JP2002201228A - メタクリル系共重合体およびその製造方法、並びにプラスチック光ファイバ、プラスチック光ファイバケーブル及びプラグ付きプラスチック光ファイバケーブル - Google Patents

メタクリル系共重合体およびその製造方法、並びにプラスチック光ファイバ、プラスチック光ファイバケーブル及びプラグ付きプラスチック光ファイバケーブル

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JP2002201228A
JP2002201228A JP2001001299A JP2001001299A JP2002201228A JP 2002201228 A JP2002201228 A JP 2002201228A JP 2001001299 A JP2001001299 A JP 2001001299A JP 2001001299 A JP2001001299 A JP 2001001299A JP 2002201228 A JP2002201228 A JP 2002201228A
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optical fiber
plastic optical
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polymerization
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Hajime Okutsu
肇 奥津
Hirotoshi Mizota
浩敏 溝田
Tomonari Murakami
智成 村上
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Mitsubishi Rayon Co Ltd
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Mitsubishi Rayon Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 プラスチック光ファイバの芯材として好適な
屈折率が高く且つ光学特性に優れるメタクリル系共重合
体を、共重合組成の変動を抑え、安定かつ容易に製造す
る。 【解決手段】 メチルメタクリレートとベンジルメタク
リレートとの共重合体の製造方法において、全単量体量
を100質量%としたとき、メチルメタクリレート0.
1〜99.9質量%とベンジルメタクリレート0.1〜
99.9質量%からなる単量体混合物およびラジカル重
合開始剤を含む原料あるいはさらに溶媒を含む原料を、
120〜170℃で、共重合体含有率が30〜70質量
%となるよう塊状重合または溶液重合せしめて共重合体
組成物を得、この共重合体組成物中の揮発物を分離除去
する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、屈折率が高くかつ
光学特性に優れたメタクリル系共重合体およびその製造
方法、並びに高速・大容量の情報伝送に適した広帯域の
プラスチック光ファイバ、プラスチック光ファイバケー
ブル及びプラグ付きプラスチック光ファイバケーブルに
関する。
【0002】
【従来の技術】メタクリル系重合体は、その卓越した透
明性の特徴を活かし、光ディスク基盤材料および各種レ
ンズやプラスチック光ファイバ等の光学機器用材料など
として光学分野に大量に使用されるようになってきた。
とりわけプラスチック光ファイバは無機ガラスを芯材と
する光ファイバに比べて、優れた可撓性および加工性に
加え、開口数が大きく取れること、さらに安価であるこ
となどから短距離光伝送分野において着実に適用範囲を
拡大してきている。
【0003】また、近年のマルチメディア化の流れを背
景に、プラスチック光ファイバの広帯域化に対する要求
が強まってきており、様々な広帯域プラスチック光ファ
イバが提案されてきている。中でも優れた耐熱性と耐湿
熱性を確保しながら伝送帯域を高めることができる多層
プラスチック光ファイバは開発が大いに期待されてい
る。
【0004】プラスチック光ファイバは、コア−クラッ
ド構造を有しており、通常、比較的屈折率の低いポリメ
チルメタクリレートをコア材として用いるため、コア材
より屈折率の低いクラッド材の選択の幅が非常に狭いも
のであった。
【0005】特に多層プラスチック光ファイバではクラ
ッド材の選択の幅が狭い。多層プラスチック光ファイバ
は、屈折率の異なる少なくとも2種以上の重合体を中心
部から外周部に向かって屈折率が低くなるように同心円
状に積層配置したコア部と、このコア部の最外周部を構
成する材料よりもさらに屈折率の低い鞘材にてコア部を
被覆する鞘部とで構成されている。そのため、コア部の
中心部に用いる重合体の屈折率が低い場合には、その外
周部に配置するコア材やさらにその外周に配置する鞘材
に非常に低い屈折率が要求されることになる。よって、
コア材や鞘材の光学特性や機械特性、熱特性の向上を追
求するに際して材料選択の幅がより一層狭いものとなっ
ていた。
【0006】このような問題を回避するためには、芯材
として、ポリメチルメタクリレートより高い屈折率を有
し、かつ極めて高い光学性能を持つ重合体を採用するこ
とが考えられる。
【0007】例えば特開平11−95045号公報で
は、汎用的な光学樹脂であるポリメチルメタクリレート
よりも高い屈折率を有する重合体として、メチルメタク
リレート(単独重合体としたときの屈折率1.492)
とベンジルメタクリレート(単独重合体としたときの屈
折率1.569)との共重合体やメチルメタクリレート
とフェノキシエチルメタクリレート(単独重合体とした
ときの屈折率1.560)との共重合体などの幾つかの
共重合体を挙げている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明者らは、特開平
11−95045号公報に挙げられた種々の共重合体に
ついて、同公報の実施例1の手順に準じて共重合体を調
製し検討を行った結果、ポリメチルメタクリレートより
も高い屈折率を有する重合体の中では、メチルメタクリ
レートとベンジルメタクリレートとの共重合体が他の共
重合体よりも極めて優れた光透過性を有することを確認
した。
【0009】しかしながら一方で、メチルメタクリレー
トとベンジルメタクリレートとの共重合体は、重合時に
おける温度条件や原料調合時の組成むら等の外乱に起因
する微少な組成変動によって光透過性が大きく変動する
ため、優れた光透過性の共重合体を安定的に得るために
