JP2002203612A - 光化学電池 - Google Patents

光化学電池

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JP2002203612A
JP2002203612A JP2000402385A JP2000402385A JP2002203612A JP 2002203612 A JP2002203612 A JP 2002203612A JP 2000402385 A JP2000402385 A JP 2000402385A JP 2000402385 A JP2000402385 A JP 2000402385A JP 2002203612 A JP2002203612 A JP 2002203612A
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halogen
electrode
electrolytic solution
battery
photochemical
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Masahiko Suzuki
正彦 鈴木
Hideaki Nagura
秀哲 名倉
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FDK Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 金属ハロゲン化物の光分解反応を利用した光
化学電池において放電性能の改善を図る。 【解決手段】 収容ケース8内に、透明電極(正極)2
と、金属ハロゲン化物からなる感光性電極(負極)4
と、電解液6とを備える。電解液6はpH7.0を超え
かつ15.0以下に設定されるか、或いは緩衝溶液の混
合によりpH4.5〜7.0の範囲内に設定される。こ
のようなpHに電解液6が設定されることで、金属ハロ
ゲン化物の光分解により生成されたハロゲンがイオンと
して安定した状態で電解液6中に存在することができ
る。ハロゲンのイオン化が促進され、放電時の電池反応
量が増大する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、金属ハロゲン化物
の感光分解反応を利用して光エネルギーを電気化学エネ
ルギーに変換して蓄積する光化学電池に関し、特に放電
性能に優れた光化学電池に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、石油や天然ガス等の化石燃料の埋
蔵量にも限界が見えはじめ、エネルギー枯渇問題が浮上
している。また、炭酸ガスの排出や熱帯雨林減少などに
よる地球温暖化問題や皮膚ガンの原因となるオゾン層破
壊問題など、地球規模での環境破壊問題が表面化されて
いる。このような状況の中、クリーンで環境に優しく安
全な太陽エネルギーを利用する太陽電池に注目が集まっ
ている。
【0003】太陽電池として代表的なのは、結晶シリコ
ンなどの半導体を利用した半導体型太陽電池である。し
かし、半導体型太陽電池では、結晶シリコン等の超高純
度材料が構成上必要であるため、コスト削減を図るにも
限界があり、一般的な普及は期待できない。現在、この
ような結晶シリコンに代わってアモルファスシリコンな
ど各種化合物半導体を利用した太陽電池が検討されつつ
あるが、未だ満足のゆく特性が得られておらず、また価
格面でも十分なコストダウンが図られておらず、本格的
な普及には至っていない。
【0004】そこで、半導体技術を利用せずに電気化学
的な手法で光エネルギーから電気エネルギーを取り出す
光化学電池が従来より各種提案されている。この電池
は、特開昭58−165279号公報に示されているよ
うに、金属ハロゲン化物の光分解反応を利用したもの
で、正極として透明電極と、負極としてAgIやAgB
rなどのハロゲン化銀からなる感光性電極と、電解液と
を備えている。感光性電極には、透明電極と電解液とを
通じて外部からの光が当たるようになっている。外部の
光が当たると、感光性電極は、金属ハロゲン化物がハロ
