、各ノズル９
を構成するノズル隔壁であり、８は各ノズル９にインク
を供給するための共通液室であり、１０は天板である。

【００３７】図３は、本発明のインクジェット記録装置
の一例の、一部透視した斜視図を示している。ＰＨＳ
（プリンタヘッドステーションユニット）ユニットは、
インクジェットヘッド１１〜１４、及び常に安定した吐
出を保証するための回復系ユニット（不図示）によって
構成されている。被記録用紙５はロール供給ユニット１
７から供給され、記録装置本体１８に具備された搬送ユ
ニット１６によって、連続的に搬送される。記録画像
は、上記のようにして用紙を搬送しながら、例えば、用
紙の基準位置がブラックのインクジェット記録ヘッド１
１の下に移動したときに、インクジェット記録ヘッドか
らブラックインクが吐出されて、ブラック画像が形成さ
れるように構成されている。同様に、シアンのインクジ
ェット記録ヘッド１２、マゼンタのインクジェット記録
ヘッド１３、イエローのインクジェット記録ヘッド１４
の順に、各色のインクを吐出して、各色のカラーの画像
を形成する。記録装置本体１８は、搬送ユニット１６、
インクジェット記録ヘッドに供給するインクを貯蔵する
インクカートリッジ、記録ヘッドへのインク供給や回復
動作のためのポンプユニット、記録装置全体を制御する
制御基板等によって構成されている（但し、インクカー
トリッジ、ポンプユニット、制御基板は、不図示とし
た）。又、フロントドアは、インクカートリッジの交換
用の開閉扉である。

【００３８】

【実施例】次に、実施例及び比較例を挙げて本発明を更
に詳細に説明する。［実施例１］＜イエローインクの作製＞（１）イエロー顔料分散体の作製スチレン／アクリル酸／エチルアクリレート共重合体
（ガラス転移温度７４℃、酸価２００、重量平均分子量
８，０００）の水酸化カリウム溶液（中和率１１０％、
樹脂固形分２．５部）を８０部、エチレングリコールを
５部、更にこの溶液に、純水で予め洗浄したＣ．Ｉ．ピ
グメントイエロー９３を１５部添加後、サンドミルを用
いて分散し、水系の顔料分散体を作製した。得られた顔
料分散体の固形分は約１７％であり、平均粒径は０．１
３μｍであった。

【００３９】以上の組成で調製した水系顔料イエローインク中の不純
物含有量を、プラズマ発光分析装置を用いて測定したと
ころ、リン１５ｐｐｍ、カルシウム６０ｐｐｍ、鉄８ｐ
ｐｍ、及び珪素１２ｐｐｍであり、これら不純物の総量
は、９５ｐｐｍであった。

【００４０】＜マゼンタインクの作製＞（１）マゼンタ顔料分散体の作製スチレン／アクリル酸／エチルアクリレート共重合体
（ガラス転移温度７４℃、酸価１５０、重量平均分子量
９，０００）の水酸化カリウム溶液（中和率１１０％、
樹脂固形分２部）を８０部、エチレングリコールを５
部、更にこの溶液に、純水で予め洗浄したＣ．Ｉ．ピグ
メントレッド１２２を１５部添加後、超音波ホモジナイ
ザーを用いて分散を行い、遠心分離（１０，０００ｒｐ
ｍで、１時間）を行って沈降物を除去し、水系の顔料分
散体を作製した。この分散体の固形分は約１６％、平均
粒径は０．１２μｍであった。

【００４１】以上の組成で調製した水系顔料マゼンインク中の不純物
含有量を、プラズマ発光分析装置を用いて測定したとこ
ろ、リンが５ｐｐｍ、カルシウムが９ｐｐｍ、鉄が３ｐ
ｐｍ、珪素が５ｐｐｍであり、これら不純物の総量は、
２２ｐｐｍであった。