は非常に複雑な重合管理が必要になるという問題点を見
いだした。
【0010】工業的に長期間に渡って重合体を製造する
場合、原料調合時の調合むらや原料供給時の送液むら等
によって原料中の単量体組成にむらが生じたり、外気温
の変動で原料温度が変化し、重合反応時の熱バランスが
変動したりして、反応に影響が生じる。これが重合速度
の経時変化を引き起こし、反応混合物中の重合体含有率
や、得られる共重合体の共重合組成を精度良く制御する
妨げになっている。
【0011】そのため、情報伝送の高速化・大容量化に
伴って共重合体の光学用途として許容される組成変動の
範囲が狭くなるにつれ、極端に厳密な製造条件の管理が
必要になるという問題ある。
【0012】そこで本発明の目的は、屈折率が高く且つ
光学特性に優れるメタクリル系共重合体を、共重合組成
の変動が抑制され、安定かつ容易に製造可能な方法を提
供することにある。また、屈折率が高く且つ光学特性に
優れるメタクリル系共重合体を安定して提供することに
ある。さらに、高速・大容量の情報伝送に適した広帯域
のプラスチック光ファイバ、プラスチック光ファイバケ
ーブル、及びプラグ付きプラスチック光ファイバケーブ
ルを提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明は、全単量体量を
100質量%としたとき、メチルメタクリレート0.1
〜99.9質量%およびベンジルメタクリレート0.1
〜99.9質量%からなるメタクリル系共重合体の製造
方法であって、メチルメタクリレート、ベンジルメタク
リレート及びラジカル重合開始剤を含む原料あるいはさ
らに溶媒を含む原料を、120〜170℃で、共重合体
含有率が30〜70質量%となるよう塊状重合または溶
液重合せしめて共重合体組成物を得る重合工程と、該共
重合体組成物中の揮発物を分離除去する揮発物除去工程
を有することを特徴とするメタクリル系共重合体の製造
方法に関する。
【0014】また本発明は、前記揮発物除去工程におい
て、前記重合工程を経た共重合体組成物を予熱温度15
0〜250℃に加熱し、かつ該予熱温度におけるメチル
メタクリレートの蒸気圧以上に加圧して、細孔又はスリ
ットを通して減圧下にあるベント押し出し機の供給部に
供給し、さらにベント押し出し機の少なくとも最下流の
ベント部において200〜270℃、50000Pa以
下で揮発物を除去する上記の製造方法に関する。
【0015】また本発明は、上記の製造方法で得たメタ
クリル系共重合体であって、該共重合体に化学結合して
いる硫黄原子の含有率が10ppm以上5000ppm
以下で、該共重合体に化学結合していない硫黄原子の含
有率が50ppm以下であることを特徴とするメタクリ
ル系共重合体に関する。
【0016】また本発明は、芯材として上記の共重合体
を用いたことを特徴とするプラスチック光ファイバに関
する。
【0017】また本発明は、同心円状に積層された多層
構造を有する芯部とさらにその外周に積層された鞘部を
有するプラスチック光ファイバであって、前記芯部は、
その中心部が上記の製造方法で得られた共重合体からな
り、該中心部の外周に別途製造したメチルメタクリレー
ト重合体及び該中心部を構成する共重合体とは屈折率の
異なる1種以上の上記の製造方法で得られた共重合体か
ら選ばれる(共)重合体が中心部から外周部に向かって
屈折率が低くなるように積層配置されていることを特徴
とするプラスチック光ファイバに関する。
【0018】また本発明は、同心円状に積層された多層
構造を有する芯部とさらにその外周に積層された鞘部を
有するプラスチック光ファイバであって、前記芯部は、
その中心部が上記の共重合体からなり、該中心部の外周
に別途製造したメチルメタクリレート重合体及び該中心
部を構成する共重合体とは屈折率の異なる1種以上の上
記の共重合体から選ばれる(共)重合体が中心部から外
周部に向かって屈折率が低くなるように積層配置されて
いることを特徴とするプラスチック光ファイバに関す
る。
【0019】また本発明は、上記のプラスチック光ファ
イバの外周部に被覆層が形成されてなるプラスチック光
ファイバケーブルに関する。
【0020】また本発明は、上記のプラスチック光ファ
イバケーブルの少なくともいずれか一方の先端にプラグ
が配置されてなるプラグ付きプラスチック光ファイバケ
ーブルに関する。
【0021】
【発明の実施の形態】共重合体の製造において、重合工
程を経て揮発物除去工程にて共重合体組成物から揮発物
を除去して得られた共重合体の共重合組成は、重合工程
における反応混合物中の重合体含有率によって最も大き
く左右される。そのため、共重合体の共重合組成を一定
に保つためには、重合工程における反応混合物中の重合
体含有率を制御することが重要である。
【0022】そこで本発明者らは、共重合体の連続的な
製造において、供給される単量体混合物の組成が変動し
たときに、単量体の消費速度が低下あるいは上昇して重
合発熱量が変化するために、反応系の熱バランスが崩れ
て重合体含有率のふれが増大している点に着目した。そ
して、逆に、単量体混合物の組成変動に対して単量体の
消費速度の変化がほとんどなければ、反応混合物中の重
合体含有率は容易に制御できると考えた。すなわち、重
合反応時の単量体消費速度定数KPを下記の式[1]で
定義すると、供給される単量体混合物の組成変動に対し
てKPの変動が少ない重合条件を見いだすことが、重合
体含有率の制御に最も有効となる。
【0023】 RP=KP・[M]・(RK0.5 ・・・[1] RP:単量体消費速度[mol/(m3・sec)] KP:単量体消費速度定数[{m3/(mol・sec)}0.5] [M]:単量体濃度[mol/m3] RK:開始剤分解速度[mol/(m3・sec)] この考えに基づき、メチルメタクリレート(以下、適宜
「MMA」と略する)とベンジルメタクリレート(以下
適宜「BzMA」と略する)との共重合時における単量
体消費速度定数KPについて鋭意検討したところ、MM
Aの単独重合体生成時の単量体消費速度定数をKP1、B
zMAの単独重合体生成時の単量体消費速度定数をKP2
とすると、MMAとBzMAとを任意の割合で混合した
場合の共重合時において、KP、KP1及びKP2が下記の
式[2]または式[3]を満たすことを見いだした。
【0024】 KP1 < KP < KP2 (KP1<KP2の場合) ・・・[2] KP2 < KP < KP1 (KP2<KP1の場合) ・・・[3] KP :MMAとBzMAの共重合時の単量体消費速度定数[{m3
/(mol・sec)}0.5] KP1:MMAの単独重合時の単量体消費速度定数[{m3/(mo
