JP2002210551A - ダイカスト鋳造用ラドル - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 汲取り部で汲み取った溶湯を可及的速やか
に注ぎ込むことが可能であると共に、注ぎ込む際に溶湯
が乱流を起こすことなく静かに注ぎ込むことができるダ
イカスト鋳造用ラドルを提供すること。 【解決手段】 注ぎ口２を略短筒形状に形成して汲取り
部１の外側ヘ向けて突出すると共に、注ぎ口の内部に、
溶湯の広がりを抑えて流下させる溶湯整流部材４を設け
た。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、ダイカスト鋳造に
おいて、保持炉に蓄えられた溶湯を汲み取ってダイカス
ト機の射出スリーブ内に供給するためのダイカスト鋳造
用ラドルに関し、特に、上部が開放された汲取り部に当
該汲取り部で汲み取った溶湯を注ぐための注ぎ口が形成
され、上記汲取り部を注ぎ口側へ傾動することにより、
汲み取った溶湯を注ぎ口から注ぐようにしたダイカスト
鋳造用ラドルに関するものである。

【０００２】

【技術的背景】ダイカスト鋳造により製品を鋳造する場
合、溶湯をできるだけ速やかに射出スリーブ内に注湯
し、且つ射出スリーブ内に注湯された溶湯をできるだけ
速やかに射出することが望ましい。すなわち、射出スリ
ーブへの注湯開始から射出完了までの時間が長くなる
と、射出スリーブ内での溶湯の温度低下を招き、溶湯温
度が低下すると初期凝固相が多くなって破断チル層の生
成に伴う圧漏れが発生したり湯回り不良等が発生し、ダ
イカスト製品としての品質低下を来たす。

【０００３】

【従来の技術】従来のこの種ラドルでは、汲取り部で汲
み取った溶湯をできるだけ速く射出スリーブ内に供給し
ようとして汲取り部の傾動速度を速くすると、図３にお
ける矢印（ｒ）で示すごとく溶湯が注ぎ口から溢れて飛
び出してしまうことがあるだけでなく、注ぎ込まれた溶
湯が乱流を起こして空気を巻き込んだり余計な凝固相を
生成したりして、鋳造不良を来たすことがあった。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】本発明はこのような従
来の不具合に鑑みてなされたものであり、汲取り部で汲
み取った溶湯を可及的速やかに注ぎ込むことが可能であ
ると共に、注ぎ込む際に溶湯が乱流を起こすことなく静
かに注ぎ込むことができるダイカスト鋳造用ラドルを提
供せんとするものである。

【０００５】

【課題を解決するための手段】斯かる目的を達成する本
発明のダイカスト鋳造用ラドルは、上部が開放された汲
取り部に当該汲取り部で汲み取った溶湯を注ぐための注
ぎ口を設け、上記汲取り部を注ぎ口側へ傾動することに
より、汲み取った溶湯を上記注ぎ口から注ぐようにした
ダイカスト鋳造用ラドルにおいて、前記注ぎ口を前記汲
取り部の外側ヘ向けて突出形成すると共に、該注ぎ口の
上部を被覆して略短筒形状に形成してなる事を特徴とし
たものである。この際、溶湯の乱流を抑制して静かに注
ぐことができるように、前記注ぎ口の内部に、溶湯の広
がりを抑えて流下させる溶湯整流部材を設けることが好
ましい。前記溶湯整流部材としては、汲取り部で汲み取
った溶湯を、注ぎ口から射出スリーブまたは射出スリー
ブの注湯口上に設置された注湯用ホッパーヘ向け、溶湯
の広がりを抑えて流下させるように構成されていればそ
の構造形状に何らの制約もないが、具体的には、前記注
ぎ口の内部を軸方向に沿って仕切るように設置される仕
切り板で構成するか、または前記注ぎ口の内周面に軸方
向に沿って突設された複数本の凸条で形成したものを用
いることが好ましい。

【０００６】

【発明の実施の形態】以下、本発明の具体的な好適実施
例を図面に基づいて詳細に説明するが、本発明は図示実
施例のものに限定されるものではなく、特に汲取り部１
及び注ぎ口２の形状や大きさにはいろいろなものがあ
る。

【０００７】ラドルＡは、基本的に従来と同様に、柄杓
のように上部が開放され保持炉から溶湯を汲み取る汲取
り部１と、汲取り部１で汲み取った溶湯を注ぐための注
ぎ口２と、汲取り部１または注ぎ口２の外側（図示実施
例では注ぎ口２の外側）に設けられるアーム取付け部３
とから構成され、自動給湯装置のラドルアーム５の先端
部に、上記アーム取付け部３を介して取付けられると共
にアーム取付け部３を中心にして汲取り部１及び注ぎ口
２が傾動するように枢着支持され、汲取り部１を注ぎ口
２側へ傾動することにより、汲取り部１で汲み取った溶
湯を注ぎ口２から射出スリーブ内もしくは射出スリーブ
の注湯口上に設置された注湯用ホッパーヘ注ぐように設
備される。

【０００８】注ぎ口２は、汲取り部１の開放口縁から外
側ヘ向けて適宜長さ（例えば、およそ３ｃｍ以上）に突
出形成すると共に、その上部を略トンネル形状に被覆し
て、全体として円筒形状又は略楕円筒形状をした略短筒
形状に形成する。そして、この注ぎ口２の内部に、溶湯
の広がりを抑えて流下させるための溶湯整流部材４を設
ける。