【００４２】＜シアンインクの作製＞（１）シアン顔料分散体の作製スチレン／アクリル酸／エチルアクリレート共重合体
（ガラス転移温度６３℃、酸価２５０、重量平均分子量
１０，０００）の水酸化カリウム溶液（中和率１１０
％、樹脂固形分２．５部）を８０部、エチレングリコー
ルを５部、この溶液にＣ．Ｉ．ピグメントブルー１５：
３を１５部添加後、サンドミルを用いて分散を行い、遠
心分離（１０，０００ｒｐｍで、１時間）を行って沈降
物を除去し、水系の顔料分散体を作製した。この分散体
の固形分は約１７％、平均粒径は０．０７μｍであっ
た。

【００４３】以上の組成で調製した水系顔料シアンインクをイオン交
換樹脂層に通し、プラズマ発光分析装置を用いてインク
中の不純物含有量を測定したところ、リンが３５ｐｐ
ｍ、カルシウムが６３ｐｐｍ、鉄が１５ｐｐｍ、珪素が
９ｐｐｍであり、これら不純物の総量は、１２２ｐｐｍ
であった。

【００４４】＜ブラックインクの作製＞（１）ブラック顔料分散体の作製スチレン／アクリル酸／エチルアクリレート共重合体
（ガラス転移温度８７℃、酸価２００、重量平均分子量
９，０００）の水酸化カリウム溶液（中和率１１０％、
樹脂固形分２部）を８０部、エチレングリコールを５
部、この溶液にカーボンブラック（ＭＡ−７、三菱化学
製）１５部を添加後、サンドミルを用いて分散し、水系
の顔料分散体を作製した。この分散体の固形分は約１６
％、平均粒径は０．１０μｍであった。

【００４５】以上の組成で調製した水系顔料ブラックインクをイオン
交換樹脂層に通し、プラズマ発光分析装置を用いてイン
ク中の不純物含有量を測定したところ、リンが１４ｐｐ
ｍ、カルシウムが４３ｐｐｍ、鉄が８ｐｐｍ、珪素が１
５ｐｐｍであり、これら不純物の総量は、８０ｐｐｍで
あった。

【００４６】［比較例１］＜イエローインクの作製＞（１）イエロー顔料分散体の作製スチレン／アクリル酸／エチルアクリレート共重合体
（ガラス転移温度８７℃、酸価２００、重量平均分子量
１０，０００）の水酸化カリウム溶液を８０部（中和率
１１０％、樹脂固形分２．５部）、エチレングリコール
を５部、この溶液にＣ．Ｉ．ピグメントイエロー１３８
を１５部添加後、サンドミルを用いて分散し、水系のイ
エロー顔料分散体を得た。この分散体の固形分は約１５
％、平均粒径は０．２０μｍであった。

【００４７】以上の組成で調製した水系顔料イエローインクの不純物
含有量を、プラズマ発光分析装置を用いて測定したとこ
ろ、リンが１２０ｐｐｍ、カルシウムが３００ｐｐｍ、
鉄が２５ｐｐｍ、珪素が３２ｐｐｍであり、これら不純
物の総量は、４７７ｐｐｍであった。

【００４８】＜マゼンタインクの作製＞（１）マゼンタ顔料分散体の作製スチレン／アクリル酸／エチルアクリレート共重合体
（ガラス転移温度７４℃、酸価２００、重量平均分子量
８０００）の水酸化カリウム溶液を８０部（中和率１１
０％、樹脂固形分２部）、エチレングリコールを５部、
この溶液に純水で洗浄したＣ．Ｉ．ピグメントレッド１
２２１５部を添加後、超音波ホモジナイザーを用いて
分散を行い、遠心分離（１００００ｒｐｍ、０．５時
間）を行い、沈降物を除去し、水系のマゼンタ顔料分散
体を作製した。この分散体の固形分は約１６％、平均粒
径は０．１７μｍであった。

【００４９】以上の組成で調製した水系顔料マゼンタインクの不純物
含有量を、プラズマ発光分析装置で測定したところ、リ
ンが５０ｐｐｍ、カルシウムが１８０ｐｐｍ、鉄が１３
ｐｐｍ、珪素が４２ｐｐｍであり、これら不純物の総量
は、２８５ｐｐｍであった。