l・sec)}0.5] KP2:BzMAの単独重合時の単量体消費速度定数[{m3/(m
ol・sec)}0.5] つまり、式[2]または式[3]の関係によれば、単独
重合体生成時の単量体消費速度定数KP1の値とKP2の値
とが非常に近いような温度域で共重合させた場合は、M
MAとBzMAとを別個に単独重合させてもあるいは任
意の割合で混合して共重合させても、単量体消費速度定
数は互いに近い値となると考えられる。
【0025】上記の考えに基づいて本発明者らは実験を
繰り返し鋭意検討を行った結果、120℃〜170℃の
温度域ではKP1の値とKP2の値とが非常に近いため、式
[2]または式[3]の関係から、KPの値は混合する
単量体の混合比にはほとんど依存せず一定値になること
を見いだし、本発明を完成るに至った。
【0026】表1にKP1とKP2の比を示す。120℃未
満の温度ではKP1に比べてKP2の値が大きすぎ、逆に1
70℃を超えるとKP2に比べてKP1の値が大きすぎるた
め、組成変動を精度良く制御するための重合温度域は1
20℃〜170℃である。好ましくは、130℃〜16
0℃である。
【0027】
【表1】
【0028】このように、MMAとBzMAとの共重合
において、単量体消費速度が単量体混合物の単量体組成
にほとんど依存しないという現象は、共重合体の共重合
組成の変動を抑制できるという利点だけでなく、次のよ
うな利点をも有する。
【0029】多層光ファイバの芯部(コア)を構成する
コア層の少なくとも2層以上に本発明の方法で得られる
共重合体を用いる場合、単量体消費速度が単量体混合物
の単量体組成にほとんど依存しないことは、バッチ式お
よび連続式のどちらの共重合体製造方式においても有利
に働く。
【0030】すなわち、一つのバッチ反応器を用いてバ
ッチ式にて複数の共重合体を製造する場合は、バッチ毎
に、原料となる単量体混合物の単量体種は変更せずに混
合比のみを変更し、それ以外の製造条件は変えることな
く複数バッチ繰り返すだけで屈折率の異なる数種類の共
重合体を逐次的に得ることができる。そのため、運転管
理上非常に有利である。また、連続的に製造する場合
は、供給原料中の単量体混合物の混合比を逐次段階的に
変更することで、1回の運転により屈折率の異なる数種
類の共重合体が得ることができ、品種切り替え毎にシャ
ットダウンをする必要がない。さらに、複数の反応器を
有する設備を用いてバッチ式又は連続式にて屈折率の異
なる共重合体を並列的に得る場合には、各反応器に対し
て同形式の制御系を適用できる。そのため、全く範囲の
違う制御変数を多く抱える設備に比べて運転管理上、非
常に有利である。
【0031】以下、本発明の好適な実施の形態について
さらに説明する。
【0032】重合工程において、反応混合物の反応槽に
おける平均滞留時間は0.5時間〜6時間であることが
好ましい。
【0033】重合温度は、前記の温度範囲内にある所望
の温度が実質的に一定に維持されるように、反応槽のジ
ャケット温度、及び原料の供給温度を調節することなど
により制御される。
【0034】本発明の製造方法における重合工程は、バ
ッチ型反応器を用いて塊状重合または溶液重合を行い重
合体含有率30〜70質量%の範囲で重合を停止させ共
重合体を得るバッチ式重合法、あるいは槽型反応器に連
続的に原料を供給しながら重合体含有率30〜70質量
%の範囲で塊状重合または溶液重合を行う連続式重合法
により行うことができる。
【0035】一般的なバッチ式塊状重合により共重合体
を得る場合には、重合反応が進行して重合体の含有率が
非常に高くなると重合体中に白濁が生じることがある
が、これは理論的には重合体の含有率が高くなるに連れ
て共重合体の組成分布が大きくなって光学特性が低下す
るためであり、重合体の含有率が高くなる前に重合を停
止させることで得られる共重合体の組成分布を小さくす
ることができる。しかし、共重合体の組成分布を抑える
ためには重合体含有率を30質量%未満程度にする必要
があり、このような重合体含有率の低い状態で重合を停
止させると、生産性に乏しいばかりか、揮発物除去工程
の負担が大きくなり、工業的には不利である。しかしな
がら、本発明における特定の単量体混合物を特定の条件
で塊状重合または溶液重合せしめる場合には、単量体含
有率を30質量%未満にする必要はない。連続式の塊状
重合により共重合体を得る場合においても重合体含有率
が30質量%を下回ると生産性の低下、揮発物除去工程
の負担増加などの点で好ましくない。逆に重合体含有率
が70質量%を超えると、反応器内の反応混合物の粘度
が著しく上昇して重合速度が急激に上がるため重合温度
の制御が困難になり、得られる共重合体の組成を大幅に
変動させてしまう。したがって本発明の重合方法におけ
る重合工程は、バッチ式および連続式のいずれの方式に
おいても重合体含有率30〜70質量%の範囲で重合反
応を行う。
【0036】本発明の製造方法における重合工程は、バ
ッチ式および連続式のいずれの方法で行ってもよいが、
重合体中の粉塵、夾雑物などの光散乱物質の低減や、重
合体含有率の振れによる共重合体の組成変動などを考慮
すると連続式で行うことが好ましい。
【0037】本発明の製造方法の重合工程に用いるラジ
カル重合開始剤としては、パーオキサイド系化合物やア
ゾ系化合物を用いることができる。ラジカル開始剤は一
種単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
好ましいラジカル重合開始剤は、例えば、1,1,3,
3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサ
ネート、1−シクロヘキシルパーオキシ−2−エチルヘ
キサネート、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキ
サネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサネ
ート、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)−3,
3,5−トリメチルシクロヘキサン、t−ブチルパーオ
キシ−3,5,5−トリメチルヘキサネート、ジ−t−
ブチルパーオキサイド等の有機過酸化物や、ジメチル
2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、
2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタ
ン)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニ
トリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、
2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)等の
アゾ化合物が挙げられ、特にジメチル2,2’−アゾビ
ス(2−メチルプロピオネート)と2,2’−アゾビス
(2,4,4−トリメチルペンタン)が好ましい。
【0038】重合体の分子量を調整する目的のために、
連鎖移動剤として、n−ブチルメルカタプン、t−ブチ
ルメルカタプン、n−オクチルメルカタプン、n−ドデ
シルメルカタプン等のアルキルメルカプタンを適当量使
用してもよい。ただし、蒸気圧の低いメルカプタンを使
用すると揮発物除去工程の負担が大きくなるため、n−
ブチルメルカプタン、t−ブチルメルカプタン等の炭素
数3〜6個のアルキル基を有するものが好ましく、特に
n−ブチルメルカプタンが好ましい。
【0039】重合後、反応槽から取り出された反応混合
物すなわち共重合体組成物は、公知のポンプ等を用いて
揮発物除去工程に送られる。好ましくは、反応槽から共
重合体組成物を連続的に抜き出すと同時にそのまま連続
的に揮発物除去工程に移送する。
【0040】揮発物を除去工程においては、共重合体組
成物を予熱温度150〜250℃に加熱し、かつこの予
熱温度におけるメチルメタクリレートの蒸気圧以上に加
圧して、細孔又はスリットを通して減圧下にあるベント
押し出し機の供給部に供給し揮発物の大部分を分離回収
し、さらに残揮発成分をこのベント押し出し機の下流に
設けた1以上のベント部において除去する。その際、少
なくとも最下流に設けたベント部において200〜27
0℃、圧力50000Pa以下で揮発物を除去すること
が好ましい。なお、揮発物とは未反応単量体、二量体、
不活性溶媒、未反応のメルカプタン等をいう。ベント押
し出し機の供給部に共重合体組成物を供給する際に、ベ
ント押し出し機の供給部スクリュに共重合体組成物を直
接吹き付けることもできる。
【0041】揮発物除去工程において、上記予熱温度が
低すぎると、揮発物を除去するのに必要な熱量が不足す
るため共重合体中の残存揮発物量が多くなり、優れた光
学性能および機械的性質を備えた共重合体を得ることが
困難となる。上記予熱温度が高すぎると、揮発物の除去
は有利であるが、予熱部接液面において硫黄成分に起因
すると考えられる着色物の付着生成が見られ、この着色
物が同伴することにより得られた共重合体の光学特性が
低下する。なお、ベント部の圧力が高すぎると、共重合
体中の揮発物を十分に除去することが困難となる。上記
予熱温度のより好ましい範囲は170〜205℃であ
る。
【0042】このような方法で共重合体から揮発物を除
去するが、重合工程において連鎖移動剤としてメルカプ
タンを用いた場合、連鎖移動反応により共重合体と化学
結合した硫黄成分は、加熱による吸収損失や高湿下にお
ける散乱損失を大きくすることはなく、また熱分解を抑
制する。このことから、共重合体と化学結合している硫
黄原子の含有率は10ppm以上が望ましいが、溶融粘
度が低くなりすぎないように5000ppm以下である
ことが望ましい。400〜800ppmの範囲がさらに
好ましい。また一方、化学結合しない状態で共重合体に
残存しているメルカプタンやジスルフィドなどの硫黄化
合物は、高温下における吸収損失の増大や高湿下におけ
る散乱損失を誘起する。共重合体に化学結合していない
硫黄原子の含有率は50ppm以下であることが好まし
く、さらに5ppm以下にまで除去することが好まし
い。
【0043】本発明の製造方法で得られたメタクリル系
共重合体はプラスチック光ファイバの芯部を構成する材
料、即ち、芯材に好適である。
【0044】以上に説明した工程を経て屈折率の異なる
2種以上のメタクリル系共重合体を製造し、これらの共
重合体をコア材(芯材)として中心部から外周部に向か
って屈折率が低くなるように同心円状に積層配置して芯
部を形成し、この芯部の外周を鞘材で積層して被覆して
鞘層(鞘部)を形成することによって、芯鞘構造を有す
る多層プラスチック光ファイバを形成することができ
る。芯部にはメチルメタクリレート重合体を用いること
もできる。なお、「(共)重合体」とは「重合体」また
は「共重合体」のことである。また、この鞘層の外周に
さらに保護層を被覆形成してもよい。鞘材および保護層
材としては本発明の方法により得た共重合体を用いても
よいし、別途製造した重合体や一般に鞘材や保護層材と
して知られている重合体を用いてもよい。
【0045】本発明のプラスチック光ファイバは、耐候
性や耐熱性の向上を目的として鞘層あるいは保護層の外
周をケーブル材で被覆して被覆層を形成し、光ファイバ
ケーブルとして用いたり、この光ファイバケーブルの先
端にプラグを配置してプラグ付き光ファイバケーブルと
して用いることも可能である。
【0046】
【実施例】以下、本発明を実施例によってさらに詳しく
説明するが、これらは本発明を限定するものではない。
【0047】なお、プラスチック光ファイバの多層構造
を有するコア(芯部)において、中心部を第1コア、そ
の外側の第2層を第2コア、さらに外側の第n層を第n
コアと呼ぶ。
【0048】得られた(共)重合体の測定は次のように
して行った。
【0049】(1)共重合体を構成する単量体単位の組
成 共重合体を重水素化アセトンに溶解させたものを試料と
し、分解能400MHzの1H−NMR(日本電子社
(株)製)を使用して測定し、共重合体を構成している
単量体の組成を計算した。
【0050】(2)(共)重合体中の残存モノマー率お
よびMMA二量体含有率 揮発物除去工程以後で得られる(共)重合体を測定試料
とし、水素炎型検出器を用いたガスクロマトグラフ法に
より測定し、含有率を算出した。
【0051】(3)(共)重合体中の硫黄成分含有量の
測定 (i)(共)重合体に結合している硫黄原子の含有量の
測定 ドーマン微量電量滴定装置(MCTS−130、ドーマ
ン社製)を用いて測定した。測定試料は、(共)重合体
をその10倍量のアセトンに溶解させ、その溶液をメタ
ノールに滴下し、その再沈殿物を分離回収して乾燥した
ものを用いた。あらかじめ硫黄原子濃度既知の標準試料
を測定して作成しておいた検量線をもとに測定試料の測
定結果から硫黄原子の含有量を求めた。
【0052】(ii)(共)重合体に結合していない硫黄
原子の含有量の測定 装置はHP社製ガスクロマトグラフ6890シリーズを
用い、カラムは島津製作所(株)製CBP−20−S5
0−050、長さ50m、内径0.32mm、膜厚0.
