JP2002223747A - 抗青枯病または抗かいよう病活性を有する細菌エンドファイト - Google Patents

抗青枯病または抗かいよう病活性を有する細菌エンドファイト

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JP2002223747A JP2001026340A JP2001026340A JP2002223747A JP 2002223747 A JP2002223747 A JP 2002223747A JP 2001026340 A JP2001026340 A JP 2001026340A JP 2001026340 A JP2001026340 A JP 2001026340A JP 2002223747 A JP2002223747 A JP 2002223747A
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成人 古屋
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 抗青枯病活性または抗かいよう病活性を有す
る細菌エンドファイトを提供すること。 【解決手段】 各種植物から抗青枯病活性または抗かい
よう病活性を有する細菌エンドファイトである抗青枯病
菌Ku2もしくは抗青枯病菌Ku3Bまたは抗かいよう
病菌Ku17もしくは抗かいよう病菌Ku44を単離
し、それらの細菌エンドファイトを使用することによっ
て、特にトマト植物の青枯病またはかいよう病の予防な
らびに防除を行うことができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、抗青枯病または
抗かいよう病活性を有する細菌エンドファイトに関す
る。更に詳細には、この発明は、ナス科植物青枯病に対
する生物学的防除活性を有する細菌エンドファイトとし
ての細菌エンドファイトならびにこれを含む細菌エンド
ファイト用組成物および青枯病/かいよう病予防・防除
方法に関する。
【0002】
【従来の技術】現在、人口増加、食糧不足、環境汚染等
の問題に直面し、その対策を性急に迫られている。特
に、食糧生産に関わる農業は、これらの問題を克服する
最重要事項の1つであり、現在では、安定した食糧供給
は植物病害防除なくしては困難である。そのために近代
農業は、主に農薬を中心とした化学的防除を推進してき
た。しかし、一方で、農薬の過剰使用やその残留性物質
が環境汚染や人畜への悪影響の要因となることが懸念さ
れている。さらに、薬剤耐性菌の出現による防除効果の
低下も問題となり、植物病害の防除は新たな局面を迎え
ている。このような背景から、農薬の使用量を最小限に
とどめ、自然の生態を活かした生物的防除法が重要視さ
れるようになっている。
【0003】生物的防除法の代表的な一例として、微生
物の産生する抗菌物質(アグロシン84)の産生性を利用
したアグロバクテリウム・ラジオバクタ− (Agrobacter
iumradiobacter) による根頭癌腫病の防除等があり、世
界的に実用化されている(Kerr, A. and Htay, K: Phys
iol. Plant Pathol., 4: 37-44. (1974); New P. B.and
Kerr, A.: J. App. Bact., 35: 279-287(1972); Moor
e, L. W.: Ref. 36,pp. 553-568 (1979))。また、Burk
holderia gladioli pv. gladioli E-14株が各種植物病
原細菌に対して幅広い抗菌スペクトラムを示すことを明
らかにし(平八重ら)、また、Burkholderia glumae が
産生する抗菌物質の研究を行い(Wakimoto, S., et al:
Ann. Phytopath. Soc. Japan, 52: 835-842 (198
6))、これらの抗菌物質産生性細菌の生物的防除素材と
しての利用可能性を明らかにした。
【0004】一方、従来、健全植物の組織内は無菌状態
であるとされてきたが、近年になり、種々の植物からエ
ンドファイトと呼ばれる植物内生微生物の存在が報告さ
れるようになった(木嶋利男: 拮抗微生物による病害防
除、農山漁村文化協会(1992))。エンドファイトは「生
きた植物体内で、宿主植物に害を与えずに共生的に生活
している菌類や細菌」と定義されている。これらエンド
ファイトのなかには、病害虫の制御に効果を持つものが
見いだされ、それらを利用した病害虫防除技術が注目さ
れている(古賀博則:エンドファイトによる作物への耐
病虫性付与、西尾道徳、大畑貫一編「農業環境を守る微
生物利用技術」農林水産技術情報協会,pp. 111-124(19
98))。糸状菌エンドファイトを利用した例として、イ
ネ科植物に感染しているネオティフォディウム・エンド
ファイトによる牧草や芝の耐病虫害性付与(Koga, H.,
et al.: JARQ, pp. 109-115 (1997))、サツマイモから
分離された非病原性フザリウム属菌によるつる割病の発
病抑制(小川奎,駒田旦:「非病原性Fusarium oxyspor
umによるサツマイモつる割病に対する全身的な抵抗性の
誘導」日植病報,50: 1-9(1984))、ハクサイに感染す
るHeteroconium chaetospiraによる根こぶ病の被害軽減
(成澤才彦,羽柴輝良:「Plasmodiophorabrassicaeに
よるハクサイ根こぶ病を抑制する根部エンドファイト H
ereroconium chaetospira」平成8年度日植病大会講演
要旨集、p. 43(1996))などが報告されている。
【0005】また、細菌エンドファイトを利用した例と
してはAureobacterium、Bacillus、Pseudomonasなどの
細菌エンドファイトによるワタの病害(Chen, C., et a
l.: Biological Control, 5: 83-91 (1995))、ジャガイ
モの輪腐病(Van Buren, A. M., et al.: Phytopatholo
gy, 83: 1406 (1993))およびイネの白葉枯病の発病抑
制(Poon, E. S., et al.: Bot. Bull. Acad. Sin., 1
8: 61-70 (1977))が報告されている。わが国において
は、拮抗細菌を共生させたシクラメンの炭疽病およびサ
ツマイモのつる割病の抵抗性の他、ハクサイ、キュウリ
およびトマトの各種病害抵抗性付与を報告している(木
嶋 利男等:栃木農試研報、43: 47-86 (1995))。
【0006】さらに、病害虫防除の他、細菌エンドファ
イトによる植物生長調節作用も報告されており、生長促
進性の細菌エンドファイトによるジャガイモの収量増加
が認められた報告もある(Sturz, A. V., et al.: Can.
