JP2002212068A - 線溶系プロテアーゼ阻害剤 - Google Patents

線溶系プロテアーゼ阻害剤

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JP2002212068A
JP2002212068A JP2001005185A JP2001005185A JP2002212068A JP 2002212068 A JP2002212068 A JP 2002212068A JP 2001005185 A JP2001005185 A JP 2001005185A JP 2001005185 A JP2001005185 A JP 2001005185A JP 2002212068 A JP2002212068 A JP 2002212068A
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Japan
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fibrinolytic
acid
skin
tranexamic acid
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JP2001005185A
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Yuzo Yoshida
雄三 吉田
Eriko Kawai
江理子 河合
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Shiseido Co Ltd
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Shiseido Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】表皮内において線溶系プロテアーゼの活性変化
を伴う種々の皮膚疾患や、乾燥・洗浄剤等の刺激によっ
て生じる肌荒れ・ニキビなど表皮の増殖性異常を認める
皮膚状態に対して、優れた改善・防止効果を発揮し、且
つ安全な線溶系プロテアーゼ阻害剤を提供する。 【解決手段】下記一般式化1で表されるトラネキサム酸
のアミド体及びその塩から選ばれる1種または2種以上
を有効成分とすることを特徴とする線溶系プロテアーゼ
阻害剤。 【化1】 [式中、R及びRは水素原子、炭素数1〜18の直鎖状
または分岐状アルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル
基、ベンジル基及び/または下記一般式化2を示し、R
及びRはそれぞれ同一でも異なってもよい。] 【化2】 [式中、Xは低級アルキル基、低級アルコキシ基、ヒド
ロキシ基、アミノ基、またはハロゲン原子を示し、n=0
〜3である。]

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は線溶系プロテアーゼ
阻害剤、特に線溶系プロテアーゼの活性化反応を表皮内
において特異的に阻害する線溶系プロテアーゼ活性化阻
害剤に関する。
【0002】
【従来の技術】皮膚の正常な角化過程においては表皮細
胞内のタンパク分解酵素(プロテアーゼ)が重要な役割
を果たしていると考えられているが、種々の皮膚疾患の
病像形成には、特にプラスミンやプラスミノーゲンアク
チベーター(PA)といった線溶系プロテアーゼの活性
変化が深く関与していることが明らかにされてきた。プ
ラスミンはその前駆体であるプラスミノーゲンがPAに
よって活性化されたプロテアーゼであり、血液凝固系に
おいて血栓形成の抑制という重要な役割を果たしている
が、過剰産生されると非特異的なタンパク分解作用によ
り組織や細胞を破壊したり、毛細血管の拡張、血管浸透
性の亢進、平滑筋の収縮、疼痛といった、炎症、アナフ
ィラキシーショックの原因となり得る有害なペプチドを
生じ、生体にとって悪影響を及ぼすことが知られてい
る。またPAの1つであるウロキナーゼが細胞増殖を亢
進させる作用を有していることも報告されている。