5μmのものを用いた。検出器は、硫黄に対して高い感
度を有する化学発光硫黄検出器(Sulfur Chemiluminesce
nt Detector、Sievers社製)を用いた。定量分析は、重
合体を溶解させたアセトン溶液をガスクロマトグラフの
昇温されたカラム内に注入し、得られたクロマトグラム
から予め作成しておいた検量線をもとに硫黄原子含有量
を求めた。
【0053】(実施例1)BzMA18質量%、MMA
82質量%の単量体混合物に、ジメチル2、2’−アゾ
ビス(2−メチルプロピオネート)(和光純薬V−60
1、純度99質量%)を1.8×10-5モル/単量体1
モルの割合で、n−ブチルメルカプタン(ELF ATOCHEM
NORTH AMERICA INC製、純度99.5質量%)を1.8
×10-3モル/単量体1モルの割合でそれぞれ添加した
調製液1を反応槽1に連続的に供給した。
【0054】これとは別にMMAにジメチル2、2’−
アゾビス(2−メチルプロピオネート)(和光純薬V−
601、純度99質量%)を1.8×10-5モル/単量
体1モルの割合で、n−ブチルメルカプタン(ELF ATOC
HEM NORTH AMERICA INC製、純度99.5質量%)を
1.8×10-3モル/単量体1モルの割合でそれぞれ添
加した調製液2を反応槽2に連続的に供給した。
【0055】重合温度は、反応槽1、2共に130℃に
制御し、反応槽内に供給した調製液1、2は攪拌翼によ
りそれぞれ攪拌混合した。重合反応域における反応混合
物の平均滞在時間を3.6hrとして重合を実施した。
【0056】反応混合物を反応槽1、2からそれぞれ連
続的に取り出し、ポンプを用いて15リットル/hrで
送液しながら190℃まで加熱昇温し、それぞれ連続的
にスクリュ径40mmのリアベント式3ベント単軸脱揮
押し出し機1、2に供給して揮発物を分離除去して
(共)重合体を得た。供給部(リアベント(第1ベン
ト))の圧力は67000Pa、第2ベント及び第3ベ
ントの圧力は6700Paとし、供給部の押し出し機温
度は220℃、第2ベント及び第3ベント部の押し出し
機温度は240℃に設定した。スクリュ回転数は60r
pmとした。
【0057】反応混合物の押し出し機への供給量と揮発
物除去後の重合体回収量とから計算される反応混合物中
の(共)重合体含有率の運転時間に対する変化を図1に
示す。ここで、反応混合物は、各反応槽から取り出され
た直後のものである。反応槽1、2共に重合体含有率は
安定しており、また反応槽1と2とでその値はほとんど
同じであった。
【0058】また、脱揮押し出し機1から得られた共重
合体1の残存モノマー率はMMAが0.14質量%、B
zMAが0.25質量%であり、二量体含有率は0.0
7質量%であった。脱揮押し出し機2から得られた重合
体2の残存MMA率は0.14質量%であり、二量体含
有率は0.09%であった。
【0059】共重合体1に化学結合している硫黄原子の
含有量は590ppmで、化学結合していない硫黄原子
含有量は0.6ppmであった。重合体2に化学結合し
ている硫黄原子の含有量は613ppmで、化学結合し
ていない硫黄原子含有量は0.6ppmであった。
【0060】次に、脱揮押し出し機1から得られた共重
合体1を構成する単量体単位の組成を運転時間毎に求め
た。結果を表2に示す。共重合体含有率と同様に共重合
体組成も安定しており、測定結果の中の最大値と最小値
との差を最大振れ幅Δとして同じく表中に示したが、そ
の値は1%未満であった。
【0061】
【表2】
【0062】引き続き、脱揮押し出し機1、2の先端か
ら押し出された(共)重合体1、2を密閉状態のまま連
続的に直接、3層の複合紡糸ノズルを用いて、共重合体
1を第1コア(内層)材、重合体2を第2コア(外層)
材、別途製造して供給された1,1,2,2-テトラヒドロパー
フルオロデシルメタクリレート(以下「17FM」と略
することがある)28質量%とMMA71質量%とメタ
クリル酸1質量%との共重合体を鞘材として溶融複合紡
糸を行うことにより芯部が多層構造を有するファイバ径
750μmのプラスチック光ファイバを得た。なお、第
1コアの直径は474μm、第2コアの厚みは118μ
m、鞘の厚みは20μmであった。この時、複合紡糸ノ
ズルのノズル圧は2.9×106Paで一定になるよう
に管理し、その時のノズル温度は220℃であった。
【0063】得られた光ファイバの透光性能を評価した
結果、波長520nm、570nm、650nmにおけ
る光ファイバの伝送損失はそれぞれ68dB/km、6
3dB/km、125dB/kmと伝送損失が小さく、
極めて光学性能に優れたものであった。また、ファイバ
長50mにおける伝送帯域は518MHzであった。
【0064】さらに、85℃及び70℃、相対湿度95
