JP2002213295A - シリンダライナ - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 シリンダブロックとシリンダヘッドとが相互
に着脱自在に結合される往復動型内燃機関において、シ
リンダブロックにシリンダヘッドを取付け、ボルトを締
めつけた時、および運転中に高温となった時において、
シリンダライナがシリンダヘッドの方向へ迫り上がらな
いようにする。 【解決手段】 前記シリンダーブロックの本体に一体に
鋳込まれるシリンダライナの外周面を、シリンダヘッド
側からクランクケース側に向って該外周面の径が拡大す
る方向へ傾斜した円錐台形状に形成する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本願発明は、シリンダブロッ
クとシリンダヘッドとが相互に着脱自在に結合される往
復動型内燃機関において、シリンダブロックの本体に一
体に鋳込まれるシリンダライナに関するものである。

【０００２】

【従来の技術】軽量化を図った往復動型内燃機関におい
て、シリンダブロック本体はアルミニウム合金のような
軽金属製であり、高温高圧に晒されかつピストンにより
激しく摩擦されるシリンダ孔周辺部は、強度が高く耐熱
性と耐摩擦性に富んだ金属製または繊維強化金属製シリ
ンダライナで構成されている。

【０００３】そして、シリンダブロックとシリンダヘッ
ドは、シール性を確保するためのビード付きガスケット
を介して相互に重ね合され、ボルトの締め付け力でもっ
て前記両者は強固に結合されるので、強度剛性の高い金
属製または繊維強化金属製シリンダライナに比べて強度
剛性の低い軽金属製シリンダブロックは、前記金属製シ
リンダライナよりも大きく塑性変形を起すとともに、内
燃機関運転時では、高温の燃焼ガスに晒されるシリンダ
ライナがシリンダブロック本体よりも大きく膨張し、前
記シリンダブロックにおけるシリンダヘッドとの合せ面
では、前記シリンダライナの合せ端面が該シリンダブロ
ック本体の合せ端面に比べて突出した状態となり、前記
ガスケットは不均一な挟圧力を受け、燃焼室のシール性
が損なわれ易かった。

【０００４】このような現象を避けるために、従来は、
実開平１−１０５０６５号公報に示されるように、金属
製シリンダライナの外周面に、周方向へ走る凸条（溝
部）が該金属製シリンダライナの軸線方向へ亘り多数突
設されており、シリンダライナとシリンダブロックとの
密着性の向上を図っていた。

【０００５】

【解決しようとする課題】このように、金属製シリンダ
ライナの外周面に多数の突条（溝部）を形成したシリン
ダブロックでは、該金属製シリンダライナとシリンダブ
ロックとの間の付着力が不充分であり、また、該金属製
シリンダライナをシリンダブロック本体に一体に鋳込む
際に、溶湯が前記金属製シリンダライナの外周面突条間
の凹部に隅々迄隙間なく浸入し難いため、鋳巣等の鋳造
欠陥が生じ易く、該シリンダブロック本体と金属製シリ
ンダライナとの間の結合力が不充分であるため、シリン
ダブロック本体に対するシリンダライナの迫り上りが避
けられなかった。

【０００６】また、図１０に示されるように、シリンダ
ライナ01のシリンダヘッド側の端部02がシリンダヘッド
との合せ面03に露出せず、かつシリンダライナ上端外周
縁04が図のように丸く形成されて、シリンダブロック本
体05に一体に鋳込まれたものでは、前述したような現象
により、シリンダライナがシリンダブロックに対し迫り
上り力を受けた際に、シリンダライナのシリンダヘッド
側の端部の内面06がシリンダ孔07内に迫り出し、ピスト
ンとの焼付きが発生し易かった。

【０００７】本発明は、シリンダブロックにシリンダヘ
ッドを取付け、ボルトを締めつけた時、および運転中に
高温となった時においても、シリンダライナがシリンダ
ヘッドの方向へ迫り上がったり、内方へはみ出したりす
ることが起らないようにしようとするものである。

