JP2002180200A - 硬引きばね用鋼線材、硬引きばね用伸線材および硬引きばね並びに硬引きばねの製造方法 - Google Patents
硬引きばね用鋼線材、硬引きばね用伸線材および硬引きばね並びに硬引きばねの製造方法Info
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Abstract
疲労強度、耐へたり性を発揮する硬引きばねを製造する
為のばね用鋼線材、ばね用伸線材、およびこの様な硬引
きばね、並びにこうした硬引きばねを低コストで製造す
る為の有用な方法等を提供する。 【解決手段】 本発明の硬引きばね用鋼線材は、C:
0.5〜0.7質量%未満、Si:1.6〜3質量%、
Mn:0.5〜1.5質量%、Ni:0.05〜0.5
質量%、Cr:0.05〜1.5質量%およびV:0.
05〜0.25質量%を夫々含有すると共に、パーライ
ト組織の面積率Rpが下記(1)式を満足するものであ
る。 Rp(面積%)≧55×[C]+61…(1) 但し、[C]はCの含有量(質量%)を示す。
Description
弁ばね、クラッチばねおよびブレーキばね等の素材とし
て有用な硬引きばね用鋼線材、およびこのばね用鋼線材
を使用した硬引きばね用伸線材やばね、並びにこうした
硬引きばねを製造する為の有用な方法等に関するもので
ある。
ばね、クラッチばね、ブレーキばね等においても高応力
化が指向され、疲労強度および耐へたり性に優れたばね
が要求されている。特に、弁ばねの高応力化に対する要
求が強い傾向にあるのが実状である。
線と呼ばれる焼入れ・焼戻しの施された鋼線を、常温で
ばね巻き加工して製造されているのが一般的である。こ
うしたばねの製造方法として、例えばJIS規格では一
般のオイルテンパー線(JIS G3560)とは別
に、弁ばね用オイルテンパー線(JIS G3561)
を規定しており、鋼種、不純物レベル、きず深さ等をよ
り厳しく管理する様に要求されている。
マルテンサイト組織であるので、高強度を得るのに都合
が良く、また疲労強度や耐へたり性に優れるという利点
があるものの、焼入れ・焼戻し等の熱処理に大掛かりな
設備と処理コストを要するという欠点がある。
部の弁ばねには、フェライト・パーライト組織またはパ
ーライト組織の炭素鋼を伸線加工して強度を高めた線材
(「硬引き線」と呼ばれている)を、常温でばね巻き加
工したものが使用されている。こうしたばねとして、J
IS規格にはピアノ線(JIS G3522)の中で、
特に「弁ばねまたはこれに準ずるばね用」として、「ピ
アノ線V種」を定めている。
ね(以下では、このばねを「硬引きばね」と呼ぶ)は、
熱処理を必要としないので低コストになるという利点が
ある。しかしながら、フェライト・パーライト組織また
はパーライト組織を伸線した線材では、疲労特性や耐へ
たり性が低いという欠点があり、こうした線材を素材と
して用いても、近年要望の高まっている様な高応力ばね
は実現できない。
引きばねにおいて、より高応力化を図る技術も様々検討
されており、こうした技術として例えば特開平11−1
99981号には、オーステンパー線と同等の特性を備
えたピアノ線として、共析〜過共析鋼パーライトの伸線
加工方法を工夫することによって、特定のセメンタイト
形状を得る方法が提案されている。しかしながらこうし
た方法においても、伸線方向を入れ替えるなど、工程の
複雑化による製造コストの上昇は避けられない。
の下になされたものであって、その目的は、オイルテン
パー線を用いたばねと同等以上の疲労強度、耐へたり性
を発揮する硬引きばねを製造する為のばね用鋼線材、ば
ね用伸線材、およびこの様な硬引きばね、並びにこうし
た硬引きばねを低コストで製造する為の有用な方法等を
提供することにある。
本発明の硬引きばね用鋼線材とは、C:0.5〜0.7
質量%未満、Si:1.6〜3質量%、Mn:0.5〜
1.5質量%、Ni:0.05〜0.5質量%、Cr:
0.05〜1.5質量%およびV:0.05〜0.25
質量%を夫々含有すると共に、パーライト組織の面積率
Rpが下記(1)式を満足するものである点に要旨を有
するものである。 Rp(面積%)≧55×[C]+61…(1) 但し、[C]はCの含有量(質量%)を示す。
きばね用伸線材とは、C:0.5〜0.7質量%未満、
Si:1.6〜3質量%、Mn:0.5〜1.5質量
%、Ni:0.05〜0.5質量%、Cr:0.05〜
1.5質量%およびV:0.05〜0.25質量%を夫
々含有すると共に、パーライト組織の面積率Rpが下記
(1)式を満足し、且つ線材の引張強さTSが下記
(2)式を満足するものである点に要旨を有するもので
ある。 Rp(面積%)≧55×[C]+61…(1) 但し、[C]はCの含有量(質量%)を示す。 −13.1d3+160d2−671d+3200≧TS≧−13.1d3+160d2−671d+2800…(2) 但し、d:線材の直径(mm)[1.0≦d≦10.