ゲンと金属とに分解され、金属は感光性電極側に析出し
てくるとともに、ハロゲンは電解液中にイオンとして吸
収される。一方、放電時には、感光性電極に析出した銀
を負極活物質とし、電解液中のハロゲンイオンを正極活
物質として電池反応を生じさせる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、この光
化学電池にあっては次のような問題があった。すなわ
ち、電池として放電性能が思っていたよりもあまり向上
しなかったのである。その原因の1つとして、光分解に
より生成されたハロゲンに比べ、電解液中に存在するハ
ロゲンイオンがかなり少ないためであることが判明し
た。図4は、臭素Brの電位−pH図の概略である。こ
の図から明らかなように、電解液が酸性溶液である場
合、ハロゲンがイオンとして存在するよりも分子として
存在した方が安定する領域が存在した。つまり、生成さ
れたハロゲンが電解液中にハロゲンイオンとして存在す
るのではなく、ハロゲン分子として存在してしまってい
たのである。このため、電池反応に寄与する要素が少な
くなり、あまり良好な放電特性が得られなかったものと
考えられる。
【0006】図4に示されているように、電解液をpH
4.5〜7.0以下の範囲に設定すれば、ハロゲンが分
子として安定した状態になる領域はないが、この場合、
電解質が減少し、電池反応に寄与する反応要素が低減す
るという別の問題を生じるため、良好な放電特性を得る
ことはできない。
【0007】本発明は、このような事情に鑑みてなされ
たものであって、その目的は、光分解により生成された
ハロゲンを電解液中にスムーズにイオン化させることが
でき、優れた放電特性が得られる光化学電池を提供する
ことにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】このような目的を達成す
るために本発明にかかる第1の光化学電池にあっては、
正極と、光に感応して分解される金属ハロゲン化物から
なる負極と、これら両電極間に介在する電解液とを備
え、前記負極が外部からの光に感応し得るように構成さ
れた光化学電池において、前記電解液のpHが7.0を
超えかつ15.0以下の範囲内に設定されている構成と
する(請求項1)。
【0009】この電池にあっては、電解液がpH7.0
を超えかつpH15.0以下に設定され、アルカリ溶液
であるから、図4の電位−pH図に示されているよう
に、生成されたハロゲンは電解液中にイオンとして安定
した状態で存在でき、放電時の電池反応に多量に寄与さ
れる。これにより、放電時の反応量が増大して大きな電
流が得られて放電性能が大幅に向上する。光エネルギー
から大量の電気化学エネルギーを効率よく取り出すこと
ができる。また、この電池では、電解液として従来の酸
性溶液に代えてアルカリ溶液を使用するようにしたか
ら、電池のケース材料としてアルカリに不溶な金属類、
例えばSUS(ステンレス)やNPS(Niメッキ鋼
板)などを適用することができる。これにより、電池を
非常に安価に製作できるようになり、大幅なコストダウ
ンを図ることができる。
【0010】さらに好ましくは、正極側に酸素還元触媒
を設ける(請求項2)。この酸素還元触媒は、光分解に
より生成されたハロゲン分子と電解液中の水酸化物イオ
ンとが反応して生成される酸素の分解を促進させるもの
で、放電時に酸素をスムーズに分解してイオン化させて
電池反応に寄与させることができる。これにより、放電
反応が促進され、放電性能を向上させることができる。
【0011】特にここで酸素還元触媒としてアクセプタ
型グラファイト層間化合物または多孔質ガラス状カーボ
ンを用いることで、酸素還元効率がよく、より優れた電
池が得られる(請求項3・4)。
【0012】本発明にかかる第2の光化学電池にあって
は、正極と、光に感応して分解される金属ハロゲン化物
からなる負極と、これら両電極間に介在する電解液とを
備え、前記負極が外部からの光に感応し得るように構成
された光化学電池において、前記電解液に緩衝溶液を混
合して前記電解液のpHを4.5〜7.0の範囲内に調
製した構成とする(請求項5)。
【0013】この電池にあっては、緩衝溶液の混合によ