%での耐久性試験を10000hr行ったが、いずれの
温度においても伝送損失の増加は37dB/km以下で
あり、伝送帯域もほとんど変化が見られなかった。
【0065】(実施例2)調製液1の単量体混合物をB
zMA36質量%、MMA64質量%の単量体混合物に
代えて調製液3を調製し反応槽1に連続的に供給した以
外は実施例1と同様にして共重合体3を得た。また、調
製液1と同様に調製した調製液4を反応槽2に連続的に
供給して実施例1と同様にして重合体4を得た。
【0066】反応混合物の押し出し機への供給量と揮発
物除去後の共重合体回収量とから計算される反応混合物
中の共重合体含有率の運転時間に対する変化を図2に示
す。実施例1と同様、反応槽1、2共に共重合体含有率
は安定していた。
【0067】また、脱揮押し出し機1から得られた共重
合体3の残存モノマー率はMMAが0.13質量%、B
zMAが0.26質量%、二量体含有率は0.04質量
%であった。脱揮押し出し機2から得られた共重合体4
の残存モノマー率はMMAが0.19質量%、BzMA
が0.28質量%、二量体含有率は0.04質量%であ
った。
【0068】共重合体3に化学結合している硫黄原子の
含有量は570ppmで、化学結合していない硫黄原子
含有量は0.5ppmであった。重合体4に化学結合し
ている硫黄原子の含有量は595ppmで、化学結合し
ていない硫黄原子含有量は0.4ppmであった。
【0069】次に、各脱揮押し出し機から得られた共重
合体3、4を構成している単量体単位の組成をそれぞれ
求めた。結果を表3に示す。共重合体含有率と同様に共
重合体組成も安定しており、測定結果の中の最大値と最
小値との差を最大振れ幅Δとして同じく表中に示した
が、その値は1%未満であった。
【0070】
【表3】
【0071】引き続き、脱揮押し出し機1、2の先端か
ら押し出された共重合体3、4を密閉状態のまま連続的
に直接、3層の複合紡糸ノズルを用いて、共重合体3を
第1コア(内層)材、共重合体4を第2コア(外層)
材、別途製造したポリメチルメタクリレートを鞘材とし
て溶融複合紡糸を行うことにより芯部が多層構造を有す
るファイバ径750μmのプラスチック光ファイバを得
た。なお、第1コアの直径は474μm、第2コアの厚
みは118μm、鞘の厚みは20μmであった。この
時、複合紡糸ノズルのノズル圧は2.9×106Paで
一定になるように管理し、その時のノズル温度は220
℃であった。
【0072】得られた光ファイバの透光性能を評価した
結果、波長520nm、570nm、650nmにおけ
る光ファイバの伝送損失はそれぞれ70dB/km、6
5dB/km、122dB/kmと伝送損失が小さく、
極めて光学性能に優れたものであった。また、ファイバ
長50mにおける伝送帯域は486MHzであった。
【0073】さらに、85℃及び70℃、相対湿度95
%での耐久性試験を10000hr行ったが、いずれの
温度においても伝送損失の増加は50dB/km以下で
あり、伝送帯域もほとんど変化が見られなかった。
【0074】(実施例3)実施例1の調製液1の単量体
混合物をBzMA27質量%、MMA73質量%の単量
体混合物に代えて調製液5を調製し、これを反応槽1に
連続的に供給した以外は実施例1と同様にして共重合体
5を得た。また、調製液1と同様に調製した調製液6
(単量体混合物:BzMA/MMA=18/82(質量
%))を調製し、これを反応槽2に連続的に供給して実
施例1と同様にして共重合体6を得た。また、調製液1
の単量体混合物をBzMA9質量%、MMA91質量%
の単量体混合物に代えて調製液7を調製し、これを反応
槽3に連続的に供給した以外は実施例1と同様にして共
重合体7を得た。さらに、調製液2と同様に調製した調
製液8(MMA単独)を調製し、これを反応槽4に連続
的に供給して実施例1と同様にして重合体8を得た。
【0075】反応混合物の押し出し機への供給量と揮発
物除去後の(共)重合体回収量とから計算される反応混
合物中の(共)重合体含有率の運転時間に対する変化を
図3に示す。全ての反応槽において(共)重合体含有率
は安定しており、互いに近い値であった。また、実施例
1と比べて反応槽の数が2から4へと増えたものの、運
転管理上の労力は反応槽数2の場合とほとんど変わらな
かった。揮発物を分離除去した後の共重合体5の残存モ
ノマー率はBzMAが0.18質量%、MMAが0.0
3質量%、二量体含有率が0.04質量%であった。共
重合体6の残存モノマー率はBzMAが0.16質量
%、MMAが0.01質量%であり、二量体含有率は
0.07質量%であった。共重合体7の残存モノマー率
はBzMAが0.20質量%、MMAが0.10質量
%、二量体含有率は0.05質量%であった。重合体8
の残存MMA率は0.12質量%、二量体含有率は0.
