JP2002178903A - 路面摩擦状態推定装置 - Google Patents

路面摩擦状態推定装置

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JP2002178903A JP2000379418A JP2000379418A JP2002178903A JP 2002178903 A JP2002178903 A JP 2002178903A JP 2000379418 A JP2000379418 A JP 2000379418A JP 2000379418 A JP2000379418 A JP 2000379418A JP 2002178903 A JP2002178903 A JP 2002178903A
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政則 宮下
Akira Tanaka
亮 田中
Yoshiyuki Yasui
由行 安井
Mamoru Sawada
護 沢田
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  • Regulating Braking Force (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 コストを上げることなく、路面摩擦状態の推
定速度を向上させ、かつ、その推定値のばらつきを抑制
する。 【解決回路】 前処理フィルタ2は、車輪速センサ1に
より検出された車輪速ω 1から車輪速振動Δω1を抽出す
る。伝達関数同定回路3は、車輪速振動Δω1に基づい
て忘却係数ρを用いて伝達関数を同定する。ここで、相
関係数演算回路4は、前処理フィルタ2からの車輪速振
動Δω1を用いて相関係数σを算出し、演算した相関係
数σに応じて、伝達関数同定回路3で用いられる忘却係
数ρを設定する。μ勾配演算回路5は、同定された伝達
関数に基づいてμ勾配を推定する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、路面摩擦状態推定
装置に係り、特に、車輪と路面との間の滑り易さに関す
る物理量の推定速度の向上及び推定値のばらつきの抑制
を図った路面摩擦状態推定装置に関する。
【0002】
【従来の技術】現在、ABS(Anti-lock Braking Syst
em)、TCS(Traction Control System)、空気圧低
下警報システムなど、車両の性能や安全性を高めるシス
テムが開発されている。これらのシステムは、駆動時や
制動時において車輪と路面との間の摩擦状態を推定し、
その推定値に基づいて様々の制御を行っている。
【0003】そこで、特開平11−78843号公報に
よって、車輪と路面との間の摩擦特性を含む車輪共振系
における振動モデルを用いて摩擦状態を推定する発明が
提案されている。
【0004】ここで、振動モデルの原理について図9か
ら図11の図面を参照して説明する。図9は、車輪共振
系の等価力学モデル、図10は、図9の車輪共振系の伝
達特性を規定するタイヤと路面との間の摩擦特性、図1
1は、図9の車輪共振系の伝達特性において、加振入力
から応答出力までの振動モデルの例を図示したものであ
る。
【0005】図9に示すように、車両が車体速度v(角
速度換算でωv)で走行している時の車輪での振動現
象、すなわち少なくとも車輪と路面とによって構成され
る車輪共振系の振動現象を、車輪回転軸で等価的にモデ
ル化した力学モデルを参照して考察する。なお、図9に
おいて示された諸量は、以下の通りである。
【0006】J1 :リム側の慣性モーメント J2 :ベルト側の慣性モーメント K :タイヤのねじればね定数 T1 :制駆動トルク(駆動側が正符号) ω1 :リム側の角速度 ω2 :ベルト側の角速度 θs :リム−ベルト間のねじれ角度 Td :路面外乱 TL :タイヤ−路面間の発生力 図9の車輪共振系の力学モデルにおいて、リムに作用し
た制駆動トルクT1 は、タイヤのねじればね定数Kを介
してベルトに伝達し、該ベルト表面を介して路面に作用
する。このとき、車輪には、ベルトと路面との接地点を
基点として、路面から制駆動トルクT1 の反作用として
の発生力TL が作用する。
【0007】この発生力TL は、タイヤと路面との間の
摩擦力によるものであり、制駆動トルクT1 の方向と反
対方向に作用する。すなわち、発生力TL は、駆動時に
リムに駆動トルクT1 が作用する場合、車輪回転方向
(ω1 の方向)と反対方向に作用し、ブレーキ制動時に
制動トルクT1 が作用する場合、車輪の回転方向に作用
する。また、路面に凹凸がある場合などでは、この凹凸
によって発生した路面外乱ΔTd のトルクもタイヤに作
用する。
【0008】ここで、車両がある速度v(回転系に変換
した値をωv )で走行している時にブレーキをかけてい
くと、タイヤと路面との間にスリップが生じる。このと
きタイヤと路面との間に発生した発生力TL は、スリッ
プ率S1(=(ωv−ω2)/ωv)に対して、図10に示
すように変化する。
【0009】同様に、車両がある速度vで走行している
時にドライバがアクセルペダルを踏んで加速していく場
合でも、タイヤと路面との間にスリップが生じる。この
ときの発生力TL は、スリップ率S2(=(ω2−ωv
/ω2)に対して、図10に示すように変化する。
【0010】ここで、車輪の回転方向を正方向とする
と、タイヤ−路面間の発生力TL を以下の式のように表
すことができる。
【0011】制動時: TL =WRμ(S1 ) 駆動時: TL =−WRμ(S2 ) ここに、Wは輪荷重、Rはタイヤの動荷重半径、μはタ
