JP2002225242A - 平面記録媒体用の記録装置 - Google Patents

平面記録媒体用の記録装置

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JP2002225242A
JP2002225242A JP2001028643A JP2001028643A JP2002225242A JP 2002225242 A JP2002225242 A JP 2002225242A JP 2001028643 A JP2001028643 A JP 2001028643A JP 2001028643 A JP2001028643 A JP 2001028643A JP 2002225242 A JP2002225242 A JP 2002225242A
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recording
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reaction liquid
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aqueous ink
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JP2001028643A
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Kazuhide Kubota
和英 窪田
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Seiko Epson Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 平面記録媒体に対する着色剤の固着性に優
れ、良好な画像を得ることが可能な記録装置を提供す
る。 【解決手段】 被記録面が平面である記録媒体の担持手
段11;被記録平面へ、着色剤と樹脂エマルジョン粒子
とを含む水性インクを供給する手段20;被記録平面
へ、水性インクと接触すると凝集物を生じさせる反応剤
を含む反応液を供給する手段30;造膜反応完了前に、
水性インク組成物と反応液との混合物に洗浄液を供給す
る手段40;水性インクと反応液とが所定位置で接触す
るように制御する手段;及び造膜反応完了前の水性イン
ク組成物と反応液との混合物に洗浄液を供給するように
制御する手段;を有する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、平面記録媒体用の
記録装置に関する。本発明によれば、被記録面が平面で
ある記録媒体に対して、水性インク組成物と反応液との
二液を用いる印刷工程と、得られた印刷面を洗浄する定
着工程とを含む記録方法を実施するのに適した装置が提
供される。
【0002】
【従来の技術】一般的に、水性インク組成物は、水を主
成分とし、これに着色成分や湿潤剤(例えば、グリセリ
ン)等を含有して構成されている。こうした水性インク
組成物は、一般的に、インク組成物を或る程度吸収し、
着色剤を浸透させることができる紙等の記録媒体の印刷
に使用される。水性インク組成物を用いて印刷を行う記
録方法としては、近年、インクジェット記録方法が注目
されている。インクジェット記録方法は、インク組成物
の小滴を飛翔させ、記録媒体に付着させて印刷を行う記
録方法である。
【0003】一方、プラスチックや金属などのように、
水性インク組成物を基本的に吸収しない記録媒体(すな
わち、非吸収性の記録媒体)に対して印刷や塗装を行う
場合には、一般に有機溶媒(特に、親油性有機溶媒)を
用いた溶剤系インク組成物や塗料が用いられる。こうし
た溶剤系インク組成物や塗料によって非吸収性記録媒体
に印刷をすると、固着性、耐擦性及び耐久性等に優れた
記録物を得ることができる。しかし、有機溶媒の中に
は、動植物に対して毒性を示すものがある。そのため、
有機溶媒の使用や廃棄などには注意が必要であり、取り
扱いに不便な場合が多い。
【0004】従って、非吸収性記録媒体に印刷や塗装を
実施する場合に、水性インク組成物を用いることができ
れば、安全面、環境面、あるいは使用の便宜などの点で
好ましい。しかし、非吸収性記録媒体への印刷や塗装に
おいては、水性インク組成物の着色剤成分が記録媒体表
面に強固に固着することが要求される。そのためには、
固着までの時間、すなわち乾燥時間が短いことが必要に
なる。非吸収性記録媒体への着色剤の固着性を改善する
ために、水性インク組成物に樹脂を添加する提案がなさ
れている。この樹脂は結着剤として着色剤を記録媒体上
に固着するものと考えられる。
【0005】樹脂を含んだ水性インク組成物としては、
例えば、顔料と樹脂エマルジョンとを水に分散させたイ
ンク(特公昭62−1426号公報)、水不溶性樹脂エ
マルジョン分散液中に顔料を分散させたインク(特開昭
55−157668号公報)、特定の造膜温度を有する
エマルジョンを使用するインク(特開平1−21708
8号公報)、同様の樹脂エマルジョンを用いたインク
(特開平3−60068号公報及び特開平4−1846
2号公報)が提案されている。また、高分子分散剤と水
溶性有機溶剤とを用いた水性分散系顔料インクの提案も
なされている(特開昭56−147859号公報、特開
昭56−147860号公報、及び特公平4−5703
号公報)。
【0006】しかしながら、これらの水性インク組成物
は、そのインク組成物を単独で用いて非吸収性記録媒体
に印刷した場合には、乾燥性、着色剤の固着性及び成膜
した樹脂被膜の耐性の点で充分ではなく、また、複数色
の水性インク組成物を用いて非吸収性記録媒体に印刷す
る場合には、カラーブリード、にじみ等により印刷画像
品質の点で充分ではなかった。
【0007】一方、インクジェット記録方法として、少
なくとも浸透性を付与する界面活性剤又は浸透性溶剤及
び塩を含有するカラーインクと、この塩との作用により
増粘又は凝集するブラックインクとを組合せて使用する
ことにより、画像濃度が高くかつカラーブリードがない
高品位のカラー画像が得られるという提案がなされてい
る(特開平6−106735号公報)。すなわち、塩を
含んだ反応液(第一液)と、インク組成物(第二液)と
の二液を印刷することで、良好な画像を得ることが可能
であるとするインクジェット記録方法が提案されてお
り、その他にも二液で印刷を行うインクジェット記録方
法が提案されている(例えば、特開平3−240557
号公報、特開平3−240558号公報)。
【0008】しかしながら、これらの方法では、ただ単
にインクが記録媒体表面上で増粘し、凝集しているだけ
であり、記録媒体に対して固着しているのではないの
で、加熱(例えば、特開平8−11299号公報)又は
紫外線硬化反応(例えば、特開平5−269983号公
報)等を利用して記録媒体表面へ強固に固着させてか
ら、次の工程を実施する必要があった。また、加熱や紫
外線硬化などの光硬化反応を行うことは、エネルギー的
にも設備的にも負担が増大するので好ましい方法ではな
い。
【0009】一方、記録媒体表面上でインクが固着する
までの時間(すなわち、乾燥時間)が長いと、インクが
乾燥して流動性を失うまで記録媒体を放置したまま待つ
時間が長くなるために生産性が低下する。そこで、記録
媒体にインクを受容し固定化するための吸収層を設ける
ことも提案されている(例えば、特開平8−10405
6、特開平7−156536、及び特開平8−9945
8)。しかしながら、こうした吸収層を設けることは、
記録媒体の製造工程数を増加させ、コストアップや設備
的な負担となる点で好ましくない。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】本発明者は、水性イン
ク組成物を基本的に吸収しない記録媒体(すなわち、非
吸収性の記録媒体)に対して、水性インク組成物を用い
る印刷や塗装を実現するための手段を鋭意研究する過程
で、反応液と水性インク組成物との二液を用いたインク
ジェット記録方法によって非吸収性記録媒体に印刷を行
ったところ、印刷面が充分に膜化しない現象が起きるこ
とを観察した。そこで、本発明者は、印刷面の膜化を進
行させるために、印刷後に記録媒体を加熱してみたが、
それでも印刷面の膜化が充分に進行しない場合や、記録
媒体の中には熱によって変質したり、変形したりするも
のがあることを観察した。
【0011】こうした研究過程で、本発明者は、樹脂エ
マルジョン粒子を含有する水性インク組成物と水性反応
液との二液によって非吸収性記録媒体の表面上に形成さ
れた印刷層に対し、水などで洗浄工程を実施してみたと
ころ、驚くべきことに、印刷層における造膜反応が促進
されて堅牢な被膜が形成され、その結果、記録媒体に対
して強固に固着した記録層を得ることができることを見
出した。また、こうした印刷工程と水洗工程とを含む前
記の記録方法は、非吸収性記録媒体のみではなく、紙な
どの吸収性記録媒体にも適用可能であり、記録媒体の表
面の性質に影響を受けることがないことも見出した。
【0012】そこで、本発明者は、被記録面が平面であ
る記録媒体(すなわち、平面記録媒体)に対して、前記
の記録方法を適用するのに適した装置の開発を行い、こ
れを完成した。すなわち、本発明の課題は、平面記録媒
体に対する着色剤の固着性に優れ、良好な画像を得るこ
とができる記録装置を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】従って、本発明は、
(1)被記録面が平面である記録媒体の担持手段; (2)前記の記録媒体担持手段に担持された記録媒体の
被記録平面へ、着色剤と樹脂エマルジョン粒子と水とを
含む水性インク組成物を供給する水性インク供給手段; (3)前記の記録媒体担持手段に担持された記録媒体の
被記録平面へ、前記水性インク組成物と接触すると凝集
物を生じさせる反応剤を含む反応液を供給する反応液供
給手段; (4)前記記録媒体の被記録平面上で前記水性インク組
成物と前記反応液とが接触した後であって、しかもその
接触によって開始される造膜反応が完了する前に、水性
インク組成物と反応液との混合物に洗浄液を供給する洗
浄液供給手段; (5)前記水性インク組成物と前記反応液とが前記記録
媒体の被記録平面の所定位置で接触するように制御する
接触制御手段;及び (6)造膜反応完了前の水性インク組成物と反応液との
混合物に洗浄液を供給するように制御する洗浄制御手
段;を有することを特徴とする、被記録面が平面である
記録媒体用の記録装置に関する。
【0014】
【発明の実施の形態】(1)本発明装置で実施する記録
方法の原理 始めに、本発明装置で実施する記録方法の原理を説明す
る。
【0015】本発明装置で実施する記録方法では、水性
インク組成物、反応液、及び洗浄液を用いる。前記水性
インク組成物の組成の詳細は後述するが、水性インク組
成物は、少なくとも着色剤と樹脂エマルジョン粒子と水
とを含む。また、前記反応液の組成の詳細も後述する
が、前記反応液は前記水性インク組成物と接触すると凝
集物を生じさせる反応剤を少なくとも含む。
【0016】本発明装置で実施する記録方法では、前記
反応液と前記水性インク組成物とを任意の順序で記録媒
体の被記録面上に付着させて画像を記録する工程と、そ
の記録画像を洗浄液で洗浄する工程とを含む。この記録
方法によって、着色剤が記録媒体に強固に固着し、耐擦
性を有する良好な画像を実現することができる。
【0017】このような効果が生じる理由は明確ではな
いが、以下の記載のように推論することができる。な
お、本発明は以下の推論に限定されるものではない。
【0018】先ず、反応液と水性インク組成物とが被記
録面上で接触すると、インク組成物中の着色剤、樹脂エ
マルジョン粒子、及びその他の成分の分散状態が、反応
液中の反応剤によって破壊され、それらの凝集が開始さ
れる。これらの凝集物は着色剤を記録媒体表面に固着さ
せる。更に、前記の水性インク組成物は、樹脂エマルジ
ョン粒子を含んでいるので、凝集物の生成を促進するも
のと考えられる。特に、室温下で造膜反応を開始する樹
脂エマルジョンを水性インク組成物が含有する場合に
は、前記の凝集の進行に伴って、樹脂エマルジョン粒子
が相互に密接に接触することになるので、造膜反応が開
始される。前記の凝集や造膜過程が進行するのに伴っ
て、被記録面上に最初に付着した際に形成される反応液
とインク組成物との液状混合物は、固形分と液状分とに
徐々に分離し、固形分は被記録面上に接触して固着し、
液状分はそれら固形分の表面に浸出してくる。
【0019】しかしながら、固形分の表面に浸出した液
状分を加熱などによって除去した後で形成される樹脂被
膜は、必ずしも強固な被膜とはならない。それは、固形
分の中に、高沸点水溶性有機化合物が残留し、樹脂エマ
ルジョン粒子による造膜反応が不完全な状態で留まって
しまうからである。
【0020】そこで、本発明装置で実施する記録方法で
は、被記録面上に最初に付着した際に形成される反応液
とインク組成物との液状混合物が固形分と液状分とに徐
々に分離し、固形分の表面に液状分が浸出してくる段
階、すなわち、造膜反応が完了する前に、洗浄液を供給
する。この段階で水などの洗浄液が供給されると、造膜
反応進行中の樹脂被膜内に残留する高沸点水溶性有機化
