JP2002201062A - 高周波用誘電体磁器組成物 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 比誘電率ε_rが１０〜２０で、高周波領域で
の誘電損失ｔａｎδが小さくかつ焼成温度変動に対する
ばらつきが小さく、さらに共振周波数ｆ。の温度係数τ
_fの調整が容易に実現できる高周波用誘電体磁器組成物
を提供する。 【解決手段】 組成式、ａＡｌ₂Ｏ₃−ｂＺｒＯ₂−ｃＴ
ｉＯ₂−ｄＳｎＯ₂（式中、０．４０６８＜ａ＜０．９５
５０、０＜ｂ＜０．１４８３、０．０２２５＜ｃ＜０．
３２６３、０．０２０３＜ｄ＜０．１１８６、ａ＋ｂ＋
ｃ＋ｄ＝１である。）で表されるアルミニウム、ジルコ
ニウム、チタン、スズ及び酸素からなる組成物を主成分
とする高周波用誘電体磁器組成物に関する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、比誘電率ε_rが１
０〜２０で、高周波領域での誘電損失ｔａｎδが小さ
く、さらに共振周波数ｆ₀の温度係数τ_fの調整が容易に
実現できる高周波用誘電体磁器組成物に関する。

【０００２】

【従来の技術】近年、通信網の急激な発展に伴い、通信
に使用する周波数が拡大すると同時に、マイクロ波領域
やミリ波領域の高周波領域に及んでいる。一方、マイク
ロ波回路やミリ波回路の大きさは、比誘電率ε_rが大き
くなるほど小型化が可能である。しかし、比誘電率ε_r
が大き過ぎると、マイクロ波領域以上の高周波領域に関
しては、加工精度が低下するため、比較的比誘電率ε_r
が小さい材料が必要となる。

【０００３】この種の誘電体磁器組成物として、ＢａＯ
−ＭｇＯ−ＷＯ₃系材料（特開平６−２３６７０８号公
報）、Ａｌ₂Ｏ₃−ＴｉＯ₂−Ｔａ₂Ｏ₅系材料（特開平９
−５２７６０号公報）などが提案されている。しかし、
高周波用としてはいまだ特性が不充分であり、さらに優
れた特性を有する誘電体磁器組成物が求められている。
また、量産性の点から、焼成温度などが多少の変動に対
しても特性のばらつきの小さい誘電体磁器組成物が求め
られている。

【０００４】一方、アルミナ（Ａｌ₂Ｏ₃）は、測定周波
数１０ＧＨｚで比誘電率ε_rが９．８、ｔａｎδが３〜
５×１０^-5と良好な誘電特性を示すが、共振周波数の温
度係数τ_fが−５５ｐｐｍ／℃であるため、用途が制限
されている。また、Ａｌ₂Ｏ₃は焼結温度が１６００℃以
上と高く、焼結工程のコストが高くなるという問題があ
る。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、上記
の問題を解消し、比誘電率ε_rが１０〜２０で、ｔａｎ
δも小さく、さらに共振周波数ｆ₀の温度係数τ_fの絶対
値が３０ｐｐｍ／℃以下で調整が容易に実現でき、特性
のばらつきの少ない高周波用誘電体磁器組成物を提供す
ることにある。

【０００６】

【課題を解決するための手段】本発明は、組成式、ａＡ
ｌ₂Ｏ₃−ｂＺｒＯ₂−ｃＴｉＯ₂−ｄＳｎＯ₂（式中、
０．４０６８＜ａ＜０．９５５０、０＜ｂ＜０．１４８
３、０．０２２５＜ｃ＜０．３２６３、０．０２０３＜
ｄ＜０．１１８６、ａ＋ｂ＋ｃ＋ｄ＝１である。）で表
されるアルミニウム、ジルコニウム、チタン、スズ及び
酸素からなる組成物を主成分とする高周波用誘電体磁器
組成物に関する。

【０００７】

【発明の実施の形態】本発明における組成の限定理由を
説明する。組成式、ａＡｌ₂Ｏ₃−ｂＺｒＯ₂−ｃＴｉＯ₂
−ｄＳｎＯ₂で表されるアルミニウム、ジルコニウム、
チタン、スズ及び酸素からなる組成物を主成分とする高
周波用誘電体磁器組成物において、ａが０．４０６８よ
り小さいと誘電体のｔａｎδが増加し、０．９５５０を
越えると共振周波数ｆ₀の温度係数τ_fの絶対値が３０ｐ
ｐｍ／℃より大きくなり好ましくない。また、Ｚｒを含
有させるとｔａｎδが小さくなると共に、焼成温度の変
動に対してｔａｎδの特性のばらつきが小さくなる。し
かし、ｂが０．１４８３を越えるとｔａｎδが増加する
ので好ましくない。また、ｃが０．０２２５より小さい
と共振周波数ｆ₀の温度係数τ_fの絶対値が３０ｐｐｍ／
℃より大きくなり、０．３２６３を越えるとｔａｎδが
著しく増加するので好ましくない。また、ｄが０．０２
０３より小さいと共振周波数ｆ₀の温度係数τ_fの絶対値
が３０ｐｐｍ／℃より大きくなり、０．１１８６を越え
るとｔａｎδが著しく増加するので好ましくない。