J. Microbiol., 44: 162-167(1998))。
【0007】エンドファイトによる病害防除機構として
は、拮抗微生物を組織内に定着させることによる抗菌活
性、生息場所の競合、抵抗性の誘導、栄養の競合などが
考えられる。Pseudomonas fluorescensまたはBacillus
pumilusをそれぞれ用いたエンドウとトマトのFusarium
oxysporumに対する抵抗性およびSerratia plymuthicaを
用いたキュウリのPythium ultimumに対する抵抗性付与
の機構について細胞レベルの研究を行い、細菌エンドフ
ァイトを植物の根部にバクテリゼーションすることによ
って、病原菌に対する宿主植物側の防御反応が強化され
ることを明らかにしている(Benhamou, N., et al.: Phy
topathology, 86: 1174-1185 (1996); Benhamou, N., e
t al.: Plant Physiol., 112: 919-929 (1996); Benham
ou, N.,et al.: Phytopathology, 90: 45-56 (2000))。
【0008】細菌エンドファイトは、宿主植物に病害を
引き起こさないが、その共生的な性質は定着の困難な生
物的防除の欠点を補うもので、有効な病害防除法として
の可能性が高い。そこで、特に難防除土壌伝染性細菌病
害であるナス科植物青枯病およびかいよう病に対して、
細菌エンドファイトを利用することを検討した。たとえ
ば、ナス科植物青枯病による病害については、Burkhold
eria glumaeおよびPseudomonas aeruginosa ATCC7700に
よって発病が抑制され、その効果に抗菌物質以外の物質
が関与していることを報告している(Furuya, N., et a
l.: Ann. Phytopathol. Soc. Jpn., 63: 417-424 (199
7))。
【0009】ナス科植物青枯細菌病菌(Ralstonia sola
nacearum)によって引き起こされる各種野菜類に対する
青枯病は、トマト、ナス、タバコなどナス科植物を中心
に33科100余種にわたる多くの作物に寄生し、世界各国
で激しい被害をもたらしている最も重要な土壌伝染性細
菌病の1つである。ナス科植物青枯細菌病の防除には、
抵抗性品種の利用、輪作、土壌消毒、抵抗性台木への接
木栽培などの方法が従来から採られているが、それらの
効果は未だ十分ではないといえる。
【0010】他方、トマトかいよう病は、グラム陽性細
菌であるClavibacter michiganensissubsp. michiganen
sisにより引き起こされる細菌性病害であり、世界中の
トマト生産において60%以上が本病の被害を受けてい
る。さらに本病に抵抗性の品種あるいは有効な農薬が未
だ開発されておらず、難防除土壌伝染性病害の一つであ
る。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】この発明は、特に青枯
病またはかいよう病に対する生物的防除活性を有する細
菌エンドファイトを提供することを目的とする。この発
明の好ましい態様として、ナス科植物青枯病またはかい
よう病に対する生物的防除活性を有する細菌エンドファ
イトとして抗青枯病菌または抗かいよう病菌を提供する
ことを別の目的とする。また、この発明は、特に植物青
枯病またはかいよう病、好ましくはナス科植物青枯病ま
たはかいよう病に対する生物的防除活性を有する細菌エ
ンドファイトを含む細菌エンドファイト用組成物を提供
することを別の目的とする。更に、この発明は、特に植
物青枯病またはかいよう病、好ましくはナス科植物青枯
病またはかいよう病に対する生物的防除活性を有する細
菌エンドファイトを使用して青枯病菌の予防・防除をす
るための青枯病菌/かいよう病予防・防除法を提供する
ことを別の目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、この発明は、特に青枯病またはかいよう病、好まし
くはナス科植物青枯病またはかいよう病に対する生物的
防除活性を有する細菌エンドファイトを提供する。ま
た、この発明は、特に青枯病またはかいよう病、好まし
くはナス科植物青枯病またはかいよう病に対する生物的
防除活性を有する細菌エンドファイトとしての抗青枯病
菌または抗かいよう病菌を提供する。更に、この発明
は、特に青枯病またはかいよう病、好ましくはナス科植
物青枯病またはかいよう病に対する生物的防除活性を有
する細菌エンドファイトを含む抗青枯病菌用または抗か
いよう病用組成物を提供する。更にまた、この発明は、
特に青枯病またはかいよう病、好ましくはナス科植物青
枯病またはかいよう病に対する生物的防除活性を有する
細菌エンドファイトを用いて青枯病またはかいよう病の
予防ならびに防除する青枯病菌/かいよう病予防・防除
法を提供する。
【0013】
【実施例】以下、この発明を実施例により更に詳細に説
明する。 (実施例1) 抗青枯病菌の細菌学的諸性質 常法に従い、電子顕微鏡観察および生理・生化学的試験
を行って、この発明に係る抗青枯病菌の細菌学的諸性質
について検討した。
【0014】(抗青枯病菌の分離)バングラデシュにお
いて採集した植物トキシカリウム(Solanum toxicarium
Lam.)を流水で洗浄して土壌を除去し、地際部および