合物が溶出され、樹脂エマルジョン粒子間の接触が更に
密接になるので、造膜反応が更に進行し、実質的に完全
な造膜状態まで到達する。更に、洗浄液などの液状成分
を除去すると被膜強度が上昇する。こうして、極めて堅
牢かつ強固な樹脂被膜が形成され、その結果として、着
色剤が記録媒体表面に強固に固着される。この記録方法
は、紙などの吸収性記録媒体に適用することができるこ
とは言うまでもないが、非吸収性記録媒体においても、
顕著にその効果が発揮される。
【0021】(2)記録方法の内容 本発明装置で実施する記録方法では、記録媒体の被記録
平面へ、着色剤と樹脂エマルジョン粒子と水とを含む水
性インク組成物を供給する工程と、前記水性インク組成
物と接触すると凝集物を生じさせる反応剤を含む反応液
を供給する工程と、そして前記水性インク組成物と前記
反応液とが接触した後であって、しかもその接触によっ
て開始される造膜反応が完了する前に、水性インク組成
物と反応液との混合物に洗浄液を供給する洗浄液供給工
程とを含む。
【0022】反応液と水性インク組成物を記録媒体に付
着させる順序は、いずれが先であってもよい。すなわ
ち、反応液を記録媒体に付着させた後、この記録媒体に
インク組成物を付着させる方法、あるいはインク組成物
を印刷した後に、反応液を付着させる方法、更に反応液
とインク組成物をその付着直前又は直後に混合する方法
のいずれも好適に行うことができる。
【0023】反応液を記録媒体へ付着する方法として
は、インク組成物を付着させる場所にのみ選択的に反応
液を付着させるという方法、あるいは被記録表面全体に
反応液を付着させる方法のいずれの態様でもよい。前者
の方法は、反応液の消費量を必要最小限に抑えることが
できるので経済的であるが、反応液とインク組成物との
双方を付着させる位置に或る程度の精度が要求される。
一方、後者の方法は、前者の方法に比べて反応液及びイ
ンク組成物の付着位置の精度の要求は緩和されるが、記
録媒体全体に大量の反応液を付着させることとなり、乾
燥性の観点からも不利である場合がある。従って、いず
れの方法を採用するかは、インク組成物と反応液との組
み合わせを考慮して決定することができる。
【0024】反応液を記録媒体に付着させる手段、及び
水性インク組成物を記録媒体に付着させる手段は、印刷
業界及び塗装業界において通常用いられる任意の手段を
用いることができる。例えば、直噴、吹付け、塗布、又
は転写等を挙げることができ、液滴を記録媒体に吐出さ
せて印刷を行うインクジェット記録方法が好ましい。
【0025】本発明装置で実施する記録方法では、造膜
反応完了前に洗浄液を供給する。洗浄手段としては、具
体的には、記録媒体又はその表面を極性溶媒(特には、
水)で濯ぐ、洗い流す、浸漬する、又はこれらの混合手
法などを挙げることができる。この洗浄工程は、印刷工
程中に連続的又は断続的に行うことができる。
【0026】本発明装置で実施する記録方法では、記録
媒体を極性溶媒(特には、水)で洗浄した後に、記録媒
体を加熱又は乾燥することができる。
【0027】水性インク組成物、反応液、及び洗浄液を
記録媒体に付与する具体的手段も特に限定されるもので
はないが、例えば、インクジェットヘッドによる液滴の
吐出、噴霧ノズルによる噴霧、液槽(流液槽を含む)へ
の浸漬、刷毛塗り、又は含浸フォームの押し当てなどを
適宜採用することができる。
【0028】(3)記録媒体 本発明装置の対象となる記録媒体は、被記録面が平面で
ある記録媒体、すなわち、平面記録媒体である。平面記
録媒体の被記録平面としては、例えば、直方体、立方
体、角柱体、又は板状体の各壁面(外側又は内側の壁
面)、円筒状若しくは円柱状記録媒体の上面及び/又は
底面(外側又は内側の壁面)、あるいは円盤体の上面及
び底面(外側又は内側の壁面)などを挙げることができ
る。
【0029】また、本発明装置の対象となる記録媒体
は、水性インク組成物に対して吸収性を有する記録媒体
(例えば、紙)又は吸収性被記録面を有する記録媒体、
あるいは水性インク組成物に対して実質的に非吸収性の
記録媒体又は非吸収性被記録面を有する記録媒体のいず
れでも、好適に用いることができる。ここで「水性イン
ク組成物に対して実質的に非吸収性である」とは、記録
媒体に水性インク組成物を付着させたとき、数秒の時間
では記録媒体に水性インク組成物がまったく浸透しない
ような記録媒体を意味する。
【0030】インクジェット記録方法が適用可能な非吸
収性の記録媒体としては、例えば、ポリエチレンテレフ
タレート、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリエ
チレン、ポリサルフォン、ABS樹脂、又はポリ塩化ビ
ニル等を基材とするプラスチック製記録媒体(又はプラ
スチック製被記録面を有する記録媒体)、黄銅、鉄、ア
ルミニウム、SUS、又は銅等の金属製記録媒体(又は
金属製被記録面を有する記録媒体)、あるいは非金属の
基材に蒸着等の手法により金属コーティング処理をした
記録媒体、紙を基材として撥水処理などがなされた記録
媒体、布等の繊維表面に撥水処理等がなされた記録媒
体、無機質の材料を高温で焼成した、いわゆるセラミッ
クス材料からなる記録媒体などを挙げることができる。
【0031】(4)本発明装置の具体的実施態様 本発明装置は、(イ)被記録面が平面である記録媒体の
担持手段、(ロ)記録媒体の被記録平面へ、前記水性イ
ンク組成物を供給する水性インク供給手段、(ハ)記録
媒体の被記録平面へ、前記反応液を供給する反応液供給
手段、及び(ニ)記録媒体の被記録平面上の前記水性イ
ンク組成物と前記反応液との混合物に洗浄液を供給する
洗浄液供給手段を有する。
【0032】本発明装置において、記録媒体の担持手段
は、記録媒体を固定して載置する固定型又は記録媒体を
搬送又は移動することのできる移動型であることができ
る。
【0033】本発明装置においては、前記の水性インク
供給手段、反応液供給手段、及び洗浄液供給手段も、そ
れぞれが他と無関係に独立して、固定されているか、あ
るいは移動可能であることができる。また、それらの固
定型と移動型とを任意に組合せることができる。すなわ
ち、固定型又は移動型の水性インク供給手段と、固定型
又は移動型の反応液供給手段と、固定型又は移動型の洗
浄液供給手段とを任意に組合せることができる。
【0034】記録媒体担持手段の内、固定型担持手段
は、移動型の水性インク供給手段、反応液供給手段、及
び洗浄液供給手段と組合せて用い、移動型の担持手段
は、固定型又は移動型の水性インク供給手段、反応液供
給手段、及び洗浄液供給手段と組合せて用いる。水性イ
ンク供給手段、反応液供給手段、及び洗浄液供給手段に
ついては、前記のとおり、固定型と移動型との任意の組
合せがあるので、それらの組合せに応じて、記録媒体担
持手段も、固定型と移動型とを適宜組合せる。
【0035】本発明装置は、前記水性インク組成物と前
記反応液とが前記記録媒体の被記録平面の所定位置で接
触するように制御する接触制御手段を有する。この接触
制御手段は、前記の固定型又は移動型の水性インク供給
手段及び固定型又は移動型の反応液供給手段と、固定型
又は移動型の記録媒体担持手段との運動を制御すること
により、記録媒体の被記録平面の所定位置で前記水性イ
ンク組成物と前記反応液とが接触するように制御する。
【0036】また、本発明装置は、造膜反応完了前の水
性インク組成物と反応液との混合物に洗浄液を供給する
ように制御する洗浄制御手段を有する。この洗浄制御手
段は、前記の固定型又は移動型の洗浄液供給手段と、固
定型又は移動型の記録媒体担持手段との運動を制御する
ことにより、前記水性インク組成物と前記反応液とが接
触した後であって、しかもその接触によって開始される
造膜反応が完了する前に、水性インク組成物と反応液と
の混合物に洗浄液を供給する制御を行う。
【0037】前記の接触制御手段及び/又は洗浄制御手
段によって制御を受ける移動型の水性インク供給手段、
反応液供給手段、及び洗浄液供給手段、並びに移動型の
記録媒体担持手段の移動運動の種類も、特に限定され
ず、往復運動、回転運動、あるいは往復運動と回転運動
との組合せなどであることができる。
【0038】なお、本明細書において前記の移動型の水
性インク供給手段、反応液供給手段、及び洗浄液供給手
段、並びに移動型の記録媒体担持手段の移動運動は、予
め定められた所定の軌跡に従った規則的で一定の往復運
動や回転運動(例えば、直線的な往復運動、あるいは、
一定の回転軸を中心とする回転運動)を意味するもので
あり、位置センサ等を備えた測長手段を用いて被記録平
面との不規則な距離を自動的に測定しながら、被記録平
面への不規則な接近などを行う運動を意味するものでは
ない。
【0039】本発明装置においては、前記のように、水
性インク供給手段、反応液供給手段、及び洗浄液供給手
段に関して、それぞれ固定型及び移動型の各種組合せが
存在し、更にそれらの組合せに対して固定型及び移動型
の記録媒体担持手段が組合わされるので、各種の組合せ
からなる態様が存在する。以下に、それらの態様の中か
ら代表的な態様のみを添付図面に沿って説明するが、以
下の記載は本発明装置を限定するものではない。
【0040】(a)図1の態様 本発明装置において、水性インク供給手段、反応液供給
手段、及び洗浄液供給手段が全て固定型であり、記録媒
体担持手段が搬送型である態様の1つを図1に示す。
【0041】図1に示す本発明の記録装置1は、直方体
形記録媒体としての箱91の側壁表面91aを印刷する
装置であり、記録媒体担持手段として、箱91の被記録
平面を順に搬送する手段を有する。
【0042】具体的には、図1に示す記録装置1は、搬
送型の記録媒体担持手段としてのベルトコンベア11
と、固定型水性インク供給手段20と、固定型反応液供
給手段30と、固定型洗浄液供給手段40と、所望によ
り設けることのできる固定型乾燥手段50を含む。
【0043】固定型水性インク供給手段20は、インク
用ヘッド部21と、ヘッド部21を所定の位置に配置す
ることのできる調整部24を有する支持部22と、前記
支持部22を固定するための固定台23とを含む。ま
た、固定型反応液供給手段30も、反応液用ヘッド部3
1と、ヘッド部31を所定の位置に配置することのでき
る調整部34を有する支持部32と、前記支持部32を
固定するための固定台33とを含む。更に、固定型洗浄
液供給手段40も、洗浄液用ヘッド部41と、ヘッド部
41を所定の位置に配置することのできる調整部44を
有する支持部42と、前記支持部42を固定するための
固定台43とを含む。更にまた、固定型乾燥手段50
も、乾燥エアー用ヘッド部51と、ヘッド部51を所定
の位置に配置することのできる調整部54を有する支持
部52と、前記支持部52を固定するための固定台53
とを含む。
【0044】前記の各固定台23,33,43,53は
ベース台11aに固定されており、インク液、反応液、
洗浄液及び乾燥用エアーの供給源(図示せず)と連絡し
ている。固定型水性インク供給手段20と固定型反応液
供給手段30の設置順序は、図1に示すように、最初に
固定型水性インク供給手段20を設け、続いて固定型反
応液供給手段30を設けることもできるし、最初に固定
型反応液供給手段30を設け、続いて固定型水性インク
供給手段20を設けることもできる。固定型洗浄液供給
手段40は、それらの後に設け、固定型乾燥手段50を
設ける場合には、固定型洗浄液供給手段40の後に設け
る。
【0045】インク用ヘッド部21及び反応液用ヘッド
部31は、それぞれ、インク及び反応液の吐出用ヘッド
を有するインクジェット記録用ヘッドであるか、あるい
は、インク及び反応液の噴霧用ヘッドを有するスプレー
ガンヘッドであることができる。また、固定型水性イン
ク供給手段20及び固定型反応液供給手段30を一体化
して、インク・反応液供給手段とすることができ、この
場合は、インク用ヘッド部分と反応液用ヘッド部分との
一体化ヘッド部を有する。
【0046】洗浄液用ヘッド部41は、インク用ヘッド
部21や反応液用ヘッド部31と同様のインクジェット
記録用ヘッドやスプレーガンヘッドであることもできる
が、散水供給手段であることもできる。更に、洗浄液用
ヘッド部41は、固定型水性インク供給手段20及び固
定型反応液供給手段30と一体化して、インク・反応液
・洗浄液供給手段とすることができ、この場合は、イン
ク用ヘッド部分と反応液用ヘッド部分と洗浄液用ヘッド
部分との一体化ヘッド部を有する。
【0047】インク用ヘッド21からは、着色剤と樹脂
エマルジョン粒子と水とを含む水性インクを供給するこ
とができる。反応液用ヘッド31からは、前記水性イン
クと接触すると凝集物を生じさせる反応剤を含む反応液
を供給することができる。また、洗浄液用ヘッド部41
からは造膜反応を促進する洗浄液(例えば、水)を供給
することができる。洗浄液の供給後は、そのまま放置し
て自然乾燥することもできるし、あるいは、適当な乾燥
手段(例えば、エアー吹き付け又は加熱)により乾燥さ
せることもでき、例えば、図1に示すように、乾燥エア
ー用ヘッド部51を設けて洗浄液を乾燥するエアー(例
えば、熱風)を供給することができる。
【0048】前記の各調整部24,34,44,54
は、それらを手動又は適当な制御装置(図示せず)によ
って調整することにより、インク用ヘッド部21、反応