イヤと路面との間の摩擦係数である。なお、μは、スリ
ップ率S1 或いはS2 の関数として表されている。
【0012】図10に示すS−μ曲線において、スリッ
プ率0のときは発生力TL は0である。ある正のスリッ
プ率において制動時の発生力TL は正のピーク値をと
り、ある負のスリップ率において、駆動時の発生力TL
は負のピーク値をとる関係が成り立つ。また、種々の動
作点において、スリップ率に対する発生力の勾配は、例
えばピーク値の時には0近傍の値というように、各々固
有の値をとる。したがって、該勾配を用いることによっ
て、タイヤと路面との間のすべり易さを表すことができ
る。
【0013】ここで、図9の力学モデルにおいて、リム
に作用する制駆動トルクを平均的な制駆動トルクT1
回りに振幅ΔT1 で励振すると、この励振トルク成分は
車輪速度ω1 の回りの振動成分Δω1 となって現れる。
また、路面外乱Td に振動成分ΔTd がある場合、車輪
速度の振動成分Δω1 には、該外乱によって発生した振
動成分も加わることになる。
【0014】そこで、図9の車輪共振系の伝達特性を、
図10の種々の動作点における振動モデルで表すと、次
式のようになる。
【0015】 Δω1 = H1(s)ΔT1 + H2(s)ΔTd ここに、H1(s)は(1)式、H2(s)は(1)式及
び(2)式の通りである。
【0016】
【数1】
【0017】なお、sはラプラス演算子である。また、
0 は、制動時、駆動時に応じて、それぞれ次式の
10、D20によって表される。
【0018】
【数2】
【0019】ここに、S10、S20は、それぞれ制動時、
駆動時におけるある動作点でのスリップ率であり、ωv0
は、該動作点での車体速度である。
【0020】上式より、D10は、動作点でのスリップ率
10におけるS−μ曲線の勾配(∂μ/∂S1 )及び輪
荷重Wに比例し、該動作点での車体速度ωv0に反比例す
る。また、S20が0に近いところでは、D20に関しても
同様のことが成立する。
【0021】なお、ここまではμがスリップ率依存性を
持つと仮定したが、スリップ速度依存性を持つ場合は、
1 =ωv−ω2、S2=ω2−ωv と再定義することによ
って、(5)式及び(6)式によって表される。
【0022】
【数3】
【0023】この場合も、D10,20は、動作点でのスリ
ップ率S10,20 におけるS−μ曲線の勾配及び輪荷重W
に比例することになる。
【0024】以上述べた振動モデルは、任意の動作点で
の動作を表しているので、その特殊なケースとして、制
動も駆動も行われていない定常走行の場合も記述してい
る。定常走行の場合、動作点は、S−μ曲線の原点とな
り、D0 =D10=D20は、原点でのμ勾配を表している
ことになる。
【0025】また、上記振動モデルは、ラプラス演算子
sに関して3次のシステムで表現されているが、振動と
いう物理現象を記述するには、2次で十分と考えられ
る。そこで、同3次モデルを2次モデルで近似すると
(7)式及び(8)式を得る。
【0026】
【数4】
【0027】このように上記振動モデルは、タイヤと路
面との間の摩擦特性を含む車輪共振系において、該共振
系への加振入力トルクΔT1 及び凹凸のある路面上をタ
イヤが転がることによって起こる路面加振ΔTd に対す
る応答出力としての車輪速振動Δω1 の応答を表してお
り、さらに、タイヤと路面との間のすべり易さに関する
物理量D0 を含んでいることがわかる。
【0028】なお、以上の振動モデルにおける加振入力
から応答出力までの伝達の様子を図示すると、図11の
ようになる。
【0029】
【発明が解決しようとする課題】特開平11−7884
3号公報に記載された発明は、上述したような車輪と路
面間の摩擦特性を含む車輪共振系の振動モデルに基づい
て、該車輪共振系の応答出力などから未知要素として車
輪と路面間の滑り易さを含む摩擦状態を推定している。
【0030】上記発明によって推定された推定値は、図
3(A)及び図8(A)に示すように、ばらつきが多い
傾向がある。このばらつきを低減するためには、最小自
乗法の演算で用いられている忘却係数ρの値を大きくす
ればよい。しかし、忘却係数ρは推定速度を左右するパ
ラメータであり、忘却係数を大きく設定すると推定速度
が遅くなってしまう問題がある。
【0031】また、上記発明は、最小自乗法を用いて未
知要素を推定しているので演算量が多い。このため、単
純に推定速度を上げようとすると、さらに多くのメモリ
と処理能力の高い演算処理装置が必要となり、コストが
上昇する問題も生じる。
【0032】本発明は、上述した課題を解決するために
提案されたものであり、コストを上げることなく、路面
摩擦状態の推定速度を向上させ、かつ、その推定値のば
らつきを抑制することができる路面摩擦状態推定装置を
提供することを目的とする。
【0033】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記応答出力
の周期性の度合いと車輪及び路面間の滑り易さに関する
物理量とが深い相関関係があること、及び最小自乗法の
演算量に比べて上記応答出力の記周期性の度合いの演算
量が非常に少ないことを利用して、上述した課題を解決
した。
【0034】すなわち、請求項1記載の発明は、車輪振
動系への加振入力に対する応答出力を検出する検出手段
と、前記検出手段により検出された応答出力の周期性の
度合いを演算し、前記周期性の度合いの演算値に基づい
て車輪と路面との間の滑り易さに関する物理量を推定す
る推定手段と、により構成されている。
【0035】本発明者らは、前記検出手段により検出さ