根を切り取り、各切片を80%エタノール溶液に5秒間、
続いて3%次亜塩素酸ナトリウム液に移し3分間浸して表
面を殺菌し、滅菌蒸留水で洗浄(3回反復)後、20 mlの
滅菌蒸留水中で滅菌メスを用い無菌的に磨砕した。3分
間静置した後、PSA平板培地6)(ジャガイモ(300 g)煎
汁 1 L, Na2HPO・12H2O 2 g, Ca(NO)2・4H2O 0.5
g, ペプトン 5g, シュクロース 15 g, 寒天 15 g/pH
7.0)およびその103倍希釈PSA平板培地にその磨砕液を
白金耳で画線し、30℃で24〜96時間培養した。細菌エン
ドファイトのコロニーを白金耳または滅菌竹串で釣り単
コロニー分離を行って分離株を得た。これらの分離菌を
抗青枯病菌Ku2と抗青枯病菌Ku3Bと命名した。これ
らの分離株は滅菌した50%グリセノール300μlおよび滅
菌蒸留水700μlの入ったマイクロチューブに1〜2白金耳
量加え十分に懸濁した後、−80 ℃で凍結保存するか、1
0 mlの滅菌蒸留水の入った試験管に菌濃度が107〜108 c
fu/mlになるように懸濁して25 ℃で保存した。各試験に
際しては、その都度この水保存菌をYPDA平板または斜面
培地6)(ペプトン 0.6 g, デキストロース 3 g, 酵母抽
出物 3 g, 寒天 15 g, 蒸留水 1 L/pH 7.2)に移植
し、30℃で24〜72時間培養したものを供試した。
【0015】これらの分離菌株である抗青枯病菌Ku2
と抗青枯病菌Ku3Bとそれぞれ命名して、これらの分離
株は特許微生物寄託センタ−にFERM P−1817
5とFERM P−18176としてそれぞれ寄託して
いる。
【0016】(培養的性質)抗青枯病菌Ku2および抗
青枯病菌Ku3Bのそれぞれの水保存菌をYPDA斜面培地に
30℃、24時間培養した後、白金耳で釣菌し、滅菌蒸留水
に懸濁した。適当な濃度に希釈した後、YPDA平板培地に
滅菌ガラスビーズを用いて画線し、30℃で24時間培養を
行い、コロニーを観察した。抗青枯病菌Ku2および抗
青枯病菌Ku3BはYPDA平板培地を用い、30℃で培養する
と、24時間以内にコロニーが肉眼的に認めうる大きさに
まで生育した。青枯病菌Ku2は、培養後24時間で直径
1.5〜3.0 mmの乳白色、円形、中高、全縁、表面は平滑
で湿光を持ち、粘凋、半透明のコロニーを形成した。抗
青枯病菌Ku3Bは、培養後24時間で直径4.0〜6.0 mmの
黄みの強い黄白色、円形、扁平、全縁、表面は平滑で湿
光を持ち、強い粘凋、半透明のコロニーを形成した。ま
た、両菌株ともに、栄養分の無い滅菌蒸留水中に懸濁し
ても、半永久的にその濃度を保ったまま生育可能である
ことが認められた。
【0017】(形態)抗青枯病菌Ku2および抗青枯病
菌Ku3BをYPDA斜面培地で、30℃、24時間培養した後、
滅菌竹串で釣菌し2%リンタングステン酸溶液(pH 6.
0)に浮遊させて染色を行い、コロジオン膜を張ったシ
ートメッシュ上にマウントして風乾した。その後、透過
型電子顕微鏡(JEM-100CX IIK, 日本電子)によって細
菌の形態を観察した。透過電顕観察により、抗青枯病菌
Ku2および抗青枯病菌Ku3Bは、両端鈍円な短桿状、
孤立の菌体で、その大きさは、抗青枯病菌Ku2が0.9〜
1.0×0.7〜0.8μm、抗青枯病菌Ku3Bが1.2〜1.8×0.8
〜1.0μmであった。また、抗青枯病菌Ku2には鞭毛が
認められなかったが、抗青枯病菌Ku3Bには3ないし7
本の長い毛が認められた。
【0018】(トマト幼苗組織との相互関係)トマト
(品種:世界一トマト)の種子をガーゼで包み、80%
エタノール溶液に5秒間、続いて3%次亜塩素酸ナトリ
ウム液に移し3分間浸して表面を殺菌し、滅菌蒸留水で
洗浄(3回反復)した後、0.5%素寒天20 mlを分注した1
00 mlフラスコ中に5粒ずつ播種し、10日間栽培した。他
方、水保存の抗青枯病菌Ku3BをYPDA斜面培地上で、30
℃、24時間培養した後、滅菌蒸留水中に菌濃度が10 c
fu/mlとなるように懸濁し、1フラスコにつき1 mlずつ接
種した。トマトの育苗は、30℃、24時間白色蛍光灯下で
行った。接種後8日目に、走査型電子顕微鏡(JSM-5200,
日本電子)および透過型電子顕微鏡を用いて、トマト幼
苗組織内の観察を行った。観察用試料は、「医学・生物
学領域の電子顕微鏡操作マニュアル」を基にし、トマト
幼苗の根および地際部を長さ約5 mmに切り取り、2.5%
グルタールアルデヒド液および2%オスミウム酸液(0.1
Mリン酸緩衝液、pH7.4で希釈)で二重固定し、濃度別の
エタノールで脱水を行った。その後、走査型電子顕微鏡
用試料は、t-ブタノール液に入れ凍結乾燥後、金粒子を
蒸着(JFC-1100E, 日本電子)した。透過型電子顕微鏡
用試料はスパー樹脂で包埋し、ウルトラミクロトーム(R
eichert ultracut S, Leica)を用いて作製した超薄切片
を2%酢酸ウラニル液(Watson変法)および酢酸鉛液(Mi
llionig法)で二重染色し作製した。走査電顕観察によ
り、抗青枯病菌Ku3Bがトマト幼苗根部の表面組織に付
着していることが確認された。この細菌はコロニーを形
成し、組織内にも侵入しているものも認められたが、確
認できた細菌数は少なく、植物組織の変化も認められな
かった。
【0019】(生理・生化学的性質)抗青枯病菌Ku2