り電解液のpHが4.5〜7.0の範囲内に調製されて
いるため、前述した電位−pH図から明らかなようにハ
ロゲンもイオンとして安定した状態で存在できるからハ
ロゲンのイオン化を促進させることができるとともに、
電解質の減少もあまり招かずに済むため、放電時の反応
要素を多量に確保することができ、放電性能の向上を図
ることができる。
【0014】さらに好ましくは、この電池の電解液にハ
ロゲン錯化剤またはポリハロゲン化物を構成する物質の
陽イオン種を2種以上含む(請求項6)。これらの易溶
性の高いハロゲン錯化剤またはポリハロゲン化物を構成
する物質を添加することで、電解液中におけるハロゲン
のイオン化を促進することができる。なお、2種以上含
むとしたのは、より多くのハロゲンをイオン化させるた
めである。
【0015】さらに好ましくは、この電池の正極側にハ
ロゲンを捕捉するカーボン電極を設ける(請求項7)。
このカーボン電極は、光分解により生成されたハロゲン
を捕捉して電池反応が促進されて、さらなる性能改善を
図ることができる。特にこのカーボン電極をグラファイ
ト残留化合物または多孔質ガラス状カーボンで構成する
ことで、より良好な特性が得られる(請求項8・9)。
【0016】
【発明の実施の形態】本発明に係る第1の光化学電池の
実施の形態について説明する。図1は、本発明にかかる
第1の光化学電池の一実施形態を示したものである。こ
の電池は、正極として透明電極2と、負極として金属ハ
ロゲン化物からなる感光性電極4と、これら両電極2,
4間に介在する電解液6とを備えている。感光性電極4
は、板状に成形されて、扁平皿状に成形され上端が開口
された浅底の電池ケース8の底部に収装されている。こ
の電池ケース8の周壁部にはその内周に沿ってリング状
のガスケット10が装着され、感光性電極4を上から押
さえ込んでいる。透明電極2は、ガスケット10の内周
上部にはめ込まれてこれを塞ぐようにして水平に装着さ
れている。透明電極2と感光性電極4との間には密閉空
間が画成され、この密閉空間に電解液6が充填されてい
る。透明電極2および感光性電極4には、ガスケット1
0若しくは電池ケース8の周壁部を貫いて電池外部へと
延出する正極端子14と負極端子16とが接続されてい
る。ガスケット10は、プラスチックやゴムなどの絶縁
材料で形成されている。
【0017】感光性電極4は、光に感応して分解反応を
生じる金属ハロゲン化物から構成される。ここで使用さ
れる金属ハロゲン化物としては、例えば塩化銀(AgC
l)、臭化銀(AgBr)、ヨウ化銀(AgI)などの
ハロゲン化銀をはじめ、臭化鉛(PbBr)等があ
る。感光性電極4は、外部から光が当てられると、金属
とハロゲンに分解される。例えば、臭化銀(AgBr)
であれば銀(Ag)と臭素(1/2Br)に、またヨウ
化銀(AgI)であれば銀(Ag)とヨウ素(1/2
)に、また臭化鉛(PbBr)であれば鉛(P
b)と臭素(Br)といったように分解される。感光
性電極4には、このような分解反応が促進されるように
するために、例えばCuBr等の銅ハロゲン化物が増感
剤として添加される。
【0018】透明電極2は、ガラスやアクリルなどで形
成された透明基板の表面に電池反応に関与しない透明な
導電性物質、例えば白金または、SnをドープしたIn
あるいはInをドープしたSnO上に白金を少
量添加したものなどを蒸着や塗布等により薄層状に形成
したものである。
【0019】透明電極2の電解液6と接する面には、酸
素還元触媒12が薄層状に設けられている。この酸素還
元触媒12は、光分解により生成されたハロゲンと電解
液6中の水酸化物イオンとが反応して生成される酸素を
還元するものである。この酸素還元触媒は、透明電極2
の表面に蒸着や塗布等によって、外部からの光が当該酸
素還元触媒層12を透過するように厚さ1〜50μmほ
どに形成される。
【0020】この酸素還元触媒12の構成材としては、
空気電池等で一般的に用いられている二酸化マンガン
(MnO)と活性炭からなる触媒をはじめ、この他に
アクセプタ型グラファイト層間化合物(CBr)や多
孔質ガラス状カーボンなどが使用される。ここでグラフ