【0003】これら線溶系プロテアーゼの活性変化が認
められる皮膚疾患としては、例えば炎症性異常角化性疾
患の代表である乾癬や尋常性天疱瘡などが挙げられる。
乾癬ではその患部表皮の錯角化部位に強いPA活性が認
められ(日比野ら:血液と脈管;17(6),1986)、尋常性天
疱瘡においては表皮細胞内で多量に産生されたPAが細
胞外のプラスミノーゲンをプラスミンに転換し、このプ
ラスミンが細胞間結合物質を消化することにより、細胞
間に組織液が貯留して表皮内水疱が形成されることが知
られている(Morioka S.:J.Invest.Dermatol;76,1981)。
また洗浄剤等の刺激によって表皮細胞が異常増殖して肌
荒れを起した皮膚では、本来ならば表皮基底層付近に局
在しているプラスミノーゲンが表皮全層に活性なプラス
ミンとして散在していることが報告されている(北村
ら:粧技誌;29(2),1995)。
【0004】以上のことから種々の皮膚疾患や表皮細胞
の増殖性異常を改善・防止するには線溶系に関わるプロ
テアーゼの活性制御が重要であると考えられてきた。し
かしながら、プロテアーゼ阻害剤を用いた治療法は、皮
膚疾患に限らず様々な疾病に対してすでに試みられてい
るものの、生体内の正常なプロテアーゼ活性までを阻害
することによる副作用の発現が問題視されている(Yama
motoら:AIDS Res.Newsl.;11,1997、Kennedy A.R.: Pha
rmacol.Ther.;78,1998)。
【0005】そこで線溶系プロテアーゼの反応を特異的
に阻害し、且つ安全性の高い物質として、白血病や肺血
病、腎出血、鼻出血といった異常出血の治療に用いられ
るε-アミノカプロン酸やトラネキサム酸などのいわゆ
る抗線溶剤(抗プラスミン剤)が皮膚疾患や表皮の増殖
性異常に対して用いられ、その有用性が示されてきた
(北村ら:粧技誌;29(2),1995)。
【0006】一般に抗線溶剤もしくは抗プラスミン剤と
呼ばれる薬剤は、線溶系プロテアーゼが活性化されて繊
維素(フィブリン)を分解する反応を阻害する物質を指
し、その主たる阻害機構は、線溶系プロテアーゼのフィ
ブリンへの結合阻害に基づくものである。したがって、
抗線溶剤の線溶系プロテアーゼに対する阻害作用は、フ
ィブリンが共存しない系においては低下するのが特徴で
ある。このような物質は標的とするプラスミンの活性発
現を特異的に抑え、生体内の正常なプロテアーゼ活性ま
では阻害しないことから、副作用が極めて少ないという
点で優れている。実際、異常出血の治療にε-アミノカ
プロン酸やトラネキサム酸などの抗線溶剤が積極的に用
いられているのは、こうした安全性の高さが背景にある
と言える。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、表皮内
にフィブリンが存在するという報告はないので、表皮内
の線溶系プロテアーゼ活性を制御する目的で上記記載の
抗線溶剤を皮膚に適用しても、抗線溶剤本来の阻害作用
(フィブリンとプロテアーゼの結合阻害に基づく阻害作
用)が発揮されない。すなわち皮膚疾患や表皮の増殖性
異常に対して抗線溶剤を用いることは、線溶系プロテア
ーゼの活性変化を効果的に阻害するという点からは必ず
しも適してはおらず、このことから抗線溶剤の有効性は
必ずしも十分ではなかった。
【0008】本発明は、前記従来の課題に鑑みなされた
もので、表皮内において線溶系プロテアーゼの活性変化
を伴う種々の皮膚疾患や、乾燥・洗浄剤等の刺激によっ
て生じる肌荒れ・ニキビなど表皮の増殖性異常を認める
皮膚状態を安全且つ効果的に改善・防止する線溶系プロ
テアーゼ阻害剤を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】上述のような現状に鑑
み、本発明者が鋭意検討した結果、トラネキサム酸のア
ミド誘導体の塩が、線溶系プロテアーゼの活性化反応を
表皮細胞もしくは角層のホモジネートを添加した反応系
においてのみ強く阻害し、線溶系プロテアーゼの活性変
化を伴う種々の疾患を抗線溶剤よりも有効に且つ安全
に、改善・防止効果を示すことを見出した。
【0010】本発明の主題はすなわち、下記一般式化3