および抗青枯病菌Ku3Bの培養菌株についての生理・生
化学的性質を、腸内細菌以外のグラム陰性桿菌の同定シ
ステム(体外診断用医薬品)であるAPI 20 NE(bioMeri
eux Ltd.)を用いて調べた。添付マニュアルに従い8項
目の生化学的性状テストと12項目の同化テストを行っ
た。更に、オキシダーゼ活性について試験した。その結
果は下表に示す。なお、下表において記号「+」は陽
性、「−」は陰性を示す。
【0020】 表1:抗青枯病菌Ku2および抗青枯病菌Ku3Bの生理・生化学的性質 試 験 項 目 Ku2 Ku3B 硝酸還元 + + インドール産生 − − グルコ−ス発酵 + + アルギニンジヒドロラーゼ + − ウレアーゼ + − エスクリン加水分解 + − ゼラチン液化 − + オキシダーゼ − − β−ガラクトシダーゼ + − 酸産生能 グルコースから + + アラビノースから + + マンノースから + + マンニトールから + + N−アセチルグルコサミンから + + マルトースから + + グルコネートから + + カプリン酸から − − アジピン酸から − + リンゴ酸から + + クエン酸から + + フェニル酢酸から + −
【0021】(トマト幼苗根部に対する蝟集性)抗青枯
病菌Ku2または抗青枯病菌Ku3BおよびR. solanacear
um を供試し、上記に従い懸濁液(10 cfu/ml)を作製
した。トマト(品種:桃太郎)は播種後約3週間目(15
〜20 cm)の幼苗を供試した。200 mlの細菌懸濁液にそ
れぞれ2本ずつトマト幼苗を浸根処理し、分光光度計(SH
IMADZU UV-2200)を用いて経時的に懸濁液の濁度の計測
を行うことにより、細菌のトマト幼苗根部に対する蝟集
性を調査した。計測時には、トマト根部に蝟集した細菌
が離脱しないように、注意深くトマト幼苗を懸濁液から
引き上げ、その都度、懸濁液の容積が200 mlになるよう
に蒸留水を足した後、十分に撹拌して計測を行った。ま
た、測定結果は、各細菌の初期懸濁液の透明度を0%と
して、また蒸留水の透明度を100%として吸光度測定
値を換算した。その結果、抗青枯病菌Ku2において
は、顕著な変化は認められず、透明度の変化は10%程
度であったのに対して、抗青枯病菌Ku3Bにおいては、
浸根処理96時間後には、透明度がほぼ60%余に達
し、著しい濁度の低下が認められた。なお、コントロ−
ルとしてのR. solanacearumの懸濁液濃度にはほとんど
変化は認められなかった。
【0022】(実施例2) 抗かいよう病菌の分離 福岡県で採取したナズナ(Capsella bursa-pastoris)
を実施例1と同様に処理してトマトかいよう病に対して
生物的防除活性を有する細菌エンドファイトである抗か
いよう病菌を分離した。これらの分離株は滅菌した50%
グリセノール300μlおよび滅菌蒸留水700μlの入ったマ
イクロチューブに1〜2白金耳量加え十分に懸濁した後、
−80 ℃で凍結保存するか、10 mlの滅菌蒸留水の入った
試験管に菌濃度が107〜108 cfu/mlになるように懸濁し
て25 ℃で保存した。この分離菌株は、抗かいよう病菌
Ku17と命名して、特許微生物寄託センタ−にFER
M P−18177として寄託している。各試験に際し
ては、その都度この水保存菌をYPDA平板または斜面培地
6)(ペプトン 0.6 g, デキストロース 3 g, 酵母抽出物
3 g, 寒天 15 g, 蒸留水 1 L/pH 7.2)に移植し、30
℃で24〜72時間培養したものを供試した。
【0023】(実施例3) 抗かいよう病菌の分離 福岡県で採取したイヌホウズキ(Solanum nigrum)を実
施例1と同様に処理してトマトかいよう病に対して生物
的防除活性を有する細菌エンドファイトである抗かいよ
う病菌を分離した。これらの分離株は滅菌した50%グリ
セノール300μlおよび滅菌蒸留水700μlの入ったマイク
ロチューブに1〜2白金耳量加え十分に懸濁した後、−80
℃で凍結保存するか、10 mlの滅菌蒸留水の入った試験
管に菌濃度が107〜108 cfu/mlになるように懸濁して25
℃で保存した。この分離菌株は、抗かいよう病菌Ku4
4と命名して、特許微生物寄託センタ−にFERM P
−18178として寄託している。各試験に際しては、
その都度この水保存菌をYPDA平板または斜面培地6)(ペ
プトン 0.6 g, デキストロース 3 g, 酵母抽出物 3 g,
寒天 15 g, 蒸留水 1 L/pH 7.2)に移植し、30℃で24
〜72時間培養したものを供試した。
【0024】抗かいよう病菌Ku17と抗かいよう病菌
Ku44について、生理・生化学的性質を実施例1と同
様に調べた。その結果を表2に示す。なお、下表におい
て記号「+」は陽性、「−」は陰性を示す。
【0025】 表2:抗かいよう病菌Ku17とKu44の生理・生化学的性質 試 験 項 目 Ku17 Ku44 グラム染色 − − 硝酸還元 + + インドール産生 − − グルコ−ス発酵 − − アルギニンジヒドロラーゼ + + ウレアーゼ − − エスクリン加水分解 − − ゼラチン液化 + + オキシダーゼ + + カタラーゼ + + β−ガラクトシダーゼ − − ツイ−ン80エステラ−ゼ + + HS産生能 − − Voges-Proskauer反応 − − メチルレッド試験 − − D−1アガ− + − 嫌気生育能 − − フルオレッシン産生能 + + 酸産生能 グルコースから + + アラビノースから + + マンノースから + + マンニトールから + − N−アセチルグルコサミンから + − マルトースから − − グルコネートから + + カプリン酸から + + アジピン酸から − − リンゴ酸から + + クエン酸から + + フェニル酢酸から − − 蔗糖から + −