0]
材を用いることによって、高応力を発揮する硬引きばね
が得られる。また、この硬引きばねにおいては、ばね内
側における表層残留応力が圧縮から引張りに転ずる深さ
が0.05mm以上のものであることが好ましく、より
好ましくはこのこの深さが0.15mm以上のものであ
る。更に、この硬引きばねには、その表面に窒化処理を
施すことも有効である。
り、ショットピーニング後に、室温以上の温度で、下記
(3)式を満足する応力τ(MPa)を少なくとも1回
付与する様にすれば良い。また、この製造方法において
は、応力τを付与するときの温度は120℃以上である
ことが好ましい。 τ≧線材の引張強さTS(MPa)×0.5…(3)
ることのできる硬引きばね用鋼の実現を目指して様々な
角度から検討した。その結果、鋼線材の化学成分組成を
厳密に規定すると共に、線材中のパーライト組織面積率
を含有炭素量との関係で適切な範囲[前記(1)式で規
定する範囲]に制御した鋼線材では、オイルテンパー線
を用いたばねと同等以上の疲労強度、耐へたり性を発揮
する硬引きばね得られることを見出し、本発明を完成し
た。
を適切に調製する必要があるが、その範囲限定理由は下
記の通りである。
を確保するために有用なな元素であり、通常のピアノ線
では0.8質量%前後含有されているが、本発明で目的
としている様な高強度の伸線材においては、Cの含有量
が0.7質量%以上になると欠陥感受性を増大させ、表
面疵や介在物からの亀裂を発生して疲労寿命が劣化する
ことが分かったので、0.7質量%未満に限定した。但
し、C含有量が0.5質量%未満になると、高応力ばね
として必要な引張強さが確保できないばかりか、疲労亀
裂発生を助長する初析フェライトの量が多くなって疲労
特性を劣化させるので、C含有量の下限は0.5質量%
とする必要がある。
労特性と耐へたり性の改善に貢献する元素である。C含
有量を低めにした分だけSiを高めに含有させる必要が
あり、こうした観点からその下限は1.6質量%とし
た。しかしながら、Siの含有量が2.5質量%を超え
て過剰になると、表面の脱酸や疵等が増加して耐疲労性
が悪くなる。尚、Si含有量の好ましい下限は1.7質
量%程度であり、好ましい上限は2.2質量%程度であ
る。
性の改善に貢献する元素である。こうした効果を発揮さ
せる為には、Mnは少なくとも0.5質量%含有させる
必要があるが、過剰に含有させると熱間圧延時やパテン
ティング処理時にベイナイト組織が生成し易くなり、疲
労特性を劣化させるので、1.5質量%以下とすべきで
ある。尚、Mn含有量のより好ましい下限は0.7質量
%程度であり、より好ましい上限は1.0質量%程度で
ある。
ね巻き加工時の折損トラブルを抑制すると共に、疲労寿
命を向上させるのに有効な元素である。こうした効果を
発揮させる為には、0.05質量%以上含有させる必要
がある。しかしながら、Niを過剰に含有させると、熱
間圧延時やパテンティング処理時にベイナイト組織が生
成し易くなり、逆効果となるので、0.5質量%以下と
する必要がある。尚、Ni含有量の好ましい下限は、
0.15質量%であり、好ましい上限は0.30質量%
である。
または熱処理後の強度を上昇させ、耐へたり性を向上さ
せるのに有用な元素である。こうした効果を発揮させる
ためには、Cr含有量は0.05質量%以上とする必要
がある。しかしながら、Cr含有量が過剰になると、パ
テンティング時間が長くなり過ぎ、また靭性や延性が劣
化するので、1.5質量%以下とする必要がある。
工性、ばねの靭性および耐へたり性等を改善するのに有
用な元素である。こうした効果を発揮させる為には、V
は0.05質量%以上含有させる必要があり、好ましく
は0.10質量%以上含有させるのが良い。しかしなが
ら、0.25質量%を超えて過剰に含有させても、熱間
圧延時やパテンティング処理時にベイナイト組織が生成
し易くなり、疲労寿命を劣化させることになる。
学成分組成は上記の通りであり、残部は実質的にFeか
らなるものであるが、上記の各種成分以外にもばね用鋼
の特性を阻害しない程度の微量成分を含み得るものであ