で表されるトラネキサム酸のアミド体もしくはその塩か
ら選ばれる1種または2種以上を有効成分とする線溶系
プロテアーゼ阻害剤である。
【0011】
【化3】
【0012】〔式中、R及びRは水素原子、炭素数
1〜18の直鎖状または分岐状アルキル基、炭素数5〜8の
シクロアルキル基、ベンジル基及び/または下記一般式
化2を示し、R及びRはそれぞれ同一でも異なって
もよい。〕
【0013】
【化4】
【0014】[式中、Xは低級アルキル基、低級アルコ
キシ基、ヒドロキシ基、アミノ基、またはハロゲン原子
を示し、n=0〜3である。]
【0015】
【発明の実施の形態】以下、本発明について詳述する。
本発明に係るトラネキサム酸のアミド体およびその塩
は、例えば、ActaPharm. Suecica 、7、 441 (1970)、
J. Med. Chem.、15、 247 (1972)等の方法により容易に
合成することができる。
【0016】すなわちトラネキサム酸のアミノ基を適当
な保護基、例えば、ベンジルオキシカルボニル基等によ
って保護した後、該保護体または該保護体の反応性誘導
体にアミン成分を反応させることにより、トラネキサム
酸保護体のアミド体が製造される。該保護体の反応性誘
導体としては酸クロライド、酸ブロマイドのような酸ハ
ライド、混合酸無水物等が好適である。その後、該保護
基を接触還元等により脱離し、トラネキサム酸のアミド
体が製造される。
【0017】本発明化合物は、所望により塩酸、硫酸、
リン酸、臭化水素酸等の無機酸塩、あるいは酢酸、乳
酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、メタン
スルホン酸、p−トルエンスルホン酸等の有機酸塩等と
することができる。
【0018】具体的に物質名を例示すれば、トランス−
4−アミノメチルシクロヘキサンカルボンアミド、塩酸
トランス−4−アミノメチルシクロヘキサンカルボンア
ミド、N−n−ヘキシル−トランス−4−アミノメチル
シクロヘキサンカルボンアミド、塩酸N−n−ヘキシル
−トランス−4−アミノメチルシクロヘキサンカルボン
アミド、N−n−ヘプチル−トランス−4−アミノメチ
ルシクロヘキサンカルボンアミド、塩酸N−n−ヘプチ
ル−トランス−4−アミノメチルシクロヘキサンカルボ
ンアミド、N−n−ブチル−トランス−4−アミノメチ
ルシクロヘキサンカルボンアミド、塩酸N−n−ブチル
−トランス−4−アミノメチルシクロヘキサンカルボン
アミド、N−n−プロピル−トランス−4−アミノメチ
ルシクロヘキサンカルボンアミド、N−シクロヘキシル
−トランス−4−アミノメチルシクロヘキサンカルボン
アミド、塩酸N−シクロヘキシル−トランス−4−アミ
ノメチルシクロヘキサンカルボンアミド、N,N−ジシ
クロヘキシル−トランス−4−アミノメチルシクロヘキ
サンカルボンアミド、塩酸N,N−ジシクロヘキシル−
トランス−4−アミノメチルシクロヘキサンカルボンア
ミド、N,N−ジエチル−トランス−4−アミノメチル
シクロヘキサンカルボンアミド、塩酸N,N−ジエチル
−トランス−4−アミノメチルシクロヘキサンカルボン
アミド、N−ベンジル−トランス−4−アミノメチルシ
クロヘキサンカルボンアミド、塩酸N−ベンジル−トラ
ンス−4−アミノメチルシクロヘキサンカルボンアミ
ド、N−(4′−メトキシフェニル)−トランス−4−
アミノメチルシクロヘキサンカルボンアミド、塩酸N−
(4′−メトキシフェニル)−トランス−4−アミノメ
チルシクロヘキサンカルボンアミド、N−(4′−エト
キシフェニル)−トランス−4−アミノメチルシクロヘ
キサンカルボンアミド、塩酸N−(4′−エトキシフェ
ニル)−トランス−4−アミノメチルシクロヘキサンカ
ルボンアミド、N−(2′−メチルフェニル)−トラン
ス−4−アミノメチルシクロヘキサンカルボンアミド、
塩酸N−(2′−メチルフェニル)−トランス−4−ア
ミノメチルシクロヘキサンカルボンアミド、N−(3′
−メチルフェニル)−トランス−4−アミノメチルシク
ロヘキサンカルボンアミド、塩酸N−(3′−メチルフ
ェニル)−トランス−4−アミノメチルシクロヘキサン
カルボンアミド、N−(4′−クロロフェニル)−トラ