02質量%であった。
【0076】また、(共)重合体5、6、7、8に化学
結合している硫黄原子の含有量はそれぞれ595pp
m、633ppm、627ppm、610ppmで、化
学結合していない硫黄原子含有量はそれぞれ1.3pp
m、1.2ppm、1.5ppm、0.8ppmであっ
た。
【0077】次に実施例1と同様にして各脱揮押し出し
機からそれぞれ得られた共重合体5、6、7を構成して
いる単量体単位の組成をそれぞれ運転時間毎に求めた。
結果を表4に示す。いずれの反応槽においても、共重合
体組成は安定しており、最大振れ幅Δも小さな値であっ
た。
【0078】
【表4】
【0079】引き続き、脱揮押し出し機の先端から押し
出された(共)重合体5、6、7、8をそれぞれ第1コ
ア材、第2コア材、第3コア材、第4コア材として、別
途製造した17FM30質量%とMMA69質量%とメ
タクリル酸1質量%の共重合体を鞘材1として、フッ化
ビニリデンとテトラフルオロエチレンとの共重合体を鞘
材2として溶融複合紡糸を行うことにより、中心部から
外周部にかけて屈折率が低くなった多層構造を有する直
径750μmのプラスチック光ファイバを得た。なお、
第1コアの直径は330μm、第2コアの厚みは78μ
m、第3コアの厚みは59μm、第4コアの厚みは48
μm、鞘材1の厚みは15μm、鞘材2の厚みは10μ
mであった。この時、複合紡糸ノズルの圧力は実施例1
と同じ2.9×106Paで一定になるように管理し
た。その時のノズル温度は210℃であった。
【0080】得られた光ファイバの透光性能を評価した
結果、波長520nm、570nm、650nmにおけ
る伝送損失はそれぞれ71dB/km、63dB/k
m、127dB/kmと伝送損失が小さく極めて光学性
能に優れたものであった。また、ファイバ長50mにお
ける伝送帯域は780MHzであった。
【0081】さらに、85℃及び70℃、相対湿度95
%での耐久性試験を10000hr行ったが、いずれの
温度においても伝送損失の増加はわずか42dB/km
であり、伝送帯域もほとんど変化が見られなかった。
【0082】(比較例1)反応槽1及び2の重合温度を
それぞれ180℃とした以外は実施例1と同様の方法で
重合を行い、揮発物を除去して共重合体9(MMA−B
zMA共重合体)、重合体10(PMMA)を得た。
【0083】実施例1と同様の方法により求めた(共)
重合体含有率の経時変化を図4に示す。運転開始から8
0時間後に反応槽1内で突然重合が暴走し、温度の上昇
が見られたためやむを得ず調製液9中のジメチル2、
2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)の濃度を
1.8×10-5モル/単量体1モルから1.6×10-5
モル/単量体1モルの割合に変更して反応槽1に連続的
に供給した。その後、重合は安定したため、運転開始後
100時間後から約50時間かけて調製液9中のジメチ
ル2、2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)濃
度を1.8×10 -5モル/単量体1モルへと戻した。そ
の後の重合率は安定していた。
【0084】さらに実施例1と同様にして、揮発物を除
去した後の共重合体9を構成している単量体単位の組成
を運転時間毎に求めた結果を表5に示す。共重合組成は
大きく変動しており、最大振れ幅Δは実施例1に比べて
かなり大きかった。
【0085】
【表5】
【0086】また、揮発物除去後に得られた共重合体9
の残存モノマー率は、MMAが0.17質量%、BzM
Aが0.22質量%、二量体含有率は0.48質量%で
あり、重合体10の残存MMA率は0.23質量%、二
量体含有率は0.51質量%であり、どちらも二量体含
有率の非常に高い重合体であった。
【0087】これらの(共)重合体を実施例1と同様に
3層複合紡糸して得た多層構造を有するプラスチック光
ファイバの透光損失は、波長520nm、570nm、
650nmにおいてそれぞれ100dB/km、78d
B/km、145dB/kmと大きく、特に短波長領域
において伝送損失が大きかった。
【0088】(比較例2)反応槽1及び2の重合温度を
それぞれ100℃とした以外は実施例1と同様の方法で
重合を行い、さらに3層複合紡糸により多層構造を有す
る光ファイバを製造した。
【0089】しかしながら、反応槽1、2から取り出さ
れた直後の反応混合物の(共)重合体含有率は35質量
%から45質量%の範囲で大きく変動し、また重合温度
も安定せず、安定した運転が困難であったため、やむを
得ず(共)重合体含有率を25質量%にまで下げて運転
を続けた。
【0090】得られた(共)重合体を用いて実施例1と
同様に製造した光ファイバは、ファイバ径が均一でなく
部分的に太くなっている箇所が多数発生しており、工業
的に使用できる品質レベルではなかった。
【0091】(実施例4)実施例1において、n−ブチ
ルメルカプタンの代わりにn−オクチルメルカプタン
0.24質量%を使用して共重合体11(MMA−Bz
MA共重合体)、重合体12(PMMA)を得た。
【0092】揮発物を除去した後の共重合体11の残存
モノマー率はMMAが0.18質量%、BzMAが0.
23質量%、二量体含有率は0.12質量%であり、重
合体12の残存MMA率は0.22質量%、二量体含有
率は0.08質量%であった。
【0093】また、この共重合体11に化学結合してい
る硫黄原子の含有量は620ppmで、化学結合してい
ない硫黄原子含有量は99ppmであり、重合体12に
化学結合している硫黄原子の含有量は560ppmで、
化学結合していない硫黄原子含有量は86ppmであっ
た。
【0094】引き続き、実施例1と同様にして、3層の
複合紡糸ノズルを用いて溶融複合紡糸を行うことにより
多層構造を有するプラスチック光ファイバを得た。この
とき、複合紡糸ノズルのノズル圧は実施例と同じ2.9
×106Paで一定になるように管理した。その時のノ
ズル温度は220℃であった。
【0095】得られた光ファイバの透光性能を評価した
結果、波長520nm、570nm、650nmにおけ
る光ファイバの伝送損失はそれぞれ92dB/km、8
5dB/km、136dB/kmであった。
【0096】さらに85℃及び70℃、相対湿度95%
での耐久性試験を10000hr行ったが、いずれの温
度においても伝送損失の増加は200dB/km程度で
あった。
【0097】(実施例5)揮発物除去工程において、反
応混合物を加熱昇温せずに重合温度と同じ130℃のま
ま押し出し機に供給した以外は実施例と同様にして、そ
れぞれ共重合体13(MMA−BzMA共重合体)及び
重合体14(PMMA)を得た。
【0098】得られた共重合体13の残存モノマー率は
MMAが0.53質量%、BzMAが0.77質量%、
二量体含有率は0.11質量%であり、重合体14の残
存MMA率は0.62質量%、二量体含有率は0.13
質量%であった。
【0099】また、この共重合体13に化学結合してい
る硫黄原子の含有量は601ppmで、化学結合してい
ない硫黄原子含有量は3.0ppmであり、重合体14
に化学結合している硫黄原子の含有量は627ppm