【００５０】＜シアンインクの作製＞（２）シアン顔料分散体の作製スチレン／アクリル酸／エチルアクリレート共重合体
（ガラス転移温度７４℃、酸価２５０、重量平均分子量
１０，０００）の水酸化カリウム溶液を８０部（中和率
１１０％、樹脂固形分２．５部）、エチレングリコール
を５部、この溶液に、Ｃ．Ｉ．ピグメントブルー１５：
３を１５部添加後、サンドミルを用いて分散を行い、遠
心分離（１０，０００ｒｐｍで、１時間）を行って沈降
物を除去し、水系のシアン顔料分散体を作製した。この
分散体の固形分は約１７％、平均粒径は０．１１μｍで
あった。

【００５１】以上の組成で調製した水系顔料シアンインクを、イオン
交換樹脂層を通し、プラズマ発光分析装置を用いて不純
物含有量を測定したところ、リンが２６ｐｐｍ、カルシ
ウムが８５ｐｐｍ、鉄が７ｐｐｍ、珪素が１２ｐｐｍで
あり、これら不純物の総量は、１３０ｐｐｍであった。

【００５２】＜ブラックインクの作製＞（１）ブラック顔料分散体の作製スチレン／アクリル酸／エチルアクリレート共重合体
（ガラス転移温度８７℃、酸価２００、重量平均分子量
９，０００）の水酸化カリウム溶液を８０部（中和率１
１０％、樹脂固形分２部）、エチレングリコールを５
部、この溶液にカーボンブラック（ＭＡ−７、三菱化学
製）１５部を添加後、サンドミルを用いて分散し、水系
のブラック顔料分散体を作製した。この分散体の固形分
は約１６％、平均粒径は０．１０μｍであった。

【００５３】以上の組成で調製した水系顔料ブラックインクをイオン
交換樹脂層に通し、プラズマ発光分析装置を用いて不純
物含有量を測定したところ、リンが５７ｐｐｍ、カルシ
ウムが１４８ｐｐｍ、鉄が３７ｐｐｍ、珪素が２３ｐｐ
ｍであり、これら不純物の総量は、２６５ｐｐｍであっ
た。

【００５４】（評価）以上の実施例及び比較例のインク
ジェット記録用インクセットを用い、Ｐ−４８０Ｌ用カ
ートリッジ（バブルジェット方式のインクジェット記録
装置：Ｐ−４８０Ｌ用に用いる記録ヘッド：キヤノンア
プテックス製）に充填し、以下の評価を行った。表１
に、使用したインクセットの主な組成をまとめて示し
た。

【００５５】

【表１】

【００５６】（耐光性）評価紙としてマットコート紙
（ＨＲ−１０１：キヤノン製）上に、実施例及び比較例
のインクセットを用い、イエロー、マゼンタ、シアン及
びブラックの各色フルベタ画像を印刷した。次に、上記
で得られた印刷物に対して、アトラスフェードメーター
（アトラス社製）を用いてキセノンランプで５００時間
までの促進耐光試験を行ない、耐光試験前後のＯＤ値を
測定し、以下の計算方法で残存ＯＤ率を算出し、下記の
基準で評価した。

【００５７】残存ＯＤ率（％）＝耐光試験後のＯＤ値／
耐光試験前のＯＤ値×１００そして、以下の評価基準で評価した。 ◎：残存ＯＤ率９０％以上 ○：残存ＯＤ率７０％以上９０％未満 △：残存ＯＤ率５０％以上７０％未満 ×：残存ＯＤ率５０％未満

【００５８】（画像品質評価）評価紙としてマットコート紙（ＨＲ−１０１：キヤノン
製）、光沢紙（ＧＰ−３０１：キヤノン製）を用いた以
外は上記と同様にして画像を形成し、得られた記録物に
ついて目視観察し、以下の評価基準で評価した。 ◎：滲み、ビーディングが観察されない ○：滲み、ビーディングが僅かにあるが目立たない △：滲み、ビーディングがあるが文字は認識できる ×：滲み、ビーディングがあり、文字が認識できない