液用ヘッド部31、洗浄液用ヘッド部41、及び乾燥エ
アー用ヘッド部51と、箱91の側壁表面91aとの距
離調整を行うことができる。
【0049】図1に示す本発明の記録装置1を用いて、
箱91の側壁表面91aへの記録を実施する場合には、
ベルトコンベア11に箱91を載せて一定方向(図1の
矢印Aの方向)へ移動させる。ベルトコンベア11に箱
91を載せる際には、箱91の側壁表面91aが、イン
ク用ヘッド部21、反応液用ヘッド部31、洗浄液用ヘ
ッド部41、及び乾燥エアー用ヘッド部51から、それ
ぞれインク、反応液、洗浄液、及びエアーを正確に受け
取ることができる位置に載置する。
【0050】ベルトコンベア11は、箱91を載せた状
態で一定方向(図1の矢印Aの方向)へ移動するので、
箱91の側壁表面91aは最初にインク用ヘッド部21
の前で水性インクを受け取り、次に反応液用ヘッド部3
1の前で反応液を受け取る。前記反応液中には、水性イ
ンクと接触すると凝集物を生じさせる反応剤が含まれて
いるため、箱91の側壁表面91a上で水性インクと反
応液とが接触すると、凝集反応が起こる。続いて、洗浄
液用ヘッド部41の前で洗浄液を受け取るので、造膜反
応が促進され、更に乾燥エアー用ヘッド部51からのエ
アーを受けて強固な被膜が形成される。
【0051】ベルトコンベア11は、箱91の側壁表面
91aが各ヘッド部からインク、反応液、洗浄液、及び
エアーを受け取る位置に到達した際に一時的に停止し、
側壁表面91aが各ヘッド部からインク、反応液、洗浄
液、及びエアーを受け取ってから、移動を再開すること
もできるし、一時的な停止を行わずに、箱91を連続的
に移動させながら、記録を行うこともできる。また、箱
91の複数の側壁を同時に印刷することもできる。箱9
1の上面を同時に印刷する場合に用いるインク用ヘッド
21aを図1に破線で示す。
【0052】更に、水性インク供給手段、反応液供給手
段、及び洗浄液供給手段が全て固定型であり、記録媒体
担持手段が移動型である態様としては、固定型水性イン
ク供給手段及び固定型反応液供給手段が、それぞれ、水
性インク液を貯溜する固定貯液槽及び反応液を貯溜する
固定貯液槽であり、固定型洗浄液供給手段も固定水槽で
あり、それらを並置した組合せであることもできる。こ
れら2つの貯液槽及び水槽に、適当な移動手段(例え
ば、バスケット)に入れた記録媒体を順々に浸漬して、
記録を行うことができる。
【0053】(b)図2の態様 本発明装置において、水性インク供給手段、反応液供給
手段及び洗浄液供給手段が全て移動型であり、記録媒体
担持手段が載置型、すなわち載置固定型である態様の1
つを図2に示す。図2に示す本発明の記録装置1は、例
えば、記録媒体としてのパネル92を印刷するのに適し
た装置である。
【0054】具体的には、図2に示す記録装置1は、
(イ)記録媒体としてのパネル92を載置して固定する
載置固定型記録媒体担持手段としての載置台10a、及
び(ロ)前記載置固定型記録媒体担持手段としての載置
台10aに固定された記録媒体の被記録表面上を二方向
(図2の矢印B,Cの方向及びそれらの逆方向)に往復
運動が可能で、インク用ヘッド部分と反応液用ヘッド部
分と洗浄液用ヘッド部分とが一体化されている3液共通
ヘッド(すなわち、インク・反応液・洗浄液用ヘッド)
25を含む。
【0055】前記の載置固定型記録媒体担持手段として
の載置台10aは、適当な台11bの上に固定すること
ができる。
【0056】前記の3液共通ヘッド25は、インク用ヘ
ッド部分25aと、反応液用ヘッド部分25bと、洗浄
液用ヘッド部分25cとを、例えば、重力方向に関して
上下方向に沿って3列に並置して含むことができる。な
お、インク用ヘッド部分25aと反応液用ヘッド部分2
5bとの配置を、逆にすることもできる。重力方向に関
して上下方向に沿って並置する場合は、洗浄液用ヘッド
部分を下方に配置するのが好ましい。
【0057】インク用ヘッド部分25aからは、着色剤
と樹脂エマルジョン粒子と水とを含む水性インクを供給
することができる。反応液用ヘッド部分25bからは、
前記水性インクと接触すると凝集物を生じさせる反応剤
を含む反応液を供給することができる。洗浄液用ヘッド
部分25cからは、洗浄液(例えば、水)を供給するこ
とができる。なお、図2においては、3液共通ヘッド2
5を二方向(図2の矢印B,Cの方向及びそれらの逆方
向)に往復運動させる移動手段を図示していない。
【0058】ここで、本発明の記録装置に用いることの
できる、インク用ヘッド部分と反応液用ヘッド部分と洗
浄液用ヘッド部分とが一体化されている3液共通ヘッド
(すなわち、インク・反応液・洗浄液用ヘッド)の構造
を、図3に示す。図3は、3液共通ヘッド2のノズル面
を模式的に示す拡大図である。
【0059】図3に示す3液共通ヘッド2のノズル面
は、インク用ノズル面3と、反応液用ノズル面4と、洗
浄液用ノズル面5とからなる。各ノズル面の配置は、洗
浄液用ノズル面5が、中央(すなわち、インク用ノズル
面3と反応液用ノズル面4との間)に位置しない限り、
特に限定されるものではない。
【0060】インク用ノズル面3には、例えば、イエロ
ーインク組成物を吐出するイエローインク用ノズル3a
と、マゼンタインク組成物を吐出するマゼンタインク用
ノズル3bと、シアンインク組成物を吐出するシアンイ
ンク用ノズル3cと、ブラックインク組成物を吐出する
ブラックインク用ノズル3dとを設けることができる。
インク用ノズル面3に設ける各ノズルの数及び配置は、
使用するインク数に応じて適宜変更することができる。
反応液用ノズル面4及び洗浄液用ノズル面5には、それ
ぞれ、反応液用ノズル4a及び洗浄液用ノズル5aが設
けられている。
【0061】図3に示す3液共通ヘッド2による記録手
順を図4に沿って説明する。3液共通ヘッド2は、記録
媒体90上を矢印Pで示す方向に移動する。その移動
(以下、第1の移動と称する)の間に、インク用ノズル
面3の各ノズル3a,3b,3c,3dからは各水性イ
ンクが吐出され、反応液用ノズル面4の反応液用ノズル
4aからは反応液が吐出され、洗浄液用ノズル面5の洗
浄液用ノズル5aからは洗浄液が吐出されるので、記録
媒体90上には、水性インクの帯状領域、反応液の帯状
領域、及び洗浄液の帯状領域が形成される。
【0062】なお、この第1の移動が、被記録表面に対
する最初の記録操作である場合には、水性インク(又は
反応液)の吐出のみを実施し、反応液(又は水性イン
ク)の吐出及び洗浄液の吐出を実施せず、水性インク
(又は反応液)の帯状領域のみを形成させることもでき
る。
【0063】次に、3液共通ヘッド2を、矢印Qで示す
方向に所定距離だけ移動させる。この所定距離は、既に
形成されている水性インクの帯状領域の上に、反応液の
帯状領域を形成することができる距離に相当する。3液
共通ヘッド2を、前記の矢印Qで示す方向へ移動させた
後、3液共通ヘッド2は記録媒体90上を矢印Pで示す
方向と反対の方向に移動する(以下、第2の移動と称す
る)。この第2の移動の間に、再び、インク用ノズル面
3の各ノズル3a,3b,3c,3dからは各水性イン
クが吐出され、反応液用ノズル面4の反応液用ノズル4
aからは反応液が吐出され、洗浄液用ノズル面5の洗浄
液用ノズル5aからは洗浄液が吐出される。第1の移動
の際に、各水性インクが印字された帯状領域には、第2
の移動の際に、反応液が帯状に供給される。
【0064】なお、この第2の移動が、被記録表面に対
する最初の記録操作としての前記第1移動の直後に行わ
れる場合には、水性インクの吐出及び反応液の吐出のみ
を実施し、洗浄液の吐出を実施しないこともできる。
【0065】第2の移動の終了後、3液共通ヘッド2
を、矢印Qで示す方向に所定距離だけ移動させた後、3
液共通ヘッド2は、記録媒体90上を矢印Pで示す方向
に移動する(以下、第3の移動と称する)。この第3の
移動の間に、再び、インク用ノズル面3の各ノズル3
a,3b,3c,3dからは各水性インクが吐出され、
反応液用ノズル面4の反応液用ノズル4aからは反応液
が吐出され、洗浄液用ノズル面5の洗浄液用ノズル5a
からは洗浄液が吐出される。従って、第1の移動の際に
各水性インクが印字され、第2の移動の際に反応液が供
給された帯状領域には、第3の移動の際に、洗浄液が供
給される。
【0066】図4に示す状態は、このような移動が3回
以上繰り返された後の状態であり、領域6aは、水性イ
ンクのみが供給されている領域であり、領域6bは、水
性インク及び反応液が供給されている領域であり、領域
6cは、水性インク、反応液、及び洗浄液が供給されて
いる領域である。
【0067】図3及び図4の説明では、記録媒体90に
ついては停止と一定方向への搬送とを繰り返し、3液共
通ヘッド2を、前記搬送方向と直角方向に往復運動させ
る態様で説明したが、記録媒体90を固定し、3液共通
ヘッド2のみを移動させる態様、あるいは、3液共通ヘ
ッド2を固定させ、記録媒体90を移動させる態様で
も、同様の帯状領域が順々に形成されることは当業者に
は明らかであろう。
【0068】本発明の記録装置に用いることのできる、
インク用ヘッド部分と反応液用ヘッド部分と洗浄液用ヘ
ッド部分とが一体化されている3液共通ヘッド(すなわ
ち、水性インク、反応液、及び洗浄液用ヘッド)の別の
態様を、図5に示す。図5は、3液共通ヘッド2のノズ
ル面を模式的に示す拡大図である。
【0069】図5に示す3液共通ヘッド2では、各水性
インク用ノズル3a,3b,3c,3dと、反応液用ノ
ズル4a,4bとを、全て横方向に一列に配置してい
る。従って、図5に示す3液共通ヘッド2のノズル面
は、水性インク及び反応液用ノズル面7と、洗浄液用ノ
ズル面5とからなる。水性インク及び反応液用ノズル面
7には、例えば、反応液用ノズル4a、イエローインク
用ノズル3a、マゼンタインク用ノズル3b、シアンイ
ンク用ノズル3c、ブラックインク用ノズル3d、及び
反応液用ノズル4bを、この順に設けることができる。
水性インク及び反応液用ノズル面7に設ける各ノズルの
数及び配置は、使用するインク数に応じて適宜変更する
ことができる。洗浄液用ノズル面5には、洗浄液用ノズ
ル5aが設けられている。
【0070】ここで、再び図2に戻り、図2に示す本発
明の記録装置1を用いて、パネル92の被記録表面への
記録を実施する場合の操作手順の1例を具体的に説明す
る。
【0071】まず、載置台10aにパネル92を固定す
る。続いて、3液共通ヘッド25が、パネル92におけ
る被記録領域の一方の下方端部(あるいは、それよりも
更に低い位置)であって、しかも、左右のいずれか一方
の側端部(あるいは、それよりも更に外側の位置)に位
置するように配置する。以下の説明は、最初に、3液共
通ヘッド25を、図2に示すように、被記録表面の左下
隅の端部へ配置したものとして説明する。
【0072】3液共通ヘッド25の右方向(図2の矢印
Bの方向)への移動開始に併せて、3液共通ヘッド25
からの水性インクの供給を開始する。この場合、反応液
及び洗浄液の供給を開始する必要はないが、供給しても
よい。また、反応液の供給を最初に行い、続いての水性
インクの供給を行う3液共通ヘッドを用いることもでき
る。3液共通ヘッド25が被記録表面の右端に到達した
ところで、3液共通ヘッド25を所定距離だけ上方向
(すなわち、矢印Cで示す方向)に移動させる。前記の
移動距離は、インク用ヘッド部分25a(並びに反応液
用ヘッド部分25b及び洗浄液用ヘッド25c)が、水
性インク(並びに反応液及び洗浄液)を一度に供給可能
な帯状領域の幅に等しい。続いて、3液共通ヘッド25
は、左方向(すなわち、矢印Bで示す方向の逆方向)へ
移動しながら、3液共通ヘッド25からの水性インク及
び反応液の供給を行なう。この場合、洗浄液の供給を開
始する必要はないが、供給してもよい。3液共通ヘッド
25が被記録表面の左端に到達したところで、3液共通
ヘッド25を前記所定距離だけ上方向(すなわち、矢印
Cで示す方向)に移動させ、再び、3液共通ヘッド25
を右方向(図2の矢印Bの方向)へ移動させ、水性イン
ク、反応液、及び洗浄液を供給する。以下、水平方向の
移動と上方向への移動とを交互に繰り返しながら、パネ
ル92の被記録表面への水性インク、反応液、及び洗浄
液の供給を実施する。
【0073】前記のようにパネル92の記録を実施する
場合には、パネル92の下方部から記録操作を開始し、
上方部に向かってその後の操作を実施するのが好まし
い。すなわち、一般に洗浄液は比較的多量に突出される
ので、洗浄液がパネル表面を下方に流れ落ちる場合があ
る。洗浄液が流れ落ちる表面上に、水性インク又は反応
液の一方のみが塗布されていると、記録パターンを破壊
する可能性があるが、水性インクと反応液とによる造膜
反応が開始又は終了した後に洗浄液が流れ落ちても、記
録パターンに影響を与えないからである。
【0074】このような手順で、被記録表面に水性イン
クが供給された後に、その上に反応液が供給されると、
前記反応液中には、水性インクと接触すると凝集物を生
じさせる反応剤が含まれているため、パネル92の被記
録表面上で水性インクと反応液とが接触して、凝集反応
が起こる。更に、水性インク及び反応液の付着面に洗浄
液46が順に供給されるので、洗浄液46の作用により
造膜反応が促進され、強固な被膜が形成される。
【0075】パネル92の被記録表面への水性インク及