【０００８】

【課題を解決するための手段および効果】本願発明は、
このような不具合を解消した金属製シリンダライナの改
良に係り、請求項１記載の発明は、シリンダブロックと
シリンダヘッドとが相互に着脱自在に結合される往復動
型内燃機関において、前記シリンダーブロックの本体に
一体に鋳込まれるシリンダライナであって、該シリンダ
ライナの外周面は、シリンダヘッド側からクランクケー
ス側に向って該外周面の径が拡大する方向へ傾斜した円
錐台形状に形成された部分を備えていることを特徴とす
るものである。

【０００９】請求項１記載の発明は前述したように構成
されているため、シリンダブロック鋳造時に、シリンダ
ライナ外周面にシリンダブロック本体の溶湯が隙間なく
密着して、シリンダライナとシリンダブロック本体とが
一体的に強固に結合されるとともに、シリンダライナの
クランク軸側の拡径外周面でシリンダライナがシリンダ
ブロック本体に強く押し付けられて、シリンダライナの
迫り上りに大きな抵抗力が発生するため、シリンダヘッ
ドに対するシリンダブロックの合せ端面が平面に維持さ
れて、ガスケットによるシリンダヘッドとシリンダブロ
ックとの間のシール性が、長期間に亘って確保される。

【００１０】さらに、請求項２記載の発明によれば、請
求項１のくさび効果と凸条による機械的結合の相乗効果
により、シリンダライナとシリンダブロックとの密着性
が強固となり、ガスケットのシール性が更に確実とな
る。

【００１１】また、請求項３記載のように発明を構成す
ることにより、シリンダブロック鋳造時に、シリンダブ
ロック本体の溶湯がシリンダライナの隣接する凸条の先
端間からその基端に向かって滑らかに流れ込んで、隙間
なくシリンダライナの外周面全面に亘り密着し、シリン
ダライナとシリンダブロック本体とが一体的に結合さ
れ、しかも、シリンダブロック本体に対するシリンダラ
イナの軸方向の抵抗力に関し、前記凸条のシリンダヘッ
ド側の面が、平面に形成されたことによるシリンダヘッ
ドに向う方向の抵抗力が、該凸条のクランク軸側の面が
基端より先端に向かって欠除した形状に形成されたこと
によるクランク軸に向う方向の抵抗力に比べて大きいた
め、シリンダヘッドとのシリンダブロックの合せ端面が
平面に維持されて、ガスケットによるシリンダヘッドと
シリンダブロックとの間のシール性が、高水準に保持さ
れる。

【００１２】さらに、請求項４記載のように発明を構成
することにより、シリンダブロック本体に対しシリンダ
ライナがシリンダヘッド側に迫り上がる力が発生した場
合に、シリンダライナのシリンダヘッド側の端部が、シ
リンダ孔内部に向わずにシリンダブロック本体に向って
拡径する力を受けるため、ピストンとの焼付けが未然に
阻止される。

【００１３】

【発明の実施の形態】以下、図１に基づいて、本出願の
請求項１記載の発明に係る第１実施形態について説明す
る。４ストロークサイクルの往復動型内燃機関１のシリ
ンダブロック２では、アルミニウム合金製のシリンダブ
ロック本体３に、該シリンダブロック本体３よりも強度
剛性の高い金属製または繊維強化金属製のシリンダライ
ナ４が一体に鋳込まれ、該シリンダライナ４の外周面
は、上方から下方に向い径が拡大する方向へ末広がり状
に形成されている。なお、ウオータージャケットは、抜
き勾配により下部が上部より幅が狭いので、ライナーが
下方に向って末広がり形状であっても、シリンダブロッ
クの径方向の大型化は抑制されている。

【００１４】また、シリンダブロック２の上方にガスケ
ット５を介してシリンダヘッド６が重ねられ、シリンダ
ブロック２およびガスケット５を貫通する図示されない
ボルトと、該ボルトに螺着されるナット（図示されず）
とにより、着脱自在にシリンダブロック２およびシリン
ダヘッド６は相互に一体的に結合されている。