り、こうした鋼線材も本発明の範囲に含まれものであ
る。上記微量成分としては不純物、特にP,S,As,
Sb,Sn等の不可避不純物が挙げられる。
のパーライト組織面積率を含有炭素量との関係で適切な
範囲[前記(1)式で規定する範囲]に制御する必要が
あるが、この理由は下記の通りである。本発明に用いら
れる鋼材のC含有量は、前述の如く、0.5〜0.7質
量%未満と共析成分よりも低くしなければならないので
あるが、この様な鋼材から線材を通常の方法で製造する
と初析フェライト組織が生成し、この初析フェライト組
織は疲労破壊の起点となてって疲労寿命を劣化させるこ
とになる。こうした不都合を回避する為には、初析フェ
ライトをできるだけ少なくし、パーライト組織分率を高
くすることが必要になる。
積率の関係を示したものである。一般的な炭素鋼では、
パーライト面積率が比較的低い組織であるが、本発明の
鋼線材では、上記した観点からパーライト面積率が炭素
含有量との関係からして比較的高い組織となっているの
である。
には、熱間圧延時またはパテンティング処理時にAe3
変態点(オーステナイトとフェライトが平衡に共存でき
る上限温度)より高い温度から、Ae1変態点(フェラ
イトとセメンタイトが共存できる上限温度)以下の温度
にできるだけ急速に冷却することが有効である。具体的
には、熱間圧延の場合にはコンベア上の冷却条件を上記
温度領域において、冷却速度を5℃/s以上、好ましく
は10℃/s以上に管理することが有効である。但し、
必要以上に冷却を続行することは、精細なパーライト組
織が得られなくなり、ベイナイトの様な過冷組織が混入
して靭性を劣化させるので、冷却条件をコンベアの位置
ごとに管理し、線材の温度が約550℃以下の領域まで
は冷却を緩めることが推奨される。
態点からAe1変態点までの冷却が比較的速くなるが、
恒温保持に利用する媒体としては熱伝導率の高いものを
選定することが望ましい。具体的には、例えば流動槽よ
りも、鉛浴や塩浴を利用することが望ましい。更に冷却
を速める為には、オーステナイト化加熱炉から恒温保持
炉へ入る間のにプロセスに冷却工程を介在させ、この冷
却工程によって強制冷却することが好ましい。また冷却
速度を大きくする為には、線材の送給速度をできるだけ
大きくすることも有効である。尚、パーライト面積率R
pについては、伸線加工やその後のばね巻き加工によっ
ても大きく変化することがないので、面積率の測定は伸
線加工後の線材やばね製品において実施しても良い。
およびばね巻き加工を施すことによって、希望する特性
を発揮するばねが得られるのであるが、こうした効果を
より有効に発揮させるためには、伸線加工線材が上記
(2)式の関係を満足することが有効である。
−Vについては、引張強さが線材の直径に応じて規定さ
れているが、一般ばね用のSWP−B等よりも低いTS
に設定されている。その理由は、引張強さを高くし過ぎ
ると欠陥感受性の増加や靭・延性の低下等を招き、伸線
中の断線、ばね加工中の折損、疲労破壊、脆性破壊等の
問題が生じる可能性があるからと考えられる。
げて、靭・延性を高めることによって、上記(2)式右
辺の値以上のTS領域でのばねの製造と使用に適したも
のとしたのである。但し、この引張強さTSを高くし過
ぎると、欠陥感受性や靭・延性の低下による悪影響が防
ぎきれないので、その上限を上記(2)の左辺の値まで
とした。こうした要件を満足する伸線材は、従来の伸線
設備によって伸線することによっても可能であるが、特
に高強度な線材を塑性加工することになるので、断線を
起こさない様にその条件を適切に考慮することが望まれ
る。こうした観点から、(1)伸線前処理としてリン酸
塩被膜を施した上で潤滑剤には金属石鹸を用いること、
(2)伸線ダイス個々の減面率は15〜25%の範囲と
すること(但し、残留応力制御の為に最終ダイスのみ減
面率を下げても良い)、(3)伸線中の温度上昇を防ぐ
為に伸線速度を上げ過ぎない様にする、等に留意すべき
である。
おける表層残留応力が圧縮から引張りに転ずる深さが
0.05mm以上であることが好ましく、より好ましく
はこのこの深さが0.15mm以上のものである。通
