JP3922026B2 - 鋼線材および鋼線 - Google Patents

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、鋼線材および鋼線に関する。より詳しくは、本発明は、例えば、自動車のラジアルタイヤや各種産業用ベルト、さらには各種ホースの補強材として用いられるスチールコード、さらにはソーイングワイヤ等の用途に好適な鋼線材および鋼線に関する。
【0002】
【従来の技術】
図1は、自動車のラジアルタイヤや各種産業用ベルト、さらには各種ホースの補強材として用いられるスチールコードの製造工程の一例を示す説明図である。同図に示すように、スチールコード用鋼線は、一般に、素材である丸棒に熱間圧延を行った後に調整冷却して得られた線径(直径)が5〜6mmの鋼線材に、1次伸線加工を行って直径を3〜4mmにし、次いで、パテンティング処理を行い、さらに2次伸線加工を行って1〜2mmの直径とする。この後、最終パテンティング処理を行い、次いで、ブラスメッキを施し、さらに最終湿式伸線加工を行って0.15〜0.4mm の直径とする。さらに、このようにして得られた極細鋼線を複数本撚り合わせる撚り加工を行って撚り鋼線とすることにより、スチールコードが製造される。
【0003】
このような鋼線の素材となる鋼線材としては、特開2000−309849号公報に開示されるように、C:0.75〜0.92% (以下、本明細書においては特にことわりがない限り「%」は「質量%」を意味するものとする) 、Si:0.1 〜1.0 %、Mn:0.1 〜1.0 %、Cr:1.0 %以下、Cu:0.5 %以下、Ni:1.0 %以下、Co:2.0 %以下、Mo:0.5 %以下、W:0.5 %以下、V:0.2 %以下、Nb:0.1 %以下、 REM:0.03%以下、Ca:0.003 %以下、Mg:0.003 %以下、B:0.005 %以下を含有し、不純物として、Al:0.0020%以下、Ti:0.0020%以下、N:0.005 %以下、P:0.012 %以下、S:0.01%以下、O:0.0020%を含有し、Ti×N≦6×10-6%、N−1.3 B−0.3Ti ≦0.0035%である鋼線材が知られている。
【0004】
ところで、製品の強度を高めるためには、最終パテンティング処理後の強度を高めることが有効である。このため、一般的に最終パテンティング処理後の組織は、ラメラ間隔が小さなパーライト組織とされている。
【0005】
かかる組織を得るには、オーステナイト域に加熱した後に550 〜600 ℃の温度域まで急冷し、その温度域で変態させる必要がある。そのため、以前は鉛浴を使ったパテンティング処理が広く行われていたが、作業環境の向上のために、近年は、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウムや炭素粉等の粉体を収容した槽内へ底部に設けられた通気板の下方から送風し、粉体を浮遊状態とすることにより形成される流動層を利用した流動床炉を用いることが多くなっている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、この流動層は鉛浴に比較すると熱伝達係数が低いため、以下に列記する課題(1) 〜(4) がある。
(1) 処理品の冷却速度が低くなるため、冷却の途中で変態が開始し、強度が低下することがある。
(2) 冷却速度を高めるために、流動層を2ゾーンに分け、一方のゾーンの温度を他方のゾーンの温度よりも低く設定することが多いが、量産時には加熱炉を含めて不可避的に温度制御にばらつきが存在するため、過冷によってパーライト組織にベイナイト組織が混在する場合があり、強度が安定しない。
(3) パーライト変態が急激に進行すると変態発熱が生じるため、流動層では抜熱が少なく流動層内でのパテンティング処理中に鋼線の温度が上昇してパーライト変態温度が高くなるため、強度が低下する。
(4) 最終熱処理後の強度のばらつきは、最終湿式伸線加工によってさらに増大するため、製品の強度がばらつく要因となる。また、ベイナイト組織が混在すると、伸線による加工硬化量が小さくなり、最終製品の強度が低下する。
【0007】
このように、従来の技術によっても、最終熱処理後の強度のばらつきを小さくし、かつベイナイト組織の混在を防止することはできなかった。