【００１５】本実施形態は、前述したように構成されて
いるので、ボルトの締め付け力により、シリンダブロッ
ク２に上下方向への圧縮力が生じた際に、強度、剛性の
高いシリンダライナ４の弾性変形量よりも、シリンダブ
ロック本体３の弾性変形量が大きく、しかも、内燃機関
運転時における高温の燃焼ガスに触れるシリンダライナ
４の熱膨張量がシリンダブロック本体３の熱膨張量より
大きいことにより、シリンダブロック本体３に対し、シ
リンダライナ４が上方へ迫り上がろうとするが、シリン
ダライナ４の下方拡径外周面によってシリンダブロック
本体３を押し広げようとする力に対応してシリンダブロ
ック本体３とシリンダライナ４との間に大きな抵抗力が
発生するので、シリンダブロック本体３に対するシリン
ダライナ４の迫り上がりが阻止される。

【００１６】図２に示す本発明の第２実施形態および図
３に示す本発明の第３実施形態は、図１に示したシリン
ダライナ形状の応用例であって、その意図するところ
は、熱負荷の高いシリンダライナのシリンダヘッド側に
予め必要なだけのヒートマス厚さを設定し、シリンダブ
ロックの径方向のコンパクト化を図ったものである。

【００１７】図４は本発明の第４実施形態に係るシリン
ダライナとシリンダブロックの接合部の断面図であり、
第１実施形態の図１のＡ部相当部分の拡大図であり、こ
の実施形態は、請求項２の発明に係るものである。図１
に示した第１実施形態では、シリンダライナ４の外周面
は、凹凸のない滑らかで傾斜の度合の小さな円錐台面に
形成されていたが、図４に示す第４実施形態では、シリ
ンダライナ４の円錐台状外周面に、周方向へ走る凹凸条
７を形成してある。このように構成すれば、シリンダブ
ロック本体３とシリンダライナ４との結合力を一層強固
にすることができ、シリンダライナの迫り上がりが阻止
される。

【００１８】また、上記凹凸条は、第２、第３実施形態
にも適用可能であり、この凹凸条は軸方向すべてに配設
する必要はなく、第２実施形態（図２）、第３実施形態
（図３）の場合は下方に末広がりしていないシリンダヘ
ッド側部分にのみ凹凸条を配設してもよい。このように
すれば、シリンダヘッド側のヒートマスが一層大きくな
り、熱負荷の面で更に有利となる。

【００１９】図５は本発明の第５実施形態に係るシリン
ダブロックの縦断面図であり、この実施形態は、請求項
３の発明に係るものである。この実施形態では、シリン
ダライナ８の内面と外面とは、マクロに見た場合に平行
である。また、シリンダライナ８のシリンダヘッド側の
端面はシリンダブロックの端面に露出している。

【００２０】図６は図５のＢ部の拡大図である。この実
施形態では、シリンダライナ８の外周面に周方向へ走る
凸条９を、シリンダライナ８の軸線方向に沿い一定間隔
毎に多数形成し、さらに、該凸条９のシリンダヘッド側
の面（図における上面）は平面的に形成してあるが、ク
ランクケース側の面（図における下側の面）は、該凸条
９の先端９ａの下部から凸条９の基端９ｂに向い上方か
ら下方へ傾斜する方向に、該凸条９の先端９ａの下部を
欠除してある。

【００２１】本第５実施形態では、シリンダブロック本
体10にシリンダライナ８を鋳込む際に、シリンダブロッ
ク本体10の溶湯がシリンダライナ８の隣り合う凸条９の
間に円滑に流れこみ、シリンダライナ８とシリンダブロ
ック本体10とは隙間なく強固に結合される。

【００２２】そして、シリンダブロック本体10に対して
シリンダライナ８が上方へ引き上げられる力に対応し
て、凸条９の上面がシリンダブロック本体10に対し直角
になっているので、大きな抵抗力を発生し、シリンダブ
ロック本体10に対するシリンダライナ８の迫り上がりが
阻止される。

【００２３】図７は本発明の第６実施形態に係る部分拡
大図であり、この実施形態も、請求項３の発明に係るも
のであり、マクロに見た全体形状は第５実施形態の図５
に示されるものと同じである。

【００２４】この実施形態では、凸条９の先端９ａを先
鋭に形成してあるので、凸条９の先端９ａがシリンダブ
ロック本体10に喰い込んで、より大きな迫り上がり抵抗
力が発生し、迫り上がりが阻止される。