ァイト層間化合物とは、グラファイトの層間にハロゲン
をインターカレーションしたもののことである。一方、
多孔質ガラス状カーボンは、普通のカーボンとガラスの
各性質をいくつか併せ持つガラス状カーボンと呼ばれる
素材で形成された多孔性カーボンで、並外れた空隙率
と、優れた耐熱性および高剛性を兼ね備えている。この
多孔質ガラス状カーボンは、発泡状炭素とも呼ばれ、例
えばERG(Energy Research and Generation,Inc)社の
RVC(Reticulated Vitreous Carbon)という商品を使
用することができる。酸素還元触媒12の構成材として
は、これらアクセプタ型グラファイト層間化合物または
多孔質ガラス状カーボンを適用するのが好ましい。
【0021】電解液6は、例えば臭化カリウムと水酸化
カリウムとを含む溶液など、感光性電極4を構成する金
属ハロゲン化物のハロゲンと同種のハロゲンとハロゲン
化カリウムを含む水溶液などで構成される。電解液6の
pHは7.0を超えかつ15.0以下に設定され、溶液
はアルカリ性になっている。これは、感光性電極4の光
分解反応により生成されたハロゲンを電解液6中にスム
ーズにイオン化させるためであり、電解液6がアルカリ
性であると、ハロゲンはイオンの状態が最も安定化して
おり、ハロゲンのイオン化が活発になり促進されるから
である。特に電解液6がpH13.0〜15.0の範囲
内に設定されれば、ハロゲンが大量に生成されてもこれ
を十分にイオン化させて電解液6中に安定した状態で存
在させておくことができる。
【0022】この電池の充電反応について説明する。外
部からの光が感光性電極4に当てられ、感光性電極4の
金属ハロゲン化物が光分解すると、この分解により金属
(例えば銀や鉛など)とハロゲン(臭素やヨウ素など)
が生成される。このうち金属は感光性電極4内に析出さ
れる。一方、ハロゲンは、電解液6がpH7.0を超え
かつpH15.0以下に設定されているから、図4の電
池−pH図に示されているように、イオン(BrO
やBrなど)として安定した状態で存在することがで
き、このため電解液6中にスムーズにイオン化される。
このイオン化によって電解液6中の水酸化物イオンが分
解されて酸素が発生する。
【0023】放電時には、このようにして生成された感
光性電極4の金属を負極活物質とし、生成された酸素を
正極活物質として電池反応を起こす。本実施形態では、
透明電極2に酸素還元触媒12が設けられているから、
光充電反応により生成された酸素が酸素還元触媒12を
介してスムーズに還元され、非常に効率よく放電反応を
生じさせることができる。
【0024】以上、この光化学電池にあっては、電解液
6がpH7.0を超えかつpH15.0以下に設定され
ていることで、光分解により生成されたハロゲンがイオ
ンとして安定した状態で存在することができ、スムーズ
にイオン化される。放電反応に寄与するハロゲンイオン
の数が増大し、電気エネルギーを効率よく取り出すこと
ができる。これによって放電性能の向上を図ることがで
きる。さらに透明電極2に酸素還元触媒12を設けたこ
とで、放電時に酸素をスムーズに還元することができ、
さらに性能向上を図ることができる。また、この電池で
は、電解液6がアルカリ性であるために、電池のケース
材料に金属材を使用することができ、大幅なコストダウ
ンを図ることができる。
【0025】この電池について放電特性を調べる試験を
行った。この試験では、電池として表1に示すようなA
〜Eの5種類の電池を用意した。各電池A〜Eは、図1
に示すような構造を有する電池であり、金属ハロゲン化
物PbBrに増感剤として銅ハロゲン化物CuBrが
添加された感光性電極と、臭化カリウム(KBr)と水
酸化カリウム(KOH)との混合溶液からなる電解液
と、透明電極とを備える。ただし、A〜Cの電池は、電
解液のpHがそれぞれ約13.0,約14.0および約
15.0に調製されている。また、DおよびEの電池
は、電解液がpH14.0に調製されるとともに、酸素
還元触媒として二酸化マンガンと活性炭と、アクセプタ
型グラファイト層間化合物(CBr)とがそれぞれ透