本発明は、従来の技術が有するかかる課題に鑑みてなされたものであり、例えば、自動車のラジアルタイヤや各種産業用ベルト、さらには各種ホースの補強材として用いられるスチールコード、さらにはソーイングワイヤ等の用途に好適な、強度のばらつきの小さい鋼線材とこの鋼線材を素材とする鋼線とを、高い生産性の下に歩留り良く廉価に提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、C:0.7 〜1.1 %、Si:0.1 〜1%、Mn:0.1 〜1%、Mo:0.01〜0.2 %を含有し、残部Feおよび不純物からなり、この不純物の中のAl:0.002 %以下、Ti:0.002 %以下、P:0.012 %以下、S:0.01%以下、N:0.005 %以下およびO:0.002 %以下であるとともに、下記(1) 式および(2) 式を満足することを特徴とする鋼線材である。
Figure 0003922026
この本発明にかかる鋼線材においては、さらに、Nb:0.003 〜0.016 %、および/または、B:0.0003〜0.0035%を含有することが、伸線加工性を充分に確保するためには望ましい。
【0009】
また、これらの本発明にかかる鋼線材においては、さらに、Cr:0.1 〜1%、および/または、Co:0.2 〜2%を含有することが、強度を高めるためには望ましい。
【0010】
また、これらの本発明にかかる鋼線材においては、さらに、Ca:0.0001〜0.003 %、および/または、Mg:0.0001〜0.003 %を含有することが、熱間加工性を高めるためには望ましい。
【0011】
別の観点からは、本発明は、上記の鋼組成を有し、最終湿式伸線加工後の引張強さに関して下記(3) 式により求められる標準偏差が30MPa 以下であることを特徴とする鋼線である。
【0012】
【数2】
Figure 0003922026
【0013】
ただし、(3) 式において、TSm は鋼線の20m 間隔で測定した20ヶ所の引張強さの平均値を示し、TSi は20ヶ所のうちのi番目の測定個所における引張強さの測定値を示す。
【0014】
本発明において「鋼線材」とは、熱間圧延したままの材料を意味する。また、「鋼線」とは、線材を冷間圧延や伸線したものを意味する。
このように、本発明は、略述すれば、前述した特開2000−309849号公報に開示された発明にはない発明特定事項である(1) 式により、鋼線材の強度のばらつき (標準偏差) を、問題ない程度に著しく小さく抑制するものである。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明にかかる鋼線材および鋼線の実施の形態を詳細に説明する。
本発明者らは、線材の組成が最終熱処理後における鋼線の引張強さのばらつきに与える影響について調査および研究した結果、以下に列記する知見(a) 〜(g) を得た。
【0016】
(a)現在、スチールコードやソーイングワイヤ等の用途に用いられる線材の多くは、焼入れ性に大きく影響する元素であるSiおよびMnを含有し、それらの含有量はSi:0.1 〜0.3 %、Mn:0.3 〜0.5 %であるが、これでは、焼入れ性が低いために流動層を用いたパテンティング処理では強度のばらつきが大きくなる。
【0017】
(b)従来の組成の鋼線は、流動層内でパーライト変態が急激に進行しており、そのため変態発熱を生じ、変態時の温度が上昇して強度が不安定となる。
(c)Moは微量の含有量であってもパーライト変態の進行を確実に遅らせることができるため、Moを含有させれば、流動層を用いてパテンティング処理を行っても強度のばらつきが顕著に抑制される。ただし、Mo含有量が多過ぎるとパーライト変態が終了するまでの時間が長く成り過ぎ、流動層内でパーライト変態が終了せずに、その後の冷却過程でマルテンサイト組織となってしまい、伸線性が極めて悪化する。
【0018】
(d)高強度化を図るために含有させることがあるCrには、Moに比較すると効果は小さいものの、パーライト変態を遅らせる効果がある。
(e)高強度化を目的として含有させることがあるCo、また伸線性向上を目的として含有させることがあるNbには、いずれもパーライト変態を早める効果がある。
【0019】
(f)上記(a) 項〜(d) 項の知見を組み合わせて鋼線材の組成を最適化すれば、最終熱処理後の強度のばらつきが小さく、かつ生産性を低下させずに、流動層内で変態を終了させることができる。
