JP2002201819A - 制震構造物 - Google Patents

制震構造物

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 新設、既設に拘らず、構造物内を小さく仕切
る必要もなく、しかも、通路空間に制限されることなし
に、地震、風、交通振動等による横方向の柱の変形振動
を可及的速やかに減衰させて、これにより構造物の制震
を行うようにすると共に、新設の構造物では、必要以上
の大きな強度をもった天井梁及び床梁を用いなくても、
また、既存の構造物では、天井梁及び床梁の取り替えな
しに、大きな回転モーメントに対する耐力をもった制震
構造物を提供すること。 【解決手段】 建物1は、建物1の鉛直荷重を支えるよ
うに、鉛直方向Vに伸びて配された複数の四角の柱2
と、各角柱2を橋絡して各角柱2間に水平方向Hに伸び
て配された複数の梁3と、建物1の所与の階の所与の柱
2、例えば各階における各角柱2の対向する側面4及び
5に並置されている一対の制震手段6と、一端部7が天
井梁3側に他端部8が地盤9の基礎10に夫々固定され
ていると共に、各制震手段6を間にして鉛直方向Vに立
設された二対の補強フレーム手段11とを具備してい
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、建築物等の構造物
の鉛直荷重を支える柱の地震、風、交通振動等による横
(水平)方向の変形振動を可及的速やかに減衰させて、
これにより構造物の制震を行うようにした制震構造物に
関する。
【0002】
【発明が解決しようとする課題】建築物としての事業用
又は事務所用のビル、集合住宅、戸建住宅、橋脚、橋台
等の構造物の地震、風、交通振動等に起因する横(水
平)方向振動を可及的速やかに減衰させるために、鉛ダ
ンパ、粘性ダンパ、鋼棒ダンパ等の振動減衰装置が用い
られるが、斯かる振動減衰装置は、多くの場合、構造物
と地盤との間に配置されるので、既設の構造物に対して
は適用し難いという問題を有している。
【0003】一方、構造物の壁内に上記のような減衰装
置を設置した所謂免震壁は、既設の構造物に対しても容
易に適用できるのであるが、斯かる免震壁では、新設、
既設に拘らず、適用に当たって制震効果を得るに必要な
個数の壁が存在しない場合には、構造物内に新たな壁を
設置して構造物内を小さく仕切る必要が生じ、また、構
造物内の室と室とを結ぶ通路とすべき場所にはその設置
ができず、この点において設置の自由度が制限されるこ
とになる。
【0004】そこで、箱体内に抵抗板を配置すると共
に、箱体と抵抗板との間の隙間に粘性体を充填し、箱体
に対する抵抗板の相対的変位で粘性体を剪断して、この
粘性体の剪断によって相対的変位エネルギを吸収するよ
うにした振動減衰装置を柱の側面に並置すると上記の問
題を解決し得るのであるが、斯かる振動減衰装置では、
通常、抵抗板を天井梁に、箱体を床梁に夫々固定する結
果、上記の相対的変位において大きな回転モーメントが
箱体及び抵抗板を介して天井梁及び床梁に加わることと
なる。
【0005】しかしながら、既存の構造物では、天井梁
及び床梁自体に斯かる大きな回転モーメントに対する耐
力を期待し難く、この耐力を得るための天井梁及び床梁
の取り替えは大幅な改修工事となり、また、新設の構造
物では、大きな強度をもった天井梁及び床梁とする必要
があり、いずれにしても極めて多くの経費と時間とを必
要とする。
【0006】本発明は、前記諸点に鑑みてなされたもの
であって、その目的とするところは、新設、既設に拘ら
ず、構造物内を小さく仕切る必要もなく、しかも、通路
空間に制限されることなしに、地震、風、交通振動等に
よる横方向の柱の変形振動を可及的速やかに減衰させ
て、これにより構造物の制震を行うようにすると共に、
新設の構造物では、必要以上の大きな強度をもった天井
梁及び床梁を用いなくても、また、既存の構造物では、