常、弁ばねやそれに準ずる高応力ばねには、ショットピ
ーニングによって表層に圧縮残留応力が付与された状態
で使用されるのであるが、表層(ばね内側部分の表層)
から深さ方法圧縮残留応力を順次測定していくと、或る
深さから引張強さに転ずる。そして、この深さ(以下、
「クロシングポイント」と呼ぶ)は、ショットピーニン
グ条件、材料の硬さ、ショットピーニング前の母材の残
留応力分布等に依存する。通常の硬引き線の表層には、
伸線加工による引張残留応力が生じているので、ショッ
トピーニング後の残留応力のクロシングポイントは、オ
イルテンパー線などに比べて小さくなる傾向がある。こ
れに対し本発明の線材では、一般に硬引きばねよりも高
応力での使用を想定したものであることから、オイルテ
ンパー線製ばねにおいてなされる条件よりも強くショッ
トピーニングを施し、クロシングポイントを意図的に
0.05mm以上、より好ましくは0.15mm以上と
なる様に管理することが望ましい。
る様にする為には、伸線加工の引張残留応力を低減する
為に、(a)伸線時の最終ダイスの減面率を10%以
下、好ましくは3〜6%程度とすること、(b)ばね巻
き加工の歪取焼鈍温度を360℃以上に高めること、
(c)ショットピーニング工程において平均直径0.6
mm以上、好ましくは0.8mm以上のショット粒によ
る投射を少なくとも1度行なうこと、等が有効である。
使用されることが予想される場合には、その表面に窒化
処理を施すことも有効である。こうした窒化処理を施す
ことによって、疲労強度を更に改善することができる。
こうした窒化処理に関しては、オイルテンパー線の弁ば
ねについては従来からその処理が行なわれているが、硬
引きばねについては、全く行われていなかった。これ
は、硬引きばねでは、それほど過酷な条件で使用された
ことがなかったことや、通常の硬引き線の化学成分では
窒化処理を施しても効果があまり期待できないと考えら
れていたこと等が原因である。
組成を有する線材を硬引きした後、窒化処理を施すと、
疲労寿命が改善されることになる。こうした効果が発揮
される理由は、次の様に考えることができた。即ち、本
発明のばねはC含有量が低いものであるので、パーライ
ト組織を構成するセメンタイト相に対してフェライト相
の体積が高くなっており、且つフェライトをSi,V,
Cr等の合金元素で強化することによって線材の強度が
フェライト自身の強度に依存する状態になっているの
で、窒化によってフェライトの強度を高めることが疲労
強度の直接的な改善に繋がるものと考えられる。尚、本
発明者らが確認したところによれば、窒化処理を施すこ
とによる効果は、特に表層10μm位置で硬さをHV6
00以上(好ましくはHV700以上)となる様に処理
したときに大きいことが判明した。
は、ショットピーニング後に、室温好ましくは120℃
以上の温度で、前記(3)式を満足する応力τを少なく
とも1回付与することが有効である。一般に硬引きばね
は、オイルテンパー線製ばねに比べて耐へたり性が低
い。本発明では鋼材成分や線材引張強さの上昇によって
耐へたり性の改善を図るものであるが、その使用目的や
使用条件によっては更に高い耐へたり性が要求される場
合がある。こうした場合には、室温(好ましくは120
℃以上の温度)で、前記応力τを少なくとも1回付与す
ることが有効である。これによって、伸線加工で導入さ
れた転位を固着し、塑性変形に対する抵抗を高めること
ができると考えられる。尚、上記(3)式における線材
の引張強さTSとは、伸線加工材のときに測定される値
である。
説明するが、下記実施例は本発明を限定する性質のもの
ではなく、前・後記の趣旨に徴して設計変更することは
いずれも本発明の技術的範囲に含まれるものである。
を溶製し、熱間圧延して直径:9.0mmの鋼線材を作
製した。その後、鋼D以外に軟化焼鈍を施し、更に全て
の鋼種において皮削り、パテンティング処理および伸線
処理を行なって各線径とした。このとき、パテンティン
グ処理は、オーステナイト化加熱温度を940℃とし、
線速を8.0m/minと比較的速めると共に、No.