れた応答出力の周期性の度合いが車輪と路面との間の摩
擦状態と深い相関関係があることを見出した。例えば、
路面が滑りやすときは前記応答出力の周期性の度合いが
小さくなり、路面が滑りにくいときは前記応答出力の周
期性の度合いが大きい。したがって、応答出力の周期性
の度合いは、車輪と路面との間の摩擦状態そのものを示
していると考えられる。また、応答出力の周期性の度合
いの演算は、例えば最小自乗法の演算と比べると、演算
量が少ないので、非常に演算速度が速い。そこで、この
ような応答出力の周期性の度合いの特性に基づいて車輪
と路面との間の滑り易さに関する物理量を推定すること
によって、推定速度を上げたり、推定値のばらつきを低
減させることができる。
【0036】前記推定手段は、前記応答出力の周期性の
度合いを演算するために、請求項2記載の発明のよう
に、前記検出手段により検出された応答出力と該応答出
力の偶数階微分又は偶数階差分との相関関係を示す相関
係数を演算するのが好ましい。
【0037】また、前記推定手段は、請求項3記載の発
明のように、加振入力から応答出力までの前記車輪共振
系の伝達特性を、少なくとも車輪と路面との間のすべり
易さに関する物理量を未知要素として含む振動モデルで
表し、該振動モデルにおいて、前記検出手段により検出
された応答出力を略満足させるような前記未知要素を推
定するにあたり、前記周期性の度合いの演算値に基づい
て前記未知要素の推定速度を変更してもよい。
【0038】前記振動モデルを用いて車輪と路面との間
の滑り易さに関する物理量を推定する場合、推定速度が
遅くなったり、推定値がばらつくことがある。そこで、
車輪と路面との間の摩擦状態と深い相関関係がある応答
出力の周期性の度合いを演算し、前記周期性の度合いの
演算値に基づいて推定速度を変更することで、路面の変
化に高応答に追従することができる。
【0039】また、推定手段は、請求項4記載の発明の
ように、前記検出手段により検出された応答出力の周期
性の度合いを異なる演算速度でそれぞれ演算し、所定の
演算速度で演算された周期性の度合いに基づいて1つの
周期性の度合いの演算値を選択し、選択された演算値に
基づいて車輪と路面との間の滑り易さに関する物理量を
推定してもよい。
【0040】推定手段は、予めそれぞれ異なる演算速度
で、前記応答出力の周期性の度合いをそれぞれ演算す
る。さらに、所定の演算速度で演算された周期性の度合
いに基づいて路面の滑り易さを判断し、路面の滑り易さ
に応じて1つの周期性の度合いの演算値を選択する。そ
して、選択された周期性の度合いの演算値に基づいて車
輪と路面との間の滑り易さに関する物理量を推定するこ
とで、路面の変化に対して高応答に追従し、かつ推定値
のばらつきを抑えることができる。
【0041】
【発明の実施の形態】[第1の実施の形態]第1の実施
の形態の路面摩擦状態推定装置は、路面外乱ΔTd のみ
が加振入力として入力されている車輪共振系のμ勾配を
演算するものである。
【0042】路面摩擦状態推定装置は、図1に示すよう
に、各車輪の車輪速度ω1を検出する車輪速センサ1
と、検出された各車輪の車輪速度ω1から路面外乱ΔTd
を受けた車輪共振系の応答出力としての各車輪の車輪速
振動Δω1を検出する前処理フィルタ2と、検出された
車輪速振動Δω1を満足するような各車輪の伝達関数を
最小自乗法を用いて同定する伝達関数同定回路3と、車
輪速振動Δω1と該車輪速振動Δω1の2階微分との相関
関係を示す相関係数σを演算する相関係数演算回路4
と、同定された伝達関数に基づいて車輪と路面との間の
摩擦係数μの勾配(μ勾配)を車輪毎に演算するμ勾配
演算回路5と、を備えている。
【0043】車輪速センサ1は、各車輪の回転速度に応
じた車輪速度ω1を検出し、この車輪速度ω1を前処理フ
ィルタ2に供給する。
【0044】前処理フィルタ2は、一定の帯域の周波数
成分のみを通過させるバンドパスフィルタや、該共振周
波数成分を含む高帯域の周波数成分のみを通過させるハ
イパスフィルタなどで構成されている。そして、前処理
フィルタ2は、車輪速度ω1の直流成分を除去して車輪
速振動Δω1を出力する。
【0045】なお、前処理フィルタ2の伝達関数F
(s)は、以下に示す(11)式で表される。ただし、
ci はフィルタ伝達関数の係数、sはラプラス演算子で
ある。
【0046】
【数5】
【0047】伝達関数同定回路3は、車輪共振系の振動
モデルを用いて、車輪速振動Δω1を満足するような各
車輪の伝達関数を最小自乗法を用いて同定する。
【0048】ここで、伝達関数同定回路3が依拠する演
算式の導出について説明する。伝達関数同定回路3が同
定すべき伝達関数は、路面外乱ΔTd を加振入力とし、
前処理フィルタ2により検出された車輪速振動Δω1
応答出力とする2次のモデルとする。つまり、(12)
式に示す振動モデルを仮定する。
【0049】
【数6】
【0050】ここで、vは車輪速ω1を観測するときに
含まれる観測雑音である。(12)式を変形すると、
(13)式を得る。
【0051】
【数7】
【0052】(13)式に(11)式の前処理フィルタ
を掛けて得られた式を離散化する。このとき、Δω1
ΔTd 、vは、サンプリング周期Ts毎にサンプリング
された離散化データΔω1(k)、ΔTd (k)、v
(k)(kはサンプリング番号:k=1,2,3,・・
・)として表される。また、ラプラス演算子sは、所定
の離散化手法を用いて離散化することができる。本実施
の形態では、1例として、(14)式に示す双一次変換
により離散化する。なお、dは1サンプル遅延演算子で
ある。
【0053】
【数8】
【0054】前処理フィルタの次数mは2以上が望まし