天井梁及び床梁の取り替えなしに、大きな回転モーメン
トに対する耐力をもった制震構造物を提供することにあ
る。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明の第一の態様の制
震構造物は、構造物の鉛直荷重を支える柱と、この柱の
側面に並置されていると共に、天井梁側と床梁側との間
に介在されて、柱の水平方向の振動を減衰させる制震手
段と、一端部が天井梁側に他端部が地盤の基礎に夫々固
定されていると共に、制震手段を間にして鉛直方向に立
設された一対の補強フレーム手段とを具備しており、こ
こで、制震手段は、上部に開口を有すると共に下部に底
壁板を有して、当該底壁板の部位で床梁側に連結された
箱体と、この箱体の開口を通って箱体内外に伸張してお
り、箱体外に位置した部位で天井梁側に連結された抵抗
板と、箱体内において当該箱体と抵抗板との間の隙間に
充填された粘性体とを具備している。
【0008】第一の態様の制震構造物によれば、制震手
段が構造物の鉛直荷重を支える柱の側面に並置されてい
るので、地震、風、交通振動等による水平方向(横方
向)の柱の変形振動を可及的速やかに減衰させて、これ
により構造物の制震を行うことができ、しかも、制震手
段のために構造物内を小さく仕切る必要もなく、また、
通路空間に制限されることなしに制震手段を設置でき
て、好ましく制震化された構造物を提供できる上に、制
震手段の制震動作に伴って生じる大きな回転モーメント
を一対の補強フレーム手段で受容できるので、新設の構
造物では、必要以上の大きな強度をもった天井梁及び床
梁を用いなくても、また、既存の構造物では、天井梁及
び床梁の取り替えなしに、少ない経費と時間とで更に好
ましく制震化された構造物を提供できる。
【0009】また、第一の態様の制震構造物によれば、
制震手段が、箱体と、この箱体の開口を通って箱体内外
に伸張した抵抗板と、箱体と抵抗板との間の隙間に充填
された粘性体とを具備してなるために、柱の側面からの
制震手段の出っ張りを極めて小さくでき、制震手段を設
けても構造物の周りに所望の大きさの空間を維持でき
る。
【0010】本発明における各補強フレーム手段は、天
井梁側及び床梁側に固定された補強フレームを具備して
いてもよく、また本発明では、天井梁及び床梁の夫々
は、底壁板及び抵抗板の夫々が連結された水平フランジ
部を有したH形鋼を具備し、水平フランジ部には取付け
板が取付けられており、補強フレーム手段は、取付け板
に固定されていてもよく、更には、各補強フレーム手段
は、角部材を具備していてもよい。
【0011】本発明において、基礎とこの基礎上の床梁
との間の柱の部位に制震手段が配置される場合には、基
礎を床梁側とし、基礎上の床梁を天井梁側とみなして、
制震手段は、一方では基礎側に、他方では床梁側に夫々
連結されるようになっており、斯かる連結態様も本発明
は含むのである。
【0012】次に本発明を、図面に示す好ましい具体例
に基づいて更に詳細に説明するが、本発明は、これら具
体例に何ら限定されないのである。
【0013】
【発明の実施の形態】図1から図4において、本例の制
震構造物としての高層の建物1は、建物1の鉛直荷重を
支えるように、鉛直方向Vに伸びて配された複数の四角
の柱(角柱)2と、各角柱2を橋絡して各角柱2間に水
平方向Hに伸びて配された複数の梁3と、建物1の所与
の階の所与の柱2、例えば各階における各角柱2の対向
する側面4及び5に並置されている一対の制震手段6
と、一端部7が天井梁3側に他端部8が地盤9の基礎1
0に夫々固定されていると共に、各制震手段6を間にし
て鉛直方向Vに立設された二対の補強フレーム手段11
とを具備している。
【0014】角柱2は、鉄筋又は鉄骨入りのコンクリー
ト製であって、梁3の夫々の一端部を支持している。
【0015】天井梁3及び床梁3の夫々は、水平フラン