1〜8,10,13については、パーライト面積率を高
める為に620℃の鉛炉との間で強制的に高圧エアーを
吹き付け急冷後に鉛炉に入る様にした。伸線はダイス枚
数8枚の連続伸線機を使用し、最終ダイス以外の各ダイ
スの減面率を15〜25%、最終ダイスを5%と設定
し、最終ダイスの伸線速度を200m/minにて実施
した。また、伸線に伴う線材の温度上昇を防ぐ為に、線
材を直接水冷しながら冷却する冷却伸線を実施した。
鈍(400℃×20分)、座研磨、二段ショットピーニ
ング、低温焼鈍(230℃×20分)およびセッチング
(τ max=1200MPa相当)を行なった。No.4
〜8のサンプルにおいては、セッチングを低温焼鈍の余
熱を利用して180℃程度の温度で実施した。また、N
o.5,6のものについては、460℃にて5時間の窒
化処理も施した。パーライト面積率は、パテンティング
後の鋼線の断面積における光学顕微鏡写真(400倍×
10視野)を、コンピュータで画像解析して評価した。
負荷応力下で疲労試験を行ない、破断寿命を測定した。
また、120℃、882MPaの応力下で、48時間締
め付けた後、残留せん断歪を測定し、耐へたり性の指標
(残留せん断歪が小さいほど耐へたり性は良好)とし
た。これらの結果を、各製造条件、線材の引張強さT
S、クロシングポイント、10μm位置(深さ)の硬さ
等と共に下記表2に示す。
角度傾斜させて樹脂に埋め込み、研磨したサンプル上で
ビッカース硬さ(荷重300g)を測定し、垂直方向に
換算するいわゆる「コード法」によった。また、残留応
力については、X線回折法によった。深さ方向のプロフ
ァイルについては、化学研磨にて表層を除去し、X線回
折測定を行なうことによって評価した。
まず、No.1のものは、前記(1)式を満足するもの
であるが、伸線時の減面率が低いために硬引き線のTS
が前記(2)式の低い方に外れたものとなっている。こ
の結果、耐へたり性の点では他よりも劣る結果となった
が、疲労寿命については他の実施例に匹敵する長寿命を
示してした。
び(2)式のいずれをも満足するものであり、疲労寿命
および耐へたり性のいずれも優れたものとなっている。
このうち、No.2のものでは、No.3と同じ鋼線を
用いているが、ショットピーニング条件を変化(一段目
のショット粒を小さくしたもの)させたもので、クロシ
ングポイントが浅くなっている。これによって、No.
2の疲労寿命はNo.3のものに比べて劣っているが、
耐へたり性は同等レベルである。
0℃以上での応力付与を実施したものであり、耐へたり
性は向上しているが疲労寿命は同レベルである。No.
5のものは、No.4に対して窒化処理を施したもので
あり、耐へたり性は同等であるが疲労寿命が向上してい
る。No.6のものは、素材や処理内容はNo.5と同
等であるが、伸線加工度と線材直径が異なるものであ
り、2113MPaの高い引張強さが得られており、疲
労寿命も向上している。No.7は、C含有量が比較的
低い鋼種を用いたものであり、またNo.8は逆に高い
鋼種を用いたものであるが、いずれも良好な耐へたり性
と疲労特性を示している。
本発明で規定する要件のいずれかを欠く比較例であり、
いずれかの特性が劣化していることが分かる。No.9
のものでは、化学成分組成はNo.1〜6のものと同じ
ものであるが、パテンティング処理時にガス冷却を行な
わなかった為に、初析フェライトが生じてパーライト面
積率が本発明で規定する範囲よりも低くなったものであ
る。こうしたことから、引張強さTSについてはNo.