【００５９】（定着性）前記の評価紙を用いて印字した
後、記録紙を印字面に接触させ、インクの移りがなくな
る時間を調査した。 ○：印字後１０秒未満でインク移りなし △：印字後１０秒以上３０秒未満でインク移りなし ×：印字後３０秒以上でインク移りなし

【００６０】（発一性）評価紙としてマットコート紙
（ＨＲ−１０１：キヤノン製）を用い、１５℃１０％の
環境下で英数文字を印字後、プリンタを停止し、キャッ
プ等をしない状態で大気中にヘッドを曝露させ再び印字
し、その曝露時間を調査し、下記の基準で評価した。 ◎：曝露時間６０秒以上で文字の乱れが発生する ○：曝露時間３０秒以上６０秒未満で文字の乱れが発生
する △：曝露時間１０秒以上３０秒未満で文字の乱れが発生
する ×：曝露時間１０秒未満で文字の乱れが発生する

【００６１】（長期保存性）各インクセットをテフロン
（登録商標）製容器に６０℃で５ヶ月間保存し、粒度分
布、表面張力、粘度、ｐＨの変化と、析出物の有無、吐
出への影響を調査しし、下記の基準で評価した。 ◎：物性の変化が殆どなく、析出物が確認されず、吐出
に影響を及ぼさない ○：物性の変化がし、析出物が確認されず、吐出に影響
を及ぼさない ×：物性の変化し、析出物が確認され、吐出に影響を及
ぼす

【００６２】

【表２】

【００６３】

【発明の効果】以上説明したように、本発明のインクジ
ェット記録用インクセットによれば、色再現性、耐光
性、画像品位、定着性、発一性に優れ、且つ、保存安定
性に優れたインクジェット記録用インクセット、及びイ
ンクジェット記録を提供できる。

【図面の簡単な説明】

【図１】バブルジェット記録カートリッジの構造を説明
するための模式図である。

【図２】バブルジェット記録ヘッドの構造を説明するた
めの模式図である。

【図３】インクジェット記録装置の一部透視した斜視図
である。

【符号の説明】

１：インク袋２：栓３：インクカートリッジ４：シリコン基板５：吐出口６：ノズル隔壁７：ヒーター８：共通液室９：ノズル１０：天板１１：ブラックインク用の記録ヘッド１２：シアンインク用の記録ヘッド１３：マゼンタインク用の記録ヘッド１４：イエローインク用の記録ヘッド１５：被記録用紙１６：搬出ユニット１７：ローラー供給ユニット１８：記録装置本体１９：フロントユニット

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続きＦターム(参考） 2C056 EA13 FC01 FC02 2H086 BA04 BA52 BA53 BA55 BA59 BA60 BA62 4J039 AB02 AD02 AD03 AD06 AD09 AD10 AD13 AD17 AD22 AE01 BA04 BC07 BC09 BC20 BE01 BE22 CA06 DA02 DA08 EA15 EA16 EA17 EA19 EA35 EA42 GA24