【0026】(実施例4) トマト青枯病に対する発病抑制効果 水保存のナス科植物青枯細菌病菌R. solanacearumをTTC
培地(ペプトン 2 g,デキストロース 5 g, カザミノ酸
1 g, 2,3,5-トリフェニルテトラゾリウム塩酸500 ppm,
寒天 17 g, 蒸留水 1 L)上に白金耳で画線し、30℃で
48時間培養後、出現した乳白色で流動性の大型コロニー
を1白金耳量掻き取り、250mlのPS液体培地(組成はPS
A培地から寒天のみを除いたもの)に接種し、さらに30
℃で48時間振盪培養後、遠沈(10,000×rpm, 4℃, 15
分)によって菌体を集めて蒸留水に懸濁した(菌濃度 1
09 cfu/ml)。懸濁液300 mlを35×12×10 cmのプランタ
ーに入れた滅菌土壌に潅注して汚染土壌を作製した。一
方、抗青枯病菌Ku2または抗青枯病菌Ku3Bは、YPDA
斜面培地で30℃、48時間培養後、菌体を1白金耳量掻き
取り、250 mlのYPD液体培地(組成はYPDA培地から寒天
のみを除いたもの)に接種し、さらに30℃で48時間振盪
培養後、遠沈(10,000×rpm, 4℃, 5分)によって菌体
を集めて蒸留水に懸濁し、生菌液(109 cfu/ml)とし
た。上記抗青枯病菌Ku2と抗青枯病菌Ku3Bとの細菌
懸濁液(10cfu/ml)に48時間浸根処理したトマト幼苗
を上記汚染土壌に移植し、発病株を経時的に調査した。
発病率の推移を表3に示す。この結果から、移植後15日
目までは、供試したトキシカリウム分離細菌接種区のト
マト苗はすべて、対照区の半分以下に発病が抑制されて
いた。しかし、その後、時間の経過とともに発病が増加
し、発病遅延効果は認められたものの、効果の持続性に
おいて欠けるものがあった。それに対して、抗青枯病菌
Ku3Bの接種区においては、移植後30日目に達しても発
病度は0.5であり、対照区の発病度4.2と比較して、著し
い発病抑制効果が認められた。また、抗青枯病菌Ku2
においても有意な効果が認められた。
【0027】 表3:トマト青枯病に対する発病抑制効果 発病率(%) 細菌 接種10日後 20日後 30日後 抗青枯病菌Ku2 16.6 41.7 58.3 抗青枯病菌Ku3B 16.6 33.3 50.0 コントロ−ル 75.0 83.3 83.3
【0028】上記の結果から、トキシカリウムより分離
した抗青枯病菌Ku2および抗青枯病菌Ku3Bでトマト
幼苗を浸根処理することにより、トマト青枯病の発病が
抑制されることが明らかとなった。本実施例において青
枯病に強い抵抗性を有するトキシカリウムから分離した
菌株抗青枯病菌Ku2および抗青枯病菌Ku3Bは、トマ
ト幼苗の青枯病を抑制する効果が高くかつ持続性があ
り、生物的防除素材として十分に期待できる。
【0029】(実施例5) トマト青枯病の発病抑制効果 これらの分離細菌による発病抑制効果とその機構につい
て知る目的で、バクテリゼーションの条件と抑制効果の
関係、両菌株の細菌学的諸性質の調査、および死菌のよ
る抑制効果の検討を行った。
【0030】(トマト青枯病の発病抑制効果の特性) 浸根処理時間と発病抑制効果との関係 抗青枯病菌Ku2および抗青枯病菌Ku3Bは、水保存菌
をYPDA斜面培地に画線し、30℃で24時間培養したものを
供試し、トマト青枯病菌はR. solanaceaum を供試し
た。青枯病の発病抑制効果の検討は、上記方法に従って
行った。
【0031】上記試験結果を発病率の推移として表4に
示した。対照区では、移植後10日目には発病率100%、
発病度4.8となった。それに対して、抗青枯病菌Ku2接
種区においては、移植後15日目まで発病抑制効果が認め
られたものの、48時間浸根処理したトマト苗は移植後30
日目には対照区とほぼ同じ値を示し、発病抑制効果の持
続性が欠けていた。しかし、24時間浸根処理したものは
発病率55%、発病度2.7を示し、著しい抑制効果が認め
られた。また、抗青枯病菌Ku3B接種区においては、移
植後15日目まで発病が対照区の半分に抑えられていた
が、24時間浸根処理したトマト苗はその後発病が増加し
た。しかし、48時間浸根処理したものはそのまま抑制効
果が持続し、移植後30日目でも発病率58%、発病度2.9
を示し、有意な発病抑制効果が認められた。
【0032】 表4:トマト青枯病の発病抑制効果 細菌 前処理 発病率(%) 時間(hr) 接種10日後 20日後 30日後 抗青枯病菌 Ku2 24 8.3 45.5 54.6 48 58.3 91.7 91.7 抗青枯病菌 Ku3B 24 33.3 72.7 90.9 48 25.0 58.3 58.3 コントロ−ル 48 100 100 100
【0033】(実施例6) 浸根処理用の菌濃度と発病抑制効果との関係 上記と同様に、水保存の抗青枯病菌Ku2、抗青枯病菌
Ku3Bおよびトマト青枯病菌R. solanacearumを供試し
た。上記方法に従って、抗青枯病菌Ku2および抗青枯
病菌Ku3Bの懸濁液を作製し、それを1.0×10倍に希