ンス−4−アミノメチルシクロヘキサンカルボンアミ
ド、塩酸N−(4′−クロロフェニル)−トランス−4
−アミノメチルシクロヘキサンカルボンアミド等があげ
られる。
【0019】本発明に関わる線溶系プロテアーゼとは、
プラスミン、ウロキナーゼ等のプラスミノーゲンアクチ
ベーター及びこれらの前駆体を指す。また、健常な表皮
内には線溶系プロテアーゼとしてウロキナーゼの前駆体
であるプロウロキナーゼとプラスミンの前駆体であるプ
ラスミノーゲンが存在する。これらの活性化反応につい
ては、プロウロキナーゼが僅かながらプラスミノーゲン
活性化能を有するため、一部のプラスミノーゲンがプロ
ウロキナーゼによって活性化されてプラスミンが生じ、
前記プラスミンがプロウロキナーゼを活性化しウロキナ
ーゼを生じ、さらに多くのプラスミノーゲンがプラスミ
ンに転換されるという反応経路が存在するものと考えら
れている。すなわち本発明に関わる線溶系プロテアーゼ
阻害作用とは、これら一連の反応に関わるいずれかのプ
ロテアーゼの活性そのもの、あるいはその活性化過程を
直接もしくは間接的に阻害する作用を意味する。
【0020】本発明は、患部において線溶系プロテアー
ゼの活性変化を伴う種々の疾患を改善・防止する製剤に
応用され、特に乾癬や天疱瘡などの皮膚疾患、乾燥・洗
浄剤等の刺激によって生じる肌荒れ・ニキビなど表皮の
増殖性異常を伴う皮膚状態に対して優れた改善・防止効
果を有する皮膚外用剤に有利に適用される。
【0021】主としてトラネキサム酸のアミド体および
その塩を少なくとも1種以上含有する外用剤として用い
られ、その場合の配合量は外用剤全量中0.001〜20重量
%、好ましくは0.01〜10重量%である。0.001 重量%未
満では、本発明でいう効果が十分に発揮されず、20重量
%を越えると使用性上好ましくない。また、10重量%以
上配合してもさほど大きな効果の向上はみられない。
【0022】また、上記必須成分以外に、通常化粧品や
医薬品等の皮膚外用剤に用いられる成分、例えば、保湿
剤、酸化防止剤、油性成分、紫外線吸収剤、乳化剤、界
面活性剤、増粘剤、アルコール類、粉末成分、色材、水
性成分、水、各種皮膚栄養剤等を必要に応じて適宜配合
することができる。
【0023】その他、エデト酸二ナトリウム、エデト酸
三ナトリウム、クエン酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリ
ウム、メタリン酸ナトリウム、グルコン酸等の金属封鎖
剤、カフェイン、タンニン、ベラパミル、トラネキサム
酸およびその誘導体、甘草抽出物、グラブリジン、火棘
の果実の熱水抽出物、各種生薬、酢酸トコフェロール、
グリチルリチン酸およびその誘導体またはその塩等の薬
剤、ビタミンC、アスコルビン酸リン酸マグネシウム、
アスコルビン酸グルコシド、アルブチン、コウジ酸等の
美白剤、グルコース、フルクトース、マンノース、ショ
糖、トレハロース等の糖類なども適宜配合することがで
きる。
【0024】本発明に係る線溶系プロテアーゼは、例え
ば軟膏、クリーム、乳液、ローション、パック、浴用剤
等、従来皮膚外用剤に用いるものであればいずれの形で
適用することもでき、剤型は特に問わない。
【0025】
【実施例】以下、本発明の好適な実施例をさらに詳細に
説明する。尚、本発明はこれにより限定されるものでは
ない。配合量は重量%で示す。
【0026】実施例に先立ち、線溶系プロテアーゼ阻害
作用、ならびに表皮の増殖異常に対する有効性に関する
試験方法及びその結果について説明する。
【0027】[1]線溶系プロテアーゼ阻害作用試験 (1) 被験試料 下記式化5及び6で表されるトラネキサム酸のメチルア
ミド誘導体及びエチルアミド誘導体のそれぞれ塩酸塩
と、トラネキサム酸を被験試料として用いた。
【0028】
【化5】
【0029】
【化6】
【0030】(2)線溶系プロテアーゼ阻害活性の測定 12wellの培養プレートを用いてヒト培養表皮細胞を
通常の培養法によりコンフルエントの状態まで培養し、
培地を除去してから細胞を100mmol/lの塩化ナトリウム
を含む50mmol/lのTris-HCl buffer(pH7.4)にて十分に