Claims

【特許請求の範囲】

【請求項１】インクジェット記録装置に搭載されて使
用されるイエローインク、マゼンタインク、シアンイン
ク及びブラックインクからなるインクジェット記録用イ
ンクセットにおいて、各インクが、少なくとも顔料、分
散剤、アセチレングリコール化合物、及び水系媒体を含
有し、（ａ）顔料がインク中に１〜１０重量％含まれ、
（ｂ）分散剤が、前記顔料分に対して５〜５０重量％含
まれ、（ｃ）アセチレングリコール化合物がインク中に
０．２〜２重量％含まれ、上記顔料として、（ｄ）イエ
ローインク中にＣ．Ｉ．ピグメントイエロー９３を含有
し、且つ、分散された状態での顔料の平均粒径が０．０
８〜０．１８μｍの範囲内であり、（ｅ）マゼンタイン
ク中にＣ．Ｉ．ピグメントレッド１２２を含有し、且
つ、分散された状態での顔料の平均粒径が０．０４〜
０．１８μｍの範囲内であり、（ｆ）シアンインク中に
Ｃ．Ｉ．ピグメントブルー１５：３を含有し、且つ、分
散された状態での顔料の平均粒径が０．０４〜０．１３
μｍの範囲であり、（ｇ）ブラックインク中にカーボン
ブラックを含有し、且つ、分散された状態での顔料の平
均粒径が０．０７〜０．１２μｍの範囲内であることを
特徴とするインクジェット記録用インクセット。
【請求項２】各インク中に含まれるリンの量が、６０
ｐｐｍ以下に制御されている請求項１に記載のインクジ
ェット記録用インクセット。
【請求項３】各インク中に含まれるカルシウムの量
が、１００ｐｐｍ以下に制御されている請求項１に記載
のインクジェット記録用インクセット。
【請求項４】各インク中に含まれる鉄の量が、２０ｐ
ｐｍ以下に制御されている請求項１に記載のインクジェ
ット記録用インクセット。
【請求項５】各インク中に含まれる珪素の量が、２０
ｐｐｍ以下に制御されている請求項１に記載のインクジ
ェット記録用インクセット。
【請求項６】各インク中に含まれるリンの量が６０ｐ
ｐｍ以下、カルシウムの量が１００ｐｐｍ以下、鉄の量
が２０ｐｐｍ以下、及び珪素の量が２０ｐｐｍ以下にそ
れぞれ制御されている請求項１に記載のインクジェット
記録用インクセット。
【請求項７】イエローインク、マゼンタインク、シア
ンインク及びブラックインクからなるインクジェット記
録用インクセットを用い、インクジェット記録装置で記
録画像を形成するインクジェットカラー記録方法におい
て、各インクが、少なくとも顔料、分散剤、アセチレン
グリコール化合物、及び水系媒体を含有し、（ａ）上記
顔料がインク中に１〜１０重量％含まれ、（ｂ）上記分
散剤が、前記顔料分に対して５〜５０重量％含まれ、
（ｃ）上記アセチレングリコール化合物がインク中に
０．２〜２重量％含まれ、上記顔料として、（ｄ）イエ
ローインク中にＣ．Ｉ．ピグメントイエロー９３を含有
し、且つ、分散された状態での顔料の平均粒径が０．０
８〜０．１８μｍの範囲内であり、（ｅ）マゼンタイン
ク中にＣ．Ｉ．ピグメントレッド１２２を含有し、且
つ、分散された状態での顔料の平均粒径が０．０４〜
０．１８μｍの範囲内であり、（ｆ）シアンインク中に
Ｃ．Ｉ．ピグメントブルー１５：３を含有し、且つ、分
散された状態での顔料の平均粒径が０．０４〜０．１３
μｍの範囲であり、（ｇ）ブラックインク中にカーボン
ブラックを含有し、且つ、分散された状態での顔料の平
均粒径が０．０７〜０．１２μｍの範囲内であることを
特徴とするインクジェットカラー記録方法。
【請求項８】各インク中に含まれるリンの量が、６０
ｐｐｍ以下に制御されている請求項７に記載のインクジ
ェットカラー記録方法。
【請求項９】各インク中に含まれるカルシウムの量
が、１００ｐｐｍ以下に制御されている請求項７に記載
のインクジェットカラー記録方法。
【請求項１０】各インク中に含まれる鉄の量が、２０
ｐｐｍ以下に制御されている請求項７に記載のインクジ
ェットカラー記録方法。
【請求項１１】各インク中に含まれる珪素の量が、２
０ｐｐｍ以下に制御されている請求項７に記載のインク
ジェットカラー記録方法。
【請求項１２】各インク中に含まれるリンの量が６０
ｐｐｍ以下、カルシウムの量が１００ｐｐｍ以下、鉄の
量が２０ｐｐｍ以下、及び珪素の量が２０ｐｐｍ以下に
それぞれ制御されている請求項７に記載のインクジェッ
トカラー記録方法。