【０００９】溶湯整流部材４としては、注ぎ口２の内部
を通過する溶湯を整流しえる構造、例えば、注ぎ口２の
内部を軸方向に沿って仕切るように設置される仕切り板
４ａで構成するか、または注ぎ口２の内周面に軸方向に
沿って突設された複数本の凸条４ｂとで構成されたもの
を用いる。

【００１０】溶湯整流部材４である仕切り板４ａは、注
ぎ口２の内部を軸方向に沿って仕切ることにより、注ぎ
口２の内部を通過する溶湯の流れを、注ぎ口２内周面と
相俟って渦巻き流を抑制しながら注ぎ口２の軸線方向に
整える役目を果たすものであり、注ぎ口２の内径とほぼ
同じ幅を有する略平板形状又は断面略十字形状に形成さ
れ、注ぎ口２の内部を軸方向に沿って２つ以上に仕切る
ように一体的に設置される。

【００１１】また、図４に示した実施例のものは、上述
した仕切り板４ａに替えて、注ぎ口２の内周面に注ぎ口
の半径よりも短い高さの複数本の凸条４ｂを等間隔をお
いて軸方向に沿って一体的に突設せしめて、溶湯整流部
材４としたものである。尚、上記仕切り板４ａ及び凸条
４ｂは、注ぎ口２の全長にわたって形成しても良いし、
注ぎ口２より短く形成しても良い。

【００１２】更に、注ぎ口２の内周面や溶湯整流部材４
としての仕切り板４ａ及び凸条４ｂの材質によっては、
それらの内周面や外表面に、溶湯の付着や凝固を抑制す
るためのコーティングを施すも任意である。

【００１３】

【発明の効果】本発明に係る請求項１記載のラドルによ
れば、注ぎ口を前記汲取り部の外側ヘ向けて突出形成す
ると共に、該注ぎ口の上部を被覆して略短筒形状に形成
してなるので、汲取り部の傾動速度を速くしても溶湯が
注ぎ口から溢れて飛び出すような惧れがなくなる。従っ
て、汲取り部で汲み取った溶湯を可及的速やかに注ぎ込
むことが可能となる。

【００１４】また、本発明請求項２記載のラドルによれ
ば、前記注ぎ口の内部に、溶湯の広がりを抑えて流下さ
せる溶湯整流部材を設けてなるので、注ぎ口での渦巻き
流の発生が抑制されて注ぎ口から真っ直ぐにほぼ注ぎ口
の軸線に沿って且つ整流されて流下するようになる。従
って、注ぎ口から射出スリーブ内に供給された溶湯が射
出スリーブ内でその内周方向と長さ方向に蛇行するよう
なことがなくなり、静かに注湯されるようになる。その
結果、従来のように溶湯が射出スリーブの注湯口から飛
び出したり空気を巻き込んだりする惧れがなくなり、射
出スリーブ内で発生する初期凝固相の生成を減少させて
健全な製品を鋳造することが出来るようになる。

【００１５】しかも、溶湯が注ぎ口から射出スリーブ内
にその内周方向と長さ方向に蛇行することなく静かに注
湯されるようになるので、射出スリーブ内での波立ちが
少なくなり、その分注湯スピードを早めることが出来、
その結果、鋳造のサイクルタイムを短縮することが出来
ると共に、注湯から射出完了までの時間を短縮できるの
で、射出スリーブ内で発生する初期凝固相の生成を減少
させてより健全な製品を鋳造することが出来るようにな
る。

【図面の簡単な説明】

【図１】 本発明実施の一例を示す側面図。

【図２】 図１の（Ｘ）−（Ｘ）線に沿う拡大断面図。

【図３】 本発明に係るラドルを傾動させた状態を示す
一部切欠側面図。

【図４】 図２に対応した他の実施例を示す拡大断面
図。

【符号の説明】

Ａ：ラドル １：汲取り部 ２：注ぎ口 ３：アーム取付け部 ４：溶湯整流部材 ４ａ：仕切り板 ４ｂ：凸条 ５：ラドルアーム

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 佐藤 俊之 埼玉県川口市西青木５−６−２ (72)発明者 互井 聡 埼玉県東松山市松葉町４−５−４ パイン グローブ106 (72)発明者 山崎 紀雄 埼玉県比企郡小川町東小川３−10−１ (72)発明者 根岸 将司 埼玉県比企郡小川町大字青山1444−12 (72)発明者 安藤 俊博 埼玉県熊谷市村岡298−７

Claims (4)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 上部が開放された汲取り部に当該汲取
   り部で汲み取った溶湯を注ぐための注ぎ口を設け、上記
   汲取り部を注ぎ口側へ傾動することにより溶湯を上記注
   ぎ口から注ぐようにしたダイカスト鋳造用ラドルにおい
   て、前記注ぎ口を前記汲取り部の外側ヘ向けて突出形成
   すると共に、該注ぎ口の上部を被覆して略短筒形状に形
   成してなる事を特徴とするダイカスト鋳造用ラドル。
2. 【請求項２】 前記注ぎ口の内部に、溶湯の広がりを
   抑えて流下させる溶湯整流部材を設けてなる請求項１記
   載のダイカスト鋳造用ラドル。
3. 【請求項３】 前記溶湯整流部材が、前記注ぎ口の内
   部を軸方向に沿って仕切るように設置される仕切り板で
   構成されている請求項２記載のダイカスト鋳造用ラド
   ル。
4. 【請求項４】 前記溶湯整流部材が、前記注ぎ口の内
   周面に軸方向に沿って突設された複数本の凸条で形成さ
   れている請求項２記載のダイカスト鋳造用ラドル。