び反応液の供給が全て終了し、更に、水性インク及び反
応液が既に供給された被記録表面の全面が洗浄液と接触
した後で、パネル92を、そのまま放置することにより
自然乾燥することもできるし、あるいは、適当な乾燥手
段(例えば、エアー吹き付け又は加熱)により乾燥させ
ることもできる。
【0076】図2に示す態様では、3液共通ヘッドに代
えて、インク用ヘッド部分と反応液用ヘッド部分とが一
体化されているインク・反応液用ヘッドと、洗浄液用ヘ
ッドとの2ヘッドの組み合わせを用いることもできる
し、あるいは、水性インク用ヘッドと反応液用ヘッドと
洗浄液用ヘッドとの3ヘッドの組み合わせを用いること
もできる。
【0077】図2に示す態様において、ヘッド部は、例
えば、水性インク吐出用ヘッド部分と反応液吐出用ヘッ
ド部分と洗浄液用ヘッド部分とを有するインクジェット
記録用ヘッドであるか、あるいは、水性インク噴霧用ヘ
ッド部分と反応液噴霧用ヘッド部分と洗浄液噴霧用ヘッ
ド部分とを有するスプレーガンヘッドであることができ
る。なお、洗浄液用ヘッドは散水供給手段であることも
できる。
【0078】(c)図6の態様 本発明装置において、水性インク供給手段及び反応液供
給手段が共に移動型であり、洗浄液供給手段が固定型で
あり、記録媒体担持手段が移動型である態様の1つを図
6に示す。図6に示す本発明の記録装置1は、例えば、
記録媒体としてのパネル92を記録するのに適した装置
である。
【0079】具体的には、図6に示す記録装置1は、
(イ)記録媒体としてのパネル92を担持した状態で或
る特定の一方向(図6の矢印Eの方向及びその逆方向)
に移動することのできる移動型記録媒体担持手段10、
(ロ)前記移動型記録媒体担持手段10に固定された記
録媒体の被記録表面上を或る特定の一方向(特に、移動
型記録媒体担持手段10の移動方向と直交する方向;図
6の矢印Dの方向及びその逆方向)に往復運動が可能
で、インク用ヘッド部分と反応液用ヘッド部分とが一体
化されている2液共通ヘッド(すなわち、インク・反応
液用ヘッド)26、及び(ハ)固定型洗浄液供給手段と
しての水槽45とを含む。
【0080】前記の移動型記録媒体担持手段10は、パ
ネル92を把持する把持部12と、その把持部12を介
してパネル92を保持する保持軸13とを含む。保持軸
13は、上下方向(図6の矢印Eの方向及びその逆方
向)に移動可能である。
【0081】前記の2液共通ヘッド26は、前記図3に
示す3液共通ヘッド2から洗浄液用ヘッド部分を除き、
インク用ヘッド部分26aと、反応液用ヘッド部分26
bとを2列に並置して含む。なお、インク用ヘッド部分
26aと反応液用ヘッド部分26bとの配置を、逆にす
ることもできる。
【0082】インク用ヘッド部分26aからは、着色剤
と樹脂エマルジョン粒子と水とを含む水性インクを供給
することができる。反応液用ヘッド部分26bからは、
前記水性インクと接触すると凝集物を生じさせる反応剤
を含む反応液を供給することができる。なお、図6にお
いては、2液共通ヘッド26を往復運動させる移動手段
を図示していない。
【0083】前記水槽45は、移動型記録媒体担持手段
10に把持されたパネル92の下方に設けられており、
その中には洗浄液46(例えば、水)が貯留されてい
る。水槽45中の洗浄液は、流水であることもできる。
【0084】図6に示す本発明の記録装置1を用いて、
パネル92への記録を実施する場合には、例えば、以下
の手順を利用することができる。
【0085】まず、移動型記録媒体担持手段10にパネ
ル92を固定する。続いて、2液共通ヘッド26が、パ
ネル92における被記録領域の一方の下方端部(あるい
は、それよりも更に低い位置)であって、しかも、左右
のいずれか一方の側端部(あるいは、それよりも更に外
側の位置)に位置するように配置する。以下の説明は、
最初に、2液共通ヘッド26を、図6に示すように、被
記録表面の左下隅の端部へ配置したものとして説明す
る。
【0086】2液共通ヘッド26の右方向(図6の矢印
Dの方向)への移動開始に併せて、2液共通ヘッド26
からの水性インク(又は反応液も併せて)の供給を開始
する。2液共通ヘッド26が被記録表面の右端に到達し
たところで、保持軸13を所定距離だけ下方向(図6の
矢印Eの方向)に移動してパネル92を移動させる。前
記の移動距離は、インク用ヘッド部分26a(及び反応
液用ヘッド部分26b)が、水性インク(及び反応液)
を一度に供給可能な帯状領域の幅に等しい。続いて、2
液共通ヘッド26は、左方向(すなわち、矢印Dで示す
方向の逆方向)へ移動しながら、2液共通ヘッド26か
らの水性インク及び反応液の供給を行ない、2液共通ヘ
ッド26が被記録表面の左端に到達したところで、保持
軸13を再び所定距離だけ下方向(図6の矢印Eの方
向)に移動してパネル92を移動させる。以下、2液共
通ヘッド26の水平方向の移動と保持軸13(すなわ
ち、パネル92)の下方向(垂直方向)への移動とを交
互に繰り返しながら、パネル92の被記録表面への水性
インク及び反応液の供給を実施する。
【0087】このような手順で被記録表面に水性インク
が供給された後に、その上に反応液が供給されると、前
記反応液中には、水性インクと接触すると凝集物を生じ
させる反応剤が含まれているため、パネル92の被記録
表面上で水性インクと反応液とが接触し、凝集反応が起
こる。
【0088】被記録表面に水性インク及び反応液が付着
したパネル92は、保持軸13により徐々に下方に降下
するので、パネル92の下方に設けられた水槽45内に
貯留されている洗浄液46の中に、記録面が徐々に浸漬
される。こうして、洗浄液46の作用により造膜反応が
促進され、強固な被膜が形成される。
【0089】パネル92の被記録表面の全面が洗浄液4
6と接触した後で、保持軸13を上方向(矢印Eの逆方
向)に移動させ、パネル92の全体を水槽45から引き
上げる。引き上げたパネル92は、そのまま放置して自
然乾燥することもできるし、あるいは、適当な乾燥手段
(例えば、エアー吹き付け又は加熱)により乾燥させる
こともできる。
【0090】なお、図6に示す態様においては、固定型
洗浄液供給手段として、前記の水槽45に換えて、1又
は複数の洗浄液供給ヘッドを用いることができる。この
洗浄液供給ヘッドは、前記インク・反応液ヘッド26と
同様のインクジェット記録用ヘッドやスプレーガンヘッ
ドであることもできるが、散水供給手段であることもで
きる。なお、これらの固定型洗浄液供給手段は、インク
液と反応液との接触後に、洗浄液を供給することができ
る位置に配置する。
【0091】図6に示す態様において、ヘッド部は、例
えば、水性インク吐出用ヘッド部分と反応液吐出用ヘッ
ド部分とを有するインクジェット記録用ヘッドである
か、あるいは、水性インク噴霧用ヘッド部分と反応液噴
霧用ヘッド部分とを有するスプレーガンヘッドであるこ
とができる。なお、ヘッド部を一体化せずに、水性イン
ク用ヘッドと反応液用ヘッドとの2ヘッドを別々に設け
ることもできる。
【0092】(d)図7の態様 本発明装置において、水性インク供給手段、反応液供給
手段、及び洗浄液供給手段が全て固定型であり、記録媒
体担持手段が搬送型である別の態様を図7に示す。図7
に示す本発明の記録装置1は、例えば、パネル92を記
録するのに適した装置である。
【0093】図7に示す本発明の記録装置1は、記録媒
体供給室81、記録室82、洗浄定着室83、乾燥室8
4、及び記録媒体収納室85を含む。
【0094】記録媒体供給室81では、記録媒体を収納
した供給ボックス86からパネル92が搬送用ベルトコ
ンベア17上に載置される。その際、被記録表面を表側
にして載置される。搬送用ベルトコンベア17は、ガイ
ドロール17aによって、パネル92を記録媒体供給室
81から、順に、記録室82、洗浄定着室83、乾燥室
84、及び記録媒体収納室85へ搬送する。
【0095】記録室82では、インク・反応液供給手段
27から、被記録表面上に水性インク及び反応液が供給
される。反応液中には、水性インクと接触すると凝集物
を生じさせる反応剤が含まれているため、被記録表面上
で水性インクと反応液とが接触すると、凝集反応が起こ
る。
【0096】水性インクと反応液とを担持したパネル9
2は、次に、洗浄定着室83に搬送され、その被記録表
面上に、噴霧ノズル47から洗浄液(例えば、水)48
が供給される。こうして、洗浄液48により造膜反応が
促進され、強固な被膜が形成される。
【0097】更に、パネル92は、必要により、乾燥室
84に搬送され、乾燥手段(例えば、赤外線ランプ又は
熱風供給手段)80により乾燥処理が行なわれた後、記
録媒体収納室85に搬送され、製品収納ボックス87に
装入される。
【0098】パネル92を単独でベルトコンベア上に載
置して搬送することが困難な場合は、適当な搬送用手段
を用いることができる。搬送用手段としては、例えば、
図8に示す搬送ボックス88を用いることができる。搬
送ボックス88は、4側壁と底面とを有し、上面が開放
した容器であり、底面の上に記録媒体90を収納するこ
とができ、ベルトコンベア17上に載置し、ガイドロー
ル17aによって搬送することができる。また、ガイド
ロール17aが被記録面に接触することを防止すること
ができる。
【0099】(e)図9の態様 本発明装置において、水性インク供給手段、反応液供給
手段、及び洗浄液供給手段が全て移動型であり、記録媒
体担持手段が載置回転型である態様の1つを図9に示
す。図9に示す本発明の記録装置1は、例えば、ディス
ク状記録媒体パネル93(又は、被記録表面が円形のパ
ネル状記録媒体)を記録するのに適した装置である。
【0100】具体的には、図9に示す記録装置1は、記
録媒体担持手段としての回転台18と、インク・反応液
・洗浄液供給手段60とを含む。前記インク・反応液・
洗浄液供給手段60は、インク用ヘッド部分と反応液用
ヘッド部分と洗浄液用ヘッド部分とが一体化されている
3液共通ヘッド(すなわち、インク、反応液、及び洗浄
液用ヘッド)64と、前記3液共通ヘッド64における
各ヘッド部分に水性インク、反応液、及び洗浄液をそれ
ぞれ供給することのできるインクジェット記録機構61
と、前記3液共通ヘッド64及びインクジェット記録機
構61を、歯車63により往復運動(矢印Gの方向)さ
せることのできるポールネジ62とを含む。
【0101】前記3液共通ヘッド64において、インク
用ヘッド部分からは、水性インクを供給することができ
る。反応液用ヘッド部分からは、反応液を供給すること
ができる。洗浄液用ヘッド部分からは、洗浄液(例え
ば、水)を供給することができる。洗浄液用ヘッド部分
は、水性インクと反応液とが供給された後で、洗浄液を
供給する位置に設ける。
【0102】図9に示す本発明の記録装置1を用いて、
ディスク状パネル93の記録を実施する場合には、ま
ず、回転台18にディスク状パネル93を載置し、必要
により適当な固定手段19によって固定した後、3液共
通ヘッド64が、被記録表面における被記録領域の一端
(あるいは、それよりも更に外側の位置;円周方向に関
して)に位置するように配置する。回転台18の回転
(矢印Fの方向)を開始させ、3液共通ヘッド64から
の水性インク、反応液、及び洗浄液の供給を開始して、
被記録領域の周縁部から記録を開始する。回転台18が
一回転したところで、回転台歯車63により、ポールネ
ジ62を回転させ、3液共通ヘッド64を、所定距離だ
け中心方向(ディスク状パネル93の直径方向に関し
て)に移動させる。以下、回転台18の前記回転と、3
液共通ヘッド64の前記移動とを同期させながら、ディ
スク状パネル93の被記録表面へ水性インク、反応液、
及び洗浄液を供給する。
【0103】3液共通ヘッド64におけるインク用ヘッ
ド部分、反応液用ヘッド部分、及び洗浄液用ヘッド部分
は、中心部から周縁部に向かって、この順に配置されて
いるので、水性インクが被記録面に供給された後、その
上に反応液が供給され、更にその上に洗浄液が供給され
る。前記反応液中には、水性インクと接触すると凝集物
を生じさせる反応剤が含まれているため、ディスク状パ
ネル93の被記録表面上で水性インクと反応液とが接触
すると、凝集反応が起こる。その上から、更に洗浄液が
供給されるので、造膜反応が促進され、強固な被膜が形
成される。
【0104】ディスク状パネル93の被記録表面への水
性インク及び反応液の供給が全て終了し、更に、全面が
洗浄液と接触した後で、ディスク状パネル93を、その
まま放置することにより自然乾燥することもできるし、
あるいは、適当な乾燥手段(例えば、エアー吹き付け又
は加熱)により乾燥させることもできる。
【0105】図9に示す態様では、3液共通ヘッドに代
えて、インク用ヘッド部分と反応液用ヘッド部分とが一
体化されているインク・反応液用ヘッド(2液共通ヘッ
ド)と、洗浄液用ヘッドとの2つのヘッドの組合わせを
用いることもできるし、あるいは、水性インク用ヘッド
と反応液用ヘッドと洗浄液用ヘッドとの3つのヘッドの
組み合わせを用いることもできる。更に、インク用ヘッ
ド部分、反応液用ヘッド部分、及び洗浄液用ヘッド部分
は、スプレーガンヘッドであることができる。
【0106】(5)水性インク組成物 本発明装置で用いる水性インク組成物は、着色剤と、樹
脂エマルジョン粒子と、水溶性有機溶媒と、水とを少な
くとも含んでなる。本明細書においてインク組成物と