【０００８】また、本発明において、好適な誘電特性を
得るために副成分としてＴａ₂Ｏ₅及び／又はＮｉＯを含
有させることが好ましい。Ｔａ₂Ｏ₅の含有量は、過度に
大きいとｔａｎδが増加するので、前記主成分に対する
Ｔａ₂Ｏ₅の重量比ｅが０＜ｅ＜０．０５とするのが好ま
しい。また、ＮｉＯの含有量は、過度に大きいとｔａｎ
δが増加するので、前記主成分に対するＴａ₂Ｏ₅の重量
比ｆが０＜ｆ＜０．０５とするのが好ましい。特に、Ｔ
ａ₂Ｏ₅とＮｉＯとを併用することにより、特性のばらつ
きが小さくなると共に、さらに小さいｔａｎδを有する
高周波用誘電体磁器組成物を得ることができる。

【０００９】本発明の高周波用誘電体磁器組成物の好適
な製造方法の一例を次に示す。酸化アルミニウム、酸化
ジルコニウム、酸化チタン、酸化スズ、及び副成分であ
る酸化タンタル及び酸化ニッケルから構成される出発原
料を所定量ずつ、水、アルコール等の溶媒と共に湿式混
合する。続いて、水、アルコールを除去した後、粉砕す
る。続いて、このようにして得られた粉末にポリビニル
アルコールの如き有機バインダーを混合して均質にし、
乾燥、粉砕、加圧成形（圧力１００〜１０００ｋｇ／ｃ
ｍ²程度）する。得られた成型物を空気の如き酸素含有
ガス雰囲気下にて１４００〜１６００℃で焼成すること
により上記組成式で表される誘電体磁器組成物が得られ
る。

【００１０】このようにして得られた誘電体磁器組成物
は、必要により適当な形状、及びサイズに加工、あるい
はドクターブレード法等によるシート成形、及びシート
と電極による積層化することにより、誘電体共振器、誘
電体基板、積層素子等の材料として利用できる。

【００１１】なお、アルミニウム、ジルコニウム、チタ
ン、スズ、タンタル、ニッケルの原料としては、Ａｌ₂
Ｏ₃、ＺｒＯ₂、ＴｉＯ₂、ＳｎＯ₂、Ｔａ₂Ｏ₅、ＮｉＯの
他に、焼成時に酸化物となる硝酸塩、炭酸塩、水酸化
物、塩化物、有機金属化合物等を使用することができ
る。

【００１２】

【実施例】実施例１ 主成分としてＡｌ₂Ｏ₃を０．６７６２モル、ＺｒＯ₂を
０．０８１０モル、ＴｉＯ₂を０．１７８１モル、Ｓｎ
Ｏ₂を０．０６４８モル、副成分としてＴａ₂Ｏ₅を主成
分に対する重量比で０．０２、及び副成分としてＮｉＯ
を主成分に対する重量比で０．０２で構成される原料粉
をエタノール、ＺｒＯ₂ボールと共にボールミルに入
れ、２４時間湿式混合した。溶液を脱媒後、粉砕した。
引き続き、この粉砕物に適量のポリビニルアルコール溶
液を加えて乾燥後、直径１１ｍｍ、厚み６ｍｍのペレッ
トに成形し、空気雰囲気下において、1５２５℃で４時
間焼成した。

【００１３】こうして得られた実施例１の磁器組成物を
直径９．５ｍｍ、厚み４ｍｍの大きさに加工した後、誘
電共振法によって測定し、共振周波数８〜１０ＧＨｚに
おける誘電損失ｔａｎδ、比誘電率ε_r、及び共振周波
数の温度係数τ_fを求めた。その結果を表２に示す。比
誘電率ε_rが１０〜２０で、共振周波数８〜１０ＧＨｚ
における誘電損失ｔａｎδが２．８×１０^-5と非常に小
さく、共振周波数の温度係数τ_fの絶対値が２０ｐｐｍ
／℃程度の優れた特性の誘電体を得ることができた。得
られた誘電体磁器組成物についてＸ線回折を行ったとこ
ろ、主としてα−Ａｌ₂Ｏ₃とＺｒ_0.75Ｔｉ_0.75Ｓｎ_0.5
Ｏ₄が生成していることがわかった。図１にそのＸ線回
折図を示す。