釈して、菌濃度が10 10 cfu/mlと10 cfu/mlである浸
根処理用懸濁液を供試した。各懸濁液中に含まれる正確
な菌数は、常法に従って希釈平板法により求めた。浸根
処理は48時間行った。発病率の推移を表5に示した。対
照区では、移植後30日目に発病率83.3%、発病度4.2を
示したのに対し、抗青枯病菌Ku2および抗青枯病菌K
u3B接種区において、いずれも発病は抑制された。特
に、浸根処理を1010 cfu/mlの高濃度菌液で行った場
合に、著しく発病が抑制されるのが認められ、その傾向
は両菌株とも同じであった。
【0034】 表5: 発病率(%) 細菌 菌濃度(cfu/ml) 接種10日後 20日後 30日後 抗青枯病菌 Ku2 1010 16.7 25.0 41.7 10 33.3 33.3 58.3 抗青枯病菌 Ku3B 1010 16.7 33.3 33.3 10 41.7 41.7 50.0 コントロ−ル 58.3 66.7 83.3
【0035】(実施例7) 抗青枯病菌Ku2および抗青枯病菌Ku3Bの死菌による
トマト青枯病発病抑制効果 上記結果より、抗青枯病菌Ku2および抗青枯病菌Ku3
Bの両菌株の生菌液をバクテリゼーションすることによ
り、トマト青枯病の発病が抑制されることを確認した。
このことから、これらの分離細菌エンドファイトによる
発病抑制効果の機構には、抗菌物質以外の要因が大きく
関与しているものと考えられた。そこで、死菌を用いて
発病抑制効果の検討を更に行った。
【0036】(死菌液浸根処理による発病抑制効果)抗
青枯病菌Ku2および抗青枯病菌Ku3Bは、水保存菌をY
PDA斜面培地に画線し、30℃で24時間培養したものを供
試し、トマト青枯病菌はR. solanaceaum を供試した。
青枯病発病抑制効果の検討は、上記方法に従ったが、浸
根処理用の死菌液は、生菌液(1010 cfu/ml)を100
℃、20分間熱処理して作製した。死菌液と生菌液にそれ
ぞれトマト幼苗を48時間浸根処理し、対照としては、蒸
留水にトマト幼苗を48時間浸漬したものを用いた。結果
は発病率の推移として表6に示した。抗青枯病菌Ku2
および抗青枯病菌Ku3Bともに、加熱死菌液でトマト幼
苗根部を浸漬処理した場合においても、トマト青枯病の
発病抑制効果は生菌液で処理した場合とほぼ同程度の高
いものであった。
【0037】 表6: 菌濃度 発病率(%) 細菌 (1010cfu/ml) 接種10日後 20日後 30日後 抗青枯病菌 Ku2 生菌 16.7 25.0 41.7 死菌 25.0 25.0 33.3 抗青枯病菌 Ku3B 生菌 16.7 33.3 33.3 死菌 16.7 25.0 50.0 コントロ−ル 58.3 66.7 83.3
【0038】(実施例8) 死菌液によるトマト青枯病菌の増殖抑制効果 上述した結果により、死菌液処理によっても有効なトマ
ト青枯病抑制効果が得られることが認められた。そこ
で、本項では、死菌がトマト青枯病菌の増殖に及ぼす影
響を検討した。
【0039】トマト幼苗に対する接種 上記方法に準じて、トマトを播種しフラスコ内で無菌的
に10日間栽培した。水保存の抗青枯病菌Ku3BをYPDA斜
面培地上で、30℃、24時間培養した後、滅菌蒸留水中に
菌濃度が10 cfu/mlとなるように懸濁した生菌液とそ
の熱死菌液を作製し、それぞれ1フラスコにつき0.6 ml
ずつ接種した。対照として、滅菌蒸留水を処理した。分
離細菌液接種後2日目に、R. solanacearum の懸濁液(1
0 cfu/ml)を0.6mlずつ接種した。R. solanacearumの
接種後4日目と8日目のトマト幼苗について、R. solanac
earumの増殖程度を検討した。すなわち、トマト幼苗を
フラスコから慎重に引き抜き、上記の方法で表面殺菌
し、滅菌乳鉢と乳棒を用いて1植物体ずつ十分に磨砕し
た後、10mlの滅菌蒸留水に懸濁した。TTC培地にその磨
砕液を画線し、30℃、48時間培養し、R. solanacearum
と思われるコロニー数を計測した。磨砕液に含まれる正
確な菌数は、常法に従って希釈平板法によって求めた。
【0040】トマト幼苗中のR. solanacearum の菌数を
表7に示した。数値は各処理区につき、4本のトマト幼
苗を調査した平均値である。この結果、蒸留水を処理し
た対照区では、R. solanacearum接種後4日目には、ほと
んどの幼苗に青枯病による萎凋が現れ、TTC培地を用い
た培養結果から、4日目、8日目とも幼苗中にR. solanac
earumの存在が認められた。それに対して、抗青枯病菌
Ku3Bの生菌液を前接種した幼苗には、病徴は現れず、
R. solanacearumは確認されなかった。一方、死菌液を
前処理した幼苗の中には、発病する株もあり、4日目の
トマト幼苗中にR.solanacearumの存在が認められた。し
かし、8日目の幼苗からはR. solanacearumは確認されな
かった。
【0041】 表7:トマト幼苗中のR. solanacearumに対する抗青枯病菌Ku3Bの青枯病抑制 効果 菌 濃 度 接種4日後 接種8日後 生菌 0 0 死菌 2.0x10 0 コントロ−ル 8.9x10 1.5x10
【0042】(実施例9) タバコ葉に対する接種 抗青枯病菌Ku2および抗青枯病菌Ku3Bの生菌液と死
菌液(10 cfu/ml)を作製し、おのおのR. solanacear