【００２５】図８は本発明の第７実施形態に係るシリン
ダブロックの縦断面図、図９は図８のＣ部拡大図であ
り、この実施形態は請求項４の発明に関するものであ
る。本実施形態では、シリンダライナ11の頂面12がシリ
ンダブロック15のシリンダヘッドとの合せ面15ａに露出
せず、かつ、シリンダライナ11の頂面12がシリンダライ
ナ11の中心から外方へ向うにつれて上方へ傾斜するよう
形成してある。

【００２６】このため、シリンダブロック本体15に対し
シリンダライナ11が迫り上がる現象が発生した場合、シ
リンダライナ11の頂縁13が破線のようにシリンダブロッ
ク本体15に深く喰い込み、シリンダライナ11の上部内周
面14はシリンダブロック本体15の内周面16よりも内方へ
はみ出すことがなく、図示されないピストンとの焼き付
きが確実に防止される。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の第１実施形態に係る往復動型内燃機関
の縦断面図である。

【図２】本発明の第２実施形態に係るシリンダライナの
縦断面図である。

【図３】本発明の第３実施形態に係るシリンダライナの
縦断面図である。

【図４】本発明の第４実施形態に係るシリンダライナと
シリンダブロックの接合部の断面図であり、図１のＡ部
相当部分の拡大図である。

【図５】本発明の第５実施形態に係るシリンダブロック
の縦断面図である。

【図６】本発明の第５実施形態に係るシリンダライナと
シリンダブロックの接合部の断面図であり、図５のＢ部
の拡大図である。

【図７】本発明の第６実施形態に係るシリンダライナと
シリンダブロックの接合部の断面図であり、図５のＢ部
相当部分の拡大図である。

【図８】本発明の第７実施形態に係るシリンダブロック
の縦断面図である。

【図９】本発明の第７実施形態に係るシリンダライナ端
部におけるシリンダブロックとの接合部の断面図であ
り、図８のＣ部の拡大図である。

【図１０】従来の往復動型内燃機関におけるシリンダラ
イナ端部におけるシリンダブロックとの接合部の断面図
である。

【符号の説明】

１…往復動型内燃機関、２…シリンダブロック、３…シ
リンダブロック本体、４…シリンダライナ、５…ガスケ
ット、６…シリンダヘッド、７…凹凸条、８…シリンダ
ライナ、９…凸条、10…シリンダブロック本体、11…シ
リンダライナ、12…頂面、13…頂縁、14…上部内周面、
15…シリンダブロック本体、16…シリンダブロック本体
の内周面。

Claims (4)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 シリンダブロックとシリンダヘッドとが
   相互に着脱自在に結合される往復動型内燃機関におい
   て、前記シリンダーブロックの本体に一体に鋳込まれる
   シリンダライナであって、 該シリンダライナの外周面は、シリンダヘッド側からク
   ランクケース側に向って該外周面の径が拡大する方向へ
   傾斜した円錐台形状に形成された部分を備えていること
   を特徴とするシリンダライナ。
2. 【請求項２】 請求項１に記載のシリンダライナであっ
   て、シリンダライナの外周面に、周方向へ走る凸条が形
   成されたことを特徴とするシリンダライナ。
3. 【請求項３】 シリンダブロックとシリンダヘッドとが
   相互に着脱自在に結合される往復動型内燃機関におい
   て、前記シリンダーブロックの本体に一体に鋳込まれる
   シリンダライナであって、 該シリンダライナの外周面には、周方向へ走る凸条が形
   成され、該凸条のシリンダヘッド側の面は平面に形成さ
   れたままであり、該凸条のクランクケース側の部分は凸
   条基端から凸条先端に向って斜めに欠除された形状に形
   成されたことを特徴とするシリンダライナ。
4. 【請求項４】 シリンダブロックとシリンダヘッドとが
   相互に着脱自在に結合される往復動型内燃機関におい
   て、該シリンダライナのシリンダヘッド側の端部がシリ
   ンダヘッドとの合せ面に露出せずに、前記シリンダブロ
   ックの本体に一体に鋳込まれるシリンダライナであっ
   て、該シリンダライナのシリンダヘッド側の端面は、内
   周縁から外周縁に向ってシリンダヘッド側に向って傾斜
   した形状に形成されたことを特徴とするシリンダライ
   ナ。