い。本実施の形態では、演算時間も考慮してm=2と
し、これによって(15)式から(19)式を得る。
【0055】
【数9】
【0056】また、最小自乗法に基づいて車輪速振動Δ
ω1の各データから伝達関数を同定するために、(1
5)式を同定すべきパラメータに関して一次関数の形式
となるように、(20)式及び(21)式のように変形
する。なお、”T”は行列の転置を示し、θが同定すべ
き伝達関数のパラメータとなる。
【0057】
【数10】
【0058】そして、伝達関数同定回路3は、以上のよ
うに導出された(20)式に対して車輪速振動Δω1
離散化データを順次当てはめ、最小自乗法を適用するこ
とによって、未知パラメータθを推定し、これにより伝
達関数を同定する。
【0059】具体的には、検出された車輪速振動Δω1
を離散化データΔω1(k)(k=1,2,3,・・
・)に変換し、該データをN点サンプルし、(22)式
の最小自乗法の演算式を用いて、伝達関数のパラメータ
θを推定する。
【0060】
【数11】
【0061】ここに、記号”^”の冠した量をその推定
値と定義する。
【0062】また、上記最小自乗法は、次の(23)式
から(25)式の漸化式によってパラメータθを求める
逐次型最小自乗法を用いて演算してもよい。
【0063】
【数12】
【0064】ここで、ρは忘却係数である。忘却係数ρ
が大きくなると、路面摩擦状態の推定値のばらつきが抑
えられるが、推定速度が遅くなる。逆に、忘却係数ρが
小さくなると、路面摩擦状態の推定値のばらつきが増え
るが、推定速度が速くなる。忘却係数ρの初期値は(2
6)式のようにすればよい。
【0065】
【数13】
【0066】なお、忘却係数ρは、可変であり、相関係
数演算回路4によって所定の値に設定される。
【0067】また、上記最小自乗法の推定誤差を低減す
る方法として、種々の修正最小自乗法を用いてもよい。
本実施の形態では、補助変数を導入した最小自乗法であ
る補助変数法を用いた例を説明する。該方法によれば、
(20)式の関係が得られた段階でm(k)を補助変数
として、(27)式を用いて伝達関数のパラメータを推
定する。
【0068】
【数14】
【0069】また、逐次演算は、次の(28)式から
(30)式のようになる。
【0070】
【数15】
【0071】補助変数法の原理は、以下の通りである。
(27)式に(20)式を代入すると、(31)式にな
る。
【0072】
【数16】
【0073】(31)式の右辺第2項が零となるように
補助変数を選べばθの推定値は、θの真値に一致する。
そこで、本実施の形態では、補助変数として、 ζ(k)=[−ξy1(k)−ξy2(k)]T を誤差r(k)と相関を持たないほどに遅らせたものを
利用する。すなわち、 m(k)=[−ξy1(k−L)−ξy2(k−L)]T (32) とする。ただし、Lは遅延時間である。
【0074】μ勾配演算回路5は、以上のようにして伝
達関数が同定された後、(33)式に基づいて路面μ勾
配D0を演算する。
【0075】
【数17】
【0076】一方、相関係数演算回路4は、伝達関数同
定回路3で用いられる忘却係数ρを逐次設定する。具体
的には、相関係数演算回路4は、前処理フィルタ2から
の車輪速振動Δω1を用いて(34)式を演算し、相関
係数σを算出する。
【0077】
【数18】
【0078】(34)式において、ωは車輪速振動Δω
1を示し、ω''はΔω1の2階微分を示す。さらに、ρc
は、相関係数σの逐次演算のための忘却係数(固定値)
である。なお、ω''は、前処理フィルタ2の出力の2階
微分信号であるが、その他、偶数階微分又は偶数階差分
の信号でもよい。相関係数演算回路4は、このようなパ
ラメータを用いて演算するので、最小自乗法の演算量に
比べて非常に少ない演算量で(34)式を演算すること
ができる。
【0079】相関係数σは、車輪速振動Δω1が完全に
周期的な信号であれば「1」になり、車輪速振動Δω1
がホワイトノイズであれば「0」になる。したがって、
相関係数σは、車輪速振動Δω1の共振の強さに応じて
(0<σ<1)の値をとる。つまり、相関係数σは、前
処理フィルタ2の周期的な出力の度合いを表している。
【0080】図2は、μ勾配演算回路5により演算され
たμ勾配と、相関係数演算回路4により演算された相関
係数σの関係を示す図である。同図より、μ勾配と相関
係数σは、ほぼ一対一で対応していることが分かる。す
なわち、相関係数σが分かればμ勾配も分かり、相関係
数σ自体がμ勾配を表している。
【0081】そこで、相関係数演算回路4は、演算した
相関係数σに応じて、伝達関数同定回路3で用いられる
忘却係数ρを設定する。具体的には、相関係数σが大き
い場合(路面が滑りにくい場合)は忘却係数ρを1に近
い値に設定し、相関係数σが小さい場合(路面が滑りや
すい場合)は忘却係数ρを小さい値に設定する。したが
って、路面が滑りにくい場合はμ勾配の推定値のばらつ
きを抑制し、路面が滑りやすい場合はμ勾配の推定速度
を上げている。
【0082】以上のように、路面摩擦状態推定装置は、
相関係数σがμ勾配に対応していることを考慮して相関
係数σを演算し、相関係数σの値に応じて設定された忘
却係数ρを用いてμ勾配を推定する。これにより、路面
摩擦状態推定装置は、路面摩擦状態に応じて、μ勾配の
推定速度を向上させたり、μ勾配の推定値のばらつきを
抑制することができる。
【0083】例えば路面が滑りにくいときはμ勾配の推
定速度はそれほど要求されないので、路面摩擦状態推定
装置は、忘却係数ρを大きく設定してμ勾配の推定値の
ばらつきを抑えている。一方、路面が滑りやすいときは
路面摩擦状態を常に監視する必要があるので、路面摩擦