明電極に厚さ約20μmの薄層として形成されている。
【0026】
【表1】
【0027】このように製作された電池に対してランプ
から光を照射しながら、電流−電圧特性を調べた。ここ
で、ランプの光源の強度・明るさは、100mW/cm
に設定した。これは、AM1.5と呼ばれる太陽光を想
定した強さで快晴日(外気温25℃)の南中時に太陽電池
にほぼ垂直に太陽光が入射した時の強度・明るさに相当
する。この試験の結果を図2に示す。
【0028】この試験の結果から、電解液がアルカリ溶
液である場合には、約0.67[V]の開放電圧が得ら
れた。短絡電流については、酸素還元触媒を備えていな
いものの方が酸素還元触媒を備えたものの方よりも短絡
電流密度が増大し、特性がさらに向上することが確認さ
れた。酸素還元触媒としては、二酸化マンガンと活性炭
からなる触媒よりも、アクセプタ型グラファイト層間化
合物の方が、より優れた特性が得られることが確認され
た。
【0029】次に本発明にかかる第2の光化学電池の実
施の形態について説明する。この電池は、図1に示す前
述した第1の光化学電池の実施形態とほぼ同様の構造を
有する。ただし、緩衝溶液の混合により電解液6がp
H4.5〜7.0の範囲内に設定されている点、並びに
透明電極2に酸素還元触媒12の代わりにカーボン電
極18が設けられた点で前記光化学電池と構成上の相違
がある。感光性電極4および透明電極2については、第
1の光化学電池の前記実施形態と同じ構成である。
【0030】カーボン電極18は、感光性電極4から発
生したハロゲンを捕捉する機能を有するカーボン系物質
で構成される。カーボン電極18は、透明電極の電解液
と接する面に外部からの光が透過するように数〜数十μ
mの厚さで薄層状に形成される。カーボン電極18に使
用するカーボンとしては、グラファイト残留化合物(C
Br)や多孔質ガラス状カーボンなどが良い。なお、
このカーボン電極については、本発明においては必ずし
も設けられる必要はない。
【0031】電解液6は、感光性電極4を構成する金属
ハロゲン化物のハロゲンと同種のハロゲンおよびハロゲ
ン化カリウムを含む溶液、例えば臭化カリウム水溶液
(KOH)などからなり、これに緩衝溶液が混合され、
pH4.5〜7.0以下に設定されたものである。緩衝
溶液の混合により電解液6のpHは安定化され、4.5
〜7.0の範囲内に維持される。生成されたハロゲンを
イオンとして安定した状態で存在させることができる。
【0032】ここで使用される緩衝溶液としては、具体
的にNaCとNaOHとの混合溶液の他に、
表2に示すような組合せのものがある。
【0033】
【表2】
【0034】この電解液6には、さらにハロゲン錯化剤
またはポリハロゲン化物を構成する物質の陽イオン種が
2種類以上含まれているのが好ましい。ハロゲン錯化剤
は、亜鉛−臭素電池を中心に使用されているものであ
る。生成されたハロゲンをハロゲン錯化合物として電解
液6中に蓄積する機能を有する。このハロゲン錯化剤と
しては、N−メチルN−エチルモルホリニウムプロミド
やN−メチルN−エチルビロジニウムプロミドなどがあ
る。
【0035】一方、ポリハロゲン化物は、ハロゲン化物
にハロゲンまたはハロゲン化ハロゲンが付加したような
組成をもつ化合物のことであり、アルカリ金属、アンモ
ニウムおよび置換アンモニウムの化合物が一般によく知
られている。ポリハロゲン化物は、ハロゲン錯化物と同
様に、生成されたハロゲンのイオン化を促進させる機能
を有する。主なポリハロゲン化物を次の表3に示す。
【0036】
【表3】
【0037】電解液6には、これらハロゲン錯化剤およ
びポリハロゲン化物の双方が添加されていてもかまわな
い。これらハロゲン錯化剤またはポリハロゲン化物を構
成する物質の陽イオン種を2種以上含むことで、ハロゲ
ン分子のイオン化を促進し、放電時の反応に寄与するイ
オンを増やし、放電時の放電性能を向上させることがで
きる。
【0038】この第2の光化学電池の充電反応について
説明する。外部からの光が感光性電極4に当てられ、感
光性電極4の金属ハロゲン化物が光分解されると、金属
(例えば銀や鉛など)とハロゲン(臭素やヨウ素など)