で、化学結合していない硫黄原子含有量は4.1ppm
であった。
【0100】次に実施例1と同様にして、3層の複合紡
糸を行いて溶融複合紡糸を行うことにより多層構造を有
するファイバ径750μmのプラスチック光ファイバを
得た。得られた光ファイバの透光性能を評価した結果、
波長520nm、570nm、650nmにおける光フ
ァイバの伝送損失はそれぞれ104dB/km、88d
B/km、146dB/kmであった。また、85℃及
び70℃、相対湿度95%での耐久性試験を10000
hr行ったが、いずれの温度においても伝送損失の増加
は100dB/km程度であった。
【0101】
【発明の効果】本発明によれば、屈折率が高くかつ光学
特性に優れるメタクリル系共重合体を、従来技術では達
成できなかったレベルにまで重合体組成の変動を抑制し
ながら、安定かつ容易に製造することができる。さら
に、高速・大容量の情報伝送に適した広帯域のプラスチ
ック光ファイバ、プラスチック光ファイバケーブル、及
びプラグ付きプラスチック光ファイバケーブルを提供で
きる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例における運転時間に対する反
応混合物の(共)重合体含有率を示すグラフである。
【図2】本発明の一実施例における運転時間に対する反
応混合物の共重合体含有率を示すグラフである。
【図3】本発明の一実施例における運転時間に対する反
応混合物の(共)重合体含有率を示すグラフである。
【図4】比較例における運転時間に対する反応混合物の
(共)重合体含有率を示すグラフである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) // D01F 8/10 D01F 8/10 C (72)発明者 村上 智成 広島県大竹市御幸町20番1号 三菱レイヨ ン株式会社中央技術研究所内 Fターム(参考) 2H050 AA15 AA17 AB43X AB43Y AB48Y AB50X AB50Y AC03 AC05 4J011 AA04 AA07 FA02 FA05 FB04 FB05 HA01 HB02 NA25 PA34 PA38 PA45 4J100 AL03P AL08Q BC43Q CA04 DA62 FA03 FA04 FA18 FA19 FA28 FA47 GB02 GB05 GB18 JA35 4L041 AA07 BA02 BA04 BA05 BA21 BC06 CA55 DD01

Claims (11)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 全単量体量を100質量%としたとき、
    メチルメタクリレート0.1〜99.9質量%およびベ
    ンジルメタクリレート0.1〜99.9質量%からなる
    メタクリル系共重合体の製造方法であって、 メチルメタクリレート、ベンジルメタクリレート及びラ
    ジカル重合開始剤を含む原料あるいはさらに溶媒を含む
    原料を、120〜170℃で、共重合体含有率が30〜
    70質量%となるよう塊状重合または溶液重合せしめて
    共重合体組成物を得る重合工程と、該共重合体組成物中
    の揮発物を分離除去する揮発物除去工程を有することを
    特徴とするメタクリル系共重合体の製造方法。
  2. 【請求項2】 前記重合工程において、炭素数3〜6個
    のアルキルメルカプタンの存在下で重合を行うことを特
    徴とする請求項1に記載の製造方法。
  3. 【請求項3】 前記揮発物除去工程において、前記重合
    工程を経た共重合体組成物を予熱温度150〜250℃
    に加熱し、かつ該予熱温度におけるメチルメタクリレー
    トの蒸気圧以上に加圧して、細孔又はスリットを通して
    減圧下にあるベント押し出し機の供給部に供給し、さら
    にベント押し出し機の少なくとも最下流のベント部にお
    いて200〜270℃、50000Pa以下で揮発物を
    除去する請求項1又は2に記載の製造方法。
  4. 【請求項4】 前記重合工程において、槽型反応器を用
    いて連続的に重合を行うことを特徴とする請求項1、2
    又は3記載の製造方法。
  5. 【請求項5】 前記重合工程を経た共重合体組成物を連
    続的に供給して揮発物除去工程を実施することを特徴と
    する請求項4記載の製造方法。
  6. 【請求項6】 請求項1〜5のいずれか1項に記載の方
    法で得たメタクリル系共重合体であって、該共重合体に
    化学結合している硫黄原子の含有率が10ppm以上5
    000ppm以下で、該共重合体に化学結合していない
    硫黄原子の含有率が50ppm以下であることを特徴と
    するメタクリル系共重合体。
  7. 【請求項7】 芯材として請求項6記載の共重合体を用
    いたことを特徴とするプラスチック光ファイバ。
  8. 【請求項8】 同心円状に積層された多層構造を有する
    芯部とさらにその外周に積層された鞘部を有するプラス
    チック光ファイバであって、 前記芯部は、その中心部が請求項1〜5のいずれか1項
    に記載の方法で得られた共重合体からなり、該中心部の
    外周に別途製造したメチルメタクリレート重合体及び該
    中心部を構成する共重合体とは屈折率の異なる1種以上
    の請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法で得られた
    共重合体から選ばれる(共)重合体が中心部から外周部
    に向かって屈折率が低くなるように積層配置されている
    ことを特徴とするプラスチック光ファイバ。
  9. 【請求項9】 同心円状に積層された多層構造を有する
    芯部とさらにその外周に積層された鞘部を有するプラス
    チック光ファイバであって、 前記芯部は、その中心部が請求項6記載の共重合体から
    なり、該中心部の外周に別途製造したメチルメタクリレ
    ート重合体及び該中心部を構成する共重合体とは屈折率
    の異なる1種以上の請求項6記載の共重合体から選ばれ
    る(共)重合体が中心部から外周部に向かって屈折率が
    低くなるように積層配置されていることを特徴とするプ
    ラスチック光ファイバ。
  10. 【請求項10】 請求項7、8又は9に記載のプラスチ
    ック光ファイバの外周部に被覆層が形成されてなるプラ
    スチック光ファイバケーブル。
  11. 【請求項11】 請求項10記載のプラスチック光ファ
    イバケーブルの少なくともいずれか一方の先端にプラグ
    が配置されてなるプラグ付きプラスチック光ファイバケ
    ーブル。
JP2001001299A 2001-01-09 2001-01-09 メタクリル系共重合体およびその製造方法、並びにプラスチック光ファイバ、プラスチック光ファイバケーブル及びプラグ付きプラスチック光ファイバケーブル Pending JP2002201228A (ja)

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