状態推定装置は、忘却係数ρを小さく設定してμ勾配の
推定速度を上げている。
【0084】また、路面摩擦状態推定装置は、(34)
式の演算量が極めて少ないので、路面の滑り易さの変化
に高応答に追従して忘却係数ρを設定し、推定速度の向
上や推定値のばらつきの抑制を迅速に行うことができ
る。
【0085】図3は、従来の路面摩擦状態推定装置(例
えば特開平11−78843号公報に記載された発明)
によって推定されたμ勾配(A)と、第1の実施の形態
に係る路面摩擦状態推定装置によって推定されたμ勾配
(B)とを比較する図である。図3(A)によると、μ
勾配推定値のばらつきが大きく、路面の滑り易さの変化
を確実に検出することができていない。一方、図3
(B)によると、μ勾配推定値のばらつきが小さく、路
面の滑り易さの変化を確実に検出することができる。
【0086】[第2の実施の形態]図4は、第2の実施
の形態に係る路面摩擦状態推定装置の構成を示す図であ
る。なお、第1の実施の形態と同様の構成については、
同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0087】第2の実施の形態に係る路面摩擦状態推定
装置は、加振入力としての励振トルクΔT1を平均的な
制駆動トルクT1の回りに重畳させる加振回路6を更に
備えている。加振回路6は、ブレーキ圧力やエンジン出
力を励振させることにより、車輪をその中心軸の回りに
加振する。
【0088】例えば、加振回路6は、制動トルクを励振
する場合、ブレーキ圧力の油圧アクチュエータの増減圧
バルブの制御指令において、平均的なブレーキ圧力の指
令に所定周波数の増減圧指令を重畳させることによっ
て、制動トルクを加振する。
【0089】ここで、加振回路6による励振トルクΔT
1の信号波形の例を、図5(A)、図5(B)及び図5
(C)に示す。
【0090】図5(A)の信号は、疑似ランダム信号で
あり、例えば、疑似ランダム信号の1つとして良く知ら
れているM系列信号に基づいて発生させることができ
る。この場合、加振入力は、多くの周波数成分を有する
ことになるため、伝達関数の推定精度が向上するという
メリットがある。
【0091】また、図5(B)の信号は、励振トルクが
0の状態から、ある時刻で急激に立ち上がり、それ以降
は一定の励振トルクとなるステップ的な信号である。こ
のステップ的な信号を用いた場合、疑似ランダム信号の
ように頻繁にトルクを変化させる必要が無いので、振
動、騒音が少なく、アクチュエータの負担が少なくて済
むというメリットがある。
【0092】図5(C)の信号は、励振トルクが0の状
態から、ある時刻で急激に立ち上がり、一定時間経過後
に再び励振トルクが0の状態に戻るインパルス的な信号
である。このインパルス的な信号を用いた場合、トルク
にオフセット成分が無く、制動・駆動・定常走行など種
々の走行状態において瞬時に与えることができるので、
任意の走行状態で伝達関数を推定することができる。
【0093】次に、本実施の形態に係る伝達関数同定回
路3が依拠する演算式を導出する。まず、第2の実施の
形態で同定すべき伝達関数を、路面トルクΔT1を加振
入力として、このとき前処理フィルタ2により検出され
た車輪速振動Δω1を応答出力とする2次のモデルとす
る。すなわち、
【0094】
【数19】
【0095】の振動モデルを仮定する。ここに、vは車
輪速信号を観測するときに含まれる観測雑音である。
(35)式を変形すると、(36)式を得る。
【0096】
【数20】
【0097】まず、(36)式に(11)式の前処理フ
ィルタを掛けて得られた式を離散化する。このとき、Δ
ω1、ΔTd、vは、サンプリング周期Ts 毎にサンプリ
ングされた離散化データΔω1(k)、ΔTd(k)、v
(k)として表される。また、ラプラス演算子sは、遅
延演算素子dを用いた上述の双一次変換により離散化す
ることができる。
【0098】また、前処理フィルタの次数mは、2以上
が望ましいので、本実施の形態では、演算時間も考慮し
てm=2とし、これによって(37)式から(41)式
を得る。
【0099】
【数21】
【0100】また、最小自乗法に基づいて車輪速振動Δ
ω1の各離散化データから伝達関数を同定するために、
(37)式が同定すべきパラメータに関して一次関数の
形式になるように、(42)式及び(43)式のように
変形する。
【0101】
【数22】
【0102】上式において、θが同定すべき伝達関数の
パラメータとなる。
【0103】次に、本実施の形態の作用を説明する。
【0104】伝達関数同定回路3は、検出された車輪速
振動Δω1の離散化データを(42)式に順次当てはめ
た各データに対し、最小自乗法を適用することによっ
て、未知パラメータθを推定し、これにより伝達関数を
同定する。
【0105】具体的には、検出された車輪速振動Δω1
を離散化データΔω1(k)に変換し、該データをN点
サンプルする。そして、上式ζ(k)及びξy0(k)を
用いて、第1の実施の形態における(22)式から(3
1)式と同じ演算によって、伝達関数のパラメータa1
及びa2の推定値(^付)を演算する。なお、逐次型最
小自乗法、補助変数法を用いてもよい。
【0106】一方、相関係数演算回路4は、(34)式
を演算して相関係数σを算出し、第1の実施の形態と同
様に(22)式から(31)式で用いられる忘却係数ρ
を、相関係数σに基づいて設定する。そして、μ勾配演
算回路5は、伝達関数が同定されると、(33)式に基
づいて路面μ勾配D0を演算する。
【0107】以上のように、第2の実施の形態に係る路
面摩擦状態推定装置は、相関係数σを演算し、相関係数
σの値に応じて設定された忘却係数ρを用いてμ勾配を