【0020】
(g)Bは、Nと結合してBNを生成し易く、鋼中のフリーNを低減して伸線性を高める効果があるが、Bが単体で鋼中に存在すると焼入れ性が大きく成り過ぎ、マルテンサイト組織が生成するので好ましくない。しかし、B単体で存在する量を制御することは難しいため、強度のばらつきを低減するためには、鋼中に存在するBは化合物にしておくことが有効である。そこで、BよりNと結合し易いTiを含めて、B、Ti、Nの含有量を制御すれば、鋼中に単体で存在するB量をほぼ無くすことができ、焼入れ性への影響を無くすことができる。
【0021】
本発明は、これらの知見(a) 〜(g) に基づいてなされたもので、鋼線材の組成を最適化することにより、流動層を用いてパテンティング処理を行った場合にも、最終熱処理後の強度のばらつきを抑制するものであり、以下、最適な鋼線材の組成について説明する。
【0022】
C: 0.7 1.1
Cは、線材の強度を高めるのに有効な元素である。しかし、C含有量が0.7 %未満の場合には、例えば引張強度で3000MPa といった高強度を安定して最終製品に与えることが困難となる。一方、C含有量が1.1 %を超えると鋼材が硬質化して伸線加工性の低下を招く。特に、C含有量が1.1 %を超えると、初析セメンタイト、つまり旧オーステナイト粒界に沿うセメンタイトの生成を防止することが困難となり、伸線加工中に断線が頻発する。そこで、本発明では、C含有量は0.7 %以上1.1 %以下と限定する。同様の観点から、下限は0.8 %であることが望ましい。
【0023】
Si 0.1 〜1%
Siは、強度を高めるのに有効な元素であるとともに、焼入れ性を向上する元素である。さらに、脱酸剤としても必要な元素である。しかし、Si含有量が0.1 %未満であるとかかる効果が認められず、一方、Si含有量が1%を超えると伸線加工での限界加工度が低下する。そこで、本発明では、Si含有量は0.1 %以上1%以下と限定する。同様の観点から、Si含有量の上限は0.5 %であることが望ましく、下限は0.2 %であることが望ましい。
【0024】
Mn 0.1 〜1%
Mnは、強度を高めるのに有効な元素であるとともに、焼入れ性を向上させる元素である。さらに、鋼中のSをMnSとして固定して熱間脆性を防止する作用も奏する。しかし、Mn含有量が0.1 %未満ではかかる効果が得難く、一方、Mnは偏析し易い元素であり、1%を超えると特に線材の中心部に偏析し、熱間圧延後の線材の中心部にマルテンサイト組織やベイナイト組織が生成し易くなり、一次伸線加工中の断線頻度が増加する。そこで、本発明では、Mn含有量は0.1 %以上1%以下と限定する。同様の観点から、Mn含有量の上限は0.5 %であることが望ましく、下限は0.2 %であることが望ましい。
【0025】
Mo 0.01 0.2
Moは、焼入れ性を大きく向上させる作用があり、それにより、強度のばらつきを低減する効果がある。かかる効果を確実に得るには、Moは0.01%以上含有する必要がある。一方、Mo含有量が0.2%を超えると焼入れ性が高くなり過ぎ、流動層を用いたパテンティング処理後の組織中にマルテンサイト組織が生成し易くなり伸線加工性が劣化する。そこで、本発明では、Mo含有量は0.01%以上0.2%以下と限定する。同様の観点からMo含有量のの上限は0.1%であることが望ましく、下限は0.02%であることが望ましい。
【0026】
本実施の形態では、上記以外の残部は、Feおよび不純物である。ここで、不純物としては、Al:0.002 %以下、Ti:0.002 %以下、P:0.012 %以下、S:0.01%以下、N:0.005 %以下およびO:0.002 %以下が例示される。そこで、不純物元素であるAl、Ti、P、S、NおよびOそれぞれの含有量の限定理由を説明する。
【0027】
Al 0.002 %以下
AlはAl2O3 を主成分とする酸化物系介在物を形成して伸線加工性を低下させてしまう。特にAl含有量が0.002 %を超えると、酸化物系介在物が粗大化して、伸線加工中に断線が多発し、伸線加工性の低下が著しくなる。そこで、本発明では、Al含有量は0.002 %以下と限定する。
【0028】
Ti 0.002 %以下