が生成され、このうち金属が感光性電極4内に析出して
くる。一方、ハロゲンは、緩衝溶液の混合により電解液
6のpHが4.5〜7.0の範囲内に調製されているか
ら、ハロゲン分子(Br)としてではなくハロゲンイ
オン(Brの他にBr やBr など)として電
解液6中に安定した状態で存在することができる。これ
により、ハロゲンのイオン化が促進され、電解液6中に
多数のハロゲンイオンを存在させることができる。電池
反応に寄与するハロゲンイオンが多数存在することにな
る。
【0039】放電時には、Br やBr などのハ
ロゲン分子を取り込んだハロゲンイオンが正極活物質と
なり、Br +2e→3BrやBr 4e→5B
という形で還元され、電池反応が生じる。この反応
に寄与するハロゲンイオンは電解液6中に多数存在して
いるから、大きな電流を取り出すことができる。
【0040】さらにここで電解液6にハロゲン錯化剤ま
たはポリハロゲン化物を構成する物質が添加されていれ
ば、ハロゲンのイオン化がさらに促進され、より大きな
電流を取り出すことができる。また、透明電極(正極)
2にカーボン電極18が設けられれば、生成されたハロ
ゲン分子を捕捉してより効率よく電解液6中にイオン化
させることができ、より一層の放電性能の向上を図るこ
とができる。
【0041】この電池について放電性能を調べる試験を
行った。この試験では、表4に示すようにA〜Gの7種
類の電池を用意した。各電池は、図1に示すような構造
を有する電池に製作され、金属ハロゲン化物AgBrと
増感剤として銅ハロゲン化物CuBrとからなる感光性
電極と、電解液と、透明電極とを備える。このうちAお
よびBの電池は従来品であり、これらの電池の電解液
は、臭化カリウム(KBr)と臭化水素(HBr)との
混合溶液からなり、それぞれpH2.0、pH3.0に
調製されている。また、C〜Gの電池は本発明品であ
り、電解液として、臭化カリウム(KBr)に緩衝溶液
としてNaCとNaOHとを1:1の割合で
混合し、pHを5.8に調製した。さらにDの電池に
は、ポリハロゲン化物としてCsBrが電解液に0.
1mol添加され、またE〜Gの電池には、ハロゲン錯
化剤としてN−メチルN−エチルモルホリニウムプロミ
ドが電解液に0.1mol添加されている。さらにFお
よびGの電池には、それぞれカーボン電極としてグラフ
ァイト残留化合物または多孔質ガラス状カーボンが約5
μmの厚さで薄層状に透明電極に蒸着形成されている。
【0042】
【表4】
【0043】このようにして製作された各電池に対し
て、ランプから明るさ・強度100mW/cmで光を
照射しながら、各電池の電圧・電流特性を調べた。この
試験の結果を図3に示す。
【0044】この試験の結果から、約0.97[V]の
開放電圧が得られた。また、短絡電流については、電解
液のpHが2.0または3.0に調製された従来品に比
べて、緩衝溶液によりpH5.8に調製された電解液を
有する本発明品の方が大きく、より優れた特性が得られ
ることが確認された。また、電解液にハロゲン錯化剤ま
たはポリハロゲン化物を添加した方が、これらを添加し
ない場合よりも優れた特性が得られることが確認され
た。さらに透明電極にカーボン電極を設ければ、より一
層優れた特性が得られることが確認された。
【0045】
【発明の効果】本発明にかかる第1の光化学電池によれ
ば、電解液のpHを7.0〜15.0の範囲内に設定し
たことで、従来に比べて高負荷性能が向上し、単位時間
当たりに取り出せる電流量が増大し、電子機器・電気機
器でも十分に使用することができるとともに、長寿命化
も図ることができる。また、この電池では、電解液が中
性またはアルカリ性だから電池の外装ケースとしてアル
カリ性溶液に溶け難いSUSやNPSで形成された金属
ケースを用いることができ、加工性の向上や材料費の抑
制が可能で、全体的に製造コストの削減を図ることがで
きる(請求項1)。
【0046】さらにこの電池において、正極側に酸素還
元触媒を設けることによって、ハロゲン分子と水酸化物
イオンとの反応により生成された酸素を還元して、これ
により、さらなる高負荷性能の改善を図ることができる
(請求項2)。