umの懸濁液(10 cfu/ml)と等量混合した菌液をタバ
コ(品種:Xanthi-nc)の葉肉内へ注射器(針なし)を
用いて注入した。対照としてR. solanacearum、両菌株
の生菌液および死菌液の単独接種を行った。タバコは25
〜28℃の温室内に置き、接種後7日目にコルクボーラで
注入部を打ち抜き、リーフディスクを80%エタノール溶
液に3秒間、続いて3%次亜塩素酸ナトリウム液に移し2
分間浸して表面を殺菌し、滅菌蒸留水で洗浄(3回反
復)した後、1リーフディスクずつ滅菌乳鉢と乳棒で十
分に磨砕した。上記の方法に従い、リーフディスク中に
含まれるR. solanacearumの菌数を計測した。
【0043】タバコリーフディスク中のR. solanacearu
mの菌数を表8に示した。数値は各処理区につき、2〜4
枚のリーフディスクを調査した平均値である。注入時に
おける創傷を除いて、R. solanacearumを単独接種した
対照区では、注入部が軽く黄変し、リーフディスク中に
おいてもTTC培地を用いた培養結果より、R. solanacear
umの増殖が認められた。R. solanacearumを混合せず
に、抗青枯病菌Ku2および抗青枯病菌Ku3Bの生菌液
または死菌液のみを接種したタバコ葉では、いずれも生
菌液接種による激しい黄変、および死菌液接種による軽
い黄変が認められた。それに対して、抗青枯病菌Ku2
とR. solanacearumの混合接種において、生菌液と混合
接種した場合には注入部が軽く黄変し、TTC培地上にR.
solanacearumは確認されなかったが、死菌液と混合接種
した場合には注入部の黄変はほとんど認められず、TTC
培地上にR. solanacearumの単独接種の値に近いコロニ
ーが分離されるリーフディスクもあった。抗青枯病菌K
u3BとR. solanacearumの混合接種においては、生菌液
または死菌液との混合接種のいずれの場合においても、
注入部が激しく褐変し、TTC培地上にR. solanacearumは
確認されなかった。
【0044】 表8: 細菌 菌 濃 度 抗青枯病菌Ku2 生菌 0 死菌 1.0x10 抗青枯病菌Ku3B 生菌 0 死菌 0 コントロ−ル 7.3x10
【0045】(実施例10)水保存の抗かいよう病菌K
u17または抗かいよう病菌Ku44は、YPDA平板培地で30
℃、48時間培養後、菌体を1白金耳量掻き取り、250 ml
のYPD液体培地(組成はYPDA培地から寒天のみを除いた
もの)に接種し、さらに30℃で48時間振盪培養後、遠沈
(10,000×rpm, 4℃, 10分)によって菌体を集めて滅菌
蒸留水に懸濁し、生菌液(1010 cfu/ml)とした。播種
後約2週間目のトマト(品種:ポンデローザ)幼苗を、
注意深く引き抜き、水道水で十分に洗浄した根部を、上
記抗かいよう病菌Ku17と抗かいよう病菌Ku44の細菌
懸濁液(1010 cfu/ml)にそれぞれ24時間浸根処理し
た。対照として滅菌蒸留水を用いた。一方、水保存のト
マトかいよう病菌Clavibacter michiganensis subsp. m
ichiganensisをPSA培地上に白金耳で画線し、30℃で48
時間培養後、出現したコロニーを1白金耳量掻き取り、2
50mlのYPD液体培地(組成はYPDA培地から寒天のみを除
いたもの)に接種し、さらに30℃で48時間振盪培養後、
遠沈(10,000×rpm, 4℃, 10分)によって菌体を集めて
滅菌蒸留水に懸濁し、接種源とした(菌濃度 108 cfu/m
l)。抗かいよう病菌Ku17と抗かいよう病菌Ku44の
細菌懸濁液あるいは滅菌蒸留水に浸根処理したトマト根
部を、上記接種源に約20分浸漬することにより、接種
し、直ちに滅菌土壌の入ったプランターに10本ずつ移
植し、28日目に病徴並び感染の有無を調べた。その結
果を表9に示す。
【0046】 表9: 細菌 病徴発生率(%) 感染率(%) 抗かいよう病菌Ku17 2.5 5.0 抗かいよう病菌Ku44 2.5 5.3 コントロ−ル 40.0 42.5
【0047】(実施例10)抗かいよう病菌Ku17およ
び抗かいよう病菌Ku44は、水保存菌をYPDA平板培地に
画線し、30℃で24時間培養したものを供試し、トマトか
いよう病菌はC. m.subsp. michiganensis を供試した。
発病抑制効果の検討は、上記方法に従ったが、浸根処理
用の死菌液は、生菌液(1010 cfu/ml)を100℃、20分
間熱処理して作製した。死菌液と生菌液にそれぞれトマ
ト幼苗を24時間浸根処理し、対照としては、蒸留水にト
マト幼苗を24時間浸漬したものを用いた。
【0048】 表10:抗かいよう病菌Ku17とKu44のかいよう病抑制効果 細菌 感染率(%) 抗かいよう病菌Ku17 生菌 10.5 加熱死菌 25.0 抗かいよう病菌Ku44 生菌 0.0 加熱死菌 5.0 コントロ−ル 47.3
【0049】
【発明の効果】この発明に係る抗青枯病菌においては、
トマト幼苗根部をバクテリゼーションする場合、発病抑
制効果の程度は浸根処理時間と菌濃度の違いにより大き
く異なることが明らかとなった。一般に、拮抗菌を用い
たバクテリゼーションによる発病抑制効果は、病原菌の
濃度よりも高い濃度の拮抗菌で処理した場合に得られる
例が多く、この発明から、発病抑制効果は浸根処理菌液
の濃度依存性であることが明らかとなった。しかし、こ