洗浄した。 洗浄後各wellにTris-HCl bufferを2mlずつ添加
し、細胞をラバーポリスマンにてプレート底面から剥が
してサンプルチューブに回収した。内在性のプロテアー
ゼを失活させるためこれを100℃で3分間加熱処理してか
ら10,000Gで60分間遠心し、上清を除去した。 1μg/mlのプロウロキナーゼと1μg/mlのプラスミノ
ーゲン、及び3%、1%、0.5%の被験試料を含むTris-
HCl buffer 200μlを、細胞が残るサンプルチューブに
添加すると同時にこれを37℃恒温器に移し、15分間イン
キュベートした。また被験試料を含まないものを対照と
して用意した。 プロウロキナーゼとプラスミノーゲンの活性化反応
で生じたプラスミンを測定するため反応溶液の限外濾過
を行ない、反応系から被験試料を除いた上で限外濾過フ
ィルター上にTris-HCl buffer 200μlと合成基質S-2251
(第一化学薬品)を20μl添加し、37℃で1時間インキュ
ベートした。 最後に細胞残渣を除いた反応溶液を180μlずつ96we
llマルチプレートに移し、マイクロプレートリーダーに
て405nm吸光度(OD値)を測定し、この値を基に下記数
式1より線溶系プロテアーゼの活性化反応に対する被験
試料の阻害率%を求めた。
【0031】
【数式1】 阻害率(%)={1−(被験試料のOD値/対照のOD値)}×100 …(1)
【0032】なお、において表皮細胞の替わりに日焼
け剥離した角層のホモジネートを終濃度1mg/mlになる
ように添加した系、フィブリノーゲンを終濃度1%にな
るように添加した系、及び無添加系についても同様の操
作を行った。その結果を併せて表1に示す。
【0033】
【表1】 阻害率(%) 試料 試料 表皮細胞 角層ホモシ゛ネート フィフ゛リノーケ゛ン 終濃度 無添加系 添加系 添加系 添加系 トラネキサム酸 3% 1.2 78.1 85.2 18.0 メチルアミド 1% -0.7 51.3 55.5 11.4 塩酸塩 0.5% -3.4 34.4 34.7 6.2 トラネキサム酸 3% 0.4 82.3 88.1 15.0 エチルアミド 1% -2.8 54.7 61.4 13.9 塩酸塩 0.5% -11.1 36.6 41.9 4.5 3% 8.1 57.1 51.2 100.0 トラネキサム酸 1% 2.3 31.4 36.1 87.6 0.5% -9.7 23.8 28.7 66.7
【0034】表1から分かるように、トラネキサム酸の
メチルアミド誘導体及びエチルルアミド誘導体は、反応
系に表皮細胞もしくは角層のホモジネートが共存する場
合に限り、線溶系プロテアーゼ活性に対して優れた阻害
作用を示した。これに対し、抗線溶剤として知られるト
ラネキサム酸は、反応系にフィブリノーゲンが共存する
場合に強い阻害作用を示したが、表皮細胞もしくは角層
ホモジネートの共存下では、メチルアミド誘導体及びエ
チルアミド誘導体ほどの阻害作用は示さなかった。な
お、いずれの被験試料も無添加系では、線溶系プロテア
ーゼの反応にほとんど影響を及ぼさなかった。このこと
からトラネキサム酸誘導体は、表皮内において線溶系プ
ロテアーゼの反応を特異的に阻害することが認められ
た。
【0035】[2]表皮の増殖性異常に対する作用試験
(in vivo) (1)被験試料 前記式化5で表されるトラネキサム酸のメチルアミド塩
酸塩及びトラネキサム酸の2%水溶液を被験試料として
用いた。
【0036】(2)表皮増殖性異常防止効果の判定 3名の男性パネルの前腕内側部3ヵ所に、5%ドデシル
硫酸ナトリウム(SDS)水溶液を浸した脱脂綿(2×
2cm)を当て15分間固定し、SDSを洗い落とした
後そこにパネルごとに割り付けた2種類の被験試料と、
対照として蒸留水を0.5mlずつ塗布した。この操作を7
日間繰り返し、8日目に3ヵ所の被験部位と前腕内側部
の何も処置していない部位のバイオプシを行い、10μm
のパラフィン切片を作成して常法通りヘマトキシリン-
エオシン染色を行った。この標本を用いてDendaらの方
法(J.Invest.Dermatol. 109,1997)に従い表皮層の厚