Tiは、Nと結合してTiNを形成する。このTiNは、伸線加工中の断線の起点となるので伸線加工性が低下してしまう。特にその含有量が0.002 %を超えると、TiNが粗大化して伸線加工中に断線が多発し、伸線加工性の低下が著しくなる。そこで、本発明では、Ti含有量は0.002 %以下と限定する。
【0029】
P: 0.012 %以下
Pは、粒界に偏析して伸線加工性を低下させる。特に、P含有量が0.012 %を超えると伸線加工性の低下が著しくなる。そこで、本発明では、P含有量は0.012 %以下と限定する。
【0030】
S: 0.01 %以下
Sは伸線加工性を低下させる。特に、S含有量が0.01%を超えると伸線加工性の低下が著しくなる。そこで、本発明ではS含有量は0.01%以下と限定する。
【0031】
N: 0.005 %以下
Nは、冷間での伸線加工中に転位に固着して鋼線の強度を上昇させる反面、伸線加工性を低下させる。特に、N含有量が0.005 %を超えると伸線加工性の低下が著しくなる。そこで、本発明では、N含有量は0.005 %以下と限定する。
【0032】
O: 0.002 %以下
Oは、酸化物系介在物を形成して伸線加工性を低下させる。特に、O含有量が0.002 %を超えると、酸化物系介在物が粗大化するため伸線加工性の低下が著しくなって、伸線加工中に断線が多発する。そこで、本発明では、O含有量は0.002 %以下と限定する。
【0033】
さらに、本実施の形態の鋼線材は、伸線加工性を充分に確保するためにNb:0.003 〜0.016 %、および/または、B:0.0003〜0.0035%を含有すること、強度を高めるためにCr:0.1 〜1%、および/または、Co:0.2 〜2%を含有すること、さらには、熱間加工性を高めるためにCa:0.0001〜0.003 %、および/または、Mg:0.0001〜0.003 %を含有することが、それぞれ望ましい。そこで、以下、これらの任意添加元素についても説明する。
【0034】
Nb 0.003 0.016
Nbは、オーステナイト結晶粒を微細化させ、伸線加工性を高める作用を奏する。また、焼入れ性を低下させる元素である。しかし、Nb含有量が0.016 %を超えると、粗大なNbCが生成し、伸線加工中の断線の起点となるために伸線加工性が低下する。そこで、Nbを添加する場合には、その含有量は0.016 %以下と限定することが望ましいが、Nbは凝固偏析し易い元素であるため、粗大なNbCの生成を確実に防止するには、Nb含有量は0.010 %未満とすることがさらに望ましい。一方、Nb含有量が0.003 %未満であると上述した効果が得られ難くなるため、Nbを含有させる場合の下限は0.003 %とした。
【0035】
B: 0.0003 0.0035
Bは、鋼中に固溶したNと結合してBNを形成し、固溶Nを低減して、伸線加工性を向上させる効果がある。かかる効果を確実に得るには、不純物元素としてのN、Tiの含有量にもよるが、0.0003%以上含有させるのが望ましい。しかし、Bを0.0035%を超えて含有させると、後述する(2) 式を満たさなくなる場合が多くなり、焼入れ性が向上して、最終パテンティング処理後の鋼線中にマルテンサイト組織が混在して、強度のばらつきが大きくなるとともに、伸線加工中の断線頻度が増加する。そこで、Bを添加する場合には、その含有量は0.0035%以下と限定することが望ましい。
【0036】
Cr 0.1 〜1%
Crは、パーライトのラメラ間隔を小さくして圧延後及びパテンティング処理後の強度を高める作用を奏する。また、伸線加工を初めとする冷間加工時の加工硬化率を高める働きがある。さらに、焼入れ性を向上させる元素である。かかる効果を確実に得るには、Cr含有量は0.1 %以上の含有量とするのがよい。しかし、Cr含有量が1%を超えると、熱間圧延後の線材の中心部にマルテンサイト組織やベイナイト組織が生成するため、一次伸線加工中の断線頻度が増加する。そこで、Crを添加する場合には、その含有量は0.1 %以上1%以下と限定することが望ましい。
【0037】
Co 0.2 〜2%
Coは、初析セメンタイトの析出を防止し、さらにパーライト組織のラメラ間隔を微細化して強度を高める作用を有する。かかる効果を確実に得るには、Co含有量は0.2 %以上とするのがよい。しかし、Co含有量が2%を超えると、かかる効果は飽和し、コストが嵩むばかりである。そこで、Coを添加する場合には、その含有量は2%以下と限定することが望ましい。