推定する。これにより、路面摩擦状態推定装置は、路面
摩擦状態に応じて、μ勾配の推定速度を向上させたり、
μ勾配の推定値のばらつきを抑制することができる。
【0108】[第3の実施の形態]図6は、第3の実施
の形態に係る路面摩擦状態推定装置の構成を示す図であ
る。なお、上述した実施の形態と同様の構成について
は、同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0109】第3の実施の形態に係る路面摩擦状態推定
装置は、加振回路6により車輪に与えられる加振入力と
しての励振トルクΔT1の実際の値を検出する加振入力
検出回路7を更に備えている。
【0110】前処理フィルタ2は、検出された加振入力
を車輪速度ω1と共に所定のフィルタ処理を施す。伝達
関数同定回路3は、フィルタ処理を施された加振入力成
分と車輪速振動Δω1とから伝達関数のパラメータを推
定する。
【0111】加振入力検出回路7による加振入力の検出
方法は、例えば、制動トルクを励振する場合、制動トル
クに対応するブレーキ圧力(ホイールシリンダ圧)を圧
力センサ等で検出し、所定の定数を乗じることにより、
励振成分を含む制動トルクに変換し、さらにこの制動ト
ルクから平均的な制動トルクの値を減算することによっ
て励振トルク成分のみを加振入力として抽出する。
【0112】次に、伝達関数同定回路3が依拠する演算
式を導出する。まず、第3の実施の形態で同定すべき伝
達関数を、励振トルクΔT1を加振入力として、このと
き前処理フィルタ2により検出された車輪速振動Δω1
を応答出力とする2次のモデルとする。すなわち、(4
4)式
【0113】
【数23】
【0114】の振動モデルを仮定する。ここに、ΔT1
は、加振入力検出回路7によって検出された実際の励振
トルク、vは車輪速信号を観測するときに含まれる観測
雑音である。(44)式を変形すると、(45)式を得
る。
【0115】
【数24】
【0116】まず、(45)式に(11)式の前処理フ
ィルタを掛けて得られた式を離散化する。このとき、Δ
ω1、ΔTd 、vは、サンプリング周期Ts 毎にサンプ
リングされた離散化データΔω1(k)、ΔTd
(k)、v(k)として表される。また、ラプラス演算
子sは、遅延演算素子dを用いた上述の双一次変換によ
り離散化することができる。
【0117】また、前処理フィルタの次数mは、2以上
が望ましいので、本実施の形態では、演算時間も考慮し
てm=2とし、これによって(46)式から(50)式
を得る。
【0118】
【数25】
【0119】また、最小自乗法に基づいて、車輪速振動
Δω1の各離散化データから伝達関数を同定するため
に、(46)式を、同定すべきパラメータに関して一次
関数の形式となるように、(51)式及び(52)式の
ように変形する。
【0120】
【数26】
【0121】上式において、θが同定すべき伝達関数の
パラメータとなる。本実施の形態ではΔT1を検出する
ので、第1及び第2の実施の形態と異なり、係数b0
1、b2 も推定している。
【0122】次に、第3の実施の形態の作用を説明す
る。
【0123】伝達関数同定回路3は、検出された車輪速
振動Δω1の離散化データを(51)式に順次当てはめ
た各データに対し、最小自乗法を適用することによっ
て、未知パラメータθを推定し、これにより伝達関数を
同定する。
【0124】具体的には、検出された車輪速振動Δω1
を離散化データΔω1(k)に変換し、該データをN点
サンプルする。そして、上式ζ(k)及びξy0(k)を
用いて、第1の実施の形態における(22)式から(3
1)式と同じ演算によって、伝達関数のパラメータa1
及びa2 の推定値(^付)を演算する。
【0125】一方、相関係数演算回路4は、(34)式
を演算して相関係数σを算出し、第1の実施の形態と同
様に(22)式から(31)式で用いられる忘却係数ρ
を、相関係数σに基づいて設定する。
【0126】なお、上述した演算に限らず、逐次型最小
自乗法や補助変数法を用いてもよい。補助変数法を用い
る場合には、本実施の形態のように加振入力が検出でき
る場合は、同定された伝達関数のパラメータを用いて、
(53)式
【0127】
【数27】
【0128】より、真の出力x(k)の推定値(^付)
を逐次的に求め、この推定値を用いて補助変数を(5
4)式及び(55)式のように構成することができる。
【0129】
【数28】
【0130】また、 ζ(k)=[−ξy1(k)−ξy2(k)ξu0(k)ξu1(k)ξu2
(k)]T を式誤差r(k)と相関を持たないほどに遅らせたもの
を利用する。すなわち、(56)式
【0131】
【数29】
【0132】とする。ただし、Lは遅延ステップ数であ
る。
【0133】ここで、加振入力の波形は、第2の実施の
形態と同様に、図5(A)、図5(B)及び図5(C)
に示すようにしてもよい。また、タイヤが路面にグリッ
プしている時の共振周波数(以下、「タイヤ共振周波
数」という)が明らかな場合は、該共振周波数で加振す
ることもできる。発明者らの実験的研究により、(7)
式で表現される振動モデルは、(57)式
【0134】
【数30】
【0135】となることがわかっている。(7)式、
(57)式に基づいて、タイヤ共振周波数で加振したと
きの加振入力から応答出力までの伝達特性を求めると、
(58)式
【0136】
【数31】
【0137】の0次の伝達関数になる。そこで、同定す
べき伝達関数を Δω1=Gd ΔT1 (59) とおき、伝達関数同定回路3において、(60)式から
(63)式のように最小自乗法を用いて伝達関数を同定
する。
【0138】
【数32】