ジ部15を有したH形鋼を具備しており、H形鋼からな
る各梁3の一端部において、制震手段6が配される水平
フランジ部15には、ボルト16により取付け板17及
び18がしっかりと取付けられている。
【0016】側面4に配された制震手段6と側面5に配
された制震手段6とは同様に構成されているので、以
下、側面4に配された制震手段6について説明する。
【0017】制震手段6は、上部に開口21を有すると
共に下部に底壁板22を有して、底壁板22で床側の梁
3に連結された箱体24と、箱体24の開口21を通っ
て箱体24内外に伸張しており、箱体24外に位置した
部位で天井側の梁3に連結された二枚の抵抗板26と、
箱体24と当該箱体24内に位置した抵抗板26の部位
との間の隙間及び箱体24内に位置した抵抗板26相互
の間の隙間に充填された粘性体27とを具備している。
【0018】箱体24は、底壁板22に加えて、底壁板
22に溶接等により固着された一対の幅広側壁板31及
び32と、横方向において互いに対向して配されている
と共に、底壁板22並びに幅広側壁板31及び32に溶
接等により固着された一対の狭幅側壁板33及び34
と、下縁が底壁板22に溶接等により固着されていると
共に二枚の抵抗板26間に、当該二枚の抵抗板26と隙
間をもって配された中間板35とを有しており、一方の
幅広側壁板31は、角柱2の側面4に対面して配されて
おり、中間板35と二枚の抵抗板26との間の隙間にも
粘性体27が充填されている。広い開口21を得るべ
く、幅広側壁板31及び32の各上縁には、当該幅広側
壁板31及び32並びに一対の狭幅側壁板33及び34
に溶接等により固着された断面L字状の開口形成部材3
6が設けられている。底壁板22と取付け板17との間
には、当該底壁板22及び取付け板17の夫々に溶接等
により固着された連結板37が設けられて、斯かる連結
板37及び取付け板17を介して箱体24は、底壁板2
2で床側の梁3に連結されている。
【0019】スペーサ38により互いに離間された抵抗
板26の夫々は、幅広側壁板31及び32並びに中間板
35と平行になるように配されており、その上端で溶接
等により取付け板17に固着されて、斯かる取付け板1
7を介して各抵抗板26は、箱体24外に位置した部位
で天井側の梁3に連結されている。
【0020】幅広側壁板31及び32並びに中間板35
と二枚の抵抗板26との間には、適宜なスペーサが摺動
自在に介在されており、斯かるスペーサにより幅広側壁
板31及び32並びに中間板35と二枚の抵抗板26と
の間の狭幅の隙間が確保されている。
【0021】側面4に配された一対の補強フレーム手段
11と側面5に配された一対の補強フレーム手段11
は、互いに同様に構成されており、以下、側面4に配さ
れた一対の補強フレーム手段11について説明すると、
側面4に配された補強フレーム手段11の夫々は、制震
手段6を間にして、天井梁3側及び床梁3側の取付け板
17の夫々にボルト41により固定された補強フレーム
42と、上下の水平フランジ部15の間で、床梁3側及
び天井梁3側の取付け板17の夫々にボルト41により
固定された補強フレーム43と、最下位の階の床梁3側
(地盤9側からは天井梁3側)の取付け板17及び基礎
10にボルト41及びアンカーボルト44により固定さ
れた補強フレーム45とを具備しており、本例では補強
フレーム42、43及び45の夫々は角部材からなって
いる。
【0022】以上の建物1によれば、地震、風、交通振
動等により天井側の梁3が床側の梁3に対して水平方向
(横方向)Hに変位して角柱2が横方向Hに撓み変形す
ると、箱体24と抵抗板26との間に相対変位が生じる
結果、この相対変位により粘性体27が剪断され、粘性
体27の剪断によって天井側の梁3の床側の梁3に対す
る水平方向Hの相対的変位エネルギが吸収され、而し
て、地震、風、交通振動等に起因する建物1の水平方向
Hの振動が可及的速やかに減衰され、これにより角柱2