は、モノクロ印刷を行う場合にはブラックインク組成物
を意味し、更にカラー印刷を行う場合にはカラーインク
組成物、具体的にはイエローインク組成物、マゼンタイ
ンク組成物、及びシアンインク組成物、更に場合によっ
てブラックインク組成物を意味するものとする。その
他、カラーインク組成物として公知の各種インク組成
物、例えば、ライトマゼンタインク組成物、ライトシア
ンインク組成物、グリーンインク組成物、レッドインク
組成物、ブルーインク組成物等も含まれる。
【0107】《樹脂エマルジョン粒子》本発明で用いる
インク組成物は樹脂エマルジョン粒子を含んでなる。本
明細書において、「樹脂エマルジョン粒子」とはポリマ
ー成分の微粒子、即ち、ポリマー微粒子をいう。また、
「樹脂エマルジョン粒子」は好ましくは被膜形成能を有
するポリマーからなるものが好ましい。「樹脂エマルジ
ョン」とは、連続相が水であり、分散粒子が樹脂エマル
ジョン粒子である水性分散液をいう。「樹脂エマルジョ
ン」は「ポリマーエマルジョン」、「水系エマルジョ
ン」とも呼ばれることがある。
【0108】本発明で用いることのできる、樹脂エマル
ジョン粒子を構成するポリマー成分の具体例としては、
スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン−
(メタ)アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重
合体、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、スチレン−ブ
タジエン共重合体、ポリブタジエン、アクリロニトリル
−ブタジエン共重合体、クロロプレン共重合体、ポリオ
レフィン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリアミ
ド、エチレン−酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル−アク
リル酸エステル共重合体、又はポリウレタンなどを挙げ
ることができる。本発明で用いる樹脂エマルジョン粒子
は、後述する反応液中の反応剤、とりわけ多価金属イオ
ン又はポリアリルアミン若しくはポリアリルアミンの誘
導体との相互作用により、着色剤の記録媒体表面への固
着性を促進する効果を有する。
【0109】樹脂エマルジョン粒子を含んでなる樹脂エ
マルジョンの最低成膜温度は、好ましくは室温以下、よ
り好ましくは25℃以下、最も好ましくは20℃以下で
ある。樹脂エマルジョンの成膜を室温以下で行うことが
できれば、印刷された記録媒体を極性溶媒などの洗浄液
で洗浄した後に、加熱及び乾燥手段を必要とせず、室温
以下において印刷面の膜化が自動的に進行し、着色剤が
記録媒体に強固に固着するので好ましい。
【0110】また、本発明で用いる樹脂エマルジョンの
最低成膜温度が室温以上であっても、印刷された記録媒
体を極性溶媒などの洗浄液で洗浄した後に、記録媒体を
樹脂エマルジョンの成膜温度以上に加熱することで印刷
面の膜化が進行し、記録媒体上で着色剤が強固に固着す
ることは当業者には明らかであろう。すなわち、印刷さ
れた記録媒体を極性溶媒などの洗浄液で洗浄した後に、
記録媒体を最低成膜温度以上に加熱する手段を用いるこ
とで、本発明において最低成膜温度が室温以上の樹脂エ
マルジョンも使用可能となる。
【0111】ここで、「最低成膜温度」とは、樹脂エマ
ルジョン粒子を水に分散させて得られた樹脂エマルジョ
ンをアルミニウム等の金属板の上に薄く流延し、温度を
上昇させた際に透明な連続フィルムが形成される最低の
温度をいう。最低造膜温度以下の温度領域では白色粉末
状となる。更に、樹脂エマルジョン粒子のガラス転移点
は10℃以下であることが好ましい。
【0112】樹脂エマルジョン粒子の「造膜性」とは、
樹脂エマルジョン粒子を水に分散させて水性エマルジョ
ンの形態とした場合に、この水性エマルジョンの水成分
を蒸発させていくと、樹脂被膜が形成されることを意味
する。こうした「造膜性」樹脂エマルジョンを含有する
水性インク組成物は、水又は水性有機溶剤を蒸発させる
と、樹脂被膜が形成される性質を有する。この樹脂被膜
は、インク組成物中の着色剤成分を記録媒体表面に強固
に固着する役割を担う。これによって、耐擦性及び耐水
性に優れた画像を得ることができると考えられる。
【0113】樹脂エマルジョン粒子の添加量は、インク
組成物の全重量に対して5重量%以上であり、好ましく
は8重量%以上である。そして樹脂エマルジョン粒子
は、着色剤に対して、その重量比で好ましくは1〜20
の範囲、更に好ましくは2〜10の範囲で含有される。
【0114】また、樹脂エマルジョン粒子の粒子径は1
00nm程度以下が好ましく、より好ましくは5〜80
nm程度である。
【0115】本発明で用いる樹脂エマルジョン粒子は、
その表面にカルボキシル基を有し、更に二価金属塩と高
い反応性を有することが好ましい。具体的には、好まし
い樹脂エマルジョン粒子は、その0.1重量%の水性エ
マルジョン3容量と、1mol/lの濃度の二価金属塩
水溶液1容量とを接触させたとき、波長700nmの光
の透過率が初期値の50%となる時間が1×10
以下(好ましくは1×10 秒以下、より好ましくは
1×10秒以下))となるような二価金属塩との反応
性を有するものである。樹脂エマルジョン粒子は、二価
金属イオンと接触すると反応して浮遊物を生じ溶液の透
明度を低下させる。この浮遊物の生成量を光の透過率を
もって測定する。ここで、二価金属イオンとしては、C
2+、Cu2+、Ni2+、Mg2+、Zn2+、又はB
2+を挙げることができ、それと塩を形成する陰イオ
ンとしては、Cl 、NO3− 、I、Br 、C
lO3−又はCHCOOを挙げることができる。こ
のような高い反応性は、樹脂エマルジョン粒子が、その
表面に比較的多くのカルボキシル基を有することに起因
するものと考えられる。上記の様な高い反応性を示す多
量のカルボキシル基をその表面に有する樹脂エマルジョ
ン粒子を含むインク組成物は、撥水処理されたインクジ
ェット記録用ヘッドのノズルプレートに親和性を有さな
い。従って、従来、水溶性樹脂を含んだインク組成物に
おいて問題とされていた欠点、すなわち、インク組成物
がノズルプレートをよく濡らし、その結果インク滴の飛
行曲がり及び吐出不良が発生する欠点が有効に防止され
るとの大きな利点を有する。樹脂エマルジョン粒子は、
それを濃度10重量%で水に分散させた水性エマルジョ
ンのテフロン(登録商標)板上での接触角が70°以上
であることが好ましい。更に、樹脂エマルジョン粒子
は、それを濃度35重量%で水に分散させた水性エマル
ジョンの表面張力が、40×10−3N/m(40dy
ne/cm、20℃))以上であることが好ましい。上
記の様な樹脂エマルジョン粒子を利用することによっ
て、インクジェット記録方法において、より有効に飛行
曲がりを防止することができ、良好な印刷が可能とな
る。
【0116】更に、この樹脂エマルジョン粒子表面の高
い親水性によって、インク組成物は優れた保存安定性が
得られるとの利点も有する。
【0117】本発明で用いる樹脂エマルジョン粒子は、
カルボキシル基を有する不飽和ビニル単量体に由来する
構造を1〜10重量%含み、かつ重合可能な二重結合を
二つ以上有する架橋性単量体によって架橋された構造を
有し、架橋性単量体に由来する構造を0.2〜4重量%
含有することが好ましい。重合の際に重合可能な二重結
合を好ましくは二つ以上、更に好ましくは三つ以上有す
る架橋性単量体類を共重合させて三次元架橋させた架橋
性ポリマーの利用により、ノズルプレート表面がインク
組成物により更に濡れ難くなり、飛行曲がりをより有効
に防止することができ、吐出安定性をより向上させるこ
とができる。
【0118】樹脂エマルジョン粒子としては、単粒子構
造のものを利用することができる。一方、コア部とそれ
を囲むシェル部とからなるコアシェル構造を有する樹脂
エマルジョン粒子を利用することも可能である。本明細
書において「コアシェル構造」とは、「組成の異なる2
種以上のポリマーが粒子中に相分離して存在する形態」
を意味する。従って、シェル部がコア部を完全に被覆し
ている形態のみならず、コア部の一部を被覆しているも
のであってもよい。また、シェル部ポリマーの一部がコ
ア粒子内にドメインなどを形成しているものであっても
よい。更に、コア部とシェル部の中間に、更にもう一層
以上、組成の異なる層を含む3層以上の多層構造を持つ
ものであってもよい。
【0119】本発明で用いる樹脂エマルジョン粒子は、
コア部がエポキシ基を有する樹脂からなり、シェル部が
カルボキシル基を有する樹脂から形成されるものである
ことが好ましい。エポキシ基とカルボキシル基とは互い
に反応する性質を有するが、これら二つの基をコア部と
シェル部とに分離して存在させる。水又は水溶性有機溶
媒の減少により、樹脂エマルジョン粒子同士が合一し、
造膜に伴う圧力によって変形する。これによって、コア
部のエポキシ基とシェル部のカルボキシル基とが結合し
て、網目構造を形成する。これにより、より強度の大き
な被膜を形成することができるとの利点が得られる。エ
ポキシ基を有する不飽和ビニル単量体の量は1〜10重
量%であることが好ましい。なお、ここで造膜前の一部
のエポキシ基とカルボキシル基との反応は、膜形成能が
失われていない限り、本発明にあっては許容されるもの
である。このような樹脂エマルジョン粒子内に反応性の
官能基を共存させ、硬化剤を添加しなくとも造膜時にそ
れらの官能基を反応させ、網目構造を形成する性質を本
明細書におては「自己架橋性」と呼ぶ。
【0120】本発明で用いる樹脂エマルジョン粒子は、
公知の乳化重合によって得ることができる。すなわち、
不飽和ビニル単量体(不飽和ビニルモノマー)を、重合
触媒及び乳化剤を存在させた水中において乳化重合する
ことによって得ることができる。
【0121】不飽和ビニル単量体としては、一般的に乳
化重合で使用されるアクリル酸エステル単量体類、メタ
クリル酸エステル単量体類、芳香族ビニル単量体類、ビ
ニルエステル単量体類、ビニルシアン化合物単量体類、
ハロゲン化単量体類、オレフィン単量体類、又はジエン
単量体類を挙げることができる。更に、具体例として
は、メチルアクリレート、エチルアクリレート、イソプ
ロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブ
チルアクリレート、n−アミルアクリレート、イソアミ
ルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、2−エチ
ルヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、デシ
ルアクリレート、ドデシルアクリレート、オクタデシル
アクリレート、シクロヘキシルアクリレート、フェニル
アクリレート、ベンジルアクリレート、又はグリシジル
アクリレート、等のアクリル酸エステル類;メチルメタ
クリレート、エチルメタクリレート、イソプロピルメタ
クリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメ
タクリレート、n−アミルメタクリレート、イソアミル
メタクリレート、n−ヘキシルメタクリレート、2−エ
チルヘキシルメタクリレート、オクチルメタクリレー
ト、デシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、
オクタデシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリ
レート、フェニルメタクリレート、ベンジルメタクリレ
ート、又はグリシジルメタクリレート、等のメタクリル
酸エステル類;酢酸ビニル等のビニルエステル類;アク
リロニトリル、又はメタクリロニトリル等のビニルシア
ン化合物類;塩化ビニリデン、又は塩化ビニル、等のハ
ロゲン化単量体類;スチレン、2−メチルスチレン、ビ
ニルトルエン、t−ブチルスチレン、クロルスチレン、
ビニルアニソール、又はビニルナフタレン等の芳香族ビ
ニル単量体類;エチレン、プロピレン、又はイソプロピ
レン、等のオレフィン類;ブタジエン、又はクロロプレ
ン等のジエン類;ビニルエーテル、ビニルケトン、又は
ビニルピロリドン等のビニル単量体類を挙げることがで
きる。カルボキシル基を有さない単量体を用いる場合
は、カルボキシル基を有する不飽和ビニル単量体の併用
が必須となるが、好ましいその例としては、アクリル
酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマール酸、又はマレ
イン酸を挙げることができ、メタクリル酸の利用が好ま
しい。また、使用可能な乳化剤としては、アニオン界面
活性剤、ノニオン界面活性剤、又はこれらの混合物を挙
げることができる。
【0122】また、上記したように、上記モノマー由来
の分子を、重合可能な二重結合を二つ以上有する架橋性
単量体によって架橋された構造を有することが好まし
い。重合可能な二重結合を二つ以上有する架橋性単量体
の例としては、ポリエチレングリコールジアクリレー
ト、トリエチレングリコールジアクリレート、1,3−
ブチレングリコールジアクリレート、1,6−ブチレン
グリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオール
ジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレー
ト、1,9−ノナンジオールジアクリレート、ポリプロ
ピレングリコールジアクリレート、2,2’−ビス(4
−アクリロキシプロピロキシフェニル)プロパン、2,
2’−ビス(4−アクリロキシジエトキシフェニル)プ
ロパン、等のジアクリレート化合物;トリメチロールプ
ロパントリアクリレート、トリメチロールエタントリア
クリレート、テトラメチロールメタントリアクリレート
等のトリアクリレート化合物;ジトリメチロールテトラ
アクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレ
ート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート等のテ
トラアクリレート化合物;ジペンタエリスリトールヘキ
サアクリレート等のヘキサアクリレート化合物;エチレ
ングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコール
ジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリ
レート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、
1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、1,4
−ブチレングリコールジメタクリレート、1,6−ヘキ
サンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコー
ルジメタクリレート、ジプロピレングリコールジメタク
リレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレー
ト、ポリブチレングリコールジメタクリレート、2,
2’−ビス(4−メタクリロキシジエトキシフェニル)
プロパン、等のジメタクリレート化合物;トリメチロー
ルプロパントリメタクリレート、トリメチロールエタン
トリメタクリレート等のトリメタクリレート化合物;メ
チレンビスアクリルアミド、ジビニルベンゼンを挙げる
ことができる。
【0123】更に、上記単量体に加えて、アクリルアミ
ド類又は水酸基含有単量体を添加することによって、更
に印刷安定性を向上させることができる。アクリルアミ
ド類の例としては、アクリルアミド及びN,N’−ジメ
チルアクリルアミドを挙げることができる。また、水酸
基含有単量体の例としては、2−ヒドロキシエチルアク
リレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−
ヒドロキシエチルメタクリレート、及び2−ヒドロキシ
プロピルメタクリレートを挙げることができ、これらを
単独又は二種以上混合して使用することができる。
【0124】また、コアシェル構造の樹脂エマルジョン
粒子は、公知の手法により、一般的には多段階の乳化重
合などによって製造することができる。例えば、特開平
4−76004号公報で開示されている方法によって製
造することができる。重合に用いる不飽和ビニル単量体
の例としては、上記したものが同様に挙げられる。
【0125】また、上記のコア部へのエポキシ基の導入
は、エポキシ基を有する不飽和ビニル単量体として、グ
リシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、ア
リルグリシジルエーテル等を他の不飽和ビニル単量体と
共重合する方法、あるいは一種以上の不飽和ビニル単量
体を重合してコア粒子を調製する際にエポキシ化合物を
同時に添加し、複合化させる方法を挙げることができ
る。重合の容易さや重合安定性等の点から前者の方法が
好ましい。
【0126】また、乳化重合の際に使用される開始剤、
界面活性剤、分子量調整剤、更には中和剤等も常法に準
じて使用することができる。
【0127】本発明で用いる水性インク組成物におい
て、樹脂エマルジョン粒子は微粒子としてインク組成物
の他の成分と混合されてもよいが、好ましくは樹脂エマ
ルジョン粒子を水に分散させ、ポリマーエマルジョンの
形態とした後、インク組成物の他の成分と混合されるの
が好ましい。
【0128】本発明で用いる好ましい樹脂エマルジョン
は、モノマーを、必要に応じて界面活性剤とともに水中
で乳化重合することによって得ることができる。例え
ば、アクリル系樹脂又はスチレン−アクリル系樹脂のエ
マルジョンは、(メタ)アクリル酸エステル、又は(メ
タ)アクリル酸エステル及びスチレンを、界面活性剤と
ともに水中で分散重合させることによって得ることがで
きる。樹脂成分と界面活性剤との混合の割合は、通常1
000:1〜10:1程度とするのが好ましい。界面活
性剤の使用量が前記範囲にあることで、より良好なイン
クの耐水性、浸透性が得られる。界面活性剤は特に限定
されないが、好ましい例としてはアニオン性界面活性剤
(例えば、ドデシルベンゼルスルホン酸ナトリウム、ラ
ウリル酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエー
テルサルフェートのアンモニウム塩など)、非イオン性
界面活性剤(例えば、ポリオキシエチレンアルキルエー
テル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキ
シエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチ
レンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンア
ルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミドな
ど)を挙げることができ、これらを単独で又は二種以上
を混合して用いることができる。また、アセチレングリ
コール(オレフィンY、並びにサーフィノール82、1
04、440、465、及び485(いずれもAir Prod
ucts and Chemicals Inc. 製))を用いることも可能で
ある。
【0129】また、分散相成分としての樹脂と水との割
合は、樹脂100重量部に対して水好ましくは60〜4
00重量部、より好ましくは100〜200重量部の範
囲が適切である。
【0130】この樹脂は、親水性部分と疎水性部分とを
併せ持つ重合体であるのが好ましい。
【0131】好ましいインク組成物は、樹脂エマルジョ
ン形態の熱可塑性樹脂を含むのが好ましい。また、これ
らの樹脂は、軟化又は溶融温度以上に加熱され、冷却さ
れた際に強固な固着性、耐擦性のある膜を形成するもの
が好ましい。
【0132】水不溶性の熱可塑性樹脂の具体例として
は、ポリアクリル酸、ポリメタアクリル酸、ポリメタア
クリル酸エステル、ポリエチルアクリル酸、スチレン‐
ブタジエン共重合体、ポリブタジエン、アクリロニトリ
ル‐ブタジエン共重合体、クロロプレン共重合体、フッ
素樹脂、フッ化ビニリデン、ポリオレフィン樹脂、セル
ロース、スチレン‐アクリル酸共重合体、スチレン‐メ
タアクリル酸共重合体、ポリスチレン、スチレン‐アク
リルアミド共重合体、ポリイソブチルアクリレート、ポ
リアクリロニトリル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアセ
タール、ポリアミド、ロジン系樹脂、ポリエチレン、ポ
リカーボネート、塩化ビニリデン樹脂、セルロース系樹
脂、酢酸ビニル樹脂、エチレン‐酢酸ビニル共重合体、
酢酸ビニル‐アクリル共重合体、塩化ビニル樹脂、ポリ
ウレタン、ロジンエステル等を挙げることができるが、
これらに限定されるものではない。
【0133】低分子量の熱可塑性樹脂の具体例として
は、ポリエチレンワックス、モンタンワックス、アルコ
ールワックス、合成酸化ワックス、αオレフィン‐無水
マレイン酸共重合体、カルナバワックス等の動植物系ワ
ックス、ラノリン、パラフィンワックス、マイクロクリ
スタリンワックス等を挙げることができる。
【0134】上記条件を満足する樹脂エマルジョンとし
て、公知の樹脂エマルジョンを用いることも可能であ
り、例えば、特公昭62−1426号、特開平3−56
573号、特開平3−79678号、特開平3−160
068号、特開平4−18462号などに記載の樹脂エ
マルジョンを用いることができる。
【0135】《着色剤》本発明で用いる水性インク組成
物に含まれる着色剤は、染料、又は顔料のいずれであっ
てもよい。耐光性及び耐水性の面においては顔料である
ことが好ましい。また、顔料と染料とを併用することも
可能である。
【0136】顔料は特に限定されず、無機顔料及び有機
顔料のいずれも使用することができる。無機顔料として
は、酸化チタン及び酸化鉄に加え、コンタクト法、ファ
ーネスト法、サーマル法などの公知の方法によって製造
されたカーボンブラックを使用することができる。ま
た、有機顔料としては、アゾ染料(アゾレーキ、不溶性
アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料などを含
む)、多環式顔料(例えば、フタロシアニン顔料、ペリ
レン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナク
リドン顔料、ジオキサジン顔料、チオインジゴ顔料、イ
ソインドリノン顔料、キノフラロン顔料など)、染料キ
レート(例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キ
レートなど)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、あるいはア
ニリンブラックなどを使用することができる。
【0137】特に黒インクとして使用されるカーボンブ
ラックとしては、三菱化学製のNo.2300,No.900,MCF88,N
o.33,No.40,No.45,No.52,MA7,MA8,MA100,No2200B 等
が、コロンビア社製の Raven5750,Raven5250,Raven500
0,Raven3500,Raven1255,Raven700 等が、キャボット社
製のRegal 400R,Regal 330R,Rega l660R,Mogul L,Monar
ch700, Monarch 800, Monarch 880, Monarch 900, Mona
rch 1000, Monarch 1100,Monarch 1300, Monarch 1400
等が、デグッサ社製の Color Black FW1,Color Black F
W2, Color Black FW2V, Color Black FW18, Color Blac
k FW200, Color Black S150, Color Black S160, Color
Black S170, Printex 35, Printex U, Printex V, Pr
intex 140U, Special Black 6, Special Black 5, Spec
ial Black4A, Special Black 4 等が使用できる。イエ
ローインクに使用される顔料としては、C.I.Pigment Ye
llow 1, C.I.Pigment Yellow 2, C.I.Pigment Yellow
3, C.I.Pigment Yellow 12, C.I.Pigment Yellow 13,
C.I.Pigment Yellow 14C, C.I.Pigment Yellow 16 ,C.
I.Pigment Yellow 17, C.I.Pigment Yellow 73, C.I.Pi
gment Yellow 74, C.I.Pigment Yellow 75, C.I.Pigmen
t Yellow 83, C.I.Pigment Yellow 93, C.I.Pigment Ye
llow95, C.I.Pigment Yellow97, C.I.Pigment Yellow 9
8, C.I.Pigment Yellow109, C.I.Pigment Yellow110,
C.I.Pigment Yellow114, C.I.Pigment Yellow128, C.I.
Pigment Yellow129, C.I.Pigment Yellow151, C.I.Pigm
ent Yellow154 等を挙げることができる。また、マゼン
タインクに使用される顔料としては、C.I.Pigment Red
5, C.I.Pigment Red 7, C.I.Pigment Red 12, C.I.Pigm
ent Red 48(Ca), C.I.Pigment Red 48(Mn), C.I.Pigmen
t Red 57(Ca), C.I.Pigment Red 57:1, C.I.Pigment Re
d 112, C.I.Pigment Red 122, C.I.Pigment Red 123,
C.I.Pigment Red 168, C.I.Pigment Red 184, C.I.Pigm
ent Red 202, C.I.Pigment Red 209 等を挙げることが
できる。シアンインクに使用される顔料としては、C.I.