【0139】また、上記最小自乗法は、(64)式から
(66)式のように逐次型最小自乗法として演算するこ
ともできる。
【0140】
【数33】
【0141】ここに、相関係数演算回路4は、(34)
式を演算して相関係数σを算出し、上述した式で用いら
れる忘却係数ρを、相関係数σに基づいて設定する。な
お、忘却係数ρの初期値は(26)式と同様である。さ
らに、上記最小自乗法に、補助変数法などの修正最小自
乗法を適用することによって、さらに正確な推定値が得
られる。そして、同定された伝達関数のパラメータGd
の推定値は、(58)式と(59)式の対応関係より、
(67)式
【0142】
【数34】
【0143】である。そして、μ勾配演算回路5は、G
dの推定値を用いて(67)式より路面のすべり易さD
0 に関する物理量を演算する。
【0144】以上のように、第3の実施の形態に係る路
面摩擦状態推定装置は、路面の摩擦状態に関連する相関
係数σを演算し、相関係数σの値に応じて設定された忘
却係数ρを用いてμ勾配を推定する。これにより、路面
摩擦状態推定装置は、路面摩擦状態に応じて、μ勾配の
推定速度を向上させたり、μ勾配の推定値のばらつきを
抑制することができる。
【0145】[第4の実施の形態]図7に示すように、
第4の実施の形態に係る路面摩擦状態推定装置は、車輪
速ω1を検出する車輪速センサ11と、車輪速ω1から車
輪速振動Δω1を抽出する前処理フィルタ12と、車輪
速振動Δω1と該車輪速振動Δω1の2階微分との相関関
係を示す相関係数σ1を演算する第1の相関係数演算回
路13と、車輪速振動Δω1と該車輪速振動Δω1の2階
微分との相関関係を示す相関係数σ2を演算する第2の
相関係数演算回路14と、相関係数σ1,σ2のいずれ
かを選択する相関係数演算値切替回路15と、選択され
た相関係数をμ勾配に変換するμ勾配変換回路16とを
備えている。
【0146】前処理フィルタ12は、第1の実施の形態
の前処理フィルタ2と同様に構成され、車輪速センサ1
1により検出された車輪速ω1から車輪速振動Δω1を抽
出し、この車輪速振動Δω1を第1の相関係数演算回路
13及び第2の相関係数演算回路14に供給する。
【0147】第1の相関係数演算回路13は、前処理フ
ィルタ12からの車輪速振動Δω1を用いて(68)式
を演算し、相関係数σ1を算出する。
【0148】
【数35】
【0149】(68)式において、ωは車輪速振動Δω
1を示し、ω''はΔω1の2階微分を示す。ρc1は、相関
係数σ1の逐次演算のための忘却係数(固定値)であ
る。第1の相関係数演算回路13は、固定値である忘却
係数ρc1を用いることで、路面摩擦状態を示す相関係数
σ1を逐次演算する。
【0150】第2の相関係数演算回路14は、前処理フ
ィルタ12からの車輪速振動Δω1を用いて(69)式
を演算し、相関係数σ2を算出する。
【0151】
【数36】
【0152】(69)式において、ωは車輪速振動Δω
1を示し、ω''はΔω1の2階微分を示す。ρc2は相関係
数σ2の逐次演算のための忘却係数(可変値)であり、
(ρ c1≦ρc2)である。したがって、第2の相関係数演
算回路14は、第1の相関係数演算回路13よりも演算
速度が速くならないように設定されている。
【0153】ここで、第1の相関係数演算回路13は、
相関係数σ1が大きいとき(路面が滑りにくいとき)は
忘却係数ρc2を大きく設定し、相関係数σ1が小さいと
き(路面が滑りやすいとき)は忘却係数ρc2を小さく設
定する。第2の相関係数演算回路14は、設定された忘
却係数ρc2を用いて、上記(69)式を演算する。よっ
て、第1の相関係数演算回路13は、路面の滑り易さに
応じて、第2の相関係数演算回路14の推定速度を制御
している。
【0154】相関係数演算値切替回路15は、相関係数
σ1に基づいて車輪と路面との間の摩擦状態を判定す
る。例えば、相関係数演算値選択回路15は、相関係数
σ1の値が大きいときは路面が滑りにくいと判定し、相
関係数σ1の値が小さいときは路面が滑り易いと判定す
る。そして、相関係数演算値選択回路15は、路面が滑
りにくいときは相関係数σ2を選択し、路面が滑り易い
ときは相関係数σ1を選択し、選択した相関係数を勾配
変換回路16に供給する。
【0155】勾配変換回路16は、相関係数σとμ勾配
との対応関係を示す対応テーブルを記憶している。勾配
変換回路16は、相関係数演算値切替回路15で選択さ
れた相関係数σを上記対応テーブルと比較し、相関係数
σに対応するμ勾配を出力する。
【0156】図8は、従来の路面摩擦状態推定装置(例
えば特開平11−78843号公報に記載された発明)
によって推定されたμ勾配(A)と、第4の実施の形態
に係る路面摩擦状態推定装置によって推定されたμ勾配
(B)とを比較する図である。図8(A)によると、μ
勾配推定値のばらつきが大きく、路面の滑り易さの変化
を確実に検出することができていない。一方、図8
(B)によると、μ勾配推定値のばらつきが小さく、路
面の滑り易さの変化を確実に検出することができる。
【0157】以上のように、第4の実施の形態に係る路
面摩擦状態推定装置は、車輪速振動Δω1の周期性の度
合いを示す相関係数σがμ勾配と深い相関関係があるこ
とを利用して、相関係数σに基づいてμ勾配を推定す
る。この結果、最小自乗法を用いる場合に比べて演算量
を大きく低減することができ、μ勾配の推定速度を向上
させることができる。
【0158】また、路面摩擦状態推定装置は、異なる値
の忘却係数ρを用いてそれぞれ相関係数σ1,σ2を演
算し、路面摩擦状態に応じて最適な相関係数σ1,σ2
を選択する。したがって、路面の滑り易さの変化に高応
答に追従し、かつμ勾配推定値のばらつきを抑えること