【0038】
Ca 0.0001 0.003
Caは、熱間加工性を高める作用を奏する。かかる効果を確実に得るには、Ca含有量は0.0001%以上とするのがよい。しかし、Caを0.003 %を超えて含有させてもかかる効果は飽和し、コストが嵩むばかりである。そこで、Caを添加する場合には、その含有量は0.0001%以上0.003 %以下と限定することが望ましい。
【0039】
Mg 0.0001 0.003
Mgは、熱間加工性を高める作用を奏する。かかる効果を確実に得るには、Mgは、0.0001%以上含有させるのがよい。しかし、Mgを0.003 %を超えて含有させてもかかる効果は飽和し、コストが嵩むばかりである。そこで、Mgを添加する場合には、その含有量は0.0001%以上0.003 %以下と限定することが望ましい。
【0040】
さらに、本実施の形態の鋼線材は、(1) 式:6<6×Si(%)+7×Mn(%)+9×Cr(%)+60×Mo(%)-200 ×Nb(%)-1.5 ×Co(%) <11、および、(2) 式:N(%)-(14/48)×Ti(%)-(14/11) ×B(%)≧0 をともに満足する。そこで、以下、これらについても説明する。
【0041】
(1)
表1に示す組成を有する鋼A〜Yについて、直径3.2 mmの冷間伸線材から直径3mm、長さ10mmの熱膨張測定用の試験片を採取し、985 ℃まで平均加熱速度50℃/秒で昇温した後、985 ℃で10秒間保持した後、平均冷却速度70℃/秒で575 ℃まで冷却した後、その温度で保持して、熱膨張曲線を測定した。
【0042】
【表1】
Figure 0003922026
【0043】
このように測定した熱膨張曲線から変態終了時間を求め、その結果を表2中に示した。
【0044】
【表2】
Figure 0003922026
【0045】
Si、Mn、Cr、Mo、NbおよびCoが変態終了時間に与える影響はそれぞれ独立であると仮定すると、表1および表2に示す結果から、パーライト変態終了時間を求める式は、「6×Si(%)+7×Mn(%)+9×Cr(%)+60×Mo(%)-200 ×Nb(%)-1.5 ×Co(%) 」として与えられる。
【0046】
さらに、表1に示す組成を有する鋼A〜Yからなる直径1.5mm の冷間伸線材について、図2に模式的に示した装置を用いて、流動層を用いたパテンティング処理を行った。
【0047】
この際、線速は10m/分とし、加熱炉は鋼線材の温度が980 〜1000℃に10〜20秒間保持されるように設定した。また、接続部は窒素雰囲気とし、580 ℃に設定し、流動層の1ゾーンは540 ℃、2ゾーンは580 ℃に設定した。
【0048】
各鋼A〜Yについて、500 m長さのパテンティング処理を行い、20m毎に引張試験片を採取して、各鋼について調査数20で引張試験を行った。その結果から求めた引張強さの標準偏差を表2中に示す。
【0049】
なお、これまでの研究に基づいた経験より、この引張強さの標準偏差が10MPa 以下であればばらつきが小さいと評価した。引張強さの標準偏差が10MPa 以下となったのは、先に求めた「6×Si(%)+7×Mn(%)+9×Cr(%)+60×Mo(%)-200 ×Nb(%)-1.5 ×Co(%) 」の値が6より大きく、11未満のときであった。
【0050】
したがって、本発明では、「6<6×Si(%)+7×Mn(%)+9×Cr(%)+60×Mo(%)-200 ×Nb(%)-1.5 ×Co(%) <11」と規定した。
(2)
Ti、Bは、ともに極めてNと結合しやすいために、Nがモル含有量で (Ti+B) を上回っていれば、鋼中に存在するいわゆるフリーBを実質上0にすることができる。TiとNとはTiNを形成し、BとNはBNを形成し、且つそれぞれの原子量がTi:48、B:11、N:14であるため、「N(%)−(14/48)Ti (%)−(14/11)B(%)≧0」と規定した。
【0051】
本実施の形態では、かかる組成を有する鋼線材に、熱間圧延、調整冷却、1次伸線、パテンティングおよび2次伸線を行った後に、最終熱処理、メッキ処理および湿式伸線を行って、鋼線を製造した。そして、このようにして得られた鋼線について、最終パテンティング処理後における引張強さの標準偏差を求めた。
【0052】