Pigment Blue 1, C.I.Pigment Blue 2, C.I.Pigment Bl
ue 3, C.I.Pigment Blue 15:3, C.I.Pigment Blue 15:3
4, C.I.Pigment Blue 16, C.I.Pigment Blue 22, C.I.P
igment Blue 60, C.I.Vat Blue 4 , C.I.Vat Blue 60を
挙げることができる。
【0138】顔料の粒径は、10μm以下が好ましく、
更に好ましくは0.1μm以下である。
【0139】染料としては、直接染料、酸性染料、食用
染料、塩基性染料、反応性染料、分散染料、建染染料、
可溶性建染染料、反応分散染料、など通常インクジェッ
ト記録に使用する各種染料を使用することができる。
【0140】顔料は分散剤で水性媒体中に分散させた顔
料分散液としてインクに添加するのが好ましい。顔料分
散液を調製するのに用いられる分散剤としては、一般に
顔料分散液を調製するのに用いられている分散剤、例え
ば高分子分散剤、又は界面活性剤を使用することができ
る。なお、この顔料分散液に含まれる界面活性剤がイン
ク組成物の界面活性剤としても機能するであろうことは
当業者に明かであろう。高分子分散剤の好ましい例とし
ては天然高分子化合物を挙げることができ、その具体例
としては、にかわ、ゼラチン、ガゼイン、アルブミンな
どのタンパク質類;アラビアゴム、トラガントゴムなど
の天然ゴム類;サボニンなどのグルコシド類;アルギン
酸及びアルギン酸プロピレングリコールエステル、アル
ギン酸トリエタノールアミン、アルギン酸アンモニウム
などのアルギン酸誘導体;メチルセルロース、カルボキ
シメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エ
チルヒドロキシセルロースなどのセルロース誘導体など
を挙げることができる。更に、高分子分散剤の好ましい
例として合成高分子化合物を挙げることができ、ポリビ
ニルアルコール類、ポリビニルピロリドン類、ポリアク
リル酸、アクリル酸−アクリルニトリル共重合体、アク
リル酸カリウム−アクリルニトリル共重合体、酢酸ビニ
ル−アクリル酸エステル共重合体、アクリル酸−アクリ
ル酸エステル共重合体などのアクリル系樹脂;スチレン
−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合
体、スチレン−メタクリル酸−アクリル酸エステル共重
合体、スチレン−α−メチルスチレン−アクリル酸共重
合体、スチレン−α−メチルスチレン−アクリル酸−ア
クリル酸エステル共重合体などのスチレン−アクリル樹
脂;スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−無水マ
レイン酸共重合体、ビニルナフタレン−アクリル酸共重
合体、ビニルナフタレン−マレイン酸共重合体、及び酢
酸ビニル−エチレン共重合体、酢酸ビニル−脂肪酸ビニ
ルエチレン共重合体、酢酸ビニル−マレイン酸エステル
共重合体、酢酸ビニル−クロトン酸共重合体、酢酸ビニ
ル−アクリル酸共重合体などの酢酸ビニル系共重合体及
びそれらの塩を挙げることができる。これらの中で、特
に疎水性基を持つモノマーと親水性基を持つモノマーと
の共重合体、及び疎水性基と親水性基を分子構造中に併
せ持ったモノマーからなる重合体が好ましい。
【0141】インク組成物における着色剤の含有量は、
0.5〜25重量%程度が好ましく、より好ましくは2
〜15重量%程度である。
【0142】《水、水溶性有機溶媒、及び他の成分》本
発明で用いる水性インク組成物の溶媒の主成分は、水及
び水溶性有機溶媒である。
【0143】この水溶性有機溶媒は、好ましくは低沸点
有機溶剤であり、その好ましい例としては、メタノー
ル、エタノール、n−プロピルアルコール、iso−プ
ロピルアルコール、n−ブタノール、sec−ブタノー
ル、tert−ブタノール、iso−ブタノール、n−
ペンタノールなどを挙げることができる。特に一価アル
コールが好ましい。
【0144】また、本発明で使用する水性インク組成物
は、更に高沸点有機溶媒からなる湿潤剤を含むことが好
ましい。高沸点有機溶媒剤の好ましい例としては、エチ
レングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレン
グリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレン
グリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコー
ル、1,2,6−ヘキサントリオール、チオグリコー
ル、ヘキシレングリコール、グリセリン、トリメチロー
ルエタン、トリメチロールプロパンなどの多価アルコー
ル類;エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレ
ングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコー
ルモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチ
ルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテ
ル、トリエチエレングリコールモノメチルエーテル、ト
リエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレ
ングリコールモノブチルエーテルなどの多価アルコール
のアルキルエーテル類;尿素、2−ピロリドン、N−メ
チル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダ
ゾリジノン、トリエタノールアミンなどを挙げることが
できる。
【0145】この中でも沸点が180℃以上の水溶性有
機溶媒の利用が好ましい。沸点が180℃以上の水溶性
有機溶媒の使用によって、インク組成物に保水性と湿潤
性がもたらされる。この結果、インク組成物を長期間保
管しても着色剤の凝集や粘度の上昇がなく、優れた保存
安定性を実現することができる。更に、開放状態(室温
で空気に触れている状態)で放置しても流動性と再分散
性を長時間維持するインク組成物が実現することができ
る。更に、インクジェット記録方法においては、印字中
もしくは印字中断後の再起動時にノズルの目詰まりが生
じることもなく、高い吐出安定性が得られる。
【0146】沸点が180℃以上の水溶性有機溶媒の例
としては、エチレングリコール(沸点:197℃;以下
括弧内は沸点を示す)、プロピレングリコール(187
℃)、ジエチレングリコール(245℃)、ペンタメチ
レングリコール(242℃)、トリメチレングリコール
(214℃)、2−ブテン−1,4−ジオール(235
℃)、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール(243
℃)、2−メチル−2,4ーペンタンジオール(197
℃)、N−メチル−2−ピロリドン(202℃)、1,
3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(257〜260
℃)、2−ピロリドン(245℃)、グリセリン(29
0℃)、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル
(243℃)、ジプロピレングリコールモノエチルグリ
コール(198℃)、ジプロピレングリコールモノメチ
ルエーテル(190℃)、ジプロピレングリコール(2
32℃)、トリエチレングリコルモノメチルエーテル
(249℃)、テトラエチレングリコール(327
℃)、トリエチレングリコール(288℃)、ジエチレ
ングリコールモノブチルエーテル(230℃)、ジエチ
レングリコールモノエチルエーテル(202℃)、ジエ
チレングリコールモノメチルエーテル(194℃)を挙
げることができる。沸点が200℃以上であるものが好
ましい。これら水溶性有機溶媒は単独又は2種以上混合
して使用することができる。
【0147】これら水溶性有機溶媒の含有量は、インク
組成物の全重量に対して、好ましくは0.5〜40重量
%程度であり、より好ましくは2〜20重量%である。
【0148】好ましい態様によれば、本発明で用いられ
るインク組成物は、糖、三級アミン、水酸化アルカリ、
及び/又はアルギン酸誘導体を含むことができる。糖及
び三級アミンの添加は湿潤性をもたらすことができ、ま
た、三級アミンと水酸化アルカリの添加は、インク組成
物中の着色剤及び樹脂エマルジョン粒子のインク中での
分散安定化をもたらすことができる。
【0149】糖の例としては、単糖類、二糖類、オリゴ
糖類(三糖類及び四糖類を含む)及び多糖類を挙げるこ
とができ、好ましくはグルコース、マンノース、フルク
トース、リボース、キシロース、アラビノース、ガラク
トース、アルドン酸、グルシトール、(ソルビット)、
マルトース、セロビオース、ラクトース、スクロース、
トレハロース、マルトトリオース、などを挙げることが
できる。ここで、多糖類とは広義の糖を意味し、アルギ
ン酸、α−シクロデキストリン、セルロースなど自然界
に広く存在する物質を含む意味に用いることとする。ま
た、これらの糖類の誘導体としては、前記した糖類の還
元糖[(例えば、糖アルコール(一般式HOCH(C
HOH)CHOH(ここで、nは2〜5の整数を表
す)で表される]、酸化糖(例えば、アルドン酸、ウロ
ン酸など)、アミノ酸、チオ糖などを挙げることができ
る。特に糖アルコールが好ましく、具体例としてはマル
チトール、ソルビットなどを挙げることができる。これ
ら糖類の添加量は0.1〜40重量%程度が好ましく、
より好ましくは1〜30重量%程度である。
【0150】三級アミンの例としては、トリメチルアミ
ン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチ
ルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、トリ
イソプロペノールアミン、ブチルジエタノールアミン等
を挙げることができる。これらは単独又は混合して使用
することができる。これら三級アミンのインク組成物へ
の添加量は、0.1〜10重量%程度が好ましく、より
好ましくは0.5〜5重量%である。
【0151】水酸化アルカリの例としては、水酸化カリ
ウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウムを挙げること
ができ、その添加量は0.01〜5重量%程度が好まし
く、より好ましくは0.05〜3重量%程度である。
【0152】アルギン酸誘導体の好ましい例としては、
アルギン酸アルカリ金属塩(例えば、ナトリウム塩、カ
リウム塩)、アルギン酸有機塩(例えば、トリエタノー
ルアミン塩)、アルギン酸アンモニウム塩、等を挙げる
ことができる。このアルギン酸誘導体のインク組成物へ
の添加量は、好ましくは0.01〜1重量%程度であ
り、より好ましくは0.05〜0.5重量%程度であ
る。
【0153】アルギン酸誘導体の添加により良好な画像
が得られる理由は明確ではないが、反応液に存在する多
価金属塩が、インク組成物中のアルギン酸誘導体と反応
し、着色剤の分散状態を変化させ、着色剤の記録媒体へ
の定着が促進されることに起因するものと考えられる。
【0154】本発明で用いるインク組成物は、更に界面
活性剤を含有することができる。界面活性剤の例として
は、上記した樹脂エマルジョン粒子の調製において用い
た界面活性剤と同一のものを好適に用いることができ
る。
【0155】その他、保存安定性を向上させるために、
必要に応じて、インク組成物にpH調整剤、防腐剤、及
び/又は防かび剤等を添加することも可能である。
【0156】(6)反応液 本発明で用いられる反応液は、反応剤を含む。ここで
「反応剤」とは、インク組成物中の顔料及び/又は樹脂
エマルジョン粒子等の分散及び/又は溶解状態を破壊
し、凝集させ得るものである。その例としては、多価金
属塩、ポリアミン、又はポリアミン誘導体を挙げること
ができる。
【0157】反応液に用いることができる多価金属塩と
は、二価以上の多価金属イオンと、これら多価金属イオ
ンに結合する陰イオンとから構成され、水に可溶な化合
物である。多価金属イオンの具体例としては、C
2+、Cu2+、Ni2+、Mg 2+、Zn2+、B
2+などの二価金属イオン、Al3+、Fe3+、C
などの三価金属イオンを挙げることができる。陰
イオンとしては、Cl、NO3−、I、Br、C
lO3−、及びCHCOOなどを挙げることができ
る。
【0158】とりわけ、Ca2+又はMg2+より構成
される金属塩は、反応液のpH、得られる印刷物の品質
という二つの観点から、好適な結果を与える。
【0159】これら多価金属塩の反応液中における濃度
は、印刷品質や目詰まり防止の効果が得られる範囲で適
宜決定することができるが、好ましくは0.1〜40重
量%程度であり、より好ましくは5〜25重量%程度で
ある。
【0160】反応液に含まれる多価金属塩は、二価以上
の多価金属イオンと、これら多価金属イオンに結合する
硝酸イオン又はカルボン酸イオンとから構成され、水に
可溶な化合物であることが好ましい。
【0161】ここで、カルボン酸イオンは、好ましくは
炭素数1〜6の飽和脂肪族モノカルボン酸又は炭素数7
〜11の炭素環式モノカルボン酸から誘導されるもので
ある。炭素数1〜6の飽和脂肪族モノカルボン酸の好ま
しい例としては、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イ
ソ酪酸、吉草酸、イソ吉草酸、ピバル酸、又はヘキサン
酸などを挙げることができる。特に蟻酸、又は酢酸が好
ましい。
【0162】このモノカルボン酸の飽和脂肪族炭化水素
基上の水素原子は水酸基で置換されていてもよく、その
ようなカルボン酸の好ましい例としては、乳酸を挙げる
ことができる。
【0163】更に、炭素数6〜10の炭素環式モノカル
ボン酸の好ましい例としては、安息香酸、ナフトエ酸等
を挙げることができ、より好ましくは安息香酸である。
【0164】反応液に用いることができるポリアリルア
ミン及びポリアリルアミン誘導体は水に可溶で、水中で
プラスに荷電するカチオン系高分子化合物である。例え
ば、下記の式(I)、式(II)、及び式(III)で表さ
れる化合物を挙げることができる。
【0165】
【化1】 上記式中、Xは、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ
化物イオン、硝酸イオン、燐酸イオン、硫酸イオン、又
は酢酸イオン等である。
【0166】上記の化合物以外に、アリルアミンとジア
リルアミンが共重合したポリマーやジアリルメチルアン
モニウムクロライドと二酸化硫黄との共重合体を使用す
ることができる。
【0167】これらポリアリルアミン及びポリアリルア