7と同程度の値が得られているにも関わらず、疲労寿命
が著しく低くなっている。
2B相当鋼であり、耐へたり性、疲労寿命ともに実施例
のものよりも劣っている。疲労寿命が劣るのは、C含有
量が高くなって欠陥感受性が高くなり、疲労起点が早期
に形成されたからと考えられる。また、耐へたり性が劣
るのは、Si,Cr,V等の含有量が少なかったことに
よるものと考えられる。
く、CrやVも含有しているが、C含有量が高くなった
鋼種を用いたものであり、耐へたり性は良好であるが、
疲労寿命が劣っている。
りSi含有量がやや少ないものであり、耐へたり性が低
くなっている。またNo.13のものは、C含有量は本
発明で規定する範囲内にあるが、Si含有量がやや少な
くなっており、疲労特性はNo.10〜12よりやや良
いが、実施例ほどの性能が得られておらず、また耐へた
り性が非常に劣っている。
イルテンパー線を用いたばねと同等以上の疲労強度、耐
へたり性を発揮する硬引きばねを製造する為のばね用鋼
線材、ばね用伸線材、およびこの様な硬引きばね、並び
にこうした硬引きばねを低コストで製造する為の有用な
方法が実現できた。
示したグラフである。
Claims (8)
- 【請求項1】 C:0.5〜0.7質量%未満、Si:
1.6〜2.5質量%、Mn:0.5〜1.5質量%、
Ni:0.05〜0.5質量%、Cr:0.05〜1.
5質量%およびV:0.05〜0.25質量%を夫々含
有すると共に、パーライト組織の面積率Rpが下記
(1)式を満足するものであることを特徴とする硬引き
ばね用鋼線材。 Rp(面積%)≧55×[C]+61…(1) 但し、[C]はCの含有量(質量%)を示す。 - 【請求項2】 C:0.5〜0.7質量%未満、Si:
1.6〜3質量%、Mn:0.5〜1.5質量%、N
i:0.05〜0.5質量%、Cr:0.05〜1.5
質量%およびV:0.05〜0.25質量%を夫々含有
すると共に、パーライト組織の面積率Rpが下記(1)
式を満足し、且つ線材の引張強さTSが下記(2)式を
満足するものであることを特徴とする硬引きばね用伸線
材。 Rp(面積%)≧55×[C]+61…(1) 但し、[C]はCの含有量(質量%)を示す。 −13.1d3+160d2−671d+3200≧TS≧−13.1d3+160d2−671d+2800…(2) 但し、d:線材の直径(mm)[1.0≦d≦10.
0] - 【請求項3】 請求項1または2に記載のばね用鋼線材
またはばね用伸線材を用いて製造されたものである硬引
きばね。 - 【請求項4】 ばね内側における表層残留応力が圧縮か
ら引張りに転ずる深さが0.05mm以上のものである
請求項3に記載の硬引きばね。 - 【請求項5】 ばね内側における表層残留応力が圧縮か
ら引張りに転ずる深さが0.15mm以上のものである
請求項4に記載の硬引きばね。 - 【請求項6】 表面に窒化処理が施されたものである請
求項3〜5のいずれかに記載の硬引きばね。 - 【請求項7】 請求項3〜5のいずれかに記載の硬引き
ばねを製造するに当たり、ショットピーニング後に、室
温以上の温度で、下記(3)式を満足する応力τ(MP
a)を少なくとも1回付与することを特徴とする硬引き
ばねの製造方法。 τ≧線材の引張強さTS(MPa)×0.5…(3) - 【請求項8】 前記応力τを付与するときの温度が12
0℃以上である請求項7に記載の製造方法。
Priority Applications (6)
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JP2000387640A JP3940264B2 (ja) | 2000-12-20 | 2000-12-20 | 硬引きばね用鋼線材、硬引きばね用伸線材および硬引きばね並びに硬引きばねの製造方法 |
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