すなわち、表1に示した鋼A〜Yについて、引張試験で使用しなかった長さ100mについて、各ダイスの減面率が平均で15%となるパススケジュールで、直径1.5 mmから直径0.20mmまで湿式伸線加工を行った。この直径0.20mmの鋼線について、長さ20m毎に各20回、引張試験を行った。
【0053】
その結果、伸線前の引張強さの標準偏差が10MPa であれば、伸線後の引張強さの標準偏差が30MPa となり、スチールコードの製品として十分にばらつきが小さいことが確認された。
【0054】
このため、本発明では、最終熱処理後の鋼線の引張強さの標準偏差を30MPa 以下と規定した。
このように本実施の形態では、スチールコード用やソーイングワイヤ用の極細鋼線は、上記に記した化学組成を有する鋼線材に通常の冷間加工を行った後、通常の方法により、最終熱処理(パテンティング処理)、さらにはブラスメッキ、CuメッキまたはNiメッキ等の、次の湿式伸線の過程における引き抜き抵抗の低減や、ゴムとの密着性の向上などを目的とするメッキ処理を施し、更に湿式伸線を行うことで極細鋼線が製造される。
【0055】
こうして得られた極細鋼線は、この後所定の最終製品へと加工される。例えば、極細鋼線を素材としてさらに撚り加工により複数本撚り合わせて撚り鋼線とすることにより、スチールコードが製造される。
【0056】
このようにして得られる本実施の形態の鋼線材および鋼線は、強度のばらつきが小さく、高い生産性の下で歩留り良く廉価に提供されるため、例えば、自動車のラジアルタイヤや各種産業用ベルト、さらには各種ホースの補強材として用いられるスチールコード、さらにはソーイングワイヤ等の用途に好適である。
【0057】
【実施例】
以下、実施例により本発明を詳しく説明する。
前述した表1に示す化学組成を有する鋼A〜Yを、180kg 真空炉を用いて溶製した。表1における鋼C〜H、K、L、N、O、QおよびSが、本発明の範囲内にある本発明例である。一方、表1における鋼A、B、I、J、M、P、RおよびT〜Yが、本発明の範囲から外れた比較例である。
【0058】
次いで、これらの鋼を通常の方法で熱間鍛造して直径80mmの丸棒に成形し、次いで、この直径80mmの丸棒を1180℃に加熱した後、圧延仕上げ温度880 ℃で直径5.5 mmに熱間圧延し、通常の方法で冷却した。
【0059】
このようにして得られた鋼線材に一次伸線加工、一次パテンティング処理および二次伸線加工を順次施し、直径1.5mm の鋼線とした。
さらに、この直径1.5 mmの鋼線について、図1に示した装置を用いて、流動層を用いたパテンティング処理を行った。なお、流動層の熱媒体には酸化ジルコニウムを用いた。この流動層を用いたパテンティング処理における線速は10m/分とし、加熱炉は鋼線の温度が980 〜1000℃に10〜20秒間保持されるように設定した。また、接続部は窒素雰囲気とし、580 ℃に設定し、流動層の1ゾーンは540 ℃、2ゾーンは580 ℃に設定した。
【0060】
各鋼について、500 m長さのパテンティング処理を行い、20m毎に引張試験片を採取して、各鋼について試験数20の引張試験を行い、平均引張強さおよび引張強さそれぞれの標準偏差を求めた。
【0061】
さらに、表1に示した鋼A〜Yについて、引張試験で使用しなかった長さ100 mの流動層を用いたパテンティング処理材について、各ダイスの減面率が平均で15%となるパススケジュールにより、直径0.20mmまで湿式伸線加工を行った。この直径0.20mmの鋼線について、長さ20m 毎に各20回、引張試験を行った。これについても平均引張強さおよび引張強さそれぞれの標準偏差を求めた。
【0062】
表2にこれらの試験結果をまとめて示す。なお、表2に示した直径1.5mm から0.20mmまで伸線したときに1回でも断線すれば伸線加工性が悪いと判断した。
表2から、本発明における(1) 式の値が6を下回る試験番号1、2、13は、いずれも、直径0.20mmの伸線材の引張強さの標準偏差が目標値の30MPa を超えており、且つ直径1.5mm の流動層を用いたパテンティング材の引張強さの標準偏差が10MPa を超えていた。このうち、試験番号13はNb含有量が0.016 %を上回るため、伸線加工性が劣化した。
【0063】
また、(1) 式の値が11を上回る試験番号9、18は、直径0.20mmの伸線材の引張強さの標準偏差が目標値の30MPa を超えており、且つ直径1.5mm の流動層を用いたパテンティング材の引張強さの標準偏差が10MPa を超えており、また伸線加工性も劣化した。