ができる。
【0159】
【発明の効果】請求項1記載の発明は、コストをかける
ことなく演算量を少なくし、かつ推定値のばらつきを低
減させることができ、この結果、車輪と路面との間の滑
り易さの変化に対して高応答に推定値を求めることがで
きる。
【0160】請求項2記載の発明は、応答出力と該応答
出力の偶数階微分又は偶数階差分との相関関係を示す相
関係数を演算することによって、前記応答出力の周期性
の度合いを求めることができ、この結果、車輪と路面と
の間の滑り易さの変化に対して高応答に推定値を求める
ことができる。
【0161】請求項3記載の発明は、振動モデルを用い
た場合であっても周期性の度合いの演算値に基づいて推
定速度を変更することによって、コストをかけることな
く演算量を少なくし、車輪と路面との間の滑り易さに関
する物理量の推定速度を向上させることができる。
【0162】請求項4記載の発明は、応答出力の周期性
の度合いを異なる演算速度でそれぞれ演算して、車輪と
路面との間の滑り易さに関する物理量を推定することに
よって、推定速度を向上させつつ、推定値のばらつきを
抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る路面摩擦状態
推定装置の構成を示すブロック図である。
【図2】路面摩擦状態推定装置の相関係数演算回路によ
り演算された相関係数とμ勾配との関係を示す図であ
る。
【図3】従来の路面摩擦状態推定装置による推定結果と
第1の実施の形態に係る路面摩擦状態推定装置の推定結
果を示す図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態に係る路面摩擦状態
推定装置の構成を示すブロック図である。
【図5】加振回路による励振トルクΔT1の信号波形の
例を示す図である。
【図6】本発明の第3の実施の形態に係る路面摩擦状態
推定装置の構成を示すブロック図である。
【図7】本発明の第4の実施の形態に係る路面摩擦状態
推定装置の構成を示すブロック図である。
【図8】従来の路面摩擦状態推定装置による推定結果と
第4の実施の形態に係る路面摩擦状態推定装置による推
定結果を示す図である。
【図9】車輪共振系と等価な力学モデルを示す図であ
る。
【図10】車輪共振系におけるタイヤ−路面間の摩擦特
性を示す図である。
【図11】振動モデルの概念を示す図である。
【符号の説明】
1,11 車輪速センサ 2,12 前処理フィルタ 3 伝達関数同定回路 4 相関係数演算回路 5 μ勾配演算回路 13 第1の相関係数演算回路 14 第2の相関係数演算回路 15 相関係数演算値切替回路 16 勾配変換回路
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (71)出願人 000004260 株式会社デンソー 愛知県刈谷市昭和町1丁目1番地 (72)発明者 梅野 孝治 愛知県愛知郡長久手町大字長湫字横道41番 地の1 株式会社豊田中央研究所内 (72)発明者 小野 英一 愛知県愛知郡長久手町大字長湫字横道41番 地の1 株式会社豊田中央研究所内 (72)発明者 宮下 政則 愛知県愛知郡長久手町大字長湫字横道41番 地の1 株式会社豊田中央研究所内 (72)発明者 田中 亮 愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自動 車株式会社内 (72)発明者 安井 由行 愛知県刈谷市朝日町2丁目1番地 アイシ ン精機株式会社内 (72)発明者 沢田 護 愛知県刈谷市昭和町1丁目1番地 株式会 社デンソー内 Fターム(参考) 3D046 BB23 BB28 BB29 HH23 HH36 HH46 KK12

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 車輪と路面との間の摩擦特性を含む車輪
    振動系への加振入力に対する応答出力を検出する検出手
    段と、 前記検出手段により検出された応答出力の周期性の度合
    いを演算し、前記周期性の度合いの演算値に基づいて車
    輪と路面との間の滑り易さに関する物理量を推定する推
    定手段と、 を備えた路面摩擦状態推定装置。
  2. 【請求項2】 前記推定手段は、前記検出手段により検
    出された応答出力と該応答出力の偶数階微分又は偶数階
    差分との相関関係を示す相関係数を演算することを特徴
    とする請求項1記載の路面摩擦状態推定装置。
  3. 【請求項3】 前記推定手段は、加振入力から応答出力
    までの前記車輪共振系の伝達特性を、少なくとも車輪と
    路面との間のすべり易さに関する物理量を未知要素とし
    て含む振動モデルで表し、該振動モデルにおいて、前記
    検出手段により検出された応答出力を略満足させるよう
    な前記未知要素を推定するにあたり、前記周期性の度合
    いの演算値に基づいて前記未知要素の推定速度を変更す
    ることを特徴とする請求項1または2記載の路面摩擦状
    態推定装置。
  4. 【請求項4】 前記推定手段は、前記検出手段により検
    出された応答出力の周期性の度合いを異なる演算速度で
    それぞれ演算し、所定の演算速度で演算された周期性の
    度合いに基づいて1つの周期性の度合いの演算値を選択
    し、選択された演算値に基づいて車輪と路面との間の滑
    り易さに関する物理量を推定することを特徴とする請求
    項1または2記載の路面摩擦状態推定装置。
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