の側面4及び5に並置された制震手段6でもって建物1
の制震を行うことができ、しかも、制震手段6のために
建物1内を小さく仕切る必要もなく、また、通路空間に
制限されることなしに制震手段6を設置できる。
【0023】また建物1では、地震等の振動に起因する
柱2の変形で、天井梁3側と床梁3側とに方向Rの回転
モーメントが生じても、この回転モーメントを補強フレ
ーム手段11で確実に受容できる結果、回転モーメント
による天井梁3及び床梁3の方向Rの揺動を回避でき、
制震手段6の制震機能を所望に発現できる。
【0024】
【発明の効果】本発明によれば、新設、既設に拘らず、
構造物内を小さく仕切る必要もなく、しかも、通路空間
に制限されることなしに、地震、風、交通振動等による
横方向の柱の変形振動を可及的速やかに減衰させて、こ
れにより構造物の制震を行うようにすると共に、新設の
構造物では、必要以上の大きな強度をもった天井梁及び
床梁を用いなくても、また、既存の構造物では、天井梁
及び床梁の取り替えなしに、大きな回転モーメントに対
する耐力をもった制震構造物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にしたがう制震構造物の一具体例の全体
概略図である。
【図2】図1に示す例の柱周りの拡大詳細説明図であ
る。
【図3】図2に示すIII−III線矢視断面図であ
る。
【図4】図3に示すIV−IV線矢視断面図である。
【符号の説明】
1 建物 2 柱 3 梁 4、5 側面 6 制震手段 7 一端部 8 他端部 9 地盤 10 基礎 11 補強フレーム手段
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 下田 郁夫 東京都港区芝大門1丁目3番2号 オイレ ス工業株式会社内 (72)発明者 鈴木 清春 東京都港区芝大門1丁目3番2号 オイレ ス工業株式会社内 (72)発明者 佐藤 新治 栃木県足利市羽刈町1000 オイレス工業株 式会社足利事業場内 Fターム(参考) 2E001 DG01 FA24 HB02 HE09 KA01 LA15 3J048 AA06 AC05 BD08 DA03 EA38

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 構造物の鉛直荷重を支える柱と、この柱
    の側面に並置されていると共に、天井梁側と床梁側との
    間に介在されて、柱の水平方向の振動を減衰させる制震
    手段と、一端部が天井梁側に他端部が地盤の基礎に夫々
    固定されていると共に、制震手段を間にして鉛直方向に
    立設された一対の補強フレーム手段とを具備しており、
    制震手段は、上部に開口を有すると共に下部に底壁板を
    有して、当該底壁板の部位で床梁側に連結された箱体
    と、この箱体の開口を通って箱体内外に伸張しており、
    箱体外に位置した部位で天井梁側に連結された抵抗板
    と、箱体内において当該箱体と抵抗板との間の隙間に充
    填された粘性体とを具備している制震構造物。
  2. 【請求項2】 各補強フレーム手段は、天井梁側及び床
    梁側に固定された補強フレームを具備している請求項1
    に記載の制震構造物。
  3. 【請求項3】 天井梁及び床梁の夫々は、底壁板及び抵
    抗板の夫々が連結された水平フランジ部を有したH形鋼
    を具備しており、水平フランジ部には取付け板が取付け
    られており、補強フレーム手段は、取付け板に固定され
    ている請求項1又は2に記載の制震構造物。
  4. 【請求項4】 各補強フレーム手段は角部材を具備して
    いる請求項1から3のいずれか一項に記載の制震構造
    物。
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