【0047】特に前記酸素還元触媒をアクセプタ型グラ
ファイト層間化合物または多孔質ガラス状カーボンで構
成したことで、さらなる放電性能の改善を図ることがで
きる(請求項3・4)。
【0048】また、本発明に係る第2の光化学電池によ
れば、緩衝溶液の混合により電解液のpHを4.5〜
7.0の範囲内に調製することで、ハロゲンをイオンと
して安定した状態で存在させることができるから、ハロ
ゲンのイオン化が促進され、放電時の反応要素を多量に
確保することができる。放電性能の向上を図ることがで
きる(請求項5)。
【0049】さらに好ましくは、この電池の電解液にハ
ロゲン錯化剤またはポリハロゲン化物を構成する物質の
陽イオン種を2種以上含む(請求項6)。これらの易溶
性のハロゲン錯化剤またはポリハロゲン化物を構成する
物質を添加することで、より多くのハロゲンをイオン化
させて電解液中に取り込むことができる。さらなる放電
性能の向上を図ることができる。
【0050】さらに好ましくは、この電池の正極側にハ
ロゲンを捕捉するカーボン電極を設けることで、光分解
により生成されたハロゲンを捕捉して電池反応が促進さ
れて、さらなる性能改善を図ることができる(請求項
7)。特にこのカーボン電極をグラファイト残留化合物
または多孔質ガラス状カーボンで構成することで、より
良好な特性が得られる(請求項8・9)。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る第1の光化学電池の一実施形態の
内部構造を示した断面図である。
【図2】本発明に係る第1の光化学電池の一実施形態の
電流−電圧特性を示したグラフである。
【図3】本発明に係る第2の光化学電池の一実施形態の
電流−電圧特性を示したグラフである。
【図4】臭素Brの電位とpHの関係を概略的に示した
電位−pH概略図である。
【符号の説明】
2 透明電極 4 感光性電極 6 電解液 8 電池ケース 10 ガスケット 12 酸素還元触媒 14 正極端子 16 負極端子 18 カーボン電極

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 光により分解される金属ハロゲン化物か
    らなる負極と、正極と、これら両電極間に介在する電解
    液とを備え、前記負極が外部からの光に感応し得るよう
    に構成された光化学電池において、 前記電解液のpHが7.0を超えかつ15.0以下であ
    ることを特徴とする光化学電池。
  2. 【請求項2】 前記正極側に酸素還元触媒を設けたこと
    を特徴とする請求項1に記載の光化学電池。
  3. 【請求項3】 前記酸素還元触媒がアクセプタ型グラフ
    ァイト層間化合物からなることを特徴とする請求項2に
    記載の光化学電池。
  4. 【請求項4】 前記酸素還元触媒が多孔質ガラス状カー
    ボンからなることを特徴とする請求項2に記載の光化学
    電池。
  5. 【請求項5】 光により分解される金属ハロゲン化物か
    らなる負極と、正極と、これら両電極間に介在する電解
    液とを備え、前記負極が外部からの光に感応し得るよう
    に構成された光化学電池において、 前記電解液が緩衝溶液の混合によりpH4.5〜7.0
    の範囲内に設定されていることを特徴とする光化学電
    池。
  6. 【請求項6】 前記電解液に対し、ハロゲン錯化剤また
    はポリハロゲン化物を構成する物質の陽イオン種を2種
    以上添加したことを特徴とする請求項5に記載の光化学
    電池。
  7. 【請求項7】 前記正極側にハロゲンを捕捉するカーボ
    ン電極を設けたことを特徴とする請求項5または6に記
    載の光化学電池。
  8. 【請求項8】 前記カーボン電極がグラファイト残留化
    合物からなることを特徴とする請求項7に記載の光化学
    電池。
  9. 【請求項9】 前記カーボン電極が多孔質ガラス状カー
    ボンからなることを特徴とする請求項7に記載の光化学
    電池。
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