さを測定した。この値を基に下記数式2より表皮の増殖
性異常に対する被験試料の防止率%をパネルごとに算出
し、その平均値を求めた。結果を表2に示す。
【0037】
【数式2】 防止率(%)={(対照部位の表皮厚―被験試料塗布部位の表皮厚)/ (対照部位の表皮厚―無処置部位の表皮厚)}×100 …(2)
【0038】
【表2】 被験試料 表皮肥厚(増殖性異常)防止率% トラネキサム酸メチルアミド塩酸塩 93% トラネキサム酸 67%
【0039】 表2から分かるように、トラネキサム酸
メチルアミド塩酸塩は表皮の増殖性異常に対して優れた
防止効果を示した。その作用強度は抗線溶剤として知ら
れるトラネキサム酸よりも強いものであった。
【0040】実施例1 クリーム (処方) 重量% ステアリン酸 5.0 ステアリルアルコール 4.0 イソプロピルミリステート 18.0 グリセリンモノステアリン酸エステル 3.0 プロピレングリコール 10.0 トラネキサム酸メチルアミド塩酸塩 1.0 苛性カリ 0.2 亜硫酸水素ナトリウム 0.01 防腐剤 適量 香料 適量 イオン交換水 残余 (製法)イオン交換水にトラネキサム酸メチルアミド塩
酸塩とプロピレングリコール及び苛性カリを加え溶解
し、加熱して70℃に保つ(水相)。他の成分を混合
し、加熱融解して70℃に保つ(油相)。水相に油相を
徐々に加え、全部加え終わってからしばらくその温度に
保ち反応を起こさせる。その後、ホモミキサーで均一に
乳化し、よく攪拌しながら30℃まで冷却する。
【0041】 実施例2 クリーム (処方) 重量% ステアリン酸 2.0 ステアリルアルコール 7.0 水添ラノリン 2.0 スクワラン 5.0 2−オクチルドデシルアルコール 6.0 ポリオキシエチレン(25モル) セチルアルコールエーテル 3.0 グリセリンモノステアリン酸エステル 2.0 プロピレングリコール 5.0 トラネキサム酸メチルアミド塩酸塩 0.1 トラネキサム酸 1.0 亜硫酸水素ナトリウム 0.03 エチルパラベン 0.3 香料 適量 イオン交換水 残余 (製法)イオン交換水にプロピレングリコールを加え、
加熱して70℃に保つ(水相)。他の成分を混合し、加
熱融解して70℃に保つ(油相)。水相に油相を加え予
備乳化を行い、ホモミキサーで均一に乳化した後、よく
攪拌しながら30℃まで冷却する。
【0042】実施例3 クリーム (処方) 重量% 固形パラフィン 5.0 ミツロウ 10.0 ワセリン 15.0 流動パラフィン 41.0 グリセリンモノステアリン酸エステル 2.0 ポリオキシエチレン(20モル) ソルビタンモノラウリル酸エステル 2.0 石けん粉末 0.1 硼砂 0.2 トラネキサム酸エチルアミド塩酸塩 2.0 亜硫酸水素ナトリウム 0.03 エチルパラベン 0.3 香料 適量 イオン交換水 残余 (製法)イオン交換水に石けん粉末と硼砂を加え、加熱
して70℃に保つ(水相)。他の成分を混合し、加熱融
解して70℃に保つ(油相)。水相に油相を攪拌しなが
ら徐々に加え反応を行なう。その後、ホモミキサーで均
一に乳化し、よく攪拌しながら30℃まで冷却する。
【0043】実施例4 乳液 (処方) 重量% ステアリン酸 2.5 セチルアルコール 1.5 ワセリン 5.0 流動パラフィン 10.0 ポリオキシエチレン(10モル) モノオレイン酸エステル 2.0 ポリエチレングリコール1500 3.0 トリエタノールアミン 1.0 トラネキサム酸プロピルアミド塩酸塩 1.0 カルボキシビニルポリマー 0.05 (商品名:カーボポール941,B.F.Goodrich Chemical company) 亜硫酸水素ナトリウム 0.01 エチルパラベン 0.3 香料 適量 イオン交換水 残余 (製法)少量のイオン交換水にカルボキシビニルポリマ
ーを溶解する(A相)。残りのイオン交換水にポリエチ
レングリコール1500とトリエタノールアミン、トラ
ネキサム酸プロピルアミド塩酸塩を加え、加熱溶解して
70℃に保つ(水相)。他の成分を混合し、加熱融解し
て70℃に保つ(油相)。水相に油相を加え予備乳化を
行い、A相を加えホモミキサーで均一に乳化し、乳化後
よく攪拌しながら30℃まで冷却する。