【００１４】実施例２〜５ 主成分としてＡｌ₂Ｏ₃、ＺｒＯ₂、ＴｉＯ₂、ＳｎＯ₂、
及び副成分としてＴａ₂Ｏ₅、ＮｉＯを表１に示した配合
量で混合後、実施例１と同一条件で成形し、空気雰囲気
下において、１５２５℃、４時間の焼成条件で誘電体セ
ラミックスを作製し、実施例１と同様な方法で特性を評
価した。その結果を表２に示す。

【００１５】実施例６ａ〜６ｇ 主成分としてＡｌ₂Ｏ₃、ＺｒＯ₂、ＴｉＯ₂、ＳｎＯ₂、
及び副成分としてＴａ₂Ｏ₅、ＮｉＯを表１に示した配合
量で混合後、実施例１と同一条件で成形し、空気雰囲気
下において、表２に記載の焼成温度で４時間の焼成条件
で誘電体セラミックスを作成し、実施例１と同様な方法
で特性を評価した。その結果を表２に示す。この結果か
ら、焼成温度の変動に対してもｔａｎδのばらつきは小
さく、安定して製造できることがわかる。

【００１６】実施例７〜１１ 副成分を添加せず、主成分としてＡｌ₂Ｏ₃、ＺｒＯ₂、
ＴｉＯ₂、ＳｎＯ₂を表１に示した配合量で混合後、実施
例１と同一条件で成形し、空気雰囲気下において、１５
２５℃、４時間の焼成条件で誘電体セラミックスを作製
し、実施例１と同様な方法で特性を評価した。その結果
を表２に示す。

【００１７】比較例１〜２ 主成分としてＡｌ₂Ｏ₃、ＺｒＯ₂、ＴｉＯ₂、ＳｎＯ₂、
及び副成分としてＴａ₂Ｏ₅、ＮｉＯを表１に示した配合
量で混合後、実施例１と同一条件で成形し、空気雰囲気
下において、表２に記載の焼成温度で４時間の焼成条件
で誘電体セラミックスを作成し、実施例１と同様な方法
で特性を評価した。その結果を表２に示す。本発明の範
囲外の組成では、誘電損失ｔａｎδまたは共振周波数の
温度係数τ_fの絶対値が大きくなり好ましくない。

【００１８】比較例３ａ〜３ｅ 主成分としてＺｒＯ₂を含有せず、Ａｌ₂Ｏ₃、ＴｉＯ₂、
ＳｎＯ₂、及び副成分としてＴａ₂Ｏ₅、ＮｉＯを表１に
示した配合量で混合後、実施例１と同一条件で成形し、
空気雰囲気下において、表２に記載の焼成温度で４時間
の焼成条件で誘電体セラミックスを作成し、実施例１と
同様な方法で特性を評価した。その結果を表２に示す。
この結果から、ＺｒＯ₂を含有しない系では、焼成温度
の変動に対してもｔａｎδのばらつきが大きくなること
がわかる。

【００１９】

【表１】

【００２０】

【表２】

【００２１】

【発明の効果】本発明によれば、比誘電率ε_rが１０〜
２０で、高周波数領域での誘電損失ｔａｎδが小さくか
つ焼成温度の変動に対してもばらつきが少なく、さらに
共振周波数ｆ。の温度係数τ_fの調整が容易に実現でき
る高周波用誘電体磁器組成物を提供することができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の誘電体磁器組成物のＸ線回折図であ
る。

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Ｆターム(参考） 4G030 AA16 AA17 AA21 AA29 AA36 AA39 BA09 5G303 AA02 AA05 AB06 AB07 AB11 BA12 CA01 CB01 CB23 CB31 CB33 CB35 CB39 CD01 CD04 DA05 5J006 HC07

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 組成式、ａＡｌ₂Ｏ₃−ｂＺｒＯ₂−ｃＴ
   ｉＯ₂−ｄＳｎＯ₂（式中、０．４０６８＜ａ＜０．９５
   ５０、０＜ｂ＜０．１４８３、０．０２２５＜ｃ＜０．
   ３２６３、０．０２０３＜ｄ＜０．１１８６、ａ＋ｂ＋
   ｃ＋ｄ＝１である。）で表されるアルミニウム、ジルコ
   ニウム、チタン、スズ及び酸素からなる組成物を主成分
   とする高周波用誘電体磁器組成物。
2. 【請求項２】 副成分としてＴａ₂Ｏ₅を含有し、前記主
   成分に対するＴａ₂Ｏ₅の重量比ｅが０＜ｅ＜０．０５で
   あることを特徴とする請求項１記載の高周波用誘電体磁
   器組成物。
3. 【請求項３】 副成分としてＮｉＯを含有し、前記主成
   分に対するＮｉＯの重量比ｆが０＜ｆ＜０．０５である
   ことを特徴とする請求項１又は２記載の高周波用誘電体
   磁器組成物。