【0064】
さらに、(1) 式の値が11を上回る試験番号10、20は、伸線加工性が極めて悪いため、直径0.20mmの伸線材を得られず、且つ直径1.5mm の流動層を用いたパテンティング材の引張強さの標準偏差が10MPa を超えていた。
【0065】
一方、(2) 式の値が0.0000を下回る試験番号16は、直径0.20mmの伸線材の引張強さの標準偏差が目標値の30MPa を超えており、且つ直径1.5mm の流動層を用いたパテンティング材の引張強さの標準偏差が10MPa を超えており、また伸線加工性も劣化した。
【0066】
また、不純物であるAl含有量が0.002 %を上回る試験番号21、N含有量が0.0050%を上回る試験番号22、Ti含有量が0.002 %を上回る試験番号23、P含有量が0.012 %、S含有量が0.01%を上回る試験番号24、O含有量が0.002 %を上回る試験番号25は、いずれも、伸線加工性が悪かった。
【0067】
上記の比較例に対し、本発明例の鋼を用いた試験番号の場合、つまり試験番号3〜8、11、12、14、15、17および19の場合には、直径0.20mmの伸線材の引張強さの標準偏差が目標値の30MPa を下回り、且つ直径1.5mm の流動層を用いたパテンティング材の引張強さの標準偏差が10MPa を下回り、且つ伸線加工性が優れていた。
【0068】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように、本発明により、例えば、自動車のラジアルタイヤや各種産業用ベルト、さらには各種ホースの補強材として用いられるスチールコード、さらにはソーイングワイヤ等の用途に好適な、強度のばらつきの小さい鋼線材とこの鋼線材を素材とする鋼線とを、高い生産性の下に歩留り良く廉価に提供することができた。
【0069】
すなわち、本発明にかかる線材は、引張強さのばらつきが少なく、且つ伸線加工性に優れているので、この線材を素材としてスチールコードやソーイングワイヤなどを高い生産性の下に歩留まりよく提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】自動車のラジアルタイヤや各種産業用ベルト、さらには各種ホースの補強材として用いられるスチールコードの製造工程の一例を示す説明図である。
【図2】流動層を用いたパテンティング処理を行うための装置を模式的に示す説明図である。

Claims (5)

  1. 質量%で、C:0.7 〜1.1 %、Si:0.1 〜1%、Mn:0.1 〜1%、Mo:0.01〜0.2 %を含有し、残部Feおよび不純物からなり、該不純物の中のAl:0.002 %以下、Ti:0.002 %以下、P:0.012 %以下、S:0.01%以下、N:0.005 %以下およびO:0.002 %以下であるとともに、下記(1) 式および(2) 式を満足することを特徴とする鋼線材。
    Figure 0003922026
  2. さらに、質量%で、Nb:0.003 〜0.016 %、および/または、B:0.0003〜0.0035%を含有する請求項1に記載された鋼線材。
  3. さらに、質量%で、Cr:0.1 〜1%、および/または、Co:0.2 〜2%を含有する請求項1または請求項2に記載された鋼線材。
  4. さらに、質量%で、Ca:0.0001〜0.003 %、および/または、Mg:0.0001〜0.003 %を含有する請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載された鋼線材。
  5. 請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載された鋼組成を有し、最終湿式伸線加工後の引張強さに関して下記(3) 式により求められる標準偏差が30MPa 以下であることを特徴とする鋼線。
    Figure 0003922026
    ただし、(3) 式において、TSm は鋼線の20m 間隔で測定した20ヶ所の引張強さの平均値を示し、TSi は20ヶ所のうちのi番目の測定個所における引張強さの測定値を示す。
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