【0044】実施例5 乳液 (処方) 重量% マイクロクリスタリンワックス 1.0 ミツロウ 2.0 ラノリン 20.0 流動パラフィン 10.0 スクワラン 5.0 ソルビタンセスキオレイン酸エステル 4.0 ポリオキシエチレン(20モル) ソルビタンモノオレイン酸エステル 1.0 プロピレングリコール 7.0 トラネキサム酸メチルアミド塩酸塩 2.0 トラネキサム酸 1.0 亜硫酸水素ナトリウム 0.01 エチルパラベン 0.3 香料 適量 イオン交換水 残余 (製法)イオン交換水にトラネキサム酸とトラネキサム
酸メチルアミド塩酸塩及びプロピレングリコールを加
え、加熱して70℃に保つ(水相)。他の成分を混合
し、加熱融解して70℃に保つ(油相)。油相を攪拌し
ながら水相を徐々に加え、ホモミキサーで均一に乳化し
た後、よく攪拌しながら30℃まで冷却する。
【0045】実施例6 ゼリー (処方) 重量% 95%エチルアルコール 10.0 ジプロピレングリコール 15.0 ポリオキシエチレン(50モル) オレイルアルコールエーテル 2.0 カルボキシビニルポリマー 0.05 (商品名:カーボポール940,B.F.Goodrich Chemical company) 苛性ソーダ 0.15 L−アルギニン 0.1 トラネキサム酸エチルアミド塩酸塩 0.01 亜硫酸水素ナトリウム 0.01 エチルパラベン 0.3 香料 適量 イオン交換水 残余 (製法)イオン交換水にカーボポール940を均一に溶
解し、トラネキサム酸エチルアミド塩酸塩を加える(A
相)。一方95%エタノールにポリオキシエチレン(5
0モル)オレイルアルコールエーテルを溶解し、A相に
添加する。次いでその他の成分を加えた後、苛性ソー
ダ、L−アルギニンで中和させ増粘する。
【0046】実施例7 パック (処方) 重量% (A相) ジプロピレングリコール 5.0 ポリオキシエチレン(60モル) 硬化ヒマシ油 5.0 (B相) オリーブ油 5.0 酢酸トコフェロール 0.2 エチルパラベン 0.2 香料 0.2 (C相) 亜硫酸水素ナトリウム 0.03 ポリビニルアルコール 13.0 (けん化度90、重合度2,000) エチルアルコール 7.0 トラネキサム酸メチルアミド塩酸塩 5.0 精製水 残余 (製法)A相、B相をそれぞれ均一に溶解し、A相にB
相を加えて可溶化する。次いでC相をこれに加えた後充
填を行なう。
【0047】このように線溶系プロテアーゼ阻害剤を利
用すれば、表皮内において線溶系プロテアーゼの活性変
化を伴う種々の皮膚疾患や、乾燥・洗浄剤等の刺激によ
って生じる肌荒れ・ニキビなど表皮の増殖性異常を認め
る皮膚状態を安全且つ効果的に改善・防止する皮膚外用
剤等を提供することができる。
【0048】
【発明の効果】以上説明したように、本発明にかかる線
溶系プロテアーゼ阻害剤は、プラスミン、プラスミノー
ゲンアクチベーター等の線溶系プロテアーゼの活性化反
応を表皮細胞または角層のホモジネートの存在下で強く
阻害することができる。
フロントページの続き Fターム(参考) 4C206 AA01 AA02 GA06 GA22 MA01 MA04 NA14 ZA53 ZA89 ZC20

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】下記一般式化1で表されるトラネキサム酸
    のアミド体及びその塩から選ばれる1種または2種以上
    を有効成分とすることを特徴とする線溶系プロテアーゼ
    阻害剤。 【化1】 [式中、R及びRは水素原子、炭素数1〜18の直鎖状
    または分岐状アルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル
    基、ベンジル基及び/または下記一般式化2を示し、R
    及びRはそれぞれ同一でも異なってもよい。] 【化2】 [式中、Xは低級アルキル基、低級アルコキシ基、ヒド
    ロキシ基、アミノ基、またはハロゲン原子を示し、n=0
    〜3である。]
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