の発明に係る抗青枯病菌においては、病原菌濃度が高
く、対照区のほとんどが10日目には枯死した場合で
も、有意な発病抑制効果が認められたことは、この発明
に係る抗青枯病菌においては、が有効な生物的防除素材
としての機能を有していることを示すものである。
【0050】また、この発明に係る抗青枯病菌の細菌学
的諸性質の検討結果から、その細菌エンドファイトは、
これまで生物的防除素材として使用されてきたBacillus
やPseudomonasとは異なる細菌であることが明らかであ
る。この発明に係る抗青枯病菌は、コロニーの生育速度
が早く、純水中でも長期生存可能であり、このような増
殖能力の高さや安定性が、強力な病原菌であるR. solan
acearumに対抗できる要因の一つである可能性を示して
いる。特に、有効な抑制効果の得られる抗青枯病菌Ku
3Bに関しては、コロニーに強い流動性あり、鞭毛を有
し、高い蝟集性を示すなど、病原菌との競合に有利な点
が多く、この強固な吸着による植物体の抵抗性誘導の機
構も推察される。抗青枯病菌Ku3Bについてはトマト根
部の表面に定着している様子が電顕観察により確認され
ている。また、表面殺菌した浸根処理トマト幼苗から抗
青枯病菌Ku2および抗青枯病菌Ku3Bが再分離された
ことから、両分離株は組織内に存在している可能性が高
いと思われる。
【0051】更に、抗青枯病菌Ku2および抗青枯病菌
Ku3Bの加熱死菌を用いてトマト青枯病の発病抑制効果
を検討した結果、両分離株において生菌と同様に高い効
果が認められた。また、トマト幼苗およびタバコ葉に加
熱死菌を接種することで、R.solanacearumの増殖が抑制
される傾向も示された。
【0052】ナズナ及びイヌホウズキの植物体内より分
離したKu17、Ku44はともに培地上でトマトかい
よう病菌の増殖を抑制し、ポット試験においてもトマト
かいよう病の発病を顕著に抑制することが示された。こ
の発病抑制効果は加熱死菌によっても認められることか
ら、抗菌物質以外に何らかの菌体成分がエリシターとし
て植物体に作用し抵抗性を誘導している可能性も示され
た。

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 抗青枯病または抗かいよう病活性を有す
    る細菌エンドファイトが抗青枯病菌Ku2(FERM
    P−18175)もしくは抗青枯病菌Ku3B(FER
    M P−18176)または抗かいよう病菌Ku17
    (FERM P−18177)もしくは抗かいよう病菌
    Ku44(FERM P−18178)からなることを
    特徴とする抗青枯病または抗かいよう病活性を有する細
    菌エンドファイト。
  2. 【請求項2】 請求項1に記載の細菌エンドファイトに
    おいて、前記抗青枯病菌Ku2(FERM P−181
    75)および抗青枯病菌Ku3B(FERMP−181
    76)が植物トキシカリウムから分離された細菌エンド
    ファイトであり、前記抗かいよう病菌Ku17(FER
    M P−18177)がナズナからまた抗かいよう病菌
    Ku44(FERM P−18178)がイヌホウズキ
    から分離された細菌エンドファイトであることを特徴と
    する抗青枯病または抗かいよう病活性を有する細菌エン
    ドファイト。
  3. 【請求項3】 請求項1または2に記載の細菌エンドフ
    ァイトにおいて、前記青枯病またはかいよう病がナス科
    植物に対する青枯病またはかいよう病であることを特徴
    とする抗青枯病または抗かいよう病活性を有する細菌エ
    ンドファイト。
  4. 【請求項4】 抗青枯病または抗かいよう病活性を有す
    る細菌エンドファイトとして抗青枯病菌Ku2(FER
    M P−18175)もしくは抗青枯病菌Ku3B(F
    ERM P−18176)または抗かいよう病菌Ku1
    7(FERMP−18177)もしくは抗かいよう病菌
    Ku44(FERM P−18178)を含むことを特
    徴とする抗青枯病または抗かいよう病活性を有する細菌
    エンドファイト用組成物。
  5. 【請求項5】 請求項4に記載の細菌エンドファイト用
    組成物において、前記青枯病またはかいよう病がナス科
    植物に対する青枯病またはかいよう病であることを特徴
    とする抗青枯病または抗かいよう病活性を有する細菌エ
    ンドファイト用組成物。
  6. 【請求項6】 抗青枯病または抗かいよう病活性を有す
    る細菌エンドファイトとして抗青枯病菌Ku2(FER
    M P−18175)もしくは抗青枯病菌Ku3B(F
    ERM P−18176)または抗かいよう病菌Ku1
    7(FERMP−18177)もしくは抗かいよう病菌
    Ku44(FERM P−18178)を用いて青枯病
    を予防もしくは防除することを特徴とする青枯病/かい
    よう病予防・防除方法。
  7. 【請求項7】 請求項6に記載の青枯病予防・防除方法
    において、前記青枯病またはかいよう病がナス科植物に
    対する青枯病またはかいよう病であることを特徴とする
    青枯病/かいよう病予防・防除方法。
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