ミン誘導体の含有量は、反応液の0.5〜10重量%で
あることが好ましい。
【0168】本発明で用いる好ましい反応液は、多価金
属塩に加えて、ポリオールを含む。このポリオールは、
20℃での蒸気圧が好ましくは0.01mmHg以下で
あり、かつその添加量は多価金属塩に対して重量比で好
ましくは1以上、より好ましくは1.0〜5.0であ
る。更に、このポリオールの反応液に対する添加量は、
10重量%以上であるのが好ましく、より好ましくは1
0〜30重量%程度である。
【0169】ポリオールの好ましい具体例としては、多
価アルコール、例えば、グリセリン、ジエチレングリコ
ール、トリエチレングリコール、1,5−ペンタンジオ
ール、1,4−ブタンジオールなどを挙げることができ
る。更に、ポリオールの好ましい具体例としては、糖、
例えば、単糖類、二糖類、オリゴ糖類(三糖類及び四糖
類を含む)及び多糖類を挙げることができ、好ましくは
グルコース、マンノース、フルクトース、リボース、キ
シロース、アラビノース、ガラクトース、アルドン酸、
グルシシール、ソルビット、マルトース、セロビオー
ス、ラクトース、スクロース、トレハロース、マルトト
リオース、などを挙げることができる。
【0170】これらポリオールは単独で添加されても、
二以上の混合物として添加されてよい。二以上の混合物
として添加される場合、その添加量は、合計として多価
金属塩に対して重量比で1以上とするのが好ましい。
【0171】本発明で用いる好ましい反応液は、高沸点
有機溶媒からなる湿潤剤を含む。高沸点有機溶媒は、反
応液の乾燥を防止する。高沸点有機溶媒の好ましい例と
しては、前記ポリオールとも一部重なるが、エチレング
リコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコ
ール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコ
ール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、
1,2,6−ヘキサントリオール、チオグリコール、ヘ
キシレングリコール、グリセリン、トリメチロールエタ
ン、トリメチロールプロパンなどの多価アルコール類;
エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリ
コールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ
メチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエー
テル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリ
エチエレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレ
ングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコ
ールモノブチルエーテルなどの多価アルコールのアルキ
ルエーテル類、尿素、2−ピロリドン、N−メチル−2
−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノ
ン、トリエタノールアミンなどを挙げることができる。
本発明で用いる好ましい反応液は、トリエチレングリコ
ールモノブチルエーテル及びグリセリンを組み合わせて
含むことが好ましい。
【0172】高沸点有機溶媒の添加量は特に限定されな
いが、反応液に対して、好ましくは0.5〜40重量%
程度であり、より好ましくは2〜20重量%程度であ
る。
【0173】本発明で用いる好ましい反応液は、低沸点
有機溶剤を含む。低沸点有機溶剤の好ましい例として
は、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコー
ル、iso−プロピルアルコール、n−ブタノール、s
ec−ブタノール、tert−ブタノール、iso−ブ
タノール、n−ペンタノールなどを挙げることができ
る。特に一価アルコールが好ましい。低沸点有機溶剤
は、インクの乾燥時間を短くする効果がある。低沸点有
機溶剤の添加量は0.5〜10重量%が好ましく、より
好ましくは1.5〜6重量%の範囲である。
【0174】本発明で用いる好ましい反応液は、浸透剤
を含む。浸透剤としては、アニオン性界面活性剤、カチ
オン性界面活性剤、両性界面活性剤等の各種界面活性
剤、メタノール、エタノール、iso−プロピルアルコ
ール等のアルコール類、エチレングリコールモノメチル
エーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、
ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレ
ングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコー
ルモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブ
チルエーテル等の多価アルコールの低級アルキルエーテ
ルなどを挙げることができる。
【0175】更に本発明に用いることができる浸透剤と
しては、下記式(IV)で表わされる化合物及び/又は多
価アルコールの低級アルコールエーテルがより好まし
い。
【0176】
【化2】 式中、0≦m+n≦50であり、R、R、R、及
びRはそれぞれ独立してアルキル基である。
【0177】上記式で表される化合物の代表的なものと
して、具体的にはオルフィンY、サーフィノール82、
サーフィノール440、サーフィノール465、サーフ
ィノール485(いずれも製造:Air Produc
ts and Chemicals.Inc.)等を挙
げることができる。これらは単独で又は2種類以上を組
合せて用いることができる。
【0178】本発明で用いる好ましい反応液は、pH調
整のためにトリエタノールアミンを含む。トリエタノー
ルアミンが添加される場合、その添加量は、0〜2.0
重量%程度が好ましい。
【0179】また、この反応液は、前記のインク組成物
の項で記載したカラー着色剤を添加して着色され、イン
ク組成物の機能を兼ね備えたものとしてもよい。
【0180】(7)洗浄液 前記水性インク組成物と前記反応液とが被記録表面上で
接触した後であって、しかもその接触によって開始され
る造膜反応が完了する前に、水性インク組成物と反応液
との混合物に供給される洗浄液としては、樹脂エマルジ
ョン粒子の造膜反応を促進する作用を有するかぎり、特
に限定されないが、特には高沸点水溶性有機化合物を溶
出することのできる極性溶媒が好ましい。
【0181】また、極性溶媒としては、記録媒体に固着
した着色成分が剥離せず、また水溶性で、安全性のある
ものが好ましい。このような極性溶媒の具体例として
は、水;炭素数5以下のアルコール、好ましくはメチル
アルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール等
の低級アルコール;式R(R’)S=Oで表されるスル
ホキシド(式中、R及びR’ぞれぞれが直鎖状又は分岐
鎖状の炭素数5以下のアルキル基)、好ましくはジメチ
ルスルホキシド、ジエチルスルホキシド等のスルホキシ
ド;炭素数5以下のアミン、好ましくはメチルアミン、
エチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、
ブチルアミン、アミルアミン、ヘキシルアミン等の低級
脂肪族第一アミン、好ましくはジメチルアミン、ジエチ
ルアミン、ジプロピルアミン、ジイプロピルアミン等の
低級脂肪族第二アミン、好ましくはトリメチルアミン、
トリエチルアミン等の低級脂肪族第三アミン等の低級ア
ミン;を挙げることができ、又はこれらの混合物が好適
には用いられる。この中でも特に好ましい極性溶媒は水
である。
【0182】
【発明の効果】本発明記録装置によれば、平面記録媒体
に対する着色剤の固着性に優れ、良好な画像を得ること
ができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明記録装置の一態様によって、記録媒体と
しての箱の側壁表面を記録する状態を模式的に示す斜視
図である。
【図2】本発明記録装置の別の態様に、記録媒体として
のパネルを取り付けた状態を模式的に示す正面図であ
る。
【図3】本発明記録装置に用いることのできる3液共通
ヘッドのノズル面を模式的に示す拡大図である。
【図4】図3の3液共通ヘッドによる記録手順を模式的
に示す説明図である。
【図5】本発明記録装置に用いることのできる別の3液
共通ヘッドのノズル面を模式的に示す拡大図である。
【図6】本発明記録装置の更に別の態様に、記録媒体と
してのパネルを取り付けた状態を模式的に示す説明図で
ある。
【図7】本発明記録装置の更に別の態様によって、記録
媒体としてのパネルを記録する状態を模式的に示す説明
図である。
【図8】本発明記録装置において、ベルトコンベア上に
載置して用いることのできる搬送ボックスの斜視図であ
る。
【図9】本発明記録装置の更に別の態様に、ディスク状
記録媒体を取り付けた状態を模式的に示す説明図であ
る。
【符号の説明】
1・・・記録装置 2・・・3液共通ヘッド 3・・・インク用ノズル面 4・・・反応液用ノズル面 5・・・洗浄液用ノズル面 6a,6b,6c・・・帯状領域 7・・・水性インク及び反応液用ノズル面 10・・・記録媒体担持手段 10a・・・載置台 11a・・・ベース台 11b・・・台 11・・・ベルトコンベア 12・・・把持部 13・・・保持軸 17・・・搬送用ベルトコンベア 17a・・・ガイドロール 18・・・回転台 19・・・固定手段 20・・・固定型水性インク供給手段 21,21a・・・インク用ヘッド部 22・・・支持部 23・・・固定台 24・・・調整部 25・・・3液共通ヘッド 25a・・・インク用ヘッド部分 25b・・・反応液用ヘッド部分 25c・・・洗浄液用ヘッド部分 26・・・2液共通ヘッド 26a・・・インク用ヘッド部分 26b・・・反応液用ヘッド部分 27・・・反応液供給手段 30・・・固定型反応液供給手段 31・・・反応液用ヘッド部 32・・・支持部 33・・・固定台 34・・・調整部 40・・・固定型洗浄液供給手段 41・・・洗浄液用ヘッド部 42・・・支持部 43・・・固定台 44・・・調整部 45・・・水槽 46、48・・・洗浄液 47・・・噴霧ノズル 50・・・固定型乾燥手段 51・・・乾燥エアー用ヘッド部 52・・・支持部 53・・・固定台 54・・・調整部 60・・・インク・反応液・洗浄液供給手段 61・・・インクジェット記録機構 62・・・ポールネジ 63・・・歯車 64・・・3液共通ヘッド 81・・・記録媒体供給室 82・・・記録室 83・・・洗浄定着室 84・・・乾燥室 85・・・記録媒体収納室 86・・・供給ボックス 87・・・製品収納ボックス 88・・・搬送ボックス 90・・・記録媒体 91・・・箱 91a・・・箱の側壁表面 92・・・パネル

Claims (12)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 (1)被記録面が平面である記録媒体の
    担持手段; (2)前記の記録媒体担持手段に担持された記録媒体の
    被記録平面へ、着色剤と樹脂エマルジョン粒子と水とを
    含む水性インク組成物を供給する水性インク供給手段; (3)前記の記録媒体担持手段に担持された記録媒体の
    被記録平面へ、前記水性インク組成物と接触すると凝集
    物を生じさせる反応剤を含む反応液を供給する反応液供
    給手段; (4)前記記録媒体の被記録平面上で前記水性インク組
    成物と前記反応液とが接触した後であって、しかもその
    接触によって開始される造膜反応が完了する前に、水性
    インク組成物と反応液との混合物に洗浄液を供給する洗
    浄液供給手段; (5)前記水性インク組成物と前記反応液とが前記記録
    媒体の被記録平面の所定位置で接触するように制御する
    接触制御手段;及び (6)造膜反応完了前の水性インク組成物と反応液との
    混合物に洗浄液を供給するように制御する洗浄制御手
    段;を有することを特徴とする、被記録面が平面である
    記録媒体用の記録装置。
  2. 【請求項2】 前記の記録媒体担持手段が、記録媒体を
    搬送する搬送手段;記録媒体を載置して固定する載置手
    段;又は記録媒体を載置して固定した状態で回転する載
    置回転手段;のいずれかである、請求項1に記載の記録
    装置。
  3. 【請求項3】 前記の水性インク供給手段が、固定され
    た水性インク供給手段であるか、又は一方向若しくはニ
    方向への往復運動が可能な水性インク供給手段である、
    請求項1又は2に記載の記録装置。
  4. 【請求項4】 前記の水性インク供給手段が、インクジ
    ェットヘッド又は噴霧ノズルである、請求項1〜3のい
    ずれか一項に記載の記録装置。
  5. 【請求項5】 前記の反応液供給手段が、固定された反
    応液供給手段であるか、又は一方向若しくはニ方向への
    往復運動が可能な反応液供給手段である、請求項1〜4
    のいずれか一項に記載の記録装置。
  6. 【請求項6】 前記の反応液供給手段が、インクジェッ
    トヘッド又は噴霧ノズルである、請求項1〜5のいずれ
    か一項に記載の記録装置。
  7. 【請求項7】 前記の洗浄液供給手段が、固定された洗
    浄液供給手段であるか、又は一方向若しくはニ方向への
    往復運動が可能な洗浄液供給手段である、請求項1〜6
    のいずれか一項に記載の記録装置。
  8. 【請求項8】 前記の洗浄液供給手段が、インクジェッ
    トヘッド、噴霧ノズル又は水槽である、請求項1〜7の
    いずれか一項に記載の記録装置。
  9. 【請求項9】 前記記録媒体が、円盤体、直方体、立方
    体、角柱体、円筒体、又は板状体である、請求項1〜8
    のいずれか一項に記載の記録装置。
  10. 【請求項10】 前記記録媒体の被記録表面が、実質的
    に液体非吸収性である、請求項1〜9のいずれか一項に
    記載の記録装置。
  11. 【請求項11】 着色剤が顔料である、請求項1〜10
    のいずれか一項に記載の記録装置。
  12. 【請求項12】 樹脂エマルジョン粒子の最低造膜温度
    が25℃である、請求項1〜11のいずれか一項に記載
    の記録装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2013144462A (ja) * 2013-04-26 2013-07-25 Seiko Epson Corp 記録装置

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